JP2004098337A - 多層ポリエステルシート及びシート成形容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートと、該多層ポリエステルシートからなるシート成形容器を提供すること。
【解決手段】第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートである。第一表面層及び第二表面層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂層である。中間層は、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含む。該多層ポリエステルシートをシート成形して容器を形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートである。第一表面層及び第二表面層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂層である。中間層は、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含む。該多層ポリエステルシートをシート成形して容器を形成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂から構成された多層ポリエステルシートに関し、さらに詳しくは、ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性(低温落体強度)、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートに関する。また、本発明は、該多層ポリエステルシートを真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により成形してなるシート成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチックシート(フィルムを含む)を用いて、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形(熱成形ともいう)により、カップやトレイなどのシート成形容器が製造されている。プラスチックシートとしては、主として硬質ポリ塩化ビニルシートが透明性やシート成形性に優れているため汎用されてきた。
【0003】
近年、結晶化速度が遅い非晶性ポリエチレンテレフタレートシート(A−PETシート)が、硬質ポリ塩化ビニルシートに代わる成形用シートとして用いられるようになってきている。A−PETシートは、無毒性で、透明性や表面光沢性に優れている。
【0004】
しかし、A−PETシートは、成形品にシャープな部分を形成すると、その部分から割れを発生しやすい。このような割れの問題は、コーナー部分に曲面を設けることにより克服することができるものの、コーナー部分の肉厚分布を高度に均一化することが困難である。
【0005】
また、A−PETシートは、比較的ガスバリア性に優れるものの、十分ではない。A−PETシートとエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルムとを積層することにより、ガスバリア性に優れた多層シートを得ることができる。しかし、EVOHフィルムは、吸湿によりガスバリア性が低下することに加えて、接着性に乏しいため、例えば、A−PET/接着層/EVOH/接着層/A−PETなどの層構成を採用する必要がある。
【0006】
そのため、A−PETシートとEVOHフィルムとを積層したガスバリア性多層シートは、コストが高いという欠点がある。また、該多層シートは、層間剥離強度が高くなく、深絞り成形性も十分ではない。さらに、該多層シートは、異種樹脂の積層体であるため、成形不良品やスクラップをリグラインド(再生材料)として利用することが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂から構成された多層ポリエステルシートであって、ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートを提供することにある。また、本発明の目的は、該多層ポリエステルシートを真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により成形してなるシート成形容器を提供することにある。
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、両表面層をポリエチレンテレフタレート樹脂層とし、中間層にガスバリア性に優れた非晶質ポリエステル樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とのブレンド樹脂層を配置することにより、前記目的を達成できる多層ポリエステルシートが得られることを見出した。本発明の多層ポリエステルシートは、深絞り成形性、ガスバリア性、低温での耐衝撃性、透明性などに優れている。
【0009】
本発明の多層ポリエステルシートは、各層を熱可塑性ポリエステル樹脂により形成しており、EVOHの如き異種樹脂を使用する必要がないため、成形不良品やスクラップをリグラインド層として再利用することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートであって、
(1)第一表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−1)であり、
(2)少なくとも1層の中間層が、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含み、かつ、
(3)第二表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−2)である
ことを特徴とする多層ポリエステルシートが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、第一表面層及び第二表面層を形成するポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」と呼ぶことがある)としては、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル(これらを「テレフタル酸成分」という)とエチレングリコールとの重縮合物からなるホモポリマー、テレフタル酸成分とエチレングリコールとその他の共重合成分とから合成された共重合体を使用することができる。
【0012】
共重合成分の割合は、通常20モル%未満、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。共重合成分の割合が高くなりすぎると、PET樹脂の結晶性が損なわれて、多層シートの耐熱性が低下する。PET樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との等モルの反応により合成されるので、共重合成分の割合は、ジカルボン酸成分100モル%とジオール成分100モル%の合計200モル%を基準として算出する。
【0013】
共重合成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、キシリレングリコール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサジメタノールなどのジオール成分;イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸などのジカルボン酸成分;などが挙げられる。これらのPET樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
PET樹脂としては、一般に押出グレードのものが使用される。PET樹脂としては、比較的結晶化速度が速いPET樹脂を使用することもできるが、シート成形性(熱成形性)や透明性の観点からは、比較的結晶化速度の遅いアモルファス成分が多い非晶性PET樹脂(A−PET)が好ましい。すなわち、本発明の多層シートを構成するPET樹脂シートは、A−PETシートであることが好ましい。
【0015】
PET樹脂の固有粘度〔IV〕は、好ましくは0.6〜1.3、より好ましくは0.7〜1.0、特に好ましくは0.7〜0.9である。PET樹脂の固有粘度が低すぎると、PET樹脂シートの強度や耐熱性が低下し、高すぎると、押出成形やシート成形が困難になる。
【0016】
本発明で使用するガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂は、本質的に非結晶性のポリエステル樹脂である。本発明で使用するガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂は、Mocon Oxtran法により、温度23℃及び相対湿度0%(0%RH)の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満、好ましくは8cm3・mm/(m2・day・MPa)未満の高いガスバリア性を有する熱可塑性ポリエステル樹脂である。
【0017】
ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分と共に他のジカルボン酸成分を併用し、また、グリコール成分として、エチレングリコールと共に他のグリコール成分を併用することにより、非晶質とすると共に、そのガスバリア性を高めたコポリエステル樹脂である。ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分とイソフタル酸成分を併用し、グリコール成分として、エチレングリコールと1,3−フェニレンオキシエチレングリコールを併用したコポリエステル樹脂であることが好ましい。より具体的に、本発明で使用するガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂としては、ポリエチレン・1,3−フェニレンオキシエチレン・イソフタレート・テレフタレート樹脂が好ましい。
【0018】
このようなガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂として市販品を使用することができるが、市販品としては、三井化学株式会社により製造販売されている商品名「三井B−010」〔IV値=0.85dl/g、ガラス転移温度=62℃、23℃及び0%RHでMocon Oxtran法により測定した酸素ガス透過係数=6cm3・mm/(m2・day・MPa)〕が好ましく使用される。
【0019】
本発明の多層ポリエステルシートは、第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートである。この多層ポリエステルシートの第一表面層及び第二表面層は、いずれもPET樹脂層である。両表面層をPET樹脂層とすることにより、耐熱性、機械的強度、透明性などに優れると共に、シート成形容器の食品衛生性を高めることができる。具体的には、米国のFDA規格に適合する食品衛生性を付与することができる。
【0020】
本発明の多層ポリエステルシートの中間層は、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含む。
【0021】
中間層を構成するポリエステル樹脂組成物層(G)は、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)を、多層ポリエステルシートに要求されるガスバリア性の程度に応じて、ポリエチレンテレフタレート樹脂(b)と前記範囲内で適宜ブレンドして用いることができる。このポリエチレンテレフタレート樹脂(b)としては、前述のPET樹脂を使用することができる。中間層に使用するPET樹脂としては、バージンレジンだけではなく、PETトレイ協議会で認めているスクラップリターン品も、IV値の著しい低下がなく、好ましくは前記IV値の範囲内であれば、その少くとも一部として使用することができる。
【0022】
ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)は、PET樹脂とブレンドして使用する場合、そのブレンド比率は、5〜50重量%と比較的低くてもガスバリア性が比較的高いポリエステル樹脂組成物層(G)を形成することができる。他方、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)のブレンド比率が大きくなりすぎると、多層ポリエステルシートの低温での耐衝撃性(低温での落体強度)が低下する。カップやトレイ等のシート成形容器は、食品などを充填して、低温で取り扱われたり、輸送されることが多いため、低温での落体強度が良好であることが求められている。また、食品衛生性及び押出成形性の観点からも、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)のブレンド比率は、低い方が好ましい。
【0023】
ガスバリア性、低温での耐衝撃性、コストなどを高度にバランスさせるには、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)8〜40重量%とPET樹脂(b)60〜92重量%とすることが好ましく、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)10〜35重量%とPET樹脂(b)65〜90重量%とすることがより好ましく、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)10〜30重量%とPET樹脂(b)70〜90重量%とすることが最も好ましい。
【0024】
本発明の多層ポリエステルシートの基本的な層構成は、PET樹脂層(PET−1)/ポリエステル樹脂組成物層(G)/PET樹脂層(PET−2)の3層構成である。このように、本発明の多層ポリエステルシートの中間層は、1層のポリエステル樹脂組成物層(G)からなる単層構造とすることができる。各層は、同質の熱可塑性ポリエステル樹脂から形成されており、層間接着性が良好であるため、各層間に接着層を介在させる必要はない。
【0025】
本発明の多層ポリエステルシートの中間層として、ポリエステル樹脂組成物層(G)を2層またはそれ以上の層に分割して配置することができる。中間層を分割して配置する場合には、ガスバリア性と成形性とコストの観点からは、ポリエステル樹脂組成物層(G)を2層に分割して配置することが望ましい。この場合、中間層は、2層のポリエステル樹脂組成物層(G1)及び(G2)と、これらの層間に配置された1層のPET樹脂層(PET−3)とからなる3層構成とすることが好ましい。したがって、この場合は、PET樹脂層(PET−1)/ポリエステル樹脂組成物層(G1)/PET樹脂層(PET−3)/ポリエステル樹脂組成物層(G2)/PET樹脂層(PET−2)の5層構成の多層ポリエステルシートが得られる。
【0026】
中間層には、成形不良品やスクラップなどからなる少なくとも1層のリグラインド層(R)を配置することができる。リグラインド層(R)を配置する個所は、任意であるが、シート成形容器とする場合、その外層になる表面層とポリエステル樹脂組成物層(G)との間に配置することが望ましい。
【0027】
ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)からなる層を表面層に配置すると、押出成形時にオリゴマーが発生して、冷却ロールにオリゴマーが付着するなどの不都合を生じ易い。しかも、多層ポリエステルシートの表面にフローマークが現われる(比較例3)。したがって、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)を含む層は、表面層に配置すると、実用に耐える多層ポリエステルシートを得ることができない。
【0028】
本発明の多層ポリエステルシートの総厚みは、好ましくは150〜1500μm、より好ましくは200〜1200μm、特に好ましくは300〜1000μmである。多層ポリエステルシートの総厚みが薄すぎると、機械的強度や耐熱性が不足することがあり、厚すぎると、シート成形性が困難になりやすく、特に深絞り成形性が難しくなる。
【0029】
ポリエステル樹脂組成物層(G)の厚みは、多層ポリエステルシートの総厚みを基準にして、好ましくは10〜95%、より好ましくは13〜90%である。ポリエステル樹脂組成物層(G)が2層以上に分割される場合には、この厚みの比率は、合計比率となり、上記範囲内での合計厚み比率となるように、2層以上に分割することが望ましい。ポリエステル樹脂組成物層(G)の厚み比率が小さすぎるとガスバリア性が不足する傾向を示し、大きすぎると機械的強度や耐熱性が不足するようになる。ポリエステル樹脂組成物層(G)の厚み(合計厚み)は、ガスバリア性の観点から、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。
【0030】
各表面層を構成するPET樹脂層の合計厚みは、総厚みを基準として、好ましくは5〜90%、より好ましくは10〜87%である。PET樹脂層が中間層にも配置される場合、例えば、前述のPET樹脂層(PET−3)などの場合、このPET樹脂層も上記PET樹脂層の合計厚み比率に含めるものとする。PET樹脂層の厚み比率が小さすぎると、低温での耐衝撃性などの機械的強度や耐熱性が低下傾向を示し、大きすぎると、ガスバリア性が低下する。表面層を構成する各PET樹脂層の厚みは、機械的強度や耐熱性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。リグラインド層を配置する場合には、その厚みは、ポリエステル樹脂組成物層(G)及び/またはPET樹脂層の一部に代替する。
【0031】
本発明の多層ポリエステルシートは、接着層を介在させることなく積層する上で、共押出法により成形することが好ましい。具体的に、本発明の多層ポリエステルシートが例えばPET樹脂層(PET−1)/ポリエステル樹脂組成物層(G)/PET樹脂層(PET−2)の3層構成である場合には、メイン及びサブからなる2台のベント式二軸押出機を用いて、フィードブロック方式の溶融・共押出法により成形することができる。
【0032】
本発明の多層ポリエステルシートは、全層を未延伸の非晶性シートとして成形することができるため、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により、カップ、トレイなどの容器に成形することができる。本発明のシート成形容器は、酸素ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れており、食品、医薬品、その他の物品の包装容器として好適である。本発明の多層ポリエステルシートの酸素ガス透過度は、温度30℃及び80%RHの条件下でMocon Oxtran法により測定したとき、好ましくは10cm3/m2・day・atm未満、より好ましくは9cm3/m2・day・atm未満、特に好ましくは8cm3/m2・day・atm未満という高い酸素ガスバリア性を示すことができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、特性の測定法または評価法は、次の通りである。
(1)酸素透過度:
シートの酸素透過度は、Mocon Oxtran法により、温度30℃及び相対湿度80%の条件で測定した(単位:cm3/m2・day・atm)。
【0034】
(2)深絞り成形性:
真空・圧空併用の深絞り成形機により、シートを縦180mm×横120mm×深さ25mmの容器(底部の縦150mm×横90mm)に成形し、得られた容器の偏肉状態を観察して、下記の基準で深絞り成形性を評価した。
◎:コーナ部の肉厚分布が非常に均一である、
○:コーナ部の肉厚分布が均一である、
×:コーナ部の肉厚分布が不均一である。
【0035】
(3)低温での耐衝撃性:
真空・圧空併用の深絞り成形機により、シートを縦180mm×横120mm×深さ25mmの容器(底部の縦150mm×横90mm)に成形し、得られた容器に加工惣菜150gを充填した後、容器の開口部を蓋材で真空下にシールした。この加工惣菜を充填した容器を、温度5℃で、1mの高さから、容器の底面を下にしてコンクリート床面に落下させた。5個の試料(n=5)を各々10回落下させ、破壊個数を数えた(破壊個数/5)。
【0036】
(4)透明性:
シートのHaze値(%)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:2.5%未満、
○:2.5%〜5%未満、
×:5%以上。
【0037】
[実施例1]
各表面層を形成する樹脂として、PET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」、IV値=0.82)を用いた。中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(三井化学製、商品名「三井B−010」、IV値=0.85)10重量%とPET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」)90重量%とのブレンド物を用いた。
【0038】
これら2種類の樹脂成分を使用し、メイン及びサブからなる2台のベント式二軸押出機を用いて、フィードブロック方式による共押出法により、総厚みが350μmで、幅が860mmの3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。各層の厚みは、21μm/308μm/21μm〔厚み比率(%)は、約6/88/6〕であった。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
実施例1において、中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂20重量%とPET樹脂80重量%とのブレンド物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
実施例1において、中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂30重量%とPET樹脂70重量%とのブレンド物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
実施例2において、各層の厚みを145μm/60μm/145μm〔厚み比率(%)は、約41/17/41〕としたこと以外は、同様にして、総厚みが350μmで、幅が860mmの3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
PET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」、IV値=0.82)をベント式二軸押出機を用いて溶融押出し、厚みが350μmで、幅が860mmの未延伸単層シート(A−PETシート)を作製した。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
実施例1において、中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂60重量%とPET樹脂40重量%とのブレンド物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
各表面層を形成する樹脂として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(三井化学製、商品名「三井B−010」、IV値=0.85)を用いた。中間層を形成する樹脂として、PET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」、IV値=0.82)を用いた。
【0045】
これら2種類の樹脂成分を使用し、メイン及びサブからなる2台のベント式二軸押出機を用いて、フィードブロック方式による共押出法により、総厚みが350μmで、幅が860mmの3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。各層の厚みは、21μm/308μm/21μm〔厚み比率(%)は、約6/88/6〕であった。しかし、押出成形時にオリゴマーの発生があり、冷却ロールにオリゴマーが付着した。また、多層ポリエステルシートの表面にフローマークが現われた。したがって、実用に耐える多層ポリエステルシートを得ることができなかった。そのため、この多層ポリエステルシートについては、物性等の測定及び評価は行わなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂から構成された多層ポリエステルシートであって、ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートが提供される。また、本発明によれば、該多層ポリエステルシートを真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により成形してなるシート成形容器が提供される。本発明の好ましい態様によれば、従来のA−PETシートの透明性を維持し、A−PETシートに求められていたガスバリア性と深絞り成形性を改善した多層ポリエステルシートと、該多層ポリエステルシートからなるシート成形容器が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂から構成された多層ポリエステルシートに関し、さらに詳しくは、ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性(低温落体強度)、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートに関する。また、本発明は、該多層ポリエステルシートを真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により成形してなるシート成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチックシート(フィルムを含む)を用いて、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形(熱成形ともいう)により、カップやトレイなどのシート成形容器が製造されている。プラスチックシートとしては、主として硬質ポリ塩化ビニルシートが透明性やシート成形性に優れているため汎用されてきた。
【0003】
近年、結晶化速度が遅い非晶性ポリエチレンテレフタレートシート(A−PETシート)が、硬質ポリ塩化ビニルシートに代わる成形用シートとして用いられるようになってきている。A−PETシートは、無毒性で、透明性や表面光沢性に優れている。
【0004】
しかし、A−PETシートは、成形品にシャープな部分を形成すると、その部分から割れを発生しやすい。このような割れの問題は、コーナー部分に曲面を設けることにより克服することができるものの、コーナー部分の肉厚分布を高度に均一化することが困難である。
【0005】
また、A−PETシートは、比較的ガスバリア性に優れるものの、十分ではない。A−PETシートとエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルムとを積層することにより、ガスバリア性に優れた多層シートを得ることができる。しかし、EVOHフィルムは、吸湿によりガスバリア性が低下することに加えて、接着性に乏しいため、例えば、A−PET/接着層/EVOH/接着層/A−PETなどの層構成を採用する必要がある。
【0006】
そのため、A−PETシートとEVOHフィルムとを積層したガスバリア性多層シートは、コストが高いという欠点がある。また、該多層シートは、層間剥離強度が高くなく、深絞り成形性も十分ではない。さらに、該多層シートは、異種樹脂の積層体であるため、成形不良品やスクラップをリグラインド(再生材料)として利用することが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂から構成された多層ポリエステルシートであって、ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートを提供することにある。また、本発明の目的は、該多層ポリエステルシートを真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により成形してなるシート成形容器を提供することにある。
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、両表面層をポリエチレンテレフタレート樹脂層とし、中間層にガスバリア性に優れた非晶質ポリエステル樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とのブレンド樹脂層を配置することにより、前記目的を達成できる多層ポリエステルシートが得られることを見出した。本発明の多層ポリエステルシートは、深絞り成形性、ガスバリア性、低温での耐衝撃性、透明性などに優れている。
【0009】
本発明の多層ポリエステルシートは、各層を熱可塑性ポリエステル樹脂により形成しており、EVOHの如き異種樹脂を使用する必要がないため、成形不良品やスクラップをリグラインド層として再利用することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートであって、
(1)第一表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−1)であり、
(2)少なくとも1層の中間層が、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含み、かつ、
(3)第二表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−2)である
ことを特徴とする多層ポリエステルシートが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、第一表面層及び第二表面層を形成するポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」と呼ぶことがある)としては、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル(これらを「テレフタル酸成分」という)とエチレングリコールとの重縮合物からなるホモポリマー、テレフタル酸成分とエチレングリコールとその他の共重合成分とから合成された共重合体を使用することができる。
【0012】
共重合成分の割合は、通常20モル%未満、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。共重合成分の割合が高くなりすぎると、PET樹脂の結晶性が損なわれて、多層シートの耐熱性が低下する。PET樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との等モルの反応により合成されるので、共重合成分の割合は、ジカルボン酸成分100モル%とジオール成分100モル%の合計200モル%を基準として算出する。
【0013】
共重合成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、キシリレングリコール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサジメタノールなどのジオール成分;イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸などのジカルボン酸成分;などが挙げられる。これらのPET樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
PET樹脂としては、一般に押出グレードのものが使用される。PET樹脂としては、比較的結晶化速度が速いPET樹脂を使用することもできるが、シート成形性(熱成形性)や透明性の観点からは、比較的結晶化速度の遅いアモルファス成分が多い非晶性PET樹脂(A−PET)が好ましい。すなわち、本発明の多層シートを構成するPET樹脂シートは、A−PETシートであることが好ましい。
【0015】
PET樹脂の固有粘度〔IV〕は、好ましくは0.6〜1.3、より好ましくは0.7〜1.0、特に好ましくは0.7〜0.9である。PET樹脂の固有粘度が低すぎると、PET樹脂シートの強度や耐熱性が低下し、高すぎると、押出成形やシート成形が困難になる。
【0016】
本発明で使用するガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂は、本質的に非結晶性のポリエステル樹脂である。本発明で使用するガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂は、Mocon Oxtran法により、温度23℃及び相対湿度0%(0%RH)の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満、好ましくは8cm3・mm/(m2・day・MPa)未満の高いガスバリア性を有する熱可塑性ポリエステル樹脂である。
【0017】
ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分と共に他のジカルボン酸成分を併用し、また、グリコール成分として、エチレングリコールと共に他のグリコール成分を併用することにより、非晶質とすると共に、そのガスバリア性を高めたコポリエステル樹脂である。ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分とイソフタル酸成分を併用し、グリコール成分として、エチレングリコールと1,3−フェニレンオキシエチレングリコールを併用したコポリエステル樹脂であることが好ましい。より具体的に、本発明で使用するガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂としては、ポリエチレン・1,3−フェニレンオキシエチレン・イソフタレート・テレフタレート樹脂が好ましい。
【0018】
このようなガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂として市販品を使用することができるが、市販品としては、三井化学株式会社により製造販売されている商品名「三井B−010」〔IV値=0.85dl/g、ガラス転移温度=62℃、23℃及び0%RHでMocon Oxtran法により測定した酸素ガス透過係数=6cm3・mm/(m2・day・MPa)〕が好ましく使用される。
【0019】
本発明の多層ポリエステルシートは、第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートである。この多層ポリエステルシートの第一表面層及び第二表面層は、いずれもPET樹脂層である。両表面層をPET樹脂層とすることにより、耐熱性、機械的強度、透明性などに優れると共に、シート成形容器の食品衛生性を高めることができる。具体的には、米国のFDA規格に適合する食品衛生性を付与することができる。
【0020】
本発明の多層ポリエステルシートの中間層は、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含む。
【0021】
中間層を構成するポリエステル樹脂組成物層(G)は、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)を、多層ポリエステルシートに要求されるガスバリア性の程度に応じて、ポリエチレンテレフタレート樹脂(b)と前記範囲内で適宜ブレンドして用いることができる。このポリエチレンテレフタレート樹脂(b)としては、前述のPET樹脂を使用することができる。中間層に使用するPET樹脂としては、バージンレジンだけではなく、PETトレイ協議会で認めているスクラップリターン品も、IV値の著しい低下がなく、好ましくは前記IV値の範囲内であれば、その少くとも一部として使用することができる。
【0022】
ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)は、PET樹脂とブレンドして使用する場合、そのブレンド比率は、5〜50重量%と比較的低くてもガスバリア性が比較的高いポリエステル樹脂組成物層(G)を形成することができる。他方、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)のブレンド比率が大きくなりすぎると、多層ポリエステルシートの低温での耐衝撃性(低温での落体強度)が低下する。カップやトレイ等のシート成形容器は、食品などを充填して、低温で取り扱われたり、輸送されることが多いため、低温での落体強度が良好であることが求められている。また、食品衛生性及び押出成形性の観点からも、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)のブレンド比率は、低い方が好ましい。
【0023】
ガスバリア性、低温での耐衝撃性、コストなどを高度にバランスさせるには、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)8〜40重量%とPET樹脂(b)60〜92重量%とすることが好ましく、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)10〜35重量%とPET樹脂(b)65〜90重量%とすることがより好ましく、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)10〜30重量%とPET樹脂(b)70〜90重量%とすることが最も好ましい。
【0024】
本発明の多層ポリエステルシートの基本的な層構成は、PET樹脂層(PET−1)/ポリエステル樹脂組成物層(G)/PET樹脂層(PET−2)の3層構成である。このように、本発明の多層ポリエステルシートの中間層は、1層のポリエステル樹脂組成物層(G)からなる単層構造とすることができる。各層は、同質の熱可塑性ポリエステル樹脂から形成されており、層間接着性が良好であるため、各層間に接着層を介在させる必要はない。
【0025】
本発明の多層ポリエステルシートの中間層として、ポリエステル樹脂組成物層(G)を2層またはそれ以上の層に分割して配置することができる。中間層を分割して配置する場合には、ガスバリア性と成形性とコストの観点からは、ポリエステル樹脂組成物層(G)を2層に分割して配置することが望ましい。この場合、中間層は、2層のポリエステル樹脂組成物層(G1)及び(G2)と、これらの層間に配置された1層のPET樹脂層(PET−3)とからなる3層構成とすることが好ましい。したがって、この場合は、PET樹脂層(PET−1)/ポリエステル樹脂組成物層(G1)/PET樹脂層(PET−3)/ポリエステル樹脂組成物層(G2)/PET樹脂層(PET−2)の5層構成の多層ポリエステルシートが得られる。
【0026】
中間層には、成形不良品やスクラップなどからなる少なくとも1層のリグラインド層(R)を配置することができる。リグラインド層(R)を配置する個所は、任意であるが、シート成形容器とする場合、その外層になる表面層とポリエステル樹脂組成物層(G)との間に配置することが望ましい。
【0027】
ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)からなる層を表面層に配置すると、押出成形時にオリゴマーが発生して、冷却ロールにオリゴマーが付着するなどの不都合を生じ易い。しかも、多層ポリエステルシートの表面にフローマークが現われる(比較例3)。したがって、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)を含む層は、表面層に配置すると、実用に耐える多層ポリエステルシートを得ることができない。
【0028】
本発明の多層ポリエステルシートの総厚みは、好ましくは150〜1500μm、より好ましくは200〜1200μm、特に好ましくは300〜1000μmである。多層ポリエステルシートの総厚みが薄すぎると、機械的強度や耐熱性が不足することがあり、厚すぎると、シート成形性が困難になりやすく、特に深絞り成形性が難しくなる。
【0029】
ポリエステル樹脂組成物層(G)の厚みは、多層ポリエステルシートの総厚みを基準にして、好ましくは10〜95%、より好ましくは13〜90%である。ポリエステル樹脂組成物層(G)が2層以上に分割される場合には、この厚みの比率は、合計比率となり、上記範囲内での合計厚み比率となるように、2層以上に分割することが望ましい。ポリエステル樹脂組成物層(G)の厚み比率が小さすぎるとガスバリア性が不足する傾向を示し、大きすぎると機械的強度や耐熱性が不足するようになる。ポリエステル樹脂組成物層(G)の厚み(合計厚み)は、ガスバリア性の観点から、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。
【0030】
各表面層を構成するPET樹脂層の合計厚みは、総厚みを基準として、好ましくは5〜90%、より好ましくは10〜87%である。PET樹脂層が中間層にも配置される場合、例えば、前述のPET樹脂層(PET−3)などの場合、このPET樹脂層も上記PET樹脂層の合計厚み比率に含めるものとする。PET樹脂層の厚み比率が小さすぎると、低温での耐衝撃性などの機械的強度や耐熱性が低下傾向を示し、大きすぎると、ガスバリア性が低下する。表面層を構成する各PET樹脂層の厚みは、機械的強度や耐熱性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。リグラインド層を配置する場合には、その厚みは、ポリエステル樹脂組成物層(G)及び/またはPET樹脂層の一部に代替する。
【0031】
本発明の多層ポリエステルシートは、接着層を介在させることなく積層する上で、共押出法により成形することが好ましい。具体的に、本発明の多層ポリエステルシートが例えばPET樹脂層(PET−1)/ポリエステル樹脂組成物層(G)/PET樹脂層(PET−2)の3層構成である場合には、メイン及びサブからなる2台のベント式二軸押出機を用いて、フィードブロック方式の溶融・共押出法により成形することができる。
【0032】
本発明の多層ポリエステルシートは、全層を未延伸の非晶性シートとして成形することができるため、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により、カップ、トレイなどの容器に成形することができる。本発明のシート成形容器は、酸素ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れており、食品、医薬品、その他の物品の包装容器として好適である。本発明の多層ポリエステルシートの酸素ガス透過度は、温度30℃及び80%RHの条件下でMocon Oxtran法により測定したとき、好ましくは10cm3/m2・day・atm未満、より好ましくは9cm3/m2・day・atm未満、特に好ましくは8cm3/m2・day・atm未満という高い酸素ガスバリア性を示すことができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、特性の測定法または評価法は、次の通りである。
(1)酸素透過度:
シートの酸素透過度は、Mocon Oxtran法により、温度30℃及び相対湿度80%の条件で測定した(単位:cm3/m2・day・atm)。
【0034】
(2)深絞り成形性:
真空・圧空併用の深絞り成形機により、シートを縦180mm×横120mm×深さ25mmの容器(底部の縦150mm×横90mm)に成形し、得られた容器の偏肉状態を観察して、下記の基準で深絞り成形性を評価した。
◎:コーナ部の肉厚分布が非常に均一である、
○:コーナ部の肉厚分布が均一である、
×:コーナ部の肉厚分布が不均一である。
【0035】
(3)低温での耐衝撃性:
真空・圧空併用の深絞り成形機により、シートを縦180mm×横120mm×深さ25mmの容器(底部の縦150mm×横90mm)に成形し、得られた容器に加工惣菜150gを充填した後、容器の開口部を蓋材で真空下にシールした。この加工惣菜を充填した容器を、温度5℃で、1mの高さから、容器の底面を下にしてコンクリート床面に落下させた。5個の試料(n=5)を各々10回落下させ、破壊個数を数えた(破壊個数/5)。
【0036】
(4)透明性:
シートのHaze値(%)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:2.5%未満、
○:2.5%〜5%未満、
×:5%以上。
【0037】
[実施例1]
各表面層を形成する樹脂として、PET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」、IV値=0.82)を用いた。中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(三井化学製、商品名「三井B−010」、IV値=0.85)10重量%とPET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」)90重量%とのブレンド物を用いた。
【0038】
これら2種類の樹脂成分を使用し、メイン及びサブからなる2台のベント式二軸押出機を用いて、フィードブロック方式による共押出法により、総厚みが350μmで、幅が860mmの3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。各層の厚みは、21μm/308μm/21μm〔厚み比率(%)は、約6/88/6〕であった。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
実施例1において、中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂20重量%とPET樹脂80重量%とのブレンド物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
実施例1において、中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂30重量%とPET樹脂70重量%とのブレンド物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
実施例2において、各層の厚みを145μm/60μm/145μm〔厚み比率(%)は、約41/17/41〕としたこと以外は、同様にして、総厚みが350μmで、幅が860mmの3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
PET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」、IV値=0.82)をベント式二軸押出機を用いて溶融押出し、厚みが350μmで、幅が860mmの未延伸単層シート(A−PETシート)を作製した。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
実施例1において、中間層を形成するポリエステル樹脂組成物として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂60重量%とPET樹脂40重量%とのブレンド物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
各表面層を形成する樹脂として、ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(三井化学製、商品名「三井B−010」、IV値=0.85)を用いた。中間層を形成する樹脂として、PET樹脂(三井化学製、商品名「SE−30」、IV値=0.82)を用いた。
【0045】
これら2種類の樹脂成分を使用し、メイン及びサブからなる2台のベント式二軸押出機を用いて、フィードブロック方式による共押出法により、総厚みが350μmで、幅が860mmの3層構成の未延伸多層ポリエステルシートを作成した。各層の厚みは、21μm/308μm/21μm〔厚み比率(%)は、約6/88/6〕であった。しかし、押出成形時にオリゴマーの発生があり、冷却ロールにオリゴマーが付着した。また、多層ポリエステルシートの表面にフローマークが現われた。したがって、実用に耐える多層ポリエステルシートを得ることができなかった。そのため、この多層ポリエステルシートについては、物性等の測定及び評価は行わなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂から構成された多層ポリエステルシートであって、ガスバリア性、深絞り成形性、低温での耐衝撃性、及び透明性に優れた多層ポリエステルシートが提供される。また、本発明によれば、該多層ポリエステルシートを真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などのシート成形により成形してなるシート成形容器が提供される。本発明の好ましい態様によれば、従来のA−PETシートの透明性を維持し、A−PETシートに求められていたガスバリア性と深絞り成形性を改善した多層ポリエステルシートと、該多層ポリエステルシートからなるシート成形容器が提供される。
Claims (7)
- 第一表面層、少なくとも1層の中間層、及び第二表面層からなる層構成を有し、各層が熱可塑性ポリエステル樹脂層である多層ポリエステルシートであって、
(1)第一表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−1)であり、
(2)少なくとも1層の中間層が、温度23℃及び相対湿度0%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が10cm3・mm/(m2・day・MPa)未満のガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)5〜50重量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(b)50〜95重量%とを含有する少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)を含み、かつ、
(3)第二表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−2)である
ことを特徴とする多層ポリエステルシート。 - ガスバリア性非晶質ポリエステル樹脂(a)が、ポリエチレン・1,3−フェニレンオキシエチレン・イソフタレート・テレフタレート樹脂である請求項1記載の多層ポリエステルシート。
- 少なくとも1層の中間層が、1層のポリエステル樹脂組成物層(G)からなる単層構成を有するものである請求項1記載の多層ポリエステルシート。
- 少なくとも1層の中間層が、2層のポリエステル樹脂組成物層(G1)及び(G2)と、これらの層間に配置された1層のポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−3)とからなる「ポリエステル樹脂組成物層(G1)/ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET−3)/ポリエステル樹脂組成物層(G2)」の3層構成を有するものである請求項1記載の多層ポリエステルシート。
- 少なくとも1層の中間層が、少なくとも1層のポリエステル樹脂組成物層(G)に加えて、少なくとも1層のリグラインド層(R)を含むものである請求項1記載の多層ポリエステルシート。
- 温度30℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が10cm3/m2・day・atm未満である請求項1記載の多層ポリエステルシート。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多層ポリエステルシートからなるシート成形容器。
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