JP2004090821A - アクチュエータ用ブーツ - Google Patents
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Abstract
【課題】アクチュエータのロッドの円滑な移動を許容しつつ、ブーツ内部への水の浸入を極力防止する。ブーツ内部に水が浸入することがあっても、ブーツを取り外すことなく排水ができるようにする。このような構造を安価に提供する。
【解決手段】シリンダ孔11の開口部とプッシュロッド17の突出部分との間を伸縮可能に覆うブーツ26の円筒部26dの下端に弁27を設ける。弁27を、ブーツ26の内部圧力が変化するのに伴って開するよう、スリットで形成する。弁27の下側周囲を補強リブ28にて囲繞する。
【選択図】 図1
【解決手段】シリンダ孔11の開口部とプッシュロッド17の突出部分との間を伸縮可能に覆うブーツ26の円筒部26dの下端に弁27を設ける。弁27を、ブーツ26の内部圧力が変化するのに伴って開するよう、スリットで形成する。弁27の下側周囲を補強リブ28にて囲繞する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行車両のブレーキやクラッチを液圧作動する液圧マスタシリンダやスレーブシリンダ,ホイールシリンダを始め、油圧シリンダやエアシリンダ等の各種アクチュエータに用いられるブーツに係り、詳しくは、ブーツの内部に水が入り込むのを防止した構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の液圧式ドラムブレーキを作動するアクチュエータとして、ホイールシリンダが用いられている。
【0003】
このホイールシリンダは、ドラムブレーキのバックプレート内面に固着されるシリンダボディにシリンダ孔を穿設し、該シリンダ孔の内部にプッシュロッドを移動可能に配設し、該シリンダ孔の開口部と、この開口部から突出するプッシュロッドの突出部分との間にブーツを伸縮可能に被着して、シリンダ孔の内部に雨水や塵埃が侵入しないようにしている。
【0004】
上述のブーツには、小さな通気孔と、この通気孔の外側を囲う防水リブとが設けられ、プッシュロッドの移動に連れてブーツが伸縮した際には、通気孔を通して内外の空気を給排し、内部圧力の上昇を防止することによって、プッシュロッドの移動をスムーズに行わせ、また常時は、防水リブによって通気孔からブーツ内に雨水が浸入しないようにしている。
【0005】
(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−201201号公報(第2−3頁、図9)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ホイールシリンダのブーツにかかる水は、降雨のような上からばかりではなく、路面にたたきつけられた雨水の跳ね返りやわだち内のたまり水、高圧洗車機の高圧水等の様々な方向から勢いよくかかり、通気孔が小さくてその外側を防水リブが囲うとはいえ、通気孔が常時開口したままの構造では、ブーツの内部に水が浸入することは避けられず、また一旦ブーツ内部に水が浸入した場合には、ブーツを取り外す以外に排水は困難であった。
【0008】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、ロッドの円滑な移動を許容しつつ、ブーツ内部への水の浸入を極力防止し、またブーツ内部に水が浸入することがあっても、ブーツを取り外すことなく排水することのできるアクチュエータ用ブーツを安価に提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的にしたがって、第1発明は、シリンダボディに穿設されたシリンダ孔に、ロッドを移動可能に配設したアクチュエータにあって、前記シリンダ孔の開口部と、この開口部から突出配置される前記ロッドの突出部分との間を伸縮可能に覆うアクチュエータ用ブーツにおいて、前記ブーツの最下部に、該ブーツの非伸縮時には閉し、該ブーツが伸縮してブーツの内部圧力が変化した際には開する弁を設けたことを特徴としている。第2発明は、第1発明の弁が、ブーツに切り込んだスリットであることを特徴とし、第3発明は、第2発明の弁の周囲を補強リブにて囲繞することを特徴としている。さらに、第4発明では、第1〜第4発明のいずれかにおいて、アクチュエータとブーツのいずれか一方に、ブーツの内部圧力が減少するのに伴って開する吸気弁を設けたことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のブーツを、自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダに適用した形態例を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明の第1形態例を示すもので、自動二輪車1は、車体フレーム2の後側に固設されたガセット3にはステップバー4が突設されており、該ステップバー4の近傍にブレーキペダル5が支軸6を用いて枢支され、ガセット3の上部に液圧マスタシリンダ7が固設されている。
【0011】
液圧マスタシリンダ7は、ブレーキペダル5の踏み操作で発生した液圧を後輪ブレーキ(図示せず)へ供給し、該後輪ブレーキを液圧作動して後輪を制動するアクチュエータで、シリンダボディ10の下側の二箇所をガセット3の上部にボルト止めして、車体前後方向に配設されている。したがって、本形態例の液圧マスタシリンダ7は、自動二輪車の車体の比較的低位置に配設されている。
【0012】
シリンダボディ10には、有底のシリンダ孔11が車体後部側を開口して設けられ、このシリンダ孔11にピストン12を液密かつ移動可能に内挿して、シリンダ孔11の車体後部側に画成された液圧室(図示せず)と、前述の後輪ブレーキとが配管13にて接続されている。シリンダボディ10の上方には、リザーバ14がシートレール15に固着され、該リザーバ14とシリンダ孔11とが配管16にて接続されており、シリンダ孔11から車体後部側に突出するプッシュロッド17にブレーキペダル5が枢着されている。
【0013】
プッシュロッド17は、シリンダ孔11の開口部に差し込んだ先端17aを止め輪20で抜け止めして、シリンダボディ10の車体後側でシリンダ中心軸上に配設されており、後端17bにブレーキペダル5が支軸21とヨーク22及び調整ナット23を用いて揺動可能に連結されている。シリンダボディ10の後端と調整ナット23との間にはリターンスプリング24がリテーナ25を介して縮設されており、その外側にブーツ26を被着して、シリンダ孔11の内部に雨水や塵埃が侵入しないようにしている。
【0014】
上記ブーツ26は、シリンダボディ後端のフランジ部10aとリテーナ25に係着される嵌合部26a,26bと、これらの間でプッシュロッド17の突出部分やリターンスプリング24を覆う蛇腹部26c及び円筒部26dとからなっており、プッシュロッド17がシリンダ軸方向へ移動するのに伴って、蛇腹部26cを拡縮するようになっている。蛇腹部26cは、シリンダボディ側へ向けて拡径するテーパ状に形成され、円筒部26dは、この蛇腹部26cのシリンダボディ側に該蛇腹部26cよりも大径に形成されており、ブーツ26の最下部である円筒部26dの下端には、スリットをシリンダ中心軸と交差方向へ切り込んだ弁27が設けられている。
【0015】
上記弁27は、プッシュロッド17が伸張位置または縮小位置にある非作動時には閉していて、ブーツ26の内部を防水・防塵している。また、プッシュロッド17がシリンダボディ方向へ移動した場合には、蛇腹部26cがこれに連れて伸張し、ブーツ26の内部容積が拡大して減圧されるため、弁27が開してブーツ26の内部に外気を導入し、プッシュロッド17がシリンダボディ方向へ移動した場合には、蛇腹部26cがこれに連れて縮小し、ブーツ26の内部容積が減少して増圧されるため、弁27が開してブーツ26の内部空気を外部へ排出することにより、プッシュロッド17の移動を円滑に行わせるようにしている。
【0016】
円筒部26dの下側には、短円筒状の補強リブ28が弁27を囲繞して設けられており、弁27として用いたスリットが何らかの理由で拡大することがあっても、補強リブ28以上に拡がることがないようにしている。
【0017】
以上のように、本形態例は、ブーツ26の円筒部26dに、スリットを用いた弁27を設けたことにより、プッシュロッド17が作動してブーツ26の蛇腹部26cが伸縮し、ブーツ27の内部圧力が変化した場合にのみ、弁27を自動的に開させてブーツ27内の空気を給排するので、プッシュロッド17の移動をスムーズに行わせることができ、またプッシュロッド17が作動しないときには弁27が自然に閉じるので、ブーツ26内への水の浸入をよく防止することができる。
【0018】
さらに本形態例は、弁27をブーツ26の最下部である円筒部26dの下端に設けているため、ブーツ26の内部に、路面から跳ね返った雨水やわだち内のたまり水、高圧洗車機の高圧水等の水が浸入することがあっても、浸入水はブーツ最下部の弁27の周囲に集められ、該弁27から排気と同時に効率よく排水することができる。したがって、ブーツを取り外す以外に排水が困難であった従来に較べると、メンテナンス性と作業性に優れている。また、本形態例の弁27は、ブーツ26に切り込むのみのスリットであるため、形成が頗る容易で低コストに製作できる。しかも、弁27の周囲を囲う補強リブ28が、スリットの亀裂拡大を有効に防ぐので、耐久性にも優れている。
【0019】
次に、本発明の第2,第3形態例を図5〜図7に基づいて説明する。図中、第1形態例と同一の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略し、また必要に応じて、第1形態例に用いた図1〜図4を適宜参酌するものとする。
【0020】
図5は、本発明の第2形態例を示すもので、前述の第1形態例に追加して、アクチュエータの構成部品であるリテーナ25に吸気弁30を付設したものである。
【0021】
吸気弁30は、リテーナ25の上部を内外に貫通する吸気孔31と、リテーナ25の内側に吸気孔31を覆って設けられる可撓性の弁体32とからなっており、プッシュロッド17がシリンダボディ方向へ移動するのに連れて蛇腹部26cが伸張し、ブーツ26の内部容積が拡大して減圧した時に、弁体32がブーツ26の内方向へ撓んで開弁し、吸気孔31からブーツ26の内部に外気を導入するようになっている。
【0022】
吸気弁30のこのような開弁作動は、ブーツ26の内部が減圧した時にのみ弁27に優先して行われるように設定されているため、弁27の開弁は、蛇腹部26が縮小した際の排気時のみとなる。したがって、本形態例は、排気専用の弁27と吸気専用の吸気弁30とに機能が分かれているため、排気専用の弁27からブーツ26内に水が浸入する虞は第1形態例に較べても極めて少なく、また吸気弁30も、リテーナ25の上部位置にあって、吸気時以外は閉弁状態が維持されているので、吸気弁30からブーツ26内に水が浸入する虞も極めて少ない。
【0023】
図6及び図7は、本発明の第3形態例を示すもので、弁40は、円筒部26dの下端をコ字状に切り込んで形成された吸気用弁体26eと、該吸気用弁体26eの形成によって円筒部26dに残されたコ字状の開口41と、円筒部26dの下面に付設された可撓性の排気用弁体42とからなっている。
【0024】
排気用弁体42は、吸気用弁体26eよりも大きな矩形に形成されており、吸気用弁体26eと開口41との外側を覆って設けられている。このように構成される弁40は、プッシュロッド17が伸張位置または縮小位置にある非作動時に、弁体26e,42のいずれも閉していて、ブーツ26の内部を防水・防塵している。
【0025】
また、蛇腹部26cの縮小によってブーツ26の内部が減圧すると、吸気用弁体26eのみがブーツ26の内側に撓み、開口41が面積を拡大してブーツ26の外部と連通し、該開口41を通してブーツ26の内部に外気が導入される。さらに、蛇腹部26cの伸張によってブーツ26の内部が増圧した場合には、弁体26e,42の双方がブーツ26の外側に撓むが、開口41が面積を拡大して吸気用弁体26eの側部を通してブーツ26の外部と連通し、該開口41を通してブーツ26の内部空気が外部へ排出される。
【0026】
なお、本発明の弁を、十字状や放射状のスリットとすることもできる。補強リブは、スリットと組み合わせして設けることが望ましいが、補強リブは必ずしも併用する必要はない。吸気弁は、形態例で例示したアクチュエータに限らず、ブーツに直接設けることもできる。
【0027】
さらに本発明は、走行車両用の液圧マスタシリンダやスレーブシリンダ,ホイールシリンダを始め、油圧シリンダやエアシリンダ等の各種アクチュエータに幅広く用いることが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアクチュエータ用ブーツによれば、ロッドが伸縮するとき以外は常に弁が閉じているので、ロッドの円滑な移動を許容しつつも、ブーツ内部への水の浸入を極力防止することができる。また、ブーツの内部に水が浸入することがあっても、浸入水をブーツ最下部の弁近傍に集めて、弁から排気と同時に排水を簡便に行うことができる。したがって、ブーツを取り外す以外には排水が困難であった従来に較べると、メンテナンス性と経済性に優れている。
【0029】
また、ブーツにスリットを切り込んで、このスリットを弁とすることにより、大幅な低コスト化が可能となる。さらに、この弁の周囲を補強リブで囲繞することにより、スリットの亀裂拡大を有効に防いで、耐久性の向上が図れる。また、別途の吸気弁を併用することにより、ブーツ下部の弁は排気と排水専用となるので、ブーツ内部への水の浸入をより一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1形態例を示す自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダの要部断面正面図
【図2】本発明の第1形態例を示す後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダを自動二輪車の車体に取り付け状態の正面図
【図3】本発明の第1形態例を示す自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダの要部正面図
【図4】本発明の第1形態例を示すブーツの要部断面正面図
【図5】本発明の第2形態例を示す自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダの要部断面図
【図6】本発明の第3形態例を示すブーツの要部断面正面図
【図7】本発明の第3形態例を示すブーツの要部底面図
【符号の説明】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、5…ブレーキペダル、7…液圧マスタシリンダ(本発明のアクチュエータ)、10…シリンダボディ、10a…フランジ部、11…シリンダ孔、12…ピストン、17…プッシュロッド(本発明のロッド)、17a…先端、17b…後端、22…ヨーク、23…調整ナット、24…リターンスプリング、25…リテーナ、26…ブーツ、26a,26b…嵌合部、26c…蛇腹部、26d…円筒部、26e…吸気用弁体、27,40…弁、28…補強リブ、30…吸気弁、31…吸気孔、32…弁体、41…開口、42…排気用弁体
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行車両のブレーキやクラッチを液圧作動する液圧マスタシリンダやスレーブシリンダ,ホイールシリンダを始め、油圧シリンダやエアシリンダ等の各種アクチュエータに用いられるブーツに係り、詳しくは、ブーツの内部に水が入り込むのを防止した構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の液圧式ドラムブレーキを作動するアクチュエータとして、ホイールシリンダが用いられている。
【0003】
このホイールシリンダは、ドラムブレーキのバックプレート内面に固着されるシリンダボディにシリンダ孔を穿設し、該シリンダ孔の内部にプッシュロッドを移動可能に配設し、該シリンダ孔の開口部と、この開口部から突出するプッシュロッドの突出部分との間にブーツを伸縮可能に被着して、シリンダ孔の内部に雨水や塵埃が侵入しないようにしている。
【0004】
上述のブーツには、小さな通気孔と、この通気孔の外側を囲う防水リブとが設けられ、プッシュロッドの移動に連れてブーツが伸縮した際には、通気孔を通して内外の空気を給排し、内部圧力の上昇を防止することによって、プッシュロッドの移動をスムーズに行わせ、また常時は、防水リブによって通気孔からブーツ内に雨水が浸入しないようにしている。
【0005】
(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−201201号公報(第2−3頁、図9)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ホイールシリンダのブーツにかかる水は、降雨のような上からばかりではなく、路面にたたきつけられた雨水の跳ね返りやわだち内のたまり水、高圧洗車機の高圧水等の様々な方向から勢いよくかかり、通気孔が小さくてその外側を防水リブが囲うとはいえ、通気孔が常時開口したままの構造では、ブーツの内部に水が浸入することは避けられず、また一旦ブーツ内部に水が浸入した場合には、ブーツを取り外す以外に排水は困難であった。
【0008】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、ロッドの円滑な移動を許容しつつ、ブーツ内部への水の浸入を極力防止し、またブーツ内部に水が浸入することがあっても、ブーツを取り外すことなく排水することのできるアクチュエータ用ブーツを安価に提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的にしたがって、第1発明は、シリンダボディに穿設されたシリンダ孔に、ロッドを移動可能に配設したアクチュエータにあって、前記シリンダ孔の開口部と、この開口部から突出配置される前記ロッドの突出部分との間を伸縮可能に覆うアクチュエータ用ブーツにおいて、前記ブーツの最下部に、該ブーツの非伸縮時には閉し、該ブーツが伸縮してブーツの内部圧力が変化した際には開する弁を設けたことを特徴としている。第2発明は、第1発明の弁が、ブーツに切り込んだスリットであることを特徴とし、第3発明は、第2発明の弁の周囲を補強リブにて囲繞することを特徴としている。さらに、第4発明では、第1〜第4発明のいずれかにおいて、アクチュエータとブーツのいずれか一方に、ブーツの内部圧力が減少するのに伴って開する吸気弁を設けたことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のブーツを、自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダに適用した形態例を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明の第1形態例を示すもので、自動二輪車1は、車体フレーム2の後側に固設されたガセット3にはステップバー4が突設されており、該ステップバー4の近傍にブレーキペダル5が支軸6を用いて枢支され、ガセット3の上部に液圧マスタシリンダ7が固設されている。
【0011】
液圧マスタシリンダ7は、ブレーキペダル5の踏み操作で発生した液圧を後輪ブレーキ(図示せず)へ供給し、該後輪ブレーキを液圧作動して後輪を制動するアクチュエータで、シリンダボディ10の下側の二箇所をガセット3の上部にボルト止めして、車体前後方向に配設されている。したがって、本形態例の液圧マスタシリンダ7は、自動二輪車の車体の比較的低位置に配設されている。
【0012】
シリンダボディ10には、有底のシリンダ孔11が車体後部側を開口して設けられ、このシリンダ孔11にピストン12を液密かつ移動可能に内挿して、シリンダ孔11の車体後部側に画成された液圧室(図示せず)と、前述の後輪ブレーキとが配管13にて接続されている。シリンダボディ10の上方には、リザーバ14がシートレール15に固着され、該リザーバ14とシリンダ孔11とが配管16にて接続されており、シリンダ孔11から車体後部側に突出するプッシュロッド17にブレーキペダル5が枢着されている。
【0013】
プッシュロッド17は、シリンダ孔11の開口部に差し込んだ先端17aを止め輪20で抜け止めして、シリンダボディ10の車体後側でシリンダ中心軸上に配設されており、後端17bにブレーキペダル5が支軸21とヨーク22及び調整ナット23を用いて揺動可能に連結されている。シリンダボディ10の後端と調整ナット23との間にはリターンスプリング24がリテーナ25を介して縮設されており、その外側にブーツ26を被着して、シリンダ孔11の内部に雨水や塵埃が侵入しないようにしている。
【0014】
上記ブーツ26は、シリンダボディ後端のフランジ部10aとリテーナ25に係着される嵌合部26a,26bと、これらの間でプッシュロッド17の突出部分やリターンスプリング24を覆う蛇腹部26c及び円筒部26dとからなっており、プッシュロッド17がシリンダ軸方向へ移動するのに伴って、蛇腹部26cを拡縮するようになっている。蛇腹部26cは、シリンダボディ側へ向けて拡径するテーパ状に形成され、円筒部26dは、この蛇腹部26cのシリンダボディ側に該蛇腹部26cよりも大径に形成されており、ブーツ26の最下部である円筒部26dの下端には、スリットをシリンダ中心軸と交差方向へ切り込んだ弁27が設けられている。
【0015】
上記弁27は、プッシュロッド17が伸張位置または縮小位置にある非作動時には閉していて、ブーツ26の内部を防水・防塵している。また、プッシュロッド17がシリンダボディ方向へ移動した場合には、蛇腹部26cがこれに連れて伸張し、ブーツ26の内部容積が拡大して減圧されるため、弁27が開してブーツ26の内部に外気を導入し、プッシュロッド17がシリンダボディ方向へ移動した場合には、蛇腹部26cがこれに連れて縮小し、ブーツ26の内部容積が減少して増圧されるため、弁27が開してブーツ26の内部空気を外部へ排出することにより、プッシュロッド17の移動を円滑に行わせるようにしている。
【0016】
円筒部26dの下側には、短円筒状の補強リブ28が弁27を囲繞して設けられており、弁27として用いたスリットが何らかの理由で拡大することがあっても、補強リブ28以上に拡がることがないようにしている。
【0017】
以上のように、本形態例は、ブーツ26の円筒部26dに、スリットを用いた弁27を設けたことにより、プッシュロッド17が作動してブーツ26の蛇腹部26cが伸縮し、ブーツ27の内部圧力が変化した場合にのみ、弁27を自動的に開させてブーツ27内の空気を給排するので、プッシュロッド17の移動をスムーズに行わせることができ、またプッシュロッド17が作動しないときには弁27が自然に閉じるので、ブーツ26内への水の浸入をよく防止することができる。
【0018】
さらに本形態例は、弁27をブーツ26の最下部である円筒部26dの下端に設けているため、ブーツ26の内部に、路面から跳ね返った雨水やわだち内のたまり水、高圧洗車機の高圧水等の水が浸入することがあっても、浸入水はブーツ最下部の弁27の周囲に集められ、該弁27から排気と同時に効率よく排水することができる。したがって、ブーツを取り外す以外に排水が困難であった従来に較べると、メンテナンス性と作業性に優れている。また、本形態例の弁27は、ブーツ26に切り込むのみのスリットであるため、形成が頗る容易で低コストに製作できる。しかも、弁27の周囲を囲う補強リブ28が、スリットの亀裂拡大を有効に防ぐので、耐久性にも優れている。
【0019】
次に、本発明の第2,第3形態例を図5〜図7に基づいて説明する。図中、第1形態例と同一の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略し、また必要に応じて、第1形態例に用いた図1〜図4を適宜参酌するものとする。
【0020】
図5は、本発明の第2形態例を示すもので、前述の第1形態例に追加して、アクチュエータの構成部品であるリテーナ25に吸気弁30を付設したものである。
【0021】
吸気弁30は、リテーナ25の上部を内外に貫通する吸気孔31と、リテーナ25の内側に吸気孔31を覆って設けられる可撓性の弁体32とからなっており、プッシュロッド17がシリンダボディ方向へ移動するのに連れて蛇腹部26cが伸張し、ブーツ26の内部容積が拡大して減圧した時に、弁体32がブーツ26の内方向へ撓んで開弁し、吸気孔31からブーツ26の内部に外気を導入するようになっている。
【0022】
吸気弁30のこのような開弁作動は、ブーツ26の内部が減圧した時にのみ弁27に優先して行われるように設定されているため、弁27の開弁は、蛇腹部26が縮小した際の排気時のみとなる。したがって、本形態例は、排気専用の弁27と吸気専用の吸気弁30とに機能が分かれているため、排気専用の弁27からブーツ26内に水が浸入する虞は第1形態例に較べても極めて少なく、また吸気弁30も、リテーナ25の上部位置にあって、吸気時以外は閉弁状態が維持されているので、吸気弁30からブーツ26内に水が浸入する虞も極めて少ない。
【0023】
図6及び図7は、本発明の第3形態例を示すもので、弁40は、円筒部26dの下端をコ字状に切り込んで形成された吸気用弁体26eと、該吸気用弁体26eの形成によって円筒部26dに残されたコ字状の開口41と、円筒部26dの下面に付設された可撓性の排気用弁体42とからなっている。
【0024】
排気用弁体42は、吸気用弁体26eよりも大きな矩形に形成されており、吸気用弁体26eと開口41との外側を覆って設けられている。このように構成される弁40は、プッシュロッド17が伸張位置または縮小位置にある非作動時に、弁体26e,42のいずれも閉していて、ブーツ26の内部を防水・防塵している。
【0025】
また、蛇腹部26cの縮小によってブーツ26の内部が減圧すると、吸気用弁体26eのみがブーツ26の内側に撓み、開口41が面積を拡大してブーツ26の外部と連通し、該開口41を通してブーツ26の内部に外気が導入される。さらに、蛇腹部26cの伸張によってブーツ26の内部が増圧した場合には、弁体26e,42の双方がブーツ26の外側に撓むが、開口41が面積を拡大して吸気用弁体26eの側部を通してブーツ26の外部と連通し、該開口41を通してブーツ26の内部空気が外部へ排出される。
【0026】
なお、本発明の弁を、十字状や放射状のスリットとすることもできる。補強リブは、スリットと組み合わせして設けることが望ましいが、補強リブは必ずしも併用する必要はない。吸気弁は、形態例で例示したアクチュエータに限らず、ブーツに直接設けることもできる。
【0027】
さらに本発明は、走行車両用の液圧マスタシリンダやスレーブシリンダ,ホイールシリンダを始め、油圧シリンダやエアシリンダ等の各種アクチュエータに幅広く用いることが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアクチュエータ用ブーツによれば、ロッドが伸縮するとき以外は常に弁が閉じているので、ロッドの円滑な移動を許容しつつも、ブーツ内部への水の浸入を極力防止することができる。また、ブーツの内部に水が浸入することがあっても、浸入水をブーツ最下部の弁近傍に集めて、弁から排気と同時に排水を簡便に行うことができる。したがって、ブーツを取り外す以外には排水が困難であった従来に較べると、メンテナンス性と経済性に優れている。
【0029】
また、ブーツにスリットを切り込んで、このスリットを弁とすることにより、大幅な低コスト化が可能となる。さらに、この弁の周囲を補強リブで囲繞することにより、スリットの亀裂拡大を有効に防いで、耐久性の向上が図れる。また、別途の吸気弁を併用することにより、ブーツ下部の弁は排気と排水専用となるので、ブーツ内部への水の浸入をより一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1形態例を示す自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダの要部断面正面図
【図2】本発明の第1形態例を示す後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダを自動二輪車の車体に取り付け状態の正面図
【図3】本発明の第1形態例を示す自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダの要部正面図
【図4】本発明の第1形態例を示すブーツの要部断面正面図
【図5】本発明の第2形態例を示す自動二輪車の後輪ブレーキ用液圧マスタシリンダの要部断面図
【図6】本発明の第3形態例を示すブーツの要部断面正面図
【図7】本発明の第3形態例を示すブーツの要部底面図
【符号の説明】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、5…ブレーキペダル、7…液圧マスタシリンダ(本発明のアクチュエータ)、10…シリンダボディ、10a…フランジ部、11…シリンダ孔、12…ピストン、17…プッシュロッド(本発明のロッド)、17a…先端、17b…後端、22…ヨーク、23…調整ナット、24…リターンスプリング、25…リテーナ、26…ブーツ、26a,26b…嵌合部、26c…蛇腹部、26d…円筒部、26e…吸気用弁体、27,40…弁、28…補強リブ、30…吸気弁、31…吸気孔、32…弁体、41…開口、42…排気用弁体
Claims (4)
- シリンダボディに穿設されたシリンダ孔に、ロッドを移動可能に配設したアクチュエータにあって、前記シリンダ孔の開口部と、この開口部から突出配置される前記ロッドの突出部分との間を伸縮可能に覆うアクチュエータ用ブーツにおいて、前記ブーツの最下部に、該ブーツの内部圧力が変化するのに伴って開する弁を設けたことを特徴とするアクチュエータ用ブーツ。
- 前記弁は、前記ブーツに切り込まれたスリットであることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ用ブーツ。
- 前記弁の周囲を補強リブにて囲繞したことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ用ブーツ。
- 前記アクチュエータと前記ブーツのいずれか一方に、ブーツの内部圧力が減少するのに伴って開する吸気弁を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータ用ブーツ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002256420A JP2004090821A (ja) | 2002-09-02 | 2002-09-02 | アクチュエータ用ブーツ |
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JP2002256420A JP2004090821A (ja) | 2002-09-02 | 2002-09-02 | アクチュエータ用ブーツ |
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ID=32061651
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011178247A (ja) * | 2010-02-26 | 2011-09-15 | Honda Motor Co Ltd | スレーブシリンダ及びそれを備えた鞍乗型車両 |
CN115257676A (zh) * | 2022-07-22 | 2022-11-01 | 上汽通用汽车有限公司 | 电动制动助力器的输入推杆、维修装置和维修方法 |
-
2002
- 2002-09-02 JP JP2002256420A patent/JP2004090821A/ja active Pending
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