JP2004092640A - 船外機用エンジンの制御装置及び制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子制御スロットル弁の正規のスロットル開度制御が行えない状態となったときに、リンプホームに必要なエンジン回転速度を得る。
【解決手段】船外機用エンジン2と、該船外機用エンジン2の吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁22と、該電子制御スロットル弁22の開度を遠隔操作するリモコンレバー131と、該リモコンレバー131の操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段とを備えている。
【選択図】 図2
【解決手段】船外機用エンジン2と、該船外機用エンジン2の吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁22と、該電子制御スロットル弁22の開度を遠隔操作するリモコンレバー131と、該リモコンレバー131の操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段とを備えている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御装置及び制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
小型ボート等に搭載される船外機は、プロペラが装着されたロアケースの上部にアッパケースおよびトップカウルを取付け、トップカウル内に船外機用エンジンを搭載し、このエンジンによりプロペラを駆動する。通常この船外機用エンジンは、スロットル弁を有し、このスロットル弁によって吸入空気量を制御することにより、船外機用エンジンのエンジン回転速度を制御するようにしている。
【0003】
このような船外機用エンジンの制御装置として、例えば、米国特許第6273771号明細書に記載されているものが知られている。この従来例は、船外機用エンジンのスロットル弁を電子制御スロットル弁で構成し、この電子制御スロットル弁をエンジンコントロールユニットで制御し、このエンジンコントロールユニットに電気的リモートコントロールモジュールからのスロットル開度指令信号をコントローラエリアネットワーク(CAN)を介して伝達するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例にあっては、船外機用エンジンの回転速度を制御するために電子制御スロットル弁を適用している関係で、電子制御スロットル弁に摩擦抵抗の増加や固着等の異常が発生したときに、電気的リモートコントロールモジュールで、スロットル開度指令信号をコントローラエリアネットワークCANを介してエンジンコントロールユニットに伝送しても、電子制御スロットル弁の正規のスロットル開度制御が困難になり、必要とするエンジン回転速度を得ることができなくなるという未解決の課題がある。
【0005】
船外機の場合、自動車とは異なり、海上で使用されるため、電子制御スロットル弁が異常になってリンプホームする際でも、自力で帰港できることが必要とされている。すなわち、船舶は自動車に比較して推進抵抗が大きいためにリンプホーム時でもスロットル開閉にかかわらず自動車以上のレベルのエンジン回転出力を発生する必要がある。自動車の場合、陸上機関であるため、安全に停車させることが必要条件になり、リンプホームできることは必要条件ではないが、船舶の場合にリップホームできることが必要条件となっている。
【0006】
一方で、船舶が帰港して接岸する際には、シフト動作を行う必要があり、このシフト動作を行うためには、エンジン回転速度を低下させる必要があり、この接岸時にもエンジン回転速度低下制御が必要となるが、この場合も電子制御スロットル弁のスロットル開度制御が困難である場合には必要とするエンジン回転速度を得ることができなくなるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電子制御スロットル弁の正規のスロットル開度制御が行えない状態となったときに、必要なエンジン回転速度を得ることができる船外機用エンジンの制御装置及び制御方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明における請求項1に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
この請求項1に係る発明では、スロットル開度異常検出手段で電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに異常時吸入空気制御手段で少なくとも船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたので、必要とするエンジン回転速度を得ることができる。
【0009】
また、本発明における請求項2に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段と、前記スロットル開度異常検出手段で検出したスロットル開度異常が低開度側での異常であるときに、エンジン回転速度を増加補正する回転速度補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明の作用に加えて、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度異常を検出したときに、その異常が低開度側の異常であるときに回転速度補正手段によって異常時吸入空気制御手段で確保した吸入空気量に応じた燃料噴射量及び/又は点火時期、噴射時期を制御してエンジン回転速度を増加補正して、帰港時に必要とするエンジン回転速度を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明における請求項2に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記異常時吸入空気制御手段が、多気筒に独立して設けた前記電子制御スロットル弁を配設した吸気通路における当該電子制御スロットル弁の下流側に連通するバランス通路を設け、該バランス通路に前記電子制御スロットル弁の異常時に開閉可能な吸気弁を取付けた構成を有することを特徴としている。
【0012】
この請求項3に係る発明では、電子制御スロットル弁を配設した吸気通路の下流側にバランス通路を連通させ、このバランス通路に吸気弁を取付けたので、この吸気弁を開閉することにより、必要な吸入空気量を確保することができる。
さらに、本発明における請求項4に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記異常時吸入空気制御手段が、前記電子制御スロットル弁と並列に配設した途中に外部から開閉操作可能な開閉弁を有するバイパス通路を備えていることを特徴としている。
【0013】
この請求項4に係る発明では、電子制御スロットル弁と並列に配設したパイパス通路に外部から開閉操作可能な開閉弁を設けたので、開閉弁を外部から電気的に又は手動で開閉操作することにより、必要な吸入空気量を確保することができる。
さらにまた、本発明における請求項5に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項4に係る発明において、前記開閉弁が、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記各開閉弁の開度を同時に調整する開度制御手段を備えていることを特徴としている。
【0014】
この請求項5に係る発明では、バイパス通路に設けた開閉弁の開度がリモコンレバーの操作状態に応じて調整されるので、運転者の要求する吸入空気量を確保することができる。
なおさらに、請求項6に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項3に係る発明において、前記開閉弁は、手動開閉する手動開閉機構を有することを特徴としている。
【0015】
この請求項6に係る発明では、バイパス通路に設けた開閉弁を手動開閉することができるので、必要とする吸入空気量を調整することができる。
また、本発明における請求項7に係る船外機用エンジンの制御装置は、前記異常時吸入空気制御手段は、請求項1〜6の何れかに係る発明において、前記電子制御スロットル弁に機械的に連携する異常時操作部を有することを特徴としている。
この請求項7に係る発明では、電子制御スロットル弁に異常時操作部が機械的に連携されているので、スロットル開度異常時に異常時操作部を操作することにより、機械的に電子制御スロットル弁の弁開度を調整して、吸入空気量を確保することができる。
【0016】
さらにまた、請求項8に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、接岸時を検出する接岸検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出し、且つ前記接岸検出手段で接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少補正する回転速度減少補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】
この請求項8に係る発明では、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度の異常を検出し、且つ接岸検出手段で接岸を検出したときに、回転速度減少補正手段でエンジン回転速度を減少させるので、シフト機構のシフトを可能として容易に接岸することができる。
なおさらに、本発明における請求項9に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1乃至8の何れかの発明において、前記スロットル開度異常検出手段が、前記リモコンレバーのスロットル開度指令値を検出するスロットル開度指令値検出手段と、前記電子制御スロットル弁の実スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、前記スロットル開度指令値及び実スロットル開度に基づいてスロットル開度異常を判断する異常判断手段とを備えていることを特徴としている。
【0018】
この請求項9に係る発明では、リモコンレバーのスロットル開度指令値と、電子制御スロットル弁の実スロットル開度とを検出し、両者に基づいてスロットル開度異常を判断するようにしたので、電子制御スロットル弁の開度異常を確実に検出することができる。
また、本発明における請求項10に係る船外機用エンジンの制御装置は、前記異常判断手段が、前記スロットル開度指令値と前記実スロットル開度との偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するように構成されていることを特徴としている。
【0019】
この請求項10に係る発明では、スロットル開度指令値と実スロットル開度の偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するようにしているので、電子スロットル弁の開度異常をより正確に検出することができると共に、全閉側の異常であるか全開側の異常であるかを判別することができる。
さらに、本発明における請求項11に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項9に係る発明において、前記異常判断手段が、前記スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するように構成されていることを特徴としている。
【0020】
この請求項11に係る発明では、スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するので、電子スロットル弁の開度異常を固着度合いを加味してより正確に判別することができる。
さらにまた、本発明における請求項12に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1乃至11の何れかの発明において、前記スロットル開度異常検出手段は、スロットル開度異常を検出したときに、当該スロットル開度異常を報知する報知手段を有することを特徴としている。
この請求項12に係る発明では、スロットル開度の異常を検出したときに、スロットル開度異常をブザー、発光素子等で報知するので、操縦者がスロットル開度異常を確実に認識することができる。
【0021】
なおさらに、本発明における請求項13に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出する通信系統異常検出手段を備え、前記スロットル弁制御手段は、前記通信系統異常検出手段で通信系統の異常を検出したときに、リモコンレバーのスロットル開度指令値に相当するスロットル開度指令値を入力する外部指令値入力部を有すると共に、当該外部指令値入力部に着脱可能なスロットル開度指令値を出力する指令値補助入力部を備えていることを特徴としている。
【0022】
この請求項13に係る発明では、通信系統異常検出手段で、リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出したときに、スロットル弁制御手段の外部指令値入力部に指令値補助入力部を接続して、この指令値補助入力部からスロットル開度指令を入力することにより、電子制御スロットル弁のスロットル開度を調整することができる。
【0023】
また、本発明における請求項14に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項13に係る発明において、前記通信系統異常検出手段で通信系統の異常を検出したときに、当該通信系統異常を報知する異常報知手段を備えていることを特徴としている。
この請求項14に係る発明では、通信系統の異常を検出したときに、その異常を例えばブザー、発光素子等で構成する異常報知手段で報知するようにしたので、操縦者が通信系統の異常により電子制御スロットル弁の異常を容易に認識することができる。
【0024】
さらに、本発明における請求項15に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁は、機械的中立位置でスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持されたスロットル弁と、該スロットル弁を弾性に抗して全閉状態から全開状態まで駆動制御する電動駆動機構とを備えていることを特徴としている。
【0025】
この請求項15に係る発明では、スロットル弁の機械的中立位置がスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持され、このスロットル弁を電動駆動機構で全閉状態から全開状態まで駆動制御することによりスロットル開度を調整するので、電動駆動機構が異常状態となっても、スロットル開度が前回状態よりの機械的中立位置となるので、リンプホームを確実に行うことができる。
【0026】
さらにまた、本発明における請求項16に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁は、機械的中立位置でスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持されたスロットル弁と、該スロットル弁を弾性に抗して全閉状態から全開状態まで駆動制御する電動駆動機構とを有し、さらに前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、接岸時を検出する接岸検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出し、且つ前記接岸検出手段で接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少補正する回転速度減少補正手段とを備えたことを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
【0027】
この請求項16に係る発明では、スロットル開度異常時に電動駆動機構を駆動停止状態としてリンプホームに必要な吸入空気量を確保しながら、接岸時に回転速度補正手段でエンジン回転速度を減少させることにより、シフト機構のシフト操作を可能として、接岸を容易に行うことができる。
さらにまた、本発明における請求項17に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項14又は15の何れかの発明において、前記電子制御スロットル弁は、弁体を互いに逆方向に付勢する2種類の弾性部材と、該2種類の弾性部材による弁体の機械的中立位置を設定する中立位置設定機構とを備え、前記中立位置設定機構は外部から設定操作可能に構成されていることを特徴としている。
【0028】
この請求項17に係る発明では、電子制御スロットル弁を構成する弁体を付勢する2種類の弾性部材の中立位置設定機構を外部から電気的に又は手動で操作することにより、弁体の中立位置を変更して必要な吸入空気量を任意に調節することができる。
なおさらに、本発明における請求項18に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1乃至17の何れかの発明において、前記電子制御スロットル弁は、前記船外機用エンジンの気筒数に対応する複数のスロットル弁を有し、該複数のスロットル弁の回動軸が回動レバーを介して連携ロッドに連結され、該連携ロッドが電気的駆動機構に連結された構成を有することを特徴としている。
【0029】
この請求項18に係る発明では、既存のスロットル弁であっても、回動レバー、連携ロッド及び電気的駆動機構を新設することにより、大幅な改造を行うことなく、電子制御スロットル弁の構成とすることができる。
また、本発明における請求項19に係る船外機用エンジンの制御方法は、船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに、少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたことを特徴としている。
【0030】
この請求項19に係る発明では、前記請求項1に係る発明と同様の作用を得ることができる。
また、本発明における請求項20に係る船外機用エンジンの制御方法は、船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに、少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保すると共に、スロットル開度異常が低開度側での異常であるときに、エンジン回転速度を増加させるように制御することを特徴としている。
【0031】
この請求項20に係る発明では、前記請求項2に係る発明と同様の作用を得ることができる。
さらに、本発明における請求項21に係る船外機用エンジンの制御方法は、船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出した状態で、接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少させるように制御することを特徴としている。
この請求項21に係る発明では、前記請求項8に係る発明と同様の作用を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を伴って説明する。図1は、本発明を適用する筒内噴射式エンジンの1例を示す船外機の構成説明図であり、図(A)はエンジンの燃料供給系の構成図、図(B)は図(A)のエンジンの縦断面図、図(C)はこの船外機の側面図である。
【0033】
図中、1は船外機であり、クランク軸10が縦置き状態で搭載されるエンジン2と、エンジン2の下端面に接続されエンジン2を支持するガイドエキゾースト3と、ガイドエキゾースト3の下端面に接続されるアッパケース4、ロアケース5およびプロペラ6からなる。上記エンジン2は、筒内噴射式V型6気筒2サイクルエンジンであり、6つの気筒#1〜#6が平面視でVバンクをなすように横置き状態で且つ縦方向に2列に配設されたシリンダボディ7に、シリンダヘッド8が連結固定されている。アッパケース4内にはエンジンにより駆動される冷却水ポンプ18が設けられ、ロアケース5に形成された冷却水取入口5aから冷却水を吸い上げ、矢印のようにエンジン2内を循環させ、プロペラ6のボス部から水中に放出する。
【0034】
上記各気筒#1〜#6内には、ピストン(図示しない)が摺動自在に嵌合配置され、各ピストンはクランク軸10に連結されている。シリンダヘッド8には、電磁力で開閉動作されるソレノイド式のインジェクタ(燃料噴射弁)13および点火プラグ14が装着されている。各気筒#1〜#6は、それぞれ掃気ポート(図示せず)によりクランク室12に連通され、また、気筒#1〜#6には排気ポート15が接続されている。図1(B)の左バンクの排気ポート15は左集合排気通路16に、右バンクの排気ポート15は右集合排気通路17に合流されている。エンジン2のクランク室12には、吸気マニホールドから分岐する吸気通路19が接続されており、該吸気通路19には、逆流防止用のリード弁20が配設され、また、リード弁20の下流側には、エンジン内にオイルを供給し潤滑するためのオイルポンプ59が接続され、リード弁20の上流側には、吸入空気気量を調節するための電子制御スロットル弁22が配設されている。
【0035】
図1(A)に示すように、船体側に設置されている燃料タンク23内の燃料は、手動式の第1の低圧燃料ポンプ25により燃料フィルタ26を経て船外機側の第2の低圧燃料ポンプ27に送られる。この第2の低圧燃料ポンプ27は、エンジン2のクランク室12のパルス圧により駆動されるダイヤフラム式ポンプであり、燃料を、気液分離機能を有する燃料タンクであるベーパーセパレータタンク29に送る。ベーパーセパレータタンク29内には、電動モータにより駆動される燃料予圧ポンプ30が配設されており、燃料を加圧し予圧配管31を経て左右各バンクの高圧燃料ポンプ32a,32bに送る。各高圧燃料ポンプ32a,32bは、その間に設けた共通の例えばカム等からなるポンプ駆動装置70により左右それぞれのプランジャ70a,70bを介して交互に駆動される。ポンプ駆動装置70は、ベルト(図示しない)によりクランク軸10に連結され、クランク回転に同期して各高圧燃料ポンプを駆動する。
【0036】
高圧燃料ポンプ32a,32bの吐出側は、各気筒#1〜#6に沿って縦方向に配設された燃料供給レール33a,33bに接続ホース(高圧燃料配管)49を介して接続されるとともに、高圧圧力調整弁35および燃料冷却器(図示しない)を介して戻り配管37を通してベーパーセパレータタンク29に接続されている。また、予圧配管31とベーパーセパレータタンク29間には予圧圧力調整弁39が設けられている。
【0037】
エンジン潤滑用のオイルポンプ59は、クランク軸10の回転により駆動されるポンプであり、船体側に設置されたサブオイルタンク50からオイル汲上げポンプ58によりエンジン側に配設されたメインオイルタンク51に導入され、このオイルタンク51から吸気通路19内にオイルを供給する。また、メインオイルタンク51のオイルは、フィルタ52、プリミックス用オイルポンプ53、チェック弁54を介してベーパーセパレータタンク29に供給するように構成されている。プリミックス用オイルポンプ53は、電磁ソレノイドで駆動する方式のものや電動モータにより駆動するタイプのポンプを採用する。
【0038】
前述の左右の集合排気通路16,17は、エンジン2を搭載して支持する搭載台部材(ガイドエキゾースト3)を貫通し、その下面側のアッパケース4内に形成された膨張室64に開口する。この膨張室64は消音機能を有する。膨張室64の周囲のアッパケース4は、冷却水が循環する水壁63で構成され、走行時水面上に位置するアッパケース4の排気ガスによる過熱を防止する。なお、図(B)(C)のWLはアイドル時の水位を示す。走行時の水位はアッパケース4の底部付近まで下がる。
【0039】
各集合排気通路(メイン排気通路)16,17に装着された排気バルブ61は、共通の弁軸73を介して排気バルブ駆動モータ62により開閉駆動される。この排気バルブ駆動モータ62は、電子制御スロットル弁22の開度に応じて開閉動作するようにECU42により駆動制御される。例えば、電子制御スロットル弁22が最小開度(アイドル時)から1/10〜1/8程度の低開度までは排気バルブ61を全閉として集合排気ガスの略全量をサブ分岐通路71を通して触媒60を通過させ、それ以上のスロットル開度のときには、スロットル開度に応じて排気バルブを徐々に開く。このときスロットル開度に対する排気バルブの開度は、予め実験等により、筒内残留EGR量や吹抜け量等について最適となる開度を求めてマップを作成し、このマップに基づいて開度を制御する。
【0040】
排気バルブ駆動モータ62に代えて、スロットル弁の弁軸と排気バルブの弁軸を連結するリンク機構を設け、このリンク機構により前述のようにスロットル弁の開度に応じて排気バルブを開閉動作させてもよい。
Vバンクを構成する各気筒のシリンダボディのVバンク内側に設けた排気ポート15は、それぞれVバンク内側で縦に並列する左右の集合排気通路16,17に連通する。
また、図1に示すように、エンジン2の前方には図1には図示しないが図3に示すサイレンサSRが設けられ、その背面側に設けた空気取入口から空気を取り入れて、電子制御スロットル弁22が装着されたスロットルボディ21を通してクランク室12に空気を導入する。
【0041】
このスロットルボディ21には、図3及び図4に示すように、各気筒#1〜#6に対応する吸気通路19が上下方向に所定間隔を保って一列に並ぶように形成され、これら吸気通路19内にスロットル弁TV1〜TV6が回動自在に配設されている。これらスロットル弁TV1〜TV6のそれぞれは、それらの回動軸SH1〜SH6がスロットルボディ21の外表面に突出され、その突出部にスロットル弁TV1〜TV6を閉方向に付勢するコイルスプリング24sが配設されていると共に、各回動軸SH1〜SH6のスロットルボディ21から突出した先端にく字状の回動レバー24aが一体に取付けられている。そして、各スロットル弁TV1〜TV6の回動レバー24aの他端が共通の連携ロッド24bに回動自在に取付けられている。
【0042】
一方、スロットル弁TV4の回動軸SH4に取付けられた回動レバー24aは、後方側に扇状に延長され、その回動軸SH4を中心とする円弧状外周縁にスロットル側ギヤ24cが形成され、このスロットル側ギヤ24cがスロットルボディ21の外表面に取付けられた電動サーボモータ24dの外表面側に向けた回転軸に取付けたモータ側ギヤ24eが噛合されている。なお、24fは、アイドル回転速度を規定するための調整スクリューであって、その先端に回動レバー24aに形成したストッパ24gが当接することにより、回動レバー24aの図3で見て時計方向の回動を規制している。
【0043】
また、スロットル弁TV6の回動軸SH6には、非常用スロットル開閉機構34が配設されている。この非常用スロットル開閉機構34は、回動軸SH6の回動レバー24aの外側に一体に取付けられた回動レバー34aと、この回動レバー34aの自由端に連結ロッド34bを介して連結されたスロットルボディ21の外表面後端側に回動自在に配設された回動レバー34cと、この回動レバー34cの自由端側に接続された案内筒34d内をガイドされる連結ロッド34eと、この連結ロッド34eの先端に連結され且つボトムカウリングの前端に突出するガイドワイヤ34fとから構成されている。
【0044】
したがって、電動サーボモータ24dを図3の状態から反時計に回転駆動することにより、モータ側ギヤ24e、スロットル側ギヤ24cを介して回動レバー24aが回動軸SH4を中心として時計方向に回動すると共に、回動軸SH4も時計方向に回動してスロットル弁TV4のスロットル開度が全閉側のアイドル開度θIDL から全開方向に開き、逆にスロットル開度が開いている状態から電動サーボモータ24dを時計方向に回転駆動することにより、スロットル弁TV4のスロットル開度をアイドル開度θIDL 側に閉じることができる。このときの回動レバー24aの回動が連携ロッド24bを介して他のスロットル弁TV1〜TV3及びTV5,TV6の回動レバー24bに伝達され、これらスロットル弁TV1〜TV3及びTV5,TV6のスロットル開度がスロットル弁TV4のスロットル開度と同期して調整される。これら電動サーボモータ24d、モータ側ギヤ24e、スロットル側ギヤ24c、回動レバー24a、連携ロッド24b、回動軸SH1〜SH6及びスロットル弁TV1〜TV6で電子制御スロットル弁22が構成されている。
【0045】
同様に、非常用スロットル開閉機構34のガイドワイヤ34fを引っ張ることにより、スロットル弁TV1〜TV6を開方向に調整することができる。
また、以上の構成によれば、電子制御スロットル弁を非装着の既存スロットルボディアッセンブリーに対し、回動レバー24a,34a、サーボモータ24dの部品のみを取替え/追加するだけで電子制御スロットル弁構成に置換することが可能となり、電子制御スロットル弁化のコストを最小限に抑えることができる。
【0046】
さらに、スロットルボディ21における背面側即ちリード弁20側の合わせ面には、図5に示すように、前記吸気通路19の開口と隣接する位置において吸気通路19の並設方向と並行に延びる凹溝40aと、この凹溝40aと各吸気通路19とを連通する連通溝40bとが形成されている。すなわち、スロットルボディ21にリード弁20を配設したリード弁装置(図示せず)を取り付けることにより、凹溝40a及び連通溝40bの開口部分がリード弁装置によって閉塞され、これらの溝によって各吸気通路19のスロットル弁TV1〜TV6より下流側同士を連通するバランス通路40が形成される。そして、このバランス通路40に電磁ソレノイドで開閉駆動されたバイパス吸気弁41が配設されている。このバイパス吸気弁41を開状態とすることにより、外部の空気をバランス通路40に吸気することができる。
【0047】
電子制御装置(以下、ECUと称す)42には、エンジン2の運転状態や船外機1の状態を示す各種センサからの検出信号が入力される。例えば、クランク軸10の回転角(回転速度)を検出するエンジン回転速度センサ43、吸気通路19内の温度を検出する吸気温センサ44、スロットル弁22の実スロットル開度θrを検出するスロットル開度センサ45、最上段の気筒#1内の空燃比を検出する空燃比センサ46、高圧燃料配管49内の圧力を検出する燃圧センサ47、エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温センサ48、燃料フィルタ26で分離した水の量を検出する水検出センサ55、排気圧力を検出する背圧センサ38、オイルタンク51のオイル量を検出するオイルレベルセンサ56、シリンダボディ温度センサ57、エンジンの姿勢を検出するトリムセンサ28、パルサーセンサ110、ノックセンサ111、触媒通過後の空燃比センサ112および外気温度センサ等の検出信号が入力される。ECU42は、これら各センサの検出信号を制御マップに基づき演算処理し、制御信号をインジェクタ13、点火プラグ14、電子制御スロットル弁22、予圧燃料ポンプ30、プリミックス用オイルポンプ53、オイル汲上げポンプ58、オイルポンプ59(電磁式の場合)および排気バルブ駆動モータ62に伝送する。
【0048】
また、ECU42は、例えば有線又は無線のローカルエリアネットワーク(以下、LANと称す)120を介して船体の船首側に配設された前後進切換装置130が接続されている。この前後進切換装置130は、前後方向に揺動可能に枢支されたリモコンレバー131を有し、このリモコンレバー131は、ニュートラルN、バックトロール位置R、トロール位置F、及び加速領域Eを選択可能になっており、トロール位置Fに投入されたことを検出するトロールシフト検出スイッチ132、バックトロール位置Rに投入されたことを検出するバックトロールシフト検出スイッチ133を有すると共に、加速領域Eにおけるリモコンレバー131の回動角度を検出する例えばロータリポテンショメータ、光学式エンコーダ等で構成される加速位置センサ134を備えており、これら各センサ132〜134で検出したシフト位置信号及びリモコンレバー131の回動角がそれぞれシフト指令値及びスロットル開度指令値としてローカルエリアネットワーク120を介してECU42に送信される。
【0049】
ローカルエリアネットワーク120には、異常時にリモコンレバー131のシフト指令値及びスロットル開度指令値に相当するシフト指令値及びスロットル開度指令値を出力可能な補助入力部としての例えばポテンショメータで構成される補助入力ユニット140を接続可能な外部指令値入力部としての空きノード141が接続されている。
【0050】
クランク軸10の上端にはフライホイル(図示せず)が装着され、このフライホイルに隣接して、エンジン側方上部にスタータモータ(図示せず)が配設される。スタータモータの下部には電装ボックス(図示せず)が設けられる。
シリンダボディ7内にピストン11が摺動可能に装着され、このシリンダボディ7の頂部にシリンダヘッド8が連結される。シリンダヘッド8の内面側に形成された燃焼室(図示せず)に臨んで点火プラグ14とともにインジェクタ13が装着される。これにより、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射エンジンを構成している。
【0051】
また、船外機1には、図2に示すように、ロアケース5内に、プロペラ6の回転軸であるプロペラシャフト6aが水平方向に挿通されており、ロアケース5内に延ばされたドライブシャフト80の下端は、ベベルギヤで構成される駆動ギヤ85、前進ギヤ86F、後進ギヤ86Rとドッグクラッチ87によるシフト変換機構83を介してプロペラシャフト6aに連携されている。ドラブシャフト80と並行に上下方向に延びるシフトロッド84をECU42によって制御される電動モータを含む電動回動機構ESMで回動させることにより、シフト変換機構83を作動させることで、ニュートラルか、前進か、後進かの何れかに随時変換した状態で、ドライブシャフト80からプロペラシャフト6aに回転力が伝達される。
【0052】
すなわち、シフト変換機構83は、ドライブシャフト80の下端に固定した駆動ギヤ85に、プロペラシャフト6a上に回動自在に配置した前進ギヤ86Fと後進ギヤ86Rとをそれぞれ噛合させ、プロペラシャフト6aに対して摺動可能で回動不能に配設したドッグクラッチ87を、前進ギヤ86Fと後進ギヤ86Rとの間に配置して、シフトロッド84の回動(シフトロッド下端のカム面の回動)に連動させてドッグクラッチ87をプロペラシャフト6a上で摺動させるようにしたものである。
【0053】
このようなシフト変換機構83により、回動機構ESMでシフトロッド84をその軸周りに回動させることでドッグクラッチ87を移動させて、前進ギヤ86Fと後進ギヤ86Rの何れかに噛合させるか、あるいは、その中間部で何れとも噛合させないようにすることで、ドライブシャフト80の回転を前進ギヤ86Fか後進ギヤ86Rの何れかを介してプロペラシャフト6aに伝達させるか、或いは、ドライブシャフト80の回転をプロペラシャフト6aに伝達させないニュートラル状態となるようにしている。
【0054】
次に、上記第1の実施形態の動作をECU42で実行する図6に示すエンジン制御処理を伴って説明する。
このエンジン制御処理は、図6に示すように、先ず、ステップS1で、エンジン回転速度センサ43で検出したエンジン回転速度Neを読込み、次いでステップS2に移行して、リモコンレバー131の加速位置センサ134で検出したスロットル開度指令値θtを読込み、次いでステップS3に移行して、スロットル開度センサ45で検出した実スロットル開度θrを読込んでからステップS4に移行する。
【0055】
このステップS4では、エンジン回転速度Ne及び実スロットル開度θrに基づいてECU42に設けた記憶部に記憶された図7に示す燃料噴射量算出用マップを参照してインジェクタ13で供給する燃料噴射量FDを算出し、この燃料噴射量FDをECS42に設けた記憶装置の燃料噴射量記憶領域に更新記憶する。ここで、燃料噴射量算出用マップは図7に示すように、エンジン回転速度Ne、実スロットル開度θr及び燃料噴射量FD(A11〜Amn) との関係を表す3次元マップとして作成されており、エンジン回転速度Neと実スロットル開度θrとから燃料噴射量FDを算出することができる。
【0056】
次いで、ステップS5に移行して、エンジン回転速度Neと実スロットル開度θrとをもとに図8に示す基本点火時期算出用マップを参照して基本点火時期SAを算出し、この基本点火時期SAをECU42に設けた記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶する。ここで、基本点火時期算出用マップは、図8に示すように、スロットル開度θr1及びエンジン回転速度Ne1のとき、エンジン回転速度Neを最適に設定できる基本点火時期SA(θr1,Ne1)を算出する。この基本点火時期算出用マップは、任意のエンジン回転速度Neiにおける基本点火時期SA(Nei)と実スロットル開度θriとの関係と、任意の実スロットル開度θriにおける基本点火時期SA(θri)とエンジン回転速度Neiとの関係に基づいて定められる。
【0057】
次いで、ステップS6に移行して、記憶されているスロットル開度基準値θt0から現在のスロットル開度指令値θtkを減算した値の絶対値|θt0−θtk|を指令値変化量Δθtとして算出し、次いでステップS7に移行して算出した指令値変化量Δθtが予め設定された変化量閾値Δθts以上であるか否かを判定し、Δθt≧Δθsであるときにはスロットル開度指令値θtが変化したものと判断してステップS8に移行し、現在のスロット開度指令値θtkをスロットル開度基準値θt0として記憶してからステップS9に移行する。
【0058】
このステップS9では、記憶されている実スロットル開度基準値θr0から現在の実スロットル開度指令値θrkを減算した値の絶対値|θr0−θrk|が予め設定した変化量閾値Δθrs以上であるか否かを判定し、|θr0−θrk|≧Δθrsであるときには実スロットル開度θrの変化量が正常であると判断してステップS10に移行する。
【0059】
このステップS10では、現在のスロットル開度指令値θtkから現在の実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θtk−θrk|が予め設定した異常判断閾値θa以上であるか否かを判定し、|θtk−θrk|<θaであるときには電子制御スロットル弁22が正常に動作しているものと判断してステップS11に移行する。
【0060】
このステップS11では、現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として記憶してからステップS12に移行し、記憶装置の燃料噴射量記憶領域に記憶されている燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、点火時期記憶領域に記憶されている基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期を制御してから前記ステップS1に戻る。
【0061】
また、前記ステップS9の判定結果が|θr0−θrk|<Δθrsであるとき又はステップS11の判定結果が|θtk−θrk|≧θaであるときには、電子制御スロットル弁22が異常であると判断してステップS14に移行して、警報装置150を作動させて警報音又は警報光を出力して操縦者に電子制御スロットル弁22に異常が発生してリンプホームの必要性があることを報知してからステップS15に移行する。
【0062】
このステップS15では、現在のスロットル開度指令値θtkが最大スロットル開度指令値θtmaxであるか否かを判定し、θtk<θtmaxであるときに操縦者がリンプホームに必要なエンジン回転速度を得ていると認識しているものと判断して前記ステップS12に移行し、θtk=θtmaxであるときには操縦者がリンプホームに必要なエンジン回転速度が不足しているものと認識していると判断してステップS16に移行する。
【0063】
このステップS16では、現在の実スロットル開度θrkが予め設定されたリンプホームに必要とされる実スロットル開度θrp(例えば大型の2サイクルエンジンで20°程度)以上であるか否かを判定し、θrk≧θrpであるときには、リンプホームに必要とする吸入空気量を確保可能と判断して前記ステップS12に移行し、θrk<θrpであるときにはリンプホームに必要な吸入空気量が不足するものと判断してステップS17に移行する。
【0064】
このステップS17では、バイパス吸気弁41を開状態に制御してからステップS18に移行し、現在の実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとをもとに図9に示す燃料噴射量補正値算出マップを参照して燃料噴射量補正値αを算出する。この燃料噴射量補正値算出マップは、バイパス吸気弁41が開状態に制御されたことによる吸入空気量の増加量に見合う燃料噴射量に補正するための燃料噴射補正値α(α>1)を算出するように設定されている。
【0065】
次いで、ステップS19に移行して、現在の実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとをもとに図10に示す点火時期補正値算出用マップを参照して点火時期補正値βを算出する。この点火時期補正値算出用マップは、ノック余裕度の範囲内でバイパス吸気弁41が開状態に制御されたことによる吸入空気量の増加に見合う点火時期補正値β(β>1)を算出するように設定されている。
【0066】
次いで、ステップS20に移行して、記憶装置の燃料噴射量記憶領域に記憶されている燃料噴射量FDを読出し、この燃料噴射量FDに燃料噴射量補正値αを乗算して新たな燃料噴射量FDを算出し、これを燃料噴射量記憶領域に更新記憶してからステップS21に移行し、記憶装置の点火時期記憶領域に記憶されている点火時期SAを読出し、この点火時期SAに点火時期補正値βを乗算して新たな点火時期SAを算出し、これを点火時期記憶領域に更新記憶してから前記ステップS12に移行する。
【0067】
一方、前記ステップS7の判定結果がスロットル開度指令値θtの変化量Δθtが変化量閾値Δθts未満(Δθt<Δθts)であるときには、ステップS22に移行して、スロットル開度指令値切換フラグFCが“1”にセットされているか否かを判定し、これが“1”にセットされているときには補助入力ユニット140からのスロットル開度指令値θtを受信しているものと判断して前記ステップS11に移行し、スロットル開度指令値切換フラグFCが“0”にリセットされているときにはステップS23に移行する。
【0068】
このステップS23では、前後進切換装置130からLAN120を介してスロットル開度指令値θtが正常に受信されているか否かを判定する。この判定は、前後進切換装置130に割り当てられたIPアドレスを送信元とする送信フレームを所定時間内に受信しているか否かを判定することにより行い、該当する送信フレームを正常に受信しているときには前後切換装置130のデータ送信系に異常が発生していないものと判断して前記ステップS11に移行し、該当する送信フレームを受信していないときには前後切換装置130のデータ送信系に異常が発生しているものと判断してステップS24に移行する。
【0069】
このステップS24では、警報装置150を作動させて、前後進切換装置130に異常が発生したことを表す警報音及び又は警報光を発生して操縦者に前後進切換装置130の異常を報知してからステップS25に移行して、補助入力ユニット140を空きノード141に接続するガイダンス情報を液晶表示器151に表示し、次いでステップS26に移行して、補助入力ユニット140からのスロットル開度指令値θtを含む送信フレームを受信したか否かを判定し、送信フレームを受信していないときには前記ステップS12に戻り、送信フレームを受信したときにはステップS27に移行して、スロットル開度指令値読込処理を前後進切換装置130からのスロットル開度指令値の読込みに代えて補助入力ユニット140からのスロットル開度指令値を読込むように切換えると共に、スロットル開度指令値切換フラグFCを“1”にセットしてから前記ステップS12に戻る。
【0070】
この図6の処理において、ステップS1〜S3、S6〜S11の処理がスロットル開度異常検出手段に対応し、このうちステップS2の処理及び前後進切換装置130の加速位置センサ134がスロットル開度指令値検出手段に対応し、ステップS3の処理及びスロットル開度センサ45が実スロットル開度検出手段に対応し、ステップS7〜S11の処理が判断手段に対応している。また、ステップS14の処理が報知手段に対応し、ステップS15〜S17の処理が異常時吸入空気制御手段に対応し、ステップS18〜S21の処理が回転速度増加補正手段に対応し、ステップS23の処理が通信系統異常検出手段に対応し、ステップS24の処理が異常報知手段に対応している。
【0071】
したがって、今、前後進切換装置130及び電子制御スロットル弁22がともに正常である場合ものとし、前後進切換装置130でリモコンレバー131がニュートラル位置に保持されている状態では、トロールシフト検出スイッチ132及びバックトロールシフト検出スイッチ133がともにオフ状態となることからシフト変換機構83では、シフトロッド84によりドッグクラッチ86を移動させて、ドライブシャフト80の回転を前進ギヤ86Fか後進ギヤ86Rの何れにも噛合しないニュートラル位置に保持するとともに、スロットル開度指令値θtkが“0”となるので、このスロットル開度指令値θtkに応じた制御信号が電動サーボモータ24dに出力され、この電動サーボモータ24dが図3に示すようにスロットル弁TV1〜TV6を全閉状態とする回転角位置に制御される。これに応じて電動サーボモータ24dの回転角位置がモータ側ギヤ24e、スロットル側ギヤ24cを介して回動アームSH4が回動され、連携ロッド24bを介して残りの回動アームSH1〜SH3、SH5及びSH6も回動されることにより、全てのスロットル弁TV1〜TV6が全閉状態に制御される。
【0072】
この前後進切換装置130及び電子制御スロットル弁22がともに正常である場合には、前後進切換装置130から入力されるスロットル開度指令値θtとスロットル開度センサ45で検出した電子制御スロットル弁22の実スロットル開度θrとが略一致する。このため、図6に示すエンジン制御処理が実行開始された初期状態で、スロットル開度基準値θt0及び実スロットル開度基準値θr0が“0”に設定されると共に、スロットル開度指令値切換フラグFCが“0”にリセットされ、その後、エンジン回転速度Ne、スロットル開度指令値θtk、実スロットル開度θrkを読込み(ステップS1〜S3)、エンジン回転速度Neと実スロットル開度θrkとをもとに燃料噴射量算出用マップを参照して燃料噴射量FDを算出し(ステップS4)、さらにエンジン回転速度Neと実スロットル開度θrkとをもとに基本点火時期算出用マップを参照して基本点火時期SAを算出する(ステップS5)。
【0073】
そして、前後進切換装置130のリモコンレバー131がニュートラル位置に保持されているので、スロットル開度指令値θtが“0”を維持することから、設定されたスロットル開度基準値θt0から現在のスロットル開度指令値θtkを減算した値の絶対値でなる指令値変化量Δθtが略“0”となる(ステップS6)。このため、ステップS7からステップS22に移行し、スロットル開度指令値切換フラグFCが“0”にリセットされているのでステップS23に移行し、前後進切換装置130が正常であるので、所定時間内に前後進切換装置130のIPアドレスを送信元としスロットル開度指令値θtをデータ領域に含む送信フレームを受信していることから、ステップS10に移行する。
【0074】
このステップS10では、現在のスロットル開度指令値θtk及び実スロットル開度指令値θrkが共に略“0”であり、両者の偏差の絶対値が略“0”であるので、電子制御スロットル弁22が正常であると判断されて、ステップS11で現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として記憶してからステップS12に移行することにより、記憶装置に記憶されている燃焼噴射量FDでインジェクタ13が制御されると共に、基本点火時期SAで点火プラグ14が点火制御されることにより、エンジン2がアイドル回転速度で回転駆動される。
【0075】
この状態から出港するために、前後進切換装置130のリモコンレバー131をニュートラル位置Nからトロール位置Fを超えて加速領域Eに回動させると、トロール検出スイッチ132からオン状態のトロール検出信号が出力されると共に、加速位置センサ134から選択した加速領域Eに応じたスロットル開度指令値θtが出力され、これらが送信制御部に送られて、前後進切換装置130に割り当てられたIPアドレスを送信元アドレスとし、送信先アドレスをECU42に割り当てられたIPアドレスとし、データ領域にトロール検出信号及びスロットル開度指令値θtを格納した送信フレームが形成され、この送信フレームがLAN120を介してECU42に送信される。
【0076】
ECU42では、前後進切換装置130からの送信フレームを受信すると、この送信フレームからトロール検出信号及びスロットル開度指令値θtを読込み、これらをECU42内に設けられた記憶装置に格納すると共に、トロール検出信号に基づいてシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させることでドッグクラッチ86を移動させて前進ギヤ86Fに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を前進ギヤ86Fを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、前進可能な状態となる。これと同時に、ECU42で、スロットル開度指令値θtに応じて電動サーボモータ24dを回転制御することにより、電子制御スロットル弁22のスロットル開度をスロットル開度指令値θtに応じた開度に制御する。
【0077】
これと同時に図6のエンジン制御処理で、エンジン回転数Ne及び実スロットル開度θrに基づいて燃料噴射量FD及び基本点火時期SAが算出されると共に、現在のスロットル開度指令値θtkが“0”を表すスロットル開度基準値θt0より大きな値となり、ステップS6で算出される指令値変化量Δθtが変化量閾値Δθts以上となることからステップS8に移行して、現在のスロットル開度指令値θtkがスロットル開度基準値θt0に設定されてこれが記憶装置のスロットル開度基準値記憶領域に更新記憶される。そして、この状態では電子制御スロットル弁22が正常であって、実スロットル開度θrkがスロットル開度指令値θtkに応じた開度に制御されるので、これらに基づいてインジェクタ13及び点火プラグ14が制御されて、エンジン回転速度が増加され、リモコンレバー131で選択した加速領域Eの選択位置に応じた加速状態となる。
【0078】
ところで、航行状態で、電子制御スロットル弁22の電動サーボモータ24dに過熱によるトラブルが発生したり、電動サーボモータ24dからスロットル弁TV1〜TV6に至る駆動力伝達系に異物が詰まったり、スロットル弁TV1〜TV6の回動軸に異物が挟まることにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度の変化量がリモコンレバー131の加速領域Eで選択したスロットル開度指令値θtの変化量に対して小さい値となる固着現象が発生する異常状態が発生した場合には、この異常状態に応じたリンプホーム制御が行われる。
【0079】
すなわち、電子制御スロットル弁22の固着現象としては、図11で実線図示のスロットル開度指令値θtに対する実スロットル開度θrの特性が正常である場合に対して、図11で点線図示のように実スロットル開度θrの変化量がリンプホーム時に必要とする実スロットル開度閾値θrpより小さい低開度側でスロットル開度指令値θtの変化量に対して、“0”又は小さくなる低開度側固着現象と、図11で一点鎖線図示のように実スロットル開度θrの変化量が実スロットル開度閾値θrpより大きい高開度側でスロットル開度指令値θtの変化量に対して、“0”又は小さくなる高開度側固着現象との二通りに分けられる。
【0080】
そして、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象が発生した場合には、図6のエンジン制御処理が実行されたときに、ステップS1〜S5でエンジン回転速度Ne及び実スロットル開度θrに基づいて、燃料噴射量FDと基本点火時期SAとを算出する点については電子制御スロットル弁22が正常である場合と変わらないが、操縦者がリモコンレバー131を加速領域E内で変化させて、スロットル開度指令値θtの変化量Δθtが変化量閾値Δθts以上となったときに、現在のスロットル開度指令値θtkをスロットル開度指令基準値θt0として設定され、これが記憶装置のスロットル開度指令基準値記憶領域に更新記憶され(ステップS8)、次いで実ストローク開度基準値θr0から現在の実ストローク開度θrkを減算した値の絶対値を算出したときに、この絶対値が異常判断閾値Δθrsより小さい値となる。
【0081】
このため、図6の処理において、ステップS9からステップS14に移行して、警報装置150を作動状態として、電子制御スロットル弁22が異常であることを表す異常音及び/又は異常光を発して、操縦者に電子制御スロットル弁22の異常を報知する。
次いで、ステップS15に移行して、スロットル開度指令値θtkがリモコンレバー131の加速領域Eの最大値を選択したときのスロットル開度最大指令値θtmaxに達しているか否かを判定し、θtk<θtmaxであるときには、操縦者がリンプホーム時に必要なエンジン回転速度で航行しており、これ以上のエンジン回転速度の増加を要求していないものと判断してステップS12に移行して、正常時と同様にステップS4で算出した燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、ステップS5で算出した基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行う。
【0082】
また、操縦者がより速いエンジン回転速度を要求するために、リモコンレバー131で加速領域Eの最大加速位置を選択することにより、スロットル開度指令値θtkがスロットル開度指令最大値θtmaxに一致したときには、図6の処理においてステップS15からステップS16に移行するが、電子制御スロットル弁22が高開度側異常であって、実スロットル開度が図11で一点鎖線図示のようにリンプホーム時に必要とする実スロットル開度閾値θrpより大きいので、現在の実スロットル開度θrkでリンプホーム可能と判断してステップS12に移行し、正常時と同様の燃料噴射量制御及び点火時期制御を行う。
【0083】
これに対して、電子制御スロットル弁22に低開度側固着現象が発生した場合には、上記高開度側固着現象発生時と同様に図6の処理でステップS9からステップS14に移行して警報装置150で電子制御スロットル弁22の異常を報知するが、この低開度側固着現象発生時には、実スロットル開度θrが低開度となり、操縦者がより速いエンジン回転速度を要求するために、リモコンレバー131で加速領域Eの最大加速位置を選択し、これに応じてスロットル開度指令値θtがスロットル開度最大指令値θtmaxとなり、これがLAN120を介してECU42に送信される。
【0084】
このため、ECU42では、図6の処理で、ステップS15からステップS16に移行するが、このときの実スロットル開度θrkが実スロットル開度閾値θrp以上である場合には、リンプホーム時に必要とする最低限の必要吸入空気量を確保することができるものと判断してステップS12に移行し、電子制御スロットル弁22の正常時と同様にステップS4で算出した燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、ステップS5で算出した基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火制御を行う。
【0085】
しかしながら、操縦者がリモコンレバー131で加速領域Eの最大加速位置を選択してスロットル開度指令値θtをスロットル開度最大指令値θtmaxとしたときに、実スロットル開度θrkがリンプホーム時に必要とする実スロットル開度閾値θrp未満であるときには、リンスホーム時に必要とするエンジン回転速度を得るための吸入空気量が不足するものと判断してステップS17に移行する。
このため、バイパス吸気弁41が開状態に制御されて、このバイパス吸気弁41及びバランス通路40を介して各スロットル弁TV1〜TV6の下流側すなわちインジェクタ13側に所定流量の空気が流入され、これによってエンジン2の吸入空気量が増加される。
【0086】
これと同時に、ステップS18で実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとに基づいて図9の燃料噴射量補正用マップを参照してバイパス吸気弁41を開制御したことによる吸入空気量の増加分に見合う燃料噴射量補正値αを算出すると共に、ステップS19で実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとに基づいて図10に示す点火時期補正用マップを参照してノック余裕度を考慮した点が時期補正値βを算出し、ステップS20で燃料噴射量記憶領域に記憶されている燃料噴射量FDに燃料噴射量補正値αを乗算して新たな燃料噴射量FDを算出し、これを燃料噴射量記憶領域に更新記憶すると共に、ステップS21で点火時期記憶領域に記憶されている基本点火時期SAに点火時期補正値βを乗算して新たな点火時期SAを算出し、これを点火時期記憶領域に更新記憶してからステップS12に移行する。
【0087】
このため、補正された燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13が制御されると共に、補正された点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御が行われることにより、リンプホーム時に必要とする最低限のエンジン回転速度を確保することができる。
なお、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象又は低開度側固着現象が発生したときに、操縦者がこれに気付かず、リモコンレバー131での選択位置を変更しないか又はリモコンレバー131の回動量が少なく指令値変化量Δθtが変化量閾値Δθs未満である場合には、図6の処理で、ステップS7からステップS22に移行する。
【0088】
このとき、スロットル開度切換フラグFCが“0”にリセットされているので、ステップS23に移行し、前後進切換装置130が正常であって、この前後進切換装置130からの送信フレームを所定時間内に受信しているので、ステップS11に移行し、スロットル開度指令値θtkから実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θtk−θrk|が異常判断閾値θa以上である場合にはステップS14に移行して、警報装置150が作動状態となって電子制御スロットル弁22の異常を操縦者に報知してから、高開度側固着現象又は低開度側固着現象に応じて処理を行う。
【0089】
一方、前後進切換装置130に電源系統又は通信系統の異常や加速位置センサ134の異常が発生するか、LAN120のケーブルや無線通信に異常が発生して、通信系統の異常が発生することにより、前後進切換装置130から送信される送信フレームがECU42で受信できない状態となると、記憶装置のスロットル開度記憶領域に記憶されているスロットル開度指令値θtが更新されないことにより、ステップS6で算出される指令値変化量Δθtが“0”の状態を維持する。このため、ステップS7からステップS22に移行し、スロットル開度切換フラグFCが“0”にリセットされているので、ステップS23に移行し、前後進切換装置130からの送信フレームが所定時間以上受信されない状態となるので、ステップS24に移行して、警報装置150が作動されて、前後進切換装置130又はその通信系統が異常であることを表すブザー等の警報音、合成音声による警告ガイダンス、警報光の何れか1つ又はこれらの組み合わせによる警報が発せられ、次いで、ステップS25に移行して、補助入力ユニット140を空のノード141に接続することを促すガイダンス情報が液晶表示器151に表示されて、操縦者に前後進切換装置130が機能していないことを報知する。
【0090】
この報知によって操縦者が補助入力ユニット140を空のノード141に接続すると、LAN120を構築しているマスターがIPアドレスを割付けると共に、LAN120に参加している他のノードに接続された機器に補助入力ユニット140に割付けたIPアドレスを通知し且つこれら機器のIPアドレスを補助入力ユニット140に通知することにより、補助入力ユニット140がLAN120に参加し、スロットル開度指令値θtをデータ領域に格納した送信フレームの送信が可能となる。
【0091】
この補助入力ユニット140からの送信フレームをECU42で受信すると、ステップS26からステップS27に移行してスロットル開度指令値切換フラグFCが“1”にセットされる。このため、次に図6のステップS7からステップS22に移行したときにスロットル開度指令値切換フラグFCが“1”にセットされていることにより、ステップS10に移行して、スロットル開度指令値θtkから実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θtk−θrk|が異常判断閾値θa以上であるか否かを判定し、|θtk−θrk|<θaであるときには正常状態であると判断してステップS11で現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として記憶してからステップS12に移行して、燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火制御を行い、|θtk−θrk|≧θaであるときには補助入力ユニット140又はその通信系統が異常であると判断してステップS14に移行する。
【0092】
さらに、操縦者が電子制御スロットル弁22で低開度側固着現象又は高開度側固着現象が発生したときに、操縦者の望むスロットル開度に手動制御したい場合には、非常用スロットル開閉機構34のガイドワイヤ34fを引っ張ることにより、回動レバー34c、連結ロッド34b及び回動レバー34aを介してスロットル弁TV6を回動させることができ、このスロットル弁TVの回動レバー24a及び連携ロッド24bを介して残りの各スロットル弁TV1〜TV5を開方向に調整することができ、操縦者の望むスロットル開度θrに手動調整制御することができる。
【0093】
なお、上記第1の実施形態においては、電子制御スロットル弁22の異常時にバイパス吸気弁41とバランス通路40を利用した吸入空気量の増加補正制御と、前後進切換装置130の異常又は通信系統の異常による前後進切換機能の喪失時の補助入力ユニット140による代替え処理と、非常用スロットル開閉機構34を使用したスロットル開度手動制御とを可能に構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これらの各機能を個別に設けるようにしてもよい。
【0094】
また、上記第1の実施形態においては、ECU42と前後進切換装置130とをLAN120で接続する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ECU42と前後進切換装置130とをハーネス等で直接電気的に接続する場合にも本発明を適用することができる。
さらに、上記第1の実施形態においては、スロットル開度及びシフト切換えをLAN120を通じて行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、シフト切換えについてはリモコンレバー131とシフト変換機構83との間をワイヤーケーブルで接続して機械的にシフト切換えを行うようにしてもよい。
【0095】
さらにまた、上記第1の実施形態においては、非常用スロットル開閉機構34のガイドワイヤ34fでスロットル開度を機械的に調整するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤに34fに代えて図12に示す回動レバー34cの回動角を任意に手動調整可能な手動調整機構90を設けるようにしてもよい。この手動調整機構90は、図12に示すように、ケース体91に設けた挿通孔92内にその内径と略等しい呼び径のねじ部93を挿通し、この挿通孔92の一部にねじ部93と同一ピッチで螺合する回転ねじ部94を回転自在に配設し、この回転ねじ部94の回動軸95のケース体91外に突出した端部に操作ハンドル96を取付け、ねじ部93にガイドカバー97で案内されるケーブル98を連結し、このケーブル98の他端が回動レバー34cに回動可能に連結にされた構成を有する。したがって、操作ハンドル96を正逆転させることにより、ねじ部93が前後進し、ケーブル98を介して回動レバー34cの回動位置を任意に調整して、スロットル弁TV1〜TV6のスロットル開度を任意に調整することができる。
【0096】
なおさらに、上記第1の実施形態においては、バランス通路40とバイパス吸気弁41を設けて電子制御スロットル弁22の下流側吸気通路に吸気を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図13に示すように、電子制御スロットル弁22と並列にパイパス通路77を設け、このパイパス通路77に電磁開閉弁78を配設して、電子制御スロットル弁22の異常時に電磁開閉弁78の開度をECU42で制御して吸入空気量を確保するようにしてもよい。
【0097】
また、図14に示すように、パイバス通路77に電磁開閉弁78に代えて、スロットル弁TV1〜TV6と同一の構成を有する非常用スロットル弁TV1′〜TV6′を設け、これら非常用スロットル弁TV1′〜TV6′をスロットル弁TV1〜TV6と同様に回動レバー24a、連携ロッド24bによって連携し、この非常用スロットル弁TV1′〜TV6′の何れか1つを第1の実施形態と同様に電動サーボモータ24dに対応する電動サーボモータ79で回動駆動し、この電動サーボモータ79をECU42で電子スロットル弁22が正常時には閉に、電子スロットル弁22が異常であるときには、スロットル開度指令値θtkに基づいて制御することにより、リンプホームに必要な空気量を確保することができる。この場合、電動サーボモータ79に代えて図12に示す手動調整機構90を適用して電子スロットル弁22が異常であるときに手動調整するようにしてもよく、さらにはリモコンレバー131とワイヤー等で機械的に連携することにより、電子スロット弁22が異常であるときに、リモコンレバー131の操作で運転者の意志に従った空気量を確保することができる。
【0098】
次に、本発明の第2の実施形態を図15及び図16について説明する。
この第2の実施形態では、電子制御スロットル弁22の電動サーボモータに断線等の通電異常が発生して、電動サーボモータによるスロットル開度の調整が不能となったときにリンプホーム機能を発揮させるようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、電子制御スロットル弁22が、図15に示すように、共通の回動軸SHに所定間隔を保ってスロットル弁TV1〜TV6を構成する6個の弁体VBを配設し、この回動軸SHの一端側に歯車機構201を介して正逆転駆動される電動サーボモータ202が連結され、他端に弁体VBの機械的中立位置を設定する機械的中立位置設定機構203が配設された構成を有する。
【0099】
機械的中立位置設定機構は203は、図16に示すように、一端が固定部に固定された回動軸SHを、スロットル弁TV1〜TV6を閉方向に付勢する圧縮バネ204と、この圧縮バネ204の他端に係合された回動軸SHの接線方向に摺動自在に案内された摺動体205と、この摺動体205に当接可能な回動軸SHの外周面に半径方向に突出形成された係合片206と、この係合片206をスロットル弁TV1〜TV6を開方向に付勢する圧縮バネ204より小さいバネ定数に設定された圧縮バネ207と、摺動体205の時計方向の回動を規制する中立位置設定部208とで構成されている。ここで、中立位置設定部208は、摺動体205の摺動方向と平行に配設され一端に操作ハンドル209が配設されたねじ軸210と、このねじ軸210に螺合するナット211と、このナット211に取付けられて摺動体205に反時計方向から係合する係合片212と、係合片212の回動を規制するねじ軸210と平行に配設されたガイドバー213とで構成されている。
【0100】
そして、機械的中立位置設定機構203によって電動サーボモータ202を非通電状態としたときの初期スロットル開度θrdが前述した第1の実施形態におけるリンプホーム時に必要とする最小限の吸入空気量を確保可能な実スロットル開度閾値θrpとなるように設定されている。
【0101】
この第2の実施形態によると、電動サーボモータ202が非通電状態であるときに、摺動体205が圧縮バネ204によって図16で見て右方に付勢されてその右端が中立位置設定部208の係合片212に当接されることにより、右方向への摺動が規制され、一方回動軸SHに形成された係合片206は圧縮バネ207によって反時計方向に付勢されて摺動体205に右方向から当接される。このとき圧縮バネ204のバネ定数が圧縮バネ207のバネ定数より大きく設定されているので、摺動体205は係合片212に当接した状態を維持し、回動軸SHが中立回動位置に保持される。この回動軸SHの中立回動位置では、各スロットルバルブTV1〜TV6の実スロットル開度θrがリンプホーム時に必要とする最低限の吸入空気量を確保可能な実スロットル開度閾値θrpに設定され、この状態で、電動サーボモータ202を例えば正転駆動することにより、各スロットル弁TV1〜TV6を圧縮バネ207に抗して全閉位置まで回動させることが可能となり、電動サーボモータ202を逆転駆動することにより、各スロットル弁TV1〜TV6を圧縮バネ204に抗して全開位置まで回動させることが可能となる。
【0102】
したがって、第1の実施形態と同様にリモコンレバー131がニュートラル位置Nにある状態ではスロットル開度指令値θtが“0”となることにより、電動サーボモータ202を正転駆動して回動軸SHを圧縮バネ207に抗して図16で見て時計方向に回動させて、各スロットル弁TV1〜TV6を全閉状態に保持して実スロットル開度θrを“0”とし、この状態から第1の実施形態と同様にリモコンレバー131で加速領域Eを最大加速位置側に回動させて、スロットル開度指令値θtが増加すると、これに応じて電動サーボモータ202を逆転駆動することにより、スロットル弁TV1〜TV6のスロットル開度を徐々に増加させることができる。
【0103】
その後、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpまで復帰すると係合片206が摺動体205に当接する状態となり、さらに回動軸SHを反時計方向に回動させると、摺動体205が係合片212から離間して圧縮バネ204に抗して左方に移動し、回動軸SHの反時計方向への回動を許容する。
【0104】
このように、電動サーボモータ202を正逆転駆動することにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrをリモコンレバー131によって選択されたスロットル開度指令値θtに一致するように制御することができるものであるが、電動サーボモータ202にハーネス断線やコイルの断線等が生じて出力トルクを発生できない通電異常状態となると、回動軸SHを回動させる入力トルクがなくなることにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpより全開側で制御されていた場合には、電動サーボモータ202の出力トルクが低下することにより、圧縮バネ204によって摺動体205を介して係合片206が図16で見て時計方向に戻され、摺動体205が中立位置設定部208の係合片212に当接する機械的中立位置で停止される。このときの各スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpに設定されていることから、リンプホームに必要とする最小限の吸入空気量を確保することができ、リンプホームに必要なエンジン回転速度を得ることができる。
【0105】
また、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpより全閉側に制御されている状態で電動サーボモータ202に通電異常が発生した場合には、電動サーボモータ202の出力トルクが低下するに従って圧縮バネ207によって係合片206が図16で見て反時計方向に戻されることにより、回動軸SHが反時計方向に回動されてスロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが徐々に増加し、係合片206が摺動体205に当接する機械的中立位置で回動軸SHの反時計方向の回動が停止され、実スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpにとなり、リンプホームに必要とする最小限の吸入空気量を確保することができ、リンプホームに必要なエンジン回転速度を得ることができる。
【0106】
このようにして、電動サーボモータ202に通電異常が発生した場合でも、リンプホームに必要なエンジン回転速度を確保することができるので、この状態を維持して帰港することができ、船体を接岸する際には、シフト変換機構83を動作可能なエンジン回転速度例えば1500min−1まで低下させる必要がある。
【0107】
このため、接岸時には、中立位置設定部208のねじ軸210に設けた操作ハンドル209を例えば反時計方向に回動させることにより、ナット211を図16で見て右方向に移動させて係合片212を右方に移動させる。このように係合片212が右方に移動すると、摺動体205が圧縮バネ204の弾発力によって圧縮バネ206に抗して右動し、これに応じて係合片206が押圧されて回動軸SHが時計方向に回動し、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが全閉方向に減少される。このようにして、吸入空気量を減少させてエンジン回転速度Neをシフト変換機構83が作動可能な速度まで低下させてからシフトリモコンレバー131でバックトロールRを選択することにより、ECU42でシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させてドッグクラッチ86を移動させ、後進ギヤ86Rに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を後進ギヤ86Rを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、後進可能な状態となって接岸が可能となる。
【0108】
また、リンプホーム中であっても、中立位置設定部208の操作ハンドル209を回転させることにより、機械的中立位置を任意に調整することが可能であるので、エンジン回転速度を高めたい場合には、操作ハンドル209を時計方向に回転させることにより、ナット211が図16で見て左方向に移動し、これに応じて係合片212によって、摺動体205が圧縮バネ204に抗して左動させることができ、これによって係合片206が圧縮バネ207によって反時計方向に回動されてスロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrを全開方向に増加させて吸入空気量を増加させることにより、エンジン回転速度を増加させることができる。また、操作ハンドル209を反時計方向に回転させることにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrを全閉方向に減少させて吸入空気量を減少させてエンジン回転速度を減少させることができる。
【0109】
なお、上記第2の実施形態においては、中立位置設定部208のねじ軸210を操作ハンドル209で手動で回転させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図17に示すように、ねじ軸210に電動モータ220を連結すると共に、ECU42に電動モータ220を正逆転駆動制御するための駆動ユニット221を接続し、この駆動ユニット221で電動モータ220を正逆転駆動する駆動信号をECU42に入力し、ECU42で入力された駆動信号に基づいて電動モータ220を駆動制御する構成として、中立位置設定部208を電動制御するようにしてもよい。
【0110】
また、機械的中立位置設定機構203は図16の構成とする場合に限らず、圧縮バネ207を回動軸SHの他端側に配設したり、圧縮バネ204及び207に代えて回動軸SH周りに配設したコイルスプリングに、移動体205を回動軸SHの回動中心を中心とする回動リングにそれぞれ変更したり、中立位置設定部208として他の任意の直線駆動機構を適用したりすることができる。
【0111】
さらに、回動軸SHに6つの弁体VBを取付けるようにした場合について説明したが、1つの弁体VBのみを取付けて、個別にスロットル弁TV1〜TV6を構成し、各スロットル弁TV1〜TV6に個別に機械的中立位置設定機構203を設けるようにしてもよい。
さらには、図18に示すように第1の実施形態の電子制御スロットル弁22の連携ロッド24bに係合片206を形成して機械的中立位置設定機構203を適用するようにしてもよい。なお、連携ロッド24bに代えて回動レバー24aに機械的中立位置設定機構203を適用するようにしてもよい。
【0112】
次に、本発明の第3の実施形態を図19〜図22について説明する。
この第3の実施形態は、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象が発生したことを検出したときに、リンプホーム後の接岸を容易に行うことができるようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、エンジンとして、図19に示すように、ダブルオーバヘッドカム式の4サイクルのエンジン300が適用されている。このエンジン300は、ピストン301によって画成される燃焼室302にそれぞれカムシャフト303及び304によって開閉駆動される吸気バルブ305及び排気バルブ306が配設され、ピストンロッド307がクランクシャフト308に連結されている。
【0113】
カムシャフト303は、ポンプ311によって圧送される油タンク310内の作動油が油圧制御バルブ312で後述する電子制御ユニット(以下、ECUと称す)から入力される制御電流Ivに基づいて油圧制御されて供給される油圧式可変バルブタイミング制御機構313によって位相制御される。この油圧式可変バルブタイミング制御機構313は、入力される油圧に応じて、カムシャフト303をクランクシャフト308との目標とする位相差である目標相対回転角に制御する。
【0114】
クランクシャフト308にはその回転角θ1を検出するクランク角センサ315が設けられていると共に、カムシャフト303にはその回転角θ2を検出するカム角センサ316が設けられ、さらに吸気通路314に配設された電子制御スロットル弁22の上流側にエンジン300への吸入空気量を検出するエアフローメータ等の吸気量センサ317が配設され、さらに電子制御スロットル弁22にその実スロットル開度θrを検出するスロットル開度センサ318が配設されている。
【0115】
そして、各センサ315〜318がECU320に接続されると共に、第1実施形態で前述したリモコンレバー131を有する前後進切換装置130がLAN120を介して接続され、このECU320で油圧制御バルブ312及び電子制御スロットル弁22を制御する。
ECU320は、図20に示すバルブタイミング制御処理を実行する。このバルブタイミング制御処理は、先ず、ステップS40で、クランク角センサ315で検出した回転角θ1に基づいてエンジン回転速度Neを算出すると共に、吸気量センサ317で検出した吸入空気量Qaを読込み、次いで、ステップS41に移行して、後述する電子制御スロットル弁異常検出処理で電子制御スロットル弁22が正常であるか異常であるかを表すスロットル弁状態フラグFSが異常を表す“1”にセットされているか否かを判定し、これが“0”にリセットされているときには電子制御スロットル弁22が正常であるものと判断してステップS42に移行する。
【0116】
このステップS42では、通常目標相対角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnを算出し、次いでステップS43に移行して、算出した通常目標相対回転角VTnを目標相対回転角VTtとして設定し、これをECU320内に設けた記憶装置の目標相対回転角記憶領域に更新記憶してからステップS47に移行する。
【0117】
一方、ステップS41の判定結果がスロットル弁状態フラグFSが“1”にセットされているときには、電子制御スロットル弁22が異常であると判断してステップS44に移行する。このステップS44では、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択された否かを判定し、バックトロール位置Rが選択されていないときには前記ステップS42に移行し、バックトロール位置Rが選択されているときにはステップS45に移行する。
【0118】
このステップS45では、異常用目標相対回転角算出用マップを参照して正常用目標相対回転角VTnに比較してエンジン300のエンジン回転速度をシフト変換機構83でのシフト動作が可能な程度の回転速度例えば1500min−1程度に減少させるように設定された異常用目標相対回転角VTaを算出し、次いで、ステップS46に移行して、算出した異常用目標相対回転角VTaを目標相対回転角TVtとして設定し、これを記憶装置の目標相対回転角記憶領域に更新記憶してからステップS47に移行する。
【0119】
ステップS47では、クランク角センサ315で検出される現在の回転角θ1とカム角センサ316で検出される現在の回転角θ2とに基づいて実相対回転角VTrを算出し、次いでステップS48に移行して、記憶装置の目標相対回転角記憶領域に記憶されている目標相対回転角VTtから現在の実相対回転角VTrを減算して相対回転角偏差ΔVTを算出してからステップS49に移行する。
【0120】
このステップS49では、算出された相対回転角偏差ΔVTをもとに図20中に示す油圧制御バルブ312に対する制御電流Ivを算出し、次いでステップS50に移行して、算出した制御電流Ivを油圧制御バルブ312に出力してから前記ステップS40に戻る。
この図20の処理において、ステップS44の処理が接岸検出手段に対応し、ステップS45,S46の処理が回転速度減少補正手段に対応している。
【0121】
また、ECU320は、図21に示す電子制御スロットル弁異常検出処理を実行する。この電子制御スロットル弁異常検出処理は、図21に示すように、先ず、ステップS61で、スロットル開度指令基準値θt0から現在のスロットル開度指令値θtkを減算した値の絶対値|θt0−θtk|を算出することにより、指令値変化量Δθtを算出する。次いで、ステップS62に移行して、算出した指令値変化量Δθtが予め設定した変化量閾値Δθts以上であるか否かを判定し、Δθt≧Δθtsであるときにはスロットル開度指令値θtが所定量変化したものと判断してステップS63に移行して、現在のスロットル開度指令値θtkをスロットル開度指令基準値θt0として設定し、これを記憶装置のスロットル開度指令基準値記憶領域に更新記憶してからステップS64に移行する。
【0122】
このステップS64では、実スロットル開度基準値θr0からスロットル開度センサ318で検出した現在の実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θr0−θrk|が変化量閾値Δθrs以上であるか否かを判定し、|θr0−θrk|≧Δθrsであるときには、電子制御スロットル弁22の実スロットル開度変化が一応正常であると判断してステップS65に移行し、現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として設定し、これを記憶装置の実スロットル開度基準値記憶領域に更新記憶してからステップS66に移行する。
【0123】
このステップS66では、現在のスロットル開度指令値θtkから現在の実スロットル開度θrkを減算した値|θtk−θrk|が異常判断閾値θa以上であるか否かを判定し、|θtk−θrk|<θaであるときには電子制御スロットル弁22が正常であると判断してステップS67に移行して、スロットル弁状態フラグFSを“0”にリセットしてからステップS61に戻る。
【0124】
一方、ステップS62の判定結果がΔθt<Δθtsであるときにはスロットル開度指令値θtの変化量が小さいものと判断して直接ステップS66に移行する。
さらに、前記ステップS64の判定結果が|θr0−θrk|<Δθrsであるときにはスロットル開度指令値θtの変化量に比較して実スロットル開度θrの変化量が少なく電子制御スロットル弁に固着異常が発生したものと判断してステップS68に移行して、現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として設定し、これを記憶装置の実スロットル開度基準値記憶領域に更新記憶してからステップS69に移行する。
【0125】
このステップS69では、警報装置350を作動状態として、電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したことを操縦者に報知してからステップS70に移行して、現在の実スロットル開度θrkがリンプホーム時に必要とする最小限の吸気空気量を得るための実スロットル開度閾値θrp以上であるか否かを判定し、θrk≧θrpであるときには高開度側固着異常であると判断してステップS71に移行し、スロットル弁状態フラグFSを高開度側固着異常を表す“1”にセットしてから前記ステップS61に戻り、θrk<θrpであるときには低開度側固着異常であると判断してそのまま前記ステップS61に戻る。
また、ステップS66の判定結果が|θtk−θrk|≧θaであるときにも、電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したものと判断して前記ステップS69に移行する。
【0126】
この図21の処理がスロットル開度異常検出手段に対応している。
この第3の実施形態によると、図21のスロットル弁異常検出処理で、電子制御スロットル弁22が正常であると判断された場合に、スロットル弁状態フラグFSが“0”にリセットされるので、図20の処理が実行されたときにステップS41からステップS42に移行して、通常目標回転角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnを算出し、算出した通常目標相対回転角VTnと現在の実相対回転角VTrとの相対回転角偏差ΔVTを算出し(ステップS48)、この相対角偏差ΔVTをもとに制御電流算出用マップを参照して油圧制御バルブ312の油圧を制御する制御電流Ivを算出し、算出した制御電流Ivを油圧制御バルブ312に出力することにより、通常のバルブタイミング制御を行い、通常のエンジン出力トルクを得ることができる。
【0127】
一方、電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したときには、前述した第1の実施形態と同様にスロットル開度指令値θtの変化量と実スロットル開度θrの変化量とを比較することにより、固着異常が検出され、この固着異常が検出されると警報装置350が作動されて操縦者に電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したことを報知すると共に、そのときの実スロットル開度θrkが実スロットル開度閾値θrpを超えているときに高開度側固着現象が発生したものと判断してスロットル弁状態フラグFSを“1”にセットする。
【0128】
このため、図20のバルブタイミング制御処理が実行されたときに、ステップS41からステップS44に移行し、リモコンレバー130で加速領域Eが選択されている状態では、リンプホーム中であると共に、高開度側固着異常によってリンプホームに必要とする吸入空気量を確保して、十分なエンジン回転速度を得ているものと判断してステップS42に移行して通常目標相対回転角VTnを算出し、この通常目標相対回転角VTnに実相対角VTrが一致するように油圧制御バルブ312を制御する状態を継続する。
【0129】
その後、帰港して、船体を接岸する際に、リモコンレバー131でバックトロール位置Rを選択すると、図20の処理でステップS44からステップS45に移行して異常用目標相対回転角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnに比較してエンジン回転速度をシフト変換機構83でのシフト変換が容易となる1500min−1程度に低下させる異常用目標相対回転角VTaを算出し、この異常用目標相対回転角VTaに実相対回転角VTrが一致するように油圧制御バルブ312が制御される。これによって燃焼室302に供給される吸入空気量が減少されてエンジン回転速度がシフト変換機構83でのシフト動作が可能な回転速度まで低下される。
【0130】
その後、ECU320でシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させてドッグクラッチ86を移動させ、後進ギヤ86Rに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を後進ギヤ86Rを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、後進可能な状態となって接岸が可能となる。
【0131】
また、上記説明では、電子制御スロットルバルブに高開度側固着異常が発生した場合について説明したが、前述した第2の実施形態のように、電子制御スロットル弁22の電動モータ202に断線、短絡異常等が発生することにより出力トルクが低下して、機械的中立位置設定機構203によって、リンプホーム時に必要とする最小限の吸入空気量を確保可能な実スロットル開度閾値θrpとなるように制御される場合でも、図21の電子制御スロットル弁異常検出処理で、スロットル弁状態フラグFSが“1”にセットされるので、帰港して、船体を接岸する際に、リモコンレバー131でバックトロール位置Rを選択すると、図20のバルブタイミング制御処理で、ステップS44からステップS45に移行して異常用目標相対回転角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnに比較してエンジン回転速度をシフト変換機構83でのシフト変換が容易となる1500min−1程度に低下させる異常用目標相対回転角VTaを算出し、この異常用目標相対回転角VTaに実相対回転角VTrが一致するように油圧制御バルブ312が制御することが可能となり、容易に接岸させることができる。
【0132】
この第3の実施形態においては、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象等の異常が発生した場合にバルブタイミング制御によってシフト変換機構83でのシフトが可能な状態にエンジン回転速度を制御する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ECU320で、図22に示す点火時期制御処理を実行するようにしてもよい。この点火時期制御処理は、先ず、ステップS81で、エンジン回転速度Ne及び実スロットル開度θrをもとに図8に示す点火時期算出用マップを参照して基本点火時期SAを算出すると共に、算出した基本点火時期SAをECU320内に設けた記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶し、次いでステップS82に移行して、前述したスロットル弁状態フラグFSが高開度側固着異常を表す“1”にセットされているか否かを判定し、これが“1”にセットされているときには、ステップS83に移行して、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択されているか否かを判定し、バックトロール位置Rが選択されているときにはステップS84に移行して、点火時期補正値算出用マップを参照して点火時期を遅角側とする点火時期補正値γ(γ<1)を算出し、次いでステップS85に移行して、ステップS81で算出した点火時期SAを読出し、この点火時期SAに点火時期補正値γを乗算して新たな点火時期SAを算出し、算出した点火時期SAを記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶してからステップS86に移行する。
【0133】
このステップS86では、記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶されている点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行ってからステップS81に戻る。
一方、ステップS82の判定結果が、スロットル弁状態フラグFSが“0”にリセットされているとき即ち電子制御スロットル弁22が正常であるとき及びステップS83の判定結果がバックトロール位置Rではないときには直接ステップS86にジャンプする。
この図22の処理において、ステップS83の処理が接岸検出手段に対応し、ステップS84及びS85の処理が回転速度減少補正手段に対応している。
【0134】
この点火時期制御処理でも、電子制御スロットル弁22が正常である場合には、ステップS82からステップS86に移行して、実スロットル開度θrとエンジン回転速度Neとに基づいて算出される基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行う。一方、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象が発生すると、ステップS82からステップS83に移行して、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択されているか否かを判定し、バックトロール位置Rが選択されていないときにはリンプホーム中であると判断して、ステップS86に移行して、実スロットル開度θrとエンジン回転速度Neとに基づいて算出される点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行う。しかしながら、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択されているときには接岸時であると判断して、シフト変換機構83でシフト切換えが可能となるエンジン回転速度となるように点火時期を補正する点火時期補正値γを算出し、次いでステップS85に移行して、基本点火時期SAに点火時期補正値γを乗算して新たな点火時期SAを算出し、これを点火時期記憶領域に更新記憶することにより、ステップS86で遅角された点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期が制御されることにより、エンジン回転数がシフト変換機構83でのシフト動作が可能な程度に低下され、その後、ECU320によってシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させてドッグクラッチ86を移動させ、後進ギヤ86Rに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を、後進ギヤ86Rを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、後進可能な状態となって接岸が可能となる。
【0135】
また、図22の点火時期制御処理に代えて、リモコンレバー131でバックトロール位置Rを選択したときに、実スロットル開度θrに基づいてエンジン320の燃料カット気筒数を設定し、設定した燃料カット気筒数に基づいて休筒制御を行うことにより、エンジン回転速度を低下させるようにしてもよい。
【0136】
さらに、図23に示すように、前後進切換装置130をシフト切換えについては機械的ケーブル400を介して船外機1のシフトロッドに連携する構成とし、この機械的ケーブル400の途中で分岐して、回動軸SH6に連結された回動レバー401の近傍まで延長すると共に、回動レバー401にもケーブル402を取付け、電子制御スロットル弁22の異常を検出したときに例えばECU42からの駆動信号によって両ケーブル400及び401を挟持結合する電動挟持機構403を設けることにより、接岸時にリモコンレバー131をバックトロール位置Rに切換えたときの機械的ケーブル400の移動によって回動レバー401を時計方向に回動させて各スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrを全閉状態に制御するようにしてもよい。
【0137】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は請求項19に係る発明によれば、スロットル開度異常検出手段で電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに異常時吸入空気制御手段で少なくとも船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたので、必要とするエンジン回転速度を得ることができるという効果が得られる。
【0138】
また、請求項2又は請求項20に係る発明によれば、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度異常を検出したときに、その異常が低開度側の異常であるときに回転速度補正手段によって異常時吸入空気制御手段で確保した吸入空気量に応じた燃料噴射量及び/又は点火時期を制御してエンジン回転速度を増加補正して、帰港時に必要とするエンジン回転速度を得ることができるという効果が得られる。
【0139】
さらに、請求項3に係る発明によれば、電子制御スロットル弁を配設した吸気通路の下流側にバランス通路を連通させ、このバランス通路に吸気弁を取付けたので、この吸気弁を開閉することにより、必要な吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、電子制御スロットル弁と並列に配設したパイパス通路に外部から開閉操作可能な開閉弁を設けたので、開閉弁を外部から電気的に又は手動で開閉操作することにより、必要な吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
【0140】
なおさらに、請求項5に係る発明によれば、バイパス通路に設けた開閉弁の開度がリモコンレバーの操作状態に応じて調整されるので、運転者の要求する吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
なおさらに、請求項6に係る発明によれば、バイパス通路に設けた開閉弁を手動開閉することができるので、必要とする吸入空気量を調整することができるという効果が得られる。
【0141】
さらに、請求項7に係る発明によれば、電子制御スロットル弁に異常時操作部が機械的に連携されているので、スロットル開度異常時に異常時操作部を操作することにより、機械的に電子制御スロットル弁の弁開度を調整して、吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
さらにまた、請求項8又は請求項21に係る発明によれば、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度の異常を検出し、且つ接岸検出手段で接岸を検出したときに、回転速度減少補正手段でエンジン回転速度を減少させるので、シフト機構のシフトを可能として容易に接岸することができるという効果が得られる。
【0142】
なおさらに、請求項9に係る発明によれば、リモコンレバーのスロットル開度指令値と、電子制御スロットル弁の実スロットル開度とを検出し、両者に基づいてスロットル開度異常を判断するようにしたので、電子制御スロットル弁の開度異常を確実に検出することができるという効果が得られる。
また、請求項10に係る発明によれば、スロットル開度指令値と実スロットル開度の偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するようにしているので、電子スロットル弁の開度異常をより正確に検出することができると共に、全閉側の異常であるか全開側の異常であるを判別することができるという効果が得られる。
【0143】
さらに、請求項11に係る発明によれば、スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するので、電子スロットル弁の開度異常を固着度合いを加味してより正確に判別することができるという効果が得られる。
さらにまた、請求項12に係る発明によれば、スロットル開度の異常を検出したときに、スロットル開度異常をブザー、発光素子等で報知するので、操縦者がスロットル開度異常を確実に認識することができるという効果が得られる。
【0144】
なおさらに、請求項13に係る発明によれば、通信系統異常検出手段で、リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出したときに、スロットル弁制御手段の外部指令値入力部に指令値補助入力部を接続して、この指令値補助入力部からスロットル開度指令を入力することにより、電子制御スロットル弁のスロットル開度を調整することができるという効果が得られる。
【0145】
また、請求項14に係る発明によれば、通信系統の異常を検出したときに、その異常を例えばブザー、発光素子等で構成する異常報知手段で報知するようにしたので、操縦者が通信系統の異常により電子制御スロットル弁の異常を容易に認識することができるという効果が得られる。
さらに、請求項15に係る発明によれば、スロットル弁の機械的中立位置がスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持され、このスロットル弁を電動駆動機構で全閉状態から全開状態まで駆動制御することによりスロットル開度を調整するので、電動駆動機構が異常状態となっても、スロットル開度が前回状態よりの機械的中立位置となるので、リンプホームを確実に行うことができるという効果が得られる。
【0146】
さらにまた、請求項16に係る発明によれば、スロットル開度異常時に電動駆動機構を駆動停止状態としてリンプホームに必要な吸入空気量を確保しながら、接岸時に回転速度補正手段でエンジン回転速度を減少させることにより、シフト機構のシフト操作を可能として、接岸を容易に行うことができるという効果が得られる。
【0147】
なおさらに、請求項17に係る発明によれば、電子制御スロットル弁を構成する弁体を付勢する2種類の弾性部材の中立位置設定機構を外部から電気的に又は手動で操作することにより、弁体の中立位置を変更して必要な吸入空気量を任意に調節することができるという効果が得られる。
また、請求項18に係る発明によれば、既存のスロットル弁であっても、回動レバー、連携ロッド及び電気的駆動機構を新設することにより、大幅な改造を行うことなく、電子制御スロットル弁の構成とすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す船外機の全体構成説明図。
【図2】図1の船外機のシフト機構を示す説明図。
【図3】図1の電子制御スロットル弁の側面図。
【図4】図1の電子制御スロットル弁のサイレンサを取り外した正面図。
【図5】図1の電子制御スロットル弁のスロットルボディを取り外した正面図。
【図6】ECUのエンジン制御処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】燃料噴射量算出用マップを示す説明図。
【図8】点火時期算出用マップを示す説明図。
【図9】燃料噴射量補正値算出用マップを示す説明図。
【図10】点火時期補正値算出用マップを示す説明図。
【図11】電子制御スロットル弁の異常状態の説明図。
【図12】第1の実施形態の変形例を示す構成説明図。
【図13】第1の実施形態の他の変形例を示す概略構成図。
【図14】第1の実施形態の更に他の変形例を示す構成説明図。
【図15】本発明の第2の実施形態を示す概略構成図。
【図16】第2の実施形態の機械的中立設定機構を示す構成図。
【図17】第2の実施形態の変形例を示す構成図。
【図18】第2の実施形態の他の変形例を示す構成図。
【図19】本発明の第3の実施形態を示す概略構成図。
【図20】第3の実施形態のバルブタイミング制御処理を示すフローチャート。
【図21】第3の実施形態のスロットル弁異常検出処理を示すフローチャート。
【図22】第3の実施形態の変形例を示す点火時期制御処理のフローチャート。
【図23】第3の実施形態の他の変形例を示す構成図。
【符号の説明】
1:船外機、2:エンジン、4:アッパケース、5:ロアケース、6:プロペラ、7:シリンダボディ、10:クランク軸、12:クランク室、13:インジェクタ14:点火プラグ、15:排気ポート、19:吸気通路、20:リード弁、22:電子制御スロットル弁、24a:回動レバー、24b:連携ロッド、24c:スロットル側ギヤ、24d:電動サーボモータ、24e:モータ側ギヤ、34:非常用スロットル開閉機構、40:バランス通路、41:バイパス吸気弁、42:ECU、43:エンジン回転数センサ、44:吸気温センサ、45:スロットル開度センサ、59:オイルポンプ、ESM:回転駆動機構、83:シフト変換機構、90:手動調整機構、120:LAN、130:前後進切換装置、131:リモコンレバー、134:加速位置センサ、140:補助入力ユニット、141:空きノード、150:警報装置、151:液晶表示器、SH:回動軸、202:電動サーボモータ、203:機械的中立位置設定機構、204:圧縮バネ、205:摺動体、206:係合片、208:中立位置設定部、209:操作ハンドル、220:電動モータ、221:駆動ユニット、300:エンジン、303:カムシャフト、312:油圧制御バルブ、313:バルブタイミング制御機構、320:ECU、350:警報装置、400:機械的ケーブル、401:回動レバー、402:ケーブル、403:電動挟持機構。
【発明の属する技術分野】
本発明は船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御装置及び制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
小型ボート等に搭載される船外機は、プロペラが装着されたロアケースの上部にアッパケースおよびトップカウルを取付け、トップカウル内に船外機用エンジンを搭載し、このエンジンによりプロペラを駆動する。通常この船外機用エンジンは、スロットル弁を有し、このスロットル弁によって吸入空気量を制御することにより、船外機用エンジンのエンジン回転速度を制御するようにしている。
【0003】
このような船外機用エンジンの制御装置として、例えば、米国特許第6273771号明細書に記載されているものが知られている。この従来例は、船外機用エンジンのスロットル弁を電子制御スロットル弁で構成し、この電子制御スロットル弁をエンジンコントロールユニットで制御し、このエンジンコントロールユニットに電気的リモートコントロールモジュールからのスロットル開度指令信号をコントローラエリアネットワーク(CAN)を介して伝達するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例にあっては、船外機用エンジンの回転速度を制御するために電子制御スロットル弁を適用している関係で、電子制御スロットル弁に摩擦抵抗の増加や固着等の異常が発生したときに、電気的リモートコントロールモジュールで、スロットル開度指令信号をコントローラエリアネットワークCANを介してエンジンコントロールユニットに伝送しても、電子制御スロットル弁の正規のスロットル開度制御が困難になり、必要とするエンジン回転速度を得ることができなくなるという未解決の課題がある。
【0005】
船外機の場合、自動車とは異なり、海上で使用されるため、電子制御スロットル弁が異常になってリンプホームする際でも、自力で帰港できることが必要とされている。すなわち、船舶は自動車に比較して推進抵抗が大きいためにリンプホーム時でもスロットル開閉にかかわらず自動車以上のレベルのエンジン回転出力を発生する必要がある。自動車の場合、陸上機関であるため、安全に停車させることが必要条件になり、リンプホームできることは必要条件ではないが、船舶の場合にリップホームできることが必要条件となっている。
【0006】
一方で、船舶が帰港して接岸する際には、シフト動作を行う必要があり、このシフト動作を行うためには、エンジン回転速度を低下させる必要があり、この接岸時にもエンジン回転速度低下制御が必要となるが、この場合も電子制御スロットル弁のスロットル開度制御が困難である場合には必要とするエンジン回転速度を得ることができなくなるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電子制御スロットル弁の正規のスロットル開度制御が行えない状態となったときに、必要なエンジン回転速度を得ることができる船外機用エンジンの制御装置及び制御方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明における請求項1に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
この請求項1に係る発明では、スロットル開度異常検出手段で電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに異常時吸入空気制御手段で少なくとも船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたので、必要とするエンジン回転速度を得ることができる。
【0009】
また、本発明における請求項2に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段と、前記スロットル開度異常検出手段で検出したスロットル開度異常が低開度側での異常であるときに、エンジン回転速度を増加補正する回転速度補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明の作用に加えて、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度異常を検出したときに、その異常が低開度側の異常であるときに回転速度補正手段によって異常時吸入空気制御手段で確保した吸入空気量に応じた燃料噴射量及び/又は点火時期、噴射時期を制御してエンジン回転速度を増加補正して、帰港時に必要とするエンジン回転速度を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明における請求項2に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記異常時吸入空気制御手段が、多気筒に独立して設けた前記電子制御スロットル弁を配設した吸気通路における当該電子制御スロットル弁の下流側に連通するバランス通路を設け、該バランス通路に前記電子制御スロットル弁の異常時に開閉可能な吸気弁を取付けた構成を有することを特徴としている。
【0012】
この請求項3に係る発明では、電子制御スロットル弁を配設した吸気通路の下流側にバランス通路を連通させ、このバランス通路に吸気弁を取付けたので、この吸気弁を開閉することにより、必要な吸入空気量を確保することができる。
さらに、本発明における請求項4に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記異常時吸入空気制御手段が、前記電子制御スロットル弁と並列に配設した途中に外部から開閉操作可能な開閉弁を有するバイパス通路を備えていることを特徴としている。
【0013】
この請求項4に係る発明では、電子制御スロットル弁と並列に配設したパイパス通路に外部から開閉操作可能な開閉弁を設けたので、開閉弁を外部から電気的に又は手動で開閉操作することにより、必要な吸入空気量を確保することができる。
さらにまた、本発明における請求項5に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項4に係る発明において、前記開閉弁が、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記各開閉弁の開度を同時に調整する開度制御手段を備えていることを特徴としている。
【0014】
この請求項5に係る発明では、バイパス通路に設けた開閉弁の開度がリモコンレバーの操作状態に応じて調整されるので、運転者の要求する吸入空気量を確保することができる。
なおさらに、請求項6に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項3に係る発明において、前記開閉弁は、手動開閉する手動開閉機構を有することを特徴としている。
【0015】
この請求項6に係る発明では、バイパス通路に設けた開閉弁を手動開閉することができるので、必要とする吸入空気量を調整することができる。
また、本発明における請求項7に係る船外機用エンジンの制御装置は、前記異常時吸入空気制御手段は、請求項1〜6の何れかに係る発明において、前記電子制御スロットル弁に機械的に連携する異常時操作部を有することを特徴としている。
この請求項7に係る発明では、電子制御スロットル弁に異常時操作部が機械的に連携されているので、スロットル開度異常時に異常時操作部を操作することにより、機械的に電子制御スロットル弁の弁開度を調整して、吸入空気量を確保することができる。
【0016】
さらにまた、請求項8に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、接岸時を検出する接岸検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出し、且つ前記接岸検出手段で接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少補正する回転速度減少補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】
この請求項8に係る発明では、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度の異常を検出し、且つ接岸検出手段で接岸を検出したときに、回転速度減少補正手段でエンジン回転速度を減少させるので、シフト機構のシフトを可能として容易に接岸することができる。
なおさらに、本発明における請求項9に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1乃至8の何れかの発明において、前記スロットル開度異常検出手段が、前記リモコンレバーのスロットル開度指令値を検出するスロットル開度指令値検出手段と、前記電子制御スロットル弁の実スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、前記スロットル開度指令値及び実スロットル開度に基づいてスロットル開度異常を判断する異常判断手段とを備えていることを特徴としている。
【0018】
この請求項9に係る発明では、リモコンレバーのスロットル開度指令値と、電子制御スロットル弁の実スロットル開度とを検出し、両者に基づいてスロットル開度異常を判断するようにしたので、電子制御スロットル弁の開度異常を確実に検出することができる。
また、本発明における請求項10に係る船外機用エンジンの制御装置は、前記異常判断手段が、前記スロットル開度指令値と前記実スロットル開度との偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するように構成されていることを特徴としている。
【0019】
この請求項10に係る発明では、スロットル開度指令値と実スロットル開度の偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するようにしているので、電子スロットル弁の開度異常をより正確に検出することができると共に、全閉側の異常であるか全開側の異常であるかを判別することができる。
さらに、本発明における請求項11に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項9に係る発明において、前記異常判断手段が、前記スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するように構成されていることを特徴としている。
【0020】
この請求項11に係る発明では、スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するので、電子スロットル弁の開度異常を固着度合いを加味してより正確に判別することができる。
さらにまた、本発明における請求項12に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1乃至11の何れかの発明において、前記スロットル開度異常検出手段は、スロットル開度異常を検出したときに、当該スロットル開度異常を報知する報知手段を有することを特徴としている。
この請求項12に係る発明では、スロットル開度の異常を検出したときに、スロットル開度異常をブザー、発光素子等で報知するので、操縦者がスロットル開度異常を確実に認識することができる。
【0021】
なおさらに、本発明における請求項13に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出する通信系統異常検出手段を備え、前記スロットル弁制御手段は、前記通信系統異常検出手段で通信系統の異常を検出したときに、リモコンレバーのスロットル開度指令値に相当するスロットル開度指令値を入力する外部指令値入力部を有すると共に、当該外部指令値入力部に着脱可能なスロットル開度指令値を出力する指令値補助入力部を備えていることを特徴としている。
【0022】
この請求項13に係る発明では、通信系統異常検出手段で、リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出したときに、スロットル弁制御手段の外部指令値入力部に指令値補助入力部を接続して、この指令値補助入力部からスロットル開度指令を入力することにより、電子制御スロットル弁のスロットル開度を調整することができる。
【0023】
また、本発明における請求項14に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項13に係る発明において、前記通信系統異常検出手段で通信系統の異常を検出したときに、当該通信系統異常を報知する異常報知手段を備えていることを特徴としている。
この請求項14に係る発明では、通信系統の異常を検出したときに、その異常を例えばブザー、発光素子等で構成する異常報知手段で報知するようにしたので、操縦者が通信系統の異常により電子制御スロットル弁の異常を容易に認識することができる。
【0024】
さらに、本発明における請求項15に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁は、機械的中立位置でスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持されたスロットル弁と、該スロットル弁を弾性に抗して全閉状態から全開状態まで駆動制御する電動駆動機構とを備えていることを特徴としている。
【0025】
この請求項15に係る発明では、スロットル弁の機械的中立位置がスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持され、このスロットル弁を電動駆動機構で全閉状態から全開状態まで駆動制御することによりスロットル開度を調整するので、電動駆動機構が異常状態となっても、スロットル開度が前回状態よりの機械的中立位置となるので、リンプホームを確実に行うことができる。
【0026】
さらにまた、本発明における請求項16に係る船外機用エンジンの制御装置は、船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁は、機械的中立位置でスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持されたスロットル弁と、該スロットル弁を弾性に抗して全閉状態から全開状態まで駆動制御する電動駆動機構とを有し、さらに前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、接岸時を検出する接岸検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出し、且つ前記接岸検出手段で接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少補正する回転速度減少補正手段とを備えたことを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
【0027】
この請求項16に係る発明では、スロットル開度異常時に電動駆動機構を駆動停止状態としてリンプホームに必要な吸入空気量を確保しながら、接岸時に回転速度補正手段でエンジン回転速度を減少させることにより、シフト機構のシフト操作を可能として、接岸を容易に行うことができる。
さらにまた、本発明における請求項17に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項14又は15の何れかの発明において、前記電子制御スロットル弁は、弁体を互いに逆方向に付勢する2種類の弾性部材と、該2種類の弾性部材による弁体の機械的中立位置を設定する中立位置設定機構とを備え、前記中立位置設定機構は外部から設定操作可能に構成されていることを特徴としている。
【0028】
この請求項17に係る発明では、電子制御スロットル弁を構成する弁体を付勢する2種類の弾性部材の中立位置設定機構を外部から電気的に又は手動で操作することにより、弁体の中立位置を変更して必要な吸入空気量を任意に調節することができる。
なおさらに、本発明における請求項18に係る船外機用エンジンの制御装置は、請求項1乃至17の何れかの発明において、前記電子制御スロットル弁は、前記船外機用エンジンの気筒数に対応する複数のスロットル弁を有し、該複数のスロットル弁の回動軸が回動レバーを介して連携ロッドに連結され、該連携ロッドが電気的駆動機構に連結された構成を有することを特徴としている。
【0029】
この請求項18に係る発明では、既存のスロットル弁であっても、回動レバー、連携ロッド及び電気的駆動機構を新設することにより、大幅な改造を行うことなく、電子制御スロットル弁の構成とすることができる。
また、本発明における請求項19に係る船外機用エンジンの制御方法は、船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに、少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたことを特徴としている。
【0030】
この請求項19に係る発明では、前記請求項1に係る発明と同様の作用を得ることができる。
また、本発明における請求項20に係る船外機用エンジンの制御方法は、船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに、少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保すると共に、スロットル開度異常が低開度側での異常であるときに、エンジン回転速度を増加させるように制御することを特徴としている。
【0031】
この請求項20に係る発明では、前記請求項2に係る発明と同様の作用を得ることができる。
さらに、本発明における請求項21に係る船外機用エンジンの制御方法は、船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出した状態で、接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少させるように制御することを特徴としている。
この請求項21に係る発明では、前記請求項8に係る発明と同様の作用を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を伴って説明する。図1は、本発明を適用する筒内噴射式エンジンの1例を示す船外機の構成説明図であり、図(A)はエンジンの燃料供給系の構成図、図(B)は図(A)のエンジンの縦断面図、図(C)はこの船外機の側面図である。
【0033】
図中、1は船外機であり、クランク軸10が縦置き状態で搭載されるエンジン2と、エンジン2の下端面に接続されエンジン2を支持するガイドエキゾースト3と、ガイドエキゾースト3の下端面に接続されるアッパケース4、ロアケース5およびプロペラ6からなる。上記エンジン2は、筒内噴射式V型6気筒2サイクルエンジンであり、6つの気筒#1〜#6が平面視でVバンクをなすように横置き状態で且つ縦方向に2列に配設されたシリンダボディ7に、シリンダヘッド8が連結固定されている。アッパケース4内にはエンジンにより駆動される冷却水ポンプ18が設けられ、ロアケース5に形成された冷却水取入口5aから冷却水を吸い上げ、矢印のようにエンジン2内を循環させ、プロペラ6のボス部から水中に放出する。
【0034】
上記各気筒#1〜#6内には、ピストン(図示しない)が摺動自在に嵌合配置され、各ピストンはクランク軸10に連結されている。シリンダヘッド8には、電磁力で開閉動作されるソレノイド式のインジェクタ(燃料噴射弁)13および点火プラグ14が装着されている。各気筒#1〜#6は、それぞれ掃気ポート(図示せず)によりクランク室12に連通され、また、気筒#1〜#6には排気ポート15が接続されている。図1(B)の左バンクの排気ポート15は左集合排気通路16に、右バンクの排気ポート15は右集合排気通路17に合流されている。エンジン2のクランク室12には、吸気マニホールドから分岐する吸気通路19が接続されており、該吸気通路19には、逆流防止用のリード弁20が配設され、また、リード弁20の下流側には、エンジン内にオイルを供給し潤滑するためのオイルポンプ59が接続され、リード弁20の上流側には、吸入空気気量を調節するための電子制御スロットル弁22が配設されている。
【0035】
図1(A)に示すように、船体側に設置されている燃料タンク23内の燃料は、手動式の第1の低圧燃料ポンプ25により燃料フィルタ26を経て船外機側の第2の低圧燃料ポンプ27に送られる。この第2の低圧燃料ポンプ27は、エンジン2のクランク室12のパルス圧により駆動されるダイヤフラム式ポンプであり、燃料を、気液分離機能を有する燃料タンクであるベーパーセパレータタンク29に送る。ベーパーセパレータタンク29内には、電動モータにより駆動される燃料予圧ポンプ30が配設されており、燃料を加圧し予圧配管31を経て左右各バンクの高圧燃料ポンプ32a,32bに送る。各高圧燃料ポンプ32a,32bは、その間に設けた共通の例えばカム等からなるポンプ駆動装置70により左右それぞれのプランジャ70a,70bを介して交互に駆動される。ポンプ駆動装置70は、ベルト(図示しない)によりクランク軸10に連結され、クランク回転に同期して各高圧燃料ポンプを駆動する。
【0036】
高圧燃料ポンプ32a,32bの吐出側は、各気筒#1〜#6に沿って縦方向に配設された燃料供給レール33a,33bに接続ホース(高圧燃料配管)49を介して接続されるとともに、高圧圧力調整弁35および燃料冷却器(図示しない)を介して戻り配管37を通してベーパーセパレータタンク29に接続されている。また、予圧配管31とベーパーセパレータタンク29間には予圧圧力調整弁39が設けられている。
【0037】
エンジン潤滑用のオイルポンプ59は、クランク軸10の回転により駆動されるポンプであり、船体側に設置されたサブオイルタンク50からオイル汲上げポンプ58によりエンジン側に配設されたメインオイルタンク51に導入され、このオイルタンク51から吸気通路19内にオイルを供給する。また、メインオイルタンク51のオイルは、フィルタ52、プリミックス用オイルポンプ53、チェック弁54を介してベーパーセパレータタンク29に供給するように構成されている。プリミックス用オイルポンプ53は、電磁ソレノイドで駆動する方式のものや電動モータにより駆動するタイプのポンプを採用する。
【0038】
前述の左右の集合排気通路16,17は、エンジン2を搭載して支持する搭載台部材(ガイドエキゾースト3)を貫通し、その下面側のアッパケース4内に形成された膨張室64に開口する。この膨張室64は消音機能を有する。膨張室64の周囲のアッパケース4は、冷却水が循環する水壁63で構成され、走行時水面上に位置するアッパケース4の排気ガスによる過熱を防止する。なお、図(B)(C)のWLはアイドル時の水位を示す。走行時の水位はアッパケース4の底部付近まで下がる。
【0039】
各集合排気通路(メイン排気通路)16,17に装着された排気バルブ61は、共通の弁軸73を介して排気バルブ駆動モータ62により開閉駆動される。この排気バルブ駆動モータ62は、電子制御スロットル弁22の開度に応じて開閉動作するようにECU42により駆動制御される。例えば、電子制御スロットル弁22が最小開度(アイドル時)から1/10〜1/8程度の低開度までは排気バルブ61を全閉として集合排気ガスの略全量をサブ分岐通路71を通して触媒60を通過させ、それ以上のスロットル開度のときには、スロットル開度に応じて排気バルブを徐々に開く。このときスロットル開度に対する排気バルブの開度は、予め実験等により、筒内残留EGR量や吹抜け量等について最適となる開度を求めてマップを作成し、このマップに基づいて開度を制御する。
【0040】
排気バルブ駆動モータ62に代えて、スロットル弁の弁軸と排気バルブの弁軸を連結するリンク機構を設け、このリンク機構により前述のようにスロットル弁の開度に応じて排気バルブを開閉動作させてもよい。
Vバンクを構成する各気筒のシリンダボディのVバンク内側に設けた排気ポート15は、それぞれVバンク内側で縦に並列する左右の集合排気通路16,17に連通する。
また、図1に示すように、エンジン2の前方には図1には図示しないが図3に示すサイレンサSRが設けられ、その背面側に設けた空気取入口から空気を取り入れて、電子制御スロットル弁22が装着されたスロットルボディ21を通してクランク室12に空気を導入する。
【0041】
このスロットルボディ21には、図3及び図4に示すように、各気筒#1〜#6に対応する吸気通路19が上下方向に所定間隔を保って一列に並ぶように形成され、これら吸気通路19内にスロットル弁TV1〜TV6が回動自在に配設されている。これらスロットル弁TV1〜TV6のそれぞれは、それらの回動軸SH1〜SH6がスロットルボディ21の外表面に突出され、その突出部にスロットル弁TV1〜TV6を閉方向に付勢するコイルスプリング24sが配設されていると共に、各回動軸SH1〜SH6のスロットルボディ21から突出した先端にく字状の回動レバー24aが一体に取付けられている。そして、各スロットル弁TV1〜TV6の回動レバー24aの他端が共通の連携ロッド24bに回動自在に取付けられている。
【0042】
一方、スロットル弁TV4の回動軸SH4に取付けられた回動レバー24aは、後方側に扇状に延長され、その回動軸SH4を中心とする円弧状外周縁にスロットル側ギヤ24cが形成され、このスロットル側ギヤ24cがスロットルボディ21の外表面に取付けられた電動サーボモータ24dの外表面側に向けた回転軸に取付けたモータ側ギヤ24eが噛合されている。なお、24fは、アイドル回転速度を規定するための調整スクリューであって、その先端に回動レバー24aに形成したストッパ24gが当接することにより、回動レバー24aの図3で見て時計方向の回動を規制している。
【0043】
また、スロットル弁TV6の回動軸SH6には、非常用スロットル開閉機構34が配設されている。この非常用スロットル開閉機構34は、回動軸SH6の回動レバー24aの外側に一体に取付けられた回動レバー34aと、この回動レバー34aの自由端に連結ロッド34bを介して連結されたスロットルボディ21の外表面後端側に回動自在に配設された回動レバー34cと、この回動レバー34cの自由端側に接続された案内筒34d内をガイドされる連結ロッド34eと、この連結ロッド34eの先端に連結され且つボトムカウリングの前端に突出するガイドワイヤ34fとから構成されている。
【0044】
したがって、電動サーボモータ24dを図3の状態から反時計に回転駆動することにより、モータ側ギヤ24e、スロットル側ギヤ24cを介して回動レバー24aが回動軸SH4を中心として時計方向に回動すると共に、回動軸SH4も時計方向に回動してスロットル弁TV4のスロットル開度が全閉側のアイドル開度θIDL から全開方向に開き、逆にスロットル開度が開いている状態から電動サーボモータ24dを時計方向に回転駆動することにより、スロットル弁TV4のスロットル開度をアイドル開度θIDL 側に閉じることができる。このときの回動レバー24aの回動が連携ロッド24bを介して他のスロットル弁TV1〜TV3及びTV5,TV6の回動レバー24bに伝達され、これらスロットル弁TV1〜TV3及びTV5,TV6のスロットル開度がスロットル弁TV4のスロットル開度と同期して調整される。これら電動サーボモータ24d、モータ側ギヤ24e、スロットル側ギヤ24c、回動レバー24a、連携ロッド24b、回動軸SH1〜SH6及びスロットル弁TV1〜TV6で電子制御スロットル弁22が構成されている。
【0045】
同様に、非常用スロットル開閉機構34のガイドワイヤ34fを引っ張ることにより、スロットル弁TV1〜TV6を開方向に調整することができる。
また、以上の構成によれば、電子制御スロットル弁を非装着の既存スロットルボディアッセンブリーに対し、回動レバー24a,34a、サーボモータ24dの部品のみを取替え/追加するだけで電子制御スロットル弁構成に置換することが可能となり、電子制御スロットル弁化のコストを最小限に抑えることができる。
【0046】
さらに、スロットルボディ21における背面側即ちリード弁20側の合わせ面には、図5に示すように、前記吸気通路19の開口と隣接する位置において吸気通路19の並設方向と並行に延びる凹溝40aと、この凹溝40aと各吸気通路19とを連通する連通溝40bとが形成されている。すなわち、スロットルボディ21にリード弁20を配設したリード弁装置(図示せず)を取り付けることにより、凹溝40a及び連通溝40bの開口部分がリード弁装置によって閉塞され、これらの溝によって各吸気通路19のスロットル弁TV1〜TV6より下流側同士を連通するバランス通路40が形成される。そして、このバランス通路40に電磁ソレノイドで開閉駆動されたバイパス吸気弁41が配設されている。このバイパス吸気弁41を開状態とすることにより、外部の空気をバランス通路40に吸気することができる。
【0047】
電子制御装置(以下、ECUと称す)42には、エンジン2の運転状態や船外機1の状態を示す各種センサからの検出信号が入力される。例えば、クランク軸10の回転角(回転速度)を検出するエンジン回転速度センサ43、吸気通路19内の温度を検出する吸気温センサ44、スロットル弁22の実スロットル開度θrを検出するスロットル開度センサ45、最上段の気筒#1内の空燃比を検出する空燃比センサ46、高圧燃料配管49内の圧力を検出する燃圧センサ47、エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温センサ48、燃料フィルタ26で分離した水の量を検出する水検出センサ55、排気圧力を検出する背圧センサ38、オイルタンク51のオイル量を検出するオイルレベルセンサ56、シリンダボディ温度センサ57、エンジンの姿勢を検出するトリムセンサ28、パルサーセンサ110、ノックセンサ111、触媒通過後の空燃比センサ112および外気温度センサ等の検出信号が入力される。ECU42は、これら各センサの検出信号を制御マップに基づき演算処理し、制御信号をインジェクタ13、点火プラグ14、電子制御スロットル弁22、予圧燃料ポンプ30、プリミックス用オイルポンプ53、オイル汲上げポンプ58、オイルポンプ59(電磁式の場合)および排気バルブ駆動モータ62に伝送する。
【0048】
また、ECU42は、例えば有線又は無線のローカルエリアネットワーク(以下、LANと称す)120を介して船体の船首側に配設された前後進切換装置130が接続されている。この前後進切換装置130は、前後方向に揺動可能に枢支されたリモコンレバー131を有し、このリモコンレバー131は、ニュートラルN、バックトロール位置R、トロール位置F、及び加速領域Eを選択可能になっており、トロール位置Fに投入されたことを検出するトロールシフト検出スイッチ132、バックトロール位置Rに投入されたことを検出するバックトロールシフト検出スイッチ133を有すると共に、加速領域Eにおけるリモコンレバー131の回動角度を検出する例えばロータリポテンショメータ、光学式エンコーダ等で構成される加速位置センサ134を備えており、これら各センサ132〜134で検出したシフト位置信号及びリモコンレバー131の回動角がそれぞれシフト指令値及びスロットル開度指令値としてローカルエリアネットワーク120を介してECU42に送信される。
【0049】
ローカルエリアネットワーク120には、異常時にリモコンレバー131のシフト指令値及びスロットル開度指令値に相当するシフト指令値及びスロットル開度指令値を出力可能な補助入力部としての例えばポテンショメータで構成される補助入力ユニット140を接続可能な外部指令値入力部としての空きノード141が接続されている。
【0050】
クランク軸10の上端にはフライホイル(図示せず)が装着され、このフライホイルに隣接して、エンジン側方上部にスタータモータ(図示せず)が配設される。スタータモータの下部には電装ボックス(図示せず)が設けられる。
シリンダボディ7内にピストン11が摺動可能に装着され、このシリンダボディ7の頂部にシリンダヘッド8が連結される。シリンダヘッド8の内面側に形成された燃焼室(図示せず)に臨んで点火プラグ14とともにインジェクタ13が装着される。これにより、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射エンジンを構成している。
【0051】
また、船外機1には、図2に示すように、ロアケース5内に、プロペラ6の回転軸であるプロペラシャフト6aが水平方向に挿通されており、ロアケース5内に延ばされたドライブシャフト80の下端は、ベベルギヤで構成される駆動ギヤ85、前進ギヤ86F、後進ギヤ86Rとドッグクラッチ87によるシフト変換機構83を介してプロペラシャフト6aに連携されている。ドラブシャフト80と並行に上下方向に延びるシフトロッド84をECU42によって制御される電動モータを含む電動回動機構ESMで回動させることにより、シフト変換機構83を作動させることで、ニュートラルか、前進か、後進かの何れかに随時変換した状態で、ドライブシャフト80からプロペラシャフト6aに回転力が伝達される。
【0052】
すなわち、シフト変換機構83は、ドライブシャフト80の下端に固定した駆動ギヤ85に、プロペラシャフト6a上に回動自在に配置した前進ギヤ86Fと後進ギヤ86Rとをそれぞれ噛合させ、プロペラシャフト6aに対して摺動可能で回動不能に配設したドッグクラッチ87を、前進ギヤ86Fと後進ギヤ86Rとの間に配置して、シフトロッド84の回動(シフトロッド下端のカム面の回動)に連動させてドッグクラッチ87をプロペラシャフト6a上で摺動させるようにしたものである。
【0053】
このようなシフト変換機構83により、回動機構ESMでシフトロッド84をその軸周りに回動させることでドッグクラッチ87を移動させて、前進ギヤ86Fと後進ギヤ86Rの何れかに噛合させるか、あるいは、その中間部で何れとも噛合させないようにすることで、ドライブシャフト80の回転を前進ギヤ86Fか後進ギヤ86Rの何れかを介してプロペラシャフト6aに伝達させるか、或いは、ドライブシャフト80の回転をプロペラシャフト6aに伝達させないニュートラル状態となるようにしている。
【0054】
次に、上記第1の実施形態の動作をECU42で実行する図6に示すエンジン制御処理を伴って説明する。
このエンジン制御処理は、図6に示すように、先ず、ステップS1で、エンジン回転速度センサ43で検出したエンジン回転速度Neを読込み、次いでステップS2に移行して、リモコンレバー131の加速位置センサ134で検出したスロットル開度指令値θtを読込み、次いでステップS3に移行して、スロットル開度センサ45で検出した実スロットル開度θrを読込んでからステップS4に移行する。
【0055】
このステップS4では、エンジン回転速度Ne及び実スロットル開度θrに基づいてECU42に設けた記憶部に記憶された図7に示す燃料噴射量算出用マップを参照してインジェクタ13で供給する燃料噴射量FDを算出し、この燃料噴射量FDをECS42に設けた記憶装置の燃料噴射量記憶領域に更新記憶する。ここで、燃料噴射量算出用マップは図7に示すように、エンジン回転速度Ne、実スロットル開度θr及び燃料噴射量FD(A11〜Amn) との関係を表す3次元マップとして作成されており、エンジン回転速度Neと実スロットル開度θrとから燃料噴射量FDを算出することができる。
【0056】
次いで、ステップS5に移行して、エンジン回転速度Neと実スロットル開度θrとをもとに図8に示す基本点火時期算出用マップを参照して基本点火時期SAを算出し、この基本点火時期SAをECU42に設けた記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶する。ここで、基本点火時期算出用マップは、図8に示すように、スロットル開度θr1及びエンジン回転速度Ne1のとき、エンジン回転速度Neを最適に設定できる基本点火時期SA(θr1,Ne1)を算出する。この基本点火時期算出用マップは、任意のエンジン回転速度Neiにおける基本点火時期SA(Nei)と実スロットル開度θriとの関係と、任意の実スロットル開度θriにおける基本点火時期SA(θri)とエンジン回転速度Neiとの関係に基づいて定められる。
【0057】
次いで、ステップS6に移行して、記憶されているスロットル開度基準値θt0から現在のスロットル開度指令値θtkを減算した値の絶対値|θt0−θtk|を指令値変化量Δθtとして算出し、次いでステップS7に移行して算出した指令値変化量Δθtが予め設定された変化量閾値Δθts以上であるか否かを判定し、Δθt≧Δθsであるときにはスロットル開度指令値θtが変化したものと判断してステップS8に移行し、現在のスロット開度指令値θtkをスロットル開度基準値θt0として記憶してからステップS9に移行する。
【0058】
このステップS9では、記憶されている実スロットル開度基準値θr0から現在の実スロットル開度指令値θrkを減算した値の絶対値|θr0−θrk|が予め設定した変化量閾値Δθrs以上であるか否かを判定し、|θr0−θrk|≧Δθrsであるときには実スロットル開度θrの変化量が正常であると判断してステップS10に移行する。
【0059】
このステップS10では、現在のスロットル開度指令値θtkから現在の実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θtk−θrk|が予め設定した異常判断閾値θa以上であるか否かを判定し、|θtk−θrk|<θaであるときには電子制御スロットル弁22が正常に動作しているものと判断してステップS11に移行する。
【0060】
このステップS11では、現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として記憶してからステップS12に移行し、記憶装置の燃料噴射量記憶領域に記憶されている燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、点火時期記憶領域に記憶されている基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期を制御してから前記ステップS1に戻る。
【0061】
また、前記ステップS9の判定結果が|θr0−θrk|<Δθrsであるとき又はステップS11の判定結果が|θtk−θrk|≧θaであるときには、電子制御スロットル弁22が異常であると判断してステップS14に移行して、警報装置150を作動させて警報音又は警報光を出力して操縦者に電子制御スロットル弁22に異常が発生してリンプホームの必要性があることを報知してからステップS15に移行する。
【0062】
このステップS15では、現在のスロットル開度指令値θtkが最大スロットル開度指令値θtmaxであるか否かを判定し、θtk<θtmaxであるときに操縦者がリンプホームに必要なエンジン回転速度を得ていると認識しているものと判断して前記ステップS12に移行し、θtk=θtmaxであるときには操縦者がリンプホームに必要なエンジン回転速度が不足しているものと認識していると判断してステップS16に移行する。
【0063】
このステップS16では、現在の実スロットル開度θrkが予め設定されたリンプホームに必要とされる実スロットル開度θrp(例えば大型の2サイクルエンジンで20°程度)以上であるか否かを判定し、θrk≧θrpであるときには、リンプホームに必要とする吸入空気量を確保可能と判断して前記ステップS12に移行し、θrk<θrpであるときにはリンプホームに必要な吸入空気量が不足するものと判断してステップS17に移行する。
【0064】
このステップS17では、バイパス吸気弁41を開状態に制御してからステップS18に移行し、現在の実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとをもとに図9に示す燃料噴射量補正値算出マップを参照して燃料噴射量補正値αを算出する。この燃料噴射量補正値算出マップは、バイパス吸気弁41が開状態に制御されたことによる吸入空気量の増加量に見合う燃料噴射量に補正するための燃料噴射補正値α(α>1)を算出するように設定されている。
【0065】
次いで、ステップS19に移行して、現在の実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとをもとに図10に示す点火時期補正値算出用マップを参照して点火時期補正値βを算出する。この点火時期補正値算出用マップは、ノック余裕度の範囲内でバイパス吸気弁41が開状態に制御されたことによる吸入空気量の増加に見合う点火時期補正値β(β>1)を算出するように設定されている。
【0066】
次いで、ステップS20に移行して、記憶装置の燃料噴射量記憶領域に記憶されている燃料噴射量FDを読出し、この燃料噴射量FDに燃料噴射量補正値αを乗算して新たな燃料噴射量FDを算出し、これを燃料噴射量記憶領域に更新記憶してからステップS21に移行し、記憶装置の点火時期記憶領域に記憶されている点火時期SAを読出し、この点火時期SAに点火時期補正値βを乗算して新たな点火時期SAを算出し、これを点火時期記憶領域に更新記憶してから前記ステップS12に移行する。
【0067】
一方、前記ステップS7の判定結果がスロットル開度指令値θtの変化量Δθtが変化量閾値Δθts未満(Δθt<Δθts)であるときには、ステップS22に移行して、スロットル開度指令値切換フラグFCが“1”にセットされているか否かを判定し、これが“1”にセットされているときには補助入力ユニット140からのスロットル開度指令値θtを受信しているものと判断して前記ステップS11に移行し、スロットル開度指令値切換フラグFCが“0”にリセットされているときにはステップS23に移行する。
【0068】
このステップS23では、前後進切換装置130からLAN120を介してスロットル開度指令値θtが正常に受信されているか否かを判定する。この判定は、前後進切換装置130に割り当てられたIPアドレスを送信元とする送信フレームを所定時間内に受信しているか否かを判定することにより行い、該当する送信フレームを正常に受信しているときには前後切換装置130のデータ送信系に異常が発生していないものと判断して前記ステップS11に移行し、該当する送信フレームを受信していないときには前後切換装置130のデータ送信系に異常が発生しているものと判断してステップS24に移行する。
【0069】
このステップS24では、警報装置150を作動させて、前後進切換装置130に異常が発生したことを表す警報音及び又は警報光を発生して操縦者に前後進切換装置130の異常を報知してからステップS25に移行して、補助入力ユニット140を空きノード141に接続するガイダンス情報を液晶表示器151に表示し、次いでステップS26に移行して、補助入力ユニット140からのスロットル開度指令値θtを含む送信フレームを受信したか否かを判定し、送信フレームを受信していないときには前記ステップS12に戻り、送信フレームを受信したときにはステップS27に移行して、スロットル開度指令値読込処理を前後進切換装置130からのスロットル開度指令値の読込みに代えて補助入力ユニット140からのスロットル開度指令値を読込むように切換えると共に、スロットル開度指令値切換フラグFCを“1”にセットしてから前記ステップS12に戻る。
【0070】
この図6の処理において、ステップS1〜S3、S6〜S11の処理がスロットル開度異常検出手段に対応し、このうちステップS2の処理及び前後進切換装置130の加速位置センサ134がスロットル開度指令値検出手段に対応し、ステップS3の処理及びスロットル開度センサ45が実スロットル開度検出手段に対応し、ステップS7〜S11の処理が判断手段に対応している。また、ステップS14の処理が報知手段に対応し、ステップS15〜S17の処理が異常時吸入空気制御手段に対応し、ステップS18〜S21の処理が回転速度増加補正手段に対応し、ステップS23の処理が通信系統異常検出手段に対応し、ステップS24の処理が異常報知手段に対応している。
【0071】
したがって、今、前後進切換装置130及び電子制御スロットル弁22がともに正常である場合ものとし、前後進切換装置130でリモコンレバー131がニュートラル位置に保持されている状態では、トロールシフト検出スイッチ132及びバックトロールシフト検出スイッチ133がともにオフ状態となることからシフト変換機構83では、シフトロッド84によりドッグクラッチ86を移動させて、ドライブシャフト80の回転を前進ギヤ86Fか後進ギヤ86Rの何れにも噛合しないニュートラル位置に保持するとともに、スロットル開度指令値θtkが“0”となるので、このスロットル開度指令値θtkに応じた制御信号が電動サーボモータ24dに出力され、この電動サーボモータ24dが図3に示すようにスロットル弁TV1〜TV6を全閉状態とする回転角位置に制御される。これに応じて電動サーボモータ24dの回転角位置がモータ側ギヤ24e、スロットル側ギヤ24cを介して回動アームSH4が回動され、連携ロッド24bを介して残りの回動アームSH1〜SH3、SH5及びSH6も回動されることにより、全てのスロットル弁TV1〜TV6が全閉状態に制御される。
【0072】
この前後進切換装置130及び電子制御スロットル弁22がともに正常である場合には、前後進切換装置130から入力されるスロットル開度指令値θtとスロットル開度センサ45で検出した電子制御スロットル弁22の実スロットル開度θrとが略一致する。このため、図6に示すエンジン制御処理が実行開始された初期状態で、スロットル開度基準値θt0及び実スロットル開度基準値θr0が“0”に設定されると共に、スロットル開度指令値切換フラグFCが“0”にリセットされ、その後、エンジン回転速度Ne、スロットル開度指令値θtk、実スロットル開度θrkを読込み(ステップS1〜S3)、エンジン回転速度Neと実スロットル開度θrkとをもとに燃料噴射量算出用マップを参照して燃料噴射量FDを算出し(ステップS4)、さらにエンジン回転速度Neと実スロットル開度θrkとをもとに基本点火時期算出用マップを参照して基本点火時期SAを算出する(ステップS5)。
【0073】
そして、前後進切換装置130のリモコンレバー131がニュートラル位置に保持されているので、スロットル開度指令値θtが“0”を維持することから、設定されたスロットル開度基準値θt0から現在のスロットル開度指令値θtkを減算した値の絶対値でなる指令値変化量Δθtが略“0”となる(ステップS6)。このため、ステップS7からステップS22に移行し、スロットル開度指令値切換フラグFCが“0”にリセットされているのでステップS23に移行し、前後進切換装置130が正常であるので、所定時間内に前後進切換装置130のIPアドレスを送信元としスロットル開度指令値θtをデータ領域に含む送信フレームを受信していることから、ステップS10に移行する。
【0074】
このステップS10では、現在のスロットル開度指令値θtk及び実スロットル開度指令値θrkが共に略“0”であり、両者の偏差の絶対値が略“0”であるので、電子制御スロットル弁22が正常であると判断されて、ステップS11で現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として記憶してからステップS12に移行することにより、記憶装置に記憶されている燃焼噴射量FDでインジェクタ13が制御されると共に、基本点火時期SAで点火プラグ14が点火制御されることにより、エンジン2がアイドル回転速度で回転駆動される。
【0075】
この状態から出港するために、前後進切換装置130のリモコンレバー131をニュートラル位置Nからトロール位置Fを超えて加速領域Eに回動させると、トロール検出スイッチ132からオン状態のトロール検出信号が出力されると共に、加速位置センサ134から選択した加速領域Eに応じたスロットル開度指令値θtが出力され、これらが送信制御部に送られて、前後進切換装置130に割り当てられたIPアドレスを送信元アドレスとし、送信先アドレスをECU42に割り当てられたIPアドレスとし、データ領域にトロール検出信号及びスロットル開度指令値θtを格納した送信フレームが形成され、この送信フレームがLAN120を介してECU42に送信される。
【0076】
ECU42では、前後進切換装置130からの送信フレームを受信すると、この送信フレームからトロール検出信号及びスロットル開度指令値θtを読込み、これらをECU42内に設けられた記憶装置に格納すると共に、トロール検出信号に基づいてシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させることでドッグクラッチ86を移動させて前進ギヤ86Fに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を前進ギヤ86Fを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、前進可能な状態となる。これと同時に、ECU42で、スロットル開度指令値θtに応じて電動サーボモータ24dを回転制御することにより、電子制御スロットル弁22のスロットル開度をスロットル開度指令値θtに応じた開度に制御する。
【0077】
これと同時に図6のエンジン制御処理で、エンジン回転数Ne及び実スロットル開度θrに基づいて燃料噴射量FD及び基本点火時期SAが算出されると共に、現在のスロットル開度指令値θtkが“0”を表すスロットル開度基準値θt0より大きな値となり、ステップS6で算出される指令値変化量Δθtが変化量閾値Δθts以上となることからステップS8に移行して、現在のスロットル開度指令値θtkがスロットル開度基準値θt0に設定されてこれが記憶装置のスロットル開度基準値記憶領域に更新記憶される。そして、この状態では電子制御スロットル弁22が正常であって、実スロットル開度θrkがスロットル開度指令値θtkに応じた開度に制御されるので、これらに基づいてインジェクタ13及び点火プラグ14が制御されて、エンジン回転速度が増加され、リモコンレバー131で選択した加速領域Eの選択位置に応じた加速状態となる。
【0078】
ところで、航行状態で、電子制御スロットル弁22の電動サーボモータ24dに過熱によるトラブルが発生したり、電動サーボモータ24dからスロットル弁TV1〜TV6に至る駆動力伝達系に異物が詰まったり、スロットル弁TV1〜TV6の回動軸に異物が挟まることにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度の変化量がリモコンレバー131の加速領域Eで選択したスロットル開度指令値θtの変化量に対して小さい値となる固着現象が発生する異常状態が発生した場合には、この異常状態に応じたリンプホーム制御が行われる。
【0079】
すなわち、電子制御スロットル弁22の固着現象としては、図11で実線図示のスロットル開度指令値θtに対する実スロットル開度θrの特性が正常である場合に対して、図11で点線図示のように実スロットル開度θrの変化量がリンプホーム時に必要とする実スロットル開度閾値θrpより小さい低開度側でスロットル開度指令値θtの変化量に対して、“0”又は小さくなる低開度側固着現象と、図11で一点鎖線図示のように実スロットル開度θrの変化量が実スロットル開度閾値θrpより大きい高開度側でスロットル開度指令値θtの変化量に対して、“0”又は小さくなる高開度側固着現象との二通りに分けられる。
【0080】
そして、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象が発生した場合には、図6のエンジン制御処理が実行されたときに、ステップS1〜S5でエンジン回転速度Ne及び実スロットル開度θrに基づいて、燃料噴射量FDと基本点火時期SAとを算出する点については電子制御スロットル弁22が正常である場合と変わらないが、操縦者がリモコンレバー131を加速領域E内で変化させて、スロットル開度指令値θtの変化量Δθtが変化量閾値Δθts以上となったときに、現在のスロットル開度指令値θtkをスロットル開度指令基準値θt0として設定され、これが記憶装置のスロットル開度指令基準値記憶領域に更新記憶され(ステップS8)、次いで実ストローク開度基準値θr0から現在の実ストローク開度θrkを減算した値の絶対値を算出したときに、この絶対値が異常判断閾値Δθrsより小さい値となる。
【0081】
このため、図6の処理において、ステップS9からステップS14に移行して、警報装置150を作動状態として、電子制御スロットル弁22が異常であることを表す異常音及び/又は異常光を発して、操縦者に電子制御スロットル弁22の異常を報知する。
次いで、ステップS15に移行して、スロットル開度指令値θtkがリモコンレバー131の加速領域Eの最大値を選択したときのスロットル開度最大指令値θtmaxに達しているか否かを判定し、θtk<θtmaxであるときには、操縦者がリンプホーム時に必要なエンジン回転速度で航行しており、これ以上のエンジン回転速度の増加を要求していないものと判断してステップS12に移行して、正常時と同様にステップS4で算出した燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、ステップS5で算出した基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行う。
【0082】
また、操縦者がより速いエンジン回転速度を要求するために、リモコンレバー131で加速領域Eの最大加速位置を選択することにより、スロットル開度指令値θtkがスロットル開度指令最大値θtmaxに一致したときには、図6の処理においてステップS15からステップS16に移行するが、電子制御スロットル弁22が高開度側異常であって、実スロットル開度が図11で一点鎖線図示のようにリンプホーム時に必要とする実スロットル開度閾値θrpより大きいので、現在の実スロットル開度θrkでリンプホーム可能と判断してステップS12に移行し、正常時と同様の燃料噴射量制御及び点火時期制御を行う。
【0083】
これに対して、電子制御スロットル弁22に低開度側固着現象が発生した場合には、上記高開度側固着現象発生時と同様に図6の処理でステップS9からステップS14に移行して警報装置150で電子制御スロットル弁22の異常を報知するが、この低開度側固着現象発生時には、実スロットル開度θrが低開度となり、操縦者がより速いエンジン回転速度を要求するために、リモコンレバー131で加速領域Eの最大加速位置を選択し、これに応じてスロットル開度指令値θtがスロットル開度最大指令値θtmaxとなり、これがLAN120を介してECU42に送信される。
【0084】
このため、ECU42では、図6の処理で、ステップS15からステップS16に移行するが、このときの実スロットル開度θrkが実スロットル開度閾値θrp以上である場合には、リンプホーム時に必要とする最低限の必要吸入空気量を確保することができるものと判断してステップS12に移行し、電子制御スロットル弁22の正常時と同様にステップS4で算出した燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、ステップS5で算出した基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火制御を行う。
【0085】
しかしながら、操縦者がリモコンレバー131で加速領域Eの最大加速位置を選択してスロットル開度指令値θtをスロットル開度最大指令値θtmaxとしたときに、実スロットル開度θrkがリンプホーム時に必要とする実スロットル開度閾値θrp未満であるときには、リンスホーム時に必要とするエンジン回転速度を得るための吸入空気量が不足するものと判断してステップS17に移行する。
このため、バイパス吸気弁41が開状態に制御されて、このバイパス吸気弁41及びバランス通路40を介して各スロットル弁TV1〜TV6の下流側すなわちインジェクタ13側に所定流量の空気が流入され、これによってエンジン2の吸入空気量が増加される。
【0086】
これと同時に、ステップS18で実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとに基づいて図9の燃料噴射量補正用マップを参照してバイパス吸気弁41を開制御したことによる吸入空気量の増加分に見合う燃料噴射量補正値αを算出すると共に、ステップS19で実スロットル開度θrkとエンジン回転速度Neとに基づいて図10に示す点火時期補正用マップを参照してノック余裕度を考慮した点が時期補正値βを算出し、ステップS20で燃料噴射量記憶領域に記憶されている燃料噴射量FDに燃料噴射量補正値αを乗算して新たな燃料噴射量FDを算出し、これを燃料噴射量記憶領域に更新記憶すると共に、ステップS21で点火時期記憶領域に記憶されている基本点火時期SAに点火時期補正値βを乗算して新たな点火時期SAを算出し、これを点火時期記憶領域に更新記憶してからステップS12に移行する。
【0087】
このため、補正された燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13が制御されると共に、補正された点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御が行われることにより、リンプホーム時に必要とする最低限のエンジン回転速度を確保することができる。
なお、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象又は低開度側固着現象が発生したときに、操縦者がこれに気付かず、リモコンレバー131での選択位置を変更しないか又はリモコンレバー131の回動量が少なく指令値変化量Δθtが変化量閾値Δθs未満である場合には、図6の処理で、ステップS7からステップS22に移行する。
【0088】
このとき、スロットル開度切換フラグFCが“0”にリセットされているので、ステップS23に移行し、前後進切換装置130が正常であって、この前後進切換装置130からの送信フレームを所定時間内に受信しているので、ステップS11に移行し、スロットル開度指令値θtkから実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θtk−θrk|が異常判断閾値θa以上である場合にはステップS14に移行して、警報装置150が作動状態となって電子制御スロットル弁22の異常を操縦者に報知してから、高開度側固着現象又は低開度側固着現象に応じて処理を行う。
【0089】
一方、前後進切換装置130に電源系統又は通信系統の異常や加速位置センサ134の異常が発生するか、LAN120のケーブルや無線通信に異常が発生して、通信系統の異常が発生することにより、前後進切換装置130から送信される送信フレームがECU42で受信できない状態となると、記憶装置のスロットル開度記憶領域に記憶されているスロットル開度指令値θtが更新されないことにより、ステップS6で算出される指令値変化量Δθtが“0”の状態を維持する。このため、ステップS7からステップS22に移行し、スロットル開度切換フラグFCが“0”にリセットされているので、ステップS23に移行し、前後進切換装置130からの送信フレームが所定時間以上受信されない状態となるので、ステップS24に移行して、警報装置150が作動されて、前後進切換装置130又はその通信系統が異常であることを表すブザー等の警報音、合成音声による警告ガイダンス、警報光の何れか1つ又はこれらの組み合わせによる警報が発せられ、次いで、ステップS25に移行して、補助入力ユニット140を空のノード141に接続することを促すガイダンス情報が液晶表示器151に表示されて、操縦者に前後進切換装置130が機能していないことを報知する。
【0090】
この報知によって操縦者が補助入力ユニット140を空のノード141に接続すると、LAN120を構築しているマスターがIPアドレスを割付けると共に、LAN120に参加している他のノードに接続された機器に補助入力ユニット140に割付けたIPアドレスを通知し且つこれら機器のIPアドレスを補助入力ユニット140に通知することにより、補助入力ユニット140がLAN120に参加し、スロットル開度指令値θtをデータ領域に格納した送信フレームの送信が可能となる。
【0091】
この補助入力ユニット140からの送信フレームをECU42で受信すると、ステップS26からステップS27に移行してスロットル開度指令値切換フラグFCが“1”にセットされる。このため、次に図6のステップS7からステップS22に移行したときにスロットル開度指令値切換フラグFCが“1”にセットされていることにより、ステップS10に移行して、スロットル開度指令値θtkから実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θtk−θrk|が異常判断閾値θa以上であるか否かを判定し、|θtk−θrk|<θaであるときには正常状態であると判断してステップS11で現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として記憶してからステップS12に移行して、燃料噴射量FDに基づいてインジェクタ13を制御すると共に、点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火制御を行い、|θtk−θrk|≧θaであるときには補助入力ユニット140又はその通信系統が異常であると判断してステップS14に移行する。
【0092】
さらに、操縦者が電子制御スロットル弁22で低開度側固着現象又は高開度側固着現象が発生したときに、操縦者の望むスロットル開度に手動制御したい場合には、非常用スロットル開閉機構34のガイドワイヤ34fを引っ張ることにより、回動レバー34c、連結ロッド34b及び回動レバー34aを介してスロットル弁TV6を回動させることができ、このスロットル弁TVの回動レバー24a及び連携ロッド24bを介して残りの各スロットル弁TV1〜TV5を開方向に調整することができ、操縦者の望むスロットル開度θrに手動調整制御することができる。
【0093】
なお、上記第1の実施形態においては、電子制御スロットル弁22の異常時にバイパス吸気弁41とバランス通路40を利用した吸入空気量の増加補正制御と、前後進切換装置130の異常又は通信系統の異常による前後進切換機能の喪失時の補助入力ユニット140による代替え処理と、非常用スロットル開閉機構34を使用したスロットル開度手動制御とを可能に構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これらの各機能を個別に設けるようにしてもよい。
【0094】
また、上記第1の実施形態においては、ECU42と前後進切換装置130とをLAN120で接続する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ECU42と前後進切換装置130とをハーネス等で直接電気的に接続する場合にも本発明を適用することができる。
さらに、上記第1の実施形態においては、スロットル開度及びシフト切換えをLAN120を通じて行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、シフト切換えについてはリモコンレバー131とシフト変換機構83との間をワイヤーケーブルで接続して機械的にシフト切換えを行うようにしてもよい。
【0095】
さらにまた、上記第1の実施形態においては、非常用スロットル開閉機構34のガイドワイヤ34fでスロットル開度を機械的に調整するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤに34fに代えて図12に示す回動レバー34cの回動角を任意に手動調整可能な手動調整機構90を設けるようにしてもよい。この手動調整機構90は、図12に示すように、ケース体91に設けた挿通孔92内にその内径と略等しい呼び径のねじ部93を挿通し、この挿通孔92の一部にねじ部93と同一ピッチで螺合する回転ねじ部94を回転自在に配設し、この回転ねじ部94の回動軸95のケース体91外に突出した端部に操作ハンドル96を取付け、ねじ部93にガイドカバー97で案内されるケーブル98を連結し、このケーブル98の他端が回動レバー34cに回動可能に連結にされた構成を有する。したがって、操作ハンドル96を正逆転させることにより、ねじ部93が前後進し、ケーブル98を介して回動レバー34cの回動位置を任意に調整して、スロットル弁TV1〜TV6のスロットル開度を任意に調整することができる。
【0096】
なおさらに、上記第1の実施形態においては、バランス通路40とバイパス吸気弁41を設けて電子制御スロットル弁22の下流側吸気通路に吸気を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図13に示すように、電子制御スロットル弁22と並列にパイパス通路77を設け、このパイパス通路77に電磁開閉弁78を配設して、電子制御スロットル弁22の異常時に電磁開閉弁78の開度をECU42で制御して吸入空気量を確保するようにしてもよい。
【0097】
また、図14に示すように、パイバス通路77に電磁開閉弁78に代えて、スロットル弁TV1〜TV6と同一の構成を有する非常用スロットル弁TV1′〜TV6′を設け、これら非常用スロットル弁TV1′〜TV6′をスロットル弁TV1〜TV6と同様に回動レバー24a、連携ロッド24bによって連携し、この非常用スロットル弁TV1′〜TV6′の何れか1つを第1の実施形態と同様に電動サーボモータ24dに対応する電動サーボモータ79で回動駆動し、この電動サーボモータ79をECU42で電子スロットル弁22が正常時には閉に、電子スロットル弁22が異常であるときには、スロットル開度指令値θtkに基づいて制御することにより、リンプホームに必要な空気量を確保することができる。この場合、電動サーボモータ79に代えて図12に示す手動調整機構90を適用して電子スロットル弁22が異常であるときに手動調整するようにしてもよく、さらにはリモコンレバー131とワイヤー等で機械的に連携することにより、電子スロット弁22が異常であるときに、リモコンレバー131の操作で運転者の意志に従った空気量を確保することができる。
【0098】
次に、本発明の第2の実施形態を図15及び図16について説明する。
この第2の実施形態では、電子制御スロットル弁22の電動サーボモータに断線等の通電異常が発生して、電動サーボモータによるスロットル開度の調整が不能となったときにリンプホーム機能を発揮させるようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、電子制御スロットル弁22が、図15に示すように、共通の回動軸SHに所定間隔を保ってスロットル弁TV1〜TV6を構成する6個の弁体VBを配設し、この回動軸SHの一端側に歯車機構201を介して正逆転駆動される電動サーボモータ202が連結され、他端に弁体VBの機械的中立位置を設定する機械的中立位置設定機構203が配設された構成を有する。
【0099】
機械的中立位置設定機構は203は、図16に示すように、一端が固定部に固定された回動軸SHを、スロットル弁TV1〜TV6を閉方向に付勢する圧縮バネ204と、この圧縮バネ204の他端に係合された回動軸SHの接線方向に摺動自在に案内された摺動体205と、この摺動体205に当接可能な回動軸SHの外周面に半径方向に突出形成された係合片206と、この係合片206をスロットル弁TV1〜TV6を開方向に付勢する圧縮バネ204より小さいバネ定数に設定された圧縮バネ207と、摺動体205の時計方向の回動を規制する中立位置設定部208とで構成されている。ここで、中立位置設定部208は、摺動体205の摺動方向と平行に配設され一端に操作ハンドル209が配設されたねじ軸210と、このねじ軸210に螺合するナット211と、このナット211に取付けられて摺動体205に反時計方向から係合する係合片212と、係合片212の回動を規制するねじ軸210と平行に配設されたガイドバー213とで構成されている。
【0100】
そして、機械的中立位置設定機構203によって電動サーボモータ202を非通電状態としたときの初期スロットル開度θrdが前述した第1の実施形態におけるリンプホーム時に必要とする最小限の吸入空気量を確保可能な実スロットル開度閾値θrpとなるように設定されている。
【0101】
この第2の実施形態によると、電動サーボモータ202が非通電状態であるときに、摺動体205が圧縮バネ204によって図16で見て右方に付勢されてその右端が中立位置設定部208の係合片212に当接されることにより、右方向への摺動が規制され、一方回動軸SHに形成された係合片206は圧縮バネ207によって反時計方向に付勢されて摺動体205に右方向から当接される。このとき圧縮バネ204のバネ定数が圧縮バネ207のバネ定数より大きく設定されているので、摺動体205は係合片212に当接した状態を維持し、回動軸SHが中立回動位置に保持される。この回動軸SHの中立回動位置では、各スロットルバルブTV1〜TV6の実スロットル開度θrがリンプホーム時に必要とする最低限の吸入空気量を確保可能な実スロットル開度閾値θrpに設定され、この状態で、電動サーボモータ202を例えば正転駆動することにより、各スロットル弁TV1〜TV6を圧縮バネ207に抗して全閉位置まで回動させることが可能となり、電動サーボモータ202を逆転駆動することにより、各スロットル弁TV1〜TV6を圧縮バネ204に抗して全開位置まで回動させることが可能となる。
【0102】
したがって、第1の実施形態と同様にリモコンレバー131がニュートラル位置Nにある状態ではスロットル開度指令値θtが“0”となることにより、電動サーボモータ202を正転駆動して回動軸SHを圧縮バネ207に抗して図16で見て時計方向に回動させて、各スロットル弁TV1〜TV6を全閉状態に保持して実スロットル開度θrを“0”とし、この状態から第1の実施形態と同様にリモコンレバー131で加速領域Eを最大加速位置側に回動させて、スロットル開度指令値θtが増加すると、これに応じて電動サーボモータ202を逆転駆動することにより、スロットル弁TV1〜TV6のスロットル開度を徐々に増加させることができる。
【0103】
その後、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpまで復帰すると係合片206が摺動体205に当接する状態となり、さらに回動軸SHを反時計方向に回動させると、摺動体205が係合片212から離間して圧縮バネ204に抗して左方に移動し、回動軸SHの反時計方向への回動を許容する。
【0104】
このように、電動サーボモータ202を正逆転駆動することにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrをリモコンレバー131によって選択されたスロットル開度指令値θtに一致するように制御することができるものであるが、電動サーボモータ202にハーネス断線やコイルの断線等が生じて出力トルクを発生できない通電異常状態となると、回動軸SHを回動させる入力トルクがなくなることにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpより全開側で制御されていた場合には、電動サーボモータ202の出力トルクが低下することにより、圧縮バネ204によって摺動体205を介して係合片206が図16で見て時計方向に戻され、摺動体205が中立位置設定部208の係合片212に当接する機械的中立位置で停止される。このときの各スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpに設定されていることから、リンプホームに必要とする最小限の吸入空気量を確保することができ、リンプホームに必要なエンジン回転速度を得ることができる。
【0105】
また、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpより全閉側に制御されている状態で電動サーボモータ202に通電異常が発生した場合には、電動サーボモータ202の出力トルクが低下するに従って圧縮バネ207によって係合片206が図16で見て反時計方向に戻されることにより、回動軸SHが反時計方向に回動されてスロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが徐々に増加し、係合片206が摺動体205に当接する機械的中立位置で回動軸SHの反時計方向の回動が停止され、実スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが実スロットル開度閾値θrpにとなり、リンプホームに必要とする最小限の吸入空気量を確保することができ、リンプホームに必要なエンジン回転速度を得ることができる。
【0106】
このようにして、電動サーボモータ202に通電異常が発生した場合でも、リンプホームに必要なエンジン回転速度を確保することができるので、この状態を維持して帰港することができ、船体を接岸する際には、シフト変換機構83を動作可能なエンジン回転速度例えば1500min−1まで低下させる必要がある。
【0107】
このため、接岸時には、中立位置設定部208のねじ軸210に設けた操作ハンドル209を例えば反時計方向に回動させることにより、ナット211を図16で見て右方向に移動させて係合片212を右方に移動させる。このように係合片212が右方に移動すると、摺動体205が圧縮バネ204の弾発力によって圧縮バネ206に抗して右動し、これに応じて係合片206が押圧されて回動軸SHが時計方向に回動し、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrが全閉方向に減少される。このようにして、吸入空気量を減少させてエンジン回転速度Neをシフト変換機構83が作動可能な速度まで低下させてからシフトリモコンレバー131でバックトロールRを選択することにより、ECU42でシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させてドッグクラッチ86を移動させ、後進ギヤ86Rに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を後進ギヤ86Rを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、後進可能な状態となって接岸が可能となる。
【0108】
また、リンプホーム中であっても、中立位置設定部208の操作ハンドル209を回転させることにより、機械的中立位置を任意に調整することが可能であるので、エンジン回転速度を高めたい場合には、操作ハンドル209を時計方向に回転させることにより、ナット211が図16で見て左方向に移動し、これに応じて係合片212によって、摺動体205が圧縮バネ204に抗して左動させることができ、これによって係合片206が圧縮バネ207によって反時計方向に回動されてスロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrを全開方向に増加させて吸入空気量を増加させることにより、エンジン回転速度を増加させることができる。また、操作ハンドル209を反時計方向に回転させることにより、スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrを全閉方向に減少させて吸入空気量を減少させてエンジン回転速度を減少させることができる。
【0109】
なお、上記第2の実施形態においては、中立位置設定部208のねじ軸210を操作ハンドル209で手動で回転させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図17に示すように、ねじ軸210に電動モータ220を連結すると共に、ECU42に電動モータ220を正逆転駆動制御するための駆動ユニット221を接続し、この駆動ユニット221で電動モータ220を正逆転駆動する駆動信号をECU42に入力し、ECU42で入力された駆動信号に基づいて電動モータ220を駆動制御する構成として、中立位置設定部208を電動制御するようにしてもよい。
【0110】
また、機械的中立位置設定機構203は図16の構成とする場合に限らず、圧縮バネ207を回動軸SHの他端側に配設したり、圧縮バネ204及び207に代えて回動軸SH周りに配設したコイルスプリングに、移動体205を回動軸SHの回動中心を中心とする回動リングにそれぞれ変更したり、中立位置設定部208として他の任意の直線駆動機構を適用したりすることができる。
【0111】
さらに、回動軸SHに6つの弁体VBを取付けるようにした場合について説明したが、1つの弁体VBのみを取付けて、個別にスロットル弁TV1〜TV6を構成し、各スロットル弁TV1〜TV6に個別に機械的中立位置設定機構203を設けるようにしてもよい。
さらには、図18に示すように第1の実施形態の電子制御スロットル弁22の連携ロッド24bに係合片206を形成して機械的中立位置設定機構203を適用するようにしてもよい。なお、連携ロッド24bに代えて回動レバー24aに機械的中立位置設定機構203を適用するようにしてもよい。
【0112】
次に、本発明の第3の実施形態を図19〜図22について説明する。
この第3の実施形態は、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象が発生したことを検出したときに、リンプホーム後の接岸を容易に行うことができるようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、エンジンとして、図19に示すように、ダブルオーバヘッドカム式の4サイクルのエンジン300が適用されている。このエンジン300は、ピストン301によって画成される燃焼室302にそれぞれカムシャフト303及び304によって開閉駆動される吸気バルブ305及び排気バルブ306が配設され、ピストンロッド307がクランクシャフト308に連結されている。
【0113】
カムシャフト303は、ポンプ311によって圧送される油タンク310内の作動油が油圧制御バルブ312で後述する電子制御ユニット(以下、ECUと称す)から入力される制御電流Ivに基づいて油圧制御されて供給される油圧式可変バルブタイミング制御機構313によって位相制御される。この油圧式可変バルブタイミング制御機構313は、入力される油圧に応じて、カムシャフト303をクランクシャフト308との目標とする位相差である目標相対回転角に制御する。
【0114】
クランクシャフト308にはその回転角θ1を検出するクランク角センサ315が設けられていると共に、カムシャフト303にはその回転角θ2を検出するカム角センサ316が設けられ、さらに吸気通路314に配設された電子制御スロットル弁22の上流側にエンジン300への吸入空気量を検出するエアフローメータ等の吸気量センサ317が配設され、さらに電子制御スロットル弁22にその実スロットル開度θrを検出するスロットル開度センサ318が配設されている。
【0115】
そして、各センサ315〜318がECU320に接続されると共に、第1実施形態で前述したリモコンレバー131を有する前後進切換装置130がLAN120を介して接続され、このECU320で油圧制御バルブ312及び電子制御スロットル弁22を制御する。
ECU320は、図20に示すバルブタイミング制御処理を実行する。このバルブタイミング制御処理は、先ず、ステップS40で、クランク角センサ315で検出した回転角θ1に基づいてエンジン回転速度Neを算出すると共に、吸気量センサ317で検出した吸入空気量Qaを読込み、次いで、ステップS41に移行して、後述する電子制御スロットル弁異常検出処理で電子制御スロットル弁22が正常であるか異常であるかを表すスロットル弁状態フラグFSが異常を表す“1”にセットされているか否かを判定し、これが“0”にリセットされているときには電子制御スロットル弁22が正常であるものと判断してステップS42に移行する。
【0116】
このステップS42では、通常目標相対角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnを算出し、次いでステップS43に移行して、算出した通常目標相対回転角VTnを目標相対回転角VTtとして設定し、これをECU320内に設けた記憶装置の目標相対回転角記憶領域に更新記憶してからステップS47に移行する。
【0117】
一方、ステップS41の判定結果がスロットル弁状態フラグFSが“1”にセットされているときには、電子制御スロットル弁22が異常であると判断してステップS44に移行する。このステップS44では、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択された否かを判定し、バックトロール位置Rが選択されていないときには前記ステップS42に移行し、バックトロール位置Rが選択されているときにはステップS45に移行する。
【0118】
このステップS45では、異常用目標相対回転角算出用マップを参照して正常用目標相対回転角VTnに比較してエンジン300のエンジン回転速度をシフト変換機構83でのシフト動作が可能な程度の回転速度例えば1500min−1程度に減少させるように設定された異常用目標相対回転角VTaを算出し、次いで、ステップS46に移行して、算出した異常用目標相対回転角VTaを目標相対回転角TVtとして設定し、これを記憶装置の目標相対回転角記憶領域に更新記憶してからステップS47に移行する。
【0119】
ステップS47では、クランク角センサ315で検出される現在の回転角θ1とカム角センサ316で検出される現在の回転角θ2とに基づいて実相対回転角VTrを算出し、次いでステップS48に移行して、記憶装置の目標相対回転角記憶領域に記憶されている目標相対回転角VTtから現在の実相対回転角VTrを減算して相対回転角偏差ΔVTを算出してからステップS49に移行する。
【0120】
このステップS49では、算出された相対回転角偏差ΔVTをもとに図20中に示す油圧制御バルブ312に対する制御電流Ivを算出し、次いでステップS50に移行して、算出した制御電流Ivを油圧制御バルブ312に出力してから前記ステップS40に戻る。
この図20の処理において、ステップS44の処理が接岸検出手段に対応し、ステップS45,S46の処理が回転速度減少補正手段に対応している。
【0121】
また、ECU320は、図21に示す電子制御スロットル弁異常検出処理を実行する。この電子制御スロットル弁異常検出処理は、図21に示すように、先ず、ステップS61で、スロットル開度指令基準値θt0から現在のスロットル開度指令値θtkを減算した値の絶対値|θt0−θtk|を算出することにより、指令値変化量Δθtを算出する。次いで、ステップS62に移行して、算出した指令値変化量Δθtが予め設定した変化量閾値Δθts以上であるか否かを判定し、Δθt≧Δθtsであるときにはスロットル開度指令値θtが所定量変化したものと判断してステップS63に移行して、現在のスロットル開度指令値θtkをスロットル開度指令基準値θt0として設定し、これを記憶装置のスロットル開度指令基準値記憶領域に更新記憶してからステップS64に移行する。
【0122】
このステップS64では、実スロットル開度基準値θr0からスロットル開度センサ318で検出した現在の実スロットル開度θrkを減算した値の絶対値|θr0−θrk|が変化量閾値Δθrs以上であるか否かを判定し、|θr0−θrk|≧Δθrsであるときには、電子制御スロットル弁22の実スロットル開度変化が一応正常であると判断してステップS65に移行し、現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として設定し、これを記憶装置の実スロットル開度基準値記憶領域に更新記憶してからステップS66に移行する。
【0123】
このステップS66では、現在のスロットル開度指令値θtkから現在の実スロットル開度θrkを減算した値|θtk−θrk|が異常判断閾値θa以上であるか否かを判定し、|θtk−θrk|<θaであるときには電子制御スロットル弁22が正常であると判断してステップS67に移行して、スロットル弁状態フラグFSを“0”にリセットしてからステップS61に戻る。
【0124】
一方、ステップS62の判定結果がΔθt<Δθtsであるときにはスロットル開度指令値θtの変化量が小さいものと判断して直接ステップS66に移行する。
さらに、前記ステップS64の判定結果が|θr0−θrk|<Δθrsであるときにはスロットル開度指令値θtの変化量に比較して実スロットル開度θrの変化量が少なく電子制御スロットル弁に固着異常が発生したものと判断してステップS68に移行して、現在の実スロットル開度θrkを実スロットル開度基準値θr0として設定し、これを記憶装置の実スロットル開度基準値記憶領域に更新記憶してからステップS69に移行する。
【0125】
このステップS69では、警報装置350を作動状態として、電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したことを操縦者に報知してからステップS70に移行して、現在の実スロットル開度θrkがリンプホーム時に必要とする最小限の吸気空気量を得るための実スロットル開度閾値θrp以上であるか否かを判定し、θrk≧θrpであるときには高開度側固着異常であると判断してステップS71に移行し、スロットル弁状態フラグFSを高開度側固着異常を表す“1”にセットしてから前記ステップS61に戻り、θrk<θrpであるときには低開度側固着異常であると判断してそのまま前記ステップS61に戻る。
また、ステップS66の判定結果が|θtk−θrk|≧θaであるときにも、電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したものと判断して前記ステップS69に移行する。
【0126】
この図21の処理がスロットル開度異常検出手段に対応している。
この第3の実施形態によると、図21のスロットル弁異常検出処理で、電子制御スロットル弁22が正常であると判断された場合に、スロットル弁状態フラグFSが“0”にリセットされるので、図20の処理が実行されたときにステップS41からステップS42に移行して、通常目標回転角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnを算出し、算出した通常目標相対回転角VTnと現在の実相対回転角VTrとの相対回転角偏差ΔVTを算出し(ステップS48)、この相対角偏差ΔVTをもとに制御電流算出用マップを参照して油圧制御バルブ312の油圧を制御する制御電流Ivを算出し、算出した制御電流Ivを油圧制御バルブ312に出力することにより、通常のバルブタイミング制御を行い、通常のエンジン出力トルクを得ることができる。
【0127】
一方、電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したときには、前述した第1の実施形態と同様にスロットル開度指令値θtの変化量と実スロットル開度θrの変化量とを比較することにより、固着異常が検出され、この固着異常が検出されると警報装置350が作動されて操縦者に電子制御スロットル弁22に固着異常が発生したことを報知すると共に、そのときの実スロットル開度θrkが実スロットル開度閾値θrpを超えているときに高開度側固着現象が発生したものと判断してスロットル弁状態フラグFSを“1”にセットする。
【0128】
このため、図20のバルブタイミング制御処理が実行されたときに、ステップS41からステップS44に移行し、リモコンレバー130で加速領域Eが選択されている状態では、リンプホーム中であると共に、高開度側固着異常によってリンプホームに必要とする吸入空気量を確保して、十分なエンジン回転速度を得ているものと判断してステップS42に移行して通常目標相対回転角VTnを算出し、この通常目標相対回転角VTnに実相対角VTrが一致するように油圧制御バルブ312を制御する状態を継続する。
【0129】
その後、帰港して、船体を接岸する際に、リモコンレバー131でバックトロール位置Rを選択すると、図20の処理でステップS44からステップS45に移行して異常用目標相対回転角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnに比較してエンジン回転速度をシフト変換機構83でのシフト変換が容易となる1500min−1程度に低下させる異常用目標相対回転角VTaを算出し、この異常用目標相対回転角VTaに実相対回転角VTrが一致するように油圧制御バルブ312が制御される。これによって燃焼室302に供給される吸入空気量が減少されてエンジン回転速度がシフト変換機構83でのシフト動作が可能な回転速度まで低下される。
【0130】
その後、ECU320でシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させてドッグクラッチ86を移動させ、後進ギヤ86Rに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を後進ギヤ86Rを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、後進可能な状態となって接岸が可能となる。
【0131】
また、上記説明では、電子制御スロットルバルブに高開度側固着異常が発生した場合について説明したが、前述した第2の実施形態のように、電子制御スロットル弁22の電動モータ202に断線、短絡異常等が発生することにより出力トルクが低下して、機械的中立位置設定機構203によって、リンプホーム時に必要とする最小限の吸入空気量を確保可能な実スロットル開度閾値θrpとなるように制御される場合でも、図21の電子制御スロットル弁異常検出処理で、スロットル弁状態フラグFSが“1”にセットされるので、帰港して、船体を接岸する際に、リモコンレバー131でバックトロール位置Rを選択すると、図20のバルブタイミング制御処理で、ステップS44からステップS45に移行して異常用目標相対回転角算出用マップを参照して通常目標相対回転角VTnに比較してエンジン回転速度をシフト変換機構83でのシフト変換が容易となる1500min−1程度に低下させる異常用目標相対回転角VTaを算出し、この異常用目標相対回転角VTaに実相対回転角VTrが一致するように油圧制御バルブ312が制御することが可能となり、容易に接岸させることができる。
【0132】
この第3の実施形態においては、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象等の異常が発生した場合にバルブタイミング制御によってシフト変換機構83でのシフトが可能な状態にエンジン回転速度を制御する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ECU320で、図22に示す点火時期制御処理を実行するようにしてもよい。この点火時期制御処理は、先ず、ステップS81で、エンジン回転速度Ne及び実スロットル開度θrをもとに図8に示す点火時期算出用マップを参照して基本点火時期SAを算出すると共に、算出した基本点火時期SAをECU320内に設けた記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶し、次いでステップS82に移行して、前述したスロットル弁状態フラグFSが高開度側固着異常を表す“1”にセットされているか否かを判定し、これが“1”にセットされているときには、ステップS83に移行して、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択されているか否かを判定し、バックトロール位置Rが選択されているときにはステップS84に移行して、点火時期補正値算出用マップを参照して点火時期を遅角側とする点火時期補正値γ(γ<1)を算出し、次いでステップS85に移行して、ステップS81で算出した点火時期SAを読出し、この点火時期SAに点火時期補正値γを乗算して新たな点火時期SAを算出し、算出した点火時期SAを記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶してからステップS86に移行する。
【0133】
このステップS86では、記憶装置の点火時期記憶領域に更新記憶されている点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行ってからステップS81に戻る。
一方、ステップS82の判定結果が、スロットル弁状態フラグFSが“0”にリセットされているとき即ち電子制御スロットル弁22が正常であるとき及びステップS83の判定結果がバックトロール位置Rではないときには直接ステップS86にジャンプする。
この図22の処理において、ステップS83の処理が接岸検出手段に対応し、ステップS84及びS85の処理が回転速度減少補正手段に対応している。
【0134】
この点火時期制御処理でも、電子制御スロットル弁22が正常である場合には、ステップS82からステップS86に移行して、実スロットル開度θrとエンジン回転速度Neとに基づいて算出される基本点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行う。一方、電子制御スロットル弁22に高開度側固着現象が発生すると、ステップS82からステップS83に移行して、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択されているか否かを判定し、バックトロール位置Rが選択されていないときにはリンプホーム中であると判断して、ステップS86に移行して、実スロットル開度θrとエンジン回転速度Neとに基づいて算出される点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期制御を行う。しかしながら、リモコンレバー131でバックトロール位置Rが選択されているときには接岸時であると判断して、シフト変換機構83でシフト切換えが可能となるエンジン回転速度となるように点火時期を補正する点火時期補正値γを算出し、次いでステップS85に移行して、基本点火時期SAに点火時期補正値γを乗算して新たな点火時期SAを算出し、これを点火時期記憶領域に更新記憶することにより、ステップS86で遅角された点火時期SAに基づいて点火プラグ14の点火時期が制御されることにより、エンジン回転数がシフト変換機構83でのシフト動作が可能な程度に低下され、その後、ECU320によってシフト変換機構83の電動回動機構ESMを回動させることにより、シフトロッド84をその軸周りに回動させてドッグクラッチ86を移動させ、後進ギヤ86Rに噛合させ、ドライブシャフト80の回転を、後進ギヤ86Rを介してプロペラシャフト6aに伝達させることにより、後進可能な状態となって接岸が可能となる。
【0135】
また、図22の点火時期制御処理に代えて、リモコンレバー131でバックトロール位置Rを選択したときに、実スロットル開度θrに基づいてエンジン320の燃料カット気筒数を設定し、設定した燃料カット気筒数に基づいて休筒制御を行うことにより、エンジン回転速度を低下させるようにしてもよい。
【0136】
さらに、図23に示すように、前後進切換装置130をシフト切換えについては機械的ケーブル400を介して船外機1のシフトロッドに連携する構成とし、この機械的ケーブル400の途中で分岐して、回動軸SH6に連結された回動レバー401の近傍まで延長すると共に、回動レバー401にもケーブル402を取付け、電子制御スロットル弁22の異常を検出したときに例えばECU42からの駆動信号によって両ケーブル400及び401を挟持結合する電動挟持機構403を設けることにより、接岸時にリモコンレバー131をバックトロール位置Rに切換えたときの機械的ケーブル400の移動によって回動レバー401を時計方向に回動させて各スロットル弁TV1〜TV6の実スロットル開度θrを全閉状態に制御するようにしてもよい。
【0137】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は請求項19に係る発明によれば、スロットル開度異常検出手段で電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに異常時吸入空気制御手段で少なくとも船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたので、必要とするエンジン回転速度を得ることができるという効果が得られる。
【0138】
また、請求項2又は請求項20に係る発明によれば、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度異常を検出したときに、その異常が低開度側の異常であるときに回転速度補正手段によって異常時吸入空気制御手段で確保した吸入空気量に応じた燃料噴射量及び/又は点火時期を制御してエンジン回転速度を増加補正して、帰港時に必要とするエンジン回転速度を得ることができるという効果が得られる。
【0139】
さらに、請求項3に係る発明によれば、電子制御スロットル弁を配設した吸気通路の下流側にバランス通路を連通させ、このバランス通路に吸気弁を取付けたので、この吸気弁を開閉することにより、必要な吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、電子制御スロットル弁と並列に配設したパイパス通路に外部から開閉操作可能な開閉弁を設けたので、開閉弁を外部から電気的に又は手動で開閉操作することにより、必要な吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
【0140】
なおさらに、請求項5に係る発明によれば、バイパス通路に設けた開閉弁の開度がリモコンレバーの操作状態に応じて調整されるので、運転者の要求する吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
なおさらに、請求項6に係る発明によれば、バイパス通路に設けた開閉弁を手動開閉することができるので、必要とする吸入空気量を調整することができるという効果が得られる。
【0141】
さらに、請求項7に係る発明によれば、電子制御スロットル弁に異常時操作部が機械的に連携されているので、スロットル開度異常時に異常時操作部を操作することにより、機械的に電子制御スロットル弁の弁開度を調整して、吸入空気量を確保することができるという効果が得られる。
さらにまた、請求項8又は請求項21に係る発明によれば、スロットル開度異常検出手段でスロットル開度の異常を検出し、且つ接岸検出手段で接岸を検出したときに、回転速度減少補正手段でエンジン回転速度を減少させるので、シフト機構のシフトを可能として容易に接岸することができるという効果が得られる。
【0142】
なおさらに、請求項9に係る発明によれば、リモコンレバーのスロットル開度指令値と、電子制御スロットル弁の実スロットル開度とを検出し、両者に基づいてスロットル開度異常を判断するようにしたので、電子制御スロットル弁の開度異常を確実に検出することができるという効果が得られる。
また、請求項10に係る発明によれば、スロットル開度指令値と実スロットル開度の偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するようにしているので、電子スロットル弁の開度異常をより正確に検出することができると共に、全閉側の異常であるか全開側の異常であるを判別することができるという効果が得られる。
【0143】
さらに、請求項11に係る発明によれば、スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するので、電子スロットル弁の開度異常を固着度合いを加味してより正確に判別することができるという効果が得られる。
さらにまた、請求項12に係る発明によれば、スロットル開度の異常を検出したときに、スロットル開度異常をブザー、発光素子等で報知するので、操縦者がスロットル開度異常を確実に認識することができるという効果が得られる。
【0144】
なおさらに、請求項13に係る発明によれば、通信系統異常検出手段で、リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出したときに、スロットル弁制御手段の外部指令値入力部に指令値補助入力部を接続して、この指令値補助入力部からスロットル開度指令を入力することにより、電子制御スロットル弁のスロットル開度を調整することができるという効果が得られる。
【0145】
また、請求項14に係る発明によれば、通信系統の異常を検出したときに、その異常を例えばブザー、発光素子等で構成する異常報知手段で報知するようにしたので、操縦者が通信系統の異常により電子制御スロットル弁の異常を容易に認識することができるという効果が得られる。
さらに、請求項15に係る発明によれば、スロットル弁の機械的中立位置がスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持され、このスロットル弁を電動駆動機構で全閉状態から全開状態まで駆動制御することによりスロットル開度を調整するので、電動駆動機構が異常状態となっても、スロットル開度が前回状態よりの機械的中立位置となるので、リンプホームを確実に行うことができるという効果が得られる。
【0146】
さらにまた、請求項16に係る発明によれば、スロットル開度異常時に電動駆動機構を駆動停止状態としてリンプホームに必要な吸入空気量を確保しながら、接岸時に回転速度補正手段でエンジン回転速度を減少させることにより、シフト機構のシフト操作を可能として、接岸を容易に行うことができるという効果が得られる。
【0147】
なおさらに、請求項17に係る発明によれば、電子制御スロットル弁を構成する弁体を付勢する2種類の弾性部材の中立位置設定機構を外部から電気的に又は手動で操作することにより、弁体の中立位置を変更して必要な吸入空気量を任意に調節することができるという効果が得られる。
また、請求項18に係る発明によれば、既存のスロットル弁であっても、回動レバー、連携ロッド及び電気的駆動機構を新設することにより、大幅な改造を行うことなく、電子制御スロットル弁の構成とすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す船外機の全体構成説明図。
【図2】図1の船外機のシフト機構を示す説明図。
【図3】図1の電子制御スロットル弁の側面図。
【図4】図1の電子制御スロットル弁のサイレンサを取り外した正面図。
【図5】図1の電子制御スロットル弁のスロットルボディを取り外した正面図。
【図6】ECUのエンジン制御処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】燃料噴射量算出用マップを示す説明図。
【図8】点火時期算出用マップを示す説明図。
【図9】燃料噴射量補正値算出用マップを示す説明図。
【図10】点火時期補正値算出用マップを示す説明図。
【図11】電子制御スロットル弁の異常状態の説明図。
【図12】第1の実施形態の変形例を示す構成説明図。
【図13】第1の実施形態の他の変形例を示す概略構成図。
【図14】第1の実施形態の更に他の変形例を示す構成説明図。
【図15】本発明の第2の実施形態を示す概略構成図。
【図16】第2の実施形態の機械的中立設定機構を示す構成図。
【図17】第2の実施形態の変形例を示す構成図。
【図18】第2の実施形態の他の変形例を示す構成図。
【図19】本発明の第3の実施形態を示す概略構成図。
【図20】第3の実施形態のバルブタイミング制御処理を示すフローチャート。
【図21】第3の実施形態のスロットル弁異常検出処理を示すフローチャート。
【図22】第3の実施形態の変形例を示す点火時期制御処理のフローチャート。
【図23】第3の実施形態の他の変形例を示す構成図。
【符号の説明】
1:船外機、2:エンジン、4:アッパケース、5:ロアケース、6:プロペラ、7:シリンダボディ、10:クランク軸、12:クランク室、13:インジェクタ14:点火プラグ、15:排気ポート、19:吸気通路、20:リード弁、22:電子制御スロットル弁、24a:回動レバー、24b:連携ロッド、24c:スロットル側ギヤ、24d:電動サーボモータ、24e:モータ側ギヤ、34:非常用スロットル開閉機構、40:バランス通路、41:バイパス吸気弁、42:ECU、43:エンジン回転数センサ、44:吸気温センサ、45:スロットル開度センサ、59:オイルポンプ、ESM:回転駆動機構、83:シフト変換機構、90:手動調整機構、120:LAN、130:前後進切換装置、131:リモコンレバー、134:加速位置センサ、140:補助入力ユニット、141:空きノード、150:警報装置、151:液晶表示器、SH:回動軸、202:電動サーボモータ、203:機械的中立位置設定機構、204:圧縮バネ、205:摺動体、206:係合片、208:中立位置設定部、209:操作ハンドル、220:電動モータ、221:駆動ユニット、300:エンジン、303:カムシャフト、312:油圧制御バルブ、313:バルブタイミング制御機構、320:ECU、350:警報装置、400:機械的ケーブル、401:回動レバー、402:ケーブル、403:電動挟持機構。
Claims (21)
- 船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段とを備えたことを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
- 船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出したときに少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保する異常時吸入空気制御手段と、前記スロットル開度異常検出手段で検出したスロットル開度異常が低開度側での異常であるときに、エンジン回転速度を増加補正する回転速度増加補正手段とを備えたことを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
- 前記異常時吸入空気制御手段は、多気筒に独立して設けた前記電子制御スロットル弁を配設した吸気通路における当該電子制御スロットル弁の下流側に連通するバランス通路を設け、該バランス通路に前記電子制御スロットル弁の異常時に開閉可能な吸気弁を取付けた構成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記異常時吸入空気制御手段は、前記電子制御スロットル弁と並列に配設した途中に外部から開閉操作可能な開閉弁を有するバイパス通路を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記開閉弁は、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記各開閉弁の開度を同時に調整する開度制御手段を備えていることを特徴とする請求項4記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記開閉弁は、手動開閉する手動開閉機構を有することを特徴とする請求項4記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記異常時吸入空気制御手段は、前記電子制御スロットル弁に機械的に連携する異常時操作部を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、接岸時を検出する接岸検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出し、且つ前記接岸検出手段で接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少補正する回転速度減少補正手段とを備えたことを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
- 前記スロットル開度異常検出手段は、前記リモコンレバーのスロットル開度指令値を検出するスロットル開度指令値検出手段と、前記電子制御スロットル弁の実スロットル開度を検出する実スロットル開度検出手段と、前記スロットル開度指令値及び実スロットル開度に基づいてスロットル開度異常を判断する異常判断手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記異常判断手段は、前記スロットル開度指令値と前記実スロットル開度との偏差が異常判断閾値を超えているときにスロットル開度異常と判断するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記異常判断手段は、前記スロットル開度指令値の変化量に対する実スロットル開度の変化量が少ないときにスロットル開度異常と判断するように構成されていることを特徴とする請求項9記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記スロットル開度異常検出手段は、スロットル開度異常を検出したときに、当該スロットル開度異常を報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記リモコンレバーとスロットル弁制御手段との間の通信系統の異常を検出する通信系統異常検出手段を備え、前記スロットル弁制御手段は、前記通信系統異常検出手段で通信系統の異常を検出したときに、リモコンレバーのスロットル開度指令値に相当するスロットル開度指令値を入力する外部指令値入力部を有すると共に、当該外部指令値入力部に着脱可能なスロットル開度指令値を出力する指令値補助入力部を備えていることを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
- 前記通信系統異常検出手段で通信系統の異常を検出したときに、当該通信系統異常を報知する異常報知手段を備えていることを特徴とする請求項13記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁は、機械的中立位置でスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持されたスロットル弁と、該スロットル弁を弾性に抗して全閉状態から全開状態まで駆動制御する電動駆動機構とを備えていることを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
- 船外機用エンジンと、該船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーと、該リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁を制御するスロットル弁制御手段とを備えた船外機用エンジンの制御装置において、前記電子制御スロットル弁は、機械的中立位置でスロットル開度が全開状態寄りの所定スロットル開度に弾性保持されたスロットル弁と、該スロットル弁を弾性に抗して全閉状態から全開状態まで駆動制御する電動駆動機構とを有し、さらに前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出するスロットル開度異常検出手段と、接岸時を検出する接岸検出手段と、該スロットル開度異常検出手段で開度異常を検出し、且つ前記接岸検出手段で接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少補正する回転速度減少補正手段とを備えたことを特徴とする船外機用エンジンの制御装置。
- 前記電子制御スロットル弁は、弁体を互いに逆方向に付勢する2種類の弾性部材と、該2種類の弾性部材による弁体の機械的中立位置を設定する中立位置設定機構とを備え、前記中立位置設定機構は外部から設定操作可能に構成されていることを特徴とする請求項14又は15に記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 前記電子制御スロットル弁は、前記船外機用エンジンの気筒数に対応する複数のスロットル弁を有し、該複数のスロットル弁の回動軸が回動レバーを介して連携ロッドに連結され、該連携ロッドが電気的駆動機構に連結された構成を有することを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載の船外機用エンジンの制御装置。
- 船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに、少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保するようにしたことを特徴とする船外機用エンジンの制御方法。
- 船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出したときに、少なくとも前記船外機用エンジンに対する必要最小限の吸入空気量を確保すると共に、スロットル開度異常が低開度側での異常であるときに、エンジン回転速度を増加させるように制御することを特徴とする船外機用エンジンの制御方法。
- 船外機用エンジンの吸入空気量を制御する電子制御スロットル弁と、該電子制御スロットル弁の開度を遠隔操作するリモコンレバーとを備え、前記リモコンレバーの操作状態に応じて前記電子制御スロットル弁のスロットル開度を制御する船外機用エンジンの制御方法において、前記電子制御スロットル弁の開度異常を検出した状態で、接岸時を検出したときに、エンジン回転速度を減少させるように制御することを特徴とする船外機用エンジンの制御方法。
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A521 | Written amendment |
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A02 | Decision of refusal |
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