JP2004072240A - 撮像装置とそれを用いた追尾システムおよびスキャナ - Google Patents
撮像装置とそれを用いた追尾システムおよびスキャナ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】異なる複数の撮像範囲を同時に撮像可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ112から入射した光束はビームスプリッタ112でふたつに分割される。第1の光束は、リレーレンズ113で変倍されたのちに第1イメージセンサ114上に結像する。第2の光束は、第2イメージセンサ115上にそのまま結像する。第1および第2のイメージセンサよって電子的な画像データに変換された画像データは制御回路116,117を経て出力される。
【選択図】 図2
【解決手段】対物レンズ112から入射した光束はビームスプリッタ112でふたつに分割される。第1の光束は、リレーレンズ113で変倍されたのちに第1イメージセンサ114上に結像する。第2の光束は、第2イメージセンサ115上にそのまま結像する。第1および第2のイメージセンサよって電子的な画像データに変換された画像データは制御回路116,117を経て出力される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮像範囲の全体と部分とを異なる倍率で同時に撮像可能な撮像装置に関する。また、該撮像装置を用いた追尾システムおよびスキャナにも関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
金融機関への不正侵入者を監視する等の目的で、動画像を取得する撮像装置を備えた監視システムが一般的に使用されている。該監視システムは、移動する侵入物体を検出し、検出した侵入物体の正体を同定できる必要がある。
【0003】
一般に、撮像装置が備えるイメージセンサの画素数が一定の場合、撮像範囲が広くなるにしたがって取得画像の解像度が低下する。したがって、画素数が少ない低コストのイメージセンサを備えた撮像装置では、撮像範囲を広くして侵入物体を検出しやすくすると、侵入物体の正体の同定に必要な解像度が得られなくなる。あるいは、侵入物体の正体の同定に必要な解像度を得るために撮像範囲を狭くすると、侵入物体を検出しにくくなる。画素数が多いイメージセンサの使用によってこの問題は解決できるが、画素数の多いイメージセンサは高コストである。また、信号電荷の転送時間が増大して1フレームの撮像に時間がかかるという問題も生じる。
【0004】
より具体的には、たとえば、特開平10−13821号公報には、撮像範囲への進入物体を検出し、撮像範囲の中央に侵入物体が撮像されるように撮像装置を旋回する技術が開示されている。本技術によれば、侵入物体を追尾して撮像できるので、ある程度は撮像範囲を狭くできる。しかし、撮像装置がズーミング機能を備えていないため、侵入物体を十分な高解像度で観察できないという問題がある。
【0005】
また、特開2001−285695号公報には、向きを制御可能かつズーミング可能な撮像装置を1台用いて、侵入物体をズームアップしつつ自動追尾する技術が開示されている。本技術によれば、侵入物体を十分な高解像度で撮影できるが、ズームアップ中は他の侵入物体を検出できない問題がある。
【0006】
また、特開平11−69342号公報によれば、撮像範囲が広い撮像装置および向きを制御可能かつズーミング可能な撮像装置の2台の撮像装置を用いた技術が開示されている。この技術によれば、前者の撮像装置で侵入物体を検出しつつ、後者の撮像装置で侵入物体を自動追尾しズームアップして高解像度の撮像を行うことが可能である。しかし、光学系をふたつ用いるため撮像装置が大型化、高価格化するという問題がある。さらに、前者の撮像装置で得られる画像からは侵入物体の方向しかわからないため、後者の撮像装置の向きが一意的に定まらない。すなわち、侵入物体と撮像装置との距離が近い場合、侵入物体追尾精度が不充分になるという問題がある。
【0007】
また、特開平11−510341号公報によれば、魚眼レンズを装着した撮像装置によって、広角視野の撮像を行いつつ、擬似的なパン、チルト、ズームも可能な撮像装置が開示されている。しかし、本技術では、高解像度で撮像を行うためには画素数の多いイメージセンサが必要であるという問題がある。また、生成する画像データ量が膨大になるという問題もある。
【0008】
一方、紙等の原稿に描かれた画像を電子的な画像データに変換するスキャナにおいて、ラインセンサにより原稿を走査する方式よりも読み取りが高速な方式として、エリアセンサを用いて原稿を撮像する方式が既に実現されている。この場合も、上記の監視システムの場合と同様に、画素数が少ない低コストのイメージセンサを備えた撮像装置を用いた場合、原稿全体を読み取るために撮像範囲を広げると解像度が低下してしまう。画素数が多いイメージセンサの使用によってこの問題は解決できるが、画素数の多いイメージセンサは高コストである。このため、撮像対象の原稿を複数の範囲に分割して各部分ごとに境界部分が若干オーバーラップするように部分画像の撮像を行い、撮像後に複数の部分画像を合成することによって全体画像を得る方法が知られている。この方法によれば、撮像範囲が狭くなるので、画素数が少ない低コストのイメージセンサを備えた撮像装置でも、高解像度の画像を取得可能である。しかし、この方法の場合、周辺部分に画像上の特徴部がないと正確につなぎ合わせることができないという問題がある。
【0009】
具体例として、特開平11−196317号公報および特開平11−196318号公報によれば、複数の部分画像を撮像後に合成して全体画像を得る方法において、被写体全体の画像を同一の撮像素子を用いて別の時間に撮像し、この全体画像に基づいて部分画像の変形および位置あわせを行うことによって、像歪みを除去する技術が開示されている。本発明によれば、像歪みを効果的に除去可能であるが、全体画像および部分画像を時間的に別々に撮像する必要があるので、撮像に長時間を要するという問題がある。
【0010】
そして、以上のような監視システムやスキャナにおける様々な問題は、比較的画素数が少ない撮像素子を用いつつ、広範囲の撮像と高い分解能の撮像とを短時間で実現することができる撮像装置が存在しないことに起因するものである。
【0011】
【発明の目的】
本発明は従来技術における上記の問題の解決を意図しており、その第1の目的は、比較的画素数が少ない撮像素子を用いた場合であっても、広範囲の撮像と高い分解能の撮像とを短時間で実現する撮像装置を提供することである。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、広範囲の領域を撮像しつつ侵入物体の検出を行い、同時に監視対象の侵入物体を高解像度で撮像可能な監視システムを提供することである。
【0013】
さらに、本発明の第3の目的は、過大なデータ量を要せずに、部分画像を正確につなぎ合わせることによって高分解能な合成画像を得ることができるスキャナを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、撮像装置であって、撮像範囲からの入射光束を取り入れる光束取得手段と、前記入射光束を複数の光路の光束に分割する光束分割手段と、前記複数の光束のうち、第1の光束を変倍する変倍手段と、前記変倍手段によって変倍された第1の光束を使用して撮像する第1撮像手段と、前記複数の光束のうち、第2の光束を使用して撮像する第2撮像手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る撮像装置であって、前記変倍手段および前記第1撮像手段がユニットとして一体化されており、前記入射光束の光軸と垂直方向に前記ユニットを移動するユニット駆動機構をさらに備え、前記ユニット駆動機構が、前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることによって、前記第1撮像手段の撮像範囲を変化させることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る撮像装置であって、前記変倍手段は像を拡大するリレーレンズ群を備え、前記第1撮像手段を前記入射光束の光軸方向に移動する撮像手段駆動機構をさらに備え、前記撮像手段駆動機構が前記リレーレンズ群と前記第1撮像手段との距離を変化させることによって変倍倍率を変化させることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4の発明は、撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置と、前記撮像装置における前記第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、前記追尾対象物体が、前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように前記第1撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段と、を備えることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5の発明は、原稿上の画像を撮像して電子的な画像データに変換するスキャナであって、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置と、前記撮像装置の前記第1撮像手段が撮像した、前記原稿の各部分画像を記憶する第1記憶手段と、前記撮像装置の前記第2撮像手段が撮像した、前記原稿の全体画像を記憶する第2記憶手段と、前記各部分画像から全体合成画像を合成する画像合成手段と、を備え、前記画像合成手段は、前記全体画像に基づいて前記各部分画像を合成することを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
<1.第1の実施形態>
<1−1.構成>
図1は、この発明の第1の実施形態としての監視システム1の全体構成を示す図である。監視システム1は、広範囲の領域を撮像して、その撮像範囲内に侵入してきた物体を検出可能なように構成されている。また、検出した侵入物体が撮像範囲の中央付近に撮像されるように追尾を行うことが可能である。さらに、撮像範囲の中央付近に撮像された侵入物体をより高い解像度で同時に撮像することも可能なように構成されている。
【0020】
監視システム1は、撮像範囲から入射する光束を光学的に処理して電子的な画像データへ変換する撮像装置110と、撮像装置110を支持しパン方向への旋回およびチルト方向への俯仰を可能にする雲台120とを備える。また、この監視システム1には、撮像装置110および雲台120を制御するともに、撮像装置110によって撮像された電子的な画像データを処理する画像処理装置130と、電子的な画像データを視覚的に認識可能にする第1ディスプレイ140および第2ディスプレイ150と、追尾対象物体を指示する追尾対象指示手段160が設けられている。
【0021】
撮像装置110は、相対的に狭い望遠撮像範囲VTの望遠画像ITと相対的に広い広角撮像範囲VWの広角画像IWとのふたつの画像を同時に撮像可能なように構成される。望遠画像ITは、第1のディスプレイ140へ出力され、表示される。広角画像IWは画像処理装置130へ出力される。画像処理装置130は、物体(被写体)OBを検出し、物体OBが検出されたことを視覚的に判別できるように広角画像IWに所定の画像処理を行い、広角画像IWOUTとして出力する。出力された広角画像IWOUTは第2のディスプレイ150に表示される。
【0022】
撮像装置110は、パン方向への旋回およびチルト方向への俯仰が一定角度範囲内で自在となるように雲台120に可動に連結されている。雲台120は、撮像装置110をパン方向へ旋回およびチルト方向へ俯仰させる旋回俯仰機構121を備える。旋回俯仰機構121は、駆動力源としてモータ等を備え、画像処理装置130からの制御信号Cを受けて駆動される。また、パン角度θpおよびチルト角度θtは、角度センサ122によって検出される。角度センサ122は、ポテンショメータや零点検出信号を出力可能なロータリーエンコーダ等で構成され、検出されたパン角度θpおよびチルト角度θtを画像処理装置130に出力する。
【0023】
画像処理装置130は、入力された広角画像IWに所定の処理を行い、物体OBを検出可能なように構成される。また、追尾対象指示手段160から指示された追尾対象物体(図示例の場合は移動被写体OB)が常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように、雲台120を制御する。
【0024】
追尾対象指示手段160は、図示しない第2のディスプレイ上に設置されたタッチパネルセンサと、棒状のスタイラスとを備える。監視システム1の操作者が、スタイラスの先端で第2のディスプレイ150上の物体の位置に表示された検出マークMK(後述)に触れると、タッチパネルセンサが触れられた位置を検出する。次に、検出された場所に表示されている物体OBが追尾対象と認識され、追尾対象を指示する追尾対象指示信号OSが画像処理装置130へ出力される。なお、追尾対象指示方法はこれに限られない。たとえば、第2のディスプレイ150に、マウス操作で移動可能なカーソルを表示させて、上述の検出マークMKの場所でマウスに設けられたマウスボタンをクリックすることにより追尾対象を決定するようにしてもよい。さらに動体画像認識を行って自動的に追尾対象を決定してもよい。
【0025】
次に、撮像装置110の詳細な構成を説明する。図2は、撮像装置110の主要な構成を示す図である。撮像装置110は、撮像範囲からの光束φが入射する対物レンズ111と、対物レンズ111を通過した光束φを光路が異なるふたつの光束φ1、φ2に分割して分割光束群を得るビームスプリッタ112と、分割光束群のうち直線光束に相当する第1の光束φ1を変倍して伝達するリレーレンズ113と、リレーレンズ113を通過した光束が結像する第1イメージセンサ114と、分割光束群のうち反射光束に相当する第2の光束φ2が結像する第2イメージセンサ115とを備える。第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115は、結像した像を光量に応じた信号電荷へ光電変換して蓄積する2次元CCD(charge coupled device)である。第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115は、ビームスプリッタ112の前では光束の光軸が一致するようなアライメントで設置されている。第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115には、それぞれ制御回路116および117が接続される。制御回路116および117は、撮像によってCCDに蓄積された信号電荷を読み取り、CDS(correlated double sampling)回路やAGC(automatic gain control)回路で所定の信号処理を施した後に望遠画像ITおよび広角画像IWを出力する。なお、第1の実施形態に係るビームスプリッタ112はプリズム境界をハーフミラー状態としたキューブビームスプリッタであるが、平面ビームスプリッタや薄膜ビームスプリッタ等であってもよい。また、リレーレンズ113は、変倍機能を持つ光学素子であればよく、たとえば、ファイバーオプティックスプレート等であってもよい。この変倍機能により、第1イメージセンサ114の撮像範囲VTは、第2イメージセンサ115の撮像範囲VWよりも狭くなる。したがって、第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115に、同じ画素数のイメージセンサを用いた場合、第1イメージセンサ114では撮像範囲が狭いが高解像度の遠望画像が得られ、第2イメージセンサ115では撮像範囲が広い広角画像が得られる。望遠画像は広角画像の中央付近の高解像度の画像となる。
【0026】
次に、画像処理装置130の構成について図3のブロック図を参照しながら説明する。画像処理装置130は、各種の演算処理を行うCPU131を備える。CPU131は、信号の送受信を行うデータバス138を介して、画像入力I/F132と、旋回俯仰機構I/F133と、角度センサI/F134と、画像出力I/F135と、追尾対象指示手段I/F136とに接続されている。画像入力I/F132は、撮像装置110の制御回路117に接続され、広角画像IWを取得する。旋回俯仰機構I/F133は、雲台120の旋回俯仰機構121に接続され、撮像装置110を旋回俯仰させるための制御信号Cを出力する。角度センサI/F134は、雲台120の角度センサ122に接続され、パン角度θpおよびチルト角度θtを取得する。画像出力I/F135は、第2ディスプレイ150に接続され、所定の画像処理が行われた広角画像IWOUTを出力する。追尾対象指示手段I/F136は、追尾対象を指定する追尾対象指示手段160に接続され、追尾対象指示信号OSを取得する。
【0027】
さらに、CPU131は、データバス138を介してメモリ137に接続される。メモリ137の記憶領域には、図4に示すように各種データの記憶領域が設定される。具体的には、以下の(1)〜(11)の記憶領域が設定される。
(1)プログラムメモリ137a:CPU131の動作を規定するプログラムを記憶する。
(2)ワークメモリ137b:CPU131の処理途上で一時的に記憶する必要があるデータを記憶する。
(3)角度メモリ137c:角度センサI/F134が取得したパン角度θpおよびチルト角度θtを記憶する。
(4)物体位置メモリ137d:検出された物体OBの2次元的な画像の重心座標と、複数の物体を区別するために与えられる物体識別名idとを記憶する。
(5)追尾対象物体メモリ137e:追尾対象物体の物体識別名idおよび重心座標を記憶する。
(6)背景画像メモリ137f:物体OBが含まれない背景画像IBを記憶する。後述するように、背景画像メモリ137fには、パン角度θpおよびチルト角度θtが異なるN個(Nは2以上の整数)の背景画像IBが記憶されている。
(7)背景マップメモリ137g:背景画像メモリ137fに記憶されたN個の背景画像IBを組み合わせて得られた背景マップBMを記憶する。背景マップBMは、一度の撮像では得られないような、さらに広い撮像範囲の画像データである。
(8)入力画像メモリ137h:入力画像I/F132が取得した広角画像IWを記憶する。
(9)擬似背景画像メモリ137i:背景マップメモリ137gに記憶された背景マップBMから、広角画像IWの撮像範囲に対応する擬似背景画像ITMPを記憶する。
(10)画像間演算結果画像メモリ137j:入力画像メモリ137hと擬似背景メモリ137iとに記憶された画像間の差分データを記憶する。
(11)2値化画像メモリ137k:画像間演算結果メモリ137jに記憶された画像データに2値化処理を施した結果を記憶する。
【0028】
<1−2.動作>
監視システム1は、広角画像IWとその背景画像IBとの差分から、物体OBの侵入を検出する。その後に、指示された追尾対象が常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように、撮像装置110の姿勢が制御される。ここで、物体OBが、撮像装置110の初期姿勢における広角画像IWの撮像範囲VWを外れて移動しても追尾を可能とするために、パン角度θpおよびチルト角度θtが異なる複数の背景画像IBを組み合わせて、あらかじめ背景マップBMを作成しておく。そして、該背景マップBMから、その時点で必要な擬似背景画像ITMPを擬似的に生成するという処理を行う。
【0029】
以下、監視システム1の動作の詳細について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
ステップS101では、物体OBがない状態で、撮像可能範囲がすべて含まれるように、撮像装置110を所定のパン角度およびチルト角度間隔でパンおよびチルトさせながら順次広角画像IWを取得する。取得されたN個の広角画像IWは、撮像装置110のパン角度θpおよびチルト角度θtと対応づけられて、背景画像IBとして背景画像メモリ137fに記憶される。より具体的に説明すると、撮像装置110の水平、垂直方向の画角がそれぞれ30°、10°、撮像装置110の旋回および俯仰が可能なパン角度θp、チルト角度θtをそれぞれ、−30°〜30°、−10°〜10°とする。この場合、図7のように背景画像IB(0,0)、IB(1,0)、IB(2,0)、IB(0,1)、IB(1,1)、IB(2,1)の6枚の画像が順次取得される。ここで、上記の背景画像IB(0,0)〜IB(1,2)を撮像するときの撮像装置10のパン角度、チルト角度は、それぞれ(θp,θt)=(−30°,−10°)、(0°,−10°)、(30°,−10°)、(30°,−10°)、(30°,−10°)、(30°,−10°)である。つまり、上述の「所定のパン角度およびチルト角度間隔」は、それぞれ30°、20°である。上記の背景画像IB(0,0)〜IB(1,2)は、撮像装置110が雲台120によって所望のパン角度θpおよびチルト角度θtを与えられた後に、画像入力I/F132によって制御回路117から出力された広角画像IWを取得することによって得られる。また、撮像装置110の姿勢の制御は以下のように行われる。すなわち、角度センサ122から出力されるパン角度θpおよびチルト角度θtを角度センサI/F134が読み取り、所望のパン角度θpおよびチルト角度θtとの差分をCPU131がメモリ137に記憶されたプログラムによって算出する。次に、算出された差分が0となるまで、CPU131に制御された旋回俯仰機構I/F133が制御信号Cを出力することによって、撮像装置110の姿勢は所望のパン角度θpおよびチルト角度θtとなる。
【0031】
ステップS101終了後、次のステップS102へ移行する。
【0032】
ステップS102では、背景画像メモリ137fに記憶されたN個の背景画像IBを接合して、撮像可能範囲がすべて含まれる背景マップBMが作成され、背景マップメモリ137gに記憶される。なお、背景画像にオーバーラップ領域がある場合は、特開平6−141246号公報に開示されている方法で接合を行う。
【0033】
ステップS102終了後、次のステップS103へ移行する。
【0034】
ステップS103では、撮像装置110の姿勢の初期化を行う。すなわち、撮像装置110の姿勢をあらかじめ定められたパン角度θpおよびチルト角度θtとする。初期化終了後、次のステップS104へ移行する。
【0035】
ステップS104では、画像入力I/F132を介して撮像装置110から取得した広角画像IWを入力画像メモリ137hに記憶し、次のステップS105へ移行する。記憶された広角画像IWの例を図9に示す。
【0036】
ステップS105では、パン角度θpiおよびチルト角度θtjにおける擬似的な背景画像である擬似背景画像ITMPを作成して、擬似背景画像メモリ137iへ記憶する。擬似背景画増ITMPの作成方法を以下で説明する。
【0037】
まず、パン角度θpiおよびチルト角度θtjから、画像位置インデックス(i,j)を数1および数2、または数3および数4によって算出する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
【数4】
【0042】
ただし、θp0、θt0はそれぞれ、ステップS101での撮像開始姿勢のパン角度、チルト角度であり、Tp、Ttは、それぞれ隣接した背景画像IBのパン角度、チルト角度の撮像間隔である。上述の例では、θp0=−30°、θt0=−10°、Tp=30°、Tt=20°、0≦i≦2、0≦j≦1である。i,jは、必ずしも整数である必要はない。整数は、ステップS101で撮像された背景画像IBの撮像範囲に対応する画像位置インデックスとなるが、擬似背景画像ITMPの画像位置インデックスは整数でなくてもよい。たとえば、i,jのいずれかが整数でない場合、図8中に一点破線で示した領域[(i,j)=(0.5,0.5)]のように、対応する範囲が複数の背景画像IBにまたがることになる。
【0043】
次に、算出された画像位置インデックス(i,j)を用いて、背景マップBMから、擬似背景画像ITMPを切り出す。具体的には、撮像開始に対応した部分から、横方向にx画素および縦方向にy画素ずらした位置の画像を切り出して擬似背景画像ITMPとする。ここで、x、yは、それぞれ数5、数6で与えられる。また、W、Hは、それぞれ背景画像IWの縦、横の画素数である。
【0044】
【数5】
【0045】
【数6】
【0046】
作成された擬似背景画像ITMPの例を図10に示す。
【0047】
ステップS105終了後、次のステップS106へ移行する。
【0048】
ステップS106では、入力画像メモリ137hに記憶された広角画像IWおよび擬似背景画像メモリ137iに記憶された擬似背景画像ITMPの対応する画素間で輝度値の差分を計算して、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶する。この差分は、画像の変化であり、物体OBが撮像された部分のみ、この差分値が大きくなる。逆に、物体OBがなく時間的に画像に変化がない場合、ノイズを除けば、この差分値はほぼ0になる。次に、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶された画像に2値化処理を行う。すなわち、所定の閾値に対する大小によって、画素値に0または1のいずれかの値を与える。この処理によって、物体OBがより明瞭になる。この演算結果は2値化画像メモリ137kに記憶され、次のステップS107へ移行する。記憶された2値化画像データの例を図11に示す。
【0049】
次のステップS107では、ステップS106で得られた2値化画像の白画素(1の画素値が与えられた画素)が所定個数以上に集合した画素クラスタを検出するラベリング処理が行われる。ここで、ラベリング処理は、注目している白画素に隣接する8画素に白画素がある場合、注目している白画素と隣接した白画素とは同一領域に属すると見なして、同一のラベルを与える処理を意味する。この処理によって、画像上で黒画素によって分割されている領域は、別々の物体として認識される。
【0050】
ステップS107終了後、次のステップS108へ移行する。
【0051】
ステップS108では、ステップS107でラベリングされた各領域ごとに、白画素数の算出が行われる。白画素数が所定の数値以上の場合、その領域には物体が存在すると見なされて、連続番号などで表現された物体識別名idが与えられる。物体識別名idが与えられる領域が存在しなかった場合は、ステップS103へ移行する。物体識別名idが与えられる領域が存在する場合は、次のステップS109へ移行する。
【0052】
ステップS109では、物体識別名idが割り振られた領域の重心座標(XC,YC)が数7および数8によって算出される。
【0053】
【数7】
【0054】
【数8】
【0055】
ここで、p、qは、画素の座標値であり、f(p,q)は、座標(p,q)の画素における画素値である。ただし、座標値は、それぞれ、左下端からの横方向(x軸方向)および縦方向(y軸方向)への画素数で表す。さらに、数9で表される記号は、注目している物体OBのみを内包し、他の物体を含まない画像内の領域R内のすべての画素についての和を取ることを示す。
【0056】
【数9】
【0057】
検出物体が複数ある場合は、上記の処理は複数の物体それぞれについて行われる。また、入力画像メモリ137hに記憶されている広角画像IWの座標(p,q)の位置に物体を検出したことを示す検出マークMKを重畳して、広角画像IWOUTとして、画像出力I/F135を介して第2ディスプレイ150へ出力される。検出マークMKの例を図10に示す。
【0058】
ステップS109終了後、ステップS110へ移行する。
【0059】
ステップS110では、追尾対象を決定する。追尾対象を決定する方法の詳細は後述する。
【0060】
ステップS111では、ステップS110で決定された追尾対象が第2ディスプレイの中央付近に撮像されるように雲台120の制御を行う。ここで、パン角度θpおよびチルト角度θtの変化させるべき量ΔθpおよびΔθtは数10および数11で表される。ここで、ΔxおよびΔyは、画像中心から重心までの画素数であり、それぞれ数12および数13で表される。ステップS111終了後、ステップS104へ移行する。
【0061】
【数10】
【0062】
【数11】
【0063】
【数12】
【0064】
【数13】
【0065】
次に、追尾対象を決定するステップS110のサブルーチンについて、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0066】
まず、追尾対象指示手段160からの追尾対象指示信号OSの有無で分岐処理が行われる。出力がある場合、ステップS1092へ移行する。出力がない場合、ステップS1093へ移行する。
【0067】
ステップS1092では、追尾対象指示信号OSで指示された物体を追尾対象メモリへ記憶して、本サブルーチンを終了する。
【0068】
ステップS1093では、追尾対象メモリ137eを参照して、過去の追尾対象が記憶されているかどうかによって分岐処理が行われる。過去の追尾対象が記憶されている場合、ステップS1094へ移行する。記憶されていない場合、ステップS1095へ移行する。
【0069】
ステップS1094では、過去の追尾対象と最も類似した物体を追跡対象メモリ137eへ記憶して、本サブルーチンを終了する。ここで、「最も類似した」とは、過去の追尾対象との間の差分が最も小さいことを意味する。
【0070】
ステップS1095では、検出された物体が単数か複数かで分岐処理が行われる。複数の場合、ステップS1096へ移行する。単数の場合、ステップS1097へ移行する。
【0071】
ステップS1096では、画像の中央に最も近い物体を追尾対象メモリ137eへ記憶して本サブルーチンを終了する。
【0072】
ステップS1097では、検出された物体を追尾対象メモリ137eへ記憶して本サブルーチンを終了する。
【0073】
上記の処理によって、追尾対象の指定がある場合はその物体を追尾し、指示がない場合は過去の追尾対象と最も類似した物体を追尾することになる。また、物体の初回検出時など、過去の追尾対象がない場合は画角の中央に最も近い物体、または検出された物体をそのまま追尾することになる。
【0074】
広角画像IWおよび望遠画像ITの光軸は一致しているので、広角画像IWで画角の中央付近に撮像され移動物体は、望遠画像ITで高解像度で撮像されて第1ディスプレイ140に表示される。
【0075】
本実施形態によれば、広範囲を撮像して物体の検出を行いながら、検出された物体を追尾するとともに、監視対象の進入物体を高解像度で同時に撮像することが可能である。したがって、特定の移動物体を高解像度で撮像中も、より広い撮像範囲の撮像を同時に行っているので、操作者が新たな進入物体に気がつきやすいという利点がある。加えて、ズーミングの待ち時間が不要となるので、高速な物体追尾が可能である。さらに、この機能を実現するために高コストの高画素数のイメージセンサを使用する必要がないのでコスト面で有利である。また、これらの機能を1台の撮像装置で実現できるため、監視システムの小型化にも有効である。
【0076】
<2.第2の実施形態>
<2−1.構成>
図13は、この発明の第2の実施形態としての監視システム2の全体構成を示す図である。監視システム2は、監視システム1と同様に広範囲の領域を撮像して、その撮像範囲内に侵入してきた物体OBを検出可能なように構成されている。また、検出した物体OBを高解像度で並行的に撮像されるように追尾を行うことが可能である。
【0077】
監視システム2が監視システム1と異なるのは、雲台を用いて撮像装置全体のパン角度およびチルト角度を変えて撮像範囲の移動を行う代わりに、撮像装置内の光学素子のアライメントを変えることによって撮像範囲の移動を行っていることである。したがって、第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる点を説明し、同様の構成には同じ参照番号を付して重複説明は省略する。
【0078】
監視システム2は、撮像範囲から入射する光束φを光学的に処理して電子的な画像データへ変換する撮像装置210と、撮像装置210を支持する固定された支持台220と、撮像装置210を制御するともに、撮像装置210によって撮像された電子的な画像データを処理する画像処理装置230と、電子的な画像データを視覚的に認識可能にする第1ディスプレイ140および第2ディスプレイ150と、追尾対象物体を指示する追尾対象指示手段160とを備える。
【0079】
図14は撮像装置210の主要な構成を示す図であり、図15は画像処理装置230の主要な構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る撮像装置210および画像処理装置230が、第1の実施形態に係る撮像装置110および制御部130と異なるのは以下の点である。
【0080】
(A)リレーレンズ113および第1イメージセンサ114は、容器211によってイメージセンサユニット212として一体化されている。イメージセンサユニット212は、イメージセンサユニット駆動機構213と接続されており、光束φの光軸と垂直な平面内(図14のyz平面内)で駆動可能である。イメージセンサユニット駆動機構213は、数mm程度の精度で位置決めが可能なリニアアクチエータであり、駆動力源として圧電体等を備えている。さらに、イメージセンサユニット211の左右位置yおよび上下位置zは、位置センサ214によって検出可能である。位置センサ214は、零点を検出可能なリニアエンコーダ等で構成され、検出された左右位置yと上下位置zを画像処理装置230に出力する機能を有する。イメージセンサユニットを光束の光軸と垂直な方向へ駆動することにより、望遠画像ITの撮像範囲VTを動かすことができる。すなわち、第1の実施形態における雲台20がなくても、撮像装置110をパン方向およびチルト方向へ回動した場合と同様の効果が望遠画像ITについて得られる。なお、第2の実施形態においては、望遠画像ITと広角画像IWの光軸は一致しない。
【0081】
(B)第1の実施形態に係る旋回俯仰機構I/F133、角度センサI/F134に代わって、イメージセンサユニット駆動機構I/F233、位置センサI/F234を備える。イメージセンサユニット駆動機構I/F233は、撮像装置210のイメージセンサユニット駆動機構213に接続され、イメージセンサユニット駆動機構213を制御する制御信号Cを出力する。位置センサI/F234は、位置センサ214に接続され、左右位置yおよび上下位置zを取得する。イメージセンサユニット駆動機構I/F233、位置センサI/F234は、データバス138を介して、CPU131に接続され、望遠画像の撮像範囲が所望になるよう制御される。
【0082】
(C)メモリ237に設定される記憶領域は、第1の実施形態と
▲1▼角度メモリ137cがなく、イメージセンサユニット212の左右位置yと上下位置zとを記憶する位置メモリ237cが設けられている点、
▲2▼背景画像メモリ237bに記憶される背景画像がひとつである点、
▲3▼背景マップメモリ137g、擬似背景画像メモリ137iがない点、
で異なる。
【0083】
<2−2.動作>
監視システム2は、広角画像IWとその背景画像IBとの差分から、侵入した物体OBを検出する。その後に、指示された追跡対象が望遠画像ITの撮像範囲の中央付近に撮像されるように、イメージセンサユニット212の位置が制御される。しかし、第1の実施形態とは異なり、背景マップBMは使用しない。
【0084】
以下、監視システム2の動作の詳細について、図17のフローチャートを参照しながら説明する。ただし、第1の実施形態と同様の動作については詳細説明を省略する。
【0085】
ステップS201では、物体OBがない状態で、広角画像IWの撮像を行い、撮像結果を背景画像メモリ237bへ記憶して、次のステップS202へ移行する。
【0086】
ステップS202では、イメージセンサユニット212の位置の初期化を行う。すなわち、イメージセンサユニット212の位置をあらかじめ定められた左右位置y0、上下位置z0とする。初期化終了後、次のステップS203へ移行する。
【0087】
ステップS203では、画像入力I/F132を介して撮像装置210から取得した広角画像IWを入力画像メモリ137hに記憶し、次のステップS204へ移行する。
【0088】
ステップS204では、入力画像メモリ137hに記憶された画像および背景画像メモリ237bに記憶された画像の対応する画素間で輝度値の差分を計算して、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶する。次に、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶された画像に2値化処理を行って、2値化画像メモリ137kに記憶し、次のステップS205へ移行する。
【0089】
ステップS205では、ステップS204で得られた2値化画像の各画素クラスタにラベリング処理を行ない、次のステップS206へ移行する。
【0090】
次のステップS206では、ステップS205でラベリングされた各領域(画素クラスタ)ごとに、白画素数の算出が行われる。白画素数が所定の数値以上の場合、その領域には物体が存在すると見なされて物体識別名idが与えられる。物体識別名idが与えられる領域が存在しなかった場合は、ステップS202へ移行する。物体識別名idが与えられる領域が存在する場合は、次のステップS207へ移行する。
【0091】
ステップS207では、物体の2次元画像の重心座標(XC,YC)が数7および数8によって算出される。算出方法は、第1の実施形態と同様である。また、第1の実施形態と同様に、広角画像IWに検出マークMKを重畳して、広角画像IWOUTとして、画像出力I/F135を介して第2のディスプレイ150へ出力する。
【0092】
ステップS207終了後、ステップS208へ移行する。
【0093】
ステップS208では、追尾対象が決定される。決定方法は、第1の実施形態と同様である。
【0094】
ステップS209では、ステップS208で決定された追尾対象が望遠画像の中央付近に撮像されるようにイメージセンサユニット駆動機構213の制御を行う。ここで、第1イメージセンサ114と第2イメージセンサ115の光軸が一致するイメージセンサユニット212の左右位置y、上下位置zをそれぞれy0、z0とすると、移動後のイメージセンサユニット212の左右位置y、上下位置zは、数14および数15で与えられる。
【0095】
【数14】
【0096】
【数15】
【0097】
ここで、Zは変倍倍率である。イメージセンサユニット212をこのように移動させることにより、望遠画像ITの中央付近に常に物体OBが高解像度で撮像されることになる。
【0098】
なお、本実施形態においては、第1イメージセンサ114のみを移動させ、第2イメージセンサ115の位置は固定されていたが、これを第1イメージセンサ114同様に光軸と垂直方向に可動としてもよい。この場合、広角画像IWの撮像範囲VWも変化させることが可能であるので、第1の実施形態のように、複数の背景画像IBを組み合わせた背景マップBMを使用すれば、より広範囲を監視対象とすることが可能である。
【0099】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、広範囲の領域を撮像して物体の検出を行いながら、検出された物体を追尾するとともに、監視対象の進入物体を高解像度で同時に撮像することが可能である。したがって、特定の移動物体を高解像度で撮像中も、より広い撮像範囲の撮像を同時に行っているので、操作者が新たな進入物体に気がつきやすいという利点がある。加えて、ズーミングの待ち時間が不要となるので、高速な物体追尾が可能である。さらに、この機能を実現するために高コストの高画素数のイメージセンサする必要がないのでコスト面で有利である。また、これらの機能を1台の撮像装置で実現できるため、監視システムの小型化にも有効である。
【0100】
加えて、第1の実施形態における雲台が不要となるので、より小型に装置を構成することが可能である。
【0101】
<3.第3の実施形態>
<3−1.構成>
図18は、この発明の第3の実施形態としての監視システム3の全体構成を示す図である。監視システム3は、監視システム1と同様に広範囲の領域を撮像して、その撮像範囲内に侵入してきた物体OBを検出可能なように構成されている。また、検出した物体OBが常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように追尾を行うことが可能である。さらに、撮像範囲の中央付近に撮像された物体OBをより高い解像度で同時に撮像することも可能なように構成されている。
【0102】
監視システム3が監視システム1と異なるのは、撮像装置内の光学素子のアライメントを変えることによって望遠画像ITのズーミングを行うことが可能な点である。したがって、第3の実施形態の説明では、第一の実施形態と異なる点を説明し、同様の構成には同じ参照番号を付して重複説明は省略する。
【0103】
監視システム3は、撮像範囲から入射する光束を光学的に処理して電子的な画像データへ変換する撮像装置310と、撮像装置310を支持しパン方向への旋回およびチルト方向への俯仰を可能にする雲台120と、撮像装置310および雲台120を制御するともに、撮像装置310によって撮像された電子的な画像データを処理する画像処理装置330と、電子的な画像データを視覚的に認識可能にする第1ディスプレイ140および第2ディスプレイ150と、追尾対象物体を指示する追尾対象指示手段160とを備える。
【0104】
撮像装置310および画像処理装置330は、第1の実施形態で説明した構成に加えて、さらに望遠画像のズーミングが可能なように構成される。以下、撮像装置320および画像処理装置330の第1の実施形態からの変更点について説明する。
【0105】
図19は撮像装置310の主要な構成を示す図であり、図20は画像処理装置330の主要な構成を示すブロック図である。第3の実施形態に係る撮像装置310および画像処理装置330が、第1の実施形態に係る撮像装置110および画像処理装置130と異なるのは以下で説明する点である。
【0106】
(1)第1イメージセンサ114は、イメージセンサ駆動機構311と接続されており、光束φの光軸方向(図19のx軸方向)に駆動可能である。イメージセンサ駆動機構311は、数mm程度の精度で位置決めが可能なリニアアクチエータであり、駆動力源として圧電体等を備えている。さらに、第1イメージセンサ114のリレーレンズ113からの距離Lは、距離センサ312によって検出可能である。距離センサ312は、零点を検出可能なリニアエンコーダ等で構成され、検出された距離Lを画像処理部330に出力する機能を有する。第3の実施形態のように、リレーレンズ113と第1イメージセンサ114の距離Lを変化させることにより、変倍倍率Zを変更することが可能である。
【0107】
(2)画像処理装置330は、第1の実施形態に係る画像処理装置130の構成に加えて、データバス138に接続されたイメージセンサ駆動機構I/F331および距離センサI/F332を備える。イメージセンサ駆動機構I/F331は、撮像装置310のイメージセンサ駆動機構311に接続され、駆動するための制御信号ZMを出力する。距離センサI/F332は、撮像装置310の距離センサ312と接続され、距離Lを取得する。
【0108】
(3)メモリ337には、第1の実施形態に係るメモリ137の記憶領域に加えて、追尾対象となる物体の大きさを記憶する物体サイズメモリ337aを備える。
【0109】
<3−2.動作>
監視システム1は、第1の実施形態と同様に、広角画像IWとその背景画像IBとの差分から、物体OBを検出する。その後に、指示された追跡対象が常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように、撮像装置310の姿勢が制御される。ここで、物体OBが、撮像装置310の初期姿勢における広角画像IWの撮像範囲VWを外れて移動しても追尾を可能とするために、パン角度θpおよびチルト角度θtが異なる複数の背景画像IBを組み合わせて、あらかじめ背景マップBMを作成しておく。そして、該背景マップBMから必要な背景画像IBを生成するという処理を行う。
【0110】
第3の実施形態に係る撮像システム3には、さらに、望遠画像ITがより明瞭に撮像されるように、変倍倍率Zを変更する動作が加わる。以下、監視システム3の動作の詳細について、図22のフローチャートを参照しながら説明する。
【0111】
図22のフローチャートにおけステップS301〜S311は、第1の実施形態の図5のステップS101〜S111に対応し、同様の動作であるので、説明は省略し、ステップS311に続くステップS312から説明する。
【0112】
ステップS312では、追尾対象物体のサイズを算出して、物体サイズメモリ337aに記憶する。
【0113】
まず、追尾対象物体の白画素の集合のうち、広角画像IW上で横方向(x軸方向)の最左端の画素のx座標をXL、横方向の最右端の画素のx座標をXR、縦方向(y軸方向)の最上端の画素のy座標をYU、縦方向の最下端の画素のy座標をYLとする。このとき、差分(XC−XL)、(XR−XC)のうちの大きい方をΔWOBとし、差分(YC−YL)、(YU−YC)のうちの大きい方をΔHOBとする。ΔWOBおよびΔHOBを物体サイズメモリ337aに記憶して、次のステップS313へ移行する。なお、この算出方法について、模式的に示した図が図23である。
【0114】
ステップS313では、ステップS312で算出した物体サイズに基づいて、イメージセンサ駆動機構311を制御して、変倍倍率Zを決定する。第1イメージセンサ140が、縦A画素×横B画素(たとえば、A,Bは数百〜数千程度の値)である場合、物体OBがイメージセンサ114の横方向にはみ出さない最大の変倍倍率ZX、および縦方向にはみ出さない最大の変倍倍率ZYは、数16および数17で算出される。また、算出された変倍倍率が実現できない値であるときは、実現可能な最も近い変倍倍率が採用される。
【0115】
【数16】
【0116】
【数17】
【0117】
このZXおよびZYのうち、小さい方が変倍倍率Zとして採用される。なお、変倍倍率は距離Lの関数であるが、この関数は光学素子の諸定数から理論的に、または実験的にあらかじめ算出しておき、メモリ237に記憶されたプログラムによって距離Lに換算される。この結果がイメージセンサ駆動機構I/F331を介して出力され、イメージセンサ駆動機構311によって距離Lが変化し、所望の変倍倍率Zが得られる。
【0118】
ステップS313終了後、ステップS304へ移行する。
【0119】
なお、第4の実施形態では変倍倍率Zの決定を検出物体の大きさから自動的に実施したが、これを操作者の手動操作によっても問題はない。
【0120】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、広範囲の領域を撮像して物体の検出を行いながら、検出された物体を追尾するとともに、監視対象の進入物体を高解像度で同時に撮像することが可能である。したがって、特定の移動物体を高解像度で撮像中も、より広い撮像範囲の撮像を同時に行っているので、操作者が新たな進入物体に気がつきやすいという利点がある。加えて、ズーミングの待ち時間が不要となるので、高速な物体追尾が可能である。さらに、この機能を実現するために高コストの高画素数のイメージセンサを使用する必要がないのでコスト面で有利である。また、これらの機能を1台の撮像装置で実現できるため、監視システムの小型化にも有効である。
【0121】
加えて、望遠画像の変倍倍率を変更できるので、被写体をより明瞭に観察することが可能である。
【0122】
<4.第4の実施形態>
<4−1.構成>
図24は、この発明の第4の実施形態としてのスキャナシステム4の全体構成を示す斜視図である。スキャナシステム4は、紙等の原稿Mの全体を含む全体画像IWOを撮像するとともに、原稿Mを複数の部分領域に分割して各部分領域を含む範囲ごとに高解像度の部分画像IPを撮像するように構成されている。また、全体画像IWOを参照しながら部分画像IPを接合して原稿全体の高解像度画像が得られるように構成されている。
【0123】
スキャナシステム4は、原稿M(画像記録媒体)上に可視的に記録された画像を撮像して電子的な画像データへ変換するスキャナ装置400と、スキャナ装置400に接続され、スキャナ装置400の制御等を行うプログラムがインストールされたコンピュータ490とを備える。
【0124】
スキャナ装置400は、原稿Mを載置する原稿台410と、閉じた状態で原稿台410を遮蔽できるように開閉自在に設置された原稿押さえ420と、原稿台410に載置された原稿Mの撮像を行う撮像装置430と、撮像装置430およびコンピュータ490に接続された制御部440と、操作者が電源のON/OFF等の指示をスキャナ装置に与えるための操作ボタン群450とを備える。原稿台410は、ガラス等の透光性の部材からなり、平坦な両主面を備える。原稿押さえ420は、原稿台410に載置された原稿Mを平坦に押さえつけ、遮光を行う。撮像装置430は、原稿台410全体を含む全体画像IWOを撮像すると同時に、複数の部分領域に分割された部分領域を含む範囲ごとに高解像度の部分画像IPを撮像できるように構成される。また、撮像装置430は、全体画像を撮像するときの光軸が、原稿台410に垂直となるように設置される。
【0125】
次に、撮像装置430について図25の断面図を参照しながら説明する。ただし、第4の実施形態に係る撮像装置430の構成の大部分は、第2の実施形態に係る撮像装置210と同様である。このため、同様の構成は同一の参照番号を付して重複説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0126】
撮像装置430は、第2の実施形態に係る撮像装置210の構成に加えて、原稿台410に載置された原稿Mの全体に光を照射するランプ(照明手段)431を備える。ランプ431は、第1イメージセンサ114または第2イメージセンサ115が原稿Mを撮像中に、原稿に光を照射する。照射された光は原稿Mによって反射される。第1イメージセンサ114または第2イメージセンサ115がこの反射光を光電変換することにより、撮像装置430が原稿Mを撮像することが可能である。イメージセンサユニット212における変倍倍率Zは制限されないが、約2倍であるとして以下の説明を行う。
【0127】
撮像装置430の上記の構成により、第1イメージセンサ114では上述の部分画像IPを撮像可能になり、第2イメージセンサ115では上述の全体画像IWOを撮像可能になる。さらに、部分画像IPの撮像範囲は、イメージセンサユニット212をyz面内で移動することにより変化させることが可能である。
【0128】
続いて、制御部440の構成を図26のブロック図を参照しながら説明する。制御部440は、各種の演算処理を行うCPU447を備える。CPU447は、信号の送受信を行うデータバス449を介して、ランプI/F441、部分画像入力I/F442と、全体画像入力I/F443と、イメージセンサユニット駆動機構I/F444と、位置センサI/F445と、データ入出力I/F446とに接続される。ランプI/F441は、撮像装置430のランプ431に接続され、ランプ431にランプ制御信号FLを出力してランプ431を発光させる機能を持つ。部分画像入力I/F442は、制御部116に接続され部分画像IPを取得する。全体画像入力I/F443は、制御回路117に接続され、全体画像IWOを取得する。イメージセンサユニット駆動機構I/F444は、イメージセンサユニット駆動機構213に接続され、イメージセンサユニット駆動機構213を制御する制御信号Cを出力する。位置センサI/F445は、位置センサ214に接続され、位置センサ214から出力された左右位置yおよび上下位置zを取得する。データ入出力I/F446は、コンピュータ490に接続され、コンピュータ490からの制御信号を受信し、取得した画像をコンピュータ490に出力する。
【0129】
さらに、CPU447は、データバス449を介してメモリ448に接続される。メモリ448の記憶領域には、図27に示すように各種データの記憶領域が設定される。具体的には、以下の(1)〜(6)の記憶領域が設定される。
(1)プログラムメモリ448a:CPU447の動作を規定するプログラムを記憶する。
(2)ワークメモリ448b:CPU447の処理途上で一時的に記憶する必要があるデータを記憶する。
(3)位置メモリ448c:位置センサ214の左右位置yおよび上下位置zを記憶する。
(4)全体画像メモリ448d:原稿Mの全体画像IWOを記憶する。
(5)部分画像メモリ448e:原稿Mのそれぞれの部分画像IPを記憶する。(6)合成全体画像メモリ448f:各部分画像を合成した合成全体画像ICを記憶する。
【0130】
<4−2.動作>
スキャナシステム4の操作者がコンピュータ490を操作して、スキャニング開始の指示をスキャナ装置400へ与えると、制御部440が撮像装置430を制御して撮像が開始される。
【0131】
まず、ランプ制御信号FLがランプI/F441から出力され、ランプ431が発光する。続いて、全体画像入力I/F443によって、全体画像IWOが取得され、メモリ448dに記憶される。同時に、部分画像IPの取得が以下の手順で行われる。
【0132】
まず、図28のように、原稿Mの第1部分画像IPAに対応する領域が撮像範囲となるように、イメージセンサユニット212がイメージセンサユニット駆動機構213によって移動させられる。駆動方法は、第2の実施形態と同様である。移動完了後、部分画像入力I/F442によって第1部分画像IPAが取得されて、部分画像メモリ448eに記憶される。同様にして、部分領域B、C、Dに対応する第2部分画像IPB、第3部分画像IPC、第4部分画像IPDが部分画像メモリ448eに記憶される。なお、上記の例では、分割数を4としたが、イメージセンサユニット212の変倍倍率Zが変化した場合、分割数を変更する。たとえば、変倍倍率Zが3倍の場合、3×3=9分割とする。また、後述する合成処理のために、各部分画像IPはオーバーラップ領域ROを有する。
【0133】
撮像終了後、ランプ制御信号FLが停止して、ランプ431の発光が停止する。
【0134】
上述の全体画像IWO、部分画像IPA、IPB、IPC、IPDは、特開平11−196317号公報の図8におけるG、GA、GB、GC、GD、および特開平11−196318号公報の図5におけるG、GA、GB、GC、GDに対応する。したがって、特開平11−196317号公報および特開平11−196318号公報と同様の方法で合成全体画像ICを作成することができる。
【0135】
たとえば、まず、各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDを全体画像IWOを基準に幾何学的に変形(平行移動、回転移動、拡大/縮小等)する。より具体的には、全体画像IWOに含まれる複数の特徴点(特定の幾何学的図形やエッジ部分)が抽出され、各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDに含まれる対応する特徴点との一致度が最も大きくなるように、各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDが幾何学的に変形される。
【0136】
次に、上述の特徴点との一致度が最も大きくなる位置に、幾何学的に変形された各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDが配置されたのち、1枚の合成全体画像ICとして合成される。
【0137】
上述の合成処理においては、複数の部分領域が重なったオーバーラップ領域ROには、重なった複数の部分領域の画像を幾何学的に変形した画像を、所定の重み係数で加重平均した画像を用いる。オーバーラップ領域RO以外の領域は、各部分領域の画像を幾何学的に変形した画像をそのまま使用する。
【0138】
上記の合成処理はメモリ448に記憶されたプログラムに基づいてCPU447で行われる。
【0139】
作成された合成全体画像ICは、データ入出力I/F446を介してコンピュータ420へ出力される。
【0140】
第4の実施形態によれば、全体画像と高解像度の部分画像を同時に取得できるので、高解像かつひずみの少ない合成全体画像を短時間で撮像可能となる。
【0141】
<変形例>
撮像範囲からの光束φは、3以上の光束に分割されていてもよい。この場合、それぞれの光束の倍率を相互に異なるものとしてもよく、第1光束は全体画像の撮像に使用し、それ以外の光束(第2光束、第3光束…)は異なる全体画像のうちの異なる部分領域を撮像するために使用してもよい。
【0142】
第2または第3の実施形態では、イメージセンサの移動は1次元または2次元であったが、これを3次元的に可動としてもよい。これにより、雲台がなくても望遠画像の撮像範囲を変更することができるとともに変倍倍率も変更可能な撮像装置を得ることが可能である。
【0143】
また、第4の実施形態においても、イメージセンサはyz面内の2次元面内で移動可能であったが、これを3次元的に移動可能としてもよい。これにより、変倍倍率を変更することが可能となるため、用途に応じて部分領域への分割数を変更可能となる。また、原稿の大きさが変化しても明瞭な画像を取得可能となる。
【0144】
◎なお、上述の具体的な実施の形態には、以下の構成を備える発明が含まれている。
【0145】
(1) 撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、
請求項1または請求項3に記載の撮像装置と、
前記撮像装置における第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、
前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、
前記撮像装置の姿勢を変化させる姿勢駆動機構と、
を備え、
前記追尾対象物体が前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように、前記姿勢駆動機構が前記撮像装置の姿勢を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0146】
(2) 上記(1)に記載の追尾システムであって、
前記第2撮像手段が撮像した画像上の前記追尾対象物体の位置および前記撮像装置の撮像時の姿勢に基づいて、前記姿勢駆動機構が前記撮像装置の姿勢を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0147】
(3) 撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、
請求項2に記載の撮像装置と、
前記撮像装置における第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、
前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、を備え、
前記追尾対象物体が前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように、前記ユニット駆動機構が前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0148】
(4) 上記(3)に記載の追尾システムであって、
前記第2撮像手段が撮像した画像上の前記追尾対象物体の位置に基づいて、前記ユニット駆動機構が前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0149】
上記(1)および(2)の発明によれば、広範囲の領域を撮像しつつ、監視対象の物体を高解像度で撮像可能な監視システムを実現することができる。
【0150】
上記(3)および(4)の発明によれば、撮像装置全体の姿勢を変化させる姿勢駆動機構が不要となるので、監視システムをより小型化することが可能である。
【0151】
【発明の効果】
請求項1ないし請求項3の発明によれば、異なる倍率で同時に撮像を行うことが可能であって、比較的画素数が少ない撮像素子を用いた場合であっても、広範囲の撮像と高い分解能の撮像とを短時間で実現することができる。
【0152】
請求項2の発明によれば、撮像装置全体を回動する雲台がなくても、撮像範囲を変化させることが可能となるので、撮像装置の小型化、低コスト化を実現できる。
【0153】
請求項3の発明によれば、変倍倍率を変更できるので、撮像対象をより明瞭に撮像することが可能である。
【0154】
請求項4の発明によれば、広範囲の領域を撮像しつつ、監視対象の物体を高解像度で撮像可能な監視システムを実現することができる。
【0155】
請求項5の発明によれば、ひとつの撮像装置によって全体画像と高分解能の各部分画像とを取得し、その全体画像に基づいて各部分画像を合成するという構成となっているため、過大なデータ量を要せずに、部分画像を正確につなぎ合わせることが可能であり、高分解能な合成画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】監視システム1の全体構成を説明する図である。
【図2】撮像装置110の構成を説明する断面図である。
【図3】画像処理装置130の構成を説明するブロック図である。
【図4】メモリ137の記憶領域を説明する図である。
【図5】監視システム1の動作を説明するフローチャートである。
【図6】追尾対象物体を決定する方法を説明するフローチャートである。
【図7】背景マップBMの作成方法を説明する図である。
【図8】擬似背景画像ITMPの作成方法を説明する図である。
【図9】入力画像の一例を示す図である。
【図10】擬似背景画像の一例を示す図である。
【図11】2値化画像の一例を示す図である。
【図12】マークMKの一例を示す図である。
【図13】監視システム2の全体構成を説明する図である。
【図14】撮像装置210の構成を説明する図である。
【図15】画像処理装置230の構成を説明するブロック図である。
【図16】メモリ237の記憶領域を説明する図である。
【図17】監視システム2の動作を説明するフローチャートである。
【図18】監視システム3の全体構成を説明する図である。
【図19】撮像装置310の構成を説明する図である。
【図20】画像処理装置230の構成を説明するブロック図である。
【図21】メモリ337の記憶領域を説明する図である。
【図22】監視システム3の動作を説明するフローチャートである。
【図23】変倍倍率を決定するパラメータの算出方法を説明する模式図である。
【図24】スキャナシステム4の全体構成を説明する斜視図である。
【図25】撮像装置430の構成を説明する断面図である。
【図26】制御部440の構成を説明するブロック図である。
【図27】メモリ448の記憶領域を説明する図である。
【図28】全体画像IWOおよび部分画像IPA、IPB、IPC、IPDの撮像範囲を説明する模式図である。
【符号の説明】
111 対物レンズ
112 ビームスプリッタ
113 リレーレンズ
114 第1イメージセンサ
115 第2イメージセンサ
116、117 制御回路
121 旋回俯仰機構
122 角度センサ
132 画像入力I/F
133 旋回俯仰機構I/F
134 角度センサI/F
135 画像出力I/F
136 追尾物体指示手段I/F
140 第1ディスプレイ
150 第2ディスプレイ
220 支持台
211 容器
212 イメージセンサユニット
213 イメージセンサユニット駆動機構
214 位置センサ
233 イメージセンサ駆動機構I/F
234 位置センサI/F
311 イメージセンサ駆動機構
312 距離センサ
331 イメージセンサ駆動機構I/F
332 距離センサI/F
400 スキャナ装置
410 原稿台
420 原稿押さえ
430 撮像装置
440 制御部
431 ランプ
441 ランプI/F
442 部分画像入力I/F
443 全体画像入力I/F
444 イメージセンサユニット駆動機構I/F
445 位置センサI/F
446 データ入出力I/F
450 操作ボタン群
490 コンピュータ
OB 物体
VW 広角撮像範囲
VT 望遠撮像範囲
C 制御信号
OS 追尾対象指示信号
IW 広角画像
IT 望遠画像
IWOUT 広角画像
IB 背景画像
BM 背景マップ
ITMP 擬似背景画像
ZM 制御信号
R 領域
MK 検出マーク
M 原稿
IWO 全体画像
IP 部分画像
IC 合成全体画像
FL ランプ制御信号
IPA、IPB,IPC、IPD 部分画像
RO オーバーラップ領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮像範囲の全体と部分とを異なる倍率で同時に撮像可能な撮像装置に関する。また、該撮像装置を用いた追尾システムおよびスキャナにも関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
金融機関への不正侵入者を監視する等の目的で、動画像を取得する撮像装置を備えた監視システムが一般的に使用されている。該監視システムは、移動する侵入物体を検出し、検出した侵入物体の正体を同定できる必要がある。
【0003】
一般に、撮像装置が備えるイメージセンサの画素数が一定の場合、撮像範囲が広くなるにしたがって取得画像の解像度が低下する。したがって、画素数が少ない低コストのイメージセンサを備えた撮像装置では、撮像範囲を広くして侵入物体を検出しやすくすると、侵入物体の正体の同定に必要な解像度が得られなくなる。あるいは、侵入物体の正体の同定に必要な解像度を得るために撮像範囲を狭くすると、侵入物体を検出しにくくなる。画素数が多いイメージセンサの使用によってこの問題は解決できるが、画素数の多いイメージセンサは高コストである。また、信号電荷の転送時間が増大して1フレームの撮像に時間がかかるという問題も生じる。
【0004】
より具体的には、たとえば、特開平10−13821号公報には、撮像範囲への進入物体を検出し、撮像範囲の中央に侵入物体が撮像されるように撮像装置を旋回する技術が開示されている。本技術によれば、侵入物体を追尾して撮像できるので、ある程度は撮像範囲を狭くできる。しかし、撮像装置がズーミング機能を備えていないため、侵入物体を十分な高解像度で観察できないという問題がある。
【0005】
また、特開2001−285695号公報には、向きを制御可能かつズーミング可能な撮像装置を1台用いて、侵入物体をズームアップしつつ自動追尾する技術が開示されている。本技術によれば、侵入物体を十分な高解像度で撮影できるが、ズームアップ中は他の侵入物体を検出できない問題がある。
【0006】
また、特開平11−69342号公報によれば、撮像範囲が広い撮像装置および向きを制御可能かつズーミング可能な撮像装置の2台の撮像装置を用いた技術が開示されている。この技術によれば、前者の撮像装置で侵入物体を検出しつつ、後者の撮像装置で侵入物体を自動追尾しズームアップして高解像度の撮像を行うことが可能である。しかし、光学系をふたつ用いるため撮像装置が大型化、高価格化するという問題がある。さらに、前者の撮像装置で得られる画像からは侵入物体の方向しかわからないため、後者の撮像装置の向きが一意的に定まらない。すなわち、侵入物体と撮像装置との距離が近い場合、侵入物体追尾精度が不充分になるという問題がある。
【0007】
また、特開平11−510341号公報によれば、魚眼レンズを装着した撮像装置によって、広角視野の撮像を行いつつ、擬似的なパン、チルト、ズームも可能な撮像装置が開示されている。しかし、本技術では、高解像度で撮像を行うためには画素数の多いイメージセンサが必要であるという問題がある。また、生成する画像データ量が膨大になるという問題もある。
【0008】
一方、紙等の原稿に描かれた画像を電子的な画像データに変換するスキャナにおいて、ラインセンサにより原稿を走査する方式よりも読み取りが高速な方式として、エリアセンサを用いて原稿を撮像する方式が既に実現されている。この場合も、上記の監視システムの場合と同様に、画素数が少ない低コストのイメージセンサを備えた撮像装置を用いた場合、原稿全体を読み取るために撮像範囲を広げると解像度が低下してしまう。画素数が多いイメージセンサの使用によってこの問題は解決できるが、画素数の多いイメージセンサは高コストである。このため、撮像対象の原稿を複数の範囲に分割して各部分ごとに境界部分が若干オーバーラップするように部分画像の撮像を行い、撮像後に複数の部分画像を合成することによって全体画像を得る方法が知られている。この方法によれば、撮像範囲が狭くなるので、画素数が少ない低コストのイメージセンサを備えた撮像装置でも、高解像度の画像を取得可能である。しかし、この方法の場合、周辺部分に画像上の特徴部がないと正確につなぎ合わせることができないという問題がある。
【0009】
具体例として、特開平11−196317号公報および特開平11−196318号公報によれば、複数の部分画像を撮像後に合成して全体画像を得る方法において、被写体全体の画像を同一の撮像素子を用いて別の時間に撮像し、この全体画像に基づいて部分画像の変形および位置あわせを行うことによって、像歪みを除去する技術が開示されている。本発明によれば、像歪みを効果的に除去可能であるが、全体画像および部分画像を時間的に別々に撮像する必要があるので、撮像に長時間を要するという問題がある。
【0010】
そして、以上のような監視システムやスキャナにおける様々な問題は、比較的画素数が少ない撮像素子を用いつつ、広範囲の撮像と高い分解能の撮像とを短時間で実現することができる撮像装置が存在しないことに起因するものである。
【0011】
【発明の目的】
本発明は従来技術における上記の問題の解決を意図しており、その第1の目的は、比較的画素数が少ない撮像素子を用いた場合であっても、広範囲の撮像と高い分解能の撮像とを短時間で実現する撮像装置を提供することである。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、広範囲の領域を撮像しつつ侵入物体の検出を行い、同時に監視対象の侵入物体を高解像度で撮像可能な監視システムを提供することである。
【0013】
さらに、本発明の第3の目的は、過大なデータ量を要せずに、部分画像を正確につなぎ合わせることによって高分解能な合成画像を得ることができるスキャナを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、撮像装置であって、撮像範囲からの入射光束を取り入れる光束取得手段と、前記入射光束を複数の光路の光束に分割する光束分割手段と、前記複数の光束のうち、第1の光束を変倍する変倍手段と、前記変倍手段によって変倍された第1の光束を使用して撮像する第1撮像手段と、前記複数の光束のうち、第2の光束を使用して撮像する第2撮像手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る撮像装置であって、前記変倍手段および前記第1撮像手段がユニットとして一体化されており、前記入射光束の光軸と垂直方向に前記ユニットを移動するユニット駆動機構をさらに備え、前記ユニット駆動機構が、前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることによって、前記第1撮像手段の撮像範囲を変化させることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る撮像装置であって、前記変倍手段は像を拡大するリレーレンズ群を備え、前記第1撮像手段を前記入射光束の光軸方向に移動する撮像手段駆動機構をさらに備え、前記撮像手段駆動機構が前記リレーレンズ群と前記第1撮像手段との距離を変化させることによって変倍倍率を変化させることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4の発明は、撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置と、前記撮像装置における前記第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、前記追尾対象物体が、前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように前記第1撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段と、を備えることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5の発明は、原稿上の画像を撮像して電子的な画像データに変換するスキャナであって、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置と、前記撮像装置の前記第1撮像手段が撮像した、前記原稿の各部分画像を記憶する第1記憶手段と、前記撮像装置の前記第2撮像手段が撮像した、前記原稿の全体画像を記憶する第2記憶手段と、前記各部分画像から全体合成画像を合成する画像合成手段と、を備え、前記画像合成手段は、前記全体画像に基づいて前記各部分画像を合成することを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
<1.第1の実施形態>
<1−1.構成>
図1は、この発明の第1の実施形態としての監視システム1の全体構成を示す図である。監視システム1は、広範囲の領域を撮像して、その撮像範囲内に侵入してきた物体を検出可能なように構成されている。また、検出した侵入物体が撮像範囲の中央付近に撮像されるように追尾を行うことが可能である。さらに、撮像範囲の中央付近に撮像された侵入物体をより高い解像度で同時に撮像することも可能なように構成されている。
【0020】
監視システム1は、撮像範囲から入射する光束を光学的に処理して電子的な画像データへ変換する撮像装置110と、撮像装置110を支持しパン方向への旋回およびチルト方向への俯仰を可能にする雲台120とを備える。また、この監視システム1には、撮像装置110および雲台120を制御するともに、撮像装置110によって撮像された電子的な画像データを処理する画像処理装置130と、電子的な画像データを視覚的に認識可能にする第1ディスプレイ140および第2ディスプレイ150と、追尾対象物体を指示する追尾対象指示手段160が設けられている。
【0021】
撮像装置110は、相対的に狭い望遠撮像範囲VTの望遠画像ITと相対的に広い広角撮像範囲VWの広角画像IWとのふたつの画像を同時に撮像可能なように構成される。望遠画像ITは、第1のディスプレイ140へ出力され、表示される。広角画像IWは画像処理装置130へ出力される。画像処理装置130は、物体(被写体)OBを検出し、物体OBが検出されたことを視覚的に判別できるように広角画像IWに所定の画像処理を行い、広角画像IWOUTとして出力する。出力された広角画像IWOUTは第2のディスプレイ150に表示される。
【0022】
撮像装置110は、パン方向への旋回およびチルト方向への俯仰が一定角度範囲内で自在となるように雲台120に可動に連結されている。雲台120は、撮像装置110をパン方向へ旋回およびチルト方向へ俯仰させる旋回俯仰機構121を備える。旋回俯仰機構121は、駆動力源としてモータ等を備え、画像処理装置130からの制御信号Cを受けて駆動される。また、パン角度θpおよびチルト角度θtは、角度センサ122によって検出される。角度センサ122は、ポテンショメータや零点検出信号を出力可能なロータリーエンコーダ等で構成され、検出されたパン角度θpおよびチルト角度θtを画像処理装置130に出力する。
【0023】
画像処理装置130は、入力された広角画像IWに所定の処理を行い、物体OBを検出可能なように構成される。また、追尾対象指示手段160から指示された追尾対象物体(図示例の場合は移動被写体OB)が常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように、雲台120を制御する。
【0024】
追尾対象指示手段160は、図示しない第2のディスプレイ上に設置されたタッチパネルセンサと、棒状のスタイラスとを備える。監視システム1の操作者が、スタイラスの先端で第2のディスプレイ150上の物体の位置に表示された検出マークMK(後述)に触れると、タッチパネルセンサが触れられた位置を検出する。次に、検出された場所に表示されている物体OBが追尾対象と認識され、追尾対象を指示する追尾対象指示信号OSが画像処理装置130へ出力される。なお、追尾対象指示方法はこれに限られない。たとえば、第2のディスプレイ150に、マウス操作で移動可能なカーソルを表示させて、上述の検出マークMKの場所でマウスに設けられたマウスボタンをクリックすることにより追尾対象を決定するようにしてもよい。さらに動体画像認識を行って自動的に追尾対象を決定してもよい。
【0025】
次に、撮像装置110の詳細な構成を説明する。図2は、撮像装置110の主要な構成を示す図である。撮像装置110は、撮像範囲からの光束φが入射する対物レンズ111と、対物レンズ111を通過した光束φを光路が異なるふたつの光束φ1、φ2に分割して分割光束群を得るビームスプリッタ112と、分割光束群のうち直線光束に相当する第1の光束φ1を変倍して伝達するリレーレンズ113と、リレーレンズ113を通過した光束が結像する第1イメージセンサ114と、分割光束群のうち反射光束に相当する第2の光束φ2が結像する第2イメージセンサ115とを備える。第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115は、結像した像を光量に応じた信号電荷へ光電変換して蓄積する2次元CCD(charge coupled device)である。第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115は、ビームスプリッタ112の前では光束の光軸が一致するようなアライメントで設置されている。第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115には、それぞれ制御回路116および117が接続される。制御回路116および117は、撮像によってCCDに蓄積された信号電荷を読み取り、CDS(correlated double sampling)回路やAGC(automatic gain control)回路で所定の信号処理を施した後に望遠画像ITおよび広角画像IWを出力する。なお、第1の実施形態に係るビームスプリッタ112はプリズム境界をハーフミラー状態としたキューブビームスプリッタであるが、平面ビームスプリッタや薄膜ビームスプリッタ等であってもよい。また、リレーレンズ113は、変倍機能を持つ光学素子であればよく、たとえば、ファイバーオプティックスプレート等であってもよい。この変倍機能により、第1イメージセンサ114の撮像範囲VTは、第2イメージセンサ115の撮像範囲VWよりも狭くなる。したがって、第1イメージセンサ114および第2イメージセンサ115に、同じ画素数のイメージセンサを用いた場合、第1イメージセンサ114では撮像範囲が狭いが高解像度の遠望画像が得られ、第2イメージセンサ115では撮像範囲が広い広角画像が得られる。望遠画像は広角画像の中央付近の高解像度の画像となる。
【0026】
次に、画像処理装置130の構成について図3のブロック図を参照しながら説明する。画像処理装置130は、各種の演算処理を行うCPU131を備える。CPU131は、信号の送受信を行うデータバス138を介して、画像入力I/F132と、旋回俯仰機構I/F133と、角度センサI/F134と、画像出力I/F135と、追尾対象指示手段I/F136とに接続されている。画像入力I/F132は、撮像装置110の制御回路117に接続され、広角画像IWを取得する。旋回俯仰機構I/F133は、雲台120の旋回俯仰機構121に接続され、撮像装置110を旋回俯仰させるための制御信号Cを出力する。角度センサI/F134は、雲台120の角度センサ122に接続され、パン角度θpおよびチルト角度θtを取得する。画像出力I/F135は、第2ディスプレイ150に接続され、所定の画像処理が行われた広角画像IWOUTを出力する。追尾対象指示手段I/F136は、追尾対象を指定する追尾対象指示手段160に接続され、追尾対象指示信号OSを取得する。
【0027】
さらに、CPU131は、データバス138を介してメモリ137に接続される。メモリ137の記憶領域には、図4に示すように各種データの記憶領域が設定される。具体的には、以下の(1)〜(11)の記憶領域が設定される。
(1)プログラムメモリ137a:CPU131の動作を規定するプログラムを記憶する。
(2)ワークメモリ137b:CPU131の処理途上で一時的に記憶する必要があるデータを記憶する。
(3)角度メモリ137c:角度センサI/F134が取得したパン角度θpおよびチルト角度θtを記憶する。
(4)物体位置メモリ137d:検出された物体OBの2次元的な画像の重心座標と、複数の物体を区別するために与えられる物体識別名idとを記憶する。
(5)追尾対象物体メモリ137e:追尾対象物体の物体識別名idおよび重心座標を記憶する。
(6)背景画像メモリ137f:物体OBが含まれない背景画像IBを記憶する。後述するように、背景画像メモリ137fには、パン角度θpおよびチルト角度θtが異なるN個(Nは2以上の整数)の背景画像IBが記憶されている。
(7)背景マップメモリ137g:背景画像メモリ137fに記憶されたN個の背景画像IBを組み合わせて得られた背景マップBMを記憶する。背景マップBMは、一度の撮像では得られないような、さらに広い撮像範囲の画像データである。
(8)入力画像メモリ137h:入力画像I/F132が取得した広角画像IWを記憶する。
(9)擬似背景画像メモリ137i:背景マップメモリ137gに記憶された背景マップBMから、広角画像IWの撮像範囲に対応する擬似背景画像ITMPを記憶する。
(10)画像間演算結果画像メモリ137j:入力画像メモリ137hと擬似背景メモリ137iとに記憶された画像間の差分データを記憶する。
(11)2値化画像メモリ137k:画像間演算結果メモリ137jに記憶された画像データに2値化処理を施した結果を記憶する。
【0028】
<1−2.動作>
監視システム1は、広角画像IWとその背景画像IBとの差分から、物体OBの侵入を検出する。その後に、指示された追尾対象が常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように、撮像装置110の姿勢が制御される。ここで、物体OBが、撮像装置110の初期姿勢における広角画像IWの撮像範囲VWを外れて移動しても追尾を可能とするために、パン角度θpおよびチルト角度θtが異なる複数の背景画像IBを組み合わせて、あらかじめ背景マップBMを作成しておく。そして、該背景マップBMから、その時点で必要な擬似背景画像ITMPを擬似的に生成するという処理を行う。
【0029】
以下、監視システム1の動作の詳細について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
ステップS101では、物体OBがない状態で、撮像可能範囲がすべて含まれるように、撮像装置110を所定のパン角度およびチルト角度間隔でパンおよびチルトさせながら順次広角画像IWを取得する。取得されたN個の広角画像IWは、撮像装置110のパン角度θpおよびチルト角度θtと対応づけられて、背景画像IBとして背景画像メモリ137fに記憶される。より具体的に説明すると、撮像装置110の水平、垂直方向の画角がそれぞれ30°、10°、撮像装置110の旋回および俯仰が可能なパン角度θp、チルト角度θtをそれぞれ、−30°〜30°、−10°〜10°とする。この場合、図7のように背景画像IB(0,0)、IB(1,0)、IB(2,0)、IB(0,1)、IB(1,1)、IB(2,1)の6枚の画像が順次取得される。ここで、上記の背景画像IB(0,0)〜IB(1,2)を撮像するときの撮像装置10のパン角度、チルト角度は、それぞれ(θp,θt)=(−30°,−10°)、(0°,−10°)、(30°,−10°)、(30°,−10°)、(30°,−10°)、(30°,−10°)である。つまり、上述の「所定のパン角度およびチルト角度間隔」は、それぞれ30°、20°である。上記の背景画像IB(0,0)〜IB(1,2)は、撮像装置110が雲台120によって所望のパン角度θpおよびチルト角度θtを与えられた後に、画像入力I/F132によって制御回路117から出力された広角画像IWを取得することによって得られる。また、撮像装置110の姿勢の制御は以下のように行われる。すなわち、角度センサ122から出力されるパン角度θpおよびチルト角度θtを角度センサI/F134が読み取り、所望のパン角度θpおよびチルト角度θtとの差分をCPU131がメモリ137に記憶されたプログラムによって算出する。次に、算出された差分が0となるまで、CPU131に制御された旋回俯仰機構I/F133が制御信号Cを出力することによって、撮像装置110の姿勢は所望のパン角度θpおよびチルト角度θtとなる。
【0031】
ステップS101終了後、次のステップS102へ移行する。
【0032】
ステップS102では、背景画像メモリ137fに記憶されたN個の背景画像IBを接合して、撮像可能範囲がすべて含まれる背景マップBMが作成され、背景マップメモリ137gに記憶される。なお、背景画像にオーバーラップ領域がある場合は、特開平6−141246号公報に開示されている方法で接合を行う。
【0033】
ステップS102終了後、次のステップS103へ移行する。
【0034】
ステップS103では、撮像装置110の姿勢の初期化を行う。すなわち、撮像装置110の姿勢をあらかじめ定められたパン角度θpおよびチルト角度θtとする。初期化終了後、次のステップS104へ移行する。
【0035】
ステップS104では、画像入力I/F132を介して撮像装置110から取得した広角画像IWを入力画像メモリ137hに記憶し、次のステップS105へ移行する。記憶された広角画像IWの例を図9に示す。
【0036】
ステップS105では、パン角度θpiおよびチルト角度θtjにおける擬似的な背景画像である擬似背景画像ITMPを作成して、擬似背景画像メモリ137iへ記憶する。擬似背景画増ITMPの作成方法を以下で説明する。
【0037】
まず、パン角度θpiおよびチルト角度θtjから、画像位置インデックス(i,j)を数1および数2、または数3および数4によって算出する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
【数4】
【0042】
ただし、θp0、θt0はそれぞれ、ステップS101での撮像開始姿勢のパン角度、チルト角度であり、Tp、Ttは、それぞれ隣接した背景画像IBのパン角度、チルト角度の撮像間隔である。上述の例では、θp0=−30°、θt0=−10°、Tp=30°、Tt=20°、0≦i≦2、0≦j≦1である。i,jは、必ずしも整数である必要はない。整数は、ステップS101で撮像された背景画像IBの撮像範囲に対応する画像位置インデックスとなるが、擬似背景画像ITMPの画像位置インデックスは整数でなくてもよい。たとえば、i,jのいずれかが整数でない場合、図8中に一点破線で示した領域[(i,j)=(0.5,0.5)]のように、対応する範囲が複数の背景画像IBにまたがることになる。
【0043】
次に、算出された画像位置インデックス(i,j)を用いて、背景マップBMから、擬似背景画像ITMPを切り出す。具体的には、撮像開始に対応した部分から、横方向にx画素および縦方向にy画素ずらした位置の画像を切り出して擬似背景画像ITMPとする。ここで、x、yは、それぞれ数5、数6で与えられる。また、W、Hは、それぞれ背景画像IWの縦、横の画素数である。
【0044】
【数5】
【0045】
【数6】
【0046】
作成された擬似背景画像ITMPの例を図10に示す。
【0047】
ステップS105終了後、次のステップS106へ移行する。
【0048】
ステップS106では、入力画像メモリ137hに記憶された広角画像IWおよび擬似背景画像メモリ137iに記憶された擬似背景画像ITMPの対応する画素間で輝度値の差分を計算して、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶する。この差分は、画像の変化であり、物体OBが撮像された部分のみ、この差分値が大きくなる。逆に、物体OBがなく時間的に画像に変化がない場合、ノイズを除けば、この差分値はほぼ0になる。次に、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶された画像に2値化処理を行う。すなわち、所定の閾値に対する大小によって、画素値に0または1のいずれかの値を与える。この処理によって、物体OBがより明瞭になる。この演算結果は2値化画像メモリ137kに記憶され、次のステップS107へ移行する。記憶された2値化画像データの例を図11に示す。
【0049】
次のステップS107では、ステップS106で得られた2値化画像の白画素(1の画素値が与えられた画素)が所定個数以上に集合した画素クラスタを検出するラベリング処理が行われる。ここで、ラベリング処理は、注目している白画素に隣接する8画素に白画素がある場合、注目している白画素と隣接した白画素とは同一領域に属すると見なして、同一のラベルを与える処理を意味する。この処理によって、画像上で黒画素によって分割されている領域は、別々の物体として認識される。
【0050】
ステップS107終了後、次のステップS108へ移行する。
【0051】
ステップS108では、ステップS107でラベリングされた各領域ごとに、白画素数の算出が行われる。白画素数が所定の数値以上の場合、その領域には物体が存在すると見なされて、連続番号などで表現された物体識別名idが与えられる。物体識別名idが与えられる領域が存在しなかった場合は、ステップS103へ移行する。物体識別名idが与えられる領域が存在する場合は、次のステップS109へ移行する。
【0052】
ステップS109では、物体識別名idが割り振られた領域の重心座標(XC,YC)が数7および数8によって算出される。
【0053】
【数7】
【0054】
【数8】
【0055】
ここで、p、qは、画素の座標値であり、f(p,q)は、座標(p,q)の画素における画素値である。ただし、座標値は、それぞれ、左下端からの横方向(x軸方向)および縦方向(y軸方向)への画素数で表す。さらに、数9で表される記号は、注目している物体OBのみを内包し、他の物体を含まない画像内の領域R内のすべての画素についての和を取ることを示す。
【0056】
【数9】
【0057】
検出物体が複数ある場合は、上記の処理は複数の物体それぞれについて行われる。また、入力画像メモリ137hに記憶されている広角画像IWの座標(p,q)の位置に物体を検出したことを示す検出マークMKを重畳して、広角画像IWOUTとして、画像出力I/F135を介して第2ディスプレイ150へ出力される。検出マークMKの例を図10に示す。
【0058】
ステップS109終了後、ステップS110へ移行する。
【0059】
ステップS110では、追尾対象を決定する。追尾対象を決定する方法の詳細は後述する。
【0060】
ステップS111では、ステップS110で決定された追尾対象が第2ディスプレイの中央付近に撮像されるように雲台120の制御を行う。ここで、パン角度θpおよびチルト角度θtの変化させるべき量ΔθpおよびΔθtは数10および数11で表される。ここで、ΔxおよびΔyは、画像中心から重心までの画素数であり、それぞれ数12および数13で表される。ステップS111終了後、ステップS104へ移行する。
【0061】
【数10】
【0062】
【数11】
【0063】
【数12】
【0064】
【数13】
【0065】
次に、追尾対象を決定するステップS110のサブルーチンについて、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0066】
まず、追尾対象指示手段160からの追尾対象指示信号OSの有無で分岐処理が行われる。出力がある場合、ステップS1092へ移行する。出力がない場合、ステップS1093へ移行する。
【0067】
ステップS1092では、追尾対象指示信号OSで指示された物体を追尾対象メモリへ記憶して、本サブルーチンを終了する。
【0068】
ステップS1093では、追尾対象メモリ137eを参照して、過去の追尾対象が記憶されているかどうかによって分岐処理が行われる。過去の追尾対象が記憶されている場合、ステップS1094へ移行する。記憶されていない場合、ステップS1095へ移行する。
【0069】
ステップS1094では、過去の追尾対象と最も類似した物体を追跡対象メモリ137eへ記憶して、本サブルーチンを終了する。ここで、「最も類似した」とは、過去の追尾対象との間の差分が最も小さいことを意味する。
【0070】
ステップS1095では、検出された物体が単数か複数かで分岐処理が行われる。複数の場合、ステップS1096へ移行する。単数の場合、ステップS1097へ移行する。
【0071】
ステップS1096では、画像の中央に最も近い物体を追尾対象メモリ137eへ記憶して本サブルーチンを終了する。
【0072】
ステップS1097では、検出された物体を追尾対象メモリ137eへ記憶して本サブルーチンを終了する。
【0073】
上記の処理によって、追尾対象の指定がある場合はその物体を追尾し、指示がない場合は過去の追尾対象と最も類似した物体を追尾することになる。また、物体の初回検出時など、過去の追尾対象がない場合は画角の中央に最も近い物体、または検出された物体をそのまま追尾することになる。
【0074】
広角画像IWおよび望遠画像ITの光軸は一致しているので、広角画像IWで画角の中央付近に撮像され移動物体は、望遠画像ITで高解像度で撮像されて第1ディスプレイ140に表示される。
【0075】
本実施形態によれば、広範囲を撮像して物体の検出を行いながら、検出された物体を追尾するとともに、監視対象の進入物体を高解像度で同時に撮像することが可能である。したがって、特定の移動物体を高解像度で撮像中も、より広い撮像範囲の撮像を同時に行っているので、操作者が新たな進入物体に気がつきやすいという利点がある。加えて、ズーミングの待ち時間が不要となるので、高速な物体追尾が可能である。さらに、この機能を実現するために高コストの高画素数のイメージセンサを使用する必要がないのでコスト面で有利である。また、これらの機能を1台の撮像装置で実現できるため、監視システムの小型化にも有効である。
【0076】
<2.第2の実施形態>
<2−1.構成>
図13は、この発明の第2の実施形態としての監視システム2の全体構成を示す図である。監視システム2は、監視システム1と同様に広範囲の領域を撮像して、その撮像範囲内に侵入してきた物体OBを検出可能なように構成されている。また、検出した物体OBを高解像度で並行的に撮像されるように追尾を行うことが可能である。
【0077】
監視システム2が監視システム1と異なるのは、雲台を用いて撮像装置全体のパン角度およびチルト角度を変えて撮像範囲の移動を行う代わりに、撮像装置内の光学素子のアライメントを変えることによって撮像範囲の移動を行っていることである。したがって、第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる点を説明し、同様の構成には同じ参照番号を付して重複説明は省略する。
【0078】
監視システム2は、撮像範囲から入射する光束φを光学的に処理して電子的な画像データへ変換する撮像装置210と、撮像装置210を支持する固定された支持台220と、撮像装置210を制御するともに、撮像装置210によって撮像された電子的な画像データを処理する画像処理装置230と、電子的な画像データを視覚的に認識可能にする第1ディスプレイ140および第2ディスプレイ150と、追尾対象物体を指示する追尾対象指示手段160とを備える。
【0079】
図14は撮像装置210の主要な構成を示す図であり、図15は画像処理装置230の主要な構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る撮像装置210および画像処理装置230が、第1の実施形態に係る撮像装置110および制御部130と異なるのは以下の点である。
【0080】
(A)リレーレンズ113および第1イメージセンサ114は、容器211によってイメージセンサユニット212として一体化されている。イメージセンサユニット212は、イメージセンサユニット駆動機構213と接続されており、光束φの光軸と垂直な平面内(図14のyz平面内)で駆動可能である。イメージセンサユニット駆動機構213は、数mm程度の精度で位置決めが可能なリニアアクチエータであり、駆動力源として圧電体等を備えている。さらに、イメージセンサユニット211の左右位置yおよび上下位置zは、位置センサ214によって検出可能である。位置センサ214は、零点を検出可能なリニアエンコーダ等で構成され、検出された左右位置yと上下位置zを画像処理装置230に出力する機能を有する。イメージセンサユニットを光束の光軸と垂直な方向へ駆動することにより、望遠画像ITの撮像範囲VTを動かすことができる。すなわち、第1の実施形態における雲台20がなくても、撮像装置110をパン方向およびチルト方向へ回動した場合と同様の効果が望遠画像ITについて得られる。なお、第2の実施形態においては、望遠画像ITと広角画像IWの光軸は一致しない。
【0081】
(B)第1の実施形態に係る旋回俯仰機構I/F133、角度センサI/F134に代わって、イメージセンサユニット駆動機構I/F233、位置センサI/F234を備える。イメージセンサユニット駆動機構I/F233は、撮像装置210のイメージセンサユニット駆動機構213に接続され、イメージセンサユニット駆動機構213を制御する制御信号Cを出力する。位置センサI/F234は、位置センサ214に接続され、左右位置yおよび上下位置zを取得する。イメージセンサユニット駆動機構I/F233、位置センサI/F234は、データバス138を介して、CPU131に接続され、望遠画像の撮像範囲が所望になるよう制御される。
【0082】
(C)メモリ237に設定される記憶領域は、第1の実施形態と
▲1▼角度メモリ137cがなく、イメージセンサユニット212の左右位置yと上下位置zとを記憶する位置メモリ237cが設けられている点、
▲2▼背景画像メモリ237bに記憶される背景画像がひとつである点、
▲3▼背景マップメモリ137g、擬似背景画像メモリ137iがない点、
で異なる。
【0083】
<2−2.動作>
監視システム2は、広角画像IWとその背景画像IBとの差分から、侵入した物体OBを検出する。その後に、指示された追跡対象が望遠画像ITの撮像範囲の中央付近に撮像されるように、イメージセンサユニット212の位置が制御される。しかし、第1の実施形態とは異なり、背景マップBMは使用しない。
【0084】
以下、監視システム2の動作の詳細について、図17のフローチャートを参照しながら説明する。ただし、第1の実施形態と同様の動作については詳細説明を省略する。
【0085】
ステップS201では、物体OBがない状態で、広角画像IWの撮像を行い、撮像結果を背景画像メモリ237bへ記憶して、次のステップS202へ移行する。
【0086】
ステップS202では、イメージセンサユニット212の位置の初期化を行う。すなわち、イメージセンサユニット212の位置をあらかじめ定められた左右位置y0、上下位置z0とする。初期化終了後、次のステップS203へ移行する。
【0087】
ステップS203では、画像入力I/F132を介して撮像装置210から取得した広角画像IWを入力画像メモリ137hに記憶し、次のステップS204へ移行する。
【0088】
ステップS204では、入力画像メモリ137hに記憶された画像および背景画像メモリ237bに記憶された画像の対応する画素間で輝度値の差分を計算して、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶する。次に、画像間演算結果画像メモリ137jに記憶された画像に2値化処理を行って、2値化画像メモリ137kに記憶し、次のステップS205へ移行する。
【0089】
ステップS205では、ステップS204で得られた2値化画像の各画素クラスタにラベリング処理を行ない、次のステップS206へ移行する。
【0090】
次のステップS206では、ステップS205でラベリングされた各領域(画素クラスタ)ごとに、白画素数の算出が行われる。白画素数が所定の数値以上の場合、その領域には物体が存在すると見なされて物体識別名idが与えられる。物体識別名idが与えられる領域が存在しなかった場合は、ステップS202へ移行する。物体識別名idが与えられる領域が存在する場合は、次のステップS207へ移行する。
【0091】
ステップS207では、物体の2次元画像の重心座標(XC,YC)が数7および数8によって算出される。算出方法は、第1の実施形態と同様である。また、第1の実施形態と同様に、広角画像IWに検出マークMKを重畳して、広角画像IWOUTとして、画像出力I/F135を介して第2のディスプレイ150へ出力する。
【0092】
ステップS207終了後、ステップS208へ移行する。
【0093】
ステップS208では、追尾対象が決定される。決定方法は、第1の実施形態と同様である。
【0094】
ステップS209では、ステップS208で決定された追尾対象が望遠画像の中央付近に撮像されるようにイメージセンサユニット駆動機構213の制御を行う。ここで、第1イメージセンサ114と第2イメージセンサ115の光軸が一致するイメージセンサユニット212の左右位置y、上下位置zをそれぞれy0、z0とすると、移動後のイメージセンサユニット212の左右位置y、上下位置zは、数14および数15で与えられる。
【0095】
【数14】
【0096】
【数15】
【0097】
ここで、Zは変倍倍率である。イメージセンサユニット212をこのように移動させることにより、望遠画像ITの中央付近に常に物体OBが高解像度で撮像されることになる。
【0098】
なお、本実施形態においては、第1イメージセンサ114のみを移動させ、第2イメージセンサ115の位置は固定されていたが、これを第1イメージセンサ114同様に光軸と垂直方向に可動としてもよい。この場合、広角画像IWの撮像範囲VWも変化させることが可能であるので、第1の実施形態のように、複数の背景画像IBを組み合わせた背景マップBMを使用すれば、より広範囲を監視対象とすることが可能である。
【0099】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、広範囲の領域を撮像して物体の検出を行いながら、検出された物体を追尾するとともに、監視対象の進入物体を高解像度で同時に撮像することが可能である。したがって、特定の移動物体を高解像度で撮像中も、より広い撮像範囲の撮像を同時に行っているので、操作者が新たな進入物体に気がつきやすいという利点がある。加えて、ズーミングの待ち時間が不要となるので、高速な物体追尾が可能である。さらに、この機能を実現するために高コストの高画素数のイメージセンサする必要がないのでコスト面で有利である。また、これらの機能を1台の撮像装置で実現できるため、監視システムの小型化にも有効である。
【0100】
加えて、第1の実施形態における雲台が不要となるので、より小型に装置を構成することが可能である。
【0101】
<3.第3の実施形態>
<3−1.構成>
図18は、この発明の第3の実施形態としての監視システム3の全体構成を示す図である。監視システム3は、監視システム1と同様に広範囲の領域を撮像して、その撮像範囲内に侵入してきた物体OBを検出可能なように構成されている。また、検出した物体OBが常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように追尾を行うことが可能である。さらに、撮像範囲の中央付近に撮像された物体OBをより高い解像度で同時に撮像することも可能なように構成されている。
【0102】
監視システム3が監視システム1と異なるのは、撮像装置内の光学素子のアライメントを変えることによって望遠画像ITのズーミングを行うことが可能な点である。したがって、第3の実施形態の説明では、第一の実施形態と異なる点を説明し、同様の構成には同じ参照番号を付して重複説明は省略する。
【0103】
監視システム3は、撮像範囲から入射する光束を光学的に処理して電子的な画像データへ変換する撮像装置310と、撮像装置310を支持しパン方向への旋回およびチルト方向への俯仰を可能にする雲台120と、撮像装置310および雲台120を制御するともに、撮像装置310によって撮像された電子的な画像データを処理する画像処理装置330と、電子的な画像データを視覚的に認識可能にする第1ディスプレイ140および第2ディスプレイ150と、追尾対象物体を指示する追尾対象指示手段160とを備える。
【0104】
撮像装置310および画像処理装置330は、第1の実施形態で説明した構成に加えて、さらに望遠画像のズーミングが可能なように構成される。以下、撮像装置320および画像処理装置330の第1の実施形態からの変更点について説明する。
【0105】
図19は撮像装置310の主要な構成を示す図であり、図20は画像処理装置330の主要な構成を示すブロック図である。第3の実施形態に係る撮像装置310および画像処理装置330が、第1の実施形態に係る撮像装置110および画像処理装置130と異なるのは以下で説明する点である。
【0106】
(1)第1イメージセンサ114は、イメージセンサ駆動機構311と接続されており、光束φの光軸方向(図19のx軸方向)に駆動可能である。イメージセンサ駆動機構311は、数mm程度の精度で位置決めが可能なリニアアクチエータであり、駆動力源として圧電体等を備えている。さらに、第1イメージセンサ114のリレーレンズ113からの距離Lは、距離センサ312によって検出可能である。距離センサ312は、零点を検出可能なリニアエンコーダ等で構成され、検出された距離Lを画像処理部330に出力する機能を有する。第3の実施形態のように、リレーレンズ113と第1イメージセンサ114の距離Lを変化させることにより、変倍倍率Zを変更することが可能である。
【0107】
(2)画像処理装置330は、第1の実施形態に係る画像処理装置130の構成に加えて、データバス138に接続されたイメージセンサ駆動機構I/F331および距離センサI/F332を備える。イメージセンサ駆動機構I/F331は、撮像装置310のイメージセンサ駆動機構311に接続され、駆動するための制御信号ZMを出力する。距離センサI/F332は、撮像装置310の距離センサ312と接続され、距離Lを取得する。
【0108】
(3)メモリ337には、第1の実施形態に係るメモリ137の記憶領域に加えて、追尾対象となる物体の大きさを記憶する物体サイズメモリ337aを備える。
【0109】
<3−2.動作>
監視システム1は、第1の実施形態と同様に、広角画像IWとその背景画像IBとの差分から、物体OBを検出する。その後に、指示された追跡対象が常に撮像範囲の中央付近に撮像されるように、撮像装置310の姿勢が制御される。ここで、物体OBが、撮像装置310の初期姿勢における広角画像IWの撮像範囲VWを外れて移動しても追尾を可能とするために、パン角度θpおよびチルト角度θtが異なる複数の背景画像IBを組み合わせて、あらかじめ背景マップBMを作成しておく。そして、該背景マップBMから必要な背景画像IBを生成するという処理を行う。
【0110】
第3の実施形態に係る撮像システム3には、さらに、望遠画像ITがより明瞭に撮像されるように、変倍倍率Zを変更する動作が加わる。以下、監視システム3の動作の詳細について、図22のフローチャートを参照しながら説明する。
【0111】
図22のフローチャートにおけステップS301〜S311は、第1の実施形態の図5のステップS101〜S111に対応し、同様の動作であるので、説明は省略し、ステップS311に続くステップS312から説明する。
【0112】
ステップS312では、追尾対象物体のサイズを算出して、物体サイズメモリ337aに記憶する。
【0113】
まず、追尾対象物体の白画素の集合のうち、広角画像IW上で横方向(x軸方向)の最左端の画素のx座標をXL、横方向の最右端の画素のx座標をXR、縦方向(y軸方向)の最上端の画素のy座標をYU、縦方向の最下端の画素のy座標をYLとする。このとき、差分(XC−XL)、(XR−XC)のうちの大きい方をΔWOBとし、差分(YC−YL)、(YU−YC)のうちの大きい方をΔHOBとする。ΔWOBおよびΔHOBを物体サイズメモリ337aに記憶して、次のステップS313へ移行する。なお、この算出方法について、模式的に示した図が図23である。
【0114】
ステップS313では、ステップS312で算出した物体サイズに基づいて、イメージセンサ駆動機構311を制御して、変倍倍率Zを決定する。第1イメージセンサ140が、縦A画素×横B画素(たとえば、A,Bは数百〜数千程度の値)である場合、物体OBがイメージセンサ114の横方向にはみ出さない最大の変倍倍率ZX、および縦方向にはみ出さない最大の変倍倍率ZYは、数16および数17で算出される。また、算出された変倍倍率が実現できない値であるときは、実現可能な最も近い変倍倍率が採用される。
【0115】
【数16】
【0116】
【数17】
【0117】
このZXおよびZYのうち、小さい方が変倍倍率Zとして採用される。なお、変倍倍率は距離Lの関数であるが、この関数は光学素子の諸定数から理論的に、または実験的にあらかじめ算出しておき、メモリ237に記憶されたプログラムによって距離Lに換算される。この結果がイメージセンサ駆動機構I/F331を介して出力され、イメージセンサ駆動機構311によって距離Lが変化し、所望の変倍倍率Zが得られる。
【0118】
ステップS313終了後、ステップS304へ移行する。
【0119】
なお、第4の実施形態では変倍倍率Zの決定を検出物体の大きさから自動的に実施したが、これを操作者の手動操作によっても問題はない。
【0120】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、広範囲の領域を撮像して物体の検出を行いながら、検出された物体を追尾するとともに、監視対象の進入物体を高解像度で同時に撮像することが可能である。したがって、特定の移動物体を高解像度で撮像中も、より広い撮像範囲の撮像を同時に行っているので、操作者が新たな進入物体に気がつきやすいという利点がある。加えて、ズーミングの待ち時間が不要となるので、高速な物体追尾が可能である。さらに、この機能を実現するために高コストの高画素数のイメージセンサを使用する必要がないのでコスト面で有利である。また、これらの機能を1台の撮像装置で実現できるため、監視システムの小型化にも有効である。
【0121】
加えて、望遠画像の変倍倍率を変更できるので、被写体をより明瞭に観察することが可能である。
【0122】
<4.第4の実施形態>
<4−1.構成>
図24は、この発明の第4の実施形態としてのスキャナシステム4の全体構成を示す斜視図である。スキャナシステム4は、紙等の原稿Mの全体を含む全体画像IWOを撮像するとともに、原稿Mを複数の部分領域に分割して各部分領域を含む範囲ごとに高解像度の部分画像IPを撮像するように構成されている。また、全体画像IWOを参照しながら部分画像IPを接合して原稿全体の高解像度画像が得られるように構成されている。
【0123】
スキャナシステム4は、原稿M(画像記録媒体)上に可視的に記録された画像を撮像して電子的な画像データへ変換するスキャナ装置400と、スキャナ装置400に接続され、スキャナ装置400の制御等を行うプログラムがインストールされたコンピュータ490とを備える。
【0124】
スキャナ装置400は、原稿Mを載置する原稿台410と、閉じた状態で原稿台410を遮蔽できるように開閉自在に設置された原稿押さえ420と、原稿台410に載置された原稿Mの撮像を行う撮像装置430と、撮像装置430およびコンピュータ490に接続された制御部440と、操作者が電源のON/OFF等の指示をスキャナ装置に与えるための操作ボタン群450とを備える。原稿台410は、ガラス等の透光性の部材からなり、平坦な両主面を備える。原稿押さえ420は、原稿台410に載置された原稿Mを平坦に押さえつけ、遮光を行う。撮像装置430は、原稿台410全体を含む全体画像IWOを撮像すると同時に、複数の部分領域に分割された部分領域を含む範囲ごとに高解像度の部分画像IPを撮像できるように構成される。また、撮像装置430は、全体画像を撮像するときの光軸が、原稿台410に垂直となるように設置される。
【0125】
次に、撮像装置430について図25の断面図を参照しながら説明する。ただし、第4の実施形態に係る撮像装置430の構成の大部分は、第2の実施形態に係る撮像装置210と同様である。このため、同様の構成は同一の参照番号を付して重複説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0126】
撮像装置430は、第2の実施形態に係る撮像装置210の構成に加えて、原稿台410に載置された原稿Mの全体に光を照射するランプ(照明手段)431を備える。ランプ431は、第1イメージセンサ114または第2イメージセンサ115が原稿Mを撮像中に、原稿に光を照射する。照射された光は原稿Mによって反射される。第1イメージセンサ114または第2イメージセンサ115がこの反射光を光電変換することにより、撮像装置430が原稿Mを撮像することが可能である。イメージセンサユニット212における変倍倍率Zは制限されないが、約2倍であるとして以下の説明を行う。
【0127】
撮像装置430の上記の構成により、第1イメージセンサ114では上述の部分画像IPを撮像可能になり、第2イメージセンサ115では上述の全体画像IWOを撮像可能になる。さらに、部分画像IPの撮像範囲は、イメージセンサユニット212をyz面内で移動することにより変化させることが可能である。
【0128】
続いて、制御部440の構成を図26のブロック図を参照しながら説明する。制御部440は、各種の演算処理を行うCPU447を備える。CPU447は、信号の送受信を行うデータバス449を介して、ランプI/F441、部分画像入力I/F442と、全体画像入力I/F443と、イメージセンサユニット駆動機構I/F444と、位置センサI/F445と、データ入出力I/F446とに接続される。ランプI/F441は、撮像装置430のランプ431に接続され、ランプ431にランプ制御信号FLを出力してランプ431を発光させる機能を持つ。部分画像入力I/F442は、制御部116に接続され部分画像IPを取得する。全体画像入力I/F443は、制御回路117に接続され、全体画像IWOを取得する。イメージセンサユニット駆動機構I/F444は、イメージセンサユニット駆動機構213に接続され、イメージセンサユニット駆動機構213を制御する制御信号Cを出力する。位置センサI/F445は、位置センサ214に接続され、位置センサ214から出力された左右位置yおよび上下位置zを取得する。データ入出力I/F446は、コンピュータ490に接続され、コンピュータ490からの制御信号を受信し、取得した画像をコンピュータ490に出力する。
【0129】
さらに、CPU447は、データバス449を介してメモリ448に接続される。メモリ448の記憶領域には、図27に示すように各種データの記憶領域が設定される。具体的には、以下の(1)〜(6)の記憶領域が設定される。
(1)プログラムメモリ448a:CPU447の動作を規定するプログラムを記憶する。
(2)ワークメモリ448b:CPU447の処理途上で一時的に記憶する必要があるデータを記憶する。
(3)位置メモリ448c:位置センサ214の左右位置yおよび上下位置zを記憶する。
(4)全体画像メモリ448d:原稿Mの全体画像IWOを記憶する。
(5)部分画像メモリ448e:原稿Mのそれぞれの部分画像IPを記憶する。(6)合成全体画像メモリ448f:各部分画像を合成した合成全体画像ICを記憶する。
【0130】
<4−2.動作>
スキャナシステム4の操作者がコンピュータ490を操作して、スキャニング開始の指示をスキャナ装置400へ与えると、制御部440が撮像装置430を制御して撮像が開始される。
【0131】
まず、ランプ制御信号FLがランプI/F441から出力され、ランプ431が発光する。続いて、全体画像入力I/F443によって、全体画像IWOが取得され、メモリ448dに記憶される。同時に、部分画像IPの取得が以下の手順で行われる。
【0132】
まず、図28のように、原稿Mの第1部分画像IPAに対応する領域が撮像範囲となるように、イメージセンサユニット212がイメージセンサユニット駆動機構213によって移動させられる。駆動方法は、第2の実施形態と同様である。移動完了後、部分画像入力I/F442によって第1部分画像IPAが取得されて、部分画像メモリ448eに記憶される。同様にして、部分領域B、C、Dに対応する第2部分画像IPB、第3部分画像IPC、第4部分画像IPDが部分画像メモリ448eに記憶される。なお、上記の例では、分割数を4としたが、イメージセンサユニット212の変倍倍率Zが変化した場合、分割数を変更する。たとえば、変倍倍率Zが3倍の場合、3×3=9分割とする。また、後述する合成処理のために、各部分画像IPはオーバーラップ領域ROを有する。
【0133】
撮像終了後、ランプ制御信号FLが停止して、ランプ431の発光が停止する。
【0134】
上述の全体画像IWO、部分画像IPA、IPB、IPC、IPDは、特開平11−196317号公報の図8におけるG、GA、GB、GC、GD、および特開平11−196318号公報の図5におけるG、GA、GB、GC、GDに対応する。したがって、特開平11−196317号公報および特開平11−196318号公報と同様の方法で合成全体画像ICを作成することができる。
【0135】
たとえば、まず、各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDを全体画像IWOを基準に幾何学的に変形(平行移動、回転移動、拡大/縮小等)する。より具体的には、全体画像IWOに含まれる複数の特徴点(特定の幾何学的図形やエッジ部分)が抽出され、各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDに含まれる対応する特徴点との一致度が最も大きくなるように、各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDが幾何学的に変形される。
【0136】
次に、上述の特徴点との一致度が最も大きくなる位置に、幾何学的に変形された各部分画像IPA、IPB、IPC、IPDが配置されたのち、1枚の合成全体画像ICとして合成される。
【0137】
上述の合成処理においては、複数の部分領域が重なったオーバーラップ領域ROには、重なった複数の部分領域の画像を幾何学的に変形した画像を、所定の重み係数で加重平均した画像を用いる。オーバーラップ領域RO以外の領域は、各部分領域の画像を幾何学的に変形した画像をそのまま使用する。
【0138】
上記の合成処理はメモリ448に記憶されたプログラムに基づいてCPU447で行われる。
【0139】
作成された合成全体画像ICは、データ入出力I/F446を介してコンピュータ420へ出力される。
【0140】
第4の実施形態によれば、全体画像と高解像度の部分画像を同時に取得できるので、高解像かつひずみの少ない合成全体画像を短時間で撮像可能となる。
【0141】
<変形例>
撮像範囲からの光束φは、3以上の光束に分割されていてもよい。この場合、それぞれの光束の倍率を相互に異なるものとしてもよく、第1光束は全体画像の撮像に使用し、それ以外の光束(第2光束、第3光束…)は異なる全体画像のうちの異なる部分領域を撮像するために使用してもよい。
【0142】
第2または第3の実施形態では、イメージセンサの移動は1次元または2次元であったが、これを3次元的に可動としてもよい。これにより、雲台がなくても望遠画像の撮像範囲を変更することができるとともに変倍倍率も変更可能な撮像装置を得ることが可能である。
【0143】
また、第4の実施形態においても、イメージセンサはyz面内の2次元面内で移動可能であったが、これを3次元的に移動可能としてもよい。これにより、変倍倍率を変更することが可能となるため、用途に応じて部分領域への分割数を変更可能となる。また、原稿の大きさが変化しても明瞭な画像を取得可能となる。
【0144】
◎なお、上述の具体的な実施の形態には、以下の構成を備える発明が含まれている。
【0145】
(1) 撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、
請求項1または請求項3に記載の撮像装置と、
前記撮像装置における第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、
前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、
前記撮像装置の姿勢を変化させる姿勢駆動機構と、
を備え、
前記追尾対象物体が前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように、前記姿勢駆動機構が前記撮像装置の姿勢を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0146】
(2) 上記(1)に記載の追尾システムであって、
前記第2撮像手段が撮像した画像上の前記追尾対象物体の位置および前記撮像装置の撮像時の姿勢に基づいて、前記姿勢駆動機構が前記撮像装置の姿勢を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0147】
(3) 撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、
請求項2に記載の撮像装置と、
前記撮像装置における第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、
前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、を備え、
前記追尾対象物体が前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように、前記ユニット駆動機構が前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0148】
(4) 上記(3)に記載の追尾システムであって、
前記第2撮像手段が撮像した画像上の前記追尾対象物体の位置に基づいて、前記ユニット駆動機構が前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることを特徴とする追尾システム。
【0149】
上記(1)および(2)の発明によれば、広範囲の領域を撮像しつつ、監視対象の物体を高解像度で撮像可能な監視システムを実現することができる。
【0150】
上記(3)および(4)の発明によれば、撮像装置全体の姿勢を変化させる姿勢駆動機構が不要となるので、監視システムをより小型化することが可能である。
【0151】
【発明の効果】
請求項1ないし請求項3の発明によれば、異なる倍率で同時に撮像を行うことが可能であって、比較的画素数が少ない撮像素子を用いた場合であっても、広範囲の撮像と高い分解能の撮像とを短時間で実現することができる。
【0152】
請求項2の発明によれば、撮像装置全体を回動する雲台がなくても、撮像範囲を変化させることが可能となるので、撮像装置の小型化、低コスト化を実現できる。
【0153】
請求項3の発明によれば、変倍倍率を変更できるので、撮像対象をより明瞭に撮像することが可能である。
【0154】
請求項4の発明によれば、広範囲の領域を撮像しつつ、監視対象の物体を高解像度で撮像可能な監視システムを実現することができる。
【0155】
請求項5の発明によれば、ひとつの撮像装置によって全体画像と高分解能の各部分画像とを取得し、その全体画像に基づいて各部分画像を合成するという構成となっているため、過大なデータ量を要せずに、部分画像を正確につなぎ合わせることが可能であり、高分解能な合成画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】監視システム1の全体構成を説明する図である。
【図2】撮像装置110の構成を説明する断面図である。
【図3】画像処理装置130の構成を説明するブロック図である。
【図4】メモリ137の記憶領域を説明する図である。
【図5】監視システム1の動作を説明するフローチャートである。
【図6】追尾対象物体を決定する方法を説明するフローチャートである。
【図7】背景マップBMの作成方法を説明する図である。
【図8】擬似背景画像ITMPの作成方法を説明する図である。
【図9】入力画像の一例を示す図である。
【図10】擬似背景画像の一例を示す図である。
【図11】2値化画像の一例を示す図である。
【図12】マークMKの一例を示す図である。
【図13】監視システム2の全体構成を説明する図である。
【図14】撮像装置210の構成を説明する図である。
【図15】画像処理装置230の構成を説明するブロック図である。
【図16】メモリ237の記憶領域を説明する図である。
【図17】監視システム2の動作を説明するフローチャートである。
【図18】監視システム3の全体構成を説明する図である。
【図19】撮像装置310の構成を説明する図である。
【図20】画像処理装置230の構成を説明するブロック図である。
【図21】メモリ337の記憶領域を説明する図である。
【図22】監視システム3の動作を説明するフローチャートである。
【図23】変倍倍率を決定するパラメータの算出方法を説明する模式図である。
【図24】スキャナシステム4の全体構成を説明する斜視図である。
【図25】撮像装置430の構成を説明する断面図である。
【図26】制御部440の構成を説明するブロック図である。
【図27】メモリ448の記憶領域を説明する図である。
【図28】全体画像IWOおよび部分画像IPA、IPB、IPC、IPDの撮像範囲を説明する模式図である。
【符号の説明】
111 対物レンズ
112 ビームスプリッタ
113 リレーレンズ
114 第1イメージセンサ
115 第2イメージセンサ
116、117 制御回路
121 旋回俯仰機構
122 角度センサ
132 画像入力I/F
133 旋回俯仰機構I/F
134 角度センサI/F
135 画像出力I/F
136 追尾物体指示手段I/F
140 第1ディスプレイ
150 第2ディスプレイ
220 支持台
211 容器
212 イメージセンサユニット
213 イメージセンサユニット駆動機構
214 位置センサ
233 イメージセンサ駆動機構I/F
234 位置センサI/F
311 イメージセンサ駆動機構
312 距離センサ
331 イメージセンサ駆動機構I/F
332 距離センサI/F
400 スキャナ装置
410 原稿台
420 原稿押さえ
430 撮像装置
440 制御部
431 ランプ
441 ランプI/F
442 部分画像入力I/F
443 全体画像入力I/F
444 イメージセンサユニット駆動機構I/F
445 位置センサI/F
446 データ入出力I/F
450 操作ボタン群
490 コンピュータ
OB 物体
VW 広角撮像範囲
VT 望遠撮像範囲
C 制御信号
OS 追尾対象指示信号
IW 広角画像
IT 望遠画像
IWOUT 広角画像
IB 背景画像
BM 背景マップ
ITMP 擬似背景画像
ZM 制御信号
R 領域
MK 検出マーク
M 原稿
IWO 全体画像
IP 部分画像
IC 合成全体画像
FL ランプ制御信号
IPA、IPB,IPC、IPD 部分画像
RO オーバーラップ領域
Claims (5)
- 撮像装置であって、
撮像範囲からの入射光束を取り入れる光束取得手段と、
前記入射光束を複数の光路の光束に分割する光束分割手段と、
前記複数の光束のうち、第1の光束を変倍する変倍手段と、
前記変倍手段によって変倍された第1の光束を使用して撮像する第1撮像手段と、
前記複数の光束のうち、第2の光束を使用して撮像する第2撮像手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。 - 請求項1に記載の撮像装置であって、
前記変倍手段および前記第1撮像手段がユニットとして一体化されており、
前記入射光束の光軸と垂直方向に前記ユニットを移動するユニット駆動機構をさらに備え、
前記ユニット駆動機構が、前記光束取得手段と前記ユニットとの相対位置を変化させることによって、前記第1撮像手段の撮像範囲を変化させることを特徴とする撮像装置。 - 請求項1または請求項2に記載の撮像装置であって、
前記変倍手段は像を拡大するリレーレンズ群を備え、
前記第1撮像手段を前記入射光束の光軸方向に移動する撮像手段駆動機構をさらに備え、
前記撮像手段駆動機構が前記リレーレンズ群と前記第1撮像手段との距離を変化させることによって変倍倍率を変化させることを特徴とする撮像装置。 - 撮像範囲に侵入した物体を追尾して撮像する追尾システムであって、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置と、
前記撮像装置における前記第2撮像手段の撮像範囲内に侵入した物体を検出する物体検出手段と、
前記物体のうち追尾対象とする追尾対象物体を決定する追尾対象決定手段と、
前記追尾対象物体が、前記撮像装置における前記第1撮像手段の撮像範囲内に含まれるように前記第1撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段と、を備えることを特徴とする追尾システム。 - 原稿上の画像を撮像して電子的な画像データに変換するスキャナであって、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記第1撮像手段が撮像した、前記原稿の各部分画像を記憶する第1記憶手段と、
前記撮像装置の前記第2撮像手段が撮像した、前記原稿の全体画像を記憶する第2記憶手段と、
前記各部分画像から全体合成画像を合成する画像合成手段と、
を備え、
前記画像合成手段は、前記全体画像に基づいて前記各部分画像を合成することを特徴とするスキャナ。
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