JP2004089850A - 重金属不溶化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥など処理対象物質中の重金属を簡易に効率よく、かつ安価に不溶化することができる。
【解決手段】水銀、銅、鉛、カドミウム、砒素、セレンあるいは6価クロムなど重金属を含み、適度な水分によって湿潤状態にされた処理対象物に塩酸、硫酸などの酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、電解鉄粉、溶射鉄粉、還元鉄粉など粒度が2mm以下の鉄粉末を0.5%以上添加し、全体を少なくとも全体が均一な混合状態になるまで混合処理して、還元反応、置換反応、均一反応などにより前記重金属を不溶化する。
【選択図】 なし
【解決手段】水銀、銅、鉛、カドミウム、砒素、セレンあるいは6価クロムなど重金属を含み、適度な水分によって湿潤状態にされた処理対象物に塩酸、硫酸などの酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、電解鉄粉、溶射鉄粉、還元鉄粉など粒度が2mm以下の鉄粉末を0.5%以上添加し、全体を少なくとも全体が均一な混合状態になるまで混合処理して、還元反応、置換反応、均一反応などにより前記重金属を不溶化する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種廃棄物や焼却灰などに含まれる鉛、カドミウムなど重金属を不溶化し、固定する技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、都市ごみ、産業廃棄物、廃棄物の焼却灰や排ガス集塵灰、土壌などを対象にして、それらが含む鉛、カドミウムなど重金属を不溶化し固定する技術にはおおよそ以下の方法がある。
【0003】
(1)セメント固化法:重金属含有物質とセメントを混合し、さらに水を添加した後、混錬して固化し重金属を不溶化する方法である。セメントの持つ強いアルカリ性により、有害物質の難溶性化合物を生成させ、同時にセメント固化成形体として、有害物質を封じ込め固定する。
【0004】
この方法は、使用設備が簡単で、維持管理が容易であるが、養生処理を十分に行わないと、成形体が貯留中に崩壊する場合がある。また、重金属含有物質中に含まれる重金属の種類や化学組成によっては(例えばPb)、高pHのために再溶解してしまうケースがある。さらに、成形体が酸に対して弱いために、環境庁告示第13号法(産業廃棄物に含まれる金属などの検定方法)では溶出試験値を達成できても、欧・米で行われているような酸性条件での溶出試験では基準値を満足できない可能性がある、などの問題があった。
【0005】
(2)薬剤処理:重金属含有物質を液体キレートおよび水と混錬し、重金属を不溶性の重金属キレート化合物として重金属を不溶化する方法。この方法は、装置がシンプルで、維持管理も容易であるが、使用するキレート剤が高価であり、特に6価クロムや鉛のような重金属の溶出防止が困難であり、これらの溶出量を低いレベルまで下げようとすると、多量のキレート剤が必要となり特にコスト高となる問題があった。
【0006】
(3)溶融固化:重金属含有物質を1300℃〜1500℃で加熱処理し、ガラス状のスラグとして重金属顛をガラスのマトリックス内に封入し固定化する方法である。減容率が大きくもとの重金属含有物質に対して1/5程度に減容でき、有効利用がし易い等の利点があるが、大量の熱エネルギーを必要とし、設備が複雑で、維持管理が大変であることから処理費用が高価になる問題があった。また、溶融時に低沸点の重金属類(Pb、Hg、Cd等)は揮散するので固定化されないという基本的な問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥などの固形廃棄物の焼却灰や排ガス集塵灰、土壌など重金属を含む処理対象物質中のそれら重金属を、簡易に効率よく、かつ安価に不溶化することができる方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、重金属を含む処理対象物に酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、鉄粉末を添加し、全体を混合処理することを特徴とする本発明の重金属不溶化方法によって、解決することができる。
【0009】
そして、本発明は以下の形態の方法に具体化され得る。
▲1▼前記混合処理後に、アルカリを添加しアルカリ性に調整し、全体をさらに混合処理する前記の重金属不溶化方法。
▲2▼前記アルカリ性下の混合処理を加熱して行う前記▲1▼に記載の重金属不溶化方法。
▲3▼前記アルカリ性下の混合処理を、pH8以上のアルカリ性とし、かつ富酸素条件下または酸化条件下で行う前記▲1▼または▲2▼に記載の重金属不溶化方法。
▲4▼前記アルカリ性下の混合処理を、温度50〜450℃に加熱して行う前記▲2▼または▲3▼に記載の重金属不溶化方法。
【0010】
本発明において、重金属が不溶化して除去できる原理は、おおよそ以下に説明する還元反応、置換反応、均一反応、共沈・吸着反応、吸着反応に基づくものと思われる。
(1)還元反応
処理対象物に含まれる有害な6価クロムは、次式の反応によって、除去される。すなわち、添加された鉄粉末中の金属鉄が酸性下で溶解する際に生じる還元力や、生成した水素や2価鉄イオンの還元力によって6価クロムは3価のクロムに還元された後、水酸化クロム(III)として除去されるのである。
Cr6++Fe⇒Cr3++Fe3+
Fe+2H+⇒Fe2++H2↑
Cr6++3Fe2+⇒Cr3++3Fe3+
【0011】
(2)置換反応
酸性下の条件では、処理対象物に含まれるCu、Hg、Agなどの鉄よりイオン化傾向の小さい重金属のイオンは、次式の反応によって、鉄粉末中の金属鉄と電荷を交換して金属として析出し、一方、金属鉄は2価の鉄イオンとして溶出する。
Cu2++Fe⇒Cu+Fe2+
【0012】
(3)均一反応
酸性条件で、金属鉄が溶解し、次第に中性状態に移行する中和反応過程において、溶出した2価鉄イオンは空気中の酸素によって3価鉄に酸化され、さらにそれはFeを核とする複雑な錯イオンを生成するのであるが、その際にNi、Sb、Pb、Hgなどの重金属を取り込んで析出することにより、それら重金属を不溶化させる。
【0013】
(4)水酸化鉄(III)との共沈・吸着反応
前記均一反応と同時に生じる反応であるが生成した3価鉄イオンの一部または大部分は水酸化鉄(III)として析出、沈殿を生じるが、これに伴ってCd、Mn、Znは、水酸化鉄(III)の沈殿とともに共沈反応により沈殿し不溶化され、またAs、Se、Sbなどは水酸化鉄(III)の表面に吸着され、同様に不溶化される。
【0014】
(5)鉄粉末との吸着反応
添加される鉄粉末は、酸性下では表面活性に富んでいることから、前記した各種の重金属を吸着する作用も認められている。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の重金属不溶化方法に係る実施形態について、詳細に説明する。本発明の要旨は、重金属を含む処理対象物に酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、鉄粉末を添加し、全体を混合処理する点にあり、本発明が対象とする処理対象物は、先に例示した通り、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥などの固形廃棄物の焼却灰、排ガスの集塵灰、土壌などのように、水銀、銅、鉛、カドミウムなどの重金属を含む物質であり、さらに砒素、セレンあるいは6価クロムを含む物質も対象となる。
【0016】
本発明は、処理対象物に前記したpH条件下で鉄粉末を混合し重金属と反応させるものであるから、処理対象物が湿潤状態になる量以上の水分量が最低含まれることが必要である。なお、ここでいう湿潤状態とは、処理対象物の粒子表面が均質に湿っている状態である。また、過剰に水分を添加しても本発明の処理性能には、何ら影響を与えるものではないが、混合工程や搬出工程の操作にエネルギーが必要となり、処理後にろ過工程が必要となるなど別の問題が生じるために、処理対象物が鉄粉末との混合に適した流動性を持つスラリー状でよく、放置した場合に液体成分が分離や流出を起こさない程度までの状態にすることが操作上、好ましい。
【0017】
湿潤状態からスラリー状となる水分の添加量は、処理対象物によっても異なるが、一応の目安としては湿量基準として10〜50%の範囲が望ましい。もちろん、処理対象物がもともと湿潤状態であれば水分は添加する必要はないが、反応を促進させる目的で水分を添加しても良い。この場合は、あらかじめ実験により最適な水分量を確認するのが望ましい。なお、コスト面での余裕があれば、水の代わりに重金属を処理対象物から抽出する溶媒などを添加するとさらに反応を短時間で終了させることができる。
【0018】
次に、本発明では処理対象物をpH4以下に調整する。これは追って添加する鉄粉末を活性化させるためであり、さらにpHを4以下に調整することで処理対象物から重金属を抽出、溶出させるためである。通常は、塩酸、硫酸などの酸を添加すればよい。当初からpHが4以下の場合には、もちろん酸の添加は不必要であるが、処理対象物からの重金属の抽出、溶出を促進させる目的で添加しても良い。また、酸の添加に当たって、適当な濃度の酸水溶液を使用すれば、処理対象物のpHと流動性を同時に調整できるので好ましい。
【0019】
添加される鉄粉末について説明すると、先ず、その種類であるが、一般に市販されている電解鉄粉、溶射鉄粉、還元鉄粉(粉末冶金用、還元用など)、鋳物粉などがそれぞれ利用可能であり、その粒径は本発明が鉄粉末の表面積の影響を受けるので、あまり大きいものは好ましくなく、2mm以下が望ましい。それ以上の粒経であると、本発明の反応原理自体には影響がないので問題はないが、十分な効果を得るためには反応時間が必要であったり、処理対象物との混合が不十分になるなど別の問題が生じる場合がある。
【0020】
また、その添加量は、処理対象物中の重金属含有量に応じて異なるので、あらかじめ実験により確認することが望ましいが、一応の目安として前記した反応を効果的に生じさせるために、処理対象物の乾燥重量当たり、少なくとも0.5%は必要である。添加量が多くても処理に別段影響を与えることはないが、過大な添加量は未反応鉄分が生じるだけで資源の無駄使いとなるので50%以上は好ましくない。
【0021】
添加された鉄粉末を添加した処理対象物は、コンクリートミキサのようなスラリミキサあるいは攪拌翼による攪拌機により攪拌処理される。この場合、特に加温する必要はない。また、好ましい混合時間は、対象物や鉄粉末の添加量によっても変化するので、事前に実験によって確認するのがよいが、少なくとも処理対象物と鉄粉末が均一に混合される程度は必要であり、一応の目安として数時間程度で反応が終了する。
【0022】
かくして、本発明では所定条件下で鉄粉末を添加、混合することにより、前記した作用原理の反応が生起して、処理対象物が含む微量の重金属を不溶化することができるのである。かくして、重金属を不溶化した処理対象物は、従来の廃棄物処理の工程によって安全に処理できるようになるのである。
【0023】
次に、前記混合処理の後段の設けられると好ましい、▲1▼アルカリ混合処理、▲2▼アルカリ加熱処理について説明する。
これらの処理は、前記混合処理により、重金属類をアルカリ条件化で沈殿を生成させ不溶化するとともに、一旦溶出した鉄分をフェライト結晶化させるためのものであり、その結晶化に際して各種重金属を取り込む作用も利用して重金属の不溶化効率を高めることができるのである。
【0024】
▲1▼アルカリ混合処理:前記混合処理を行った処理対象物に、アルカリを添加しアルカリ性に調整し、全体をさらに混合処理するものである。この場合、pHを8以上のアルカリ性とするのが好ましく、さらに、このアルカリ混合処理を空気あるいは酸素に接触させた状態、またはそれらを吹き込む富酸素条件下または酸化条件下で行うのが特に好ましい。
【0025】
このアルカリ混合処理によって、各種重金属類が水酸化物として沈殿するとともに鉄が結晶化して重金属を取りこむ作用が働くことから、重金属の不溶化の程度が大幅に向上する。なお、この処理の混合時間は、処理対象物や添加水分量によっても異なるためにあらかじめ実験により確認することが望ましいが、一応の目安として数時間程度でよい。
【0026】
▲2▼アルカリ加熱処理:前記アルカリ混合処理を加熱しながら行うものであり、この場合の好ましい温度は、50〜450℃である。加熱処理を行うことによって鉄の結晶化が一層促進される作用が働くことから、重金属の不溶化効果がたかまるのであるが、450℃以上の高温になると他の化合物の生成が優勢となり、うまく結晶を生成しないので好ましくない。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ストーカ式都市ごみ焼却炉より排出される排ガス集塵灰を試料として、水分を35湿量%、硫酸を用いてpHを2に調整した後、鉄粉末を5重量%添加し3時間混合処理したものと、比較例として従来法であるコンクリート固化したものに対して環境庁告示第13号法の溶出試験を行った結果を表1に示す。
表中のデータにあるように本発明により、全ての項目に対して環境基準をクリアした。一方、従来法のコンクリート固化法ではPb、As、6価クロム、水銀を環境基準値以下にすることはできなかったことから本方法の優位性を示している。
【0028】
【表1】
【0029】
【実施例2】
実施例1とは異なるスト−カー式都市ごみ焼却炉より排出される排ガス集塵灰を試料として、鉄粉末添加混合処理(処理灰1)、鉄粉末添加混合処理後、さらにアルカリを添加してpHを9として混合処理(処理灰2)、鉄粉末添加混合処理後、さらにアルカリを添加してpHを9とし、空気を吹き込みながら混合処理(処理灰3)、鉄粉末を添加し混合した後、さらにアルカリを添加してpHを9として空気を吹き込み、80℃に加熱しながら混合処理(処理灰4)を行った。なお、鉄粉末の添加量は3重量%とし、水分添加量は25湿量%、硫酸を用いて初期pHを2に調整した。混合時間は、処理灰1が2時間、処理灰2、3、4は鉄粉末との混合1時間、アルカリを添加して1時間の計2時間混合した。表2に環境庁告示13号法に基づいて行ったそれぞれの溶出試験結果を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
実験に用いた飛灰のPb溶出量が多かったこともあり、処理灰1、処理灰2、処理灰3ではPbが完全に固定化されていなかった。しかし、処理灰2、処理灰3によってPbの固定化と鉄の結晶化に対するアルカリ添加、空気の吹き込みの効果が確認された。
加熱しながら混合した処理灰4では全ての項目で環境基準値以下まで固定化され、アルカリを添加し空気を吹き込みながら加熱処理を行う効果が確認できた。
【0032】
(実施例3)
流動床式下水汚泥焼却炉から排出された高分子系の焼却灰を試料として、本発明を適用し、環境庁告示46号法(中性溶液からの溶出)とCO2飽和法及びCO2連続法(酸性溶液からの溶出)により溶出試験を行った結果を表3に示す。
本発明を適用することにより、中性溶液からの溶出のみならず、酸性溶液からの溶出にも全ての項目において環境基準をクリアし、本発明の効果を確認することができた。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
本発明の重金属不溶化方法は、以上説明したように構成されているので、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥などの固形廃棄物の焼却灰や排ガス集塵灰、土壌などの処理対象物中の水銀、銅、鉛、カドミウム、砒素、セレンあるいは6価クロムなどの重金属を簡易に効率よく、かつ安価に不溶化することが可能となり、環境保全上大きく寄与することができる。よって本発明は、従来の問題点を解消した重金属不溶化方法として、その技術的価値はきわめて大なるものがある。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種廃棄物や焼却灰などに含まれる鉛、カドミウムなど重金属を不溶化し、固定する技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、都市ごみ、産業廃棄物、廃棄物の焼却灰や排ガス集塵灰、土壌などを対象にして、それらが含む鉛、カドミウムなど重金属を不溶化し固定する技術にはおおよそ以下の方法がある。
【0003】
(1)セメント固化法:重金属含有物質とセメントを混合し、さらに水を添加した後、混錬して固化し重金属を不溶化する方法である。セメントの持つ強いアルカリ性により、有害物質の難溶性化合物を生成させ、同時にセメント固化成形体として、有害物質を封じ込め固定する。
【0004】
この方法は、使用設備が簡単で、維持管理が容易であるが、養生処理を十分に行わないと、成形体が貯留中に崩壊する場合がある。また、重金属含有物質中に含まれる重金属の種類や化学組成によっては(例えばPb)、高pHのために再溶解してしまうケースがある。さらに、成形体が酸に対して弱いために、環境庁告示第13号法(産業廃棄物に含まれる金属などの検定方法)では溶出試験値を達成できても、欧・米で行われているような酸性条件での溶出試験では基準値を満足できない可能性がある、などの問題があった。
【0005】
(2)薬剤処理:重金属含有物質を液体キレートおよび水と混錬し、重金属を不溶性の重金属キレート化合物として重金属を不溶化する方法。この方法は、装置がシンプルで、維持管理も容易であるが、使用するキレート剤が高価であり、特に6価クロムや鉛のような重金属の溶出防止が困難であり、これらの溶出量を低いレベルまで下げようとすると、多量のキレート剤が必要となり特にコスト高となる問題があった。
【0006】
(3)溶融固化:重金属含有物質を1300℃〜1500℃で加熱処理し、ガラス状のスラグとして重金属顛をガラスのマトリックス内に封入し固定化する方法である。減容率が大きくもとの重金属含有物質に対して1/5程度に減容でき、有効利用がし易い等の利点があるが、大量の熱エネルギーを必要とし、設備が複雑で、維持管理が大変であることから処理費用が高価になる問題があった。また、溶融時に低沸点の重金属類(Pb、Hg、Cd等)は揮散するので固定化されないという基本的な問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥などの固形廃棄物の焼却灰や排ガス集塵灰、土壌など重金属を含む処理対象物質中のそれら重金属を、簡易に効率よく、かつ安価に不溶化することができる方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、重金属を含む処理対象物に酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、鉄粉末を添加し、全体を混合処理することを特徴とする本発明の重金属不溶化方法によって、解決することができる。
【0009】
そして、本発明は以下の形態の方法に具体化され得る。
▲1▼前記混合処理後に、アルカリを添加しアルカリ性に調整し、全体をさらに混合処理する前記の重金属不溶化方法。
▲2▼前記アルカリ性下の混合処理を加熱して行う前記▲1▼に記載の重金属不溶化方法。
▲3▼前記アルカリ性下の混合処理を、pH8以上のアルカリ性とし、かつ富酸素条件下または酸化条件下で行う前記▲1▼または▲2▼に記載の重金属不溶化方法。
▲4▼前記アルカリ性下の混合処理を、温度50〜450℃に加熱して行う前記▲2▼または▲3▼に記載の重金属不溶化方法。
【0010】
本発明において、重金属が不溶化して除去できる原理は、おおよそ以下に説明する還元反応、置換反応、均一反応、共沈・吸着反応、吸着反応に基づくものと思われる。
(1)還元反応
処理対象物に含まれる有害な6価クロムは、次式の反応によって、除去される。すなわち、添加された鉄粉末中の金属鉄が酸性下で溶解する際に生じる還元力や、生成した水素や2価鉄イオンの還元力によって6価クロムは3価のクロムに還元された後、水酸化クロム(III)として除去されるのである。
Cr6++Fe⇒Cr3++Fe3+
Fe+2H+⇒Fe2++H2↑
Cr6++3Fe2+⇒Cr3++3Fe3+
【0011】
(2)置換反応
酸性下の条件では、処理対象物に含まれるCu、Hg、Agなどの鉄よりイオン化傾向の小さい重金属のイオンは、次式の反応によって、鉄粉末中の金属鉄と電荷を交換して金属として析出し、一方、金属鉄は2価の鉄イオンとして溶出する。
Cu2++Fe⇒Cu+Fe2+
【0012】
(3)均一反応
酸性条件で、金属鉄が溶解し、次第に中性状態に移行する中和反応過程において、溶出した2価鉄イオンは空気中の酸素によって3価鉄に酸化され、さらにそれはFeを核とする複雑な錯イオンを生成するのであるが、その際にNi、Sb、Pb、Hgなどの重金属を取り込んで析出することにより、それら重金属を不溶化させる。
【0013】
(4)水酸化鉄(III)との共沈・吸着反応
前記均一反応と同時に生じる反応であるが生成した3価鉄イオンの一部または大部分は水酸化鉄(III)として析出、沈殿を生じるが、これに伴ってCd、Mn、Znは、水酸化鉄(III)の沈殿とともに共沈反応により沈殿し不溶化され、またAs、Se、Sbなどは水酸化鉄(III)の表面に吸着され、同様に不溶化される。
【0014】
(5)鉄粉末との吸着反応
添加される鉄粉末は、酸性下では表面活性に富んでいることから、前記した各種の重金属を吸着する作用も認められている。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の重金属不溶化方法に係る実施形態について、詳細に説明する。本発明の要旨は、重金属を含む処理対象物に酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、鉄粉末を添加し、全体を混合処理する点にあり、本発明が対象とする処理対象物は、先に例示した通り、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥などの固形廃棄物の焼却灰、排ガスの集塵灰、土壌などのように、水銀、銅、鉛、カドミウムなどの重金属を含む物質であり、さらに砒素、セレンあるいは6価クロムを含む物質も対象となる。
【0016】
本発明は、処理対象物に前記したpH条件下で鉄粉末を混合し重金属と反応させるものであるから、処理対象物が湿潤状態になる量以上の水分量が最低含まれることが必要である。なお、ここでいう湿潤状態とは、処理対象物の粒子表面が均質に湿っている状態である。また、過剰に水分を添加しても本発明の処理性能には、何ら影響を与えるものではないが、混合工程や搬出工程の操作にエネルギーが必要となり、処理後にろ過工程が必要となるなど別の問題が生じるために、処理対象物が鉄粉末との混合に適した流動性を持つスラリー状でよく、放置した場合に液体成分が分離や流出を起こさない程度までの状態にすることが操作上、好ましい。
【0017】
湿潤状態からスラリー状となる水分の添加量は、処理対象物によっても異なるが、一応の目安としては湿量基準として10〜50%の範囲が望ましい。もちろん、処理対象物がもともと湿潤状態であれば水分は添加する必要はないが、反応を促進させる目的で水分を添加しても良い。この場合は、あらかじめ実験により最適な水分量を確認するのが望ましい。なお、コスト面での余裕があれば、水の代わりに重金属を処理対象物から抽出する溶媒などを添加するとさらに反応を短時間で終了させることができる。
【0018】
次に、本発明では処理対象物をpH4以下に調整する。これは追って添加する鉄粉末を活性化させるためであり、さらにpHを4以下に調整することで処理対象物から重金属を抽出、溶出させるためである。通常は、塩酸、硫酸などの酸を添加すればよい。当初からpHが4以下の場合には、もちろん酸の添加は不必要であるが、処理対象物からの重金属の抽出、溶出を促進させる目的で添加しても良い。また、酸の添加に当たって、適当な濃度の酸水溶液を使用すれば、処理対象物のpHと流動性を同時に調整できるので好ましい。
【0019】
添加される鉄粉末について説明すると、先ず、その種類であるが、一般に市販されている電解鉄粉、溶射鉄粉、還元鉄粉(粉末冶金用、還元用など)、鋳物粉などがそれぞれ利用可能であり、その粒径は本発明が鉄粉末の表面積の影響を受けるので、あまり大きいものは好ましくなく、2mm以下が望ましい。それ以上の粒経であると、本発明の反応原理自体には影響がないので問題はないが、十分な効果を得るためには反応時間が必要であったり、処理対象物との混合が不十分になるなど別の問題が生じる場合がある。
【0020】
また、その添加量は、処理対象物中の重金属含有量に応じて異なるので、あらかじめ実験により確認することが望ましいが、一応の目安として前記した反応を効果的に生じさせるために、処理対象物の乾燥重量当たり、少なくとも0.5%は必要である。添加量が多くても処理に別段影響を与えることはないが、過大な添加量は未反応鉄分が生じるだけで資源の無駄使いとなるので50%以上は好ましくない。
【0021】
添加された鉄粉末を添加した処理対象物は、コンクリートミキサのようなスラリミキサあるいは攪拌翼による攪拌機により攪拌処理される。この場合、特に加温する必要はない。また、好ましい混合時間は、対象物や鉄粉末の添加量によっても変化するので、事前に実験によって確認するのがよいが、少なくとも処理対象物と鉄粉末が均一に混合される程度は必要であり、一応の目安として数時間程度で反応が終了する。
【0022】
かくして、本発明では所定条件下で鉄粉末を添加、混合することにより、前記した作用原理の反応が生起して、処理対象物が含む微量の重金属を不溶化することができるのである。かくして、重金属を不溶化した処理対象物は、従来の廃棄物処理の工程によって安全に処理できるようになるのである。
【0023】
次に、前記混合処理の後段の設けられると好ましい、▲1▼アルカリ混合処理、▲2▼アルカリ加熱処理について説明する。
これらの処理は、前記混合処理により、重金属類をアルカリ条件化で沈殿を生成させ不溶化するとともに、一旦溶出した鉄分をフェライト結晶化させるためのものであり、その結晶化に際して各種重金属を取り込む作用も利用して重金属の不溶化効率を高めることができるのである。
【0024】
▲1▼アルカリ混合処理:前記混合処理を行った処理対象物に、アルカリを添加しアルカリ性に調整し、全体をさらに混合処理するものである。この場合、pHを8以上のアルカリ性とするのが好ましく、さらに、このアルカリ混合処理を空気あるいは酸素に接触させた状態、またはそれらを吹き込む富酸素条件下または酸化条件下で行うのが特に好ましい。
【0025】
このアルカリ混合処理によって、各種重金属類が水酸化物として沈殿するとともに鉄が結晶化して重金属を取りこむ作用が働くことから、重金属の不溶化の程度が大幅に向上する。なお、この処理の混合時間は、処理対象物や添加水分量によっても異なるためにあらかじめ実験により確認することが望ましいが、一応の目安として数時間程度でよい。
【0026】
▲2▼アルカリ加熱処理:前記アルカリ混合処理を加熱しながら行うものであり、この場合の好ましい温度は、50〜450℃である。加熱処理を行うことによって鉄の結晶化が一層促進される作用が働くことから、重金属の不溶化効果がたかまるのであるが、450℃以上の高温になると他の化合物の生成が優勢となり、うまく結晶を生成しないので好ましくない。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ストーカ式都市ごみ焼却炉より排出される排ガス集塵灰を試料として、水分を35湿量%、硫酸を用いてpHを2に調整した後、鉄粉末を5重量%添加し3時間混合処理したものと、比較例として従来法であるコンクリート固化したものに対して環境庁告示第13号法の溶出試験を行った結果を表1に示す。
表中のデータにあるように本発明により、全ての項目に対して環境基準をクリアした。一方、従来法のコンクリート固化法ではPb、As、6価クロム、水銀を環境基準値以下にすることはできなかったことから本方法の優位性を示している。
【0028】
【表1】
【0029】
【実施例2】
実施例1とは異なるスト−カー式都市ごみ焼却炉より排出される排ガス集塵灰を試料として、鉄粉末添加混合処理(処理灰1)、鉄粉末添加混合処理後、さらにアルカリを添加してpHを9として混合処理(処理灰2)、鉄粉末添加混合処理後、さらにアルカリを添加してpHを9とし、空気を吹き込みながら混合処理(処理灰3)、鉄粉末を添加し混合した後、さらにアルカリを添加してpHを9として空気を吹き込み、80℃に加熱しながら混合処理(処理灰4)を行った。なお、鉄粉末の添加量は3重量%とし、水分添加量は25湿量%、硫酸を用いて初期pHを2に調整した。混合時間は、処理灰1が2時間、処理灰2、3、4は鉄粉末との混合1時間、アルカリを添加して1時間の計2時間混合した。表2に環境庁告示13号法に基づいて行ったそれぞれの溶出試験結果を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
実験に用いた飛灰のPb溶出量が多かったこともあり、処理灰1、処理灰2、処理灰3ではPbが完全に固定化されていなかった。しかし、処理灰2、処理灰3によってPbの固定化と鉄の結晶化に対するアルカリ添加、空気の吹き込みの効果が確認された。
加熱しながら混合した処理灰4では全ての項目で環境基準値以下まで固定化され、アルカリを添加し空気を吹き込みながら加熱処理を行う効果が確認できた。
【0032】
(実施例3)
流動床式下水汚泥焼却炉から排出された高分子系の焼却灰を試料として、本発明を適用し、環境庁告示46号法(中性溶液からの溶出)とCO2飽和法及びCO2連続法(酸性溶液からの溶出)により溶出試験を行った結果を表3に示す。
本発明を適用することにより、中性溶液からの溶出のみならず、酸性溶液からの溶出にも全ての項目において環境基準をクリアし、本発明の効果を確認することができた。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
本発明の重金属不溶化方法は、以上説明したように構成されているので、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥などの固形廃棄物の焼却灰や排ガス集塵灰、土壌などの処理対象物中の水銀、銅、鉛、カドミウム、砒素、セレンあるいは6価クロムなどの重金属を簡易に効率よく、かつ安価に不溶化することが可能となり、環境保全上大きく寄与することができる。よって本発明は、従来の問題点を解消した重金属不溶化方法として、その技術的価値はきわめて大なるものがある。
Claims (5)
- 重金属を含む処理対象物に酸を添加し、pHを4以下の酸性条件に調整した後、鉄粉末を添加し、全体を混合処理することを特徴とする重金属不溶化方法。
- 前記混合処理後に、アルカリを添加しアルカリ性に調整し、全体をさらに混合処理する請求項1に記載の重金属不溶化方法。
- 前記アルカリ性下の混合処理を加熱して行う請求項2に記載の重金属不溶化方法。
- 前記アルカリ性下の混合処理を、pH8以上のアルカリ性とし、かつ富酸素条件下または酸化条件下で行う請求項2または3に記載の重金属不溶化方法。
- 前記アルカリ性下の混合処理を、温度50〜450℃に加熱して行う請求項3または4に記載の重金属不溶化方法。
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---|---|---|---|
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Cited By (3)
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JP2009039664A (ja) * | 2007-08-09 | 2009-02-26 | Dowa Eco-System Co Ltd | 重金属汚染土壌の酸処理方法 |
JP2010214216A (ja) * | 2009-03-13 | 2010-09-30 | Kajima Road Co Ltd | 六価クロムの不溶化方法 |
JP2015098016A (ja) * | 2013-10-17 | 2015-05-28 | Jfeミネラル株式会社 | 重金属類汚染土壌の浄化方法 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002254407A patent/JP2004089850A/ja active Pending
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