JP2004084511A - 圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械損、風損を低減できる圧縮機を提供する。
【解決手段】可動子2の側に開いたE字形であり、E字形の真中の水平な辺11cに巻線12が施された固定子鉄心11を有する固定子1を有し、軸方向に、可動子鉄心21、永久磁石22、可動子鉄心21の順に配置してなる可動子2を軸方向に2個、所定距離を介在させて配置し、可動子2のそれぞれの可動子鉄心21は、少なくとも固定子鉄心11の内周側に突出した部分に対向し、両可動子2の永久磁石22は、ともに軸方向に、かつ、互いに同一方向に磁化され、2つの可動子2の間には、自転を阻止する機構としての非磁性体のオルダム継ぎ手3が配置され、それぞれの可動子2の互いに対向していない側の端部には可動スクロール4が設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】可動子2の側に開いたE字形であり、E字形の真中の水平な辺11cに巻線12が施された固定子鉄心11を有する固定子1を有し、軸方向に、可動子鉄心21、永久磁石22、可動子鉄心21の順に配置してなる可動子2を軸方向に2個、所定距離を介在させて配置し、可動子2のそれぞれの可動子鉄心21は、少なくとも固定子鉄心11の内周側に突出した部分に対向し、両可動子2の永久磁石22は、ともに軸方向に、かつ、互いに同一方向に磁化され、2つの可動子2の間には、自転を阻止する機構としての非磁性体のオルダム継ぎ手3が配置され、それぞれの可動子2の互いに対向していない側の端部には可動スクロール4が設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は圧縮機に関し、さらに詳細にいえば、公転モータを駆動源とする圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧縮機等、公転運動により機能するような機構としては、回転型モータ(一般的なモータ)を駆動源とし、何らかの機械的機構によって回転運動を公転運動に変換するものが一般的に採用されていた。ここで、回転型モータは、固定子と回転子との間に働く磁気的な吸引力(および反発力)により回転子を回転させ、運動のための力を取り出しているが、吸引力(および反発力)の大部分は半径力であり、この半径力は、回転には寄与せず、むしろ、固定子を変形させたり、回転子を偏心させたりという悪影響を及ぼす力である。したがって、きわめて小さい接線力のみをトルクとして取り出していた。
【0003】
一方、公転運動を直接導くようなモータも提案されている(特開平6−141527号公報、および特開2001−169530号公報参照)。
【0004】
特開平6−141527号公報に記載された偏心運動モータは、閉じた表面径路を画定する固定子と、閉じた表面径路上に転動可能に配置された永久磁石からなる電機子と、固定子内に閉じた表面径路に沿って配置された一連の電磁要素と、電磁要素を順次励起して電機子を吸引し、および/または反発させて閉じた表面径路に沿って転動させる回路と、電機子を使用機構へ連結して電機子が転動する時にモータの動作により使用機構へ動力が供給されるようにする連結機構とを含んでいる。
【0005】
特開2001−169530号公報に記載された公転式アクチュエータは、所定半径の公転が自在に支持されている可動部材と、この可動部材の公転軌道の外接円に沿って配置されているとともに可動部材に作用させる磁気力で可動部材に公転を行わせるステータとからなり、鉄心と該鉄心に巻回されたコイルとからなる上記ステータの鉄心が、可動部材の外周部を非接触で挟み込んでいるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−141527号公報に記載された偏心運動モータにおいて、可動子は、固定子の内周部を転がりながら公転運動するものであり、転がることにより可動子表面の移動速度が大きくなるので、風損が増加してしまう。
【0007】
また、図12に示すように、凾体のコーナーに4個の偏心運動モータを配置し、それぞれの可動子を、固定子に対して対称的に反対方向へ移動させ、可動子の横力を相殺することも提案されているが、この場合には、可動子、固定子がそれぞれ4つ必要であり、構成が複雑化する。
【0008】
また、図13に示すように、モータをスプリングもしくは緩衝要素により凾体内に保持することも提案されているが、この場合には、可動子は、固定子の内周部を接触させながら転がっているため、可動子の遠心力は固定子に伝わり、可動子が固定子とともに同一軌道にて公転運動をしてしまう可能性があり、スプリングもしくは緩衝要素は、その運動を吸収するにすぎない。
【0009】
特開2001−169530号公報に記載された公転式アクチュエータにおいて、軸方向に対向した固定子と可動子に対して、可動子に有効に働く力の方向は半径方向となるため、固定子が可動子を動かそうとする力は接線力であり、可動子に対する法線力は使用されていない。また、可動子が扁平であるため、円板振動が発生しやすい。さらに、図7に示すように、この公転式アクチュエータをスクロールポンプに適用することが示されているが、可動子が扁平形状であり、大きい力を発生させたい場合は、外径を大きくするしかなく、容量の大きい機械には不適切である。
【0010】
特開平6−141527号公報に記載された偏心運動モータ、特開2001−169530号公報に記載された公転式アクチュエータの何れも、圧縮機に適用できることは記載されていない。
【0011】
特に、冷媒圧縮のため、大きい力を必要とする圧縮機は、多くの磁力を必要とするため、可動子は大型化しがちであり、強い法線力を用いるのが適している。また、可動子が大きい分、バランスをとるのが困難となる。
【0012】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、機械損、風損を低減でき、小型化できる圧縮機を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の圧縮機は、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなるものであって、
可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、固定子は、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるものである。
【0014】
請求項2の圧縮機は、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなるものであって、
可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるべく固定子に対する通電を制御する制御手段を含むものである。
【0015】
請求項3の圧縮機は、バランスをとるべく、可動子の公転運動とは逆位相に固定子を移動させる固定子移動手段をさらに含むものである。
【0016】
請求項4の圧縮機は、前記固定子移動手段として、可動子の公転運動と逆位相に固定子を移動させるべく、圧縮機構の固定部分および可動子の保持機構を含む固定子を保持する弾性体を採用するものである。
【0017】
請求項5の圧縮機は、可動子全体としてバランスをとるべく、互いに逆位相で公転運動する2つの可動子を設けたものである。
【0018】
請求項6の圧縮機は、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有するものを採用し、E字形の真中の水平な辺に巻線が施され、かつ、軸方向に、可動子鉄心、永久磁石、可動子鉄心の順に配置した可動子を軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置し、それぞれの可動子鉄心は、少なくとも固定子鉄心の内周部に突出した部分に対向し、また、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、2層の永久磁石は、ともに軸方向に、かつ、それぞれ同一方向に磁化されているものである。
【0019】
請求項7の圧縮機は、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有し、E字形の真中の水平な辺が間に非磁性体を介して2個に分断されているものを採用するものである。
【0020】
請求項8の圧縮機は、固定子鉄心として、可動子に対向する部分に複数の歯を有し、それぞれの歯は、巻線が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなるものを採用し、可動子として、固定子の歯に対応した部分に永久磁石の磁極を形成してなるものを採用し、
可動子は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置され、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、それぞれに磁極の極性が互いに反対に設定されているものである。
【0021】
請求項9の圧縮機は、2つの可動子に、それぞれ、圧縮機構の可動部を設けたものである。
【0022】
請求項10の圧縮機は、2つの可動子の、それぞれ対向した部分に圧縮機構の可動部を設け、両方の可動部を公転させることにより圧縮動作を行わせるものである。
【0023】
請求項11の圧縮機は、可動子の端部に軸受を介してクランク軸を設け、自転可能なバランスウエイトを設けたものである。
【0024】
請求項12の圧縮機は、圧縮機構としてスクロールを採用するものである。
【0025】
請求項13の圧縮機は、圧縮機構としてスイングを採用するものである。
【0026】
請求項14の圧縮機は、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るブレードとスイングブッシュとからなるものを採用するものである。
【0027】
請求項15の圧縮機は、圧縮機構としてロータリーを採用するものである。
【0028】
請求項16の圧縮機は、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るベーンと可動ピストンのベーンに当接する部分に設けられた凹部とからなるものを採用するものである。
【0029】
請求項17の圧縮機は、冷媒として分子中に塩素を含まない冷媒を用いるものである。
【0030】
【作用】
請求項1の圧縮機であれば、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなる圧縮機において、可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、固定子は、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるものであるから、小型にて大きな力を発生することができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させることができ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適である。また、低速運転時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率の圧縮機を実現することができる。
【0031】
請求項2の圧縮機であれば、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなる圧縮機において、可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるべく固定子に対する通電を制御する制御手段を含んでいるので、小型にて大きな力を発生することができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させることができ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適である。また、低速運転時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率の圧縮機を実現することができる。
【0032】
請求項3の圧縮機であれば、バランスをとるべく、可動子の公転運動とは逆位相に固定子を移動させる固定子移動手段をさらに含むのであるから、可動子と固定子のみでバランスをとることができ、バランスをとるための特別な部品を必要とせず、機構を簡素化できるほか、請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0033】
請求項4の圧縮機であれば、前記固定子移動手段として、可動子の公転運動と逆位相に固定子を移動させるべく、圧縮機構の固定部分および可動子の保持機構を含む固定子を保持する弾性体を採用するのであるから、固定子と可動子間の吸引力により、固定子も可動子も動くことが可能であり、同一な力であれば、質量に応じて移動量がきまるため、自動的にバランスをとることができるほか、請求項3と同様の作用を達成することができる。
【0034】
請求項5の圧縮機であれば、可動子全体としてバランスをとるべく、互いに逆位相で公転運動する2つの可動子を設けているので、簡単な機構で、特に静バランスをとることができるほか、請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0035】
請求項6の圧縮機であれば、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有するものを採用し、E字形の真中の水平な辺に巻線が施され、かつ、軸方向に、可動子鉄心、永久磁石、可動子鉄心の順に配置した可動子を軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置し、それぞれの可動子鉄心は、少なくとも固定子鉄心の内周部に突出した部分に対向し、また、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、2層の永久磁石は、ともに軸方向に、かつ、それぞれ同一方向に磁化されているのであるから、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることができ、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、永久磁石の磁束が、全て、吸引力を発生している固定子極に吸引されるため、永久磁石の磁束を有効に利用することが可能であるほか、請求項5と同様の作用を達成することができる。
請求項7の圧縮機であれば、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有し、E字形の真中の水平な辺が間に非磁性体を介して2個に分断されているものを採用するのであるから、独立した固定子でありながら、巻線が共用できるため、請求項6に比べれば巻線抵抗が若干増大するものの、簡単な機構にて2つの独立した公転機構を持つことができ、また、力発生に寄与しない固定子鉄心を削減することができるので、低コスト、軽量化が可能であり、さらに、2つの可動子の間に、圧縮機構や自転を阻止する機構等を設けることも可能であるほか、請求項6と同様の作用を達成することができる。
【0036】
請求項8の圧縮機であれば、固定子鉄心として、可動子に対向する部分に複数の歯を有し、それぞれの歯は、巻線が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなるものを採用し、可動子として、固定子の歯に対応した部分に永久磁石の磁極を形成してなるものを採用し、
可動子は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置され、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、それぞれに磁極の極性が互いに反対に設定されているのであるから、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることができ、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、固定子鉄心を全て一体化して、固定子の保持を容易にできるほか、請求項7と同様の作用を達成することができる。
【0037】
請求項9の圧縮機であれば、2つの可動子に、それぞれ、圧縮機構の可動部を設けているので、圧縮機構を2つ持つことにより、吸入、吐出のタイミングをずらせて、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできるため、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力はさらに増大し、風損等を低減でき、また、互いの可動スクロールを対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにして、スラスト軸受損失を大幅に低減することができるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0038】
請求項10の圧縮機であれば、2つの可動子の、それぞれ対向した部分に圧縮機構の可動部を設け、両方の可動部を公転させることにより圧縮動作を行わせるのであるから、圧縮機構の両側とも可動とすることにより、それぞれの公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力はさらに増大させ、風損等を低減でき、また、圧縮機構が1つであるため、図示効率を向上させ、圧縮機全体としての効率をも向上させることができるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0039】
請求項11の圧縮機であれば、可動子の端部に軸受を介してクランク軸を設け、自転可能なバランスウエイトを設けているので、静バランス、動バランスを共にとることができ、振動、騒音を低減できるほか、請求項2から請求項10の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0040】
請求項12の圧縮機であれば、圧縮機構としてスクロールを採用するのであるから、圧縮力を圧縮の1サイクルの中でほぼ均一にすることができ、必要吸引力を小さくできるため、機構を小型化できるとともに、振動、騒音を低減できるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0041】
請求項13の圧縮機であれば、圧縮機構がスイングであるから、圧縮機構において、ブレードとローラーとを一体化でき、摺動部を減少させることができるとともに、圧縮の漏れが低減させることができ、圧縮機効率を向上させることができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0042】
請求項14の圧縮機であれば、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るブレードとスイングブッシュとからなるものを採用するのであるから、ブレードをスイングブッシュにより保持させることにより、ピストンのスイングのみを可能とし、不要な自転を阻止することができ、特別な自転阻止機構を不要にできるほか、請求項13と同様の作用を達成することができる。
【0043】
請求項15の圧縮機であれば、圧縮機構としてロータリーを採用しているので、ローラーの加工を容易にでき、かつ、ローラーが自転しないため、ローラーとベーンの摺動損も小さく、ロータリーの利点である構造のシンプルさ、形状のコンパクトさとともに、公転機構の良さを十分に生かすことができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0044】
請求項16の圧縮機であれば、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るベーンと可動ピストンのベーンに当接する部分に設けられた凹部とからなるものを採用しているので、ローラーの形状の工夫のみで自転を阻止することができ、特別な部品を必要とせず、自転の阻止を達成することができるほか、請求項15と同様の作用を達成することができる。
【0045】
請求項17の圧縮機であれば、冷媒として分子中に塩素を含まない冷媒を用いているので、圧縮の圧力を必要とするこの冷媒を採用するに当たって、小型で高出力の公転機構は好適であり、また、回転を公転に変換する機構が不要のため、摺動部を減少させることができ、仮に塩化鉄膜の発生がないため潤滑の低下が起こったとしても、摺動部が少ないため、キャピラリーチューブのつまりを発生しにくくできるほか、請求項1から請求項16の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の圧縮機の実施の形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
この発明の圧縮機に組み込まれる公転モータは、図1および図2に示すように、固定子鉄心11に巻線12を施してなり、巻線12に流れる電流により励磁される固定子1と、永久磁石22および可動子鉄心21からなり、固定子1の巻線に流れる電流との相互作用で固定子1の極に吸引されながら公転する可動子2とを有している。そして、作用する吸引力としては、固定子内周面および可動子外周面に対して法線方向の力をそのまま利用している。
【0047】
なお、51は圧縮機のハウジング、52は圧縮室を形成するケーシング、53は冷媒吸入管、54は冷媒吐出管である。
【0048】
固定子鉄心11は、可動子2の側に開いたE字形であり、E字形の真中の水平な辺11cに巻線12が施されている。したがって、巻線12は、E字形の真中の水平な辺11cの上下に収納されるため、固定子鉄心11の外部には巻線12が無く、圧縮機の枠への固定等が容易であり、また、巻線12と機構部との絶縁距離を意識しなくてもよいため、圧縮機を小型化できる。
【0049】
また、可動子2は、軸方向に、可動子鉄心21、永久磁石22、可動子鉄心21の順に配置してなるものであり、この構成の可動子2を軸方向に2個、所定距離を介在させて配置している。そして、可動子2のそれぞれの可動子鉄心21は、少なくとも固定子鉄心11の内周側に突出した部分に対向している。2層の永久磁石(両可動子2の永久磁石)22は、ともに軸方向に、かつ、互いに同一方向に磁化されている。この結果、2つの可動子2は互いに逆位相で公転運動する。2つの可動子2の間には、自転を阻止する機構としての非磁性体のオルダム継ぎ手3が配置されている。このオルダム継ぎ手3は、スラスト軸受としての働きをも有している。2つの可動子2の間は、互いに異なる磁極面が対向しているため、近接させ、または、磁性体を介在させれば、磁束が2つの可動子間で短絡してしまうので、磁束短絡を防止するために、ある程度磁気的に離している。
【0050】
それぞれの可動子2の互いに対向していない側の端部には、可動スクロール4が設けられている。それぞれの可動子2と可動スクロール4とは直結され、同一の軌道で公転運動する。
【0051】
圧縮機構を2つ持つことにより、吸入、吐出のタイミングをずらせることができ、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできるため、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力はさらに増大し、風損等を低減できる。また、可動スクロール4を互いに対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにできるため、スラスト軸受損失を大幅に低減できる。ただし、圧縮機構が2つになるということは、圧縮機構の漏れが増加することにもつながるため図示効率は低下する傾向にある。この図示効率の低下を抑制するためには、後述するように、両方のスクロール4が回転する方式を採用すればよい。
【0052】
固定子1の1つの極に着目すると、仮に、所定の方向に電流を流したとき、E字形の固定子鉄心11の真中の水平な辺11cから、磁束が発生し、上部の可動子2の永久磁石22は順方向に磁化されているため、吸引力を発生し、下部の可動子2の永久磁石22は逆方向に磁化されているため、反発力が発生する。180°対称位置にある固定子1の極は、逆で、上部の可動子2には反発力が、下部の可動子2には吸引力が働く。これにより、2つの可動子2は、公転軸を中心にして、互いに対称となるような位置に存在することになる。
【0053】
それぞれの固定子1の極を回転したい方向に、90°ずつ位相ずらした電流を流すことにより、順次、発生する吸引力および反発力の位置が回転し、その力によって可動子2を逆位相に公転運動させることができる。なお、実際の通電は、可動子2が固定子極に最接近しているときに吸引力を発生させたのでは、可動子2は停止してしまうので、可動子2の最接近位置にくらべ、幾分位相を進める必要がある。具体的には、機械角で45°〜90°程度進めると良い。ここで、可動子2に働く力は、遠心力と磁気吸引力である。高速運転時ほど遠心力が大きくなるため、電流の位相をより進める必要があるといえる。図1および図2は、簡単のため、電流位相を進めない状態を示している。
【0054】
次いで、図3を用いて、スクロールの作動について説明する。
【0055】
図3は、上部の可動子2に設けられたスクロール部4で切断して上から見た図であり、磁極は、固定子1の上部の極を示している。したがって、可動子2の極性はN極である。また、電流の位相は45°進んでいると仮定している。
【0056】
外周部から二つの渦巻の間にはさまれた一対の対称の三日月形の部分に吸い込まれたガスは、公転が進んで内側に移行すると共に次第に容積を減じて圧力が高まり、真中の穴から吐出される。例えば、0°においては、可動スクロール4は、0°の位置にあるため、0°から反時計方向に移動させる必要がある。そこで、0°から反時計方向に進んだ方向、仮に45°の方向に吸引力が発生するように固定子1を励磁する。この吸引力は、可動子2が回転ではなく公転であるので、接線力ではなく、法線力に近い力である。ここで、必要な吸引力は、可動子2を冷媒の膨張しようとする力に抗して、移動させなければならない力であるから、圧力や公転速度に応じて電流の位相や大きさは決められるべきである。
【0057】
本実施形態の利点は、巻線12がほぼ固定子鉄心11に囲まれているため、巻線12に流れる電流により、磁束が有効に固定子鉄心11に流れることであり、例えば、固定子1を固定する枠が磁性体であっても磁束の漏れが発生することなく、少ない電流で可能な限り大きい磁化力を得ることができる。なお、E字形の固定子鉄心11の鉛直な辺11v、および、上下の水平な辺11u、11bの幅は、固定子鉄心11に流れる磁束量を考えると、E字形の固定子鉄心11の真中の水平な辺11cの約半分あればよい。
【0058】
巻線12は、固定子1がそれぞれ独立であるため、固定子鉄心11を回転させながら行うことも可能である。この場合、巻線12として平角線やシートコイルを採用することも可能であり、巻線12の占積率を極めて高くすることができる。巻線12として通常の円断面のコイルを採用した場合であっても、十分制御して巻線すれば、線のねじれが無い分、整列巻が容易であり、占積率を高くすることは可能である。巻枠に整列巻したコイルを固定子鉄心11に挿入してもよい。
【0059】
また、固定子1の各極は、磁気的に絶縁されて存在し、それぞれ独立した磁路を形成する。しかし、それだけでは、固定子1の各極の位置が決まらないので、独立した固定子1の各極は、非磁性体にて機械的に保持している。機械的な接続手段として、巻線12の施されていない固定子鉄心11の外周部にリング状の非磁性体を接続すればよく、具体的には、圧縮機の場合であれば、シェルの中に、焼き嵌めすればよい。また、固定子1の上下をリング状の非磁性体ではさんでもよい。
【0060】
ここで、固定子の各極は仮に磁性体で保持されたとしても、特別、悪影響は生じない。
【0061】
なお、永久磁石22は、円板形状を想定して説明したが、必要な磁束量に応じて、平板でもよく、複数の平板形状の磁石を並べてもよい。
【0062】
可動子2の形状は円筒形としたが、固定子1と可動子2との間に、運動方向に直交する面が対向し、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させる形状としてもよい。すなわち、固定子内周面および可動子外周面が平面で対向していたり、または、凹凸形状にて対向していてもよい。
【0063】
上記構成によれば、小型にて大きな力を発生することができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させることができ、効率を向上させることができる。また、同一形状の可動子2、可動スクロール4を対称位置に配置するため、静バランスがとれ、振動、騒音を低減できる。さらに、動バランスをとることが必要であれば、クランク軸を介してバランスウエイトを設けても良いが、せっかく簡素化した機構が複雑化してしまう。そこで、圧縮機構の固定部分(固定スクロール)および可動子2の保持機構を含む固定子1をばね等の弾性体で保持することにより、可動子2の公転運動と逆位相に固定子1を移動させるようにすれば、可動子2の運動にあわせて固定子1が反対方向に動くことにより、バランスをとることができる。このとき、固定子1と可動子2は接触せず、微小なエアギャップを常に保っている必要があるが、これにより、固定子1と可動子2の間の摩擦による損失をなくすことができる。特に、固定子1を含む系は、可動子2と比べて重いため、少ない移動量でバランスをとることが可能である。
【0064】
なお、この実施形態の圧縮機は、塩素を含まない代替冷媒、自然冷媒に適している。代替冷媒、自然冷媒は、圧縮の圧力を必要とするため、小型で高出力の公転機構は好適である。また、回転を公転に変換する機構が不要のため、摺動部が減少する。仮に塩化鉄膜の発生がないため潤滑の低下が起こったとしても、摺動部が少ないため、キャピラリーチューブのつまりを発生しにくくすることができる。ここで、代替冷媒、自然冷媒としては、HFC、CO2等が提示できる。
【0065】
(実施形態2)
図4はこの発明の圧縮機の他の実施形態を示す概略縦断面図である。この圧縮機を、実施形態1の圧縮機と比べると、可動子2の構成は同一で、固定子鉄心11は、可動子2の側に開いたE字形をしており、E字形の真中の水平な辺11cが間に非磁性体11nを介して2個に分断されているが、巻線方式は同一である。つまり、2つの可動子2の間は、吸引力を活用するわけではないので、それに対向した部分も、固定子鉄心11を設けず、隙間としたものである。従って、固定子巻線12は、隙間をまたいで巻回されることになる。
【0066】
また、2つの可動子2の間には、それぞれと連結されたスクロール歯4を設け、それぞれが公転運動をするようにしている。これにより、例えば、一方が固定スクロールである場合と比べて、それぞれのスクロール歯4の公転半径を半分とすれば、相対運動の公転半径は同一となるため、公転の移動量を小さくすることができる。この結果、エアギャップを小さく取ることができ、また可動子2の移動速度を小さくすることができるため風損や機械損を低減することができる。また、可動スクロール同士は、距離を適当に置けば、吸引力が発生するため、2つのスクロールを押さえる力にも利用できる。また、振動、騒音、また、軸受の損失に関しても優れている。さらに、図示効率も向上する。
【0067】
これで静バランスはとれるわけであるが、動バランスをとるために、この実施形態では、可動子端部に軸受62を介してクランクシャフト61を設け、クランクシャフト61には自転可能なバランスウエイト63を設けている。そして、可動子位置と反対位置にバランスウエイト63がくるように固定してある。なお、バランスウエイト63は、2つの可動子2の両方に設ける必要がある。
【0068】
これらの可動スクロール4を、図5に示すように、両歯型の固定スクロール41を介して配置すれば、スクロールが2つあることになり、実施形態1の構成と同一の作用、効果を達成することができる。
【0069】
なお、分割した固定子鉄心11に、全く独立した巻線12を施してもよい。また、巻線12を全く独立とすることにより、反発力を利用せず、吸引力のみを利用することもできる。
【0070】
(実施形態3)
図6、図7、図8に示す圧縮機の固定子鉄心11は、可動子2に対向する部分に複数の歯13を有し、それぞれの歯13は、巻線12が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなり、可動子2は、固定子1の歯13に対応した部分に永久磁石22の磁極を形成してなる。また、可動子2は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定距離を介在させて配置され、それぞれに磁極の極性を互いに反対とすることにより、2つの可動子2を互いに逆位相で公転運動させる。
【0071】
固定子1は、3相通電のブラシレスモータに用いられる6スロットの集中巻のごとく3相巻線されている。
【0072】
可動子2は、それぞれの固定子1の極に対応して、N極、S極交互に磁極を形成している。すなわち、対向する固定子1の極が可動子2の磁極と反対になれば吸引力を、同一になれば反発力を発生することになる。
【0073】
可動子2は、円環形状の可動子鉄心に、ラジアル方向に長い永久磁石22を埋設してなる。永久磁石22は、接線方向に、交互に磁化されている。
【0074】
3相の正弦波電流を流せば、固定子1の極のうち、少なくとも隣接した2極はそれぞれ対称に磁化される。例えば、N極に磁化された固定子1の極にS極の可動子磁極が対向し、その隣では、S極に磁化された固定子1の極にN極の可動子磁極が対向していれば、その2つの極が吸引力を発生させることになる。しかしながら、他方の可動子2は、永久磁石22の磁化方向が逆となるため、反発力を発生する。これにより、2つの可動子2を互いに逆位相で公転運動させることができる。
【0075】
この構成の圧縮機を、実施形態1および実施形態2の圧縮機と比べると、永久磁石22の数が増加し、全ての永久磁石22の磁束が吸引力および反発力に活用できるわけではない。しかしながら、固定子鉄心11が一体化しているので、製造工程や固定等の扱いを容易にすることができる。また、発生すべき力によっては、永久磁石を省略して、電磁石と鉄との吸引力のみを利用することも可能である。
【0076】
次いで、圧縮機構について説明する。
【0077】
2つの可動子2の間には、非磁性体のスペーサ7が配置され、このスペーサ7はスラスト軸受としての働きをも有する。2つの可動子2の間は、互いに異なる磁極面が対向するため、近接させ、または、磁性体を介在させれば、磁束が2つの可動子間で短絡してしまう。したがって、ある程度磁気的に離しておく必要がある。また、図7に示す状態から図8に示す状態へ、可動子2は時計方向に移動する。
【0078】
それぞれの可動子2の互いに対向していない側の端部には、可動ピストン8が設けられている。それぞれの可動子2と可動ピストン8とは直結され、同一の軌道で公転運動をする。
【0079】
圧縮機構を2つ持っているので、吸入、吐出のタイミングをずらせば、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできる。この結果、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力をさらに増大させることができ、風損等を低減することができる。また、両可動ピストン8を互いに対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにできるため、スラスト軸受損失を大幅に低減できる。
【0080】
なお、実際の通電は、可動子2が固定子極に最接近しているときに吸引力を発生させたのでは、可動子2は停止してしまうので、可動子2の最接近位置にくらべ、幾分位相を進める必要がある。ここで、可動子2に働く力は、遠心力と磁気吸引力である。高速運転時ほど遠心力が大きくなるため、電流の位相をより進める必要がある。図6から図8においては、簡単のため、電流位相を進めない状態を示している。
【0081】
図9は、圧縮機構をスイングとした場合とロータリーとした場合の動作を説明する図である。
【0082】
圧縮機構をスイングとしたとき{図9中(A)〜(D)参照}、ブレードとローラーが一体化しているため、摺動部が減少するとともに、圧縮の漏れが低減するため、圧縮機効率を向上できる。また、ブレードをスイングブッシュが保持することにより、ピストンのスイングのみを可能とし、不要な自転を阻止することが可能となり、特別な自転阻止機構を不要にすることができる。
【0083】
なお、圧縮機構をロータリーとした場合は{図9中(E)〜(H)参照}、ローラーの加工が容易であり、かつ、ローラーが自転しないため、ローラーとベーンの摺動損も小さく、ロータリーの利点である構造のシンプルさ、形状のコンパクトさとともに、公転機構の良さを十分に生かすことが可能である。また、図10に示すように、ローラーの、ベーンが当接する部分に凹部を設ければ、ローラーの自転防止にも役立つ。
【0084】
(実施形態4)
図11はこの発明の圧縮機のさらに他の実施形態を示す概略縦断面図である。
【0085】
図11に示す圧縮機は、1つのみの可動子2を有し、様々なバリエーションから選択された通電方式を採用している。例えば、吸引力のみを発生させるようにする場合には、巻線12に流れる電流は1方向のみでよい。
【0086】
そして、可動子2のバランスをとるために、例えば、可動子2を、軸受62により支持されたクランク軸61の一方の端部に接続し、クランク軸61の所定位置にバランスウエイト63を自転自在に接続している。クランク軸62を支持するために軸受62が必要となるので、損失が多くなるが、クランク軸61により公転軌道を規制することができる。
【0087】
なお、この発明の圧縮機は上記の実施形態に限定されず、例えば、可動子2の磁石の数、固定子1の極数、可動子2および固定子1の形状等を任意に設定することが可能であるほか、この発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことが可能である。また、永久磁石を用いなくてもよい。
【0088】
これらの圧縮機は、小形化でき、高効率であるため、近年省エネルギー化が要求されているエアコンや冷蔵庫に適している。また、軽量化できるため、自動車用のエアコンにも好適である。
【0089】
また、これらの圧縮機は、ポンプとは異なり、機構部品を低減して、冷媒に対する信頼性を向上させることができる。さらに、圧縮機は、ポンプとは異なり、大きな力を必要とするため、これらの圧縮機を採用することは有利であり、1サイクル中に必要とされる力が変動するので、これらの圧縮機により、力の変動に十分に追従することができる。
【0090】
【発明の効果】
請求項1の発明は、小型にて大きな力を発生させることができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適であり、また、低速時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率を実現することができるという特有の効果を奏する。
【0091】
請求項2の発明は、小型にて大きな力を発生させることができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適であり、また、低速時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率を実現することができるという特有の効果を奏する。
【0092】
請求項3の発明は、可動子と固定子のみでバランスをとるため、バランスのための特別な部品を必要とせず、機構を簡素化できるほか、請求項2と同様の効果を奏する。
【0093】
請求項4の発明は、固定子と可動子間の吸引力により、固定子も可動子も動くことが可能であり、同一の力であれば、質量に応じて移動量が決まるため、自動的にバランスをとることができるほか、請求項3と同様の効果を奏する。
【0094】
請求項5の発明は、可動子そのものがバランスをとっているため、簡単な機構で、特に静バランスをとることができるほか、請求項2と同様の効果を奏する。
【0095】
請求項6の発明は、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることが可能であり、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、永久磁石の磁束が、全て、吸引力を発生している固定子極に吸引されるため、永久磁石の磁束を有効に利用することができるほか、請求項5と同様の効果を奏する。
【0096】
請求項7の発明は、独立した固定子でありながら、巻線が共用できるため、巻線抵抗が若干増大するものの、簡単な機構にて2つの独立した公転機構を持つことができ、また、力発生に寄与しない固定子鉄心は削減することができるので、低コスト、軽量化を達成することができ、さらに、2つの可動子の間に、圧縮機構や自転阻止機構等を設けることもできるほか、請求項6と同様の効果を奏する。
【0097】
請求項8の発明は、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることができ、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、固定子鉄心は全て一体化しているため、固定子の保持を容易に達成できるほか、請求項7と同様の効果を奏する。
【0098】
請求項9の発明は、圧縮機構を2つ持つことにより、吸入、吐出のタイミングをずらせ、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできるため、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力をさらに増大させ、風損等を低減することができ、また、互いの可動スクロールを対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにできるため、スラスト軸受損失を大幅に低減できるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の効果を奏する。
【0099】
請求項10の発明は、圧縮機構の両側とも可動とすることにより、それぞれの公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力をさらに増大させ、風損等を低減することができ、また、圧縮機構は1つであるため、図示効率を向上させ、圧縮機全体としての効率を向上させることができるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の効果を奏する。
【0100】
請求項11の発明は、静バランス、動バランスを共にとることができ、振動、騒音を低減できるほか、請求項2から請求項10の何れかと同様の効果を奏する。
【0101】
請求項12の発明は、圧縮力を圧縮の1サイクルの中でほぼ均一にできるため、必要吸引力を小さくでき、機構を小型化できるとともに、振動、騒音に優れた圧縮機を提供できるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0102】
請求項13の発明は、圧縮機構において、ブレードとローラーとを一体化しているため、摺動部を減少できるとともに、圧縮の漏れを低減できるため、圧縮機効率を向上させることができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0103】
請求項14の発明は、ブレードをスイングブッシュにより保持させることにより、ピストンのスイングのみを可能とし、不要な自転を阻止することができ、特別な自転阻止機構を不要にできるほか、請求項13と同様の効果を奏する。
【0104】
請求項15の発明は、ローラーの加工が容易であり、かつ、ローラーが自転しないため、ローラーとベーンとの摺動損を小さくでき、ロータリーの利点である構造のシンプルさ、形状のコンパクトさとともに、公転機構のよさを十分に生かすことができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0105】
請求項16の発明は、ローラーの形状の工夫のみで自転を阻止することができ、特別な部品を必要とせず、自転の阻止を達成することができるほか、請求項15と同様の効果を奏する。
【0106】
請求項17の発明は、圧縮の圧力を必要とするこの冷媒を採用するに当たって、小型で高出力の公転機構は好適であり、また、回転を公転に変換する機構が不要のため、摺動部を減少させることができ、仮に塩化鉄膜の発生がないため潤滑の低下が起こったとしても、摺動部が少ないため、キャピラリーチューブのつまりを発生しにくくできるほか、請求項1から請求項16の何れかと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の圧縮機の一実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図2】図1の圧縮機の横断面図である。
【図3】スクロール圧縮機構の動作を説明する図である。
【図4】この発明の圧縮機の他の実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図5】可動スクロールの配置例を示す縦断面図である。
【図6】この発明の圧縮機のさらに他の実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図7】上下の可動子の状態の一例を示す横断面図である。
【図8】図7の状態から僅かに移動した上下の可動子の状態を示す横断面図である。
【図9】圧縮機構をスイングとした場合とロータリーとした場合の動作を説明する図である。
【図10】ローラーの自転防止機構の一例を概略的に示す横断面図である。
【図11】この発明の圧縮機のさらに他の実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図12】4個の固定子および4個の電機子を使用した磁気偏心運動モータの部分斜視図である。
【図13】制動要素がモータの固定子をモータ函体へ接続してモータの動作により生じる横力を制動する磁気偏心運動モータの部分断面斜視図である。
【符号の説明】
1 固定子
2 可動子
3 オルダム継ぎ手
4 可動スクロール
11 固定子鉄心
11c 真中の水平な辺
11n 非磁性体
12 巻線
13 歯
21 可動子鉄心
22 永久磁石
61 クランク軸
62 軸受け
63 バランスウエイト
【発明の属する技術分野】
この発明は圧縮機に関し、さらに詳細にいえば、公転モータを駆動源とする圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧縮機等、公転運動により機能するような機構としては、回転型モータ(一般的なモータ)を駆動源とし、何らかの機械的機構によって回転運動を公転運動に変換するものが一般的に採用されていた。ここで、回転型モータは、固定子と回転子との間に働く磁気的な吸引力(および反発力)により回転子を回転させ、運動のための力を取り出しているが、吸引力(および反発力)の大部分は半径力であり、この半径力は、回転には寄与せず、むしろ、固定子を変形させたり、回転子を偏心させたりという悪影響を及ぼす力である。したがって、きわめて小さい接線力のみをトルクとして取り出していた。
【0003】
一方、公転運動を直接導くようなモータも提案されている(特開平6−141527号公報、および特開2001−169530号公報参照)。
【0004】
特開平6−141527号公報に記載された偏心運動モータは、閉じた表面径路を画定する固定子と、閉じた表面径路上に転動可能に配置された永久磁石からなる電機子と、固定子内に閉じた表面径路に沿って配置された一連の電磁要素と、電磁要素を順次励起して電機子を吸引し、および/または反発させて閉じた表面径路に沿って転動させる回路と、電機子を使用機構へ連結して電機子が転動する時にモータの動作により使用機構へ動力が供給されるようにする連結機構とを含んでいる。
【0005】
特開2001−169530号公報に記載された公転式アクチュエータは、所定半径の公転が自在に支持されている可動部材と、この可動部材の公転軌道の外接円に沿って配置されているとともに可動部材に作用させる磁気力で可動部材に公転を行わせるステータとからなり、鉄心と該鉄心に巻回されたコイルとからなる上記ステータの鉄心が、可動部材の外周部を非接触で挟み込んでいるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−141527号公報に記載された偏心運動モータにおいて、可動子は、固定子の内周部を転がりながら公転運動するものであり、転がることにより可動子表面の移動速度が大きくなるので、風損が増加してしまう。
【0007】
また、図12に示すように、凾体のコーナーに4個の偏心運動モータを配置し、それぞれの可動子を、固定子に対して対称的に反対方向へ移動させ、可動子の横力を相殺することも提案されているが、この場合には、可動子、固定子がそれぞれ4つ必要であり、構成が複雑化する。
【0008】
また、図13に示すように、モータをスプリングもしくは緩衝要素により凾体内に保持することも提案されているが、この場合には、可動子は、固定子の内周部を接触させながら転がっているため、可動子の遠心力は固定子に伝わり、可動子が固定子とともに同一軌道にて公転運動をしてしまう可能性があり、スプリングもしくは緩衝要素は、その運動を吸収するにすぎない。
【0009】
特開2001−169530号公報に記載された公転式アクチュエータにおいて、軸方向に対向した固定子と可動子に対して、可動子に有効に働く力の方向は半径方向となるため、固定子が可動子を動かそうとする力は接線力であり、可動子に対する法線力は使用されていない。また、可動子が扁平であるため、円板振動が発生しやすい。さらに、図7に示すように、この公転式アクチュエータをスクロールポンプに適用することが示されているが、可動子が扁平形状であり、大きい力を発生させたい場合は、外径を大きくするしかなく、容量の大きい機械には不適切である。
【0010】
特開平6−141527号公報に記載された偏心運動モータ、特開2001−169530号公報に記載された公転式アクチュエータの何れも、圧縮機に適用できることは記載されていない。
【0011】
特に、冷媒圧縮のため、大きい力を必要とする圧縮機は、多くの磁力を必要とするため、可動子は大型化しがちであり、強い法線力を用いるのが適している。また、可動子が大きい分、バランスをとるのが困難となる。
【0012】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、機械損、風損を低減でき、小型化できる圧縮機を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の圧縮機は、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなるものであって、
可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、固定子は、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるものである。
【0014】
請求項2の圧縮機は、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなるものであって、
可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるべく固定子に対する通電を制御する制御手段を含むものである。
【0015】
請求項3の圧縮機は、バランスをとるべく、可動子の公転運動とは逆位相に固定子を移動させる固定子移動手段をさらに含むものである。
【0016】
請求項4の圧縮機は、前記固定子移動手段として、可動子の公転運動と逆位相に固定子を移動させるべく、圧縮機構の固定部分および可動子の保持機構を含む固定子を保持する弾性体を採用するものである。
【0017】
請求項5の圧縮機は、可動子全体としてバランスをとるべく、互いに逆位相で公転運動する2つの可動子を設けたものである。
【0018】
請求項6の圧縮機は、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有するものを採用し、E字形の真中の水平な辺に巻線が施され、かつ、軸方向に、可動子鉄心、永久磁石、可動子鉄心の順に配置した可動子を軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置し、それぞれの可動子鉄心は、少なくとも固定子鉄心の内周部に突出した部分に対向し、また、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、2層の永久磁石は、ともに軸方向に、かつ、それぞれ同一方向に磁化されているものである。
【0019】
請求項7の圧縮機は、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有し、E字形の真中の水平な辺が間に非磁性体を介して2個に分断されているものを採用するものである。
【0020】
請求項8の圧縮機は、固定子鉄心として、可動子に対向する部分に複数の歯を有し、それぞれの歯は、巻線が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなるものを採用し、可動子として、固定子の歯に対応した部分に永久磁石の磁極を形成してなるものを採用し、
可動子は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置され、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、それぞれに磁極の極性が互いに反対に設定されているものである。
【0021】
請求項9の圧縮機は、2つの可動子に、それぞれ、圧縮機構の可動部を設けたものである。
【0022】
請求項10の圧縮機は、2つの可動子の、それぞれ対向した部分に圧縮機構の可動部を設け、両方の可動部を公転させることにより圧縮動作を行わせるものである。
【0023】
請求項11の圧縮機は、可動子の端部に軸受を介してクランク軸を設け、自転可能なバランスウエイトを設けたものである。
【0024】
請求項12の圧縮機は、圧縮機構としてスクロールを採用するものである。
【0025】
請求項13の圧縮機は、圧縮機構としてスイングを採用するものである。
【0026】
請求項14の圧縮機は、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るブレードとスイングブッシュとからなるものを採用するものである。
【0027】
請求項15の圧縮機は、圧縮機構としてロータリーを採用するものである。
【0028】
請求項16の圧縮機は、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るベーンと可動ピストンのベーンに当接する部分に設けられた凹部とからなるものを採用するものである。
【0029】
請求項17の圧縮機は、冷媒として分子中に塩素を含まない冷媒を用いるものである。
【0030】
【作用】
請求項1の圧縮機であれば、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなる圧縮機において、可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、固定子は、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるものであるから、小型にて大きな力を発生することができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させることができ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適である。また、低速運転時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率の圧縮機を実現することができる。
【0031】
請求項2の圧縮機であれば、固定子と、固定子の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子と、可動子の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子に直結された圧縮機構の可動部分とからなる圧縮機において、可動子と固定子とは運動方向に直交する面を対向させ、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるべく固定子に対する通電を制御する制御手段を含んでいるので、小型にて大きな力を発生することができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させることができ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適である。また、低速運転時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率の圧縮機を実現することができる。
【0032】
請求項3の圧縮機であれば、バランスをとるべく、可動子の公転運動とは逆位相に固定子を移動させる固定子移動手段をさらに含むのであるから、可動子と固定子のみでバランスをとることができ、バランスをとるための特別な部品を必要とせず、機構を簡素化できるほか、請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0033】
請求項4の圧縮機であれば、前記固定子移動手段として、可動子の公転運動と逆位相に固定子を移動させるべく、圧縮機構の固定部分および可動子の保持機構を含む固定子を保持する弾性体を採用するのであるから、固定子と可動子間の吸引力により、固定子も可動子も動くことが可能であり、同一な力であれば、質量に応じて移動量がきまるため、自動的にバランスをとることができるほか、請求項3と同様の作用を達成することができる。
【0034】
請求項5の圧縮機であれば、可動子全体としてバランスをとるべく、互いに逆位相で公転運動する2つの可動子を設けているので、簡単な機構で、特に静バランスをとることができるほか、請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0035】
請求項6の圧縮機であれば、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有するものを採用し、E字形の真中の水平な辺に巻線が施され、かつ、軸方向に、可動子鉄心、永久磁石、可動子鉄心の順に配置した可動子を軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置し、それぞれの可動子鉄心は、少なくとも固定子鉄心の内周部に突出した部分に対向し、また、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、2層の永久磁石は、ともに軸方向に、かつ、それぞれ同一方向に磁化されているのであるから、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることができ、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、永久磁石の磁束が、全て、吸引力を発生している固定子極に吸引されるため、永久磁石の磁束を有効に利用することが可能であるほか、請求項5と同様の作用を達成することができる。
請求項7の圧縮機であれば、固定子鉄心として、可動子の側に開いたE字形を有し、E字形の真中の水平な辺が間に非磁性体を介して2個に分断されているものを採用するのであるから、独立した固定子でありながら、巻線が共用できるため、請求項6に比べれば巻線抵抗が若干増大するものの、簡単な機構にて2つの独立した公転機構を持つことができ、また、力発生に寄与しない固定子鉄心を削減することができるので、低コスト、軽量化が可能であり、さらに、2つの可動子の間に、圧縮機構や自転を阻止する機構等を設けることも可能であるほか、請求項6と同様の作用を達成することができる。
【0036】
請求項8の圧縮機であれば、固定子鉄心として、可動子に対向する部分に複数の歯を有し、それぞれの歯は、巻線が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなるものを採用し、可動子として、固定子の歯に対応した部分に永久磁石の磁極を形成してなるものを採用し、
可動子は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置され、2つの可動子を互いに逆位相で公転運動させるべく、それぞれに磁極の極性が互いに反対に設定されているのであるから、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることができ、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、固定子鉄心を全て一体化して、固定子の保持を容易にできるほか、請求項7と同様の作用を達成することができる。
【0037】
請求項9の圧縮機であれば、2つの可動子に、それぞれ、圧縮機構の可動部を設けているので、圧縮機構を2つ持つことにより、吸入、吐出のタイミングをずらせて、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできるため、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力はさらに増大し、風損等を低減でき、また、互いの可動スクロールを対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにして、スラスト軸受損失を大幅に低減することができるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0038】
請求項10の圧縮機であれば、2つの可動子の、それぞれ対向した部分に圧縮機構の可動部を設け、両方の可動部を公転させることにより圧縮動作を行わせるのであるから、圧縮機構の両側とも可動とすることにより、それぞれの公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力はさらに増大させ、風損等を低減でき、また、圧縮機構が1つであるため、図示効率を向上させ、圧縮機全体としての効率をも向上させることができるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0039】
請求項11の圧縮機であれば、可動子の端部に軸受を介してクランク軸を設け、自転可能なバランスウエイトを設けているので、静バランス、動バランスを共にとることができ、振動、騒音を低減できるほか、請求項2から請求項10の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0040】
請求項12の圧縮機であれば、圧縮機構としてスクロールを採用するのであるから、圧縮力を圧縮の1サイクルの中でほぼ均一にすることができ、必要吸引力を小さくできるため、機構を小型化できるとともに、振動、騒音を低減できるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0041】
請求項13の圧縮機であれば、圧縮機構がスイングであるから、圧縮機構において、ブレードとローラーとを一体化でき、摺動部を減少させることができるとともに、圧縮の漏れが低減させることができ、圧縮機効率を向上させることができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0042】
請求項14の圧縮機であれば、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るブレードとスイングブッシュとからなるものを採用するのであるから、ブレードをスイングブッシュにより保持させることにより、ピストンのスイングのみを可能とし、不要な自転を阻止することができ、特別な自転阻止機構を不要にできるほか、請求項13と同様の作用を達成することができる。
【0043】
請求項15の圧縮機であれば、圧縮機構としてロータリーを採用しているので、ローラーの加工を容易にでき、かつ、ローラーが自転しないため、ローラーとベーンの摺動損も小さく、ロータリーの利点である構造のシンプルさ、形状のコンパクトさとともに、公転機構の良さを十分に生かすことができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0044】
請求項16の圧縮機であれば、自転を阻止する機構として圧縮室を仕切るベーンと可動ピストンのベーンに当接する部分に設けられた凹部とからなるものを採用しているので、ローラーの形状の工夫のみで自転を阻止することができ、特別な部品を必要とせず、自転の阻止を達成することができるほか、請求項15と同様の作用を達成することができる。
【0045】
請求項17の圧縮機であれば、冷媒として分子中に塩素を含まない冷媒を用いているので、圧縮の圧力を必要とするこの冷媒を採用するに当たって、小型で高出力の公転機構は好適であり、また、回転を公転に変換する機構が不要のため、摺動部を減少させることができ、仮に塩化鉄膜の発生がないため潤滑の低下が起こったとしても、摺動部が少ないため、キャピラリーチューブのつまりを発生しにくくできるほか、請求項1から請求項16の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の圧縮機の実施の形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
この発明の圧縮機に組み込まれる公転モータは、図1および図2に示すように、固定子鉄心11に巻線12を施してなり、巻線12に流れる電流により励磁される固定子1と、永久磁石22および可動子鉄心21からなり、固定子1の巻線に流れる電流との相互作用で固定子1の極に吸引されながら公転する可動子2とを有している。そして、作用する吸引力としては、固定子内周面および可動子外周面に対して法線方向の力をそのまま利用している。
【0047】
なお、51は圧縮機のハウジング、52は圧縮室を形成するケーシング、53は冷媒吸入管、54は冷媒吐出管である。
【0048】
固定子鉄心11は、可動子2の側に開いたE字形であり、E字形の真中の水平な辺11cに巻線12が施されている。したがって、巻線12は、E字形の真中の水平な辺11cの上下に収納されるため、固定子鉄心11の外部には巻線12が無く、圧縮機の枠への固定等が容易であり、また、巻線12と機構部との絶縁距離を意識しなくてもよいため、圧縮機を小型化できる。
【0049】
また、可動子2は、軸方向に、可動子鉄心21、永久磁石22、可動子鉄心21の順に配置してなるものであり、この構成の可動子2を軸方向に2個、所定距離を介在させて配置している。そして、可動子2のそれぞれの可動子鉄心21は、少なくとも固定子鉄心11の内周側に突出した部分に対向している。2層の永久磁石(両可動子2の永久磁石)22は、ともに軸方向に、かつ、互いに同一方向に磁化されている。この結果、2つの可動子2は互いに逆位相で公転運動する。2つの可動子2の間には、自転を阻止する機構としての非磁性体のオルダム継ぎ手3が配置されている。このオルダム継ぎ手3は、スラスト軸受としての働きをも有している。2つの可動子2の間は、互いに異なる磁極面が対向しているため、近接させ、または、磁性体を介在させれば、磁束が2つの可動子間で短絡してしまうので、磁束短絡を防止するために、ある程度磁気的に離している。
【0050】
それぞれの可動子2の互いに対向していない側の端部には、可動スクロール4が設けられている。それぞれの可動子2と可動スクロール4とは直結され、同一の軌道で公転運動する。
【0051】
圧縮機構を2つ持つことにより、吸入、吐出のタイミングをずらせることができ、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできるため、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力はさらに増大し、風損等を低減できる。また、可動スクロール4を互いに対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにできるため、スラスト軸受損失を大幅に低減できる。ただし、圧縮機構が2つになるということは、圧縮機構の漏れが増加することにもつながるため図示効率は低下する傾向にある。この図示効率の低下を抑制するためには、後述するように、両方のスクロール4が回転する方式を採用すればよい。
【0052】
固定子1の1つの極に着目すると、仮に、所定の方向に電流を流したとき、E字形の固定子鉄心11の真中の水平な辺11cから、磁束が発生し、上部の可動子2の永久磁石22は順方向に磁化されているため、吸引力を発生し、下部の可動子2の永久磁石22は逆方向に磁化されているため、反発力が発生する。180°対称位置にある固定子1の極は、逆で、上部の可動子2には反発力が、下部の可動子2には吸引力が働く。これにより、2つの可動子2は、公転軸を中心にして、互いに対称となるような位置に存在することになる。
【0053】
それぞれの固定子1の極を回転したい方向に、90°ずつ位相ずらした電流を流すことにより、順次、発生する吸引力および反発力の位置が回転し、その力によって可動子2を逆位相に公転運動させることができる。なお、実際の通電は、可動子2が固定子極に最接近しているときに吸引力を発生させたのでは、可動子2は停止してしまうので、可動子2の最接近位置にくらべ、幾分位相を進める必要がある。具体的には、機械角で45°〜90°程度進めると良い。ここで、可動子2に働く力は、遠心力と磁気吸引力である。高速運転時ほど遠心力が大きくなるため、電流の位相をより進める必要があるといえる。図1および図2は、簡単のため、電流位相を進めない状態を示している。
【0054】
次いで、図3を用いて、スクロールの作動について説明する。
【0055】
図3は、上部の可動子2に設けられたスクロール部4で切断して上から見た図であり、磁極は、固定子1の上部の極を示している。したがって、可動子2の極性はN極である。また、電流の位相は45°進んでいると仮定している。
【0056】
外周部から二つの渦巻の間にはさまれた一対の対称の三日月形の部分に吸い込まれたガスは、公転が進んで内側に移行すると共に次第に容積を減じて圧力が高まり、真中の穴から吐出される。例えば、0°においては、可動スクロール4は、0°の位置にあるため、0°から反時計方向に移動させる必要がある。そこで、0°から反時計方向に進んだ方向、仮に45°の方向に吸引力が発生するように固定子1を励磁する。この吸引力は、可動子2が回転ではなく公転であるので、接線力ではなく、法線力に近い力である。ここで、必要な吸引力は、可動子2を冷媒の膨張しようとする力に抗して、移動させなければならない力であるから、圧力や公転速度に応じて電流の位相や大きさは決められるべきである。
【0057】
本実施形態の利点は、巻線12がほぼ固定子鉄心11に囲まれているため、巻線12に流れる電流により、磁束が有効に固定子鉄心11に流れることであり、例えば、固定子1を固定する枠が磁性体であっても磁束の漏れが発生することなく、少ない電流で可能な限り大きい磁化力を得ることができる。なお、E字形の固定子鉄心11の鉛直な辺11v、および、上下の水平な辺11u、11bの幅は、固定子鉄心11に流れる磁束量を考えると、E字形の固定子鉄心11の真中の水平な辺11cの約半分あればよい。
【0058】
巻線12は、固定子1がそれぞれ独立であるため、固定子鉄心11を回転させながら行うことも可能である。この場合、巻線12として平角線やシートコイルを採用することも可能であり、巻線12の占積率を極めて高くすることができる。巻線12として通常の円断面のコイルを採用した場合であっても、十分制御して巻線すれば、線のねじれが無い分、整列巻が容易であり、占積率を高くすることは可能である。巻枠に整列巻したコイルを固定子鉄心11に挿入してもよい。
【0059】
また、固定子1の各極は、磁気的に絶縁されて存在し、それぞれ独立した磁路を形成する。しかし、それだけでは、固定子1の各極の位置が決まらないので、独立した固定子1の各極は、非磁性体にて機械的に保持している。機械的な接続手段として、巻線12の施されていない固定子鉄心11の外周部にリング状の非磁性体を接続すればよく、具体的には、圧縮機の場合であれば、シェルの中に、焼き嵌めすればよい。また、固定子1の上下をリング状の非磁性体ではさんでもよい。
【0060】
ここで、固定子の各極は仮に磁性体で保持されたとしても、特別、悪影響は生じない。
【0061】
なお、永久磁石22は、円板形状を想定して説明したが、必要な磁束量に応じて、平板でもよく、複数の平板形状の磁石を並べてもよい。
【0062】
可動子2の形状は円筒形としたが、固定子1と可動子2との間に、運動方向に直交する面が対向し、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させる形状としてもよい。すなわち、固定子内周面および可動子外周面が平面で対向していたり、または、凹凸形状にて対向していてもよい。
【0063】
上記構成によれば、小型にて大きな力を発生することができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させることができ、効率を向上させることができる。また、同一形状の可動子2、可動スクロール4を対称位置に配置するため、静バランスがとれ、振動、騒音を低減できる。さらに、動バランスをとることが必要であれば、クランク軸を介してバランスウエイトを設けても良いが、せっかく簡素化した機構が複雑化してしまう。そこで、圧縮機構の固定部分(固定スクロール)および可動子2の保持機構を含む固定子1をばね等の弾性体で保持することにより、可動子2の公転運動と逆位相に固定子1を移動させるようにすれば、可動子2の運動にあわせて固定子1が反対方向に動くことにより、バランスをとることができる。このとき、固定子1と可動子2は接触せず、微小なエアギャップを常に保っている必要があるが、これにより、固定子1と可動子2の間の摩擦による損失をなくすことができる。特に、固定子1を含む系は、可動子2と比べて重いため、少ない移動量でバランスをとることが可能である。
【0064】
なお、この実施形態の圧縮機は、塩素を含まない代替冷媒、自然冷媒に適している。代替冷媒、自然冷媒は、圧縮の圧力を必要とするため、小型で高出力の公転機構は好適である。また、回転を公転に変換する機構が不要のため、摺動部が減少する。仮に塩化鉄膜の発生がないため潤滑の低下が起こったとしても、摺動部が少ないため、キャピラリーチューブのつまりを発生しにくくすることができる。ここで、代替冷媒、自然冷媒としては、HFC、CO2等が提示できる。
【0065】
(実施形態2)
図4はこの発明の圧縮機の他の実施形態を示す概略縦断面図である。この圧縮機を、実施形態1の圧縮機と比べると、可動子2の構成は同一で、固定子鉄心11は、可動子2の側に開いたE字形をしており、E字形の真中の水平な辺11cが間に非磁性体11nを介して2個に分断されているが、巻線方式は同一である。つまり、2つの可動子2の間は、吸引力を活用するわけではないので、それに対向した部分も、固定子鉄心11を設けず、隙間としたものである。従って、固定子巻線12は、隙間をまたいで巻回されることになる。
【0066】
また、2つの可動子2の間には、それぞれと連結されたスクロール歯4を設け、それぞれが公転運動をするようにしている。これにより、例えば、一方が固定スクロールである場合と比べて、それぞれのスクロール歯4の公転半径を半分とすれば、相対運動の公転半径は同一となるため、公転の移動量を小さくすることができる。この結果、エアギャップを小さく取ることができ、また可動子2の移動速度を小さくすることができるため風損や機械損を低減することができる。また、可動スクロール同士は、距離を適当に置けば、吸引力が発生するため、2つのスクロールを押さえる力にも利用できる。また、振動、騒音、また、軸受の損失に関しても優れている。さらに、図示効率も向上する。
【0067】
これで静バランスはとれるわけであるが、動バランスをとるために、この実施形態では、可動子端部に軸受62を介してクランクシャフト61を設け、クランクシャフト61には自転可能なバランスウエイト63を設けている。そして、可動子位置と反対位置にバランスウエイト63がくるように固定してある。なお、バランスウエイト63は、2つの可動子2の両方に設ける必要がある。
【0068】
これらの可動スクロール4を、図5に示すように、両歯型の固定スクロール41を介して配置すれば、スクロールが2つあることになり、実施形態1の構成と同一の作用、効果を達成することができる。
【0069】
なお、分割した固定子鉄心11に、全く独立した巻線12を施してもよい。また、巻線12を全く独立とすることにより、反発力を利用せず、吸引力のみを利用することもできる。
【0070】
(実施形態3)
図6、図7、図8に示す圧縮機の固定子鉄心11は、可動子2に対向する部分に複数の歯13を有し、それぞれの歯13は、巻線12が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなり、可動子2は、固定子1の歯13に対応した部分に永久磁石22の磁極を形成してなる。また、可動子2は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定距離を介在させて配置され、それぞれに磁極の極性を互いに反対とすることにより、2つの可動子2を互いに逆位相で公転運動させる。
【0071】
固定子1は、3相通電のブラシレスモータに用いられる6スロットの集中巻のごとく3相巻線されている。
【0072】
可動子2は、それぞれの固定子1の極に対応して、N極、S極交互に磁極を形成している。すなわち、対向する固定子1の極が可動子2の磁極と反対になれば吸引力を、同一になれば反発力を発生することになる。
【0073】
可動子2は、円環形状の可動子鉄心に、ラジアル方向に長い永久磁石22を埋設してなる。永久磁石22は、接線方向に、交互に磁化されている。
【0074】
3相の正弦波電流を流せば、固定子1の極のうち、少なくとも隣接した2極はそれぞれ対称に磁化される。例えば、N極に磁化された固定子1の極にS極の可動子磁極が対向し、その隣では、S極に磁化された固定子1の極にN極の可動子磁極が対向していれば、その2つの極が吸引力を発生させることになる。しかしながら、他方の可動子2は、永久磁石22の磁化方向が逆となるため、反発力を発生する。これにより、2つの可動子2を互いに逆位相で公転運動させることができる。
【0075】
この構成の圧縮機を、実施形態1および実施形態2の圧縮機と比べると、永久磁石22の数が増加し、全ての永久磁石22の磁束が吸引力および反発力に活用できるわけではない。しかしながら、固定子鉄心11が一体化しているので、製造工程や固定等の扱いを容易にすることができる。また、発生すべき力によっては、永久磁石を省略して、電磁石と鉄との吸引力のみを利用することも可能である。
【0076】
次いで、圧縮機構について説明する。
【0077】
2つの可動子2の間には、非磁性体のスペーサ7が配置され、このスペーサ7はスラスト軸受としての働きをも有する。2つの可動子2の間は、互いに異なる磁極面が対向するため、近接させ、または、磁性体を介在させれば、磁束が2つの可動子間で短絡してしまう。したがって、ある程度磁気的に離しておく必要がある。また、図7に示す状態から図8に示す状態へ、可動子2は時計方向に移動する。
【0078】
それぞれの可動子2の互いに対向していない側の端部には、可動ピストン8が設けられている。それぞれの可動子2と可動ピストン8とは直結され、同一の軌道で公転運動をする。
【0079】
圧縮機構を2つ持っているので、吸入、吐出のタイミングをずらせば、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできる。この結果、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力をさらに増大させることができ、風損等を低減することができる。また、両可動ピストン8を互いに対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにできるため、スラスト軸受損失を大幅に低減できる。
【0080】
なお、実際の通電は、可動子2が固定子極に最接近しているときに吸引力を発生させたのでは、可動子2は停止してしまうので、可動子2の最接近位置にくらべ、幾分位相を進める必要がある。ここで、可動子2に働く力は、遠心力と磁気吸引力である。高速運転時ほど遠心力が大きくなるため、電流の位相をより進める必要がある。図6から図8においては、簡単のため、電流位相を進めない状態を示している。
【0081】
図9は、圧縮機構をスイングとした場合とロータリーとした場合の動作を説明する図である。
【0082】
圧縮機構をスイングとしたとき{図9中(A)〜(D)参照}、ブレードとローラーが一体化しているため、摺動部が減少するとともに、圧縮の漏れが低減するため、圧縮機効率を向上できる。また、ブレードをスイングブッシュが保持することにより、ピストンのスイングのみを可能とし、不要な自転を阻止することが可能となり、特別な自転阻止機構を不要にすることができる。
【0083】
なお、圧縮機構をロータリーとした場合は{図9中(E)〜(H)参照}、ローラーの加工が容易であり、かつ、ローラーが自転しないため、ローラーとベーンの摺動損も小さく、ロータリーの利点である構造のシンプルさ、形状のコンパクトさとともに、公転機構の良さを十分に生かすことが可能である。また、図10に示すように、ローラーの、ベーンが当接する部分に凹部を設ければ、ローラーの自転防止にも役立つ。
【0084】
(実施形態4)
図11はこの発明の圧縮機のさらに他の実施形態を示す概略縦断面図である。
【0085】
図11に示す圧縮機は、1つのみの可動子2を有し、様々なバリエーションから選択された通電方式を採用している。例えば、吸引力のみを発生させるようにする場合には、巻線12に流れる電流は1方向のみでよい。
【0086】
そして、可動子2のバランスをとるために、例えば、可動子2を、軸受62により支持されたクランク軸61の一方の端部に接続し、クランク軸61の所定位置にバランスウエイト63を自転自在に接続している。クランク軸62を支持するために軸受62が必要となるので、損失が多くなるが、クランク軸61により公転軌道を規制することができる。
【0087】
なお、この発明の圧縮機は上記の実施形態に限定されず、例えば、可動子2の磁石の数、固定子1の極数、可動子2および固定子1の形状等を任意に設定することが可能であるほか、この発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことが可能である。また、永久磁石を用いなくてもよい。
【0088】
これらの圧縮機は、小形化でき、高効率であるため、近年省エネルギー化が要求されているエアコンや冷蔵庫に適している。また、軽量化できるため、自動車用のエアコンにも好適である。
【0089】
また、これらの圧縮機は、ポンプとは異なり、機構部品を低減して、冷媒に対する信頼性を向上させることができる。さらに、圧縮機は、ポンプとは異なり、大きな力を必要とするため、これらの圧縮機を採用することは有利であり、1サイクル中に必要とされる力が変動するので、これらの圧縮機により、力の変動に十分に追従することができる。
【0090】
【発明の効果】
請求項1の発明は、小型にて大きな力を発生させることができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適であり、また、低速時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率を実現することができるという特有の効果を奏する。
【0091】
請求項2の発明は、小型にて大きな力を発生させることができ、直接公転運動を行うため、機械損、風損を減少させ、効率を向上させることができ、特に高速運転に好適であり、また、低速時にも、大きな吸引力を発生させることができ、広い運転領域で高効率を実現することができるという特有の効果を奏する。
【0092】
請求項3の発明は、可動子と固定子のみでバランスをとるため、バランスのための特別な部品を必要とせず、機構を簡素化できるほか、請求項2と同様の効果を奏する。
【0093】
請求項4の発明は、固定子と可動子間の吸引力により、固定子も可動子も動くことが可能であり、同一の力であれば、質量に応じて移動量が決まるため、自動的にバランスをとることができるほか、請求項3と同様の効果を奏する。
【0094】
請求項5の発明は、可動子そのものがバランスをとっているため、簡単な機構で、特に静バランスをとることができるほか、請求項2と同様の効果を奏する。
【0095】
請求項6の発明は、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることが可能であり、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、永久磁石の磁束が、全て、吸引力を発生している固定子極に吸引されるため、永久磁石の磁束を有効に利用することができるほか、請求項5と同様の効果を奏する。
【0096】
請求項7の発明は、独立した固定子でありながら、巻線が共用できるため、巻線抵抗が若干増大するものの、簡単な機構にて2つの独立した公転機構を持つことができ、また、力発生に寄与しない固定子鉄心は削減することができるので、低コスト、軽量化を達成することができ、さらに、2つの可動子の間に、圧縮機構や自転阻止機構等を設けることもできるほか、請求項6と同様の効果を奏する。
【0097】
請求項8の発明は、単一の固定子および巻線で、一方の可動子には吸引力、他方の可動子には反発力を働かせることができ、可動子は2つ要るものの、1つの固定子にて、2つの可動子を逆位相にて公転運動させることができ、また、固定子鉄心は全て一体化しているため、固定子の保持を容易に達成できるほか、請求項7と同様の効果を奏する。
【0098】
請求項9の発明は、圧縮機構を2つ持つことにより、吸入、吐出のタイミングをずらせ、振動、騒音を低減できるとともに、それぞれの圧縮機構の容量を小さくできるため、公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力をさらに増大させ、風損等を低減することができ、また、互いの可動スクロールを対称位置に設けることにより、軸方向の推力をゼロにできるため、スラスト軸受損失を大幅に低減できるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の効果を奏する。
【0099】
請求項10の発明は、圧縮機構の両側とも可動とすることにより、それぞれの公転運動の量(公転半径等)を小さくすることができ、エアギャップを小さくできるために吸引力をさらに増大させ、風損等を低減することができ、また、圧縮機構は1つであるため、図示効率を向上させ、圧縮機全体としての効率を向上させることができるほか、請求項5から請求項8の何れかと同様の効果を奏する。
【0100】
請求項11の発明は、静バランス、動バランスを共にとることができ、振動、騒音を低減できるほか、請求項2から請求項10の何れかと同様の効果を奏する。
【0101】
請求項12の発明は、圧縮力を圧縮の1サイクルの中でほぼ均一にできるため、必要吸引力を小さくでき、機構を小型化できるとともに、振動、騒音に優れた圧縮機を提供できるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0102】
請求項13の発明は、圧縮機構において、ブレードとローラーとを一体化しているため、摺動部を減少できるとともに、圧縮の漏れを低減できるため、圧縮機効率を向上させることができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0103】
請求項14の発明は、ブレードをスイングブッシュにより保持させることにより、ピストンのスイングのみを可能とし、不要な自転を阻止することができ、特別な自転阻止機構を不要にできるほか、請求項13と同様の効果を奏する。
【0104】
請求項15の発明は、ローラーの加工が容易であり、かつ、ローラーが自転しないため、ローラーとベーンとの摺動損を小さくでき、ロータリーの利点である構造のシンプルさ、形状のコンパクトさとともに、公転機構のよさを十分に生かすことができるほか、請求項2から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0105】
請求項16の発明は、ローラーの形状の工夫のみで自転を阻止することができ、特別な部品を必要とせず、自転の阻止を達成することができるほか、請求項15と同様の効果を奏する。
【0106】
請求項17の発明は、圧縮の圧力を必要とするこの冷媒を採用するに当たって、小型で高出力の公転機構は好適であり、また、回転を公転に変換する機構が不要のため、摺動部を減少させることができ、仮に塩化鉄膜の発生がないため潤滑の低下が起こったとしても、摺動部が少ないため、キャピラリーチューブのつまりを発生しにくくできるほか、請求項1から請求項16の何れかと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の圧縮機の一実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図2】図1の圧縮機の横断面図である。
【図3】スクロール圧縮機構の動作を説明する図である。
【図4】この発明の圧縮機の他の実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図5】可動スクロールの配置例を示す縦断面図である。
【図6】この発明の圧縮機のさらに他の実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図7】上下の可動子の状態の一例を示す横断面図である。
【図8】図7の状態から僅かに移動した上下の可動子の状態を示す横断面図である。
【図9】圧縮機構をスイングとした場合とロータリーとした場合の動作を説明する図である。
【図10】ローラーの自転防止機構の一例を概略的に示す横断面図である。
【図11】この発明の圧縮機のさらに他の実施形態を概略的に示す中央縦断面図である。
【図12】4個の固定子および4個の電機子を使用した磁気偏心運動モータの部分斜視図である。
【図13】制動要素がモータの固定子をモータ函体へ接続してモータの動作により生じる横力を制動する磁気偏心運動モータの部分断面斜視図である。
【符号の説明】
1 固定子
2 可動子
3 オルダム継ぎ手
4 可動スクロール
11 固定子鉄心
11c 真中の水平な辺
11n 非磁性体
12 巻線
13 歯
21 可動子鉄心
22 永久磁石
61 クランク軸
62 軸受け
63 バランスウエイト
Claims (17)
- 固定子(1)と、固定子(1)の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子(2)と、可動子(2)の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子(2)に直結された圧縮機構の可動部分(4)とからなる圧縮機において、可動子(2)と固定子(1)とは運動方向に直交する面を対向させ、固定子(1)は、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるものであることを特徴とした圧縮機。
- 固定子(1)と、固定子(1)の内側または外側で移動可能な状態で保持された可動子(2)と、可動子(2)の運動軌道と同一の軌道で運動するように可動子(2)に直結された圧縮機構の可動部分(4)とからなる圧縮機において、可動子(2)と固定子(1)とは運動方向に直交する面を対向させ、その面に対して略垂直方向に吸引力を発生させて、自由な自転を阻止した公転運動を行わせるべく固定子(1)に対する通電を制御する制御手段を含むことを特徴とした圧縮機。
- バランスをとるべく、可動子(2)の公転運動とは逆位相に固定子(1)を移動させる固定子移動手段をさらに含む請求項2記載の圧縮機。
- 前記固定子移動手段は、可動子(2)の公転運動と逆位相に固定子(1)を移動させるべく、圧縮機構の固定部分および可動子(2)の保持機構を含む固定子(1)を保持する弾性体である請求項3記載の圧縮機。
- 可動子全体としてバランスをとるべく、互いに逆位相で公転運動する2つの可動子(2)を設けた請求項2記載の圧縮機。
- 固定子鉄心(11)は、可動子(2)の側に開いたE字形を有し、E字形の真中の水平な辺(11c)に巻線(12)が施され、かつ、軸方向に、可動子鉄心(21)、永久磁石(22)、可動子鉄心(21)の順に配置した可動子(2)を軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置し、それぞれの可動子鉄心(21)は、少なくとも固定子鉄心(11)の内周部に突出した部分に対向し、また、2つの可動子(2)を互いに逆位相で公転運動させるべく、2層の永久磁石(22)は、ともに軸方向に、かつ、それぞれ同一方向に磁化されている請求項5記載の圧縮機。
- 固定子鉄心(11)は、可動子(2)の側に開いたE字形を有し、E字形の真中の水平な辺(11c)が間に非磁性体(11n)を介して2個に分断されている請求項6記載の圧縮機。
- 固定子鉄心(11)は、可動子(2)に対向する部分に複数の歯(13)を有し、それぞれの歯(13)は、巻線が施された状態で、円周方向に略等間隔に設けられた状態で円環にて接続されてなり、可動子(2)は、固定子(1)の歯(13)に対応した部分に永久磁石(22)の磁極を形成してなり、
可動子(2)は、1つの固定子内で、軸方向に2個、所定の距離を介在させて配置され、2つの可動子(2)を互いに逆位相で公転運動させるべく、それぞれに磁極の極性が互いに反対に設定されている請求項7記載の圧縮機。 - 2つの可動子(2)に、それぞれ、圧縮機構の可動部(4)を設けた、請求項5から請求項8の何れかに記載の圧縮機。
- 2つの可動子(2)の、それぞれ対向した部分に圧縮機構の可動部(4)を設け、両方の可動部(4)を公転させることにより圧縮動作を行わせる請求項5から請求項8の何れかに記載の圧縮機。
- 可動子(2)の端部に軸受(62)を介してクランク軸(61)を設け、クランク軸(61)の所定位置に自転可能なバランスウエイト(63)を設けた、請求項2から請求項10の何れかに記載の圧縮機。
- 圧縮機構がスクロールである請求項2から請求項11の何れかに記載の圧縮機。
- 圧縮機構がスイングである請求項2から請求項11の何れかに記載の圧縮機。
- 自転を阻止する機構が圧縮室を仕切るブレードとスイングブッシュである請求項13記載の圧縮機。
- 圧縮機構がロータリーである請求項2から請求項11の何れかに記載の圧縮機。
- 自転を阻止する機構が圧縮室を仕切るベーンと可動ピストンのベーンに当接する部分に設けられた凹部である請求項15記載の圧縮機。
- 冷媒として分子中に塩素を含まない冷媒を用いた、請求項1から請求項16の何れかに記載の圧縮機。
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JP2002244218A JP2004084511A (ja) | 2002-08-23 | 2002-08-23 | 圧縮機 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007120421A (ja) * | 2005-10-28 | 2007-05-17 | Daikin Ind Ltd | スクロール圧縮機 |
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2002
- 2002-08-23 JP JP2002244218A patent/JP2004084511A/ja active Pending
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