JP2004085437A - 表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】高いS/N比を得、かつ可動部を無くし、操作が簡単でしかも反射面の多数の試料を測定可能にすることを課題とする。
【解決手段】プリズム面上に金属膜を形成し、プリズム側から金属膜に光を照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源15a,15bと、光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有し、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器23a,23bと、各波長の光の強度比から強度変調信号の周波数成分を抽出する抽出機構24と、抽出機構に接続された信号処理装置25とを具備することを特徴とする。
【選択図】 図11
【解決手段】プリズム面上に金属膜を形成し、プリズム側から金属膜に光を照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源15a,15bと、光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有し、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器23a,23bと、各波長の光の強度比から強度変調信号の周波数成分を抽出する抽出機構24と、抽出機構に接続された信号処理装置25とを具備することを特徴とする。
【選択図】 図11
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属表面に付着した物質の物理的化学的性質の変化を検知する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、物質の物理的化学的性質の変化を検知する手段として、表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ(以下、SPRセンサと呼ぶ)が知られている。これは、例えば、図1に示すように、回折格子を備えた平行ガラス基板(又はガラスプリズム)1の表面に銀、金等の金属薄膜2を真空蒸着等の成膜技術を用いて形成し、ガラス基板1側から金属薄膜界面に向って全反射条件を満足する角度でレーザ光線3を照射し、金属屈折率と金属上部の屈折率及びガラス基板の屈折率と光の振動数及び境界面への光入射角θによって既述される関係により、ガラス基板1、金属薄膜2界面に生じる表面プラズモンを生成することを利用するものである。
【0003】
なお、図1において、符番4は測定部(例えばDNA検出部)であり、光入射角θと反射光強度との関係は図2に示すようになる。図2より、DNA結合の有無によりダンピングが激しくなる入射角θが異なる。つまり、DNAの結合による質量の微小変化を、金属薄膜のプラズモン共鳴吸収による大きな光量変化として鋭敏に検知することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のSPRセンサによれば、以下に述べる問題点があった。
(1)高いS/Nの信号が得られない。
即ち、従来のSPRセンサは屈折率変化により物質の状態変化を検出して試料の情報を計測するものである。しかし、極わずかな屈折率変化では、反射光の変化はわずかであり、高いS/Nの信号が得られない。
【0005】
(2)光軸調整機構、均質な平面波を得るための大型光学系が必要であり、また前記光学系を可動させるための可動部が必要である。
つまり、共鳴角近傍では反射光強度が減衰しているため、共鳴角の変化を高い信号対雑音比で計測するには、共鳴角周辺の強度変化情報が必要である。即ち、入射角に対する光強度の変化、もしくは光の波長に対する強度変化が従来用いられている。そのため、光の方向を変える、あるいは特定の角度の範囲の発散または収束光を用い反射光の強度分布を計測する、波長を変化させる等の方法が提案されている。しかし、光照射部にある複数の試料の情報を計測する場合、いずれの手法でも上記大型光学系が必要であり、かつ前記可動部が必要となる。
【0006】
(3)スペックルノイズがS/N比を低下させる恐れがある。
従来のSPRセンサは光の強度と角度の情報に基づいて物質を判定していた。この方法では、共鳴角の情報が光強度から求まるため、光の集光性や発散角の小さい光束が容易に得られるレーザ光を光源とすると計測精度の向上が期待できる。しかし、反射面の揺らぎ等に起因する光束内での光の干渉効果、いわゆるスペックルによる強度分布が生じ、実測される反射強度を変化させる悪影響もある。従来は、レーザ光の干渉性を下げる機構を用いたり、干渉性の低いLEDを用いたりしている。
【0007】
物質が反射面に分布している場合にSPR計測法を適用する場合は、平行性が高く単色性良いレーザ光源を用いることが望ましいが、スペックルノイズがS/Nを低下させる可能性がある。
【0008】
本発明はこうした問題点を解決するためになされたもので、高いS/N比を得るとともに、大型光学系を省いて可動部を無くし、操作が簡単でしかも反射面の多数の試料を測定可能な表面プラズモン共鳴を用いた物質センサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明は、プリズム面上に金属膜を形成し、プリズム側から金属膜に光を特定の角度で照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、
2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源と、前記光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有するとともに、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器と、各波長の光の強度比を求め、強度変調信号の周波数成分を抽出する抽出機構と、この抽出機構に接続された信号処理装置とを具備することを特徴とする表面プラズモン共鳴を用いた物質センサである。
【0010】
本願第2の発明は、回折格子を備えた平行ガラス基板面上に金属膜を形成し、基板側から金属膜に光を特定の角度で照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、
前記平行ガラス基板は、下面に回折格子が形成された第1の平行ガラス基板と、該ガラス基板上に分離可能に設けられ,上面側に金属膜が形成された第2の平行ガラス基板とからなり、
2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源と、前記光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有するとともに、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、前記第1・第2の平行ガラス基板間に配置され,波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器と、この光検出器に接続された信号処理装置とを具備することを特徴とする表面プラズモン共鳴を用いた物質センサである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の表面プラズモン共鳴を用いた物質センサについて更に詳しく説明する。
1)まず、図3を参照して表面プラズモン共鳴の発生条件について説明する。ここでは、全反射条件でレーザ光がガラス基板を通して、ガラス基板と金属薄膜との界面に入射する場合を考える。
【0012】
全反射する光は、電界強度分布がガラス基板7内で定在波となり、境界面から金属薄膜8側に単調減衰する。この光は境界面方向に速度v1をもち、この速度v1は入射角θに依存する。
一方、表面プラズモンは境界面から両側に単調減衰する青色で示す電界強度分布をもつ波であり、界面方向に速度v2で伝播する。ここで、v2は金属薄膜8、及びその金属薄膜8の近傍の屈折率n即ち金属薄膜8に付着している物質(DNA)の質量に依存して決まる固有の値となる。
【0013】
光の入射角と変化させて、伝播速度v1とv2が一致する条件になると、全反射光のエネルギーが表面プラズモンに移行し、全反射光強度が著しく減少する。この状態が表面プラズモン共鳴である。
表面プラズモン共鳴は速度v1とv2に依存しているため、共鳴の起こる条件は光の入射角と金属薄膜表面の質量に依存する。従って、表面プラズモン共鳴が起こる光の入射角を測定することにより、金属薄膜表面の質量の変化を調べることができる。
【0014】
2)次に、表面プラズモン共鳴発生条件近傍(矢印A)での入射角と反射光強度、位相との関係について図4を参照して説明する。なお、図4において、曲線(イ)は反射強度を、曲線(ロ)は位相を示す。図4に示すように、表面プラズモン共鳴が発生する光の入射角近傍で反射光強度(振幅)の減衰と同時に位相の変化(とび)が生じる。ここで、全反射光は、入射角が変化することで位相が変化する特性を有する。また、位相変化は、表面プラズモン共鳴が生じる角度付近で大きく変わり、共鳴角で不連続となる。
【0015】
3)次に、干渉計の参照光強度を変化させた場合の干渉強度について図5、図6、図7を参照して説明する。図5において、参照光強度の増減によりいずれの干渉光強度(曲線(イ)〜(ハ))も線形に変形し、プラズモン共鳴付近で強度が大きく変化していることがわかる。
また、屈折率変化による干渉光強度の変化は、図6に示すようにプラズモン共鳴条件付近で差がでることがわかる。なお、図6において、曲線(イ)は波長がλ1の場合、曲線(ロ)は波長がλ2の場合を示す。
更に、波長の異なる光の干渉光強度比と入射角との関係を調べたところ、図7に示す結果が得られた。図7において、破線は金属薄膜上部の媒質の屈折率が変化(+0.001)した場合の特性を示す。図7に示すように、プラズモン共鳴角付近で差が生じ、角度76°から角度78°の範囲で屈折率の増加により出力強度が減少することがわかる。
【0016】
4)次に、特定の入射角度に固定して、干渉計の参照光を正弦波状に強度変調させた場合の波形について図8、図9、図10を参照して説明する。
図8は、こうした条件下で屈折率を変えた場合の、正弦波(イ)〜(ハ)の時間と干渉光強度比との関係を示す。
【0017】
図9は、波長が異なる2種類の光で得られる干渉光強度の比をとった場合の、時間と干渉光強度比との関係を示す。なお、図9において、曲線(イ)、(ロ)、(ハ)は夫々データ1、データ2、データ3の場合を示す。ここで、各データ1〜3は検出部の屈折率の違いを与えた場合であり、データ2はデータ1の場合より0.0005屈折率が高くなった状態、データ3はデータ1より0.001屈折率が高くなった状態を示す。
【0018】
ところで、波形は完全な正弦波状にはなっておらず、高調波成分を含んでいる。高調波成分の含まれている割合を高速フーリエ変換法にて解析した結果は、図10に示すとおりである。図10において、横軸は周波数、縦軸は強さを示し、図中の(イ)は試料に変化がない場合、(ロ)は前記データ2の場合、(ハ)は前記データ3の場合を夫々示す。
上記解析に基づいて、基本周波数と第1高調波の比を検出部の屈折率変化量に対して求めると、例えば、F1/F0=0.206となる。
また、第1高調波と第2高調波の比を検出部の屈折率変化量に対して求めると、例えば、F2/F1=0.212となる。
このように、高調波成分比から屈折率変化の状態を求めることが可能である。なお、前記F0,F1,F2は夫々高調波成分の強さを示す。
【0019】
本発明において、レーザ光源は、2種以上の波長を有する光を照射するものであれば、1つでも2つ以上設けてもよい。また、前記レーザ光源からの光を検知する光検出器も同様にして、波長の異なる光の面内強度分布を検出する機能を有する光検出器であれば、1つでも2つ以上設けてもよい。
【0020】
本発明において、前記抽出機構としては、例えば、前記光干渉計における光強度を特定の周波数で変調し、各波長の信号の比を高速フーリエ変換する機構を有したものが挙げられる。こうした構成の抽出機構を備えれば、以下のような効果を有する。即ち、周波数スペクトルを見ると、基本周波数成分と高調波成分が得られるとともに、基本周波数成分と高調波成分の比が屈折率変化によって変化する。従って、高調波と基本周波数成分の比率の値がある閾値に対して大きいか、小さいかにより屈折率変化即ち物質の状態変化を検出することができる。
【0021】
本発明において、計測に用いる光を均一に広い平行光にする光学系を備えるとともに、表面プラズモン共鳴を生じさせる金属膜上に複数個の独立した試料をアレイ状に配置し、光アレイセンサーにより同時に計測機能を備えることが好ましい。前記光学系としては、例えば図11においてはビームエキスパンダ17が該当し、図13においてはレーザ光源14a,14bが光学系の機能を含んでいる。また、前記光アレイセンサーとしては、例えばアレイ型光検出器(図11)が該当する。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例に係る表面プラズモン共鳴を用いた物質センサついて図面を参照して説明する。
(実施例1)
図11(A),(B)及び図12を参照する。ここで、図11(A)は物質センサの全体図、図11(B)は図11(A)の物質センサで検出する試料配列を示す上面図を示す。また、図12は、図11の物資センサにより得られた試料の検出結果を示す。
【0023】
図中の符番11は、上部に例えばAgからなる金属薄膜12が蒸着により形成されたガラスプリズムを示す。前記金属薄膜12上でDNA検知部に対応する位置には、複数の試料13が格子状に配置されている。本実施例では、試料13にDNAのある成分の有無を識別することを目的とする。
【0024】
前記プリズム11と金属薄膜12との境界には、2つの光源14a,14bからの平行なレーザ光(波長λ1)15a,レーザ光(波長λ2)15bがハーモニックビームコンバイナ16、ビームエキスパンダ17、ハーフミラー18aを介して照射されるようになっている。ここで、ハーモニックビームコンバイナ16は、一方の光源14aからのレーザ光を全反射させ、他方の光源14bからのレーザ光を透過させる機能を有する。また、ビームエキスパンダ17は、ハーモニックビームコンバイナ16を経た細いレーザ光を平行な光にする機能を有する。更に、ハーフミラー18aは、ビームエキスパンダ17からのレーザ光を透過あるいは全反射させる機能を有する。
【0025】
前記ハーフミラー18aの近傍には、ミラー19、光変調器20、ハーフミラー18bが夫々配置されている。ここで、前記プリズム11、ハーフミラー18a,18b、ミラー19、光変調器20及び該光変調器20に電気的に接続された変調信号発生器21により光干渉計が構成されている。この光干渉計では、ハーフミラー18a、ガラスプリズム11を通過したレーザ光路Xには表面プラズモン共鳴を生じさせ、ハーフミラー18a、ミラー19、光変調器20を通過したレーザ光路Yには光の強度変調を与える機能を有している。
【0026】
前記光ハーフミラー18bの近くには、ハーモニックビームスプリッタ22及びアレイ型光検出器23a,23bが配置されている。ここで、一方の光検出器23aでは、ハーモニックビームスプリッタ21で反射した波長λ1のレーザ光のみ検出する。また、他方の光検出器23bでは、ハーモニックビームスプリッタ22を通過した波長λ2のレーザ光のみ検出する。つまり、光検出器23a,23bにより、各波長λ1,λ2のレーザ光の面内強度分布を検出する。
【0027】
前記光検出器23a,23bにより、各レーザ光の強度比が得られ、図9に示すような強度比−時間特性図が得られる。前記各光検出器23a,23bには、抽出機構としての高速フーリエ変換器24が電気的に接続されている。ここで、高速フーリエ変換器24は、各波長の光の強度比を求め、強度変調信号の周波数成分を抽出する機能を有する。前記高速フーリエ変換器24により、図10に示すような強さ−周波数特性図が得られる。なお、図9、図10では計測試料の数に対応した信号が得られる。
【0028】
前記高速フーリエ変換器24には、信号処理装置25が電気的に接続されている。この信号処理装置25において、周波数成分の強度比:(1st/0th)がLevel(基準値)より小さいか大きいかにより“1”、“0”の信号が発生する。具体的には、
1st/0th<Level →“1”
1st/0th>Level →“0”
となり、これらの信号により図12のような識別情報が得られる。
【0029】
実施例1によれば、以下に述べる効果を有する。
即ち、本実施例1では、プリズム11、ハーフミラー18a,18b、ミラー19、光変調器20及び該光変調器20に電気的に接続された変調信号発生器21から構成された光干渉計を備え、該光干渉計における光強度を特定の周波数で変調し、各波長の信号の比を抽出機構24により高速フーリエ変換している。従って、周波数スペクトルを見ることにより基本周波数成分と高調波成分が得られるとともに、基本周波数成分と高調波成分の比が屈折率変化によって変化し、高調波と基本周波数成分の比率の値がある閾値に対して大きいか、小さいかにより屈折率変化、即ち図12に示すような物質の状態変化を検出することができる。従って、高S/Nの信号を得ることができる。
【0030】
また、複数の光源14a,14bとハーモニックビームコンバイナー16とビームエキスパンダ17とにより平行な光を複数の試料13に照射できるので、従来のように光軸調整機構、均質な平面波を得るための大型光学系を必要とすることなく、また前記光学系を可動させるための可動部が不要となる。更に、スペックルノイズがS/N比を低下させる恐れがない。
【0031】
(実施例2)
図13を参照する。なお、図11と同部材は同符番を付して説明する。
【0032】
図中の符番31は平行ガラス板を示す。ここで、平行ガラス板31は、下面に回折格子32a,32bが形成された第1の平行ガラス基板33と、上面側に金属膜34が形成された第2の平行ガラス基板34とを備えている。ここで、前記回折格子32a,32bは光分離手段としての機能を有する。第1・第2の平行ガラス基板33,34間には、ハーフミラー35が配置されている。ここで、ハーフミラー35は、波長によってレーザ光を透過させたり、あるいは全反射させたりする機能を有する。前記金属膜34上には、測定試料13が格子状に配置されている。
【0033】
前記回折格子32a,32b間の領域に相当する前記第1のガラス基板33下面側には、位相・振幅変調器(光干渉計)36が配置されている。ここで、位相・振幅変調器36により、2種類のレーザ光のうち、一方のレーザ光Xに表面プラズモン共鳴を生じさせ、他方のレーザ光Yに光の強度変調を与える機能を有する。
【0034】
前記第2の平行ガラス基板34と金属膜34との境界には、2つの光源14a,14bからの入射光(波長λ1)15a,入射光(波長λ2)15bが回折格子32a、第1の平行ガラス基板33、第2の平行ガラス基板34を介して照射されるようになっている。
【0035】
前記第2の平行ガラス基板34と金属膜34との境界で反射したレーザ光、及びハーフミラー35、位相・振幅変調器36、ハーフミラー35及び回折格子32bを経たレーザ光は、光検出器22a,22bで夫々検出される。前記光検出器22a,22bにより、上記実施例1と同様、各レーザ光の強度比が得られ、図9に示すような強度比−時間特性図が得られる。
【0036】
前記各光検出器22a,22bには、図示しないが抽出機構としての高速フーリエ変換器を介して信号処理装置24が電気的に接続され、実施例1と同様、周波数成分の強度比:(1st/0th)がLevel(基準値)より小さいか大きいかにより“1”、“0”の信号が発生し、図12のような識別情報が得られる。
【0037】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を有する。また、平行ガラス板31が、回折格子32a,32bが形成された第1の平行ガラス基板33と、測定試料13が搭載された第2の平行ガラス基板34とから構成されているので、計測チップ部と計測光学系部とに分離・結合することができる。
【0038】
なお、上記実施例では、試料中にDNAにある成分が有るか否かを識別する場合について述べたが、これに限らず、タンパク質、薬剤、抗原・抗体反応、ガスの有無を識別する場合、あるいは反応を起しているとき及び起した後どのように試料が変化するか調べる場合等に有も適用できる。
【0039】
また、上記実施例では、光源、光検出器が夫々複数ある場合について述べたが、これに限らず、1つでもよい。但し、この場合、光源として2種以上の波長を有する光を照射する機能を有する光源を用い、かつ光検出器として各波長の光の面内強度分布を検出する機能を有する光検出器を用いる必要がある。なお、図13において、光源が1つの場合は、1点鎖線で示すように光源、位相・振幅変調器36信号処理装置25に電気的に接続する制御回路41が必要となる。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、高いS/N比を得るとともに、大型光学系を省いて可動部を無くし、操作が簡単でしかも反射面の多数の試料を測定可能な表面プラズモン共鳴を用いた物質センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面プラズモン共鳴を利用した検出原理の説明図。
【図2】図2の表面プラズモン共鳴における光入射角と反射光強度との関係を示す特性図。
【図3】表面プラズモンの発生条件の説明図。
【図4】表面プラズモン共鳴発生条件近傍での入射角と反射光強度、位相との関係を示す特性図。
【図5】干渉計の参照光強度を変化させた場合の入射角と干渉強度との関係を示す特性図。
【図6】屈折率変化による入射角と干渉強度との関係を示す特性図。
【図7】波長の異なる入射角と干渉強度との関係を示す特性図。
【図8】特定の入射角に対して、干渉計の参照光を正弦波状に強度変調させた場合の干渉強度特性図。
【図9】波長が異なる2種類の光を用いた場合の、時間と干渉強度比との関係を示す特性図。
【図10】波形中の高調波成分の含まれる割合を高速フーリエ変換法にて解析した場合の、周波数と強さとの関係を示す特性図。
【図11】本発明の実施例1に係る表面プラズモン共鳴を用いた物質センサの説明図。
【図12】図11の物資センサにより得られた試料の検出結果を示す説明図。
【図13】本発明の実施例2に係る表面プラズモン共鳴を用いた物質センサの説明図。
【符号の説明】
11…ガラスプリズム、
12…金属薄膜、
13…試料、
14a,14b…光源、
15a,15b…レーザ光、
16…ハーモニックビームコンバイナ、
17…ビームエキスバンダー、
18a,18b,35…ハーフミラー、
19…ミラー、
20…光変調器、
21…ハーモニックビームスプリッタ、
23a,23b…アレイ型光検出器、
24…高速フーリエ変換器(抽出機構)、
25…信号処理装置、
31…平行ガラス板、
33…第1の平行ガラス基板、
34…第2の平行ガラス基板、
36…位相・振幅変調器(光干渉計)、
41…制御回路。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属表面に付着した物質の物理的化学的性質の変化を検知する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、物質の物理的化学的性質の変化を検知する手段として、表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ(以下、SPRセンサと呼ぶ)が知られている。これは、例えば、図1に示すように、回折格子を備えた平行ガラス基板(又はガラスプリズム)1の表面に銀、金等の金属薄膜2を真空蒸着等の成膜技術を用いて形成し、ガラス基板1側から金属薄膜界面に向って全反射条件を満足する角度でレーザ光線3を照射し、金属屈折率と金属上部の屈折率及びガラス基板の屈折率と光の振動数及び境界面への光入射角θによって既述される関係により、ガラス基板1、金属薄膜2界面に生じる表面プラズモンを生成することを利用するものである。
【0003】
なお、図1において、符番4は測定部(例えばDNA検出部)であり、光入射角θと反射光強度との関係は図2に示すようになる。図2より、DNA結合の有無によりダンピングが激しくなる入射角θが異なる。つまり、DNAの結合による質量の微小変化を、金属薄膜のプラズモン共鳴吸収による大きな光量変化として鋭敏に検知することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のSPRセンサによれば、以下に述べる問題点があった。
(1)高いS/Nの信号が得られない。
即ち、従来のSPRセンサは屈折率変化により物質の状態変化を検出して試料の情報を計測するものである。しかし、極わずかな屈折率変化では、反射光の変化はわずかであり、高いS/Nの信号が得られない。
【0005】
(2)光軸調整機構、均質な平面波を得るための大型光学系が必要であり、また前記光学系を可動させるための可動部が必要である。
つまり、共鳴角近傍では反射光強度が減衰しているため、共鳴角の変化を高い信号対雑音比で計測するには、共鳴角周辺の強度変化情報が必要である。即ち、入射角に対する光強度の変化、もしくは光の波長に対する強度変化が従来用いられている。そのため、光の方向を変える、あるいは特定の角度の範囲の発散または収束光を用い反射光の強度分布を計測する、波長を変化させる等の方法が提案されている。しかし、光照射部にある複数の試料の情報を計測する場合、いずれの手法でも上記大型光学系が必要であり、かつ前記可動部が必要となる。
【0006】
(3)スペックルノイズがS/N比を低下させる恐れがある。
従来のSPRセンサは光の強度と角度の情報に基づいて物質を判定していた。この方法では、共鳴角の情報が光強度から求まるため、光の集光性や発散角の小さい光束が容易に得られるレーザ光を光源とすると計測精度の向上が期待できる。しかし、反射面の揺らぎ等に起因する光束内での光の干渉効果、いわゆるスペックルによる強度分布が生じ、実測される反射強度を変化させる悪影響もある。従来は、レーザ光の干渉性を下げる機構を用いたり、干渉性の低いLEDを用いたりしている。
【0007】
物質が反射面に分布している場合にSPR計測法を適用する場合は、平行性が高く単色性良いレーザ光源を用いることが望ましいが、スペックルノイズがS/Nを低下させる可能性がある。
【0008】
本発明はこうした問題点を解決するためになされたもので、高いS/N比を得るとともに、大型光学系を省いて可動部を無くし、操作が簡単でしかも反射面の多数の試料を測定可能な表面プラズモン共鳴を用いた物質センサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明は、プリズム面上に金属膜を形成し、プリズム側から金属膜に光を特定の角度で照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、
2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源と、前記光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有するとともに、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器と、各波長の光の強度比を求め、強度変調信号の周波数成分を抽出する抽出機構と、この抽出機構に接続された信号処理装置とを具備することを特徴とする表面プラズモン共鳴を用いた物質センサである。
【0010】
本願第2の発明は、回折格子を備えた平行ガラス基板面上に金属膜を形成し、基板側から金属膜に光を特定の角度で照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、
前記平行ガラス基板は、下面に回折格子が形成された第1の平行ガラス基板と、該ガラス基板上に分離可能に設けられ,上面側に金属膜が形成された第2の平行ガラス基板とからなり、
2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源と、前記光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有するとともに、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、前記第1・第2の平行ガラス基板間に配置され,波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器と、この光検出器に接続された信号処理装置とを具備することを特徴とする表面プラズモン共鳴を用いた物質センサである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の表面プラズモン共鳴を用いた物質センサについて更に詳しく説明する。
1)まず、図3を参照して表面プラズモン共鳴の発生条件について説明する。ここでは、全反射条件でレーザ光がガラス基板を通して、ガラス基板と金属薄膜との界面に入射する場合を考える。
【0012】
全反射する光は、電界強度分布がガラス基板7内で定在波となり、境界面から金属薄膜8側に単調減衰する。この光は境界面方向に速度v1をもち、この速度v1は入射角θに依存する。
一方、表面プラズモンは境界面から両側に単調減衰する青色で示す電界強度分布をもつ波であり、界面方向に速度v2で伝播する。ここで、v2は金属薄膜8、及びその金属薄膜8の近傍の屈折率n即ち金属薄膜8に付着している物質(DNA)の質量に依存して決まる固有の値となる。
【0013】
光の入射角と変化させて、伝播速度v1とv2が一致する条件になると、全反射光のエネルギーが表面プラズモンに移行し、全反射光強度が著しく減少する。この状態が表面プラズモン共鳴である。
表面プラズモン共鳴は速度v1とv2に依存しているため、共鳴の起こる条件は光の入射角と金属薄膜表面の質量に依存する。従って、表面プラズモン共鳴が起こる光の入射角を測定することにより、金属薄膜表面の質量の変化を調べることができる。
【0014】
2)次に、表面プラズモン共鳴発生条件近傍(矢印A)での入射角と反射光強度、位相との関係について図4を参照して説明する。なお、図4において、曲線(イ)は反射強度を、曲線(ロ)は位相を示す。図4に示すように、表面プラズモン共鳴が発生する光の入射角近傍で反射光強度(振幅)の減衰と同時に位相の変化(とび)が生じる。ここで、全反射光は、入射角が変化することで位相が変化する特性を有する。また、位相変化は、表面プラズモン共鳴が生じる角度付近で大きく変わり、共鳴角で不連続となる。
【0015】
3)次に、干渉計の参照光強度を変化させた場合の干渉強度について図5、図6、図7を参照して説明する。図5において、参照光強度の増減によりいずれの干渉光強度(曲線(イ)〜(ハ))も線形に変形し、プラズモン共鳴付近で強度が大きく変化していることがわかる。
また、屈折率変化による干渉光強度の変化は、図6に示すようにプラズモン共鳴条件付近で差がでることがわかる。なお、図6において、曲線(イ)は波長がλ1の場合、曲線(ロ)は波長がλ2の場合を示す。
更に、波長の異なる光の干渉光強度比と入射角との関係を調べたところ、図7に示す結果が得られた。図7において、破線は金属薄膜上部の媒質の屈折率が変化(+0.001)した場合の特性を示す。図7に示すように、プラズモン共鳴角付近で差が生じ、角度76°から角度78°の範囲で屈折率の増加により出力強度が減少することがわかる。
【0016】
4)次に、特定の入射角度に固定して、干渉計の参照光を正弦波状に強度変調させた場合の波形について図8、図9、図10を参照して説明する。
図8は、こうした条件下で屈折率を変えた場合の、正弦波(イ)〜(ハ)の時間と干渉光強度比との関係を示す。
【0017】
図9は、波長が異なる2種類の光で得られる干渉光強度の比をとった場合の、時間と干渉光強度比との関係を示す。なお、図9において、曲線(イ)、(ロ)、(ハ)は夫々データ1、データ2、データ3の場合を示す。ここで、各データ1〜3は検出部の屈折率の違いを与えた場合であり、データ2はデータ1の場合より0.0005屈折率が高くなった状態、データ3はデータ1より0.001屈折率が高くなった状態を示す。
【0018】
ところで、波形は完全な正弦波状にはなっておらず、高調波成分を含んでいる。高調波成分の含まれている割合を高速フーリエ変換法にて解析した結果は、図10に示すとおりである。図10において、横軸は周波数、縦軸は強さを示し、図中の(イ)は試料に変化がない場合、(ロ)は前記データ2の場合、(ハ)は前記データ3の場合を夫々示す。
上記解析に基づいて、基本周波数と第1高調波の比を検出部の屈折率変化量に対して求めると、例えば、F1/F0=0.206となる。
また、第1高調波と第2高調波の比を検出部の屈折率変化量に対して求めると、例えば、F2/F1=0.212となる。
このように、高調波成分比から屈折率変化の状態を求めることが可能である。なお、前記F0,F1,F2は夫々高調波成分の強さを示す。
【0019】
本発明において、レーザ光源は、2種以上の波長を有する光を照射するものであれば、1つでも2つ以上設けてもよい。また、前記レーザ光源からの光を検知する光検出器も同様にして、波長の異なる光の面内強度分布を検出する機能を有する光検出器であれば、1つでも2つ以上設けてもよい。
【0020】
本発明において、前記抽出機構としては、例えば、前記光干渉計における光強度を特定の周波数で変調し、各波長の信号の比を高速フーリエ変換する機構を有したものが挙げられる。こうした構成の抽出機構を備えれば、以下のような効果を有する。即ち、周波数スペクトルを見ると、基本周波数成分と高調波成分が得られるとともに、基本周波数成分と高調波成分の比が屈折率変化によって変化する。従って、高調波と基本周波数成分の比率の値がある閾値に対して大きいか、小さいかにより屈折率変化即ち物質の状態変化を検出することができる。
【0021】
本発明において、計測に用いる光を均一に広い平行光にする光学系を備えるとともに、表面プラズモン共鳴を生じさせる金属膜上に複数個の独立した試料をアレイ状に配置し、光アレイセンサーにより同時に計測機能を備えることが好ましい。前記光学系としては、例えば図11においてはビームエキスパンダ17が該当し、図13においてはレーザ光源14a,14bが光学系の機能を含んでいる。また、前記光アレイセンサーとしては、例えばアレイ型光検出器(図11)が該当する。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例に係る表面プラズモン共鳴を用いた物質センサついて図面を参照して説明する。
(実施例1)
図11(A),(B)及び図12を参照する。ここで、図11(A)は物質センサの全体図、図11(B)は図11(A)の物質センサで検出する試料配列を示す上面図を示す。また、図12は、図11の物資センサにより得られた試料の検出結果を示す。
【0023】
図中の符番11は、上部に例えばAgからなる金属薄膜12が蒸着により形成されたガラスプリズムを示す。前記金属薄膜12上でDNA検知部に対応する位置には、複数の試料13が格子状に配置されている。本実施例では、試料13にDNAのある成分の有無を識別することを目的とする。
【0024】
前記プリズム11と金属薄膜12との境界には、2つの光源14a,14bからの平行なレーザ光(波長λ1)15a,レーザ光(波長λ2)15bがハーモニックビームコンバイナ16、ビームエキスパンダ17、ハーフミラー18aを介して照射されるようになっている。ここで、ハーモニックビームコンバイナ16は、一方の光源14aからのレーザ光を全反射させ、他方の光源14bからのレーザ光を透過させる機能を有する。また、ビームエキスパンダ17は、ハーモニックビームコンバイナ16を経た細いレーザ光を平行な光にする機能を有する。更に、ハーフミラー18aは、ビームエキスパンダ17からのレーザ光を透過あるいは全反射させる機能を有する。
【0025】
前記ハーフミラー18aの近傍には、ミラー19、光変調器20、ハーフミラー18bが夫々配置されている。ここで、前記プリズム11、ハーフミラー18a,18b、ミラー19、光変調器20及び該光変調器20に電気的に接続された変調信号発生器21により光干渉計が構成されている。この光干渉計では、ハーフミラー18a、ガラスプリズム11を通過したレーザ光路Xには表面プラズモン共鳴を生じさせ、ハーフミラー18a、ミラー19、光変調器20を通過したレーザ光路Yには光の強度変調を与える機能を有している。
【0026】
前記光ハーフミラー18bの近くには、ハーモニックビームスプリッタ22及びアレイ型光検出器23a,23bが配置されている。ここで、一方の光検出器23aでは、ハーモニックビームスプリッタ21で反射した波長λ1のレーザ光のみ検出する。また、他方の光検出器23bでは、ハーモニックビームスプリッタ22を通過した波長λ2のレーザ光のみ検出する。つまり、光検出器23a,23bにより、各波長λ1,λ2のレーザ光の面内強度分布を検出する。
【0027】
前記光検出器23a,23bにより、各レーザ光の強度比が得られ、図9に示すような強度比−時間特性図が得られる。前記各光検出器23a,23bには、抽出機構としての高速フーリエ変換器24が電気的に接続されている。ここで、高速フーリエ変換器24は、各波長の光の強度比を求め、強度変調信号の周波数成分を抽出する機能を有する。前記高速フーリエ変換器24により、図10に示すような強さ−周波数特性図が得られる。なお、図9、図10では計測試料の数に対応した信号が得られる。
【0028】
前記高速フーリエ変換器24には、信号処理装置25が電気的に接続されている。この信号処理装置25において、周波数成分の強度比:(1st/0th)がLevel(基準値)より小さいか大きいかにより“1”、“0”の信号が発生する。具体的には、
1st/0th<Level →“1”
1st/0th>Level →“0”
となり、これらの信号により図12のような識別情報が得られる。
【0029】
実施例1によれば、以下に述べる効果を有する。
即ち、本実施例1では、プリズム11、ハーフミラー18a,18b、ミラー19、光変調器20及び該光変調器20に電気的に接続された変調信号発生器21から構成された光干渉計を備え、該光干渉計における光強度を特定の周波数で変調し、各波長の信号の比を抽出機構24により高速フーリエ変換している。従って、周波数スペクトルを見ることにより基本周波数成分と高調波成分が得られるとともに、基本周波数成分と高調波成分の比が屈折率変化によって変化し、高調波と基本周波数成分の比率の値がある閾値に対して大きいか、小さいかにより屈折率変化、即ち図12に示すような物質の状態変化を検出することができる。従って、高S/Nの信号を得ることができる。
【0030】
また、複数の光源14a,14bとハーモニックビームコンバイナー16とビームエキスパンダ17とにより平行な光を複数の試料13に照射できるので、従来のように光軸調整機構、均質な平面波を得るための大型光学系を必要とすることなく、また前記光学系を可動させるための可動部が不要となる。更に、スペックルノイズがS/N比を低下させる恐れがない。
【0031】
(実施例2)
図13を参照する。なお、図11と同部材は同符番を付して説明する。
【0032】
図中の符番31は平行ガラス板を示す。ここで、平行ガラス板31は、下面に回折格子32a,32bが形成された第1の平行ガラス基板33と、上面側に金属膜34が形成された第2の平行ガラス基板34とを備えている。ここで、前記回折格子32a,32bは光分離手段としての機能を有する。第1・第2の平行ガラス基板33,34間には、ハーフミラー35が配置されている。ここで、ハーフミラー35は、波長によってレーザ光を透過させたり、あるいは全反射させたりする機能を有する。前記金属膜34上には、測定試料13が格子状に配置されている。
【0033】
前記回折格子32a,32b間の領域に相当する前記第1のガラス基板33下面側には、位相・振幅変調器(光干渉計)36が配置されている。ここで、位相・振幅変調器36により、2種類のレーザ光のうち、一方のレーザ光Xに表面プラズモン共鳴を生じさせ、他方のレーザ光Yに光の強度変調を与える機能を有する。
【0034】
前記第2の平行ガラス基板34と金属膜34との境界には、2つの光源14a,14bからの入射光(波長λ1)15a,入射光(波長λ2)15bが回折格子32a、第1の平行ガラス基板33、第2の平行ガラス基板34を介して照射されるようになっている。
【0035】
前記第2の平行ガラス基板34と金属膜34との境界で反射したレーザ光、及びハーフミラー35、位相・振幅変調器36、ハーフミラー35及び回折格子32bを経たレーザ光は、光検出器22a,22bで夫々検出される。前記光検出器22a,22bにより、上記実施例1と同様、各レーザ光の強度比が得られ、図9に示すような強度比−時間特性図が得られる。
【0036】
前記各光検出器22a,22bには、図示しないが抽出機構としての高速フーリエ変換器を介して信号処理装置24が電気的に接続され、実施例1と同様、周波数成分の強度比:(1st/0th)がLevel(基準値)より小さいか大きいかにより“1”、“0”の信号が発生し、図12のような識別情報が得られる。
【0037】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を有する。また、平行ガラス板31が、回折格子32a,32bが形成された第1の平行ガラス基板33と、測定試料13が搭載された第2の平行ガラス基板34とから構成されているので、計測チップ部と計測光学系部とに分離・結合することができる。
【0038】
なお、上記実施例では、試料中にDNAにある成分が有るか否かを識別する場合について述べたが、これに限らず、タンパク質、薬剤、抗原・抗体反応、ガスの有無を識別する場合、あるいは反応を起しているとき及び起した後どのように試料が変化するか調べる場合等に有も適用できる。
【0039】
また、上記実施例では、光源、光検出器が夫々複数ある場合について述べたが、これに限らず、1つでもよい。但し、この場合、光源として2種以上の波長を有する光を照射する機能を有する光源を用い、かつ光検出器として各波長の光の面内強度分布を検出する機能を有する光検出器を用いる必要がある。なお、図13において、光源が1つの場合は、1点鎖線で示すように光源、位相・振幅変調器36信号処理装置25に電気的に接続する制御回路41が必要となる。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、高いS/N比を得るとともに、大型光学系を省いて可動部を無くし、操作が簡単でしかも反射面の多数の試料を測定可能な表面プラズモン共鳴を用いた物質センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面プラズモン共鳴を利用した検出原理の説明図。
【図2】図2の表面プラズモン共鳴における光入射角と反射光強度との関係を示す特性図。
【図3】表面プラズモンの発生条件の説明図。
【図4】表面プラズモン共鳴発生条件近傍での入射角と反射光強度、位相との関係を示す特性図。
【図5】干渉計の参照光強度を変化させた場合の入射角と干渉強度との関係を示す特性図。
【図6】屈折率変化による入射角と干渉強度との関係を示す特性図。
【図7】波長の異なる入射角と干渉強度との関係を示す特性図。
【図8】特定の入射角に対して、干渉計の参照光を正弦波状に強度変調させた場合の干渉強度特性図。
【図9】波長が異なる2種類の光を用いた場合の、時間と干渉強度比との関係を示す特性図。
【図10】波形中の高調波成分の含まれる割合を高速フーリエ変換法にて解析した場合の、周波数と強さとの関係を示す特性図。
【図11】本発明の実施例1に係る表面プラズモン共鳴を用いた物質センサの説明図。
【図12】図11の物資センサにより得られた試料の検出結果を示す説明図。
【図13】本発明の実施例2に係る表面プラズモン共鳴を用いた物質センサの説明図。
【符号の説明】
11…ガラスプリズム、
12…金属薄膜、
13…試料、
14a,14b…光源、
15a,15b…レーザ光、
16…ハーモニックビームコンバイナ、
17…ビームエキスバンダー、
18a,18b,35…ハーフミラー、
19…ミラー、
20…光変調器、
21…ハーモニックビームスプリッタ、
23a,23b…アレイ型光検出器、
24…高速フーリエ変換器(抽出機構)、
25…信号処理装置、
31…平行ガラス板、
33…第1の平行ガラス基板、
34…第2の平行ガラス基板、
36…位相・振幅変調器(光干渉計)、
41…制御回路。
Claims (4)
- プリズム面上に金属膜を形成し、プリズム側から金属膜に光を特定の角度で照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、
2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源と、前記光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有するとともに、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器と、各波長の光の強度比を求め、強度変調信号の周波数成分を抽出する抽出機構と、この抽出機構に接続された信号処理装置とを具備することを特徴とする表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ。 - 回折格子を備えた平行ガラス基板面上に金属膜を形成し、基板側から金属膜に光を特定の角度で照射して表面プラズマ共鳴現象を生じせしめる機構を有し、金属膜上の化学反応状態を反射光強度で検出する表面プラズモン共鳴を用いた物質センサであり、
前記平行ガラス基板は、下面に回折格子が形成された第1の平行ガラス基板と、該ガラス基板上に分離可能に設けられ,上面側に金属膜が形成された第2の平行ガラス基板とからなり、
2種以上の波長を有する光を照射するレーザ光源と、前記光のうち一つの光路に表面プラズモン共鳴が生じる機構を有するとともに、他の光路に光の強度変調を与える機構を有する光干渉計と、前記第1・第2の平行ガラス基板間に配置され,波長の異なる光を分離する光分離手段と、各波長の光の面内強度分布を検出する光検出器と、この光検出器に接続された信号処理装置とを具備することを特徴とする表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ。 - 前記光干渉計における光強度を特定の周波数で変調し、各波長の信号の比を高速フーリエ変換する機構を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ。
- 計測に用いる光を均一に広い平行光にする光学系を備えるとともに、表面プラズモン共鳴を生じさせる金属膜上に複数個の独立した試料をアレイ状に配置し、光アレイセンサーにより同時に計測機能を備えることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の表面プラズモン共鳴を用いた物質センサ。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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