JP2004073619A - 分割型複合繊維からなる吸水材 - Google Patents
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Abstract
【課題】水分の漏れ、濡れ感、水分のシミ出しがなく、優れた着用感が得られ、また洗濯が可能で繰り返し使用できる吸水材を提供すること。
【解決手段】成分Aのポリマ相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーの少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
【選択図】なし
【解決手段】成分Aのポリマ相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーの少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性に優れているということはもちろん、おしめ用途に用いられたときに優れた快適性と実用性を発揮できる等の特徴を有する吸水材に関し、さらに詳しくは、病院や家庭で使用されるおしめ、衣服や、雑貨に使用される吸汗材などの用途に好適な吸水材、また水等の液体を入れた容器の包装材を初めとした資材用製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より使用されている吸水材の代表的なものは、特開平6−63076号号公報、特開平7−96005号号公報、特開平8−196559号号公報等に記載のアクリル系などの高分子吸収体を主体としたものであり、水分の吸収量は多いのであるが、使用後は再利用(洗濯)ができず捨てられ、産業廃棄物として扱わざるを得なく、環境上や省資源・省エネルギーという理念の上では問題があった。
【0003】
また、特開平6−245952号公報には、再利用のできる布帛よりなる吸収体についての発明が記載され、具体的には2種類以上の非相溶性の熱可塑性重合体が繊維断面において積層面の80%以上が繊維断面の長軸を横切り、平均して3層以上でランダムまたは並列に積層されている円形ないし扁平な横断面を有する複合繊維からなるステープルから形成した不織布よりなる吸収体を備えた体液吸収用物品に関する発明が提案されている。しかし、このものは本発明者らの検討によれば、高い吸水容量と洗濯耐久性に専ら主眼をおいたものであり、特に、該発明の吸収材は2種類以上の非相溶性の熱可塑性重合体が繊維断面において積層面の80%以上が繊維断面の長軸を横切り、平均して3層以上でランダムまたは並列に積層されている複雑な繊維横断面を有しており、紡糸が難しい。そのため、ポリマーの相対粘度を紡糸性が良好となる範囲にする必要があった。また、長時間にわたって直接肌に当てるようなおむつの分野では、風合い(肌触り)や吸放湿性(ドライ感)が良いことが要求されるが、従来技術ではステープルにおけるフィブリル化している繊維の本数割合が20%以下であるために十分な吸水量が得られず、また風合いにおいても分割し切れなかった太い単繊維が多くあるために吸水材としての性能は十分でなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来技術の問題を解決し、繊維の生産性(生産収率)、風合い(肌触り)、吸湿性(ドライ感)、吸水性能に優れた吸水材を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0006】
すなわち、一方の成分Aが相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーの少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の吸水材について説明をする。
【0008】
一方の成分Aが相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーの少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
【0009】
本発明において該吸水材を構成する繊維はカーディング等の加工性の観点から分割型複合繊維を原料繊維とするものでなければならない。
【0010】
すなわち、もし単独ポリマで細い繊度の合成繊維を得ようとすると、繊維の製造過程で紡糸性・延伸性が悪化し、生産収率が低下する結果となる。更に高次加工のカーディングの際にもカード通過性が悪くなる。特に1.1dtex未満の繊度を得ようとするとウェッブ垂れ、ローラー巻き付き等が多発し生産収率が低下する。繊度に関しては後に詳細に説明するが、本発明は吸収材としての機能性をより高いものとするために、構成する繊維は水分の吸水性・保水性、更には風合いが良好なものを得る観点から単糸繊度0.01dtex〜3dtexの範囲以内で細くなければならない。本発明でいう分割型複合繊維とは、サイドバイサイド(バイメタル)繊維、海島型繊維やフィブリル型繊維のような種類であってもよい。
【0011】
また、分割型複合繊維を構成するポリマーについては、両者ポリマーのポリマー接着が適度な外的圧力(物理分割)処理または適度な化学薬品濃度(化学薬品分割)で分割しやすく、また吸水材として風合いが良好であり、更に再利用性(洗濯耐久性)に優れているという観点から、一方の成分Aがポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマー(PET)の少なくとも2成分で構成されていることが重要である。
【0012】
かかるポリカプラミドポリマーについては、ポリε−カプラミド(ナイロン6)からなるポリカプラミドが好適であるが、セバシン酸、イソフタル酸、パラキシレンジアミドなどを構成成分とするポリカプラミドあるいはこれらの共重合ポリカプラミド等を用いても良い。良好な風合いと肌触り、良好な吸湿性を有するという観点からは、ナイロン6(N6)ポリマーが好ましい。更に該ポリマーの相対粘度が繊維生産性(紡糸性)及び吸水材としての性能に大きく関与する理由から2.30以上4.20以下の範囲であることが必要であり、好ましくは前述した同じ理由から2.40以上3.50以下が好ましく、また前述した同じ理由から、更に好ましくは2.50以上2.80以下である。
【0013】
もし、A成分の相対粘度が2.30未満である場合、紡糸時にポリマ粘度が低いため、紡糸用口金の表面(吐出孔周辺)にポリマがベタ付き、糸切れが発生したり、繊維の製品中に樹脂状の塊が混入するために好ましくない。また、吸水材としての性能に関しても、吸水材としての塩素や過酸化水素等に対する耐薬品性や強度(引張強力)耐摩耗性(洗濯耐久性)が低下するため、好ましくない。
【0014】
逆に相対粘度が4.20以上の場合、粘度が高いためにパック内のポリマーの流れが悪くなり、単糸切れが発生したり、パック内の圧力が上昇して紡糸性が悪化するために好ましくない。また、吸水材としての性能に関しても、吸水材としての強度が高くなる反面、風合いが硬くなるため、好ましくない。
【0015】
一方、ポリエステルポリマーについては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン2,5−ジカルボン酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオル、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩等の芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸;ジオール;ヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等から合成される繊維形成性ポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートなどを主成分とするポリエステルが好ましい。中でも、構成単位の80モル%以上、特に90モル%以上がエチレンテレフタレート単位またはブチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましい。
【0016】
また、得られるポリエステルが線状である範囲内でグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多官能成分を共重合したものであっても何等さしつかえない。
【0017】
これらのポリマーは、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の艶消剤、染料または顔料等の着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。本発明ではこれらのポリエステルの中でも、分割処理(一例として、物理的衝撃処理:ウォータージェットパンチ或いはニードルパンチによる分割処理)を施す上で生産性(分割性:ポリカプラミドポリマーとの剥離性)が良好であり、かつ吸収材(おしめ等)として使用する際にポリエステルポリマーの中でも特に風合い(肌触り)が良好であるという観点からポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0018】
また、これらのポリマーには、第3成分が共重合されていてもよいし、染料または顔料等の着色剤、蛍光増白剤、耐光性改良剤、耐熱安定剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0019】
また、上記の他にポリマの添加剤として、紡糸性、カード通過性が良好となる観点から不活性粒子を含有させることが好ましい。具体的には酸化チタン(二酸化チタンを含む)、コロイダイルシリカ、湿式シリカ、乾式シリカ等の酸化ケイ素、カリオン、炭酸カルシウム、ジルコニアを用いることができる。その中でも酸化チタンは紡糸性、繊維風合い(色調・柔らかさ・ソフト風合い)の点でより好ましい。
【0020】
また、本発明における分割型複合繊維のポリカプラミド成分Aとポリエステル成分Bとの複合比率については、紡糸性、分割性が良好である観点から、A:B=20wt%:80wt%〜80wt%:20wt%の範囲が好ましい。更に好ましくは、吸湿性、風合、耐久性(繊維自体の強度)が良好となる観点から、ポリカプラミドの比率の高いA:B=65wt%:35wt%〜75wt%:25wt%が良いものである。
【0021】
本発明において、先にも述べたように吸水材を構成する繊維は吸水量を多くするという観点から繊維の太さは重要で、細い方が繊維表面積が多くなり、また繊維間に生じる空間が小さくなるため毛細管現象が有効に利用でき、水分の保持が良くなるので好ましい。
【0022】
具体的には、単糸(単繊維)あたりの繊度が0.01dtexから3dtexの範囲でなければならず、これより細いと水分の保持が良すぎ、洗濯性、乾燥性が悪くなり再利用が困難となる場合がある。また、単繊維に剛性がないので空隙の保持性が悪くなる問題も生じる。逆に、単糸繊度が3dtexより太くなると、太過ぎるため繊維相互が生じる空間が大きくなり水分の保持が悪くなると同時に使用中水分の移動が起こりやすくなり水分のしみ出しが生じるという不都合がある場合がある。吸水性が良好であるという観点から分割率(繊維断面の分割数:最大で7分割)は高い方が好ましく、分割後の繊度は、0.1dtexから0.8dtexの範囲がより好ましい。また更に好ましくは、上記理由に加えて風合いが良好となる観点から0.15dtexから0.35dtexの範囲が好ましい。
【0023】
かかる繊維の断面形状は、中実、中空、三角型、T型、扁平、涙型などいかなる断面でも使用することができる。特に繊維表面積が大きくなるものが好ましく、*印型、三角型、扇型、十字型、T型、Y型、H型、π型、涙型など複雑な断面は水分の保持が良く、特に好ましい。この中でも、更に分割性が良好であるという観点から*印型と三角型あるいは扇型が好ましい。
【0024】
本発明における分割型複合繊維の繊維形態としては、低コスト、加工のしやすさという点から短繊維(ステープル)が望ましく、繊維の切断長である繊維長についてはカード通過性が良好となる観点から20mm以上115mm以下の範囲であれば好ましく、生産性(収率)の観点から30mm以上70mm以下であればより好ましい。
【0025】
本発明の吸水材は、該分割型複合繊維よりなる布帛状のもので構成されている。
【0026】
該布帛状とは、不織布状、織物、編み物等のシート形状を呈しているものをいい、これら形態を呈するものであれば使用できる。中でも不織布状のものが、厚さ、空隙量など容易に変更できる上、価格的にも有利であるので好ましい。
【0027】
かかる布帛は、繊維と空隙により構成されるが、吸水性を良くするためには空隙と単繊維の表面積を多くして毛細管現象によって水分を保持するようにすることが必要である。
【0028】
布帛状吸水材は、空隙量が10cc/100cm2 以上を有するものであることが必要である。該単位中の100cm2 は底面積を意味するものであり、一定の面積のもとでどれほどの空隙を有するかをパラメータで表しているものであり、同じものを2枚積層して厚さが倍になれば、空隙量は2倍になる。
【0029】
空隙量は、布帛の容積から繊維の占める容積を差し引いた値で示されるものであり、すなわち、毛細管現象により水分が吸収された量となるわけで、多ければ多いほど量的な面で吸水性能を発揮できる可能性が大きいものである。
【0030】
本発明者らの各種知見によれば、10cc/100cm2 未満であれば空隙量が少なく吸水する状態にすることが難しく、例えば、おしめ用とした場合液体の漏れが生じやすく使用することはできない。1回あたりの尿量は150ccから200ccであり、2回分以上に当たる最大空隙量は500cc/100cm2 まであれば効果的に十分である。
【0031】
一方、これ以上になれば、空間が多すぎて毛細管現象がなくなり(吸水する力が弱くなる)、また押さえたときに圧縮量が大きいため含んだ水分を押し出すこととなり好ましくない場合がある。
【0032】
布帛状吸水材の空隙量とは、次の式で表わされるものである。
【0033】
布帛の空隙量=布帛の容積−布帛を構成する繊維の容積
布帛状吸水材の容積は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定して算出する。また、布帛状吸水材を構成する繊維の容積(実容積)は、布帛の重量と容積を測定し、重ねた布帛の枚数で除して(割って)算出する。また布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を算出し、所定の繊維の比重から算出するものである。
【0034】
布帛状吸水材として空隙量が10cc/100cm2 以上を有するものを得るには、上述からもわかるように、積層の枚数を適宜に調整したり、1枚の布帛状吸水材の前駆体であるウエブと呼ばれる繊維構造体の目付けを適宜に変更したり、あるいは、複合繊維の複合比率、複合繊維形態(分割後の繊維の単繊維繊度や断面形態など)が挙げられ、また該繊維が短繊維(ステープル)である場合は繊維長(カット長)、捲縮数・捲縮率が挙げられ、更に分割処理時の処理条件、例えば、パンチング圧力・回数、分割処理された繊維・未分割繊維の存在比率等の組合せにより達成でき、一律的に言うことは難しいものであるが、当業者であれば適宜に各種条件を組合せて実施することが可能と解されるものである。
【0035】
布帛状吸水材の厚さは、扱い性からは薄いほど良いが、空隙量からは厚い方がよい。少なくとも0.5mmはあることが必要で、好ましくは最大20mmまでである。0.5mm以下では空隙量が少なく従って吸水量が少なく使用することはできない。また20mm以上では空隙量は大きく吸水量も多くなるが、扱い性、着用時の違和感、価格の面から使用できない。最も好ましいのは3mmから15mmである。
【0036】
布帛状吸水材の比重は0.07〜0.5g/ccの範囲が好ましい。0.07g/cc未満では空隙量は多くなるが、毛細管現象による水分の保持および圧縮率が多くなることによる押さえたときの水分のしみ出しが多くなるので好ましくない。また0.5g/cc以上は逆に繊維占有空間が多く、水分保有量が少なくなり、重く、硬く、高価となるので好ましくない。最も好ましい範囲は0.1〜0.4g/ccである。
【0037】
布帛状吸水材として比重が0.07〜0.5g/ccのものを得るには、積層の枚数を適宜に調整することにより達成することができ、特に、比重が0.1〜0.4g/ccのものを得るには、上記方法に加えて、該吸水材の前駆体であるウエブと呼ばれる繊維構造体の目付けを適宜に変更することにより達成することができるものである。この比重の値を上述特定のものとして得る場合にも、上述した空隙量が10cc/100cm2 以上のものとするための各種条件の組合せを行なって該比重のものを得ることが可能である。
【0038】
布帛状吸水材は、その圧縮率が30%以下を示すものであるのが好ましい。圧縮率が30%を越えるものでは布帛が水分を含んだときに指などで押さえるとへこみ、空隙量が少なくなり、その分水分がしみ出ることとなり、本発明の目的にそぐわないものとなる方向だからである。また、全く圧縮しないものは硬すぎて使用上問題となるので、好ましくは2%までである。
【0039】
圧縮率の測定は、布帛状吸水材を重ねて5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 を加えて厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0040】
圧縮率(%)=(T1−T2)×100/T1
布帛状吸水材として圧縮率が30%以下のものを得るには、該吸水材の前駆体であるウエブと呼ばれる繊維構造体の目付けを適宜に変更することにより達成することができ、特に、圧縮率が2%までとするのは、上記方法に加えて該吸水材を構成する複合繊維の単繊維繊度(分割前の単繊維繊度)を0.01dtex〜3dtexの範囲で変更することにより達成することができるものである。この圧縮率の値を上述特定のものとして得る場合にも、上述した空隙量が10cc/100cm2 以上のものとするための各種条件の組合せを行なって該圧縮率のものを得ることが可能であり、特に、分割後の単繊維繊度値が重要となる。
【0041】
布帛状吸水材は、分割型複合繊維で構成されなければならない。
【0042】
単独ポリマによる合成繊維では繊度が太いために、風合い(肌触り)や吸水性の点において吸水材としては不適当である。天然繊維の場合の場合においても繊維自身が吸水するため繊維自身に濡れ感が生じ、使用時に不快を覚え、また繰り返し使用する際洗濯による劣化が早く吸収材としては不適当である。
【0043】
また、アクリル系高分子吸水体は、洗濯ができないため使い捨てとなるので産業廃棄物問題が生じるから好ましくない。
【0044】
ただし、複数層として使用する場合は、中心層に吸水吸湿性のある天然繊維、例えば、木綿、羊毛、麻などの布帛を使用することはかかる問題は生じにくくなり使用することが可能である。また、同様に合成繊維もポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのいずれも複数層として使用することができる。
【0045】
布帛状吸水材の構造は、不織布状、織物、編み物等いずれでも良いが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには不織布状のものが好ましい。不織布状として得るための繊維の結合はニードルパンチ、ウオーターパンチ、熱固定、接着剤などいずれの方法でも良い。1dtex以下の細い繊度の繊維を得る手段としてはメルトブロー、スパンボンド、海島繊維を利用した海部分を薬液溶出して得る繊維、複合繊維を高圧水流により繊維を分割して得る繊維などいずれのものでも使用できる。
【0046】
好ましくは分割型複合繊維である単繊維を高圧水流による分割する手段によるものであり、安定した不織布構造物と、複合繊維を複数に分割する作業が一度に完了するので低価格で布帛を得ることができる。単純に細い繊維をそのまま不織布とする方法は加工上、特にカード機通過に問題が出やすいので好ましくない。
【0047】
また、長繊維不織布であるメルトブローは細繊度を得ることができるが、吸水材として好ましい素材であるポリエステルとかナイロンは複雑な技術が必要となりまた洗濯耐久性の点で好ましくない。さらに海島複合繊維による海溶出方式は細い繊維を得ることはできるのであるが、加工工程が複雑で高価となるので好ましくない。
【0048】
かかる水流分割複合繊維はできるだけ低い水圧で分割、交絡できることが好ましいが、50kg/cm2 以上はあることが好ましく、50kg/cm2 未満では低水圧で分割することができる繊維が必要となるが、そのような繊維はカード機で開繊シート状とする際とか原綿作成時の延伸行程などでも分割が起こり、製品となすことは難しいものである。該水圧は最大250kg/cm2 程度までで、該値以上では得られる布帛が締まりすぎて空隙量が少なくなるので好ましくない。
【0049】
また、水分の吸着をさらに良くするために、吸水剤を繊維の表面に付着させるのがよい。シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの吸水剤を接着剤により繊維表面に付与する。吸水性を得ることができるものであれば、どのようなものでも使用することができる。性能は、JIS 1096の吸水性測定法のB法バイレックによる吸水性が50mm以上であれば有効で、50mm未満では水分の拡散が悪く、吸水性が悪くなり、水分の漏れが生じやすくなる。
【0050】
さらに、布帛状吸水材を構成する繊維に抗菌性が付与されていることが好ましい。たとえば、大腸菌とか黄色ブドウ状球菌の繁殖を防止するため有機、無機等の抗菌剤を付与しておくのがよい。抗菌性のあるものはいずれのものでも使用できるが、有機物では、第四級アンモニュウム塩化合物、クロルヘキシジンなど、無機物では銀ゼオライト、硫化銅等が使用できる。また、抗菌性を付与することは、菌の発生するにおいを防止することができるので好ましい。
【0051】
かかる抗菌剤の付与手段は、合成繊維への練り混み、後加工時に接着剤とともに表面に付着させる方法等が採用でき、いずれの付与方法でもよい。抗菌性の測定は繊維製品新機能評価協議会で規定する統一試験方法による測定で、静菌活性値で2以上あればよい。
【0052】
布帛状吸水材は、複数層で構成されていることが好ましい。
【0053】
本発明において、本発明に係る布帛状吸水材は単独層で使われる場合もあるものであるが、ここで言う複数層とは、同種類の層を重ね合せて積層したり、また構成する繊維の太さを変えた層と組み合わせたりすることを言うものである。布帛状吸水材が複数層で構成されていると、製品の要求吸水量に応じ積層層数の調整ができるので、容易に吸水量対応ができるために好ましい。層数は細かく対応できるよう2層から20層などのものが好ましく用いることができる。「同種類の層」とは、必ずしも各層が厳密にポリマー使い、繊度、厚さ、密度など全てにおいて等しい層を言うものではなく、少なくともポリマー使いが本発明の請求項1に記載した2成分に該当するポリマと同一であれば、同種類の層であると言うものである。
【0054】
表面層を構成する合成繊維は、他の層より太い繊維で構成されていることが好ましい。吸水した際、水分は毛細管現象により太い繊維で構成された層を素早く通過し、単繊維表面積の大きい細い繊維で構成された層に吸収されるからである。布帛が単一層の場合は水分が飽和状態となると表面が濡れた状態となり、たとえば、おしめ用途等は不快感を与えるものとなる。さらに、表面層に太い繊維を配置することにより濡れ感は少なくなるので好ましい。かかる表面層を構成する繊維の太さは他の層よりも2倍以上の太さがあれば有効となる。かかる複数層の結合は積層し、ニードルとか水流によるパンチ、接着剤での接着、縫製による結合などいずれの結合法でも利用できる。
【0055】
さらに、濡れ不快感をなくするために吸水布帛層に加え、独立した布帛が重ね合わせていることが好ましい。ここで言う独立布帛とは、吸水布帛とは全く異なった布帛を吸水布帛と重ねて構成するものであり、例えば、濡れ感防止の機能を有するものなどが好適なものである。かかる独立布帛は、織物、編み物、不織布等のうちいずれの形態でも使用でき、フイルム状のものは不適当である。
【0056】
特に編み物が柔らかさの点で好ましく使用できる。素材は天然繊維のような吸水性があるものは洗濯後の乾燥に時間がかかり、また、濡れ感が残るため好ましくなく、合成繊維の方が好ましい。また、吸水布帛層が水分を早く吸収できるように独立布帛は通気量が多い方が良く、300cc/cm2 /sec以上あることが好ましく、以下では水分の透過が阻害されるので良くない。多い方が良いが、あまり多いと吸水布帛層が人体と接触し濡れて不快感を与えるものとなるので、5000cc/cm2 /sec程度までが好ましい。
【0057】
通気量の測定方法は、JIS L1096の通気性測定A法による。
【0058】
また、独立した布帛は、濡れ不快感をさらに少なくするため、表面層と他の層が異なる繊維または構造になっていることがさらに好ましい。たとえば、表面層が水分の透過をさせやすいように太い繊維で構成されて粗な構造とし、他の層は細い繊維で構成して密な構造とし、表面層に接触した水分は表面層を早く通過し、他の層はこれを吸収拡散するので濡れ感は改善すると同時に水分移行が早く行われる。
【0059】
また、他の濡れ感の回避手段として、布帛状吸水材と人体が接触しないようにメッシュ状布帛を介在させることが好ましい。さらには、かかるメッシュ状布帛は撥水性を付与することが好ましい。
【0060】
かかる独立した表面布帛は、布帛状吸水材の片面に部分的に結合されているが、反対面である裏面に結合され、サンドイッチ状となっていてもよい。
【0061】
撥水レベルはJIS L1092「繊維製品の防水試験方法」のA法、スプレー法による2級以上あれば使用できる。
【0062】
撥水剤はシリコーン、フッ素などいずれの撥水剤も使用できるが、耐久性からフッ素系のものが好ましい。撥水剤の付与方法は接着剤と混合し繊維表面に付着させる方法が好ましい。
【0063】
両層は部分的に結合されていることが必要で、縫製などの方法で周辺部または周辺部の一部、さらには内面の一部をキルテイングなどの方法で縫製するのがよい。
【0064】
かかる縫い糸も水分を吸収しやすく、非吸水層と同様濡れ不快感の対象となるので表面に位置することとなる糸も上記撥水加工されていることが好ましい。
【0065】
液体を入れるための容器の包装材として使用する場合、水分を含ませて保水させ、液体容器を包装すると水の蒸発潜熱により容器内の液体の温度を低下させることができる。包装しないものに比べて、例えば5度から9度の温度差となる。
【0066】
本発明に係る吸水材の一例を図面によってさらに詳しく説明する。
【0067】
図1は、本発明の吸水材の一例を示す概念断面図である。複数層で構成された布帛状吸水材1と濡れ感を回避する独立した布帛2が重ね合わされて縫い糸3により部分的に結合されているものである。
【0068】
本発明にかかる吸水材の用途について詳細を記載する。
【0069】
まず、水分を吸収しやすい機能を利用して、おしめ(介護用・赤ちゃん用)、食器拭き、車のボディー拭き(主として洗車用)、窓拭き、油物拭き、コンクリートの水取りシート、土留め用シート、育苗シート、汗取り(含む登山時)、よだれかけ(主として赤ちゃん用)、傘の水取り、手術用パット、靴の中敷き(消臭性能などを付加して)、バンドエイド、包帯、テーブルクロス、プール用イス張りシート、ベッド側地、ベッドパット、布団カバー、枕カバー、香水、芳香剤などの芯、加湿器の芯、帽子、三角巾(給仕・医療・衣料介護用)、襟心、テーブルクロス、導水材等に実用化でき、この中でも優れた吸水性、ドライ感、吸湿性、風合いに優れている観点から、おしめ用途が好ましい。
【0070】
次に、水分を保持しやすい機能を利用して鮮度保持材、界面活性剤を付与させた眼鏡拭き、界面活性剤を付与させた車拭き(車用ワックス掛けに使用)、界面活性剤を付与させたパチンコ玉拭き、界面活性剤を付与させたお手拭き等に実用化できる。
【0071】
更に水の蒸発潜熱による冷却効果を利用して冷却材、体温上昇時の熱冷まし用シート(額部分などに使用)、打撲時の患部急冷シート等に実用化できる。
【0072】
そして、断熱効果を利用して保冷シート、保冷袋(ペットボトル・水筒など)擬装シート等に実用化できる。
【0073】
【実施例】
繊維の物性における測定方法について下記に示す。
(1)成分A(ポリカプラミドポリマー)の相対粘度
絶乾試料0.25±0.001gを、98wt%流酸で溶解濃度が1g/100mlになるように溶かし、オストワルド粘度計(中野式改良型)で25±0.2℃の恒温中で流下時間(秒)をはかり、98wt%硫酸に対する試料溶液の粘度比で表した。
A.使用試薬:片山化学製98wt%硫酸
B.測定手順
a.上皿天秤を用いて、乾燥済みの50ml共栓付三角フラスコの空重量を量る。(0.01g単位)
b.試料を化学天秤で0.250±0.001g精秤し、50ml共栓付三角フラスコに入れる。
【0074】
c.硫酸を自動ビュレッドで静かに25ml加えた後、上皿電子天秤にのせて溶液濃度が1g/100mlになるようにスポイド付瓶の硫酸で微調整した。
【0075】
d.共栓付三角フラスコの栓をクランプで固定し、電気定温乾燥機上で30分〜40分間保温した。
【0076】
e.振とう機にセットし、振とう溶解した。
【0077】
f.完全に溶解したら、試料溶液を15mlホールピペットで粘度計に採取し、ゴム管を粘度計の口に連結した。
【0078】
g.恒温水槽(25℃±0.2℃)に粘度計の球部が水面下約5cmに位置するように垂直にセットし、恒温になるまで(約20分間)静置した。
【0079】
h.粘度計に付けたゴム管を両手の親指と人差し指で交互に押しながら、粘度計上部基線から約1cmまで揚液し、液頭部(メニスカス)が上部基線から下部基線まで流下する時間をストップウォッチで測った(0.1秒単位まで)。
【0080】
i.流下時間は、繰り返し測定の差が0.2秒以下の2回の平均値を少数点以下第1位まで求めた。
【0081】
j.別に使用粘度計を用いて、使用硫酸の流下時間を手順f〜i項の操作であらかじめ求めた。(使用硫酸の流下時間は、硫酸ロットを変更したときに粘度計別に求めておく)
k.以上の手順を踏まえて、次式により試料の相対粘度を求めた。
【0082】
相対粘度=t/t0
t :試料溶液の流下時間(秒数)
t0:使用硫酸の流下時間(秒数)
なお、粘度測定に使用した機器・器具は下記の通りである。
【0083】
すなわち、化学天秤(感量1mg)、上皿電子天秤(感量0.01g)、共栓付三角フラスコ(50ml)ピンセット、ニッパー、自動ビュレット(25ml、50ml)ホールピペット(15ml)、オストワルド粘度計(中野改良型)、ゴム管(φ:8mm、L:30mm)、恒温水槽(25±0.2℃、粘度計セット用)、ベックマン温度計(1/100℃目盛)、ストップウォッチ、ビーカー、クランプ、振とう機および熱風乾燥機である。
(2)繊維長
グリセリン塗布したスケール板上で繊維の捲縮がなくなる程度に伸ばして繊維の長さを標準状態(室温20℃、湿度65%RH)下で測り、100本の平均値で平均繊維長を求めた。
【0084】
平均繊維長(mm)=L/100
L:100本の短繊維長の和
以下、吸水材の性能・生産性(工程通過性)について下記に表す基準で評価を実施した。
<評価基準>
◎:著しく良い
○:良い
△:悪い
×:著しく悪い
<吸水材の性能>
(1)吸水材表面の風合い(肌触り)
全ての実施例・比較例で得られた吸水材を10人の判定者が手の平での触感により官能判定したものであり、以下の4段階で表したものである。
【0085】
◎:10人全員が風合い良好と判定
○:7人〜9人が良好と判定
△:4人〜6人が良好と判定
×:3人以下が良好と判定
(2)吸水材(布帛)の引張強力:
全ての実施例・比較例で得られた吸水材をJIS規格−L1913−6.3.1の引張強さ試験法に準じた方法で、該吸水材の引張強さを縦方向・横方向別々に求め、そのレベルを◎〜×の4段階で表した。
縦方向の評価
◎:150.0N以上
○:100.0N以上150.0N未満
△:50.0N以上100.0N未満
×:50.0N未満
横方向の評価
◎:250.0N以上
○:150.0N以上250.0N未満
△:100.0N以上150.0N未満
×:100.0N未満
なお、該試験方法は、次の通りである。
a.試験装置:荷重とつかみ間隔を記録できる装置の付いた定速伸長形引張試験機で、JIS−B−7721に規定する精度があるものを用いた。
b.手順:
イ.吸水材(試料)から幅が50mm±0.5mmで、つかみ間隔を100mmにできる長さ(例えば200mm)の吸水材を、吸水材の耳から100mm以上離れた位置で、かつ、均等に離れた位置から、縦方向及び横方向にそれぞれ5枚採取した。(本試験では吸水材の目付けを全ての実施例と比較例において180g/m2 と統一させた上で引張強さを測定した。また、つかみ間隔についてJIS−L1913−6.3.1では200mmとなっているが、本試験では、試験機器の都合上、つかみ間隔を100mmとした。)
ロ.吸水材を初荷重で引張試験機につかみ間隔を100mm±1mmで取付けた。
(*初荷重は、吸水材を手でたるみが生じない程度に引っ張った状態とした。)
ハ.100±10mm/分の引張速度で吸水材が切断するまで荷重を加える。
【0086】
ニ.吸水材の最大荷重時の強さを0.1Nまで測定した。
【0087】
ホ.本試験では引張強さの5回の平均値を縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
<繊維生産性>
(1)紡糸性
繊維の生産工程である紡糸において、生産量1tに対して口金直下でのポリマーベタツキ、糸切れにおけるトラブル回数を測定した。
【0088】
なお、単糸切れとは紡糸生産におけるトラブルであり、これによってマシン正常復帰まで屑が発生する。従って、糸切れ回数が増加することは、生産収率の低下を意味するものである。
【0089】
◎:3.0回/t未満
○:3.0回/t以上5.0回/t未満
△:5.0回/t以上10.0回/t未満
×:10.0回/t以上
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに詳しく説明する。
実施例1
A成分を相対粘度2.73のナイロン6(N6)とし、B成分をポリブチレンテレフタレート(PBT)とした複合繊維で、断面がミカン型であり、実の部分がナイロン6、実と実の間の隔離部分にポリブチレンテレフタレートを配置した実が6個、実を隔離する部分が1個の合計7分割であるトータル太さ1.9dtex、繊維長38mmの繊維をカード機(カーディング)にかけ開繊してシートを作成した。
【0090】
かかるシートを重ね合わせ、ウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で表裏各1回行い、次いで水圧100kg/cm2 で表裏各2回の合計6回通過させた。
【0091】
なお、このときの該繊維の繊維断面状態は図2に示したとおりである。1回目、2回目の、ウォータージェットパンチ後の繊維断面状態である。
【0092】
さらに、ポリエステル系とポリアミド系吸水剤および接着剤の水溶液に浸漬し、乾燥時の吸水剤の付着量が重量比で2%となるように絞った後、乾燥機により乾燥させ本発明にかかる布帛状吸水材を作成した。分割後の単繊維太さはナイロン部分が0.2dtex、ポリブチレンテレフタレート部分が0.57dtexであった。
【0093】
独立した布帛としてポリエステル糸55dtex、12フィラメントと55dtex、46フィラメントの2種類の糸を使い、トリコット編機にて前者が裏面、後者が表面に来るよう編立てを行った。
【0094】
かかる布帛状吸水材と独立した布帛をサイズ幅25cm、長さ60cmに裁断して積層し、周辺をポリエステルマルチフィラメント糸20綿番手にフッ素系撥水剤を0.5%付与した縫い糸を使って四周辺を縫製し一体化して本発明の布帛状吸水材を作成した。
実施例2
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.95とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
実施例3
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.45とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
実施例4
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を3.80とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
実施例5
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.35とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
比較例1
単糸繊度が3.3dtex、繊維長が51mmの分割性を有さないポリエステル単一成分の繊維をカード機にかけ開繊してシートを作成した。かかるシートを積層しニードルパンチ機により吸水材布帛を作成した。かかる布帛をサイズ幅25cm長さ60cmに裁断して比較例吸水材を作成した。
比較例2
単糸繊度が3.3dtex、繊維長が51mmの分割性を有さないナイロン6単一成分の繊維をカード機にかけ開繊してシートを作成した。かかるシートを積層しニードルパンチ機により吸水材布帛を作成した。かかる布帛をサイズ幅25cm長さ60cmに裁断して比較例吸水材を作成した。
比較例3
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を4.30とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
比較例4
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.20とした以外は、実施例1と同様の方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
【0095】
上述した各実施例と比較例の規格及び性能、生産性を表1に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
また、おしめとして実用した結果、本発明品は濡れ感を全く覚えず、濡れたまま着座しても水分のシミ出しがなく使用できたのに対し、比較例のものは水分の漏れが生じ、着座時においてしみ出しが激しく、また濡れ感も相当ある状態であった。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば、おしめとして使用した場合に水分の漏れがなく、濡れ感を覚えず、また着座に置いても水分のシミ出しがなく快適に使用でき、また繰り返し洗濯もできるために経済的な吸水材を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る布帛状吸水材の一例構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、実施例1において、分割型複合繊維をカーディング後に100kg/cm2 の水圧で、表裏それぞれ2回ずつウオータージェットパンチした後の繊維断面を示したものであり、繊維が完全に分割された状態を示した繊維横断面概略図である。
【符号の説明】
1:布帛状吸水材
2:独立した布帛
3:縫い糸
4:ポリカプラミド(ナイロン6)ポリマー
5:ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリマー
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性に優れているということはもちろん、おしめ用途に用いられたときに優れた快適性と実用性を発揮できる等の特徴を有する吸水材に関し、さらに詳しくは、病院や家庭で使用されるおしめ、衣服や、雑貨に使用される吸汗材などの用途に好適な吸水材、また水等の液体を入れた容器の包装材を初めとした資材用製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より使用されている吸水材の代表的なものは、特開平6−63076号号公報、特開平7−96005号号公報、特開平8−196559号号公報等に記載のアクリル系などの高分子吸収体を主体としたものであり、水分の吸収量は多いのであるが、使用後は再利用(洗濯)ができず捨てられ、産業廃棄物として扱わざるを得なく、環境上や省資源・省エネルギーという理念の上では問題があった。
【0003】
また、特開平6−245952号公報には、再利用のできる布帛よりなる吸収体についての発明が記載され、具体的には2種類以上の非相溶性の熱可塑性重合体が繊維断面において積層面の80%以上が繊維断面の長軸を横切り、平均して3層以上でランダムまたは並列に積層されている円形ないし扁平な横断面を有する複合繊維からなるステープルから形成した不織布よりなる吸収体を備えた体液吸収用物品に関する発明が提案されている。しかし、このものは本発明者らの検討によれば、高い吸水容量と洗濯耐久性に専ら主眼をおいたものであり、特に、該発明の吸収材は2種類以上の非相溶性の熱可塑性重合体が繊維断面において積層面の80%以上が繊維断面の長軸を横切り、平均して3層以上でランダムまたは並列に積層されている複雑な繊維横断面を有しており、紡糸が難しい。そのため、ポリマーの相対粘度を紡糸性が良好となる範囲にする必要があった。また、長時間にわたって直接肌に当てるようなおむつの分野では、風合い(肌触り)や吸放湿性(ドライ感)が良いことが要求されるが、従来技術ではステープルにおけるフィブリル化している繊維の本数割合が20%以下であるために十分な吸水量が得られず、また風合いにおいても分割し切れなかった太い単繊維が多くあるために吸水材としての性能は十分でなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来技術の問題を解決し、繊維の生産性(生産収率)、風合い(肌触り)、吸湿性(ドライ感)、吸水性能に優れた吸水材を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0006】
すなわち、一方の成分Aが相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーの少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の吸水材について説明をする。
【0008】
一方の成分Aが相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーの少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
【0009】
本発明において該吸水材を構成する繊維はカーディング等の加工性の観点から分割型複合繊維を原料繊維とするものでなければならない。
【0010】
すなわち、もし単独ポリマで細い繊度の合成繊維を得ようとすると、繊維の製造過程で紡糸性・延伸性が悪化し、生産収率が低下する結果となる。更に高次加工のカーディングの際にもカード通過性が悪くなる。特に1.1dtex未満の繊度を得ようとするとウェッブ垂れ、ローラー巻き付き等が多発し生産収率が低下する。繊度に関しては後に詳細に説明するが、本発明は吸収材としての機能性をより高いものとするために、構成する繊維は水分の吸水性・保水性、更には風合いが良好なものを得る観点から単糸繊度0.01dtex〜3dtexの範囲以内で細くなければならない。本発明でいう分割型複合繊維とは、サイドバイサイド(バイメタル)繊維、海島型繊維やフィブリル型繊維のような種類であってもよい。
【0011】
また、分割型複合繊維を構成するポリマーについては、両者ポリマーのポリマー接着が適度な外的圧力(物理分割)処理または適度な化学薬品濃度(化学薬品分割)で分割しやすく、また吸水材として風合いが良好であり、更に再利用性(洗濯耐久性)に優れているという観点から、一方の成分Aがポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマー(PET)の少なくとも2成分で構成されていることが重要である。
【0012】
かかるポリカプラミドポリマーについては、ポリε−カプラミド(ナイロン6)からなるポリカプラミドが好適であるが、セバシン酸、イソフタル酸、パラキシレンジアミドなどを構成成分とするポリカプラミドあるいはこれらの共重合ポリカプラミド等を用いても良い。良好な風合いと肌触り、良好な吸湿性を有するという観点からは、ナイロン6(N6)ポリマーが好ましい。更に該ポリマーの相対粘度が繊維生産性(紡糸性)及び吸水材としての性能に大きく関与する理由から2.30以上4.20以下の範囲であることが必要であり、好ましくは前述した同じ理由から2.40以上3.50以下が好ましく、また前述した同じ理由から、更に好ましくは2.50以上2.80以下である。
【0013】
もし、A成分の相対粘度が2.30未満である場合、紡糸時にポリマ粘度が低いため、紡糸用口金の表面(吐出孔周辺)にポリマがベタ付き、糸切れが発生したり、繊維の製品中に樹脂状の塊が混入するために好ましくない。また、吸水材としての性能に関しても、吸水材としての塩素や過酸化水素等に対する耐薬品性や強度(引張強力)耐摩耗性(洗濯耐久性)が低下するため、好ましくない。
【0014】
逆に相対粘度が4.20以上の場合、粘度が高いためにパック内のポリマーの流れが悪くなり、単糸切れが発生したり、パック内の圧力が上昇して紡糸性が悪化するために好ましくない。また、吸水材としての性能に関しても、吸水材としての強度が高くなる反面、風合いが硬くなるため、好ましくない。
【0015】
一方、ポリエステルポリマーについては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン2,5−ジカルボン酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオル、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩等の芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸;ジオール;ヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等から合成される繊維形成性ポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートなどを主成分とするポリエステルが好ましい。中でも、構成単位の80モル%以上、特に90モル%以上がエチレンテレフタレート単位またはブチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましい。
【0016】
また、得られるポリエステルが線状である範囲内でグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多官能成分を共重合したものであっても何等さしつかえない。
【0017】
これらのポリマーは、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の艶消剤、染料または顔料等の着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。本発明ではこれらのポリエステルの中でも、分割処理(一例として、物理的衝撃処理:ウォータージェットパンチ或いはニードルパンチによる分割処理)を施す上で生産性(分割性:ポリカプラミドポリマーとの剥離性)が良好であり、かつ吸収材(おしめ等)として使用する際にポリエステルポリマーの中でも特に風合い(肌触り)が良好であるという観点からポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0018】
また、これらのポリマーには、第3成分が共重合されていてもよいし、染料または顔料等の着色剤、蛍光増白剤、耐光性改良剤、耐熱安定剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0019】
また、上記の他にポリマの添加剤として、紡糸性、カード通過性が良好となる観点から不活性粒子を含有させることが好ましい。具体的には酸化チタン(二酸化チタンを含む)、コロイダイルシリカ、湿式シリカ、乾式シリカ等の酸化ケイ素、カリオン、炭酸カルシウム、ジルコニアを用いることができる。その中でも酸化チタンは紡糸性、繊維風合い(色調・柔らかさ・ソフト風合い)の点でより好ましい。
【0020】
また、本発明における分割型複合繊維のポリカプラミド成分Aとポリエステル成分Bとの複合比率については、紡糸性、分割性が良好である観点から、A:B=20wt%:80wt%〜80wt%:20wt%の範囲が好ましい。更に好ましくは、吸湿性、風合、耐久性(繊維自体の強度)が良好となる観点から、ポリカプラミドの比率の高いA:B=65wt%:35wt%〜75wt%:25wt%が良いものである。
【0021】
本発明において、先にも述べたように吸水材を構成する繊維は吸水量を多くするという観点から繊維の太さは重要で、細い方が繊維表面積が多くなり、また繊維間に生じる空間が小さくなるため毛細管現象が有効に利用でき、水分の保持が良くなるので好ましい。
【0022】
具体的には、単糸(単繊維)あたりの繊度が0.01dtexから3dtexの範囲でなければならず、これより細いと水分の保持が良すぎ、洗濯性、乾燥性が悪くなり再利用が困難となる場合がある。また、単繊維に剛性がないので空隙の保持性が悪くなる問題も生じる。逆に、単糸繊度が3dtexより太くなると、太過ぎるため繊維相互が生じる空間が大きくなり水分の保持が悪くなると同時に使用中水分の移動が起こりやすくなり水分のしみ出しが生じるという不都合がある場合がある。吸水性が良好であるという観点から分割率(繊維断面の分割数:最大で7分割)は高い方が好ましく、分割後の繊度は、0.1dtexから0.8dtexの範囲がより好ましい。また更に好ましくは、上記理由に加えて風合いが良好となる観点から0.15dtexから0.35dtexの範囲が好ましい。
【0023】
かかる繊維の断面形状は、中実、中空、三角型、T型、扁平、涙型などいかなる断面でも使用することができる。特に繊維表面積が大きくなるものが好ましく、*印型、三角型、扇型、十字型、T型、Y型、H型、π型、涙型など複雑な断面は水分の保持が良く、特に好ましい。この中でも、更に分割性が良好であるという観点から*印型と三角型あるいは扇型が好ましい。
【0024】
本発明における分割型複合繊維の繊維形態としては、低コスト、加工のしやすさという点から短繊維(ステープル)が望ましく、繊維の切断長である繊維長についてはカード通過性が良好となる観点から20mm以上115mm以下の範囲であれば好ましく、生産性(収率)の観点から30mm以上70mm以下であればより好ましい。
【0025】
本発明の吸水材は、該分割型複合繊維よりなる布帛状のもので構成されている。
【0026】
該布帛状とは、不織布状、織物、編み物等のシート形状を呈しているものをいい、これら形態を呈するものであれば使用できる。中でも不織布状のものが、厚さ、空隙量など容易に変更できる上、価格的にも有利であるので好ましい。
【0027】
かかる布帛は、繊維と空隙により構成されるが、吸水性を良くするためには空隙と単繊維の表面積を多くして毛細管現象によって水分を保持するようにすることが必要である。
【0028】
布帛状吸水材は、空隙量が10cc/100cm2 以上を有するものであることが必要である。該単位中の100cm2 は底面積を意味するものであり、一定の面積のもとでどれほどの空隙を有するかをパラメータで表しているものであり、同じものを2枚積層して厚さが倍になれば、空隙量は2倍になる。
【0029】
空隙量は、布帛の容積から繊維の占める容積を差し引いた値で示されるものであり、すなわち、毛細管現象により水分が吸収された量となるわけで、多ければ多いほど量的な面で吸水性能を発揮できる可能性が大きいものである。
【0030】
本発明者らの各種知見によれば、10cc/100cm2 未満であれば空隙量が少なく吸水する状態にすることが難しく、例えば、おしめ用とした場合液体の漏れが生じやすく使用することはできない。1回あたりの尿量は150ccから200ccであり、2回分以上に当たる最大空隙量は500cc/100cm2 まであれば効果的に十分である。
【0031】
一方、これ以上になれば、空間が多すぎて毛細管現象がなくなり(吸水する力が弱くなる)、また押さえたときに圧縮量が大きいため含んだ水分を押し出すこととなり好ましくない場合がある。
【0032】
布帛状吸水材の空隙量とは、次の式で表わされるものである。
【0033】
布帛の空隙量=布帛の容積−布帛を構成する繊維の容積
布帛状吸水材の容積は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定して算出する。また、布帛状吸水材を構成する繊維の容積(実容積)は、布帛の重量と容積を測定し、重ねた布帛の枚数で除して(割って)算出する。また布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を算出し、所定の繊維の比重から算出するものである。
【0034】
布帛状吸水材として空隙量が10cc/100cm2 以上を有するものを得るには、上述からもわかるように、積層の枚数を適宜に調整したり、1枚の布帛状吸水材の前駆体であるウエブと呼ばれる繊維構造体の目付けを適宜に変更したり、あるいは、複合繊維の複合比率、複合繊維形態(分割後の繊維の単繊維繊度や断面形態など)が挙げられ、また該繊維が短繊維(ステープル)である場合は繊維長(カット長)、捲縮数・捲縮率が挙げられ、更に分割処理時の処理条件、例えば、パンチング圧力・回数、分割処理された繊維・未分割繊維の存在比率等の組合せにより達成でき、一律的に言うことは難しいものであるが、当業者であれば適宜に各種条件を組合せて実施することが可能と解されるものである。
【0035】
布帛状吸水材の厚さは、扱い性からは薄いほど良いが、空隙量からは厚い方がよい。少なくとも0.5mmはあることが必要で、好ましくは最大20mmまでである。0.5mm以下では空隙量が少なく従って吸水量が少なく使用することはできない。また20mm以上では空隙量は大きく吸水量も多くなるが、扱い性、着用時の違和感、価格の面から使用できない。最も好ましいのは3mmから15mmである。
【0036】
布帛状吸水材の比重は0.07〜0.5g/ccの範囲が好ましい。0.07g/cc未満では空隙量は多くなるが、毛細管現象による水分の保持および圧縮率が多くなることによる押さえたときの水分のしみ出しが多くなるので好ましくない。また0.5g/cc以上は逆に繊維占有空間が多く、水分保有量が少なくなり、重く、硬く、高価となるので好ましくない。最も好ましい範囲は0.1〜0.4g/ccである。
【0037】
布帛状吸水材として比重が0.07〜0.5g/ccのものを得るには、積層の枚数を適宜に調整することにより達成することができ、特に、比重が0.1〜0.4g/ccのものを得るには、上記方法に加えて、該吸水材の前駆体であるウエブと呼ばれる繊維構造体の目付けを適宜に変更することにより達成することができるものである。この比重の値を上述特定のものとして得る場合にも、上述した空隙量が10cc/100cm2 以上のものとするための各種条件の組合せを行なって該比重のものを得ることが可能である。
【0038】
布帛状吸水材は、その圧縮率が30%以下を示すものであるのが好ましい。圧縮率が30%を越えるものでは布帛が水分を含んだときに指などで押さえるとへこみ、空隙量が少なくなり、その分水分がしみ出ることとなり、本発明の目的にそぐわないものとなる方向だからである。また、全く圧縮しないものは硬すぎて使用上問題となるので、好ましくは2%までである。
【0039】
圧縮率の測定は、布帛状吸水材を重ねて5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 を加えて厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0040】
圧縮率(%)=(T1−T2)×100/T1
布帛状吸水材として圧縮率が30%以下のものを得るには、該吸水材の前駆体であるウエブと呼ばれる繊維構造体の目付けを適宜に変更することにより達成することができ、特に、圧縮率が2%までとするのは、上記方法に加えて該吸水材を構成する複合繊維の単繊維繊度(分割前の単繊維繊度)を0.01dtex〜3dtexの範囲で変更することにより達成することができるものである。この圧縮率の値を上述特定のものとして得る場合にも、上述した空隙量が10cc/100cm2 以上のものとするための各種条件の組合せを行なって該圧縮率のものを得ることが可能であり、特に、分割後の単繊維繊度値が重要となる。
【0041】
布帛状吸水材は、分割型複合繊維で構成されなければならない。
【0042】
単独ポリマによる合成繊維では繊度が太いために、風合い(肌触り)や吸水性の点において吸水材としては不適当である。天然繊維の場合の場合においても繊維自身が吸水するため繊維自身に濡れ感が生じ、使用時に不快を覚え、また繰り返し使用する際洗濯による劣化が早く吸収材としては不適当である。
【0043】
また、アクリル系高分子吸水体は、洗濯ができないため使い捨てとなるので産業廃棄物問題が生じるから好ましくない。
【0044】
ただし、複数層として使用する場合は、中心層に吸水吸湿性のある天然繊維、例えば、木綿、羊毛、麻などの布帛を使用することはかかる問題は生じにくくなり使用することが可能である。また、同様に合成繊維もポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのいずれも複数層として使用することができる。
【0045】
布帛状吸水材の構造は、不織布状、織物、編み物等いずれでも良いが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには不織布状のものが好ましい。不織布状として得るための繊維の結合はニードルパンチ、ウオーターパンチ、熱固定、接着剤などいずれの方法でも良い。1dtex以下の細い繊度の繊維を得る手段としてはメルトブロー、スパンボンド、海島繊維を利用した海部分を薬液溶出して得る繊維、複合繊維を高圧水流により繊維を分割して得る繊維などいずれのものでも使用できる。
【0046】
好ましくは分割型複合繊維である単繊維を高圧水流による分割する手段によるものであり、安定した不織布構造物と、複合繊維を複数に分割する作業が一度に完了するので低価格で布帛を得ることができる。単純に細い繊維をそのまま不織布とする方法は加工上、特にカード機通過に問題が出やすいので好ましくない。
【0047】
また、長繊維不織布であるメルトブローは細繊度を得ることができるが、吸水材として好ましい素材であるポリエステルとかナイロンは複雑な技術が必要となりまた洗濯耐久性の点で好ましくない。さらに海島複合繊維による海溶出方式は細い繊維を得ることはできるのであるが、加工工程が複雑で高価となるので好ましくない。
【0048】
かかる水流分割複合繊維はできるだけ低い水圧で分割、交絡できることが好ましいが、50kg/cm2 以上はあることが好ましく、50kg/cm2 未満では低水圧で分割することができる繊維が必要となるが、そのような繊維はカード機で開繊シート状とする際とか原綿作成時の延伸行程などでも分割が起こり、製品となすことは難しいものである。該水圧は最大250kg/cm2 程度までで、該値以上では得られる布帛が締まりすぎて空隙量が少なくなるので好ましくない。
【0049】
また、水分の吸着をさらに良くするために、吸水剤を繊維の表面に付着させるのがよい。シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの吸水剤を接着剤により繊維表面に付与する。吸水性を得ることができるものであれば、どのようなものでも使用することができる。性能は、JIS 1096の吸水性測定法のB法バイレックによる吸水性が50mm以上であれば有効で、50mm未満では水分の拡散が悪く、吸水性が悪くなり、水分の漏れが生じやすくなる。
【0050】
さらに、布帛状吸水材を構成する繊維に抗菌性が付与されていることが好ましい。たとえば、大腸菌とか黄色ブドウ状球菌の繁殖を防止するため有機、無機等の抗菌剤を付与しておくのがよい。抗菌性のあるものはいずれのものでも使用できるが、有機物では、第四級アンモニュウム塩化合物、クロルヘキシジンなど、無機物では銀ゼオライト、硫化銅等が使用できる。また、抗菌性を付与することは、菌の発生するにおいを防止することができるので好ましい。
【0051】
かかる抗菌剤の付与手段は、合成繊維への練り混み、後加工時に接着剤とともに表面に付着させる方法等が採用でき、いずれの付与方法でもよい。抗菌性の測定は繊維製品新機能評価協議会で規定する統一試験方法による測定で、静菌活性値で2以上あればよい。
【0052】
布帛状吸水材は、複数層で構成されていることが好ましい。
【0053】
本発明において、本発明に係る布帛状吸水材は単独層で使われる場合もあるものであるが、ここで言う複数層とは、同種類の層を重ね合せて積層したり、また構成する繊維の太さを変えた層と組み合わせたりすることを言うものである。布帛状吸水材が複数層で構成されていると、製品の要求吸水量に応じ積層層数の調整ができるので、容易に吸水量対応ができるために好ましい。層数は細かく対応できるよう2層から20層などのものが好ましく用いることができる。「同種類の層」とは、必ずしも各層が厳密にポリマー使い、繊度、厚さ、密度など全てにおいて等しい層を言うものではなく、少なくともポリマー使いが本発明の請求項1に記載した2成分に該当するポリマと同一であれば、同種類の層であると言うものである。
【0054】
表面層を構成する合成繊維は、他の層より太い繊維で構成されていることが好ましい。吸水した際、水分は毛細管現象により太い繊維で構成された層を素早く通過し、単繊維表面積の大きい細い繊維で構成された層に吸収されるからである。布帛が単一層の場合は水分が飽和状態となると表面が濡れた状態となり、たとえば、おしめ用途等は不快感を与えるものとなる。さらに、表面層に太い繊維を配置することにより濡れ感は少なくなるので好ましい。かかる表面層を構成する繊維の太さは他の層よりも2倍以上の太さがあれば有効となる。かかる複数層の結合は積層し、ニードルとか水流によるパンチ、接着剤での接着、縫製による結合などいずれの結合法でも利用できる。
【0055】
さらに、濡れ不快感をなくするために吸水布帛層に加え、独立した布帛が重ね合わせていることが好ましい。ここで言う独立布帛とは、吸水布帛とは全く異なった布帛を吸水布帛と重ねて構成するものであり、例えば、濡れ感防止の機能を有するものなどが好適なものである。かかる独立布帛は、織物、編み物、不織布等のうちいずれの形態でも使用でき、フイルム状のものは不適当である。
【0056】
特に編み物が柔らかさの点で好ましく使用できる。素材は天然繊維のような吸水性があるものは洗濯後の乾燥に時間がかかり、また、濡れ感が残るため好ましくなく、合成繊維の方が好ましい。また、吸水布帛層が水分を早く吸収できるように独立布帛は通気量が多い方が良く、300cc/cm2 /sec以上あることが好ましく、以下では水分の透過が阻害されるので良くない。多い方が良いが、あまり多いと吸水布帛層が人体と接触し濡れて不快感を与えるものとなるので、5000cc/cm2 /sec程度までが好ましい。
【0057】
通気量の測定方法は、JIS L1096の通気性測定A法による。
【0058】
また、独立した布帛は、濡れ不快感をさらに少なくするため、表面層と他の層が異なる繊維または構造になっていることがさらに好ましい。たとえば、表面層が水分の透過をさせやすいように太い繊維で構成されて粗な構造とし、他の層は細い繊維で構成して密な構造とし、表面層に接触した水分は表面層を早く通過し、他の層はこれを吸収拡散するので濡れ感は改善すると同時に水分移行が早く行われる。
【0059】
また、他の濡れ感の回避手段として、布帛状吸水材と人体が接触しないようにメッシュ状布帛を介在させることが好ましい。さらには、かかるメッシュ状布帛は撥水性を付与することが好ましい。
【0060】
かかる独立した表面布帛は、布帛状吸水材の片面に部分的に結合されているが、反対面である裏面に結合され、サンドイッチ状となっていてもよい。
【0061】
撥水レベルはJIS L1092「繊維製品の防水試験方法」のA法、スプレー法による2級以上あれば使用できる。
【0062】
撥水剤はシリコーン、フッ素などいずれの撥水剤も使用できるが、耐久性からフッ素系のものが好ましい。撥水剤の付与方法は接着剤と混合し繊維表面に付着させる方法が好ましい。
【0063】
両層は部分的に結合されていることが必要で、縫製などの方法で周辺部または周辺部の一部、さらには内面の一部をキルテイングなどの方法で縫製するのがよい。
【0064】
かかる縫い糸も水分を吸収しやすく、非吸水層と同様濡れ不快感の対象となるので表面に位置することとなる糸も上記撥水加工されていることが好ましい。
【0065】
液体を入れるための容器の包装材として使用する場合、水分を含ませて保水させ、液体容器を包装すると水の蒸発潜熱により容器内の液体の温度を低下させることができる。包装しないものに比べて、例えば5度から9度の温度差となる。
【0066】
本発明に係る吸水材の一例を図面によってさらに詳しく説明する。
【0067】
図1は、本発明の吸水材の一例を示す概念断面図である。複数層で構成された布帛状吸水材1と濡れ感を回避する独立した布帛2が重ね合わされて縫い糸3により部分的に結合されているものである。
【0068】
本発明にかかる吸水材の用途について詳細を記載する。
【0069】
まず、水分を吸収しやすい機能を利用して、おしめ(介護用・赤ちゃん用)、食器拭き、車のボディー拭き(主として洗車用)、窓拭き、油物拭き、コンクリートの水取りシート、土留め用シート、育苗シート、汗取り(含む登山時)、よだれかけ(主として赤ちゃん用)、傘の水取り、手術用パット、靴の中敷き(消臭性能などを付加して)、バンドエイド、包帯、テーブルクロス、プール用イス張りシート、ベッド側地、ベッドパット、布団カバー、枕カバー、香水、芳香剤などの芯、加湿器の芯、帽子、三角巾(給仕・医療・衣料介護用)、襟心、テーブルクロス、導水材等に実用化でき、この中でも優れた吸水性、ドライ感、吸湿性、風合いに優れている観点から、おしめ用途が好ましい。
【0070】
次に、水分を保持しやすい機能を利用して鮮度保持材、界面活性剤を付与させた眼鏡拭き、界面活性剤を付与させた車拭き(車用ワックス掛けに使用)、界面活性剤を付与させたパチンコ玉拭き、界面活性剤を付与させたお手拭き等に実用化できる。
【0071】
更に水の蒸発潜熱による冷却効果を利用して冷却材、体温上昇時の熱冷まし用シート(額部分などに使用)、打撲時の患部急冷シート等に実用化できる。
【0072】
そして、断熱効果を利用して保冷シート、保冷袋(ペットボトル・水筒など)擬装シート等に実用化できる。
【0073】
【実施例】
繊維の物性における測定方法について下記に示す。
(1)成分A(ポリカプラミドポリマー)の相対粘度
絶乾試料0.25±0.001gを、98wt%流酸で溶解濃度が1g/100mlになるように溶かし、オストワルド粘度計(中野式改良型)で25±0.2℃の恒温中で流下時間(秒)をはかり、98wt%硫酸に対する試料溶液の粘度比で表した。
A.使用試薬:片山化学製98wt%硫酸
B.測定手順
a.上皿天秤を用いて、乾燥済みの50ml共栓付三角フラスコの空重量を量る。(0.01g単位)
b.試料を化学天秤で0.250±0.001g精秤し、50ml共栓付三角フラスコに入れる。
【0074】
c.硫酸を自動ビュレッドで静かに25ml加えた後、上皿電子天秤にのせて溶液濃度が1g/100mlになるようにスポイド付瓶の硫酸で微調整した。
【0075】
d.共栓付三角フラスコの栓をクランプで固定し、電気定温乾燥機上で30分〜40分間保温した。
【0076】
e.振とう機にセットし、振とう溶解した。
【0077】
f.完全に溶解したら、試料溶液を15mlホールピペットで粘度計に採取し、ゴム管を粘度計の口に連結した。
【0078】
g.恒温水槽(25℃±0.2℃)に粘度計の球部が水面下約5cmに位置するように垂直にセットし、恒温になるまで(約20分間)静置した。
【0079】
h.粘度計に付けたゴム管を両手の親指と人差し指で交互に押しながら、粘度計上部基線から約1cmまで揚液し、液頭部(メニスカス)が上部基線から下部基線まで流下する時間をストップウォッチで測った(0.1秒単位まで)。
【0080】
i.流下時間は、繰り返し測定の差が0.2秒以下の2回の平均値を少数点以下第1位まで求めた。
【0081】
j.別に使用粘度計を用いて、使用硫酸の流下時間を手順f〜i項の操作であらかじめ求めた。(使用硫酸の流下時間は、硫酸ロットを変更したときに粘度計別に求めておく)
k.以上の手順を踏まえて、次式により試料の相対粘度を求めた。
【0082】
相対粘度=t/t0
t :試料溶液の流下時間(秒数)
t0:使用硫酸の流下時間(秒数)
なお、粘度測定に使用した機器・器具は下記の通りである。
【0083】
すなわち、化学天秤(感量1mg)、上皿電子天秤(感量0.01g)、共栓付三角フラスコ(50ml)ピンセット、ニッパー、自動ビュレット(25ml、50ml)ホールピペット(15ml)、オストワルド粘度計(中野改良型)、ゴム管(φ:8mm、L:30mm)、恒温水槽(25±0.2℃、粘度計セット用)、ベックマン温度計(1/100℃目盛)、ストップウォッチ、ビーカー、クランプ、振とう機および熱風乾燥機である。
(2)繊維長
グリセリン塗布したスケール板上で繊維の捲縮がなくなる程度に伸ばして繊維の長さを標準状態(室温20℃、湿度65%RH)下で測り、100本の平均値で平均繊維長を求めた。
【0084】
平均繊維長(mm)=L/100
L:100本の短繊維長の和
以下、吸水材の性能・生産性(工程通過性)について下記に表す基準で評価を実施した。
<評価基準>
◎:著しく良い
○:良い
△:悪い
×:著しく悪い
<吸水材の性能>
(1)吸水材表面の風合い(肌触り)
全ての実施例・比較例で得られた吸水材を10人の判定者が手の平での触感により官能判定したものであり、以下の4段階で表したものである。
【0085】
◎:10人全員が風合い良好と判定
○:7人〜9人が良好と判定
△:4人〜6人が良好と判定
×:3人以下が良好と判定
(2)吸水材(布帛)の引張強力:
全ての実施例・比較例で得られた吸水材をJIS規格−L1913−6.3.1の引張強さ試験法に準じた方法で、該吸水材の引張強さを縦方向・横方向別々に求め、そのレベルを◎〜×の4段階で表した。
縦方向の評価
◎:150.0N以上
○:100.0N以上150.0N未満
△:50.0N以上100.0N未満
×:50.0N未満
横方向の評価
◎:250.0N以上
○:150.0N以上250.0N未満
△:100.0N以上150.0N未満
×:100.0N未満
なお、該試験方法は、次の通りである。
a.試験装置:荷重とつかみ間隔を記録できる装置の付いた定速伸長形引張試験機で、JIS−B−7721に規定する精度があるものを用いた。
b.手順:
イ.吸水材(試料)から幅が50mm±0.5mmで、つかみ間隔を100mmにできる長さ(例えば200mm)の吸水材を、吸水材の耳から100mm以上離れた位置で、かつ、均等に離れた位置から、縦方向及び横方向にそれぞれ5枚採取した。(本試験では吸水材の目付けを全ての実施例と比較例において180g/m2 と統一させた上で引張強さを測定した。また、つかみ間隔についてJIS−L1913−6.3.1では200mmとなっているが、本試験では、試験機器の都合上、つかみ間隔を100mmとした。)
ロ.吸水材を初荷重で引張試験機につかみ間隔を100mm±1mmで取付けた。
(*初荷重は、吸水材を手でたるみが生じない程度に引っ張った状態とした。)
ハ.100±10mm/分の引張速度で吸水材が切断するまで荷重を加える。
【0086】
ニ.吸水材の最大荷重時の強さを0.1Nまで測定した。
【0087】
ホ.本試験では引張強さの5回の平均値を縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
<繊維生産性>
(1)紡糸性
繊維の生産工程である紡糸において、生産量1tに対して口金直下でのポリマーベタツキ、糸切れにおけるトラブル回数を測定した。
【0088】
なお、単糸切れとは紡糸生産におけるトラブルであり、これによってマシン正常復帰まで屑が発生する。従って、糸切れ回数が増加することは、生産収率の低下を意味するものである。
【0089】
◎:3.0回/t未満
○:3.0回/t以上5.0回/t未満
△:5.0回/t以上10.0回/t未満
×:10.0回/t以上
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに詳しく説明する。
実施例1
A成分を相対粘度2.73のナイロン6(N6)とし、B成分をポリブチレンテレフタレート(PBT)とした複合繊維で、断面がミカン型であり、実の部分がナイロン6、実と実の間の隔離部分にポリブチレンテレフタレートを配置した実が6個、実を隔離する部分が1個の合計7分割であるトータル太さ1.9dtex、繊維長38mmの繊維をカード機(カーディング)にかけ開繊してシートを作成した。
【0090】
かかるシートを重ね合わせ、ウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で表裏各1回行い、次いで水圧100kg/cm2 で表裏各2回の合計6回通過させた。
【0091】
なお、このときの該繊維の繊維断面状態は図2に示したとおりである。1回目、2回目の、ウォータージェットパンチ後の繊維断面状態である。
【0092】
さらに、ポリエステル系とポリアミド系吸水剤および接着剤の水溶液に浸漬し、乾燥時の吸水剤の付着量が重量比で2%となるように絞った後、乾燥機により乾燥させ本発明にかかる布帛状吸水材を作成した。分割後の単繊維太さはナイロン部分が0.2dtex、ポリブチレンテレフタレート部分が0.57dtexであった。
【0093】
独立した布帛としてポリエステル糸55dtex、12フィラメントと55dtex、46フィラメントの2種類の糸を使い、トリコット編機にて前者が裏面、後者が表面に来るよう編立てを行った。
【0094】
かかる布帛状吸水材と独立した布帛をサイズ幅25cm、長さ60cmに裁断して積層し、周辺をポリエステルマルチフィラメント糸20綿番手にフッ素系撥水剤を0.5%付与した縫い糸を使って四周辺を縫製し一体化して本発明の布帛状吸水材を作成した。
実施例2
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.95とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
実施例3
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.45とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
実施例4
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を3.80とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
実施例5
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.35とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
比較例1
単糸繊度が3.3dtex、繊維長が51mmの分割性を有さないポリエステル単一成分の繊維をカード機にかけ開繊してシートを作成した。かかるシートを積層しニードルパンチ機により吸水材布帛を作成した。かかる布帛をサイズ幅25cm長さ60cmに裁断して比較例吸水材を作成した。
比較例2
単糸繊度が3.3dtex、繊維長が51mmの分割性を有さないナイロン6単一成分の繊維をカード機にかけ開繊してシートを作成した。かかるシートを積層しニードルパンチ機により吸水材布帛を作成した。かかる布帛をサイズ幅25cm長さ60cmに裁断して比較例吸水材を作成した。
比較例3
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を4.30とした以外は、実施例1と同様な方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
比較例4
A成分のナイロン6(N6)相対粘度を2.20とした以外は、実施例1と同様の方法および条件で高次加工を行って帛状吸水材を作成した。
【0095】
上述した各実施例と比較例の規格及び性能、生産性を表1に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
また、おしめとして実用した結果、本発明品は濡れ感を全く覚えず、濡れたまま着座しても水分のシミ出しがなく使用できたのに対し、比較例のものは水分の漏れが生じ、着座時においてしみ出しが激しく、また濡れ感も相当ある状態であった。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば、おしめとして使用した場合に水分の漏れがなく、濡れ感を覚えず、また着座に置いても水分のシミ出しがなく快適に使用でき、また繰り返し洗濯もできるために経済的な吸水材を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る布帛状吸水材の一例構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、実施例1において、分割型複合繊維をカーディング後に100kg/cm2 の水圧で、表裏それぞれ2回ずつウオータージェットパンチした後の繊維断面を示したものであり、繊維が完全に分割された状態を示した繊維横断面概略図である。
【符号の説明】
1:布帛状吸水材
2:独立した布帛
3:縫い糸
4:ポリカプラミド(ナイロン6)ポリマー
5:ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリマー
Claims (14)
- 成分Aのポリマ相対粘度が2.30以上4.20以下のポリカプラミドポリマーで、もう一方の成分Bがポリエステルポリマーであり、これら少なくとも2成分からなり、単糸繊度が0.01dtex〜3dtexの分割型複合繊維を用いた布帛状吸水材であって、該吸水材の空隙量が100cm2 あたりで10cc以上、厚さが0.5mm〜20mmであることを特徴とする吸水材。
- 成分Bのポリエステルポリマーが、ポリブチレンテレフタレートポリマーであることを特徴とする請求項1記載の吸水材。
- 分割型複合繊維が、20mm〜115mmの範囲の繊維長を有する短繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の吸水材。
- 布帛状吸水材の圧縮率が30%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸水材。
- 布帛状吸水材を構成する繊維が、50kg/cm2 以上の水圧処理を分割型複合繊維に対して施すことによって分割されてなるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の吸水材。
- 布帛状吸水材を構成する繊維が、抗菌性を有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の吸水材。
- 布帛状の吸水材は、同種類の繊維層が複数層に重ね合わされてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の吸水材。
- 布帛状吸水材が、構成する繊維の太さが互いに相違している複数の繊維層で構成され、吸水材の表面層を構成する繊維は、他の層の構成繊維よりも太い繊維で構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の吸水材。
- 布帛状吸水材の表面層には、独立した布帛が配置されていて該独立した布帛が通気量300cc/cm2 /sec以上のものであり、それらが全体として請求項1から8のいずれかに記載の吸水材をなしていることを特徴とする吸水材。
- 布帛状吸水材の表面層には、独立した布帛が配置されていて、該独立した布帛は複数層で構成され、該複数層は該複数層における表面層と他の層とが異なっている構造を呈している複数層であり、該複数層における表面層の構成繊維は他の層を構成する繊維よりも平均繊維径が太いものであり、それらが全体として請求項1から9のいずれかに記載の吸水材をなしていることを特徴とする吸水材。
- 布帛状吸水材の表面層には、独立した表面布帛が配置されていて、該独立布帛は撥水性を有しているものであり、それらが全体として請求項1から10のいずれかに記載の吸水材をなしていることを特徴とする吸水材。
- 布帛状吸水材と独立した表面布帛とを結合する手段が縫製であり、該縫製に用いられている縫い糸が撥水加工されたものであることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の吸水材。
- 吸水材が、おしめ用のものである請求項1から12のいずれかに記載の吸水材。
- 吸水材が、液体を収納する容器の包装材として用いられることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の吸水材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002240249A JP2004073619A (ja) | 2002-08-21 | 2002-08-21 | 分割型複合繊維からなる吸水材 |
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2002
- 2002-08-21 JP JP2002240249A patent/JP2004073619A/ja active Pending
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