JP2004086069A - 多心光フェルール、多心光コネクタ、及び光モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の多心光フェルール2は、一列に並列された16心の光ファイバ挿入穴と、2つのガイドピン穴を有し、多心光フェルール2の外形及びガイドピン穴7は、IEC 60874−16にて規定されているMTフェルールと同一の形状及び配置に構成されている。
また、本発明の多心光コネクタ1及び光モジュール10は、上記の多心光フェルール2を用いている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多心光フェルール、多心光コネクタ、及び光モジュールに関し、さらに詳しくは、複数心の光ファイバ挿入穴と、2つのガイドピン穴を有する多心光フェルールと、この多心光フェルールを用いた多心光コネクタ及び光モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバを用いた光通信分野において、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送技術による大容量光通信網が発達してきている。これに伴い、光アクセス網を構築するための光導波路等で、複数の光ファイバを一括して接続することができる多心光コネクタが多用されている。
多心光コネクタとしては、光通信に関する国際規格(IEC)により、MTコネクタと呼ばれる形式が規定されている(非特許文献1参照)。また、日本工業規格(JIS)では、IECに準拠して、MTコネクタと同様のF12形多心光ファイバコネクタが規定されている(非特許文献2参照)。
【0003】
図6に、8心形のMTコネクタの斜視図を示す。
このMTコネクタ100は、フェルール101と、ブーツ104と、光ファイバテープ心線105とを備えている。フェルール101には、光ファイバテープ心線105の一端側が挿入され、ブーツ104を介してフェルール101と光ファイバテープ心線105とが相互に固定されている。
【0004】
フェルール101は、接続する方向に向かって前方側のフェルール本体102と、後方側のつば部103とから構成されており、全体がエポキシ樹脂等によって一体的に成形されている。フェルール本体102は、横幅方向の両端部近傍にガイドピン穴106が設けられており、この2つのガイドピン穴106の間には、8つの光ファイバ挿入穴107が設けられている。
【0005】
ガイドピン穴106は、MTコネクタ100がアダプタや他のMTコネクタに接続されるときにガイドピンを挿入することで、接続時の位置決めを行うものである。
光ファイバ挿入穴107は、2つのガイドピン穴106の中心間を結ぶ基準線上に、各々の中心軸が等ピッチで、かつ一列(一次元)になるように並列されている。さらに、光ファイバ挿入穴107は、基準線の中点Oを原点として対称となる位置に配置されている。また、この光ファイバ挿入穴107の各中心軸間のピッチPは、通常の光ファイバテープ心線における光ファイバの配列ピッチと同等の、250μmに設定されている。そして、8つの光ファイバ挿入穴107は、光ファイバテープ心線105の端部において被覆が除去されたガラス部分の光ファイバを最大8心まで結線することが可能なように構成されている。
【0006】
ここで、フェルール101について規定されている主要な寸法について述べる。
フェルール本体102の横幅aは6.4mm、縦幅cは2.5mmである。2つのガイドピン穴106は、直径が0.7mm(公差±0.001mm)、中心間の距離bが4.6mm(公差±0.003mm)である。また、フェルール本体102の接続方向の長さdは6.0mmである。
つば部103の横幅eは7.0mm、縦幅fは3.0mm(公差±0.1mm)である。また、つば部103の接続方向の長さgは2.0mm(公差±0.1mm)である。
【0007】
MTコネクタは、上述した8心形の他に、2心、4心、10心、12心の形についても規定されている。全てのMTコネクタにおいて、光ファイバ挿入穴は、基準線の中点Oを原点として対称となる位置に配置され、そのピッチは250μmに規定されている。
【0008】
また、多心光コネクタのさらなる多心化を図るために、MTコネクタのフェルールと類似する形状を有しつつ、光ファイバ挿入穴の配列を縦横の二次元配列としたフェルールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらには、MTコネクタのフェルールを規定された寸法よりも横幅方向に大きくして、16心の光ファイバ挿入穴を一次元配列させたフェルールも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
(非特許文献1)
“Connectors for optical fibres and cables . Part 16: Sectionalspecification for fibre optic connector . Type MT” 94年9月 IEC 60874−16
(非特許文献2)
「F12形多心光ファイバコネクタ」 日本規格協会 1998年 JIS C 5981
(特許文献1)
特開平11−84177号公報(第2ページ、第4図)
(特許文献2)
特開2001−51154号公報(第3ページ、第2図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したようなフェルールは、樹脂にて一体的に成形されている。その成形方法としては、トランスファ成形と射出成形の2種類の金型成形が広く使用されている。何れの方法においても、ガイドピン穴と光ファイバ挿入穴は、成形ピンを金型内に配置して形成されることが一般的である。
ここで、光ファイバ挿入穴を縦横の二次元配列とする場合には、成形時の位置決めを縦方向と横方向の2方向について行わなければならず、金型の構造が複雑化してしまう。一次元配列の場合では、ガイドピン穴と光ファイバ挿入穴とを全て一列に並列させて形成すれば良く、位置決めが容易であるのに対して、二次元配列の場合では、ガイドピン穴と2列の光ファイバ挿入穴とを、縦方向にそれぞれ位置決めして形成する必要がある。
【0011】
したがって、光ファイバ挿入穴を二次元配列させる場合には、高精度に成形することが困難であり、他のフェルールとの接続時に光ファイバ同士の光軸ずれを起こしてしまうことがあった。
また、二次元に配列された光ファイバ挿入穴を有するフェルールは、光ファイバテープ心線を挿入する際に、2枚の光ファイバテープ心線を上下に配列させるか、または多心の光ファイバテープ心線を上下に分岐させる必要があり、作業が困難であった。
【0012】
また、上述したように光ファイバ挿入穴を一次元配列させてさらなる多心化を図った場合には、フェルールの外形及びガイドピン穴の配置が規格品のMTコネクタとは異なっていた。そのため、既に流通しているMTコネクタ用のハウジングを使用することができず、製品としての汎用性が欠けてしまうという状況にあった。
【0013】
さらに、光導波路の端部に設けられた光ファイバアレイに通信機器等を接続するための光モジュールにおいては、多心の光ファイバを接続でき、汎用性のある多心光コネクタが望まれていた。
【0014】
本発明の目的は、MTコネクタ用のハウジングを利用可能であって、高精度成形が容易である、16心以上の多心光フェルール、多心光コネクタ、及びこれらを用いた光モジュールを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る多心光フェルールは、複数心の光ファイバ挿入穴と、2つのガイドピン穴を有する多心光フェルールであって、光ファイバ挿入穴は、16心以上の穴が一列に並列されて設けられており、多心光フェルールの外形及びガイドピン穴は、IEC 60874−16にて規定されているMTフェルールと同一の形状及び配置に構成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成の多心光フェルールによれば、16心以上の光ファイバを結線することが可能であるとともに、外形がMTフェルールと同一の形状であるので、フェルールの汎用性を有しつつ、IEC等の規格に比べてさらなる多心化を図ることができる。また、光ファイバ挿入穴が一列(一次元)に配列されているため、高精度の成形が可能である。
【0017】
また、本発明に係る多心光フェルールにおいて、多心光フェルールの全体が樹脂にて一体成形されていることが望ましい。
このような構成の多心光フェルールによれば、樹脂以外の材料を併用する場合や、複数の部材により多心光フェルールを構成する場合と比べて、製造コストを低く抑えることができる。
【0018】
また、本発明に係る多心光フェルールにおいて、光ファイバ挿入穴の最小内径が125μm〜126μmであることが望ましい。
このような構成の多心光フェルールによれば、光ファイバとして最も一般的な、ガラス部分の直径が125μmである光ファイバを結線することができる。
【0019】
また、本発明に係る多心光フェルールにおいて、光ファイバ挿入穴の最小内径が80μm〜81μmであることが望ましい。
このような構成の多心光フェルールによれば、細径の光ファイバとして一般的な、ガラス部分の直径が80μmである光ファイバを結線することができる。
また、このような細径の光ファイバ挿入穴を形成する場合には、細径の成形ピンを用いるためにその位置決めが困難になるが、上記構成の多心光フェルールの場合は一次元配列であるため、二次元配列する場合と比較して成形ピンを高精度に位置決めすることが容易である。
【0020】
また、本発明に係る多心光フェルールにおいて、光ファイバ挿入穴とガイドピン穴との間隔が、0.45mm以上であり、隣り合う光ファイバ挿入穴の間隔が35μm以上であることが望ましい。
このような構成の多心光フェルールによれば、光ファイバ挿入穴とガイドピン穴とを樹脂にて成形する場合に、充分な強度と成形精度を得ることができる。
【0021】
また、上記目的を達成するための本発明に係る多心光コネクタは、本発明に係る上記の多心光フェルールに、1心以上の光ファイバが結線されていることを特徴とする。
このような構成の多心光コネクタによれば、MTコネクタより多くの光ファイバを結線することが可能であり、なおかつ結線された光ファイバは高精度に配列される。また、MTコネクタと同様のハウジングを使用でき、汎用性に優れている。
【0022】
また、本発明に係る多心光コネクタにおいて、光ファイバは、波長1.55μmにおけるモードフィールド径が6.5μm以下であることが望ましい。
このような構成の多心光コネクタによれば、光ファイバが高精度に配列されることから、設計値からの光軸ずれが小さく、そのため上記のような通常より小さいモードフィールド径の光ファイバを用いることができる。また、モードフィールド径の小さい光ファイバを用いることにより、曲げに対して伝送損失が起こりにくい、良好な伝送特性を有する多心光コネクタを得ることができる。
なお、本発明におけるモードフィールド径は、ピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径を採用する。Petermann−Iの定義によるモードフィールド径(MFD)は、
【数1】
なる式で定義される。この[数1]中にある変数rは、光ファイバの光軸からの径方向の距離である。φ(r)は、径方向の光の電界分布であり、光の波長により異なる。
【0023】
また、本発明に係る多心光コネクタにおいて、光ファイバ挿入穴の各中心軸が、MTフェルールにおける光ファイバ挿入穴の各中心軸に対して、モードフィールド径の半分以上離れた位置に配置されていることが望ましい。
また、本発明に係る多心光コネクタにおいて、光ファイバ挿入穴は、2つの前記ガイドピン穴の中心間を結ぶ基準線上に、各々の中心軸が等ピッチで一列になるように並列されており、かつ、前記基準線の中点を原点として対称となる位置に配置されていることが望ましい。
このような構成の多心光コネクタによれば、他系統のMTコネクタと誤って接続させたときに、光ファイバ間で光が導通することを容易に防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る多心光コネクタにおいて、光ファイバ挿入穴は、16心設けられ、かつ、各々の中心軸間のピッチP(μm)が、187≧P≧184、182≧P≧180、177≧P≧174、172≧P≧160、の何れかの範囲内に設定されていることが望ましい。
このような構成の多心光コネクタによれば、モードフィールド径が10.0μm以下(例えば6.5μm〜9.5μm)である光ファイバを用いたときに、MTコネクタとの誤接続を防止することができる。
【0025】
また、上記目的を達成するための本発明に係る光モジュールは、16心以上の光ファイバが1本以上の光ファイバテープ心線として構成されており、光ファイバテープ心線の一端側が、請求項1〜5の何れか1項に記載の多心光フェルールに結線され、光ファイバテープ心線の他端側が、光ファイバアレイに接続されていることを特徴とする。
このような構成の光モジュールによれば、16心の光ファイバテープ心線を用い、使用するコネクタの数を少なくすることができるので、光モジュールの小型化と低コスト化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る光モジュールにおいて、光ファイバのガラス部分の外径が80μmであり、光ファイバテープ心線の光ファイバの配列ピッチが160μm以上であって、2本の光ファイバテープ心線の他端側が、光ファイバテープ心線の横幅方向にずれて積層された状態で、光ファイバアレイに接続されていることが望ましい。
このような構成の光モジュールによれば、外径80μmの光ファイバを用いて、光ファイバアレイを従来よりも高密度化することができる。
【0027】
また、本発明に係る光モジュールにおいて、多心光フェルールの光ファイバ挿入穴のピッチP(μm)が、187≧P≧184、182≧P≧180、177≧P≧174、172≧P≧160、の何れかの範囲内に設定されていることが望ましい。
このような構成の光モジュールによれば、光ファイバ挿入穴の好適なピッチを設定することで、MTコネクタとの誤接続を防止することができる。また、好ましくは、光ファイバテープ心線のピッチを光ファイバ挿入穴と同等にすると良い。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多心光フェルール、多心光コネクタ、及び光モジュールの一実施形態を図1〜5に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る多心光フェルール及び多心光コネクタの一実施形態を示す斜視図である。図2は図1における多心光フェルールを示す正面図である。図3は図1に示す多心光コネクタを用いた光モジュールを示す模式図である。図4は図3における光ファイバテープ心線のX−X断面を示す要部断面図である。図5は、図3における光ファイバアレイを示す斜視図である。
【0029】
本実施形態の多心光フェルールは、MTフェルールと同一の外形及びガイドピン穴を有し、一次元配列された光ファイバ挿入穴に16心の光ファイバを結線できることを特徴としている。
図1に示すように、本実施形態の多心光コネクタ1は、MTコネクタと類似した構成を有し、多心光フェルール2と、ブーツ5と、光ファイバテープ心線6とを備えている。多心光フェルール2には、光ファイバテープ心線6の一端側が挿入され、ブーツ5を介して多心光フェルール2と光ファイバテープ心線6とが相互に固定されている。ブーツ5はゴム製であり、多心光フェルール2の後端から導出された光ファイバテープ心線6を、急激に折れ曲がることのないように保護している。
【0030】
多心光フェルール2は、MTフェルールと同一の外形を有し、接続する方向に向かって前方側のフェルール本体3と、後方側のつば部4とから構成されている。また、多心光フェルール2はエポキシ樹脂等によって一体的に成形されている。フェルール本体3は、横幅方向の両端部近傍にガイドピン穴7が設けられており、この2つのガイドピン穴7の間には、16心の光ファイバ挿入穴8が設けられている。
【0031】
ガイドピン穴7は、多心光コネクタ1が、MTコネクタに接続可能なアダプタや、別の多心光コネクタ1等に接続されるときにガイドピンを挿入することで、接続時の位置決めを行うものである。ガイドピンは、MTコネクタにおいて使用されるものと同一のものが使用できる。
【0032】
ここで、多心光フェルール2の各寸法a〜g、及びガイドピン穴7の直径は、上述したMTコネクタにて規定されている寸法と同一である。特に、多心光コネクタ1にMTコネクタと同様のハウジングを装着するためには、フェルール本体3に関わる寸法、すなわち、横幅a、縦幅c、接続方向の長さd、ガイドピン穴の直径及び中心間の距離bを、図6に示したMTコネクタと同一にすることが必要である。さらに望ましくは、つば部4に関わる寸法である、横幅e、縦幅f、接続方向の長さgもMTコネクタと同一にすることによって、より一層の汎用性を得ることができる。
【0033】
また、光ファイバ挿入穴8は、光ファイバテープ心線6の端部から被覆を除去したガラス部分の光ファイバを1心づつ挿入して、結線できるように構成されている。例えば、光ファイバ挿入穴8の最小内径を、125μm〜126μmとすれば、通常使用されている光ファイバとして最も一般的な、ガラス部分の直径が125μmである光ファイバを結線することができる。
また、光ファイバ挿入穴8の最小内径を、80μm〜81μmとすれば、細径の光ファイバとして一般的な、ガラス部分の直径が80μmである光ファイバを結線することができる。このような細径の光ファイバ挿入穴8を形成する場合には、細径の成形ピンを高精度に位置決めしなければならないために、高い成形精度を得ることが困難になる。ここで、本実施形態の多心光フェルール2の場合は一次元配列であるため、二次元配列する場合と比較して成形ピンを高精度に位置決めすることが容易である。したがって、光ファイバ挿入穴8を高精度成形することができる。
【0034】
図2に示すように、16心の光ファイバ挿入穴8(8a〜8p)は、2つのガイドピン穴7の中心間を結ぶ基準線L上に、各々の中心軸が等ピッチで、かつ一列(一次元)になるように並列されている。さらに、光ファイバ挿入穴8は、基準線Lの中点Oを原点として対称となる位置に配置されている。すなわち、中点Oを中心として、図中左方に位置する8心の光ファイバ挿入穴8a〜8hと、図中右方に位置する8心の光ファイバ挿入穴8i〜8pとが、それぞれ対称の位置関係を有している。このように、光ファイバ挿入穴8を対称形状で規則的に配列することにより、高い成形精度が得られやすい。
【0035】
また、多心光フェルール2の強度をMTコネクタと同等にするために、最も外側に配列された光ファイバ挿入穴8a、8pは、ガイドピン穴7との間隔Q1が0.45mm以上となるように配置されている。なお、12心形のMTコネクタの規格では、ガイドピン穴と光ファイバ挿入穴との間隔が0.45mmとなっている。
【0036】
また、多心光フェルール2を成形する樹脂には、寸法精度を向上させるためにシリカフィラを高い濃度で含有させている。このシリカフィラの最外径は30μm程度である。多心光フェルール2を成形する際に、光ファイバ挿入穴8を形成するための成形ピンの間に樹脂を流入させるためには、隣り合う成形ピンの間隙をシリカフィラが通過するように設ける必要がある。そのため、成形ピンの間隔を0.35μm以上とすることが好ましい。このように、成形時の成形ピンの間隔を設定することによって、成形された多心光フェルール2は、隣り合う各光ファイバ挿入穴8の間隔Q2が0.35μm以上となる。
なお、最外径が30μmより小さいシリカフィラ、またはシリカフィラに代えて代用可能なフィラを用いた場合には、その大きさによって各光ファイバ挿入穴8の間隔Q2を適宜変更することが可能である。
【0037】
このように、本実施形態の多心光フェルール2は、全体が樹脂によって一体成形されているため、製造コストを安価に抑えることができる。さらに、ガイドピン穴と光ファイバ挿入穴の設計値を上記のように設けることにより、MTコネクタと同等の強度と高い成形精度を得ることができる。
【0038】
次に、光ファイバ挿入穴8のピッチPについて好適な態様を説明する。
上述したように、本発明に係る多心光フェルールは、MTコネクタのフェルールと同一の外形及びガイドピン穴を有している。そのため、本発明に係る多心光フェルールはMTコネクタと機械的に接続することが可能である。
また、本発明に係る多心光フェルールは、光モジュールやボード内の配線で光入出力素子や光制御回路等と接続されることが多いため、多系統でMTコネクタが使用されていた場合に、誤ってそのMTコネクタと接続されてしまう場合が考えられる。
誤接続によってMTコネクタと光が導通した場合には、回路が上手く機能しないだけでなく、接続された素子を損傷させてしまう可能性がある。特に、近年のWDMやラマン増幅等の光通信技術の進展に伴い、光ファイバに大出力の光が伝送されている場合が多く、誤接続による機器の損傷対策が重要になっている。
そこで、本発明者らは、MTコネクタと誤接続した際にも光ファイバ間で光が導通することのないように、光ファイバ挿入穴8のピッチPについて好適な設計値を見出した。
【0039】
まず、本発明に係る多心光フェルールと従来のMTフェルールとが誤接続されたときに、互いの光ファイバ挿入穴が重なって光が導通する場合のピッチを求める。
ここで、光ファイバ挿入穴8a〜8pのうち、中点Oに最も近く、内側に位置する8h及び8iを1番心と呼び、それぞれ外側に向かって順次2番心、3番心、…8番心と呼ぶこととする。すなわち、最も外側に位置する8a及び8pが8番心となる。また、一次元配列のMTコネクタにおける最大心数の12心MTコネクタにおいても、12心の光ファイバ挿入穴を同様に1番心から6番心と呼ぶこととする。上述したように、MTコネクタにおける光ファイバ挿入穴のピッチは250μmである。
【0040】
本実施形態の多心光フェルール2のn番心(n:1以上の整数)と、MTフェルールのm番心(m:1〜6の整数)が重なるときのピッチP(μm)は、多心光フェルール2の心数が偶数の場合は、次に示す(1)式で求められる。
P=250×(2m−1)/(2n−1) …(1)
この(1)式より、nが1〜8である16心の多心光フェルールを考えた場合の、n番心とm番心が重なるピッチPは、次に示す表の通りである
。
【0041】
【表1】
【0042】
この表1により、光ファイバ挿入穴の重なりが生じるピッチPが判る。例えば、ピッチPを83.3μmに設定すると、MTフェルールの1番心と多心光フェルール2の2番心、MTフェルールの2番心と多心光フェルール2の5番心、及びMTフェルールの3番心と多心光フェルール2の8番心が重なることが判る。このピッチPのときに互いの光ファイバ挿入穴の中心軸が一致するので、光ファイバ同士の光を導通させないためには、この位置から充分な軸ずれ量が確保されれば良い。
ここで、ピッチPと軸ずれ量D(μm)の関係は、次に示す(2)式により求められる(|…|は絶対値を示す)。
D=|(n−m)×250−(2n−1)×(250−P)/2| …(2)
【0043】
ずらすべき軸ずれ量Dは、使用する光ファイバの実効コア径であるモードフィールド径(以下、MFDと呼ぶ)に依存する。MFDの大きさ以上の軸ずれ量を確保すると光が全く導通しなくなるが、その場合、選択できるピッチPの値が狭められてしまうため、本実施形態ではMFDの半分以上の軸ずれ量を確保することとする。これにより、3dB以上の伝送量の低減が見込まれるため、実際の光伝送において機器の損傷を防止できる充分なパワー低減効果が得られる。
【0044】
本実施形態では、使用波長1.55μmにおけるMFD6.5μm〜9.5μmのシングルモード光ファイバを用いることを想定して、軸ずれ量Dを5μm以上に設定する。例えば、MTフェルールの6番心と多心光フェルール2の7番心との軸ずれ量Dが5μm以上となる範囲は、上記(2)式にm=6、n=7を代入することで、210.7μm以下もしくは212.3μmの範囲であることが判る。同様にして、MTフェルールの各番心と多心光フェルール2の各番心との組み合わせにおいて上記(2)式を計算すると、全ての光ファイバ挿入穴8において光が導通しないか、あるいは光伝送量が充分に低減されるピッチPの範囲が求められる。
【0045】
さらに、光ファイバ挿入穴8に結線する光ファイバの直径を80μm〜125μmとして、上述したように光ファイバ挿入穴8とガイドピン穴7との間隔Q1が0.45mm以上となり、隣り合う各光ファイバ挿入穴8の間隔Q2が0.35μm以上となるようにピッチPを計算する。その結果、ピッチPの値は、次に示す(3)式〜(6)式のいずれかの範囲内に設定すれば良いことが判る。
187≧P≧184 …(3)
182≧P≧180 …(4)
177≧P≧174 …(5)
172≧P≧160 …(6)
【0046】
また、光ファイバ挿入穴8は、高精度に成形及び配置がなされているため、設計値に対して光ファイバの光軸ずれが極めて小さい。したがって、光ファイバ挿入穴8に結線される光ファイバとして、波長1.55μmにおけるMFDが6.5μm以下である光ファイバを好適に用いることができる。MFDの小さい光ファイバを用いることにより、曲げに対する伝送損失の増加を抑えることができ、多心光コネクタ1の伝送特性を向上させることができる。
また、光ファイバテープ心線6の光ファイバの配列ピッチを光ファイバ挿入穴8と同等にすると良い。これにより、光ファイバ挿入穴8に対して光ファイバテープ心線6を結線しやすくなる。
【0047】
さらに、本実施形態のように、MTフェルールに対して意図的に軸ずれを起こさせる場合、光伝送パワーが大きいと、光ファイバの端部が発熱して多心光フェルール2が高温に加熱されてしまう可能性が考えられる。多心光フェルール2の材質を、難燃性材質としておくことで、加熱による変形や燃焼等の不具合を防止することができる。ここで、多心光フェルール2の樹脂材料に要求される難燃性として、ULのV0規格に相当する程度の難燃性を有していることが望ましい。この難燃性を得ることのできる難燃性材料として、射出成形で一般的に使用されるPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂を用いることができる。
【0048】
次に、上述した多心光コネクタ1を用いた光モジュールについて説明する。
図3に示すように、光モジュール10は、上述した多心光コネクタ1の、光ファイバテープ心線6の他端側が光ファイバアレイ11に接続されている。光ファイバアレイ11は、例えばAWG回路基板等の光導通路20の端部に設けられている。
光ファイバテープ心線6は、樹脂13が被覆された16心の光ファイバを一列に並列させた状態で一括被覆層14により被覆したものである(図4参照)。また、光ファイバテープ心線6の別の態様として、1つの多心光コネクタ1につき、例えば8心の光ファイバテープ心線が2本、横幅方向に並列した状態で接続されていても良い。
【0049】
また、図3に示すように、光ファイバアレイ11には、2つの多心光コネクタ1の光ファイバテープ心線6,6を重ねて接続することができる。ここで、積層された光ファイバテープ心線6,6の断面(図中X−X断面)を図4に示す。
また、2本の光ファイバテープ心線6,6が積層されて光ファイバアレイ11に接続された状態の斜視図を図5に示す。
【0050】
図3〜図5に示すように、2本の光ファイバテープ心線6,6は、光ファイバアレイ11に接続された他端側が、横幅方向にずれて積層されている。好ましくは、図4に示すように、光ファイバテープ心線6内に配列された光ファイバ12の配列ピッチP1を基準として、上下の光ファイバテープ心線6,6が配列ピッチP1の半分の距離P2だけ互いにずれて配置されていると良い。
この積層状態のまま、光ファイバテープ心線6の端部において被覆13が除去された光ファイバ12は、光ファイバアレイ11のV溝11aによって固定され、接続されている。このとき、各光ファイバ12は、上下の光ファイバテープ心線6,6から交互に配列されてV溝11aに案内されている。また、隣接する光ファイバ12同士は、互いに接触するほど近接した状態となっている。したがって、光ファイバアレイ11に対して光ファイバ12を高密度に接続することができる。
【0051】
また、細径の光ファイバを用いると、効果的に高密度化を図ることができる。
例えば、ガラス部分の光ファイバ12の外径を80μmとして、配列ピッチP1を160μmとすると良い。
【0052】
このように、本実施形態の光モジュール10は、高密度化を図った多心光コネクタ1を用いて、多心の光ファイバテープ心線6を光ファイバアレイ11に高密度に接続させている。そのため、使用する多心光コネクタ1の数を減らすことができる。さらに、光モジュール10の小型化と低コスト化を図ることができる。
また、多心光コネクタ1の光ファイバ挿入穴のピッチPを、上記(3)式〜(6)式のいずれかの範囲内に設定することにより、MTコネクタとの誤接続を防止して、導波路等の機器に損傷が発生することを防ぐことができる。
【0053】
なお、上述した実施形態においては、16心の多心光フェルール、多心光コネクタ、及びこれらを用いた光モジュールについて述べたが、本発明においてはさらなる多心化を図ることも可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、MTコネクタ用のハウジングを利用可能であって、高精度成形が容易である、16心以上の多心光フェルール、多心光コネクタ、及びこれらを用いた光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多心光フェルール及び多心光コネクタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1における多心光フェルールを示す正面図である。
【図3】図1に示す多心光コネクタを用いた光モジュールを示す模式図である。
【図4】図3における光ファイバテープ心線のX−X断面を示す要部断面図である。
【図5】図3における光ファイバアレイを示す斜視図である。
【図6】従来のMTコネクタを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 多心光コネクタ
2 多心光フェルール
3 フェルール本体
4 つば部
5 ブーツ
6 光ファイバテープ心線
7 ガイドピン穴
8 光ファイバ挿入穴
10 光モジュール
11 光ファイバアレイ
Claims (13)
- 複数心の光ファイバ挿入穴と、2つのガイドピン穴を有する多心光フェルールであって、
前記光ファイバ挿入穴は、16心以上の穴が一列に並列されて設けられており、
前記多心光フェルールの外形及び前記ガイドピン穴は、IEC 60874−16にて規定されているMTフェルールと同一の形状及び配置に構成されていることを特徴とする多心光フェルール。 - 請求項1に記載の多心光フェルールにおいて、前記多心光フェルールの全体が樹脂にて一体成形されていることを特徴とする多心光フェルール。
- 請求項1に記載の多心光フェルールにおいて、前記光ファイバ挿入穴の最小内径が125μm〜126μmであることを特徴とする多心光フェルール。
- 請求項1に記載の多心光フェルールにおいて、前記光ファイバ挿入穴の最小内径が80μm〜81μmであることを特徴とする多心光フェルール。
- 請求項1に記載の多心光フェルールにおいて、前記光ファイバ挿入穴と前記ガイドピン穴との間隔が、0.45mm以上であり、隣り合う前記光ファイバ挿入穴の間隔が35μm以上であることを特徴とする多心光フェルール。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の多心光フェルールに、1心以上の光ファイバが結線されていることを特徴とする多心光コネクタ。
- 請求項6に記載の多心光コネクタにおいて、前記光ファイバは、波長1.55μmにおけるモードフィールド径が6.5μm以下であることを特徴とする多心光コネクタ。
- 請求項6に記載の多心光コネクタにおいて、前記光ファイバ挿入穴の各中心軸が、MTフェルールにおける光ファイバ挿入穴の各中心軸に対して、前記モードフィールド径の半分以上離れた位置に配置されていることを特徴とする多心光コネクタ。
- 請求項8に記載の多心光コネクタにおいて、前記光ファイバ挿入穴は、2つの前記ガイドピン穴の中心間を結ぶ基準線上に、各々の中心軸が等ピッチで一列になるように並列されており、かつ、前記基準線の中点を原点として対称となる位置に配置されていることを特徴とする多心光コネクタ。
- 請求項9に記載の多心光コネクタにおいて、
前記光ファイバ挿入穴は、16心設けられ、かつ、各々の中心軸間のピッチP(μm)が、187≧P≧184、182≧P≧180、177≧P≧174、172≧P≧160、の何れかの範囲内に設定されていることを特徴とする多心光コネクタ。 - 16心以上の光ファイバが1本以上の光ファイバテープ心線として構成されており、前記光ファイバテープ心線の一端側が、請求項1〜5の何れか1項に記載の多心光フェルールに結線され、前記光ファイバテープ心線の他端側が、光ファイバアレイに接続されていることを特徴とする光モジュール。
- 請求項11に記載の光モジュールにおいて、前記光ファイバのガラス部分の外径が80μmであり、前記光ファイバテープ心線の前記光ファイバの配列ピッチが160μm以上であって、2本の前記光ファイバテープ心線の前記他端側が、前記光ファイバテープ心線の横幅方向にずれて積層された状態で、前記光ファイバアレイに接続されていることを特徴とする光モジュール。
- 請求項12に記載の光モジュールにおいて、前記多心光フェルールの前記光ファイバ挿入穴のピッチP(μm)が、187≧P≧184、182≧P≧180、177≧P≧174、172≧P≧160、の何れかの範囲内に設定されていることを特徴とする光モジュール。
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