JP2004105089A - カルボニル不斉還元酵素をコードするdna - Google Patents
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Abstract
【課題】2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノンを不斉還元する酵素をコードする遺伝子DNAおよび本酵素を用いる工業的な光学活性2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノールの製造法を提供する。
【解決手段】ロドトルラ(Rhodotolula)属のcDNAより2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノン不斉還元酵素に関する遺伝子を単離し、そのDNA配列を明らかにし、該DNA配列情報に基づいてタンパク質を発現させ、該タンパク質により2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノンを不斉還元し、光学活性2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノールを得る。
【選択図】 なし
【解決手段】ロドトルラ(Rhodotolula)属のcDNAより2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノン不斉還元酵素に関する遺伝子を単離し、そのDNA配列を明らかにし、該DNA配列情報に基づいてタンパク質を発現させ、該タンパク質により2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノンを不斉還元し、光学活性2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノールを得る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性アルコールの製造に有用なカルボニル還元酵素、およびそれをコードする遺伝子、さらに該酵素を利用した光学活性アルコール体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性アルコール体は、各種の化合物の原料として利用され得る。例えば、後述の通り、一般式(P)
【0003】
【化9】
[式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または水酸基を示し、Rは、NHSO2R3、ニトロ基、またはアミノ基を示し、R3は、低級アルキル基またはベンジル基を示す。*1は不斉炭素原子を示す。Aは、下記置換基
【0004】
【化10】
(式中、XはNH,OまたはSのいずれかを示し、R5は、水素原子、水酸基、アミノ基またはアセチルアミノ基を示す。*2はR5が水素原子でないときに不斉炭素原子を示す。)
のいずれかを示す。]
で表される三環性アミノアルコール誘導体またはその塩の中間体となることが知られている。上述の一般式(P)の化合物は、特開平9−249623号公報等に、詳細な製造法が開示され(例えば特許文献1及び2参照)、また、その化合物が、糖尿病、肥満、高脂血症等の治療および予防に極めて有用である旨が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの先行技術において開示されている光学活性アルコールの製造方法は、キラル補助剤の存在下ボランを還元剤とするカルボニル基の還元反応が必要とされ、このキラル補助剤が、非常に高価で、調製が煩雑であり、しかも発火性がある等の問題点があり、工業的に実施することが困難なものであった。
【特許文献1】
国際公開第97/25311号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第99/01431号パンフレット
【特許文献3】
特開平10−94399号公報
【特許文献4】
特開平11−215995号公報
【特許文献5】
特許第3067817号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー ケミカル コミュニケーションズ(Journal of Chemical Society Chemical Communications)」
(英国) 1975年 p.400
【非特許文献2】
「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」 (米国) 1980年 p.3352−p.3355
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
中間体として有用な光学活性アルコール体の製造法において、安全性があり、かつ生成物の光学純度や収率の高い工業的に実施可能な好ましい製造法が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、不斉還元反応を酵素により行うべく鋭意研究を行った結果、一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に効率よく不斉還元する新規な酵素を微生物より見出した。さらに、該酵素をコードする遺伝子を遺伝子組換え手法により取得し、その遺伝子の塩基配列を決定し、該酵素をコードする遺伝子が、発現制御が容易で、該酵素の高生産形質転換体の育種に使用できることを見出した。さらに研究を進めた結果、該酵素を用いた一般式(1)の化合物の好ましい合成方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明としては、以下の発明が例示される。
【0008】
[1]下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)下記の反応を触媒する(以下、「(2)→(1)反応式」と略することがある)。
【0009】
【化11】
[式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、保護化された水酸基を示し、Bは、塩素原子または臭素原子を示す。*1は不斉炭素原子を示す。]
【0010】
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
(d)至適pH:最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度である。
【0011】
[2]下記の(A)または(B)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつ少なくとも下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0012】
[3]下記の(C)または(D)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(C)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNA。
(D)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであって、下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0013】
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のDNAがベクターに連結されていることを特徴とする組換えベクター。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載のDNAが宿主細胞に導入され、形質転換せしめられたことを特徴とする形質転換体。
[6]下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
(d)至適pH:最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度である。
【0014】
[7]下記の(A)または(B)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつ少なくとも下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0015】
[8]下記の(C)または(D)のいずれかのDNAがコードするカルボニル不斉還元酵素。
(C)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNA。
(D)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであって、下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0016】
[9][6]〜[8]のいずれかに記載のカルボニル不斉還元酵素を生産する能力を有するロドトルラ属に属する微生物、または[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体のいずれかを、培地で培養し、その培養物から該カルボニル還元酵素を採取することを特徴とする該酵素の製造法。
[10]一般式(2)
【0017】
【化12】
[式中、R10およびBは、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表された化合物を、[6]〜[8]のいずれかに記載のカルボニル不斉還元酵素、またはその酵素含有物、または該酵素を含有する微生物菌体、または[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体のいずれかと、内因性または添加されたNADPHの存在下で接触させて不斉還元反応せしめ、一般式(1)
【0018】
【化13】
[式中、R10、Bおよび*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表された化合物を製造することを特徴とする一般式(1)の化合物の製造法。
【0019】
[11]該不斉還元反応を、[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体を用いることを特徴とする[10]に記載の製造法。
[12]該不斉還元反応に際して、一般式(2)の化合物の反応液中濃度が、1%(W/V)(10g/L)以上であることを特徴とする[10]または[11]に記載の製造法。
[13]該不斉還元反応が、6時間以内の反応時間、収率が90%以上であり、生成物の光学純度が95%以上であることを特徴とする[10]〜[12]のいずれかに記載の製造法。
[14]NADP+からNADPHを生成する能力を有する酵素とその基質およびNADP+を少なくとも含むNADPH再生系を共存させることを特徴とする[10]〜[13]のいずれかに記載の製造法。
[15]NADP再生系がグルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼを含むものである、[14]に記載の製造法。
【0020】
[16]該不斉還元反応が、水性媒体と、一般式(2)の化合物を溶解可能な有機溶媒とを合わせて用いることを特徴とする[10]〜[15]のいずれかに記載の製造法。
[17]有機溶媒が、酢酸ブチルまたはメチルイソブチルケトンであることを特徴とする[16]に記載の製造法。
[18]該不斉還元反応時に、pHをpH3〜8.5に制御することを特徴とする[10]〜[17]のいずれかに記載の製造法。
[19]該不斉還元反応時に、一般式(1)の化合物を吸着可能な合成吸着樹脂を、基質の重量に対して1〜50倍の重量で添加することを特徴とする[10]〜[18]のいずれかに記載の製造法。
【0021】
【発明の実施の形態】
従来、カルボニル不斉還元酵素として、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノンを不斉還元する酵素として、コリネバクテリウム シュードジフテリカム亜種ST−10株由来の酵素(例えば特許文献3参照)、キャンディダ属由来のS1酵素およびS4酵素(例えば特許文献4参照)などが知られている。しかしながら、前者の酵素は添加する基質濃度が0.1%(W/V)以下と低い点および至適pHの範囲が狭い点、後者の酵素は反応率が80%に満たない点および至適pHの範囲が狭い点において工業的に用いるには満足できるものではない。いずれにしても、これらの酵素が、一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に不斉還元するとの報告はない。
【0022】
また、光学活性アルコールの製造法として、キャンデイダ属やロドトルラ属等の微生物を用いて2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールから対応する光学活性ハロヒドリンを得る方法(例えば特許文献5参照)、また2−クロロアセトフェノンから(R)−2−クロロ−1−フェニルアルコールを得る方法としてパン酵母を用いる方法(例えば非特許文献1参照)やクリプトコッカス マセランス(Cryptococcus macerans)を用いる方法(例えば非特許文献2参照)などが知られている。しかしながらこれらの方法は、一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に不斉還元する反応ではなく、また微生物の還元活性が弱く反応に24時間以上を要する点や、微生物が還元反応の逆反応を触媒するアルコール脱水素活性を有する点や、反応生成物の光学純度90%e.e.以下であるか、反応率が90%に満たない点で満足できるものではない。また、微生物菌体、その処理物、もしくは粗酵素または精製酵素を用い上述の一般式(2)の化合物を不斉還元し、一般式(1)の化合物を得る製造方法は報告例がない。
【0023】
本発明は、先に示した[6]−[8]に記載されたカルボニル不斉還元酵素を提供する。
先ず発明[6]に基づいて本発明のカルボニル不斉還元酵素を説明すると、本発明のカルボニル不斉還元酵素は、前述の「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
【0024】
R10は、水素原子、ハロゲン原子、または保護化された水酸基が示され、特に水素原子が好ましい例として挙げられる。また、水酸基を保護する保護基としては、ベンジル基、またはメチル基が好ましい。なお、「(2)→(1)反応式」の反応を触媒するとの確認においては、保護基が、ベンジル基、またはメチル基である場合を想定することが好ましく、さらにベンジル基が特に好ましい例として挙げられる。また発明[10]等の製造においては、場合によっては、R10として水酸基であることもあり得る。Bは、塩素原子または臭素原子を示すが、塩素原子が好ましい例として挙げられる。*1は不斉炭素原子を示す。光学活性体として(R)体が好ましい例として挙げられる。
【0025】
本発明のカルボニル還元酵素の還元活性を測定するに際しては、例えば、補酵素NADPH(10mM)および本発明のカルボニル還元酵素の溶液(0.05ml)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)の反応液(0.49ml)を30℃で5分間予備加熱後、該反応液に、基質2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン(250mM)をジメチルスルホキサイド中に溶解させた溶解液0.01mlを添加し、30℃で10分間還元反応させ、波長340nmの吸光度の減少量、すなわち、NADPHの減少量を測定することにより、本発明のカルボニル還元酵素の還元活性を測定することができる。不斉還元活性の1Uは、上記の条件において、1分間に1μmolのNADPHの減少を触媒する酵素量と定義することができる。また、本発明のカルボニル還元酵素による還元が不斉還元であること、およびその光学純度を確認する場合には、反応生成物を光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより測定し、公知の光学活性のアルコール体の標品と比較して決定することができる。
【0026】
本発明のカルボニル還元酵素の基質特異性としては、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しないことが挙げられる。
【0027】
本発明のカルボニル不斉還元酵素の基質特異性は、上述の測定条件において、基質を各種変更してそれぞれの基質に対し不斉還元活性を有するか否かを測定することにより判断することができる。本発明のカルボニル不斉還元酵素の基質特異性としては、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンに対して不斉還元活性を示し、アセトフェノンに対しても不斉還元活性を示すが、例えば、次に示す化合物に対しても高い不斉還元活性を示すことが好ましい。ここで「高い不斉還元活性」としては、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンに対する相対活性が50%以上であることが好ましい例として挙げられる。本発明のカルボニル不斉還元酵素は、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノンに対して高い不斉還元活性を示すことがさらに好ましく(例えば、相対活性90%以上であることが好ましい)、2−ブロモ−1−(4−ニトロフェニル)エタノンや2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンに対して高い不斉還元活性を示すことがさらに好ましい。2−ブロモ−1−(4−ニトロフェニル)エタノンにおいては、例えば相対活性80%以上であることが好ましく、2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンにおいては、例えば相対活性70%以上であることが好ましい例として挙げられる。またさらに、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−クロロフェニル)エタノンに対して高い不斉還元活性を示すことが好ましく、例えば相対活性55%以上であることが好ましい例として挙げられる。また、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノンに対して不斉還元活性を示すことが好ましく、例えば相対活性45%以上であることが好ましい例として挙げられる。さらに、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−ベンジルオキシフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(2−ニトロフェニル)エタノンに対しても不斉還元活性を示すことがさらに好ましく、例えば相対活性40%以上であることが好ましい例として挙げられる。
【0028】
また、本発明のカルボニル不斉還元酵素は、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を示さない。アルコール脱水素活性は、前述(a)の「(2)→(1)反応」の逆反応である。例えば、NADP+存在下において本発明の酵素に、上記のアルコール体を接触させ、340nmの吸光度の単位時間当たりの変化量(増加量)を指標として、NADPHの変化量(増加量)を測定してアルコール脱水素活性を測定し、実質的に活性を有しないことを確認すればよい。尚、本明細書において、「実質的にアルコール脱水素活性を有しない(示さない)」とは、アルコール脱水素活性を有しないか、わずかな活性しか認められず、「(2)→(1)の反応式」の活性に対して無視できる程度であることと理解することができる。例えば、「実質的にアルコール脱水素活性を有しない」と判断するに際しては、反応終点において、アルコール体の添加量の5%以下の変換しか行わないことが好ましく、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下の変換である例が挙げられる。
【0029】
本発明のカルボニル不斉還元酵素の補酵素の利用性は、補酵素としてNADPHを利用できるが、NADHは実質的に利用できない。例えば、補酵素NADHまたはNADPH(10mM)の存在下にて、本発明の酵素(0.1U)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)からなる反応液(0.49ml)を、30℃で5分間予備加熱後、ジメチルスルホキサイドに溶解した基質2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン250mMを0.01ml添加し、30℃で10分間反応させ、波長340nmの吸光度の減少量によりNADHまたはNADPHの減少を測定することにより、NADH、NADPHそれぞれの補酵素に対する、本発明のカルボニル不斉還元酵素の利用性が確認できる。また、本発明の酵素においては、NADHを実質的に利用できないが、「実質的に利用できない」とは、例えば、NADPH存在下における酵素活性(例えば上記の減少量等)の測定値を100とした場合のNADH存在下の測定値の相対活性(相対比率)が、5%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である場合が挙げられる。
【0030】
本発明のカルボニル不斉還元酵素の至適pHは、最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では、約90%以上、好ましくは約95%以上が例示され、pH3.0およびpH8.0では、約70%以上、好ましくは約80%程度である。
【0031】
例えば、補酵素NADPH(10mM)および本発明の酵素(0.1U)を含むpH3.0〜9.0の各pHの50mMリン酸緩衝液からなる反応液(0.49ml)を、30℃で5分間予備加熱後、基質2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン250mMを含むジメチルスルホキサイド溶解液0.01mlを添加し、30℃で10分間反応させ、波長340nmの吸光度の減少量によりNADPHの減少量を測定することにより、本発明の酵素の至適pHが確認できる。最高活性とは、上述の測定により各pHにおける測定値の最大の値を最高活性とする。本願実施例の酵素の最高活性を示すpHとしては、通常pH5−6付近が該当すると思われる。
【0032】
また、本発明として発明[7]が例示される。すなわち、本発明のカルボニル不斉還元酵素のアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号2の1−251位のアミノ酸配列が好ましい例として挙げられる。また、本発明のカルボニル不斉還元酵素のアミノ酸配列としては、前述の(a)、(b)、(c)の理化学的性質を有する限り、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有していてもよい。配列番号2に示すアミノ酸配列のうち、1〜30個のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているアミノ酸配列も好ましい例として挙げられ、より好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個である。なお、このような置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素は、公知の部位特異的変異導入法、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載の方法により、配列番号1の塩基配列の対応する部位に置換、欠失、または挿入を導入せしめたDNAを用い、後述の通り、宿主に導入し発現させることにより得ることができる。
また、本発明として発明[8]が例示されるが、これは本発明のDNAの説明において詳細に説明する。
【0033】
上記のような理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素は、例えば、ロドトルラ属に属する微生物の培養物から精製することができる。特に財団法人発酵研究所において入手可能であるロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(Rhodotolula mucilaginosa IFO 0907)が本発明のカルボニル不斉還元酵素の生産菌として優れている。IFO 0907はまた、国際寄託機関であるCentraalbureau voor Schimmelcultures (CBS)のカタログにもCBS 2382として収載されており、入手が可能である。また、新たに独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2002年9月13日付けで寄託されたロドトルラ ムシラギノウザ IFO0907(FERM BP−8181)を利用することも好ましい。あるいはまた、上記菌株の人工または突然変異体を調製することもできる。後述に示すとおり、これらの微生物を培養し、適宜精製手段を組み合わせることにより、精製された本発明のカルボニル不斉還元酵素が取得できる。
【0034】
本発明の酵素に関する配列情報を取得するためには、本件発明の酵素を精製後、ペプチダーゼ処理、例えばトリプシンを含むトリス塩酸緩衝液(pH8)で35℃、20時間処理することにより断片化し、逆相クロマトグラフィーによりペプチド断片を単離し、タンパク質シークエンサーによりアミノ酸配列の一部を決定することができる。
【0035】
さらに本発明は、発明[1]−[3]に示されるとおり、上述のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAである。具体的には、配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNAが例示される。本発明のDNAは配列番号1の塩基配列の80−832位の配列に限定されるものではなく、この塩基配列を含むDNAであればよい。また前記配列番号1の塩基配列の80−832位と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであっても、前述の(a)、(b)、(c)の理化学的性質を有する限り、本発明に包含される。すなわち、これらのDNAを用いて本発明のカルボニル不斉還元酵素を発現することができる。ストリンジェントな条件下としては、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて、マニュアル記載の条件(wash:42℃、0.5xSSCを含むprimary wash buffer)が例示される。ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAとしては、例えば、前述のストリンジェントな条件下、配列番号1の塩基配列の80−832位の配列における相補的な塩基配列の任意の、通常は少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個、特に好ましくは少なくとも100個の連続した塩基配列を検出試料として、これにハイブリダイズするDNAが例示される。
【0036】
本発明のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAは、以下の方法によって得ることができる。本明細書において、特に記載がない限り当該分野で公知である遺伝子組換え技術、酵母および大腸菌での組み換えタンパク質の生産技術、分析法が採用される。
【0037】
本発明のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAは、本願明細書において開示される塩基配列、またはアミノ酸配列、場合によれば、前記した精製酵素から決定したアミノ酸配列等の配列情報にしたがって、本発明のカルボニル不斉還元酵素を含有する微生物、例えばロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(Rhodotolula mucilaginosa IFO 0907)、CBS 2382またはFERM BP−8181から取得することができる。通常は、その菌体からmRNAを調製し、それを鋳型とし、合成されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、3’cDNA末端迅速増幅法および5’cDNA末端迅速増幅法(rapid amplification of cDNA enbs,RACE法)(Frohman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:8998−9002,1988)により得ることができる。また、アミノ酸配列にしたがって合成されたオリゴヌクレオチドをプローブとして用い、カルボニル不斉還元酵素生産菌の染色体DNAを制限酵素により消化したDNA断片、またはcDNAをファージやプラスミドに導入し、宿主を形質転換して得られるライブラリーから、プラークハイブリダイゼーションやコロニーハイブリダイゼーションなどにより本発明のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAを得ることもできる。得られたDNAは、プラスミドベクター、たとえばpUC118に挿入しクローニングし、ジデオキシ・ターミネーター法(Sanger F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74: 5463−5467, 1977)のような周知の方法により塩基配列の決定を行うことができる。
【0038】
このようにして調製された遺伝子は、その遺伝子を用いて形質転換した大腸菌宿主中の発現産物を、前記記載のカルボニル不斉還元活性測定法を用いて、カルボニル不斉還元酵素をコードするDNAであることを確認することができる。
【0039】
さらに本発明は、上記のDNAがベクターに連結されていることを特徴とする組換えベクターを提供する。
組換えベクターは、宿主微生物に適したプロモーターの下流に、上記方法で得られたDNAの5’末端側が機能し得るように連結して、適当な発現用ベクターに組み込み調製することができる。
【0040】
適切な発現ベクターとしては、宿主微生物内で複製増殖可能であれば特に制限されない。例えば、宿主として大腸菌を用いるのであれば、強力なプロモーター、たとえば、lac、trp、tac、trc、T7やピルビン酸オキシダーゼ遺伝子のプロモーター(特許公報第2579506号)などを含むpUC系、pGEX系、pET系、pT7系、pBluescript系、pKK系、pBS系、pBC系、pCAL系など通常大腸菌で使用される任意のベクターから選択できる。
【0041】
さらに本発明は、上記のDNAが宿主細胞に導入され、形質転換せしめられたことを特徴とする形質転換体を提供する。
形質転換体は、上記方法にて作成した発現ベクターを用い、適当な宿主微生物を形質転換することにより、発現させることができる。
【0042】
宿主細胞としては、微生物、哺乳類細胞、および植物細胞などが含まれる。微生物を利用することが好ましく、例えば、大腸菌、バチルス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、ストレプトコッカス属、サッカロマイセス属、ピキア属などが例示されるが、本件の「(2)→(1)反応式」を邪魔し、または逆反応を触媒し、収率および光学選択性を低下させる天然由来の酵素等を包含しない性質を有することが好ましく、大腸菌(Escherichia coli)K12またはその誘導体が特に好ましい例として挙げられる。
【0043】
宿主微生物への遺伝子の導入法としては、たとえば、形質転換、形質導入、接合伝達、またはエレクトロポレーションなどの当技術分野で周知の任意の常法によって、好ましい宿主に導入することができる。
【0044】
さらに本発明である該カルボニル不斉還元酵素の製造法としては、前述の通り、該カルボニル不斉還元酵素を生産し得る微生物、例えば、ロドトルラ属の微生物、特に好ましくは、ロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(Rhodotolula mucilaginosa IFO 0907)、CBS 2382またはFERM BP−8181の培養物から、公知の精製方法を適宜組み合わせて該酵素を取得することができるが、さらに、上述の通り、該カルボニル不斉還元酵素の遺伝子を用い形質転換された形質転換体から取得することもできる。
【0045】
該酵素を取得するに当り、まず上記微生物や形質転換体を、通常これらの微生物が資化可能な栄養源を含む培地で培養することが好ましく、例えば、酵素や抗生物質などを生産する通常の方法で培養することができる。培養は、通常、液体培養でも固体培養でもよい。たとえば、グルコース、シュクロース等の炭水化物;ソルビトール、グリセロール等のアルコール;クエン酸、酢酸等の有機酸;大豆油等の炭素源またはこれらの混合物;酵母エキス、肉エキス、硫安、アンモニア等の含窒素無機有機窒素源;リン酸塩、マグネシウム、鉄、マンガン、カリ等の無機栄養源;およびビオチン、チアミン等のビタミン類を適宜混合した培地が用いられる。培養条件は、通常、好気条件下で行うことが好ましい。培養温度は、宿主微生物が生育し得る温度であれば特に制限はないが、通常、0℃〜60℃、好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは約37℃で行うことが例示される。また、培養途中のpHは宿主微生物が生育し得るpHであれば特に制限はないが、通常、pH3〜9、好ましくはpH5〜8、さらに好ましくはpH6〜7で行うことが例示される。
【0046】
次いで、このようにして得られた培養物からカルボニル不斉還元酵素を抽出し、粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液を得ることができる。例示すれば、まず培養物を固液分離し、得られる湿菌体を、必要に応じてリン酸緩衝液やトリス塩酸緩衝液などの緩衝液に懸濁せしめ、次いで超音波処理、フレンチプレス処理やガラスビーズを用いる粉砕処理などの菌体破砕処理を適宜組み合わせて、菌体内からカルボニル不斉還元酵素を抽出し、粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液を得ることができる。この粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液を、必要により、公知のタンパク質、酵素などの単離、精製手段を用いることにより、さらに精製することができる。例えば、粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液に、アセトン、エタノールなどの有機溶媒を加えて分別沈殿せしめるか、硫安などを加えて塩析せしめるかして、水溶液からカルボニル不斉還元酵素を含有する区分を沈殿せしめ回収する方法が例示される。またさらに、陰イオン交換、陽イオン交換、ゲル濾過、抗体やキレートを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて精製することができる。例えば、ジエチルアミノエチル−セファロースを用いた陰イオン、レッド−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて電気泳動的にほぼ単一のバンドにまで精製することができる。
【0047】
また、発明[10]に記載されているとおり、本発明の酵素を用いて、光学活性アルコールを製造することが出来る。この発明において、前述の本発明のカルボニル不斉還元酵素を用いるに際しては、本発明の酵素の作用を阻害しないかぎり、特別に精製程度等は限定されず、精製された本発明の酵素の他、その酵素含有物が用いられ、さらには、その酵素を生産する微生物やその酵素の遺伝子を導入して形質転換された形質転換体等を使用してもよい。微生物や形質転換体等を使用する場合には、菌体を利用してもよく、菌体としては、生菌体、もしくはアセトン処理または凍結乾燥等の処理を施した菌体を使用することができる。場合によっては、菌体破砕物や菌体抽出物等の酵素含有物となっていてもよい。勿論、酵素や菌体、酵素含有物等は、カラムにおいて充填されていてもよく、公知の方法により、担体に固定化されていてもよい。
【0048】
本発明の反応にはNADPHが必要とされるが、微生物、または形質転換体を使用する場合等において、内因性NADPHが十分量であれば特に問題ないが、予め十分量のNADPHを存在せしめておくか、または、NADPHを再生することができる反応系(NADPH再生系)を利用することが好ましい。
【0049】
NADPH再生系を構築するには、通常、NADP+を利用してNADPHを生成する酵素、その基質、およびNADP+を存在せしめればよい。NADPH再生系は、本発明のカルボニル不斉還元酵素の活性に見合う量を供給できる程度に適宜組み合わせることが好ましい。NADP+からNADPHを生成する酵素としては、たとえば、NADP+を要求するグルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.119)やアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)を用いることができる。具体的には、NADP+を要求するグルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.119)としては、Cryptococcus uniguttulatus由来のグルコースデヒドロゲナーゼ、Gluconobacter cerinus由来のグルコースデヒドロゲナーゼ、Bacillus subtilis由来のグルコースデヒドロゲナーゼが例示され、Cryptococcus uniguttulatus由来のグルコースデヒドロゲナーゼはシグマ社より販売されており利用し易い。また、NADP+を要求するアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)としては、Thermoanaerobium brockii由来のアルコールデヒドロゲナーゼ、Candida magnoliae由来のアルコールデヒドロゲナーゼ、Sporobolomyces salmonicolor由来のアルコールデヒドロゲナーゼが例示される。これらの酵素は、精製酵素、粗酵素であってもよく、さらに、これらの酵素を含有する微生物やまたはその処理物等であってもよい。また、NADP+からNADPHを生成する上述の酵素をコードする遺伝子を導入した形質転換体を使用することもでき、例えば、配列番号3に示すNADP+を要求するグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、微生物、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)K12またはその誘導体に導入した形質転換体は、本発明において特に有用である。さらに、NADPH再生系を構成する酵素をコードするDNAと、本発明のカルボニル不斉還元酵素のDNAとを導入し共発現せしめた形質転換体を使用することも好ましい。また、NADPH再生用の酵素の基質として、グルコースデヒドロゲナーゼの場合はグルコースを、アルコールデヒドロゲナーゼの場合はエタノールなどを用いればよく、一般式(2)の化合物に対し、モル比で等量以上適宜添加することが例示される。なお、NADPH再生系を利用するに際しても、その再生系に供するNADP+は内因性のものを利用する場合もあるが、不足するのであれば、さらに添加することが好ましい。添加、または存在せしめるNADP+もしくはNADPHの量は、通常0.02mM以下、好ましくは0.01mM以下、より好ましくは0.001mM以下が例示される。
【0050】
NADPH再生系を利用しない場合には、添加、または存在せしめるNADP+もしくはNADPHの量は、通常、基質と等モル以上添加することが好ましく、例えば、2倍モル以上、好ましくは5倍モル以上、さらに好ましくは10倍モル以上を添加する例が挙げられる。添加量の上限としては特に限定されないが、例えば、100倍モル以下、好ましくは、20倍モル以下が挙げられる。また、製造においては、コスト等の要因を重視することも多く、製造現場においては、通常1−10倍モル、好ましくは1.5−5倍モル、特に好ましくは約2倍モル程度が例示される。
【0051】
本発明の反応を行うに際して、一般式(2)の化合物を添加する場合、その化合物を固体のまま添加することもできるが、反応に影響を与えないような適当量の溶媒、たとえばジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトンまたは酢酸ブチルに溶解して添加することができる。また、場合によっては、さらに水溶性溶媒が混入されていてもよい。添加方法としては、反応の始めに一括添加することができるが、分割添加または連続添加してもよい。
【0052】
また、一般式(2)の化合物から一般式(1)の化合物を製造するに際しては、通常の酵素反応の通り、緩衝液や蒸留水等の水溶液中にて反応させることが好ましいが、該反応を阻害しない限り、その他の溶媒を利用することも可能である。特に、一般式(2)の化合物を溶解し得る有機溶媒を含有せしめた水溶性溶媒を用いることができるが、特に、水に溶解しにくい有機溶媒を水とともに共存せしめ、2相系となすことが好ましい。例えば、緩衝液や蒸留水等の水溶液に対して、メチルイソブチルケトン、または酢酸ブチルをそれぞれ用いる2相系が特に好ましい例として挙げられる。有機溶媒は、適宜の時期に添加することができるが、上述の一般式(2)の化合物とともに添加してもよく、前記したとおり、一般式(2)の化合物を添加する際に、溶解せしめるために用いられる有機溶媒として添加されることも好ましい。また任意の段階で追加することも可能である。有機溶媒と水性媒体の比率は、特に限定されないが、一般式(2)の物性により変化せしめることも好ましく、例えば、通常は1:10〜10:1が例示され、好ましくは1:4〜4:1、または1:2〜2:1、場合により約1:1付近が例示される。
【0053】
また本発明の反応には、より高い光学純度の一般式(1)の化合物を得るために、反応液中に合成吸着樹脂を添加することもできる。合成吸着樹脂の材質は、一般式(1)の化合物を吸着し、反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、中間極性のアクリル系のものが好ましく、例えば、アンバーライトXAD−7HP(Rohm and Hass社)、ダイアイオンHP−2MG(三菱化学工業株式会社)等を用いることができる。合成吸着樹脂は、基質の重量に対して、通常、1倍の重量以上、好ましくは2倍の重量以上、より好ましくは5倍の重量以上の添加が例示される。また、上限として特に限定されないが、基質の重量に対して、通常、50倍の重量以下、好ましくは20倍の重量以下、より好ましくは10倍の重量以下を添加することができる。
【0054】
本発明の一般式(1)の製造方法においては、一般式(2)の化合物を10g/L(1%w/v)以上、好ましくは20g/L(2%w/v)以上、より好ましくは50g/L(5%w/v)以上添加することができる。反応中のpHは、通常pH3〜8.5、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に制御されることが好ましく、温度は10〜60℃、好ましくは20〜40℃、より好ましくは約30℃が選択される。また反応は、攪拌条件下で行うことができる。反応時間は酵素の使用量で調節することができるが、6時間以内、好ましくは4時間以内、最も好ましくは2時間以内で行うことができる。また、反応収率は90%以上、好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上が例示される。また本発明の酵素の性質に関連するものとして、本発明の酵素により調製される一般式(1)の化合物の光学純度としては、通常95%以上が期待でき、好ましくは98%以上が期待でき、最も好ましくは99%以上の光学純度の高い一般式(1)の化合物が製造され得る。
【0055】
かくして得られた反応液から一般式(1)の化合物を取得するためには、反応液が1相の場合は酢酸エチルや酢酸ブチル等の溶剤で抽出して水洗後濃縮乾固することにより、また、2相系で反応を行う場合は有機溶媒層を分離し、水洗後濃縮乾固することにより、一般式(1)の化合物を取得できる。合成吸着樹脂を添加して反応させた場合は、反応終了後、ろ過により樹脂を回収し、該樹脂から、アセトン等の適当な溶剤で溶出後、濃縮乾固することにより一般式(1)の化合物を取得できる。本発明においては、光学純度や収率が高いので、さらなる目的物の原料として、そのまま使用されることができ、最終的な目的物の段階、あるいはその以前の適宜の段階において、精製することができる。また、一般式(1)の化合物を精製するのであれば、各種のクロマトグラフィーや光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等の公知の精製方法により、一般式(1)の化合物を精製することもできる。
さらに本発明は、前記の方法にて、一般式(2)の化合物を還元して生成せしめた一般式(1)の化合物を、アルカリ条件下で、一般式(6)
【0056】
【化14】
[式中、R10および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表されるエポキシ体となし、次いで該エポキシ体と一般式(7)
【0057】
【化15】
[式中、R2は、アミノ基の保護基を示し、A’は、下記置換基
【0058】
【化16】
(式中、Xは、NH、OまたはSを示し、R51は、水素原子、保護基で保護された水酸基、保護基で保護されたアミノ基またはアセチルアミノ基を示す。*2はR51が水素原子でないときに不斉炭素原子を示す。)
のいずれかを示す。]
で表される化合物とを反応させることにより一般式(5)
【0059】
【化17】
[式中、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]で表されるアミノアルコールを生成せしめて、必要に応じてさらにニトロ基を還元して、一般式(4)
【0060】
【化18】
[式中、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]で表されるアニリン誘導体を生成せしめて、該アニリン誘導体とスルホン化剤とを反応させて、一般式(3)
【0061】
【化19】
[式中、 R3は、低級アルキル基またはベンジル基を示し、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表されるアミノアルコールを生成せしめて、調製せしめた一般式(5)、一般式(4)、および一般式(3)からなる一般式(P’)
【0062】
【化20】
[式中、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を示し、Rは、NHSO2R3、ニトロ基、またはアミノ基を示し、R3は、低級アルキル基またはベンジル基を示す。但し、A’におけるX、R51、*2は、前記とそれぞれ同じ意味を示す。]
で表される物質を、さらに一括または段階的に保護基を脱保護することにより、一般式(P)
【0063】
【化21】
[式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または水酸基を示し、Rは、NHSO2R3、ニトロ基、またはアミノ基を示す。R3および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。Aは下記置換基
【0064】
【化22】
(式中、XはNH,OまたはSのいずれかを示し、R5は、水素原子、水酸基、アミノ基またはアセチルアミノ基を示す。*2はR5が水素原子でないときに不斉炭素原子を示す。)
のいずれかを示す。]
で表される化合物を生成せしめることを特徴とする、一般式(P)で表される化合物の製造方法に利用することができる。
【0065】
一般式(2)の化合物を具体的に例示すると、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノン等が挙げられる。
【0066】
一般式(1)の化合物を具体的に例示すると、(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−クロロ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−クロロ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール等が挙げられる。
【0067】
具体的に一般式(5)の化合物を脱保護化した化合物を例示すると、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール、およびその塩等が挙げられる。
【0068】
さらに、具体的に一般式(4)を脱保護化した化合物を例示すると、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノ−4−クロロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノ−4−ブロモフェニル)エタノール、およびその塩等が挙げられる。
【0069】
さらに、具体的に一般式(3)を脱保護化した化合物を例示すると、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(4−ヒドロキシ−3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(4−クロロ−3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(4−ブロモ−3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、およびその塩等が例示され、特に好ましい例として該化合物のR体が例示される。
【0070】
上記の合成経路においては、特開平9−249623号公報(WO97/25311公報)およびWO99/01431公報、さらにWO2001/17962公報を参考にすることができる。すなわち、一般式(6)の化合物と一般式(7)の化合物とのカップリング反応は、一般式(6)の化合物のR10が水素原子またはハロゲン原子である場合により好ましい。
【0071】
一般式(P)の製造において、R10およびR1としては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基(R10においては、保護化された水酸基である)が挙げられ、特に水素原子またはハロゲン原子が好ましい例として挙げられる。このハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、特に塩素原子、臭素原子が好ましい例として挙げられる。また、Rとしては、特にNHSO2R3が好ましい例として挙げられる。R3としては、後述の低級アルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、ベンジル基も好ましい例として例示される。
【0072】
低級アルキル基の「低級」とは、炭素数1〜6の炭素を含む直鎖状もしくは分枝状の飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基および、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキルが好ましい例として挙げられ、特に好ましくはメチルが例示される。
【0073】
R2は、アミノ基の保護基であるが、このアミノ基の保護基としては、例えば、アシル基、あるいは容易に脱保護可能なアラルキル基等が例示される。容易に脱保護可能なアラルキル基としては、例えば、炭素数7から16の炭素を含むアラルキル基が用いられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基等、および(1−ナフチル)メチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基等が挙げられ、フェニル基およびナフチル基上に、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の適当な置換基を適当な位置に有していても良い。特に好ましくはベンジル基が例示される。
Bとしては、特に塩素原子であることが好ましい。
【0074】
R5としては水素原子が好ましい例として挙げられる。また、水酸基であることも好ましい。 R51としては水素原子が好ましい例として挙げられる。またR51としては、保護基で保護された水酸基であることが好ましい。
【0075】
上記の一般式(3)、(4)、(5)、(6)、(P)、(P’)および(1)の各化合物において、*1は不斉炭素原子を示し、2つの光学異性体が存在する。薬理活性の発現という点からは、例えば不斉炭素の好ましい配置は絶対配置Rが例示される。
【0076】
*2は不斉炭素原子を示し、2つの光学異性体が存在する。従って、これらの化合物は、光学的に純粋な異性体のみならず、任意の2つの異性体混合物も本製造方法の範囲内に包含される。
【0077】
R10における水酸基の保護基としては、通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば通常容易にかつ選択的に脱保護できる保護基として、アラルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシアルキル基、アシル基等が好ましく、さらに好ましい例としてメチル基およびベンジル基が例示される。これらの水酸基の保護基の導入、脱保護に際しては、成書(例えば、グリーン(T.W.Greene)、ウッツ(P.G.M.Wuts)ら、プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley−Interscience Publication))に記載されている公知の方法が用いられるが、例えばベンジル基の導入においては、酸捕足剤の存在下、フェノールに塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、またはスルホン酸ベンジル等のベンジル化剤を作用させる例が例示される。
【0078】
水酸基の保護基の除去は、例えば、ベンジル基の場合にはラネーニッケル、パラジウム−炭素または水酸化パラジウム−炭素等の触媒を用い、水素化分解することにより行うことができる。また、アセチル基の除去は、例えば、酢酸エステルに炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を作用させ、加水分解することにより行うことができる。さらに、アミノ基の保護基の脱保護に際しては、成書(例えば、グリーン(T.W.Greene)、ウッツ(P.G.M.Wuts)ら、プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley−Interscience Publication))に記載されている公知の方法が用いられるが、例えば、ベンジル基の場合にはラネーニッケル、パラジウム−炭素または水酸化パラジウム−炭素等の触媒を用い、水素化分解することにより除去することができる。その他に、文献(コリーダ(M.Koreeda)ら、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J.Org.Chem.)49巻、2081頁、1984年およびグーベルト(S.Gubert)ら、シンセシス(Synthesis)4巻、318頁、1991年)に記載されている方法に従い脱保護することもできる。
【0079】
水酸基およびアミノ基の保護基の除去は、段階的に行なっても、一括して行なってもよいが、例えば、R10がベンジルオキシ基であり、R2がベンジル基である組み合わせにおいては、同一条件により脱保護が可能であって、一括して脱保護することが好ましい。また、R10がベンジルオキシ基であり、R2がアセチル基である組み合わせにおいては、例えば、R2のアセチル基を脱保護した後、R10のベンジル基を脱保護する段階的な脱保護の例が挙げられる。但し、その順序はこれらに限定されるものでなく、化合物の物性等により適宜選択して行なうことが好ましい。各々の保護基を脱保護する際の条件は前述の通りである。またこれらは、特開平9−249623号公報に記載の方法を参考にすることができる。
【0080】
一般式(3)、(4)、(5)、(P’)および(P)の化合物の塩には、公知の塩が挙げられ、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸二水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩や、あるいは樟脳スルホン酸、マンデル酸、置換マンデル酸のような光学的に活性な酸との付加塩が含まれるが、医薬的に許容される塩が特に好ましい。一般式(3)、(4)、(5)、(P’)および(P)の化合物からその塩となす場合には、メタノール、エタノールなどのアルコール類に溶解し、当量もしくは数倍量の酸成分を加えることにより、それらの酸付加塩を得ることができる。用いれられる酸成分としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硫酸水素、リン酸二水素、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、メタンスルホン酸などの医薬的に許容される鉱酸または有機酸を挙げることができる。
【0081】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンおよび反応生成物の定量は、高速液体クロマトグラフィーにより行った。分析例は、分析カラム COSMOSIL ODS−5(ジーエルサイエンス社製、4.6mmIDX150mm)、溶離液 50mMリン酸二水素カリウム水溶液:アセトニトリル=6:4、流速1.0ml/min、検出波長254nm、温度40℃とした。この分析条件において、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンおよび2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの保持時間はそれぞれ8.7分、5.4分であった。
【0082】
2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノ−ルの光学純度は、光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより分析できる。たとえば、分析カラムに、CHIRALPAK AS(ダイセル社製、4.6mmIDX250mm)を用い、n−ヘキサン:エタノール=85:15の溶離液、流速0.5ml/min、検出波長254nm、温度15℃の分析条件下で、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノ−ルは、R体が17.5分、S体が18.5分の保持時間で分離する。
【0083】
反応生成物の同定は核磁気共鳴スペクトル(NMR)で行った。AC−200P(FT−NMR、BRUKER社)を用い、化学シフトはテトラメチルシラン(TMS)を内部標準としδ(ppm)で、また結合定数はJ(Hz)で示した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Precoated silica gel 60 F254(MERCK社製)を使用した。各実施例中に記載した溶媒で展開後、UV(254nm)照射、ニンヒドリンによる呈色により確認した。TLCのRf値の測定に際しては、遊離アミンを用いた。有機溶媒の乾燥には、無水硫酸マグネシウム或いは無水硫酸ナトリウムを使用した。
【0084】
実施例1 カルボニル不斉還元酵素の精製
YM培地(グルコース20g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L、ペプトン5g/L、pH6)2Lに、ロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(FERM BP−8181)を植菌し、30℃で24時間培養した。培養終了後、遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、100mlの同緩衝液に懸濁した。菌体を冷却下でフレンチプレス(大岳製作所)により破砕し、さらに5000gの遠心分離により無細胞抽出液を得た。
【0085】
該無細胞抽出液を、硫安分画し、硫安濃度40%以上60%以下で塩析されたタンパク質の画分を取得し、これを、STD緩衝液(10mM Tris−HCl(pH8.5),0.1mM EDTA,0.1mM DTT)に溶解し、透析膜(三光純薬株式会社製)にて脱塩後、STD緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE−Sepharose;アマシャムファルマシアバイオテク社)に吸着せしめ、塩化カリウム濃度を0.0Mから0.3Mへ直線的に増加させた前記緩衝液により溶出し、溶出液をフラクショネーションした。カルボニル不斉還元活性を有する画分を脱塩、限外ろ過により濃縮後、STD緩衝液で平衡化したアフィニティークロマトグラフィー(Red−Sepharose CL−6B;アマシャムファルマシアバイオテク社)に吸着せしめ、NADP濃度を0.0mMから2.0mMへ直線的に増加させた緩衝液により溶出し、溶出液をフラクショネーションした。カルボニル不斉還元活性を有する画分を回収することにより精製された本発明のカルボニル不斉還元酵素を得た(400U)。
精製されたカルボニル不斉還元酵素は、SDS−PAGE後クマシーブレリエントブルーによりタンパク質染色を行い、単一バンドであることを確認した。
【0086】
実施例2 精製されたカルボニル不斉還元酵素の酵素化学的性質
実施例1で精製した不斉還元酵素は以下のような理化学的性質を有していた。尚、不斉還元活性の測定は、基本的には、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に補酵素NADPH10mMおよび酵素液0.05mlを含む0.49mlの反応液に、30℃で5分間予備加熱後、ジメチルスルホキサイドに溶解した適宜の基質(例えば、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン等)250mMを、0.01ml添加し、30℃で10分間反応させ、NADPHの減少を波長340nmの吸光度の減少として測定した。
▲1▼作用:NADPHを補酵素とし、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを不斉還元し、光学純度99.9%e.e.以上の(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールを生成した。
▲2▼基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンと同様に各種カルボニル化合物を基質として反応を行った結果、表1に示す基質特異性を示した。
【0087】
【表1】
【0088】
▲3▼至適pH:pH3.0〜8.5の範囲で、上記方法によりアセトフェノンを基質とした場合の酵素活性を測定した。その結果、図1に示すように最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度であった。
▲4▼分子量:酵素の分子量測定はSDS−PAGEにより行った。その結果、本酵素の分子量は約29000であった。
▲5▼比活性:約200U/mgp
不斉還元活性の1Uは、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを基質としたときの、1分間に1μmolのNADPHの減少を触媒する酵素量と定義することができる。また、タンパク質の定量は、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いて行った。
▲6▼補酵素の利用性:50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に補酵素NADHまたはNADPHを10mMおよび0.1Uの酵素を含む0.49mlの反応液に、30℃で5分間予備加熱後、ジメチルスルホキサイドに溶解した2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン250mMを、0.01ml添加し、30℃で10分間反応させ、波長340nmの吸光度の減少量によりNADHまたはNADPHの減少を測定した。結果を表2に示すように、本発明の不斉還元酵素は、NADPHを利用するが、NADHを利用しないことがわかった。
【0089】
【表2】
【0090】
実施例3 カルボニル不斉還元酵素の遺伝子のクローニング
(1)カルボニル不斉還元酵素の部分アミノ酸配列の決定
実施例1で得られた精製タンパク質のSDS−PAGEを行い、染色後に目的のバンドを切り出しトリプシンを含むトリス緩衝液(pH8.0)を加えて35℃、20時間の処理を行った。その後、溶液の全量を、逆相クロマトグラフィー(カラム:TSKgel ODS−80Ts QA(2.0X250mm,TOSOH)、流速0.2ml/min、溶離液A100%から溶離液B100%のグラジエント(溶離液A:0.1% TFA、溶離液B:0.09% TFA in 90% acetonitrile)、室温)に供して、断片ペプチドを分離した。
【0091】
2種類の断片ペプチド、P1およびP2をプロテインシークエンサ(HP G1005A Protein Sequencing System、ヒューレットパッカード社製)を用いてアミノ酸配列決定を行った。その結果、P1およびP2のアミノ酸配列は以下の様になった。
P1:Asn−Pro−Ser−Asn−Ala−Gln−Leu−Leu−Asp−Ala(配列番号5)
P2:Glu−Ser−Gly−Ile−Asp−Thr−Val−Ile−Val−Asn(配列番号6)
【0092】
(2)部分アミノ酸配列に対応する合成オリゴヌクレオチドプライマーの合成
P1のアミノ酸配列に対応する以下のオリゴヌクレオチドS1(20mer)、5’−AAC−GC[C,G,A,T]−CA[G,A]−[C,T]T[C,G,A,T]−[C,T]T[C,G,A,T]−GAC−GC−3’(配列番号7)を合成し、センスプライマーとして使用した。
P2のアミノ酸配列に対応する以下のオリゴヌクレオチドS2(19mer)、5’−GG[C,G,A,T]−ATC−GA[C,T]−AC[C,G,A,T]−GT[C,G,A,T]−AT[C,A,T]−G−3’(配列番号8)を合成し、センスプライマーとして使用した。
【0093】
(3)3’RACE法による3’末端側DNAのクローニング
RNeasy Maxi kit(キアゲン社製)を用いて、ロドトルラ ムシラギノウザIFO0907よりTotal RNAを分離し、mRNA精製用キット(TaKaRa社製;OligotexTM−dT30<Super>mRNA Purification kit)を用いてmRNAを精製した。精製したmRNAを鋳型とし、合成したS1およびS2をPCRプライマーとして、High Fidelity RNA PCR Kit(TaKaRa社製)を用いて3’RACE法を行い、3’末端側DNAを増幅した。
【0094】
増幅したDNA断片をBlunting Kit(TaKaRa社製)を用いて平滑末端化後、T4Polynucleotide kinase(TaKaRa社製)によりリン酸化し、pUC118のHincIIサイトに挿入しpAZ01プラスミドベクター作成した。クローニングした3’末端側DNA断片の塩基配列をDNAシークエンサ(Gnen Rapid,アマシャムファルマシアバイオテク社製)により決定した。
【0095】
(4)5’RACE法による5’末端側DNAのクローニング
前記(3)で決定した3’末端側DNA塩基配列よりA1(16mer)5’−AAA−GTT−GTT−CAT−GTC−G−3’(配列番号9)、A2(20mer)5’−ACG−TTG−GTG−CGG−AAG−TTG−GC−3’(配列番号10)、A3(20mer)5’−GAC−CTC−CGA−CAA−AGA−CTC−CG−3’(配列番号11)の3種のアンチセンスプライマーを作成した。
前記(3)と同様に精製したmRNAを鋳型として、5’RACE System(Gibco BRL社製)を用いて、5’末端側DNA断片を増幅した。
【0096】
増幅したDNA断片をBlunting Kit(TaKaRa社製)を用いて平滑末端化後、T4Polynucleotide kinase(TaKaRa社製)によりリン酸化し、pUC118のHincIIサイトに挿入しpAZ02プラスミドベクター作成した。クローニングした5’末端側DNA断片の塩基配列をDNAシークエンサ(Gnen Rapid,アマシャムファルマシアバイオテク社製)により決定した。
【0097】
(5)完全長のカルボニル不斉還元酵素遺伝子の取得
決定した2種類のcDNAクローンの塩基配列に共通する領域を解析するとともに、2種類の該cDNAクローンの共通領域に存在するHincIIサイトで、5’末端側DNA断片と3’末端側DNA断片とを連結し、完全長のカルボニル不斉還元酵素遺伝子取得した。この完全長のカルボニル不斉還元酵素遺伝子は、配列番号1の塩基配列を有するものである。尚、推定アミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0098】
実施例4 発現ベクターおよび形質転換体の作成
(1)lacプロモーターを用いた発現ベクターおよび形質転換体の作成
pUC118のlacプロモーターの下流のKpnI/PstIサイト間に、カルボニル不斉還元酵素遺伝子である配列番号1の塩基配列の1位が連結するように挿入せしめた発現ベクターpAZ05を作成し、pAZ05を用いて、大腸菌DH5αを形質転換した。
【0099】
(2)高発現ベクターおよび形質転換体の作成
Aerococcus viridans由来のピルビン酸オキシダーゼ遺伝子のプロモーターpopの下流に、カルボニル不斉還元酵素遺伝子である配列番号1の塩基配列の1位が連結したDNA断片をpUC13に挿入し、発現ベクターpAZ07を作成し、このpAZ07を用いて、大腸菌DH5αを形質転換した。
【0100】
実施例5 pAZ05で形質転換した大腸菌を用いたカルボニル不斉還元酵素の製造
pAZ05で形質転換した大腸菌DH5αを100mlのLB培地(Bacto yeast extract 5g/L、Bacto Tryptone 10g/L、NaCl 10g/L)に植菌し、37℃で16時間培養した後、100mM IPTGを1ml加え、更に8時間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、25mlの可溶化液(4mM EDTA、0.1%リゾチーム、50mMリン酸緩衝液(pH7.0))に懸濁し、37℃で30分間の処理を行い菌体を破砕し、さらに5000gの遠心分離により無細胞抽出液を得た。さらに、無細胞抽出液を実施例1の方法で酵素を精製し、25Uの発現産物を得た。
得られた発現産物は、実施例2で示したカルボニル不斉還元酵素と同等の諸性質を有していた。
【0101】
実施例6 形質転換した大腸菌を用いた(R ) −2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造1
pAZ05で形質転換した大腸菌DH5αを2mlのLB培地(Bacto yeast extract 5g/L、Bacto Tryptone 10g/L、NaCl 10g/L)に植菌し、37℃で16時間培養した後、100mM IPTGを0.02ml加え、更に8時間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、0.5mlの可溶化液(4mM EDTA、0.1%リゾチーム、50mMリン酸緩衝液(pH7.0))に懸濁し、37℃で30分間の処理を行い菌体を破砕し、さらに5000gの遠心分離により無細胞抽出液を得た。
【0102】
得られた無細胞抽出液0.1mlに、50mM NADPHを0.1ml、50mM リン酸緩衝液を0.8mlを加え、さらに50g/lの2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを含むジメチルスルホキサイド溶液を0.004ml加え、30℃で10分間反応させた。反応終了後、1mlの酢酸エチルを添加して反応生成物を抽出した。得られた酢酸エチル層を減圧下で溶媒を留去し、0.19mgの淡黄色油状の反応生成物を得た。
【0103】
反応生成物のNMR分析の結果、H1−NMR(DMSO−d6):3.80(1H,dd,J=8.3,4.5)、3.88(1H,dd,J=8.4,3.3)、5.04(1H,m)、6.15(1H,d,J=3.3)、7.67(1H,m)、7.92(1H,m)8.17(1H,m)、8.32(1H,brs)であり、反応生成物は(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールと同定された。また、高速液体クロマトグラフィー分析の結果、反応率は約96%、光学純度はR体が99.9%e.e.以上であった。
また、ベクターpUC118で形質転換した大腸菌DH5αを同様に処理したが(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールは検出されなかった。
【0104】
実施例7 形質転換した大腸菌を用いた(R ) −2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造2
実施例6に記載の方法により調製した洗浄菌体を、0.2mM NADP+、250mMグルコース、10U/mlグルコースデヒドロゲナーゼ(シグマ社製:Cryptococcus uniguttulatus由来)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.5mlに懸濁し、20g/Lの2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを含む酢酸ブチルを0.5ml添加し、30℃、90分間反応させた。反応後、遠心分離により酢酸ブチル層を分離し、得られた酢酸ブチル層を減圧下で溶媒を留去し、エタノールに溶解し、生成物量および生成物の光学純度を測定した。その結果、反応収率は約96%、生成物の光学純度はR体が99.9%e.e.以上であった。
【0105】
実施例8 枯草菌由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
(1)枯草菌の染色体DNAの精製
枯草菌(Bacillus subtilis ATCC 6633)をLB培地で培養し、菌体を調製した。Qiagen Genomic Tip(Qiagen社製)を用い、菌体からの染色体DNAの精製を行った。
【0106】
(2)枯草菌由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
文献(J.Bacteriol.166,238−243(1986))記載の塩基配列を元に、プライマーSGD116(25mer)5’−AAT−TCA−TAA−CAA−ATG−GAG−GAG−GAT−G−3’(配列番号12)およびプライマーAGD116(22mer)5’−GCC−TAA−TAA−AGA−AAG−CGA−TCC−A−3’(配列番号13)を合成した。前記(1)により調製した染色体DNAを鋳型とし、PCRを行い特異的な増幅DNAを得た。増幅したDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサ(Gnen Rapid,アマシャムファルマシアバイオテク社製)により決定した。その結果、配列番号3に示す塩基配列を得た。なお、その推定アミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0107】
決定した塩基配列を元に、プライマーSGD117(39mer)5’−TCT−AGA−ATG−CAT−ATC−CAG−ATT−TAA−AAG−GAA−AAG−TTG−TCG−3’(配列番号14)およびAGD117(36mer)5’−GAA−TTC−GGT−ACC−TGG−GTC−GCT−TTT−TTT−GTT−TTA−TCC−3’(配列番号15)を合成し、前記(1)により調製した染色体DNAを鋳型とし、PCRを行い特異的な増幅DNAを得た。
【0108】
(3)グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子発現ベクターおよび形質転換体の作成前記(2)で得られたDNA断片の上流に、popプロモーターを連結し、pUC13に挿入して発現ベクターpAZ08を作成した。このpAZ08を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0109】
実施例9 形質転換した大腸菌を用いた(R) − 2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造3
実施例4(カルボニル不斉還元酵素生産形質転換体)および実施例8(グルコースデヒドロゲナーゼ生産形質転換体)で作成した形質転換体をそれぞれ100mlのLB培地に植菌し、37℃で16時間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、それぞれの菌体を調製した。
【0110】
上記で得られたカルボニル不斉還元酵素生産形質転換体(湿菌体15g)、およびグルコースデヒドロゲナーゼ生産形質転換体(湿菌体15g)とを、0.025mM NADP+、50g/L グルコース、を含む100mM リン酸緩衝液(pH7.5)2.5Lに懸濁し、40g/Lの2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを含む酢酸ブチルを2.5L添加し、30℃で反応させた。pH7コントロール条件化で120分間反応後、遠心分離により酢酸ブチル層を分離した。得られた酢酸ブチル層を減圧下で溶媒を留去し、エタノールに溶解し、生成物量および生成物の光学純度を測定した。その結果、反応収率は100%、生成物の光学純度はR体が99.9%e.e.以上であった。
【0111】
実施例10 (R)−2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノンより(R)−2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノールを得た。
Rf=0.35(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)。
保持時間:20.3分、
分析条件:カラム:キラルセルAS(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=9/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:40℃。
【0112】
実施例11 (R)−2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノンより(R)−2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノールを得た。
Rf=0.41(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)。
保持時間:35.7分、
分析条件:カラム:キラルセルOB(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/2−プロパノール=7/3;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:35℃。
【0113】
実施例12 (R)−2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンより(R)−2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールを得た。
Rf=0.72(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)。
保持時間:9.02分、
分析条件:カラム:キラルセルAD(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=1/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:35℃。
【0114】
実施例13 2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノンより2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノールを得た。
保持時間:30.6分、
分析条件:カラム:キラルセルAD(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=1/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:25℃。光学純度:99.5%e.e.。
【0115】
実施例14 2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノンより2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノールを得た。
保持時間:22.6分、
分析条件:カラム:キラルセルOJ(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=7/3;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:25℃。光学純度:100%e.e.。
【0116】
実施例15 2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノンより2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノールを得た。
保持時間:35.9分、
分析条件:カラム:キラルセルOJ−H(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=9/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:25℃。光学純度:100%e.e.。
【0117】
参考例1 三環性アミノアルコール誘導体の製造( WO 01/17962 の実施例6−10の方法)
【0118】
【化23】
【0119】
上記化合物(8)(76.8g)を2−プロパノール(2000ml)に溶解し、2規定水酸化ナトリウム水溶液(300ml)を20分かけて添加した。室温で30分間撹拌した後、反応液を氷冷し攪拌しながら、氷冷した水(7500ml)を1時間かけて添加した。氷冷下、30分間撹拌し、析出した結晶を濾取し、室温下減圧乾燥することにより、淡黄色結晶として化合物(9)(52.5g)を得た。
融点:p38−39℃、
Rf=0.60(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.93(1H,dd,J=5.3,2.5)、3.22(1H,dd,J=5.2,4.1)、4.15(1H,dd,J=4.1,2.6)、7.64−7.79(2H,m)、8.11−8.21(2H,m)
HPLC:保持時間(6.9分)(カラム:COSMOSIL ODS−5(ジーエルサイエンス社製;4.6mm ID×150mm)、溶媒:50mMリン酸二水素カリウム水溶液/アセトニトリル=6/4、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:16.1分)(カラム:CHIRALPAK AD(ダイセル社製;4.6mm ID ×250mm)、溶媒:n−ヘキサン/エタノール=85/15、流速:0.5ml/min、検出波長 254nm、35℃)
尚、S体の保持時間は13.8分であった。
【0120】
【化24】
次いで、化合物(9)(3.2g)と化合物(10)(12.3g)、及び2−ブタノール(96ml)の混合物を内温95℃で8時間加熱撹拌した。冷却後、減圧下溶媒を留去して得られる残留物に酢酸エチル(320ml)、0.5規定塩化水素/2−プロパノール溶液(77.5ml)を加え、0℃で1時間撹拌した。不溶物を濾取した後、濾液に飽和食塩水(320ml)を加え、分液して有機層を得た。さらに、この有機層を飽和重曹水(320ml)で洗浄後、乾燥し減圧下で溶媒を留去することにより、化合物(11)(8.35g)を淡黄色アモルファスとして得た。
Rf=0.69(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.79(2H,t,J=6.4)、2.95(2H,t,J=5.6)、3.71(1H,d,J=13.9)、3.84(1H,d,J=13.8)、4.01−4.08(2H,m)、4.86(2H,brs)、5.47(1H,d,J=4.0)、6.70(1H,dd,J=8.5,2.2)、6.89(1H,d,J=2.1)、7.06−7.59(5H,m)、7.77−8.17(4H,m)、11.06(1H,s)
HPLC:保持時間(7.8分)(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社製;6.0mm ID×150mm)、溶媒:5mMリン酸二水素カリウム水溶液/メタノール=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:71.3分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は65.0分であった。
【0121】
【化25】
【0122】
次に化合物(11)(8.35g)のメタノール(125ml)溶液に酸化白金(39mg、アルドリッチ社製)を加え、常圧の水素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。触媒を濾過し、濾液を減圧下、溶媒留去し化合物(12)(7.74g)を淡黄色アモルファスとして取得した。
Rf=0.36(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.69(2H,d,J=6.1)、2.97(2H,brs)、3.83(2H,brs)、4.05−4.08(2H,m)、4.57(2H,brs)、4.81(1H,d,J=3.1)、4.94(2H,brs)、6.40−6.47(1H,m)、6.57(1H,brs)、6.73(1H,dd,J=8.6,2.1)、6.89−6.96(2H,m)、7.06−7.43(4H,m)、7.92−7.99(2H,m)、11.06(1H,s)
HPLC:保持時間(3.4分)(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社製;6.0mm ID×150mm)、溶媒:5mMリン酸二水素カリウム水溶液/メタノール=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:10.4分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は12.5分であった。
【0123】
【化26】
【0124】
得られた化合物(12)(7.74g)のテトラヒドロフラン(78ml)溶液にピリジン(11ml、和光純薬社製)を加え、0℃に冷却した。次いでメタンスルホニルクロライド(1.59ml、東京化成社製)を15分かけて添加し、0℃で4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(200ml)と1規定塩酸(200ml)を加え、分液し、有機層を得た。有機層を水(200ml)で2回、飽和重曹水(200ml)、飽和食塩水(200ml)で順次洗浄し、乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物(13)(9.0g)を微橙色アモルファスとして得た。
Rf=0.40(メチルエチルケトン:トルエン=1:2)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.75(2H,d,J=6.1)、2.91(3H,s)、2.95−3.01(2H,m)、3.80(2H,brs)、4.02−4.09(2H,m)、4.66−4.69(2H,m)、5.47(1H,brs)、6.73(1H,dd,J=8.4,1.9)、6.92(1H,d,J=2.0)、7.02−7.45(7H,m)、7.93−8.00(2H,m)、11.06(1H,s)
HPLC:保持時間(3.1分)(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社製;6.0mm ID×150mm)、溶媒:5mMリン酸二水素カリウム水溶液/メタノール=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:21.7分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は27.7分であった。
【0125】
【化27】
【0126】
次いで、得られた化合物(13)(2.0g)のエタノール(100ml)溶液に10%パラジウム−炭素(100mg、メルク社製)を加え、常圧の水素雰囲気下、内温約70℃で4時間撹拌した。冷却後、テトラヒドロフラン(40ml)を加え、室温で30分間撹拌後濾過し、残渣をテトラヒドロフラン(8ml)で洗浄した後、濾液と洗液を合わせて減圧下溶媒留去し、淡黄色固形物として化合物(14)(1.2g)を取得した。
HPLC:保持時間(6.6分)(カラム:YMC−Pack Pro C18(ワイエムシー社製;4.6mm ID×150mm)、溶媒:20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.9)/アセトニトリル=70/30、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:24.6分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は22.1分であった。
【0127】
実施例16−25 三環性アミノアルコール誘導体の製造
参考例1の方法と同様の方法に準じて、本発明の方法を用いて製造された表3に記載の化合物1と化合物2とを反応せしめ、各工程を経て、表3に記載の生成物を製造した。なお、表3には、生成物として、式(P)におけるRがNHSO2CH3である化合物のみを記載したが、式(P)のRがニトロ基、およびアミノ基もそれぞれ作成した。これらの物質は、それぞれ物性を確認し、正しく製造されていることが確認された。
【0128】
【表3】
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば実施例に示すとおり、光学活性2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノールを、通常99.9%e.e.以上の光学純度で効率よく製造することができる。
【0130】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカルボニル不斉還元酵素の至適pHを示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性アルコールの製造に有用なカルボニル還元酵素、およびそれをコードする遺伝子、さらに該酵素を利用した光学活性アルコール体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性アルコール体は、各種の化合物の原料として利用され得る。例えば、後述の通り、一般式(P)
【0003】
【化9】
[式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または水酸基を示し、Rは、NHSO2R3、ニトロ基、またはアミノ基を示し、R3は、低級アルキル基またはベンジル基を示す。*1は不斉炭素原子を示す。Aは、下記置換基
【0004】
【化10】
(式中、XはNH,OまたはSのいずれかを示し、R5は、水素原子、水酸基、アミノ基またはアセチルアミノ基を示す。*2はR5が水素原子でないときに不斉炭素原子を示す。)
のいずれかを示す。]
で表される三環性アミノアルコール誘導体またはその塩の中間体となることが知られている。上述の一般式(P)の化合物は、特開平9−249623号公報等に、詳細な製造法が開示され(例えば特許文献1及び2参照)、また、その化合物が、糖尿病、肥満、高脂血症等の治療および予防に極めて有用である旨が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの先行技術において開示されている光学活性アルコールの製造方法は、キラル補助剤の存在下ボランを還元剤とするカルボニル基の還元反応が必要とされ、このキラル補助剤が、非常に高価で、調製が煩雑であり、しかも発火性がある等の問題点があり、工業的に実施することが困難なものであった。
【特許文献1】
国際公開第97/25311号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第99/01431号パンフレット
【特許文献3】
特開平10−94399号公報
【特許文献4】
特開平11−215995号公報
【特許文献5】
特許第3067817号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー ケミカル コミュニケーションズ(Journal of Chemical Society Chemical Communications)」
(英国) 1975年 p.400
【非特許文献2】
「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」 (米国) 1980年 p.3352−p.3355
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
中間体として有用な光学活性アルコール体の製造法において、安全性があり、かつ生成物の光学純度や収率の高い工業的に実施可能な好ましい製造法が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、不斉還元反応を酵素により行うべく鋭意研究を行った結果、一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に効率よく不斉還元する新規な酵素を微生物より見出した。さらに、該酵素をコードする遺伝子を遺伝子組換え手法により取得し、その遺伝子の塩基配列を決定し、該酵素をコードする遺伝子が、発現制御が容易で、該酵素の高生産形質転換体の育種に使用できることを見出した。さらに研究を進めた結果、該酵素を用いた一般式(1)の化合物の好ましい合成方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明としては、以下の発明が例示される。
【0008】
[1]下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)下記の反応を触媒する(以下、「(2)→(1)反応式」と略することがある)。
【0009】
【化11】
[式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、保護化された水酸基を示し、Bは、塩素原子または臭素原子を示す。*1は不斉炭素原子を示す。]
【0010】
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
(d)至適pH:最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度である。
【0011】
[2]下記の(A)または(B)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつ少なくとも下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0012】
[3]下記の(C)または(D)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(C)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNA。
(D)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであって、下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0013】
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のDNAがベクターに連結されていることを特徴とする組換えベクター。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載のDNAが宿主細胞に導入され、形質転換せしめられたことを特徴とする形質転換体。
[6]下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
(d)至適pH:最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度である。
【0014】
[7]下記の(A)または(B)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつ少なくとも下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0015】
[8]下記の(C)または(D)のいずれかのDNAがコードするカルボニル不斉還元酵素。
(C)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNA。
(D)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであって、下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
【0016】
[9][6]〜[8]のいずれかに記載のカルボニル不斉還元酵素を生産する能力を有するロドトルラ属に属する微生物、または[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体のいずれかを、培地で培養し、その培養物から該カルボニル還元酵素を採取することを特徴とする該酵素の製造法。
[10]一般式(2)
【0017】
【化12】
[式中、R10およびBは、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表された化合物を、[6]〜[8]のいずれかに記載のカルボニル不斉還元酵素、またはその酵素含有物、または該酵素を含有する微生物菌体、または[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体のいずれかと、内因性または添加されたNADPHの存在下で接触させて不斉還元反応せしめ、一般式(1)
【0018】
【化13】
[式中、R10、Bおよび*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表された化合物を製造することを特徴とする一般式(1)の化合物の製造法。
【0019】
[11]該不斉還元反応を、[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体を用いることを特徴とする[10]に記載の製造法。
[12]該不斉還元反応に際して、一般式(2)の化合物の反応液中濃度が、1%(W/V)(10g/L)以上であることを特徴とする[10]または[11]に記載の製造法。
[13]該不斉還元反応が、6時間以内の反応時間、収率が90%以上であり、生成物の光学純度が95%以上であることを特徴とする[10]〜[12]のいずれかに記載の製造法。
[14]NADP+からNADPHを生成する能力を有する酵素とその基質およびNADP+を少なくとも含むNADPH再生系を共存させることを特徴とする[10]〜[13]のいずれかに記載の製造法。
[15]NADP再生系がグルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼを含むものである、[14]に記載の製造法。
【0020】
[16]該不斉還元反応が、水性媒体と、一般式(2)の化合物を溶解可能な有機溶媒とを合わせて用いることを特徴とする[10]〜[15]のいずれかに記載の製造法。
[17]有機溶媒が、酢酸ブチルまたはメチルイソブチルケトンであることを特徴とする[16]に記載の製造法。
[18]該不斉還元反応時に、pHをpH3〜8.5に制御することを特徴とする[10]〜[17]のいずれかに記載の製造法。
[19]該不斉還元反応時に、一般式(1)の化合物を吸着可能な合成吸着樹脂を、基質の重量に対して1〜50倍の重量で添加することを特徴とする[10]〜[18]のいずれかに記載の製造法。
【0021】
【発明の実施の形態】
従来、カルボニル不斉還元酵素として、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノンを不斉還元する酵素として、コリネバクテリウム シュードジフテリカム亜種ST−10株由来の酵素(例えば特許文献3参照)、キャンディダ属由来のS1酵素およびS4酵素(例えば特許文献4参照)などが知られている。しかしながら、前者の酵素は添加する基質濃度が0.1%(W/V)以下と低い点および至適pHの範囲が狭い点、後者の酵素は反応率が80%に満たない点および至適pHの範囲が狭い点において工業的に用いるには満足できるものではない。いずれにしても、これらの酵素が、一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に不斉還元するとの報告はない。
【0022】
また、光学活性アルコールの製造法として、キャンデイダ属やロドトルラ属等の微生物を用いて2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールから対応する光学活性ハロヒドリンを得る方法(例えば特許文献5参照)、また2−クロロアセトフェノンから(R)−2−クロロ−1−フェニルアルコールを得る方法としてパン酵母を用いる方法(例えば非特許文献1参照)やクリプトコッカス マセランス(Cryptococcus macerans)を用いる方法(例えば非特許文献2参照)などが知られている。しかしながらこれらの方法は、一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に不斉還元する反応ではなく、また微生物の還元活性が弱く反応に24時間以上を要する点や、微生物が還元反応の逆反応を触媒するアルコール脱水素活性を有する点や、反応生成物の光学純度90%e.e.以下であるか、反応率が90%に満たない点で満足できるものではない。また、微生物菌体、その処理物、もしくは粗酵素または精製酵素を用い上述の一般式(2)の化合物を不斉還元し、一般式(1)の化合物を得る製造方法は報告例がない。
【0023】
本発明は、先に示した[6]−[8]に記載されたカルボニル不斉還元酵素を提供する。
先ず発明[6]に基づいて本発明のカルボニル不斉還元酵素を説明すると、本発明のカルボニル不斉還元酵素は、前述の「(2)→(1)反応式」の反応を触媒する。
【0024】
R10は、水素原子、ハロゲン原子、または保護化された水酸基が示され、特に水素原子が好ましい例として挙げられる。また、水酸基を保護する保護基としては、ベンジル基、またはメチル基が好ましい。なお、「(2)→(1)反応式」の反応を触媒するとの確認においては、保護基が、ベンジル基、またはメチル基である場合を想定することが好ましく、さらにベンジル基が特に好ましい例として挙げられる。また発明[10]等の製造においては、場合によっては、R10として水酸基であることもあり得る。Bは、塩素原子または臭素原子を示すが、塩素原子が好ましい例として挙げられる。*1は不斉炭素原子を示す。光学活性体として(R)体が好ましい例として挙げられる。
【0025】
本発明のカルボニル還元酵素の還元活性を測定するに際しては、例えば、補酵素NADPH(10mM)および本発明のカルボニル還元酵素の溶液(0.05ml)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)の反応液(0.49ml)を30℃で5分間予備加熱後、該反応液に、基質2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン(250mM)をジメチルスルホキサイド中に溶解させた溶解液0.01mlを添加し、30℃で10分間還元反応させ、波長340nmの吸光度の減少量、すなわち、NADPHの減少量を測定することにより、本発明のカルボニル還元酵素の還元活性を測定することができる。不斉還元活性の1Uは、上記の条件において、1分間に1μmolのNADPHの減少を触媒する酵素量と定義することができる。また、本発明のカルボニル還元酵素による還元が不斉還元であること、およびその光学純度を確認する場合には、反応生成物を光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより測定し、公知の光学活性のアルコール体の標品と比較して決定することができる。
【0026】
本発明のカルボニル還元酵素の基質特異性としては、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しないことが挙げられる。
【0027】
本発明のカルボニル不斉還元酵素の基質特異性は、上述の測定条件において、基質を各種変更してそれぞれの基質に対し不斉還元活性を有するか否かを測定することにより判断することができる。本発明のカルボニル不斉還元酵素の基質特異性としては、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンに対して不斉還元活性を示し、アセトフェノンに対しても不斉還元活性を示すが、例えば、次に示す化合物に対しても高い不斉還元活性を示すことが好ましい。ここで「高い不斉還元活性」としては、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンに対する相対活性が50%以上であることが好ましい例として挙げられる。本発明のカルボニル不斉還元酵素は、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノンに対して高い不斉還元活性を示すことがさらに好ましく(例えば、相対活性90%以上であることが好ましい)、2−ブロモ−1−(4−ニトロフェニル)エタノンや2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンに対して高い不斉還元活性を示すことがさらに好ましい。2−ブロモ−1−(4−ニトロフェニル)エタノンにおいては、例えば相対活性80%以上であることが好ましく、2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンにおいては、例えば相対活性70%以上であることが好ましい例として挙げられる。またさらに、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−クロロフェニル)エタノンに対して高い不斉還元活性を示すことが好ましく、例えば相対活性55%以上であることが好ましい例として挙げられる。また、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノンに対して不斉還元活性を示すことが好ましく、例えば相対活性45%以上であることが好ましい例として挙げられる。さらに、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−ベンジルオキシフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(2−ニトロフェニル)エタノンに対しても不斉還元活性を示すことがさらに好ましく、例えば相対活性40%以上であることが好ましい例として挙げられる。
【0028】
また、本発明のカルボニル不斉還元酵素は、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を示さない。アルコール脱水素活性は、前述(a)の「(2)→(1)反応」の逆反応である。例えば、NADP+存在下において本発明の酵素に、上記のアルコール体を接触させ、340nmの吸光度の単位時間当たりの変化量(増加量)を指標として、NADPHの変化量(増加量)を測定してアルコール脱水素活性を測定し、実質的に活性を有しないことを確認すればよい。尚、本明細書において、「実質的にアルコール脱水素活性を有しない(示さない)」とは、アルコール脱水素活性を有しないか、わずかな活性しか認められず、「(2)→(1)の反応式」の活性に対して無視できる程度であることと理解することができる。例えば、「実質的にアルコール脱水素活性を有しない」と判断するに際しては、反応終点において、アルコール体の添加量の5%以下の変換しか行わないことが好ましく、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下の変換である例が挙げられる。
【0029】
本発明のカルボニル不斉還元酵素の補酵素の利用性は、補酵素としてNADPHを利用できるが、NADHは実質的に利用できない。例えば、補酵素NADHまたはNADPH(10mM)の存在下にて、本発明の酵素(0.1U)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)からなる反応液(0.49ml)を、30℃で5分間予備加熱後、ジメチルスルホキサイドに溶解した基質2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン250mMを0.01ml添加し、30℃で10分間反応させ、波長340nmの吸光度の減少量によりNADHまたはNADPHの減少を測定することにより、NADH、NADPHそれぞれの補酵素に対する、本発明のカルボニル不斉還元酵素の利用性が確認できる。また、本発明の酵素においては、NADHを実質的に利用できないが、「実質的に利用できない」とは、例えば、NADPH存在下における酵素活性(例えば上記の減少量等)の測定値を100とした場合のNADH存在下の測定値の相対活性(相対比率)が、5%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である場合が挙げられる。
【0030】
本発明のカルボニル不斉還元酵素の至適pHは、最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では、約90%以上、好ましくは約95%以上が例示され、pH3.0およびpH8.0では、約70%以上、好ましくは約80%程度である。
【0031】
例えば、補酵素NADPH(10mM)および本発明の酵素(0.1U)を含むpH3.0〜9.0の各pHの50mMリン酸緩衝液からなる反応液(0.49ml)を、30℃で5分間予備加熱後、基質2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン250mMを含むジメチルスルホキサイド溶解液0.01mlを添加し、30℃で10分間反応させ、波長340nmの吸光度の減少量によりNADPHの減少量を測定することにより、本発明の酵素の至適pHが確認できる。最高活性とは、上述の測定により各pHにおける測定値の最大の値を最高活性とする。本願実施例の酵素の最高活性を示すpHとしては、通常pH5−6付近が該当すると思われる。
【0032】
また、本発明として発明[7]が例示される。すなわち、本発明のカルボニル不斉還元酵素のアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号2の1−251位のアミノ酸配列が好ましい例として挙げられる。また、本発明のカルボニル不斉還元酵素のアミノ酸配列としては、前述の(a)、(b)、(c)の理化学的性質を有する限り、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有していてもよい。配列番号2に示すアミノ酸配列のうち、1〜30個のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているアミノ酸配列も好ましい例として挙げられ、より好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個である。なお、このような置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素は、公知の部位特異的変異導入法、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載の方法により、配列番号1の塩基配列の対応する部位に置換、欠失、または挿入を導入せしめたDNAを用い、後述の通り、宿主に導入し発現させることにより得ることができる。
また、本発明として発明[8]が例示されるが、これは本発明のDNAの説明において詳細に説明する。
【0033】
上記のような理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素は、例えば、ロドトルラ属に属する微生物の培養物から精製することができる。特に財団法人発酵研究所において入手可能であるロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(Rhodotolula mucilaginosa IFO 0907)が本発明のカルボニル不斉還元酵素の生産菌として優れている。IFO 0907はまた、国際寄託機関であるCentraalbureau voor Schimmelcultures (CBS)のカタログにもCBS 2382として収載されており、入手が可能である。また、新たに独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2002年9月13日付けで寄託されたロドトルラ ムシラギノウザ IFO0907(FERM BP−8181)を利用することも好ましい。あるいはまた、上記菌株の人工または突然変異体を調製することもできる。後述に示すとおり、これらの微生物を培養し、適宜精製手段を組み合わせることにより、精製された本発明のカルボニル不斉還元酵素が取得できる。
【0034】
本発明の酵素に関する配列情報を取得するためには、本件発明の酵素を精製後、ペプチダーゼ処理、例えばトリプシンを含むトリス塩酸緩衝液(pH8)で35℃、20時間処理することにより断片化し、逆相クロマトグラフィーによりペプチド断片を単離し、タンパク質シークエンサーによりアミノ酸配列の一部を決定することができる。
【0035】
さらに本発明は、発明[1]−[3]に示されるとおり、上述のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAである。具体的には、配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNAが例示される。本発明のDNAは配列番号1の塩基配列の80−832位の配列に限定されるものではなく、この塩基配列を含むDNAであればよい。また前記配列番号1の塩基配列の80−832位と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであっても、前述の(a)、(b)、(c)の理化学的性質を有する限り、本発明に包含される。すなわち、これらのDNAを用いて本発明のカルボニル不斉還元酵素を発現することができる。ストリンジェントな条件下としては、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて、マニュアル記載の条件(wash:42℃、0.5xSSCを含むprimary wash buffer)が例示される。ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAとしては、例えば、前述のストリンジェントな条件下、配列番号1の塩基配列の80−832位の配列における相補的な塩基配列の任意の、通常は少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個、特に好ましくは少なくとも100個の連続した塩基配列を検出試料として、これにハイブリダイズするDNAが例示される。
【0036】
本発明のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAは、以下の方法によって得ることができる。本明細書において、特に記載がない限り当該分野で公知である遺伝子組換え技術、酵母および大腸菌での組み換えタンパク質の生産技術、分析法が採用される。
【0037】
本発明のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAは、本願明細書において開示される塩基配列、またはアミノ酸配列、場合によれば、前記した精製酵素から決定したアミノ酸配列等の配列情報にしたがって、本発明のカルボニル不斉還元酵素を含有する微生物、例えばロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(Rhodotolula mucilaginosa IFO 0907)、CBS 2382またはFERM BP−8181から取得することができる。通常は、その菌体からmRNAを調製し、それを鋳型とし、合成されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、3’cDNA末端迅速増幅法および5’cDNA末端迅速増幅法(rapid amplification of cDNA enbs,RACE法)(Frohman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:8998−9002,1988)により得ることができる。また、アミノ酸配列にしたがって合成されたオリゴヌクレオチドをプローブとして用い、カルボニル不斉還元酵素生産菌の染色体DNAを制限酵素により消化したDNA断片、またはcDNAをファージやプラスミドに導入し、宿主を形質転換して得られるライブラリーから、プラークハイブリダイゼーションやコロニーハイブリダイゼーションなどにより本発明のカルボニル不斉還元酵素をコードするDNAを得ることもできる。得られたDNAは、プラスミドベクター、たとえばpUC118に挿入しクローニングし、ジデオキシ・ターミネーター法(Sanger F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74: 5463−5467, 1977)のような周知の方法により塩基配列の決定を行うことができる。
【0038】
このようにして調製された遺伝子は、その遺伝子を用いて形質転換した大腸菌宿主中の発現産物を、前記記載のカルボニル不斉還元活性測定法を用いて、カルボニル不斉還元酵素をコードするDNAであることを確認することができる。
【0039】
さらに本発明は、上記のDNAがベクターに連結されていることを特徴とする組換えベクターを提供する。
組換えベクターは、宿主微生物に適したプロモーターの下流に、上記方法で得られたDNAの5’末端側が機能し得るように連結して、適当な発現用ベクターに組み込み調製することができる。
【0040】
適切な発現ベクターとしては、宿主微生物内で複製増殖可能であれば特に制限されない。例えば、宿主として大腸菌を用いるのであれば、強力なプロモーター、たとえば、lac、trp、tac、trc、T7やピルビン酸オキシダーゼ遺伝子のプロモーター(特許公報第2579506号)などを含むpUC系、pGEX系、pET系、pT7系、pBluescript系、pKK系、pBS系、pBC系、pCAL系など通常大腸菌で使用される任意のベクターから選択できる。
【0041】
さらに本発明は、上記のDNAが宿主細胞に導入され、形質転換せしめられたことを特徴とする形質転換体を提供する。
形質転換体は、上記方法にて作成した発現ベクターを用い、適当な宿主微生物を形質転換することにより、発現させることができる。
【0042】
宿主細胞としては、微生物、哺乳類細胞、および植物細胞などが含まれる。微生物を利用することが好ましく、例えば、大腸菌、バチルス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、ストレプトコッカス属、サッカロマイセス属、ピキア属などが例示されるが、本件の「(2)→(1)反応式」を邪魔し、または逆反応を触媒し、収率および光学選択性を低下させる天然由来の酵素等を包含しない性質を有することが好ましく、大腸菌(Escherichia coli)K12またはその誘導体が特に好ましい例として挙げられる。
【0043】
宿主微生物への遺伝子の導入法としては、たとえば、形質転換、形質導入、接合伝達、またはエレクトロポレーションなどの当技術分野で周知の任意の常法によって、好ましい宿主に導入することができる。
【0044】
さらに本発明である該カルボニル不斉還元酵素の製造法としては、前述の通り、該カルボニル不斉還元酵素を生産し得る微生物、例えば、ロドトルラ属の微生物、特に好ましくは、ロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(Rhodotolula mucilaginosa IFO 0907)、CBS 2382またはFERM BP−8181の培養物から、公知の精製方法を適宜組み合わせて該酵素を取得することができるが、さらに、上述の通り、該カルボニル不斉還元酵素の遺伝子を用い形質転換された形質転換体から取得することもできる。
【0045】
該酵素を取得するに当り、まず上記微生物や形質転換体を、通常これらの微生物が資化可能な栄養源を含む培地で培養することが好ましく、例えば、酵素や抗生物質などを生産する通常の方法で培養することができる。培養は、通常、液体培養でも固体培養でもよい。たとえば、グルコース、シュクロース等の炭水化物;ソルビトール、グリセロール等のアルコール;クエン酸、酢酸等の有機酸;大豆油等の炭素源またはこれらの混合物;酵母エキス、肉エキス、硫安、アンモニア等の含窒素無機有機窒素源;リン酸塩、マグネシウム、鉄、マンガン、カリ等の無機栄養源;およびビオチン、チアミン等のビタミン類を適宜混合した培地が用いられる。培養条件は、通常、好気条件下で行うことが好ましい。培養温度は、宿主微生物が生育し得る温度であれば特に制限はないが、通常、0℃〜60℃、好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは約37℃で行うことが例示される。また、培養途中のpHは宿主微生物が生育し得るpHであれば特に制限はないが、通常、pH3〜9、好ましくはpH5〜8、さらに好ましくはpH6〜7で行うことが例示される。
【0046】
次いで、このようにして得られた培養物からカルボニル不斉還元酵素を抽出し、粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液を得ることができる。例示すれば、まず培養物を固液分離し、得られる湿菌体を、必要に応じてリン酸緩衝液やトリス塩酸緩衝液などの緩衝液に懸濁せしめ、次いで超音波処理、フレンチプレス処理やガラスビーズを用いる粉砕処理などの菌体破砕処理を適宜組み合わせて、菌体内からカルボニル不斉還元酵素を抽出し、粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液を得ることができる。この粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液を、必要により、公知のタンパク質、酵素などの単離、精製手段を用いることにより、さらに精製することができる。例えば、粗製のカルボニル不斉還元酵素含有液に、アセトン、エタノールなどの有機溶媒を加えて分別沈殿せしめるか、硫安などを加えて塩析せしめるかして、水溶液からカルボニル不斉還元酵素を含有する区分を沈殿せしめ回収する方法が例示される。またさらに、陰イオン交換、陽イオン交換、ゲル濾過、抗体やキレートを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて精製することができる。例えば、ジエチルアミノエチル−セファロースを用いた陰イオン、レッド−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて電気泳動的にほぼ単一のバンドにまで精製することができる。
【0047】
また、発明[10]に記載されているとおり、本発明の酵素を用いて、光学活性アルコールを製造することが出来る。この発明において、前述の本発明のカルボニル不斉還元酵素を用いるに際しては、本発明の酵素の作用を阻害しないかぎり、特別に精製程度等は限定されず、精製された本発明の酵素の他、その酵素含有物が用いられ、さらには、その酵素を生産する微生物やその酵素の遺伝子を導入して形質転換された形質転換体等を使用してもよい。微生物や形質転換体等を使用する場合には、菌体を利用してもよく、菌体としては、生菌体、もしくはアセトン処理または凍結乾燥等の処理を施した菌体を使用することができる。場合によっては、菌体破砕物や菌体抽出物等の酵素含有物となっていてもよい。勿論、酵素や菌体、酵素含有物等は、カラムにおいて充填されていてもよく、公知の方法により、担体に固定化されていてもよい。
【0048】
本発明の反応にはNADPHが必要とされるが、微生物、または形質転換体を使用する場合等において、内因性NADPHが十分量であれば特に問題ないが、予め十分量のNADPHを存在せしめておくか、または、NADPHを再生することができる反応系(NADPH再生系)を利用することが好ましい。
【0049】
NADPH再生系を構築するには、通常、NADP+を利用してNADPHを生成する酵素、その基質、およびNADP+を存在せしめればよい。NADPH再生系は、本発明のカルボニル不斉還元酵素の活性に見合う量を供給できる程度に適宜組み合わせることが好ましい。NADP+からNADPHを生成する酵素としては、たとえば、NADP+を要求するグルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.119)やアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)を用いることができる。具体的には、NADP+を要求するグルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.119)としては、Cryptococcus uniguttulatus由来のグルコースデヒドロゲナーゼ、Gluconobacter cerinus由来のグルコースデヒドロゲナーゼ、Bacillus subtilis由来のグルコースデヒドロゲナーゼが例示され、Cryptococcus uniguttulatus由来のグルコースデヒドロゲナーゼはシグマ社より販売されており利用し易い。また、NADP+を要求するアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)としては、Thermoanaerobium brockii由来のアルコールデヒドロゲナーゼ、Candida magnoliae由来のアルコールデヒドロゲナーゼ、Sporobolomyces salmonicolor由来のアルコールデヒドロゲナーゼが例示される。これらの酵素は、精製酵素、粗酵素であってもよく、さらに、これらの酵素を含有する微生物やまたはその処理物等であってもよい。また、NADP+からNADPHを生成する上述の酵素をコードする遺伝子を導入した形質転換体を使用することもでき、例えば、配列番号3に示すNADP+を要求するグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、微生物、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)K12またはその誘導体に導入した形質転換体は、本発明において特に有用である。さらに、NADPH再生系を構成する酵素をコードするDNAと、本発明のカルボニル不斉還元酵素のDNAとを導入し共発現せしめた形質転換体を使用することも好ましい。また、NADPH再生用の酵素の基質として、グルコースデヒドロゲナーゼの場合はグルコースを、アルコールデヒドロゲナーゼの場合はエタノールなどを用いればよく、一般式(2)の化合物に対し、モル比で等量以上適宜添加することが例示される。なお、NADPH再生系を利用するに際しても、その再生系に供するNADP+は内因性のものを利用する場合もあるが、不足するのであれば、さらに添加することが好ましい。添加、または存在せしめるNADP+もしくはNADPHの量は、通常0.02mM以下、好ましくは0.01mM以下、より好ましくは0.001mM以下が例示される。
【0050】
NADPH再生系を利用しない場合には、添加、または存在せしめるNADP+もしくはNADPHの量は、通常、基質と等モル以上添加することが好ましく、例えば、2倍モル以上、好ましくは5倍モル以上、さらに好ましくは10倍モル以上を添加する例が挙げられる。添加量の上限としては特に限定されないが、例えば、100倍モル以下、好ましくは、20倍モル以下が挙げられる。また、製造においては、コスト等の要因を重視することも多く、製造現場においては、通常1−10倍モル、好ましくは1.5−5倍モル、特に好ましくは約2倍モル程度が例示される。
【0051】
本発明の反応を行うに際して、一般式(2)の化合物を添加する場合、その化合物を固体のまま添加することもできるが、反応に影響を与えないような適当量の溶媒、たとえばジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトンまたは酢酸ブチルに溶解して添加することができる。また、場合によっては、さらに水溶性溶媒が混入されていてもよい。添加方法としては、反応の始めに一括添加することができるが、分割添加または連続添加してもよい。
【0052】
また、一般式(2)の化合物から一般式(1)の化合物を製造するに際しては、通常の酵素反応の通り、緩衝液や蒸留水等の水溶液中にて反応させることが好ましいが、該反応を阻害しない限り、その他の溶媒を利用することも可能である。特に、一般式(2)の化合物を溶解し得る有機溶媒を含有せしめた水溶性溶媒を用いることができるが、特に、水に溶解しにくい有機溶媒を水とともに共存せしめ、2相系となすことが好ましい。例えば、緩衝液や蒸留水等の水溶液に対して、メチルイソブチルケトン、または酢酸ブチルをそれぞれ用いる2相系が特に好ましい例として挙げられる。有機溶媒は、適宜の時期に添加することができるが、上述の一般式(2)の化合物とともに添加してもよく、前記したとおり、一般式(2)の化合物を添加する際に、溶解せしめるために用いられる有機溶媒として添加されることも好ましい。また任意の段階で追加することも可能である。有機溶媒と水性媒体の比率は、特に限定されないが、一般式(2)の物性により変化せしめることも好ましく、例えば、通常は1:10〜10:1が例示され、好ましくは1:4〜4:1、または1:2〜2:1、場合により約1:1付近が例示される。
【0053】
また本発明の反応には、より高い光学純度の一般式(1)の化合物を得るために、反応液中に合成吸着樹脂を添加することもできる。合成吸着樹脂の材質は、一般式(1)の化合物を吸着し、反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、中間極性のアクリル系のものが好ましく、例えば、アンバーライトXAD−7HP(Rohm and Hass社)、ダイアイオンHP−2MG(三菱化学工業株式会社)等を用いることができる。合成吸着樹脂は、基質の重量に対して、通常、1倍の重量以上、好ましくは2倍の重量以上、より好ましくは5倍の重量以上の添加が例示される。また、上限として特に限定されないが、基質の重量に対して、通常、50倍の重量以下、好ましくは20倍の重量以下、より好ましくは10倍の重量以下を添加することができる。
【0054】
本発明の一般式(1)の製造方法においては、一般式(2)の化合物を10g/L(1%w/v)以上、好ましくは20g/L(2%w/v)以上、より好ましくは50g/L(5%w/v)以上添加することができる。反応中のpHは、通常pH3〜8.5、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に制御されることが好ましく、温度は10〜60℃、好ましくは20〜40℃、より好ましくは約30℃が選択される。また反応は、攪拌条件下で行うことができる。反応時間は酵素の使用量で調節することができるが、6時間以内、好ましくは4時間以内、最も好ましくは2時間以内で行うことができる。また、反応収率は90%以上、好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上が例示される。また本発明の酵素の性質に関連するものとして、本発明の酵素により調製される一般式(1)の化合物の光学純度としては、通常95%以上が期待でき、好ましくは98%以上が期待でき、最も好ましくは99%以上の光学純度の高い一般式(1)の化合物が製造され得る。
【0055】
かくして得られた反応液から一般式(1)の化合物を取得するためには、反応液が1相の場合は酢酸エチルや酢酸ブチル等の溶剤で抽出して水洗後濃縮乾固することにより、また、2相系で反応を行う場合は有機溶媒層を分離し、水洗後濃縮乾固することにより、一般式(1)の化合物を取得できる。合成吸着樹脂を添加して反応させた場合は、反応終了後、ろ過により樹脂を回収し、該樹脂から、アセトン等の適当な溶剤で溶出後、濃縮乾固することにより一般式(1)の化合物を取得できる。本発明においては、光学純度や収率が高いので、さらなる目的物の原料として、そのまま使用されることができ、最終的な目的物の段階、あるいはその以前の適宜の段階において、精製することができる。また、一般式(1)の化合物を精製するのであれば、各種のクロマトグラフィーや光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等の公知の精製方法により、一般式(1)の化合物を精製することもできる。
さらに本発明は、前記の方法にて、一般式(2)の化合物を還元して生成せしめた一般式(1)の化合物を、アルカリ条件下で、一般式(6)
【0056】
【化14】
[式中、R10および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表されるエポキシ体となし、次いで該エポキシ体と一般式(7)
【0057】
【化15】
[式中、R2は、アミノ基の保護基を示し、A’は、下記置換基
【0058】
【化16】
(式中、Xは、NH、OまたはSを示し、R51は、水素原子、保護基で保護された水酸基、保護基で保護されたアミノ基またはアセチルアミノ基を示す。*2はR51が水素原子でないときに不斉炭素原子を示す。)
のいずれかを示す。]
で表される化合物とを反応させることにより一般式(5)
【0059】
【化17】
[式中、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]で表されるアミノアルコールを生成せしめて、必要に応じてさらにニトロ基を還元して、一般式(4)
【0060】
【化18】
[式中、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]で表されるアニリン誘導体を生成せしめて、該アニリン誘導体とスルホン化剤とを反応させて、一般式(3)
【0061】
【化19】
[式中、 R3は、低級アルキル基またはベンジル基を示し、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。]
で表されるアミノアルコールを生成せしめて、調製せしめた一般式(5)、一般式(4)、および一般式(3)からなる一般式(P’)
【0062】
【化20】
[式中、R10、R2、A’および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を示し、Rは、NHSO2R3、ニトロ基、またはアミノ基を示し、R3は、低級アルキル基またはベンジル基を示す。但し、A’におけるX、R51、*2は、前記とそれぞれ同じ意味を示す。]
で表される物質を、さらに一括または段階的に保護基を脱保護することにより、一般式(P)
【0063】
【化21】
[式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または水酸基を示し、Rは、NHSO2R3、ニトロ基、またはアミノ基を示す。R3および*1は、前記とそれぞれ同じ意味を有する。Aは下記置換基
【0064】
【化22】
(式中、XはNH,OまたはSのいずれかを示し、R5は、水素原子、水酸基、アミノ基またはアセチルアミノ基を示す。*2はR5が水素原子でないときに不斉炭素原子を示す。)
のいずれかを示す。]
で表される化合物を生成せしめることを特徴とする、一般式(P)で表される化合物の製造方法に利用することができる。
【0065】
一般式(2)の化合物を具体的に例示すると、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−クロロ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ブロモ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノン、2−ヨード−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノン等が挙げられる。
【0066】
一般式(1)の化合物を具体的に例示すると、(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−クロロ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−クロロ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ブロモ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−ヨード−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール等が挙げられる。
【0067】
具体的に一般式(5)の化合物を脱保護化した化合物を例示すると、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(4−ブロモ−3−ニトロフェニル)エタノール、およびその塩等が挙げられる。
【0068】
さらに、具体的に一般式(4)を脱保護化した化合物を例示すると、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノ−4−クロロフェニル)エタノール、(R)−2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−(3−アミノ−4−ブロモフェニル)エタノール、およびその塩等が挙げられる。
【0069】
さらに、具体的に一般式(3)を脱保護化した化合物を例示すると、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(4−ヒドロキシ−3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(4−クロロ−3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、2−[N−[2−(9H−カルバゾール−2−イルオキシ)エチル]]アミノ−1−[(4−ブロモ−3−メチルスルホニルアミノ)フェニル]エタノール、およびその塩等が例示され、特に好ましい例として該化合物のR体が例示される。
【0070】
上記の合成経路においては、特開平9−249623号公報(WO97/25311公報)およびWO99/01431公報、さらにWO2001/17962公報を参考にすることができる。すなわち、一般式(6)の化合物と一般式(7)の化合物とのカップリング反応は、一般式(6)の化合物のR10が水素原子またはハロゲン原子である場合により好ましい。
【0071】
一般式(P)の製造において、R10およびR1としては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基(R10においては、保護化された水酸基である)が挙げられ、特に水素原子またはハロゲン原子が好ましい例として挙げられる。このハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、特に塩素原子、臭素原子が好ましい例として挙げられる。また、Rとしては、特にNHSO2R3が好ましい例として挙げられる。R3としては、後述の低級アルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、ベンジル基も好ましい例として例示される。
【0072】
低級アルキル基の「低級」とは、炭素数1〜6の炭素を含む直鎖状もしくは分枝状の飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基および、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキルが好ましい例として挙げられ、特に好ましくはメチルが例示される。
【0073】
R2は、アミノ基の保護基であるが、このアミノ基の保護基としては、例えば、アシル基、あるいは容易に脱保護可能なアラルキル基等が例示される。容易に脱保護可能なアラルキル基としては、例えば、炭素数7から16の炭素を含むアラルキル基が用いられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基等、および(1−ナフチル)メチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基等が挙げられ、フェニル基およびナフチル基上に、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の適当な置換基を適当な位置に有していても良い。特に好ましくはベンジル基が例示される。
Bとしては、特に塩素原子であることが好ましい。
【0074】
R5としては水素原子が好ましい例として挙げられる。また、水酸基であることも好ましい。 R51としては水素原子が好ましい例として挙げられる。またR51としては、保護基で保護された水酸基であることが好ましい。
【0075】
上記の一般式(3)、(4)、(5)、(6)、(P)、(P’)および(1)の各化合物において、*1は不斉炭素原子を示し、2つの光学異性体が存在する。薬理活性の発現という点からは、例えば不斉炭素の好ましい配置は絶対配置Rが例示される。
【0076】
*2は不斉炭素原子を示し、2つの光学異性体が存在する。従って、これらの化合物は、光学的に純粋な異性体のみならず、任意の2つの異性体混合物も本製造方法の範囲内に包含される。
【0077】
R10における水酸基の保護基としては、通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば通常容易にかつ選択的に脱保護できる保護基として、アラルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシアルキル基、アシル基等が好ましく、さらに好ましい例としてメチル基およびベンジル基が例示される。これらの水酸基の保護基の導入、脱保護に際しては、成書(例えば、グリーン(T.W.Greene)、ウッツ(P.G.M.Wuts)ら、プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley−Interscience Publication))に記載されている公知の方法が用いられるが、例えばベンジル基の導入においては、酸捕足剤の存在下、フェノールに塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、またはスルホン酸ベンジル等のベンジル化剤を作用させる例が例示される。
【0078】
水酸基の保護基の除去は、例えば、ベンジル基の場合にはラネーニッケル、パラジウム−炭素または水酸化パラジウム−炭素等の触媒を用い、水素化分解することにより行うことができる。また、アセチル基の除去は、例えば、酢酸エステルに炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を作用させ、加水分解することにより行うことができる。さらに、アミノ基の保護基の脱保護に際しては、成書(例えば、グリーン(T.W.Greene)、ウッツ(P.G.M.Wuts)ら、プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley−Interscience Publication))に記載されている公知の方法が用いられるが、例えば、ベンジル基の場合にはラネーニッケル、パラジウム−炭素または水酸化パラジウム−炭素等の触媒を用い、水素化分解することにより除去することができる。その他に、文献(コリーダ(M.Koreeda)ら、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J.Org.Chem.)49巻、2081頁、1984年およびグーベルト(S.Gubert)ら、シンセシス(Synthesis)4巻、318頁、1991年)に記載されている方法に従い脱保護することもできる。
【0079】
水酸基およびアミノ基の保護基の除去は、段階的に行なっても、一括して行なってもよいが、例えば、R10がベンジルオキシ基であり、R2がベンジル基である組み合わせにおいては、同一条件により脱保護が可能であって、一括して脱保護することが好ましい。また、R10がベンジルオキシ基であり、R2がアセチル基である組み合わせにおいては、例えば、R2のアセチル基を脱保護した後、R10のベンジル基を脱保護する段階的な脱保護の例が挙げられる。但し、その順序はこれらに限定されるものでなく、化合物の物性等により適宜選択して行なうことが好ましい。各々の保護基を脱保護する際の条件は前述の通りである。またこれらは、特開平9−249623号公報に記載の方法を参考にすることができる。
【0080】
一般式(3)、(4)、(5)、(P’)および(P)の化合物の塩には、公知の塩が挙げられ、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸二水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩や、あるいは樟脳スルホン酸、マンデル酸、置換マンデル酸のような光学的に活性な酸との付加塩が含まれるが、医薬的に許容される塩が特に好ましい。一般式(3)、(4)、(5)、(P’)および(P)の化合物からその塩となす場合には、メタノール、エタノールなどのアルコール類に溶解し、当量もしくは数倍量の酸成分を加えることにより、それらの酸付加塩を得ることができる。用いれられる酸成分としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硫酸水素、リン酸二水素、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、メタンスルホン酸などの医薬的に許容される鉱酸または有機酸を挙げることができる。
【0081】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンおよび反応生成物の定量は、高速液体クロマトグラフィーにより行った。分析例は、分析カラム COSMOSIL ODS−5(ジーエルサイエンス社製、4.6mmIDX150mm)、溶離液 50mMリン酸二水素カリウム水溶液:アセトニトリル=6:4、流速1.0ml/min、検出波長254nm、温度40℃とした。この分析条件において、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンおよび2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの保持時間はそれぞれ8.7分、5.4分であった。
【0082】
2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノ−ルの光学純度は、光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより分析できる。たとえば、分析カラムに、CHIRALPAK AS(ダイセル社製、4.6mmIDX250mm)を用い、n−ヘキサン:エタノール=85:15の溶離液、流速0.5ml/min、検出波長254nm、温度15℃の分析条件下で、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノ−ルは、R体が17.5分、S体が18.5分の保持時間で分離する。
【0083】
反応生成物の同定は核磁気共鳴スペクトル(NMR)で行った。AC−200P(FT−NMR、BRUKER社)を用い、化学シフトはテトラメチルシラン(TMS)を内部標準としδ(ppm)で、また結合定数はJ(Hz)で示した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Precoated silica gel 60 F254(MERCK社製)を使用した。各実施例中に記載した溶媒で展開後、UV(254nm)照射、ニンヒドリンによる呈色により確認した。TLCのRf値の測定に際しては、遊離アミンを用いた。有機溶媒の乾燥には、無水硫酸マグネシウム或いは無水硫酸ナトリウムを使用した。
【0084】
実施例1 カルボニル不斉還元酵素の精製
YM培地(グルコース20g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L、ペプトン5g/L、pH6)2Lに、ロドトルラ ムシラギノウザ IFO 0907(FERM BP−8181)を植菌し、30℃で24時間培養した。培養終了後、遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、100mlの同緩衝液に懸濁した。菌体を冷却下でフレンチプレス(大岳製作所)により破砕し、さらに5000gの遠心分離により無細胞抽出液を得た。
【0085】
該無細胞抽出液を、硫安分画し、硫安濃度40%以上60%以下で塩析されたタンパク質の画分を取得し、これを、STD緩衝液(10mM Tris−HCl(pH8.5),0.1mM EDTA,0.1mM DTT)に溶解し、透析膜(三光純薬株式会社製)にて脱塩後、STD緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE−Sepharose;アマシャムファルマシアバイオテク社)に吸着せしめ、塩化カリウム濃度を0.0Mから0.3Mへ直線的に増加させた前記緩衝液により溶出し、溶出液をフラクショネーションした。カルボニル不斉還元活性を有する画分を脱塩、限外ろ過により濃縮後、STD緩衝液で平衡化したアフィニティークロマトグラフィー(Red−Sepharose CL−6B;アマシャムファルマシアバイオテク社)に吸着せしめ、NADP濃度を0.0mMから2.0mMへ直線的に増加させた緩衝液により溶出し、溶出液をフラクショネーションした。カルボニル不斉還元活性を有する画分を回収することにより精製された本発明のカルボニル不斉還元酵素を得た(400U)。
精製されたカルボニル不斉還元酵素は、SDS−PAGE後クマシーブレリエントブルーによりタンパク質染色を行い、単一バンドであることを確認した。
【0086】
実施例2 精製されたカルボニル不斉還元酵素の酵素化学的性質
実施例1で精製した不斉還元酵素は以下のような理化学的性質を有していた。尚、不斉還元活性の測定は、基本的には、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に補酵素NADPH10mMおよび酵素液0.05mlを含む0.49mlの反応液に、30℃で5分間予備加熱後、ジメチルスルホキサイドに溶解した適宜の基質(例えば、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン等)250mMを、0.01ml添加し、30℃で10分間反応させ、NADPHの減少を波長340nmの吸光度の減少として測定した。
▲1▼作用:NADPHを補酵素とし、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを不斉還元し、光学純度99.9%e.e.以上の(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールを生成した。
▲2▼基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンと同様に各種カルボニル化合物を基質として反応を行った結果、表1に示す基質特異性を示した。
【0087】
【表1】
【0088】
▲3▼至適pH:pH3.0〜8.5の範囲で、上記方法によりアセトフェノンを基質とした場合の酵素活性を測定した。その結果、図1に示すように最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度であった。
▲4▼分子量:酵素の分子量測定はSDS−PAGEにより行った。その結果、本酵素の分子量は約29000であった。
▲5▼比活性:約200U/mgp
不斉還元活性の1Uは、2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを基質としたときの、1分間に1μmolのNADPHの減少を触媒する酵素量と定義することができる。また、タンパク質の定量は、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いて行った。
▲6▼補酵素の利用性:50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に補酵素NADHまたはNADPHを10mMおよび0.1Uの酵素を含む0.49mlの反応液に、30℃で5分間予備加熱後、ジメチルスルホキサイドに溶解した2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン250mMを、0.01ml添加し、30℃で10分間反応させ、波長340nmの吸光度の減少量によりNADHまたはNADPHの減少を測定した。結果を表2に示すように、本発明の不斉還元酵素は、NADPHを利用するが、NADHを利用しないことがわかった。
【0089】
【表2】
【0090】
実施例3 カルボニル不斉還元酵素の遺伝子のクローニング
(1)カルボニル不斉還元酵素の部分アミノ酸配列の決定
実施例1で得られた精製タンパク質のSDS−PAGEを行い、染色後に目的のバンドを切り出しトリプシンを含むトリス緩衝液(pH8.0)を加えて35℃、20時間の処理を行った。その後、溶液の全量を、逆相クロマトグラフィー(カラム:TSKgel ODS−80Ts QA(2.0X250mm,TOSOH)、流速0.2ml/min、溶離液A100%から溶離液B100%のグラジエント(溶離液A:0.1% TFA、溶離液B:0.09% TFA in 90% acetonitrile)、室温)に供して、断片ペプチドを分離した。
【0091】
2種類の断片ペプチド、P1およびP2をプロテインシークエンサ(HP G1005A Protein Sequencing System、ヒューレットパッカード社製)を用いてアミノ酸配列決定を行った。その結果、P1およびP2のアミノ酸配列は以下の様になった。
P1:Asn−Pro−Ser−Asn−Ala−Gln−Leu−Leu−Asp−Ala(配列番号5)
P2:Glu−Ser−Gly−Ile−Asp−Thr−Val−Ile−Val−Asn(配列番号6)
【0092】
(2)部分アミノ酸配列に対応する合成オリゴヌクレオチドプライマーの合成
P1のアミノ酸配列に対応する以下のオリゴヌクレオチドS1(20mer)、5’−AAC−GC[C,G,A,T]−CA[G,A]−[C,T]T[C,G,A,T]−[C,T]T[C,G,A,T]−GAC−GC−3’(配列番号7)を合成し、センスプライマーとして使用した。
P2のアミノ酸配列に対応する以下のオリゴヌクレオチドS2(19mer)、5’−GG[C,G,A,T]−ATC−GA[C,T]−AC[C,G,A,T]−GT[C,G,A,T]−AT[C,A,T]−G−3’(配列番号8)を合成し、センスプライマーとして使用した。
【0093】
(3)3’RACE法による3’末端側DNAのクローニング
RNeasy Maxi kit(キアゲン社製)を用いて、ロドトルラ ムシラギノウザIFO0907よりTotal RNAを分離し、mRNA精製用キット(TaKaRa社製;OligotexTM−dT30<Super>mRNA Purification kit)を用いてmRNAを精製した。精製したmRNAを鋳型とし、合成したS1およびS2をPCRプライマーとして、High Fidelity RNA PCR Kit(TaKaRa社製)を用いて3’RACE法を行い、3’末端側DNAを増幅した。
【0094】
増幅したDNA断片をBlunting Kit(TaKaRa社製)を用いて平滑末端化後、T4Polynucleotide kinase(TaKaRa社製)によりリン酸化し、pUC118のHincIIサイトに挿入しpAZ01プラスミドベクター作成した。クローニングした3’末端側DNA断片の塩基配列をDNAシークエンサ(Gnen Rapid,アマシャムファルマシアバイオテク社製)により決定した。
【0095】
(4)5’RACE法による5’末端側DNAのクローニング
前記(3)で決定した3’末端側DNA塩基配列よりA1(16mer)5’−AAA−GTT−GTT−CAT−GTC−G−3’(配列番号9)、A2(20mer)5’−ACG−TTG−GTG−CGG−AAG−TTG−GC−3’(配列番号10)、A3(20mer)5’−GAC−CTC−CGA−CAA−AGA−CTC−CG−3’(配列番号11)の3種のアンチセンスプライマーを作成した。
前記(3)と同様に精製したmRNAを鋳型として、5’RACE System(Gibco BRL社製)を用いて、5’末端側DNA断片を増幅した。
【0096】
増幅したDNA断片をBlunting Kit(TaKaRa社製)を用いて平滑末端化後、T4Polynucleotide kinase(TaKaRa社製)によりリン酸化し、pUC118のHincIIサイトに挿入しpAZ02プラスミドベクター作成した。クローニングした5’末端側DNA断片の塩基配列をDNAシークエンサ(Gnen Rapid,アマシャムファルマシアバイオテク社製)により決定した。
【0097】
(5)完全長のカルボニル不斉還元酵素遺伝子の取得
決定した2種類のcDNAクローンの塩基配列に共通する領域を解析するとともに、2種類の該cDNAクローンの共通領域に存在するHincIIサイトで、5’末端側DNA断片と3’末端側DNA断片とを連結し、完全長のカルボニル不斉還元酵素遺伝子取得した。この完全長のカルボニル不斉還元酵素遺伝子は、配列番号1の塩基配列を有するものである。尚、推定アミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0098】
実施例4 発現ベクターおよび形質転換体の作成
(1)lacプロモーターを用いた発現ベクターおよび形質転換体の作成
pUC118のlacプロモーターの下流のKpnI/PstIサイト間に、カルボニル不斉還元酵素遺伝子である配列番号1の塩基配列の1位が連結するように挿入せしめた発現ベクターpAZ05を作成し、pAZ05を用いて、大腸菌DH5αを形質転換した。
【0099】
(2)高発現ベクターおよび形質転換体の作成
Aerococcus viridans由来のピルビン酸オキシダーゼ遺伝子のプロモーターpopの下流に、カルボニル不斉還元酵素遺伝子である配列番号1の塩基配列の1位が連結したDNA断片をpUC13に挿入し、発現ベクターpAZ07を作成し、このpAZ07を用いて、大腸菌DH5αを形質転換した。
【0100】
実施例5 pAZ05で形質転換した大腸菌を用いたカルボニル不斉還元酵素の製造
pAZ05で形質転換した大腸菌DH5αを100mlのLB培地(Bacto yeast extract 5g/L、Bacto Tryptone 10g/L、NaCl 10g/L)に植菌し、37℃で16時間培養した後、100mM IPTGを1ml加え、更に8時間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、25mlの可溶化液(4mM EDTA、0.1%リゾチーム、50mMリン酸緩衝液(pH7.0))に懸濁し、37℃で30分間の処理を行い菌体を破砕し、さらに5000gの遠心分離により無細胞抽出液を得た。さらに、無細胞抽出液を実施例1の方法で酵素を精製し、25Uの発現産物を得た。
得られた発現産物は、実施例2で示したカルボニル不斉還元酵素と同等の諸性質を有していた。
【0101】
実施例6 形質転換した大腸菌を用いた(R ) −2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造1
pAZ05で形質転換した大腸菌DH5αを2mlのLB培地(Bacto yeast extract 5g/L、Bacto Tryptone 10g/L、NaCl 10g/L)に植菌し、37℃で16時間培養した後、100mM IPTGを0.02ml加え、更に8時間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、0.5mlの可溶化液(4mM EDTA、0.1%リゾチーム、50mMリン酸緩衝液(pH7.0))に懸濁し、37℃で30分間の処理を行い菌体を破砕し、さらに5000gの遠心分離により無細胞抽出液を得た。
【0102】
得られた無細胞抽出液0.1mlに、50mM NADPHを0.1ml、50mM リン酸緩衝液を0.8mlを加え、さらに50g/lの2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを含むジメチルスルホキサイド溶液を0.004ml加え、30℃で10分間反応させた。反応終了後、1mlの酢酸エチルを添加して反応生成物を抽出した。得られた酢酸エチル層を減圧下で溶媒を留去し、0.19mgの淡黄色油状の反応生成物を得た。
【0103】
反応生成物のNMR分析の結果、H1−NMR(DMSO−d6):3.80(1H,dd,J=8.3,4.5)、3.88(1H,dd,J=8.4,3.3)、5.04(1H,m)、6.15(1H,d,J=3.3)、7.67(1H,m)、7.92(1H,m)8.17(1H,m)、8.32(1H,brs)であり、反応生成物は(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールと同定された。また、高速液体クロマトグラフィー分析の結果、反応率は約96%、光学純度はR体が99.9%e.e.以上であった。
また、ベクターpUC118で形質転換した大腸菌DH5αを同様に処理したが(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールは検出されなかった。
【0104】
実施例7 形質転換した大腸菌を用いた(R ) −2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造2
実施例6に記載の方法により調製した洗浄菌体を、0.2mM NADP+、250mMグルコース、10U/mlグルコースデヒドロゲナーゼ(シグマ社製:Cryptococcus uniguttulatus由来)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.5mlに懸濁し、20g/Lの2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを含む酢酸ブチルを0.5ml添加し、30℃、90分間反応させた。反応後、遠心分離により酢酸ブチル層を分離し、得られた酢酸ブチル層を減圧下で溶媒を留去し、エタノールに溶解し、生成物量および生成物の光学純度を測定した。その結果、反応収率は約96%、生成物の光学純度はR体が99.9%e.e.以上であった。
【0105】
実施例8 枯草菌由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
(1)枯草菌の染色体DNAの精製
枯草菌(Bacillus subtilis ATCC 6633)をLB培地で培養し、菌体を調製した。Qiagen Genomic Tip(Qiagen社製)を用い、菌体からの染色体DNAの精製を行った。
【0106】
(2)枯草菌由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
文献(J.Bacteriol.166,238−243(1986))記載の塩基配列を元に、プライマーSGD116(25mer)5’−AAT−TCA−TAA−CAA−ATG−GAG−GAG−GAT−G−3’(配列番号12)およびプライマーAGD116(22mer)5’−GCC−TAA−TAA−AGA−AAG−CGA−TCC−A−3’(配列番号13)を合成した。前記(1)により調製した染色体DNAを鋳型とし、PCRを行い特異的な増幅DNAを得た。増幅したDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサ(Gnen Rapid,アマシャムファルマシアバイオテク社製)により決定した。その結果、配列番号3に示す塩基配列を得た。なお、その推定アミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0107】
決定した塩基配列を元に、プライマーSGD117(39mer)5’−TCT−AGA−ATG−CAT−ATC−CAG−ATT−TAA−AAG−GAA−AAG−TTG−TCG−3’(配列番号14)およびAGD117(36mer)5’−GAA−TTC−GGT−ACC−TGG−GTC−GCT−TTT−TTT−GTT−TTA−TCC−3’(配列番号15)を合成し、前記(1)により調製した染色体DNAを鋳型とし、PCRを行い特異的な増幅DNAを得た。
【0108】
(3)グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子発現ベクターおよび形質転換体の作成前記(2)で得られたDNA断片の上流に、popプロモーターを連結し、pUC13に挿入して発現ベクターpAZ08を作成した。このpAZ08を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0109】
実施例9 形質転換した大腸菌を用いた(R) − 2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造3
実施例4(カルボニル不斉還元酵素生産形質転換体)および実施例8(グルコースデヒドロゲナーゼ生産形質転換体)で作成した形質転換体をそれぞれ100mlのLB培地に植菌し、37℃で16時間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、それぞれの菌体を調製した。
【0110】
上記で得られたカルボニル不斉還元酵素生産形質転換体(湿菌体15g)、およびグルコースデヒドロゲナーゼ生産形質転換体(湿菌体15g)とを、0.025mM NADP+、50g/L グルコース、を含む100mM リン酸緩衝液(pH7.5)2.5Lに懸濁し、40g/Lの2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンを含む酢酸ブチルを2.5L添加し、30℃で反応させた。pH7コントロール条件化で120分間反応後、遠心分離により酢酸ブチル層を分離した。得られた酢酸ブチル層を減圧下で溶媒を留去し、エタノールに溶解し、生成物量および生成物の光学純度を測定した。その結果、反応収率は100%、生成物の光学純度はR体が99.9%e.e.以上であった。
【0111】
実施例10 (R)−2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノンより(R)−2−クロロ−1−(4−クロロ−3−ニトロフェニル)エタノールを得た。
Rf=0.35(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)。
保持時間:20.3分、
分析条件:カラム:キラルセルAS(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=9/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:40℃。
【0112】
実施例11 (R)−2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノンより(R)−2−ブロモ−1−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニル)エタノールを得た。
Rf=0.41(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)。
保持時間:35.7分、
分析条件:カラム:キラルセルOB(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/2−プロパノール=7/3;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:35℃。
【0113】
実施例12 (R)−2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノンより(R)−2−ブロモ−1−(3−ニトロフェニル)エタノールを得た。
Rf=0.72(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)。
保持時間:9.02分、
分析条件:カラム:キラルセルAD(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=1/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:35℃。
【0114】
実施例13 2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノンより2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−フルオロフェニル)エタノールを得た。
保持時間:30.6分、
分析条件:カラム:キラルセルAD(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=1/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:25℃。光学純度:99.5%e.e.。
【0115】
実施例14 2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノンより2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)エタノールを得た。
保持時間:22.6分、
分析条件:カラム:キラルセルOJ(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=7/3;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:25℃。光学純度:100%e.e.。
【0116】
実施例15 2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノールの製造
実施例9に記載の方法に準じ、2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノンより2−クロロ−1−(3−ニトロ−4−メチルフェニル)エタノールを得た。
保持時間:35.9分、
分析条件:カラム:キラルセルOJ−H(4.6mmIDX250mm)(ダイセル社製);移動相:n−ヘキサン/エタノール=9/1;流速:0.5ml/分;検出波長:254nm;温度:25℃。光学純度:100%e.e.。
【0117】
参考例1 三環性アミノアルコール誘導体の製造( WO 01/17962 の実施例6−10の方法)
【0118】
【化23】
【0119】
上記化合物(8)(76.8g)を2−プロパノール(2000ml)に溶解し、2規定水酸化ナトリウム水溶液(300ml)を20分かけて添加した。室温で30分間撹拌した後、反応液を氷冷し攪拌しながら、氷冷した水(7500ml)を1時間かけて添加した。氷冷下、30分間撹拌し、析出した結晶を濾取し、室温下減圧乾燥することにより、淡黄色結晶として化合物(9)(52.5g)を得た。
融点:p38−39℃、
Rf=0.60(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.93(1H,dd,J=5.3,2.5)、3.22(1H,dd,J=5.2,4.1)、4.15(1H,dd,J=4.1,2.6)、7.64−7.79(2H,m)、8.11−8.21(2H,m)
HPLC:保持時間(6.9分)(カラム:COSMOSIL ODS−5(ジーエルサイエンス社製;4.6mm ID×150mm)、溶媒:50mMリン酸二水素カリウム水溶液/アセトニトリル=6/4、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:16.1分)(カラム:CHIRALPAK AD(ダイセル社製;4.6mm ID ×250mm)、溶媒:n−ヘキサン/エタノール=85/15、流速:0.5ml/min、検出波長 254nm、35℃)
尚、S体の保持時間は13.8分であった。
【0120】
【化24】
次いで、化合物(9)(3.2g)と化合物(10)(12.3g)、及び2−ブタノール(96ml)の混合物を内温95℃で8時間加熱撹拌した。冷却後、減圧下溶媒を留去して得られる残留物に酢酸エチル(320ml)、0.5規定塩化水素/2−プロパノール溶液(77.5ml)を加え、0℃で1時間撹拌した。不溶物を濾取した後、濾液に飽和食塩水(320ml)を加え、分液して有機層を得た。さらに、この有機層を飽和重曹水(320ml)で洗浄後、乾燥し減圧下で溶媒を留去することにより、化合物(11)(8.35g)を淡黄色アモルファスとして得た。
Rf=0.69(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.79(2H,t,J=6.4)、2.95(2H,t,J=5.6)、3.71(1H,d,J=13.9)、3.84(1H,d,J=13.8)、4.01−4.08(2H,m)、4.86(2H,brs)、5.47(1H,d,J=4.0)、6.70(1H,dd,J=8.5,2.2)、6.89(1H,d,J=2.1)、7.06−7.59(5H,m)、7.77−8.17(4H,m)、11.06(1H,s)
HPLC:保持時間(7.8分)(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社製;6.0mm ID×150mm)、溶媒:5mMリン酸二水素カリウム水溶液/メタノール=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:71.3分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は65.0分であった。
【0121】
【化25】
【0122】
次に化合物(11)(8.35g)のメタノール(125ml)溶液に酸化白金(39mg、アルドリッチ社製)を加え、常圧の水素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。触媒を濾過し、濾液を減圧下、溶媒留去し化合物(12)(7.74g)を淡黄色アモルファスとして取得した。
Rf=0.36(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.69(2H,d,J=6.1)、2.97(2H,brs)、3.83(2H,brs)、4.05−4.08(2H,m)、4.57(2H,brs)、4.81(1H,d,J=3.1)、4.94(2H,brs)、6.40−6.47(1H,m)、6.57(1H,brs)、6.73(1H,dd,J=8.6,2.1)、6.89−6.96(2H,m)、7.06−7.43(4H,m)、7.92−7.99(2H,m)、11.06(1H,s)
HPLC:保持時間(3.4分)(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社製;6.0mm ID×150mm)、溶媒:5mMリン酸二水素カリウム水溶液/メタノール=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:10.4分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は12.5分であった。
【0123】
【化26】
【0124】
得られた化合物(12)(7.74g)のテトラヒドロフラン(78ml)溶液にピリジン(11ml、和光純薬社製)を加え、0℃に冷却した。次いでメタンスルホニルクロライド(1.59ml、東京化成社製)を15分かけて添加し、0℃で4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(200ml)と1規定塩酸(200ml)を加え、分液し、有機層を得た。有機層を水(200ml)で2回、飽和重曹水(200ml)、飽和食塩水(200ml)で順次洗浄し、乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物(13)(9.0g)を微橙色アモルファスとして得た。
Rf=0.40(メチルエチルケトン:トルエン=1:2)、
1H−NMR(DMSO−d6):2.75(2H,d,J=6.1)、2.91(3H,s)、2.95−3.01(2H,m)、3.80(2H,brs)、4.02−4.09(2H,m)、4.66−4.69(2H,m)、5.47(1H,brs)、6.73(1H,dd,J=8.4,1.9)、6.92(1H,d,J=2.0)、7.02−7.45(7H,m)、7.93−8.00(2H,m)、11.06(1H,s)
HPLC:保持時間(3.1分)(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社製;6.0mm ID×150mm)、溶媒:5mMリン酸二水素カリウム水溶液/メタノール=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:21.7分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は27.7分であった。
【0125】
【化27】
【0126】
次いで、得られた化合物(13)(2.0g)のエタノール(100ml)溶液に10%パラジウム−炭素(100mg、メルク社製)を加え、常圧の水素雰囲気下、内温約70℃で4時間撹拌した。冷却後、テトラヒドロフラン(40ml)を加え、室温で30分間撹拌後濾過し、残渣をテトラヒドロフラン(8ml)で洗浄した後、濾液と洗液を合わせて減圧下溶媒留去し、淡黄色固形物として化合物(14)(1.2g)を取得した。
HPLC:保持時間(6.6分)(カラム:YMC−Pack Pro C18(ワイエムシー社製;4.6mm ID×150mm)、溶媒:20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.9)/アセトニトリル=70/30、流速:1.0ml/min、検出波長 254nm、25℃)
HPLC:保持時間(R体:24.6分)(カラム:CHIRALCEL OJ−R(ダイセル社製;4.6mm ID ×150mm)、溶媒:0.5M過塩素酸ナトリウム水溶液(過塩素酸によりpH2に調整)/アセトニトリル=6/4、流速:0.5ml/min、検出波長 233nm、35℃)
尚、S体の保持時間は22.1分であった。
【0127】
実施例16−25 三環性アミノアルコール誘導体の製造
参考例1の方法と同様の方法に準じて、本発明の方法を用いて製造された表3に記載の化合物1と化合物2とを反応せしめ、各工程を経て、表3に記載の生成物を製造した。なお、表3には、生成物として、式(P)におけるRがNHSO2CH3である化合物のみを記載したが、式(P)のRがニトロ基、およびアミノ基もそれぞれ作成した。これらの物質は、それぞれ物性を確認し、正しく製造されていることが確認された。
【0128】
【表3】
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば実施例に示すとおり、光学活性2−ハロ−1−(置換−3−ニトロフェニル)エタノールを、通常99.9%e.e.以上の光学純度で効率よく製造することができる。
【0130】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカルボニル不斉還元酵素の至適pHを示す。
Claims (19)
- 下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)下記の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
(d)至適pH:最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0では約80%程度である。 - 下記の(A)または(B)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつ下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)下記の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。 - 下記の(C)または(D)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(C)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNA。
(D)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであって、下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)下記の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAがベクターに連結されていることを特徴とする組換えベクター。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAが宿主細胞に導入され、形質転換せしめられたことを特徴とする形質転換体。
- 下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)下記の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。
(d)至適pH:最高活性に対する相対活性が、pH4.0〜7.0では約95%以上、pH3.0およびpH8.0が約80%程度である。 - 下記の(A)または(B)のいずれかのカルボニル不斉還元酵素。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するカルボニル不斉還元酵素。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつ少なくとも下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素。
(a)下記の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。 - 下記の(C)または(D)のいずれかのDNAがコードするカルボニル不斉還元酵素。
(C)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列からなるDNA。
(D)配列番号1の塩基配列の80−832位の配列と相補的な塩基配列からなるDNAに対して、ストリンジェントな条件下にてハイブリダイズすることができるDNAであって、下記の理化学的性質を有するカルボニル不斉還元酵素をコードするDNA。
(a)下記の反応を触媒する。
(b)基質特異性:2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノン、およびアセトフェノンを基質とし、それぞれ(R)−2−クロロ−1−(3−ニトロフェニル)エタノール、および(S)−1−フェニルエタノールを生成する不斉還元活性を有し、且つ、(S)−1−フェニルエタノール、(R)−1−フェニルエタノールおよび2−プロパノールのいずれに対しても実質的にアルコール脱水素活性を有しない。
(c)補酵素の利用性:NADPHは利用できるがNADHは実質的に利用できない。 - 請求項6〜8のいずれかに記載のカルボニル不斉還元酵素を生産する能力を有するロドトルラ属に属する微生物、または請求項1〜3のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体のいずれかを、培地で培養し、その培養物から該カルボニル還元酵素を採取することを特徴とする該酵素の製造法。
- 該不斉還元反応を、請求項1〜3のいずれかに記載のDNAを導入して形質転換された形質転換体に接触せしめることにより行うことを特徴とする請求項10に記載の製造法。
- 該不斉還元反応に際して、一般式(2)の化合物の反応液中濃度が、1%(W/V)以上であることを特徴とする請求項10または11に記載の製造法。
- 該不斉還元反応が、6時間以内の反応であり、収率が90%以上、生成物の光学純度が95%以上であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の製造法。
- NADP+からNADPHを生成する能力を有する酵素とその基質およびNADP+を少なくとも含むNADPH再生系を共存させることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の製造法。
- NADP再生系がグルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼを含むものである、請求項14に記載の製造法。
- 該不斉還元反応が、水性媒体と、一般式(2)の化合物を溶解可能な有機溶媒とを合わせて用いることを特徴とする、請求項10〜15のいずれかに記載の製造法。
- 有機溶媒が、酢酸ブチルまたはメチルイソブチルケトンであることを特徴とする、請求項16に記載の製造法。
- 該不斉還元反応時に、pHをpH3〜8.5に制御することを特徴とする、請求項10〜17のいずれかに記載の製造法。
- 該不斉還元反応時に、一般式(1)の化合物を吸着可能な合成吸着樹脂を基質の重量に対して1〜50倍の重量で添加することを特徴とする、請求項10〜18のいずれかに記載の製造法。
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WO2006090814A1 (ja) * | 2005-02-25 | 2006-08-31 | Kaneka Corporation | 光学活性2級アルコールの製造方法 |
CN112725389A (zh) * | 2019-10-29 | 2021-04-30 | 广东东阳光药业有限公司 | 一种米拉贝隆中间体的制备方法 |
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