JP2004083320A - シリコン単結晶成長方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】絞り工程での径変動を安定的に抑制する。絞り工程に続く増径工程での有転位化及び制御不能を回避する。
【解決手段】ルツボ1内に結晶用シリコン原料を充填して溶融し、その溶融液13に浸漬した種結晶15を回転させながら引上げることにより、絞り工程、増径工程及び定径工程を経て種結晶15の下方にシリコン単結晶12を成長させる。転位を除去するための絞り工程でルツボ回転数を1rpm以下とすると共に、超電導磁石30a,30bにより0.1テスラ以下の水平磁場を溶融液13に印加する。絞り工程から増径工程に移行する段階でその磁場印加を停止する。増径工程中で、且つ結晶径が100mmに達するまでの間に、ルツボ回転数を3rpm以上に変更する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はCZ法(チョクラルスキー法)を用いたシリコン単結晶育成方法に関し、更に詳しくは、絞り工程での結晶径の変動を防止するために磁場印加を行うシリコン単結晶育成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体基板に用いられるシリコン単結晶の製造方法には種々の方法があるが、工業的に秘録使用されている方法は回転引上げ法であるCZ法である。CZ法によるシリコン単結晶の製造では、図3に示すように、チャンバ内に配置されたルツボ1が使用される。このルツボ1は、シリコンの溶融液13を収容する石英ルツボ1aを外側から黒鉛ルツボ1bで保持する2重構造であり、回転及び昇降が可能な支持軸6の上に固定されている。
【0003】
操業では、まずルツボ1内に充填された結晶用シリコン原料を、ルツボ1の外側に略同心円状に配置された円筒形状の抵抗加熱式ヒータ2により所定雰囲気中で溶融して、溶融液13を形成する。次いで、ルツボ1の中心軸上に配置され下端に種結晶15が装着された引上げ軸5を降下させて、種結晶15を溶融液13に浸漬する。そして、ルツボ1及び引上げ軸5を所定方向に所定速度で回転させつつ、引上げ軸5を上方へ引上げて、種結晶15の下方にシリコン単結晶12を成長させる。
【0004】
このようなCZ法では、種結晶15に元から含まれる転位や着液時の熱ショックで導入される転位を除去するために、着液後に種結晶15を直径3mm程度まで細く絞る操作が行われる。これが絞り工程である。その後、結晶径を徐々に増大させて、最終的には製品径に収束させる。これにより、細い絞り部の下に、直径が徐々に増大した肩部が形成され、更にその下に定径の直胴部が形成される。結晶径を徐々に増大させて肩部を形成する工程が増径工程であり、定径の直胴部を形成する工程が定径工程である。
【0005】
CZ法によるシリコン単結晶の製造に使用される石英ルツボは、シリコンの溶融液と接することにより、表面が溶融液中に溶け、溶融液中に酸素を放出する。こうして溶融液中に溶け込んだ酸素は、その一部がシリコン単結晶中に取り込まれ、シリコン単結晶の品質に様々な影響を及ぼす。そのため、CZ法では、シリコン単結晶中に取り込まれる酸素量を制御することが重要な技術課題となる。
【0006】
そして、このような酸素濃度の制御を行う方法の一つとして、MCZ(Magnetic−field−applied CZ )法と呼ばれる磁場印加CZ法がある。この方法は、石英ルツボ内の溶融液に磁場を印加することにより、磁力線に直行する方向の対流を抑制し、制御するものである。磁場の印加方法には種々の方法があるが、なかでも特に、水平方向に磁場印加を行うHMCZ(Horizontal MCZ)法の実用化が進んでいる。ここで用いられる磁場強度は通常0.3〜0.4テスラである。
【0007】
ところで、近年の傾向として、育成される単結晶の直径及び重量が急速に増大しており、現状では直径が300mmで重量は200kgを超える結晶も生産されている。そして、結晶重量は更に増える傾向にある。ところが、通常のCZ法の絞り工程における絞り部の直径(3mm程度)では、そのような大重量の結晶を保持するのが困難である。また、溶融液の対流による液温変動に伴って絞り部でも径変動が生じ、その結果として直径が部分的に細くなると、大重量結晶の保持は更に困難になる。
【0008】
このような絞り部の径変動の問題を解決する手段として、特開平10−7487号公報、特開平9−165298号公報及び特開平11−209197号公報等により提示されている、絞り工程における磁場印加がある。
【0009】
具体的に説明すると、特開平10−7487号公報では、MCZ法における絞り工程で0.2テスラ以下の磁場印加を行い、絞り工程に続く増径工程では、定径工程に向けて0.2テスラ超まで磁場を強くすることが説明されている。
【0010】
特開平9−165298号公報では、通常のCZ法における絞り工程で1.5テスラ以上の磁場印加を行い、絞り工程に続く増径工程では、定径工程に向けて無磁場まで磁場を弱めることが説明されている。
【0011】
特開平11−209197号公報では、MCZ法における絞り工程及び増径工程で定径工程より弱い磁場印加を行うか無磁場とすることが開示されており、具体例としては絞り工程で1テスラの水平方向磁場を印加し、増径工程でその磁場を1テスラから4テスラまで強め、定径工程では4テスラの磁場印加を行うことが示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これから分かるように、絞り工程における磁場印加は、絞り工程に続く増径工程での磁場操作によって、その磁場を強める方法と弱める方法の2種類に大別される。いずれの方法でも、絞り工程で磁場印加を行うことにより、溶融液の対流が抑制され、絞り部の径変動が抑制される。
【0013】
ところが、絞り工程に続く増径工程で磁場を強めたり、絞り工程での磁場強度をそのまま維持すると、増径工程で有転位化を頻発するという問題がある。この理由は以下のように考えられる。
【0014】
シリコン溶融液中に磁場を印加した場合、「野上裕:日本機械学会第11回計算力学講演会講演論文集(1998)P414」に記載されているように、ルツボの中心を通り磁場印加方向に平行な面に対して対称となるロール状の流れが生じる。増径工程初期のように溶融液の温度が比較的高い状態では、この流れも強く、溶融液中に存在する異物が成長界面に輸送され、有転位化が促進されることになる。
【0015】
これに対し、特開平9−165298号公報に記載されているように増径工程で磁場印加を停止すると、上述したロール状の対流はなくなり、この対流による成長界面への異物輸送、及びこれによる有転位化は防止される。しかし、その一方では、消磁に伴う対流変化による温度差が増大し、結晶径が急増して制御不能に陥る危険性のあることが判明した。
【0016】
また、磁場印加が行われる絞り工程においても、ルツボの回転数によっては、磁場によって制止される溶融液とルツボ回転との相互作用によって溶融液の温度変動が大きくなり、絞り部の径変動が十分に抑制されない問題が生じる。この問題は、直径が700mm以上の大口径ルツボを使用して直径が200mm以上の大径結晶を引上げる場合に顕著となる。
【0017】
本発明の目的は、絞り工程での径変動を安定的に抑制でき、合わせて増径工程での有転位化も制御不能も回避できるシリコン単結晶成長方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは絞り部の形成に及ぼす磁場印加の影響、更には磁場以外の諸因子による影響を詳細に調査検討した。その結果、以下の事実が判明した。
【0019】
第1に、絞り部の径変動を抑制するためには、溶融液への磁場印加、とりわけ水平方向の磁場印加が有効である。第2に、絞り工程で磁場印加を行った場合に問題となる増径工程での有転位化を抑制するためには、増径工程で磁場印加を停止することが不可欠である。第3に、増径工程での消磁に伴う径制御の不安定化に対しては、絞り工程で印加する磁場をできるだけ弱くして、消磁したときの物理的変化を小さくするのが有効である。第4に、磁場印加により絞り部の径変動を抑制する場合、ルツボの回転数も径変動の抑制に対して重要因子となり、その回転数をできるだけ小さく抑えることが必要である。
【0020】
本発明のシリコン単結晶成長方法は、かかる知見を基礎として完成されたものであり、ルツボ内に結晶用シリコン原料を充填して溶融し、その溶融液に浸漬した種結晶を回転させながら引上げることにより、種結晶の下方にシリコン単結晶を成長させるCZ法によるシリコン単結晶成長方法において、転位を除去するための絞り工程でルツボ回転数を1rpm以下とすると共に、水平方向に0.1テスラ以下の磁場を印加し、絞り工程から増径工程に移行する段階でその磁場印加を停止するするものである。
【0021】
絞り部の径変動を抑制するためには、水平磁場の印加により溶融液の対流を抑制するのが有効である。しかしながら、0.1テスラを超える磁場を用いると、磁場印加を停止した場合に対流変化に伴う温度差が増大し、結晶径が急増して制御不能に陥る。従って、絞り工程で用いる磁場強度は0.1テスラ以下とし、0.08テスラ以下が特に好ましい。なお、絞り部の径変動の主因である溶融液の対流を抑制するためには0.03テスラ程度の微弱磁場でも十分に有効である。この観点から、磁場強度の下限については0.01テスラ以上が好ましく、0.03テスラ以上が特に好ましい。
【0022】
絞り工程における磁場印加を、大口径ルツボを使用した大径の大型単結晶の引上げに適用した場合、絞り工程におけるルツボ回転数が大きいと、磁場により制止される溶融液とルツボ回転との相互作用によって溶融液の温度変動が大きくなり、磁場印加を行っているにもかかわらず、むしろ逆効果になって絞り部の径変動が大きくなり、大重量結晶の保持が困難になる。このため、磁場印加下では絞り工程でのルツボ回転数は1rpm以下とする。このルツボ回転数の下限については、特に限定されるものではなく、ルツボ回転を停止さえしなければよい。装置精度上、ルツボの安定な回転を維持する観点からは、0.2rpm以上がよい。
【0023】
磁場停止後、このような低ルツボ回転のままで増径工程を行うと、ルツボ内の外周部から中心部に向かう自然対流が発生し、異物を成長界面に運搬するために、有転位化が生じやすくなる。この問題に対しては、ルツボ回転数を増加し、遠心力やそれに伴う強制対流により異物の運搬を阻止するのが有効である。具体的には、増径工程中で結晶径が100mmに達するまでにルツボ回転数を3rpm以上に変更するのが好ましい。
【0024】
以上により安定した絞り工程、増径工程が可能になり、更に、増径工程から定径工程への移行時に再び磁場を印加し、ルツボ回転数を所定の回転数に変更することにより、大重量のHMCZ法も可能となる。定径工程での磁場強度としては0.1〜0.4テスラが好ましく、ルツボ回転数としては0.2〜10rpmが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のシリコン単結晶成長方法の実施に適したCZ引上げ炉の縦断面図、図2はルツボ回転数の変更パターンを例示するグラフである。
【0026】
まず、本実施形態のシリコン単結晶成長方法に使用されるCZ引上げ炉の構造について説明する。
【0027】
本CZ引上げ炉は、炉体であるチャンバ7として、円筒形状のメインチャンバ7aと、メインチャンバ7a上に載置された小径のプルチャンバ7bとを備えている。
【0028】
メインチャンバ7a内の中心部には、ルツボ1が配置されている。ルツボ1は、シリコンの溶融液13を収容する石英ルツボ1aを外側から黒鉛ルツボ1bで保持する2重構造であり、回転及び昇降が可能な支持軸6の上に固定されている。
【0029】
ルツボ1の外側には、円筒形状の抵抗加熱式ヒータ2が略同心円状に配置されている。ヒータ2の更に外側には、円筒形状の保温筒8aが、メインチャンバ7aの内面に沿って配置されている。メインチャンバ7aの底部上には保温板8bが配置されている。
【0030】
ルツボ1の中心軸上には、引上げ軸5であるワイヤがプルチャンバ7bを通じて同心状に吊設されている。引上げ軸5は下端に種結晶15を保持しており、プルチャンバ7bの最上部に設けられた巻き取り機構により回転駆動されると共に昇降駆動される。
【0031】
一方、メインチャンバ7aの外側には、ルツボ1内の溶融液13に水平方向の磁場を印加するために1組の超電導磁石30a,30bが対向して配置されている。
【0032】
次に、このような引上げ炉を使用して直径が300mmのシリコン単結晶12を育成する方法について説明する。
【0033】
結晶用シリコン原料を300kg充填し不純物としてのリンを加えたルツボ1をチャンバ7内にセットする。石英ルツボ1aの直径は750mmである。チャンバ7内を25Torrに減圧し、不活性ガスとして100L/minのArガスを導入する。ルツボ1内の結晶用シリコン原料及びリンをヒータ2により加熱溶融して、溶融液13を形成する。
【0034】
溶融液13を形成した後、超電導磁石30a,30bによりその溶融液13に0.05テスラの水平方向磁場を印加し、融液温度が安定した後、種結晶15を溶融液13に浸漬し、ルツボ1及び引上げ軸5を所定方向に所定速度で回転させつつ、引上げ軸5を上方へ引上げて、結晶径を15mmから5mmまで縮小した。この絞り工程におけるルツボ1の回転数は1.0rpm、引上げ軸5の回転数は10rpmとした。磁場強度は0.05テスラを維持した。
【0035】
絞り工程が終わると直ちに磁場印加を停止し、増径工程に移行した。増径工程では、結晶径が100mmとなる時点でルツボ回転数が5rpmとなるようにルツボ回転数を結晶径の増大に伴って増大させた。その後は、ルツボ回転数を5rpmに維持したままで、結晶径を310mmまで増大させ、増径部(肩部)12aを完成させた。
【0036】
そして、結晶径が310mmに達した時点で定径工程に移行し、長さ1400mmの直胴部12bを育成した。育成された単結晶12の総重量は270kgである。絞り工程での印加磁場強度を0.1テスラ以下に下げると共に、ルツボ回転数を1rpm以下に下げ、増径工程で消磁したことにより、絞り部の径変動が僅かに抑制され、目標値である5mmがほぼ全長にわたって維持されると共に、増径工程でも安定な径制御が続行され、その結果として安定な引上げが行われた。また、結晶品質も良好であった。
【0037】
別の実施例として、増径工程までは先の実施例と同じに行い、結晶径が300mmに達した時点で0.03テスラの水平方向磁場を印加すると共に、ルツボ回転数を5rpmから1rpmに変更した。そして、1400mmの直胴部を育成した。安定な引上げが行われたのは勿論のこと、DF性、品質とも問題なかった。
【0038】
比較のために、通常のCZ法(無磁場)で形成した絞り部に対して引張試験を実施したところ、表1のように、300mm未満の荷重で破断が生じ、300kg以上の単結晶を引上げることができないことが判明した。
【0039】
【表1】
Figure 2004083320
【0040】
また、絞り工程で磁場を印加しても、その強度が0.1テスラを超える例えば0.3テスラの場合は、増径工程への移行時に磁場印加を停止したにもかわらず、結晶径が100mmに達するまでの間に有転位化が生じた。なお、ルツボ回転数は図2のパターンとした。
【0041】
また、絞り工程で印加する磁場強度が0.1テスラ以下の例えば0.05テスラであり、且つ増径工程への移行時に磁場印加を停止した場合であっても、絞り工程でのルツボ回転数が1rpmを超える例えば3rpmの場合は絞り工程における径変動が大きくなり、大重量結晶を保持することが困難となる。
【0042】
また、絞り工程で印加する磁場強度が0.1テスラ以下の例えば0.05テスラで、且つ絞り工程でのルツボ回転数が1.0rpmの場合であっても、増径工程で引き続き磁場印加を行った場合は増径工程の初期において有転位化が頻発した。なお、ルツボ回転数は図2のパターンとした。
【0043】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明のシリコン単結晶成長方法は、転位を除去するための絞り工程でルツボ回転数を1rpm以下に制限すると共に、水平方向に0.1テスラ以下の微弱磁場を印加し、且つ、絞り工程から増径工程に移行する段階でその磁場印加を停止することにより、絞り工程での径変動を安定的に抑制でき、増径工程での有転位化及び制御不能も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコン単結晶成長方法の実施に適したCZ引上げ炉の縦断面図である。
【図2】ルツボ回転数の変更パターンを例示するグラフである。
【図3】CZ法によるシリコン単結晶成長方法の説明図である。
【符号の説明】
1 ルツボ
2 ヒータ
5 引上げ軸
6 支持軸
7 チャンバ
12 単結晶
13 溶融液
15 種結晶
30 超電導磁石

Claims (4)

  1. ルツボ内に結晶用シリコン原料を充填して溶融し、その溶融液に浸漬した種結晶を回転させながら引上げることにより、種結晶の下方にシリコン単結晶を成長させるCZ法によるシリコン単結晶成長方法において、転位を除去するための絞り工程でルツボ回転数を1rpm以下とすると共に、水平方向に0.1テスラ以下の磁場を印加し、絞り工程から増径工程に移行する段階でその磁場印加を停止することを特徴とするシリコン単結晶成長方法。
  2. 増径工程中で結晶径が100mm以下の時点でルツボ回転数を3rpm以上に変更することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶成長方法。
  3. 増径工程から定径工程への移行時に再び磁場を印加し、ルツボ回転数を所定の回転数に変更することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン単結晶成長方法。
  4. 直径が700mm以上の大口径ルツボを使用して直径が200mm以上の大径結晶を引上げることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のシリコン単結晶成長方法。
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