JP2004087381A - 冷陰極発光素子および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電膜と陰極層との間の密着力を高めた冷陰極発光素子およびそれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】前面パネル1に対向して配置された背面パネル2上には、冷陰極電子源であるCNT陰極5が形成されている。CNT陰極5から引き出された電子は、ゲート電極6のメッシュ開口部7を通過して蛍光体4に到達し発光させる。CNT陰極5は、導電膜5aの上にバインダ層5cを形成して、バインダ層5cの上に陰極層5bを形成した構成となっている。陰極層5bは電子放出量が大きく、バインダ層5cは、導電膜5aと陰極層5bとを密着させる力が強い。
【選択図】 図1
【解決手段】前面パネル1に対向して配置された背面パネル2上には、冷陰極電子源であるCNT陰極5が形成されている。CNT陰極5から引き出された電子は、ゲート電極6のメッシュ開口部7を通過して蛍光体4に到達し発光させる。CNT陰極5は、導電膜5aの上にバインダ層5cを形成して、バインダ層5cの上に陰極層5bを形成した構成となっている。陰極層5bは電子放出量が大きく、バインダ層5cは、導電膜5aと陰極層5bとを密着させる力が強い。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平板型画像表示装置(フラットパネルディスプレイ)に関するものであり、特に、冷陰極を電子源とする発光素子を画面に用いる電界放出型画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ディスプレイ装置に用いられる電子源としては熱電子を用いたCRT用の電子源などがよく知られているが、近年、フラットパネルディスプレイの開発が盛んになるにつれ、ヒータを必要としない冷陰極(Cold Cathode)の電子源の開発が進んでいる。とりわけ、平面上に配置された電界放出型陰極、即ち冷陰極からなる電子源を備えた電界放出型画像表示装置(FED:Field Emission Display)は、高輝度および広視野角、高速応答、低消費電力の実現が可能な大画面の自発光型画像表示装置として注目されている。その中でも特に注目されているのが、半導体プロセスを必要とせず印刷やCVD(Chemical Vapor Deposition)で作成可能なCNT(Carbon Nano−Tube)を用いた電子源であり、学会や研究会で盛んに発表されている。CNT等を用いた電子源は、例えば、特許文献1〜4において紹介されている。
【0003】
図3は、従来の、FED表示装置に用いられる冷陰極電子源を用いた発光素子(冷陰極発光素子)の概略断面図である。この図において、1はガラス製の前面パネル、2はガラス製の背面パネルであり、3は前面パネル1と背面パネル2との間に介在する矩形枠状のガラス製のスペーサ(スペーサガラス)である。これら前面パネル1、背面パネル2およびスペーサガラス3が不図示の低融点ガラス(フリットガラス)により気密に封止されることで真空容器を形成している。また、一般的に、前面パネル1および背面パネル2の厚さは共に2〜4mm程度である。
【0004】
4は前面パネル1の内面に略正方形に塗布された赤R、緑G、青B等の蛍光体であり、蛍光面を形成している。その蛍光面全体には、発光効率を高めると共に蛍光面を電子加速用の陽極、即ち蛍光体陽極として機能させることを目的としたアルミバックが施されている。それにより、前面パネル内面の蛍光体4は10kV程度の陽極電位に保てるようになっている。
【0005】
前面パネルから約10数mm程度隔てて対向配置された背面パネル2の表面には、冷陰極電子源であるCNT陰極5Pが所定の形状(図4では四角)で形成されている。このCNT陰極5Pは、通常、導電膜5aの上にCNTペーストを主成分とした陰極層5bを形成した構成となっている。導電膜5aとしてはITO(インジウム錫オキサイド)等からなる厚さ1μm程度の非常に薄い物質を用い、その上に電子放出量が大きいCNTを主成分とする炭素ペーストを印刷・焼成して陰極層5bを形成している。6は、本願発明者の出願に係る未公開の技術であるハーフエッチング方式のゲート電極である。ゲート電極6は、0.1mm程度の厚さの金属板をハーフエッチングすることにより空隙部を形成している。ゲート電極6はCNT陰極5Pの上方に対向して配置され、この空隙部がCNT陰極5Pを蔽っている。この空隙部の深さは、ゲート電極6とCNT陰極5Pとの間隔(ギャップ)が、50μm程度になるように形成されている。ゲート電極6はCNT陰極5Pよりも幾分高い電圧を印加することでCNT陰極5Pから電子を引き出す作用を有している。さらに、ゲート電極6には、CNT陰極5Pから引き出された電子が通過するためのメッシュ開口部7が形成されている。
【0006】
図4は、図3に示した従来の冷陰極発光素子の背面パネル2の上面図である。この図において、図3と同一の要素には同一符号を付しており、ここでの詳細な説明は省略する。図4は、背面パネル2におけるCNT陰極5Pの配置を示しており、簡単のためゲート電極6は省略している。CNT陰極5Pは、導電膜5aの部分で、給電のための陰極配線層8を介して所定の個数ずつ接続され、それぞれ冷陰極電子源列であるCNT陰極列9Pを構成している。
【0007】
また、実際の冷陰極発光素子には、容器の内部を真空に引くための穴や排気管、外部へ信号を取り出すための電極などが背面パネル2に設けられ、さらに、内部ガスを吸着するためのゲッタがスペーサガラス3等に設けられているが、本発明との関連が薄いので、説明の簡単のため図示は省略している。
【0008】
このような構成の発光素子が縦横にマトリクス状に所定個ずつ配列されることで、FED表示装置の大画面が構成される。このとき、隣接する発光素子間の境界における間隔が大きいと、画面表示全体を見たときにその境界部分(継目、シーム)が目立つことが問題となる。従って、隣接する発光素子間の間隔はできるだけ小さいことが望ましい。そのため、スペーサガラス3をできるだけ薄くしたり、不図示の外部電極や排気管を背面パネル側に設けることにより、隣接する発光素子間の間隔を小さくしている。
【0009】
以上の構成によれば、CNT陰極5Pとゲート電極6との間に適当な電圧を印加することにより、CNT陰極5Pより電子が電界放出(フィールドエミッション)され、メッシュ開口部7を介してエミッション電流が取り出される。一般に、このときゲート電極6には点灯位置を制御するためのパルス電圧が印加される。その電圧値は、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用するためにも100V〜200V以下程度であることが望ましい。
【0010】
そしてゲート電極6から取り出されたエミッション電流の電子は陽極である蛍光体4に印加された約10kV程度の高電圧により加速され、蛍光体4を励起して発光させる。それにより、個々の発光素子は所定の色を発光する。その結果、FED表示装置の画面全体にカラー画像が表示されることとなる。またこのとき、個々の発光素子においてエミッション電流の電子が蛍光体4に当たったときにガスが発生するが、このガスは不図示のゲッタにより吸着されることで冷陰極発光素子の内部は高真空に保たれる。それによりエミッション電流の低下を防止できるため、画質の劣化を抑えることができる。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−195972号公報
【特許文献2】
特開2001−176380号公報
【特許文献3】
特開2000−036243号公報
【特許文献4】
特開平11−162383号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の冷陰極発光素子において、導電膜5aは非常に薄く、また凹凸もほとんどなく緻密鏡面状であるため、ガラス製の背面パネル2への密着力は強い。一方、陰極層5bは、CNT粒子とグラファイト粒子などを主成分とする炭素粒子とビークルとで構成されているが、ビークルは焼成により消失するため、炭素ペーストを印刷・焼成した後の膜は炭素粒子の凝集体となる。従って、膜強度が弱く、また導電膜5aへの密着力も弱いため、振動や電界により剥がれやすくなってしまう。印刷・焼成後の陰極層5bの厚さは10μm程度以下であり、また、CNT陰極5Pとゲート電極6との間隔(ギャップ)は上述のとおり50μm程度と比較的小さい。そのため、剥がれた膜がゲート電極6と接触することにより、CNT陰極5Pとゲート電極6との間が電気的に短絡してしまい、エミッション電流が流れなくなってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、導電膜と陰極層との間の密着力を高めた冷陰極発光素子およびそれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、前面パネルと背面パネルとをスペーサを介して封止した容器を備え、前記前面パネルは、前記容器の内面に蛍光体陽極を有し、前記背面パネルは、前記容器の内面に配列された、前記蛍光体陽極を発光させる電子源となる複数の冷陰極電子源、並びに、前記冷陰極電子源の上方に設置された、前記冷陰極電子源から電子を引き出すためのゲート電極を有し、前記冷陰極電子源は、前記背面パネル上に形成された導電膜、および、炭素系材料を主成分とした電子放出用の陰極層、並びに、前記導電膜と前記陰極層との間に配置されて前記導電膜と前記陰極層とを密着させるバインダ層を有する。
【0015】
請求項2に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、二酸化珪素を主成分とする無機材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0016】
請求項3に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、二酸化珪素を主成分とする無機材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、フリットガラスを主成分とする材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、フリットガラスを主成分とする材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、ITO(インジウム錫オキサイド)である。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電膜が、銀もしくはアルミニウムを含む導電材料から形成される。
【0021】
請求項8に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、銀もしくはアルミニウムである。
【0022】
請求項9に記載の発明に係る画像表示装置は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の冷陰極発光素子を有する画面を備える。
【0023】
【発明の実施の形態】
<実施の形態1>
本願発明者の出願に係る未公開の技術である特願2002−107991においては、印刷用の炭素ペーストにシリカやフリットガラスを添加して、密着力を高めているが、フリットガラスを添加した場合には、焼成時の酸化によりCNTが減少し、エミッション電流が低下してしまうという問題がある。また、その後の研究の結果により、シリカを添加した場合にも、フリットガラスに比べると影響は小さいが、やはりエミッション電流が低下してしまうことが分かっている。この場合、重量%でCNTを上回る量のシリカを炭素ペーストに添加すると、シリカを添加しないときと比べてエミッション電流は70%程度に減少する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1に係るFED表示装置に用いられる冷陰極電子源を用いた発光素子(冷陰極発光素子)の概略断面図である。また図2は、その背面パネルの上面図である。なお、これらの図において、図3,4に示したものと同様の要素については同一符号を付してあるので、それらのここでの詳細な説明は省略する。
【0025】
CNT陰極5は、導電膜5aの上にバインダ層5cを形成して、バインダ層5cの上に陰極層5bを形成した構成となっている。陰極層5bは電子放出量が大きく、バインダ層5cは、導電膜5aと陰極層5bとを密着させる力が強い。CNT陰極5は、導電膜5aの部分で、給電のための陰極配線層8を介して所定の個数ずつ接続され、それぞれ冷陰極電子源列であるCNT陰極列9を構成している。
【0026】
導電膜5aは、CNTとの反応性が小さいITO(インジウム錫オキサイド)で形成され、蒸着法で形成される場合には厚さが0.2μm程度であり、印刷法で形成される場合には厚さが1〜2μm程度である。導電膜5aは、後述する陰極配線層8を通した外部からの給電を、低抵抗に行う役割を有する。バインダ層5cは、CNT粒子とグラファイト粒子などを主成分とする炭素ペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することにより形成される。陰極層5bは、CNTを主成分とする炭素ペーストを印刷・焼成することにより形成される。
【0027】
シリカを添加することによりバインダ層5cの密着力が強くなる理由は、次のとおりである。即ち、シリカ微粒子(SiO2)は直径が約0.02μmと非常に小さく、また、焼成により強く凝集する性質がある。従って、凝集したCNT粒子やグラファイト粒子の間や、ITOに入り込み、これらを巻き込んで凝集することにより、密着力の強い印刷膜を形成することができる。
【0028】
このように、本実施の形態に係る冷陰極素子においては、CNT陰極層5が、密着力の強いバインダ層5cと、シリカやフリットガラスを添加しないため電子放出量が大きい陰極層5bとに分かれて形成されているので、電子放出量を低下させることなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくすることができる。
【0029】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る冷陰極発光素子においては、バインダ層5cは、CNTを主成分とする炭素ペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することにより形成される。しかし、バインダ層5cを形成する主な目的は、電子放出量を大きくすることではなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくするように密着させることである。従って、バインダ層5cは、必ずしもCNTを主成分とする炭素ペーストを含む必要はなく、密着力を強くするためのシリカを含んでいればよい。しかし、シリカのみでバインダ層5cを形成した場合には、バインダ層5cが絶縁層となってしまう。そこで、CNTとの反応性が小さいITO等の導電材料を主成分とするペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することによりバインダ層5cを形成する。
【0030】
このように、本実施の形態2に係る冷陰極素子においては、CNTに比べて安価なITOを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、製造コストを低減することができるという効果を有する。
【0031】
<実施の形態3>
実施の形態1に係る冷陰極発光素子においては、バインダ層5cは、CNTを主成分とする炭素ペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することにより形成される。ここで、シリカではなく、PbOやビスマスなどを主成分とするガラス粒子からなるフリットガラスを用いることもできる。印刷ペースト中に、PbOやビスマスなどを主成分とするガラス粒子からなるフリットガラスを混合させて印刷膜と基板との密着力を上げることは、従来から行われていた。しかし、印刷ペースト中に炭素粒子が含まれている場合には、印刷膜を焼成する工程において、大気中で温度が400〜500℃になると、ガラス粒子の影響で炭素粒子が酸化されやすくなってしまう。そのため、CNT粒子やグラファイト粒子の一部が酸化されて消失してしまうことがある。従って、従来の、導電膜5aと陰極層5bの2層構成の冷陰極素子の場合には、陰極層5bの電子放出量が低下してしまうため、フリットガラスを混合させることはできなかった。
【0032】
しかし、本発明に係る、導電膜5aと陰極層5bとバインダ層5cの3層構成の冷陰極素子においては、バインダ層5cを形成する主な目的は、電子放出量を大きくすることではなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくするように密着させることである。従って、バインダ層5cには、フリットガラスを混合させてもよい。フリットガラスはシリカより融点が低いため、溶融することによりシリカよりも強い密着力を有する。
【0033】
このように、本実施の形態3に係る冷陰極素子においては、シリカに比べて密着力の強いフリットガラスを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、陰極層5bをさらに剥がれにくくすることができるという効果を有する。
【0034】
<実施の形態4>
実施の形態2においては、実施の形態1に係る冷陰極発光素子のバインダ層5cを、CNTを主成分とする炭素ペーストではなく、ITO等の導電材料を主成分とするペーストを含んで形成する。
【0035】
また実施の形態3においては、実施の形態1に係る冷陰極発光素子のバインダ層5cを、シリカではなく、フリットガラスを含んで形成する。
【0036】
実施の形態4の係る冷陰極発光素子は、実施の形態2,3を組み合わせたものであり、即ち、バインダ層5cを、ITO等の導電材料を主成分とするペーストとフリットガラスとで形成させたものである。
【0037】
このように、本実施の形態4に係る冷陰極素子においては、CNTに比べて安価なITOと、シリカに比べて密着力の強いフリットガラスとを用いるので、実施の形態2,3の両方の効果を有する。
【0038】
<実施の形態5>
実施の形態1〜4に係る冷陰極発光素子においては、導電膜5aは、CNTとの反応性が小さいITOを含んで形成される。しかし、導電膜5aは、電子放出用の陰極層5bとは直接には接触しないので、CNTとの反応性が小さいITOではなく、ITOと比べてCNTとの反応性が大きいが安価なAgやAlを用いてもよい。
【0039】
このように、本実施の形態5に係る冷陰極素子においては、ITOに比べて安価なAgやAlを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、製造コストをさらに低減することができるという効果を有する。
【0040】
<実施の形態6>
実施の形態2,4に係る冷陰極発光素子においては、バインダ層5cは、ITO等の導電材料を主成分とするペーストと、シリカもしくはフリットガラスとを含んで形成される。しかし、バインダ層5cを形成する主な目的は、電子放出量を大きくすることではなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくするように密着させることであるため、CNTとの反応性が小さいITOではなく、ITOと比べてCNTとの反応性が大きいが安価なAgやAlを用いてもよい。この場合、陰極層5bに含まれるCNTの一部が、バインダ層5cに含まれるAgやAlと反応してしまうため、電子放出量は若干小さくなってしまうが、製造コストを低減することができる。
【0041】
このように、本実施の形態6に係る冷陰極素子においては、ITOに比べて安価なAgやAlを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、製造コストをさらに低減することができるという効果を有する。
【0042】
<実施の形態7>
実施の形態1〜6に係る冷陰極発光素子は、縦横にマトリクス状に所定個ずつ配列されることで、FED表示装置の大画面が構成される。これらの冷陰極発光素子は、電子放出量を低下させることなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくすることができるため、CNT陰極5とゲート電極6との間隔(ギャップ)を小さくすることができる。従って、点灯位置を制御するためにゲート電極6に印可されるパルス電圧を低くすることができるため、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用でき、製造コストを低減することができる。
【0043】
このように、本実施の形態7に係るFED表示装置においては、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用できるので、製造コストを低減することができるという効果を有する。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、前面パネルと背面パネルとをスペーサを介して封止した容器を備え、前記前面パネルは、前記容器の内面に蛍光体陽極を有し、前記背面パネルは、前記容器の内面に、前記蛍光体陽極を発光させる電子源となる複数の冷陰極電子源および前記冷陰極電子源を接続する配線から成る複数個の冷陰極電子源列、並びに、前記冷陰極電子源列の上方に設置されて前記冷陰極電子源から電子を引き出すための複数個のゲート電極を有し、前記冷陰極電子源は、前記背面パネル上に形成されて前記配線に接続された導電膜、および、炭素系材料を主成分とし電子放出量の大きい陰極層、並びに、前記導電膜と前記陰極層との間に配置されて前記導電膜と前記陰極層とを密着させるバインダ層を有するので、電子放出量を低下させることなく、前記陰極層を前記導電膜から剥がれにくくすることができる。
【0045】
また、請求項2に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、二酸化珪素を主成分とする無機材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、電子放出量を低下させることなく、前記陰極層を前記導電膜から剥がれにくくすることができる。
【0046】
また、請求項3に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、二酸化珪素を主成分とする無機材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、安価な導電材料を用いることにより製造コストを低減することができる。
【0047】
また、請求項4に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、フリットガラスを主成分とする材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、密着力の強いフリットガラスを用いることにより前記陰極層をさらに剥がれにくくすることができる。
【0048】
また、請求項5に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、フリットガラスを主成分とする材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、安価な導電材料を用いることにより製造コストを低減することができる。また、密着力の強いフリットガラスを用いることにより陰極層をさらに剥がれにくくすることができる。
【0049】
また、請求項6に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、ITO(インジウム錫オキサイド)であるので、安価な導電材料であるITOを用いることにより製造コストを低減することができる。
【0050】
また、請求項7に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電膜が、銀もしくはアルミニウムを含む導電材料から形成されるので、安価な導電材料である銀もしくはアルミニウムを用いることにより製造コストを低減することができる。
【0051】
また、請求項8に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、銀もしくはアルミニウムであるので、安価な導電材料である銀もしくはアルミニウムを用いることにより製造コストを低減することができる。
【0052】
また、請求項9に記載の発明に係る画像表示装置は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の冷陰極発光素子を有する画面を備えるので、電子放出量を低下させることなく前記陰極層を前記導電膜から剥がれにくくすることができるため、冷陰極電子源とゲート電極との間隔を小さくすることができる。従って、ゲート電極に印可されるパルス電圧を低くすることができるため、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用でき、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る冷陰極発光素子の側断面図である。
【図2】実施の形態1に係る冷陰極発光素子の背面パネルの上面図である。
【図3】従来の冷陰極発光素子の側断面図である。
【図4】従来の冷陰極発光素子の背面パネルの上面図である。
【符号の説明】
1 前面パネル、2 背面パネル、3 スペーサガラス、4 蛍光体、5,5P CNT陰極、5a 導電膜、5b 陰極層、5c バインダ層、6 ゲート電極、7 メッシュ開口部、8 陰極配線層、9,9P CNT陰極列。
【発明の属する技術分野】
本発明は、平板型画像表示装置(フラットパネルディスプレイ)に関するものであり、特に、冷陰極を電子源とする発光素子を画面に用いる電界放出型画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ディスプレイ装置に用いられる電子源としては熱電子を用いたCRT用の電子源などがよく知られているが、近年、フラットパネルディスプレイの開発が盛んになるにつれ、ヒータを必要としない冷陰極(Cold Cathode)の電子源の開発が進んでいる。とりわけ、平面上に配置された電界放出型陰極、即ち冷陰極からなる電子源を備えた電界放出型画像表示装置(FED:Field Emission Display)は、高輝度および広視野角、高速応答、低消費電力の実現が可能な大画面の自発光型画像表示装置として注目されている。その中でも特に注目されているのが、半導体プロセスを必要とせず印刷やCVD(Chemical Vapor Deposition)で作成可能なCNT(Carbon Nano−Tube)を用いた電子源であり、学会や研究会で盛んに発表されている。CNT等を用いた電子源は、例えば、特許文献1〜4において紹介されている。
【0003】
図3は、従来の、FED表示装置に用いられる冷陰極電子源を用いた発光素子(冷陰極発光素子)の概略断面図である。この図において、1はガラス製の前面パネル、2はガラス製の背面パネルであり、3は前面パネル1と背面パネル2との間に介在する矩形枠状のガラス製のスペーサ(スペーサガラス)である。これら前面パネル1、背面パネル2およびスペーサガラス3が不図示の低融点ガラス(フリットガラス)により気密に封止されることで真空容器を形成している。また、一般的に、前面パネル1および背面パネル2の厚さは共に2〜4mm程度である。
【0004】
4は前面パネル1の内面に略正方形に塗布された赤R、緑G、青B等の蛍光体であり、蛍光面を形成している。その蛍光面全体には、発光効率を高めると共に蛍光面を電子加速用の陽極、即ち蛍光体陽極として機能させることを目的としたアルミバックが施されている。それにより、前面パネル内面の蛍光体4は10kV程度の陽極電位に保てるようになっている。
【0005】
前面パネルから約10数mm程度隔てて対向配置された背面パネル2の表面には、冷陰極電子源であるCNT陰極5Pが所定の形状(図4では四角)で形成されている。このCNT陰極5Pは、通常、導電膜5aの上にCNTペーストを主成分とした陰極層5bを形成した構成となっている。導電膜5aとしてはITO(インジウム錫オキサイド)等からなる厚さ1μm程度の非常に薄い物質を用い、その上に電子放出量が大きいCNTを主成分とする炭素ペーストを印刷・焼成して陰極層5bを形成している。6は、本願発明者の出願に係る未公開の技術であるハーフエッチング方式のゲート電極である。ゲート電極6は、0.1mm程度の厚さの金属板をハーフエッチングすることにより空隙部を形成している。ゲート電極6はCNT陰極5Pの上方に対向して配置され、この空隙部がCNT陰極5Pを蔽っている。この空隙部の深さは、ゲート電極6とCNT陰極5Pとの間隔(ギャップ)が、50μm程度になるように形成されている。ゲート電極6はCNT陰極5Pよりも幾分高い電圧を印加することでCNT陰極5Pから電子を引き出す作用を有している。さらに、ゲート電極6には、CNT陰極5Pから引き出された電子が通過するためのメッシュ開口部7が形成されている。
【0006】
図4は、図3に示した従来の冷陰極発光素子の背面パネル2の上面図である。この図において、図3と同一の要素には同一符号を付しており、ここでの詳細な説明は省略する。図4は、背面パネル2におけるCNT陰極5Pの配置を示しており、簡単のためゲート電極6は省略している。CNT陰極5Pは、導電膜5aの部分で、給電のための陰極配線層8を介して所定の個数ずつ接続され、それぞれ冷陰極電子源列であるCNT陰極列9Pを構成している。
【0007】
また、実際の冷陰極発光素子には、容器の内部を真空に引くための穴や排気管、外部へ信号を取り出すための電極などが背面パネル2に設けられ、さらに、内部ガスを吸着するためのゲッタがスペーサガラス3等に設けられているが、本発明との関連が薄いので、説明の簡単のため図示は省略している。
【0008】
このような構成の発光素子が縦横にマトリクス状に所定個ずつ配列されることで、FED表示装置の大画面が構成される。このとき、隣接する発光素子間の境界における間隔が大きいと、画面表示全体を見たときにその境界部分(継目、シーム)が目立つことが問題となる。従って、隣接する発光素子間の間隔はできるだけ小さいことが望ましい。そのため、スペーサガラス3をできるだけ薄くしたり、不図示の外部電極や排気管を背面パネル側に設けることにより、隣接する発光素子間の間隔を小さくしている。
【0009】
以上の構成によれば、CNT陰極5Pとゲート電極6との間に適当な電圧を印加することにより、CNT陰極5Pより電子が電界放出(フィールドエミッション)され、メッシュ開口部7を介してエミッション電流が取り出される。一般に、このときゲート電極6には点灯位置を制御するためのパルス電圧が印加される。その電圧値は、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用するためにも100V〜200V以下程度であることが望ましい。
【0010】
そしてゲート電極6から取り出されたエミッション電流の電子は陽極である蛍光体4に印加された約10kV程度の高電圧により加速され、蛍光体4を励起して発光させる。それにより、個々の発光素子は所定の色を発光する。その結果、FED表示装置の画面全体にカラー画像が表示されることとなる。またこのとき、個々の発光素子においてエミッション電流の電子が蛍光体4に当たったときにガスが発生するが、このガスは不図示のゲッタにより吸着されることで冷陰極発光素子の内部は高真空に保たれる。それによりエミッション電流の低下を防止できるため、画質の劣化を抑えることができる。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−195972号公報
【特許文献2】
特開2001−176380号公報
【特許文献3】
特開2000−036243号公報
【特許文献4】
特開平11−162383号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の冷陰極発光素子において、導電膜5aは非常に薄く、また凹凸もほとんどなく緻密鏡面状であるため、ガラス製の背面パネル2への密着力は強い。一方、陰極層5bは、CNT粒子とグラファイト粒子などを主成分とする炭素粒子とビークルとで構成されているが、ビークルは焼成により消失するため、炭素ペーストを印刷・焼成した後の膜は炭素粒子の凝集体となる。従って、膜強度が弱く、また導電膜5aへの密着力も弱いため、振動や電界により剥がれやすくなってしまう。印刷・焼成後の陰極層5bの厚さは10μm程度以下であり、また、CNT陰極5Pとゲート電極6との間隔(ギャップ)は上述のとおり50μm程度と比較的小さい。そのため、剥がれた膜がゲート電極6と接触することにより、CNT陰極5Pとゲート電極6との間が電気的に短絡してしまい、エミッション電流が流れなくなってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、導電膜と陰極層との間の密着力を高めた冷陰極発光素子およびそれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、前面パネルと背面パネルとをスペーサを介して封止した容器を備え、前記前面パネルは、前記容器の内面に蛍光体陽極を有し、前記背面パネルは、前記容器の内面に配列された、前記蛍光体陽極を発光させる電子源となる複数の冷陰極電子源、並びに、前記冷陰極電子源の上方に設置された、前記冷陰極電子源から電子を引き出すためのゲート電極を有し、前記冷陰極電子源は、前記背面パネル上に形成された導電膜、および、炭素系材料を主成分とした電子放出用の陰極層、並びに、前記導電膜と前記陰極層との間に配置されて前記導電膜と前記陰極層とを密着させるバインダ層を有する。
【0015】
請求項2に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、二酸化珪素を主成分とする無機材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0016】
請求項3に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、二酸化珪素を主成分とする無機材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、フリットガラスを主成分とする材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、フリットガラスを主成分とする材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、ITO(インジウム錫オキサイド)である。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電膜が、銀もしくはアルミニウムを含む導電材料から形成される。
【0021】
請求項8に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、銀もしくはアルミニウムである。
【0022】
請求項9に記載の発明に係る画像表示装置は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の冷陰極発光素子を有する画面を備える。
【0023】
【発明の実施の形態】
<実施の形態1>
本願発明者の出願に係る未公開の技術である特願2002−107991においては、印刷用の炭素ペーストにシリカやフリットガラスを添加して、密着力を高めているが、フリットガラスを添加した場合には、焼成時の酸化によりCNTが減少し、エミッション電流が低下してしまうという問題がある。また、その後の研究の結果により、シリカを添加した場合にも、フリットガラスに比べると影響は小さいが、やはりエミッション電流が低下してしまうことが分かっている。この場合、重量%でCNTを上回る量のシリカを炭素ペーストに添加すると、シリカを添加しないときと比べてエミッション電流は70%程度に減少する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1に係るFED表示装置に用いられる冷陰極電子源を用いた発光素子(冷陰極発光素子)の概略断面図である。また図2は、その背面パネルの上面図である。なお、これらの図において、図3,4に示したものと同様の要素については同一符号を付してあるので、それらのここでの詳細な説明は省略する。
【0025】
CNT陰極5は、導電膜5aの上にバインダ層5cを形成して、バインダ層5cの上に陰極層5bを形成した構成となっている。陰極層5bは電子放出量が大きく、バインダ層5cは、導電膜5aと陰極層5bとを密着させる力が強い。CNT陰極5は、導電膜5aの部分で、給電のための陰極配線層8を介して所定の個数ずつ接続され、それぞれ冷陰極電子源列であるCNT陰極列9を構成している。
【0026】
導電膜5aは、CNTとの反応性が小さいITO(インジウム錫オキサイド)で形成され、蒸着法で形成される場合には厚さが0.2μm程度であり、印刷法で形成される場合には厚さが1〜2μm程度である。導電膜5aは、後述する陰極配線層8を通した外部からの給電を、低抵抗に行う役割を有する。バインダ層5cは、CNT粒子とグラファイト粒子などを主成分とする炭素ペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することにより形成される。陰極層5bは、CNTを主成分とする炭素ペーストを印刷・焼成することにより形成される。
【0027】
シリカを添加することによりバインダ層5cの密着力が強くなる理由は、次のとおりである。即ち、シリカ微粒子(SiO2)は直径が約0.02μmと非常に小さく、また、焼成により強く凝集する性質がある。従って、凝集したCNT粒子やグラファイト粒子の間や、ITOに入り込み、これらを巻き込んで凝集することにより、密着力の強い印刷膜を形成することができる。
【0028】
このように、本実施の形態に係る冷陰極素子においては、CNT陰極層5が、密着力の強いバインダ層5cと、シリカやフリットガラスを添加しないため電子放出量が大きい陰極層5bとに分かれて形成されているので、電子放出量を低下させることなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくすることができる。
【0029】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る冷陰極発光素子においては、バインダ層5cは、CNTを主成分とする炭素ペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することにより形成される。しかし、バインダ層5cを形成する主な目的は、電子放出量を大きくすることではなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくするように密着させることである。従って、バインダ層5cは、必ずしもCNTを主成分とする炭素ペーストを含む必要はなく、密着力を強くするためのシリカを含んでいればよい。しかし、シリカのみでバインダ層5cを形成した場合には、バインダ層5cが絶縁層となってしまう。そこで、CNTとの反応性が小さいITO等の導電材料を主成分とするペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することによりバインダ層5cを形成する。
【0030】
このように、本実施の形態2に係る冷陰極素子においては、CNTに比べて安価なITOを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、製造コストを低減することができるという効果を有する。
【0031】
<実施の形態3>
実施の形態1に係る冷陰極発光素子においては、バインダ層5cは、CNTを主成分とする炭素ペーストに、シリカを添加して、印刷・焼成することにより形成される。ここで、シリカではなく、PbOやビスマスなどを主成分とするガラス粒子からなるフリットガラスを用いることもできる。印刷ペースト中に、PbOやビスマスなどを主成分とするガラス粒子からなるフリットガラスを混合させて印刷膜と基板との密着力を上げることは、従来から行われていた。しかし、印刷ペースト中に炭素粒子が含まれている場合には、印刷膜を焼成する工程において、大気中で温度が400〜500℃になると、ガラス粒子の影響で炭素粒子が酸化されやすくなってしまう。そのため、CNT粒子やグラファイト粒子の一部が酸化されて消失してしまうことがある。従って、従来の、導電膜5aと陰極層5bの2層構成の冷陰極素子の場合には、陰極層5bの電子放出量が低下してしまうため、フリットガラスを混合させることはできなかった。
【0032】
しかし、本発明に係る、導電膜5aと陰極層5bとバインダ層5cの3層構成の冷陰極素子においては、バインダ層5cを形成する主な目的は、電子放出量を大きくすることではなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくするように密着させることである。従って、バインダ層5cには、フリットガラスを混合させてもよい。フリットガラスはシリカより融点が低いため、溶融することによりシリカよりも強い密着力を有する。
【0033】
このように、本実施の形態3に係る冷陰極素子においては、シリカに比べて密着力の強いフリットガラスを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、陰極層5bをさらに剥がれにくくすることができるという効果を有する。
【0034】
<実施の形態4>
実施の形態2においては、実施の形態1に係る冷陰極発光素子のバインダ層5cを、CNTを主成分とする炭素ペーストではなく、ITO等の導電材料を主成分とするペーストを含んで形成する。
【0035】
また実施の形態3においては、実施の形態1に係る冷陰極発光素子のバインダ層5cを、シリカではなく、フリットガラスを含んで形成する。
【0036】
実施の形態4の係る冷陰極発光素子は、実施の形態2,3を組み合わせたものであり、即ち、バインダ層5cを、ITO等の導電材料を主成分とするペーストとフリットガラスとで形成させたものである。
【0037】
このように、本実施の形態4に係る冷陰極素子においては、CNTに比べて安価なITOと、シリカに比べて密着力の強いフリットガラスとを用いるので、実施の形態2,3の両方の効果を有する。
【0038】
<実施の形態5>
実施の形態1〜4に係る冷陰極発光素子においては、導電膜5aは、CNTとの反応性が小さいITOを含んで形成される。しかし、導電膜5aは、電子放出用の陰極層5bとは直接には接触しないので、CNTとの反応性が小さいITOではなく、ITOと比べてCNTとの反応性が大きいが安価なAgやAlを用いてもよい。
【0039】
このように、本実施の形態5に係る冷陰極素子においては、ITOに比べて安価なAgやAlを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、製造コストをさらに低減することができるという効果を有する。
【0040】
<実施の形態6>
実施の形態2,4に係る冷陰極発光素子においては、バインダ層5cは、ITO等の導電材料を主成分とするペーストと、シリカもしくはフリットガラスとを含んで形成される。しかし、バインダ層5cを形成する主な目的は、電子放出量を大きくすることではなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくするように密着させることであるため、CNTとの反応性が小さいITOではなく、ITOと比べてCNTとの反応性が大きいが安価なAgやAlを用いてもよい。この場合、陰極層5bに含まれるCNTの一部が、バインダ層5cに含まれるAgやAlと反応してしまうため、電子放出量は若干小さくなってしまうが、製造コストを低減することができる。
【0041】
このように、本実施の形態6に係る冷陰極素子においては、ITOに比べて安価なAgやAlを用いるので、実施の形態1の効果に加えて、製造コストをさらに低減することができるという効果を有する。
【0042】
<実施の形態7>
実施の形態1〜6に係る冷陰極発光素子は、縦横にマトリクス状に所定個ずつ配列されることで、FED表示装置の大画面が構成される。これらの冷陰極発光素子は、電子放出量を低下させることなく、陰極層5bを導電膜5aから剥がれにくくすることができるため、CNT陰極5とゲート電極6との間隔(ギャップ)を小さくすることができる。従って、点灯位置を制御するためにゲート電極6に印可されるパルス電圧を低くすることができるため、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用でき、製造コストを低減することができる。
【0043】
このように、本実施の形態7に係るFED表示装置においては、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用できるので、製造コストを低減することができるという効果を有する。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、前面パネルと背面パネルとをスペーサを介して封止した容器を備え、前記前面パネルは、前記容器の内面に蛍光体陽極を有し、前記背面パネルは、前記容器の内面に、前記蛍光体陽極を発光させる電子源となる複数の冷陰極電子源および前記冷陰極電子源を接続する配線から成る複数個の冷陰極電子源列、並びに、前記冷陰極電子源列の上方に設置されて前記冷陰極電子源から電子を引き出すための複数個のゲート電極を有し、前記冷陰極電子源は、前記背面パネル上に形成されて前記配線に接続された導電膜、および、炭素系材料を主成分とし電子放出量の大きい陰極層、並びに、前記導電膜と前記陰極層との間に配置されて前記導電膜と前記陰極層とを密着させるバインダ層を有するので、電子放出量を低下させることなく、前記陰極層を前記導電膜から剥がれにくくすることができる。
【0045】
また、請求項2に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、二酸化珪素を主成分とする無機材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、電子放出量を低下させることなく、前記陰極層を前記導電膜から剥がれにくくすることができる。
【0046】
また、請求項3に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、二酸化珪素を主成分とする無機材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、安価な導電材料を用いることにより製造コストを低減することができる。
【0047】
また、請求項4に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、フリットガラスを主成分とする材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、密着力の強いフリットガラスを用いることにより前記陰極層をさらに剥がれにくくすることができる。
【0048】
また、請求項5に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記バインダ層が、フリットガラスを主成分とする材料と、導電材料とを含んで形成されて、前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成されるので、安価な導電材料を用いることにより製造コストを低減することができる。また、密着力の強いフリットガラスを用いることにより陰極層をさらに剥がれにくくすることができる。
【0049】
また、請求項6に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、ITO(インジウム錫オキサイド)であるので、安価な導電材料であるITOを用いることにより製造コストを低減することができる。
【0050】
また、請求項7に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電膜が、銀もしくはアルミニウムを含む導電材料から形成されるので、安価な導電材料である銀もしくはアルミニウムを用いることにより製造コストを低減することができる。
【0051】
また、請求項8に記載の発明に係る冷陰極発光素子は、請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、前記導電材料が、銀もしくはアルミニウムであるので、安価な導電材料である銀もしくはアルミニウムを用いることにより製造コストを低減することができる。
【0052】
また、請求項9に記載の発明に係る画像表示装置は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の冷陰極発光素子を有する画面を備えるので、電子放出量を低下させることなく前記陰極層を前記導電膜から剥がれにくくすることができるため、冷陰極電子源とゲート電極との間隔を小さくすることができる。従って、ゲート電極に印可されるパルス電圧を低くすることができるため、パルス電圧を発生する駆動用ICとして市販の安価なものを使用でき、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る冷陰極発光素子の側断面図である。
【図2】実施の形態1に係る冷陰極発光素子の背面パネルの上面図である。
【図3】従来の冷陰極発光素子の側断面図である。
【図4】従来の冷陰極発光素子の背面パネルの上面図である。
【符号の説明】
1 前面パネル、2 背面パネル、3 スペーサガラス、4 蛍光体、5,5P CNT陰極、5a 導電膜、5b 陰極層、5c バインダ層、6 ゲート電極、7 メッシュ開口部、8 陰極配線層、9,9P CNT陰極列。
Claims (9)
- 前面パネルと背面パネルとをスペーサを介して封止した容器を備え、
前記前面パネルは、前記容器の内面に蛍光体陽極を有し、
前記背面パネルは、前記容器の内面に配列された、前記蛍光体陽極を発光させる電子源となる複数の冷陰極電子源、並びに、前記冷陰極電子源の上方に設置された、前記冷陰極電子源から電子を引き出すためのゲート電極を有し、
前記冷陰極電子源は、前記背面パネル上に形成された導電膜、および、炭素系材料を主成分とした電子放出用の陰極層、並びに、前記導電膜と前記陰極層との間に配置されて前記導電膜と前記陰極層とを密着させるバインダ層を有する冷陰極発光素子。 - 請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、
前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、二酸化珪素を主成分とする無機材料とを含んで形成されて、
前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される
冷陰極発光素子。 - 請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、
前記バインダ層が、二酸化珪素を主成分とする無機材料と、導電材料とを含んで形成されて、
前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される冷陰極発光素子。 - 請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、
前記バインダ層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料と、フリットガラスを主成分とする材料とを含んで形成されて、
前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される冷陰極発光素子。 - 請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、
前記バインダ層が、フリットガラスを主成分とする材料と、導電材料とを含んで形成されて、
前記陰極層が、カーボンナノチューブを含む炭素系材料を含んで形成される冷陰極発光素子。 - 請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、
前記導電材料が、ITO(インジウム錫オキサイド)である冷陰極発光素子。 - 請求項1に記載の冷陰極発光素子であって、
前記導電膜が、銀もしくはアルミニウムを含む導電材料から形成される冷陰極発光素子。 - 請求項3又は請求項5に記載の冷陰極発光素子であって、
前記導電材料が、銀もしくはアルミニウムである冷陰極発光素子。 - 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の冷陰極発光素子を有する画面を備える画像表示装置。
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