JP2004103792A - 複合光学装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マイクロレンズ1、1’は、光軸を合わせて光学部材2の表裏の研磨面より低い位置に形成される。半導体レーザ3は光の出射端面がサブマウント4の一側面とほぼ同一面になるように保持される。光の出射端面もしくはサブマウント4の側面に光学部材2が当接して、発光素子とマイクロレンズ1の光軸が一致するようにアライメントマーク9を用いて実装する。UV硬化樹脂注入溝5からのUV硬化樹脂注入とUV照射により相互に固着される。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、発光素子を含む微小光学素子、特に高品質の微小平行光を生成する光学素子を含む装置の技術に関するものである。ここでいう発光素子とは、光源そのもののほかに、光束が光ファイバー等に入射した場合の出射端面も含む。
応用分野としては、高品質の光線を利用する応用製品一般、例えば、光伝送用光源、半導体レーザ(以下単にLDという)プリンター、光ディスクシステム用ピックアップ光源、LD光を掃引する光プロジェクターディスプレーなどがある。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学素子は、LDなどの光をmmオーダーの大きさのレンズやミラーを介して、光をコントロールしていた。しかし、光伝送などが汎用化されるに従い、高密度、小型化、高精度、低コスト化などへの要求が高まっている。そこで、マイクロマシニング技術と光学とが融合したOPT−MEMSの発展により、光をμmオーダーで扱う、マイクロレンズ、マイクロミラー、MEMS技術による光スイッチなどの微小光学素子が開発されている。
【0003】
このような微小光学素子はそのレンズ面やミラー面の大きさがμmオーダーであることから、その大きさの光源が求められている。この要望に応える解の1つとして、μmオーダーの径の平行光がある。平行光であれば、mmオーダーの距離を発散することなく伝達し、煩雑な大きなレンズのアライメントの必要もなく、スイッチングやミラーなどの整合性が高い。また、光ファイバーの径や高速対応PD(フォトダイオード)等の大きさもμmオーダーであることから、微小平行光の汎用性は高い。
【0004】
一般にLDなどの光源から発せられる光線を整形する場合には、LDを実装してあるキャンの外側にレンズを配置することが行われる。その場合にはLDの発光点から数mm程度離れ、光の発散角が40°程度あることから、そのレンズは数mmの口径を持つことになる。また、レンズの実装配置は、LDの発光スポットを観察しながら手作業で行われることが多く、製造コストが高くなると同時に、その実装公差は非常に大きく設定される。そのような大きな公差では実装した後の完成した複合光学装置の光線には大きな収差がのり、今後求められる高品質な光源とは言えない。
【0005】
また、一方、キャンの内部、LDのステム(LDを固定してある基板)に直接レンズを実装する試みがなされている。LDの発光点近傍数十μmの距離にレンズを実装することができ、そのレンズも数十〜数百μmの口径のもので良くなる。このような大きさのレンズはマイクロレンズとして、半導体プロセスなどによって作られる。レンズ作製方法は確立し、アレー化し易いこともあり、その実用化には期待も大きく、多くの研究もなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5 参照。)。しかし、マイクロレンズと発光素子との実装には多くの問題が残り、その実装公差は未だ大きい。
【0006】
マイクロレンズの端面をLDに当接することで、簡便に実装し、実装に関わるコストを下げる方法も検討されている。(特許文献6)もその一つである。そこでは、レンズ端面がLD端面に当接することを特徴としている。そこで示しているマイクロレンズは研削加工によってレンズ形状を作った後に加熱延伸方法を使用し形成されている。また、この方法ではレンズとの距離を所望のものにするために、適当なスペーサーを同様な方法で作成し、接合することで一体化している。このため、これらのスペーサーの形状誤差を含み、製造上のコストも跳ね上がる。この方法では、スペーサーとレンズとを一体化して作成することは難しく、上記のような接合する方法は避けられない。
【0007】
一方、平板型のレンズとして屈折率分布レンズがある。このレンズはガラス基板にタリウム等の金属イオンを拡散させたもので、表面は平面であり、発光素子に密着することはできる。しかし、この屈折率分布レンズは波面収差の増大、光線屈折の精度など、通常のレンズに比べ、品質が劣る。このため、高品質の発光源をもつ、複合光学装置にはなり得ない(例えば、特許文献7 参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−185792号公報
【特許文献2】
特開平5−236216号公報
【特許文献3】
特開平6−160605号公報
【特許文献4】
特開平2−222589号公報
【特許文献5】
特開2001−021771号公報
【特許文献6】
米 国特許第6078437号明細書
【特許文献7】
特開平6−13699号公報
【特許文献8】
特開平11−177123号公報
【特許文献9】
特開2000−280366号公報
【特許文献10】
特開2000−349384号公報
【非特許文献1】
O plus E 2001年2月号P210
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
LDなどの光源とその光線を整形する光学素子との実装を、高い精度、かつ低コストで実現する方法を提供し、収差の小さい高品質な光束を得ることができる複合光学装置を提供する。以下に詳細にその課題を述べる。
【0010】
ここでは発光素子の面の定義を、“光を空中に発する面”と広げることとする。例えば、光ファイバーなどでは、LDを「一方の端面」に結合したような、光ファイバーとLDの複合した素子も、ここで言う発光素子の定義とする。この場合、“発光素子の平面”あるいは“光の出射端面”とは、光ファイバーの端面のうち、LDが結合していない「他方の端面」を指すことになる。このような、発光素子の平面には、従来からレンズを精度良く実装しようとする研究が成されてきた。
【0011】
例えば、光ファイバーの端面に直接フォトリソプロセスを適用し、ファイバーの端面をマイクロレンズの形状に加工する方法がある(例えば、非特許文献1 参照。)。しかし、マイクロレンズの表面粗さ(以下ラフネスという)などによる波面収差が増大し、高品質な光源であるべき複合光学装置としては問題が残っている。
上記発明によれば、マイクロレンズの光学部材と発光素子平面とは当接することが可能であるが、それぞれの当接面の表面性が悪いことで、実装精度が低下する。
【0012】
図11はLDとマイクロレンズの実装の、従来の形態を説明するための図である。
従来のLDとマイクロレンズの実装では、マイクロレンズの光学部材とLDのへき開面とは当接していない。つまり、図11に示すようにマイクロレンズの頂点がその光学部材の平面より凸状態に出ており、平坦部に適当なスペーサーを介して、間隙Sを確保する必要があった(特許文献5 参照)。
【0013】
このスペーサーはレンズ部の当たりを避けるために、直径にして数百μmの凹部分が必要なことなど、非常に困難な機械加工が必要とされた。また、微小な形状のため、研磨を行うことが不可能で、フライスなどの機械加工により作られ、表面にラフネスが残り、高い精度の実装を難しくしていた。また、そのため、その精度は数μmとなり、公差としては大きいものとなる。また、このような加工をするステムは非常に高価なものとなり、コストとして跳ね上がることになる。ただし、本発明においてマイクロレンズというときは、曲面屈折型のレンズを指し、屈折率分布型のレンズなどを含まないものとする。
【0014】
従来、LDに対し、マイクロレンズを実装する際には、発光スポットを観察して実装する方法が一般的であり、製造コストが嵩んだ。また、別な方法として、アライメントマークをLDの実装してあるステムなどに合わせる方法も有るが、LDとステムの実装公差を含むため、精度が低下していた。そのため、品質のよい光束を得ることができない。
【0015】
従来例に示すようにマイクロレンズを固定する方法として、マイクロレンズの光学部材の側面にUV硬化樹脂を塗布硬化する方法が取られている。この方法では接合する面が少ないため、その接合強度に問題がある。レンズとLDなどの発光素子との距離の公差は数μm程度であるので、わずかな振動などの外乱によって、ずれることは許されない。そのため、高い接合強度が必要とされる。
【0016】
従来のリフロー法によるマイクロレンズの製造方法では、そのレンズの形状は球面に限られている。球面であるために、そのレンズ表面における波面収差によって、完成された複合光学装置における収差は大きなものとなってしまう。
【0017】
マイクロレンズが凸面レンズである場合、レンズの縁の部分では、レンズ表面に光線が浅い角度で入射する。すなわち、レンズに対する入射角が大きくなる。光の反射は入射角に依存し、入射角は大きい方が反射率が高くなる。その関係を、図12を用いて説明する。ただし、図では面の接線に対する角度で表示してある。法線に対する入射角と接線に対するそれとは余角の関係にある。
図12は凸面と凹面の面の接線に対する入射角の違いを説明するための図である。
図12aは凸レンズの周辺に光が入射する状態を表している。θ1はレンズ面の接線に対する入射光の入射角を示す。
図12bは凹レンズの周辺に光が入射する状態を表している。θ2はレンズ面の接線に対する入射光の入射角を示す。いずれも、屈折後の光線は省略してある。図からも分かるようにθ2>θ1となっている。したがって、凹面よりも凸面のほうが光の損失が大きくなる。
できる限り、法線に対する入射角を小さくし、反射の少ないレンズを作ることが望まれる。
【0018】
発光素子表面、マイクロレンズ表面と2つの界面が存在するため、それぞれの界面での反射がある。反射はノイズや結合効率を低下するなど問題となる。また、発光素子の平面にラフネスがある場合、その面での光散乱が起り、光結合効率が下がる。
マイクロレンズには製造上の問題から、そのレンズの高さにはある制限があった。そのため、高いNAのレンズをつくることはできなかった。
【0019】
複合光学装置において、その実装方法として、光軸以外の2軸(光軸をZ軸とすると、X軸及びY軸)を精度よく合わせる必要がある。2つの軸を同時に合わせることは困難であり、製造コストを増大させている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、発光素子と、光学素子を含む光学部材とを集積してなる複合光学装置において、前記光学部材は第一面と、該第一面に対面する第二面とを有し、前記光学素子は前記第一面の一部を加工してなり、前記発光素子の出射端面もしくはそれに準ずる面に前記光学部材の第一面を当接していることを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の複合光学装置において、前記光学部材の第一面が研磨面であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の複合光学装置において、前記光学部材が、前記発光素子と前記光学素子との距離を一定に支持する機能を有してている。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材の第一面に凹部が形成され、該凹部の底部に前記光学素子が形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明では、請求項請求項1ないし4のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記発光素子が、半導体レーザーであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材の第二面にも光学素子を形成したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子がマイクロレンズであることを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の複合光学装置において、前記マイクロレンズの光学面がアナモフィック面であることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子がシリンドリカルレンズであることを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の複合光学装置において、前記シリンドリカルレンズは、前記光学部材の第一面においては、光束の断面の楕円形の長軸方向に作用方向を合わせ、第二面においては光束の断面の楕円形の短軸方向に作用方向を合わせることを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載の発明では、請求項7ないし10のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記第一面における前記光学素子の頂点の高さが前記光学部材の第一面より低いことを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項7ないし9のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記第一面における前記光学素子のレンズ面が凹面であることを特徴とする
【0025】
請求項13に記載の発明では、請求項7ないし12のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子の光学面の光学的パワーを有する断面が非円形面であることを特徴とする。
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子が光学くさびであることを特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項14に記載の複合光学装置において、前記第一面に入射するすべての光束の入射角が、前記第一面、および第二面の光学面によって形成される三角プリズムの最大偏角に対応する角度より大きくなるように前記光学面を形成することを特徴とする。
【0026】
請求項16に記載の発明では、請求項15に記載の複合光学装置において、前記半導体レーザからの出射光の光束のうち、発散角度が小さい方の方向に前記光学くさびの作用方向を合わせることを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項14に記載の複合光学装置において、前記第一面に入射するすべての光束の入射角が、前記第一面、および第二面の光学面によって形成される三角プリズムの最大偏角に対応する角度より小さくなるように前記光学面を形成することを特徴とする。
【0027】
請求項18に記載の発明では、請求項17に記載の複合光学装置において、前記半導体レーザからの出射光の光束のうち、発散角度が大きい方の方向に前記光学くさびの作用方向を合わせることを特徴とする。
請求項19に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子が円形回折格子であることを特徴とする。
請求項20に記載の発明では、請求項1ないし19のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記凹部の、前記光学素子が存在しない空間を、前記光学部材とは屈折率が異なる透明部材で充填したことを特徴とする。
【0028】
請求項21に記載の発明では、請求項20に記載の複合光学装置において、前記透明部材の屈折率が前記光学素子の屈折率より大きいことを特徴とする
請求項22に記載の発明では、請求項20に記載の複合光学装置において、前記発光素子が光ファイバー端面であり、前記透明部材の屈折率が前記発光素子の屈折率と概ね等しいことを特徴とする。
請求項23に記載の発明では、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材の第一面に、溝を形成しその溝に接着剤を注入したことを特徴とする。
【0029】
請求項24に記載の発明では、請求項1ないし23のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材にアライメントマークを形成したことを特徴とする。
請求項25に記載の発明では、請求項24に記載の複合光学装置を製造する製造方法であって、前記光学部材のアライメントマークを発光素子の平面上にあるマークにアライメントし、発光素子の出射端面もしくはそれに準ずる面と、光学部材の第一面とを当接接合する複合光学装置の製造方法を特徴とする。
【0030】
本発明では、グレースケールマスクを利用した作成方法によるマイクロレンズ等の光学素子を作製することで、光学部材の研磨面を基準とした高精度のパッシブアライメントを可能にする。
【0031】
半導体プロセスを用いて作製されるマイクロレンズは一般的にはリフロー方法など用いられるが、本発明では、グレースケールマスクによる製造方法を用いた。しかし、本発明はこの製造方法によって限定されるものではない。
グレースケールマスクで作られた光学素子は、研磨した平面上に光学素子を作ることで、素子以外の領域は精度の高い表面性をもつ平面である。
【0032】
グレースケールマスクでは、フォトリソグラフィーに用いるマスクを、透過率が1と0の細かいドットによって階調表現したものや、中間調によって表現されたものがある。階調表現によって、明るい部分、暗い部分ができ、これをフォトレジストに露光することで、ポジレジストの場合で言えば、暗い所は高く、明るい所は低く、中間高さを含む、高さ表現されたレジスト形状を得ることができる。このようにマスク形状を工夫することで、レジストを3次元的かつ任意形状に加工することができる。グレースケールマスクの作製方法の詳細は特許文献8及び9などに記述してある。
【0033】
この任意形状作製技術を利用し、レンズが石英基板の基準より凹状態のマイクロレンズを作ることが可能になる。これにより、マイクロレンズより基準面がLD側に出ており、この基準面を当接した状態に実装することができる。また、後述するように、傾斜面や回折格子をLDから離れた部分に作り込むことも可能である。
【0034】
このマイクロレンズの光学部材の基準面は研磨で加工され、その精度は高い場合には数nmオーダーとなる。またLDのへき開面も同様に結晶面に準じて形成されていることにより非常に高い精度で面出しされている。この2面を当接することにより、非常に高い精度の実装が可能となる。また、サブマウント表面は石英基板と同様の研磨を施すことができる。このことより、LDとサブマウントを高い精度の平行度を保ったまま同一面位置に実装することができ、かつ、その平行度が保たれたLDへき開面とサブマウント研磨面に石英研磨面を当接実装することが可能となる。
【0035】
【実施形態1】
図1は本発明の実施形態1の構成を示す側面図である。
図2は同じく本発明の実施形態1の構成を示す正面図である。
図1、2において符号1、1’はマイクロレンズ、2は光学部材、3はLD、4はサブマウント、5はUV硬化樹脂注入溝、6はステム、7はUV硬化樹脂、8はLDのエピタキシャル面、9はアライメントマークをそれぞれ示す。
マイクロレンズ1、1’を有する石英基板等からなる光学部材2は、LD3を保持するサブマウント4と当接している。光学部材2にはUV硬化樹脂注入溝5が形成され、UV硬化樹脂が注入されている。
【0036】
マイクロレンズ1、1’は、光軸を合わせて光学部材2の表裏に形成される。マイクロレンズ1を作製する面を第一面とする。第一面は予め研磨しておくものとする。第一面にマイクロレンズ1を作製した後に、必要があれば、第一面に対面する第二面に光軸を合わせて、もう1つマイクロレンズ1’を作製する。この時のアライメントは石英基板が透明であることから、同じレンズアライメントマークを利用でき、高精度に行うことができる。その精度は顕微鏡を利用することで数百nmオーダーとなる。
【0037】
また、マイクロレンズは1枚のウェハーから数多く取ることができ、このアライメントはウェハー毎に行うので、製造コストは非常に低い。このため、マイクロレンズを両面に形成することによるコスト上昇は小さい。ただし、マイクロレンズ1だけで目的が達せられる場合は、マイクロレンズ1’を省略できる。その場合、第二面の少なくとも光束が透過する面は光学面として、光学的に平滑な面に形成しておく。以後のマイクロレンズ以外の各実施形態においても同様である。ここで光学面と呼んだのは、有効な光束を散乱させずに透過させる面のことであり、単なる平面を含み、直進する光線に何らかの光学的作用を与える面のことである。
【0038】
LDの発光部の形状及び発散角度は縦方向と横方向では大きく異なる。すなわち、発光部の形状は横方向に長く、縦方向は横方向の長さの数十分の一程度しかない。しかし、発散角度の方は、コヒーレント光の干渉の関係で、横方向の発散角度は縦方向の発散角度の数分の一程度になる。LDは個体差が大きいが、出射光束は出射端面から概ね数μmないし10μm程度の位置で光束の断面形状、すなわち光のプロファイルが円形になり、それを超えると光のプロファイルは縦長な楕円形となる。
【0039】
本発明の光学素子の、LD3の光の出射端面からの距離は種々選べるが、なるべく個体差の影響を受けないようにするためには、光のプロファイルが縦長の楕円形になる位置を選ぶのがよい。
【0040】
これに対し、縦方向の中心断面と横方向の中心断面の曲率が異なるアナモフィックレンズというのがある。このレンズは縦方向と横方向のパワーが異なるので、それぞれの方向の発散角度を個別に変化させることができる。本実施形態は、LDから発せられる楕円形の光束を整形し、真円とすることが目的である。この2面のレンズの光学面の少なくとも片方をアナモフィックレンズ面にすることによって、LDが発した発散光が真円の平行光へ変換される。
【0041】
任意の方向からの光線を受け入れるレンズとしては、球面レンズが総合的には優れているが、本発明を適用する光源は単一波長のLDであり、光学素子としてのレンズ系に対する入射角度が固定的の場合は、光学面として適切な非球面を選ぶことによって、各種の収差を取り除いて非常に高品質な光束を得ることができる。本実施形態ではアナモフィックレンズを用いることにしているが、これは縦断面と横断面の形状は円形であるが、曲率が異なっているもので、球面とは呼べない。ただ、前記非球面と呼んだのは、これとは別のものである。すなわち、光学的パワーを有する縦断面或いは横断面の形状が非円形であるものを意味している。
【0042】
図2に示すように、アライメントマーク9をLD3の下面のエピタキシャル面と側面のへき開面の角部に一致させるように形成されている。
アライメントマーク9はフォトリソグラフィー時にマイクロレンズのグレースケールマスクに同時に入れている。これにより、マスク製造における公差で、アライメントマーク9を作ることができ、その精度は数百nmとなる。
【0043】
LD3の上記角部をアライメントマーク9に当接密着させることによって、顕微鏡観察による実装精度は格段にあがる。密着していない場合は、それぞれのアライメントマーク面を顕微鏡のフォーカス機能を用いて、それぞれ交互フォーカスし観察しながら、位置出しする必要があり、顕微鏡の平行度などの他の不確定要素によって、実装精度が低下する。以下にそれぞれの軸に従いアライメント方法を述べる。ただし、それぞれの軸方向は図2の規定に従う。
【0044】
<Y軸方向のアライメント>
図1、2に示しているLD3はジャンクションダウンとして、上側を部材裏面とし、下側をエピタキシャル面とした。このエピタキシャル面と発光点との距離は精度数十nmオーダーで、設計製造されている。このため、光学部材2に形成されたアライメントマーク9に、上記LD3の角部を当接密着さてアライメントすることで、1μm以下の精度を出すことが可能になる。
【0045】
<X軸方向のアライメント>
発光点からLD3の側面までの距離は、それぞれLDの個体差によって異なる。これはLD側面がへき開面であることによっており、その精度は数十μmオーダーとなり、これに合わせて実装することはできない。そこで、実装する前に、それぞれのLDの発光点からLD側面までの距離を測定しておく。エピタキシャル面を観察することで、発光させることなく、LD発光点の位置を側面からの相対距離として測定することができる。この距離に対応して、アライメントマーク9を所望の距離に形成する。
【0046】
<製造方法>
ここで、上記実施形態の複合光学装置の製造方法を簡単に述べておく。
マイクロレンズ1、1’を形成する光学部材2は石英基板を用いる。この基板の両面は研磨によって仕上げられているため、その表面粗さは数nmとなる。この表面にマイクロレンズ1、1’をグレースケールマスクで作製する。作製方法の詳細は特許文献8、および特許文献9に記述してある。
【0047】
これによって、作製されたレンズの断面は図1に示されるように、レンズの頂点が石英基板表面、すなわち第一面より低いように設計してある。レンズ表面には反射防止膜を施す。第一面から光学素子の位置、この例の場合は例えばマイクロレンズの頂点、までの距離はエッチングの制御によって精度良く形成することができる。したがって、発光素子と光学素子との距離も所望の一定距離に対して精度良く支持することができる。これは、発光素子と密着接合される光学部材2の第一面と光学素子が一体として作製されるからである。
【0048】
このレンズを形成した石英基板をダイシングによって、切り出して光学部材2を構成する。形状は1mm角程度とした。光学部材2はダイシングした後、だいしんぐ面に研磨などを施し、数μmオーダーの精度で仕上げる。このマイクロレンズを形成した光学部材2をLD3を実装したサブマウント4に実装する。サブマウント4は、光学部材2の側面とUV硬化樹脂で固定される。
【0049】
LD3は上下面以外はへき開によって外形加工されたものを用いる。LD3はジャンクションダウンとして、エピタキシャル面を下にサブマウント4に実装する。サブマウント4の側面とLD3の1つのへき開面からなる光の出射端面とは、ほぼ同一面になるように実装する。この作業はダイボンダーを用い、顕微鏡で観察することで、高精度に実装することができる。顕微鏡ではサブマウント4の側面と出射端面とを同時に観察しながら行うことでこの精度を出すことができる。このように実装されたサブマウント4とLD3の出射端面とは数百nmオーダーの誤差で一致させることができる。詳細な実装方法などは特許文献10などに記載されている。
【0050】
次にサブマウント4を90度回転させ、LD3の出射端面が水平になるようにする。この面に先ほどの光学部材2を載せる。このとき光学部材2はダイボンダーの吸着ピンの先に支持されているが、相手面、すなわちサブマウント4の端面、またはLD3の出射端面に当接することでその方向に倣うようになっている。当接方向に倣った状態で発光点にマイクロレンズの中心が来るように移動する。
【0051】
この時、LDは発光させ、その発光光線がマイクロレンズによって平行光になることを確認することもできる。サブマウント4もしくはLD3の出射端面に倣わせた状態での、光学部材2の平行移動は、ダイボンダーの吸着ピンをマイクロメーターでX軸、Y軸方向に移動することで行っている。
以上に示す作成方法により、本発明の実装方法では光線に対し図3に示す製造公差に抑えることができる。
【0052】
図3は図1に示した各部のそれぞれの外形寸法を示す図である。それぞれの製造公差を±で示している。また、光線の品質に影響を与える重要な公差としては、以下のような数値を実現できる。
表1
画 角 ±0.1度
偏 芯 2 μm
LD−レンズ距離 ±0.1μm
【0053】
【実施形態2】
図4は実施形態2の構成を示す図である。
本実施形態では凸面のマイクロレンズ1を凹面のマイクロレンズ1”に変更した。図4に示すように、LD3側のレンズのみ凹面とし、高屈折率の樹脂によって埋められている。
レンズ面を凹面にすることで入射角を小さくし、反射による光量損失を小さくする。凹面にすると、そのままではレンズのパワーは負になるが、光学部材2よりも屈折率の高い樹脂を充填することで、レンズのパワーを正にし、集光系になるようにする。
【0054】
マイクロレンズ1”を作製する際のフォトリソグラフィー時にUV硬化樹脂を注入する溝を形成する。この溝は数十μmの高さ、幅は数百μm程度有れば良い。実装時には、マイクロレンズ1”の光学部材をサブマウント4に当接した状態で、前記UV硬化樹脂注入溝にUV硬化樹脂を垂らすことによって、UV硬化樹脂は毛細管現象により流れ込む。その流れ込みが終了した段階でUVを照射し硬化する。この際UV硬化樹脂注入溝には、UV硬化樹脂が流れ込める注入口、樹脂が流れる流路、マイクロレンズ1”には流れ込まないような障壁を作り込んでおく。
マイクロレンズ1”は凹面であっても、アナモフィック面にすることや、断面を非円形にできること等は、凸面の場合と同様である。
【0055】
<製造方法>
凹面レンズは通常のリフローによるマイクロレンズ1”作成方法では作ることは難しいが、先に述べたグレースケールマスクを用いることで実現できる。この凹部にUV硬化型の樹脂を封入する。UV硬化樹脂はその屈折率を石英より大きく1.6程度にした。高い屈折率にすることで、このレンズには、LD3からの光線の発散角度が小さくなるように働く。つまりは凸面レンズと同等の効果を得ることができる。高い屈折率を実現するにはエポキシ系やビニル系、アクリル系などが用いることができる。今回はエポキシ系を用い、硬度を大きくした。樹脂の硬度が大きければ、石英基板との研磨も可能であり、石英基板と樹脂の面を一致させることもできる。
【0056】
今回は、研磨での製造コストを下げるために、研磨を行わない方法を採用した。その方法は、光学部材2をLD3の出射端面に当接し、この状態で樹脂を流し込み硬化させる。凹部には樹脂が注入できる注入溝を形成しておけば、毛細管現象を利用して当接状態で注入することができる。ステム4との接合部に形成したUV硬化樹脂注入溝にもUV硬化樹脂を注入し、この状態でアライメントする。アライメントは実施形態1と同様である。この状態でUV照射を光学部材2とステム4の接着を行う接合部にも行い、固定する。実装精度は実施形態1と同様に高くできる。
【0057】
【実施形態3】
図5は実施形態3の構成を示す図である。
本実施形態は、実施形態1とほぼ同じであるが、ステム6の形状が異なっている。すなわち、光学部材2は、ステム6で下面を支持されるのではなく、第一面のみで支持されている。このためステム形状が簡便になり、研磨などの加工がし易く、表面のラフネスが低減し、実装精度が上がる。光学部材2のダイシング面の精度を研磨等で高くする必要がなくなり、簡単なダイシング工程のみとなる。ステム6への光学部材2の固定強度を補強するために、UV硬化樹脂注入溝を大きく取ってある。製造方法、その他は実施形態1に準ずる。
【0058】
【実施形態4】
図6は本発明を光ファイバーへ応用した実施形態4を示す図である。この場合には、発光素子の平面として光ファイバー3’の端面がそれに当る。光学部材2の材質は、伝送する波長によって、変えることができ、長波長の光源を利用する場合には、Si基板を用いることができる。この場合はアライメント方法として、赤外線顕微鏡を利用する。ステム6には、Siなどの結晶が利用され、半導体プロセスの異方性エッチングを使用し、V溝を形成している。V溝は半導体プロセスを利用することで、高い精度で形成することができ、このV溝には光ファイバーが高精度に実装される。
【0059】
ステム6の側面は、ステム6を構成している結晶の結晶方向に合わせられている。これはへき開の加工方向であり、簡便に製造することが可能である。また、この加工方法により、ステム6の側面も非常に高い平面性を有している。この面にファイバーの端面を一致させ、光学部材2の第一面を当接させることで容易に高精度の実装が可能なる。また、ファイバーの表面性が劣化している場合には、マイクロレンズ1とファイバーの間に、ファイバーとほぼ同様の屈折率を有する樹脂を流し込む。これによりファイバー表面での光の散乱がなくなり、高い結合効率を得ることができる。実装時のアライメントマーク9は高精度に形成されているV溝の外形を目標マークとしてアライメントする。
【0060】
【実施形態5】
図7は実施形態5の構成を示す図である。符号11、11’はそれぞれ光学くさびの一面を形成する傾斜面を示す。
LDの発散角は縦方向と横方向では大きく異なる。そのため、そこから発せられる光のプロファイルは縦長な楕円形となる。本実施形態は、LDから発せられる光を整形し、真円とすることが目的である。光学素子の光学面を単なる傾斜面11として、出射面側の傾斜面11’と合わせて光学くさびの役割をさせ、光の発散角を一方向だけ変化させる。この方向を作用方向と呼ぶことにする。
【0061】
本実施形態の傾斜面11は縦方向の発散角を縮小させるように作られている。傾斜面11はLD3から発せられる光の発散角から計算し、その光のプロファイルが真円になるように設計した。なお、傾斜面11’は光学部材2の第2面の光学面そのものの場合もある。作成方法は実施形態1ないし4とほぼ同様である。
【0062】
発せられた光の主光線の進行方向がLD3に対し垂直になるように設計したいところであるが、主光線はLD3を出たときはLD3の出射端面に対し垂直であっても、光学くさびへ入射するとその方向が変えられてしまう。しかし、光学くさびの出射面が入射面と平行になっていると主光線の向きは元に戻り、LD3の出射端面に対して垂直になる。ただし、入射面と出射面が平行であると、この2面では三角プリズムが構成できず、光束の発散角の補正はできない。したがって、本方式においては主光線の向きは、複合光学装置出射後、LD3の出射端面に対して垂直にはできない。
【0063】
図8は光学くさびの作用により発散角度が変化する様子を説明するための図である。図8(a)は最大偏角を説明する図、図8(b)は発散角度が拡大する様子を説明する図、図8(c)は発散角度が縮小する様子を説明する図である。
光学くさびはいわゆる三角プリズムと同種のものであり、光束の入射の仕方で発散角を拡大も縮小もできる。同図(a)に示すように、三角プリズムには最大偏角θMというものがある。入射面に対する光線の入射角が、出射面に対する出射角に等しいとき、入射光線と出射光線のなす角度、すなわち偏角が最大になる。それ以外の角度で入射した光線の偏角たとえばθ1、θ2は、その入射角が最大偏角の入射角から離れるにしたがって、より小さくなる。図において、θM>θ1であり、かつ、θM>θ2である。
【0064】
したがって、すべての光束の入射角が最大偏角の入射角度θMより大きい場合、光束の発散角は拡大する。その様子を図8(b)に示す。図において、入射光束の発散角度をΘI、出射光束の発散角度をΘOとすると、ΘO>ΘIとなる。逆にすべての光束の入射角がその角度θMより小さい場合、光束の発散角度は縮小する。その様子を図8(c)に示す。図において、ΘO<ΘIとなる。光束の中間の光線の入射角が最大偏角θMに一致すると、その光線を境に一方は発散角が拡大し、他方は発散角が縮小するので、光束の強度分布に偏りが生ずる。
【0065】
本実施形態で示す光学くさびは光学部材2の第一面に形成した傾斜面11と第二面に形成した傾斜面11’の2面で三角プリズムの役割を果たす。第二面の傾斜面11’を省略した場合は、第二面の傾斜面11’の代わりに第二面の光学面自身がその役割をする。
【0066】
上記の性質を利用すると、光学くさびの構成は2通りが可能である。すなわち、光束の断面の楕円形に対して、長軸側の発散角度を縮小する構成と、短軸側の発散角度を拡大する構成である。実施形態5では長軸側の発散角度を縮小する例で示したが、光束の径をなるべく大きく整形したい場合は短軸側の発散角度を拡大する構成にすればよい。
【0067】
<作製方法>
傾斜面11、11’の光学部材は石英基板を用いる。この表面は研磨によって仕上げられているため、その表面粗さは数nmとなる。この表面に傾斜面11、11’をグレースケールマスクで作製する。これによって、作製された傾斜面11、11’の断面は図7に示す。傾斜面11、11’の表面には反射防止膜を施す。この傾斜面11、11’を形成した石英基板をダイシングによって、切り出して光学部材2とする。形状は1mm角程度とした。この光学部材2を、LD3を実装したサブマウント4に実装する。サブマウント4はLD3当接面と、光学部材の第一面とにUV硬化樹脂で固定されている。
【0068】
LD3はへき開によって外形加工されたものを用いる。LD3はジャンクションダウンとして、エピタキシャル面を下にサブマウント4に実装する。サブマウント4の側面とLD3の出射端面とはほぼ同一面で平行になるように実装する。この作業はダイボンダーを用い、顕微鏡で観察することで、高精度に実装することができる。顕微鏡ではサブマウント4の側面と出射端面とを同時に観察しながら行うことでこの精度を出すことができる。このように実装されたサブマウント4とLD3の出射端面とは数百nmオーダーで一致する。
【0069】
次にサブマウント4を90度回転させ、LD3の出射端面が水平になるようにする。この面に先ほどの傾斜面を有する光学部材2を載せる。この時光学部材2はダイボンダーの吸着ピンの先に支持されているが、相手面に当接することでその方向に倣うようになっている。今回は、先に述べた方法を用いることで、パッシブアライメントを行った。サブマウント4もしくはLDの出射端面に倣わせた状態での、光学部材2の平行移動は、ダイボンダーの吸着ピンをマイクロメーターでX軸、Y軸方向に移動することで行っている。
【0070】
【実施形態6】
図9は実施形態6の構成を示す図である。
符号21、21’は楕円形回折格子を示す。
本実施形態では、光のプロファイルの整形方法として、楕円形回折格子21、21’を利用した。楕円形回折格子21,21’は波長レベルの格子を光学部材上に同心の楕円の溝として形成することで光のプロファイルをコントロールすることができる。
【0071】
楕円形回折格子21はLD3から数十μmほど、光学部材側へ離れた部分に形成されている。楕円形回折格子21,21’はLDから発せられた光が真円となり、平行光になるように設計してある。楕円形回折格子21,21’とLDの出射端面との距離は、高い精度で設計値にあった実装が望まれる。本実施形態では、ドライエッチングによって、その距離を制御していることにより、高い精度を得ることができている。
【0072】
<作製方法>
楕円形回折格子21,21’の光学部材は石英ウェハーをもちいる。この表面は研磨によって仕上げられているため、その表面の粗さは数nmとなる。楕円形回折格子21,21’はグレースケールマスクで作製し、回折格子表面には反射防止膜を施す。これによって、作製された楕円形回折格子21,21’の断面は図9に示されるように構成した。この回折格子面を形成した石英基板をダイシングによって切り出し、光学部材2とする。形状は1mm角程度とした。この光学部材2を、LD3を実装したサブマウント4に実装する。サブマウント4は、LD3当接面と、光学部材2の側面とにUV硬化樹脂で固定されている。
【0073】
LD3はへき開によって外形加工されたものを用いる。LD3はジャンクションダウンとして、エピタキシャル面を下にサブマウント4に実装する。サブマウント4の側面とLD3の出射端面とはほぼ同一面で平行になるように実装する。この作業はダイボンダーを用い、顕微鏡で観察することで、高精度に実装することができる。顕微鏡ではサブマウント4の側面と出射端面とを同時に観察しながら行うことでこの精度を出すことができる。このように実装されたサブマウント4とLD3の出射端面とは数百nmオーダーで一致する。
【0074】
次にサブマウント4を90度回転させ、LD3の出射端面が水平になるようにする。この面に先ほどの光学部材2を載せる。このとき光学部材2はダイボンダーの吸着ピンの先に支持されているが、相手面に当接することでその方向に倣うようになっている。今回は、先に述べた方法を用いることで、パッシブアライメントを行った。サブマウント4もしくはLD3の出射端面に倣わせた状態での、光学部材2の平行移動は、ダイボンダーの吸着ピンをマイクロメーターでX軸Y軸方向に移動することで行っている。
【0075】
【実施形態7】
図10は実施形態7の構成を示す図である。図10aは側面図である。図10bは平面図であるが、説明に必要な部分以外は省略してある。
符号31、31’はシリンドリカルレンズを示す。
本実施形態では、光のプロファイルの整形方法として、シリンドリカルレンズ31,31’を利用した。シリンドリカルレンズ31、31’は長辺方向には平行な形状をしており、その方向で得られる実装精度は飛躍的に高くなる。そのため、その方向での実装に関わるコストが低減する。
【0076】
シリンドリカルレンズは、長辺方向には光学的パワーを持たず、それと直交する一方向のみ光学的パワーを持つ。光学的パワーを持つ方向を作用方向と呼ぶことがある。発散角度の大きい方の向きの光束、すなわち、光のプロファイルの楕円形の長軸方向を収束させて、発散角度の小さい方の向きの光束、すなわち、短軸方向の発散角度に合わせることによって、LD3から発せられる光のプロファイルを楕円形から円形になるように設計することができる。
【0077】
図のように、シリンドリカルレンズ31の作用方向を発散角度の大きい方の向きに合わせて光束を収束させるようにし、シリンドリカルレンズ31’の作用方向を発散角度の小さい方の向きに合わせて光束を収束させるように配置し、シリンドリカルレンズ31の光学的パワーをシリンドリカルレンズ31’のそれより大きく設定すると、光束のプロファイルを円形に整形するための設計が比較的容易になる。
シリンドリカルレンズ31とLD3の出射端面との距離は、高い精度で設計値にあった実装が望まれる。本実施形態では、ドライエッチングによって、その距離を制御していることにより、高い精度を得ることができている。
【0078】
<作製方法>
シリンドリカルレンズ31、31’の光学部材は石英ウェハーをもちいる。この表面は研磨によって仕上げられているため、その表面の粗さは数nmとなる。この表面にシリンドリカルレンズ31、31’をグレースケールマスクで作製する。
【0079】
これによって、作製されたシリンドリカルレンズ31、31’の断面は図10に示されるようにし、レンズ表面には反射防止膜を施す。このシリンドリカルレンズ31、31’を形成した石英基板をダイシングによって切り出し、光学部材2とする。形状は1mm角程度とした。シリンドリカルレンズ31の頂点は光学部材2の第一面より低く形成されている。この光学部材2を、LD3を実装したサブマウント4に実装する。サブマウント4は、LD3の当接面と、光学部材2の側面とにUV硬化樹脂で固定されている。
【0080】
LD3はへき開によって外形加工されたものを用いる。LD3はジャンクションダウンとして、エピタキシャル面を下にサブマウント4に実装する。サブマウント4の側面とLD3の出射端面とはほぼ同一面で平行になるように実装する。この作業はダイボンダーを用い、顕微鏡で観察することで、高精度に実装することができる。顕微鏡ではサブマウント4の側面と出射端面とを同時に観察しながら行うことでこの精度を出すことができる。このように実装されたサブマウント4とLD3の出射端面とは数百nmオーダーで一致する。
【0081】
次にサブマウントを90度回転させ、LD3の出射端面が水平になるようにする。この面に先ほどの光学部材2を載せる。この時、光学部材2はダイボンダーの吸着ピンの先に支持をされているが、相手面に当接することでその方向に倣うようになっている。今回は、先に述べた方法を用いることで、パッシブアライメントを行った。サブマウント4もしくはLD3の出射端面に倣わせた状態での、光学部材2の平行移動は、ダイボンダーの吸着ピンをマイクロメーターでX軸、Y軸方向に移動することで行っている。
【0082】
第一面に形成するシリンドリカルレンズ31の光学面は、マイクロレンズ1の場合と同様レンズ面を凹面のシリンドリカルレンズ31”に作り込むことができる。その場合は光束の発散角の小さい方の向き、すなわち、光のプロファイルの楕円形の短軸方向をシリンドリカルレンズ31”作用方向に合わせるとよい。
凹部には光学部材2よりも屈折率の高い透明樹脂を充填することで、パワーが負になることを防いで正のパワーのレンズ系として用いることもできる。。
また、第一面に形成するシリンドリカルレンズ31の光学面の光学的パワーを有する断面を非円形面にすることも同様にできる。
【0083】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、従来の方法のような、スペーサーとレンズとを個別に作りこむ必要もなく、光学部材を削るだけで、スペーサーとレンズの機能を持たせることが可能にり、低コストでの製造を可能になった。
【0084】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の複合光学装置において、LDの光の出射端面に光学部材の第一面を直接当接させて高い精度で同一面とすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の複合光学装置において、発光素子と光学素子の間に介在する要素が少ないので精度よく両者の距離が設定できる。
【0085】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の複合光学装置において、第一面に凸の部分がないので第一面の研磨が簡単にできる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の複合光学装置において、光源が非常に小さく作れる。
【0086】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の複合光学装置において、光学素子が2つの面に形成されているので、所望の光学的性能を得ることが比較的容易になる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、精度よく光束のプロファイルを整形することができる。
【0087】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の複合光学装置において、1つの光学面でも光束のプロファイルを整形することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、一方向のみの光学的パワーで光束のプロファイルを整形することができる。
【0088】
請求項10に記載の発明によれば、請求項9に記載の複合光学装置において、光束のプロファイルを円形の整形するための設計が容易になる。
請求項11に記載の発明によれば、請求項7ないし10のいずれか1つに記載の複合光学装置において、光学部材の第一面から飛び出している部分がないので、相手面との当接が精度よく行える。
【0089】
請求項12に記載の発明によれば、請求項7ないし9のいずれか1つに記載の複合光学装置において、連図面に凹面を採用することで設計の自由度が増す。
請求項13に記載の発明によれば、請求項7ないし12のいずれか1つに記載の複合光学装置において、レンズ系固有の各種収差が取り除かれて、高品質な光束が得られる。
【0090】
請求項14に記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、単純な平面によって光束のプロファイルを整形することができる。
請求項15に記載の発明によれば、請求項14に記載の複合光学装置において、入射光束の発散角度よりも出射光束の発散角度の方が大きくなる。
【0091】
請求項16に記載の発明によれば、請求項15に記載の複合光学装置において、半導体レーザの発散角度が小さい方を大きくして大きい方の発散角度に合わせることができる。
請求項17に記載の発明によれば、請求項14に記載の複合光学装置において、入射光束の発散角度よりも出射光束の発散角度の方が小さくなる。
【0092】
請求項18に記載の発明によれば、請求項17に記載の複合光学装置において、半導体レーザの発散角度が大きい方を小さくして小さい方の発散角度に合わせることができる。
請求項19に記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、入射光束の主光線に垂直な平面の光学素子で光束のプロファイルを整形することができる。
【0093】
請求項20に記載の発明によれば、請求項1ないし19のいずれか1つに記載の複合光学装置において、光学的性能の調整をすることができる。
請求項21に記載の発明によれば、請求項20に記載の複合光学装置において、凹面によって負のパワーが発生することを防ぐことができる。。
【0094】
請求項22に記載の発明によれば、請求項20に記載の複合光学装置において、発光素子として光ファイバーの出射端面を用いた場合、該出射端面のラフネスが光を散乱させるのを防ぐことができる。
請求項23に記載の発明によれば、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の複合光学装置において、発光素子と光学素子の間の距離が、接着剤の存在によって変化するようなことがない。
【0095】
請求項24に記載の発明によれば、請求項1ないし23のいずれか1つに記載の複合光学装置において、LDと光学部材との位置あわせが非常に簡単になる。請求項25に記載の発明によれば、請求項24に記載の複合光学装置を製造する製造方法であって、アライメントマークの存在で、発光素子の出射端面もしくはそれに準ずる面と、光学部材の第一面とを当接接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態1の構成を示す正面図である。
【図3】図1に示した各部のそれぞれの外形寸法を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3の構成を示す図である。
【図6】本発明を光ファイバーへ応用した実施形態4を示す図である。
【図7】本発明の実施形態5の構成を示す図である。
【図8】光学くさびの作用により発散角度が変化する様子を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態6の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施形態7の構成を示す図である。
【図11】LDとマイクロレンズの実装の、従来の形態を説明するための図である。
【図12】凸面と凹面の面の接線に対する入射角の違いを説明するための図である。
【符号の説明】
1 マイクロレンズ
2 光学部材
3 半導体レーザ(LD)
4 サブマウント
5 UV硬化樹脂注入溝
6 ステム
7 UV硬化樹脂
8 LDのエピタキシャル面
9 アライメントマーク
11 傾斜面
21 楕円回折格子
31 シリンドリカルレンズ
Claims (25)
- 発光素子と、光学素子を含む光学部材と、を集積してなる複合光学装置において、前記光学部材は第一面と、該第一面に対面する第二面とを有し、前記光学素子は前記第一面の一部を加工してなり、前記発光素子の出射端面もしくはそれに準ずる面に前記光学部材の第一面を当接していることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1に記載の複合光学装置において、前記光学部材の第一面が研磨面であることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1または2に記載の複合光学装置において、前記光学部材が、前記発光素子と前記光学素子との距離を一定に支持する機能を有していることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材の第一面に凹部が形成され、該凹部の底部に前記光学素子が形成されていることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし4のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記発光素子が、半導体レーザーであることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし5のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材の第二面にも光学素子を形成したことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子がマイクロレンズであることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項7に記載の複合光学装置において、前記マイクロレンズの光学面がアナモフィック面であることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子がシリンドリカルレンズであることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項9に記載の複合光学装置において、前記シリンドリカルレンズは、前記光学部材の第一面においては、光束の断面の楕円形の長軸方向に作用方向を合わせ、第二面においては光束の断面の楕円形の短軸方向に作用方向を合わせることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項7ないし10のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記第一面における前記光学素子の頂点の高さが、前記光学部材の第一面より低いことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項7ないし9のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記第一面における前記光学素子のレンズ面が凹面であることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項7ないし12のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子の光学面の光学的パワーを有する断面が非円形面であることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子が光学くさびであることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項14に記載の複合光学装置において、前記第一面に入射するすべての光束の入射角が、前記第一面、および第二面の光学面によって形成される光学くさびの最大偏角に対応する角度より大きくなるように前記光学面を形成することを特徴とする複合光学装置。
- 請求項15に記載の複合光学装置において、前記半導体レーザからの出射光の光束のうち、発散角度が小さい方の方向に前記光学くさびの作用方向を合わせることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項14に記載の複合光学装置において、前記第一面に入射するすべての光束の入射角が、前記第一面、および第二面の光学面によって形成される光学くさびの最大偏角に対応する角度より小さくなるように前記光学面を形成することを特徴とする複合光学装置。
- 請求項17に記載の複合光学装置において、前記半導体レーザからの出射光の光束のうち、発散角度が大きい方の方向に前記光学くさびの作用方向を合わせることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし6のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学素子が楕円形回折格子であることを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし19のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記凹部の、前記光学素子が存在しない空間を、前記光学部材とは屈折率が異なる透明部材で充填したことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項20に記載の複合光学装置において、前記透明部材の屈折率が前記光学素子の屈折率より大きいことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項20に記載の複合光学装置において、前記発光素子が光ファイバー端面であり、前記透明部材の屈折率が前記発光素子の屈折率と概ね等しいことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし22のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材の第一面に、溝を形成しその溝に接着剤を注入したことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項1ないし23のいずれか1つに記載の複合光学装置において、前記光学部材にアライメントマークを形成したことを特徴とする複合光学装置。
- 請求項24に記載の複合光学装置を製造する製造方法であって、前記光学部材のアライメントマークを発光素子の平面上にあるマークにアライメントし、発光素子の出射端面もしくはそれに準ずる面と、光学部材の第一面とを当接接合することを特徴とする複合光学装置の製造方法。
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