JP2004084873A - 転動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても耐摩耗性に優れ長寿命な転動装置を提供する。
【解決手段】内輪1と、外輪2と、該両輪1,2の間に転動自在に配設された複数の転動体3と、を備える深溝玉軸受において、ZnO−nAl2 O3 を含有するアルミナ系セラミックスで転動体3を構成した。
【選択図】 図2
【解決手段】内輪1と、外輪2と、該両輪1,2の間に転動自在に配設された複数の転動体3と、を備える深溝玉軸受において、ZnO−nAl2 O3 を含有するアルミナ系セラミックスで転動体3を構成した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性に優れた転がり軸受,直動案内装置,ボールねじ等のような転動装置に係り、特に、水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても長寿命な転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
転動装置における接触する二面間では微小すべりが生じて摩耗することがあり、場合によっては破損にまで進展することがある。よって、転動装置の転動面は、硬く負荷に耐えるとともに、転がり疲労寿命及びすべりに対する耐摩耗性が良好な材料で構成する必要がある。特に、水の存在下で使用される転動装置の場合は油で潤滑することが困難であるため、その転動面を構成する材料は前述のような性質が特に優れている必要がある。
【0003】
例えば、船舶用原子炉に搭載される原子炉容器内装型制御棒駆動機構に用いられる転がり軸受は、高温高圧の水中という過酷な条件で使用される。よって、このような転がり軸受には、内輪,外輪,及び保持器がSUS304,SUS630等の耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼で構成され、転動体が炭化ケイ素で構成された転がり軸受が使用されていた(特開平9−87025号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、炭化ケイ素は潤滑性に乏しく、水との濡れ性が金属よりも劣るので、上記のような転がり軸受は接触する二面間に潤滑膜となる水膜が保持されにくい。よって、水膜が乏しい状況においては、内輪,外輪と転動体との間で固体接触が生じ摩耗するため、転がり軸受の振動やトルクが大きくなる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても耐摩耗性に優れ長寿命な転動装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転動装置は、内方部材と、外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材,前記外方部材,及び前記転動体のうち少なくとも前記転動体を、親水性及び耐摩耗性を有するセラミックスで構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る請求項2の転動装置は、請求項1に記載の転動装置において、前記セラミックスを、ZnO−nAl2 O3 で表される複合酸化物を含有するアルミナ系セラミックスとしたことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3の転動装置は、請求項2に記載の転動装置において、前記アルミナ系セラミックス中の前記複合酸化物の含有量を10〜40質量%としたことを特徴とする。
【0008】
親水性を有するセラミックスで転動体を構成すると、転動体の表面に水膜が形成されやすくなるので、内方部材,外方部材と転動体との間の摩擦係数が小さくなる。よって、内方部材,外方部材と転動体との間の摩耗が抑制され、転動装置の振動やトルクが大きくなることが抑制される。
特に、ZnO−nAl2 O3 は極性を有する空孔を備えているので、水を強く吸着する性質を有している。よって、ZnO−nAl2 O3 を含有するアルミナ系セラミックスを用いると、転動体の表面に水膜がより形成されやすくなるため好ましい。
【0009】
アルミナ系セラミックスに含有するZnO−nAl2 O3 の量は、10〜40質量%とすることが好ましい。10質量%未満であると、セラミックスの親水性が低下して転動体の表面に十分な水膜が形成されにくくなる。その結果、内方部材,外方部材と転動体との間の摩擦係数が大きくなり摩耗が生じて、転動装置の振動やトルクが大きくなる場合がある。一方、40質量%超過であると、セラミックスの結晶性が低下し機械的強度が不十分となる。
【0010】
さらに、ZnO−nAl2 O3 は、その形状が針状で、アスペクト比が3以上であることが好ましい。そうすれば、セラミックスの破壊靱性値が大きくなり、耐摩耗性がより向上する。
なお、本発明は種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,直動案内装置,直動ベアリング等である。
【0011】
また、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じく直動案内装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じく直動案内装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る転動装置の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、転動装置を構成する内方部材,外方部材,及び転動体を、ZnO−nAl2 O3 で表される複合酸化物を含有するアルミナ系セラミックスで製造する方法を説明する。
【0013】
主原料であるα−アルミナ粉末に、ZnO−nAl2 O3 の粒子と少量の焼結助剤とを混合する。ZnO−nAl2 O3 の含有量は、α−アルミナ粉末とZnO−nAl2 O3 との合計量を100として、10〜40質量%である。そして、この混合物を空気中1300〜1500℃で焼成して所定の形状とすれば、α−アルミナにZnO−nAl2 O3 の粒子が均一に分散しているアルミナ系セラミックスで構成された成形体が得られる。なお、焼成を加圧下で行えば、より好ましい成形体を得ることができる。
【0014】
次に、上記のようにして製造したアルミナ系セラミックスの親水性(水の吸着性)を調査するため、以下のような四球式摩耗試験によって前記セラミックス製の球の摺動特性(耐焼付き性)を評価した。
3個の球を相互に接するように正三角形状に配置して容器内に固定し、これら3個の固定球の中心に形成された凹部に1個の試験球を載置した。前記容器に水を満たし、4個の球の各接触点が水中に位置するようにした後、室温下、下方から荷重を負荷しながら試験球を5000min−1の回転速度で回転させた。前記荷重は回転初期30分間は一定とし、その後は30分毎に段階的に大きくしていった。そして、回転トルクが上昇して回転不能となった時点の荷重を焼付き荷重とし、この焼付き荷重をもって耐焼付き性を評価した。なお、4個の球の直径は3/8インチであり、すべて同種の素材で構成されている。
【0015】
球を構成する素材の種類及び四球式摩耗試験の結果(耐焼付き性)を表1に示す。また、表1の結果をグラフ化したものを図1に示す。なお、表1及び図1のグラフに記載の耐焼付き性の数値は、球の素材が窒化ケイ素(Si3 N4 )である比較例1の焼付き荷重を1とした場合の相対値で示してある。
【0016】
【表1】
【0017】
表1及び図1のグラフから分かるように、アルミナ系セラミックス製の球(実施例)は窒化ケイ素製の球(比較例)と比べて、耐焼付き性が優れていた。特に、ZnO−nAl2 O3 の含有量が10〜40質量%である場合は、耐焼付き性が非常に優れていた。
これは、水を強く吸着する性質を有しているZnO−nAl2 O3 の粒子により、球の表面に水が吸着され水膜が形成されたため、潤滑性が向上したことが原因であると考えられる。潤滑性が向上すると球の間の摩擦係数が小さくなるので、摩耗が抑制されたと考えられる。
【0018】
次に、ZnO−nAl2 O3 を含有するアルミナ系セラミックス製の転動体を備える転がり軸受について回転試験を行い、その耐久性を評価した。
まず、転がり軸受の構成について、図2の縦断面図を参照しながら説明する。この転がり軸受は呼び番号6000相当の深溝玉軸受(内径10mm,外径26mm,幅8mm)であり、SUS440Cで構成された内輪1及び外輪2と、両輪1,2の間に転動自在に配設された複数の転動体3と、両輪1,2の間に転動体3を保持する樹脂組成物製の保持器4と、で構成されている。
【0019】
転動体3はアルミナ系セラミックスで構成されており、保持器4は、ポリフッ化ビニリデンにチタン酸カリウム繊維を20質量%配合した樹脂組成物で構成された冠形保持器である。なお、保持器はもみ抜き保持器でもよいが、その場合は軸受の組み立て性を考慮して、深溝玉軸受ではなくアンギュラ玉軸受とすることが好ましい。
【0020】
このような深溝玉軸受を図3に示すような軸受回転試験機に装着し、水潤滑下において回転試験を行った。
この軸受回転試験機は、水平な基台10と図示しないモータによって回転駆動される回転軸11とを備えており、回転軸11は基台10に対して傾斜して配されている。この回転軸11は、ハウジング12の軸方向の両端部に外輪が固定された2個の玉軸受13A,13Bにより回転可能に支持されており、その先端には試験軸受14が装着されている。そして、基台10の上には水15が満たされた容器16が設置されており、試験軸受14の外輪が容器16内の水15に浸漬されている。
【0021】
この試験軸受14に径方向の荷重(ラジアル荷重)Rを負荷しながら、内輪回転で回転試験を行った。試験条件は、ラジアル荷重:196N、回転速度:300min−1、雰囲気温度:常温である。そして、回転時の試験軸受14の振動を測定し、振動値が初期値の2倍に達した時点を軸受の回転寿命とし、この回転寿命をもって耐久性を評価した。
【0022】
転動体を構成する素材の種類及び軸受回転試験の結果(耐久性)を表2に示す。また、表2の結果をグラフ化したものを図4に示す。なお、表2及び図4のグラフに記載の耐久性の数値は、転動体の素材が窒化ケイ素(Si3 N4 )である比較例11の回転寿命を1とした場合の相対値で示してある。
【0023】
【表2】
【0024】
表2及び図4のグラフから分かるように、アルミナ系セラミックス製の転動体を備えた軸受(実施例)は窒化ケイ素製の転動体を備えた軸受(比較例)と比べて、耐久性が優れていた。特に、ZnO−nAl2 O3 の含有量が10〜40質量%である場合は、耐久性が非常に優れていた。
これは、水を強く吸着する性質を有しているZnO−nAl2 O3 の粒子により、転動体の表面に水が吸着され水膜が形成されたため、潤滑性が向上したことが原因であると考えられる。潤滑性が向上すると内輪,外輪と転動体との間の摩擦係数が小さくなるので、摩耗が抑制され軸受の振動やトルクが大きくなることが抑制されたと考えられる。
【0025】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては深溝玉軸受を例示して説明したが、本発明の転動装置は様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0026】
また、本実施形態においては、転動装置として転がり軸受を例示して説明したが、本発明の転動装置は、他の様々な種類の転動装置に対して適用することができる。例えば、直動案内装置,ボールねじ,直動ベアリング等の他の転動装置にも好適に適用可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明の転動装置は、水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても耐摩耗性に優れ長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミナ系セラミックス中のZnO−nAl2 O3 の含有量と四球式摩耗試験の結果(耐焼付き性)との相関を示すグラフである。
【図2】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図3】軸受回転試験機の構造を示す断面図である。
【図4】アルミナ系セラミックス中のZnO−nAl2 O3 の含有量と軸受回転試験の結果(耐久性)との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 転動体
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性に優れた転がり軸受,直動案内装置,ボールねじ等のような転動装置に係り、特に、水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても長寿命な転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
転動装置における接触する二面間では微小すべりが生じて摩耗することがあり、場合によっては破損にまで進展することがある。よって、転動装置の転動面は、硬く負荷に耐えるとともに、転がり疲労寿命及びすべりに対する耐摩耗性が良好な材料で構成する必要がある。特に、水の存在下で使用される転動装置の場合は油で潤滑することが困難であるため、その転動面を構成する材料は前述のような性質が特に優れている必要がある。
【0003】
例えば、船舶用原子炉に搭載される原子炉容器内装型制御棒駆動機構に用いられる転がり軸受は、高温高圧の水中という過酷な条件で使用される。よって、このような転がり軸受には、内輪,外輪,及び保持器がSUS304,SUS630等の耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼で構成され、転動体が炭化ケイ素で構成された転がり軸受が使用されていた(特開平9−87025号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、炭化ケイ素は潤滑性に乏しく、水との濡れ性が金属よりも劣るので、上記のような転がり軸受は接触する二面間に潤滑膜となる水膜が保持されにくい。よって、水膜が乏しい状況においては、内輪,外輪と転動体との間で固体接触が生じ摩耗するため、転がり軸受の振動やトルクが大きくなる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても耐摩耗性に優れ長寿命な転動装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転動装置は、内方部材と、外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材,前記外方部材,及び前記転動体のうち少なくとも前記転動体を、親水性及び耐摩耗性を有するセラミックスで構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る請求項2の転動装置は、請求項1に記載の転動装置において、前記セラミックスを、ZnO−nAl2 O3 で表される複合酸化物を含有するアルミナ系セラミックスとしたことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3の転動装置は、請求項2に記載の転動装置において、前記アルミナ系セラミックス中の前記複合酸化物の含有量を10〜40質量%としたことを特徴とする。
【0008】
親水性を有するセラミックスで転動体を構成すると、転動体の表面に水膜が形成されやすくなるので、内方部材,外方部材と転動体との間の摩擦係数が小さくなる。よって、内方部材,外方部材と転動体との間の摩耗が抑制され、転動装置の振動やトルクが大きくなることが抑制される。
特に、ZnO−nAl2 O3 は極性を有する空孔を備えているので、水を強く吸着する性質を有している。よって、ZnO−nAl2 O3 を含有するアルミナ系セラミックスを用いると、転動体の表面に水膜がより形成されやすくなるため好ましい。
【0009】
アルミナ系セラミックスに含有するZnO−nAl2 O3 の量は、10〜40質量%とすることが好ましい。10質量%未満であると、セラミックスの親水性が低下して転動体の表面に十分な水膜が形成されにくくなる。その結果、内方部材,外方部材と転動体との間の摩擦係数が大きくなり摩耗が生じて、転動装置の振動やトルクが大きくなる場合がある。一方、40質量%超過であると、セラミックスの結晶性が低下し機械的強度が不十分となる。
【0010】
さらに、ZnO−nAl2 O3 は、その形状が針状で、アスペクト比が3以上であることが好ましい。そうすれば、セラミックスの破壊靱性値が大きくなり、耐摩耗性がより向上する。
なお、本発明は種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,直動案内装置,直動ベアリング等である。
【0011】
また、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じく直動案内装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じく直動案内装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る転動装置の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、転動装置を構成する内方部材,外方部材,及び転動体を、ZnO−nAl2 O3 で表される複合酸化物を含有するアルミナ系セラミックスで製造する方法を説明する。
【0013】
主原料であるα−アルミナ粉末に、ZnO−nAl2 O3 の粒子と少量の焼結助剤とを混合する。ZnO−nAl2 O3 の含有量は、α−アルミナ粉末とZnO−nAl2 O3 との合計量を100として、10〜40質量%である。そして、この混合物を空気中1300〜1500℃で焼成して所定の形状とすれば、α−アルミナにZnO−nAl2 O3 の粒子が均一に分散しているアルミナ系セラミックスで構成された成形体が得られる。なお、焼成を加圧下で行えば、より好ましい成形体を得ることができる。
【0014】
次に、上記のようにして製造したアルミナ系セラミックスの親水性(水の吸着性)を調査するため、以下のような四球式摩耗試験によって前記セラミックス製の球の摺動特性(耐焼付き性)を評価した。
3個の球を相互に接するように正三角形状に配置して容器内に固定し、これら3個の固定球の中心に形成された凹部に1個の試験球を載置した。前記容器に水を満たし、4個の球の各接触点が水中に位置するようにした後、室温下、下方から荷重を負荷しながら試験球を5000min−1の回転速度で回転させた。前記荷重は回転初期30分間は一定とし、その後は30分毎に段階的に大きくしていった。そして、回転トルクが上昇して回転不能となった時点の荷重を焼付き荷重とし、この焼付き荷重をもって耐焼付き性を評価した。なお、4個の球の直径は3/8インチであり、すべて同種の素材で構成されている。
【0015】
球を構成する素材の種類及び四球式摩耗試験の結果(耐焼付き性)を表1に示す。また、表1の結果をグラフ化したものを図1に示す。なお、表1及び図1のグラフに記載の耐焼付き性の数値は、球の素材が窒化ケイ素(Si3 N4 )である比較例1の焼付き荷重を1とした場合の相対値で示してある。
【0016】
【表1】
【0017】
表1及び図1のグラフから分かるように、アルミナ系セラミックス製の球(実施例)は窒化ケイ素製の球(比較例)と比べて、耐焼付き性が優れていた。特に、ZnO−nAl2 O3 の含有量が10〜40質量%である場合は、耐焼付き性が非常に優れていた。
これは、水を強く吸着する性質を有しているZnO−nAl2 O3 の粒子により、球の表面に水が吸着され水膜が形成されたため、潤滑性が向上したことが原因であると考えられる。潤滑性が向上すると球の間の摩擦係数が小さくなるので、摩耗が抑制されたと考えられる。
【0018】
次に、ZnO−nAl2 O3 を含有するアルミナ系セラミックス製の転動体を備える転がり軸受について回転試験を行い、その耐久性を評価した。
まず、転がり軸受の構成について、図2の縦断面図を参照しながら説明する。この転がり軸受は呼び番号6000相当の深溝玉軸受(内径10mm,外径26mm,幅8mm)であり、SUS440Cで構成された内輪1及び外輪2と、両輪1,2の間に転動自在に配設された複数の転動体3と、両輪1,2の間に転動体3を保持する樹脂組成物製の保持器4と、で構成されている。
【0019】
転動体3はアルミナ系セラミックスで構成されており、保持器4は、ポリフッ化ビニリデンにチタン酸カリウム繊維を20質量%配合した樹脂組成物で構成された冠形保持器である。なお、保持器はもみ抜き保持器でもよいが、その場合は軸受の組み立て性を考慮して、深溝玉軸受ではなくアンギュラ玉軸受とすることが好ましい。
【0020】
このような深溝玉軸受を図3に示すような軸受回転試験機に装着し、水潤滑下において回転試験を行った。
この軸受回転試験機は、水平な基台10と図示しないモータによって回転駆動される回転軸11とを備えており、回転軸11は基台10に対して傾斜して配されている。この回転軸11は、ハウジング12の軸方向の両端部に外輪が固定された2個の玉軸受13A,13Bにより回転可能に支持されており、その先端には試験軸受14が装着されている。そして、基台10の上には水15が満たされた容器16が設置されており、試験軸受14の外輪が容器16内の水15に浸漬されている。
【0021】
この試験軸受14に径方向の荷重(ラジアル荷重)Rを負荷しながら、内輪回転で回転試験を行った。試験条件は、ラジアル荷重:196N、回転速度:300min−1、雰囲気温度:常温である。そして、回転時の試験軸受14の振動を測定し、振動値が初期値の2倍に達した時点を軸受の回転寿命とし、この回転寿命をもって耐久性を評価した。
【0022】
転動体を構成する素材の種類及び軸受回転試験の結果(耐久性)を表2に示す。また、表2の結果をグラフ化したものを図4に示す。なお、表2及び図4のグラフに記載の耐久性の数値は、転動体の素材が窒化ケイ素(Si3 N4 )である比較例11の回転寿命を1とした場合の相対値で示してある。
【0023】
【表2】
【0024】
表2及び図4のグラフから分かるように、アルミナ系セラミックス製の転動体を備えた軸受(実施例)は窒化ケイ素製の転動体を備えた軸受(比較例)と比べて、耐久性が優れていた。特に、ZnO−nAl2 O3 の含有量が10〜40質量%である場合は、耐久性が非常に優れていた。
これは、水を強く吸着する性質を有しているZnO−nAl2 O3 の粒子により、転動体の表面に水が吸着され水膜が形成されたため、潤滑性が向上したことが原因であると考えられる。潤滑性が向上すると内輪,外輪と転動体との間の摩擦係数が小さくなるので、摩耗が抑制され軸受の振動やトルクが大きくなることが抑制されたと考えられる。
【0025】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては深溝玉軸受を例示して説明したが、本発明の転動装置は様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0026】
また、本実施形態においては、転動装置として転がり軸受を例示して説明したが、本発明の転動装置は、他の様々な種類の転動装置に対して適用することができる。例えば、直動案内装置,ボールねじ,直動ベアリング等の他の転動装置にも好適に適用可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明の転動装置は、水の存在下で使用され且つ水による潤滑が不十分であっても耐摩耗性に優れ長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミナ系セラミックス中のZnO−nAl2 O3 の含有量と四球式摩耗試験の結果(耐焼付き性)との相関を示すグラフである。
【図2】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図3】軸受回転試験機の構造を示す断面図である。
【図4】アルミナ系セラミックス中のZnO−nAl2 O3 の含有量と軸受回転試験の結果(耐久性)との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 転動体
Claims (3)
- 内方部材と、外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、
前記内方部材,前記外方部材,及び前記転動体のうち少なくとも前記転動体を、親水性及び耐摩耗性を有するセラミックスで構成したことを特徴とする転動装置。 - 前記セラミックスを、ZnO−nAl2 O3 で表される複合酸化物を含有するアルミナ系セラミックスとしたことを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
- 前記アルミナ系セラミックス中の前記複合酸化物の含有量を10〜40質量%としたことを特徴とする請求項2に記載の転動装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002249023A JP2004084873A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 転動装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002249023A JP2004084873A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 転動装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004084873A true JP2004084873A (ja) | 2004-03-18 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002249023A Pending JP2004084873A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 転動装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004084873A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009121581A (ja) * | 2007-11-14 | 2009-06-04 | Jtekt Corp | 転がり軸受 |
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2002
- 2002-08-28 JP JP2002249023A patent/JP2004084873A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009121581A (ja) * | 2007-11-14 | 2009-06-04 | Jtekt Corp | 転がり軸受 |
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