JP2004076096A - 鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】銅硫化鉱の湿式処理後の残渣からイオウと鉄分を分離して資源化利用するにあたり、イオウが不定形のため浮選分離などの公知技術では分離困難である。
【解決手段】残渣中の鉄分が親水性の微粒子となっていることを利用し、残渣をスラリーとして水と混ざり合わない有機溶剤と共に撹拌して単体イオウを選択的に抽出して、イオウ分を除いた鉄残渣粒子を水相にスラリーのまま残すことでイオウと鉄を効率的に分離し、溶剤から直接高品位のイオウを回収する。
【選択図】図1
【解決手段】残渣中の鉄分が親水性の微粒子となっていることを利用し、残渣をスラリーとして水と混ざり合わない有機溶剤と共に撹拌して単体イオウを選択的に抽出して、イオウ分を除いた鉄残渣粒子を水相にスラリーのまま残すことでイオウと鉄を効率的に分離し、溶剤から直接高品位のイオウを回収する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、たとえば金属精錬工程において鉱石から金属成分を湿式処理により浸出した残渣から湿式処理によりイオウを分離回収する方法に関わり、特に銅硫化鉱より銅を浸出したイオウと酸化水酸化鉄を主成分とする鉱石浸出残渣から効率的にイオウを分離回収するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在銅製錬では、硫化銅鉱を対象とした乾式製錬法が生産の主力となっている。これに対して、新規の硫化銅鉱製錬法として、たとえば特許公報;第2857930号あるいは米国特許;第6,007,600号などにあるような常温での製錬が可能な湿式精錬法が開発されつつある。銅湿式製錬法においては鉱石中のイオウは単体イオウとなって残渣に固定され二酸化イオウの発生を伴わない。このため環境負荷の少ない硫化銅鉱製錬法として注目される。
この湿式製錬法では、硫化銅鉱から銅を浸出・回収し、鉱石の残り成分であるイオウと鉄は、単体イオウと酸化水酸化鉄の形として浸出残渣に固定される。この浸出残渣中のイオウや鉄分は工業原料として利用可能であるが、そのためには残渣からのイオウ分と鉄分との分離が必要となる。たとえば、亜鉛の湿式精錬において同様のイオウと酸化鉄あるいは酸化水酸化鉄からなる浸出残渣を処理するために浮選法による分離を組み合わせてイオウの濃縮した精鉱とイオウを分離した鉄系残渣とに分離する公知技術が用いられている。
また、銅硫化鉱を対象にオートクレーブを用いて単体イオウの融点を超える温度で加圧浸出する処理の一環として、たとえば公表特許;特表平11−506166にあるように加圧浸出後の残渣から同様に浮選法でイオウを分離する技術が報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、たとえば前述の特許公報;第2857930号等における銅硫化鉱浸出残渣は、イオウと酸化水酸化鉄が粒径10ミクロン未満の極めて微細な粒となって凝集している上、イオウが不定形イオウからなり粒表面の撥水性が乏しいため、浮選法を主体とした公知技術では、分離困難である。このため、銅湿式製錬の浸出残渣は資源化利用ができず廃棄物として埋め立て・安定化処理する必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するため、
(1)銅硫化鉱浸出残渣からイオウを分離する工程において、残渣のスラリーを、イオウを溶解し水と混合しない有機溶剤と接触しイオウを選択的に浸出することを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法
【0005】
(2)上記(1)において、浸出残渣が銅硫化鉱を浸出した単体イオウと酸化水酸化鉄を主成分として含む残渣であることを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法
【0006】
(3)上記(1)において、抽出後の溶剤を油水分離後、ろ過し、ろ液を2〜25℃に冷却し、晶析イオウを回収する鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
(4)上記(1)において、溶剤がテトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン、ケロシンのいずれかである鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
【0007】
(5)上記(1)において、有機溶剤と接触する際の温度を85〜95℃に保持する鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
(6)上記(1)において、含溶剤排水を曝気処理し、溶剤と排水を分離回収する鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
を提供する。
【0008】
すなわち、本発明は銅鉱石を湿式法により処理した工程から得られる浸出残渣からイオウと鉄分とを分離回収する技術である。
以下本発明に関して詳細に説明する。
【0009】
単体イオウの分離法として例えば有機溶剤による抽出が考えられる。たとえば先に述べた公表特許;特表平11−506166では、処理の一環として、浮選法で分離したイオウに混入する硫化物鉱石を除くため、脱水乾燥して130℃以上の温度でイオウを溶融ろ過して粗製イオウを分離すると共に、この際ろ過残渣として得られる、表面に溶融イオウが付着した硫化物粒子からイオウを除くため溶剤抽出により洗浄している。
しかし、本発明で処理対象とする浸出残渣は銅浸出液をろ過分離した後の多量の水分を含むスラッジないしケークとなっているため、そのまま溶剤と混合しても水に撥かれて分散が進まない。溶剤で直接浸出残渣を処理するにはイオウに比べて多量の鉄残渣を含む浸出残渣の全量を脱水乾燥する必要があるため極めてコストを要し実用性が乏しかった。発明者らは検討の結果、浸出残渣を事前に乾燥しなくとも、残渣を水に溶いて分散したスラリーとした後、有機溶剤と混合することで、効率よくイオウを抽出し、溶剤から高品位のイオウが回収できることを見出した。
【0010】
抽出に用いる有機溶剤としては、水と溶解・混合せずかつイオウに対して十分に大きな溶解度を持つものであれば全て利用可能である。溶解度が高くかつ揮発による溶剤回収が容易な点では、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタンなどのハロゲン系溶剤が優れている。一方、溶剤の価格や使用にあたっての環境規制を考慮した場合はケロシンなどの脂肪族系溶剤が適している。これらの中ではイオウ溶解度が高く環境規制の対象となっていないテトラクロロエタンが最も適している。
【0011】
残渣スラリーの濃度は、残渣の凝集粒子が水中で分散し、スラリーを溶剤と撹拌したときに水/溶剤界面に十分効率よく接触する範囲であれば良い。実際には撹拌のし易さと、残渣中のイオウ量が溶剤の溶解度より少なくなるようにするため上限が制約される。
【0012】
スラリーからのイオウ抽出にあたっては溶剤の性状、特に溶解度を考慮して、溶剤とスラリーの混合比率、温度、撹拌抽出時間等の条件を選定する。
【0013】
テトラクロロエタンを用いた場合、通常の浸出残渣(乾燥後のイオウ品位25〜35%)を処理するにはO/A比(溶剤/スラリー体積比)=1/2〜2/1であり好ましくは、1:1である。パルプ濃度は、100〜150g/Lのスラリーが適している。
【0014】
温度が高いほどイオウの溶解度が上がり抽出効率が改善するが、溶剤の揮発に伴う、溶剤の損失・作業環境への負荷の問題があるため溶剤沸点よりは十分低い温度で処理する。テトラクロロエタン(沸点146℃)を用いた場合は、水の沸点以下が前提となるため、適した温度は85〜95℃であり、好ましくは、88〜92℃である。
【0015】
撹拌抽出の時間は溶剤の溶解能力を考慮して定める。残渣スラリーをテトラクロロエタンで処理したときのイオウ抽出率の時間変化を図2に示す。前記の標準的な条件の場合、20〜30分で抽出平衡に達する。
【0016】
撹拌後の溶剤とスラリーは溶媒抽出と同様に混合槽から分離槽に移して静置し分相させる。テトラクロロエタンを用いた場合は、水より比重が大きいため(比重1.59)溶剤は1、2分で下に沈みスラリーは上層に浮かぶ。浸出残渣中の酸化鉄は親水性の微粒子のため溶剤からは撥かれて水相にとどまり溶剤相にはほとんど混入しない。このため分相後は、イオウを選択的に抽出した溶剤と、イオウを除いた残渣スラリーとを容易に分離できる。
【0017】
イオウ抽出後の溶剤からイオウを回収するには、冷却晶析法あるいは蒸留濃縮法を用いる。冷却晶析法を用いる際の冷却温度は、2〜25℃、好ましくは5〜15℃である。温度が低いほどイオウの溶解度が低下し回収率が向上するが 2℃より低いと水分が凍る恐れがある。また、これ以上冷却しても溶解度低下が少なく冷却のエネルギーが無駄になるため余り低くするのは好ましくない。25℃より高いと溶剤に残るイオウ量が多くなり回収率の低下や後述の溶剤再利用でのイオウ溶解能力低下を招くため好ましくない。
蒸留濃縮方法は、溶剤に残留するイオウ分をより効果的に排除できる。溶剤を気化し、イオウ分と分離する。この際の蒸留温度は、大気圧下では150〜160℃である。また、減圧下においてより低温で蒸留することもできる。
高品位のイオウを回収するには冷却法が優れている。晶析イオウをろ別した後の溶剤、または蒸留で回収した溶剤は、再度イオウ抽出に利用する。
【0018】
イオウ抽出後のスラリーには若干量の溶剤が液滴として分散して取り込まれる。このため溶剤の回収を行う。テトラクロロエタンを用いた場合、90℃で127torr(16700Pa)の蒸気圧があるため、分離後の余熱を持つスラリーを85〜95℃に保温しながら空気で曝気処理することで溶剤を除去できる。曝気による溶剤除去効果を図3に示す。この時の排出蒸気は冷却し溶剤を回収する。
曝気処理はスラリー全量に対して行わなくともシックナーでスピゴットと水に分けて、水はイオウ抽出工程での残渣スラリー調製に繰り返して余熱を利用し、スピゴットのみを曝気処理することもできる。
【0019】
曝気処理で溶剤を回収した後のスラリーはろ過・脱水・乾燥を経て鉄化合物を回収する。この鉄残渣には未反応の硫化鉱の形でイオウ成分が残存するが、この硫化鉱は不定形イオウと異なり浮選分離が可能である。
鉄残渣の用途に応じてさらに残存イオウ品位を低減する必要があれば、浮選分離などの公知の技術により硫化鉱を除くことができる。
【0020】
以上に述べた本発明における処理フローの一態様として、「浸出残渣」を縣濁スラリーとして溶剤により処理するフローを図1に示す。
【実施例1】
以下、本発明の効果を検証するため、実際の「浸出残渣」を処理した結果を図4の物量バランスとともに詳細に説明する。
【0021】
表1に示す組成の「浸出残渣」を湿重量として347g(含水量28mass%、乾量として250g)とり、2.5リットルの水を加えてスラリーとし90℃に加熱した。
【表1】
このスラリーに有機溶剤(テトラクロロエタン)2.5リットルを加温して加え30分間撹拌した。
【0022】
撹拌後の混合試料を静置すると1分以内に有機溶剤と酸化水酸化鉄粒子の縣濁した水相とに分離した。残渣粒子の縣濁した水相を取り出し、再度新しく同量の溶剤を加えてイオウ抽出を繰返し計2段の抽出を行った。
イオウ抽出後の溶剤は、ろ過して縣濁物を除いた後、5℃に冷却してイオウを晶析させた。一段目抽出後の溶剤から晶析した単体イオウの量は56.2gであり、対象処理物中の単体イオウと硫化物イオウの合計である全イオウに対する回収率は60.8%、単体イオウ形態の溶剤抽出可能なイオウに対する回収率は68.1%であった。
【0023】
ろ過後の溶剤は、蒸留し、溶剤とイオウを別々に分離回収した。回収したイオウは20.2gで、全イオウの21.8%、単体イオウの24.5%が回収された。
【0024】
一段目の処理後スラリーは、二段目抽出を一段目と同じO/A比で行った。
抽出後溶剤を5℃に冷却したが、晶析イオウはゼロであった。
ろ過後の溶剤は、一段目と同様に蒸留し、イオウと溶剤を分離した。
この処理により回収されたイオウは、1.9g(全イオウの2.1%、単体イオウの2.3%)と少量であった。
【0025】
溶剤に抽出され回収したイオウの量は合計で78.3g(全イオウに対する回収率85%、単体イオウに対する回収率95%)であった。
【0026】
冷却で回収したイオウの品位分析結果を表2に示す。99.995mass%と極めて純度の高いイオウが回収できた。
【表2】
【0027】
また、この方法で処理した後の含溶剤スラリーは、曝気処理し、溶剤蒸気を回収し、抽出に再利用し、排水は、残渣洗浄に繰り返した。
【0028】
曝気処理後のスラリーをろ過、乾燥し鉄残渣を回収した。処理回収した鉄残渣の組成を表1にあわせて示す。このように、残渣中の全イオウ品位は6.5mass%、単体イオウ品位は2.3mass%まで低下した。
さらに浸出残渣原料中の鉄を97%まで、処理後の鉄残渣として回収した。これにより、鉄原料として、残渣も処理可能となった。
【0029】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、銅硫化鉱湿式製錬の産物である「浸出残渣」から有機溶剤を用いて
(1)浸出残渣を水と混合し、スラリー化することにより、前処理工程無しに、有機溶剤と浸出残渣を直接接触し、イオウを選択的に回収可能とした。
(2)高品位の単体イオウとして回収できる。
(3)イオウを除いた鉄分を鉄原料として分離回収することに寄与する。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における、処理のフローの一例を示す。
【図2】溶剤処理時の撹拌混合時間と単体イオウ抽出率の関係を示す。
【図3】曝気処理によるスラリーからの溶剤除去効果を示す。
【図4】実施例における処理結果と物量バランスを示す。
【産業上の利用分野】
本発明は、たとえば金属精錬工程において鉱石から金属成分を湿式処理により浸出した残渣から湿式処理によりイオウを分離回収する方法に関わり、特に銅硫化鉱より銅を浸出したイオウと酸化水酸化鉄を主成分とする鉱石浸出残渣から効率的にイオウを分離回収するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在銅製錬では、硫化銅鉱を対象とした乾式製錬法が生産の主力となっている。これに対して、新規の硫化銅鉱製錬法として、たとえば特許公報;第2857930号あるいは米国特許;第6,007,600号などにあるような常温での製錬が可能な湿式精錬法が開発されつつある。銅湿式製錬法においては鉱石中のイオウは単体イオウとなって残渣に固定され二酸化イオウの発生を伴わない。このため環境負荷の少ない硫化銅鉱製錬法として注目される。
この湿式製錬法では、硫化銅鉱から銅を浸出・回収し、鉱石の残り成分であるイオウと鉄は、単体イオウと酸化水酸化鉄の形として浸出残渣に固定される。この浸出残渣中のイオウや鉄分は工業原料として利用可能であるが、そのためには残渣からのイオウ分と鉄分との分離が必要となる。たとえば、亜鉛の湿式精錬において同様のイオウと酸化鉄あるいは酸化水酸化鉄からなる浸出残渣を処理するために浮選法による分離を組み合わせてイオウの濃縮した精鉱とイオウを分離した鉄系残渣とに分離する公知技術が用いられている。
また、銅硫化鉱を対象にオートクレーブを用いて単体イオウの融点を超える温度で加圧浸出する処理の一環として、たとえば公表特許;特表平11−506166にあるように加圧浸出後の残渣から同様に浮選法でイオウを分離する技術が報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、たとえば前述の特許公報;第2857930号等における銅硫化鉱浸出残渣は、イオウと酸化水酸化鉄が粒径10ミクロン未満の極めて微細な粒となって凝集している上、イオウが不定形イオウからなり粒表面の撥水性が乏しいため、浮選法を主体とした公知技術では、分離困難である。このため、銅湿式製錬の浸出残渣は資源化利用ができず廃棄物として埋め立て・安定化処理する必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するため、
(1)銅硫化鉱浸出残渣からイオウを分離する工程において、残渣のスラリーを、イオウを溶解し水と混合しない有機溶剤と接触しイオウを選択的に浸出することを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法
【0005】
(2)上記(1)において、浸出残渣が銅硫化鉱を浸出した単体イオウと酸化水酸化鉄を主成分として含む残渣であることを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法
【0006】
(3)上記(1)において、抽出後の溶剤を油水分離後、ろ過し、ろ液を2〜25℃に冷却し、晶析イオウを回収する鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
(4)上記(1)において、溶剤がテトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン、ケロシンのいずれかである鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
【0007】
(5)上記(1)において、有機溶剤と接触する際の温度を85〜95℃に保持する鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
(6)上記(1)において、含溶剤排水を曝気処理し、溶剤と排水を分離回収する鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
を提供する。
【0008】
すなわち、本発明は銅鉱石を湿式法により処理した工程から得られる浸出残渣からイオウと鉄分とを分離回収する技術である。
以下本発明に関して詳細に説明する。
【0009】
単体イオウの分離法として例えば有機溶剤による抽出が考えられる。たとえば先に述べた公表特許;特表平11−506166では、処理の一環として、浮選法で分離したイオウに混入する硫化物鉱石を除くため、脱水乾燥して130℃以上の温度でイオウを溶融ろ過して粗製イオウを分離すると共に、この際ろ過残渣として得られる、表面に溶融イオウが付着した硫化物粒子からイオウを除くため溶剤抽出により洗浄している。
しかし、本発明で処理対象とする浸出残渣は銅浸出液をろ過分離した後の多量の水分を含むスラッジないしケークとなっているため、そのまま溶剤と混合しても水に撥かれて分散が進まない。溶剤で直接浸出残渣を処理するにはイオウに比べて多量の鉄残渣を含む浸出残渣の全量を脱水乾燥する必要があるため極めてコストを要し実用性が乏しかった。発明者らは検討の結果、浸出残渣を事前に乾燥しなくとも、残渣を水に溶いて分散したスラリーとした後、有機溶剤と混合することで、効率よくイオウを抽出し、溶剤から高品位のイオウが回収できることを見出した。
【0010】
抽出に用いる有機溶剤としては、水と溶解・混合せずかつイオウに対して十分に大きな溶解度を持つものであれば全て利用可能である。溶解度が高くかつ揮発による溶剤回収が容易な点では、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタンなどのハロゲン系溶剤が優れている。一方、溶剤の価格や使用にあたっての環境規制を考慮した場合はケロシンなどの脂肪族系溶剤が適している。これらの中ではイオウ溶解度が高く環境規制の対象となっていないテトラクロロエタンが最も適している。
【0011】
残渣スラリーの濃度は、残渣の凝集粒子が水中で分散し、スラリーを溶剤と撹拌したときに水/溶剤界面に十分効率よく接触する範囲であれば良い。実際には撹拌のし易さと、残渣中のイオウ量が溶剤の溶解度より少なくなるようにするため上限が制約される。
【0012】
スラリーからのイオウ抽出にあたっては溶剤の性状、特に溶解度を考慮して、溶剤とスラリーの混合比率、温度、撹拌抽出時間等の条件を選定する。
【0013】
テトラクロロエタンを用いた場合、通常の浸出残渣(乾燥後のイオウ品位25〜35%)を処理するにはO/A比(溶剤/スラリー体積比)=1/2〜2/1であり好ましくは、1:1である。パルプ濃度は、100〜150g/Lのスラリーが適している。
【0014】
温度が高いほどイオウの溶解度が上がり抽出効率が改善するが、溶剤の揮発に伴う、溶剤の損失・作業環境への負荷の問題があるため溶剤沸点よりは十分低い温度で処理する。テトラクロロエタン(沸点146℃)を用いた場合は、水の沸点以下が前提となるため、適した温度は85〜95℃であり、好ましくは、88〜92℃である。
【0015】
撹拌抽出の時間は溶剤の溶解能力を考慮して定める。残渣スラリーをテトラクロロエタンで処理したときのイオウ抽出率の時間変化を図2に示す。前記の標準的な条件の場合、20〜30分で抽出平衡に達する。
【0016】
撹拌後の溶剤とスラリーは溶媒抽出と同様に混合槽から分離槽に移して静置し分相させる。テトラクロロエタンを用いた場合は、水より比重が大きいため(比重1.59)溶剤は1、2分で下に沈みスラリーは上層に浮かぶ。浸出残渣中の酸化鉄は親水性の微粒子のため溶剤からは撥かれて水相にとどまり溶剤相にはほとんど混入しない。このため分相後は、イオウを選択的に抽出した溶剤と、イオウを除いた残渣スラリーとを容易に分離できる。
【0017】
イオウ抽出後の溶剤からイオウを回収するには、冷却晶析法あるいは蒸留濃縮法を用いる。冷却晶析法を用いる際の冷却温度は、2〜25℃、好ましくは5〜15℃である。温度が低いほどイオウの溶解度が低下し回収率が向上するが 2℃より低いと水分が凍る恐れがある。また、これ以上冷却しても溶解度低下が少なく冷却のエネルギーが無駄になるため余り低くするのは好ましくない。25℃より高いと溶剤に残るイオウ量が多くなり回収率の低下や後述の溶剤再利用でのイオウ溶解能力低下を招くため好ましくない。
蒸留濃縮方法は、溶剤に残留するイオウ分をより効果的に排除できる。溶剤を気化し、イオウ分と分離する。この際の蒸留温度は、大気圧下では150〜160℃である。また、減圧下においてより低温で蒸留することもできる。
高品位のイオウを回収するには冷却法が優れている。晶析イオウをろ別した後の溶剤、または蒸留で回収した溶剤は、再度イオウ抽出に利用する。
【0018】
イオウ抽出後のスラリーには若干量の溶剤が液滴として分散して取り込まれる。このため溶剤の回収を行う。テトラクロロエタンを用いた場合、90℃で127torr(16700Pa)の蒸気圧があるため、分離後の余熱を持つスラリーを85〜95℃に保温しながら空気で曝気処理することで溶剤を除去できる。曝気による溶剤除去効果を図3に示す。この時の排出蒸気は冷却し溶剤を回収する。
曝気処理はスラリー全量に対して行わなくともシックナーでスピゴットと水に分けて、水はイオウ抽出工程での残渣スラリー調製に繰り返して余熱を利用し、スピゴットのみを曝気処理することもできる。
【0019】
曝気処理で溶剤を回収した後のスラリーはろ過・脱水・乾燥を経て鉄化合物を回収する。この鉄残渣には未反応の硫化鉱の形でイオウ成分が残存するが、この硫化鉱は不定形イオウと異なり浮選分離が可能である。
鉄残渣の用途に応じてさらに残存イオウ品位を低減する必要があれば、浮選分離などの公知の技術により硫化鉱を除くことができる。
【0020】
以上に述べた本発明における処理フローの一態様として、「浸出残渣」を縣濁スラリーとして溶剤により処理するフローを図1に示す。
【実施例1】
以下、本発明の効果を検証するため、実際の「浸出残渣」を処理した結果を図4の物量バランスとともに詳細に説明する。
【0021】
表1に示す組成の「浸出残渣」を湿重量として347g(含水量28mass%、乾量として250g)とり、2.5リットルの水を加えてスラリーとし90℃に加熱した。
【表1】
このスラリーに有機溶剤(テトラクロロエタン)2.5リットルを加温して加え30分間撹拌した。
【0022】
撹拌後の混合試料を静置すると1分以内に有機溶剤と酸化水酸化鉄粒子の縣濁した水相とに分離した。残渣粒子の縣濁した水相を取り出し、再度新しく同量の溶剤を加えてイオウ抽出を繰返し計2段の抽出を行った。
イオウ抽出後の溶剤は、ろ過して縣濁物を除いた後、5℃に冷却してイオウを晶析させた。一段目抽出後の溶剤から晶析した単体イオウの量は56.2gであり、対象処理物中の単体イオウと硫化物イオウの合計である全イオウに対する回収率は60.8%、単体イオウ形態の溶剤抽出可能なイオウに対する回収率は68.1%であった。
【0023】
ろ過後の溶剤は、蒸留し、溶剤とイオウを別々に分離回収した。回収したイオウは20.2gで、全イオウの21.8%、単体イオウの24.5%が回収された。
【0024】
一段目の処理後スラリーは、二段目抽出を一段目と同じO/A比で行った。
抽出後溶剤を5℃に冷却したが、晶析イオウはゼロであった。
ろ過後の溶剤は、一段目と同様に蒸留し、イオウと溶剤を分離した。
この処理により回収されたイオウは、1.9g(全イオウの2.1%、単体イオウの2.3%)と少量であった。
【0025】
溶剤に抽出され回収したイオウの量は合計で78.3g(全イオウに対する回収率85%、単体イオウに対する回収率95%)であった。
【0026】
冷却で回収したイオウの品位分析結果を表2に示す。99.995mass%と極めて純度の高いイオウが回収できた。
【表2】
【0027】
また、この方法で処理した後の含溶剤スラリーは、曝気処理し、溶剤蒸気を回収し、抽出に再利用し、排水は、残渣洗浄に繰り返した。
【0028】
曝気処理後のスラリーをろ過、乾燥し鉄残渣を回収した。処理回収した鉄残渣の組成を表1にあわせて示す。このように、残渣中の全イオウ品位は6.5mass%、単体イオウ品位は2.3mass%まで低下した。
さらに浸出残渣原料中の鉄を97%まで、処理後の鉄残渣として回収した。これにより、鉄原料として、残渣も処理可能となった。
【0029】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、銅硫化鉱湿式製錬の産物である「浸出残渣」から有機溶剤を用いて
(1)浸出残渣を水と混合し、スラリー化することにより、前処理工程無しに、有機溶剤と浸出残渣を直接接触し、イオウを選択的に回収可能とした。
(2)高品位の単体イオウとして回収できる。
(3)イオウを除いた鉄分を鉄原料として分離回収することに寄与する。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における、処理のフローの一例を示す。
【図2】溶剤処理時の撹拌混合時間と単体イオウ抽出率の関係を示す。
【図3】曝気処理によるスラリーからの溶剤除去効果を示す。
【図4】実施例における処理結果と物量バランスを示す。
Claims (6)
- 銅硫化鉱浸出残渣からイオウを分離する工程において、イオウを含有する残渣のスラリーを、イオウを溶解し水と混合しない有機溶剤と接触し、イオウを選択的に浸出することを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
- 請求項1において、浸出残渣が銅硫化鉱を浸出した単体イオウと酸化水酸化鉄を主成分として含む残渣であることを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
- 請求項1において、抽出後の溶剤を油水分離後、ろ過し、ろ液を2〜25℃に冷却し、晶析イオウを回収することを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
- 請求項1において、溶剤がテトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン、ケロシンのいずれかであることを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
- 請求項1において、有機溶剤と接触する際の温度を85〜95℃に保持することを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
- 請求項1において、含溶剤排水を曝気処理し、溶剤と排水を分離回収することを特徴とする鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法。
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JP2002237889A JP2004076096A (ja) | 2002-08-19 | 2002-08-19 | 鉱石浸出残渣からのイオウ分離方法 |
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CN114772558A (zh) * | 2022-04-27 | 2022-07-22 | 长沙华时捷环保科技发展股份有限公司 | 一种高硫矿/渣中单质硫的提取工艺 |
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2002
- 2002-08-19 JP JP2002237889A patent/JP2004076096A/ja active Pending
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