JP2004084927A - 内公転型差動歯車減速機 - Google Patents

内公転型差動歯車減速機 Download PDF

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Abstract

【課題】対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と1個の外歯車のバックラッシュを無くす方向に調整することができるとともに、これら歯車間の噛み合い歯面に予圧をかけることができる内公転型差動歯車減速機を提供する。
【解決手段】2個の内歯車4,5の一方の内歯車5は、その位置を固定の基準位置として、他方の内歯車4は、その外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段10Aが嵌まり合うことでその内歯車4を外周から圧縮する構造とされ、外歯車6の軸7は、入力軸2の中心aからずれた位置が中心とされる第2の偏心軸7bと、この第2の偏心軸7bの中心bからずられた位置が中心cとされる第3の偏心軸7cを有し、入力軸2に対して回転可能に取り付けられる構造とされている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、歯数差に基づいて入力軸の回転を減速して出力軸に伝達する歯車減速機であり、特に歯数が異なる2個の内歯車と、この2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車からなる内公転型差動歯車減速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、切削負荷を受ける工作機械の制御軸の駆動や産業用ロボットの関節等に使用される様な減速装置には、高速、高負荷、大減速比、高い位置決め精度等が求められ、位置決め精度を良くするためにバックラッシュが小さい事が求められる。
【0003】
歯数差に基づいて入力軸の回転を減速して出力軸に伝達する歯車減速機としては、従来例として、実公平2−9151号が存在する。この実公平2−9151号のような歯車減速機は、少ないスペース、少ない部品で、大減速比の減速機構を得ることができるもので、対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力され、この内歯車の中心を回転軸でとする入力軸を備え、上記歯数が異なることによる減速比を得る。また、2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにする。このような歯車減速機は、内公転型差動歯車減速機や偏心差動式減速機と呼ばれる。
【0004】
また、特開昭61−84438号や特開平6−109102号には、内歯車と外歯車とのバックラッシュを無くす方法が記載されている。特開昭61−84438号には、入力軸の中心をずらすことでバックラッシュを無くす方法が開示され、特開平6−109102号には、内歯車の外周部にテーパ形状のリングを配し、これをボルトで締め込み、相手歯車とのバックラッシュを除去する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記実公平2−9151号のような、対向して配される2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車を有する内公転型差動歯車減速機において、これら三者間の軸間距離を調整することがバックラッシュを精密に調整する上で理想的である。すなわち、歯数が異なる2個の内歯車の位置関係、2個の内歯車と外歯車との各々の軸間距離の調整である。特に後者の2個の内歯車と外歯車との各々の軸間距離については、片方の軸間距離を合わせた時にもう一方の軸間距離がずれてしまうことを防止する必要がある。また、サーボモータ等の精密機器に適用される歯車減速機には、初期変形を事前に与えておくと更に力が加えられてもその力による変形量は小さく抑えるために予め加えておく力(予圧)を与えることが通常行われている。この初期変形の抑制効果だけを考えると、予圧は大きいほど高精度が得られるが、反面、予圧が大きいと、効率と寿命の低下を招き、発熱、焼き付き、異常磨耗の原因にもなるため、これらの点からは予圧はできるだけ小さい方が良いこととなり、上記のバランスを考えて予圧の大きさを決め、これを適正予圧として、歯車減速機にこの設定をする。つまり、予圧設定の良否が機械の性能を左右する。
【0006】
しかしながら、上記実公平2−9151号には、2個の内歯車の軸間距離を調整するバックラッシュ調整機構は存在しない。実公平2−9151号の主眼は、スリップ機構にあって、バックラッシュ調整機構の必要性にも言及はない。また、従来の公報の図面の第1図のように、駆動軸が片側支持であるため、固定歯車がずれてしまい、正確な位置決め機構としては使えるようなものではない。
【0007】
特開昭61−84438号は、入力軸の中心をずらすことでバックラッシュを無くす方法であるが、この方法では、バックラッシュをとるためには、外歯車を少し大きめに作成しないと内歯車の中心と入力軸の中心が合わなくなり、これが合わないとバックラッシュは回転位置の一箇所だけ取れて、その反対側ではバックラッシュがかえって増えることになる。入力軸の中心をずらすと(歯車をずらして固定すると)、固定時にずれたり、固定後に何らかの衝撃でずれたりすることがある。これを防止するためには、入力軸の回転軸と2個の内歯車の回転軸(回転中心)は同軸上に無ければならないが、特開昭61−84438号の入力軸の中心をずらすため、上記課題が生じる。なお、弾性的に変形可能な薄肉鼓形殻の使用では、薄肉鼓形殻のねじり剛性、強度、耐久性にも問題がある。
【0008】
特開平6−109102号は、内歯車の外周部にテーパ形状のリングを配し、これをボルトで締め込み、相手歯車とのバックラッシュを除去するが、上記三者間の軸間距離を調整するものではなく、また、与圧付与についても記載されていない。
【0009】
さらに、上記従来公報では、外歯車の軸が入力軸に対しその中心位置からずれた位置となる偏心軸とされているが、図9に示すように、外歯車6が2個の内歯車4,5の軸X1から一定の偏心した位置X2で回転する軌道を描くにすぎず、上記偏心軸でバックラッシュを調整するものでも、また、与圧付与手段とするものではない。すなわち、上記従来公報では、2個の内歯車4,5と外歯車6とが予め高精度の噛み合い状態で製作されていなければならず、例えば、外歯車6の大きさが極端に小さなものとして製作した場合では、そもそも外歯車6と2個の内歯車4,5との軸間距離を調整することができない。
【0010】
そこで本発明の目的は、対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と1個の外歯車のバックラッシュを無くす方向に調整することができるとともに、これら歯車間の噛み合い歯面に予圧をかけることができ、そのため、2個の内歯車と外歯車との位置決めとしての精度が極めて高い内公転型差動歯車減速機を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の内公転型差動歯車減速機は、対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力される入力軸に取り付けられる外歯車の軸とを備え、2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにし、2個の内歯車の軸が同一軸線上にある内公転型差動歯車減速機において、上記2個の内歯車の一方の内歯車は、その外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段が嵌まり合うことでその内歯車を外周から圧縮することで、他方の内歯車との位置を調整する構造とされ、上記外歯車の軸は、入力軸の中心からずれた位置が中心とされる第1の偏心軸と、この第1の偏心軸の中心からずられた位置が中心とされる第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられる構造とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、2個の内歯車のうちの一方の内歯車の位置を基準位置にして、圧縮手段により他方の内歯車をその外径側に形成された嵌合部に軸方向に嵌まり合うことでその内歯車を外周から圧縮してバックラッシュを無くす方向に調整可能である。また、外歯車の軸は入力軸に対して回転可能に取り付けられ、第1の偏心軸と第2の偏心軸とを有することから、これらにより2個の内歯車と外歯車の軸間距離を調整することができる。このため、2個の内歯車と外歯車のバックラッシュ調整は圧縮手段により行い、外歯車の軸である偏心軸により2個の内歯車に対する外側歯車の与圧付与手段としての使用ができるようになり、又、この逆の使用も可能になる。また、バックラッシュ調整において、圧縮手段により2個の内歯車と外歯車の噛み合い部分の隙間を調整してから、これらの残りの噛み合い部分の隙間を上記外歯車の軸の偏心構造により調整することも、これとは逆に上記外歯車の軸の偏心構造により2個の内歯車と外歯車の噛み合い部分の隙間を調整してから、これらの残りの噛み合い部分の隙間を上記圧縮手段により調整することもできる。
【0013】
本発明の請求項2記載の減速装置は、対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力される入力軸に取り付けられる外歯車の軸とを備え、2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにし、2個の内歯車の軸が同一軸線上にある内公転型差動歯車減速機において、上記2個の内歯車は、それぞれの外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段が嵌まり合うことでそれぞれの内歯車を外周から圧縮する構造とされ、上記外歯車の軸は、入力軸の中心からずれた位置が中心とされる第1の偏心軸と、この第1の偏心軸の中心からずられた位置が中心とされる第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられる構造とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、2個の内歯車は、圧縮手段がそれぞれの外径側に形成された嵌合部に軸方向に嵌まり合うことでそれぞれの内歯車を外周から圧縮してバックラッシュを調整することから、2個の両内歯車間と2個の両内歯車と外歯車間のバックラッシュを各々調整することができる。また、外歯車の軸は入力軸に対して回転可能に取り付けられ、第1の偏心軸と第2の偏心軸とを有することから、これらにより2個の内歯車と外歯車の軸間距離を調整することができる。このため、2個の内歯車と外歯車のバックラッシュ調整は圧縮手段により行い、外歯車の軸である偏心軸により2個の内歯車に対する外側歯車の与圧付与手段としての使用ができるようになり、又、この逆の使用も可能になる。また、バックラッシュ調整において、圧縮手段により2個の内歯車と外歯車の噛み合い部分の隙間を調整してから、これらの残りの噛み合い部分の隙間を上記外歯車の軸の偏心構造により調整することも、これとは逆に上記外歯車の軸の偏心構造により2個の内歯車と外歯車の噛み合い部分の隙間を調整してから、これらの残りの噛み合い部分の隙間を上記圧縮手段により調整することもできる。
【0015】
本発明の請求項3記載の内公転型差動歯車減速機は、対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力される入力軸に取り付けられる外歯車の軸とを備え、上記2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにし、2個の内歯車の軸が同一軸線上にある内公転型差動歯車減速機において、上記2個の内歯車の入力側の内歯車と出力側の内歯車は、それぞれの外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段が嵌まり合うことでそれぞれの内歯車を外周から圧縮する構造とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、2個の内歯車は、それぞれの外径側に形成された嵌合部に嵌まり合うテーパー部分を持つ圧縮手段を各々有しているために、各々の圧縮手段を外周から圧縮すると、2個の両内歯車間のみならず2個の両内歯車と外歯車間のバックラッシュを各々調整することができる。すなわち、外歯車の軸を偏心軸としなくとも2個の両内歯車間の調整と2個の両内歯車と外歯車間のバックラッシュ調整を個々に行うことができる。
【0017】
本発明の請求項4載の内公転型差動歯車減速機は、前記請求項3記載の発明を前提として、前記外歯車の軸は、前記入力軸の中心からずれた位置が中心とされる第1の偏心軸と、この第1の偏心軸の中心からずられた位置が中心とされる第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられる構造とされていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記各々の圧縮手段を外周から圧縮すると、2個の両内歯車間と2個の両内歯車と外歯車間のバックラッシュを調整することができるが、さらに、外歯車の軸は、第1の偏心軸と第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられているため、2個の内歯車と外歯車の軸間距離を調整することができる。この構成の偏心軸によってもバックラッシュ調整が可能であるが、バックラッシュ調整を前記各々の圧縮手段により行うとすると、上記構成の偏心軸によって2個の内歯車に対する外歯車の与圧付与手段とするような使用が可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、図1に示すように、2個の内歯車4,5と、2個の内歯車4,5と同時に噛み合う1個の外歯車6と、駆動手段Mからの駆動力が入力される入力軸2と、外歯車6の軸である偏心軸7とを主要部材として備えている。入力軸2に駆動力を与える駆動手段Mは、サーボモータを使用している。
【0021】
2個の内歯車4,5は、円筒歯車であり、対向して配され歯数が異なる。この実施の形態では、駆動手段Mであるサーボモータからの駆動力が入力されると、入力軸2が回転して図1中の左側の内歯車5が回転する。図1中の右側の内歯車4は固定側で、図1中の左側の内歯車5が上記歯数が異なることにより徐々にずれて減速比を得る。出力軸3はギヤであり、図1中の左側の内歯車5に直接取り付けられている。2個の内歯車4,5と外歯車6の軸方向を同じにし、入力軸2の回転軸と2個の内歯車4,内歯車5の回転中心は同一の軸上にある。つまり、入力軸2は、2個の内歯車4,5の中心を軸として回転する。駆動手段Mの駆動力により入力軸2が回転すると、外歯車6は2個の内歯車4,5と同時に噛み合いながら転がる様に回転する。本実施の形態では、2個の内歯車4,5の歯数差を1とし、入力側の内歯車4の歯車が少なく、1個の外歯車6と2個の内歯車4,5の噛み合い部分(噛み合い歯面)19で噛み合う。入力軸2が1回転すると、内歯車5は歯数差の1枚分だけ回転するので、減速比が(1/内歯車5の歯数)の内公転型差動歯車減速機となっている。また、外歯車6の歯の部分の直径は、2個の内歯車4,5の歯の部分の直径の半分以上にしている。
【0022】
内歯車5は、軸受13を介して本体(ケース)1に支持されており、軸受13の外輪は軸受押え15で本体1に取り付けられ、軸受押え15にはダストシール16が取り付けられていて、ゴミの進入とグリスの漏洩をカバーしている。入力軸2は、玉軸受8及び玉軸受12を介して本体1及び内歯車5に支持されている。
【0023】
外歯車6は、2個の内歯車4,5と同時に噛み合う円筒歯車であり、2個の内歯車4,5と外歯車6の軸方向を同じにしている。外歯車6は、ころ軸受9を介して外歯車の軸7に支持されており、外歯車6の軸7は入力軸2に回転可能に取り付けられている。この外歯車6の軸7の回転は、回り止めネジ14で止められるようになっている。内歯車4,5と外歯車6の歯は、インボリュート歯形を使用しており、内歯車4と外歯車6との中心距離が、出力側の内歯車5と外歯車6との中心距離と同じになる様に、夫々のギヤ(歯車)の転位係数を設定している。例えば、歯数40枚の多い内歯車5の転位係数を0とし、外歯車6の歯数は28枚で転位係数を0とし、もう一枚の端数の少ない内歯車4は歯数39枚で転位係数を0.6344とすれば、モジュールが1.5のときは、2組とも軸間距離が9mmとなって、この内公転型差動歯車減速機の条件に合うようになる。
【0024】
入力軸2に偏心軸7が取り付けられている。この偏心軸7は、図2に示すように、円柱形のもので、入力軸2に連結される第1の偏心軸7aと、第1の偏心軸7aの軸中心cから位置をずらした位置を中心とする第2の偏心軸7bと、この第2の偏心軸7bの軸中心bから位置をずらした位置を中心とする第3の偏心軸7cとから構成されている。入力軸2の軸中心aと第1の偏心軸7aの軸中心は異なっており、第1の偏心軸7aの軸中心cと第3の偏心軸7cの軸中心cは同じ位置であることにより、いわゆる両持ちとされ、これらの軸中心cと第2の偏心軸7bの軸中心bはずれた位置にある。また、第1の偏心軸7aは、入力軸2に対して回転可能に取り付けられているが、第1の偏心軸7aと第3の偏心軸7cの中心cは同じとして回転するので、第3の偏心軸7cを上記回り止めネジ14で所定位置の回転位置で止める(ロック状態にする)と、第1の偏心軸7aも同じ所定位置の回転位置で止まる(ロック状態にする)。上記偏心軸7の左右、つまり上記第1の偏心軸7aと第3の偏心軸7cが回転可能に嵌り合う連結穴J1,J2が入力軸2に形成され、この連結用穴J1,J2を介して回転可能になっており、第3の偏心軸7cは第1の偏心軸7aと一体的に回転する。この連結用穴J1,J2の一方J1は他方J2よりも小さな穴に形成されているが、これは本実施の形態の第3の偏心軸7cの径が第1の偏心軸7aのそれよりも大きいためである。ここで、上記第1の偏心軸7aと第3の偏心軸7cは軸受けを介して回転可能に取り付けられるものでも良い。また、本発明としては、入力軸2に対する偏心軸としての第1の偏心軸と、第1の偏心軸に対する偏心軸としての第2の偏心軸とを少なくとも備えていれば足りる。上記第1の偏心軸7aと第2の偏心軸7bと第3の偏心軸7cの三段構成にしたのは、上記偏心軸7の左右の連結穴J1,J2の左右両側で支持してその取り付けの安定化を図るためであり、上記少なくとも2つの偏心軸を有するものであれば、左右の片側支持とすること可能である。なお、図1では、第1の偏心軸7aの径より第3の偏心軸7cの径が大きく、第2の偏心軸7bの径より第3の偏心軸7cが大きくなっている(7a<7b<7c)が、これは上記構成の偏心状態を断面で表すためのもので、このように第1の偏心軸7aから第3の偏心軸7cは径が異なっていても良いが、第1の偏心軸7aから第3の偏心軸7cは径が同じでも良い。
【0025】
このように、2個の内歯車4,5の回転中心(軸中心)と入力軸2の回転中心aは同じになっている。入力軸2の回転中心aは、外歯車6の軸(支持軸)である第2の偏心軸7b部分の回転中心bと平行であるが、互いの中心とをずらし、同一では無い。第2の偏心軸7b部分の回転中心bは、第3の偏心軸7c部分の回転中心cと平行であるが、互いの中心とをずらし、同一では無い。
【0026】
内歯車4の外径側に圧縮手段10Aが配されている。この圧縮手段10Aは、テーパー部分を持つリングであり、入力側の内歯車4の外径側に形成されたテーパー部分10cと軸方向に嵌り合うことで2個の内歯車4,5のバックラッシュを調整する。軸方向に嵌合させるために、押しネジ11を使用する。なお、符号17は、スペーサである。ここで、入力側の内歯車4の外径側にテーパー部分10cを設けた入力側の内歯車4のバックラッシュは、出力側の内歯車5のバックラッシュよりもやや大きくされ、押しネジ11により圧縮手段10Aをテーパー部分10cと軸方向に嵌り合わさせるようになっている。なお、他方の内歯車5の外径側に圧縮手段10Aを同じように配して、一方の内歯車4の位置を固定の基準位置として、その外径側に形成された嵌合部10cに軸方向に嵌まり合うことでその内歯車5を外周から圧縮調整するようにしても良い。
【0027】
本実施の形態を実際に使用する場合は、先ず、バックラッシュが他方の内歯車5より僅かに大きく作られている一方の内歯車4について、押しネジ11でテーパー状のリングである圧縮手段10Aを軸方向に押し込むことにより、外周から圧縮して、バックラッシュが出力側の内歯車5と同程度になるように噛み合い部分19の隙間を調整する。この方法では、一方(入力側)の内歯車4を外周から圧縮して、他方(出力側)の内歯車5の位置を固定の基準位置に合わせるようにして、噛み合い部分19の隙間を調整するために、従来のようにギヤ(歯車)をずらして固定するという作業が無く、固定時にずれたり、固定後に何らかの衝撃でずれたりすることが無く、安定した精度が得られる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、テーパー部分を持つリング10Aは、内径部分も外径部分も共に相手部品と密着する構造にできるので、内歯車4,5の剛性も高い。効率が良く剛性が高いので、内部摩擦力のために弾性変形が保持されて元に戻らないことによるバックラッシュも小さい特長がある。なお、偏心軸7は、その両側7a,7cで入力軸2に連結されていることからも、剛性が高く、安定した回転が可能になっている。
【0029】
このように、一方の内歯車4と他方の内歯車5は、バックラッシュが同じになるように圧縮手段10Aにより調整してから、外歯車の軸7の回転で予圧がかけられる。すなわち、外歯車6を支持する偏心軸7の回転させて回り止めネジ14で固定して予圧を与えると、2個の内歯車4,5の予圧を同程度に揃えることができる。予圧の大きさは、外歯車6を支持する偏心軸7の回転トルクを設定することにより、容易に設定できる。
【0030】
外歯車6の軸7が入力軸2に対して回転することで、外歯車6と内歯車5の軸間距離を変化させる方法で内歯車5の噛み合い歯面19に予圧を与えている。予圧の大きさは、外歯車6の軸7に与える回転トルクで設定しており、予圧を設定した後、回り止めネジ14で外歯車の軸7の入力軸2に対する回転を止める。このようにすると、上記偏心軸7は、第2の偏心軸7bにより外歯車6が2個の内歯車4,5の軸X1から一定の偏心した位置X2で回転する軌道を描くとともに(図9参照)、第3の偏心軸7cにより2個の内歯車4,5に対する外歯車6のバックラッシュを調整することができる。このバックラッシュ調整を説明する図3と図4を用いて説明すると、符号aは入力軸2上の外歯車6の軸7の中心であり、符号bは第2の偏心軸7bの中心であり、符号cは第3の偏心軸7cの中心であるが、これらの偏心軸部分7b,7cを有する偏心軸7の回転前が図3であり、偏心軸7の回転に噛み合い部分19の隙間を調整した後の図が図4である。偏心した位置に移動して外歯車6により内歯車4,5に対するバックラッシュを無くす方向に調整することができる。
【0031】
本実施の形態によれば、圧縮手段10Aと第2の偏心軸7bと第3の偏心軸7cとを有する偏心軸7により、2個の内歯車4,5と外歯車6の軸間距離調整してから2個の両内歯車4,5と外歯車6間のバックラッシュを調整したり、又、2個の両内歯車4,5と外歯車6間のバックラッシュを調整してから2個の内歯車4,5と外歯車6の軸間距離調整したりすることができる等種々の調整が可能になる。ここで、圧縮手段10Aによるバックラッシュ調整を第1のバックラッシュ調整とすると、偏心軸7のみによってもバックラッシュ調整をすることができる。これを第2のバックラッシュ調整とすると、偏心軸7は第2の偏心軸7bと第3の偏心軸7cとからなることから、これにより2個の内歯車4,5と外歯車6の軸間距離を調整することにより、バックラッシュ調整をすることができる。このため、圧縮手段10Aによるバックラッシュ調整を行ってから、上記2個の内歯車4,5と外歯車6の軸間距離を調整すると、外歯車6を2個の内歯車4,5に対する与圧付与手段とすることができる。また、例えば、外歯車の大きさが極端に小さなものとして製作した場合でも、上記第2の偏心軸7bと第3の偏心軸7cにより2個の内歯車4,5と外歯車6の軸間距離を調整しつつバックラッシュを調整することができる。なお、上記説明では、バックラッシュ調整は圧縮手段10Aにより(第1のバックラッシュ調整により)行うこととしたため、第2の偏心軸7bと第3の偏心軸7cとからなる偏心軸7は予圧調整として説明したにすぎず、上記偏心軸7によってもバックラッシュ調整が可能である。このように本実施の形態では、内歯車4,5を外周から圧縮しても外歯車6の軸7を偏心させてもバックラッシュが調整可能である。また、圧縮手段10Aにより2個の内歯車4,5と外歯車6の噛み合い部分19の隙間を調整してから、これらの残りの噛み合い部分19の隙間を上記外歯車6の軸7の偏心構造により調整することも、これとは逆に外歯車6の軸7の偏心構造により2個の内歯車4,5と外歯車6の噛み合い部分19の隙間を調整してから、これらの残りの噛み合い部分19の隙間を圧縮手段10Aにより調整することもできる。
【0032】
次に、バックラッシュの原因について考察する。入力軸の変位が、全てそのまま出力軸の変位に変換されれば、減速機にバックラッシュは生じないが、バックラッシュ要因としては、(1)接触部分の隙間によるものと、(2)負荷による弾性変形に起因するものの2種類があり、出力軸の変位に偏差を与え、これがバックラッシュとなる。
【0033】
装置に負荷がかかると、装置の構成部品は弾性変形し、これが出力軸(本実施の形態では他方の内歯車5)の変位に偏差を与え、負荷による弾性変形に起因するバックラッシュ要因となる。この弾性変形には、(2−1)負荷が無くなると元に戻る部分と、(2−2)装置の内部摩擦力により弾性変形が保持されて元に戻らない部分がある。
【0034】
上記(2−1)の出力軸(本実施の形態では他方の内歯車5)が被駆動側から受ける負荷が無くなると元に戻るバックラッシュは、最終位置決めの負荷条件を検討したり、定性的なものはNC装置のバックラッシュ補正などで対処したり、ケースバイケースで対応するが、上記(1)の接触部分の隙間によるものと、上記(2−2)の内部摩擦力のために弾性変形が保持されて元に戻らない事によるバックラッシュは、予測のつけがたい摩擦力に左右されるので、減速機の位置決め精度の不安定要因として最後まで残ることが多い。しかし、本実施の形態によれば、効率が良く剛性が高く、しかも、圧縮手段10Aのみならず上記偏心軸7によってもバックラッシュ調整可能で、上記(2−2)の内部摩擦力のために弾性変形が保持されて元に戻らないことによるバックラッシュも小さくできる特長がある。
【0035】
次に与圧付与の調整について図5を用いて説明する。一般に、接触状態から徐々に力を加えていくと、弾性変形が増えるが、初期の微細な変形では、力と変形量が比例せず、僅かな力で大きな変形をすることが多い。そこで、初めから力が加えられた状態にして初期変形を事前に与えておくと、更に力が加えられても、その力による変形量は小さく抑える事ができ、この予め加えておく力のことを予圧と言う。
【0036】
本実施の形態では、圧縮手段10Aによりバックラッシュが無くなってから、更に外歯車6の軸(支持軸)7を回転しようとすると、2つの内歯車4,5と外歯車6は互いに押し合い、互いの噛み合い歯面19に圧縮応力が発生するが、本実施の形態の内公転型差動歯車減速機では次のように予圧を与えることができる。これを図4を用いて説明すると、図5のように予圧を与えた状態を想定すると、F3とF4はF1とF2の反力でもあるので、F1+F2=F3+F4である。
【0037】
外歯車の軸を回転するのに必要なトルクは、殆ど全てがF3とF4による摩擦力によることから、F3とF4部分の外歯車の軸の半径をR3、R4とし、この部分の摩擦係数をμとし、外歯車の軸を回転するのに必要なトルクをTとすると、T=μ(F3・R3+F4・R4)となる。更にR3とR4はあまり差が無いものにすることとし、この値をRとおくと、T=μR(F3+F4)となる。F1+F2=F3+F4であるため、これはT=μR(F1+F2)となる。事前に決めておいた予圧で、F1+F2がわかるので、適当なμ及びRを与えると、Tが決定できまる。つまり、外歯車6の支持軸を回転するのに必要なトルクTを設定することにより適正予圧を簡単に設定ができる。なお、外歯車6の支持軸を回転するのに必要なトルクTを設定するに、トルクレンチなどを使用する。
【0038】
(第1の実施の形態の応用例)
この応用例は、外形が円柱形のもので、上記外歯車6の軸7を、内部に空洞部分18aを有する偏心軸20にした特徴を有する。これを図6、図7を用いて説明する。この偏心軸20に形成されている空洞部分18aは、その軽量化のためと、この偏心軸20に負荷がかかってもその負荷を吸収するために形成されている。そして、円柱状の外形において、左右両側と中央とはその径の大きさを相違させている。すなわち、偏心軸20の図7中右側の部分20aが最も径が小さく、これよりも中央部分20bの径が大きく、これよりも図7中の左側20cの径が大きく形成され、図7中右側の径の小さな部分20aが入力軸2の中心aからずれた位置が中心とされて、入力軸2に対して回転可能に取り付けられているが、上記と同じように回り止めネジ14で所定位置で止められる(ロック状態になる)。この応用例においても、入力軸2に対して軸受を介して回転可能にしても、軸受を使用せずに上記第1の実施の形態のように取り付けられるものでも良い。したがって、径の小さな部分(図7右側)20aを第1の偏心軸とし、これよりも径の大きな中央部分20bを第2の偏心軸としたり、又、中央部分20bを第1の偏心軸とし、これよりも径の大きな左側20c部分を第2の偏心軸としたしする使用が可能である。
【0039】
この応用例でも、その外形を径の小さな入力軸2の側(図7中右側)20a部分とこれよりも径の大きな中央部分20bとこれよりも径の大きな左側20c部分の三段構成にして、上記偏心軸20の取り付けの安定化を図っているが、上記少なくとも2つの偏心軸を有するものであれば、左右の片側支持とすること可能であり、又、同じ径とすることもできる。なお、図6と図7中の符号aが入力軸の中心であり、符号bが第2の偏心軸7bの中心であり、符号cは第3の偏心軸7cの中心であるが、これらの偏心軸部分7b,7cを有する偏心軸7の回転前が図3であり、偏心軸7の回転に噛み合い部分19の隙間を調整した後の図が図4である。
【0040】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、図8に示すように、2個の内歯車4,5に各々圧縮手段10A、10Bを各々有する。本実施の形態では、入力側の内歯車4のみならず、出力側の内歯車5にも外径側に設けられたテーパー状の嵌合部10dに嵌まり合う圧縮手段10Bを有する。圧縮手段10Bがテーパー状の嵌合部10dに軸方向に嵌まり合うことで、出力側の内歯車5のバックラッシュを調整する。
【0041】
したがって、これら両圧縮手段10A、10Bを各々有することから、これらにより歯数が異なる2個の内歯車4,5の位置関係、2個の内歯車4,5と外歯車6との各々の軸間距離の調整が可能である。すなわち、本実施の形態でも上記偏心軸7とを備えているが、この外歯車6の軸は偏心軸7としない、つまり単なる軸でもバックラッシュを無くすことができる。例えば、2個の内歯車4,5の両位置関係を互いに調整したり、この両位置関係を調整しながら外歯車6との噛み合い歯面19の隙間調整ができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の請求項1と請求項2記載の内公転型差動歯車減速機によれば、対向して配され歯数が異なる2個の内歯車のうちの一方、又は両方の内歯車を圧縮手段によりバックラッシュを無くす方向に調整可能であるとともに、上記外歯車の軸を第1の偏心軸と第2の偏心軸とを有し回転可能とすることから、上記圧縮手段によりバックラッシュ調整してから、上記偏心軸により2個の内歯車に外歯車による与圧を付与することが可能になる。
【0043】
本発明の請求項3記載の内公転型差動歯車減速機によれば、2個の内歯車のそれぞれの外径側に形成された嵌合部に軸方向に嵌まり合うことでそれぞれの内歯車を外周から圧縮してバックラッシュを調整することから、外歯車の軸を偏心軸としなくとも、入力軸となる内歯車と出力軸となる内歯車とが個別に微調整ができ、歯数が異なる2個の内歯車の位置関係、2個の内歯車と外歯車との各々の軸間距離の調整によりバックラッシュを無くすことが可能である。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内公転型差動歯車減速機をモータとともに示す断面図である。
【図2】上記第1の実施の形態の偏心軸を示す断面図である。
【図3】上記第1の実施の形態のバックラッシュを無くす方向に調整することを説明する図で、歯車部分の軸直角の断面図である。
【図4】上記第1の実施の形態のバックラッシュを無くす方向に調整することを説明する図で、歯車部分の軸直角の断面図である。
【図5】上記第1の実施の形態の与圧付与の調整を説明する断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の尾用例の内公転型差動歯車減速機をモータとともに示す断面図である。
【図7】上記第1の実施の形態の応用例の偏心軸を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の内公転型差動歯車減速機の断面図である。
【図9】従来の外歯車の軸による偏心状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 本体
2 入力軸
3 出力軸
4 内歯車
5 内歯車
6 外歯車
7,20 外歯車の軸(偏心軸)
7a 第1の偏心軸、 7b 第2の偏心軸、7c 第3の偏心軸、
8 玉軸受
9 軸受(転がり軸受)
10A、10B 圧縮手段(テーパー状のリング)
10c、10d 嵌合部(テーパー部分)
11 押しネジ
12 玉軸受
13 軸受
14 回り止めネジ
16 ダストシール
19 噛み合い歯面(2個の内歯車と1個の外歯車との噛み合い部分)
20a 偏心軸の径の小さな部分、20b 偏心軸の中央部分(第1の偏心軸)、
20c 偏心軸の径の大きな部分(第2の偏心軸)、
a  入力軸の回転中心(入力軸上の外歯車の軸の中心)
b 第2の偏心軸の回転中心
c 第1と第3の偏心軸の回転中心
F1 予圧を与えた事による出力軸側内歯車から外歯車への力
F2 予圧を与えた事による固定側内歯車から外歯車への力
F3 F1とF2による外歯車の軸の出力軸側支持部分の反力
F4 F1とF2による外歯車の軸の固定側支持部分の反力

Claims (4)

  1. 対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力される入力軸に取り付けられる外歯車の軸とを備え、2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにし、2個の内歯車の軸が同一軸線上にある内公転型差動歯車減速機において、上記2個の内歯車の一方の内歯車は、その外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段が嵌まり合うことでその内歯車を外周から圧縮する構造とされ、上記外歯車の軸は、入力軸の中心からずれた位置が中心とされる第1の偏心軸と、この第1の偏心軸の中心からずられた位置が中心とされる第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられる構造とされていることを特徴とする内公転型差動歯車減速機。
  2. 対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力される入力軸に取り付けられる外歯車の軸とを備え、2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにし、2個の内歯車の軸が同一軸線上にある内公転型差動歯車減速機において、上記2個の内歯車は、それぞれの外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段が嵌まり合うことでそれぞれの内歯車を外周から圧縮する構造とされ、上記外歯車の軸は、入力軸の中心からずれた位置が中心とされる第1の偏心軸と、この第1の偏心軸の中心からずられた位置が中心とされる第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられる構造とされていることを特徴とする内公転型差動歯車減速機。
  3. 対向して配され歯数が異なる2個の内歯車と、2個の内歯車と同時に噛み合う1個の外歯車と、駆動手段からの駆動力が入力される入力軸に取り付けられる外歯車の軸とを備え、上記2個の内歯車と外歯車の軸方向を同じにし、2個の内歯車の軸が同一軸線上にある内公転型差動歯車減速機において、上記2個の内歯車の入力側の内歯車と出力側の内歯車は、それぞれの外径側に形成された嵌合部に軸方向に圧縮手段が嵌まり合うことでそれぞれの内歯車を外周から圧縮する構造とされていることを特徴とする内公転型差動歯車減速機。
  4. 前記外歯車の軸は、前記入力軸の中心からずれた位置が中心とされる第1の偏心軸と、この第1の偏心軸の中心からずられた位置が中心とされる第2の偏心軸を有し、入力軸に対して回転可能に取り付けられる構造とされていることを特徴とする請求項3記載の内公転型差動歯車減速機。
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