JP2004097954A - 光触媒及び光触媒の製造方法 - Google Patents

光触媒及び光触媒の製造方法 Download PDF

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Noriko Hoshino
星野 徳子
Mitsuhiro Fukuda
福田 光弘
Hiroshi Kita
北 弘志
Hiroto Ito
伊藤 博人
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Abstract

【課題】基材と光触媒薄膜との接着性が良好であり、且つ、良好な有機物分解性を示す光触媒を生産性よく製造する方法を提供する。
【解決手段】基材上に直接または、該基材上のその他の層を介して、少なくとも光触媒用半導体材料を含有する光触媒層を有する光触媒において、大気圧または大気圧近傍の圧力下、光触媒用半導体材料を形成するための反応性ガスをプラズマ状態とし、該基材または前記基材上のその他の層を、該プラズマ状態の反応性ガスに晒すことにより該光触媒層が形成されていることを特徴とする光触媒。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光触媒及び光触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタン光触媒は近年、防汚、抗菌、防臭、曇り防止、水滴防止、易洗浄性など様々な用途で用いられるようになった。代表的なものに、光触媒活性を有する親水性構造体(例えば、特許文献1参照。)、光触媒と過酸化物による殺菌機能を備えた備品(例えば、特許文献2参照。)等があり、具体的用途として、車の表面の防汚、易洗浄性用等が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
しかしながら、これらに用いられる光触媒はほとんど微粒子であり、その製法は主に塩素法(ルチル鉱→塩素化:TiCl→燃焼:TiO)、硫酸法(イルメナイト鉱→硫酸溶解:TiOSO→熱加水分解:TiO(OH)→焙焼→TiO)(例えば、特許文献4参照。)、ゾルゲル法(アルコキシチタン→加水分解:水酸化チタン→脱水縮合:TiOゾル→乾燥:TiO)(例えば、特許文献5参照。)により合成され。その結果得られた酸化チタン微粒子をバインダーに分散して目的物に塗布焼成して用いられる。例えばロール ツウ ロールで製造するときなど、塗布液を乾燥させる必要があり、生産性が上がらない。また、最近では、マイクロ波低音プラズマ法を用いるなど、可視光利用を目的とした新たな酸化チタン製造方法(例えば、特許文献6参照。)が提案されているが、真空プロセスを用いるなど、生産性という面では問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−57817号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平10−179695号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平11−236518号公報
【0007】
【特許文献4】
特開平5−186221号公報
【0008】
【特許文献5】
特開平5−271421号公報
【0009】
【特許文献6】
特開2002−119864号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、基材と光触媒薄膜との接着性が良好であり、且つ、良好な有機物分解性を示す光触媒及び光触媒の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜13によって達成された。
【0012】
1.基材上に直接または、該基材上のその他の層を介して、少なくとも光触媒用半導体材料を含有する光触媒層を有する光触媒において、大気圧または大気圧近傍の圧力下、光触媒用半導体材料を形成するための反応性ガスをプラズマ状態とし、該基材または前記基材上のその他の層を、該プラズマ状態の反応性ガスに晒すことにより該光触媒層が形成されていることを特徴とする光触媒。
【0013】
2.光触媒層が、ポーラスであることを特徴とする前記1に記載の光触媒。
3.光触媒層が、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に100kHz以上の高周波電源を使用し、且つ、1W/cm以上の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、該基材上に形成されたことを特徴とする前記2に記載の光触媒。
【0014】
4.光触媒層が、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に100kHz以上の高周波電源を使用し、且つ、0.1W/cm以上1W/cm未満の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、該基材上に形成されたことを特徴とする前記2に記載の光触媒。
【0015】
5.光触媒用半導体材料が色素で増感されていることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の光触媒。
【0016】
6.色素が金属錯体色素であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の光触媒。
【0017】
7.金属錯体色素がルテニウムを含んでいることを特徴とする前記6に記載の光触媒。
【0018】
8.色素が光触媒用半導体材料に吸着していることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の光触媒。
【0019】
9.最大分光吸収波長が互いに異なる複数の色素により増感されていることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の光触媒。
【0020】
10.最大分光吸収波長が互いに異なる複数の色素が光触媒用半導体材料に吸着していることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の光触媒。
【0021】
11.光触媒用半導体材料が金属酸化物または、金属硫化物であることを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の光触媒。
【0022】
12.前記1〜11のいずれか1項に記載の光触媒を製造するに当たり、反応性ガスをプラズマ処理して調製された光触媒用半導体材料薄膜を形成する工程を有することを特徴とする光触媒の製造方法。
【0023】
13.プラズマ処理により光触媒用半導体材料薄膜を形成後、形成された該光触媒用半導体材料薄膜を色素により増感処理する工程を有することを特徴とする前記12に記載の光触媒の製造方法。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の光触媒について説明する。
【0025】
《光触媒》
本発明の光触媒に係る光触媒用半導体材料としては、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
【0026】
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
【0027】
本発明の光触媒の製造に係る光触媒用半導体材料の具体例としては、TiO、SrTiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO、SrTiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、Bi、PbS等でが挙げられるが、特に有機物分解性の高い光触媒を得るという観点から好ましく用いられるのはTiOである。
【0028】
(光触媒用半導体材料の含有量)
上記の光触媒半導体材料の光触媒層中の含有量としては、5質量%以上が好ましいが、更に好ましくは、5質量%〜99質量%の範囲であり、特に好ましくは、30質量%〜90質量%の範囲である。
【0029】
(光触媒用半導体材料とその他の材料との併用)
本発明の光触媒に係る光触媒用半導体材料は、上述した複数の光触媒用半導体材料を併用して用いてもよいし、その他の光触媒用半導体材料以外の材料(例えば、半導体材料、金属酸化物、添加剤等)と混合して用いてもよい。
【0030】
必要に応じて可視光増感用金属を混ぜて、複合酸化物としても良い。(工業材料2000年6月号参照)
ここで、本発明に係る光触媒用半導体材料として、特に好ましく用いられるTiOと併用される、その他の材料との組み合わせについて説明する。
【0031】
(1)TiOと吸着剤との併用
水処理、空気処理への処理性を高めるために、吸着剤(例えば、活性炭、ゼオライト等)との併用が好ましい。
【0032】
(2)TiOとCuまたはAgとの併用
抗菌性材料としてチタニアを用い、抗菌性を更に高める為に、Cu、Ag等との併用が好ましい。
【0033】
(3)TiOと酸化ケイ素(SiO)との併用
光触媒への光誘起親水化特性を付与に好ましく用いられる。
【0034】
(4)TiOを酸化タングステン(WO)との併用
光触媒への光誘起親水化特性の付与に好ましく用いられる。
【0035】
(5)TiOとフッ素樹脂との併用
フッ素樹脂をチタニア表面にコーティングし、表面に超撥水性を付与する。
【0036】
本発明に係る光触媒層中における、その他の材料(半導体材料、金属酸化物、添加剤等)の含有率は、30質量%以下が好ましい。
【0037】
《光触媒層》
本発明に係る光触媒層は、後述する基材上に直接またはその他の層を介して、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、上記の光触媒用半導体材料を含む反応性ガスをプラズマ状態として、該基材または該基材上のその他の層を前記反応性ガスに晒すことにより形成されたものである。
【0038】
基材上の直接、上記の光触媒用半導体材料を含む反応性ガスをプラズマ状態にして行うことについての詳細については後述するが、基材として、後述するプラスチックフィルム等を用いる場合には、プラスチックフィルム直接でもよいが、下地(下引き層ともいう)として酸化ケイ素(SiO)被膜を形成し、その後酸化チタン(TiO)層を形成しても良く、膜の性質や、SiOとTiOの膨張係数の違い等によりクラックが入ることを効果的に防止する為には、まず緻密なTiO膜を形成して、水や酸素と膜表面との接触を遮断した後、前記TiO膜上にポーラスなTiO膜を形成しても良い。
【0039】
上記の下地(下引き層)を設ける場合、一担、酸化ケイ素(シリカ層ともいう)を形成するために百数十度から数百度で数時間硬化させ、その後、酸化チタン層を形成するため同様に百数十度から数百度、数時間の硬化を行うことが好ましい。また、大気圧または大気圧近傍でのプラズマ処理による光触媒用半導体材料の薄膜形成に要する時間は、数分から数十分のみで、従来公知の塗設による方法と比べて、乾燥、焼成等の工程は不用であり、シリカ層、酸化チタン層も連続形成できるため極めて高生産性であることが特徴である。
【0040】
尚、光触媒層を形成する為の基材は、平面でも曲面でもよく、従来の塗設方法と比べて、基材の形状による制限をうけないことも大きな特徴である。
【0041】
本発明に係る光触媒層は、光触媒の比表面積を増大させ、後述する光触媒機能を更に向上させる観点から、ポーラス(空隙を有することを示す)な層であることが好ましく、そのようなポーラスな層は、後述する大気圧プラズマを用いる光触媒層の形成条件の制御をすることにより形成することが出来る。
【0042】
また、ポーラスな光触媒層中での空隙率の測定については後述する。
(光触媒層の膜厚(μm))
本発明に係る光触媒層の膜厚(μm)としては、0.01μm〜0.4μmの範囲に調整することが好ましい。
【0043】
《光触媒の製造方法》
本発明の光触媒は、後述するプラズマ処理装置を用いて、光触媒用半導体材料の原料を含む反応性ガスにプラズマ処理を施すことにより、基材上に光触媒層を形成することにより製造される。
【0044】
ここで、プラズマ処理による光触媒層の形成方法について説明する。
本発明の光触媒は、該光触媒用半導体材料の原料を含む反応性ガスをプラズマ処理して調製された半導体薄膜である。
【0045】
ここで、反応性ガスをプラズマ処理して調製された光触媒用半導体の薄膜形成は、例えば、対向する電極間に、100kHz〜150MHzの範囲の高周波電圧に調整、且つ、0.1W/cm〜100W/cmの電力が供給された条件下で、反応性ガスを励起してプラズマを発生させ、電界を印加することによって得られる。
【0046】
電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下であり、また、高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは200kHz以上、さらに好ましくは800kHz以上である。
【0047】
また、電極間に供給する電力は、上限値としては、好ましくは50W/cm以下、さらに好ましくは20W/cm以下である。尚、電極における電圧の印加面積(cm)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0048】
また、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明に記載の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
【0049】
本発明においては、このようなハイパワーの電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0050】
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に誘電体を被覆すること、更に好ましくは、対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。
【0051】
また、基材を電極間に載置あるいは電極間を搬送してプラズマに晒す場合には、基材を片方の電極に接して搬送出来るロール電極仕様にするだけでなく、更に誘電体表面を研磨仕上げし、JIS B 0601に規定される、電極の表面粗さ(Rmax)を10μm以下にすることで、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、かつポーラスで無い高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることができる。
【0052】
また、高温下での金属母材に対する誘電体被覆による電極製作において、少なくとも基材と接する側の誘電体を研磨仕上げすること、更に電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であり、そのため製作方法において、母材表面に、応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングする、特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることが良く、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30vol%とし、次層以降を5vol%以下とすることで、緻密でかつひび割れ等が発生しない良好な電極が出来る。
【0053】
また、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10vol%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことであり、ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0054】
《プラズマ放電処理装置》
このような電極を用いたプラズマ放電処理装置について、図1〜図6を参照しながら説明する。図1〜図6のプラズマ放電処理装置は、アース電極であるロール電極と、対向する位置に配置された印加電極である固定電極との間で放電させ、当該電極間に反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極に巻回された長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、薄膜を形成するものであるが、薄膜形成方法を実施する装置としてはこれに限定されるものではなく、グロー放電を安定に維持し、薄膜を形成するために反応性ガスを励起してプラズマ状態とするものであればよい。他の方式としては、基材を電極間ではない電極近傍に載置あるいは搬送させ、発生したプラズマを当該基材上に吹き付けて薄膜形成を行うジェット方式等がある。
【0055】
図1は、半導体の薄膜形成に用いられるプラズマ放電処理装置のプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【0056】
図1において、基材F(基材としては、導電性支持体が用いられる。)は搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻回されながら搬送される。固定されている電極26は複数の円筒から構成され、ロール電極25に対向させて設置される。ロール電極25に巻回された基材Fは、ニップローラ65、66で押圧され、ガイドローラ64で規制されてプラズマ放電処理容器31によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ67を介して次工程に搬送される。また、仕切板54は前記ニップローラ65、66に近接して配置され、基材Fに同伴する空気のプラズマ放電処理容器31内への進入を抑制する。
【0057】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器31内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ65および66により、それを達成することが可能である。
【0058】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガス(不活性ガスと、反応性ガスである有機フッ素化合物、チタン化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を含有する有機ガス)は、給気口52からプラズマ放電処理容器31に導入され、処理後のガスは排気口53から排気される。
【0059】
図2は、図1と同様に、半導体の薄膜形成に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図であるが、図1においては、ロール電極25に対向する固定されている電極26は円柱型の電極が用いられているのに対し、角柱型電極36に変更した例を示している。
【0060】
図1に示した円柱型の電極26に比べて、図2に示した角柱型の電極36は、放電範囲を広げる効果があるので、薄膜形成方法に好ましく用いられる。
【0061】
図3(a)、(b)は各々、上述の円筒型のロール電極の一例を示す概略図、図4(a)、(b)は各々、円筒型で固定されている電極の一例を示す概略図、図5(a)、(b)は各々、角柱型で固定されている電極の一例を示す概略図である。
【0062】
図3(a)及び図3(b)において、アース電極であるロール電極25cは、金属等の導電性母材25aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体を片肉で1mm被覆し、ロール径を被覆後200φとなるように製作し、アースに接地してある。または、金属等の導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせ、ロール電極25Cで構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材25a、25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0063】
図4(a)、(b)および図5(a)、(b)は、印加電極である固定の電極26c、電極26C、電極36c、電極36Cであり、上記記載のロール電極25c、ロール電極25Cと同様な組み合わせで構成されている。すなわち、中空のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。尚、セラミック被覆処理誘電体の被覆後12φまたは15φとなるように製作され、当該電極の数は、上記ロール電極の円周上に沿って14本設置している。
【0064】
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用できる。
【0065】
図6は、プラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。図6において、プラズマ放電処理容器31の部分は図2の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット60等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット60の冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0066】
図6に記載の電極25、36は、図3、4、5等に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0067】
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
【0068】
前記プラズマ放電処理容器31内にロール電極25、固定されている電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に入れ、前記プラズマ放電処理容器31内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口53より排気する。次に電源41により電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材61より基材Fを供給し、ガイドローラ64を介して、プラズマ放電処理容器31内の電極間を片面接触(ロール電極25に接触している)の状態で搬送され、基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が放電処理され、その後にガイドローラ67を介して、次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極25に接触していない面のみ放電処理がなされる。
【0069】
電源41より固定されている電極36に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5kV〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整されることが好ましい。電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良い。
【0070】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0071】
また、放電プラズマ処理時の基材への影響を最小限に抑制するために、放電プラズマ処理時の基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満の温度に調整することが好ましく、更に好ましくは常温〜100℃に調整することである。上記の温度範囲に調整する為、必要に応じて電極、基材は冷却手段で冷却しながら放電プラズマ処理される。
【0072】
(大気圧近傍での放電プラズマ処理)
本発明においては、上記の放電プラズマ処理が大気圧または大気圧近傍で行われることが好ましいが、ここで、大気圧近傍とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0073】
また、薄膜形成方法に係る放電用電極においては、電極の少なくとも基材(導電性支持体)と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整されることが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。
【0074】
また、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0075】
《反応性ガス、不活性ガス》
薄膜形成に用いられる反応性ガス、不活性ガスについて説明する。
【0076】
薄膜形成には少なくとも反応性ガスが用いられるが、本発明においては、基材上に設けたい薄膜の状態(膜厚、多孔質性等)によって異なるが、基本的に、薄膜形成に必須な反応性ガス単独よりも反応性ガスと不活性ガスの混合ガスが薄膜形成において好ましく用いられる。
【0077】
反応性ガスは、混合ガスに対し、0.01体積%〜10体積%含有させることが好ましい。
【0078】
不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン等が好ましく用いられる。
【0079】
反応性ガスとしては、ジンクアセチルアセトナート、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、エトラエチル錫、エトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、チタン化合物(例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシド等)などの有機金属化合物を含む反応性ガスが光触媒用半導体材料の薄膜形成に好ましく用いられる。
【0080】
上記の中でも、特に好ましく用いられるのは、上記のチタン化合物である。
混合ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中のチタン化合物の含有率は、0.1体積%〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1体積%〜5体積%である。
【0081】
上記記載のチタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトライソプロポキシチタンのような常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解される為、基材上への薄膜の形成、薄膜の組成などに対する影響は殆ど無視することが出来る。
【0082】
上記記載の混合ガス中に水素ガスを0.1体積%〜10体積%含有させることにより薄膜の硬度を著しく向上させることが出来る。また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01体積%〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0083】
反応性ガスに有機金属化合物を添加する場合、例えば、有機金属化合物としてLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含むことができる。より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。
【0084】
《薄膜形成条件と空隙率》
本発明の光触媒としては、反応性ガスをプラズマ処理して、基材上(導電性支持体)に形成された半導体薄膜が好ましく用いられる。
【0085】
半導体薄膜の膜厚は、0.1nm〜1000nmの範囲が好ましい。
上記記載のようなプラズマ処理装置を用いて、プラズマ処理を行う時、対向する電極間に供給する電力として、1W/cm以上のハイパワーでの電力供給を行う場合、基材である導電性支持体上に極めて純度の高い半導体薄膜が形成される。
【0086】
一方、0.1W/cm〜1W/cm未満のような、ローパワーでの電力供給を行う場合には、導電性支持体上に半導体薄膜を形成後、更にエッチング処理を行うことにより、光触媒層内部に空隙を有する半導体薄膜を形成出来る。
【0087】
上記の半導体薄膜の膜厚は、400nm−700nmの波長における分光反射スペクトル測定からスペクトルのλ/4値より光学膜厚が算出出来る。
【0088】
ここで、エッチング処理とは、半導体薄膜を再度、図1〜6に記載のようなプラズマ処理装置を用いて半導体薄膜には影響を与えずに行うプラズマ処理のことである。
【0089】
そのようなプラズマ処理としては、例えば、プラズマ処理装置に1W/cm以上の電力供給を行う、酸化性の反応性ガスを用いる等の処理方法があるが、中でも、酸化性の反応性ガスとして酸素を用いた処理が好ましい。
【0090】
また、エッチング処理に用いる反応性ガスとして用いる酸素の体積%としては、反応性ガス、不活性ガスからなる混合ガス全体において、0.1体積%〜1体積%になるように調整することが好ましい。
【0091】
エッチング処理を施した半導体薄膜は、上記記載のハイパワーモードでの電力供給が行われ、形成された半導体薄膜と比較して、空隙が形成された、いわゆるポーラスな光触媒層がより形成されやすくなる傾向があるが、本発明に記載の効果(光電変換特性の向上)を好ましく得る観点から、また、半導体薄膜の耐久性(高密度、高エネルギーのプラズマ処理への耐久性)向上の観点から、本発明に係る半導体薄膜の空隙率は、10体積%以下が好ましく、更に好ましくは、8体積%以下であり、特に好ましくは、0.01体積%〜5体積%以下である。
【0092】
尚、半導体薄膜の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することが出来る。
【0093】
《光触媒の増感処理》
本発明の光触媒の増感処理は、上記のように導電性支持体1上にプラズマ処理装置を用いて半導体薄膜を形成した後、後述する色素の吸着処理により増感処理が行われる。また、増感処理の詳細については、これも後述する光電変換素子のところで説明する。
【0094】
また、空隙率の高い半導体薄膜を有する光触媒の場合には、空隙に水分、水蒸気などにより水が半導体薄膜上、並びに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、本発明に係る色素の吸着処理(光触媒の増感処理)を完了することが好ましい。
【0095】
本発明の光触媒は有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でも、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
【0096】
上記の有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明の光触媒を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
【0097】
《色素》
本発明に係る色素について説明する。
【0098】
本発明の光触媒の増感に係る色素としては、本発明に係る光触媒用半導体を分光増感しうるものならばいずれの色素も用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することが好ましい。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0099】
本発明に係る色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が好ましく用いられる。
【0100】
金属錯体色素の中では、特開2001−223037号公報、同2001−226607号公報、米国特許第4,927,721号明細書、同第4,684,537号明細書、同第5,084,365号明細書、同第5,350,644号明細書、同第5,463,057号明細書、同第5,525,440号明細書、特開平7−249750号公報、特表平10−504512号公報、国際公開第989/50393号パンフレット等に記載のルテニウム錯体色素が好ましく用いられる。
【0101】
ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素としては、特開2001−223037号公報に記載の色素が好ましい色素としてあげられる。
【0102】
ポリメチン系色素としては、従来公知のメチン系色素、特開平11−35836号公報、同11−158395号公報、同11−163378号公報、同11−214730号公報、同11−214731号公報、同10−93118号公報、同11−273754号公報、特開2000−106224号公報、同2000−357809号公報、同2001−52766号公報、特願2001−307505号、欧州特許第892,411号明細書、同911,841号明細書等に記載のものが挙げられる。
【0103】
また、半導体薄膜の表面積を増大させたり、半導体薄膜表面の不純物などを除去して、半導体の純度を高め、色素から半導体への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0104】
基材上または基材上のその他の層上に形成された光触媒用半導体材料の薄膜には上記記載の色素を吸着させ、該半導体膜を増感させることができる。
【0105】
色素吸着方法は先に説明したとおり、色素を適切な溶媒に溶解し、基材上まは基材上のその他の層上に形成された該半導体膜をその溶液に浸漬することによって行われる。その際には半導体膜は、あらかじめ減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去し、色素が半導体膜内部深くに進入できるようにしておくことが好ましい。
【0106】
本発明に係る光触媒用半導体に、本発明に係る色素を吸着させる際には、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。さらに、従来公知の増感色素化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同第4,927,721号明細書、同第5,084,365号明細書、同第5,350,644号明細書、同第5,463,057号明細書、同第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)とを混合して吸着させてもよい。
【0107】
特に、光触媒用半導体の用途が抗菌性材料として用いられる場合には、光触媒の感光波長域を広くして太陽光を可能な限り有効に利用できるように、二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
【0108】
上記記載の本発明に係る色素を複数種類併用して増感した光触媒は、併用する色素を混合して調製した溶液に浸漬させて作製してもよいし、各々の色素について溶液を調製し、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。
【0109】
各色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素を吸着させる順番がどのような順番であっても本発明の効果を得ることができる。
【0110】
吸着処理は、色素が溶解した溶液を常温で用いてもよいし、また、色素に影響を与えない範囲の温度まで溶液を加熱して行っても良い。更に、吸着処理時に未吸着となった色素については溶媒等の洗浄処理により除去することが好ましい。
【0111】
《色素の溶解に用いる溶媒》
本発明に係る色素を溶解するのに用いる溶媒は、色素を溶解することができ、なおかつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して色素の吸着を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。
【0112】
好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒であり、特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
【0113】
半導体への増感効果を好ましく得る観点から、半導体膜を色素の溶液に浸漬する時間は、3時間〜48時間が好ましく、更に好ましくは、4時間〜24時間である。
【0114】
また、浸漬にあたり色素溶液は、色素が分解しないかぎりにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10℃〜50℃、とくに好ましくは15℃〜35℃であるが、前記のとおり溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
【0115】
また、半導体膜を浸漬した色素溶液に超音波照射を行うこともできる。超音波照射は市販の装置を用いることができ、また、照射時間としては、好ましくは30分〜4時間であり、更に好ましくは1時間〜3時間である。
【0116】
《基材》
本発明の光触媒に係る基材の種類としては特に限定されず、各種プラスチックフィルムを用いることができる。中でもポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、メチルメタクリレートフィルムなどのアクリル系フィルム等が好ましく挙げられる。特にポリエチレンテレフタレートフィルムが光学特性、機械特性等において好ましい。また、金属板のような導電性材料や、ガラス板やプラスチックフイルムのような非導電性材料に導電性物質を設けた構造のもの等、種々の材料を基材として用いることが出来る。
【0117】
導電性材料の例としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは導電性金属酸化物(例えばインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)や炭素を挙げることができる。
【0118】
基材の厚さは特に制約されないが、0.3mm〜5mmが好ましい。
また、本発明に係る基材は、実質的に透明であることが好ましく、実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
【0119】
透明な基材を得るためには、ガラス板またはプラスチックフイルムの表面に、導電性金属酸化物からなる導電性層を設けることが好ましい。透明な基材を用いる場合、光触媒に入射する光は基材側から入射させることが好ましい。
【0120】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0121】
実施例1
下記のようにして、光触媒1〜3(本発明)、光触媒4(比較例)を各々作製した。
【0122】
《光触媒1の作製》:大気圧プラズマによる酸化チタン被膜形成(本発明)
10センチ四方のセラミック片上に、図2に示すようなプラズマ放電処理容器を図6に示すような、プラズマ放電処理装置(大気圧プラズマ放電処理装置ともいう)に配置し、下記に記載の放電条件、反応性ガスを用いて、本発明に係る光触媒である、酸化チタン膜を作製した。
【0123】
ここで、プラズマ発生に用いる使用電源は、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製インパルス高周波電源(連続モードで使用100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が好ましく使用できる。
【0124】
《放電条件》
放電出力を4W/cmに調整した。
【0125】
《反応性ガス》
プラズマ処理に用いた混合ガス(反応性ガス)の組成を以下に記す。
【0126】
(酸化チタン層形成用)
不活性ガス :アルゴン 98.75体積%
反応性ガス1:水素ガス(混合ガス全体に対し1体積%)
反応性ガス2:テトライソプロポキシチタン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング:混合ガス全体に対し0.25体積%)
上記反応性ガス、上記放電条件により、連続的に大気圧プラズマ処理して、100nmの酸化チタン膜を設けた。
【0127】
《光触媒2の作製》:本発明
光触媒1の作製において、酸化チタン被膜の形成を下記のように変更(操作1、操作2の2段階により、光触媒薄膜である酸化チタン膜を形成)した以外は同様にして光触媒2を製造した。
【0128】
操作1:プラズマ処理での放電条件を0.8W/cmに調整して、酸化チタン膜を作製した。
【0129】
操作2:操作1で形成した酸化チタン薄膜に、操作1で用いたプラズマ放電処理装置を用いてエッチング処理を行った。尚、前記エッチング処理には、下記の組成を有するエッチング処理用ガスを用いた。
【0130】
(エッチング処理用ガス組成)
不活性ガス :アルゴン(99.25体積%)
反応性ガス1:酸素ガス(混合ガス全体に対して、0.5体積%)
反応性ガス2:CFガス(混合ガス全体に対して、0.25体積%)
《光触媒3の作製》:本発明
光触媒2の作製において、10センチ四方のPETフィルム上に、下記の酸化ケイ素層形成条件により、SiO(酸化ケイ素)層を形成した後、酸化チタン層を形成した以外は同様にして光触媒3を作製した。
【0131】
《放電条件》
放電出力を4W/cmに調整した。
【0132】
《反応性ガス》
プラズマ処理に用いた混合ガス(反応性ガス)の組成を以下に記す。
【0133】
(酸化ケイ素層形成用)
不活性ガス :アルゴン 98.75体積%
反応性ガス1:水素ガス(混合ガス全体に対し1体積%)
反応性ガス2:テトラエトキシシラン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング:混合ガス全体に対し0.25体積%)
上記反応性ガス、上記放電条件により、連続的に大気圧プラズマ処理して、100nmの酸化ケイ素膜を設けた。
【0134】
《光触媒4の作製》:比較例
10センチ四方のPET上に水分散シリカゾル(触媒化成社製:固形分濃度20%)を0.2mmのワイヤーバーで塗布し、120度、3時間乾燥した。その上に、石原産業製光触媒コーティング液STK01(酸化チタン:酸化ケイ素=8:2)をイソプロピルアルコールで2倍に希釈し、0.1μmのワイヤーバーで塗布し、120度、3時間硬化させ、光触媒4を作製した。
【0135】
得られた光触媒1〜4について各々下記の評価を行った。
《有機物分解性の評価》
光触媒1〜4を、各々アセトアルデヒド100ppmを封入した5リットルの密閉容器に入れ、市販のブラックライトで1mW/cmの紫外線を60分照射後アセトアルデヒドの残量を、市販のガスクロマトグラフィーで測定し、光触媒1(本発明)を100%として相対値で分解性を評価した。
【0136】
ここで、光触媒1〜4の形態は、各々、10cm四方である。
《光触媒膜の剥離試験:剥離性評価》
上記の光触媒1〜4の各々の光触媒薄膜について、JIS K 5400に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には、形成された光触媒薄膜の表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロテープ(R)を張り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を目視により下記に記載のようにランク評価した。
【0137】
○:全く剥離されなかった(実用可)
△:剥離された面積割合が10%未満であった(実用可)
×:剥離された面積割合が10%以上であった(実用不可)
以上、得られた結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
Figure 2004097954
【0139】
表1から、比較の光触媒4に比べて、本発明の光触媒1〜3は各々、基材と光触媒薄膜との接着性が良好であり、併せて、有機物分解性にも優れていることが明らかである。
【0140】
【発明の効果】
本発明により、基材と光触媒薄膜との接着性が良好であり、且つ、良好な有機物分解性を示す光触媒及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図3】(a)、(b)は各々、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる円筒型のロール電極の一例を示す概略図である。
【図4】(a)、(b)は各々、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の円筒型電極の一例を示す概略図である。
【図5】(a)、(b)は各々、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の角柱型電極の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の光触媒の製造に用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 感光層
3 電荷移動層
4 対向電極
25、25c、25C ロール電極
26、26c、26C、36、36c、36C 電極
25a、25A、26a、26A、36a、36A 金属等の導電性母材
25b、26b、36b セラミック被覆処理誘電体
25B、26B、36B ライニング処理誘電体
31 プラズマ放電処理容器
41 電源
51 ガス発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極冷却ユニット
61 元巻き基材
65、66 ニップローラ
64、67 ガイドローラ

Claims (13)

  1. 基材上に直接または、該基材上のその他の層を介して、少なくとも光触媒用半導体材料を含有する光触媒層を有する光触媒において、大気圧または大気圧近傍の圧力下、光触媒用半導体材料を形成するための反応性ガスをプラズマ状態とし、該基材または前記基材上のその他の層を、該プラズマ状態の反応性ガスに晒すことにより該光触媒層が形成されていることを特徴とする光触媒。
  2. 光触媒層が、ポーラスであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒。
  3. 光触媒層が、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に100kHz以上の高周波電源を使用し、且つ、1W/cm以上の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、該基材上に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の光触媒。
  4. 光触媒層が、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に100kHz以上の高周波電源を使用し、且つ、0.1W/cm以上1W/cm未満の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、該基材上に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の光触媒。
  5. 光触媒用半導体材料が色素で増感されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光触媒。
  6. 色素が金属錯体色素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光触媒。
  7. 金属錯体色素がルテニウムを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の光触媒。
  8. 色素が光触媒用半導体材料に吸着していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光触媒。
  9. 最大分光吸収波長が互いに異なる複数の色素により増感されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光触媒。
  10. 最大分光吸収波長が互いに異なる複数の色素が光触媒用半導体材料に吸着していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光触媒。
  11. 光触媒用半導体材料が金属酸化物または、金属硫化物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光触媒。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の光触媒を製造するに当たり、反応性ガスをプラズマ処理して調製された光触媒用半導体材料薄膜を形成する工程を有することを特徴とする光触媒の製造方法。
  13. プラズマ処理により光触媒用半導体材料薄膜を形成後、形成された該光触媒用半導体材料薄膜を色素により増感処理する工程を有することを特徴とする請求項12に記載の光触媒の製造方法。
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CN114433226A (zh) * 2022-01-04 2022-05-06 四川师范大学 一种铋系光催化MXene膜材料及其制备方法

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