JP2004093196A - バイオエコモニタリングチップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システム - Google Patents
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Abstract
【課題】微量試料水による同時・多検体測定を可能ならしめるとともに、計測に要する時間を大きく短縮(数分間程度)しさらに、特段の技術の習熟を必要としない有機物濃度計測用チップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システムを提供すること。
【解決手段】基盤上に微小ホールを複数箇穿設するとともに、該微小ホールにルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物を包理・固定化してなる有機物濃度計測用チップ。請求項2に記載の発明は、有機物濃度計測用チップの、微小ホールのそれぞれに試料水を滴下し、この有機物濃度計測用チップを計測イメージャーに挿入し、発光微生物の発光強度を測定して試料水中の有機物の種類と濃度を同時・多次元的に計測する。
【選択図】 図2
【解決手段】基盤上に微小ホールを複数箇穿設するとともに、該微小ホールにルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物を包理・固定化してなる有機物濃度計測用チップ。請求項2に記載の発明は、有機物濃度計測用チップの、微小ホールのそれぞれに試料水を滴下し、この有機物濃度計測用チップを計測イメージャーに挿入し、発光微生物の発光強度を測定して試料水中の有機物の種類と濃度を同時・多次元的に計測する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光微生物によって水中の生物資化性有機汚染を計測するためのバイオエコモニタリングチップおよびそれを用いるチップ型有機汚染計測システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
水中の生物資化性有機汚染を計測する手段として、JISに規定される、酸素電極を用いるBOD5法やBODS法(JIS K0120)がある。BOD5法によれば、BOD(Biochemical Oxygen Demand)の計測に5日間を要しまた、5日間に亘って温度や密栓状態を保持せねばならず操作が面倒である。また、BODS法によるときは、計測時間が30分間程度にまで短縮されるものの、酸素電極の活性化や微生物膜の作成に高度の熟練を要し、微生物膜装着電極の作成や再活性化などに多くの時間を要するのみならず技術の習熟を要する問題がある。
【0003】
一方、発光微生物の発光量により水中のBODを測定する方法及びそのための装置が、たとえば特開平9−56397号公報に開示されている。この先行技術は、ルシフェラーゼ遺伝子と基質合成遺伝子を含む発光遺伝子群を導入した菌の、有機物の資化による発光量を測定することによって試料水中のBODを計測するようにした点によって特徴づけられる。しかしながら、この先行技術によるときは、微量試料による同時・多検体測定は不可能であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術における問題を解決し、微量試料による同時・多検体測定を可能ならしめるとともに、計測に要する時間を大きく短縮(数分間程度)しさらに、計測のための特段の技術の習熟を必要としないBOD計測用チップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、基盤上に微小ホールを複数箇穿設するとともに該微小ホールに、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物を包理・固定化してなるバイオエコモニタリングチップである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、複数の微小ホールが穿設された基盤にルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物が包理・固定化されたバイオエコモニタリングチップの、前記複数の微小ホールのそれぞれに試料水を滴下し、然る後、該試料水が滴下されたバイオエコモニタリングチップを計測イメージャーに挿入し、前記発光微生物の有機物の資化による発光を測定して試料水中の有機物の種類と濃度を同時・多次元的に計測するようにしたことを特徴とするチップ型有機汚染計測システムである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好ましい実施形態に則して説明する。
【0008】
本発明は、図1に示すように、発光菌(Luminous bacteria)による有機物(organic compound)の資化に伴う発光を利用している。即ち、発光微生物が有機物を摂取しこれを資化するときに、ルフェラーゼその他の物質たとえばATP(adenosine tri−phosphate:アデノシン三燐酸)の存在下でルシフェリン(酵素作用の基質)が酸化されるときに発光する。そして、発光の強度は微生物が資化した有機物の濃度に対応する。
而して、この発光強度を測定することによって、試料水中の有機物の濃度を計測することができる。
【0009】
本発明においては、アクリル、ガラス、シリコンなどの基盤上に、数μmオーダーの微小ホールを微細加工技術によって穿設し、この微小ホールに発光微生物(発光菌など)をゲル状物質によって包理・固定化する。然る後、基盤上にアレイ状に固定化された菌体の上から試料水を滴下して、この基盤(バイオエコモニタリングチップ)をCCDカメラなどを装着した計測イメージャーに挿入し、微生物の発光を観察するとともにグレイスケール解析を行って発光量を数値化(白地:100、暗黒:0)する。
このようにして、試料水中の有機物の濃度(BOD)を同時・多次元的にかつ数分間程度の短時間で計測できる。
【0010】
本発明において、基盤として用い得る材料は、アクリル樹脂、ガラスの他に、シリコンチップ、金属基板などがある。また、基盤上に穿設する微小ホールの直径は、数μm〜数百μmである。さらに、基盤上に穿設する微小ホールの数は、基盤の面積および微小ホールのサイズにもよるが、数箇から数万箇を設けることができる。
【0011】
さらに、本発明の同時・多検体検出技術を用いて、種々の環境応答遺伝子と発光遺伝子を組み合わせた有害物質応答性微生物をアレイ化することで、環境水一滴から多数の汚染物質のプロファイリングができる。
たとえば、土壌改良現場における迅速なプロファイリングや浄化効果の検証時における迅速な多次元検出に利用できる。このように、簡便に現場計測が可能となる。
【0012】
【実施例】
(1)バイオエコモニタリングチップのためのアクリル基盤マイクロチップの作成
ファナック社製α−T14Asを用いて、図2、図3に示す基盤マイクロチップを作成した。一辺30mmの正方形、厚さ:2mmのアクリル板上に、直径:700μm、深さ:100μmの発光微生物固定用ホールを、9mm間隔で3行、3列、計9箇所穿設した。
【0013】
(2)発光計測用試料水の作成
発光細菌(Photobacterium phosphoreum IFO 13896)の増殖培地および蒸留水を用いて発光計測用試料水を作成した。培地の組成を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
先ず、全ての培地成分を蒸留水に溶かし、pH:7.4に調整した。
次いで、培地液を120℃、2atmのオートクレーブで10分間、滅菌処理した。異なる有機物含有試料水を作成すべく、基本培地を蒸留水で希釈して有機物濃度:80ppm〜800ppmの培地溶液を作成した。この培地溶液をそれぞれ10mlずつバイアル瓶に移し、それぞれ2分間の酸素バブリング処理を施した。また、培地組成中の有機物である peptone 、yeast extractを除き、有機物を除去した試料も同様に作成した。
【0016】
(3)アクリル基盤マイクロチップへの発光細菌の固定
対数期後期に相当し、生物発光が最も強い植菌後15時間経過の菌体を用いた。乾燥菌体(dry weight)換算で7.5mgの培地液(1.5ml)をエッペンドルフに移して、4℃、13000rpmの遠心分離機に10分間かけて分離した後、上澄みを除去し0.9%濃度の塩化ナトリウム5mlにアルギン酸ナトリウム0.15gを溶解させ、15%(wt/vol)アルギン酸ナトリウム水溶液(10μl)を添加してよく混合した。その際、アルギン酸ナトリウムは、室温では溶解し難いので温浴或は電子レンジ等で加熱・昇温せしめて溶解させた。
【0017】
本発明において、微生物を微小ホール内に包理・固定化するためのゲル状物質としては、上記の他に細胞接着物質、高分子素材のほか増粘剤たとえばマンナン、ゼラチン、寒天などを用いることができる。
【0018】
次いで、アクリル基盤上の微小ホールに、発光細菌とアルギン酸の混合液を木製スティック(爪楊枝など)でスタンプし、ゲル状補強化剤として1.0%(wt/vol)塩化カルシウムをシリンジを用いて一滴ずつ滴下し、30分間放置して微小ホール内に発光微生物を包理・固定化した。この発光細菌の、アクリル基盤上の微小ホールへの包理・固定化プロセスを図4に示す。木製スティック(爪楊枝など)を用いて、微小ホールに発光細菌とアルギン酸の混合液をスタンピングすることによって、ほぼ等量の菌体がホールからはみだすことなく固定化できる。
【0019】
(4)アクリル基盤マイクロチップ(バイオエコモニタリングチップ)からの生物発光の計測
ケミイメージャー(アルファ・イノテック社製、Chemi−Imager 4400)を用いて、菌体固定ホールからの生物発光を測定した。即ち、アクリル基盤マイクロチップ上に固定された菌体の上から試料水を一滴ずつシリンジを用いて滴下した後、アクリル基盤マイクロチップを前記ケミイメージャーに挿入し微生物の発光を観察した。さらに、グレイスケール解析を行い、発光量を数値化した。グレイスケール解析においては、白地:100(光源値そのまま)、暗黒:0として数値化する。こうして、滴下試料水中の有機物濃度に対応する発光量を測定した。
【0020】
マイクロチップにおける微小ホールの菌体からの発光は、目視による観察では確認できなかったが、ケミイメージャーを用いての観察では、菌体からの発光が確認された。
【0021】
上記、微生物発光の試験水として、発光細菌の基本培地を様々な濃度に希釈し酸素バブリングを行ったものと、基本培地中の有機成分を除いたものを使用した。有機成分を含む培地における発光細菌からは、図5に示すように、発光が確認された。これに対し、蒸留水そのものや培地中の有機成分であるpeptoneやyeast−extractを除去した無機塩のみの試験水を対象とした場合では、図6に示すように、菌体を固定した微小ホールからは全く発光が確認されなかった。
【0022】
発光細菌を固定化したアクリル基盤マイクロチップ(バイオエコモニタリングチップ)上にピペットマンを用いて試料水を滴下しながら、計測用の試験水に含まれる有機物の濃度を変化させて微生物の発光強度を調べた。その結果、有機物を含まない蒸留水のグレイスケール値は、図7▲3▼に示すように、8.7±0.1であった。有機物濃度:80ppmの試験水の場合、グレイスケール値は、図8▲3▼に示すように、9.2±0.4であった。
【0023】
有機物濃度:100ppmでは、9.4±0.2、160ppmでは、図8に示すように、9.6±0、200ppmでは10.5±0.5であり、有機物濃度の上昇に伴って菌体からの発光強度のグレイスケール値も上昇した。さらに、図7および図8に示すように、有機物濃度320ppmでは20.4±4.8、500ppmでは65.3±0.4、800ppmとなると、75.7±6.0にまで上昇した。
【0024】
上記の結果から、図9に示すように、試料水中に含まれる有機物の濃度と、グレイスケール値で表した微生物の発光強度の間に相関関係が認められた。わけても、266ppmから500ppmの間では、図10に示すように、有機物濃度xと微生物の発光強度グレイスケール値との間に直線的な相関関係があり、一次検量線として発光強度yは、
y=0.227x49.449 が得られた。この一次式の逆関数を求め、発光強度x1を変数とするときの有機物濃度y1に対する一次式
y1=4.39x1−217.17 を得た。
【0025】
また、本発明のバイオエコモニタリングチップ(発光微生物のアレイ状固定化チップ)を用いれば、試料水一滴から有機物濃度を迅速に計測できる。さらに、本発明のバイオエコモニタリングチップに様々な環境応答性遺伝子と発光遺伝子を組み込んだ微生物をアレイ化させることで、環境汚染計測用マルチモニタリングデバイスとすることができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、基盤上にアレイ状に複数箇穿設された微小ホールに、発光微生物を固定化し、微小ホール中の微生物の、有機物の資化による発光の強度を測定することで有機物の濃度を計測できるから、同時・多検体の測定を達成できる。また、発光微生物を基盤上にアレイ状に固定化することで、計測に要する試料水の量を格段に少なくすることができる。
【0027】
また、試料水中の有機物濃度(BOD)は、発光微生物を固定化した多数の微小ホールに試料水を数滴垂らした後、計測イメージャーにチップを挿入し、微生物の発光をグレイスケール値として読むだけで計測できるから、計測における所要時間を大きく短縮(数分間程度)できる。
また、計測のための特別な技術の習熟を必要としない。さらに、本発明のチップ型有機汚染計測システムによれば、試料採取現場でそのままセンサを使用することが可能であり、数分間で定量的な測定結果を得ることができる。いわゆる現場計測が可能である。
【0028】
また、同時・多検体検出技術を用いて、種々の環境応答性微生物をアレイ化することで、環境水一滴から全ての汚染物質をプロファイリングできる。而して、土壌改良現場における迅速な汚染プロファイリングや浄化効果の検証時における迅速な多次元検出に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】生物発光の化学的メカニズムを示す模式図
【図2】本発明のバイオエコモニタリングチップによる試料水のBOD測定メカニズムを示す模式図
【図3】本発明のバイオエコモニタリングチップにおけるアレイ化(固定化)微生物の模様を示す模式図
【図4】本発明における菌体の基盤への固定化手順の一実施例を示すブロック図
【図5】ケミイメージャーによる発光検出の一実施例におけるグレイスケール解析値を示す平面図
【図6】蒸留水或は有機物を含有しない試料水におけるグレイスケール解析値を示す平面図
【図7】様々な有機物濃度の試料水を微小ホールに滴下したときのバイオエコモニタリングチップからの発光強度の変化をグレイスケル解析値で示す平面図
【図8】様々な有機物濃度の試料水を微小ホールに滴下したときのバイオエコモニタリングチップからの発光強度の変化をグレイスケル解析値で示す平面図
【図9】試料水中の有機物濃度と微生物の発光強度の相関関係を示すグラフ
【図10】相関曲線から得られた直線近似検量線を示すグラフ
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光微生物によって水中の生物資化性有機汚染を計測するためのバイオエコモニタリングチップおよびそれを用いるチップ型有機汚染計測システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
水中の生物資化性有機汚染を計測する手段として、JISに規定される、酸素電極を用いるBOD5法やBODS法(JIS K0120)がある。BOD5法によれば、BOD(Biochemical Oxygen Demand)の計測に5日間を要しまた、5日間に亘って温度や密栓状態を保持せねばならず操作が面倒である。また、BODS法によるときは、計測時間が30分間程度にまで短縮されるものの、酸素電極の活性化や微生物膜の作成に高度の熟練を要し、微生物膜装着電極の作成や再活性化などに多くの時間を要するのみならず技術の習熟を要する問題がある。
【0003】
一方、発光微生物の発光量により水中のBODを測定する方法及びそのための装置が、たとえば特開平9−56397号公報に開示されている。この先行技術は、ルシフェラーゼ遺伝子と基質合成遺伝子を含む発光遺伝子群を導入した菌の、有機物の資化による発光量を測定することによって試料水中のBODを計測するようにした点によって特徴づけられる。しかしながら、この先行技術によるときは、微量試料による同時・多検体測定は不可能であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術における問題を解決し、微量試料による同時・多検体測定を可能ならしめるとともに、計測に要する時間を大きく短縮(数分間程度)しさらに、計測のための特段の技術の習熟を必要としないBOD計測用チップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、基盤上に微小ホールを複数箇穿設するとともに該微小ホールに、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物を包理・固定化してなるバイオエコモニタリングチップである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、複数の微小ホールが穿設された基盤にルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物が包理・固定化されたバイオエコモニタリングチップの、前記複数の微小ホールのそれぞれに試料水を滴下し、然る後、該試料水が滴下されたバイオエコモニタリングチップを計測イメージャーに挿入し、前記発光微生物の有機物の資化による発光を測定して試料水中の有機物の種類と濃度を同時・多次元的に計測するようにしたことを特徴とするチップ型有機汚染計測システムである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好ましい実施形態に則して説明する。
【0008】
本発明は、図1に示すように、発光菌(Luminous bacteria)による有機物(organic compound)の資化に伴う発光を利用している。即ち、発光微生物が有機物を摂取しこれを資化するときに、ルフェラーゼその他の物質たとえばATP(adenosine tri−phosphate:アデノシン三燐酸)の存在下でルシフェリン(酵素作用の基質)が酸化されるときに発光する。そして、発光の強度は微生物が資化した有機物の濃度に対応する。
而して、この発光強度を測定することによって、試料水中の有機物の濃度を計測することができる。
【0009】
本発明においては、アクリル、ガラス、シリコンなどの基盤上に、数μmオーダーの微小ホールを微細加工技術によって穿設し、この微小ホールに発光微生物(発光菌など)をゲル状物質によって包理・固定化する。然る後、基盤上にアレイ状に固定化された菌体の上から試料水を滴下して、この基盤(バイオエコモニタリングチップ)をCCDカメラなどを装着した計測イメージャーに挿入し、微生物の発光を観察するとともにグレイスケール解析を行って発光量を数値化(白地:100、暗黒:0)する。
このようにして、試料水中の有機物の濃度(BOD)を同時・多次元的にかつ数分間程度の短時間で計測できる。
【0010】
本発明において、基盤として用い得る材料は、アクリル樹脂、ガラスの他に、シリコンチップ、金属基板などがある。また、基盤上に穿設する微小ホールの直径は、数μm〜数百μmである。さらに、基盤上に穿設する微小ホールの数は、基盤の面積および微小ホールのサイズにもよるが、数箇から数万箇を設けることができる。
【0011】
さらに、本発明の同時・多検体検出技術を用いて、種々の環境応答遺伝子と発光遺伝子を組み合わせた有害物質応答性微生物をアレイ化することで、環境水一滴から多数の汚染物質のプロファイリングができる。
たとえば、土壌改良現場における迅速なプロファイリングや浄化効果の検証時における迅速な多次元検出に利用できる。このように、簡便に現場計測が可能となる。
【0012】
【実施例】
(1)バイオエコモニタリングチップのためのアクリル基盤マイクロチップの作成
ファナック社製α−T14Asを用いて、図2、図3に示す基盤マイクロチップを作成した。一辺30mmの正方形、厚さ:2mmのアクリル板上に、直径:700μm、深さ:100μmの発光微生物固定用ホールを、9mm間隔で3行、3列、計9箇所穿設した。
【0013】
(2)発光計測用試料水の作成
発光細菌(Photobacterium phosphoreum IFO 13896)の増殖培地および蒸留水を用いて発光計測用試料水を作成した。培地の組成を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
先ず、全ての培地成分を蒸留水に溶かし、pH:7.4に調整した。
次いで、培地液を120℃、2atmのオートクレーブで10分間、滅菌処理した。異なる有機物含有試料水を作成すべく、基本培地を蒸留水で希釈して有機物濃度:80ppm〜800ppmの培地溶液を作成した。この培地溶液をそれぞれ10mlずつバイアル瓶に移し、それぞれ2分間の酸素バブリング処理を施した。また、培地組成中の有機物である peptone 、yeast extractを除き、有機物を除去した試料も同様に作成した。
【0016】
(3)アクリル基盤マイクロチップへの発光細菌の固定
対数期後期に相当し、生物発光が最も強い植菌後15時間経過の菌体を用いた。乾燥菌体(dry weight)換算で7.5mgの培地液(1.5ml)をエッペンドルフに移して、4℃、13000rpmの遠心分離機に10分間かけて分離した後、上澄みを除去し0.9%濃度の塩化ナトリウム5mlにアルギン酸ナトリウム0.15gを溶解させ、15%(wt/vol)アルギン酸ナトリウム水溶液(10μl)を添加してよく混合した。その際、アルギン酸ナトリウムは、室温では溶解し難いので温浴或は電子レンジ等で加熱・昇温せしめて溶解させた。
【0017】
本発明において、微生物を微小ホール内に包理・固定化するためのゲル状物質としては、上記の他に細胞接着物質、高分子素材のほか増粘剤たとえばマンナン、ゼラチン、寒天などを用いることができる。
【0018】
次いで、アクリル基盤上の微小ホールに、発光細菌とアルギン酸の混合液を木製スティック(爪楊枝など)でスタンプし、ゲル状補強化剤として1.0%(wt/vol)塩化カルシウムをシリンジを用いて一滴ずつ滴下し、30分間放置して微小ホール内に発光微生物を包理・固定化した。この発光細菌の、アクリル基盤上の微小ホールへの包理・固定化プロセスを図4に示す。木製スティック(爪楊枝など)を用いて、微小ホールに発光細菌とアルギン酸の混合液をスタンピングすることによって、ほぼ等量の菌体がホールからはみだすことなく固定化できる。
【0019】
(4)アクリル基盤マイクロチップ(バイオエコモニタリングチップ)からの生物発光の計測
ケミイメージャー(アルファ・イノテック社製、Chemi−Imager 4400)を用いて、菌体固定ホールからの生物発光を測定した。即ち、アクリル基盤マイクロチップ上に固定された菌体の上から試料水を一滴ずつシリンジを用いて滴下した後、アクリル基盤マイクロチップを前記ケミイメージャーに挿入し微生物の発光を観察した。さらに、グレイスケール解析を行い、発光量を数値化した。グレイスケール解析においては、白地:100(光源値そのまま)、暗黒:0として数値化する。こうして、滴下試料水中の有機物濃度に対応する発光量を測定した。
【0020】
マイクロチップにおける微小ホールの菌体からの発光は、目視による観察では確認できなかったが、ケミイメージャーを用いての観察では、菌体からの発光が確認された。
【0021】
上記、微生物発光の試験水として、発光細菌の基本培地を様々な濃度に希釈し酸素バブリングを行ったものと、基本培地中の有機成分を除いたものを使用した。有機成分を含む培地における発光細菌からは、図5に示すように、発光が確認された。これに対し、蒸留水そのものや培地中の有機成分であるpeptoneやyeast−extractを除去した無機塩のみの試験水を対象とした場合では、図6に示すように、菌体を固定した微小ホールからは全く発光が確認されなかった。
【0022】
発光細菌を固定化したアクリル基盤マイクロチップ(バイオエコモニタリングチップ)上にピペットマンを用いて試料水を滴下しながら、計測用の試験水に含まれる有機物の濃度を変化させて微生物の発光強度を調べた。その結果、有機物を含まない蒸留水のグレイスケール値は、図7▲3▼に示すように、8.7±0.1であった。有機物濃度:80ppmの試験水の場合、グレイスケール値は、図8▲3▼に示すように、9.2±0.4であった。
【0023】
有機物濃度:100ppmでは、9.4±0.2、160ppmでは、図8に示すように、9.6±0、200ppmでは10.5±0.5であり、有機物濃度の上昇に伴って菌体からの発光強度のグレイスケール値も上昇した。さらに、図7および図8に示すように、有機物濃度320ppmでは20.4±4.8、500ppmでは65.3±0.4、800ppmとなると、75.7±6.0にまで上昇した。
【0024】
上記の結果から、図9に示すように、試料水中に含まれる有機物の濃度と、グレイスケール値で表した微生物の発光強度の間に相関関係が認められた。わけても、266ppmから500ppmの間では、図10に示すように、有機物濃度xと微生物の発光強度グレイスケール値との間に直線的な相関関係があり、一次検量線として発光強度yは、
y=0.227x49.449 が得られた。この一次式の逆関数を求め、発光強度x1を変数とするときの有機物濃度y1に対する一次式
y1=4.39x1−217.17 を得た。
【0025】
また、本発明のバイオエコモニタリングチップ(発光微生物のアレイ状固定化チップ)を用いれば、試料水一滴から有機物濃度を迅速に計測できる。さらに、本発明のバイオエコモニタリングチップに様々な環境応答性遺伝子と発光遺伝子を組み込んだ微生物をアレイ化させることで、環境汚染計測用マルチモニタリングデバイスとすることができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、基盤上にアレイ状に複数箇穿設された微小ホールに、発光微生物を固定化し、微小ホール中の微生物の、有機物の資化による発光の強度を測定することで有機物の濃度を計測できるから、同時・多検体の測定を達成できる。また、発光微生物を基盤上にアレイ状に固定化することで、計測に要する試料水の量を格段に少なくすることができる。
【0027】
また、試料水中の有機物濃度(BOD)は、発光微生物を固定化した多数の微小ホールに試料水を数滴垂らした後、計測イメージャーにチップを挿入し、微生物の発光をグレイスケール値として読むだけで計測できるから、計測における所要時間を大きく短縮(数分間程度)できる。
また、計測のための特別な技術の習熟を必要としない。さらに、本発明のチップ型有機汚染計測システムによれば、試料採取現場でそのままセンサを使用することが可能であり、数分間で定量的な測定結果を得ることができる。いわゆる現場計測が可能である。
【0028】
また、同時・多検体検出技術を用いて、種々の環境応答性微生物をアレイ化することで、環境水一滴から全ての汚染物質をプロファイリングできる。而して、土壌改良現場における迅速な汚染プロファイリングや浄化効果の検証時における迅速な多次元検出に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】生物発光の化学的メカニズムを示す模式図
【図2】本発明のバイオエコモニタリングチップによる試料水のBOD測定メカニズムを示す模式図
【図3】本発明のバイオエコモニタリングチップにおけるアレイ化(固定化)微生物の模様を示す模式図
【図4】本発明における菌体の基盤への固定化手順の一実施例を示すブロック図
【図5】ケミイメージャーによる発光検出の一実施例におけるグレイスケール解析値を示す平面図
【図6】蒸留水或は有機物を含有しない試料水におけるグレイスケール解析値を示す平面図
【図7】様々な有機物濃度の試料水を微小ホールに滴下したときのバイオエコモニタリングチップからの発光強度の変化をグレイスケル解析値で示す平面図
【図8】様々な有機物濃度の試料水を微小ホールに滴下したときのバイオエコモニタリングチップからの発光強度の変化をグレイスケル解析値で示す平面図
【図9】試料水中の有機物濃度と微生物の発光強度の相関関係を示すグラフ
【図10】相関曲線から得られた直線近似検量線を示すグラフ
Claims (2)
- 基盤上に微小ホールを複数箇穿設するとともに該微小ホールに、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物を包理・固定化してなるバイオエコモニタリングチップ。
- 複数の微小ホールが穿設された基盤にルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光微生物が包理・固定化されたバイオエコモニタリングチップの、前記複数の微小ホールのそれぞれに試料水を滴下し、然る後、該試料水が滴下されたバイオエコモニタリングチップを計測イメージャーに挿入し、前記発光微生物の有機物の資化による発光を測定して試料水中の有機物の種類と濃度を同時・多次元的に計測するようにしたことを特徴とするチップ型有機汚染計測システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002251291A JP2004093196A (ja) | 2002-08-29 | 2002-08-29 | バイオエコモニタリングチップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002251291A JP2004093196A (ja) | 2002-08-29 | 2002-08-29 | バイオエコモニタリングチップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004093196A true JP2004093196A (ja) | 2004-03-25 |
Family
ID=32057912
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002251291A Pending JP2004093196A (ja) | 2002-08-29 | 2002-08-29 | バイオエコモニタリングチップ及びそれを用いるチップ型有機汚染計測システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004093196A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016505080A (ja) * | 2012-12-28 | 2016-02-18 | デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス | アルギン酸の解重合 |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002251291A patent/JP2004093196A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016505080A (ja) * | 2012-12-28 | 2016-02-18 | デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス | アルギン酸の解重合 |
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