JP2004101356A - 治療効果判定マーカー - Google Patents

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Abstract

【課題】乳癌などの悪性腫瘍の術後再発の防止に術後補助療法(例えば乳癌術後補助ホルモン療法)がなされるが、一般的に使用される代表薬タモキシフェンでの処置によっても再発率が依然として残る。よって、確実に治療可能な悪性腫瘍と該タモキシフェン以外の他の治療薬を選択すべきものか否かを予知できれば術後再発を防止のための治療指針に大きく役立つ。
【解決手段】メニンが乳癌細胞でそのERの転写活性を調節している可能性があり、エストロゲンのERへの結合阻害活性を有するエストロゲン拮抗剤(例えばタモキシフェン)の効果にメニンの発現が大きく関与する。本知見を利用する技術、即ちメニン及びメニン発現遺伝子を腫瘍細胞(例えば乳癌など)での、治療薬(例えば抗癌剤、抗腫瘍剤)の効果予測及び判定マーカーあるいは薬剤耐性マーカーとしての使用、関連した測定・検出試薬と方法及び利用システムの提供。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腫瘍細胞、例えば乳癌において、その治療に使用される薬物により有効に治療できるか否か、及び当該腫瘍細胞の当該治療薬に対する感受性の度合いを評価することを可能とするマーカー、当該治療薬の有効性評価法及びそれに利用するシステムに関する。
また、本発明は、メニン及びメニン発現遺伝子を腫瘍細胞、例えば乳癌などにおける、治療薬、例えば抗癌剤、抗腫瘍剤の効果予測及び判定マーカーあるいは薬剤耐性マーカーとして使用することにも関し、それに関連した測定・検出試薬、測定・検出方法及びそれに利用するシステムにも関する。
【0002】
【従来の技術】
悪性腫瘍、特に乳癌の術後再発を防止する最大の決め手は手術ではなく、術後補助療法(乳癌術後補助ホルモン療法)にある。ほとんど全ての乳癌患者は術後に補助療法を受ける。現在の術後補助療法はホルモン療法、化学療法、および両者の組み合わせが主体となっている。その中で術後ホルモン療法は、エストロゲン(女性ホルモン)依存性増殖を示すエストロゲンレセプター(ER)陽性症例にのみ有効である。乳癌におけるエストロゲンレセプター陽性率は約60%である。
こうした治療において、代表的な薬剤であるタモキシフェンをエストロゲンレセプター陽性患者に5年間の投与した場合、再発率は非投与患者の50%まで低下するが、0%とはならない。即ちタモキシフェンを服用していても再発する患者が存在する。従ってタモキシフェン投与前にタモキシフェンの効果を予知できれば無駄な5年間を過ごさなくてもすむと考えられるが、現時点ではエストロゲンレセプター陽性患者におけるタモキシフェン耐性因子すなわちタモキシフェン効果予知因子の報告はない。
メニン(menin) は、多発性内分泌腺腫症1型(下垂体腫瘍+膵島腫瘍+副甲状腺過形成)の責任遺伝子 men1 の遺伝子産物で、腺腫細胞の核内に存在し、Jun D 等の転写活性を抑制すること(すなわち、癌抑制遺伝子と考えられる)が知られている。メニンは、内分泌腺の腫瘍化に深く関係している。つまり、メニンの遺伝子異常で内分泌細胞の腫瘍化が起こると考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
メニンが、悪性腫瘍、特に乳癌細胞において如何なる働きをしているのかは不明であり、また術後補助療法に使用される薬物との関係も不明である。一方、メニンは、核内に存在することから、メニンと悪性腫瘍、特に乳癌細胞との関係を明らかにし、さらに上記術後補助ホルモン療法における問題を解決できれば、的確な悪性腫瘍、特に乳癌の術後再発を防止のための治療指針に大きく役立つ可能性がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、多発性内分泌腺腫症1型の責任遺伝子 men1 の遺伝子産物で、腺腫細胞の核内に存在し、Jun D 等の転写活性を抑制するメニンが、悪性腫瘍、特に乳癌細胞において如何なる働きをしているのかを解明する目的で鋭意研究を進めた。特に、メニンは核内に存在することから、メニンと乳がん細胞におけるとの機能上の関連を調べた。つまり、メニンは核に存在するので、もし乳癌細胞の核にメニンが発現していれば、核内レセプターであるエストロゲンレセプターの転写機能を制御している可能性があると予測して、研究を進めた。その結果、メニンが、乳癌細胞においてそのエストロゲンレセプター(ER)の転写活性を調節している可能性があることを見出し、さらに、エストロゲンのエストロゲンレセプターへの結合を阻害する活性を有するエストロゲン拮抗剤、例えばタモキシフェン(Tamoxifen、ノルバデックス) の効果にそのメニンの発現が大きく関与することを見出し、この知見を利用する技術を提供することに成功した。
【0005】
本発明は、
〔1〕  乳癌を含めた悪性腫瘍細胞に対する抗腫瘍性治療薬の治療効果の判定マーカーとしてメニンを使用することを特徴とするメニンの使用;
〔2〕  抗腫瘍性治療薬が、悪性腫瘍、特に乳癌の術後再発を防止のための術後補助療法(乳癌術後補助ホルモン療法)に使用されるホルモン療法剤であることを特徴とする上記〔1〕記載のメニンの使用;
〔3〕  治療薬が、エストロゲン拮抗剤、LH−RH アゴニスト及びアロマターゼ阻害剤から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載のメニンの使用;
〔4〕  治療薬が、エストロゲンレセプターに結合することでエストロゲンのエストロゲンレセプターへの結合を阻害する活性を有するもの、卵巣でのエストロゲン合成を抑制する活性を有するもの及び脂肪組織でのエストロゲン合成を阻害活性を有するものから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載のメニンの使用;
〔5〕  治療薬が、タモキシフェン、トレミフェン、ゴセレリン、リュープロレリン、アナストロゾール、レトロゾール及びエキセメスタンから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載のメニンの使用;
〔6〕  乳癌における術後補助ホルモン療法における治療有効性を有する薬物を選別するにあたり、メニンを治療効果判定マーカーとして使用することを特徴とする治療薬選別法又は治療効果予測法;
〔7〕  乳癌細胞におけるメニンの有無(メニン発現の有無を含む)を検査し、該メニンをマーカーとしてタモキシフェンなどのエストロゲン拮抗剤のホルモン療法における効果を予知することを特徴とする治療薬の治療効果の判定及び/又は予知法;
〔8〕  検査が、抗メニン抗体を使った免疫組織染色法、酵素抗体法、免疫ブロット法(ウェスタンブロット法)、免疫沈降法、cDNAを用いたノザンブロット法、RT−PCR法及びin situ hybridization 法から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔7〕記載の治療薬の治療効果の判定及び/又は予知法;
〔9〕  被験試料中のメニンを測定して、乳癌における術後補助ホルモン療法における治療有効性を有する薬物を判定するのに使用され、メニンを治療効果判定マーカーとして使用していることを特徴とする乳癌における術後補助ホルモン療法における治療有効性を有する薬物を判定するための試薬;
〔10〕  メニン遺伝子増幅用プライマーあるいはメニン遺伝子用プローブを含有することを特徴とする上記〔9〕記載の試薬;
〔11〕  抗メニン抗体を含有することを特徴とする上記〔9〕記載の試薬;及び
〔12〕  乳癌細胞の核にメニン陽性の場合はエストロゲンレセプターを遮断するタモキシフェンなどの治療薬を避けて、エストロゲン合成そのものを阻害するLH−RH アナログ(閉経前)かまたはアロマターゼ阻害剤(閉経後)を投与することを特徴とする乳癌治療薬の選別法を提供する。
【0006】
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
メニンとエストロゲンレセプターとの関係に着目し、悪性腫瘍細胞、特に乳癌細胞におけるようなエストロゲンレセプターとの間でその機能上の関連を調べた。メニンが、エストロゲンレセプターの転写機能に如何なる作用を示すかは、例えば乳がん細胞株MCF−7 に野性型および変異型メニン遺伝子を導入し、さらにレポーター遺伝子としてERE−luc (蛍光物質ルシフェラーゼで標識したエストロゲンレセプター結合エレメント)を同時に導入して、転写が進めば蛍光強度が増加する系でレポータージーンアッセイを行うことにより、調べることができる。
野性型メニンはエストロゲンレセプターの転写機能を促進するが、変異型は促進しない。またサルの細胞であるCOS−7 細胞に上記遺伝子以外に、エストロゲンレセプター遺伝子を導入して、導入した3者の遺伝子のみで転写が促進されるかどうかを調べると、MCF−7 細胞と同様に野性型メニンはエストロゲンレセプターの転写機能を促進するが、変異型は促進しない。さらにMCF−7 の系にタモキシフェンを添加したところ、タモキシフェンの転写抑制効果が見られない。したがってメニンはタモキシフェン耐性因子であるということができることが明らかであある。エストロゲンレセプターとメニンとの物理的結合を調べるためにGST−pulldown assay を行うべく、エストロゲンレセプターを付着させたカラムに遺伝子組み換えで作成した野性型メニンと変異型メニンを反応させると、変異型メニンはエストロゲンレセプターと結合しないが、野性型メニンは結合する。すなわちメニンはエストロゲンレセプターと結合して転写を促進していることが判明した。
【0008】
本発明では、「遺伝子組換え技術」を利用して、メニン及びその一部のペプチド、さらにそれらをコードする核酸を得たり、単離・配列決定したり、同定したり、組換え体を作製したりすることができる。本明細書中使用できる遺伝子組換え技術(組換えDNA 技術を含む) としては、当該分野で知られたものが挙げられ、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, ”Molecular Cloning: ALaboratory Manual (2nd edition)”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995);日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、東京化学同人 (1992); R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100 (Recombinant DNA,Part B) & 101 (Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 153 (Recombinant DNA,Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F),Academic Press, New York (1987); J. H. Miller ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 204, Academic Press, New York (1991); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 218, Academic Press, New York (1993); S. Weissman (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 303, Academic Press, New York (1999); J. C. Glorioso et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 306, Academic Press, New York (1999)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0009】
本明細書中、「ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(polymerase chain reaction)」又は「PCR」とは、一般的に、米国特許第 4,683,195号明細書などに記載されたような方法を指し、例えば、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR 法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うようなサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR 法で用いられるプライマーは、鋳型内部の増幅されるべきヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、該増幅されるべきヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用することができる。5’端側のプライマーとしては、少なくとも開始コドンを含有するか、あるいは該開始コドンを含めて増幅できるように選択し、また3’端側のプライマーとしては、少なくともストップコドンを含有するか、あるいは該ストップコドンを含めて増幅できるように選択することが好ましい。プライマーは、好ましくは 5個以上の塩基、さらに好ましくは10個以上の塩基からなるオリゴヌクレオチド、より好ましくは18〜25個の塩基からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0010】
PCR 反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えば R. Saiki, et al., Science, 230: 1350,1985; R. Saiki, et al., Science, 239: 487, 1988 ; H. A. Erlich ed., PCRTechnology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) ; M. A. Innis et al. ed., ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York (1990); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998−9002 (1988) などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR 法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
【0011】
PCR 反応は、代表的な場合には、例えば鋳型(例えば、mRNAを鋳型にして合成されたDNA; 1st strand DNA)と該遺伝子に基づいてデザインされたプライマーとを、10×反応緩衝液 (Taq DNA ポリメラーゼに添付されている) 、dNTPs ( デオキシヌクレオシド三リン酸dATP, dGTP, dCTP, dTTPの混合物)、Taq DNA ポリメラーゼ及び脱イオン蒸留水と混合する。混合物を、例えば、GeneAmp 2400 PCR system, Perkin−Elmer/Cetus などの自動サーマルサイクラーを用いて一般的なPCR サイクル条件下にそのサイクルを25〜60回繰り返すが、増幅のためのサイクル数は適宜目的に応じて適当な回数とすることができる。PCR サイクル条件としては、例えば、変性90〜95℃ 5〜100 秒、アニーリング40〜60℃ 5〜150 秒、伸長65〜75℃ 30 〜300 秒のサイクル、好ましくは変性 94 ℃ 15 秒、アニーリング58 ℃ 15 秒、伸長 72 ℃ 45 秒のサイクルが挙げられるが、アニーリングの反応温度及び時間は適宜実験によって適当な値を選択できるし、変性反応及び伸長反応の時間も、予想されるPCR 産物の鎖長に応じて適当な値を選択できる。アニーリングの反応温度は、通常プライマーと鋳型DNA とのハイブリッドのTm値に応じて変えることが好ましい。伸長反応の時間は、通常1000bpの鎖長当たり1 分程度がおおよその目安であるが、より短い時間を選択することも場合により可能である。
【0012】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられ、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., Vol.28, p.716−734 (1989) に記載されているような既知の方法、例えば、フォスフォトリエステル法、フォスフォジエステル法、フォスファイト法、フォスフォアミダイト法、フォスフォネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、自動化された合成装置を用いて行うことができ、該装置は市販されている。該オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよいし、場合によっては、マーカーの付された塩基を含有していてよい。
【0013】
本明細書において、発現タンパクなどを解析するためには、所定の遺伝子の塩基配列を基に遺伝子工学的に常用される方法を用いることにより、所定のポリペプチドのアミノ酸配列中に適宜、1個ないし複数個以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した相当するポリペプチドを製造することができる。こうした変異・変換・修飾法としては、例えば日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法 II 」、p105(広瀬進)、東京化学同人(1986); 日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、p233(広瀬進)、東京化学同人(1992); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 154, p. 350 & p. 367, Academic Press, New York (1987); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100, p.457 & p. 468, Academic Press, New York (1983); J. A. Wells  et al., Gene, 34: 315, 1985; T. Grundstroem et al., Nucleic Acids Res., 13: 3305, 1985; J. Taylor et al., Nucleic Acids Res., 13: 8765, 1985; R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 155, p. 568, Academic Press, New York (1987); A. R. Oliphant et al., Gene, 44: 177, 1986 などに記載の方法が挙げられる。例えば合成オリゴヌクレオチドなどを利用する位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法) (Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10: 6487, 1987; Carteret al., Nucl. Acids Res., 13: 4331, 1986), カセット変異導入法 (cassettemutagenesis: Wells et al., Gene, 34: 315, 1985), 制限部位選択変異導入法(restriction selection mutagenesis: Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London Ser A, 317: 415, 1986),アラニン・スキャンニング法 (Cunningham &Wells, Science, 244: 1081−1085, 1989), PCR 変異導入法, Kunkel法,  dNTP[αS]法(Eckstein),亜硫酸や亜硝酸などを用いる領域指定変異導入法等の方法が挙げられる。
【0014】
また、遺伝子組換え法で製造する時に融合ポリペプチド(融合タンパク質)として発現させたものを利用することもできる。該融合ポリペプチド(融合タンパク質)は、生体内あるいは生体外で、所望のポリペプチドと実質的に同等の生物学的活性を有しているものに変換・加工してもよい。遺伝子工学的に常用される融合産生法を用いることができるが、こうした融合ポリペプチドはその融合部を利用してアフィニティクロマトグラフィーなどで精製することも可能である。こうした融合ポリペプチドとしては、ヒスチジンタグに融合せしめられたもの、あるいは、β−ガラクトシダーゼ(β−gal) 、マルトース結合タンパク (MBP), グルタチオン−S−トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン (TRX)又は Cre Recombinaseのアミノ酸配列に融合せしめられたものなどが挙げられる。同様に、ポリペプチドは、ヘテロジーニアスなエピトープのタグを付加され、該エピトープに特異的に結合する抗体を用いてのイムノアフィニティ・クロマトグラフィーによる精製をなし得るようにすることもできる。より適した実施態様においては、ポリヒスチジン(poly−His)又はポリヒスチジン−グリシン(poly−His−Gly)タグ、また該エピトープタグとしては、例えば AU5, c−Myc, CruzTag 09, CruzTag 22,CruzTag 41, Glu−Glu, HA, Ha.11, KT3, FLAG (registered trademark, Sigma−Aldrich), Omni−probe, S−probe, T7, Lex A, V5, VP16, GAL4, VSV−G などが挙げられる (Field et al., Molecular and Cellular Biology, 8: pp.2159−2165 (1988); Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5: pp.3610−3616 (1985); Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6): pp.547−553 (1990); Hoppet al., BioTechnology, 6: pp.1204−1210 (1988); Martin et al., Science, 255: pp.192−194 (1992); Skinner et al., J. Biol. Chem., 266: pp.15163−15166 (1991); Lutz−Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: pp.6393−6397 (1990) など) 。酵母を利用した two−hybrid 法も利用できる。
【0015】
さらに融合ポリペプチドとしては、検出可能なタンパク質となるようなマーカーを付されたものであることもできる。より好適な実施態様においては、該検出可能なマーカーは、ビオチン/ストレプトアビジン系のBiotin Avi Tag、螢光を発する物質などであってよい。該螢光を発する物質としては、オワンクラゲ (Aequorea victorea)などの発光クラゲ由来の緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)、それを改変した変異体(GFPバリアント) 、例えば、EGFP (Enhanced−humanized GFP), rsGFP (red−shift GFP), 黄色螢光タンパク質 (yellowfluorescent protein: YFP), 緑色螢光タンパク質 (green fluorescent protein: GFP),藍色螢光タンパク質 (cyan fluorescent protein: CFP), 青色螢光タンパク質 (blue fluorescent protein: BFP), ウミシイタケ (Renilla reniformis) 由来のGFP などが挙げられる(宮脇敦史編、実験医学別冊ポストゲノム時代の実験講座3−GFP とバイオイージング、羊土社 (2000年))。また、上記融合タグを特異的に認識する抗体(モノクローナル抗体及びそのフラグメントを含む)を使用して検出を行うこともできる。こうした融合ポリペプチドの発現及び精製は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
得られたタンパク質(ペプチドあるいはポリペプチドを包含していてよい)は、それを酵素免疫測定法など知られた手法で、適当な担体あるいは固相に結合せしめて固相化することができる。固相化タンパク質、固相化ペプチドは、便利に結合アッセイや物質のスクリーニングに使用できる。
【0016】
ポリペプチドやタンパク質の構造の修飾・改変などは、例えば日本生化学会編、「新生化学実験講座1、タンパク質 VII、タンパク質工学」、東京化学同人(1993)を参考にし、そこに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法、さらにはそれらと実質的に同様な方法で行うことができる。該修飾・改変のうちには、脱アミノ化、ヒドロキシル化、カルボキシル化、リン酸化、硫酸化、メチル化などのアルキル化、アセチル化などのアシル化、エステル化、アミド化、開環、閉環、グリコシル化、含有糖鎖の種類を違うものに変えること、含有糖鎖の数を増減すること、脂質結合、D−体アミノ酸残基への置換などであってもよい。それらの方法は、当該分野で知られている(例えば、T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, pp.79−86 W.H. Freeman & Co., San Francisco, USA (1983) 等) 。
【0017】
本発明は、メニンあるいはその構成ドメインをコードする核酸とハイブリダイゼーションする核酸を有効成分として含むことを特徴とする腫瘍細胞に対する治療薬の選別及び/又は判定のための検出剤、腫瘍細胞に対する治療薬の効能判定検出法及びそれに利用するシステムを提供する。遺伝子の単離にあたっては、PCR 法、さらには逆転写酵素 (RT) を用いたPCR 法 (RT−PCR) を利用することが出来る。当該ハイブリダイゼーションする核酸としては、例えばプローブ及びプライマーなどが挙げられる。メニン遺伝子あるいはその産物とハイブリダイゼーションするプローブであれば、その目的に合致するかぎり、制限なく利用できる。当該核酸は、上記した「遺伝子組換え技術」に従い入手でき、例えば公知のメニンの塩基配列の情報を利用して、複数のプライマーをデザインして合成し、PCR(polymerase chain reaction)などを行うことによっても簡単に得られる。プライマーの作製は、当該分野で知られた方法で行うことができ、代表的にはフォスフォジエステル法、フォスフォトリエステル法、フォスフォアミダイト法などにより合成でき、例えば自動DNA 合成装置、例えば、model 381A DNA synthesizer (Applied Biosystems) などを用いて合成できる。cDNAライブラリーとセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを用いてPCR を行い、cDNAを増幅できる。得られた核酸は、それを特異的なハイブリダイゼーションプローブとして利用できる。プローブなどを放射性同位体などによって標識するには、市販の標識キット、例えばランダムプライム DNAラベリングキット (Boehringer Mannheim)などを使用して行うことができる。例えば、random−primingキット (Pharmacia LKB, Uppsala) などを使用して、プローブ用DNA を [α−32P]dCTP (Amersham)などで標識し、放射活性を持つプローブを得ることができる。また、プローブの標識としては、当該分野で知られたものを使用でき、また、抗体のところで説明した標識から適宜選択して利用することもできる。
【0018】
ハイブリダイゼーションは、所定のDNA を保持するなどしている試料をナイロンフィルターなどの膜に転写せしめ、必要に応じ変成処理、固定化処理、洗浄処理などを施した後、その膜に転写せしめられたものを、必要に応じ変成させた標識プローブDNA 断片と、ハイブリダイゼーション用バッファ中で反応させて行われる。ハイブリダイゼーション処理は、普通約35℃〜約80℃、より好適には約50℃〜約65℃で、約15分〜約36時間、より好適には約1 時間〜約24時間行われるが、適宜最適な条件を選択して行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーション処理は、約55℃で約18時間行われる。ハイブリダイゼーション用バッファとしては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、Rapid hybridization buffer(Amersham)などを用いることができる。転写した膜の変成処理としては、アルカリ変性液を使用する方法が挙げられ、その処理後中和液や緩衝液で処理するのが好ましい。また膜の固定化処理としては、普通約40℃〜約 100℃、より好適には約70℃〜約90℃で、約15分〜約24時間、より好適には約1 時間〜約4 時間ベーキングすることにより行われるが、適宜好ましい条件を選択して行うことができる。例えば、フィルターを約80℃で約2 時間ベーキングすることにより固定化が行われる。転写した膜の洗浄処理としては、当該分野で普通に使用される洗浄液、例えば1M NaCl 、1mM EDTAおよび 0.1% Sodium Dodecyl sulfate (SDS) 含有 50mM Tris−HC1緩衝液,pH8.0 などで洗うことにより行うことができる。ナイロンフィルターなどの膜としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、ナイロンフィルター[ハイボンド(Hybond)−N、Amersham]などを挙げることができる。
【0019】
上記アルカリ変性液、中和液、緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、アルカリ変性液としては、例えば、0.5MNaOH および1.5M NaCl を含有する液などを挙げることができ、中和液としては、例えば、1.5M NaCl 含有 0.5M Tris−HCl 緩衝液,pH8.0 などを挙げることができ、緩衝液としては、例えば、 2×SSPE(0.36M NaCl、20mM NaHPOおよび2mM EDTA)などを挙げることができる。またハイブリダイゼーション処理に先立ち、非特異的なハイブリダイゼーション反応を防ぐために、必要に応じて転写した膜はプレハイブリダイゼーション処理することが好ましい。このプレハイブリダイゼーション処理は、例えば、プレハイブリダイゼーション溶液[50% formamide、 5×Denhardt’s溶液(0.2 %ウシ血清アルブミン、0.2 % polyvinyl pyrrolidone)、 5×SSPE、0.1 % SDS、100 μg/ml  熱変性サケ精子DNA ]などに浸し、約35℃〜約50℃、好ましくは約42℃で、約 4〜約24時間、好ましくは約 6〜約8 時間反応させることにより行うことができるが、こうした条件は当業者であれば適宜実験を繰り返し、より好ましい条件を決めることができる。ハイブリダイゼーションに用いる標識プローブDNA 断片の変成は、例えば、約70℃〜約100 ℃、好ましくは約100 ℃で、約1 分間〜約60分間、好ましくは約 5分間加熱するなどして行うことができる。なお、ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で行うことができるが、本明細書でストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度に関し、約15〜約50mM、好ましくは約19〜約40mM、より好ましくは約19〜約20mMで、温度については約35〜約85℃、好ましくは約50〜約70℃、より好ましくは約60〜約65℃の条件を示す。
【0020】
ハイブリダイゼーション完了後、フィルターを十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をした標識プローブDNA 断片以外の標識プローブを取り除く。フィルターの洗浄処理は、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いて行うことができ、例えば、0.1 % SDS含有 0.5×SSC ( O.15M NaCl、15mM  クエン酸)溶液などで洗うことにより実施できる。
ハイブリダイズした部位は、代表的にはオートラジオグラフィーにより検出することができるが、当該分野で用いられる方法の中から適宜選択して検出に用いることもできる。
【0021】
メニン発現遺伝子(cDNA などのDNA 及びmRNAなどのRNA を含む) を、上記した「遺伝子組換え技術」に従い、当該分野で特定の遺伝子の発現を検知測定するために知られた手法、例えばin situ ハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットブロット、RNase プロテクションアッセイ、RT−PCR、Real−Time PCR (Journal of Molecular Endocrinology, 25, 169−193(2000)及びそこで引用されている文献) 、DNA アレイ解析法 (Mark Shena編、”Microarray Biochip Technology”, Eaton Publishing(2000年3月))などによって検知・測定して、抗腫瘍剤、抗癌剤、乳癌などの補助ホルモン療法剤などの有効性を検知することができる。こうした技術を利用したメニン発現遺伝子測定系、それに利用する試薬、方法、プロセスなどは、すべて本発明の腫瘍細胞に対する治療薬の選別判定検出剤、腫瘍細胞に対する治療薬の効能判定検出法及びそれに利用するシステムに含まれる。該in situ ハイブリダイゼーションには、例えばノン RI in situ ハイブリダイゼーションが含まれてよく、そこには、例えば直接法及び間接法が含まれてよい。該直接法は、例えば核酸プローブに検出可能な分子(レーポーター)が直接結合しているものを使用し、該間接法は、例えばレーポーター分子に対する抗体などを使用してシグナルを増幅せしめているものである。
【0022】
核酸プローブ中のオリゴヌクレオタイドには、官能基(例えば、第一級脂肪族アミノ基、SH基など) が導入されており、こうした官能基にハプテン、螢光色素、酵素などが結合せしめられていてもよい。核酸プローブの標識としては、代表的にはジゴキシゲニン(DIG) 、ビオチン、フルオレッセインなどが挙げられるが、上記したように抗体のところで説明した標識から適宜選択して使用することができるし、また多重ラベリングも利用でき、さらに標識抗体も利用できる。核酸プローブの標識法としては、当該分野で知られた方法から適宜選択して使用できるが、例えばランダムプライム法、ニック・トランスレーション法、PCR によるDNA の増幅、ラベリング/テイリング法、in vitro transcription法などが挙げられる。処理された試料の観察には、当該分野で知られた方法から適宜選択して使用できるが、例えば暗視野顕微鏡、位相差顕微鏡、反射コントラスト顕微鏡、螢光顕微鏡、デジタルイメージング顕微鏡、電子顕微鏡なども使用できるし、さらにフローサイトメトリーなどによることもできる。
【0023】
本発明では、メニン及びメニン発現遺伝子を抗腫瘍剤耐性能のマーカーあるいは薬剤耐性腫瘍マーカーとして使用することができ、それにより、様々な形態の難治療性癌検出剤あるいは難治療性腫瘍検出及び/又は測定剤、特には乳癌における補充ホルモン療法剤の効能検出法あるいは該補充ホルモン療法剤に耐性の腫瘍検出及び/又は測定法、さらにはそうした癌検出あるいは腫瘍検出及び/又は測定試薬セットあるいはシステムを作成でき、問題の癌の的確な診断、予防、治療において役立つばかりでなく、それらは優れている。さらにそれらは、がん治療した後、即ち、予後についても、それを対象とした癌の性状検出剤あるいは腫瘍の薬剤耐性検出及び/又は測定剤、癌に対する効果的な薬物選別に資するアッセイ法及び/又は測定法、さらにはそのための試薬セットあるいはシステムとすることが可能であり、予後のものとしても優れた機能、作用効果を期待できる。
【0024】
本明細書中で「マーカー」とは、当該「エストロゲンレセプターに関して活性発現が評価できる能力」又は「エストロゲンレセプターに関して腫瘍の性状」を認識あるいは同定することが可能になるものであることを指してよく、さらに当該「腫瘍」の補充ホルモン療法薬剤に対する感受性の程度及びその補充ホルモン療法薬剤に関して「腫瘍」の悪性度の尺度としての働きを示すものであってよく、当該マーカーの存否及び/又は量的な違いにより、上記した機能を示すものを言うと考えてよい。
【0025】
メニン及びそれに関連したタンパク質、そのフラグメント、さらにはDNA を含めた核酸(mRNA やオリゴヌクレオチドを含む) は、それらを単独あるいは有機的に使用し、更にはアンチセンス法、モノクローナル抗体を含めた抗体、トランスジェニック動物などに関する技術とも適宜組合わせて、ゲノミックス及びプロテオミックス技術に応用されて、その発現の同定評価を行うことができる。例えば、本発明に従い、メニン変異体は、ドミナントネガティブ効果を利用した機能解析にも利用可能である。また、二本鎖RNA (dsRNA) を使用してのRNAi (RNA interference) 技術への応用の途もある。かくして、一塩基多型(SNP; single nucleotide polymorphisms)を中心とした遺伝子多型解析、核酸アレイ、タンパク質アレイを使用した遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、タンパク質間相互作用解析、関連疾患解析、疾患治療薬解析をすることが可能である。例えば、核酸アレイ技術では、cDNAライブラリーを使用したり、PCR 技術で得たDNA を基板上にスポッティング装置で高密度に配置して、ハイブリダイゼーションを利用して試料の解析が行われる。
【0026】
該アレイ化は、針あるいはピンを使用して、あるいはインクジェットプリンティング技術などでもって、スライドガラス、シリコン板、プラスチックプレートなどの基板のそれぞれ固有の位置にDNA が付着せしめられることによりそれを実施することができる。該核酸アレイ上でのハイブリダイゼーションの結果得られるシグナルを観察してデータを取得する。該シグナルは、螢光色素などの標識(例えば、Cy3, Cy5, BODIPY, FITC, Alexa Fluor dyes(商品名), Texas red(商品名) など) より得られるものであってよい。検知にはレーザースキャナーなどを利用することもでき、得られたデータは適当なアルゴリズムに従ったプログラムを備えたコンピューターシステムで処理されてよい。また、タンパク質アレイ技術では、タグを付された組換え発現タンパク質産物を利用してよく、二次元電気泳動(2−DE)、酵素消化フラグメントを含めての質量分析 (MS)(これにはエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization: ESI), マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(matrix−assisted laser desorption/ionization: MALDI)などの技術が含まれ、MALDI−TOF 分析計、ESI−3 連四重極分析計、ESI−イオントラップ分析計などを使用してよい) 、染色技術、同位体標識及び解析、画像処理技術などが利用されることができる。したがって、本発明にはメニン及びそれに対する抗体に関連したソフトウエア、データベースなども含まれてよい。
【0027】
悪性腫瘍、特に乳癌の術後再発を防止のための術後補助療法(乳癌術後補助ホルモン療法)に使用されるホルモン療法剤としては、例えばエストロゲン拮抗剤、LH−RH アゴニスト、アロマターゼ阻害剤などが挙げられる。こうした薬剤としては、エストロゲンレセプターに結合することで、エストロゲンのエストロゲンレセプターへの結合を阻害する活性を有するもの、卵巣でのエストロゲン合成を抑制する活性を有するもの、脂肪組織でのエストロゲン合成を阻害活性を有するものなどが挙げられる。好ましくは、悪性腫瘍、特に乳癌細胞の増殖を抑制するなどの効果を示すものが挙げられる。該ホルモン療法剤としては、例えばエストロゲン拮抗剤として知られた、タモキシフェン(売薬名:ノルバデックス)、トレミフェン(売薬名:フェアストン)など、LH−RH アゴニストとして知られた、ゴセレリン(売薬名:ゾラデックス)、リュープロレリン(売薬名:リュープリン)など、アロマターゼ阻害剤として知られた、アナストロゾール(売薬名:アリミデックス)、レトロゾール(売薬名:フェマーラ)、エキセメスタン(売薬名:アロマシン)などが挙げられる。
【0028】
かくして、代表的な態様では、本発明に従い、乳癌細胞におけるメニンの有無(メニン発現の有無を含む)でタモキシフェンなどのエストロゲン拮抗剤のホルモン療法における効果を予知できる。またタモキシフェンに限らず類似の効果を有する薬剤(トレミフェン)の効果予知も可能と考えられる。したがってメニン発現の有無は乳癌補助ホルモン療法の使用薬剤決定(decision making)に際の重要な判断材料となる。メニン発現の検査法は、当該分野で知られた技術を包含するが、例えば抗メニン抗体を使った免疫組織染色法、酵素抗体法(ELISA など)、免疫ブロット法(ウェスタンブロット法)、免疫沈降法、cDNAを用いたノザンブロット法、RT−PCR法、 in situ hybridization法などが挙げられる。本発明に従えば、具体的な治療法の選択方法は、乳癌細胞の核にメニン陽性の場合はエストロゲンレセプターを遮断するタモキシフェンではなくて、エストロゲン合成そのものを阻害するLH−RH アナログ(閉経前)かまたはアロマターゼ阻害剤(閉経後)を投与することとなる。
【0029】
かくして、例えばタモキシフェンなどの薬剤の場合には、そのタモキシフェンなどの有効率の改善が予測できるので、タモキシフェンの使用が確実に実施できる。またLH−RH アナログあるいはアロマターゼ阻害剤などの薬剤の場合には、従来汎用されるタモキシフェンなどに代えて使用することが有効として、その使用による効果的な治療の途がひらかれることとなる。メニンは、核内に存在するエストロゲンレセプター転写因子として機能していることが解明され、乳癌細胞の増殖にかかわる各種蛋白質の生成にも関与することが明らかにされた。したがって、メニンの働きでエストロゲンレセプターの転写が進むと増殖反応も亢進する。よって、乳癌補助ホルモン療法の使用薬剤決定にメニンをマーカーとして使用することは有用である。
メニンは、エストロゲンレセプターに結合することで、エストロゲンのエストロゲンレセプターへの結合を阻害する活性を有するものに対する耐性因子であるということができる。上記した新しい知見を利用した技術は、すべて本発明の範囲内のものである。
【0030】
一つの態様では、本発明に係る乳癌などの悪性腫瘍の、薬剤、例えばホルモン補充療法用の薬剤に対する感受性を判定するための試薬及びアッセイにおいては、抗メニン抗体を有効成分として含むものが有効物として挙げられる。ここで、抗メニン抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。
本明細書中、「抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望のメニンポリペプチド及び関連ペプチド断片に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種エピトープに対する特異性を持つ抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’), Fab’ 及びFab といったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA 組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。特に好ましい本発明の抗体は、野生型のメニンポリペプチド又は野生型メニンのER転写共役因子としての機能に関与するドメインのポリペプチドを特異的に識別できるものが挙げられる。
【0031】
抗メニン抗体をポリクローナル抗体として得るためには、免疫源であるメニンあるいはそのフラグメント、メニン配列の一部のペプチドを哺乳動物、鳥類などに免疫し、当該哺乳動物、鳥類などから抗血清を採取する。そして、この抗血清に含まれるポリクローナル抗体を使用することができる。
このメニンを感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスターなど、さらに、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、サルなどの霊長類、ニワトリなどの鳥類等が使用される。さらには、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましい場合もある。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物などの腹腔内または皮下に注射することにより行われる。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。ポリクローナル抗体を含む抗血清は、免疫された動物を所定の期間飼育した後、当該動物から採血した血液から調製することができる。得られた抗血清は、メニンを特異的に認識するものであることを確認した後、本発明の目的に供される。
【0032】
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるメニンは、公知のメニン遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得ることができる。すなわち、メニンあるいはその一部のドメイン、メニンの一部のタンパク質あるいはポリペプチドフラグメント、メニンのアミノ酸配列に相当する一部のアミノ酸配列を持つペプチドをコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のメニンタンパク質あるいはその一部のドメインタンパク質、メニンの一部のタンパク質あるいはポリペプチドフラグメント、メニンのアミノ酸配列に相当する一部のアミノ酸配列を持つペプチドを公知の方法で精製する。
本発明において、抗メニン抗体としては、哺乳動物由来のモノクローナル抗体として得られたものを使用することもできる。
【0033】
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なった抗原決定基(エピトープ) に対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来や免疫グロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり(例えば、ヒト化抗体) 、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる(例えば、米国特許第4816567 号; Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79−97, Marcel Dekker, Inc., New York, 1987 など) 。
【0034】
モノクローナル抗体を製造する好適な方法の例には、ハイブリドーマ法 (G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975)); ヒトB細胞ハイブリドーマ法 (Kozbor et al., Immunology Today, 4, pp.72−79 (1983); Kozbor,J. Immunol., 133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987);トリオーマ法; EBV−ハイブリドーマ法 (Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96 (1985))(ヒトモノクローナル抗体を産生するための方法);米国特許第4946778 号 (単鎖抗体の産生のための技術) が挙げられる他、抗体に関して以下の文献が挙げられる: S. Biocca et al., EMBO J, 9, pp.101−108 (1990); R.E. Bird et al., Science, 242, pp.423−426 (1988); M.A. Boss et al., Nucl. Acids Res., 12, pp.3791−3806 (1984); J. Bukovsky et al., Hybridoma, 6, pp.219−228 (1987); M. DAINO et al., Anal. Biochem., 166, pp.223−229 (1987); J.S. Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, pp.5879−5883 (1988); P.T. Jones et al., Nature, 321, pp.522−525 (1986); J.J. Langone et al. (ed.), ”Methods inEnzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); S. Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984); V.T. Oi et al., BioTechniques, 4, pp.214−221 (1986); L. Riechmann et al., Nature, 332, pp.323−327 (1988); A. Tramontano et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, pp.6736−6740 (1986); C. Wood et al., Nature, 314, pp.446−449 (1985); Nature, 314, pp.452−454 (1985) あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0035】
本発明に係るモノクローナル抗体は、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスであるが、一方、鎖の残部は、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスである、「キメラ」抗体(免疫グロブリン) を特に包含する(米国特許第4816567 号明細書; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984)) 。本発明に係るモノクローナル抗体は、哺乳動物由来のハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主により産生されるものを挙げることができる。
抗メニン抗体を産生するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、以下のようにしてミエローマ細胞を用いての細胞融合技術を利用して作製できる。
【0036】
すなわち、メニンあるいはそのフラグメントを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。メニンあるいはそのフラグメントの調製方法及び哺乳動物に対する免疫方法等に関しては、上述したポリクローナル抗体を含む抗血清を調製する手法に準じて行うことができる。この場合、特に、哺乳動物に対して免疫した後、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株を使用することができる。免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合などは、基本的には公知の方法、たとえば、ケラー及びミルステイン方法(Kohler. G. and Milstein, C.、Methods Enzymol. (1981) 73, 3−46) 等に準じて行うことができる。
【0037】
以下、モノクローナル抗体を例に挙げて、抗体の作製につき詳しく説明する。本発明の抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。
(1) 免疫原性抗原の調製、(2) 免疫原性抗原による動物の免疫、(3) ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製、(4) 抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合、(5) ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化、及び(6) モノクローナル抗体の製造
(1) 免疫原性抗原の調製は次のようにして実施できる。抗原としては、上記で記載してあるように、野生型のメニンポリペプチド又はそれから誘導された断片(一部のドメインポリペプチド、フラグメント、一部のペプチド、合成ポリペプチドを含んでよい)を単離したものを用いることもできるが、決定されたメニンのアミノ酸配列情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することができる。代表的には、メニンを構成するアミノ酸配列あるいはその一部のフラグメントなどから選ばれた領域に存在するアミノ酸残基のうちの連続した少なくとも5個のアミノ酸を有するペプチドが挙げられる。
【0038】
抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。例えば、免疫原として用いる抗原は、メニンを断片化したもの、あるいはそのアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。また、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
活性化結合基としては、(1) 活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2) 活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン (KLH)、牛血清アルブミン (BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCG などが挙げられる。
【0039】
(2) 免疫原性抗原による動物の免疫は次のようにして実施できる。免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座 14 、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座 12 、分子免疫学 III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジュバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジュバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原ペプチドあるいはその関連ペプチド断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG 、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400 μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体等を包含する。
【0040】
(3) ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製は次のようにして実施できる。細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えば P3−NS−1−Ag4−1 (NS−1, Eur. J. Immunol., 6: 511−519, 1976) 、SP−2/0−Ag14 (SP−2, Nature, 276: 269 〜270,1978)、マウスミエローマ MOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1 (P3U1, Curr. topics Microbiol. Immunol., 81: 1−7, 1978 )、P3−X63−Ag8 (X63, Nature, 256: 495−497, 1975 ) 、P3−X63−Ag8−653 (653, J. Immunol., 123: 1548−1550, 1979) などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM 培地 (DMEM培地) 、RPMI−1640 培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS) などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml) を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのち RPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
【0041】
(4) 抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合は次のようにして実施できる。上記(2) の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。より具体的には、細胞融合は、例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM 培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。かくして、こうして得られた脾細胞懸濁液と上記(3) の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地) 、DMEM培地、RPMI−1640 培地などの細胞培地中に置き、細胞融合促進剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合促進剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ: Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを 0.5〜2ml加えることができ、分子量が 1,000〜8,000 のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が 1,000〜4,000 のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどの補助剤を少量加え、融合効率を高めることもできる。免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合、すなわち融合に使用する脾細胞(リンパ球): ミエローマ細胞株の割合は、任意に設定することができ、例えば 1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは 4:1〜10:1とすることができる。
【0042】
細胞融合は、免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG 溶液(例えば平均分子量1000−6000 程度)を通常30−60 %(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640 培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
【0043】
(5) ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化は次のようにして実施できる。選択用培地としては、通常の選択培養液、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの培地、所謂 HAT培地が挙げられる。上記HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとに HAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA) 、酵素免疫分析(ELISA) 、蛍光免疫分析(FIA) 、発光免疫分析(LIA) 、ウエスタンブロッティングなどの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0044】
(6) モノクローナル抗体の製造は次のようにして実施できる。当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
かくして、得られたハイブリドーマ株は、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0045】
また、トランスジェニックマウス又はその他の生物、例えば、その他の哺乳動物は、本発明の免疫原ポリペプチド産物に対するヒト化抗体等の抗体を発現するのに用いることができる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNA は、発現ベクターに入れ、CHO, COSなどの宿主細胞に入れることができる。該DNA は、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、ヒトの重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である (Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6581, 1984)。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。
【0046】
ヒト化抗体は、当該分野で知られた技術により行うことが可能である(例えば、Jones et al., Nature, 321: pp.522−525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: pp.323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: pp.1534−1536 (1988))。ヒトモノクローナル抗体も、当該分野で知られた技術により行うことが可能で、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ細胞やヒト・マウスヘテロミエローマ細胞は当該分野で知られている (Kozbor, J. Immunol.,133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987)) 。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている (Millstein et al., Nature, 305: pp.537−539 (1983); WO93/08829; Traunecker et al., EMBO J., 10: pp.3655−3659 (1991); Suresh et al., ”Methods in Enzymology”, Vol. 121, pp.210 (1986)) 。
さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab 、Fab’、F(ab’) といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
【0047】
抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接及び間接サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定に使用することができる(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147−158 (CRC Press, Inc., 1987) )。抗体を検出可能な原子団にそれぞれコンジュゲートするには、当分野で知られる任意の方法を使用することができ、例えば、David et al., Biochemistry, 13巻, 1014−1021 頁(1974); Pain et al, J. Immunol. Meth., 40: pp.219−231 (1981);及び ”Methods in Enzymology”, Vol. 184, pp.138−163 (1990) により記載の方法が挙げられる。標識物を付与する抗体としては、IgG 画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’を用いることができる。これらの場合の標識物の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D− ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
【0048】
本発明での検知・測定は、免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫電子顕微鏡、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うことができ、放射免疫測定法(RIA), FIA, LIA, EIA, ELISA などを用いることができ、B−F 分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことができる。好ましくはRIA, EIA, FIA, LIAであり、さらにサンドイッチ型アッセイが挙げられる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明のメニンポリペプチドに対するモノクローナル抗体とし、他方をメニンに対するポリクローナル抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する(もちろん、その他の組み合わせも可能であり、目的に応じて適宜デザインできる)。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。測定された標識の量は抗原、すなわちメニンポリペプチド抗原の量と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質等の要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
【0049】
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えばアミノアルキルシリルガラスなどの活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、シリコンガムなど、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
さらに、ろ紙、ビーズ、チューブ、キュベット、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、マイクロプレート、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは偏平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
【0050】
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られる抗原に対し特異的に反応する抗メニン抗体(抗血清や精製抗体を含む)や抗メニンモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、非金属元素粒子、例えばセレンコロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。代表的な放射性物質の標識用同位体元素としては、[32P], [125I], [131I],[H],[14 C],[35S] などが挙げられる。代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D− ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6− フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などであることもできる。
【0051】
酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。このように、ビオチン−アビジン系を使用したり、抗ガレクチン抗体に対する抗体などの二次的な抗体を使用するなど、当該分野で公知の感度増強法を適宜採用することができる。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、o−フェニレンジアミン (OPD)、テトラメチルベンジジン (TMB)、5−アミノサリチル酸、3,3−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド (DAB)、3−アミノ−9− エチルカルバゾール (AEC)、チラミン、ルミノール、ルシゲニンルシフェリン及びその誘導体、Pholad luciferinなどと西洋ワサビ・ペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、ルミジェンPPD 、(4− メチル) ウンベリフェリル− リン酸、p−ニトロフェノール− リン酸、フェノール− リン酸、ブロモクロロインドリルリン酸(BCIP)、AMPAK TM(DAKO)、AmpliQTM(DAKO)などとアルカリフォスファターゼ、4−メチルウンベリフェリル− β−D− ガラクトシドといったウンベリフェリルガラクトシド、o−ニトロフェノール− β−D− ガラクトシドといったニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D− ガラクトシダーゼ、グルコース−6− リン酸・デヒドロゲナーゼ、ABTSなどとグルコースオキシダーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
【0052】
蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、例えばローダミンB イソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネートアイソマーR (TRITC) などのローダミン誘導体、7−アミノ−4− クマリン−3− 酢酸、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。発色、螢光などを含めた生成する信号などを検知するには、視覚によることもできるが、公知の装置を使用することもでき、例えば螢光光度計、プレートリーダーなども使用できる。また、放射性同位体(アイソトープ)などの出す信号を検知するには、公知の装置を使用することもでき、例えばガンマーカウンター、シンチレーションなども使用することができる。
標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤などを用いることができる。縮合剤としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’− ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’− エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2− ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N− マレイミドメチル)シクロヘキサン−1− カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N− マレイミドメチル)シクロヘキサン−1− カルボキシレート、N−スクシンイミジル(4− ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1− マレイミドフェニル)ブチレート、 N−(ε− マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS), イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’− ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4− メルカプトブチリルイミデート、メチル−3− メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S− アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0053】
本発明の測定法によれば、測定すべき物質を酵素などで標識した抗血清、精製抗体あるいはモノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、標識した抗血清、精製抗体あるいはモノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
本発明の測定法においては、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料および形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜約9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜約60℃の間の温度で行うことが好ましい。
【0054】
酵素などで標識された抗血清、精製抗体、あるいはモノクローナル抗体などの抗体試薬及び担体に結合せしめられた抗体試薬、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、下記するような界面活性剤、キレート化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩 (EDTA) がより好ましい。当該分野で普通に採用されていたりあるいは当業者に知られた非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清や血清タンパク質、アルブミン、ヘモグロビン、オボアルブミン(OVA) 、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。さらに、試料や固相などの洗浄には、上記した緩衝液系や食塩液から適宜適当な液を選択してそれを使用でき、さらにそこにTween 20 (商品名) 、Tween 80 (商品名) 、NP−40(商品名) 、Triton X100(商品名) 、Briji(商品名) などの非イオン性界面活性剤、CHAPS などの両イオン性界面活性剤の他、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤などから成る群から選ばれたものを添加して使用できる。
【0055】
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、乳房組織、卵巣、子宮、前立腺、結腸・直腸、胃、肺、気管支、膵臓、肝臓などの全ての臓器及び組織、さらにそれら臓器・組織の悪性腫瘍、白血病細胞、血液、血清、血漿、関節液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
【0056】
本発明の抗メニン抗体、特にモノクローナル抗体を用いて、エピトープマッピングを行うこともでき、各エピトープを認識する抗体を用いれば各メニン及びその関連ペプチド断片などの検知・測定を行うことができる。
上述したように、ポリクローナル抗体(抗血清を含む) 又はモノクローナル抗体として得られた抗メニン抗体を含む試薬は、ガン化している組織から抽出した癌細胞を標本として免疫組織学的にメニン量を解析することができる。すなわち、対象の細胞におけるメニン量を解析することによって、当該細胞のタモキシフェンなどの薬剤の効果を予測できる。
ここで、乳癌などに対する抗腫瘍目的で使用される補充ホルモン療法剤の効果予測及び/又は効果判定用の試薬は、抗メニン抗体を有効成分として含むものである。「有効成分として含む」とは、発現メニンを検出しうる濃度で抗メニン抗体を含むことを意味する。また、抗メニン抗体は、メニンタンパクにおける如何なる領域を認識してもよく、エピトープに限定されるものではない。
明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
なお、以下の実施例において、特に指摘が無い場合には、具体的な操作並びに処理条件などは、DNA クローニングでは J. Sambrook, E. F. Fritsch & T.Maniatis, ”Molecular Cloning”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, N. Y. (1989)  及び D. M. Glover et al. ed., ”DNACloning”, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRLPress, Oxford University Press (1995);PCR 法を使用する場合には、H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al.ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) 及び M. A. Innis et al. ed.,”PCR Protocols”, Academic Press, New York (1990)に記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品等を使用している。
【0058】
実施例1
〔RT−PCR法〕
乳癌および正常乳腺組織よりtotal RNA を抽出しcDNAを作成した。メニン(Menin) mRNAの発現は、次のプライマー
5’−GAGCTGTCCCTCTATCCTCG−3’(sense): SEQ ID NO: 1
5’−TGACCTCAGCTGTCTGCTCC−3’(antisense): SEQ ID NO: 2
を用いて286 塩基対をPCR 法にて増幅後検出した。内因性コントロールとしてはβ−アクチン(β−actin) を使用した。PCR 法は、94℃で80秒、55℃で80秒、72℃で80秒からなるサイクルを30サイクル行った後、72℃で15分間の条件で行われた。
【0059】
〔細胞培養〕
ヒト乳癌細胞株MCF−7 細胞およびCOS−7 細胞はヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。細胞はDMEM(ICN 社)に10%ウシ胎児血清(ICN 社)を添加した培地で培養した。
【0060】
〔プラスミド構築物(plasmid constructs)の作成〕
RT−PCR法にて全長メニンcDNAを増幅し、発現ベクターpcDNA3 (Invitrogen社) に挿入した。メニンcDNAはsequencing(塩基配列解析)法により確認した。変異型メニンcDNAはsite−directed mutagenesis kit (promega社) にて変異(569delC)を導入した。ERE−Luc (レポータージーン:ルシフェラーゼ標識エストロゲンレセプター結合配列)、CMV−ERα(エストロゲンレセプターα鎖遺伝子発現ベクター)、ER−GST(GST 標識エストロゲンレセプター)は埼玉県がんセンター林慎一先生より御供与いただいたものを使用した。
【0061】
〔遺伝子導入細胞を用いた転写活性解析(transient transfection assay)〕
メニン発現ベクターおよびレポータージーン(ERE−Luc)をMCF−7 細胞に、またメニン発現ベクター、CMV−ERα、およびレポータージーン(ERE−Luc)をCOS−7 細胞にリポソーム法を用いてco−transfection (同時に導入)した。24時間培養後、細胞より蛋白を抽出し、ルシフェラーゼ活性を測定した。また抽出した蛋白の蛋白濃度、co−transfection (同時に導入)したβ− ガラクトシダーゼ活性を測定し、導入効率を補正した。またタモキシフェン1 μM を同じ系に添加して同様の実験を行った。タモキシフェンはWAKO(和光純薬)より購入した。
【0062】
〔GST−pull down assay〕
GST−ER 融合蛋白を大腸菌に産生させ、その蛋白質をGlutathione Sepharose (グルタチオンセファロース)4Bビーズ(Amersham Pharmacia社)を用いて部分精製した。一方、In vitro transcription/translation(転写翻訳)法にて野性型および変異型メニン蛋白を35S−メチオニン標識して合成した。両者の蛋白をinvitroにて反応させ、Glutathione Sepharose (グルタチオンセファロース)4Bビーズに吸着した蛋白質をSDS−PAGEにて分離して、GST のみと反応させたサンプルと比較する。
【0063】
〔ウエスタン・ブロット(Western blot)法〕
メニンに対する特異抗体はメニンの443−535 番アミノ酸配列をGST−結合蛋白として大腸菌で発現させ、モルモットに免疫して、IgG 分画を精製することで作成した。細胞より抽出した蛋白を7.5%SDS−PAGEにて分画した。PVDF膜(Micropore 社)に転写後、上記抗メニン抗体で1時間処理後、2次抗体HRP 抱合anti−GP IgG 抗体(Pharmingen社)で一時間反応させた後、ECL 法(Amersham Pharmacia社)にて可視化した。
【0064】
〔免疫組織染色法〕
パラフィン包埋乳がん組織ブロックより4μmの薄切切片を作成し、脱パラフィン処理後、クエン酸緩衝液中でマイクロウェーブ処理(5分×3回)を行った。室温で冷却後、0.3%過酸化水素水を用いて内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害した。次に5%ウシアルブミン(Sigma 社)溶液6滴で1時間のブロッキングを行った後、免疫組織染色が可能な一次抗体である抗メニン抗体(Santa Cruz社)と一晩(overnight,8時間)反応させた。洗浄後二次抗体とHRP を高分子で結合したEnvision+ (DAKO社)6滴と1時間反応させた。
PBS 150 mlに発色試薬 DAB(Dojindo 社)100 mgを十分に混ぜた後、30%過酸化水素水 75 μl (0.5μl/ml) を混ぜた溶液に切片を1分浸し、直ちに水道水に浸して洗浄した。脱水処理後、カバーグラスで封入し、検鏡して褐色に発色した核におけるメニン陽性細胞が全細胞の50%以上の標本をメニン陽性とした。
【0065】
〔結果〕
乳癌細胞におけるメニン発現をRT−PCR法、ウエスタン・ブロット法で解析した。図1から明らかなように、RT−PCR法では、乳癌での men1 mRNAの発現を認めた。ウエスタン・ブロット法では、MCF−7 でのメニン発現を認めた。このようにmRNAレベルと蛋白レベルでメニンの発現を認めた。また、図2を参照しても明らかなように、メニンのエストロゲンレセプター(ER)転写活性調節作用をERE−luc を用いたReporter gene assay で調べた結果は、wt−men1 導入株はmu−men1 導入株より3倍以上強いルシフェラーゼ(luciferase)活性を示した。また、図3に示されるように、その活性はタモキシフェンでは阻害されなかった。メニン遺伝子導入細胞では、乳癌治療薬タモキシフェンの転写抑制効果がみられなかった。かくして、メニンはタモキシフェン耐性因子と考えられる。
【0066】
GST−pull down assay では、メニンとERが物理的に結合した。図4に示されるように、野生型メニンはエストロゲンレセプターに直接結合して転写促進していることが示唆された。メニンはエストロゲンレセプターの機能を促進する転写共役因子である可能性が認められた。一方、変異型メニンでは、該転写促進機能は認められなかった。
乳癌組織におけるメニン発現を抗メニン抗体で解析(図5参照)したところ、10例中3例がメニン陰性でタモキシフェンを投与されて再発を認めなかった。
一方、核にメニン陽性であった症例は5例中3例にタモキシフェンが投与され、4例に再発が認められた。残り2例は細胞質にのみメニン陽性であったが、再発は認められなかった(図6)。リンパ節転移(n因子) も再発予知因子であるが、症例3はn 因子が陽性でも再発していない。
かくして、メニンはERに結合して転写活性を促進していること、さらにメニン発現を解析することで、乳癌などの悪性腫瘍に対するホルモン療法を判別できることが可能であることが示唆された。
【0067】
【発明の効果】
本発明により、メニンが、エストロゲンレセプターの転写活性を促進する活性を有すること、メニンが、乳癌などの悪性腫瘍の術後の補助ホルモン療法に使用されているタモキシフェンの耐性因子としての機能を有することも解明された。こうした知見を利用して、メニンを抗腫瘍性ホルモン治療効果判定マーカーとして使用できる途が開かれた。本発明で、乳癌細胞におけるメニンの有無(メニン発現の有無を含む)でタモキシフェンなどのエストロゲン拮抗剤のホルモン療法における効果を予知できる。またタモキシフェンに限らず類似の効果を有する薬剤(トレミフェン)の効果予知も可能と考えられる。したがってメニン発現の有無は乳癌補助ホルモン療法の使用薬剤決定(decision making)の際に重要な判断材料となる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【0068】
【配列表】
Figure 2004101356
Figure 2004101356

【図面の簡単な説明】
【図1】乳癌細胞でのメニンの発現の様子をRT−PCR法及びウエスタン・ブロット法で調べた結果を示す。
【図2】メニンのエストロゲンレセプター(ER)転写活性調節作用をERE−luc を用いたReporter gene assay で調べた結果を示す。
【図3】タモキシフェン存在下にメニンのエストロゲンレセプター(ER)転写活性調節作用をERE−luc を用いたReporter gene assay で調べた結果を示す。
【図4】GST−pull down assay の結果を示す。
【図5】抗メニン抗体を用いての免疫組織染色の結果を示す。
【図6】メニン発現と各種因子との関連を示す。

Claims (3)

  1. 乳癌を含めた悪性腫瘍細胞に対する抗腫瘍性治療薬の治療効果の判定マーカーとしてメニンを使用することを特徴とするメニンの使用。
  2. 乳癌における術後補助ホルモン療法における治療有効性を有する薬物を選別するにあたり、メニンを治療効果判定マーカーとして使用することを特徴とする治療薬選別法又は治療効果予測法。
  3. 被験試料中のメニンを測定して、乳癌における術後補助ホルモン療法における治療有効性を有する薬物を判定するのに使用され、メニンを治療効果判定マーカーとして使用していることを特徴とする乳癌における術後補助ホルモン療法における治療有効性を有する薬物を判定するための試薬。
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