JP2004080002A - 圧電変換材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができ、低コストで、量産性、取扱性に優れた圧電変換材料を提供。
【解決手段】主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含む圧電変換材料である。主鎖型液晶ポリマーが、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有する態様、該主鎖型液晶ポリマーが、ポリエステルから選択される態様、該主鎖型液晶ポリマーが芳香族ポリマーから選択される態様、該芳香族ポリマーが芳香族ポリエステルから選択される態様、加熱前の室温における圧電性αと、85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βとから計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下である態様などが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含む圧電変換材料である。主鎖型液晶ポリマーが、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有する態様、該主鎖型液晶ポリマーが、ポリエステルから選択される態様、該主鎖型液晶ポリマーが芳香族ポリマーから選択される態様、該芳香族ポリマーが芳香族ポリエステルから選択される態様、加熱前の室温における圧電性αと、85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βとから計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下である態様などが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振材料等として各種分野において好適に使用可能な圧電変換材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧力を受けた際にその歪みエネルギーを電気エネルギーに変換可能な圧電変換材料は、センサー等をはじめ各種分野において広く利用されている。この圧電変換材料としては、従来より無機材料が広く用いられてきたが、該無機材料の場合には用途が限定されるため、近時、有機材料の研究開発が盛んに行われており、例えば、PVDF、VDF/TrFE等の強誘電性ポリマー、強誘電性液晶、セルロース誘導体等の光学活性ポリマーを一軸延伸させたもの、などが提案されている(非特許文献1参照)。
前記有機材料の中でも、優れた圧電変換特性(以下「圧電性」と略称することがある)を示す前記PVDF等の強誘電性ポリマーが広く用いられているが、該強誘電性ポリマーの場合、ガラス転移温度(Tg)が低く、熱によりその圧電性が減衰し易いため耐熱性が要求される用途に対しては、不向きであり、初期の性能を長期間維持することができないという問題がある。一方、前記強誘電性液晶の場合、膜厚を大きくすることが困難であるという問題があり、また、前記セルースの場合、圧電性が極性由来でないため、本質的に小さいという問題がある。
このため、従来における前記問題がなく、外部からの振動等を歪みエネルギーとして吸収してこれを効率良く電気に変換し、熱として放出可能であり、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用可能な圧電変換材料は未だ提供されていないのが現状である。
【0003】
【非特許文献1】
住田雅夫、「圧電性フィルムを用いた吸遮音構造体」、機能材料、株式会社シーエムシー出版、1995年11月、Vol.15, No.11
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の課題を解決することを目的とする。即ち、本発明は、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができ、低コストで、量産性、取扱性に優れた圧電変換材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含むことを特徴とする圧電変換材料である。
<2> 主鎖型液晶ポリマーが、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有する前記<1>に記載の圧電変換材料である。
<3> 主鎖型液晶ポリマーが、ポリエステルから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<4> 主鎖型液晶ポリマーが、芳香族ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<5> 芳香族ポリマーが、芳香族ポリエステルから選択される少なくとも1種である前記<4>に記載の圧電変換材料である。
<6> 芳香族ポリエステルが、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種をモノマーユニットとして含む前記<5>に記載の圧電変換材料である。
<7> 芳香族ポリマーが、下記構造式(1)で表される構造を含む前記<4>に記載の圧電変換材料である。
構造式(1)
【化2】
但し、n及びmは、重合度を表す。
<8> 主鎖型液晶ポリマーが、第二次高調波発生(SHG)活性を示す前記<1>から<7>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<9> 主鎖方向と略平行な方向に最大の分極率を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<10> フィルム状、線状、棒状、板状、粒状及び立方体状のいずれかに成形された前記<1>から<9>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<11> 接着用ポリマーを含有してなる前記<1>から<10>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<12> 加熱前の室温における圧電変換材料の圧電性αと、該圧電変換材料を85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βと、から計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載の圧電変換材料である。該圧電変換材料は、前記減衰率が0.1以下であることにより、高温条件下で長期間保持された場合においても、圧電性能が十分に維持される。
<13> 制振材料として用いられる前記<1>から<12>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電変換材料は、主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有していてもよい。
【0007】
−主鎖型液晶ポリマー−
前記主鎖型液晶ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有するもの、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステルが好ましく、芳香族ポリマーがより好ましく、芳香族ポリエステルが特に好ましい。
【0008】
前記芳香族ポリエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表1に示すような、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種をモノマーユニットとして含むもの、などが好適に挙げられる。
【0009】
【表1】
【0010】
前記芳香族ポリマーとしては、例えば、下記構造式(1)で表される構造を含むものが好適に挙げられる。
構造式(1)
【化3】
前記構造式(1)中、m及びnは重合度を表す。該m及びnの比(m:n)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90:10〜50:50が好ましく、80:20〜60:40がより好ましい。
【0011】
前記芳香族ポリマーとしては、前記構造式(1)で表される構造を含むもの以外に、下記各構造式で表される構造を含むもの、などが好適に挙げられる。
【0012】
【化4】
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【0018】
【化10】
【0019】
【化11】
【0020】
【化12】
【0021】
【化13】
【0022】
【化14】
【0023】
【化15】
【0024】
【化16】
【0025】
【化17】
【0026】
【化18】
【0027】
【化19】
【0028】
【化20】
【0029】
【化21】
但し、m及びn、は重合度を表す。Xは、−C(CH3)2−、−CH2−、−O−、−S−、又は−SO2−を表す。yは、0又は1を表す。
【0030】
【化22】
【0031】
前記主鎖型液晶ポリマーの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記スキームで表されるような合成方法などが挙げられる。なお、一般に、モノマーのモル比は一定であっても、例えば、反応温度、反応時間を適宜選択することにより、重合度の異なる前記主鎖型ポリマーを合成することができる。
【0032】
【化23】
但し、nは、整数を表す。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を表す。
【0033】
【化24】
但し、Acは、アセチル基を表す。x及びnは、整数を表す。
【0034】
【化25】
但し、Acは、アセチル基を表す。nは、整数を表す。
【0035】
【化26】
但し、nは、整数を表す。
【0036】
【化27】
但し、Acは、アセチル基を表す。nは、整数を表す。
【0037】
前記主鎖型液晶ポリマーは、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
なお、該市販品としては、デュポン株式会社製の「ゼナイト(登録商標)」、住友化学工業株式会社製の「スミカスーパー(登録商標)」、株式会社クラレ製の「ベクトラン(登録商標)」、大日本インキ化学工業株式会社製の「オクタ(登録商標)」、ポリプラスチックス株式会社製の「ベクトラ(登録商標)」、ユニチカ株式会社製の「ロッドラン」、日本石油化学工業株式会社製の「ザイダー(登録商標)」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の「ノバキュレート(登録商標)」、東レ株式会社製の「シベラス(登録商標)」、などが好適に挙げられる。
【0038】
前記主鎖型液晶ポリマーの特性としては、特に制限はないが、例えば、第二次高調波発生(SHG)活性を示すことが好ましく、また、主鎖方向と略平行な方向に最大の分極率を有することも好ましい。なお、前記主鎖型液晶ポリマーが前記SHG(Second Harmonic Generation)活性を示すのは、以下の理由によるものと推測される。即ち、図1及び図2(T. Watanabe et al. Jpn. J. Appl. Phys. 1996 . Vol . 35 . l 505 参照)に示すように、そのモノマーユニットの重合度に応じて分極率が大きくなる。そして、分子量が増加し、双極子モーメントd*がある点を超えたところで、対称中心を持たない相構造になるためと推測される。
【0039】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成膜を容易にする接着用ポリマー、などが好適に挙げられる。なお、前記接着用ポリマーとしては、公知のバインダー樹脂が挙げられる。
前記公知のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、ゴム(エラストマー系)、粘着剤、モノマー乃至オリゴマー、ポリマーアロイ、ポリイミド、天然物、無機物、などが挙げられる。
【0040】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル共重合体(アクリル)、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸共重合体(EVA)、塩化ビニル・プラスゾル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ナイロン11,12,共重合ナイロン、ポリエチレンテレフタレートの共縮合体、ポリブチレンテレフタレート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタン、などが挙げられる。
前記ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン天然ゴム,合成ポリイソプレンゴム、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリスルフィド、室温加硫型シリコーンゴム、塩化ゴム、臭化ゴム、グラフト・ポリクロロプレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、などが挙げられる。
【0041】
前記粘着剤としては、例えば、感圧接着剤、アクリル系、シリコーン系などが挙げられる。
前記モノマー乃至オリゴマーとしては、シアノアクリレート、紫外線硬化型接着剤、可視光硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤などが挙げられる。
前記ポリマーアロイとしては、例えば、ポリビニルホルマール又はブチラール/フェノリック、ニトリルゴム/フェノリック、ニトリルゴム/エポキシ、液状ニトリルゴム/エポキシ、エポキシ/フェノリックなどが挙げられる。
前記天然物としては、例えば、デンプン、デキストリンなどが挙げられる。
前記無機物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、セラミックスなどが挙げられる。
【0042】
前記その他の成分の前記圧電変換材料における含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害しない範囲内において適宜選択することができる。
【0043】
前記圧電変換材料の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、線状、棒状、板状、粒状、立方体状などが挙げられる。
【0044】
−圧電変換材料の製造方法−
前記圧電変換材料の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記合成方法により製造した主鎖型液晶ポリマーを用いて塗布、成形及びプレス処理から選択されるいずれかの処理をして任意の形状の成形体とした後、該成形体に対してポーリング処理を行うことが好ましい。
【0045】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、公知の塗布法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、バーコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、などが挙げられる。なお、前記圧電変換材料はラビング膜上に塗布するのが好ましい。該ラビング膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記塗布の際、溶剤を使用することができる。該溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、これらの溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記成形の方法としては、特に制限はなく、公知の成形法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧縮成形、トランスファ成形、射出成形、粉末成形、回転成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、エクストルージョンブロー成形、押出成形、吹込成形、カレンダ成形、熱成形、プレシャ成形、流動成形、ペースト成形、真空成形、発泡成形、積層成形、流動成形などが挙げられる。
【0047】
前記プレス処理の方法としては、特に制限はなく、公知のプレス方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
前記ポーリング処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ホットプレート上に前記成形体(圧電変換材料)を固定させた後、該成形体から適宜選択した距離にタングステン針を設置して、これに任意の電圧を印加することにより行うことができる。この場合に前記成形体の温度としては、該成形体の軟化点以上の温度に保持することが好ましい。
【0049】
前記圧電変換材料は、その加熱前の室温における圧電性αと、85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βとから計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0であることが特に好ましい。
前記圧電性の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法により測定することができ、例えば、圧電特性測定装置(例えば、d33メーター)などを用いて簡便に測定することができる。
前記減衰率が0.1以下に抑制されることにより、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができる点で有利である。
【0050】
前記圧電変換材料は、各種分野において好適に使用することができ、例えば、ピエゾフィルム、加速度センサ、マイクロホン、衝撃センサ、動的ひずみ計、スピーカ、赤外線センサ、温度変化センサ、などにそのまま適用することができ、また、マトリクス材料と共に複合材料化して圧電変換複合材料として使用することができ、制振材料等として特に好適に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら300℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で1時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーAを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーAを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約310℃であった。
なお、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0053】
構造式(1)
【化28】
【0054】
−ポーリング処理−
前記主鎖型液晶ポリマーAを約200μmの厚みにプレス処理し、シート状のサンプルAを作製した。これをホットプレート上に固定し、該サンプルAの上部から1.5cm離してタングステン針を設置し、これに9.5kVの電圧を印加してコロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Aを製造した。該圧電変換材料Aについて以下の減衰率の評価を行った。結果を表3に示す。
なお、前記サンプルAの温度は、前記コロナポーリング処理中、320℃に保持された。
【0055】
<減衰率評価>
加熱前の室温における前記圧電変換材料Aの前記圧電性αをd33メーターで測定したところ、5.8pC/Nであった。また、前記圧電変換材料Aを85℃に加熱した状態で7日間放置させた後に室温で同様の測定をしたところ、前記圧電性βは、5.8pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Aの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0であった。
【0056】
(実施例2)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら250℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で3時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーBを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーBを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約240℃であった。
また、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0057】
構造式(1)
【化29】
【0058】
得られた前記主鎖型液晶ポリマーBを用い、実施例1と同様にして、シート状のサンプルB(厚み:約200μm)を作製した後、前記コロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Bを製造した。なお、前記サンプルBの温度は、前記コロナポーリング処理中、260℃に保持された。
【0059】
また、製造した前記圧電変換材料Bについて、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、1.2pC/Nであり、前記圧電性βは、1.1pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Bの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.08であった。結果を表3に示す。
【0060】
(実施例3)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら280℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で1.5時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーCを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーCを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約270℃であった。
また、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0061】
構造式(1)
【化30】
【0062】
得られた前記主鎖型液晶ポリマーCを用い、実施例1と同様にして、シート状のサンプルC(厚み:約200μm)を作製した後、前記コロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Cを製造した。なお、前記サンプルCの温度は、前記コロナポーリング処理中、280℃に保持された。
【0063】
また、製造した前記圧電変換材料Cについて、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、7.4pC/Nであり、前記圧電性βは、7.2pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Cの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.03であった。結果を表3に示す。
【0064】
(実施例4)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら290℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で1時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーDを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーDを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約285℃であった。
また、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0065】
構造式(1)
【化31】
【0066】
得られた前記主鎖型液晶ポリマーDを用い、実施例1と同様にして、シート状のサンプルD(厚み:約200μm)を作製した後、前記コロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Dを製造した。なお、前記サンプルDの温度は、前記コロナポーリング処理中、295℃に保持された。
【0067】
また、製造した前記圧電変換材料Dについて、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、9.5pC/Nであり、前記圧電性βは、9.4pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Dの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.01であった。結果を表3に示す。
【0068】
(比較例1)
比較例として、PVDFの圧電フィルム(厚み:約200μm)を用い、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、25.0pC/Nであり、前記圧電性βは、17.6pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記PVDFの圧電フィルムの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.30であった。結果を表3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表3から、実施例1〜4では、85℃の条件下に7日保持されても圧電性の減衰は殆ど観られないが、比較例1のPVDFの場合では、約3割程度の減衰が観られる。以上により、本発明の圧電変換材料は、高温条件下に長期間保持された場合であっても、安定した圧電性が維持されることが判った。
【0071】
(実施例5)
下記構造式(1)で表される、ヒドロキシ安息香酸(HBA)と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(HNA)との共重合体(HBA:HNA=70:30(モル))である芳香族ポリエステルの液晶を合成した。
【0072】
構造式(1)
【化32】
【0073】
該芳香族ポリエステルの液晶については、比較的大きな第二次高調波発生(SHG活性)が観られ、強誘電性ネマチック相が発現しており圧電変換材料として機能するものであることが確認された。
【0074】
【発明の効果】
本発明によると、従来における問題を解決し、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができ、低コストで、量産性、取扱性に優れた圧電変換材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、圧電変換材料におけるモノマーユニットの重合度に応じて該圧電変換材料の分極率が大きくなることを示す概念図である。
【図2】図2は、圧電変換材料におけるモノマーユニットの重合度に応じて該圧電変換材料の分極率が大きくなることを示す概念図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振材料等として各種分野において好適に使用可能な圧電変換材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧力を受けた際にその歪みエネルギーを電気エネルギーに変換可能な圧電変換材料は、センサー等をはじめ各種分野において広く利用されている。この圧電変換材料としては、従来より無機材料が広く用いられてきたが、該無機材料の場合には用途が限定されるため、近時、有機材料の研究開発が盛んに行われており、例えば、PVDF、VDF/TrFE等の強誘電性ポリマー、強誘電性液晶、セルロース誘導体等の光学活性ポリマーを一軸延伸させたもの、などが提案されている(非特許文献1参照)。
前記有機材料の中でも、優れた圧電変換特性(以下「圧電性」と略称することがある)を示す前記PVDF等の強誘電性ポリマーが広く用いられているが、該強誘電性ポリマーの場合、ガラス転移温度(Tg)が低く、熱によりその圧電性が減衰し易いため耐熱性が要求される用途に対しては、不向きであり、初期の性能を長期間維持することができないという問題がある。一方、前記強誘電性液晶の場合、膜厚を大きくすることが困難であるという問題があり、また、前記セルースの場合、圧電性が極性由来でないため、本質的に小さいという問題がある。
このため、従来における前記問題がなく、外部からの振動等を歪みエネルギーとして吸収してこれを効率良く電気に変換し、熱として放出可能であり、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用可能な圧電変換材料は未だ提供されていないのが現状である。
【0003】
【非特許文献1】
住田雅夫、「圧電性フィルムを用いた吸遮音構造体」、機能材料、株式会社シーエムシー出版、1995年11月、Vol.15, No.11
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の課題を解決することを目的とする。即ち、本発明は、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができ、低コストで、量産性、取扱性に優れた圧電変換材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含むことを特徴とする圧電変換材料である。
<2> 主鎖型液晶ポリマーが、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有する前記<1>に記載の圧電変換材料である。
<3> 主鎖型液晶ポリマーが、ポリエステルから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<4> 主鎖型液晶ポリマーが、芳香族ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<5> 芳香族ポリマーが、芳香族ポリエステルから選択される少なくとも1種である前記<4>に記載の圧電変換材料である。
<6> 芳香族ポリエステルが、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種をモノマーユニットとして含む前記<5>に記載の圧電変換材料である。
<7> 芳香族ポリマーが、下記構造式(1)で表される構造を含む前記<4>に記載の圧電変換材料である。
構造式(1)
【化2】
但し、n及びmは、重合度を表す。
<8> 主鎖型液晶ポリマーが、第二次高調波発生(SHG)活性を示す前記<1>から<7>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<9> 主鎖方向と略平行な方向に最大の分極率を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<10> フィルム状、線状、棒状、板状、粒状及び立方体状のいずれかに成形された前記<1>から<9>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<11> 接着用ポリマーを含有してなる前記<1>から<10>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
<12> 加熱前の室温における圧電変換材料の圧電性αと、該圧電変換材料を85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βと、から計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載の圧電変換材料である。該圧電変換材料は、前記減衰率が0.1以下であることにより、高温条件下で長期間保持された場合においても、圧電性能が十分に維持される。
<13> 制振材料として用いられる前記<1>から<12>のいずれかに記載の圧電変換材料である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電変換材料は、主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有していてもよい。
【0007】
−主鎖型液晶ポリマー−
前記主鎖型液晶ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有するもの、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステルが好ましく、芳香族ポリマーがより好ましく、芳香族ポリエステルが特に好ましい。
【0008】
前記芳香族ポリエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表1に示すような、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種をモノマーユニットとして含むもの、などが好適に挙げられる。
【0009】
【表1】
【0010】
前記芳香族ポリマーとしては、例えば、下記構造式(1)で表される構造を含むものが好適に挙げられる。
構造式(1)
【化3】
前記構造式(1)中、m及びnは重合度を表す。該m及びnの比(m:n)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90:10〜50:50が好ましく、80:20〜60:40がより好ましい。
【0011】
前記芳香族ポリマーとしては、前記構造式(1)で表される構造を含むもの以外に、下記各構造式で表される構造を含むもの、などが好適に挙げられる。
【0012】
【化4】
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【0018】
【化10】
【0019】
【化11】
【0020】
【化12】
【0021】
【化13】
【0022】
【化14】
【0023】
【化15】
【0024】
【化16】
【0025】
【化17】
【0026】
【化18】
【0027】
【化19】
【0028】
【化20】
【0029】
【化21】
但し、m及びn、は重合度を表す。Xは、−C(CH3)2−、−CH2−、−O−、−S−、又は−SO2−を表す。yは、0又は1を表す。
【0030】
【化22】
【0031】
前記主鎖型液晶ポリマーの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記スキームで表されるような合成方法などが挙げられる。なお、一般に、モノマーのモル比は一定であっても、例えば、反応温度、反応時間を適宜選択することにより、重合度の異なる前記主鎖型ポリマーを合成することができる。
【0032】
【化23】
但し、nは、整数を表す。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を表す。
【0033】
【化24】
但し、Acは、アセチル基を表す。x及びnは、整数を表す。
【0034】
【化25】
但し、Acは、アセチル基を表す。nは、整数を表す。
【0035】
【化26】
但し、nは、整数を表す。
【0036】
【化27】
但し、Acは、アセチル基を表す。nは、整数を表す。
【0037】
前記主鎖型液晶ポリマーは、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
なお、該市販品としては、デュポン株式会社製の「ゼナイト(登録商標)」、住友化学工業株式会社製の「スミカスーパー(登録商標)」、株式会社クラレ製の「ベクトラン(登録商標)」、大日本インキ化学工業株式会社製の「オクタ(登録商標)」、ポリプラスチックス株式会社製の「ベクトラ(登録商標)」、ユニチカ株式会社製の「ロッドラン」、日本石油化学工業株式会社製の「ザイダー(登録商標)」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の「ノバキュレート(登録商標)」、東レ株式会社製の「シベラス(登録商標)」、などが好適に挙げられる。
【0038】
前記主鎖型液晶ポリマーの特性としては、特に制限はないが、例えば、第二次高調波発生(SHG)活性を示すことが好ましく、また、主鎖方向と略平行な方向に最大の分極率を有することも好ましい。なお、前記主鎖型液晶ポリマーが前記SHG(Second Harmonic Generation)活性を示すのは、以下の理由によるものと推測される。即ち、図1及び図2(T. Watanabe et al. Jpn. J. Appl. Phys. 1996 . Vol . 35 . l 505 参照)に示すように、そのモノマーユニットの重合度に応じて分極率が大きくなる。そして、分子量が増加し、双極子モーメントd*がある点を超えたところで、対称中心を持たない相構造になるためと推測される。
【0039】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成膜を容易にする接着用ポリマー、などが好適に挙げられる。なお、前記接着用ポリマーとしては、公知のバインダー樹脂が挙げられる。
前記公知のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、ゴム(エラストマー系)、粘着剤、モノマー乃至オリゴマー、ポリマーアロイ、ポリイミド、天然物、無機物、などが挙げられる。
【0040】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル共重合体(アクリル)、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸共重合体(EVA)、塩化ビニル・プラスゾル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ナイロン11,12,共重合ナイロン、ポリエチレンテレフタレートの共縮合体、ポリブチレンテレフタレート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタン、などが挙げられる。
前記ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン天然ゴム,合成ポリイソプレンゴム、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリスルフィド、室温加硫型シリコーンゴム、塩化ゴム、臭化ゴム、グラフト・ポリクロロプレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、などが挙げられる。
【0041】
前記粘着剤としては、例えば、感圧接着剤、アクリル系、シリコーン系などが挙げられる。
前記モノマー乃至オリゴマーとしては、シアノアクリレート、紫外線硬化型接着剤、可視光硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤などが挙げられる。
前記ポリマーアロイとしては、例えば、ポリビニルホルマール又はブチラール/フェノリック、ニトリルゴム/フェノリック、ニトリルゴム/エポキシ、液状ニトリルゴム/エポキシ、エポキシ/フェノリックなどが挙げられる。
前記天然物としては、例えば、デンプン、デキストリンなどが挙げられる。
前記無機物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、セラミックスなどが挙げられる。
【0042】
前記その他の成分の前記圧電変換材料における含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害しない範囲内において適宜選択することができる。
【0043】
前記圧電変換材料の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、線状、棒状、板状、粒状、立方体状などが挙げられる。
【0044】
−圧電変換材料の製造方法−
前記圧電変換材料の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記合成方法により製造した主鎖型液晶ポリマーを用いて塗布、成形及びプレス処理から選択されるいずれかの処理をして任意の形状の成形体とした後、該成形体に対してポーリング処理を行うことが好ましい。
【0045】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、公知の塗布法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、バーコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、などが挙げられる。なお、前記圧電変換材料はラビング膜上に塗布するのが好ましい。該ラビング膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記塗布の際、溶剤を使用することができる。該溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、これらの溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記成形の方法としては、特に制限はなく、公知の成形法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧縮成形、トランスファ成形、射出成形、粉末成形、回転成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、エクストルージョンブロー成形、押出成形、吹込成形、カレンダ成形、熱成形、プレシャ成形、流動成形、ペースト成形、真空成形、発泡成形、積層成形、流動成形などが挙げられる。
【0047】
前記プレス処理の方法としては、特に制限はなく、公知のプレス方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
前記ポーリング処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ホットプレート上に前記成形体(圧電変換材料)を固定させた後、該成形体から適宜選択した距離にタングステン針を設置して、これに任意の電圧を印加することにより行うことができる。この場合に前記成形体の温度としては、該成形体の軟化点以上の温度に保持することが好ましい。
【0049】
前記圧電変換材料は、その加熱前の室温における圧電性αと、85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βとから計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0であることが特に好ましい。
前記圧電性の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法により測定することができ、例えば、圧電特性測定装置(例えば、d33メーター)などを用いて簡便に測定することができる。
前記減衰率が0.1以下に抑制されることにより、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができる点で有利である。
【0050】
前記圧電変換材料は、各種分野において好適に使用することができ、例えば、ピエゾフィルム、加速度センサ、マイクロホン、衝撃センサ、動的ひずみ計、スピーカ、赤外線センサ、温度変化センサ、などにそのまま適用することができ、また、マトリクス材料と共に複合材料化して圧電変換複合材料として使用することができ、制振材料等として特に好適に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら300℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で1時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーAを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーAを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約310℃であった。
なお、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0053】
構造式(1)
【化28】
【0054】
−ポーリング処理−
前記主鎖型液晶ポリマーAを約200μmの厚みにプレス処理し、シート状のサンプルAを作製した。これをホットプレート上に固定し、該サンプルAの上部から1.5cm離してタングステン針を設置し、これに9.5kVの電圧を印加してコロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Aを製造した。該圧電変換材料Aについて以下の減衰率の評価を行った。結果を表3に示す。
なお、前記サンプルAの温度は、前記コロナポーリング処理中、320℃に保持された。
【0055】
<減衰率評価>
加熱前の室温における前記圧電変換材料Aの前記圧電性αをd33メーターで測定したところ、5.8pC/Nであった。また、前記圧電変換材料Aを85℃に加熱した状態で7日間放置させた後に室温で同様の測定をしたところ、前記圧電性βは、5.8pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Aの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0であった。
【0056】
(実施例2)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら250℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で3時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーBを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーBを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約240℃であった。
また、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0057】
構造式(1)
【化29】
【0058】
得られた前記主鎖型液晶ポリマーBを用い、実施例1と同様にして、シート状のサンプルB(厚み:約200μm)を作製した後、前記コロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Bを製造した。なお、前記サンプルBの温度は、前記コロナポーリング処理中、260℃に保持された。
【0059】
また、製造した前記圧電変換材料Bについて、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、1.2pC/Nであり、前記圧電性βは、1.1pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Bの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.08であった。結果を表3に示す。
【0060】
(実施例3)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら280℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で1.5時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーCを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーCを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約270℃であった。
また、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0061】
構造式(1)
【化30】
【0062】
得られた前記主鎖型液晶ポリマーCを用い、実施例1と同様にして、シート状のサンプルC(厚み:約200μm)を作製した後、前記コロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Cを製造した。なお、前記サンプルCの温度は、前記コロナポーリング処理中、280℃に保持された。
【0063】
また、製造した前記圧電変換材料Cについて、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、7.4pC/Nであり、前記圧電性βは、7.2pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Cの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.03であった。結果を表3に示す。
【0064】
(実施例4)
−主鎖型液晶ポリマーの合成−
4−アセトキシ安息香酸137質量部、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸63質量部、及び酢酸カリウム0.01質量部を反応容器に仕込み、攪拌しながら150℃まで温度を上昇させ、十分に窒素置換させた。更に攪拌しながら290℃まで温度を上昇させ、発生する酢酸を除去させながら反応容器内を徐々に減圧させた。この状態で1時間攪拌し続け、下記構造式(1)で表される主鎖型液晶ポリマーDを合成した。
該主鎖型液晶ポリマーDを少量取り2枚のガラスにはさみ、加熱しながら偏光顕微鏡で軟化が始まる温度を観察したところ、約285℃であった。
また、下記構造式(1)におけるm及びnは、約m:n=73:27であった。
【0065】
構造式(1)
【化31】
【0066】
得られた前記主鎖型液晶ポリマーDを用い、実施例1と同様にして、シート状のサンプルD(厚み:約200μm)を作製した後、前記コロナポーリング処理することによりシート状の圧電変換材料Dを製造した。なお、前記サンプルDの温度は、前記コロナポーリング処理中、295℃に保持された。
【0067】
また、製造した前記圧電変換材料Dについて、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、9.5pC/Nであり、前記圧電性βは、9.4pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記圧電変換材料Dの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.01であった。結果を表3に示す。
【0068】
(比較例1)
比較例として、PVDFの圧電フィルム(厚み:約200μm)を用い、実施例1と同様にして圧電性の測定を行ったところ、前記圧電性αは、25.0pC/Nであり、前記圧電性βは、17.6pC/Nであった。該圧電性α及びβの測定結果より、前記PVDFの圧電フィルムの減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)を計算したところ、該減衰率は0.30であった。結果を表3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表3から、実施例1〜4では、85℃の条件下に7日保持されても圧電性の減衰は殆ど観られないが、比較例1のPVDFの場合では、約3割程度の減衰が観られる。以上により、本発明の圧電変換材料は、高温条件下に長期間保持された場合であっても、安定した圧電性が維持されることが判った。
【0071】
(実施例5)
下記構造式(1)で表される、ヒドロキシ安息香酸(HBA)と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(HNA)との共重合体(HBA:HNA=70:30(モル))である芳香族ポリエステルの液晶を合成した。
【0072】
構造式(1)
【化32】
【0073】
該芳香族ポリエステルの液晶については、比較的大きな第二次高調波発生(SHG活性)が観られ、強誘電性ネマチック相が発現しており圧電変換材料として機能するものであることが確認された。
【0074】
【発明の効果】
本発明によると、従来における問題を解決し、高温条件下で長期間保持された場合においても十分な圧電性能を維持し、耐熱性が要求される用途に対しても好適に使用することができ、低コストで、量産性、取扱性に優れた圧電変換材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、圧電変換材料におけるモノマーユニットの重合度に応じて該圧電変換材料の分極率が大きくなることを示す概念図である。
【図2】図2は、圧電変換材料におけるモノマーユニットの重合度に応じて該圧電変換材料の分極率が大きくなることを示す概念図である。
Claims (13)
- 主鎖型液晶ポリマーを少なくとも含むことを特徴とする圧電変換材料。
- 主鎖型液晶ポリマーが、環状基を少なくとも含む基本骨格を繰返し単位として有する請求項1に記載の圧電変換材料。
- 主鎖型液晶ポリマーが、ポリエステルから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の圧電変換材料。
- 主鎖型液晶ポリマーが、芳香族ポリマーから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の圧電変換材料。
- 芳香族ポリマーが、芳香族ポリエステルから選択される少なくとも1種である請求項4に記載の圧電変換材料。
- 芳香族ポリエステルが、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種をモノマーユニットとして含む請求項5に記載の圧電変換材料。
- 主鎖型液晶ポリマーが、第二次高調波発生(SHG)活性を示す請求項1から7のいずれかに記載の圧電変換材料。
- 主鎖方向と略平行な方向に最大の分極率を有する請求項1から8のいずれかに記載の圧電変換材料。
- フィルム状、線状、棒状、板状、粒状及び立方体状のいずれかに成形された請求項1から9のいずれかに記載の圧電変換材料。
- 接着用ポリマーを含有してなる請求項1から10のいずれかに記載の圧電変換材料。
- 加熱前の室温における圧電性αと、85℃に加熱した状態で7日間保持させた後の室温における圧電性βとから計算される減衰率((圧電性α−圧電性β)/圧電性α)が、0.1以下である請求項1から11のいずれかに記載の圧電変換材料。
- 制振材料として用いられる請求項1から12のいずれかに記載の圧電変換材料。
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