JP2004099406A - 活性酸素発生方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリアニリンのような酸素一電子還元触媒能を有するレドックスポリマー用いて、活性酸素を含む水又は空気を連続的に発生させるための、空気の殺菌や脱臭に利用できる小型化可能で且つ安価な装置を提供する。
【解決手段】嵩密度0.2g/cm3以下の炭素繊維成形体を用い、その繊維表面に、活性酸素発生触媒能のあるレドックスポリマーを被服して被服面積を膨大な面積とし、レドックスポリマーにマイナス電流を流すか、あるいはレドックスポリマーに吸着する水分量を変化させることにより、あるいは、さらにレドックスポリマーより酸化還元電位の低い金属粉末を該レドックスポリマーに混在させることにより活性酸素を発生させ、小型で安価な活性酸素発生装置とした。
【選択図】図1
【解決手段】嵩密度0.2g/cm3以下の炭素繊維成形体を用い、その繊維表面に、活性酸素発生触媒能のあるレドックスポリマーを被服して被服面積を膨大な面積とし、レドックスポリマーにマイナス電流を流すか、あるいはレドックスポリマーに吸着する水分量を変化させることにより、あるいは、さらにレドックスポリマーより酸化還元電位の低い金属粉末を該レドックスポリマーに混在させることにより活性酸素を発生させ、小型で安価な活性酸素発生装置とした。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は活性酸素発生能力のあるレドックスポリマーを用いて、活性酸素を安価に効率良くかつ連続的に発生させるための新規な方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
活性酸素は、塩素、オゾン、紫外線、過酸化水素などと共に以前から微生物の殺菌剤として使用されているが、作業上危険が少なく安価に利用できることから、各分野において、殺菌、消毒剤として注目されるようになった。
【0003】
これまで、活性酸素の発生方法としては、酸化チタンを用いる方法(1997年、株式会社シーエムシー発行、藤島他著、「光クリーン革命」参照)や、水や空気中に存在する酸素にポリアニリンを接触させる方法(日本特許3043981号、特開平10−99863号公報、特開平10−316403号公報、特開平11−158675号公報、特開平2001−70426号公報)などが知られている。
【0004】
また、日本特許3043981号によると、ポリアニリン粉末を水の中に投入すると、活性酸素が発生するが、ポリアニリン粉末を濾過により取り出して乾燥した後、再び水中に投入すると再び活性酸素が発生することが記載されている。さらに、特開平2001−70426号公報では、この活性酸素発生の現象は、ポリアニリンの吸着水の脱離した状態から、水が吸着状態に変わる時に生じ、空気の殺菌や脱臭に利用出来ることが記載されている。
【0005】
さらに、日本特許3043981号によると、ポリアニリンにマイナス電流を流して還元状態を保持して酸素原子を接触させると、連続的に活性酸素が発生することが記載されている。また、特開平2001−342008号公報では、ポリアニリンに、鉄、アルミ、亜鉛などの金属を混合すると、ポリアニリンの還元状態が持続し、連続的に活性酸素が発生することが記載されている。
【0006】
また、活性酸素を効率良く連続的に発生させるための活性酸素発生装置としては、液透過性又は液浸透性で0.005−5mmの範囲のスペーサーを介在させたもの(特開平11−79708号公報)、ポリアニリン担持陰極を一定の間隔で並列構成したもの(特願2001−074708)、ポリアニリンを表面に担持した粒子を用いるもの(特開11−158675号公報)、金属板の表面積を大きくした材料にポリアニリンを担持したもの(特開平2002−071296号公報)などの提案が本発明者などからなされている。しかし、小型化の観点からは十分満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアニリンあるいはその誘導体を用いて、大量の活性酸素を含む水あるいは空気を、高い能率で連続的に発生させるための効率の良い方法、およびコンパクトで小型化可能な装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを用いて能率良く安価に活性酸素を発生させる方法を開発するために鋭意研究を重ねた結果、嵩密度0.2g/cm3以下のCF成型体の繊維表面に、活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを被服し、該レドックスポリマーに吸着する水分量を増減させるか、または、該レドックスポリマーに電子を注入し還元構造を保持させることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるCF成型体は、例えば、炭素繊維をニードルパンチしてフェルト状にしたもの、或いは、それを積層するなどの方法で、炭素繊維を平板状や円盤状などの形状に成型したもの、さらにそれに孔を開けるなどの加工を施した材料が用いられるが、必ずしもこれらの方法や形状である必要はなく、炭素繊維表面が大きく且つ有効に働く嵩密度0.2g/cm3以下の材料であれば、その形状や製法が制限されるものではない。なお、CF成型体の嵩密度は(重量/体積)の計算式で求められる。本発明に用いられるCF成型体には、通常、以下の性質の炭素繊維が用いられる{焼成温度:1000℃以上3000℃以下、炭素含量:90%以上、繊維直径:20マイクロメーター以下、固有抵抗値:10−3Ω. m以下、熱伝導率:0.1W/m/K 以上(JIS A 1412による)}。
【0010】
CF成型体に被覆するレドックスポリマーは、酸素の一電子還元触媒として機能するものであれば、何れの使用も可能であるが、被服が容易であるもの、即ち、水または溶剤への溶解性があるもの、あるいは分散性が良い微粉末を用いるのが好ましい。具体的には、可溶性ポリアニリン、還元型ポリアニリン、ポリアニリンの芳香環上にスルホン基等を置換した水溶性ポリアニリン、界面活性剤の存在下に重合したポリアニリン微粒子等が用いられる。
【0011】
CF成型体に活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを被服する方法としては、可溶性ポリアニリンのN―メチルピロリドン溶液、水溶性ポリアニリン溶液、ポリアニリン微粒子を水あるいは有機溶剤に分散した液体等を、上記の多孔質炭素繊維材料に流しポリアニリンを炭素繊維表面に吸着させるか、バインダーを用い固定する方法等がある。
【0012】
殺菌や有機物分解の能力を向上するために、該レドックスポリマーに加えて、タンパク質の吸着性能を上げる物質、活性酸素から各種活性物質を生成する触媒、表面接触角を下げる物質、イオン伝導材料、電子伝導材料、など様々なものを添加し最適組成とすることは好ましい方法である。例えば、Haber Weise 反応やFenton 反応の触媒、タンパク質吸着能を持つ無機粉末、イオン伝導高分子、吸水性高分子、無機塩等を添加する方法等がある。
【0013】
該レドックスポリマーに電子を注入する方法としては、該レドックスポリマーを陰極とし、陽極を設けて両者間に直流電流を流す方法、および、レドックスポリマーより酸化還元電位の低いアルミ、鉄、亜鉛などの金属粉を該レドックスポリマーに混合する方法等がある。後者の場合は、電子は金属からレドックスポリマーに、続いて酸素原子に移動し活性酸素を発生させるので、金属は金属酸化物となり活性酸素発生能力に寿命あがる。
【0014】
金属を混入する場合は、次の基本組成(レドックスポリマー、レドックスポリマーより酸化還元電位の低い金属粉末、イオン伝導材料、および、バインダー)を持つコーテイング材料をCF成型体に被服する。
【0015】
上述のCF成型体はそのまま本発明の目的に使用することが出来るが、その成型体を加工したもの(例えば、CF成型体に適当な孔を開けたもの)を用い空気または水の流れを良くし、かつ乱流を発生させ活性酸素発生効率を上げることが出来る。加工方法に制限はないが、例えば、直径1−5mmの孔を空気或いは水が流れる方向に平行して開ける方法がある(図3参照)。
【0016】
被服CF成型体を加熱冷却する方法を用いる場合、熱伝導率の良い炭素繊維を用いることが好ましい。また、被服CF成型体の加熱を効率良くするために、発熱体をCF成型体の中に埋め込む方法がある(図2参照)。直流電流を流す場合に、炭素繊維全体に平均して電流を流す目的で、イオン伝導材料で覆った複数の陽極を成型体の中に埋め込む方法がある。
【0017】
次に、被服CF成型体を用い活性酸素発生装置を製造する方法を、幾つかの例を挙げて説明する。既に記述したように、活性酸素を発生させる手段として、(1)レドックスポリマーに吸着する水分量を増減させる方法、(2)レドックスポリマーを陰極とし、陽極を設けて両者間に直流電流を流す方法、および、(3)レドックスポリマーより酸化還元電位の低いアルミ、鉄、亜鉛などの金属粉を該レドックスポリマーに混合する方法などがある。
【0018】前記(1)方式の空気清浄装置の例を図1および2で説明する。図1のaはポリアニリンを被覆したCF成型体、bは湿度管理装置、cはファン。図2のaはポリアニリンを被覆したCF成型体、dは埋め込みヒーター。前記(2)方式の空気清浄機の例を図3で説明する。aはポリアニリンを被覆したCF成型体、cはファン、hはイオン伝導材料で覆われたステン、チタン、白金被服チタン材質などの、棒、板、あるいは、フショク布の陽極、iは陰極、gは空気や水が通る孔。前記(3)方式の空気清浄機の例を図4で説明する。cはファン、fはポリアニリンおよび金属粉で被服された多孔質成型体。これらの装置を室内に置き矢印の方向に空気を流すことにより、たばこ臭などの脱臭、院内感染菌やレジオネラ菌などの殺菌、フォルムアルデヒド、アセトアルデヒド、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニア、メチルアミン、メチルメルカプタン、酢酸などの気体の除去等を行うことができる。
【0019】
前記(2)方式は空気清浄機用の他に活性酸素含有水製造装置用にも使用することが出来るが、純水のほか、湖沼水、海水、家庭及び産業排水、水道水、地下水などを用いることが出来る。また、生理食塩水や緩衝溶液のように、電解質その他の可溶性物質を含む水を用いることも出来る。
【0020】
本発明法においては、高酸素含有水、高酸素含有空気、マイクロバブルなどの使用、超音波振動による陰極表面で水の乱流形成、処理水の循環などの方法により、活性酸素の発生量を著しく増大させることが出来る。
【0021】
本発明装置は、空気の清浄化、空気の殺菌・脱臭、マイナスイオンの発生、水の殺菌や脱臭・脱色、環境ホルモンの分解除去、各種機能水、例えば、動植物の成長促進用水、各種洗浄水、洗剤の要らない洗濯機用、蒸発速度や半透膜透過速度が向上した水、美顔水の製造など様々な分野に利用することができる。
次に、実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
(ポリアニリン溶液の合成)1℃に冷却した、アンモニウムペルオキシジスルファート183.4gを含む1N塩酸(または硫酸)水溶液800mlを、同じく1℃に冷却しアニリン74.4gを含む1N塩酸(または硫酸)水溶液1200ml中に、窒素雰囲気下で攪拌しながら1分以上かけて加えた。その後、引き続き5℃にて1時間半攪拌を行なった。反応後、沈殿を濾別し、1N塩酸(または硫酸)で洗浄しドーパント率(プロト化率)が42%のポリアニリンを得た。このポリアニリンを1%炭酸ナトリウム水溶液に懸濁させ、pHを8以上に保ちながら15時間攪拌を続けた後、1%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥してドーパント率0%のポリアニリン粉末を得た。この粉末を良く乾燥し、N―メチルピピロリドンの5%溶液を作成した。
【0023】
(CF成型体へのポリアニリンの担持)
呉羽化学工業株式会社製の成形断熱材(R200/0.13)(嵩密度0.13g/cm3)を10*20*30mmの大きさに切断した。この成形材に、上記のポリアニリンNMP5%溶液を流しポリアニリンを吸着させた。一夜放置した後、120℃で2時間加熱し溶媒を完全に除去した。この成形材には0.1gのポリアニリンが担持されていた。
【0024】
(活性酸素含有水の製造)
上記ポリアニリン被服した成型断熱材(10*20*30mm)の10*20mm面の片側に、ユミクロンペーパー(湯浅電池製)を挟みチタン白金板(陽極)を、その反対の面にチタン白金板(陰極)を接着した。それを20*30mmよりやや大きい長方形断面を持つ管の端付近に接着した。この管の両端に管を繋ぎ、水道水400mlを入れた水溜を通って水がこの系を循環するようにした。流速毎分300mlの速度で水(温度12℃)を循環し、生成したスーパーオキシドの不均化反応により生ずる過酸化水素の濃度を常法で測定した。流した電流量と電圧の関係および生成した過酸化水素濃度の関係は次の通りであった。
経過時間(分) 電流(mA) 極間電圧(V) 過酸化水素濃度(ppm)
10 ―50 2.2 0
10 ―100 2.6 1
10 ―150 3.4 2.5
20 ―50 2.2 0.5
20 ―100 2.7 1
20 ―150 3.4 3.4
【0025】
同様の実験を水道水の替わりに、0.01M硫酸ナトリウム水溶液行ったところ次の結果を得た。
経過時間 電流 標準カロメル電極 過酸化水素濃度
(分) (mA) に対する電位(V) (ppm)
10 ―100 ―0.2 8
10 ―150 ―0.8 10
20 ―100 ―0.2 10
20 ―150 ―0.8 15
【0026】
(活性酸素含有空気の製造)
上記の方法で製作したポリアニリン被服CF成型体(30*30*20mm)の30*20mm面の片側に、ユミクロンペーパー(湯浅電池製)を挟みチタン白金板(陽極)を、その反対の面にチタン白金板(陰極)を接着した。それを30*30mmよりやや大きい長方形断面を持つ管の端付近に接着した。両端を、それぞれ、空気又は水の入り口、および、出口とした。1mmM FeCl3水溶液を30分間循環した後、水で良く洗い実験に使用した。
【0027】
(一酸化窒素の除去)
濃度1ppmの一酸化窒素を含む、相対湿度50%の空気を毎分1.5リッターの速度で流し、出口の一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を連続的に測定した。測定温度は25℃で行った。実験結果は次の通りであった。
二酸化窒素の濃度は約0.003乃至0.007ppmであった。予め、FeCl3水溶液を循環させなかった場合の二酸化窒素の濃度はその値より高かった。
【0028】
実施例2
呉羽化学工業株式会社製のフェルト、「クレカF210G」(レーヨン繊維を原料としたフェルトで嵩密度0.1g/cm3)および「クレカF210」(ピッチ繊維を原料としたフェルトで嵩密度0.1g/cm3)を、それぞれ、10*20*30mmの大きさに切断した。この成形材に、上記のポリアニリンNMP5%溶液を、それぞれ流し、ポリアニリンを吸着させた。一夜放置した後、120℃で2時間加熱し溶媒を完全に除去した。これらの成形材には、それぞれ、0.022gのポリアニリンが担持されていた。実施例1(活性酸素含有水の製造)の項に記載したと同様の実験を水道水用い行ったところ、両者とも、過酸化水素の発生量は、電流値―100mAの場合、20分後の過酸化水素濃度は2ppmであった。
【0029】
実施例3
3リッターガラス容器の出口に、実施例1(活性酸素含有空気の製造)の項に記載したポリアニリン担持CF成型体装置入り口を連結し、その出口はポンプを経由して前記ガラス容器入り口に連結した。毎分1リッターの速度で実験気体を循環し、封入物質の濃度減少速度をガス検知管で測定した。
【0030】
(イソプロピルアルコールの分解)実験系にイソプロピルアルコール100マイクロリッターを加えた。初期濃度は2000ppmであった。極間電圧1.5Vをかけ約マイナス10mAの電流が流れたときの濃度変化は次の通りであった。イソプロピルアルコールはアセトンを経て炭酸ガスに分解された。
【0031】
(メチルメルカプタンの除去)イソプロピルアルコールの代わりにメチルメルカプタンベンゼン溶液(0.1%)1mlを加えた以外は上記と同様の実験を行い次の結果を得た。1.5Vの極間電圧でマイナス10ないし20mAの電流が流れた。
【0032】
(アンモニアの除去)イソプロピルアルコールの代わりにアンモニア水溶液(30%)30マイクロリッターを加えた以外は上記と同様の実験を行い次の結果を得た。1.5Vの極間電圧でマイナス15ないし20mAの電流が流れた。
【0033】
【発明の効果】
本発明によると、レドックスポリマーをもちいたコンパクトで発生効率の高い活性酸素発生装置が提供され、これを用いることにより大量の活性酸素を含む水または空気を経済的に発生することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】湿度管理型空気清浄装置
【図2】乾湿型空気清浄装置
【図3】電流型空気清浄装置あるいは活性酸素含有水発生装置
【図4】活性酸素自動発生型空気清浄装置
【符号の説明】
a ポリアニリンを被覆した多孔質炭素繊維成型体
b 湿度管理装置
c 送風機
d 埋め込みヒーター
f ポリアニリンおよび金属粉で被覆された多孔質炭素繊維成型体
g 空気や水が通る孔
h イオン導電膜で覆われた陽極
i 陰極
【発明の属する技術分野】
本発明は活性酸素発生能力のあるレドックスポリマーを用いて、活性酸素を安価に効率良くかつ連続的に発生させるための新規な方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
活性酸素は、塩素、オゾン、紫外線、過酸化水素などと共に以前から微生物の殺菌剤として使用されているが、作業上危険が少なく安価に利用できることから、各分野において、殺菌、消毒剤として注目されるようになった。
【0003】
これまで、活性酸素の発生方法としては、酸化チタンを用いる方法(1997年、株式会社シーエムシー発行、藤島他著、「光クリーン革命」参照)や、水や空気中に存在する酸素にポリアニリンを接触させる方法(日本特許3043981号、特開平10−99863号公報、特開平10−316403号公報、特開平11−158675号公報、特開平2001−70426号公報)などが知られている。
【0004】
また、日本特許3043981号によると、ポリアニリン粉末を水の中に投入すると、活性酸素が発生するが、ポリアニリン粉末を濾過により取り出して乾燥した後、再び水中に投入すると再び活性酸素が発生することが記載されている。さらに、特開平2001−70426号公報では、この活性酸素発生の現象は、ポリアニリンの吸着水の脱離した状態から、水が吸着状態に変わる時に生じ、空気の殺菌や脱臭に利用出来ることが記載されている。
【0005】
さらに、日本特許3043981号によると、ポリアニリンにマイナス電流を流して還元状態を保持して酸素原子を接触させると、連続的に活性酸素が発生することが記載されている。また、特開平2001−342008号公報では、ポリアニリンに、鉄、アルミ、亜鉛などの金属を混合すると、ポリアニリンの還元状態が持続し、連続的に活性酸素が発生することが記載されている。
【0006】
また、活性酸素を効率良く連続的に発生させるための活性酸素発生装置としては、液透過性又は液浸透性で0.005−5mmの範囲のスペーサーを介在させたもの(特開平11−79708号公報)、ポリアニリン担持陰極を一定の間隔で並列構成したもの(特願2001−074708)、ポリアニリンを表面に担持した粒子を用いるもの(特開11−158675号公報)、金属板の表面積を大きくした材料にポリアニリンを担持したもの(特開平2002−071296号公報)などの提案が本発明者などからなされている。しかし、小型化の観点からは十分満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアニリンあるいはその誘導体を用いて、大量の活性酸素を含む水あるいは空気を、高い能率で連続的に発生させるための効率の良い方法、およびコンパクトで小型化可能な装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを用いて能率良く安価に活性酸素を発生させる方法を開発するために鋭意研究を重ねた結果、嵩密度0.2g/cm3以下のCF成型体の繊維表面に、活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを被服し、該レドックスポリマーに吸着する水分量を増減させるか、または、該レドックスポリマーに電子を注入し還元構造を保持させることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるCF成型体は、例えば、炭素繊維をニードルパンチしてフェルト状にしたもの、或いは、それを積層するなどの方法で、炭素繊維を平板状や円盤状などの形状に成型したもの、さらにそれに孔を開けるなどの加工を施した材料が用いられるが、必ずしもこれらの方法や形状である必要はなく、炭素繊維表面が大きく且つ有効に働く嵩密度0.2g/cm3以下の材料であれば、その形状や製法が制限されるものではない。なお、CF成型体の嵩密度は(重量/体積)の計算式で求められる。本発明に用いられるCF成型体には、通常、以下の性質の炭素繊維が用いられる{焼成温度:1000℃以上3000℃以下、炭素含量:90%以上、繊維直径:20マイクロメーター以下、固有抵抗値:10−3Ω. m以下、熱伝導率:0.1W/m/K 以上(JIS A 1412による)}。
【0010】
CF成型体に被覆するレドックスポリマーは、酸素の一電子還元触媒として機能するものであれば、何れの使用も可能であるが、被服が容易であるもの、即ち、水または溶剤への溶解性があるもの、あるいは分散性が良い微粉末を用いるのが好ましい。具体的には、可溶性ポリアニリン、還元型ポリアニリン、ポリアニリンの芳香環上にスルホン基等を置換した水溶性ポリアニリン、界面活性剤の存在下に重合したポリアニリン微粒子等が用いられる。
【0011】
CF成型体に活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを被服する方法としては、可溶性ポリアニリンのN―メチルピロリドン溶液、水溶性ポリアニリン溶液、ポリアニリン微粒子を水あるいは有機溶剤に分散した液体等を、上記の多孔質炭素繊維材料に流しポリアニリンを炭素繊維表面に吸着させるか、バインダーを用い固定する方法等がある。
【0012】
殺菌や有機物分解の能力を向上するために、該レドックスポリマーに加えて、タンパク質の吸着性能を上げる物質、活性酸素から各種活性物質を生成する触媒、表面接触角を下げる物質、イオン伝導材料、電子伝導材料、など様々なものを添加し最適組成とすることは好ましい方法である。例えば、Haber Weise 反応やFenton 反応の触媒、タンパク質吸着能を持つ無機粉末、イオン伝導高分子、吸水性高分子、無機塩等を添加する方法等がある。
【0013】
該レドックスポリマーに電子を注入する方法としては、該レドックスポリマーを陰極とし、陽極を設けて両者間に直流電流を流す方法、および、レドックスポリマーより酸化還元電位の低いアルミ、鉄、亜鉛などの金属粉を該レドックスポリマーに混合する方法等がある。後者の場合は、電子は金属からレドックスポリマーに、続いて酸素原子に移動し活性酸素を発生させるので、金属は金属酸化物となり活性酸素発生能力に寿命あがる。
【0014】
金属を混入する場合は、次の基本組成(レドックスポリマー、レドックスポリマーより酸化還元電位の低い金属粉末、イオン伝導材料、および、バインダー)を持つコーテイング材料をCF成型体に被服する。
【0015】
上述のCF成型体はそのまま本発明の目的に使用することが出来るが、その成型体を加工したもの(例えば、CF成型体に適当な孔を開けたもの)を用い空気または水の流れを良くし、かつ乱流を発生させ活性酸素発生効率を上げることが出来る。加工方法に制限はないが、例えば、直径1−5mmの孔を空気或いは水が流れる方向に平行して開ける方法がある(図3参照)。
【0016】
被服CF成型体を加熱冷却する方法を用いる場合、熱伝導率の良い炭素繊維を用いることが好ましい。また、被服CF成型体の加熱を効率良くするために、発熱体をCF成型体の中に埋め込む方法がある(図2参照)。直流電流を流す場合に、炭素繊維全体に平均して電流を流す目的で、イオン伝導材料で覆った複数の陽極を成型体の中に埋め込む方法がある。
【0017】
次に、被服CF成型体を用い活性酸素発生装置を製造する方法を、幾つかの例を挙げて説明する。既に記述したように、活性酸素を発生させる手段として、(1)レドックスポリマーに吸着する水分量を増減させる方法、(2)レドックスポリマーを陰極とし、陽極を設けて両者間に直流電流を流す方法、および、(3)レドックスポリマーより酸化還元電位の低いアルミ、鉄、亜鉛などの金属粉を該レドックスポリマーに混合する方法などがある。
【0018】前記(1)方式の空気清浄装置の例を図1および2で説明する。図1のaはポリアニリンを被覆したCF成型体、bは湿度管理装置、cはファン。図2のaはポリアニリンを被覆したCF成型体、dは埋め込みヒーター。前記(2)方式の空気清浄機の例を図3で説明する。aはポリアニリンを被覆したCF成型体、cはファン、hはイオン伝導材料で覆われたステン、チタン、白金被服チタン材質などの、棒、板、あるいは、フショク布の陽極、iは陰極、gは空気や水が通る孔。前記(3)方式の空気清浄機の例を図4で説明する。cはファン、fはポリアニリンおよび金属粉で被服された多孔質成型体。これらの装置を室内に置き矢印の方向に空気を流すことにより、たばこ臭などの脱臭、院内感染菌やレジオネラ菌などの殺菌、フォルムアルデヒド、アセトアルデヒド、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニア、メチルアミン、メチルメルカプタン、酢酸などの気体の除去等を行うことができる。
【0019】
前記(2)方式は空気清浄機用の他に活性酸素含有水製造装置用にも使用することが出来るが、純水のほか、湖沼水、海水、家庭及び産業排水、水道水、地下水などを用いることが出来る。また、生理食塩水や緩衝溶液のように、電解質その他の可溶性物質を含む水を用いることも出来る。
【0020】
本発明法においては、高酸素含有水、高酸素含有空気、マイクロバブルなどの使用、超音波振動による陰極表面で水の乱流形成、処理水の循環などの方法により、活性酸素の発生量を著しく増大させることが出来る。
【0021】
本発明装置は、空気の清浄化、空気の殺菌・脱臭、マイナスイオンの発生、水の殺菌や脱臭・脱色、環境ホルモンの分解除去、各種機能水、例えば、動植物の成長促進用水、各種洗浄水、洗剤の要らない洗濯機用、蒸発速度や半透膜透過速度が向上した水、美顔水の製造など様々な分野に利用することができる。
次に、実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
(ポリアニリン溶液の合成)1℃に冷却した、アンモニウムペルオキシジスルファート183.4gを含む1N塩酸(または硫酸)水溶液800mlを、同じく1℃に冷却しアニリン74.4gを含む1N塩酸(または硫酸)水溶液1200ml中に、窒素雰囲気下で攪拌しながら1分以上かけて加えた。その後、引き続き5℃にて1時間半攪拌を行なった。反応後、沈殿を濾別し、1N塩酸(または硫酸)で洗浄しドーパント率(プロト化率)が42%のポリアニリンを得た。このポリアニリンを1%炭酸ナトリウム水溶液に懸濁させ、pHを8以上に保ちながら15時間攪拌を続けた後、1%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥してドーパント率0%のポリアニリン粉末を得た。この粉末を良く乾燥し、N―メチルピピロリドンの5%溶液を作成した。
【0023】
(CF成型体へのポリアニリンの担持)
呉羽化学工業株式会社製の成形断熱材(R200/0.13)(嵩密度0.13g/cm3)を10*20*30mmの大きさに切断した。この成形材に、上記のポリアニリンNMP5%溶液を流しポリアニリンを吸着させた。一夜放置した後、120℃で2時間加熱し溶媒を完全に除去した。この成形材には0.1gのポリアニリンが担持されていた。
【0024】
(活性酸素含有水の製造)
上記ポリアニリン被服した成型断熱材(10*20*30mm)の10*20mm面の片側に、ユミクロンペーパー(湯浅電池製)を挟みチタン白金板(陽極)を、その反対の面にチタン白金板(陰極)を接着した。それを20*30mmよりやや大きい長方形断面を持つ管の端付近に接着した。この管の両端に管を繋ぎ、水道水400mlを入れた水溜を通って水がこの系を循環するようにした。流速毎分300mlの速度で水(温度12℃)を循環し、生成したスーパーオキシドの不均化反応により生ずる過酸化水素の濃度を常法で測定した。流した電流量と電圧の関係および生成した過酸化水素濃度の関係は次の通りであった。
経過時間(分) 電流(mA) 極間電圧(V) 過酸化水素濃度(ppm)
10 ―50 2.2 0
10 ―100 2.6 1
10 ―150 3.4 2.5
20 ―50 2.2 0.5
20 ―100 2.7 1
20 ―150 3.4 3.4
【0025】
同様の実験を水道水の替わりに、0.01M硫酸ナトリウム水溶液行ったところ次の結果を得た。
経過時間 電流 標準カロメル電極 過酸化水素濃度
(分) (mA) に対する電位(V) (ppm)
10 ―100 ―0.2 8
10 ―150 ―0.8 10
20 ―100 ―0.2 10
20 ―150 ―0.8 15
【0026】
(活性酸素含有空気の製造)
上記の方法で製作したポリアニリン被服CF成型体(30*30*20mm)の30*20mm面の片側に、ユミクロンペーパー(湯浅電池製)を挟みチタン白金板(陽極)を、その反対の面にチタン白金板(陰極)を接着した。それを30*30mmよりやや大きい長方形断面を持つ管の端付近に接着した。両端を、それぞれ、空気又は水の入り口、および、出口とした。1mmM FeCl3水溶液を30分間循環した後、水で良く洗い実験に使用した。
【0027】
(一酸化窒素の除去)
濃度1ppmの一酸化窒素を含む、相対湿度50%の空気を毎分1.5リッターの速度で流し、出口の一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を連続的に測定した。測定温度は25℃で行った。実験結果は次の通りであった。
二酸化窒素の濃度は約0.003乃至0.007ppmであった。予め、FeCl3水溶液を循環させなかった場合の二酸化窒素の濃度はその値より高かった。
【0028】
実施例2
呉羽化学工業株式会社製のフェルト、「クレカF210G」(レーヨン繊維を原料としたフェルトで嵩密度0.1g/cm3)および「クレカF210」(ピッチ繊維を原料としたフェルトで嵩密度0.1g/cm3)を、それぞれ、10*20*30mmの大きさに切断した。この成形材に、上記のポリアニリンNMP5%溶液を、それぞれ流し、ポリアニリンを吸着させた。一夜放置した後、120℃で2時間加熱し溶媒を完全に除去した。これらの成形材には、それぞれ、0.022gのポリアニリンが担持されていた。実施例1(活性酸素含有水の製造)の項に記載したと同様の実験を水道水用い行ったところ、両者とも、過酸化水素の発生量は、電流値―100mAの場合、20分後の過酸化水素濃度は2ppmであった。
【0029】
実施例3
3リッターガラス容器の出口に、実施例1(活性酸素含有空気の製造)の項に記載したポリアニリン担持CF成型体装置入り口を連結し、その出口はポンプを経由して前記ガラス容器入り口に連結した。毎分1リッターの速度で実験気体を循環し、封入物質の濃度減少速度をガス検知管で測定した。
【0030】
(イソプロピルアルコールの分解)実験系にイソプロピルアルコール100マイクロリッターを加えた。初期濃度は2000ppmであった。極間電圧1.5Vをかけ約マイナス10mAの電流が流れたときの濃度変化は次の通りであった。イソプロピルアルコールはアセトンを経て炭酸ガスに分解された。
【0031】
(メチルメルカプタンの除去)イソプロピルアルコールの代わりにメチルメルカプタンベンゼン溶液(0.1%)1mlを加えた以外は上記と同様の実験を行い次の結果を得た。1.5Vの極間電圧でマイナス10ないし20mAの電流が流れた。
【0032】
(アンモニアの除去)イソプロピルアルコールの代わりにアンモニア水溶液(30%)30マイクロリッターを加えた以外は上記と同様の実験を行い次の結果を得た。1.5Vの極間電圧でマイナス15ないし20mAの電流が流れた。
【0033】
【発明の効果】
本発明によると、レドックスポリマーをもちいたコンパクトで発生効率の高い活性酸素発生装置が提供され、これを用いることにより大量の活性酸素を含む水または空気を経済的に発生することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】湿度管理型空気清浄装置
【図2】乾湿型空気清浄装置
【図3】電流型空気清浄装置あるいは活性酸素含有水発生装置
【図4】活性酸素自動発生型空気清浄装置
【符号の説明】
a ポリアニリンを被覆した多孔質炭素繊維成型体
b 湿度管理装置
c 送風機
d 埋め込みヒーター
f ポリアニリンおよび金属粉で被覆された多孔質炭素繊維成型体
g 空気や水が通る孔
h イオン導電膜で覆われた陽極
i 陰極
Claims (4)
- 嵩密度0.2g/cm3以下の炭素繊維成型体(以下、CF成型体と略す)に活性酸素発生能のあるレドックスポリマーを被服したレドックスポリマー被服CF成型体(以下、被服CF成型体と略す)を用いることを特徴とする活性酸素発生方法およびその装置。
- 請求項1記載の被服CF成型体を陰極とし、陽極を設けて両者間に直流電流を流すことを特徴とする活性酸素発生方法およびその装置。
- 請求項1記載の被服CF成型体の吸着水量を変化させることを特徴とする活性酸素発生方法およびその装置
- 活性酸素発生能のあるレドックスポリマーより酸化還元電位の低い金属粉末を、該レドックスポリマー被服に混在させることを特徴とする請求項1記載の活性酸素発生方法およびその装置
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---|---|---|---|
JP2002266647A JP2004099406A (ja) | 2002-09-12 | 2002-09-12 | 活性酸素発生方法および装置 |
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---|---|---|---|---|
JP2010065285A (ja) * | 2008-09-11 | 2010-03-25 | Mitsubishi Electric Corp | 活性酸素生成装置 |
JP2010540514A (ja) * | 2007-09-28 | 2010-12-24 | オークランド ユニサービシズ リミテッド | 生物活性アニリンコポリマー |
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-
2002
- 2002-09-12 JP JP2002266647A patent/JP2004099406A/ja active Pending
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