JP2004092701A - サイレンサ装置、及び、このサイレンサ装置を備えた圧力流体流通回路 - Google Patents
サイレンサ装置、及び、このサイレンサ装置を備えた圧力流体流通回路 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】簡単な構成で、効果的な消音機能を実現することのできるサイレンサ装置を提供する。
【解決手段】ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連通口67を、隔壁68によって、2系統の分割通路(第1の分割通路70、第2の分割通路71に区画する。第1の分割通路70の流入側開口面積を流出側開口面積よりも大きく設定する。これにより、第1の分割通路70を通過するパワステオイルの流速を第2の分割通路71を通過するパワステオイルよりも相対的に速める構成する。その際、これらの流速の違いにより、例えばアイドル時等の所定条件下において、第1,第2の分割通路70,71からそれぞれ流出されたパワステオイルの圧力脈動波の位相が互いに逆位相となるよう設定することにより、所定の圧力脈動波を吸収する。
【選択図】 図1
【解決手段】ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連通口67を、隔壁68によって、2系統の分割通路(第1の分割通路70、第2の分割通路71に区画する。第1の分割通路70の流入側開口面積を流出側開口面積よりも大きく設定する。これにより、第1の分割通路70を通過するパワステオイルの流速を第2の分割通路71を通過するパワステオイルよりも相対的に速める構成する。その際、これらの流速の違いにより、例えばアイドル時等の所定条件下において、第1,第2の分割通路70,71からそれぞれ流出されたパワステオイルの圧力脈動波の位相が互いに逆位相となるよう設定することにより、所定の圧力脈動波を吸収する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイレンサ装置に関し、特に、作動油等の流体を加圧する油圧ポンプ等の駆動に起因して発生する騒音を低減するサイレンサ装置、及び、このサイレンサ装置を備えた圧力流体流通回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、パワーステアリング装置等における据え切り時の静粛性向上等を目的とし、作動油等の流体を加圧する流体圧源の駆動に起因して発生する騒音を低減するためのサイレンサ装置については様々なものが提案されている。
【0003】
例えば特開平10−26287号公報には、作動流体(圧力流体)の管路を構成するホースの内部にインナチューブを配設し、ホースとインナチューブとの間に形成した隙間を複数の共鳴室として機能させることによって、オイルポンプ等の流体供給源から圧送される流体の脈動を吸収する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の特開平10−26287号公報に開示された技術は、作動流体の管路の中途で脈動吸収を行う構成であるため、油圧ポンプ等の流体圧源からサイレンサ装置に到達するまでの間の脈動は吸収されず、十分な消音効果を実現することが困難である。
【0005】
また、上述の特開平10−26287号公報に開示された技術は、ホース内部に長大なインナチューブ等を必要とするため、構造が複雑化し、製造コストの高騰等を招く虞がある。さらに、ホース内部にインナチューブ等を配設することはホースの可撓性低下を招き、例えば狭隘なエンジンルーム等の空間内にホースを配管する際の自由度に制限を加える虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、効果的な消音機能を実現することのできるサイレンサ装置、及び、このサイレンサ装置を備えた圧力流体流通回路を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明によるサイレンサ装置は、圧力流体を流通する通路に介装される介装部材の上記通路との連通口を複数の分割通路に区画する区画手段と、上記複数の分割通路のうちの少なくとも1つの流入側開口面積と流出側開口面積とを異ならせて当該分割通路内を流通する圧力流体の流速を変更する流速変更手段とを備え、圧力流体の圧力分布の高低による所定の圧力脈動波が上記各分割通路を通過後に打ち消し合うよう、上記区画手段及び上記流速変更手段を設定したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1記載の発明において、上記各分割通路を通過後の流体の圧力脈動波の位相が半波長ずれるよう、上記区画手段及び上記流速変更手段を設定したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1または請求項2記載の発明において、上記各分割通路の中心線が下流側で互いに交叉するよう設定したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の発明において、上記各分割通路を、上記介装部材に一体形成したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、上記各分割通路は異なる2系統の分割通路の何れかに属し、一の系統の分割通路の周囲に他の系統の分割通路を配設したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、上記各分割通路は異なる2系統の分割通路の何れかに属し、上記各系統の分割通路を交互に配設したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項5または請求項6記載の発明において、一の系統の分割通路の流入側開口面積を流出側開口面積よりも大きく設定し、他の系統の分割通路の流入側開口面積を流出側開口面積よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8記載の発明による圧力流体流通回路は、請求項1乃至請求項7の何れかに記載のサイレンサ装置を連通口に有する介装部材を、圧力流体を流通する通路に介装したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9記載の発明による圧力流体流通回路は、請求項8記載の発明において、上記通路に上記介装部材を複数介装し、上記各介装部材のサイレンサ装置を異なる周波数の圧力脈動波に対応させたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図面は本発明の第1の実施の形態に係わり、図1はサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図、図2はパワーステアリング装置の概略構成図である。
【0017】
図2において、符号1はパワーステアリング装置の油圧回路(圧力流体流通回路)を示し、油圧回路1は、圧力流体としてのパワステオイル(作動油)を圧送する介装部材としてのポンプアセンブリ2と、パワステオイルの油圧(パワステ油圧)をラック軸20の軸力に変換する介装部材としてのパワーシリンダ3と、パワーシリンダ3へのパワステオイルの流通を制御する介装部材としてのコントロールバルブ4とを有して構成されている。
【0018】
ポンプアセンブリ2は、オイルリザーバ10内に配設されるもので、ベーン式の油圧ポンプ(ベーンポンプ)11を有して構成されている。ベーンポンプ11は、ベルト等の伝動機構12を介してエンジン13に連結され、エンジン13の駆動時に、オイルリザーバ10内に貯留されたパワステオイルを吸入ポート11aから吸入して吐出管11bへと圧送する。
【0019】
また、ベーンポンプ11の吐出管11bには、吐出されたパワステオイルの流量をエンジン回転数に応じて制御するフローコントロールバルブ14と、フローコントロールバルブ14と協働して最高油圧を制限するリリーフバルブ15とが介装され、これら各バルブ14,15で調整されたパワステオイル(パワステ油圧)が、通路としてのパワステオイル供給通路17を介してコントロールバルブ4に供給される。
【0020】
パワーシリンダ3はラック軸20と一体のラックピストン21を有し、このラックピストン21によって、パワーシリンダ3の内部が第1作動室22と第2作動室23とに区画されている。そして、各作動室22,23が、通路24,25を介してそれぞれコントロールバルブ4に連通されている。
【0021】
コントロールバルブ4は、ステアリングホイール30、ステアリングシャフト31、及び、ラック軸20と噛合うピニオン軸32と一体的に構成され、ステアリングホイール30が転舵された際に、転舵方向に従って、通路24或いは通路25の一方をパワステオイル供給通路17に連通するとともに、他方をパワステオイルリターン通路33を介してオイルリザーバ10に連通する流路を形成するようになっている。
【0022】
そして、ステアリングホイール30の転舵時に、ポンプアセンブリ2からのパワステオイルが第1作動室22(或いは、第2作動室23)に供給されると、パワステオイルはラック軸20と一体のラックピストン21に作用し、図2において右(或いは、左)への軸力をラック軸20に発生させ、操舵力を補助軽減する。また、ラックピストン21の移動により、第2作動室23(或いは、第1作動室22)内のパワステオイルが押し出されると、押し出されたパワステオイルは、通路25(或いは、通路24)、コントロールバルブ4、パワステオイルリターン通路33を経由して、オイルリザーバ10へ戻される。
【0023】
なお、急ハンドル操舵時等にパワーシリンダ3へのパワステオイル流入の応答性を確保するため、各通路17,24,25は、パワステオイルの流通時に当該パワステオイルの油圧によって膨張・伸縮しないだけの所定硬度を備えた樹脂等の可撓管で構成されることが望ましい。
【0024】
図1に示すように、ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連結部、パワーシリンダ3の通路24,25との各連結部、コントロールバルブ4のパワステオイル供給通路17との連結部、及び、コントロールバルブ4の通路24,25との各連結部には、ベーンポンプ11によるパワステオイルの圧送に起因する騒音を低減するためのサイレンサ装置50〜55がそれぞれ設けられている。ここで、各サイレンサ装置50〜55は、パワステオイルがベーンポンプ11から吐出される際に圧力分布が周期的に変動して発生する圧力脈動波を吸収することによって、当該圧力脈動波がパワーステアリング装置の各部の共振を誘発して引き起こす騒音を低減するものである。
【0025】
次に、ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連結部に設けられたサイレンサ装置50の構成について、図1を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態において、ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連結部は、オイルリザーバ10上に設けられている。すなわち、オイルリザーバ10の内壁面には、吐出管11bに対応する環状の嵌合溝65が周設され、この嵌合溝65に吐出管11bの下流端が嵌合保持されている。
【0027】
一方、オイルリザーバ10の外壁面には、パワステオイル供給通路17に対応する環状の嵌合溝66が周設され、この嵌合溝66にパワステオイル供給通路17の上流端が嵌合保持されている。
【0028】
これらの嵌合溝65,66は同軸上に配設され、嵌合溝65,66の内側には、オイルリザーバ10の内外(すなわち、各嵌合溝65,66にそれぞれ嵌合保持された吐出管11bとパワステオイル供給通路17)を連通する連通口67が設けられている。
【0029】
連通口67は、区画手段としての隔壁68によって、例えば図示のように、連通口67の中心に位置する第1の分割通路70と、その周囲に位置する4本の第2の分割通路71との2系統の分割通路に区画され、これにより、サイレンサ装置50の要部が構成されている。なお、本実施の形態においては、オイルリザーバ10の壁面に所定の孔を穿設することにより、当該オイルリザーバ10の壁面に隔壁68、及び第1,第2の分割通路70,71が同時に一体形成されるようになっている。
【0030】
第1の分割通路70は、隔壁68に形成されたスロープ部によって、その流入側開口面積が流出側開口面積よりも大きくなるよう構成され、このような構成によって、ベルヌーイの定理からも明らかなように、第1の分割通路70に流入したパワステオイルは、その流速が速められ、且つ、圧力脈動波の波長も長大化された状態で流出されるようになっている。すなわち、隔壁68は、区画手段としての機能に加え、流速変更手段としての機能も実現する。
【0031】
一方、各第2の分割通路71は、その流入側から流出側にかけて開口面積が均一な通路で構成されている。また、各第2の分割通路71は第1の分割通路70のスロープ部に沿って傾斜されており、これにより、図中1に一点鎖線で示すように、各第2の分割通路71の中心線は第1の分割通路70の中心線と下流側で互いに交叉するようになっている。そして、このような構成により、第2の分割通路71を流出後のパワステオイルが第1の分割通路70を流出後のパワステオイルと積極的に干渉するようになっている。
【0032】
ここで、本実施の形態において、サイレンサ装置50は、第1の分割通路70を流通するパワステオイルの圧力脈動波の波長変化により、例えばアイドル時等の所定条件下において、第1,第2の分割通路70,71からそれぞれ流出されたパワステオイルの圧力脈動波の位相を互いに逆位相とするよう諸元が設定されるものである。
【0033】
ところで、例えば、ベーンポンプ11の図示しないベーン枚数を11枚、伝動機構12のプーリ比を1.19、アイドル時のエンジン回転数を700rpm、エンジン回転数700rpmでベーンポンプ11から吐出されるパワステオイルの流量を7l/minであると仮定し、パワステオイル供給通路17の内径Φが例えば10mm,8mm,5.5mm,4mm,3mm,2mmの均一な管路を圧力脈動波が通過する際に各波長λ(すなわち、ベーン1区切り毎に吐出されるパワステオイルがパワステオイル供給通路17内で占める長さ)を求めると、
となり、パワステオイル供給通路17の内径が太くなる程、圧力脈動波の波長λが短くなる。この場合、例えば、第1の分割通路70と各第2の分割通路71との流入側開口面積の総和をΦ=10mmの開口面積に相当する0.785cm2程度確保することができれば、少なくともパワステオイル供給通路17との連結部におけるオイルリザーバ10の壁部の肉厚を1cm程度確保するだけで、この部位に、アイドル時の圧力脈動波1波長分に対応する通路長を確保することができる。換言すれば、上述のように各分割通路70,71の開口面積の総和を確保することができれば、1cm程度の肉厚で、アイドル時の圧力脈動波に対応するサイレンサ装置50を十分構成することができる。
【0034】
なお、図示しないが、油圧回路1中の他の各部に設けられたサイレンサ装置51〜55も、上述のサイレンサ装置50と略同様の構成となっている。但し、本実施の形態において、各サイレンサ装置51〜55は、サイレンサ装置50でターゲットとする波長の圧力脈動波に対し、その1.5倍高調波、2倍高調波、4倍高調波等に対応するよう設計されている。
【0035】
次に、上述の構成の作用について説明する。
ベーンポンプ11で加圧されたパワステオイルがサイレンサ装置50にさしかかると、パワステオイルは第1の分割通路70と第2の分割通路71とに分割して流入される。
【0036】
第1の分割通路70に流入したパワステオイルは、流速が変更されることにより、その圧力脈動波の波長が長大化されながら第1の分割通路70内を流通する。
【0037】
一方、第2の分割通路71に流入したパワステオイルは、そのままの流速で、圧力脈動波の波長も変更されることなく第2の分割通路71内を流通する。
【0038】
これにより、アイドル時において、パワステオイルはその圧力脈動波の基本波が、第1,第2の分割通路70,71から互いに逆位相となった状態で流出され、互いに相殺し合うことで吸収される。従って、アイドル時での据え切り等が行われた際に、圧力脈動波の基本波がパワーステアリング装置の各部を加振することに起因する騒音が低減される。
【0039】
さらに、サイレンサ装置50の下流側において、他のサイレンサ装置51〜55によって、同様に、1.5倍高調波、2倍高調波、4倍高調波等が吸収され、更なる騒音の低減が実現する。
【0040】
このような実施の形態によれば、サイレンサ装置50〜55は、パワステオイルの圧力分布の高低による圧力脈動波を吸収する構成としたので、比較的短波長の脈動に対応した構成とすることができ、音波を吸収するサイレンサ装置等に比べて飛躍的に短尺なサイレンサ装置とすることができる。
【0041】
そして、このようなサイレンサ装置50〜55を、ポンプアセンブリ2、パワーシリンダ3、及び、コントロールバルブ4等の各介装部材における各通路17,24,25との連結部に配設することにより、各通路17,24,25への圧力脈動波による影響を効果的に低減することができる。
【0042】
その際、第1,第2の分割通路70,71を各介装部材の壁部に穿設等によって一体的に構成することにより、サイレンサ装置50〜55の構成を簡素化することができ、製造コストの低減等を図ることができる。また、第1,第2の分割通路70,71を各介装部材に一体的に構成することは、各分割通路70,71の特性等を介装部材毎に個別に設定する際等に、これらを厳密に管理することができるという効果を奏する。
【0043】
また、各サイレンサ装置50〜55を各連結部に配設することは、各通路17,24,25を構成するチューブ等の可撓性を確保することを容易とし、油圧回路1の車体への艤装性等を向上することができる。
【0044】
また、各分割通路70,71の中心線が下流側で互いに交叉するよう設定することにより、各分割通路70,71を通過後のパワステオイルを積極的に干渉させることができる。
【0045】
その際、第1の分割通路70の周囲に複数の第2の分割通路71を配設することにより、より効果的に両分割通路70,71を通過後のパワステオイルを干渉させることができる。
【0046】
また、例えばサイレンサ装置50において、第1の分割通路70を、流入側開口面積が流出側開口面積よりも大きい分割通路で構成し、第2の分割通路71を第1の分割通路70のスロープ部に沿って傾斜させることにより、パワステオイル供給通路17を吐出管11bよりも相対的に小径化することができる。
【0047】
次に、図3乃至図5は本発明の第2の実施の形態に係わり、図3はサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図、図4は他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図、図5は他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図である。なお、本実施の形態は、2系統の分割通路の両方を流通するパワステオイルの流速をそれぞれ変更する構成とした点が、上述の第1の実施の形態と異なる。その他、同様の構成については上述の第1の第1の実施の形態と同符号を付して説明を省略する。
【0048】
図3に示すように、連通口67は、区画手段としての隔壁75によって、連通口67の中心に位置する第1の分割通路76と、その周囲に位置する4本の第2の分割通路77との2系統の分割通路に区画され、これにより、サイレンサ装置50の要部が構成されている。
【0049】
第1の分割通路76は、隔壁75に形成されたスロープ部によってその流入側開口面積が流出側開口面積よりも大きくなるよう構成され、このような構成によって、第1の分割通路76に流入したパワステオイルは、その流速が速められ、且つ、圧力脈動波の波長も長大化された状態で流出されるようになっている。
【0050】
一方、第2の分割通路77は、一部が第1の分割通路76のスロープ部に略沿うスロープ部によって、その流入側開口面積が流出側開口面積よりも小さくなるよう構成され、このような構成によって、第2の分割通路77に流入したパワステオイルは、その流速が遅められ、且つ、圧力脈動波の波長も短小化された状態で流出されるようになっている。
【0051】
ここで、本実施の形態において、サイレンサ装置50は、例えばアイドル時等の所定条件下において、第1,第2の分割通路76,77からそれぞれ流出されたパワステオイルの圧力脈動波の位相を互いに逆位相とするよう諸元が設定されている。また、本実施の形態においては、第1の分割通路76の流入側開口面積と、各第2の分割通路77の流入側開口面積の総和とが等しくなるよう設定されており、これにより、各系統の分割通路76,77には略等しい量のパワステオイルが流入されるようになっている。
【0052】
このような実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態で得られる作用効果に加え、第1,第2の分割通路76,77の両方で圧力脈動波の波長を変化させるので、所望の圧力脈動波をより効果的に吸収することができるという効果を奏する。
【0053】
その際、第1,第2の分割通路76,77のうちの一方で圧力脈動波の波長を長大化させ、他方で短小化させる構成とすることにより、両分割通路76,77に必要な通路長を短縮することができる。
【0054】
ここで、本実施の形態において、サイレンサ装置50の配設スペース等に応じて、例えば図4に示すように、第1,第2の分割通路76,77の流入側と流出側との開口面積をそれぞれ逆に設定してもよい。
【0055】
また、例えば図5に示すように、第1,第2の分割通路76,77の開口面積は、通路途中から変化させる構成としてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態において、上述の各構成は、サイレンサ装置50のみに適用されるものではなく、他の部位のサイレンサ装置51〜55にも適用が可能であることは勿論である。
【0057】
次に、図6は本発明の第3の実施の形態に係わり、図6はサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図である。なお、本実施の形態は、複数の分割通路が設けられた内挿管を連通口に装着してサイレンサ装置を構成する点が、上述の第1の実施の形態と異なる。その他、同様の構成については上述の第1の実施の形態と同符号を付して説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、オイルリザーバ10に開口された連通口67には、内挿管80が嵌合によって装着されている。本実施の形態において、内挿管80はオイルリザーバ10の外側から装着されるようになっており、この場合、オイルリザーバ10と内挿管80との間に、パワステオイル供給通路17を嵌合保持する嵌合溝81が形成される。
【0059】
内挿管80には、上述の各実施の形態と同様、隔壁84によって2系統の分割通路(第1の分割通路82、第2の分割通路83)に区画され、これらが交互に配設されている。
【0060】
このような実施の形態によれば、上述の各実施の形態で得られる作用効果に加え、内挿管80を適宜交換することにより、サイレンサ装置50の仕様変更等を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0061】
また各系統の分割通路を交互に配設することにより、各分割通路から流出されたパワステオイルを効果的に干渉させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態において、上述の各構成は、サイレンサ装置50のみに適用されるものではなく、他の部位のサイレンサ装置51〜55にも適用が可能であることは勿論である。
【0063】
また、上述の各実施の形態で説明した各サイレンサ装置は、パワーステアリング装置の油圧回路以外にも適用が可能であることは云うまでもない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、簡単な構成で、効果的な消音機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わり、サイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図2】同上、パワーステアリング装置の概略構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わり、サイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図4】同上、他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図5】同上、他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わり、サイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【符号の説明】
1 … 油圧回路(圧力流体流通回路)
2 … ポンプアセンブリ(介装部材)
3 … パワーシリンダ(介装部材)
4 … コントロールバルブ(介装部材)
17 … パワステオイル供給通路(通路)
24 … 通路
25 … 通路
50〜55 … サイレンサ装置
67 … 連通口
68 … 隔壁(区画手段、流速変更手段)
70 … 第1の分割通路
71 … 第1の分割通路
75 … 隔壁(区画手段、流速変更手段)
76 … 第1の分割通路
77 … 第2の分割通路
82 … 第1の分割通路
83 … 第2の分割通路
84 … 隔壁(区画手段、流速変更手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイレンサ装置に関し、特に、作動油等の流体を加圧する油圧ポンプ等の駆動に起因して発生する騒音を低減するサイレンサ装置、及び、このサイレンサ装置を備えた圧力流体流通回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、パワーステアリング装置等における据え切り時の静粛性向上等を目的とし、作動油等の流体を加圧する流体圧源の駆動に起因して発生する騒音を低減するためのサイレンサ装置については様々なものが提案されている。
【0003】
例えば特開平10−26287号公報には、作動流体(圧力流体)の管路を構成するホースの内部にインナチューブを配設し、ホースとインナチューブとの間に形成した隙間を複数の共鳴室として機能させることによって、オイルポンプ等の流体供給源から圧送される流体の脈動を吸収する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の特開平10−26287号公報に開示された技術は、作動流体の管路の中途で脈動吸収を行う構成であるため、油圧ポンプ等の流体圧源からサイレンサ装置に到達するまでの間の脈動は吸収されず、十分な消音効果を実現することが困難である。
【0005】
また、上述の特開平10−26287号公報に開示された技術は、ホース内部に長大なインナチューブ等を必要とするため、構造が複雑化し、製造コストの高騰等を招く虞がある。さらに、ホース内部にインナチューブ等を配設することはホースの可撓性低下を招き、例えば狭隘なエンジンルーム等の空間内にホースを配管する際の自由度に制限を加える虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、効果的な消音機能を実現することのできるサイレンサ装置、及び、このサイレンサ装置を備えた圧力流体流通回路を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明によるサイレンサ装置は、圧力流体を流通する通路に介装される介装部材の上記通路との連通口を複数の分割通路に区画する区画手段と、上記複数の分割通路のうちの少なくとも1つの流入側開口面積と流出側開口面積とを異ならせて当該分割通路内を流通する圧力流体の流速を変更する流速変更手段とを備え、圧力流体の圧力分布の高低による所定の圧力脈動波が上記各分割通路を通過後に打ち消し合うよう、上記区画手段及び上記流速変更手段を設定したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1記載の発明において、上記各分割通路を通過後の流体の圧力脈動波の位相が半波長ずれるよう、上記区画手段及び上記流速変更手段を設定したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1または請求項2記載の発明において、上記各分割通路の中心線が下流側で互いに交叉するよう設定したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の発明において、上記各分割通路を、上記介装部材に一体形成したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、上記各分割通路は異なる2系統の分割通路の何れかに属し、一の系統の分割通路の周囲に他の系統の分割通路を配設したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、上記各分割通路は異なる2系統の分割通路の何れかに属し、上記各系統の分割通路を交互に配設したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の発明によるサイレンサ装置は、請求項5または請求項6記載の発明において、一の系統の分割通路の流入側開口面積を流出側開口面積よりも大きく設定し、他の系統の分割通路の流入側開口面積を流出側開口面積よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8記載の発明による圧力流体流通回路は、請求項1乃至請求項7の何れかに記載のサイレンサ装置を連通口に有する介装部材を、圧力流体を流通する通路に介装したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9記載の発明による圧力流体流通回路は、請求項8記載の発明において、上記通路に上記介装部材を複数介装し、上記各介装部材のサイレンサ装置を異なる周波数の圧力脈動波に対応させたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図面は本発明の第1の実施の形態に係わり、図1はサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図、図2はパワーステアリング装置の概略構成図である。
【0017】
図2において、符号1はパワーステアリング装置の油圧回路(圧力流体流通回路)を示し、油圧回路1は、圧力流体としてのパワステオイル(作動油)を圧送する介装部材としてのポンプアセンブリ2と、パワステオイルの油圧(パワステ油圧)をラック軸20の軸力に変換する介装部材としてのパワーシリンダ3と、パワーシリンダ3へのパワステオイルの流通を制御する介装部材としてのコントロールバルブ4とを有して構成されている。
【0018】
ポンプアセンブリ2は、オイルリザーバ10内に配設されるもので、ベーン式の油圧ポンプ(ベーンポンプ)11を有して構成されている。ベーンポンプ11は、ベルト等の伝動機構12を介してエンジン13に連結され、エンジン13の駆動時に、オイルリザーバ10内に貯留されたパワステオイルを吸入ポート11aから吸入して吐出管11bへと圧送する。
【0019】
また、ベーンポンプ11の吐出管11bには、吐出されたパワステオイルの流量をエンジン回転数に応じて制御するフローコントロールバルブ14と、フローコントロールバルブ14と協働して最高油圧を制限するリリーフバルブ15とが介装され、これら各バルブ14,15で調整されたパワステオイル(パワステ油圧)が、通路としてのパワステオイル供給通路17を介してコントロールバルブ4に供給される。
【0020】
パワーシリンダ3はラック軸20と一体のラックピストン21を有し、このラックピストン21によって、パワーシリンダ3の内部が第1作動室22と第2作動室23とに区画されている。そして、各作動室22,23が、通路24,25を介してそれぞれコントロールバルブ4に連通されている。
【0021】
コントロールバルブ4は、ステアリングホイール30、ステアリングシャフト31、及び、ラック軸20と噛合うピニオン軸32と一体的に構成され、ステアリングホイール30が転舵された際に、転舵方向に従って、通路24或いは通路25の一方をパワステオイル供給通路17に連通するとともに、他方をパワステオイルリターン通路33を介してオイルリザーバ10に連通する流路を形成するようになっている。
【0022】
そして、ステアリングホイール30の転舵時に、ポンプアセンブリ2からのパワステオイルが第1作動室22(或いは、第2作動室23)に供給されると、パワステオイルはラック軸20と一体のラックピストン21に作用し、図2において右(或いは、左)への軸力をラック軸20に発生させ、操舵力を補助軽減する。また、ラックピストン21の移動により、第2作動室23(或いは、第1作動室22)内のパワステオイルが押し出されると、押し出されたパワステオイルは、通路25(或いは、通路24)、コントロールバルブ4、パワステオイルリターン通路33を経由して、オイルリザーバ10へ戻される。
【0023】
なお、急ハンドル操舵時等にパワーシリンダ3へのパワステオイル流入の応答性を確保するため、各通路17,24,25は、パワステオイルの流通時に当該パワステオイルの油圧によって膨張・伸縮しないだけの所定硬度を備えた樹脂等の可撓管で構成されることが望ましい。
【0024】
図1に示すように、ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連結部、パワーシリンダ3の通路24,25との各連結部、コントロールバルブ4のパワステオイル供給通路17との連結部、及び、コントロールバルブ4の通路24,25との各連結部には、ベーンポンプ11によるパワステオイルの圧送に起因する騒音を低減するためのサイレンサ装置50〜55がそれぞれ設けられている。ここで、各サイレンサ装置50〜55は、パワステオイルがベーンポンプ11から吐出される際に圧力分布が周期的に変動して発生する圧力脈動波を吸収することによって、当該圧力脈動波がパワーステアリング装置の各部の共振を誘発して引き起こす騒音を低減するものである。
【0025】
次に、ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連結部に設けられたサイレンサ装置50の構成について、図1を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態において、ポンプアセンブリ2のパワステオイル供給通路17との連結部は、オイルリザーバ10上に設けられている。すなわち、オイルリザーバ10の内壁面には、吐出管11bに対応する環状の嵌合溝65が周設され、この嵌合溝65に吐出管11bの下流端が嵌合保持されている。
【0027】
一方、オイルリザーバ10の外壁面には、パワステオイル供給通路17に対応する環状の嵌合溝66が周設され、この嵌合溝66にパワステオイル供給通路17の上流端が嵌合保持されている。
【0028】
これらの嵌合溝65,66は同軸上に配設され、嵌合溝65,66の内側には、オイルリザーバ10の内外(すなわち、各嵌合溝65,66にそれぞれ嵌合保持された吐出管11bとパワステオイル供給通路17)を連通する連通口67が設けられている。
【0029】
連通口67は、区画手段としての隔壁68によって、例えば図示のように、連通口67の中心に位置する第1の分割通路70と、その周囲に位置する4本の第2の分割通路71との2系統の分割通路に区画され、これにより、サイレンサ装置50の要部が構成されている。なお、本実施の形態においては、オイルリザーバ10の壁面に所定の孔を穿設することにより、当該オイルリザーバ10の壁面に隔壁68、及び第1,第2の分割通路70,71が同時に一体形成されるようになっている。
【0030】
第1の分割通路70は、隔壁68に形成されたスロープ部によって、その流入側開口面積が流出側開口面積よりも大きくなるよう構成され、このような構成によって、ベルヌーイの定理からも明らかなように、第1の分割通路70に流入したパワステオイルは、その流速が速められ、且つ、圧力脈動波の波長も長大化された状態で流出されるようになっている。すなわち、隔壁68は、区画手段としての機能に加え、流速変更手段としての機能も実現する。
【0031】
一方、各第2の分割通路71は、その流入側から流出側にかけて開口面積が均一な通路で構成されている。また、各第2の分割通路71は第1の分割通路70のスロープ部に沿って傾斜されており、これにより、図中1に一点鎖線で示すように、各第2の分割通路71の中心線は第1の分割通路70の中心線と下流側で互いに交叉するようになっている。そして、このような構成により、第2の分割通路71を流出後のパワステオイルが第1の分割通路70を流出後のパワステオイルと積極的に干渉するようになっている。
【0032】
ここで、本実施の形態において、サイレンサ装置50は、第1の分割通路70を流通するパワステオイルの圧力脈動波の波長変化により、例えばアイドル時等の所定条件下において、第1,第2の分割通路70,71からそれぞれ流出されたパワステオイルの圧力脈動波の位相を互いに逆位相とするよう諸元が設定されるものである。
【0033】
ところで、例えば、ベーンポンプ11の図示しないベーン枚数を11枚、伝動機構12のプーリ比を1.19、アイドル時のエンジン回転数を700rpm、エンジン回転数700rpmでベーンポンプ11から吐出されるパワステオイルの流量を7l/minであると仮定し、パワステオイル供給通路17の内径Φが例えば10mm,8mm,5.5mm,4mm,3mm,2mmの均一な管路を圧力脈動波が通過する際に各波長λ(すなわち、ベーン1区切り毎に吐出されるパワステオイルがパワステオイル供給通路17内で占める長さ)を求めると、
となり、パワステオイル供給通路17の内径が太くなる程、圧力脈動波の波長λが短くなる。この場合、例えば、第1の分割通路70と各第2の分割通路71との流入側開口面積の総和をΦ=10mmの開口面積に相当する0.785cm2程度確保することができれば、少なくともパワステオイル供給通路17との連結部におけるオイルリザーバ10の壁部の肉厚を1cm程度確保するだけで、この部位に、アイドル時の圧力脈動波1波長分に対応する通路長を確保することができる。換言すれば、上述のように各分割通路70,71の開口面積の総和を確保することができれば、1cm程度の肉厚で、アイドル時の圧力脈動波に対応するサイレンサ装置50を十分構成することができる。
【0034】
なお、図示しないが、油圧回路1中の他の各部に設けられたサイレンサ装置51〜55も、上述のサイレンサ装置50と略同様の構成となっている。但し、本実施の形態において、各サイレンサ装置51〜55は、サイレンサ装置50でターゲットとする波長の圧力脈動波に対し、その1.5倍高調波、2倍高調波、4倍高調波等に対応するよう設計されている。
【0035】
次に、上述の構成の作用について説明する。
ベーンポンプ11で加圧されたパワステオイルがサイレンサ装置50にさしかかると、パワステオイルは第1の分割通路70と第2の分割通路71とに分割して流入される。
【0036】
第1の分割通路70に流入したパワステオイルは、流速が変更されることにより、その圧力脈動波の波長が長大化されながら第1の分割通路70内を流通する。
【0037】
一方、第2の分割通路71に流入したパワステオイルは、そのままの流速で、圧力脈動波の波長も変更されることなく第2の分割通路71内を流通する。
【0038】
これにより、アイドル時において、パワステオイルはその圧力脈動波の基本波が、第1,第2の分割通路70,71から互いに逆位相となった状態で流出され、互いに相殺し合うことで吸収される。従って、アイドル時での据え切り等が行われた際に、圧力脈動波の基本波がパワーステアリング装置の各部を加振することに起因する騒音が低減される。
【0039】
さらに、サイレンサ装置50の下流側において、他のサイレンサ装置51〜55によって、同様に、1.5倍高調波、2倍高調波、4倍高調波等が吸収され、更なる騒音の低減が実現する。
【0040】
このような実施の形態によれば、サイレンサ装置50〜55は、パワステオイルの圧力分布の高低による圧力脈動波を吸収する構成としたので、比較的短波長の脈動に対応した構成とすることができ、音波を吸収するサイレンサ装置等に比べて飛躍的に短尺なサイレンサ装置とすることができる。
【0041】
そして、このようなサイレンサ装置50〜55を、ポンプアセンブリ2、パワーシリンダ3、及び、コントロールバルブ4等の各介装部材における各通路17,24,25との連結部に配設することにより、各通路17,24,25への圧力脈動波による影響を効果的に低減することができる。
【0042】
その際、第1,第2の分割通路70,71を各介装部材の壁部に穿設等によって一体的に構成することにより、サイレンサ装置50〜55の構成を簡素化することができ、製造コストの低減等を図ることができる。また、第1,第2の分割通路70,71を各介装部材に一体的に構成することは、各分割通路70,71の特性等を介装部材毎に個別に設定する際等に、これらを厳密に管理することができるという効果を奏する。
【0043】
また、各サイレンサ装置50〜55を各連結部に配設することは、各通路17,24,25を構成するチューブ等の可撓性を確保することを容易とし、油圧回路1の車体への艤装性等を向上することができる。
【0044】
また、各分割通路70,71の中心線が下流側で互いに交叉するよう設定することにより、各分割通路70,71を通過後のパワステオイルを積極的に干渉させることができる。
【0045】
その際、第1の分割通路70の周囲に複数の第2の分割通路71を配設することにより、より効果的に両分割通路70,71を通過後のパワステオイルを干渉させることができる。
【0046】
また、例えばサイレンサ装置50において、第1の分割通路70を、流入側開口面積が流出側開口面積よりも大きい分割通路で構成し、第2の分割通路71を第1の分割通路70のスロープ部に沿って傾斜させることにより、パワステオイル供給通路17を吐出管11bよりも相対的に小径化することができる。
【0047】
次に、図3乃至図5は本発明の第2の実施の形態に係わり、図3はサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図、図4は他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図、図5は他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図である。なお、本実施の形態は、2系統の分割通路の両方を流通するパワステオイルの流速をそれぞれ変更する構成とした点が、上述の第1の実施の形態と異なる。その他、同様の構成については上述の第1の第1の実施の形態と同符号を付して説明を省略する。
【0048】
図3に示すように、連通口67は、区画手段としての隔壁75によって、連通口67の中心に位置する第1の分割通路76と、その周囲に位置する4本の第2の分割通路77との2系統の分割通路に区画され、これにより、サイレンサ装置50の要部が構成されている。
【0049】
第1の分割通路76は、隔壁75に形成されたスロープ部によってその流入側開口面積が流出側開口面積よりも大きくなるよう構成され、このような構成によって、第1の分割通路76に流入したパワステオイルは、その流速が速められ、且つ、圧力脈動波の波長も長大化された状態で流出されるようになっている。
【0050】
一方、第2の分割通路77は、一部が第1の分割通路76のスロープ部に略沿うスロープ部によって、その流入側開口面積が流出側開口面積よりも小さくなるよう構成され、このような構成によって、第2の分割通路77に流入したパワステオイルは、その流速が遅められ、且つ、圧力脈動波の波長も短小化された状態で流出されるようになっている。
【0051】
ここで、本実施の形態において、サイレンサ装置50は、例えばアイドル時等の所定条件下において、第1,第2の分割通路76,77からそれぞれ流出されたパワステオイルの圧力脈動波の位相を互いに逆位相とするよう諸元が設定されている。また、本実施の形態においては、第1の分割通路76の流入側開口面積と、各第2の分割通路77の流入側開口面積の総和とが等しくなるよう設定されており、これにより、各系統の分割通路76,77には略等しい量のパワステオイルが流入されるようになっている。
【0052】
このような実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態で得られる作用効果に加え、第1,第2の分割通路76,77の両方で圧力脈動波の波長を変化させるので、所望の圧力脈動波をより効果的に吸収することができるという効果を奏する。
【0053】
その際、第1,第2の分割通路76,77のうちの一方で圧力脈動波の波長を長大化させ、他方で短小化させる構成とすることにより、両分割通路76,77に必要な通路長を短縮することができる。
【0054】
ここで、本実施の形態において、サイレンサ装置50の配設スペース等に応じて、例えば図4に示すように、第1,第2の分割通路76,77の流入側と流出側との開口面積をそれぞれ逆に設定してもよい。
【0055】
また、例えば図5に示すように、第1,第2の分割通路76,77の開口面積は、通路途中から変化させる構成としてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態において、上述の各構成は、サイレンサ装置50のみに適用されるものではなく、他の部位のサイレンサ装置51〜55にも適用が可能であることは勿論である。
【0057】
次に、図6は本発明の第3の実施の形態に係わり、図6はサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図である。なお、本実施の形態は、複数の分割通路が設けられた内挿管を連通口に装着してサイレンサ装置を構成する点が、上述の第1の実施の形態と異なる。その他、同様の構成については上述の第1の実施の形態と同符号を付して説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、オイルリザーバ10に開口された連通口67には、内挿管80が嵌合によって装着されている。本実施の形態において、内挿管80はオイルリザーバ10の外側から装着されるようになっており、この場合、オイルリザーバ10と内挿管80との間に、パワステオイル供給通路17を嵌合保持する嵌合溝81が形成される。
【0059】
内挿管80には、上述の各実施の形態と同様、隔壁84によって2系統の分割通路(第1の分割通路82、第2の分割通路83)に区画され、これらが交互に配設されている。
【0060】
このような実施の形態によれば、上述の各実施の形態で得られる作用効果に加え、内挿管80を適宜交換することにより、サイレンサ装置50の仕様変更等を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0061】
また各系統の分割通路を交互に配設することにより、各分割通路から流出されたパワステオイルを効果的に干渉させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態において、上述の各構成は、サイレンサ装置50のみに適用されるものではなく、他の部位のサイレンサ装置51〜55にも適用が可能であることは勿論である。
【0063】
また、上述の各実施の形態で説明した各サイレンサ装置は、パワーステアリング装置の油圧回路以外にも適用が可能であることは云うまでもない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、簡単な構成で、効果的な消音機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わり、サイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図2】同上、パワーステアリング装置の概略構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わり、サイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図4】同上、他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図5】同上、他のサイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わり、サイレンサ装置の要部断面図及び各分割通路をパワステオイル供給通路側から見た平面図
【符号の説明】
1 … 油圧回路(圧力流体流通回路)
2 … ポンプアセンブリ(介装部材)
3 … パワーシリンダ(介装部材)
4 … コントロールバルブ(介装部材)
17 … パワステオイル供給通路(通路)
24 … 通路
25 … 通路
50〜55 … サイレンサ装置
67 … 連通口
68 … 隔壁(区画手段、流速変更手段)
70 … 第1の分割通路
71 … 第1の分割通路
75 … 隔壁(区画手段、流速変更手段)
76 … 第1の分割通路
77 … 第2の分割通路
82 … 第1の分割通路
83 … 第2の分割通路
84 … 隔壁(区画手段、流速変更手段)
Claims (9)
- 圧力流体を流通する通路に介装される介装部材の上記通路との連通口を複数の分割通路に区画する区画手段と、
上記複数の分割通路のうちの少なくとも1つの流入側開口面積と流出側開口面積とを異ならせて当該分割通路内を流通する圧力流体の流速を変更する流速変更手段とを備え、
圧力流体の圧力分布の高低による所定の圧力脈動波が上記各分割通路を通過後に打ち消し合うよう、上記区画手段及び上記流速変更手段を設定したことを特徴とするサイレンサ装置。 - 上記各分割通路を通過後の流体の圧力脈動波の位相が半波長ずれるよう、上記区画手段及び上記流速変更手段を設定したことを特徴とする請求項1記載のサイレンサ装置。
- 上記各分割通路の中心線が下流側で互いに交叉するよう設定したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のサイレンサ装置。
- 上記各分割通路を、上記介装部材に一体形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のサイレンサ装置。
- 上記各分割通路は異なる2系統の分割通路の何れかに属し、
一の系統の分割通路の周囲に他の系統の分割通路を配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のサイレンサ装置。 - 上記各分割通路は異なる2系統の分割通路の何れかに属し、
上記各系統の分割通路を交互に配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のサイレンサ装置。 - 一の系統の分割通路の流入側開口面積を流出側開口面積よりも大きく設定し、
他の系統の分割通路の流入側開口面積を流出側開口面積よりも小さく設定したことを特徴とする請求項5または請求項6記載のサイレンサ装置。 - 請求項1乃至請求項7の何れかに記載のサイレンサ装置を連通口に有する介装部材を、圧力流体を流通する通路に介装したことを特徴とする圧力流体流通回路。
- 上記通路に上記介装部材を複数介装し、
上記各介装部材のサイレンサ装置を異なる周波数の圧力脈動波に対応させたことを特徴とする請求項8記載の圧力流体流通回路。
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