磁気共鳴診断装置においては、静磁場内の被検体に高周波磁場(RFパルス)及び勾配磁場を所定のパルスシーケンスに沿って印加することによって磁気共鳴信号を生じさせ、この磁気共鳴信号を受信し処理して画像を再構成する。高周波磁場の送信と磁気共鳴信号の受信は、高周波コイル(RFコイル)を介して行われる。1つの高周波コイルで送受信を兼用することがある。
ここで、高周波磁場を効率よく被検体に送信し、高S/Nの磁気共鳴信号を得るためにはできる限り高周波コイルのQ値を高くする必要がある。高周波コイルがコンデンサと共に並列共振回路を構成している場合、Q値は(1)式のように表される。
Q=Lω0 /r …(1)
但し、L:高周波コイルのインダクタンスω0 :磁気共鳴周波数r:等価的な抵抗分実際上は、高周波コイルを高Qにするためにrがなるべく小さくなるように製作される。これにより、高周波送信時にrで消費する電力が少なくなり、受信時にrから発生する熱雑音も少なくできる。また、Q値は(2)式によっても表される。
Q=ω0 /Δω …(2)
ここで、Δωは高周波コイルの周波数特性を示す指標である吸収スペクトルを計測したときのω0 における吸収パワーの−3dBとなる周波数ω1( ω1> ω0 )と、ω2( ω2<ω0 )との差(ω1−ω2) であり、高周波コイルの受信時に使用可能な周波数帯域を示す。従って、(2)式から、高周波コイルのQが高くなると、高周波コイルの使用可能な周波数帯域が狭くなることが理解される。通常の磁気共鳴診断装置においては、Qが相当高くてもイメージングに使用する周波数帯域はΔωに比べて十分小さいため、高周波コイルによる周波数帯域の制限が実用上問題となることはなかった。
ところが、動きの速い部位(心臓など)の撮像を可能とする高速イメージング法(撮像時間が数10ms)では、受信系に通常のイメージング法の10倍程度の周波数帯域が必要である。この高速イメージングにおいて磁気共鳴信号の受信に必要な周波数帯域は、高周波コイルのQが高い場合、Δωより広帯域になることもある。但し、コイルへの送信効率を考えると送信時にはQ値は高い方がよい。
また、被検体の周りに複数の受信用表面コイルを配置して、これらのコイルより同時にデータ収集を行い、フ−リエ変換後重み付け加算処理を行うことにより高S/N画像を得るマルチ表面コイル画像化法においても、従来送信用としてのみ用いられている全身用一様コイルを各表面コイルとの同時受信に用いることが重要であり、この受信時にはQ値を十分下げる必要がある。特開平1−204760では、重み関数を各々の表面コイル画像と全身用一様コイル画像の比から計算することにより、高S/Nでかつ均一なマルチ表面コイル画像を得ようとしているが、表面コイル画像と全身用コイル画像を2回のデータ収集でなく同時1回のデータ収集で済ますため、表面コイルと全身用一様コイルのデカップリングが必要であることを記載している。つまり、送信時は高Q値でよいが、受信時はQを落として受信コイルとのカップリングを抑え、感度ムラの無い一様画像を得る必要がある。
受信専用高周波コイルのQを見かけ上低くする回路技術として、特公平4−42937号公報にQを低下させる方法について記載されているが、あくまで受信専用コイルに対するものであり、送受信兼用コイルについてこの方法をそのまま用いることはできない。
このように従来の磁気共鳴装置では、例えば高速イメージングを実現する場合、高周波の送受信を1個のコイルで行うには、受信時のQ値を低くしないと受信信号帯域が不十分という問題があり、また重み関数を画像より算出する高S/Nかつ高均一なマルチ表面コイル画像法を行う場合には、全身用一様コイルの受信時のQ値を下げないと、受信用表面コイルとのカップリングにより画像の感度ムラが生じるという問題があった。
一方、1H 、31P 、13C 、15N (適宜、1H、31P 、13C 、15N と表記する)などを含む化合物の信号を検出することにより生体内の代謝状態を観測するMRS(磁気共鳴スペクトロスコピ−)において、1H と他の原子核31P 、13C 、15N などは分子内で隣り合って結合している場合が多く、このスピン結合を利用して、検出したい化合物を選択したり、感度を高めたりすることができる。その際には、被検体に1H 励起用高周波と他の原子核(31P 、13C 、15N など)を励起する高周波を印加する2種類の高周波コイルが必要となる。一般に、上記のようなスピン結合がある場合、観測する核種の磁気共鳴スペクトルにおいて結合のある核のピークは分裂してしまい、S/Nが低下すると共に他の信号との判別が困難になる。そこで、結合のある核の信号を1つの高周波コイルで観測しながら、結合している非観測核の共鳴周波数の高周波をもう1つの高周波コイルから連続的に印加して結合の影響を消しピークを単純化する「デカップリング」という手法が用いられる。しかし、これを生体へ適用すると、高周波を生体組織が吸収し体内の温度上昇を招く可能性が高い。特にデカップリングに用いる高周波コイルが頭部用コイルまたは全身撮像用コイルなどの場合、生体が非常に危険な状況にさらされる可能性がある。観測領域を限定し、表面コイルを用いてデカップリングパルスを印加する方法もあるが、このようなスピン結合を持つ核種の信号を観測する場合、非観測核の共鳴周波数の高周波磁場を観測領域全域に渡って広範囲に均一に印加することも同時に要求される場合が多い。たとえば、図16(a)は13C の信号をS/Nよく観測するためによく用いられるINEPTという分極移動法のパルスシーケンスを示す。1H の磁化をこれに結合している13C に移すことにより約4倍に13C の信号強度を高めることができる。このシーケンスでは、非観測核である1H の( π/2) パルスとπパルスとデカップリングパルス(図16(b)参照)が必要とされる。デカップリングパルスは表面コイルで発生できるものの( π/2) パルスとπパルスは表面コイルのもつ高周波磁場の均一範囲が非常に狭いという特徴のため、正しく発生できない。
このように結合した2種類の核種がある時に、観測したい核種の感度を高めるため、観測対象核に結合した非観測核に対し、一つのコイルで空間的に均一な高周波磁場と、デカップリングなどのようにある程度連続的に発生される高周波磁場の両方を発生させようとすると、生体の加温が生じたり、あるいは不均一な高周波磁場しか出せないという問題があった。
また、磁気共鳴診断装置は固有の磁気モーメントを持つ原子核の集団が一様な静磁場中に置かれたときに、特定の周波数で回転する高周波磁場のエネルギーを共鳴する現象を利用して、物質の化学的及び物理的な微視的な情報を映像化したり、あるいは化学シフトスペクトルを観測する装置である。このような磁気共鳴診断装置においては、被検体の関心領域に高周波磁場を照射したり、それによって生じる磁気共鳴信号を検出するための高周波コイルが必要不可欠である。
磁気共鳴診断装置によって31P(リン)や13C(カーボン)等の化学シフトスペクトルを得る場合、位置決めや磁場均一性補正のために、 1H(プロトン)の画像を取得することが行なわれる。このような場合、高周波磁場の発生及び磁気共鳴信号の収集のための高周波コイルとしては、31Pや13C及び 1Hのそれぞれの磁気共鳴周波数で同調するコイルが必要である。このようなコイルを2重同調高周波(RF)コイルという。従来の2重同調RFコイルに、高周波磁場の均一発生及び磁気共鳴信号の検出感度の均一化が可能な高周波コイルとして鳥かご型2重同調RFコイルが知られている。
高周波コイルは高周波電力の効率や、画像及び化学シフトスペクトルデータの検出感度向上のために、受信では被検体にできるだけ密着して行われ、送信では高周波磁場が均一に発生されることが望ましい。受信用コイルとしては、被検体の関心部位へ密着させて設置され密着部位周辺の信号を高感度で検出できる表面コイルが、従来用いられている。しかし、被検体の所定領域全体にわたって高均一に高周波磁場を発生することができない。一方、送信用コイル及び送受信兼用コイルとしては、高周波磁場の高均一発生及び磁気共鳴信号の検出感度の均一化が可能で2つの原子核の磁気共鳴周波数で同調する上記記載の鳥かご型2重同調RFコイルがある。
図38(a)は従来の鳥かご型2重同調RFコイルの構造を示したものである。所定の間隔で対向配置された一対のループ導体114、115の間に、これの軸方向に平行に複数(図では8本)の導体116が接続されている。ループ導体114に接続された導体116の各一端が接続された接続点間にはキャパシタンス素子117が並列にそれぞれ接続され、またループ導体115に接続された導体116の各他端が接続された接続間にも同様にキャパシタンス素子118が並列にそれぞれ接続されている。つまり、ループ導体114、115の周方向にLCの梯子型回路が形成され、そのLCの梯子型回路の一つのループの周方向にさらにキャパシタンス素子117、118が挿入されている。一方導体116の途中は分断されており、それらの分断部に導体116と直列にキャパシタンス素子119が接続されている。
図38(b)は鳥かご型2重同調RFコイルの別の例を示したもので、図38(a)の例と異なる点は、ループ導体114、115の周方向のLCの梯子型コイルにおいて、同回路の1ループとループ導体114または115を結ぶ導体に直列にキャパシタンス素子120、121がそれぞれ挿入されている点にある。
図38(c)は鳥かご型2重同調RFコイルの一例を示したもので、図38(a)と異なる点は、周方向に付加したLCの梯子型コイルをループ導体114、115に対して同半径で軸方向に延長して接続するのではなく、同軸長で半径方向に延長あるいは短縮することで、2つの共鳴周波数におけるコイルの感度領域がなるべく等しくなるように配置したことである。図38(b)の場合の鳥かご型2重同調RFコイルについても同様に、LCの梯子型コイルを同軸長で半径方向に延長あるいは短縮して配置した場合の構成があり得る。
図38(d)は図38(a)乃至(c)までのコイルの一つのエレメントの等価回路である。L1は導体114の接続点間のインダクタンスで、C1はキャパシタンス素子118、119の容量、L2は導体116のそれぞれのインダクタンス、C2はキャパシタンス素子117の容量である。L1、C1によって並列共振回路が構成され、L2、C2によって直列共振回路が構成される。そして、図38(d)のエレメントがN個(図では8個)の梯子型に接続され、鳥かご型2重同調RFコイルを構成している。
上記構成において所望の磁気共鳴周波数をωH 、ωL とすると、高い方の周波数ωH で、L1、C1の並列共振回路が容量性、L2、C2の直列共振回路が誘導性となり、また低い方の周波数ωL でL1、C1の並列共振回路が誘導性、L2、C2の直列共振回路が容量性となるように選ばれる。従ってコイルは周波数ωH において高通過型特性、ωL において低域通過型特性となる。この場合、ωH とωL は(3)式、(4)式のように表される。
ωH =(a+b1/2 )1/2 …(3) ωL =(a−b1/2 )1/2 …(4)
但し、
a=(ω12 +ω22 )/2+(2×L2×C1)-1×(sin2 π/N)-1
b=(ω12 ーω22 )2 /4+(ω12 +ω22 )/(2×L2×C1)×(sin2 π/N)-1+(4×L22 ×C12 )-1×(sin4 π/N)-1
ω12 =(L1×C1)-1
ω22 =(L2×C2)-1
N:コイルのエレメント数
しかし、鳥かご2重同調RFコイルは、表面コイルほど被検体に密着して設置することができないので、受信時の高S/N検出は出来ない。
上記記載の鳥かご型2重同調RFコイルと表面コイルの特性を生かして、送信時には鳥かご型2重同調RFコイルを用いて、受信時には表面コイルを用いることにより、高周波磁場を均一に発生することができ、磁気共鳴信号を高感度に検出するという極めて有用な高周波コイルが実現できる。
上記記載の高周波コイルの場合、鳥かご型2重同調RFコイルは送信時のみに用いられ、受信時には受信用コイルの検出感度を低下させないように、受信用コイルの磁気共鳴周波数から離調させる手段を付加することでカップリングをなくし、より高性能なコイルが実現すると考えられるが、このようなものは提案されていない。
このように従来の鳥かご型2重同調RFコイルでは、送信専用に用いた場合、受信用表面コイルとカップリングをなくし受信用コイルに悪影響を与えないようにすることが難しいという問題があった。
以下本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気共鳴診断装置の構成を示すブロック図である。図1において、静磁場磁石1は、寝台5上の被検体4に一様な静磁場を印加する。勾配磁場コイル2はシーケンスコントローラ11によって制御される駆動回路3によって駆動され、被検体4に対して、その磁場強度がX,Y,Z方向に直線的に変化する勾配磁場Gx,Gy,Gzを印加する。被検体4にはさらにシーケンスコントローラ11による制御下で、送信部6からの高周波パルスが送受信切替器7を通して送受信用コイル(送受信兼用高周波コイル)8に印加されることによって発生される高周波磁場が印加される。送受信切替器7は、送信時には送受信用コイル8を送信部6に接続し、受信時には送受信用コイル8の接続を送信部6から受信部9に切替える。
送受信用コイル8に被検体4から誘起された磁気共鳴信号は送受信切替器7を通して受信部9に導かれ、増幅及び検波された後シーケンスコントローラ11の制御の下、データ収集部10へと送られる。データ収集部10ではシーケンスコントローラ11の制御下で入力された磁気共鳴信号を収集し、A/D変換した後、計算機12に送る。計算機12はコンソール13により制御され、データ収集部10から入力された磁気共鳴信号の画像再構成処理を行い、シーケンスコントローラ11の制御も行う。計算機12により得られた画像データはディスプレイ14に伝達され画像が表示される。
図2は送受信切替器7の詳細図を示す。送受信用コイル8と、受信部9の前置増幅器27とを接続する第1の接続手段としてのケーブル16,17,18はその全体長が使用波長をλとして、等価的にλ/2の整数倍の電気長に設定される。送受信用コイル8から任意の電気長l0 +λ/4のケーブル16を隔てた第1の点P1 には、第1のスイッチ手段としてのクロスダイオード19を介して第2の接続手段としてのケーブル15が接続される。ケーブル15には送信部6が接続される。第1の点P1 から電気長λ/4+n×λ/2(nは1以上の整数)のケーブル17を隔てた第2の点P2 は、第2のスイッチ手段としてのクロスダイオード20を介して接地される。第2の点P2 から、電気長n´×λ/2−l0(n´は1以上の整数)のケーブル18を介してコイル23と前置増幅器27が順に接続される。
送信時には、送信部6から送られる高周波パルスはケーブル15からクロスダイオード19、ケーブル16を通り、ケーブル15と同じ特性インピーダンスZ0 に整合された送受信用コイル8に伝達される。このときクロスダイオード20が短絡状態になり、ケーブル17の長さが使用波長をλとして、(λ/4+n×λ/2)に設定されているため、ケーブル17の送受信用コイル8側から見たインピーダンスは非常に高くなり、受信部9へ高周波パルスは洩れにくくなり、効率的な送信が可能である。
受信時にはクロスダイオード19、20が解放状態となる。この際の回路動作は、特公平4ー42937号公報にも記載されている。送受信用コイル8のインダクタンス素子21のインダクタンスL1、コンデンサ素子24の容量C1 、コンデンサ素子25の容量C2 は、共鳴周波数ω0 を実現するように(5)式の関係に設定される。
ω0 〜=1/{(L1×C1×C2)/(C1+C2) )}1/2 …(5)
なお、“〜=”はニアリイコールを意味する。
また、インダクタンス素子22のインダクタンスL2 とコンデンサ素子25の容量C2 とは共鳴周波数ω0 を実現するように(6)式の関係に設定される。
ω0 =1/(L2×C2) 1/2 …(6)
さらにケーブル16の側から見たインピーダンスがZ0 になるように(7)式のよう調整されている。
L2×ω0 =1/(C2×ω0 )=(Z0 ×R)1/2 …(7)
前置増幅器27の入力インピーダンスは数Ω程度と非常に低く設定されており、ケーブル16、17、18の全長が、n,n´を1以上の整数として、λ/2の整数倍((1+n+n´)×λ/2)に設定されているため、送受信用コイル8の入力端が前置増幅器27の入力インピーダンスとほぼ同じになる。これによりコンデンサ素子25の両端のインピーダンスが高くなり、送受信用コイル8のQ値が見掛上低下する。
図3に送受信切替器7の変形例の構成を示す。ケーブル28、29、30の全長はやはりλ/2の整数倍になっているが、λ/4分の振り分けが図2と異なる。つまり、ケーブル16は任意の電気長l0 に、ケーブル17はλ/4+n×λ/2に、ケーブル18はλ/4+n´×λ/2−l0 にそれぞれ設定される。
図4(a),(b)は送受信用コイル8の変形例の構成を示す。図4(a)でインダクタンス素子21とコンデンサ素子24とからなる共振回路はω0 での共鳴条件にあり、直列に特性インピーダンスZで長さλ/4のケーブル28を挿入し、入力インピーダンスがZ0 になるように調整したものである。図4(b)はインダクタンス素子21と2つのコンデンサ素子24,25とからなる共振回路はやはりω0 での共鳴条件にあり、さらに長さl´のケーブル29を接続することにより入力インピーダンスがZ0 になるように調整したものである。もちろん、図4(a)ではケーブル29のコイル端、図4(b)ではケーブル29に並列に接続されたコンデンサの両端が、送受信切替器7と受信部9が接続したとき、高いインピーダンスを持つ。
図4(c)は送受信切替器7の変形例の構成を示す。クロスダイオードの替わりにピンダイオード34、35を用いて送受信の切り替えを行う。コンデンサ素子31、32、33はピンダイオード34、35の駆動電流を遮断するためのものであり、駆動は端子36とグランドの間で行われる。
(第2実施形態)
図5は第2実施形態に係る磁気共鳴診断装置の構成を示すブロック図である。図5において、静磁場磁石41は、被検体57に一様な静磁場を印加する。勾配磁場コイル42はシーケンスコントローラ54によって制御される駆動回路43によって駆動され、寝台58上の被検体57に対して、その磁場強度がX,Y,Z方向に直線的に変化する勾配磁場Gx,Gy,Gzを印加する。被検体57にはさらにシーケンスコントローラ54による制御下で、第2の核種としての非観測核である核Aの核A用送信部47からの高周波パルスがコイル切替器46を通して第1の高周波コイルとしての核A用送信コイル44又は第2の高周波コイルとしての核A用送信コイル45に印加される。また第1の核種としての観測核である核Bの核B用送信部50から送受信切替器49を通して核B用送受信コイル48へ高周波磁場が印加される。被検体57から誘起された核Bからの磁気共鳴信号は核B用送受信コイル48、送受信切替器49を通して核B用受信部51に導かれ、増幅及び検波された後シーケンスコントローラ54の制御の下、データ収集部52へと送られる。データ収集部52ではシーケンスコントローラ54の制御下で入力された磁気共鳴信号を収集し、A/D変換した後、計算機53に送る。計算機53はコンソール56により制御され、データ収集部52から入力された磁気共鳴信号の画像再構成処理を行い、シーケンスコントローラ54の制御も行う。計算機53により得られた画像データはディスプレイ55に伝達され画像が表示される。送受信切替器は自動的に切り替わるように受動素子にて構成することもできるが、シーケンスコントローラの制御下で動作させることもできる。
図6は図5の磁気共鳴診断装置の磁石アセンブリの断面図である。測定対象を頭部と考えた場合、第1の核A用送信コイル44と核B用送受信コイル48は頭部全体にわたって比較的広範囲に均一な高周波磁場を発生できるように頭部を覆う程度の大きさを持ち、励起用高周波磁場(90°パルス)及び再結像用高周波磁場(180°パルス)を印加する際に、シーケンスコントローラ54の制御により選択される。第2の核A用送信コイル45は、比較的狭い範囲にのみ均一な高周波磁場を発生する局所コイルであり、デカップリングなど連続的に高周波を発生し被検体への加温効果が問題になりそうな高周波磁場を印加する際に、シーケンスコントローラ54の制御により、第1の核A用送信コイル44から切り替えて用いられる。
図7はさらに被検体57とコイルの組み合わせの1例を示す断面図である。ここで用いられている第1の核A用送信コイル44の構造を図8(a)に示す。第1の核A用送信コイル44と第2の核A用送信コイル45は同じ共鳴周波数を持つので、少なくとも第2の核A用送信コイル45使用時には第1の核A用送信コイル44を離調しておく必要があるため、ピンダイオード59が第1の核A用送信コイル44に直列に挿入されている。第1の核A用送信コイル44へ高周波を伝達するときは少なくともピンダイオード59はON状態になっている。この制御はシーケンスコントローラ54からピンダイオード59の両端の制御端子を通して行われる。ピンダイオード59は第1の核A用送信コイル44に直列に入れる必要はなく、並列に挿入しても良い。核B用送受信コイルとしては種々のコイルが使える。図8(a)においてピンダイオード59の挿入されてない鞍型コイルや、スロッテッドチューブレゾネータなど通常の画像化に用いられるコイルを使えばよい。
図8(b),(c)は第2の核A用送信コイル45の構造を示す図である。図8(a)の第1の核A用送信コイル44と同様にコイルの同調状態・離調状態を制御するピンダイオード60が挿入されている。L’とC’は核Aの共鳴周波数で共振するように設定されており、ピンダイオード60をONすることにより離調状態、OFFにより同調状態となる。図8(c)はピンダイオードをコイルに直列に挿入したものでピンダイオードONにより同調し、OFFにより離調する。核B用送受信コイル48はいわゆる鞍型コイル、つまり図8(a)のピンダイオード59の無い構成のものでよい。配置の上で重要なのは、核B信号観測中にデカップリングパルスなど連続的な高周波磁場を発生する第2の核A用送信コイル45は核B用送受信コイル48と電気的カップリングが少ない配置になっていることである。
このように2核種の送信あるいは受信を行う装置では、図9のようにフィルターを設けた方が望ましい場合が多い。第1の核A用フィルター62と第2の核A用フィルター63は、核Aの共鳴周波数の高周波を通すバンドパスフィルター、ローパスフィルター又はハイパスフィルターで、核A用送信部47から送られてくる核Bの磁気共鳴周波数に相当するノイズ成分を除去する。ここでは2つ挿入されてるが、コイル切替器46と核A送信部47の間に1つ挿入して済ますこともできる。核B用フィルター64は、核B用送信部50から送られてくる核Aの磁気共鳴周波数に相当するノイズ成分を除去するとともに、核Bの信号受信時に第2核A用送信コイル45から送信され核B用送受信用コイル48に混入してくる核Aの共鳴周波数の高周波を除去する。
図10に示すように、観測核である核Bの励起と核Bからの信号受信とを別々のコイルで行ってもよい。核B用送信部50から送られる高周波パルスは核B用送信コイル70へ導かれる。被検体から核B用受信コイル71に誘起される磁気共鳴信号は核B用受信部51へ導かれる。図11は図10の例における被検体57、コイルの組み合わせの例を示す断面図である。第1の核A用送信コイル44と核B用送信コイル70が被検体を取り囲むように互いに直交するように配置されており、それぞれ鞍型コイルで構成することができる。少なくとも送信時にコイルをON状態にするためにピンダイオードが挿入されている。第2の核A用送信コイル45と核B用受信コイル71は被検体に対してほぼ同じ領域に対してそれぞれ高周波磁場を印加したり信号受信したりできるように配置されている。但し、互いに電気的なカップリングが少ない構成にすべきである。例えば、第2の核A用送信コイル45を図8(b),(c)のように構成した場合、核B用受信コイル71は図12(a)のような8字型コイルにするか同図(b)のような差分型コイルにするとよい。これらのコイルは構造的に図8(b)のようなループコイルとのカップリングを防ぐことができる。核B用送信コイル70から高周波磁場を印加している間、不感状態にしておくため、クロスダイオードとインダクタンス素子、コンデンサ素子からなるトラップ回路を備えている。クロスダイオードの替わりにピンダイオードを用いることもできる。第2の核A用送信コイル45の形状を図12(a),(b)の8字型コイルや差分型コイルに選んでもよい。その場合には、クロスダイオードの替わりに、ピンダイオードを用いてシーケンスコントローラ54の制御下でON−OFF制御する。そして、核B用受信コイルとしては図12(c)のようなループコイルを用いることができる。
核Bの信号受信時に第2の核A用送信コイル45から送信され核B用受信コイル71に混入してくる核Aの共鳴周波数の高周波を除去するため、図9ではフィルターを用いる例を示したが、さらに核B用受信コイルに核Aの共鳴周波数のトラップ回路を付ける方法もある。図13(a)は核B用受信コイル71に核Aの共鳴周波数について1/4波長の同軸ケーブル80を一端で短絡して、反対側をコイルに直列に接続するものである。図13(b)は核Aの共鳴周波数で共振するインダクタンス素子L”とコンデンサ素子C”の並列共振回路81を核B用受信コイル71に直列に挿入したものである。この場合、第2の核A用送信コイル45と並列共振回路81がカップリングしないようにシールドした方がよい。また図13(a),(b)のようなトラップ回路は、図5の核B用送受信コイル48に取り付けても効果がある。
ここまで非観測核である核Aを励起するコイルは送信のみの役割であったが、送受信可能であると便利な場合がある。例えば核Aが1H 原子核、核Bが13C原子核の場合、実際上コイル系を被検体にセットしたとき13C の信号を観測する前に観測位置の確認のため1H 画像を通常必要とする。すると、コイル系を一度設置するだけで1H 画像を取得でき、なおかつ13C からの信号観測ができると都合がよい。図14はそのための送受信切替器93をコイル切替器92と核A用送信部94の間に配置したもので、受信時には送受信切替器93から核A用受信部へ信号が送られる。2つのコイル1 90とコイル2 91のどちらかが受信機能を持っていてもよいし、両方持っていても構わない。核A用送(受)信コイル1 90で送信し、第2の核A用送信コイル91を受信にも兼用してもよい。これらは送受信切替器93とコイル切替器92をシーケンスコントローラで制御することにより決定できる。この場合送受信切替器93は受動的な切替回路でも使用できる。図15は送受信切替器1 96と送受信切替器2 97を、それぞれ、第1のコイル切替器98と第1の核A用送(受)信コイル90の間または第2のコイル切替器99と第2の核A用送(受)信コイル91の間に配置した例である。受信したいコイルが決まっていればそちらの経路のみ送受信切替器を配置すればよい。
図16は本実施形態により効果のある13C 観測用パルスシーケンスである。INEPTと呼ばれる分極移動法のパルスシーケンスで、非観測核である核Aに相当するのが1H 原子核、観測核である核Bに対応するのが13C 原子核である。τは1/4Jに設定される。ここでJは1H 原子核と13C 原子核のスピン結合を示す定数である。またΔは同じくJに関連し例えば1/2Jに設定される。本実施形態の一例である図5のブロック図にしたがって説明すると、1H 共鳴周波数の高周波パルス、( π/2) xパルスとπxパルス、( π/2) yパルスはコイル切替器46により第1の核A用送信コイル44により発生される。次に、発生される1H デカップリングパルスはシーケンスコントローラの制御のもとっでコイル切替器46が切り替えられ、第2の核A用送信コイル45より発生させられる。13C 側についてはπxパルスと( π/2) xパルスが核B用送受信コイル48により発生されると共に、信号観測も同じコイルによってなされる。デカップリングパルスには種々のものが用いられるが、良く用いられるのはWALTZと呼ばれるパルスシーケンスで、帯域の広い複合πパルスを適当な位相順序で並べて印加するものである。別の例としては図34に示す帯域の広い変調πパルス100をもとにする方法もある。この際、信号観測開始時点では、変調πパルス100の振幅最大となる部分から始めると都合がよい。
(第3実施形態)第3実施形態は磁気共鳴診断装置に用いられる高周波コイル(RFコイル)に係り、特に少なくとも2種の共振周波数で共振する送信専用に鳥かご型多重同調RFコイルに関する。
図17(a)は従来の図38(a)の鳥かご型二重同調RFコイルに、離調手段を特徴的に追加した本実施形態に係る送信専用の鳥かご型の多重同調RFコイルの構成図である。少なくとも3つのループ導体106、107、111、112が所定の間隔で対向配置される。これらループ導体106、107、111、112は軸方向に平行な複数(図では8本)の導体101で接続されている。ループ導体107に接続された導体101と、ループ導体111との複数の接続点の間にはキャパシタンス素子109が並列にそれぞれ接続され、またループ導体106に接続された導体101と、ループ導体112との複数の接続点の間にも同様にキャパシタンス素子108が並列にそれぞれ接続されている。つまり、ループ導体106、107の周方向にLCの梯子型回路が形成され、そのLCの梯子型回路の一つのループの周方向にさらにキャパシタンス素子109、108が挿入されている。導体101の複数箇所で分断されており、それらの分断部に導体101と直列にキャパシタンス素子102が接続されている。
Z軸方向に平行な複数の導体101(図では8本)のうちのいずれか少なくとも四重極対称の位置に導体101に直列に挿入されているキャパシタンス素子102の分断部とは別の箇所で導体101が分断され、その分断部に離調用のスイッチ素子としてのピンダイオード103が直列に挿入されている。挿入されたピンダイオード103を配置する向きは、全ピンダイオード103の半分はZ方向がアノードになる向きに配置し、ピンダイオード103の残りの半分は逆に−Z方向にカソードを配置する。
図17(b)は図17(a)のコイルの一つのエレメントの等価回路である。従来の図38(d)の構成にピンダイオード103が付加されている回路構成である。このピンダイオード103は、送信時には対象2核種の2つの共鳴周波数に同調した2種の共鳴周波数で発振し、受信時には対象2核種の2種の共鳴周波数を同時に離調、つまり対象2核種の2種の共鳴周波数と異なる共鳴周波数に変化させることができるようにOFF状態にされるべきスイッチ手段(離調手段)を実現する。これはピンダイオード103の特性で順方向電流の場合(送信時)は単なる抵抗に近い素子になり、逆バイアス時(受信時)には微小な容量のキャパシタンス素子と抵抗とからなる並列回路に近似でき、数十キロオーム以上のインピーダンス素子のようになることを利用したものである。L1は導体107の接続点間のインダクタンスで、C1はキャパシタンス素子102、108の容量、L2は導体101のそれぞれのインダクタンス、C2はキャパシタンス素子109の容量である。L1,C1によって並列共振回路が構成され、L2,C2によって直列共振回路が構成される。そして、図17(b)のエレメントがN個(図17(a)では8個)の梯子型に接続され、送信専用鳥かご型二重同調RFコイルを構成している。
図18は図17(a)の変形例であり、図38(b)の鳥かご型二重同調RFコイルに離調手段としてのピンダイオード103を備え、送信時には図38(b)と同様の鳥かご型二重同調RFコイルの特性を示し、受信時には、ピンダイオード103により2種の共鳴周波数から同時に離調することが可能である。
図19は図17(a)のピンダイオード103の配列及びピンダイオード103への駆動電力を供給する説明するための展開図である。ピンダイオード103の配列法について、Z方向がアノードの場合とカソードの場合と同数で互い違いになるようにする。
ピンダイオード103への駆動電力を供給する方法について、全ピンダイオード103への駆動電力は一点から供給する。そのためには、回路構成を全ピンダイオード103に駆動電力が供給されるように直流電流が周回できるようにする必要がある。その方法は、ピンダイオード103が接続された導体101に直列に接続された全てのキャパシタンス素子102に並列にインダクタンス素子104をそれぞれ接続させる。このとき、インダクタンス素子104のインピーダンスは、直流電流は流し、且つ共振条件をくずさないようにキャパシタンス素子102と比較して十分高いインピーダンスにする。実際はキャパシタンス素子102と所定の磁気共鳴周波数で共鳴するように計算したインダクタンスの容量の約5〜10倍大きい容量にする。
ピンダイオード103を駆動する直流電流は、大きなインピーダンスを持つインダクタンス素子105又は図20に示すようなLC共振回路を通し、さらにループ導体106又は107のいずれか一方を介して供給される。あるいは、点線で示しているように、駆動電力をキャパシタンス素子108または109を含むLC梯子型回路の導体に接続して供給する方法もある。電流入出のため、少なくとも二箇所にピンダイオード103のアノードとカソードに接続している導体にそれぞれ供給される。図21は給電点に関して、別の例が示されている。
ループ導体106,107に発生するうず電流を防ぐために通常挿入されるキャパシタンス素子121の挿入位置は、ピンダイオード103へ供給する電流の経路を決める上で重要である。その方法は、図19の場合、ループ導体107に二箇所、ループ導体106に一箇所を分断し、その分断部に直列にキャパシタンス素子110を接続する。このとき二つのループ導体106、107に挿入されたキャパシタンス素子110は、全てのピンダイオード103に電流が供給されるように配置する。キャパシタンス素子110の容量は挿入により鳥かご型二重同調RFコイルの二つの磁気共鳴周波数に大きな変化を与えない程度に十分大きな容量でなければならない。図22にピンダイオード103の駆動電流の流れる様子を示す。
図23は、図28のコイルの展開図を示す。ピンダイオードの配列法やその給電については図19と同様である。ピンダイオード駆動のための給電は図23に示されているように、ループ導体106、107にのみ可能である。
多種の共鳴周波数を持つ多重同調RFコイルを送信専用に用いる場合、別途設けられた受信用コイルと受信時にカップリングしないためには、受信用コイルと同じ1種の共鳴周波数のみを離調し、他の共鳴周波数は離調しない方が好ましい場合がある。なぜなら多種の共鳴周波数全てを同時に離調した場合、受信する共鳴周波数以外の周波数の離調に伴って、受信用コイルと同じ1種の共鳴周波数の離調効果が低減し、受信コイルとのカップリングが生じる可能性があるからである。
図24は従来の図38(a)の鳥かご型二重同調RFコイルにおいて、高い方の共鳴周波数のみを離調するための手段を備えた本実施形態に関わる鳥かご型二重同調RFコイルの一例を示したものである。図25はその展開図である。
LC梯子型回路のループ111、112とループ導体106、107をつなぐ軸に平行な導体113に直列にピンダイオード103が挿入されている。このピンダイオード103によりコイルは、受信時に少なくとも高い方の共鳴周波数から離調できるような切り替え手段を持つようになる。挿入されるピンダイオード103の数は離調できればいくつでもよい。全ピンダイオード103への駆動電力を一点から供給し、全ピンダイオード103の駆動電流が周回できるように、駆動電流の経路上にあたるキャパシタンス素子102にはこれに並列にインダクタンス素子104を接続する。このとき、インダクタンス素子104のインピーダンスは、直流電流は流し、共振条件をくずさないようにキャパシタンス素子102と比較して十分高いインピーダンスにする。電流入出のために実線で示したループ導体106、107のどちらか一方に少なくとも二箇所に供電点を持つ。ピンダイオード103への駆動電流は大きなインピーダンスを持つインダクタンス素子105または、図20に示すようなLC共振回路を通して行なう。また、渦電流を防ぐために通常挿入されるキャパシタンスの挿入位置は、全てのピンダイオード103に電流が供給されるように、各ループ導体106、107のそれぞれ少なくとも一箇所を分断し、その分断部に直列にキャパシタンス素子110を挿入する。このキャパシタンス素子110の容量は、挿入により鳥かご型二重同調RFコイルの二つの磁気共鳴周波数に大きな変化を与えない程度に十分大きな容量でなければならない。図26にピンダイオード103の駆動電流が流れる様子を示した。また、図27にはピンダイオード103の挿入の別の方法とその駆動電流の供給の方法を展開図で示した。
図28は第1実施形態の変形例を示す。従来の図38(a)の鳥かご型二重同調RFコイルの一方の低い方の共鳴周波数のみを離調するための手段を備えた鳥かご型二重同調RFコイルを示したものである。図29はその展開図である。図24の場合と同様に、多種の共鳴周波数を持つ多重同調RFコイルを送信専用に用いる場合、別途設けられた受信用コイルと受信時にカップリングしないためには、受信用コイルと同じ1種の共鳴周波数のみを離調し、他の共鳴周波数は離調しない方が好ましい場合がある。なぜなら多種の共鳴周波数全てを同時に離調した場合、受信する共鳴周波数以外の周波数の離調に伴って、受信用コイルと同じ1種の共鳴周波数の離調効果が低減し、受信コイルとのカップリングが生じる可能性があるからである。
ループ導体106、107に直列に離調用のピンダイオード103が挿入されている。図24、図25と同様に全ピンダイオード103の駆動電流の経路上にあたるキャパシタンス素子102にはこれに並列にインダクタンス素子104を接続する。ピンダイオード103の駆動電流も、図24、図25と同様に実線で示したようにループ導体106、107に供給する場合と、点線で示したようにLC梯子型回路のループ111、112に供給する場合がある。渦電流を防ぐために挿入するキャパシタンス素子110は、図24、図25と同様に全ピンダイオード103に駆動電流が周回するようにループ導体106、107に直列に挿入する。
図30は他の変形例である。高い方の共鳴周波数を受信時に離調するために図38(b)に切り替え手段を備えた鳥かご型二重同調RFコイルである。図31はその展開図である。LCの梯子型回路のループ導体111、112とループ導体106、107をつなぐ軸に平行な導体113に直列に離調用のピンダイオード103が挿入されている。図24、図25と同様に全ピンダイオード103の駆動電流の経路上にあたるキャパシタンス素子102にはこれに並列にインダクタンス素子104を接続する。また、ピンダイオード103の駆動法については、実線で示したようにループ導体106、107のどちらか一方に供給する。渦電流を防ぐために挿入するキャパシタンス素子110は、全ピンダイオード103に駆動電流が供給されるように、LC梯子型回路のループ111、112とループ導体106、107上それぞれに少なくとも一箇所以上に直列に挿入する。
図32はさらに他の変形例である。高い方の共鳴周波数を受信時に離調するために図38(b)に切り替え手段を備えた鳥かご型二重同調RFコイルである。図33はその展開図である。LCの梯子型回路のループ111、112に直列に離調用のピンダイオード103が挿入されている。図24,図25と同様に全ピンダイオード103の駆動電流の経路上にあたるキャパシタンス素子102にはこれに並列にインダクタンス素子104を接続する。また、ピンダイオード103の駆動法については、実線に示したようにLC梯子型回路のループ111、112のどちらかに一方に供給する。渦電流を防ぐために挿入するキャパシタンス素子110は、全ピンダイオード102に駆動電流が供給されるようにLC梯子型回路のループ111、112とループ導体106、107上それぞれに直列に挿入する。
図34はさらに他の変形例である。高い方の共鳴周波数を受信時に離調するために図38(b)に切り替え手段を備えた鳥かご型二重同調RFコイルである。図35はその展開図である。離調用のピンダイオード103はループ導体106、107に直列に挿入されている。図24、図25と同様に全ピンダイオード103の駆動電流の経路上にあたるキャパシタンス素子102にはこれに並列にインダクタンス素子104を接続する。また、ピンダイオード103の駆動法については、実線で示したようにループ導体106、107のどちらか一方に供給する。渦電流を防ぐために挿入するキャパシタンス素子110は、全ピンダイオード103に駆動電流が供給されるようにLC梯子型回路のループ111、112とループ導体106、107上それぞれに直列に挿入する。
図36は、図17(a)において、ループ導体106あるいは107の片側のみに、LC梯子型回路のループ111を形成している。図37はその展開図である。Z軸方向に平行な導体101に直列に離調用のピンダイオード103が挿入されている。挿入されるピンダイオード103は離調できればいくつでもよい。全ピンダイオード103への駆動電流は一点から供給し、全ピンダイオード103の駆動電流が周回できるように、駆動電流に経路上にあたるキャパシタンス素子102にはこれに並列にインダクタンス素子104を接続する。このインダクタンス素子104は図17(a)と同様にキャパシタンス素子102と比較して十分高いインピーダンスにする。電流入出のために実線あるいは点線で示したようにループ導体106あるいはLC梯子型回路のループ111の少なくとも二箇所に給電点を持つ。また、うず電流を防ぐために通常挿入されるキャパシタンス素子110はループ導体106、107に直列に接続される。図36、図37は図17(a)に関しての変形例を示したものであるが、図18から図35に関しても、ループ導体106あるいは107のどちらか片側にLC梯子型回路のループ111を接続し、ピンダイオード103の挿入及びそれに伴う給電点、インダクタンス素子104、キャパシタンス素子110を接続して同様に実現できる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1…静磁場磁石、 2…勾配磁場コイル、3…駆動回路、 4…被検体、5…寝台、 6…送信部、7…送受信切替器、 8…送受信用コイル、9…受信部、 10…データ収集部、11…シーケンスコントローラ、 12…計算機、13…コンソール、 14…ディスプレイ。