JP2004101408A - 試料濃縮方法及び装置並びに試料分析方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料中の被測定物質の濃縮が求められる場合、試料台上の所定領域に容易にかつ正確に、しかも大きな労力を要することなく効率よく濃縮できるようにした試料濃縮方法及び装置と、それらを使用して効率よく試料を分析できるようにした試料分析方法及び装置を提供する。
【解決手段】被測定物質を含有した溶液からなる試料を、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮することを特徴とする試料濃縮方法及び装置、並びにそれらを使用した試料分析方法及び装置。
【選択図】 図1
【解決手段】被測定物質を含有した溶液からなる試料を、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮することを特徴とする試料濃縮方法及び装置、並びにそれらを使用した試料分析方法及び装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被測定物質を含有した溶液からなる試料中の被測定物質量を効率的に測定できるようにした、試料濃縮方法及び装置並びに試料分析方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶液からなる試料中の被測定物質量を高精度でかつ効率よく測定することは、各種産業分野で望まれている。たとえば超純水を汎用している半導体製造分野においては、近年ますます高純度の超純水が要求されている。超純水の製造においては、超純水中に含まれるイオン、金属、微粒子、生菌、シリカ、全有機炭素等を各種測定装置で測定し、水質管理を行っている。この超純水の製造において、目標とする水質が維持されていることを確認することは重要であり、半導体製造分野では、超純水中の不純物は、製品の品質や歩留りに大きな影響を及ぼすため、正確な分析が必要とされている。
【0003】
また、火力発電所や原子力発電所の復水脱塩装置においても、高度な水処理が要求され、復水中の不純物の正確な分析が要求されている。
【0004】
また、水中の不純物に限らず、薬品製造分野等では、たとえば有機溶剤中の不純物を高度に処理する必要があり、そのために正確な分析が要求されている。
【0005】
上記のような高純度の水や溶液が求められる分野においては、測定や分析の対象となる不純物は、通常、ごく微量しか含まれていない場合が多く、このような微量の不純物を測定、分析するには、その前処理として、試料の濃縮が必要であることが多い。
【0006】
試料の濃縮には、通常、蒸発器による濃縮、カラム等に吸着させる固相濃縮などが行われている。また、分析方法として、赤外分光法、顕微赤外分光法、光電子分光法、二次イオン質量分析法、全反射蛍光X線法などの分析法では、試料台に付着、吸着させた試料を高感度で分析することができる。これらの分析法で、溶液中の目的成分を分析する場合、マイクロシリンジやマイクロピペット等を用いて、試料台に試料を滴下し、試料台上で溶液を乾燥させて目的成分を試料台上に残渣として残し、それを測定するようにしている。目的成分の濃度が低く、感度不足となる場合には、この滴下、乾燥の操作を複数回繰り返すことにより、目的成分を濃縮する。
【0007】
しかし、測定対象とする目的成分の濃度がより低い場合には、上記の濃縮操作を数十回も繰り返す必要が生じ、多大な労力と時間を費やすことになる。また、効率よく濃縮するためには、試料台の微小領域内に再現性良く試料を滴下する必要がある。たとえば、顕微赤外装置の測定領域は10〜250μmであるが、このような微小領域内に再現性良く溶液を滴下、濃縮させることは極めて困難である。
【0008】
一方、試料台(測定基板)上に試料溶液を微量滴下し、それを乾燥して、測定対象となる目的成分を、試料台上で広がりすぎないようにして所定微小領域内に効率よく濃縮するようにした方法が、特許文献1や特許文献2に提案されている。しかしながら、これらの提案は、いずれも、基本的に、試料台上に1回だけ試料を滴下し、それを如何に効率よく濃縮することができるかに関するものである。したがって、前述の如く、測定対象とする目的成分の濃度が極めて低く、試料滴下、濃縮操作を複数回、とくに数十回も繰り返す必要がある場合には、このような方法を問題の解決手法としてそのまま採用することは困難である。
【0009】
【特許文献1】
特許第2772361号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平5−240785号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、測定や分析に際し、試料中の被測定物質の濃縮が求められる場合、試料台上の所定領域に容易にかつ正確に、しかも大きな労力を要することなく効率よく濃縮できるようにした試料濃縮方法及び装置と、それらを使用して効率よく試料を分析できるようにした試料分析方法及び装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る試料濃縮方法は、被測定物質を含有した溶液からなる試料を、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮することを特徴とする方法からなる。
【0012】
この試料濃縮方法においては、試料供給口から流出される試料について、液滴として試料供給口から離れることを防止しつつ、流出された試料の先端部を試料台表面に到達させることが好ましい。つまり、試料供給口から流出される試料が液滴になって断続的に滴下すると、試料台表面に到達した後滴下の勢いで試料台表面上を広がりやすくなるので、所定の微小領域内に濃縮させることが難しくなる。また、滴下した溶液の液摘がひろがる前に蒸発により濃縮することも難しくなる。液滴として試料供給口から離れることを防止することにより、たとえば、連続的に試料供給口から流出される試料が、試料台表面に広がることなく、常に試料供給口と試料台表面との間に所定体積以下の状態で、挟まれるように保持される状態を維持し続けることにより、確実にかつ容易に、試料台表面の所定の微小領域内に濃縮させることが可能になる。ただしこの場合、流出された試料の先端部が試料台表面に到達した後、蒸発により、連続的に供給されている試料の流れが一旦途切れる状態が発生したとしても、後続の流出試料は試料供給口から離れない状態に維持されているので、つまり、液滴になって落下する状態とはならないので、別段問題は生じない。
【0013】
また、試料台表面での溶液の蒸発を上記条件を満たすように、より容易にかつ精度良く制御するためには、試料台を加熱することが好ましい。加熱温度としては、溶液の種類や被測定物質の種類、試料の供給速度等に応じて適宜設定すればよい。
【0014】
また、試料供給口と試料台表面との間に、溶液の蒸発を促進する気体を流すこともできる。このようにすれば、蒸発速度を高めて、容易に目標とする蒸発速度と流入速度の関係に制御できる。蒸発促進気体としては、残渣として残る被測定物質に影響を与えないように、不活性ガス(たとえば、窒素ガス)を使用することが好ましい。
【0015】
本発明に係る試料分析方法は、このような試料濃縮方法を利用するもので、被測定物質を含有した溶液からなる試料を、所定量、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮し、前記所定量に対する残渣量から、試料中の被測定物質の濃度を求めることを特徴とする方法からなる。
【0016】
本発明に係る試料濃縮装置は、被測定物質を含有した溶液からなる試料を供給する試料供給路と、該試料供給路の端部に開口された試料供給口と、該試料供給口と間隔をもって配置され、試料供給口から流出されてきた試料が表面に連続的に流入される試料台と、該試料台の表面に流入された試料中の被測定物質の残渣を濃縮すべく試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御する溶液蒸発/流入速度制御手段を有することを特徴とするものからなる。
【0017】
この試料濃縮装置においては、前述した理由から、上記試料供給路が、試料供給口から流出される試料について、液滴として試料供給口から離れることを防止しつつ、流出された試料の先端部を試料台表面に到達させるものからなることが好ましい。
【0018】
また、試料を所望の流速で供給するために、上記試料供給路に、試料の供給速度を制御可能なポンプが設けられていることが好ましい。ただし、本発明は、上記試料供給路が、試料の自然落下を利用して試料を供給するものに構成されている場合にも成立する。この場合においても、上記溶液蒸発速度と溶液流入速度の関係が維持される限り、所定量の試料を流し切ることにより、試料台表面上に目標とする被測定物質の残渣を濃縮することができる。自然落下を利用する試料供給路とする場合には、その試料供給路に絞り等を設けておけば、流下速度をコントロールすることも可能となる。
【0019】
また、溶液蒸発/流入速度を所定の関係により容易に精度良く制御するために、上記溶液蒸発/流入速度制御手段を、試料台に付設された加熱手段を有するものに構成することが好ましい。また、溶液蒸発/流入速度制御手段を、試料供給口と試料台表面との間に、溶液の蒸発を促進する気体を流す蒸発促進気体供給手段を有するものに構成することも好ましい。
【0020】
本発明に係る試料分析装置は、このような試料濃縮装置を使用したもので、被測定物質を含有した溶液からなる試料を所定量供給する試料供給路と、該試料供給路の端部に開口された試料供給口と、該試料供給口と間隔をもって配置され、試料供給口から流出されてきた試料が表面に連続的に流入される試料台と、該試料台の表面に流入された試料中の被測定物質の残渣を濃縮すべく試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御する溶液蒸発/流入速度制御手段と、試料台表面に濃縮された被測定物質の残渣量を測定する手段と、前記所定量に対する残渣量から、試料中の被測定物質の濃度を求める手段とを有することを特徴とするものからなる。
【0021】
上記のような本発明に係る試料濃縮方法及び装置においては、試料供給口から流出されてくる試料溶液が、次々と予め定められた試料台表面の一定の領域に到達し、試料台表面における所定領域外に広がることなく、次々と溶液が蒸発されて、その所定領域内に被測定物質が残渣として濃縮される。したがって、従来のように試料液滴を数十回も微小領域に滴下させるような操作は不要になり、実質的に人手による操作無しに自動的に濃縮操作を行うことができ、濃縮労力、時間の大幅な低減、濃縮の容易化を達成して効率の良い濃縮が可能になるとともに、微小な所定領域内への高精度の濃縮が可能となり、濃縮精度の向上が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る試料分析方法及び装置においては、上記の如く効率の良い高精度な濃縮が可能になる結果、極めて低い濃度の被測定物質であっても、濃縮度を適切に設定することにより、その濃度を容易にかつ高精度で測定、分析できるようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本発明の一実施態様に係る試料濃縮装置1を示している。図1に示す試料濃縮装置1においては、被測定物質を含有した試料は、流量制御が可能な送液ポンプ2により、所定の一定速度で、配管で構成された試料供給路3内を順次送液される。試料供給路3の先端部には、試料供給口4が、試料台5の表面5aに向けて開口されている。この試料供給口4と試料台表面5aとの間には、所定の間隔が開けられており、図2に示すように、試料供給口4から連続的に流出された試料6が、試料供給口4から液滴となって落下することのないように、流出試料6があたかも試料供給口4と試料台表面5aとの間に挟まれた状態となって流出試料6の先端部が試料台表面5aに到達するように、この間隔が設定されている。この間隔は、試料供給口4と試料台表面5aとの間で落下液滴を生じさせないように、たとえば0.1〜1mm程度の間隔に設定できる。
【0024】
試料台5の表面5aには、試料供給口4からの流出試料6が、実質的に連続的に流入されるが、この試料台表面5aにおける溶液の蒸発速度が溶液流入速度以上に設定される。つまり、上記のように試料供給口4と試料台表面5aとの間にあたかも挟まれるように連続的に供給されてくる試料6について、その溶液が蒸発する速度と同じ速度で、または蒸発する速度よりも遅い速度で試料6がこの部分に供給されるように、供給速度が設定される。したがって、この速度関係はまず、試料台表面5aでの溶液自然蒸発速度と溶液流入速度との関係として設定することができる。また、後述の如く、試料台に加熱手段を付設して試料台表面5aで試料6を加熱できるようにする場合には、加熱による強制的な蒸発を考慮して両速度関係を設定することができる。さらには、後述の蒸発促進気体供給手段を設けて、蒸発促進気体により強制的に蒸発できるようにする場合には、この蒸発促進気体による強制的な蒸発を考慮して両速度関係を設定することもできる。
【0025】
この蒸発速度の溶液流入速度以上への設定により、次々と送られてくる試料6中の被測定物質を、試料台表面5a上の所定の微小領域に残渣として残し、そこで濃縮することができるようになる。このとき、蒸発するよりも速く送液されると、試料溶液が試料台表面5a上で広がってしまい、所定の微小領域に効率よく濃縮することができない。また、前述の如く、試料供給口4から連続的に流出される試料6を、試料供給口4から液滴状に落下させてしまうと、やはり試料溶液が試料台表面5a上で広がってしまい、所定の微小領域に効率よく濃縮することができない。したがって、前述の試料供給口4と試料台表面5aとの間隔の設定も、効率のよい濃縮にとって重要な要素となる。また、試料供給路3を形成する配管には供給試料の性状に影響を及ぼさない限りどのようなものも使用可能であり、その先端の開口形状にも特に限定はないが、被測定物成分を試料台表面5aの微小領域内に効率よく濃縮するには、配管の内径が小さい方が効率的である。
【0026】
試料溶液が、アルコール、アセトン、ヘキサン等の揮発性の溶媒であれば、蒸発速度は速いが、水溶液等の場合、蒸発が遅いため、上記溶液蒸発速度と溶液流入速度との関係を保つには、試料台5を下方から加熱することが有効である。本実施態様では、図1に示すように、試料台5の下部に加熱装置7(たとえば、温度制御可能なヒータ)が付設されており、試料台表面5aの温度を所望の温度に制御できるようになっている。
【0027】
また、被測定物質の耐熱性が低い場合などには、加熱装置7により高温加熱できない場合もあるので、そのような場合に蒸発を速めるには、試料供給口4と試料台表面5aとの間に、溶液の蒸発を促進する気体を流す蒸発促進気体供給手段8を設けることも有効である。蒸発促進気体としては、窒素ガス等の不活性ガスを使用するのが好ましい。
【0028】
したがって、自然蒸発を利用する場合には、主として試料供給路3における試料供給速度や試料供給口4と試料台表面5aとの間隔を設定する手段が溶液蒸発/流入速度制御手段として機能し、加熱手段を有する場合には、それらに加えて加熱装置7も溶液蒸発/流入速度制御手段として機能し、蒸発促進気体を用いる場合には、さらに、蒸発促進気体供給手段8も溶液蒸発/流入速度制御手段として機能することになる。
【0029】
試料台5としては、前述したようなそれぞれの分析法で通常使用される試料台で、溶液により溶解や侵食を受けないものであれば、いずれも使用できる。たとえば、顕微赤外分光法であれば、水溶液試料の場合、Ge、ZnSe、CaF2 、BaF2 の結晶、シリコンウエハー等により構成された試料台が使用できる。アルコール、アセトン、ヘキサン等の有機溶剤の場合には、上記の他に、KRS−5(ヨウ化タリウムと臭化タリウムの混晶)、KCl、KBr、NaCl等の結晶により構成された試料台が使用できる。
【0030】
また、上記実施態様では、試料の供給を送液ポンプ2で行うようにしたが、図3に示すように、試料の自然落下を利用して試料を供給するものに構成することも可能である。図3に示す試料濃縮装置11においては、試料受け槽12に所定量の試料が投入され、所定の試料供給路13を流下されて下端に開口された試料供給口14から、所定の間隔を介して、試料台5の表面5aに向けて流出される。このときにも、溶液の蒸発速度が試料流入速度以上になるように設定される。試料受け槽12に所定量投入された試料は、流出し切ればよい。さらに、試料の流下速度を制御したい場合には、試料供給路13に絞り弁15等を設けておけばよい。
【0031】
上記のように構成された試料濃縮装置1、11においては、試料台5に次々と連続的に供給されてきた試料が、試料台表面5aにおいて溶液が蒸発され、該試料台表面5a上に、試料溶液中に含有されていた被測定物質が残渣として、濃縮される。試料台表面5aにおいて溶液蒸発速度が溶液流入速度以上に設定されているので、流入されてきた試料は試料台表面5a上に広がることはなく、所定の微小領域内に効率よく被測定物質が濃縮される。しかも、試料供給口4から流出される試料が液滴となって試料供給口4から離れることも防止されているので、この面からも、試料が試料台表面5a上に広がることはなく、所定の微小領域内に効率よく被測定物質が濃縮される。
【0032】
次々と送られてくる試料溶液中の被測定物質が、試料台表面5aの所定の微小領域内に効率よく濃縮されるので、従来のように人手により数十回も微小領域内に液滴を滴下するような操作は全く不要になり、労力が大幅に軽減されるとともに、微小領域を狙って滴下させるような操作上の困難性も除去され、濃縮操作が大幅に容易化される。また、被測定物質は、確実に所定の微小領域内に濃縮されていくので、高精度の濃縮が可能になる。しかも、本発明における濃縮操作は、実質的に自動で行うことができるので、濃縮操作の容易化、効率化とともに、濃縮時間の短縮も可能となる。
【0033】
このような効率的な濃縮により、試料溶液中の被測定物質の分析、とくに濃度測定が容易化され、測定精度も大幅に向上され、濃縮による感度向上も可能になる。試料溶液中の被測定物質の濃度測定においては、基本的に、試料供給路を介して試料台表面に供給された試料の量に対し、試料台表面に残渣として残された被測定物質の量を求めることにより、濃度を求めることができる。このような被測定物質の濃度を求める方法(手段)としては、前述した、赤外分光法、顕微赤外分光法、光電子分光法、二次イオン質量分析法、全反射蛍光X線法などのいずれの分析法(分析手段)も適用できる。
【0034】
【実施例】
図1に示した装置を用いた実施例において、試料台としてシリコンウエハーを用い、平均分子量50,000のポリスチレンスルホン酸を0.01ppm含む水溶液を、高性能液体クロマトグラフ用送液ポンプを使用し、ポンプに接続された配管の先端にマイクロシリンジの針を取り付け、針とシリコンウエハーとの間にあたかも針から流出してきた溶液が挟み込まれるように間隔を設定し、その位置関係に固定した。上記水溶液を流速0.002ml/minで送液した。シリコンウエハーは加熱手段としてのホットプレート上に載せて、60℃に加熱した。0.2ml送液後、シリコンウエハーの表面に残った試料残渣を、顕微赤外分光法により下記測定条件にて測定した。
【0035】
比較例として、同じ試料溶液を、マイクロシリンジを用いて人手により約2μlを60℃に加熱したシリコンウエハー上に滴下し、乾燥させ、この操作を10回繰り返して、残った試料を顕微赤外分光法により測定した。
【0036】
測定条件
装置:日本バイオラッドラボラトリーズ社製フーリエ変換型赤外分光光度計
FTS−175
付属装置 赤外顕微鏡UMA500(同社製)
測定法 透過法
分解能 4cm−1
測定領域 100μm×100μm
積算回数 256
【0037】
上記実施例、比較例における結果を、波数(Wavenumber(cm−1))と吸光度(Absorbance)との関係として図4に示す。マイクロシリンジを用いて10回濃縮を行った試料Aでは(比較例)、ポリスチレンスルホン酸の吸収は確認できていない。送液ポンプを使用して濃縮した試料Bでは(実施例)、ポリスチレンスルホン酸の吸収が明瞭に検出されている。送液ポンプを用いた濃縮は、100倍以上の濃縮に相当し、マイクロシリンジによる濃縮に比較して、大幅な労力の削減になる。濃縮面については、送液ポンプを用いた場合は、試料台の微小面積の微小領域内に固定されるため効率的に濃縮されるが、マイクロシリンジを用いた手作業では、毎回同じ位置に溶液を滴下することは困難である。また、蒸発器等を用いた濃縮に比較して、送液ポンプを用いた濃縮は、微小面積内で濃縮されるため、外部からの汚染を最小限に抑えることができる。
このように本発明においては、濃縮操作の効率化を行うことができ、それに伴って検出下限を大幅に低下させることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る試料濃縮方法及び装置によれば、試料台表面における溶液蒸発速度と溶液流入速度を所定の関係とすることにより、試料中の被測定物質を試料台上の微小な所定領域に容易にかつ効率よく濃縮することができる。したがって、この試料濃縮方法及び装置を利用した試料分析方法及び装置によれば、低濃度の溶液であっても、所定量の試料溶液とその中に含有されていた被測定物質量との関係を容易にかつ精度よく求めることができ、高精度で濃度測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る試料濃縮装置の概略構成図である。
【図2】図1の装置の拡大部分概略構成図である。
【図3】本発明の別の実施態様に係る試料濃縮装置の概略構成図である。
【図4】実施例、比較例における波数と吸光度との関係図である。
【符号の説明】
1、11 試料濃縮装置
2 送液ポンプ
3、13 試料供給路
4、14 試料供給口
5 試料台
5a 試料台表面
6 流出試料
7 加熱装置
8 蒸発促進気体供給手段
12 試料受け槽
15 絞り弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、被測定物質を含有した溶液からなる試料中の被測定物質量を効率的に測定できるようにした、試料濃縮方法及び装置並びに試料分析方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶液からなる試料中の被測定物質量を高精度でかつ効率よく測定することは、各種産業分野で望まれている。たとえば超純水を汎用している半導体製造分野においては、近年ますます高純度の超純水が要求されている。超純水の製造においては、超純水中に含まれるイオン、金属、微粒子、生菌、シリカ、全有機炭素等を各種測定装置で測定し、水質管理を行っている。この超純水の製造において、目標とする水質が維持されていることを確認することは重要であり、半導体製造分野では、超純水中の不純物は、製品の品質や歩留りに大きな影響を及ぼすため、正確な分析が必要とされている。
【0003】
また、火力発電所や原子力発電所の復水脱塩装置においても、高度な水処理が要求され、復水中の不純物の正確な分析が要求されている。
【0004】
また、水中の不純物に限らず、薬品製造分野等では、たとえば有機溶剤中の不純物を高度に処理する必要があり、そのために正確な分析が要求されている。
【0005】
上記のような高純度の水や溶液が求められる分野においては、測定や分析の対象となる不純物は、通常、ごく微量しか含まれていない場合が多く、このような微量の不純物を測定、分析するには、その前処理として、試料の濃縮が必要であることが多い。
【0006】
試料の濃縮には、通常、蒸発器による濃縮、カラム等に吸着させる固相濃縮などが行われている。また、分析方法として、赤外分光法、顕微赤外分光法、光電子分光法、二次イオン質量分析法、全反射蛍光X線法などの分析法では、試料台に付着、吸着させた試料を高感度で分析することができる。これらの分析法で、溶液中の目的成分を分析する場合、マイクロシリンジやマイクロピペット等を用いて、試料台に試料を滴下し、試料台上で溶液を乾燥させて目的成分を試料台上に残渣として残し、それを測定するようにしている。目的成分の濃度が低く、感度不足となる場合には、この滴下、乾燥の操作を複数回繰り返すことにより、目的成分を濃縮する。
【0007】
しかし、測定対象とする目的成分の濃度がより低い場合には、上記の濃縮操作を数十回も繰り返す必要が生じ、多大な労力と時間を費やすことになる。また、効率よく濃縮するためには、試料台の微小領域内に再現性良く試料を滴下する必要がある。たとえば、顕微赤外装置の測定領域は10〜250μmであるが、このような微小領域内に再現性良く溶液を滴下、濃縮させることは極めて困難である。
【0008】
一方、試料台(測定基板)上に試料溶液を微量滴下し、それを乾燥して、測定対象となる目的成分を、試料台上で広がりすぎないようにして所定微小領域内に効率よく濃縮するようにした方法が、特許文献1や特許文献2に提案されている。しかしながら、これらの提案は、いずれも、基本的に、試料台上に1回だけ試料を滴下し、それを如何に効率よく濃縮することができるかに関するものである。したがって、前述の如く、測定対象とする目的成分の濃度が極めて低く、試料滴下、濃縮操作を複数回、とくに数十回も繰り返す必要がある場合には、このような方法を問題の解決手法としてそのまま採用することは困難である。
【0009】
【特許文献1】
特許第2772361号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平5−240785号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、測定や分析に際し、試料中の被測定物質の濃縮が求められる場合、試料台上の所定領域に容易にかつ正確に、しかも大きな労力を要することなく効率よく濃縮できるようにした試料濃縮方法及び装置と、それらを使用して効率よく試料を分析できるようにした試料分析方法及び装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る試料濃縮方法は、被測定物質を含有した溶液からなる試料を、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮することを特徴とする方法からなる。
【0012】
この試料濃縮方法においては、試料供給口から流出される試料について、液滴として試料供給口から離れることを防止しつつ、流出された試料の先端部を試料台表面に到達させることが好ましい。つまり、試料供給口から流出される試料が液滴になって断続的に滴下すると、試料台表面に到達した後滴下の勢いで試料台表面上を広がりやすくなるので、所定の微小領域内に濃縮させることが難しくなる。また、滴下した溶液の液摘がひろがる前に蒸発により濃縮することも難しくなる。液滴として試料供給口から離れることを防止することにより、たとえば、連続的に試料供給口から流出される試料が、試料台表面に広がることなく、常に試料供給口と試料台表面との間に所定体積以下の状態で、挟まれるように保持される状態を維持し続けることにより、確実にかつ容易に、試料台表面の所定の微小領域内に濃縮させることが可能になる。ただしこの場合、流出された試料の先端部が試料台表面に到達した後、蒸発により、連続的に供給されている試料の流れが一旦途切れる状態が発生したとしても、後続の流出試料は試料供給口から離れない状態に維持されているので、つまり、液滴になって落下する状態とはならないので、別段問題は生じない。
【0013】
また、試料台表面での溶液の蒸発を上記条件を満たすように、より容易にかつ精度良く制御するためには、試料台を加熱することが好ましい。加熱温度としては、溶液の種類や被測定物質の種類、試料の供給速度等に応じて適宜設定すればよい。
【0014】
また、試料供給口と試料台表面との間に、溶液の蒸発を促進する気体を流すこともできる。このようにすれば、蒸発速度を高めて、容易に目標とする蒸発速度と流入速度の関係に制御できる。蒸発促進気体としては、残渣として残る被測定物質に影響を与えないように、不活性ガス(たとえば、窒素ガス)を使用することが好ましい。
【0015】
本発明に係る試料分析方法は、このような試料濃縮方法を利用するもので、被測定物質を含有した溶液からなる試料を、所定量、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮し、前記所定量に対する残渣量から、試料中の被測定物質の濃度を求めることを特徴とする方法からなる。
【0016】
本発明に係る試料濃縮装置は、被測定物質を含有した溶液からなる試料を供給する試料供給路と、該試料供給路の端部に開口された試料供給口と、該試料供給口と間隔をもって配置され、試料供給口から流出されてきた試料が表面に連続的に流入される試料台と、該試料台の表面に流入された試料中の被測定物質の残渣を濃縮すべく試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御する溶液蒸発/流入速度制御手段を有することを特徴とするものからなる。
【0017】
この試料濃縮装置においては、前述した理由から、上記試料供給路が、試料供給口から流出される試料について、液滴として試料供給口から離れることを防止しつつ、流出された試料の先端部を試料台表面に到達させるものからなることが好ましい。
【0018】
また、試料を所望の流速で供給するために、上記試料供給路に、試料の供給速度を制御可能なポンプが設けられていることが好ましい。ただし、本発明は、上記試料供給路が、試料の自然落下を利用して試料を供給するものに構成されている場合にも成立する。この場合においても、上記溶液蒸発速度と溶液流入速度の関係が維持される限り、所定量の試料を流し切ることにより、試料台表面上に目標とする被測定物質の残渣を濃縮することができる。自然落下を利用する試料供給路とする場合には、その試料供給路に絞り等を設けておけば、流下速度をコントロールすることも可能となる。
【0019】
また、溶液蒸発/流入速度を所定の関係により容易に精度良く制御するために、上記溶液蒸発/流入速度制御手段を、試料台に付設された加熱手段を有するものに構成することが好ましい。また、溶液蒸発/流入速度制御手段を、試料供給口と試料台表面との間に、溶液の蒸発を促進する気体を流す蒸発促進気体供給手段を有するものに構成することも好ましい。
【0020】
本発明に係る試料分析装置は、このような試料濃縮装置を使用したもので、被測定物質を含有した溶液からなる試料を所定量供給する試料供給路と、該試料供給路の端部に開口された試料供給口と、該試料供給口と間隔をもって配置され、試料供給口から流出されてきた試料が表面に連続的に流入される試料台と、該試料台の表面に流入された試料中の被測定物質の残渣を濃縮すべく試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御する溶液蒸発/流入速度制御手段と、試料台表面に濃縮された被測定物質の残渣量を測定する手段と、前記所定量に対する残渣量から、試料中の被測定物質の濃度を求める手段とを有することを特徴とするものからなる。
【0021】
上記のような本発明に係る試料濃縮方法及び装置においては、試料供給口から流出されてくる試料溶液が、次々と予め定められた試料台表面の一定の領域に到達し、試料台表面における所定領域外に広がることなく、次々と溶液が蒸発されて、その所定領域内に被測定物質が残渣として濃縮される。したがって、従来のように試料液滴を数十回も微小領域に滴下させるような操作は不要になり、実質的に人手による操作無しに自動的に濃縮操作を行うことができ、濃縮労力、時間の大幅な低減、濃縮の容易化を達成して効率の良い濃縮が可能になるとともに、微小な所定領域内への高精度の濃縮が可能となり、濃縮精度の向上が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る試料分析方法及び装置においては、上記の如く効率の良い高精度な濃縮が可能になる結果、極めて低い濃度の被測定物質であっても、濃縮度を適切に設定することにより、その濃度を容易にかつ高精度で測定、分析できるようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本発明の一実施態様に係る試料濃縮装置1を示している。図1に示す試料濃縮装置1においては、被測定物質を含有した試料は、流量制御が可能な送液ポンプ2により、所定の一定速度で、配管で構成された試料供給路3内を順次送液される。試料供給路3の先端部には、試料供給口4が、試料台5の表面5aに向けて開口されている。この試料供給口4と試料台表面5aとの間には、所定の間隔が開けられており、図2に示すように、試料供給口4から連続的に流出された試料6が、試料供給口4から液滴となって落下することのないように、流出試料6があたかも試料供給口4と試料台表面5aとの間に挟まれた状態となって流出試料6の先端部が試料台表面5aに到達するように、この間隔が設定されている。この間隔は、試料供給口4と試料台表面5aとの間で落下液滴を生じさせないように、たとえば0.1〜1mm程度の間隔に設定できる。
【0024】
試料台5の表面5aには、試料供給口4からの流出試料6が、実質的に連続的に流入されるが、この試料台表面5aにおける溶液の蒸発速度が溶液流入速度以上に設定される。つまり、上記のように試料供給口4と試料台表面5aとの間にあたかも挟まれるように連続的に供給されてくる試料6について、その溶液が蒸発する速度と同じ速度で、または蒸発する速度よりも遅い速度で試料6がこの部分に供給されるように、供給速度が設定される。したがって、この速度関係はまず、試料台表面5aでの溶液自然蒸発速度と溶液流入速度との関係として設定することができる。また、後述の如く、試料台に加熱手段を付設して試料台表面5aで試料6を加熱できるようにする場合には、加熱による強制的な蒸発を考慮して両速度関係を設定することができる。さらには、後述の蒸発促進気体供給手段を設けて、蒸発促進気体により強制的に蒸発できるようにする場合には、この蒸発促進気体による強制的な蒸発を考慮して両速度関係を設定することもできる。
【0025】
この蒸発速度の溶液流入速度以上への設定により、次々と送られてくる試料6中の被測定物質を、試料台表面5a上の所定の微小領域に残渣として残し、そこで濃縮することができるようになる。このとき、蒸発するよりも速く送液されると、試料溶液が試料台表面5a上で広がってしまい、所定の微小領域に効率よく濃縮することができない。また、前述の如く、試料供給口4から連続的に流出される試料6を、試料供給口4から液滴状に落下させてしまうと、やはり試料溶液が試料台表面5a上で広がってしまい、所定の微小領域に効率よく濃縮することができない。したがって、前述の試料供給口4と試料台表面5aとの間隔の設定も、効率のよい濃縮にとって重要な要素となる。また、試料供給路3を形成する配管には供給試料の性状に影響を及ぼさない限りどのようなものも使用可能であり、その先端の開口形状にも特に限定はないが、被測定物成分を試料台表面5aの微小領域内に効率よく濃縮するには、配管の内径が小さい方が効率的である。
【0026】
試料溶液が、アルコール、アセトン、ヘキサン等の揮発性の溶媒であれば、蒸発速度は速いが、水溶液等の場合、蒸発が遅いため、上記溶液蒸発速度と溶液流入速度との関係を保つには、試料台5を下方から加熱することが有効である。本実施態様では、図1に示すように、試料台5の下部に加熱装置7(たとえば、温度制御可能なヒータ)が付設されており、試料台表面5aの温度を所望の温度に制御できるようになっている。
【0027】
また、被測定物質の耐熱性が低い場合などには、加熱装置7により高温加熱できない場合もあるので、そのような場合に蒸発を速めるには、試料供給口4と試料台表面5aとの間に、溶液の蒸発を促進する気体を流す蒸発促進気体供給手段8を設けることも有効である。蒸発促進気体としては、窒素ガス等の不活性ガスを使用するのが好ましい。
【0028】
したがって、自然蒸発を利用する場合には、主として試料供給路3における試料供給速度や試料供給口4と試料台表面5aとの間隔を設定する手段が溶液蒸発/流入速度制御手段として機能し、加熱手段を有する場合には、それらに加えて加熱装置7も溶液蒸発/流入速度制御手段として機能し、蒸発促進気体を用いる場合には、さらに、蒸発促進気体供給手段8も溶液蒸発/流入速度制御手段として機能することになる。
【0029】
試料台5としては、前述したようなそれぞれの分析法で通常使用される試料台で、溶液により溶解や侵食を受けないものであれば、いずれも使用できる。たとえば、顕微赤外分光法であれば、水溶液試料の場合、Ge、ZnSe、CaF2 、BaF2 の結晶、シリコンウエハー等により構成された試料台が使用できる。アルコール、アセトン、ヘキサン等の有機溶剤の場合には、上記の他に、KRS−5(ヨウ化タリウムと臭化タリウムの混晶)、KCl、KBr、NaCl等の結晶により構成された試料台が使用できる。
【0030】
また、上記実施態様では、試料の供給を送液ポンプ2で行うようにしたが、図3に示すように、試料の自然落下を利用して試料を供給するものに構成することも可能である。図3に示す試料濃縮装置11においては、試料受け槽12に所定量の試料が投入され、所定の試料供給路13を流下されて下端に開口された試料供給口14から、所定の間隔を介して、試料台5の表面5aに向けて流出される。このときにも、溶液の蒸発速度が試料流入速度以上になるように設定される。試料受け槽12に所定量投入された試料は、流出し切ればよい。さらに、試料の流下速度を制御したい場合には、試料供給路13に絞り弁15等を設けておけばよい。
【0031】
上記のように構成された試料濃縮装置1、11においては、試料台5に次々と連続的に供給されてきた試料が、試料台表面5aにおいて溶液が蒸発され、該試料台表面5a上に、試料溶液中に含有されていた被測定物質が残渣として、濃縮される。試料台表面5aにおいて溶液蒸発速度が溶液流入速度以上に設定されているので、流入されてきた試料は試料台表面5a上に広がることはなく、所定の微小領域内に効率よく被測定物質が濃縮される。しかも、試料供給口4から流出される試料が液滴となって試料供給口4から離れることも防止されているので、この面からも、試料が試料台表面5a上に広がることはなく、所定の微小領域内に効率よく被測定物質が濃縮される。
【0032】
次々と送られてくる試料溶液中の被測定物質が、試料台表面5aの所定の微小領域内に効率よく濃縮されるので、従来のように人手により数十回も微小領域内に液滴を滴下するような操作は全く不要になり、労力が大幅に軽減されるとともに、微小領域を狙って滴下させるような操作上の困難性も除去され、濃縮操作が大幅に容易化される。また、被測定物質は、確実に所定の微小領域内に濃縮されていくので、高精度の濃縮が可能になる。しかも、本発明における濃縮操作は、実質的に自動で行うことができるので、濃縮操作の容易化、効率化とともに、濃縮時間の短縮も可能となる。
【0033】
このような効率的な濃縮により、試料溶液中の被測定物質の分析、とくに濃度測定が容易化され、測定精度も大幅に向上され、濃縮による感度向上も可能になる。試料溶液中の被測定物質の濃度測定においては、基本的に、試料供給路を介して試料台表面に供給された試料の量に対し、試料台表面に残渣として残された被測定物質の量を求めることにより、濃度を求めることができる。このような被測定物質の濃度を求める方法(手段)としては、前述した、赤外分光法、顕微赤外分光法、光電子分光法、二次イオン質量分析法、全反射蛍光X線法などのいずれの分析法(分析手段)も適用できる。
【0034】
【実施例】
図1に示した装置を用いた実施例において、試料台としてシリコンウエハーを用い、平均分子量50,000のポリスチレンスルホン酸を0.01ppm含む水溶液を、高性能液体クロマトグラフ用送液ポンプを使用し、ポンプに接続された配管の先端にマイクロシリンジの針を取り付け、針とシリコンウエハーとの間にあたかも針から流出してきた溶液が挟み込まれるように間隔を設定し、その位置関係に固定した。上記水溶液を流速0.002ml/minで送液した。シリコンウエハーは加熱手段としてのホットプレート上に載せて、60℃に加熱した。0.2ml送液後、シリコンウエハーの表面に残った試料残渣を、顕微赤外分光法により下記測定条件にて測定した。
【0035】
比較例として、同じ試料溶液を、マイクロシリンジを用いて人手により約2μlを60℃に加熱したシリコンウエハー上に滴下し、乾燥させ、この操作を10回繰り返して、残った試料を顕微赤外分光法により測定した。
【0036】
測定条件
装置:日本バイオラッドラボラトリーズ社製フーリエ変換型赤外分光光度計
FTS−175
付属装置 赤外顕微鏡UMA500(同社製)
測定法 透過法
分解能 4cm−1
測定領域 100μm×100μm
積算回数 256
【0037】
上記実施例、比較例における結果を、波数(Wavenumber(cm−1))と吸光度(Absorbance)との関係として図4に示す。マイクロシリンジを用いて10回濃縮を行った試料Aでは(比較例)、ポリスチレンスルホン酸の吸収は確認できていない。送液ポンプを使用して濃縮した試料Bでは(実施例)、ポリスチレンスルホン酸の吸収が明瞭に検出されている。送液ポンプを用いた濃縮は、100倍以上の濃縮に相当し、マイクロシリンジによる濃縮に比較して、大幅な労力の削減になる。濃縮面については、送液ポンプを用いた場合は、試料台の微小面積の微小領域内に固定されるため効率的に濃縮されるが、マイクロシリンジを用いた手作業では、毎回同じ位置に溶液を滴下することは困難である。また、蒸発器等を用いた濃縮に比較して、送液ポンプを用いた濃縮は、微小面積内で濃縮されるため、外部からの汚染を最小限に抑えることができる。
このように本発明においては、濃縮操作の効率化を行うことができ、それに伴って検出下限を大幅に低下させることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る試料濃縮方法及び装置によれば、試料台表面における溶液蒸発速度と溶液流入速度を所定の関係とすることにより、試料中の被測定物質を試料台上の微小な所定領域に容易にかつ効率よく濃縮することができる。したがって、この試料濃縮方法及び装置を利用した試料分析方法及び装置によれば、低濃度の溶液であっても、所定量の試料溶液とその中に含有されていた被測定物質量との関係を容易にかつ精度よく求めることができ、高精度で濃度測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る試料濃縮装置の概略構成図である。
【図2】図1の装置の拡大部分概略構成図である。
【図3】本発明の別の実施態様に係る試料濃縮装置の概略構成図である。
【図4】実施例、比較例における波数と吸光度との関係図である。
【符号の説明】
1、11 試料濃縮装置
2 送液ポンプ
3、13 試料供給路
4、14 試料供給口
5 試料台
5a 試料台表面
6 流出試料
7 加熱装置
8 蒸発促進気体供給手段
12 試料受け槽
15 絞り弁
Claims (12)
- 被測定物質を含有した溶液からなる試料を、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮することを特徴とする試料濃縮方法。
- 試料供給口から流出される試料について、液滴として試料供給口から離れることを防止しつつ、流出された試料の先端部を試料台表面に到達させる、請求項1の試料濃縮方法。
- 試料台を加熱する、請求項1または2の試料濃縮方法。
- 試料供給口と試料台表面との間に、溶液の蒸発を促進する気体を流す、請求項1〜3のいずれかに記載の試料濃縮方法。
- 被測定物質を含有した溶液からなる試料を、所定量、試料供給路の端部に開口された試料供給口から試料台の表面に向けて流出させつつ、試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御して、試料台表面に被測定物質の残渣を濃縮し、前記所定量に対する残渣量から、試料中の被測定物質の濃度を求めることを特徴とする試料分析方法。
- 被測定物質を含有した溶液からなる試料を供給する試料供給路と、該試料供給路の端部に開口された試料供給口と、該試料供給口と間隔をもって配置され、試料供給口から流出されてきた試料が表面に連続的に流入される試料台と、該試料台の表面に流入された試料中の被測定物質の残渣を濃縮すべく試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御する溶液蒸発/流入速度制御手段を有することを特徴とする試料濃縮装置。
- 前記試料供給路が、試料供給口から流出される試料について、液滴として試料供給口から離れることを防止しつつ、流出された試料の先端部を試料台表面に到達させるものからなる、請求項6の試料濃縮装置。
- 前記試料供給路に、試料の供給速度を制御可能なポンプが設けられている、請求項6または7の試料濃縮装置。
- 前記試料供給路が、試料の自然落下を利用して試料を供給するものからなる、請求項6または7の試料濃縮装置。
- 前記溶液蒸発/流入速度制御手段が、試料台に付設された加熱手段を有する、請求項6〜9のいずれかに記載の試料濃縮装置。
- 前記溶液蒸発/流入速度制御手段が、試料供給口と試料台表面との間に、溶液の蒸発を促進する気体を流す蒸発促進気体供給手段を有する、請求項6〜10のいずれかに記載の試料濃縮装置。
- 被測定物質を含有した溶液からなる試料を所定量供給する試料供給路と、該試料供給路の端部に開口された試料供給口と、該試料供給口と間隔をもって配置され、試料供給口から流出されてきた試料が表面に連続的に流入される試料台と、該試料台の表面に流入された試料中の被測定物質の残渣を濃縮すべく試料台表面における溶液の蒸発速度を溶液流入速度以上に制御する溶液蒸発/流入速度制御手段と、試料台表面に濃縮された被測定物質の残渣量を測定する手段と、前記所定量に対する残渣量から、試料中の被測定物質の濃度を求める手段とを有することを特徴とする試料分析装置。
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