JP2004098052A - マイクロカプセル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マイクロカプセルのカプセル壁が、ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子と、イソシアネート化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物との重合により得られるポリマーからなるマイクロカプセルである。分子中に2個以上の活性水素を有する化合物として、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子を用いることが好適である。マイクロカプセルにおけるカプセル壁が、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物と、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子とを反応させて得られるマイクロカプセルである。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロカプセル壁の架橋密度をコントロールすることが可能であり、特に、感熱記録材料として好適なマイクロカプセル及び該マイクロカプセルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリやプリンター等の記録媒体として普及している感熱記録材料は、主として支持体上に電子供与性染料前駆体の固体分散物を塗布乾燥させた材料を使用している。電子供与性染料前駆体を使用した記録方式は、材料も入手し易くかつ高い発色濃度や発色速度を示すという利点を有する。しかし、記録後の保存条件や加熱或いは溶剤等の付着により発色し易く、記録画像の保存性や信頼性に問題があり、多くの改良が検討されている。
【0003】
前記記録画像の保存性を改善するための一つの方法として、電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル中に内包し、記録層中で顕色剤と該染料前駆体とを隔離することにより、画像の保存性を高める方法が提案されている。この方法によって高い発色性と画像安定性を得ることができる。
【0004】
上記以外の感熱記録材料としては、ジアゾニウム塩を利用した、所謂ジアゾ型の感熱記録材料についても研究されている。該ジアゾニウム塩は、フェノール誘導体や活性メチレン基を有する化合物(カプラー)と反応して染料を形成するものであるが(通常、塩基性化合物が反応促進剤として用いられる)、同時に感光性も有し、光照射によりその活性を失うものである。かかる性質を利用して最近では感熱記録材料にも応用されてきており、ジアゾニウム塩とカプラーを熱で反応させて画像を形成した後、光照射して定着させることができる光定着型の感熱記録材料が開示されている(非特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前記ジアゾニウム塩を用いた感熱記録材料は、その化学的活性が高いため、低温であっても保存中にジアゾニウム塩とカプラーとが徐々に反応してしまい、貯蔵寿命(シェルフライフ)が短いという欠点がある。これに対する一つの解決手段として、ジアゾニウム塩をマイクロカプセルに封入し、カプラーや水、塩基性化合物から隔離する方法が開示されている(非特許文献2参照)。
【0006】
また、前記感熱記録材料の応用分野の一つとして、多色感熱記録材料が注目されてきている。この場合、感熱記録による多色画像の再現は、電子写真記録方式やインクジェット方式に比べて難しいと言われてきた。しかし、この点に関してはすでに、支持体上にマイクロカプセル内に封入された電子供与性染料前駆体と顕色剤とを主成分とする感熱発色層又はマイクロカプセル内に封入されたジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と加熱時に反応して発色するカプラーを含有する感熱発色層を2層以上積層することによって多色感熱記録材料が得られる。該多色感熱記録材料においては、単色の感熱記録材料に比べて、優れた色再現性を得るため、マイクロカプセルの熱発色特性を高度に制御することが要求される。
【0007】
従来より、電子供与性染料前駆体やジアゾニウム塩化合物をマイクロカプセル中に封入させるには、一般に、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解させて(油相)、これを水溶性高分子の水溶液中(水相)に添加して乳化分散させる。この場合、マイクロカプセル壁材となるモノマー又はプレポリマーを有機溶媒相側及び水相側のいずれかに添加し、有機溶媒相と水相との界面に高分子壁を形成させて、マイクロカプセル化する方法が提案されている(非特許文献3〜4参照)。
前記マイクロカプセル壁材としては、例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、セルロース類、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリアミド(ナイロン)などが挙げられ、これらの中でも、ポリウレア及びポリウレタンは、そのガラス転移温度(Tg)が室温〜200℃程度であるため、得られるマイクロカプセル壁材が熱応答性を示し、感熱記録材料を設計するのに好適である。
【0008】
前記ポリウレタン又はポリウレアのカプセル壁を有するマイクロカプセルの製造方法としては、まず、有機溶媒中にジアゾニウム塩や電子供与性染料前駆体を溶解し、これに多価イソシアネート化合物を添加し、この有機相溶液を水溶性高分子水溶液中で乳化した後、水相に重合反応促進の触媒を添加するか、又は乳化液の温度を上げて多価イソシアネート化合物を水等の活性水素を有する化合物と重合させてカプセル壁を形成する方法が知られている。前記ポリウレア又はポリウレタン壁の形成材料である多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシナネートとトリメチロールプロパンの付加体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加体などが挙げられる(特許文献1参照)。
【0009】
しかし、前記多価イソシアネート化合物を用いたポリウレア又はポリウレタンのカプセル壁であっても、前述したジアゾニウム塩を用いた際の短い貯蔵寿命(シェルフライフ)については充分に改善されていない。即ち、貯蔵寿命(シェルフライフ)が充分に長くない感熱記録材料は製造した後、使用するまでの間に、例えば、高温高湿の条件下に曝された場合、所謂「かぶり」と呼ばれる地肌の発色が現われ、印字画像の視認性が低下する。従って、高い発色性を維持しながら貯蔵寿命(シェルフライフ)を更に向上させることが望まれている。
【0010】
また、前記多色感熱記録材料においては、シアン、マゼンタ及びイエローのそれぞれの感熱記録層が設けられているが、これらは異なる加熱温度により印字されることから、通常の感熱記録材料の感熱記録層に比べて優れた熱応答性が求められる。しかし、前記従来のポリウレア又はポリウレタンのカプセル壁は、この要求を充分に満たすとはいえなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開昭62−212190号公報
【非特許文献1】
佐藤弘次ら「画像電子学会誌」、第11巻、第4号(1982)、290−296頁
【非特許文献2】
宇佐美智正ら「電子写真学会誌」、第26巻、第2(1987)、115〜125頁
【非特許文献3】
近藤朝士「マイクロカプセル」、日刊工業新聞社(1970)
【非特許文献4】
近藤保ら「マイクロカプセル」、三共出版(1977)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、カプセル壁の架橋密度をコントロールすることが可能であり、特に、感熱記録材料として好適に使用することができるマイクロカプセル及び該マイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> マイクロカプセルにおけるカプセル壁が、ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子と、イソシアネート化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とを重合させて得られるポリマーから形成されることを特徴とするマイクロカプセルである。
<2> 前記分子中に2個以上の活性水素を有する化合物が、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子である前記<1>に記載のマイクロカプセルである。
<3> マイクロカプセルにおけるカプセル壁が、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物と、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子とを反応させて得られることを特徴とするマイクロカプセルである。
<4> 樹状分岐分子が、樹状分岐ポリマー及びデンドロンから選択される前記<1>から<3>のいずれかに記載のマイクロカプセルである。
<5> 樹状分岐ポリマーが、デンドリマーである前記<4>に記載のマイクロカプセルである。
<6> 樹状分岐ポリマーが、ハイパーブランチポリマーである前記<4>に記載のマイクロカプセルである。
<7> マイクロカプセルの平均粒径が、0.05μm〜50μmである前記<1>から<6>のいずれかに記載のマイクロカプセルである。
<8> ジアゾニウム塩及び電子供与性染色前駆体の少なくともいずれかを内包する前記<1>から<7>のいずれかに記載のマイクロカプセルである。
<9> マイクロカプセルにおけるカプセル壁がポリウレタン及びポリウレアの少なくともいずれかのポリマーを含む前記<1>から<8>のいずれかに記載のマイクロカプセルである。
<10> 感熱記録材料に用いられる前記<1>から<9>のいずれかに記載のマイクロカプセルである。
<11> イソシアネート化合物と、分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とを、水溶液中で重合させてマイクロカプセル壁を形成するマイクロカプセル壁形成工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法である。
<12> 分子中に2個以上の活性水素を有する化合物が、分子末端にアミノ基を有する樹状分岐分子である前記<11>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0014】
本発明のマイクロカプセルは、第一の形態として、マイクロカプセルのカプセル壁が、ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子と、イソシアネート化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物との重合により得られるポリマーから形成される。また、本発明のマイクロカプセルは、第二の形態として、マイクロカプセルにおけるカプセル壁が、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物と、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子とを重合させて得られる。
前記第一及び第二形態に係るマイクロカプセルによれば、前記樹状分岐分子は分子末端に多数のアミノ基又はヒドロキシル基を有しているので、該樹状分岐分子におけるアミノ基又はヒドロキシル基が架橋点となって、カプセル壁の架橋密度が増すと共に、水素結合部位も増すため、熱応答がシャープになり、カプセルの熱応答を高めることができ、発色濃度の立ち上がりが大幅に改善される。
【0015】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、水溶液中で、イソシアネート化合物と、分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子と、分子末端にアミノ基を有する樹状分岐分子とを重合させてマイクロカプセル壁を形成する。これにより、架橋密度が高く、熱応答性に優れたマイクロカプセル壁を効率よく製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(マイクロカプセル)
本発明のマイクロカプセルは、そのマイクロカプセル壁が、第一の形態では、ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子と、イソシアネート化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とを重合させて得られるポリマー(ポリウレア及び/又はポリウレタン)から形成され、第二の形態では、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物と、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子とを重合させて得られるポリマーから形成され、必要に応じてその他の成分を含む。
【0017】
−ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子−
前記ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子としては、分子末端にヒドロキシル基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、樹状分岐ポリマー、デンドロンなどが挙げられる。
前記樹状分岐ポリマーとしては、例えば、ハイパーブランチポリマー、分岐の中心であるコアより規則的に逐次分岐されたデンドリマー、などが好適に挙げられる。
前記デンドロンとは、コアに分岐のない置換基を残しながら他は規則的に逐次分岐された構造体を意味する。
前記デンドリマー及びデンドロンの世代数については、特に制限はないが、通常1〜6世代が合成の容易性の点から好ましく、1〜4世代(G1〜G4)がより好ましい。
【0018】
前記樹状分岐分子の質量平均分子量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、200〜1,000,000が好ましく、500〜500,000がより好ましい。
また、前記樹状分岐分子の平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましい。
【0019】
前記樹状分岐分子は、樹状分岐構造をその構造の一部に有する分子であってもよく、例えば、前記樹状分岐ポリマーにおける表面の官能性基の一部を、高分子又は他の材料と結合させてなる分子であってもよい。或いは、前記樹状分岐ポリマーをその構造の一部として有する分子であってもよく、具体的には、デンドリマーの表面が高分子主鎖に結合した分子、或いは、デンドロンの分岐の中心が高分子主鎖に結合した分子、などであってもよい。
【0020】
前記デンドリマーとしては、例えば、G.R.Newkome,C.N.Moorefield、F.フェグトレ著「Dendrimers and Dendrons」(2001年、WILEY‐VCH発行)、C.J.Hawkeret al;J.Chem.Soc.,Commun.,第1010頁(1990年)、D.A.Tomalia et al;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,第138頁(1990年)、C.J.Hawker et al;J.Am.Chem.Soc.,112巻、第7638頁(1990年)、J.M.J.Frechet,;Science、263巻、第1710頁(1994年)などの文献に記述されているものが好適に挙げられる。
【0021】
前記ヒドロキシル基を分子末端に有するデンドリマーの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、以下に示すデンドリマー(1)〜(4)が好適に挙げられる。
【0022】
<デンドリマー(1)>
【化1】
【0023】
<デンドリマー(2)>
【化2】
【0024】
<デンドリマー(3)>
【化3】
【0025】
<デンドリマー(4)>
【化4】
【0026】
なお、前記デンドリマーとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
前記ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子の配合量は、マイクロカプセル壁に対して、固形分濃度で0.01〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
【0028】
本発明においては、上記ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子以外にも、必要に応じて他のポリオール化合物を配合することができる。
前記他のポリオール化合物としては、例えば、水、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,4−ベンゼンジメタノール、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン−5,5’,6,6’−テトロール、等を挙げることができる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
−イソシアネート化合物−
前記イソシアネート化合物としては、前記分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子と反応して付加物を形成することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能イソシアネートが好ましい。
前記分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能イソシアネートとしては、例えば、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、などが挙げられ、これらの中でも特に、芳香族イソシアネート化合物が好ましい。
【0030】
具体的には、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、などが挙げられる。
これらの中で、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネートが好ましく、特に、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネートが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子と、前記分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能イソシアネートとの付加物は、例えば、分子末端にヒドロキシル基を有するデンドリマーと2官能イソシアネートを有機溶剤中で、攪拌しながら加熱(50〜100℃)することにより、或いはオクチル酸第1錫等の触媒を添加しながら比較的低温(40〜70℃)で加熱して、得ることができる。一般に、分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子のヒドロキシル基のモル数の0.8〜1.5倍のモル数の2官能イソシアネートが使用される。
【0032】
一般に、分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子及びその他のポリオール等を合わせたヒドロキシル基のモル数の0.8〜1.5倍のモル数の2官能イソシアネートが使用される。
【0033】
なお、マイクロカプセルの原料であるイソシアネート化合物として、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する他の多官能イソシアネート化合物とを併用することができる。
前記分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物としては、キシレンジイソシアネート又はその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート又はその水添物、イソホロンジイソシアネート等の公知の化合物が挙げることができる。更にこれらの化合物を主原料としこれらの3量体(ビューレット或いはイソシアヌレート)の他トリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体(付加物)として多官能としたもの、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物なども用いることができる。特に、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物を主原料としこれらの3量体(ビューレット或いはイソシヌレート)の他トリメチロールプロパンとのアダクト体として多官能としたもの好ましい。
これらの化合物については、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0034】
(分子中に2個以上の活性水素を有する化合物)
前記分子中に2個以上の活性水素を有する化合物は、特に制限はないが、活性水素を有する官能基としては水酸基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられ、これらの中でも、アミノ基が好ましく、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子が好適である。
このようなアミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子としては、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー及びデンドロンのいずれかが好適である。
【0035】
前記アミノ基を分子末端に有するデンドリマーの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、以下に示すデンドリマー(5)〜(13)が好適に挙げられる。
【0036】
<デンドリマー(5)>
【化5】
【0037】
<デンドリマー(6)>
【化6】
【0038】
<デンドリマー(7)>
【化7】
【0039】
<デンドリマー(8)>
【化8】
【0040】
<デンドリマー(9)>
【化9】
【0041】
<デンドリマー(10)>
【化10】
【0042】
<デンドリマー(11)>
【化11】
【0043】
<デンドリマー(12)>
【化12】
【0044】
<デンドリマー(13)>
【化13】
【0045】
なお、前記デンドリマーとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0046】
前記アミノ基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、以下に示すハイパーブランチポリマー(1)〜(2)が好適に挙げられる。
【0047】
<ハイパーブランチポリマー(1)>
【化14】
【0048】
<ハイパーブランチポリマー(2)>
【化15】
【0049】
なお、前記ハイパーブランチポリマーとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0050】
前記アミノ基を分子末端に有する、デンドロンの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、以下に示すデンドロン(1)〜(2)が好適に挙げられる。
なお、前記ハデンドロンとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0051】
<デンドロン(1):プロピレンイミン型デンドロン>
【化16】
【0052】
<デンドロン(2):プロピレンイミン型デンドロン>
【化17】
【0053】
これらの中でも、ポリアミドアミン型デンドリマー(上記式(9),(10),(12))及びポリプロピレンイミン型デンドリマー(上記式(5),(6),(11),(13))が、カプセル壁の耐熱性の向上を図れる点から好ましい。
【0054】
前記デンドリマーのうち、トリメチレンイミン骨格を含むデンドリマーの製造方法としては、特に制限はなく、適宜選定することができるが、以下の方法などが挙げられる。
例えば、国際特許(WO−A)第9314147号明細書、及び国際特許(WO−A)第9502008号明細書などに記載されているように、アンモニア及び2個以上の1級アミノ基を含有する化合物を出発物質とし、アクリロニトリルを反応させてシアノエチル化した後、ニトリル基を触媒の存在下で、水素又はアンモニアを用いて1級アミノ基に還元し(G1)、次いで、シアノエチル化と1級アミノ基への還元を3度繰り返して(G2→G3→G4)合成する方法などが挙げられる。なお、G1〜G4は、第1世代から第4世代を表す。
前記製造方法においては、出発物質として、アンモニアの他、1級アミノ基、アルコール、フェノール、チオール、チオフェノール及び2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する化合物を用いてもよい。
【0055】
前記デンドリマーのうち、アミドアミン骨格を含むデンドリマーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、以下の方法などが挙げられる。
例えば、先ず、第1級アミノ基を有する化合物を出発物質とし、そのアミノ基に2当量のメチルアクリレートを反応させ(マイケル付加反応)、窒素分枝部を有する2官能のメチルエステル化合物とし、次いでメチルエステルに対し1級アミノ基を有するジアミン化合物の一方を反応させ(エステル/アミド交換反応)、他方の1級アミノ基を残す(G1)。次いで、2当量のメチルアクリレートとの反応により、メチルエステルに対し1級アミノ基を有するジアミン化合物の一方を反応させ、他方の1級アミノ基を残す反応を3度繰り返して(G2→G3→G4)合成する方法などが挙げられる(例えば、特公平7−2840号公報、特公平7−57735号公報、特公平7−57736号公報、特開平7−267879号公報、特開平11−140180号公報参照)。
【0056】
前記製造方法においては、出発物質として、アンモニアのほか、1級アミノ基、アルコール、フェノール、チオール、チオフェノール、及び、2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する化合物を用いてもよい。
【0057】
前記ハイパーブランチポリマーの製造方法としては、例えば、M.Suzuki et al;Macromolecules,25巻,7071頁(1992)、同31巻,1716頁(1998)に記載されているように、一級アミンを求核成分とし、パラジウム触媒による環状化合物の開環重合による合成方法等が挙げられる。
【0058】
前記アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子以外にも、他の分子中に2個以上の活性水素を有する化合物を併用することができる。
このような化合物としては、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン系化合物などが挙げられる。
【0059】
前記分子中に2個以上の活性水素を有する化合物の前記マイクロカプセル壁における配合量は、固形分濃度で0.01〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
【0060】
前記電子供与性染料前駆体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物、等が挙げられ、これらの中でもトリアリールメタン系化合物及びキサンテン系化合物が、発色濃度が高く有用であることがら好ましい。
【0061】
前記電子供与性染料前駆体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6ジメチルアミノフタリド(即ち、クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記ジアゾニウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、前記ジアゾニウム塩とは、一般式:ArN2X−[ただし、式中Arは、アリール基を表す。X−は、酸アニオンを表す。]で表わされる化合物を意味する。
【0063】
前記ジアゾニウム塩は、フェノール化合物或いは活性メチレンを有する化合物と反応し、所謂染料を形成する。更に、光(一般的には紫外線)照射により分解し、脱窒素してその活性を失うものである。
前記ジアゾニウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、2,5−ジブトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−オクトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−(N−(2−エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−クロルベンゼンチオジアゾニウム、3−(2−オクチルオキシエトキシ)−4−モロホリノベンゼンジアゾニウム、4−N,N−ジヘキシルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−N−ヘキシル−N−トリルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウムの塩、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記ジアゾニウム塩の酸アニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、1,5−ナフタレンスルホネート、パーフルオロアルキルカルボネート、パーフルオロアルキルスルフォネート、塩化亜鉛、塩化錫等の酸アニオンを用いることができる。これらの中でも、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート及び1,5−ナフタレンスルホネートの酸アニオンが、水溶性が低く、有機溶剤に可溶であるので好適である。
【0065】
前記ジアゾニウム塩と反応して色素を形成するカプラーとしては、乳化分散及び固体分散の少なくともいずれかにより微粒子化して使用される。
前記カプラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−スルファニルナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エタノールアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ドデシルオキシプルピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド、アセトアニリド、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、2−クロロ−5−オクチルアセトアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−オクチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロン、1−(2−ドデシルオキシフェニル)−2−メチルカーボネイトシクロヘキサン−3,5−ジオン、1−(2−ドデシルオキシフェニル)シクロヘキサン−3,5−ジオン、N−フェニル−N−ドデシルバルビツール酸、N−フェニル−N−(3−ステアリルオキシ)ブチルバルビツール酸、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
また、色素形成反応を促進させるために、乳化分散及び固体分散の少なくともいずれかにより微粒子化した塩基化合物を添加するのが一般的である。
前記塩基化合物としては、前記無機塩基化合物又は有機塩基化合物以外にも、加熱時に分解等によりアルカリ物質を放出するような化合物も含まれる。該塩基化合物としては、例えば、有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素及びチオ尿素さらにそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルホリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォルムアジン類、ピリジン類等の含窒素化合物、などが挙げられる。
具体的には、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルホリン、モルホリニウムトリクロロ酢酸塩、2−アミノベンゾチアゾール、2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾール、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明のマイクロカプセルの平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、0.05〜50μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましい。
【0068】
(マイクロカプセルの製造方法)
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、イソシアネート化合物と、分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とを、水溶液中で重合させてマイクロカプセル壁を形成するマイクロカプセル壁形成工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記イソシアネート化合物、前記分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子、及び前記分子中に2個以上の活性水素を有する化合物としては、上述したものを用いることができる。また、前記分子中に2個以上の活性水素を有する化合物が、分子末端にアミノ基を有する樹状分岐分子であることが好ましい。
【0069】
前記マイクロカプセルの芯を形成するための疎水性溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましい。前記有機溶媒としては、例えば、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、ジフェニルエタンアルキル付加物、アルキルビフェニル、塩素化パラフィン、リン酸トリクレジルなどの燐酸系誘導体;マレイン酸−ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸エステル類;アジピン酸エステル類などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記ジアゾニウム塩や電子供与性染料前駆体は、これらの疎水性溶媒に対する溶解度が充分でない場合には、更に、低沸点溶剤を併用することができる。前記低沸点有機溶媒としては、沸点40〜100℃の有機溶媒が好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられ、これらは2種以上混合して用いてもよい。
なお、低沸点(沸点約100℃以下のもの)の溶媒のみをカプセル芯に用いた場合には、溶媒は蒸散し、カプセル壁とジアゾニウム塩や電子供与性染料前駆体のみが存在する、所謂コアレスカプセルが形成され易い。
【0071】
前記ジアゾニウム塩の種類によっては、マイクロカプセル化反応中の水相側へ移動する場合がある。これを抑制するために、あらかじめ酸アニオンを水溶性高分子溶液中に適宜添加しても良い。
前記酸アニオンとしては、例えば、PF6 −、B(−Ph)4 −(ただし、Phは、フェニル基を表す。)、ZnCl2 −、CnH2n+1COO−(ただし、nは、1〜9の整数である)、CPF2P+1SO3 −(ただし、pは、1〜9の整数である。)、などが挙げられる。
【0072】
前記マイクロカプセル化においては、界面活性剤を油相或いは水相のいずれに添加して使用しても良いが、前記有機溶媒に対する溶解度が低いために水相に添加する方が容易である。
前記界面活性剤の添加量は、油相の質量に対し0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。一般に乳化分散に用いる界面活性剤は、比較的長鎖の疎水基を有する界面活性剤が優れており、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等のアルカリ金属塩を用いることができる。
【0073】
前記界面活性剤(乳化助剤)としては、例えば、芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物、芳香族カルボン酸塩のホルマリン縮合物、などの化合物を使用することもできる。
【0074】
前記ジアゾニウム塩(又は電子供与性染料前駆体)、高沸点溶媒等からなる溶液と本発明の多官能イソシアネート化合物(付加物)との混合液(油相)を、界面活性剤及び水溶性高分子からなる水溶液(水相)に添加する。その際、水溶液をホモジナイサー等の高シェア攪拌装置で攪拌させながら、添加することにより乳化分散させる。乳化後、イソシアネート化合物の重合反応触媒を添加するか、乳化物の温度を上昇させてカプセル壁形成反応を行う。
【0075】
前記調製されたジアゾニウム塩を内包したマイクロカプセル液には、更にカップリング反応失活剤を適宜添加することができる。前記反応失活剤としては、例えば、ハイドロキノン、重亜硫酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、次亜リン酸、塩化第1スズ、ホルマリン、などが挙げられる。なお、これらの化合物については、特開昭60−214992号公報などに記載されている。
また、通常、カプセル化の過程で、水相中にジアゾニウム塩が溶出することが多いが、これを除去する方法として、濾過処理、イオン交換処理、電気泳動処理、クロマト処理、ゲル濾過処理、逆浸透処理、限外濾過処理、透析処理、活性炭処理などの方法を利用することができる。この中でもイオン交換処理、逆浸透処理、限外濾過処理及び透析処理が好ましく、特に、陽イオン交換体による処理、陽イオン交換体と陰イオン交換体の併用による処理が好ましい。これらの方法については、特開昭61−219688号公報に記載されている。
【0076】
本発明のマイクロカプセルは、様々な用途に使用することができるが、特に感熱記録材料に好適であり、例えば、感熱記録材料を構成する感熱記録層中に、マイクロカプセルを含有させることが好ましい。
前記感熱記録材料は、白黒又はカラーの撮影及びプリント用感材、印刷感材、刷版、X線感材、医療用感材(例えば、超音波診断機CRT撮影感材)、コンピューターグラフィックハードコピー感材、複写機用感材等の数多くの用途がある。
【0077】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
(1)イソシアネート付加物の合成
m−キシリレンジイソシアネート(m−XDI)301.1g(1.60モル)、及び0.5mMのデンドリマー〔商品名:Starburst(ポリアミドアミン型デンドリマー(PAMAM)、Aldrich社製、第4世代、表面に64個のOH基を有する)〕を、酢酸エチル(470.7g)に混合し、該懸濁溶液に対し、オクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)471mgを酢酸エチル10gに溶解した溶液を、撹拌しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、撹拌を2時間続け、次いで、50℃で3時間撹拌を行った。以上により、イソシアネート付加物(1)の溶液(50質量%)を作製した。
【0079】
(2)ジアゾニウム塩カプセル乳化液の調製
ジアゾニウム塩としての365nmに分解の最大吸収波長をもつ下記構造式(A)で表される化合物2.8質量部、硫酸ジブチル2.8質量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651、チバ・ガイギー(株)製)0.56質量部を酢酸エチル10.0質量部に溶解した。この溶液に、高沸点溶媒としてのイソプロピルビフェニル5.9質量部及びリン酸トリクレジル2.5質量部を添加し、加熱して均一に混合した。
【0080】
前記混合液に、カプセル壁形成材料としての前記(1)のイソシアネート付加物5.7質量部、及びキシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物(タケネートD110N、75質量%酢酸エチル溶液、武田薬品工業(株)製)3.8質量部を添加し、均一に攪拌した。別途、10%質量ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液2.0質量部を加えた6質量%ゼラチン(商品名:MGP−9066、ニッピゼラチン工業(株)製)水溶液64質量部を用意し、上記ジアゾニウム塩の混合液を添加し、ホモジナイザーにて乳化分散した。
以上により、ジアゾニウム塩カプセル乳化液を作製した。
【化18】
【0081】
(3)マイクロカプセル化反応
得られた乳化液に水20質量部を加え均一化した後、攪拌しながら40℃で30分反応させた。その後、60℃に昇温し、3時間カプセル化反応を行った。次に、35℃に液温を下げ、イオン交換樹樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ社製)6.5質量部、イオン交換樹樹脂アンバーライトIRC50(オルガノ社製)13質量部を加え、1時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂をろ過して、平均粒径0.64μmのマイクロカプセル液を作製した。
【0082】
(比較例1)
実施例1において、0.5mMのデンドリマー〔商品名:Starburst(ポリアミドアミン型デンドリマー(PAMAM)、Aldrich社製、第4世代、表面に64個のOH基を有する)〕をトリメチロールプロパン644.0g(4.8M)に変えた以外は、実施例1と同様にして、平均粒径0.69μmのカプセル液を作製した。
【0083】
得られた実施例1及び比較例1のマイクロカプセルを用いて、以下のようにして、感熱記録層用塗布液を作製し、印画評価を行った。
【0084】
(1)カプラー乳化分散液の調製
下記構造式で表されるウラシル化合物2質量部、1,2,3−トリフェニルグアニジン2質量部、トリクレジルホスヘート0.3質量部、マレイン酸ジエチル0.1質量部、及び酢酸エチル10質量部を混合した。該混合液を、ゼラチン6質量%水溶液50g及びドデシルスルホン酸ナトリウム2質量%水溶液2gを混合した水溶液中に添加し、ホモジナイザーを用いて10分間乳化した。以上により、カプラー乳化分散液を調製した。
【0085】
【化19】
【0086】
(2)感熱記録層用塗布液の調製
前記ジアゾニウム塩カプセル乳化液と、前記カプラー乳化分散液とを質量比で2対3となるように混合して、感熱記録層用塗布液を調製した。なお、この感熱記録層用塗布液を塗布、乾燥して形成される感熱記録層は、マゼンタ感熱記録層として機能する。
【0087】
(3)保護層用塗布液の調製
イタコン酸変性ポリビニルアルコール(KL−318、商品名、クラレ株式会社製)6質量%の水溶液100g、及びエポキシ変性ポリアミド(FL−71、商品名、東邦化学株式会社製)30質量%分散液10gを混合し、該混合液にステアリン酸亜鉛40質量%の分散液(ハイドリンZ、商品名、中京油脂株式会社製)15gを添加し、保護層用塗布液を調製した。
【0088】
(4)塗布
支持体としての両面ポリエチレン樹脂層被覆原紙の感熱記録層を設ける側に下塗層を設けた。該下塗層上にスライドタイプホッパー式ビード塗布装置を用いて、前記感熱記録層用塗布液及び前記保護層用塗布液を重層塗布し、乾燥して感熱記録材料を作製した。なお、前記感熱記録層用塗布液は乾燥後の固形分換算で7.8g/m2となるように塗布した。前記保護層用塗布液は乾燥後の固形分換算で2.0g/m2となるように塗布した。
【0089】
(5)感熱記録材料への画像形成
得られた感熱記録材料について、サーマルヘッド(KST型、京セラ(株)製)を用いて、単位面積当たりのサーマルヘッドの印画熱エネルギーを印可電力及びパルス幅を調節し、マクベス濃度計で測定した画像部の濃度が0.5となるようにマゼンタの画像形成を行った。
次に、発光中心波長365nm及び出力40Wの紫外線ランプ下に30秒間曝して、感熱記録層を光定着した。以上によりマゼンタ単色画像が得られた。
【0090】
印画エネルギーを変えて、マゼンタ発色濃度を評価した。結果を図1に示す。図1の結果から、デンドリマーを含む実施例1のカプセルは、比較例1のカプセルよりも、低い印画エネルギーでの発色濃度が高く、また、発色エネルギー範囲が狭くなり、熱応答性が改良されることが認められた。
【0091】
(実施例2)
実施例1において、前記(3)のマイクロカプセル化反応を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の平均粒径が0.70μmのマイクロカプセル液を作製した。
【0092】
(3)マイクロカプセル化反応
得られた乳化液に水10質量部を加え均一化した後、下記構造式で表されるアミノ基を分子末端に有するデンドリマーの2.0質量%水溶液を10.0g加え、攪拌しながら40℃で30分反応させた。その後、60℃に昇温し、3時間カプセル化反応を行った。次に、35℃に液温を下げ、イオン交換樹樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ社製)6.5質量部、及びイオン交換樹樹脂アンバーライトIRC50(オルガノ社製)13質量部を加え、1時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂をろ過し、マイクロカプセル液を作製した。
【0093】
【化20】
【0094】
次に、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録層用塗布液を調製し、印画評価を行った。結果を図1に示す。
図1の結果から、実施例2のカプセルは、比較例1のカプセルよりも、低い印画エネルギーでの発色濃度が高く、また、発色エネルギー範囲が狭くなり、熱応答性が改良されることが認められた。
【0095】
(実施例3)
実施例2において、0.5mMのデンドリマー〔商品名:Starburst(ポリアミドアミン型デンドリマー(PAMAM)、Aldrich社製、第4世代、表面に64個のOH基を有する)〕をトリメチロールプロパン644.0g(4.8M)に変えた以外は、実施例2と同様にして、実施例3の平均粒径が0.63μmのマイクロカプセル液を作製した。
【0096】
次に、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録層用塗布液を調製し、印画評価を行った。結果を図1に示す。
図1の結果から、実施例3のマイクロカプセルは、実施例1に比べてやや劣るが、比較例1のマイクロカプセルに比べて、低い印画エネルギーでの発色濃度が高く、また、発色エネルギー範囲が狭くなり、熱応答性が改良されることが認められた。ただし、実施例3のマイクロカプセルは、低エネルギー域において、ややかぶりが見られた。
【0097】
【発明の効果】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、熱応答性に優れ、カプセル壁の架橋密度をコントロールすることができ、特に、感熱記録材料として好適なマイクロカプセルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1〜3及び比較例1における印画エネルギーに対するマゼンタ発色濃度の変化を示すグラフである。
Claims (12)
- マイクロカプセルにおけるカプセル壁が、ヒドロキシル基を分子末端に有する樹状分岐分子と、イソシアネート化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とを重合させて得られるポリマーから形成されることを特徴とするマイクロカプセル。
- 前記分子中に2個以上の活性水素を有する化合物が、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子である請求項1に記載のマイクロカプセル。
- マイクロカプセルにおけるカプセル壁が、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物と、アミノ基を分子末端に有する樹状分岐分子とを反応させて得られることを特徴とするマイクロカプセル。
- 樹状分岐分子が、樹状分岐ポリマー及びデンドロンから選択される請求項1から3のいずれかに記載のマイクロカプセル。
- 樹状分岐ポリマーが、デンドリマーである請求項4に記載のマイクロカプセル。
- 樹状分岐ポリマーが、ハイパーブランチポリマーである請求項4に記載のマイクロカプセル。
- マイクロカプセルの平均粒径が、0.05μm〜50μmである請求項1から6のいずれかに記載のマイクロカプセル。
- ジアゾニウム塩及び電子供与性染色前駆体の少なくともいずれかを内包する請求項1から7のいずれかに記載のマイクロカプセル。
- マイクロカプセルにおけるカプセル壁がポリウレタン及びポリウレアの少なくともいずれかのポリマーを含む請求項1から8のいずれかに記載のマイクロカプセル。
- 感熱記録材料に用いられる請求項1から9のいずれかに記載のマイクロカプセル。
- イソシアネート化合物と、分子末端にヒドロキシル基を有する樹状分岐分子と、分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とを、水溶液中で重合させてマイクロカプセル壁を形成するマイクロカプセル壁形成工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 分子中に2個以上の活性水素を有する化合物が、分子末端にアミノ基を有する樹状分岐分子である請求項11に記載のマイクロカプセルの製造方法。
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JP2006134774A (ja) * | 2004-11-08 | 2006-05-25 | Fuji Photo Film Co Ltd | 触媒及びその製造方法、並びに電極 |
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-
2003
- 2003-07-01 JP JP2003189514A patent/JP2004098052A/ja active Pending
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