JP2004083837A - オーバーラミネート用粘着シート - Google Patents
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Abstract
【課題】基材と粘着剤が積層されたオーバーラミネート用粘着シートにおいて、被着体に貼付する際に加熱ロールが不要であり、被着体に貼付した際にオーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難い透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートを提供することにある。
【解決手段】基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤が、応力−歪み曲線において、温度23℃、湿度50%の環境下、引っ張り速度300mm/minにおける100%歪み時の応力値が6N/cm2以下であることを特徴とするオーバーラミネート用粘着シートにより、貼付した際に気泡が生じ難い透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートを提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤が、応力−歪み曲線において、温度23℃、湿度50%の環境下、引っ張り速度300mm/minにおける100%歪み時の応力値が6N/cm2以下であることを特徴とするオーバーラミネート用粘着シートにより、貼付した際に気泡が生じ難い透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートを提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被着体に貼付した際に、オーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難く透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートに関する。
【0002】
【従来技術】
粘着シートは商業用から家庭用まで広範囲にわたってラベル、ステッカー等の形で使用されている。これらの粘着シートには、被着体に貼付した際に、粘着シートと被着体との間に気泡が生じないことが要求される。気泡が存在すると、透明性等の美観性が損なわれたり、被着体への粘着剤層の接触面積が低下し充分な接着特性を確保し難くなる。
特に、印刷物の印刷面の保護あるいは高級感や光沢感を出す目的で、粘着シートを印刷面上等に貼り合わせて使用されるオーバーラミネート用粘着シートでは、微小な気泡でも透明性が大きく損なわれるため、気泡が生じないことが非常に重要である。
【0003】
粘着シートと被着体との間に生じる気泡を抑制する方法として、ホットメルト接着剤を使用することで被着体との密着性を上げる方法が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし、ホットメルト接着剤を塗工したシートを用いるためには、接着剤を溶融する熱源が必要であり、被着体によっては熱により変形や変色したりするものも有り、被着体の材質を考慮したラミネート温度の条件等の設定や管理が必要となり、すべての被着体に適用するのは難しかった。また、設備の面からも加熱ロールが必要であり、安全や省エネルギーの面からも容易に使用することは困難だった。
【特許文献1】
特開2001−129932号公報
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、基材と粘着剤が積層されたオーバーラミネート用粘着シートにおいて、被着体に貼付する際に加熱ロールが不要であり、被着体に貼付した際にオーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難い透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、オーバーラミネート用粘着シートを被着体に貼付した際の粘着シートと被着体との間に生じる気泡について鋭意研究を重ねた結果、基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤の応力−歪み曲線における、特定の歪み時の応力値が、特定値以下である粘着剤から構成される粘着シートにより上記課題が達成されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
オーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に生じる気泡の発生要因としては、下記の要因を挙げることができる。
▲1▼ 被着体が寸法変化や変形した際に生じる粘着シートの浮き剥がれ。
これは、被着体に接着している粘着剤層が、被着体の寸法変化や変形に追従できないことにより発生する。温度ショック等により被着体が伸縮して発生した被着体の寸法変化や変形に粘着剤層も同時に伸縮して追従することで、浮き剥がれは抑制される。
【0007】
▲2▼ 粘着シートを被着体に貼付する際の気泡の巻き込み。
これは、被着体の凹凸に対して粘着剤層が追従しにくいことや、粘着剤層自身の初期凹凸が被着体面に対して追従しにくいことが原因として挙げられる。これらは、貼付時に被着体と粘着剤層との接触が充分に進まないことや、貼付後も経時で接触が進行しないことにより発生する。
【0008】
本発明者は、これらの気泡発生は、伸縮しやすい粘着剤を使用して、特に低歪み域での粘着剤層の変形のしやすさを向上させることで、気泡が生じ難くなることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤が、応力−歪み曲線において、温度23℃、湿度50%の環境下、引っ張り速度300mm/minにおける100%歪み時の応力値が6N/cm2以下であることを特徴とするオーバーラミネート用粘着シートを提供する。
【発明の実施の形態】
【0009】
(用途)
本発明の粘着シートは、ラベル、ステッカー等の形で使用される、印刷物の印刷面の保護あるいは高級感や光沢感を出す目的で使用されるオーバーラミネート用粘着シート用である。
【0010】
(印刷面の種類)
本発明のオーバーラミネート用粘着シートを貼付する面が印刷面である場合としては、インキを印刷した紙基材またはフィルム基材等が挙げられる。インキとしては、蒸発乾燥型、酸化重合型、二液反応型、加熱硬化型、UV硬化型、EB硬化型、IR硬化型等が挙げられる。印刷方式としては、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。特に、本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、インキの凹凸差が大きいスクリーン印刷した印刷面に対して非常に有用である。
【0011】
(粘着シートの構成)
本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、基材と粘着剤の積層を基本構成とする。粘着シートを印刷加工機等で印刷したり、貼付したりする場合には、粘着剤層に剥離紙を積層した構成とすることで、粘着シートを送り出してから印刷や印刷物等の被着体に貼付するまでの間、粘着剤層に支持ロール等の異物が接触しないよう保護することができる。
【0012】
(基材)
前記粘着シートで使用される基材としては、フィルム、不織布、紙等が挙げられる。フィルムの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、セロファン等が挙げられる。また、不織布の材質としては、パルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。また、紙としては、上質紙、樹脂コート紙等が挙げられる。特に、オーバーラミネート用粘着シートには、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンのフィルムが適しており、基材の厚みは8〜25μm、好ましくは12〜20μmが好適に用いられる。
【0013】
(粘着剤の応力−歪み曲線)
粘着剤の応力−歪み曲線とは、粘着剤層にかけた応力と、応力によって粘着剤層が変形しない状態から伸長した変形量(歪み)との関係を示す曲線である。
【0014】
(応力−歪み曲線測定用サンプルの作成)
粘着剤の応力−歪み曲線測定用サンプルの作成は、剥離シート上に粘着剤を塗工し、熱風乾燥機等による処理後、剥離シートを剥離することで得られる。また、基材上に粘着剤を塗工し、熱風乾燥機等による処理の後、粘着剤層を削り取ってサンプルを作成しても良い。粘着剤層が削り難い時は、イソプロピルアルコールや酢酸エチル等の溶剤を粘着剤層に塗布した後削り取り、再度、熱風乾燥機等により処理しても良い。また、粘着剤層の厚みは、薄すぎると測定値の信頼性又は作業性が劣るため、粘着剤層を積層したサンプルを作成しても良い。
【0015】
(応力−歪み曲線測定時の雰囲気)
粘着剤の応力−歪み曲線測定における雰囲気は、特に限定されるものではないが、温度23℃、湿度50%等が挙げられる。また、粘着シートが被着体に貼付されている実際の環境に合わせた条件で測定することが好ましい。
(応力−歪み曲線測定時の引っ張り速度)
粘着剤の応力−歪み曲線の測定における引っ張り速度は、300mm/minで測定した値を用いた。
【0016】
(応力−歪み曲線測定時の歪み範囲)
粘着剤の応力−歪み曲線測定における歪みとは、変形しない状態から伸長した変形量のことである。粘着シートを被着体に貼付した際の粘着シートと被着体との間に生じる気泡の起こり難さを判定する歪み範囲は、600%以下が最も気泡の起こり難さという現象を反映している。600%を超えた場合、粘着シートを被着体に貼付した際の粘着シートと被着体との間に生じる気泡の起こり難さを、応力値で有意差として視認することができない。これは、600%を超えた歪みでは変形量が大きすぎ、被着体の寸法変化や変形、粘着シートの貼付工程や粘着剤の追従等の実際に起こりうる粘着剤層の変形量からかけ離れていくためであると考えられる。さらに、判定する歪み量は、少なすぎると誤差が生じやすいため、5%〜300%が好ましく、5%〜100%が更に好ましい。
【0017】
(応力−歪み曲線測定時の応力)
粘着剤の応力−歪み曲線測定において、前記歪み量における応力値が低いほど、粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難く透明性が優れると判定できる。これは、応力値が低いということは、粘着剤が変形しやすいと考えられ、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤層が追従しやすくなり、気泡発生の要因である浮き剥がれや追従性不足が発生し難くなる。また、粘着剤が変形しやすいと、粘着シート貼付時に被着体と密着しやすくなるため、気泡の巻き込みが少なくなったり、粘着剤層の凹凸があっても貼付時に密着することで気泡として残存し難くなる。さらに、粘着剤が変形しやすいと、貼付時に多少気泡が残存したとしても経時で粘着剤層が被着体に密着していくため、粘着剤として機能し得る範囲で応力が低いことが好ましい。
【0018】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、100%歪み時の応力(M100)が6N/cm2以下であり、好ましくは3〜6N/cm2である。6N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
【0019】
また、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、200%歪み時の応力(M200)が9N/cm2以下が好ましく、更に好ましくは4〜9N/cm2である。9N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
【0020】
さらに、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、300%歪み時の応力(M300)が15N/cm2以下が好ましく、更に好ましくは5〜15N/cm2である。10N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
【0021】
さらに、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、600%歪み時の応力(M600)が50N/cm2以下が好ましく、更に好ましくは20N/cm2以下であり、特に好ましくは8〜20N/cm2である。50N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
以上のことから当然のこととして、600%程度の低い歪みで破断を生じるような粘着剤は好ましくない。
【0022】
さらに、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、最大歪み時の応力は粘着剤として機能し得る範囲でできるだけ高いものを選定することが好ましい。最大歪み時の応力が高いということは、貼付された粘着シートを引き剥がすなどの粘着剤が大きく変形する時の応力が強いということであり、引き剥がしに対する強い抵抗力を有することができる。
【0023】
(粘着剤)
前記粘着剤は、ポリマーの種類として、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系等が挙げられる。また、粘着剤の形態として、溶剤系、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤等の水系、ホットメルト型粘着剤、UV硬化型粘着剤、EB硬化型粘着剤等の無溶剤系等が挙げられる。オーバーラミネート用粘着シートには、耐候性、耐熱性、低臭気性、環境調和性、低コスト性の観点からエマルジョン型のアクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0024】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とするものが適している。(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、主モノマー、凝集性モノマー、官能基含有モノマー等を構成成分とし、公知の重合方法により合成することができる。主モノマーには、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、イソオクチルアクリレート等が挙げられ、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好適である。凝集性モノマーには、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアマイド、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等が挙げられる。官能基含有モノマーには、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアマイド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。さらに必要に応じて、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤や、イソシアネート系、エポキシ系、金属キレート系、メラミン系、オキサゾリン系等の架橋剤を使用しても良い。
【0025】
これらのモノマー量を変化させながら、求める応力−歪み曲線を描く粘着剤に調整していく。一概には言えないが、初期応力値を上昇させるためには、よりTgの高いモノマーを選定したり、凝集性モノマー、官能基含有モノマー、架橋剤量を増加させることにより達成できる。一方、初期応力値を下降させるためには、よりTgの低いモノマーを選定したり、凝集性モノマー、官能基含有モノマー、架橋剤量を低減させたり、連鎖移動剤を添加して共重合体の分子量を減少させることにより達成できる。
【0026】
(粘着剤層の厚み)
粘着剤の厚みは、乾燥後の厚みで5〜200μmが好ましく、5〜50μmがさらに好ましい。特にオーバーラミネート用粘着シートには10〜20μmが好ましい。5μmより薄い場合は、得られる粘着シートと被着体の密着性が不十分となり気泡を生じやすく、又粘着剤が十分被着体の凹凸に追従するように行き渡ることができにくい、一方200μmを超えると、ラベル形状に打ち抜く際の加工性が悪化する。
【0027】
(剥離シート)
剥離シートとしては、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、ポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム等に、剥離剤であるフッソ樹脂やシリコーン樹脂等を塗布したもの等が挙げられる。特に、オーバーラミネート用粘着シート等のように透明性を要求される場合、被着体に貼付する側の粘着剤層の凹凸が大きいと、貼付時にその凹凸に起因した起泡が巻き込まれ透明性が低下するために、ポリエチレンをラミネートした剥離紙を使用し、粘着剤層への剥離紙の凹凸の移転を少なくする必要があった。しかし、本発明の粘着シートでは、多少の凹凸が剥離紙から粘着剤層に移転されても、粘着剤層の低歪みにおける応力が小さいため、簡単に剥離時に発生した粘着層の凹凸面が被着体の面に追従することができる。このため、これまで透明性の観点からオーバーラミネート用粘着シートには使用し難かった平滑性が少ない剥離紙とも組み合わせることができ、多くの種類の剥離シートが使用することが出来るようになった点で本発明のオーバーラミネート用粘着シートは非常に有用である。ここでいう平滑性の少ない剥離紙には、粘着剤層を積層する剥離紙表面の表面粗さが、JISB0601に記載されている十点平均粗さ(Rz)において、基準長さ5mmで5〜40μmが好ましい。
【0028】
(粘着シートの製造方法)
本発明の粘着シートは、例えば、粘着剤を剥離シートに塗工し、乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等による処理を行い、基材を貼り合わせる方法で得られる。また、粘着剤を塗工し、前記処理した剥離シートを基材の両面に貼り合わせる方法を用いても良い。また、粘着剤を基材に塗工し、乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等による処理を行い、剥離シートを貼り合わせる方法でも得られる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
(粘着剤の合成)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水 270部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。撹拌下、ラテムルE−118B(花王社製) 0.8部、過硫酸カリウム 0.1部を添加し、続いて2−エチルヘキシルアクリレート 300部、メチルアクリレート 60部、メチルメタクリレート 32部、メタクリル酸 8部、グリシジルメタクリレート 1部からなる単量体混合物に、ラテムルE−118B 32部と脱イオン水 80部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョンの一部(4部)を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン 508部と過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1%) 60部を各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を75℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。滴下終了後、同温度にて180分間撹拌し、内容物を冷却した。その後、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整し、100メッシュ金網で濾過して粘着剤を得た。
【0030】
(応力−歪み曲線測定用サンプルの作成)
剥離シート(OKB−105NC、王子製紙社製)に乾燥後の厚みが20μmとなるように上記で合成した粘着剤を塗工し、熱風乾燥機を用いて90℃で3分間乾燥させた。23℃で7日間熟成した後、粘着剤層を積層し、厚み0.04cmの試験サンプルを得た。
【0031】
(応力−歪み曲線の測定)
引っ張り試験機(テンシロンRTA−100、オリエンテック社製)に試験サンプルを固定し、23℃、50%の環境下、300mm/minで引っ張ることより得られる100%歪み時の応力値を、粘着剤層の厚み及びサンプル幅から換算してM100を求めた。また、同様にして、200%歪み時の応力値(M200)、300%歪み時の応力値(M300)、600%歪み時の応力値(M600)、900%歪み時の応力値(M900)、最大歪み、最大強度を求めた。
【0032】
(粘着シートの作成)
剥離シート(KA−7G、リンテック社製)に乾燥後の厚みが20μmとなるように上記粘着剤を塗工し、熱風乾燥機を用いて90℃で3分間乾燥させ、ポリプロピレンフィルム(OPU−2 #20、東セロ社製)を貼りあわせ、23℃で7日間熟成することにより粘着シートを作成した。
【0033】
(粘着シートと被着体との間の気泡発生の評価(浮き剥がれ性))
上記粘着シートから剥離シートを剥離し、UVインキで印刷した大日本インキ化学社製ユポUV80FHT−2アオグラに貼付した後45mm×45mmにカットし、剥離シートを剥離して日本ハム社製ロースハムの包材に貼付することより試験サンプルを作成した。この試験サンプルを、90℃の温水で30分間ボイルし、上記粘着シートの浮き剥がれによる気泡発生の有無を目視評価した。
気泡発生が無い場合を○、気泡発生が発生しその気泡発生した面積が面積比で50%未満である場合を△、気泡発生した面積が面積比で50%以上の場合を×と記載した。
【0034】
(粘着シートと被着体との間の気泡発生の評価(巻き込み性))
シール印刷加工機(OPM−W150、恩田製作所)にて、上記粘着シートから剥離シートを剥離し、UVインキで印刷した大日本インキ化学社製ユポUV80FHT−2アオグラに貼付した後45mm×45mmにカットすることにより試験サンプルを作成した。貼付直後の試験サンプルを目視し、上記粘着シートを貼付した際の気泡の巻き込みの有無を評価した。
気泡発生が無い場合を○、気泡発生が発生しその気泡発生した面積が面積比で50%未満である場合を△、気泡発生した面積が面積比で50%以上の場合を×と記載した。
【0035】
(粘着シートと被着体との間の気泡発生の評価(追従性))
上記粘着シートから剥離シートを剥離し、スクリーン印刷した大日本インキ化学社製ユポUV80FHT−2アオグラに貼付することにより試験サンプルを作成した。この試験サンプルを、23℃で1日静置し、上記粘着シートの印刷凹凸面への追従性不足による気泡発生の有無を目視評価した。
気泡発生が無い場合を○、気泡発生が発生しその気泡発生した面積が面積比で50%未満である場合を△、気泡発生した面積が面積比で50%以上の場合を×と記載した。
【0036】
(透明性の評価)
上記浮き剥がれ性、巻き込み性、追従性の評価において、印刷物に透明性が付与されている場合を○、透明性が欠如しておりその面積が面積比で50%未満である場合を△、透明性が欠如しておりその面積が面積比で50%以上の場合を×と目視評価した。
【0037】
(実施例2)
(粘着剤の合成)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水 270部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。撹拌下、ラテムルE−118B(花王社製) 0.8部、過硫酸カリウム 0.1部を添加し、続いて2−エチルヘキシルアクリレート 360部、メチルメタクリレート 28部、メタクリル酸 10部、グリシジルメタクリレート 2部、ラウリルメルカプタン 0.2部からなる単量体混合物に、ラテムルE−118B 32部と脱イオン水80部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョンの一部(4部)を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン 508部と過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1%) 60部を各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を75℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。滴下終了後、同温度にて180分間撹拌し、内容物を冷却した。その後、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整し、100メッシュ金網で濾過して粘着剤を得た。
粘着剤の合成以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し評価を行った。
【0038】
(比較例1)
粘着剤としてSPS−1260(大日本インキ化学社製)とすることと、熟成期間を14日間としたこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し評価を行った。
【0039】
(比較例2)
粘着剤としてSPS−822(大日本インキ化学社製) 100部に対し、MA−25(大日本インキ化学社製) 8部を混合したものとすることと、熟成期間を40℃で2日間としたこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し評価を行った。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果からわかるように、100%歪み時の応力値(M100)が6N/cm2以下である粘着剤から構成される粘着シートを使用した場合、明らかに気泡が生じ難く透明性に優れている。
【発明の効果】
本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、被着体に貼付した際に、オーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難く透明性に優れ、オーバーラミネート用粘着シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粘着シートの好ましい一実施形態を示した断面図である。
【図2】実施例1、2、比較例1、2おける応力−歪み曲線を表したグラフである。
【符号の説明】
1) オーバーラミネート用粘着シートの基材
2) オーバーラミネート用粘着シートの粘着剤層
3) インキ
4) フィルム基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、被着体に貼付した際に、オーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難く透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートに関する。
【0002】
【従来技術】
粘着シートは商業用から家庭用まで広範囲にわたってラベル、ステッカー等の形で使用されている。これらの粘着シートには、被着体に貼付した際に、粘着シートと被着体との間に気泡が生じないことが要求される。気泡が存在すると、透明性等の美観性が損なわれたり、被着体への粘着剤層の接触面積が低下し充分な接着特性を確保し難くなる。
特に、印刷物の印刷面の保護あるいは高級感や光沢感を出す目的で、粘着シートを印刷面上等に貼り合わせて使用されるオーバーラミネート用粘着シートでは、微小な気泡でも透明性が大きく損なわれるため、気泡が生じないことが非常に重要である。
【0003】
粘着シートと被着体との間に生じる気泡を抑制する方法として、ホットメルト接着剤を使用することで被着体との密着性を上げる方法が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし、ホットメルト接着剤を塗工したシートを用いるためには、接着剤を溶融する熱源が必要であり、被着体によっては熱により変形や変色したりするものも有り、被着体の材質を考慮したラミネート温度の条件等の設定や管理が必要となり、すべての被着体に適用するのは難しかった。また、設備の面からも加熱ロールが必要であり、安全や省エネルギーの面からも容易に使用することは困難だった。
【特許文献1】
特開2001−129932号公報
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、基材と粘着剤が積層されたオーバーラミネート用粘着シートにおいて、被着体に貼付する際に加熱ロールが不要であり、被着体に貼付した際にオーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難い透明性に優れるオーバーラミネート用粘着シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、オーバーラミネート用粘着シートを被着体に貼付した際の粘着シートと被着体との間に生じる気泡について鋭意研究を重ねた結果、基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤の応力−歪み曲線における、特定の歪み時の応力値が、特定値以下である粘着剤から構成される粘着シートにより上記課題が達成されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
オーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に生じる気泡の発生要因としては、下記の要因を挙げることができる。
▲1▼ 被着体が寸法変化や変形した際に生じる粘着シートの浮き剥がれ。
これは、被着体に接着している粘着剤層が、被着体の寸法変化や変形に追従できないことにより発生する。温度ショック等により被着体が伸縮して発生した被着体の寸法変化や変形に粘着剤層も同時に伸縮して追従することで、浮き剥がれは抑制される。
【0007】
▲2▼ 粘着シートを被着体に貼付する際の気泡の巻き込み。
これは、被着体の凹凸に対して粘着剤層が追従しにくいことや、粘着剤層自身の初期凹凸が被着体面に対して追従しにくいことが原因として挙げられる。これらは、貼付時に被着体と粘着剤層との接触が充分に進まないことや、貼付後も経時で接触が進行しないことにより発生する。
【0008】
本発明者は、これらの気泡発生は、伸縮しやすい粘着剤を使用して、特に低歪み域での粘着剤層の変形のしやすさを向上させることで、気泡が生じ難くなることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤が、応力−歪み曲線において、温度23℃、湿度50%の環境下、引っ張り速度300mm/minにおける100%歪み時の応力値が6N/cm2以下であることを特徴とするオーバーラミネート用粘着シートを提供する。
【発明の実施の形態】
【0009】
(用途)
本発明の粘着シートは、ラベル、ステッカー等の形で使用される、印刷物の印刷面の保護あるいは高級感や光沢感を出す目的で使用されるオーバーラミネート用粘着シート用である。
【0010】
(印刷面の種類)
本発明のオーバーラミネート用粘着シートを貼付する面が印刷面である場合としては、インキを印刷した紙基材またはフィルム基材等が挙げられる。インキとしては、蒸発乾燥型、酸化重合型、二液反応型、加熱硬化型、UV硬化型、EB硬化型、IR硬化型等が挙げられる。印刷方式としては、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。特に、本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、インキの凹凸差が大きいスクリーン印刷した印刷面に対して非常に有用である。
【0011】
(粘着シートの構成)
本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、基材と粘着剤の積層を基本構成とする。粘着シートを印刷加工機等で印刷したり、貼付したりする場合には、粘着剤層に剥離紙を積層した構成とすることで、粘着シートを送り出してから印刷や印刷物等の被着体に貼付するまでの間、粘着剤層に支持ロール等の異物が接触しないよう保護することができる。
【0012】
(基材)
前記粘着シートで使用される基材としては、フィルム、不織布、紙等が挙げられる。フィルムの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、セロファン等が挙げられる。また、不織布の材質としては、パルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。また、紙としては、上質紙、樹脂コート紙等が挙げられる。特に、オーバーラミネート用粘着シートには、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンのフィルムが適しており、基材の厚みは8〜25μm、好ましくは12〜20μmが好適に用いられる。
【0013】
(粘着剤の応力−歪み曲線)
粘着剤の応力−歪み曲線とは、粘着剤層にかけた応力と、応力によって粘着剤層が変形しない状態から伸長した変形量(歪み)との関係を示す曲線である。
【0014】
(応力−歪み曲線測定用サンプルの作成)
粘着剤の応力−歪み曲線測定用サンプルの作成は、剥離シート上に粘着剤を塗工し、熱風乾燥機等による処理後、剥離シートを剥離することで得られる。また、基材上に粘着剤を塗工し、熱風乾燥機等による処理の後、粘着剤層を削り取ってサンプルを作成しても良い。粘着剤層が削り難い時は、イソプロピルアルコールや酢酸エチル等の溶剤を粘着剤層に塗布した後削り取り、再度、熱風乾燥機等により処理しても良い。また、粘着剤層の厚みは、薄すぎると測定値の信頼性又は作業性が劣るため、粘着剤層を積層したサンプルを作成しても良い。
【0015】
(応力−歪み曲線測定時の雰囲気)
粘着剤の応力−歪み曲線測定における雰囲気は、特に限定されるものではないが、温度23℃、湿度50%等が挙げられる。また、粘着シートが被着体に貼付されている実際の環境に合わせた条件で測定することが好ましい。
(応力−歪み曲線測定時の引っ張り速度)
粘着剤の応力−歪み曲線の測定における引っ張り速度は、300mm/minで測定した値を用いた。
【0016】
(応力−歪み曲線測定時の歪み範囲)
粘着剤の応力−歪み曲線測定における歪みとは、変形しない状態から伸長した変形量のことである。粘着シートを被着体に貼付した際の粘着シートと被着体との間に生じる気泡の起こり難さを判定する歪み範囲は、600%以下が最も気泡の起こり難さという現象を反映している。600%を超えた場合、粘着シートを被着体に貼付した際の粘着シートと被着体との間に生じる気泡の起こり難さを、応力値で有意差として視認することができない。これは、600%を超えた歪みでは変形量が大きすぎ、被着体の寸法変化や変形、粘着シートの貼付工程や粘着剤の追従等の実際に起こりうる粘着剤層の変形量からかけ離れていくためであると考えられる。さらに、判定する歪み量は、少なすぎると誤差が生じやすいため、5%〜300%が好ましく、5%〜100%が更に好ましい。
【0017】
(応力−歪み曲線測定時の応力)
粘着剤の応力−歪み曲線測定において、前記歪み量における応力値が低いほど、粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難く透明性が優れると判定できる。これは、応力値が低いということは、粘着剤が変形しやすいと考えられ、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤層が追従しやすくなり、気泡発生の要因である浮き剥がれや追従性不足が発生し難くなる。また、粘着剤が変形しやすいと、粘着シート貼付時に被着体と密着しやすくなるため、気泡の巻き込みが少なくなったり、粘着剤層の凹凸があっても貼付時に密着することで気泡として残存し難くなる。さらに、粘着剤が変形しやすいと、貼付時に多少気泡が残存したとしても経時で粘着剤層が被着体に密着していくため、粘着剤として機能し得る範囲で応力が低いことが好ましい。
【0018】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、100%歪み時の応力(M100)が6N/cm2以下であり、好ましくは3〜6N/cm2である。6N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
【0019】
また、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、200%歪み時の応力(M200)が9N/cm2以下が好ましく、更に好ましくは4〜9N/cm2である。9N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
【0020】
さらに、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、300%歪み時の応力(M300)が15N/cm2以下が好ましく、更に好ましくは5〜15N/cm2である。10N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
【0021】
さらに、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、600%歪み時の応力(M600)が50N/cm2以下が好ましく、更に好ましくは20N/cm2以下であり、特に好ましくは8〜20N/cm2である。50N/cm2を超えると、粘着剤が変形し難く、被着体の寸法変化や変形や凹凸に粘着剤が追従し難くなり気泡が生じやすくなったり、貼付時の被着体への密着性の低下や経時での被着体への密着の抑制により気泡の巻き込みが起こりやすくなる。
以上のことから当然のこととして、600%程度の低い歪みで破断を生じるような粘着剤は好ましくない。
【0022】
さらに、本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、応力−歪み曲線において、最大歪み時の応力は粘着剤として機能し得る範囲でできるだけ高いものを選定することが好ましい。最大歪み時の応力が高いということは、貼付された粘着シートを引き剥がすなどの粘着剤が大きく変形する時の応力が強いということであり、引き剥がしに対する強い抵抗力を有することができる。
【0023】
(粘着剤)
前記粘着剤は、ポリマーの種類として、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系等が挙げられる。また、粘着剤の形態として、溶剤系、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤等の水系、ホットメルト型粘着剤、UV硬化型粘着剤、EB硬化型粘着剤等の無溶剤系等が挙げられる。オーバーラミネート用粘着シートには、耐候性、耐熱性、低臭気性、環境調和性、低コスト性の観点からエマルジョン型のアクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0024】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とするものが適している。(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、主モノマー、凝集性モノマー、官能基含有モノマー等を構成成分とし、公知の重合方法により合成することができる。主モノマーには、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、イソオクチルアクリレート等が挙げられ、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好適である。凝集性モノマーには、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアマイド、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等が挙げられる。官能基含有モノマーには、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアマイド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。さらに必要に応じて、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤や、イソシアネート系、エポキシ系、金属キレート系、メラミン系、オキサゾリン系等の架橋剤を使用しても良い。
【0025】
これらのモノマー量を変化させながら、求める応力−歪み曲線を描く粘着剤に調整していく。一概には言えないが、初期応力値を上昇させるためには、よりTgの高いモノマーを選定したり、凝集性モノマー、官能基含有モノマー、架橋剤量を増加させることにより達成できる。一方、初期応力値を下降させるためには、よりTgの低いモノマーを選定したり、凝集性モノマー、官能基含有モノマー、架橋剤量を低減させたり、連鎖移動剤を添加して共重合体の分子量を減少させることにより達成できる。
【0026】
(粘着剤層の厚み)
粘着剤の厚みは、乾燥後の厚みで5〜200μmが好ましく、5〜50μmがさらに好ましい。特にオーバーラミネート用粘着シートには10〜20μmが好ましい。5μmより薄い場合は、得られる粘着シートと被着体の密着性が不十分となり気泡を生じやすく、又粘着剤が十分被着体の凹凸に追従するように行き渡ることができにくい、一方200μmを超えると、ラベル形状に打ち抜く際の加工性が悪化する。
【0027】
(剥離シート)
剥離シートとしては、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、ポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム等に、剥離剤であるフッソ樹脂やシリコーン樹脂等を塗布したもの等が挙げられる。特に、オーバーラミネート用粘着シート等のように透明性を要求される場合、被着体に貼付する側の粘着剤層の凹凸が大きいと、貼付時にその凹凸に起因した起泡が巻き込まれ透明性が低下するために、ポリエチレンをラミネートした剥離紙を使用し、粘着剤層への剥離紙の凹凸の移転を少なくする必要があった。しかし、本発明の粘着シートでは、多少の凹凸が剥離紙から粘着剤層に移転されても、粘着剤層の低歪みにおける応力が小さいため、簡単に剥離時に発生した粘着層の凹凸面が被着体の面に追従することができる。このため、これまで透明性の観点からオーバーラミネート用粘着シートには使用し難かった平滑性が少ない剥離紙とも組み合わせることができ、多くの種類の剥離シートが使用することが出来るようになった点で本発明のオーバーラミネート用粘着シートは非常に有用である。ここでいう平滑性の少ない剥離紙には、粘着剤層を積層する剥離紙表面の表面粗さが、JISB0601に記載されている十点平均粗さ(Rz)において、基準長さ5mmで5〜40μmが好ましい。
【0028】
(粘着シートの製造方法)
本発明の粘着シートは、例えば、粘着剤を剥離シートに塗工し、乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等による処理を行い、基材を貼り合わせる方法で得られる。また、粘着剤を塗工し、前記処理した剥離シートを基材の両面に貼り合わせる方法を用いても良い。また、粘着剤を基材に塗工し、乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等による処理を行い、剥離シートを貼り合わせる方法でも得られる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
(粘着剤の合成)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水 270部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。撹拌下、ラテムルE−118B(花王社製) 0.8部、過硫酸カリウム 0.1部を添加し、続いて2−エチルヘキシルアクリレート 300部、メチルアクリレート 60部、メチルメタクリレート 32部、メタクリル酸 8部、グリシジルメタクリレート 1部からなる単量体混合物に、ラテムルE−118B 32部と脱イオン水 80部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョンの一部(4部)を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン 508部と過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1%) 60部を各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を75℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。滴下終了後、同温度にて180分間撹拌し、内容物を冷却した。その後、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整し、100メッシュ金網で濾過して粘着剤を得た。
【0030】
(応力−歪み曲線測定用サンプルの作成)
剥離シート(OKB−105NC、王子製紙社製)に乾燥後の厚みが20μmとなるように上記で合成した粘着剤を塗工し、熱風乾燥機を用いて90℃で3分間乾燥させた。23℃で7日間熟成した後、粘着剤層を積層し、厚み0.04cmの試験サンプルを得た。
【0031】
(応力−歪み曲線の測定)
引っ張り試験機(テンシロンRTA−100、オリエンテック社製)に試験サンプルを固定し、23℃、50%の環境下、300mm/minで引っ張ることより得られる100%歪み時の応力値を、粘着剤層の厚み及びサンプル幅から換算してM100を求めた。また、同様にして、200%歪み時の応力値(M200)、300%歪み時の応力値(M300)、600%歪み時の応力値(M600)、900%歪み時の応力値(M900)、最大歪み、最大強度を求めた。
【0032】
(粘着シートの作成)
剥離シート(KA−7G、リンテック社製)に乾燥後の厚みが20μmとなるように上記粘着剤を塗工し、熱風乾燥機を用いて90℃で3分間乾燥させ、ポリプロピレンフィルム(OPU−2 #20、東セロ社製)を貼りあわせ、23℃で7日間熟成することにより粘着シートを作成した。
【0033】
(粘着シートと被着体との間の気泡発生の評価(浮き剥がれ性))
上記粘着シートから剥離シートを剥離し、UVインキで印刷した大日本インキ化学社製ユポUV80FHT−2アオグラに貼付した後45mm×45mmにカットし、剥離シートを剥離して日本ハム社製ロースハムの包材に貼付することより試験サンプルを作成した。この試験サンプルを、90℃の温水で30分間ボイルし、上記粘着シートの浮き剥がれによる気泡発生の有無を目視評価した。
気泡発生が無い場合を○、気泡発生が発生しその気泡発生した面積が面積比で50%未満である場合を△、気泡発生した面積が面積比で50%以上の場合を×と記載した。
【0034】
(粘着シートと被着体との間の気泡発生の評価(巻き込み性))
シール印刷加工機(OPM−W150、恩田製作所)にて、上記粘着シートから剥離シートを剥離し、UVインキで印刷した大日本インキ化学社製ユポUV80FHT−2アオグラに貼付した後45mm×45mmにカットすることにより試験サンプルを作成した。貼付直後の試験サンプルを目視し、上記粘着シートを貼付した際の気泡の巻き込みの有無を評価した。
気泡発生が無い場合を○、気泡発生が発生しその気泡発生した面積が面積比で50%未満である場合を△、気泡発生した面積が面積比で50%以上の場合を×と記載した。
【0035】
(粘着シートと被着体との間の気泡発生の評価(追従性))
上記粘着シートから剥離シートを剥離し、スクリーン印刷した大日本インキ化学社製ユポUV80FHT−2アオグラに貼付することにより試験サンプルを作成した。この試験サンプルを、23℃で1日静置し、上記粘着シートの印刷凹凸面への追従性不足による気泡発生の有無を目視評価した。
気泡発生が無い場合を○、気泡発生が発生しその気泡発生した面積が面積比で50%未満である場合を△、気泡発生した面積が面積比で50%以上の場合を×と記載した。
【0036】
(透明性の評価)
上記浮き剥がれ性、巻き込み性、追従性の評価において、印刷物に透明性が付与されている場合を○、透明性が欠如しておりその面積が面積比で50%未満である場合を△、透明性が欠如しておりその面積が面積比で50%以上の場合を×と目視評価した。
【0037】
(実施例2)
(粘着剤の合成)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水 270部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。撹拌下、ラテムルE−118B(花王社製) 0.8部、過硫酸カリウム 0.1部を添加し、続いて2−エチルヘキシルアクリレート 360部、メチルメタクリレート 28部、メタクリル酸 10部、グリシジルメタクリレート 2部、ラウリルメルカプタン 0.2部からなる単量体混合物に、ラテムルE−118B 32部と脱イオン水80部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョンの一部(4部)を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン 508部と過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1%) 60部を各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を75℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。滴下終了後、同温度にて180分間撹拌し、内容物を冷却した。その後、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整し、100メッシュ金網で濾過して粘着剤を得た。
粘着剤の合成以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し評価を行った。
【0038】
(比較例1)
粘着剤としてSPS−1260(大日本インキ化学社製)とすることと、熟成期間を14日間としたこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し評価を行った。
【0039】
(比較例2)
粘着剤としてSPS−822(大日本インキ化学社製) 100部に対し、MA−25(大日本インキ化学社製) 8部を混合したものとすることと、熟成期間を40℃で2日間としたこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し評価を行った。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果からわかるように、100%歪み時の応力値(M100)が6N/cm2以下である粘着剤から構成される粘着シートを使用した場合、明らかに気泡が生じ難く透明性に優れている。
【発明の効果】
本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、被着体に貼付した際に、オーバーラミネート用粘着シートと被着体との間に気泡が生じ難く透明性に優れ、オーバーラミネート用粘着シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粘着シートの好ましい一実施形態を示した断面図である。
【図2】実施例1、2、比較例1、2おける応力−歪み曲線を表したグラフである。
【符号の説明】
1) オーバーラミネート用粘着シートの基材
2) オーバーラミネート用粘着シートの粘着剤層
3) インキ
4) フィルム基材
Claims (4)
- 基材と粘着剤が積層された粘着シートであって、該粘着剤が、応力−歪み曲線において、温度23℃、湿度50%の環境下、引っ張り速度300mm/minにおける100%歪み時の応力値が6N/cm2以下であることを特徴とするオーバーラミネート用粘着シート。
- 前記粘着剤が、応力−歪み曲線において、温度23℃、湿度50%の環境下、引っ張り速度300mm/minにおける600%歪み時の応力値が50N/cm2以下である請求項1記載のオーバーラミネート用粘着シート。
- 前記粘着シートの粘着剤層面に剥離紙を積層し、該剥離紙表面の表面粗さが十点平均粗さ(Rz)において、基準長さ5mmで5〜40μmである請求項1又は2記載のオーバーラミネート用粘着シート。
- 前記粘着剤の100%歪み時の応力値が3〜6N/cm2である請求項1〜3の何れかの請求項に記載のオーバーラミネート用粘着シート。
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