JP2004100899A - ブレーキパッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドが安価且つ容易に得られる製造方法を提供する。
【解決手段】無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材と摩擦調整剤と充填剤とバインダーレジンとを原料とするブレーキパッドの製造方法において、繊維基材、摩擦調整剤、充填剤、およびバインダーレジンからなる原料を乾式で混合した後、この混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能な溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合する。
【選択図】 図1
【解決手段】無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材と摩擦調整剤と充填剤とバインダーレジンとを原料とするブレーキパッドの製造方法において、繊維基材、摩擦調整剤、充填剤、およびバインダーレジンからなる原料を乾式で混合した後、この混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能な溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキパッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ブレーキパッドは、有機繊維や無機繊維等の繊維原料と、摩擦調整剤や充填剤等の粉末原料と、フェノール樹脂等のバインダーレジン粉末とを乾式で混合し、熱成形により成形することで製造される。
【0003】
ここで、バインダーレジンは成形時の熱で溶かして繊維原料および粉末原料に対し混ぜるようにしているが、バインダーレジンとこれら原料とのなじみが悪いため、できあがった成形体の強度が不十分であり、また摩耗しやすい等の不具合が生じる。
【0004】
このような問題に対して、従来より、水や溶剤にバインダーレジン粉末を溶解してバインダーレジン溶液を作製し、この溶液に上記繊維原料および粉末原料を入れて混合し、これら原料にバインダーレジンを密着させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、バインダーレジンを繊維原料および粉末原料と混合するときに、乾式で加温することでバインダーレジンを溶融させ、これら原料とバインダーレジンとをなじませる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−136245号公報(第2−3頁)
【0007】
【特許文献2】
特開平9−194602号公報(第3−4頁)
【0008】
【特許文献3】
特開2002−53846号公報(第2−4頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記バインダーレジン溶液を用いる方法では、溶液に繊維および粉末原料を混合した後、熱成形する前に溶剤や水を除去する乾燥工程が必要である。これらの除去を行わないと、熱成形時に溶剤や水によるガスが発生し、成形体に亀裂が生じる。
【0010】
また、本発明者の検討によれば、上記混合時に繊維原料が水や溶剤によって凝集して毛玉状になるため、この毛玉の内部までバインダーレジンが浸透しない場合がある。そうなると、できあがった成形体の強度が不十分となり、ブレーキパッドが摩耗しやすくなってしまう等の不具合が生じる。
【0011】
また、上述したバインダーレジンを繊維原料および粉末原料と混合するときに乾式で加温する方法では、混合機に加熱装置が必要となり、現行設備の改造が必要となるため、製造コストの増加を招く。
【0012】
そこで本発明は上記問題に鑑み、強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドが安価且つ容易に得られる製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材と摩擦調整剤と充填剤とバインダーレジンとを原料とするブレーキパッドの製造方法において、繊維基材、摩擦調整剤、充填剤、およびバインダーレジンからなる原料を乾式で混合した後、この混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能な溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合することを特徴とする。
【0014】
それによれば、上記原料を乾式で混合することによって、繊維原料が解繊され、毛玉状になることなく、バインダーレジン粉末が繊維原料の内部にまで十分に入り込む。ここで、乾式混合のみでは、上述したように、バインダーレジンとその他の原料とのなじみが悪いため、成形後の強度や耐摩耗性が悪い。
【0015】
しかし、本発明では、バインダーレジンとその他の原料との混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能な溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合するようにしている。このような少量の溶剤の添加は具体的には、当該混合物の上から溶剤を散布したり、噴霧したりする等により行うことができる。
【0016】
それにより、当該混合物中において、バインダーレジンが溶剤に溶解して繊維原料や粉末原料の間に均一に行き渡り、これら繊維原料および粉末原料を均一にコーティングした状態となるため、成形後の強度が改善され、耐摩耗性も向上する。
【0017】
そして、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲とすることは、本発明者の検討により実験的に見出したものであり、この範囲のような少量の溶剤を添加するものであれば、上記混合物から溶剤を除去するための熱成形前の乾燥が不要であり、且つ、その後の熱成形においても溶剤ガスの発生による亀裂を防止できる。
【0018】
以上のように、本発明によれば、強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドが安価且つ容易に得られる製造方法を提供することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明では、バインダーレジンの粒径が5μm以下であることを特徴とする。
【0020】
従来のバインダーレジンの粒径は20μm程度であるが、本発明のように、バインダーレジンを粉砕して従来よりも小粒径の5μm以下とすれば、バインダーレジンの分散性と溶剤への溶解性が向上し、少量の溶剤でもより高いレベルの効果を奏することができ、好ましい。
【0021】
また、溶剤としては、請求項3に記載の発明のようにアルコールを用いることができる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係るブレーキパッドの製造方法を示す工程図である。本製造方法は、無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材、摩擦調整剤、充填剤、およびバインダーレジンを原料とするブレーキパッドの製造方法に係るものであり、基本的には原料を混合した後、熱成形により成形するものである。
【0024】
まず、原料については通常のブレーキパッド素材を採用できる。例えば、繊維基材としては、アラミド繊維、銅ファイバー、セラミック繊維、スチール繊維等が挙げられ、摩擦調整剤および充填剤としては、黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、マイカ、硫酸バリウム等が挙げられる。また、成形時の結合材となるバインダーレジンとしてはフェノール樹脂等が挙げられる。
【0025】
これら原料を用意し、秤量工程では、所定の組成となるような分量にて各原料成分を秤量する。そして、混合(乾式)工程では、秤量した各原料を、乾式混合すなわち溶媒を用いずに乾いた状態で混合する。原料を乾式で混合することによって、原料中の繊維原料が解きほぐされ(解繊され)、毛玉状になることなく、バインダーレジン粉末が繊維原料の内部にまで十分に入り込む。
【0026】
次に、混合(溶剤少量添加)工程では、上記混合(乾式)工程によって得られた混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能なアルコール等の溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合する。つまり、バインダーレジンの量を100としたとき、当該溶剤の量が重量比にして5以上50以下となるものである。
【0027】
このような少量の溶剤の添加は、具体的には、上記混合物の上から溶剤を散布したり、噴霧したりする等により行うことができる。それにより、混合物中において、バインダーレジンが溶剤に溶解して繊維原料や粉末原料の間に均一に行き渡り、これら繊維原料および粉末原料を均一にコーティングした状態となる。
【0028】
そのため、従来に比べてバインダーレジンとその他の原料とのなじみを良くすることができ、成形後の強度が改善され、耐摩耗性も向上する。また、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下という少量の範囲とすることで、上記混合物から溶剤を除去するための熱成形前の乾燥が不要であり、且つ、その後の熱成形においても溶剤ガスの発生による亀裂を防止できる。
【0029】
こうして溶剤が少量添加された混合物を所定の量に秤量し、次に、熱成形を行う。熱成形工程では、秤量した混合物を加熱した金型に投入し、加圧して成形を行う。続いて硬化工程では、できあがった成形体をさらに加熱して硬化させる。
【0030】
そして、最後に、加工研磨工程では、ブレーキパッドとして機能させるべく成形体におけるディスクと当たる面を研磨し、平坦性を向上させる。こうして、ブレーキパッドができあがる。
【0031】
このように、本実施形態の製造方法によれば、原料を乾式で混合した後、バインダーレジンを溶解する溶剤を、熱成形時のガス発生に大きく影響しない程度に少量添加することにより、バインダーレジンと他の原料とのなじみを良くすることができ、強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドを安価且つ容易に得ることができる。
【0032】
ここで、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲とすることは、以下に述べるような本発明者の検討結果を根拠とするものである。
【0033】
図2は、ブレーキパッドにおいて原料中のバインダーレジンの粒径および添加する溶剤の量や種類を変えた種々の例を示す図表である。なお、図2では、本実施形態に係る例としての実施例1〜2と、比較例1〜4とを示してある。
【0034】
また、各例における原料は、繊維基材の成分としてアラミド繊維、銅ファイバー、セラミック繊維を用い、摩擦調整剤および充填剤の成分として黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、硫酸バリウムを用い、バインダーレジンの成分としてフェノール樹脂を用いている。
【0035】
ここで、バインダーレジン成分であるフェノール樹脂は粉末状であり、各例に応じて、粒径が5μmのものと粒径が20μmのものとを使い分けた。粒径20μmのものは従来レベルのものであり、粒径5μmのものは従来のブレーキパッド素材としては使用されていなかったもので、従来よりも細かく粉砕することで粒径を大幅に小さくしたものである。
【0036】
また、溶剤としては、エタノールと水を各例応じて使い分けた。これら各成分の分量については、図2中、重量部の単位にて示してあり、各例において、繊維基材、摩擦調整剤、充填剤およびバインダーレジンまでの合計すなわち原料の重量合計が100となっており、溶剤の量は原料重量を100としたときの重量比として示されている。
【0037】
各例について、ブレーキパッドは次のように作製した。まず、各例ともに、溶剤を除く原料をアイリッヒミキサーを用いて5分間乾式で均一に混合し原料混合物を得た。比較例4では、この混合物が熱成形材料となる。
【0038】
次に、実施例1〜2および比較例1〜3については、上記原料混合物に対して、各例に示された量の溶剤を添加しながら1分間かき混ぜ、熱成形材料としての所望の混合物を得た。
【0039】
次に、熱成形は、各例ともに、160℃に加熱された金型中に100gの原料混合物を投入して10分間、200kg/cm2で加圧した。その後、この成形体を230℃で3時間加熱して硬化し、続いて研磨加工を行い、各例におけるブレーキパッドを作製した。
【0040】
図3は、上記図2に示す各例のブレーキパッドについて、気孔率(母材)(単位%)、剪断強度(kN)、摩耗量(mm)、成形時の膨れの発生の有無を調べた結果を示す図表である。
【0041】
気孔率は一般に用いられるもので、摩擦材の容積中に占める気孔総容積の割合である。また、剪断強度は摩擦材においてディスクと摺動したときの剪断強度であり、摩耗量は、200℃の温度で1000回制動を繰り返した後のブレーキパッドの摩耗量(初期の厚さから減少した分の厚さ)である。
【0042】
これら図2、図3から次のようなことが言える。まず、各例とも気孔率は同等であることから、各例は、熱成形による出来具合が同等のもの同士として比較できることになる。
【0043】
そして、従来の一般的な乾式の混合方法を採用した比較例4に比べて、バインダーレジン量に対する溶剤の量を5wt%、50wt%とした実施例1、実施例2ではブレーキパッドの強度(剪断強度)が大きくなり、摩耗も少なく、成形時の膨れも発生していない。
【0044】
また、バインダーレジン量に対する溶剤の量を100wt%と過多にした比較例1、および、溶剤を熱で除去しにくい水とした比較例3では、溶剤のガス発生による成形時の膨れが発生し、それに伴う強度低下や耐摩耗性の悪化が顕著となっている。
【0045】
また、バインダーレジン量に対する溶剤の量を2wt%と過少にした比較例2では、成形時の膨れは発生しないが、従来法である比較例4に比べて強度や耐摩耗性は向上しているとは言えない。
【0046】
このように、図2、図3に示したような検討結果に基づき、本実施形態の製造方法において、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲とすることができる。なお、溶剤としては、エタノール等のアルコールが好ましいが、バインダーレジンが溶解でき且つ熱成形時に容易に除去可能なものであれば限定されない。
【0047】
また、図2、図3に示す結果から、バインダーレジンであるフェノール樹脂の粒径が5μmである実施例1の方が、粒径が20μmである実施例2に比べて、強度および耐摩耗性共に優れたものとなっていることがわかる。
【0048】
これは、バインダーレジンを粉砕して従来よりも小粒径の5μm以下とすれば、バインダーレジンの分散性と溶剤への溶解性が向上し、少量の溶剤でもより高いレベルの効果を奏することができるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキパッドの製造方法を示す工程図である。
【図2】ブレーキパッドにおいて原料中のバインダーレジンの粒径および添加する溶剤の量や種類を変えた種々の例を示す図表である。
【図3】上記図2に示す各例のブレーキパッドについて、気孔率(母材)、剪断強度、摩耗量、成形時の膨れを調べた結果を示す図表である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキパッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ブレーキパッドは、有機繊維や無機繊維等の繊維原料と、摩擦調整剤や充填剤等の粉末原料と、フェノール樹脂等のバインダーレジン粉末とを乾式で混合し、熱成形により成形することで製造される。
【0003】
ここで、バインダーレジンは成形時の熱で溶かして繊維原料および粉末原料に対し混ぜるようにしているが、バインダーレジンとこれら原料とのなじみが悪いため、できあがった成形体の強度が不十分であり、また摩耗しやすい等の不具合が生じる。
【0004】
このような問題に対して、従来より、水や溶剤にバインダーレジン粉末を溶解してバインダーレジン溶液を作製し、この溶液に上記繊維原料および粉末原料を入れて混合し、これら原料にバインダーレジンを密着させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、バインダーレジンを繊維原料および粉末原料と混合するときに、乾式で加温することでバインダーレジンを溶融させ、これら原料とバインダーレジンとをなじませる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−136245号公報(第2−3頁)
【0007】
【特許文献2】
特開平9−194602号公報(第3−4頁)
【0008】
【特許文献3】
特開2002−53846号公報(第2−4頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記バインダーレジン溶液を用いる方法では、溶液に繊維および粉末原料を混合した後、熱成形する前に溶剤や水を除去する乾燥工程が必要である。これらの除去を行わないと、熱成形時に溶剤や水によるガスが発生し、成形体に亀裂が生じる。
【0010】
また、本発明者の検討によれば、上記混合時に繊維原料が水や溶剤によって凝集して毛玉状になるため、この毛玉の内部までバインダーレジンが浸透しない場合がある。そうなると、できあがった成形体の強度が不十分となり、ブレーキパッドが摩耗しやすくなってしまう等の不具合が生じる。
【0011】
また、上述したバインダーレジンを繊維原料および粉末原料と混合するときに乾式で加温する方法では、混合機に加熱装置が必要となり、現行設備の改造が必要となるため、製造コストの増加を招く。
【0012】
そこで本発明は上記問題に鑑み、強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドが安価且つ容易に得られる製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材と摩擦調整剤と充填剤とバインダーレジンとを原料とするブレーキパッドの製造方法において、繊維基材、摩擦調整剤、充填剤、およびバインダーレジンからなる原料を乾式で混合した後、この混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能な溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合することを特徴とする。
【0014】
それによれば、上記原料を乾式で混合することによって、繊維原料が解繊され、毛玉状になることなく、バインダーレジン粉末が繊維原料の内部にまで十分に入り込む。ここで、乾式混合のみでは、上述したように、バインダーレジンとその他の原料とのなじみが悪いため、成形後の強度や耐摩耗性が悪い。
【0015】
しかし、本発明では、バインダーレジンとその他の原料との混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能な溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合するようにしている。このような少量の溶剤の添加は具体的には、当該混合物の上から溶剤を散布したり、噴霧したりする等により行うことができる。
【0016】
それにより、当該混合物中において、バインダーレジンが溶剤に溶解して繊維原料や粉末原料の間に均一に行き渡り、これら繊維原料および粉末原料を均一にコーティングした状態となるため、成形後の強度が改善され、耐摩耗性も向上する。
【0017】
そして、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲とすることは、本発明者の検討により実験的に見出したものであり、この範囲のような少量の溶剤を添加するものであれば、上記混合物から溶剤を除去するための熱成形前の乾燥が不要であり、且つ、その後の熱成形においても溶剤ガスの発生による亀裂を防止できる。
【0018】
以上のように、本発明によれば、強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドが安価且つ容易に得られる製造方法を提供することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明では、バインダーレジンの粒径が5μm以下であることを特徴とする。
【0020】
従来のバインダーレジンの粒径は20μm程度であるが、本発明のように、バインダーレジンを粉砕して従来よりも小粒径の5μm以下とすれば、バインダーレジンの分散性と溶剤への溶解性が向上し、少量の溶剤でもより高いレベルの効果を奏することができ、好ましい。
【0021】
また、溶剤としては、請求項3に記載の発明のようにアルコールを用いることができる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係るブレーキパッドの製造方法を示す工程図である。本製造方法は、無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材、摩擦調整剤、充填剤、およびバインダーレジンを原料とするブレーキパッドの製造方法に係るものであり、基本的には原料を混合した後、熱成形により成形するものである。
【0024】
まず、原料については通常のブレーキパッド素材を採用できる。例えば、繊維基材としては、アラミド繊維、銅ファイバー、セラミック繊維、スチール繊維等が挙げられ、摩擦調整剤および充填剤としては、黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、マイカ、硫酸バリウム等が挙げられる。また、成形時の結合材となるバインダーレジンとしてはフェノール樹脂等が挙げられる。
【0025】
これら原料を用意し、秤量工程では、所定の組成となるような分量にて各原料成分を秤量する。そして、混合(乾式)工程では、秤量した各原料を、乾式混合すなわち溶媒を用いずに乾いた状態で混合する。原料を乾式で混合することによって、原料中の繊維原料が解きほぐされ(解繊され)、毛玉状になることなく、バインダーレジン粉末が繊維原料の内部にまで十分に入り込む。
【0026】
次に、混合(溶剤少量添加)工程では、上記混合(乾式)工程によって得られた混合物に対して、バインダーレジンを溶解可能なアルコール等の溶剤をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合する。つまり、バインダーレジンの量を100としたとき、当該溶剤の量が重量比にして5以上50以下となるものである。
【0027】
このような少量の溶剤の添加は、具体的には、上記混合物の上から溶剤を散布したり、噴霧したりする等により行うことができる。それにより、混合物中において、バインダーレジンが溶剤に溶解して繊維原料や粉末原料の間に均一に行き渡り、これら繊維原料および粉末原料を均一にコーティングした状態となる。
【0028】
そのため、従来に比べてバインダーレジンとその他の原料とのなじみを良くすることができ、成形後の強度が改善され、耐摩耗性も向上する。また、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下という少量の範囲とすることで、上記混合物から溶剤を除去するための熱成形前の乾燥が不要であり、且つ、その後の熱成形においても溶剤ガスの発生による亀裂を防止できる。
【0029】
こうして溶剤が少量添加された混合物を所定の量に秤量し、次に、熱成形を行う。熱成形工程では、秤量した混合物を加熱した金型に投入し、加圧して成形を行う。続いて硬化工程では、できあがった成形体をさらに加熱して硬化させる。
【0030】
そして、最後に、加工研磨工程では、ブレーキパッドとして機能させるべく成形体におけるディスクと当たる面を研磨し、平坦性を向上させる。こうして、ブレーキパッドができあがる。
【0031】
このように、本実施形態の製造方法によれば、原料を乾式で混合した後、バインダーレジンを溶解する溶剤を、熱成形時のガス発生に大きく影響しない程度に少量添加することにより、バインダーレジンと他の原料とのなじみを良くすることができ、強度や耐摩耗性を向上させたブレーキパッドを安価且つ容易に得ることができる。
【0032】
ここで、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲とすることは、以下に述べるような本発明者の検討結果を根拠とするものである。
【0033】
図2は、ブレーキパッドにおいて原料中のバインダーレジンの粒径および添加する溶剤の量や種類を変えた種々の例を示す図表である。なお、図2では、本実施形態に係る例としての実施例1〜2と、比較例1〜4とを示してある。
【0034】
また、各例における原料は、繊維基材の成分としてアラミド繊維、銅ファイバー、セラミック繊維を用い、摩擦調整剤および充填剤の成分として黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、硫酸バリウムを用い、バインダーレジンの成分としてフェノール樹脂を用いている。
【0035】
ここで、バインダーレジン成分であるフェノール樹脂は粉末状であり、各例に応じて、粒径が5μmのものと粒径が20μmのものとを使い分けた。粒径20μmのものは従来レベルのものであり、粒径5μmのものは従来のブレーキパッド素材としては使用されていなかったもので、従来よりも細かく粉砕することで粒径を大幅に小さくしたものである。
【0036】
また、溶剤としては、エタノールと水を各例応じて使い分けた。これら各成分の分量については、図2中、重量部の単位にて示してあり、各例において、繊維基材、摩擦調整剤、充填剤およびバインダーレジンまでの合計すなわち原料の重量合計が100となっており、溶剤の量は原料重量を100としたときの重量比として示されている。
【0037】
各例について、ブレーキパッドは次のように作製した。まず、各例ともに、溶剤を除く原料をアイリッヒミキサーを用いて5分間乾式で均一に混合し原料混合物を得た。比較例4では、この混合物が熱成形材料となる。
【0038】
次に、実施例1〜2および比較例1〜3については、上記原料混合物に対して、各例に示された量の溶剤を添加しながら1分間かき混ぜ、熱成形材料としての所望の混合物を得た。
【0039】
次に、熱成形は、各例ともに、160℃に加熱された金型中に100gの原料混合物を投入して10分間、200kg/cm2で加圧した。その後、この成形体を230℃で3時間加熱して硬化し、続いて研磨加工を行い、各例におけるブレーキパッドを作製した。
【0040】
図3は、上記図2に示す各例のブレーキパッドについて、気孔率(母材)(単位%)、剪断強度(kN)、摩耗量(mm)、成形時の膨れの発生の有無を調べた結果を示す図表である。
【0041】
気孔率は一般に用いられるもので、摩擦材の容積中に占める気孔総容積の割合である。また、剪断強度は摩擦材においてディスクと摺動したときの剪断強度であり、摩耗量は、200℃の温度で1000回制動を繰り返した後のブレーキパッドの摩耗量(初期の厚さから減少した分の厚さ)である。
【0042】
これら図2、図3から次のようなことが言える。まず、各例とも気孔率は同等であることから、各例は、熱成形による出来具合が同等のもの同士として比較できることになる。
【0043】
そして、従来の一般的な乾式の混合方法を採用した比較例4に比べて、バインダーレジン量に対する溶剤の量を5wt%、50wt%とした実施例1、実施例2ではブレーキパッドの強度(剪断強度)が大きくなり、摩耗も少なく、成形時の膨れも発生していない。
【0044】
また、バインダーレジン量に対する溶剤の量を100wt%と過多にした比較例1、および、溶剤を熱で除去しにくい水とした比較例3では、溶剤のガス発生による成形時の膨れが発生し、それに伴う強度低下や耐摩耗性の悪化が顕著となっている。
【0045】
また、バインダーレジン量に対する溶剤の量を2wt%と過少にした比較例2では、成形時の膨れは発生しないが、従来法である比較例4に比べて強度や耐摩耗性は向上しているとは言えない。
【0046】
このように、図2、図3に示したような検討結果に基づき、本実施形態の製造方法において、添加する溶剤の量をバインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲とすることができる。なお、溶剤としては、エタノール等のアルコールが好ましいが、バインダーレジンが溶解でき且つ熱成形時に容易に除去可能なものであれば限定されない。
【0047】
また、図2、図3に示す結果から、バインダーレジンであるフェノール樹脂の粒径が5μmである実施例1の方が、粒径が20μmである実施例2に比べて、強度および耐摩耗性共に優れたものとなっていることがわかる。
【0048】
これは、バインダーレジンを粉砕して従来よりも小粒径の5μm以下とすれば、バインダーレジンの分散性と溶剤への溶解性が向上し、少量の溶剤でもより高いレベルの効果を奏することができるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキパッドの製造方法を示す工程図である。
【図2】ブレーキパッドにおいて原料中のバインダーレジンの粒径および添加する溶剤の量や種類を変えた種々の例を示す図表である。
【図3】上記図2に示す各例のブレーキパッドについて、気孔率(母材)、剪断強度、摩耗量、成形時の膨れを調べた結果を示す図表である。
Claims (3)
- 無機繊維、有機繊維、金属繊維から選択された繊維基材と摩擦調整剤と充填剤とバインダーレジンとを原料とするブレーキパッドの製造方法において、
前記繊維基材、前記摩擦調整剤、前記充填剤、および前記バインダーレジンからなる原料を乾式で混合した後、この混合物に対して、前記バインダーレジンを溶解可能な溶剤を前記バインダーレジンの量の5wt%以上50wt%以下の範囲で添加して混合することを特徴とするブレーキパッドの製造方法。 - 前記バインダーレジンの粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキパッドの製造方法。
- 前記溶剤としてアルコールを用いることを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキパッドの製造方法。
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JP2012514679A (ja) * | 2009-01-09 | 2012-06-28 | ボーグワーナー インコーポレーテッド | 摩擦改質粒子が結合させられた複数の結合剤粒子を含む摩擦材料 |
-
2002
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