JP2004070915A - 画像データで特定可能な評価対象物における質的情報の解析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】洋服デザインやポスターデザイン等のようにそれ自体の価値が質的情報である評価対象物において、かかる評価対象物を、客観的な尺度(ものさし)によって量的に把握することが出来る解析結果を提供し得る、新規な構造の解析装置を提供すること。
【解決手段】画像データと言語データの関連に着目して特異値分解等の解析処理を施し、その結果を、具体的な数値としてではなく、各画像データと各言語データにおける語を、同一の座標系に相関的な位置関係をもって布置して視覚的に展開表示するようにした。これにより、かかる座標系において、評価対象物が内在的に備えている質的情報を評価する尺度(ものさし)を新たに作成すると同時に、各画像データと言語データにおける語を布置せしめて全体として把握可能な状態で表示せしめることにより、かかる尺度による測定結果を視覚的に把握容易な態様で表わすようにした。
【選択図】 図11
【解決手段】画像データと言語データの関連に着目して特異値分解等の解析処理を施し、その結果を、具体的な数値としてではなく、各画像データと各言語データにおける語を、同一の座標系に相関的な位置関係をもって布置して視覚的に展開表示するようにした。これにより、かかる座標系において、評価対象物が内在的に備えている質的情報を評価する尺度(ものさし)を新たに作成すると同時に、各画像データと言語データにおける語を布置せしめて全体として把握可能な状態で表示せしめることにより、かかる尺度による測定結果を視覚的に把握容易な態様で表わすようにした。
【選択図】 図11
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は、製品のデザインなどのように本来数値で一意的且つ定量的に表わすことの出来ない、評価対象物における質的情報を、予め準備されていない尺度を生成することによって客観的に表示させて解析等することの出来る、従来にない新規な解析装置を提供することにある。
【0002】
【背景技術】
従来から良く知られているように、製品などの評価対象物を評価したり議論等するためには、多くの場合、数値が用いられる。例えば、特定商品の売上高やマーケットシェア,特定産品の栄養素含有量や価格,特定物の強度や耐久性,環境内のダイオキシン濃度や放射線レベルなどが、何れも数値として与えられる。これは、数値が、その対象における情報を、客観的で一意的且つ定量的に表わして特定するものだからである。従って、明確な尺度をもって対象を測定等した結果としての数値については、当該尺度を採用することの妥当性は別として、誰にとっても一意的且つ客観的であることに疑いはなく、それ故、かかる数値を共通意識をもって認識して、その上で評価や議論等を客観的ひいては効率的に行なうことが出来るのである。翻ってみれば、人間が客観的な評価や議論を、妥当且つ効率的に行なうために、数値が考案されて利用されているものと言える。
【0003】
しかしながら、評価対象物のなかには、明確な尺度をもった数値で測定することが本質的に妥当でないものがある。例えば、洋服やポスター,料理,音楽などにおいて、その価値基準に対して支配的である、一般に感性等と称される質的情報が、それである。即ち、例えば洋服について評価や議論を行なうに際して、洋服の生地の強度や洋服の質量,洋服の色の明度等を尺度とすることにより、客観的な測定結果としての数値を得ることは可能であるが、そのような数値によって洋服のデザインや価値を評価等することが全く妥当でないことは、明らかである。
【0004】
そのために、このような質的情報が評価対象物において大きな価値基準となる場合には、評価や議論が上手く噛み合わず、有意義な会議を行なったり、多くの人が納得出来る結論を得ることは極めて困難なのが現状である。一つ具体例を挙げると、広告の一種としてのポスターデザインを決定するために、多数の評価対象物たる候補案の中から一つを選定し更にそれに修正を加える会議において、候補案に対する評価基準は会議出席者の各人によって異なるのは当然であり、それだけでなく各人の評価が質的情報であるが故に、その評価の尺度さえ自分自身でも明確に把握できていないのが一般的である。そのために、会議での議論が、各人の主張が各人の主観的な理由に基づくこととなって相互に噛み合わない議論に陥り易く、当然に、納得できる妥当な結論に至る可能性が低い。また、たとえ一つの候補案を採用するとの結論に上手く至ったとしても、かかる候補案に加える修正内容を検討する場合には、議論が一層噛み合わずに困難となることは、容易に予想されるところである。例えば、一人の出席者が「もう少し都会的にしたい」と主張したとしても、「都会的」という価値基準さえ極めて観念的乃至は質的であり、なんとなく感覚的に理解できるという程度の意識の共有状態にしか至らず、たとえ複数の出席者がその意識を共有できたと感じたとしても、かかる情報の本質が質的であるが故に、現実的には各人の意識が相互に異なっているであろうことは想像に難くない。従って、そのような共通認識の存在しない状況下で議論したところで、各人が納得する客観的妥当性のある結論を得ることは極めて難しいのである。
【0005】
このような困難な状況に鑑み、従来から、上述のポスターデザインや洋服デザイン等の質的情報を本質とする対象物を評価したり議論等する場合には、数値で量的で把握できる情報をどうにかして取得し、それを尺度基準とすることも検討されている。例えば、複数の洋服デザインを評価するに際して、それら複数の洋服デザインについて多数の消費者のアンケートを5段階評価等で取得し、アンケートの選択肢に割り付けた点数を合計することにより、かかるアンケート項目に関する客観的な評価を、当該アンケート項目を尺度とした量的情報である数値として入手することが考えられる。
【0006】
しかしながら、そもそも「質的情報」は、「量的情報」と対極に位置するものであって、当人にとっても容易には言い表し難い複雑な感覚等が融合した結果物であることが殆どであり、それ故、上述の如きアンケート等に際して示される明確な尺度によって量的情報に変換することは極めて乱暴な処理であり、得られた量的情報が、もとの質的情報を的確に表わし得ないことは、容易に理解されるところである。即ち、洋服デザインを見た消費者は、各人がさまざまな感覚を抱くこととなり、その各人の感覚こそが、評価対象物の有する質的情報であるが、アンケートを採るに際しては、アンケートを作成した一主体の主観的な尺度のみが与えられるに過ぎないことから、この与えられた尺度と異なる消費者各人の感覚は全て捨てられることとなり、かかる尺度によって消費者各人の感覚を拘束して、その拘束した範囲内で消費者各人の感覚を計ることしか出来ないのである。従って、このように予め一主体の主観的なフィルタが掛けられてしまうことが避けられない以上、アンケート等によって得られた量的情報に基づいて質的情報を解析することによっては、到底、満足できる結果を望むことが出来ない。
【0007】
なお、上述の如き選択肢に点数を付けて集計することにより評価対象物が本質的に有する質的情報を量的情報に変換するアンケート手法において、洋服デザイン等の本来対象とする質的情報をアンケート結果として得られる量的情報に対して高度にのせて、質的情報を量的情報に精度良く変換するためには、例えば、アンケート項目を考えられ得る限りに多く設定することも考えられるが、そのような手法においては、アンケートの実施だけでなく、そのアンケート結果の解析も極めて困難となってしまい、現実的でないことが明らかである。
【0008】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、洋服や広告など明確な尺度をもった数値で測定することが本質的に妥当でない評価対象物において、かかる評価対象物がそれ自体の価値として本質的に備えている質的情報を、客観的且つ効率的に取得すると共に、取得した質的情報に適した尺度自体を新たに生成せしめ、更に、この新たに生成した尺度によって各対象を容易に把握乃至は評価できる態様で視覚的に表示し得る、評価対象物における質的情報に関する新規な解析装置を提供すること等にある。
【0009】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
先ず、本発明の第一の態様は、(a)複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを入力せしめる画像データ入力手段と、(b)前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを入力せしめる言語データ入力手段と、(c)前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けて記憶するデータ記憶手段と、(d)該データ記憶手段に記憶された前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める行列演算手段と、(e)該演算手段により得られた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示手段とを、有する画像データで特定可能な質的情報の解析装置を、特徴とする。
【0011】
このような本態様に従う構造とされた解析装置においては、
▲1▼「画像データを利用し、かかる画像データによって複数の質的情報を各別に特定するようにしたこと」と、
▲2▼「言語データを利用し、画像データによって特定される複数の質的情報を、それぞれ自然文などで表現することを可能としたこと」を、
それぞれ特徴の一つとしており、更に、
▲3▼「これら▲1▼画像データと▲2▼言語データ(語)に対して総合的に特定の解析処理を施して、その結果を、具体的な数値としてではなく、各画像データと各言語データにおける語を、同一の座標系に布置して視覚的に展開表示するようにしたこと」、
も特徴の一つとしている。
【0012】
そして、このような解析装置においては、評価対象物が備えている質的情報を言語データで表現できるようにしたことから、質的情報をより的確に表わすデータを入力せしめることが出来るのであり、しかも、アンケート等のように一主体が作成した尺度で拘束されることもなく、客観性を有するものとして質的情報を高精度に表わすデータを入力せしめることが可能となる。更に、画像データを用いたことにより、一つの画像データによって対応する一つの評価対象物を明確に特定して表示することが出来るのであり、それ故、結果表示手段によって複数の画像データを、言語データにおける多数の語と共に、座標系に布置せしめて全体として把握可能な状態で表示せしめることにより、複数の評価対象物の相互間でそれらの奥に潜んでいる適当な尺度を、視覚的に把握容易な態様で表わすことが出来るのである。
【0013】
すなわち、本態様に従う解析装置においては、後述する実施形態の記載によって具体的に明示されているように、最終的に、複数の評価対象物の間に存在する質的情報の相対的な関係をもって、それら複数の評価対象物を、各評価対象物の質的情報を表わす語と併せて、適当な座標系に布置することが出来るのであり、それ故、布置された結果表示物には、そこに何等かの妥当な尺度が新たに生成されていると観念することが出来るのである。ここにおいて、特に重要なことは、評価対象物の質的情報を表わす語が布置された座標系において、かかる布置の態様等を観察することで認識することの出来る尺度は、当初から何人にも認識されていなかったものである一方で、新たに創り出されたものでは決してなく、複数の評価対象物が本来的に備えている質的情報に関して当初から当然に存在していたと考えられるものなのであり、それ故、評価対象物の評価等を行なう尺度として最も妥当で且つ客観的なものであると言えるのである。
【0014】
この意味において、本態様の解析装置は、従来の解析方法と逆転の発想の下で、評価尺度が存在しない質的情報を、評価尺度を与えないままで解析する新たな評価方法を提供するものであるといえる。即ち、従来の解析方法は、予め与えられた尺度(ものさし)を用いて、対象を評価するに過ぎないのであり、従って、いかに精緻に尺度を作成したところで、解析結果は、所詮、その尺度を作成した個人の主観的判断から逃れることは出来ないのである。一方、本態様の解析装置においては、予め尺度(ものさし)を準備することなく、複数の評価対象物が有する質的情報の相互関連に基づいて、それら複数の評価対象物を座標系に布置して表示させるだけであるが、かかる座標系に布置されることによって、当該評価対象物において正に適合する尺度自体が生成されて表示されることとなるのであり、しかもそれと同時に、かかる尺度による各評価対象物の評価が、座標系に展開されて量的情報として把握可能な状態で表示され得るのである。
【0015】
従って、本態様の解析装置において結果表示手段によって表示された結果を用いることにより、質的情報をもつ評価対象物について評価や議論するに際して、そこに参加している複数人が略共通して認識し得る尺度を持つことが出来ると共に、かかる尺度によって各評価対象物を測定した結果の値を客観的に認識することが可能となる。それ故、従来では、各人の主張が主観論になって収集がつかなくなりがちであった、質的情報をもつ評価対象物についての会議においても、各人が共通する尺度を認識し、且つ各評価対象物について、かかる尺度を基準として客観的な測定値をもつことが出来るのであり、その結果、質的情報について、客観的妥当性をもって効率的に議論したり評価等することが可能となるのである。
【0016】
なお、本態様における画像データは、内容が画像でデータであって、複数の評価対象物を相互に区別して特定し得るものであれば良く、例えばグラフィックスソフトで作成したもの等も採用可能であるが、評価対象物を可能な限り明確に特定し得るものであることが望ましく、特に視覚を通じて把握することによって解析すべき質的情報が得られるような評価対象物である場合には、当該評価対象物を電子データ化した画像データが好適に採用される。また、かかる画像データは、動画データであっても良いが、静止画データの方が、取扱いが容易であると共に、結果表示手段によって表示した際に、評価対象物を速やかに把握することが出来ることなどから望ましい。更にまた、画像データは、JPEGやMPEG等の方式で圧縮したデータとして取り扱うことが可能であり、予め圧縮した画像データを入力対象とする他、画像データの入力に際して圧縮処理を施しても良い。また、画像データは、一般に、GIFやTIFF,EPS等の適当なファイル形式で扱われることとなるが、そのようなファイル形式は限定されるものでない。なお、かかる画像データによる評価対象物の区別機能は、本態様に係る解析装置を利用して解析を行なう主体において明確であれば良く、画像データは、各別の評価対象物を客観的且つ一義的に特定するものである必要はない。
【0017】
また、このような画像データを入力せしめる画像データ入力手段は、具体的にはイメージスキャナやデジタルカメラ等で構成され得るが、その他、例えば、装置内部や装置外部で予め作成した画像データを画像ファイルとして入力せしめる場合には、磁気ディスク読取装置等の各種の公知のデータ入力装置によって、画像データ入力手段が構成され得る。
【0018】
更にまた、本態様における言語データは、評価対象物が有する質的情報を言語の形態で表わしたデータであって、好適には、各評価対象物を独立して表わした言語であって、複数の評価対象物の相対的な評価情報でないものが採用される。また、言語の種類は、日本語である必要はなく、英語や独語等の他国語、或いは複数の国の言語等であっても良い。更に、言語データは、取扱いが容易でデータ量も少ないこと等からテキストデータ乃至はキャラクタデータが好適に採用される。また、本態様における言語データは、一義的に特定することの出来ない評価対象物の質的情報を、複数人で意識を共有するための普遍的手段である言語を利用して表わしたものであるが、かかる言語データは、評価対象物の質的情報を直接的に表わしたものである必要はない。即ち、質的情報は、それ自体が本来的に認識可能に表出されているものではないのであり、従って、それを特定する言語もまた、質的情報として認識されるものである必要はないのである。要するに、評価対象物に関して、それ固有の状態等を、質的情報よりは格段に客観性があり、複数人の間で共通認識を持つことの出来る言語で表わしたものが、本態様における言語データとして採用され得る。また、言語データは、複数の「語」から構成されることで、評価対象物の質的情報を表わすものであって、例えば、単に複数の「語」からなる単語の集合であっても良いし、或いは複数の「語」の組み合わせからなる語句や文章などであっても良い。
【0019】
また、このような言語データを入力せしめる言語データ入力手段は、具体的にはキーボード等で構成され得るが、その他、例えば、装置内部や装置外部で予め作成した言語データをテキストファイル等として入力せしめる場合には、磁気ディスク読取装置等の各種の公知のデータ入力装置によって、言語データ入力手段が構成され得る。
【0020】
さらに、上述の説明からも明らかなように、本態様における評価対象物は、質的評価を必要とする物であって、画像によって特定することが可能であると共に、言語によって質的情報を表わすことのできるものであれば良く、その限りにおいて有体物の他、無体物も対象となり得る。例えば、広告やイメージフィルム等のデザインや構成は、直接に画像で特定することが可能であると共に、そこに表わされている具体的な映像やそこから受け取る感覚などの質的情報は言語で表わすことが可能であることから、本態様に係る解析装置の評価対象物となり得ることに疑いはないが、その他、例えば洋服や自動車,テレビ,洋菓子,料理等のように、視覚によって得られる情報だけでなく素材,材質や機能,性能,触覚,味覚等の情報も併せて質的情報を構成するものや、或いは音楽や香り等のように、視覚によって得られる情報が支配的でないものや、本質的に視覚によって得られる情報を有しないものであっても、何等かの方法で画像データをもって当該評価対象物を特定できる限りは、本態様に係る解析装置の評価対象物となり得る。
【0021】
また、本態様におけるデータ記憶手段は、上述の如き画像データや言語データを電気的乃至は磁気的に記憶保持せしめ得るものであれば良く、特にアクセス時間(リード/ライト時間)の短いメモリが好適に採用されるが、その他、例えば容量の大きいハードディスク等によって記憶手段を構成すると共に、RAM等の一時記憶素子を併せ備えさせて、演算に必要なデータだけをハードディスクから一時記憶素子に適宜にコピーして利用するようにしても良い。
【0022】
更にまた、本態様における行列演算手段は、行列演算処理を行なうことが可能なプロセッサを用いて構成することが可能であり、例えば、データ処理用LSIやCPU等のハードウェアと、それに処理命令文を送って作動制御するソフトウェアによって構成される。また、行列演算手段を構成するLSIやCPU等のハードウェアは、公知の如く、バスラインや必要なインターフェースを介してデータ記憶手段や画像入力手段,言語データ入力手段,結果表示手段に接続されることとなる。
【0023】
また、本態様における結果表示手段は、表示行列によって特定された位置に画像データおよび言語データの語をそれぞれ布置する座標系を、視認可能に表示し得るものであれば良い。具体的には、2次元の直交座標を表示し得る印刷装置やCRT等のディスプレイ装置の他、3次元の直交座標を表示し得る立体モデルや模擬的3次元を表示するディスプレイ装置等を用いることにより、結果表示手段が有利に実現され得る。
【0024】
さらに、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る解析装置において、前記言語データ入力手段によって入力される前記言語データが文章の態様で表わされたものである場合に、かかる言語データを形態素に分解する形態素解析手段を設け、該形態素解析手段で得られた該形態素を該言語データにおける語として前記演算手段において前記多次元行列の行項目および列項目の他方とするようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、言語データとして、例えば自然文を、特別な予備処理等を施すことなくそのままの形で言語データ入力手段から入力することが可能となる。
【0025】
なお、形態素解析手段そのものは、従来から公知であり、例えば日本語の形態素解析システムとして汎用のパソコン上で作動するソフトウエアとして、例えば、京都大学工学部の長尾研究室と奈良先端科学技術大学院大学の松本研究室等の著作に係る「JUMAN」や「CHASEN」等が入手可能であり、そのような公開されている各種の形態素解析システムを利用して、本態様の形態素解析手段を構成することも可能であることから、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
そして、本態様に従えば、行列演算手段で生成される多次元行列は、例えば複数の画像データを列項目とすると、行数が総形態素数で、列数が画像データの総数とされた行列となる。また、かかる多次元行列の各要素は、該当する「行」の項目である形態素が、該当する「列」の項目である画像データで特定される評価対象物を表わす言語データ中に何回出現するか(幾つ含まれているか)を示す数値とされる。
【0027】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る質的情報の解析装置において、前記形態素のうちで特定の品詞だけを選択的に排除又は採用する選択手段を設けて、該選択手段で選択されなかった語は、前記演算手段における行項目および列項目の他方において採用しないようにしたことを、特徴とする。即ち、形態素解析を施すと、名詞や形容詞,動詞などに加えて、助詞なども一つの形態素として把握されることとなる。そこで、評価対象物の質的情報として直接に関係しない語は、形態素解析で得られたとしても、それらを言語データとしての「語」から除いて解析に用いないようにすることが望ましい。それによって、生成される多次元行列が低次元化されて演算等の処理や記憶領域の確保等に有利となると共に、解析結果におけるノイズ発生の回避が図られ得る。
【0028】
また、本発明の第四の態様は、前記第一又は第二の態様に係る質的情報の解析装置において、前記言語データにおける語のうち、前記複数の評価対象物の所定数以上に含まれるものだけを選択するフィルタ手段を設けて、該フィルタ手段で選択されなかった語は、前記演算手段における行項目および列項目の他方において採用しないようにしたことを、特徴とする。即ち、形態素解析を施すことによって得られた形態素としての「語」の中には、複数の評価対象物の中の特定の評価対象物に対応付けられた言語データにだけ存在するものがある。そもそも本発明に係る解析装置は、特定の条件下で生成した多次元行列を次元圧縮することで、かかる多次元行列に隠れた状態で存在する相関関係に基づいて、評価対象物の質的情報の解析を行なうものであることから、一つの評価対象物にだけにしか対応付けられていない「語」は、解析に際して意味を持たない情報と考えられる。それ故、本態様に従い、複数の評価対象物に対応付けられて存在する「語」だけを採用して多次元行列を生成することにより、多次元行列が低次元化されて演算等の処理や記憶領域の確保等に有利となって、次元圧縮により表示行列を効率的に得ることが可能となる。なお、フィルタ手段における「語」の選択基準は、評価対象物や「語」の数などによっても異なるが、一般に、3つ以上の評価対象物に含まれる「語」だけを選択するように設定することが、解析の効率と精度を両立的に達成する上で望ましい。
【0029】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が視覚で把握される有体物であり、該評価対象物を撮影したデータを前記画像データとして前記画像データ入力手段により入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、評価対象物が視覚で把握される有体物であることから、画像データによって、各個別の評価対象物を明確に識別することが可能となるのであり、それ故、結果表示手段によって画像データを座標系に布置した表示を観察する際に、各評価対象物を容易に把握することが出来、評価や解析を一層容易に且つ効率的に行なうことが可能となる。
【0030】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る質的情報の解析装置であって、前記言語データ入力手段において、前記言語データをテキストデータとして入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、テキストデータを採用したことにより、言語データの取扱いを一層容易に且つ効率的に行なうことが可能となる。なお、テキストデータ以外の言語情報は、採用されないこととなるが、本発明では、本来、評価対象物の質的情報を自然文等の言語で表わすことを目的として言語データを採用したものであるから、一般に、テキストデータによって、十分な質的情報を扱うことが可能であり、解析精度の低下が大きな問題となることもない。
【0031】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、前記言語データが、少なくとも前記評価対象物の解析主体に対して客観的に取得された客観的言語データであることを、特徴とする。
【0032】
また、本発明の第八の態様は、前記第七の態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が商品であり、該商品を撮影したデータを前記画像データとして前記画像データ入力手段で入力せしめる一方、該商品の購入者が該商品を評価した自然文を前記言語データとして前記言語データ入力手段で入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、解析主体に対する言語データの客観性ひいては質的情報解析の客観性を十分に確保しつつ、商品の市場評価という消費者の主観的意識に基づく質的情報を考慮して解析することが可能となる。それ故、例えば後述の実施形態の欄において第一実施形態として示されているように、洋服デザインという評価や価値の尺度や情報が極めて質的で且つ不明瞭なものを評価対象とする場合でも、解析主体の主観的な拘束を受けることなく、客観的な解析結果を座標系に展開して表示することが出来るのである。
【0033】
また、本発明の第九の態様は、前記第七又は第八の態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が、その外観として視覚で把握可能な状態でコメント文等の言語情報を含んでいる場合に、該言語情報を前記言語データとして前記言語データ入力手段により入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、評価対象物の質的情報を提供する言語データを、極めて客観的に得ることが出来るのであり、解析結果の客観的妥当性が一層有利に確保され得る。特に、本態様に従えば、例えば後述の実施形態の欄において第二実施形態として示されている広告表現のように、評価や価値の尺度や情報が極めて質的で且つ不明瞭なものを評価対象とする場合などにおいて有効である。即ち、広告等において文字を備えたものは、その文字自体が評価対象物を構成するものでなく、広告のイメージ画部分や商品の外観等と協働して全体として質的情報を構成するものであるが、それ自体でも評価対象物の質的情報の一部を担っている以上、言語データとして解析に利用することにより、客観的な情報を極めて容易に取得することが出来るのである。
【0034】
また、本発明の第十の態様は、前記第七乃至第九の態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が、その外観として視覚で把握可能な状態で写真やイラスト等の非言語情報を含んでいる場合に、該非言語情報を客観的に言語情報に置換せしめた置換言語情報を、前記言語データとして前記言語データ入力手段により入力せしめるようにしたことを、特徴とする。即ち、評価対象物は、それ自体が言語情報を有するものとは限らず、また、言語情報以外にも、質的情報として重要な情報を含む場合が多い。具体的には、例えば、後述する第二実施形態に示される車の広告表現が評価対象物である場合に、言語情報としては「その広告の中に文字として印刷されている文」を含むだけであるが、それ以外にも、そのような言語情報に加えて、或いはそのような言語情報に代えて、イラストや写真等の非言語情報で表現された情報として、例えば「空」や「雲」,「ハンドル」,「子供」,「川」,「夕焼け」,「ドア」,「エンジン」,「男性」,「女性」,「座席」などを含んでおり、特に広告表現では、質的情報の観点からみると、これらの非言語情報が何等かの訴求点を別の何かに置き換えて表現したものであることが多く、表された言語情報以上に重要な意味を持つことが多い。そして、本態様においては、このような非言語情報も考慮して、評価対象物の質的情報を解析することが出来るのであり、ぞれによって、解析対象となる質的情報の範囲も拡大されると共に、質的情報のより一層高精度な解析が実現可能となるのである。このように、非言語情報が質的情報として大きなウェイトを有する広告等の評価対象物においては、例えば、当該広告等についての意見や感想などの質的情報を複数の人に自然文で自由に述べてもらったものを取得して言語データとして利用すること等も考えられるが、それよりも、例えば、当該広告等に明示されている物理的な事象を対象をして、非言語情報を客観的に言語情報に置換せしめたものを言語データとして用いる方が、解析結果の客観性が向上される。なお、非言語情報を言語情報に置換するには、例えば、写真等から機械的に単語や文章に置き換えて抽出することも考えられるが、より簡易的には、解析主体とは別の者の人的作業によって抽出するようにしても良い。
【0035】
また、本発明の第十一の態様は、前記第十の態様に係る質的情報の解析装置において、前記言語データ入力手段により入力された前記置換言語情報から、前記多次元行列の要素としての語として名詞だけを選択抽出する名詞選択手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、非言語情報を客観的に言語情報に置換するに際して、例えば、解析主体とは異なる者が、非言語情報を出来るだけ客観的に言語情報に置換する場合等においても、特に主観が入り難く且つ質的情報を一般に多く含む名詞を選択することによって、言語情報を一層効率的に且つ精度良く抽出することが可能となる。なお、名詞選択手段は、例えば、非言語情報を言語情報に置換せしめた置換言語情報をテキスト形式で入力せしめて、これに形態素解析を加えて名詞を選択抽出させることによって、有利に実現可能となる。
【0036】
また、本発明の第十二の態様は、前記第十又は第十一の態様に係る質的情報の解析装置において、前記非言語情報を複数の者が各別に言語情報に置換せしめた複数の置換言語情報を、それぞれ、前記言語データとして、前記言語データ入力手段によって入力せしめるようにすると共に、それら複数の者によって生成された複数の置換言語情報から得られた複数の該言語データに共通して存在する語だけを、前記多次元行列の要素としての語として選択抽出する共通語選択手段を設けたことを、特徴とする。前述の如く非言語情報を言語情報に置換して置換言語情報を得るに際しては、その作業を個人が行う場合に主観が入る余地があるが、本態様においては、複数の者(好ましくは3〜5名程度)が、お互いの処理を見せることなく独立して非言語情報を言語情報に置換する作業を行い、それら複数の者の作業結果を用いることによって、より客観性の高い置換言語情報を取得することが可能となるのであり、これにより、特別な者だけが認識する程度の客観性に乏しい言語情報の選択が効果的に回避され得る。なお、本態様において、より好適には、例えば、複数の者が他人の作業内容を見ることなく、非言語情報から言語情報への置換を行い、その結果を入力することが出来るように、各者別に言語データ入力手段を準備し、各者がそれぞれの評価対象物に関して入力した言語情報から直接に取得された多数の語、或いは形態素解析を経て取得された多数の名詞)を、一旦メモリに記憶せしめた上で、各評価対象物ごとに、全作業者が言語情報として共通に入力した語をスキャンして自動的に選択抽出する手段が、採用されることとなる。
【0037】
また、本発明の第十三の態様は、前記第一乃至第十二の何れかの態様に係る質的情報の解析装置であって、前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めると共に、前記結果表示手段において、かかる表示行列で最も大きいものから2又は3の特異値にそれぞれ関わる各次元軸によって2次元又は3次元の直交座標系を構成し、かかる直交座標系における位置として前記画像データと前記言語データにおける語を、それぞれ視認可能に表示することを、特徴とする。このような本態様においては、数理計算による次元縮小法を利用して、前述の如くして得られた多次元行列から、視覚で速やか且つ正確に把握することが出来る2次元または3次元の座標系において、その座標系が何等かの尺度を与える状態で、画像データと言語データにおける語をそれぞれ布置せしめるための表示行列を有利に得ることが可能となる。
【0038】
また、本発明の第十四の態様は、前記第十三の態様に係る質的情報の解析装置において、(f)前記直交座標系を構成する少なくとも一つの次元軸に関して、前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量をそれぞれ求める寄与量演算手段と、(g)該寄与量算出手段によって求められた何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じて、該寄与量が大きい程に表示も大きくなるように、前記画像データおよび前記言語データにおける語をそれぞれ拡大/縮小表示する表示倍率変更手段とを、設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、座標系に布置した画像データや言語データの語に対して、視覚的により多くの情報を表示させることが出来るのであり、座標軸が持つ尺度の認識等も容易となる
。
【0039】
また、本発明の第十五の態様は、前記第十四の態様に係る質的情報の解析装置において、前記寄与量演算手段により、前記座標系を構成する複数の次元軸のそれぞれに関して前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量を算出すると共に、かかる算出結果を記憶する寄与量記憶手段を設けて、算出した該寄与量を該寄与量記憶手段に記憶せしめる一方、(h)前記座標系を構成する前記複数の次元軸のうち、何れかの次元軸を選択的に切り換えて指定することの出来る次元軸指定手段と、(i)前記表示倍率変更手段により何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさで表示された前記画像データおよび前記言語データにおける語を、前記次元軸指定手段による次元軸の指定の変更に従い、別の次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさとなるまで次第に変化させて表示するアニメーション表示手段とを、設けたことを、特徴とする。このような本態様にあっては、結果表示手段において各画像データや言語データの語が布置された座標系において、そこに表わされた各軸がもつ量的な尺度の意味、延いては布置された各画像データや各言語データの語の相関的な関係を、より把握し易くすることが出来る。
【0040】
また、本発明の第十六の態様は、前記第一乃至第十五の何れかの態様に係る質的情報の解決装置において、(j)前記行列演算手段において前記多次元行列を生成するに際して、該多次元行列における各次元軸の要素に対して相対的な重み付けによる調整を行なう重み付け手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、座標系に布置された各画像データや言語データの語の全体のばらつき乃至は広がりの程度を把握し易い適当な大きさに調節することが出来るのであり、それによって、かかる座標系の表示に基づいて、そこに内在する何等かの意味を持つ尺度を認識したり、各画像データで表わされた各評価対象の質的情報を把握することが、一層容易となる。
【0041】
また、本発明の第十七の態様は、前記第一乃至第十六の態様に係る質的情報の解析装置であって、前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めるようにすると共に、かかる特異値分解の結果に基づいて前記画像データを、該画像データの数よりも少ない数のクラスタに分けるクラスタ分析手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、各画像データで特定される複数の評価対象の相対的な関連性を、クラスタ分けされて表示された結果から、一層容易に把握して評価等することが可能となる。なお、クラスタ分析手段としては、最近隣法や最遠隣法,群平均法,k−means法等の従来から公知の手法が、何れも採用可能である。また、結果表示手段において、例えば座標系に各画像データを位置表示するに際して、クラスタ分析の結果に従い、同一クラスタに属する思考項目を、そのクラスタに割り当てられた特定の色で表示することも可能であり、それによって、塗り分けられた画像データ群の把握と健康が一層容易となる。
【0042】
また、本発明の第十八の態様は、前記第一乃至第十七の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、(k)前記複数の評価対象物にそれぞれ固有の第三変数を入力せしめる第三変数入力手段と、(l)該第三変数入力手段で入力された該第三変数を、前記多次元行列において前記画像データを配した行項目および列項目の何れかと次元の等しいベクトルとし、前記結果表示手段によって表示される前記座標系に射影せしめた参考表示ベクトルを演算する第三変数演算手段とを、設けて、該結果表示手段により、該第三変数演算手段で求められた参考表示ベクトルを、前記画像データおよび前記言語データの語と併せて該座標系に表示せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、複数の画像データや言語データの語を、評価対象物が有する質的情報に基づいて座標系に表示する処理結果と関係なく、評価対象物を特定する画像データと同一次元のベクトルをもって、任意の第三変数を該座標件に表示することが出来るのであり、それ故、例えば第三変数によって表わされる特定の指標や情報からなる尺度を、かかる座標系に画像データ等と併せて表示することが可能となる。従って、座標系に展開表示された第三変数を利用することにより、座標系に展開された複数の画像データや言語データの「語」が内在する尺度を一層容易に認識すること等が可能となって、評価対象物の解析作業性が向上され得る。
【0043】
また、本発明の第十九の態様は、前記第十八の態様に係る質的情報の解析装置において、前記第三変数が画像として特定できるものである場合に、該第三変数を特定する第三変数画像データを、前記結果表示手段により前記参考表示ベクトルとして前記座標系に表示せしめることを、特徴とする。このような本態様においては、座標系に対して単に第三変数の名称等を表示する場合に比して、表示された画像から第三変数を視覚で直接的に把握認識することが出来るのであり、例えは質的情報に関する情報量が、評価対象物よりも明確で顕著な第三変数の画像を座標系に表示することで、かかる座標系に表された空間の意味をより把握し易くすることが可能となる。
【0044】
また、本発明の第二十の態様は、前記第一乃至第十九の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、(m)前記複数の評価対象物と同等の参照対象物について、その質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした参照用言語データを入力せしめる参照用言語データ入力手段と、(n)該参照用言語データにおける語を行又は列の要素として、前記多次元行列における行項目と列項目のうち前記言語データにおける語を要素とする方の項目と次元の等しい一列又は一行の参照表示行列を求める参照表示行列演算手段と、(o)該参照表示行列演算手段により得られた前記参照表示行列を、前記結果表示手段によって表示される前記座標系に射影せしめた参照表示ベクトルを求める参照ベクトル演算手段とを、設けて、前記結果表示手段により、前記座標系において前記画像データおよび前記言語データの語と併せて前記参照表示ベクトルを表示せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、複数の評価対象物によって予め形成した、評価空間としての座標系において、具体的に特定された参照対象物を、それが持つ質的情報を予め生成された座標系での評価基準に従って評価した結果の該座標系における特定の位置として、定量化された形で表示することが出来る。従って、例えば後述する第二の実施形態のように、二つの広告表現案の何れを選択するかについて比較検討するに際して、既存の多数の広告表現を評価対象物として、それらの質的情報を解析することで評価空間としての座標系を構成した後、かかる座標系に、二つの広告表現案を、それぞれ参照対象物として射影して表示せしめることにより、それら二つの広告表現案の比較を、座標系によって表された客観的な尺度に基づいて、一層容易に且つ効果的に行うことが可能となるのである。
【0045】
また、本発明の第二十一の態様は、前記第二十の態様に係る質的情報の解析装置において、前記参照対象物を特定し得る参照用画像データを入力せしめる参照用画像データ入力手段を設けて、前記結果表示手段により、前記座標系における前記参照表示ベクトルの位置に該参照用画像データを表示するようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、前記第十九の態様における第三変数と同様に、参照対象物が座標系において視覚で把握可能に表示されることにより、かかる参照対象物を容易に把握することが可能となって、座標系に表された空間の意味や、参照対象物の有する質的情報の定量的評価値をより把握し易くすることが出来る。
【0046】
また、本発明の第二十二の態様は、前記第二十又は二十一の態様に係る質的情報の解析装置において、前記参照対象物を複数採用し、前記結果表示手段により前記座標系において一つの該参照対象物の表示を終了して別の該参照対象物の表示を開始するに際して、かかる終了する参照対象物における前記参照表示ベクトルを、かかる開始する参照対象物における前記参照表示ベクトルまで、該座標系において次第に変位させて表示する参照用アニメーション表示手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、例えば独立した二つの参照対象物における相互間の質的情報を、より認識し易い態様で表示せしめて比較することが出来るのであり、それ故、例えば広告表現の具体的な案を一つの参照対象物として、これから一部を変更したものを別の参照対象物として、座標系における一つ目の参照対象物の位置から別の参照対象物の位置まで、参照表示ベクトルをアニメーション表示させて変位させることにより、参照対象物の一部変更による質的情報の変化を、視覚的に一層容易に把握することが可能となるのである。なお、本態様を含む本発明において、座標系におけるベクトルの表示は、ベクトル位置を特定して示し得るものであれば良く、例えば特定の基準点(原点)からの矢印の表示の他、特定の原点を基準とするベクトル先端位置に対して画像等の適当なポイントを表示するものなどであっても良い。
【0047】
また、本発明は、上述の如き特定構造とされた質的情報の記憶装置の他、以下の(A)〜(E)からなる複数の工程をもって実施される質的情報の解析方法も、その特徴とするものである。
【0048】
すなわち、本発明に係る質的情報の解析方法の第一の態様は、(A)コンピュータが、複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを外部から取得する画像データ取得工程と、(B)該コンピュータが、前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを外部から取得する言語データ取得工程と、(C)該コンピュータが、前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けてデータ記憶手段に記憶する記憶工程と、(D)該コンピュータが、前記データ記憶手段に記憶した前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める演算工程と、(E)該コンピュータが、前記演算工程で求めた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示工程とを、有する画像データで特定可能な質的情報の解析方法を、特徴とする。
【0049】
このような本態様の解析手段に従えば、質的情報を本質的な評価対象とする各種の物を、前述の如き本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置と同様に、それら自体の相対的な関連性に基づき、適当な尺度をもって座標系に展開して布置することが出来るのであり、そして、かかる座標系においては、結果的に、予め与えられておらず識別さえもなされていなかった新たな尺度に基づいて、画像データや言語データの語が布置されることとなる。
【0050】
従って、本発明に従って得られた座標系による表示を利用することにより、客観的に認識可能な尺度に基づいて評価対象物の質的情報を量的に把握することが出来るのであり、それによって、例えば複数人での会議等においても、複数の評価対象物を客観的妥当性をもって評価したり議論することが可能となるのである。
【0051】
また、質的情報の解析方法における本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う質的情報の解析方法において、前記コンピュータが、前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めると共に、前記結果表示手段において、かかる表示行列で最も大きいものから2又は3の特異値にそれぞれ関わる各次元軸によって2次元又は3次元の直交座標系を構成し、かかる直交座標系における位置として前記画像データと前記言語データにおける語とを、それぞれ視認可能に表示するようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、特異値分解を利用した処理に基づいて、評価対象物における質的情報の評価に際して支配的な尺度に従う量的評価の結果だけを効率的に取り出して、それを座標系に表わすことが可能となるのであり、その結果、座標系の表示から、評価対象物における質的情報の妥当な尺度を一層容易に把握して認識することが出来るのである。
【0052】
また、質的情報の解析方法における本発明の第三の態様は、前記第二の態様に従う質的情報の解析方法において、(F)前記コンピュータが、前記直交座標系を構成する少なくとも一つの次元軸に関して、前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量をそれぞれ求める寄与量演算工程と、(G)該コンピュータが、該寄与量演算工程において求めた何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じて、該寄与量が大きい程に表示も大きくなるように、前記画像データおよび前記言語データにおける語をそれぞれ拡大/縮小表示する表示倍率変更工程とを、含む質的情報の解析方法を、特徴とする。このような本態様においては、評価対象物の質的情報を量的に評価するための一つの尺度となり得る座標軸の概念を、座標系に布置された画像データや言語データ(語)の表示の大小という視覚的効果を利用して、一層把握し易くすることが出来る。
【0053】
また、質的情報の解析方法における本発明の第四の態様は、前記第三の態様に従う質的情報の解析方法において、前記コンピュータが、前記寄与量演算工程において、前記座標系を構成する複数の次元軸のそれぞれに関して前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量を算出すると共に、かかる算出結果を記憶するようにする一方、(H)該コンピュータが、前記座標系を構成する前記複数の次元軸のうち、何れかの次元軸を選択的に切り換えて指定する次元軸指定信号を外部から取得する次元軸指定工程と、(I)該コンピュータが、前記表示倍率変更工程において何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさで表示された前記画像データおよび前記言語データにおける語を、前記次元軸指定工程における次元軸の指定の変更に従い、別の次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさとなるまで次第に変化させて表示するアニメーション表示工程とを、含む質的情報の解析方法を、特徴とする。このような本態様においては、座標系に布置された画像データや言語データ(語)を、各次元軸(座標系における座標軸)を尺度として評価した場合に、その評価の大きさ即ち寄与度の相違を、アニメーション表示によって相対比較的に簡潔に表示することが出来るのであり、それによって、それぞれ評価対象物の質的情報を量的に評価するための一つの尺度となり得る各座標軸の概念を、視覚的に一層容易に認識することが可能となるのである。
【0054】
さらに、本発明は、前述の如き本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置をコンピュータによって実現するために必要な、コンピュータによって読取可能な情報を、伝送媒体を通じて伝送することにより、前記第一乃至第二十二の何れかの態様に係る質的情報の解析装置を実現させる質的情報の解析装置の製造方法も、特徴とする。このような製造方法に従えば、本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置を、単に、ソフトウェアの配送によって簡易且つ速やかに実現せしめることが出来るのである。なお、伝送媒体としては、有線,無線を問わず、コンピュータ読取可能な情報を伝送し得る各種の媒体が採用され得る。
【0055】
また、本発明は、前述の如き本発明に従う質的情報の解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記載された、コンピュータで読取可能な情報記録媒体も、特徴とする。更にまた、本発明は、上述の如き本発明に従う質的情報の解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムも、特徴とする。更にまた、本発明は、上述の如き本発明に従う質的情報の解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを情報として載せたコンピュータで読取可能な信号も特徴とする。なお、情報記録媒体としては、例えば、フロッピディスクや磁気テープ,光ディスクや光磁気ディスク,ハードディスク,フラッショメモリなどが、何れも採用可能である。また、信号を伝送する媒体は、特に限定されるものでなく、光ケーブルや同電線等の有線や無線が、ネットワーク等の態様で採用可能であり、搬送波によって情報を伝送するものの他、搬送波を用いないで情報を伝送するものであっても良い。
【0056】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0057】
先ず、図1には、本発明方法を実施するための本発明に従う解析装置全体のハードウェア構成の一具体例が、ブロック図として示されている。即ち、本実施形態における解析装置のハードウェアは、例えば一般的なコンピュータシステムを用いて構成されており、中央演算処理装置(CPU)10と、それに接続されたROM,RAM,ハードディスク等の記憶装置12を備えていると共に、CPU10に対して適当なインターフェースを介して接続されたキーボードやマウス等の入力装置14や、プリンタやモニタ等の出力装置16を備えている。そして、CPU10は、予めROMに記憶された手順とRAMに一時記憶された手順に従い、入力装置14から入力される信号や記憶装置12に記憶されたデータを処理して、各種の駆動信号や表示信号を出力して目的とする解析処理を実行するようになっている。
【0058】
また、図2には、かくの如き解析装置における機能ブロック図が示されている。即ち、本実施形態の解析装置は、画像によって特定可能な評価対象物における質的情報を解析するものであって、その機能的構成について説明すると、かかる解析装置は、
(i)評価対象物を特定できる画像データを入力する画像データ入力手段としての画像データ入力部18と、
(ii)評価対象物の質的情報を表わした言語データを入力する言語データ入力手段としての言語データ入力部20と、
(iii )第三変数をデータとして入力する第三変数入力手段としての第三変数入力部22と、
(iv)参照対象物をデータとして入力する参照用データ入力手段23と、
(v)入力された画像データ,言語データおよび第三変数をそれぞれ記憶するデータ記憶手段としてのデータ記憶部24と、
(vi)自然文等の言語データから多次元行列の要素を抽出するために言語データを形態素に分割処理する形態素解析手段としての形態素解析部26と、
(vii )多次元行列の要素を構成する品詞の選択手段としての品詞選択部28と、
(viii)多次元行列の要素を構成する語を選択するフィルタ手段としてのフィルタ部30と、
(ix)画像データと言語データから多次元行列を生成して更にそれを次元圧縮することにより表示行列を求める行列演算手段としての行列演算部32と、
(x)行列演算による解析結果を記憶する演算結果記憶部34と、
(xi)行列演算による解析結果を座標系をもって視覚表示せしめる結果表示手段としての表示部36と、
(xii )評価対象物の解析結果の次元軸としての解析結果の座標系の座標軸に関する各画像データや各言語データ(語)の寄与量を、各座標軸に関してそれぞれ求めて、得られた寄与量を寄与量記憶手段としての演算結果記憶部34に記憶せしめる寄与量演算手段としての寄与量演算部38と、
(xiii)各画像データや各言語データ(語)を座標系に表示するに際して、表示の大きさを決定する寄与量の基準となる次元軸(座標軸)を選択的に指定する次元軸指定手段としての次元軸指定部40と、
(xiv )入力された第三変数を、画像データや言語データ(語)が表示された座標系に参考表示ベクトルとして射影表示せしめる第三変数演算手段としての第三変数演算部42と、
(xv)入力された参照用データを、画像データや言語データ(語)が表示された座標系に参照表示ベクトルとして射影表示せしめる参照ベクトル演算手段としての参照ベクトル演算部43とを、
含んで構成されている。なお、これら各機能ブロック部は、図1に示されている如きハードウェア構成のコンピュータに適当なソフトウェアを導入することによって実現可能である。
【0059】
そこにおいて、画像データ入力部18においては、評価対象物を特定し得る画像データが入力されるようになっている。この画像データ入力部18は、コンピュータで電子データとして取り扱うことが出来るデータ形式で画像データをコンピュータに入力せしめるものであり、例えば、評価対象物を直接に撮影して画像データを生成するデジタルカメラやスキャナの他、CGで画像データを作成するCGソフトとマウス等の入力手段などによって構成され得るが、その他、予め準備された画像データをコンピュータに入力せしめるフロッピディスクやLAN等によって構成することも可能である。
【0060】
また、言語データ入力部20においては、評価対象物の質的情報を含む情報が入力されるようになっている。この言語データ入力部20は、電子データとして取り扱うことが出来るデータ形式で言語データをコンピュータに入力せしめるものであり、例えば、テキストデータを直接に入力することの出来るキーボードやマウスの他、印刷された文章等をスキャナ等の画像データからOCRで読み込んで言語データとして入力することも可能である。
【0061】
また、第三変数入力部22においては、各評価対象物における第三変数が、各評価対象物を特定する画像データと関連付けられて入力されるようになっている。かかる第三変数は、評価対象物が持つ情報であるが、評価対象物を解析するために作成される多次元行列の要素を構成するものでなく、例えば、評価対象物の情報の中から解析のために参考とすることが有用であろうと考えられる変数を適宜に選択したものであって、定量変数でも定性変数であっても良い。好適には、各評価対象物に固有の情報を表わし得る客観的な情報であって、評価対象物の数に等しい次元のベクトルとして表わされるものが採用される。具体的には、評価対象物が複数の個人である場合に、第三変数として各個人の年令、或いは性別,体重,出身県などの如きである。なお、かかる第三変数は、一つであっても複数であっても良い。そして、このような第三変数を入力するための第三変数入力部22は、変数データをコンピュータに入力するキーボードやマウス等によって構成され得、例えば前記言語データ入力部20を構成するハードウェアを利用することも可能である。また、第三変数は、画像データを有するものであっても良く、その場合に第三変数入力部22は、例えば前記画像データ入力部18を構成するハードウェアを利用して構成することが出来る。
【0062】
また、参照用データ入力部23においては、参照対象物の言語データ(参照用言語データ)が、各参照対象物を特定する画像データと関連付けられて入力されるようになっている。かかる参照対象物は、各評価対象物とは別個のものであるがそれら評価対象物と同等のものと見ることが出来る具体的なものであり、評価対象物を解析するために作成される多次元行列の要素を構成するものでない。また、この参照対象物は、各個別の評価対象物と同様に、画像データと言語データを解析データとして抽出されており、これらのデータを入力するための参照用画像データおよび言語データの入力部23は、例えば前記画像データ入力部18や言語データ入力部20を構成するハードウェアを利用することが可能である。
【0063】
また、データ記憶部24は、上述の如くして入力される画像データと言語データ、第三変数を、各評価対象物毎に相互に関連付けして記憶するようになっており、例えばRAM等の一時記憶素子の他、ハードディスクや光ディスク等によって構成される。
【0064】
また、形態素解析部26は、言語データ入力部20で入力されてデータ記憶部24に記憶された言語データが文章の態様のテキストデータ等である場合に、かかるテキストデータを形態素に分解するものであり、例えば公知のソフトウェアを用いてコンピュータ(CPU)の演算処理を利用し、データ記憶部24に記憶されたテキストデータを読み出して形態素解析を実行するようになっている。また、この形態素解析部26による解析結果は、形態素に分解された語を、それぞれ対応する画像データとの関連付けを保ったままで、データ記憶部24に記憶される。
【0065】
また、品詞選択部28は、言語データを形態素解析部26で形態素分析した結果得られた形態素を、品詞の種類で分類し、特定の一つ又は複数の品詞の形態素だけを選択するようになっている。なお、品詞選択のための品詞の種類情報は、一般に、多くの形態素解析用のソフトウェアが備えている機能を利用して、形態素解析に際して形態素解析処理と同時に得ることが可能である。このように品詞の種類で形態素を取捨選択することにより、有用な情報をもった形態素を極めて有効且つ速やかに得ることが出来ると共に、取り扱う形態素の情報数が格段に少なくされて処理が容易且つ迅速となり、不必要なデータに起因するノイズも効果的に抑えられ得る。
【0066】
また、フィルタ部30は、言語データを形態素解析部26で形態素分析した結果得られた形態素のうち、評価対象物の解析に際して品質情報として有効であると考えられる特定の品詞だけを品詞選択部28で選択した後、更に、評価対象物の相関性の判断に際しての情報を持たない形態素を除くようになっている。即ち、特定の多次元行列を次元圧縮することによって行なわれる後述の評価対象物の解析処理は、複数の評価対象物の相関性に基づくものであることから、複数の評価対象物の相関性に殆ど影響を与えない情報(形態素)は、このフィルタ部30で除かれることにより、取り扱うデータ数の減少に伴う処理効率や処理速度の向上等が図られ得る。
【0067】
なお、上述のフィルタ部30による処理を施すに際しては、形態素解析で得られた各形態素について、その活用形を考慮して可能な限り原形表示に変換しておくことが望ましい。原形変換することによって、単なる文体や言い回しによって形態素に相違があった場合でも、実質的に同一の「語」として扱うことが可能となることから、単なる言い回しで異なる実質的に同一の「語」が異なるものと認識されてフィルタ部30で除かれてしまったり、徒に「語」の数が多くなってしまうことも避けられ得て、一層効率的な解析処理が実現可能となるのである。
【0068】
また、上述の品詞選択部28やフィルタ部30で選択されなかった形態素は、解析に使用することはないので、データ記憶部24から削除しても差し支えない。そして、最終的に選択された形態素は、評価対象物との関連付けをもって、データ記憶部24に記憶せしめられることとなる。
【0069】
また、行列演算部32においては、上述の如くして最終的に選択された形態素における、複数の評価対象物の相互間での相関関係に基づいて、複数の評価対象物と多数の形態素の関連性を全体として表わす多次元行列としての関連行列が形成されるようになっていると共に、得られる関連行列が、適数の次元軸を座標軸としてもった座標系で表わされる表現空間上の表示行列に変換されて、この表現空間としての座標系において、複数の評価対象と多数の形態素が、それらの質的情報の関連性の少なくとも一部を、座標系における物理的な位置関係に置き換えた状態で、表示されるようになっている。
【0070】
ここにおいて、関連行列は、極めて多くの特徴次元軸を有する高次なものであることから、これを関連性の本質を変更しないで低次の次元軸を有する表現空間、好ましくは2次元又は3次元の表現空間に射影するために、例えば特異値分解(S.V.D.)を利用した手法が有利に採用される。
【0071】
具体的には、例えば、関連行列は、評価対象物を特定し得る画像データを列項目とすると共に、それら画像データについて選択された形態素の全てを行項目とし、各画像データに関連付けられた形態素の度数分布の各値を要素として得られることとなる。即ち、この関連行列は、評価対象物の数に対応する画像データの数だけの列の数と、前述の如くして取得された全ての形態素の種類の数だけの行の数とをもって生成されるのである。なお、かかる関連行列では、行項目と列項目を交換しても解析結果に影響はない。そして、かかる関連行列を次元圧縮するに際しては、先ず、関連行列をI行J列の行列:Xとすると、下式の如く、この関連行列:Xの各要素:xijを、その総和:Nで除した要素:pijを有するプロファイル行列:Pを求める。
【0072】
【数1】
【0073】
次いで、このプロファイル行列:Pの各要素:pijに対して、下式の如く、カイ自乗変換と類似の処理を施すことにより、該プロフィール行列の各要素を期待値に対する乖離度に基づいて変換した要素:aijを有する処理行列:Aを得る。
【0074】
【数2】
【0075】
そして、このようにして得られた処理行列:Aに対して、特異値分解を施す。即ち、上述の如き前処理によって得られた行列を、I行J列の処理行列:Aとすると、この処理行列:Aは、下式のように特異値分解することが出来る。
A = UDVT
なお、UはI行k列の直交行列であり、Dはk行k列の対角行列であり、VはJ行k列の行列であり、添字:T は転置行列を示す。また、この式において、行列U uおけるI次元のk個の列ベクトルを(u1 ,u2 ,u3 ・・・uk )とし、行列VにおけるJ次元のk個の列ベクトルを(v1 ,v2 ,v3 ・・・vk )とすると共に、行列Dの対角要素(d11,d22,d33・・・dkk)を、d1 ≧d2 ≧d3 ≧・・・≧dk とすると、下式が成立する。なお、行列Dの対角要素は、d1 ≧d2 ≧d3 ≧・・・≧dk >0となっており、また、そうすることは容易である。
A = d1 Q1 +d2 Q2 +d3 Q3 +・・・+dk Qk
但し、QS = uS vS T (S は、1〜kの整数)
従って、上式から、行列:Aが行列Qの線形和となり、大きな特異値に対応する固有ベクトルが行列:Aをよく表すこととなる。それ故、特異値を上位から適当数だけ取り込むことによって、前述の如き多数の特徴次元数を有する高次の関連行列から、特徴次元数が少ない表現空間に変換せしめた低次の表示行列:U* ,V* を得ることが出来るのである。
【0076】
そして、このようにして求められた表示行列のデータは、演算結果記憶部34に記憶せしめられる。
【0077】
さらに、このようにして得られた表示行列には、必要に応じて各次元軸方向の相対的な重み付けの調整による後処理が施される。具体的には、適当な次元数で得られた表示行列:U* ,V* に対して、各次元軸方向に適当な重み付けがされた行列を乗算することによって、調節される。例えば、かかる重み付けとしては、各次元軸に対応する特異値が好適に採用される。
【0078】
また、表示部36においては、行列演算部32で得られた表示行列に基づいて、画像データ入力部18で入力された各画像データと、言語データ入力部20で入力された言語データを形態素解析部26で処理した後に品詞選択部26およびフィルタ部30で選択することによって得られた語(形態素)が、それら各画像データと語の関連性を反映する表現空間上の位置として、表示されるようになっている。その表示は、例えば、上述の特異値分解で次元圧縮した表示行列における各次元軸を座標軸とする所定次元の直交座標系において、表示行列の各要素として表わされる座標値で特定される位置に各画像と各語(形態素)を視認可能に表示せしめることによって行なわれる。また、表示装置としては、2次元または3次元の直交座標系を視認可能に表示し得るプリンタやディスプレイ等が適宜に採用される。また、表示するに際しては、座標系上で略全ての画像データと語が一覧できるようにすことが望ましい。
【0079】
更にまた、寄与量演算部38は、各次元軸に関して各変数(画像データおよび語)によって説明される分散の割合を示す絶対寄与の値を求めると共に、各変数(画像データおよび語)の分散のうち各次元軸によって説明される割合を表す相対寄与の値や、特定次元までの相対寄与の合計値(累積寄与)を求めるようになっている。そして、この寄与量演算部38で求められた絶対寄与と相対寄与の各値は、各変数(画像データおよび語)と関連付けられて、寄与量記憶部38に記憶せしめられるようになっている。なお、かかる寄与量記憶部38は、データ記憶部24と共通の装置で構成されていても良い。
【0080】
そして、次元軸指定部40では、特定の次元軸を指定することにより、表示部36で上述の各変数(画像データおよび語)を布置して表示するに際して、演算結果記憶部34に記憶された絶対寄与または相対寄与の当該指定した次元軸における各値を用いて、表示部36で表示される各変数の表示倍率が変更設定されるようになっている。なお、表示倍率の変更設定は、寄与量の値に比例するように行なうことが望ましく、それによって、座標系に布置された各変数を見るだけで、視覚をもって、各変数を特定することが出来ると同時に、当該変数における特定の次元軸に関する寄与量の程度を容易且つ速やかに認識することが可能となる。
【0081】
さらに、第三変数演算部42は、第三変数入力部22で入力された第三変数のデータをデータ記憶部24から読み出し、前記表示行列によって特定される表現空間上に射影してそのベクトルを求めるようになっている。そして、この第三変数演算部42で求めた結果に基づいて、表示部36により、第三変数が、表現空間上、延いては座標系において、前述の各変数と併せて視認可能にベクトル表示されるようになっている。
【0082】
ここにおいて、第三変数の表現空間上への射影は、例えば以下のようにして行うことが可能である。即ち、第三変数のベクトルをFと置き(「F」は、J次元のベクトルで、要素Fj はj番目の対象物の第三変数の値)、表示行列における各形態素の座標行列をG(「G」は、I行,k列の行列、kは座標軸数)と置くと、第三変数のk軸目の座標:Tk は、次の式で表すことが出来る。
【0083】
【数3】
【0084】
また、参照ベクトル演算部43は、参照用データ入力部23で入力された参照対象物のデータをデータ記憶部24から読み出し、前記表示行列によって特定される表現空間上に射影してそのベクトルを求めるようになっている。そして、この参照ベクトル演算部43で求めた結果に基づいて、表示部36により、参照対象物が、表現空間上、延いては座標系において、前述の各変数と併せて視認可能にベクトル表示されるようになっている。
【0085】
ここにおいて、参照対象物の表現空間上への射影は、上述の第三変数の射影と同様にして、例えば以下のようにして行うことが可能である。即ち、参照対象物のベクトルをEと置き(「E」は、I次元のベクトルで、要素Ei はi番目の語(形態素)の出現回数)、表示行列における各語(形態素)の座標行列をG(「G」は、I行,k列の行列、kは座標軸数)と置くと、参照対象物のk軸目の座標:Sk は、次の式で表すことが出来る。
【0086】
【数4】
【0087】
次に、図1及び図2に示されている如き構成をもって、例えば汎用のコンピュータで構成された本実施形態の解析装置を用いて、評価対象物としての「女性用洋服デザイン」を解析する一連の処理の手順を、本発明の第一の実施形態として、図3〜5に示されたフローチャートに従って説明する。
【0088】
先ず、開始が指示されて解析処理がスタートすると、コンピュータは、ステップ:S1において、全てのデータを初期化する。続いて、ステップ:S2において、評価しようとする女性用洋服デザインに関する各データを、順次、取得して記憶手段に記憶する。かかるデータの取得は、各別の女性用洋服デザインについての画像データと言語データおよび第三変数を、それぞれ、コンピュータのオペレータに入力させることで行なうことが可能である。
【0089】
具体的には、本実施形態において取得するデータとしては、▲1▼消費者が最も気に入っている洋服のデザインを撮影した画像データと、▲2▼当該消費者が当該洋服を最も気に入っている理由を自由に述べた一つ又は複数の文章からなる言語データと、▲3▼洋服デザインの嗜好に関係すると考えられる、判断尺度が明確な定性的乃至は定量的な第三変数データが、採用される。なお、▲2▼の言語データは、評価対象物としての洋服デザインの質的情報を、少なくとも解析主体に対して客観的に表わしたものである。そこにおいて、かかる言語データは、複数の消費者の間で、全体の長さが極端に異ならないように、最小文字数と最大文字数を制限することが望ましい。また、▲3▼の第三変数データは、一つに限ることはなく、何種類を採用しても良い。
【0090】
因みに、本実施形態におけるデータの入力画面と、そこに実際にオペレータが入力した各種データを、コンピュータモニタ上での表示画面の形態で、図6に示す。本実施形態では、一つの画面上に、▲1▼画像データと、▲2▼言語データと、▲3▼第三変数データが、同時に具体的に視認可能に表示されるようになっており、画面上で画像データを見ながら、キーボード等から言語データや第三変数データを入力させることにより、それら▲1▼,▲2▼,▲3▼の各データの組み合わせの入力ミスによる相違が防止されるようになっている。
【0091】
そして、ステップS3で、全ての洋服デザインにおける▲1▼,▲2▼,▲3▼の各情報の取得を、例えば上記画面上に表示された「EXIT」ボタンの押圧をマウスポインタによるクリック操作で確認したら、必要データの取得と記憶領域への記憶を完了する。
【0092】
続いて、例えば画面上に「解析開始」を記したボタンを表示し、このボタンの押圧をマウスポインタによるクリック操作で確認したら、続くステップ:S4以降の解析工程に移行し、その後は、記憶手段に記憶した上記▲1▼,▲2▼,▲3▼の各データに基づいて自動的に解析処理を実行する。
【0093】
かかる解析処理では、初めに、ステップ:S4において、前記▲2▼の言語データだけを対象として、形態素解析と原形変換を行なう。かかる形態素解析は、公知の技法であることから詳細理論の説明は割愛するが、▲2▼の言語データの全てを、自然言語の最小単位である形態素に分解する。具体的には、例えば「パープルの縁取りが好きです。」という文章からなる言語データを取得したとすると、これを「パープル」,「の」,「縁取り」,「が」,「好きです」,「。」の6つの形態素に分解する。また、形態素解析に際しては、各形態素について、その活用原形情報と品詞情報も得ることが出来る。例えば、活用原形情報としては、「好きです」の原形表示として「好きだ」が得られることとなり、また、品詞情報としては、「パープル」について「普通名詞」、「の」について「名詞接続助詞」、「縁取り」について「普通名詞」、「が」について「格助詞」、「好きです」について「形容詞,ナノ形容詞,デス列基本形」、「。」について「句点」が得られる。そして、形態素解析で分解した全ての形態素を、上述の品詞情報や活用原形表示情報も付加した状態で、前記▲2▼の言語データと異なる記憶領域に記憶する。
【0094】
その後、ステップ:S5〜9において、品詞に基づく形態素の選択処理を実行すると共に、ステップ:S10〜12において、出現回数(使用頻度)に基づく形態素の選択処理を実行する。
【0095】
品詞に基づく形態素の選択処理に際しては、初めに、ステップ:S5で、外部からのオペレータ入力により、解析処理に際してデータとして採用しない品詞名を取得する。即ち、助詞や接続詞、句読点といった、質的情報としての記述内容に直接関係しない語(形態素)は、本実施形態の解析目的であるデザインの嗜好に関しても、殆ど情報をもたないことから除外することが望ましい。なお、かかる助詞や句読点は、全ての評価対象物に関する言語データにおいて略同程度に含まれることから、削除しなくても特異値分解による解析に大きな影響はないが、ノイズとなる可能性もあることから、解析精度の向上のためにも除外して、データとして採用しないことが望ましい。
【0096】
そして、ステップ:S6〜8において全ての言語データから得られた全ての形態素を対象として選別処理を実行して、ステップ:S5で採用しないものとした品詞を除いた形態素(語)だけを、解析処理に際して用いられる関連行列作成用の「語」として選択し、それらを前記▲2▼の言語データと異なる記憶領域に記憶する。
【0097】
続いて、ステップ:S9において、上記ステップ:S8で関連行列作成用の語として選択されて記憶された全ての「語」を対象としてスキャンし、各画像データに対応付けられた各言語データにおいて各「語」がそれぞれ何回出現するかの個別カウント値をとったリストを自動で生成する。併せて、各画像データに対応付けられた各言語データをスキャンし、上記ステップ:S8で関連行列作成用の語として選択されて記憶された各「語」が、それぞれ、幾つの画像データに対応付けられた言語データにおいて出現するかの全体カウント値を取得する。そして、関連行列作成用に選択された「語」のカウント値として、それら各言語データ毎の個別カウント値と、全体カウント値を、記憶領域に記憶する。
【0098】
さらに、出現回数に基づく形態素(語)の選択処理は、上述の品詞に基づく形態素の選択処理において選択して記憶した関連行列作成用の語の全てについて、ステップ:S10〜12の処理を行い、全ての対象とする関連行列作成用の語について、出現回数(使用頻度)に基づく形態素の選択処理を実行する。
【0099】
具体的には、上述のステップ:S8において品詞に基づく形態素の選択処理によって関連行列作成用に選択された全ての「語」について、上述のステップ:S9で取得した全体カウント値に基づき、ステップ:S11において全体カウント値が3以上であるか否かを判断し、もし全体カウント値が3に満たなければ、当該「語」を、関連行列作成用の語から除外する。即ち、本実施形態のように洋服デザインについてのデータ取得を10以上の画像データ(評価対象物としての具体的な洋服デザイン)を対象として実施すると、前記ステップ:S4で形態素解析を行なった結果得られる全形態素(語)は、一般に数千個の数に至るものと考えられるが、特定の対象物のみにしか出現しない「語」は、後述する特異値分解を利用する解析手法において解析上の意味を殆ど持たないと考えられるのであり、現実的には、解析精度の確保と併せて、装置の演算処理能力やメモリ領域等を考慮して、1又は2の対象物の言語データにしか含まれていない「語」は、関連行列作成用の語から外して、3つ以上の対象物の言語データに含まれている「語」だけを対象として以下の解析処理を行なうことが望ましい。
【0100】
而して、前述のステップ:S4で形態素解析を実施した結果得られる数千の形態素(語)は、その後、上述の如き原形変換による語の統合や、品詞名による選別、更に出現回数による選別を経ることによって、十分に少なくすることが可能であり、例えば数百のレベルの数にまで下げることの出来る場合も多い。
【0101】
このようにして統合や選択を経て取得した関連行列作成用の「語」を用いて、続くステップ:S13において、関連行列を作成して、この関連行列を記憶素子としてのメモリ上に記憶する。かかる関連行列は、その具体例が図7に示されているように、全ての画像データを列項目とし、ステップ:S4〜12での形態素の前処理で選択された形態素(語)を行項目とすることによって、行数が選択された形態素の総数とされると共に、列数が画像データの数とされた巨大な行列である。また、この関連行列の各セルの要素は、そのセルが属する行の形態素を、そのセルが属する列の対象物(画像データ)に対応する言語データ中に、幾つ含むかの頻度(出現回数)を表わしたものである。
【0102】
続いて、このようにして得られた関連行列に対して、ステップ:S14において、前述の如き行列演算による特異値分解(S.V.D.)を実施し、特異値と併せて、寄与量(絶対寄与および相対寄与)を求める演算を行なう。即ち、この特異値分解の演算処理によって、多数の特徴次元数を有する高次の関連行列(図7参照)を、特徴次元数が少ない表現空間に変換せしめた低次の表示行列を得ることが出来るのである。因みに、本実施形態において、図7に示されている如き高次の関連行列に対して特異値分解を行ない、互いに直交する第1軸(X軸),第2軸(Y軸),第3軸(Z軸)の3つの次元軸(主軸)を持つ三次元の表現空間に次元縮小した結果を、図8に示す。なお、図8中、「相対周辺度数」は、原データ行列としての関連行列の周辺分布を示しており、所謂massである。また、各次元軸(X軸,Y軸,Z軸)の欄に記載された「座標」は、各アイテム(画像データとしての洋服1〜19および言語データとしての多数の「語」)を、特定の表現空間上に射影した場合の各主軸上の座標値を示す。
【0103】
すなわち、ステップ:S14での特異値分解の結果から表示行列を得るに際しては、ステップ:S15において、何れか少なくとも一つの次元軸(X軸,Y軸,Z軸・・・)の指定情報を、コンピュータのオペレータ入力等で取得し、その後、ステップ:S16において、当該指定された次元軸に相当する座標値を要素とする行列として、表示行列を作成する。これにより、例えば、X軸とY軸からなる2次元直交座標系からなる表現空間(平面)上に各アイテムを布置するための表示行列は、各アイテムのX座標とY座標の各値を要素とする行列として与えられることとなる。
【0104】
従って、かかる表示行列に基づいて、必要に応じて後述するステップ:S17による第三変数の参考表示ベクトル演算を経た後、ステップ:S18において、指定された次元軸からなる座標系を表現空間として、かかる座標系に各アイテムを布置することによって、解析結果を視認可能に表示することが出来るのである。そして、このようにして関連行列の特異値分解の結果得られた表現空間である低次元の固有空間(入力行列の固有構造を最も明確に示す空間)における各次元こそが、評価対象物たる洋服デザインの嗜好という「質的情報」を計測するための最適の尺度(ものさし)となるのである。
【0105】
なお、特異値分解を利用して得られた固有空間において、上述の尺度は1本ではなく、適数本存在している。但し、これら各尺度には、評価対象物の質的情報を反映する能力に関して差があり、その能力の大きさが、各次元毎の特異値として算出される。従って、特異値分解の結果において、特異値の大きいものから順に、第1特異値,第2特異値・・・,第n特異値と並んでいるので、上から順に大きい適数のものだけに限定して注目すれば良く、それによって次元圧縮が達成される。
【0106】
特異値分解の結果としては、上記の「尺度」が得られるだけではなく、同時に、その各尺度で測定した場合の、「各画像データ(つまり列要素)」の測定値と「各語(つまり行要素)」の測定値が、それぞれの尺度毎に(各次元毎に)計算されて得られるようになっている。従って、すべての「画像データ(つまり列要素)」と「語(つまり行要素)」を、表現空間上で、各次元ごとの測定値に応じて、各次元の尺度の上に配置することができる。これにより、消費者が評価対象である洋服デザインの嗜好を自由に言語で表現した文章(つまり質的情報)の奥に潜む数理構造の特異値分解により、当該質的情報を客観的に評価するために最適の「ものさし」(尺度)が、自動的に完成したわけである。即ち、「質的情報」である対象物を「ものさし」で測定するという「計量化」ができたのである。
【0107】
また、特異値分解の結果において多次元の尺度が得られていることから、質的情報の反映量を表わす値が最も大きい第1特異値に関わる次元の尺度をX軸、次に大きい第2特異値に関わる尺度をY軸にとって2次元空間を構成することにより、或いは、その次に大きい第3特異値に関わる尺度をZ軸にとって3次元空間を構成することにより、データ行列の背後に潜む関連構造から計算された「数理的に情報を表わす尺度」の最も有利な態様を得ることができる。
【0108】
なお、ステップ:S18における解析結果の表示形態は、要求される各種の態様で行なうことが可能であり、例えば、図9に示されているように、二次元の直交座標系(横軸=X軸,縦軸=Y軸)を採用し、第1特異値及び第2特異値における座標値で各アイテムを配置せしめて、それを視認できるように、印刷したりモニタ表示することによって、結果表示物とされ得る。その具体例を図9及び図10に示す。
【0109】
そこにおいて、図9の結果表示物において、評価対象物の質的情報を表わす言語データは「着心地」,「柄」,「色」などの情報をもった語(形態素)で表わされていることから視覚的に認識することが可能であるが、評価対象物を特定する画像データが「洋服1」等として、質的情報を表わさない文字で表示されていることから、視覚的に把握することが困難である。
【0110】
これに対して、図10に示される結果表示物は、「洋服1」の位置には、直接「洋服1」の洋服そのものの画像(画像データ)を表示したものである。このように結果表示物において画像そのものを表示することは、前記ステップ:S2で評価対象物の画像データを取得,記憶していることから、容易に実現可能である。なお、画像は、2次元の表示面上で上下左右に広がり面積があるが、その中央の位置が、その画像の座評点と一致するように描画位置が設定されている。また、図10では、特許出願における図面の書式上の制約によりモノクロのイラスト画であるが、実際の装置では、カラー写真と略同等のクオリティのカラー画像とすることが可能であり、それによって、評価対象物である洋服デザインを、視覚を通じて一層容易に、且つ的確に把握することが出来る。
【0111】
そして、このようにして出力された結果表示物を観察することにより、明確な尺度のなかった万別の洋服デザインについて、例えばX軸やY軸という、数理的客観性のある尺度が、認識され得るのである。なお、以下の説明では、図10に布置された各洋服デザインの画像は、図9に示された洋服番号で特定して説明する。
【0112】
具体的には、先ず、図10に示された結果表示物(実際にはカラー画像図)を見ると、右上の「洋服3」「洋服6」「洋服12」の3つは、デザインに強い共通点のあることが容易にわかる。また右下の「洋服5」「洋服14」「洋服8」の3つも、極めて似通っていることがわかる。実際のカラー写真品質の印刷では、3者のスカートの質感が非常に似通っていることが容易に認識できるのである。更に、左側の「洋服11」「洋服2」「洋服4」の3つにも明らかな共通点があり、左側に「スラックス(ズボン)」が並んでいるのに対して、右側から中央部にかけては「スカート」が並んでいることがわかる。即ち、図10に示された結果表示物の全体を見渡すと、共通の特徴をもつ洋服が、お互いに近傍に配置されており、確かに「デザイン」に関する「何らかの尺度(ものさし)」によって、順位つけられて並べたものであることを明確に認識できるのである。
【0113】
そこで、さらに詳しく「第1の尺度」であるX軸が、どのような「ものさし」を構成しているのかに注目してみる。全ての「洋服デザイン(即ち、列要素)」と「語(即ち、行要素)」を、この第1の尺度で測定した結果が、X座標である。つまり、「洋服デザイン」も「語」も、全ての位置を、この「第1の尺度」で計量することが可能なのである。ここにおいて、前述の如き特異値分解を利用した処理により第一の尺度を作るためには、全ての「洋服デザイン」と「語」が関係しているが、しかしながら「洋服デザイン」や「語」の全てが、この「第1の尺度」の成立に同じ量の影響を与えたのではない。中には、モノサシの「成立」自体には、ほとんど関与していないものもある。なお、尺度を作ることと、作られた尺度で測定することは、互いに別であり、たとえ尺度の成立に関与が小さいものも、成立した尺度で値を測定することは、尺度成立への関与の大小に拘わらず行なうことが出来る。
【0114】
この尺度の成立への関与を表わすものが、特異値分解に伴って求められて、図8に記載されている絶対寄与量である。即ち、各「洋服デザイン」や「語」が「第1の尺度であるX軸」の成立にどの程度の影響を与えているかについては、「第1軸に関する絶対寄与量」として求められており、また同様に、各「洋服デザイン」や「語」が「第2の尺度であるY軸」や「第3の尺度であるZ軸」への成立にどの程度の影響を与えているかについては、「第2軸に関する絶対寄与量」や「第3軸に関する絶対寄与量」として求められている。従って、これら各「洋服デザイン」や「語」の各軸に対する絶対寄与量の大きさを見れば、各尺度(ものさし)がどのようなものであるのかを、数理的な裏づけをもって確認することが可能となる。
【0115】
また、結果表示される画像を、何れかの指定された次元軸(X軸またはY軸)に関する絶対寄与量を視認可能に表現するように自動再編成する機能を、装置に持たせることも可能である。
【0116】
具体的には、表示したい絶対寄与量の対象となる次元軸を、コンピュータのオペレータ入力で変更指定する次元軸指定の変更情報を取得し、かかる変更情報に基づいて、各アイテム(洋服デザインおよび語)の表示倍率を、先に指定されていた次元軸の絶対寄与量に基づく値から、変更指定された次元軸の絶対寄与量に基づく値に変更して、各アイテムの表示大きさを変更することによって行なわれる。
【0117】
これにより、例えば、図11は、X軸に対する絶対寄与量に基づいて各アイテムの表示倍率を設定したものであり、図12は、Y軸に対する絶対寄与量に基づいて各アイテムの表示倍率を設定したものである。実際には、指定する次元軸をX軸からY軸に変更すると、変更と同時に、モニタの画面上に表示されていた図11の画面が、図12の画面に変更することとなる。これにより、基準とする次元軸を変更したものを視覚的に比較することが出来るのであり、その結果、X軸の生成に大きく寄与しているアイテムとY軸の生成に大きく寄与しているアイテムを、それぞれ、一層容易に認識することが可能となり、X軸およびY軸の尺度の意味が、より認識し易くなる。
【0118】
即ち、図11に示されたX軸に対する絶対寄与量を考慮した表示と、図12に示されたY軸に対する絶対寄与量を考慮した表示とを比較すると、各アイテムの表示位置は全く同一で変化していないが、各アイテムの表示の「大きさ」が、対応する軸に対する「絶対寄与量」を反映するように拡大/縮小変化して表示されている。即ち、表示する際に考慮される次元軸に対する絶対寄与の大きいものは「大きく」、絶対寄与の小さいものは「小さく」、なるように、各画像の大きさと、語の表示フォントサイズが自動的に変化するようにされているのである。
【0119】
そこにおいて、基準とする次元軸を変更した際の各アイテムの表示大きさの変化を一層認識し易くするために、表示画面としてCRTディスプレイ等を用いて結果表示の変化をアニメーション表示で行なうことも考えられる。例えば、絶対寄与量の表示指定が為されずにCRTディスプレイ装置の画面に、図10に示された図が表示されている状態下で、絶対寄与量の表示指定をX軸とする指定情報が外部から入力されると、同じ大きさで表示されていた各アイテムが直ちに図11の表示に変化するのではなく、略1秒〜数秒程度の時間をかけて次第に大きさが変化して図11の表示となるように、アニメーション表示することが可能であり、それによって、X軸の尺度の意味が、より認識され易くなる。
【0120】
因みに、X軸の絶対寄与の大きさを考慮して各アイテムの表示倍率が設定された図11において、大きな文字の「語」だけに注目すると、図中の右側では「デート/会社/彼/明るい/可愛い」などが大きくなっているのに対して、左側では「脚/長い/短い/シンプル/楽だ/着心地」などが大きくなっており、右側が「相手に見られることを意識した洋服」であるのに対して、左側は「自分にとって着心地のよい洋服」であることが簡単に読み取れる。また、図中の右側で大きく表示された洋服は「スカート」が多く、左側で大きく表示された「パンツ・ルック(ズボン)」と、対照的であることも、見るだけで認識できる。そして、このことから、どうやら「相手に見られることを意識した」場合に「スカート」が選ばれることが多く、逆に、相手を強く意識せず、自分の着心地を優先する場合に「パンツ・ルック(ズボン)」が選ばれるようであり、この「相手を意識してのスカート」対「自分を意識してのパンツ・ルック(ズボン)」という対立概念が、X軸として表わされた第1の次元軸が尺度として持つ意味の一つであることがわかる。この意味において、X軸で表わされる尺度は、「相手を意識したり、スカートを選んだりするほど正の大きい値」を測定値として返し、「自分を意識したり、パンツ・ルック(ズボン)を選んだりするほど負の値(マイナス値)」を測定値として返すようなモノサシであることがわかる。ちなみに中央の原点では「ゼロ」を返すこととなる。
【0121】
また、特許図面ではわかりにくいが、高品質のカラー画像で結果表示を見ると、右側には「ニット系」のやわらかい、ソフトな感じの洋服が多いのに対して、左側では「革」や「ジーンズ」などの固めの素材の洋服が多いことも分る。「語」の表示でも「ニット」は右でやや大きく、「革」は左側でやや大きく表示されている。このことからも、「語」の布置位置と、「画像データ」の布置位置には、明らかな対応関係があることが理解され得る。
【0122】
そして、上述の如き検討結果からも明らかなように、X軸を尺度として各洋服デザインを測定した値は、デザインそのもののパターンが測定されているというより、そのデザインを求める消費者の意識レベルを含めて測定したものであると考えるのが妥当であることが理解される。即ち、X軸で表わされた尺度は、これらの複数の要素が絡み合った、一言では言い表せない概念の対立を反映した「質的な尺度(ものさし)」であるが、それを使って実際のデザインを表わす「画像」や「語」のそれぞれに、このものさしを当てて値を測定できるという「量的なモノサシ」でもある点が、重要であり、大きな技術的効果を有するのである。
【0123】
しかも、この「尺度」を生成する上述の如き一連の処理工程も、その「尺度」で各アイテムを測定して値を得る処理工程も、人間の関与を受けずに自動的に装置内で行われている点も重要である。装置内では、デザインを撮影した「画像データ」は、単に表示のために格納されているだけであり、その画像ファイルの内容自体は、尺度の生成に直接関係していないし、「語」の文字も、単にラベルとしてメモリに格納されているだけで、尺度の生成に全く関与していないのである。解析処理の対象となっているのは、行列の数値だけであり、それが何の数値であるかについては解処理において知ることはできないし、また、そもそも、その必要がない。因みに、特異値分解の数式は、シュレジンガーによる波動方程式と、略同じであり、量子力学的な数理を応用することで、文章そのものではなく「その奥の構造」を解析できているのである。そして、このような「尺度(ものさし)」は、実は、画像データで示されたデザインの洋服を購入し、その選択理由を自然文で記述した対象者本人にさえ、明確に意識されていない場合が多い。
【0124】
また一方、Y軸の絶対寄与の大きさを考慮して各アイテムの表示倍率が設定された図12において、大きな文字の「語」だけに注目すると、図中の上方向の「落ち着いた」イメージと、下方向の「カジュアル」なイメージの対立が、高品質のカラー画像で結果表示を見ると容易に理解できる。また、上方向が「大人らしさ」、下方向が「若々しさ」に対応しているようであり、この「第2の尺度(ものさし)」は「年令」にも関連があるようであり、正の値が大きいほど年令の高い大人のイメージを洋服で表現しようとしているように読み取ることが出来る。この「年令イメージ」は、実際の年令を解析に考慮していないことからも明らかなように、洋服を選んだ本人の年令とは必ずしも一致せず、「(現実より)大人っぽく」見られたい、とか「もっと若く見せたい」というような、ファッションを通じて表現したい希求イメージとしての年令である。実際の年令なら「あなたの年令は何歳ですか」という質問で、簡単に定量的に収集可能であり、それでは洋服デザインの評価に際して有効とは言い難い。しかし、この「見られたい年令イメージ」のような「質的変数」は、直接測定することは極めて困難であるが、本発明の特徴は、この「見られたい年令イメージ」のような、直接定量的に測定困難な概念を、洋服選択理由の自然言語文のなかに潜む形態素の同時出現パターン行列の特異値分解により、間接的に取得することを自動化した点にあり、更に、その概念を定量化するための数理的な「尺度」までも自動的に構成できる点にある。
【0125】
さらに、本実施形態では、前述のステップ:S17において第三変数の参考表示ベクトルを演算し、この第三変数を、必要に応じて、図10〜12に示された結果表示に重ね併せてベクトル表示することが出来るようになっている。第3変数(参考表示変数)とは、特異値分解の対象とは別の、参考表示の為の変数であり、本実施形態では、前述のステップ:S2において、画像データや言語データと共に、図6に示された画面表示における下欄部分に示されているように表示されて、コンピュータのオペレータ入力が促されるようになっている。
【0126】
かかる第三変数は、前述の如く、評価対象物である「洋服デザインの嗜好」という情報の中から解析のために参考とすることが有用であろうと考えられる変数を適宜に選択したものであって、各評価対象物に固有の情報を表わし得る客観的な情報であり、具体的には、本実施形態では、図13に示されているように、第三変数として各消費者の年令と、月平均の洋服支出金額、およびA〜Gの7つのイメージが異なる洋服モデル写真を示してその中から選択させた好みの写真の符号を、採用した。なお、これらの第三変数は、何れも、特異値分解の対象となる図7に示された関連行列と「列」の次元が一致するベクトル(参考表示ベクトル)とされている。
【0127】
このような第三変数のベクトルは、特異値分解の対象となるものではないが、特異値分解が完了した後、特異値分解の結果自動生成された尺度(次元)で構成される表現空間に、このベクトルを射影表示することで、かかる尺度と第三変数のベクトルとの間に、どのような相互関係にあるかを、客観的、数理的に把握することが可能となるのであり、それによって、得られた尺度の意味をより具体的にイメージすることが可能となる場合もある。
【0128】
具体的には、例えば、各対象者の「そのデザインが好きな理由の自由作文」とは別に、「実年令」を質問しておけば、図13における行列の一番上の行に示されているように、対象者数を次元とするベクトル(年令の整数値が対象者数分並んだベクトル)を取得することができる。この「実年令」ベクトルは、特異値分析の対象となる行列の「列」次元数と、次元数が一致することから、このベクトルを特異値分解の結果自動生成された尺度(次元軸)で構成される表現空間に射影表示することが出来るのである。
【0129】
また、同様にして、例えば、各対象者の「ファッションに対する毎月の出費額」を質問しておけば、図13における行列の上から二番目の行に示されているように、対象者数を次元とするベクトル(出費額を示す数値が対象者数分並んだベクトル)を取得することができるのであり、この「出費額」ベクトルも、上述の「実年列」ベクトルと同様に、洋服デザインを表わす「画像データ」や「語」の各アイテムが布置された表現空間に対して、射影表示することが出来るのである。
【0130】
因みに、本実施形態において、入力データとしての評価対象物のデータおよび第三変数データと、それから得られる関連行列(多次元行列)および第三変数行列の関係を、図14に示す。かかる図14からも、第三変数行列が、何れも、洋服デザインの数:Yと同じだけの列要素を持つ1行のベクトルとなることが明らかである。
【0131】
また、第三変数の理解を一層容易とするために、第三変数として上述の「年令」を示すベクトルと、「支出額」を示すベクトルを、前述の特異値分解による解析結果を表わす表示行列を2次元の座標系に結果表示せしめた画面上に、それぞれ、射影表示せしめたものを、図15に示す。
【0132】
かかる図において、先ず、実年令ベクトルに着目すると、当該ベクトルは左上方向を向いていることから、下方向より上方向にある洋服の方が、実年令の高い人に好まれていることが確認できる。また、若干ではあるが、実年令ベクトルは左方向を向いており、右の洋服を好む人より、左の洋服を好む人の方が、若干、年令の高いことも示している。しかし、実年令ベクトルの方向は、基本的には、「左向きより、上向き」の程度が高く、「上下方向」つまり「第2の尺度(ものさし)」との関係の方が強いことが分る。なお、この「実年令ベクトル」と「第2の尺度」のなす角度の余弦(cos )が、「実年令ベクトル」と「第2の尺度」の相関係数となるように計算されている。従って、全く同一方向を向いていれば、完全な相関がある(ゼロ度の余弦は「1」であり、相関係数の「1」とは、完全な正相関を意味する)一方、全く逆方向を向いていれば、完全な逆相関であり(180度の余弦は「−1」であり、相関係数の「−1」とは、完全な負の相関を意味する)、90度の角度であれば、無相関(90度の余弦は「0」であり、相関係数「0」は無相関)である。つまり、実年令は、第2の尺度(希求イメージとしての年令)と、確かに相関が高いが(「実年令ベクトル」と「第2の尺度」のなす角度が小さいので)が、全く同一のものでもないことが、数理的に確認できるのである。そして、この確認により、先に述べた「第2の尺度」が「希求イメージとしての年令」であるという理解が正しいことを、別の面から再確認できるのである。
【0133】
また、図15において、支出額ベクトルに着目すると、当該ベクトルは右上方向を向いていることから、右上方向の洋服デザインを好む人は、ファッション支出が高いことがわかる。逆に、左下方向の洋服デザインを好む人は、ファッション支出が低いこともわかる。このようにして、特異値分解によって得られた表示行列の表現空間上に、併せて、上述の如き第三変数ベクトルを射影表示することによって、「特異値分解の対象とする質的データ」と、「別の、関連しそうな第3変数」との関連も、併せて解析することが可能となるのである。
【0134】
更にまた、「第三変数」それ自体が、画像として特定されるものである場合には、第三変数の変数名等を座標系に表示する代わりに、その位置に、その第三変数を特定する「画像」を表示することも有効である。例えば、図13又は図14の「第3変数行列」中の「好きなモデル=A]から「好きなモデル=G]までの、7つの第三変数は、各評価対象物( 洋服のデザイン) の好きな理由の自然文を記述した各対象者に、「A」から「G」までの7種類の写真パネル(ファッションモデルが、洋服を着用した状態で撮影された写真)を提示して、その中ではどれが1番好きか、を尋ねた結果である(選択したモデル写真に「1」、選択されなかったモデル写真には「0」の値を与えている)。これらの第三変数データを、自動生成された表示空間内に射影表示することで、表示空間の意味を、さらに読み取り易く、また、表示空間内の情報量を更に豊かにすることができる。蓋し、モデルの洋服は、一般の消費者が実際に着用するものより、先鋭的で、方向の明確なものであることが多いことから、これら7枚の写真を、第三変数として、評価対象物である洋服デザインと併せて表示すると表示空間の意味が読み取り易くなるからである。
【0135】
そして、その場合に、「第三変数」自体が「画像として特定されるもの」である場合には、射影計算結果の各位置に、「好きなモデル=A]とか「好きなモデル=B]とかの「第三変数名」を表示するよりも、モデルAの写真やモデルBの写真「そのもの」を表示した方が、遥かに有効であることは、簡単に理解できよう。そのために、本実施形態では、入力される第三変数データとして、かかる第三変数を特定する為の画像データも、画像データ入力部18から入力できるようにされている。なお、かかる画像データは、一般に、1つの第三変数につき1 つだけ存在することとなる。また、第三変数の評価空間への具体的な射影計算式は、前述したことから、ここでは説明を割愛する。
【0136】
更にまた、上述の本発明の第一の実施形態では、「消費者における洋服デザインの嗜好」を評価等するために、洋服デザインを評価対象物として解析したが、本発明における解析対象は、洋服デザインに限定されるものでなく、前述の如く、製品のデザインなどのように本来数値で一意的且つ定量的に表わすことの出来ない質的情報を備えた各種の物が、評価対象物となり得る。
【0137】
例えば、「広告表現手法」も、本発明に従う解析方法の対象物としての質的情報を備えた評価対象物として有利に採用され得る。本発明の第二の実施形態として、「車広告表現」を評価対象物とする質的情報の解析方法について、説明する。なお、本実施形態では、解析方法の実施に際して、第一の実施形態と同様にして例えばコンピュータで構成された解析装置が採用されることから、解析装置に関する詳細な説明を省略する。また、「車広告表現」を評価対象物とする本実施形態において、画像で特定される「対象物」は、「商品としての車」ではなく、「広告表現手法そのもの」である。そこにおいて、広告において採用されている商品としての車の写真は、車広告表現の部分に過ぎず、広告におけるその他のキャッチコピーや説明文,ロゴタイプ,バックなどの広告の全ての構成要素、各フォントのサイズや書体や色などの選択および各構成要素の大小関係や位置関係などのレイアウトの仕方等までも含めて、それらの創造的な組合せによって成立しているアーティスティックな意味での広告表現(広告業界用語での「クリエイティブ表現」)自体が「評価対象物」とされる。
【0138】
そして、このような「広告表現手法」も、また、第一の実施形態で評価対象物とした洋服デザインと同様に、その情報に占める質的情報の割合が大きく、評価が困難である。即ち、工場で生産される工業製品等の場合の評価は、設計値に対する寸法誤差等のように、完全に「定量的」な基準があるから、容易に行うことが出来るが、「広告表現手法」は本質的に「質的」なものであり、担当者の個人的な能力やセンスに大きくに依存するものであることから、そこに定量的な尺度は存在せず、評価や取扱いが極めて難しくなる。
【0139】
しかし、その一方で商品の広告表現手法は、その商品を販売等する上で、極めて重要な要素であるが故に、社会での事業活動に際して極めて重要視されており、事業活動の現場での会議においても良く取り上げられる。そこにおいて、本来は「質的な情報を持つ広告表現(クリエイティブ表現)」であるが故に、客観的な量的尺度を設定することが極めて困難なのであり、従って、効率的且つ客観的な会議や打ち合わせを行うことが難しいのが現状である。
【0140】
特に、広告表現手法は、広告主の意図を的確に凝縮したものであるが、「訴求点」をそのまま直接的に訴求するのではなく、何かに「置き換え」て隠喩的に表現することが多いが故に、その質的情報の評価が、一層難しいものとなる。例えば、「走行性能」を訴求したい場合に、「走行性能が高い」という文章を入れたり、エンジンそのもののスペックや写真を入れたりするような「直接的な」表現が採用されることは少なく、それに代えて、「空や海などの自然をバックにして車を配置した構図」により、間接的に走行性能が高いことを暗示するような表現が、より訴求効果が高いものとして、好適に採用されるが如きである。また、「高級車」であることを強調したい場合も、価格を直接表示したり、「これは高級車です」というような直接的な表現をすれと、却って高級感が打ち消されてしまうこととなり、逆に「銀色のボディー色の車を黒バックの前に配置する」というような広告表現の方が、一層高級感を抱かせることが出来るが如きである。
【0141】
そこで、「車の広告表現」を評価対象物とした本実施形態においては、その画像データとして「広告」そのものを撮影した写真等を採用する一方、その言語データとしては、その広告の中に文字として印刷されている文章だけでなく、「空」,「雲」,「エンジン」,「子供」,「夕焼け」などのように「言語(文字)」としては印刷されていないが、写真やイラストなどに表現された広告の構成要素であって言語で特定して具体的に認識出来る非言語情報も、それを言語情報に置換することで、かかる置換言語情報を言語データとして採用する。
【0142】
なお、非言語情報から言語情報を抽出するには、その客観性を考慮する必要がある。即ち、文字として印刷された文章(言語情報)は、客観的に取得可能であるから作業者の主観が入り込むことは基本的にないが、写真等の非言語情報から言語情報を抽出する際には、作業者の主観が混入する可能性が否定できない。かかる点を考慮して、本実施形態では、第一に、複数の人間(例えば3名から5名程度)がお互いに結果を見せ合わずに非言語情報から言語情報の抽出を行うことが出来るように、各人別の入力画面を用意し、各人が抽出した言語情報(文言や文章等)を一旦メモリに蓄積したうえで、各対象物ごと(つまり特定の広告表現ごと)に全作業者のリストアップした名詞文字列をスキャンし、同一対象物で、複数の作業者が同時にリストアップした「語」だけを言語データとして自動的に選択するような手段が採用されている。これにより、作業主体の主観の影響が大きいものと考えられる、たった一人だけがリストアップしただけの語は、解析に用いるデータからは自動的に削除されることとなる。
【0143】
また、作業者の主観の影響を抑えるために、本態様では、更に、各人が抽出した言語情報の中から名詞だけを、言語情報として選択して採用するようにしている。蓋し、一般に、画像等の非言語情報に含まれる要素を、人間がリストアップする際を考慮すると、例えば「明るい」,「力強い」,「スッキリした」等の形容詞には、作業者の主観が入る可能性が大きく、それに比して「写真や絵の中に現に《存在する》要素( モノ) に限った名詞羅列」には、作業者の主観が入り込む可能性が小さいと考えられるからである。
【0144】
しかも、本実施形態では、非言語情報から言語情報の抽出作業に際して、予め「名詞の羅列だけに限る」という限定は付さずに、任意の文言態様で自由に言語情報の抽出作業が出来るようにしている。これにより、作業者の思考に基づく制限が抽出作業に影響するのを軽減し、より客観的な言語情報の抽出を可能とすることが出来るのである。なお、自由な態様で抽出された言語情報は、例えば、それをテキスト形式で入力せしめたデータに対して形態素解析システムでチェックし、名詞以外の品詞を自動的に排除することで、そこから目的とする名詞を、容易に抽出して採用することが可能である。
【0145】
そして、図16に示されているように、このようにして取得された写真等の画像データと、自然文データ(直接に記載された文字から抽出されたデータと、非言語情報から抽出された言語情報のデータを含む)を入力データとして、前記第一の実施形態と同様に、これを図1〜2に示されている如き解析装置に入力し、図3〜5に示されている如き処理手順に従って解析処理を施すことにより、かかる入力データに基づいて多次元行列としての関連行列を生成すると共に、この関連行列を特異値分解して表示行列を求める。
【0146】
更に、このようにして得られた解析結果としての表示行列を、第一の実施形態と同様な結果表示手段によって画像表示することにより、図17に示されている如き表示結果を得た。なお、図17では、特許図面用として特別に、各広告の画像を視認可能なレベルに保ちつつ表示出来るように、各広告の大きさや表示数等を調節したものであり、実際には、大きな画面に、多数の広告が、殆ど重なることなく鮮明にカラー表示されたものとするのが望ましい。
【0147】
かかる図17に示された解析結果の表示だけを見ても、何も尺度のない状態では客観的な評価をすることが不可能である多数枚の広告が、視認するだけでなる程と思えるような評価尺度をもって、当該評価尺度による測定値を表わす位置にそれぞれ布置されていることが、容易に理解できる。例えば、左下に行くと殆ど平面的な広告表現になっているのに対して、反対の右上に行くと奥行きが強調された広告表現になっていることが、認められる。また、右下に行くとオーナーのステイタスを表わす高級感を表面に出して人工的乃至は創作物としての車を強調する広告表現になっており、左上に行くと自然(ネイチャー)を強調する広告表現になっていることが認められるのである。また、面白いことに、第1次元軸としてのX軸の尺度を考えてみると、左側では自動車を側面から描いているものが、そこからX軸の原点を通って右側に行くに従って、次第に自動車の前方から描くように自動車を描く方向(視点)が変化していることが、認められる。即ち、X軸は、自動車を描く視点の変化とも関係していることがわかるのである。勿論、このような情報は、解析用のデータとして、一切入力していないし、解析する前は、およそ何人も気づかないことなのである。
【0148】
そして、図17に示された結果からも明らかなように、本発明の解析装置によれば、表面に現われていない、内部に潜んでいる尺度(ものさし)を、それが質的評価のものさしとして極めて好ましいものであることを条件として、新たに生成し、それと同時に、各アイテムをかかる尺度で測定した結果を出力することが出来るのである。
【0149】
さらに、本実施形態では、複数の評価対象物である広告表現を上述の如き手法で解析することによって与えられた評価空間としての座標系において、参照対象物としての具体的な広告案を、かかる座標系に表された尺度に基づいて評価し、その評価結果に応じた位置に布置して表示することが出来るようになっている。
【0150】
すなわち、特定の車の広告表現を検討し決定する会議を想定し、その会議の場で本実施形態の解析結果を利用することを考えてみる。先ず、特定の車の広告表現を決定する場合には、通常、複数の「広告表現案」が提示され、その中のどれが最適かを判断することになるが、その場合に、過去に既に実際に行われた多数の広告表現(本実施形態では、図16における広告▲1▼〜広告YまでのY個の広告表現)のデータを用いて、予め、図17に示されている如き評価空間を生成する。そして、かかる評価空間への「参照対象物」として「複数の新規広告案」を射影して表示せしめるようにする。なお、これら参照対象物は、評価対象物としての複数の広告▲1▼,▲2▼,▲3▼・・・Yと同等のものであって、図16に示されているように、具体的な広告表現を特定し得る写真等の画像データと、そこに表現された言語データ、および風景等の非言語データを言語データに置換した置換言語データからなる入力データによって特定されるものであり、それらの入力データを、広告▲1▼〜広告Yと同様に、参照用データ入力部としてのデータ入力部から解析装置に入力し、得られた参照表示行列を評価空間に射影することによって、かかる評価空間上の位置を決定するようになっている。
【0151】
要するに、かかる「参照対象物」は、第一の実施形態における「第三変数」と数理的には同じものであり、両者ともに「尺度の自動生成には全く利用されないが、自動生成された尺度空間上での位置を射影計算できるベクトル」である。そして、「参照対象物」も、「第三変数」と同様に、射影すべきベクトル、即ち1行乃至は1列の行列の行または、列のどちらかの次元が、射影先の空間の生成の基になった行列、即ち評価対象物によって生成された関連行列(多次元行列)の次元数と同じである限り、前述の如き射影演算に従って、予め自動生成された尺度空間における位置を一意に射影計算することが出来るのである。
【0152】
そして、このようにして求められた評価空間上の射影位置に「広告表現案A」と「広告表現案B」を、それぞれ表示せしめたものの具体例を、図18に示す。なお、図18では、射影演算で求められたベクトルの座標位置に、A案とB案をポイント的に表示したものであるが、これらA案およびB案の位置に、それぞれ、広告表現案AおよびBの各画像データを表示せしめることも可能であり、それによって一層具体的にA,B案を、評価空間上で把握可能とすることが出来る。要するに、本実施形態において図18に示された解析装置の出力結果は、特定の車の広告として実行する予定の新しい「広告表現」の案A,Bを、それぞれの広告表現案が実際に行われた場合を想定して、その「質的表現」が「定量的」尺度で測定し、既に存在する多数の広告表現に基づいて生成された抽象的な評価空間上での「位置」として定量化した形で射影表示せしめたものものである。ここにおいて、かかる評価空間は、まさに自動車を買うことによって、消費者が得ることのできる「価値のバリエーション」の空間であるとも考えられるのであり、その意味においても、得られた出力結果である図18は、多数ある価値の中で、特定の広告表現案A,Bが、どんな価値を訴求しているのか、ということを客観的に、且つ明示的な評価尺度をもって一覧することが出来るようになっているのである。
【0153】
さらに、本実施形態では、評価空間に射影表示された広告表現案AやBが、その内容を僅かに変更せしめられた場合に、かかる評価空間上での表示位置がどのように変化するか、ということをリアルタイムで、且つイメージ的に有利に把握出来る態様で、アニメーション表示し得る機能まで備えている。
【0154】
すなわち、会議等において広告案を最終決定する場面では、「A案かB案か」という単純な択一結果となることは少なく、実際には「基本的にはB案だが、一部に修正を加える」というような判断がなされる場合が多い。このような場合に、B案の一部の要素を実際に削除したり追加したりして修正された「B2案」や「B3案」についても、会議中に、その場でリアルタイムで評価空間上での位置変化を確認することができれば、その修正がどの程度まで修正の目的に沿ったものであるかを定量的に確認できることになり、極めて有意である。
【0155】
そこで、本実施形態においては、それを考慮して構成されている。具体的には、B案について、その言語表現の一部を変更した場合や、非言語表現の一部の要素を変更した場合、言語データの入力を訂正して入力データから関連行列を再構築し、得られた関連行列について、評価空間への射影演算をやり直すことによって、実現され得る。このような処理を実効するために、少なくとも現在のコンピュータは充分高速で、形態素解析も射影座標演算も瞬時に完了する。従って、その場で、たとえば、広告表現B案における「文字として印刷される文章」が編集画面上で少し修正されると、直ちに自動的に形態素解析のやり直しと、射影座標計算を瞬時に行ない、「B案」を修正後の「B2案」の位置にリアルタイムで変更表示することが可能できるのであり、更にまた、一部を再変更すると「B3案」へと、位置が変わる様子を刻々と表示することも出来るのである。
【0156】
なお、広告表現B案のB2案やB3案への変化を表示するに際しては、始めのB案の表示を消した後にB2案を表示し、更にB3案を表示するに際してB2案を消すようにしても良いが、元のB案の表示を残したままで、B2案やB3案の表示を準備に追加表示させるようにしても良い。
【0157】
或いは、また、広告表現B案のB2案やB3案への「位置の変化」を、ある程度の時間(例えば、1〜数秒程度)をかけて評価空間としての座標上で表示点が少しづつ移動するようにアニメーション表示するようにしても良い。このようなアニメーション表示を採用すれば、直前の文章の修正によって、実際にどのような変化が起こるのかのシミュレーション結果を、視覚を通じて感覚的に一層理解し易い形で表示することが可能となる。なお、このようなアニメーション表示の手法は、コンピュータグラフィックス等の分野で周知技術であることから説明を省略するが、例えば、B案の射影位置からB2案やB3案の射影位置までに至る線上で、例えば直線補完で複数点を設定し、微小時間毎に表示位置を変化させること等によって、容易に実現可能である。
【0158】
以上、本発明の第一及び第二の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0159】
例えば、前記実施形態では、特異値分解によって得られた第1次元軸(X軸)と第2次元軸(Y軸)からなる2次元の座標系による表現空間を採用したが、必要に応じて、第1次元軸(X軸)と第3次元軸(Z軸)からなる2次元の座標系による表現空間を採用したり、或いは立体模型で3次元の座標系を表わしたり、或いはモニタ表示で模擬的な3次元の座標系を表わす場合には、第1〜3の次元軸(X,Y,Z軸)からなる3次元の座標系による表現空間を採用することも可能である。
【0160】
また、そのような適当な表現空間に各アイテム(画像と語)を布置して表示するに際して、前述の如き「絶対寄与」の表示や、「第三変数ベクトル」の表示などを、例えばコンピュータのオペレータ入力に従って、適宜に採用したり、表示対象を変更したり、或いは表示方法を変更したり等することが可能であり、更に、それらの中から必要な画面を、任意に印刷出力し得るようにしても良い。特に、印刷にA1版やB1版などの大判カラープリンタを用いれば、多数の画像があっても、重ならず且つ明瞭に判読可能な状態で印刷することが可能である。
【0161】
また、前記実施形態では、視覚で把握される「デザイン」を評価対象としていたが、本発明は、質的情報が視覚で把握されない場合にも、適用することが可能である。例えば、あるシーンに望ましい音色を出す楽器を選択するための会議において、その客観的な評価基準を得たいような場合に、本発明を適用することも可能である。具体的には、「トランペット」や「ホルン」,「トロンボーン」,「ピアノ」,「ベース」,「ヴァイオリン」などの多数の楽器の写真を画像データとして採用する一方、それら各楽器の言語データとして、各楽器の音色を聞いた際のイメージを多数の人に文章で記載して貰ったものを集めて採用し、それら画像データと言語データを用い、前記実施形態と同様な装置によって、前記実施形態と同様な解析を実施することが有効である。
【0162】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置においては、画像データと言語データの関連に着目して特定の解析処理を施し、その結果を、具体的な数値としてではなく、各画像データと各言語データにおける語を、同一の座標系に相関的な位置関係をもって布置して視覚的に展開表示するようにしたのであり、それによって、かかる座標系において、評価対象物が内在的に備えている質的情報を評価する尺度(ものさし)を新たに作成すると同時に、各画像データと言語データにおける語を布置せしめて全体として把握可能な状態で表示せしめることにより、かかる尺度による測定結果を視覚的に把握容易な態様で表わし得るのである。
【0163】
それ故、本発明の解析装置においては、質的情報を有する評価対象物について、客観的妥当性のある尺度に基づく測定結果を出力し得るのであり、それ故、かかる解析装置によって得られた測定結果を用いることにより、評価対象物に関する評価や議論を、共通の尺度に基づく共通の認識と評価のもとで効率的に行なうことが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置の一具体例におけるハードウェア構成の概略を示すブロック図である。
【図2】図1に示された解析装置における機能ブロック図である。
【図3】図1に示された構成の解析装置を用いて質的情報の解析処理を実行するための手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示された構成の解析装置を用いて質的情報の解析処理を実行するための手順を示す、図3に続くフローチャートである。
【図5】図1に示された構成の解析装置を用いて質的情報の解析処理を実行するための手順を示す、図4に続くフローチャートである。
【図6】図1に示された構成の解析装置を用いて「洋服デザインの嗜好」についての解析処理を実行するに際してのデータ入力画面の具体例を示す図である。
【図7】図1に示された構成の解析装置を用いて「洋服デザインの嗜好」についての解析処理を実行するに際して生成された多次元行列の具体例を示す説明図である。
【図8】図7に示された多次元行列に対して特異値分解による次元圧縮して得られた表示行列の一例を示す説明図である。
【図9】図8に示された表示行列に基づいて2次元の直交座標系に解析結果を表示せしめた一具体例を示す説明図である。
【図10】図9に示された解析結果において、画像を表示した一具体例を示す説明図である。
【図11】図8に示された表示行列に基づいてX軸への絶対寄与量を考慮して2次元の直交座標系に解析結果を表示せしめた一具体例を示す説明図である。
【図12】図8に示された表示行列に基づいてY軸への絶対寄与量を考慮して2次元の直交座標系に解析結果を表示せしめた一具体例を示す説明図である。
【図13】図1に示された構成の解析装置を用いて「洋服デザインの嗜好」についての解析処理を実行するに際して生成された第三変数の行列の一具体例を示す説明図である。
【図14】図6に示された入力データ等と図7に示された多次元行列および図13に示された第三変数行列の関係を説明するための説明図である。
【図15】図13に示された第三変数としての年令と支出額のベクトルを、図10に示された解析結果の直交座標系に射影表示した一具体例を示す説明図である。
【図16】図1に示された構成の解析装置を用いて「広告表現」についての解析処理を実効する第二の実施形態における解析処理を説明するための図14に対応する説明図である。
【図17】「広告表現」についての解析処理を実行した、本発明の第二の実施形態としての解析結果の一具体例を示す、図10に対応する説明図である。
【図18】図17に示された解析結果において、参照対象物を表示せしめた具体的態様を例示するための説明図である。
【符号の説明】
18 画像データ入力部
20 言語データ入力部
22 第三変数入力部
23 参照用データ入力部
24 データ記憶部
26 形態素解析部
28 品詞選択部
30 フィルタ部
32 行列演算部
34 演算結果記憶部
36 表示部
38 寄与量演算部
40 次元軸指定部
42 第三変数演算部
43 参照ベクトル演算部
【技術分野】
本発明は、製品のデザインなどのように本来数値で一意的且つ定量的に表わすことの出来ない、評価対象物における質的情報を、予め準備されていない尺度を生成することによって客観的に表示させて解析等することの出来る、従来にない新規な解析装置を提供することにある。
【0002】
【背景技術】
従来から良く知られているように、製品などの評価対象物を評価したり議論等するためには、多くの場合、数値が用いられる。例えば、特定商品の売上高やマーケットシェア,特定産品の栄養素含有量や価格,特定物の強度や耐久性,環境内のダイオキシン濃度や放射線レベルなどが、何れも数値として与えられる。これは、数値が、その対象における情報を、客観的で一意的且つ定量的に表わして特定するものだからである。従って、明確な尺度をもって対象を測定等した結果としての数値については、当該尺度を採用することの妥当性は別として、誰にとっても一意的且つ客観的であることに疑いはなく、それ故、かかる数値を共通意識をもって認識して、その上で評価や議論等を客観的ひいては効率的に行なうことが出来るのである。翻ってみれば、人間が客観的な評価や議論を、妥当且つ効率的に行なうために、数値が考案されて利用されているものと言える。
【0003】
しかしながら、評価対象物のなかには、明確な尺度をもった数値で測定することが本質的に妥当でないものがある。例えば、洋服やポスター,料理,音楽などにおいて、その価値基準に対して支配的である、一般に感性等と称される質的情報が、それである。即ち、例えば洋服について評価や議論を行なうに際して、洋服の生地の強度や洋服の質量,洋服の色の明度等を尺度とすることにより、客観的な測定結果としての数値を得ることは可能であるが、そのような数値によって洋服のデザインや価値を評価等することが全く妥当でないことは、明らかである。
【0004】
そのために、このような質的情報が評価対象物において大きな価値基準となる場合には、評価や議論が上手く噛み合わず、有意義な会議を行なったり、多くの人が納得出来る結論を得ることは極めて困難なのが現状である。一つ具体例を挙げると、広告の一種としてのポスターデザインを決定するために、多数の評価対象物たる候補案の中から一つを選定し更にそれに修正を加える会議において、候補案に対する評価基準は会議出席者の各人によって異なるのは当然であり、それだけでなく各人の評価が質的情報であるが故に、その評価の尺度さえ自分自身でも明確に把握できていないのが一般的である。そのために、会議での議論が、各人の主張が各人の主観的な理由に基づくこととなって相互に噛み合わない議論に陥り易く、当然に、納得できる妥当な結論に至る可能性が低い。また、たとえ一つの候補案を採用するとの結論に上手く至ったとしても、かかる候補案に加える修正内容を検討する場合には、議論が一層噛み合わずに困難となることは、容易に予想されるところである。例えば、一人の出席者が「もう少し都会的にしたい」と主張したとしても、「都会的」という価値基準さえ極めて観念的乃至は質的であり、なんとなく感覚的に理解できるという程度の意識の共有状態にしか至らず、たとえ複数の出席者がその意識を共有できたと感じたとしても、かかる情報の本質が質的であるが故に、現実的には各人の意識が相互に異なっているであろうことは想像に難くない。従って、そのような共通認識の存在しない状況下で議論したところで、各人が納得する客観的妥当性のある結論を得ることは極めて難しいのである。
【0005】
このような困難な状況に鑑み、従来から、上述のポスターデザインや洋服デザイン等の質的情報を本質とする対象物を評価したり議論等する場合には、数値で量的で把握できる情報をどうにかして取得し、それを尺度基準とすることも検討されている。例えば、複数の洋服デザインを評価するに際して、それら複数の洋服デザインについて多数の消費者のアンケートを5段階評価等で取得し、アンケートの選択肢に割り付けた点数を合計することにより、かかるアンケート項目に関する客観的な評価を、当該アンケート項目を尺度とした量的情報である数値として入手することが考えられる。
【0006】
しかしながら、そもそも「質的情報」は、「量的情報」と対極に位置するものであって、当人にとっても容易には言い表し難い複雑な感覚等が融合した結果物であることが殆どであり、それ故、上述の如きアンケート等に際して示される明確な尺度によって量的情報に変換することは極めて乱暴な処理であり、得られた量的情報が、もとの質的情報を的確に表わし得ないことは、容易に理解されるところである。即ち、洋服デザインを見た消費者は、各人がさまざまな感覚を抱くこととなり、その各人の感覚こそが、評価対象物の有する質的情報であるが、アンケートを採るに際しては、アンケートを作成した一主体の主観的な尺度のみが与えられるに過ぎないことから、この与えられた尺度と異なる消費者各人の感覚は全て捨てられることとなり、かかる尺度によって消費者各人の感覚を拘束して、その拘束した範囲内で消費者各人の感覚を計ることしか出来ないのである。従って、このように予め一主体の主観的なフィルタが掛けられてしまうことが避けられない以上、アンケート等によって得られた量的情報に基づいて質的情報を解析することによっては、到底、満足できる結果を望むことが出来ない。
【0007】
なお、上述の如き選択肢に点数を付けて集計することにより評価対象物が本質的に有する質的情報を量的情報に変換するアンケート手法において、洋服デザイン等の本来対象とする質的情報をアンケート結果として得られる量的情報に対して高度にのせて、質的情報を量的情報に精度良く変換するためには、例えば、アンケート項目を考えられ得る限りに多く設定することも考えられるが、そのような手法においては、アンケートの実施だけでなく、そのアンケート結果の解析も極めて困難となってしまい、現実的でないことが明らかである。
【0008】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、洋服や広告など明確な尺度をもった数値で測定することが本質的に妥当でない評価対象物において、かかる評価対象物がそれ自体の価値として本質的に備えている質的情報を、客観的且つ効率的に取得すると共に、取得した質的情報に適した尺度自体を新たに生成せしめ、更に、この新たに生成した尺度によって各対象を容易に把握乃至は評価できる態様で視覚的に表示し得る、評価対象物における質的情報に関する新規な解析装置を提供すること等にある。
【0009】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
先ず、本発明の第一の態様は、(a)複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを入力せしめる画像データ入力手段と、(b)前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを入力せしめる言語データ入力手段と、(c)前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けて記憶するデータ記憶手段と、(d)該データ記憶手段に記憶された前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める行列演算手段と、(e)該演算手段により得られた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示手段とを、有する画像データで特定可能な質的情報の解析装置を、特徴とする。
【0011】
このような本態様に従う構造とされた解析装置においては、
▲1▼「画像データを利用し、かかる画像データによって複数の質的情報を各別に特定するようにしたこと」と、
▲2▼「言語データを利用し、画像データによって特定される複数の質的情報を、それぞれ自然文などで表現することを可能としたこと」を、
それぞれ特徴の一つとしており、更に、
▲3▼「これら▲1▼画像データと▲2▼言語データ(語)に対して総合的に特定の解析処理を施して、その結果を、具体的な数値としてではなく、各画像データと各言語データにおける語を、同一の座標系に布置して視覚的に展開表示するようにしたこと」、
も特徴の一つとしている。
【0012】
そして、このような解析装置においては、評価対象物が備えている質的情報を言語データで表現できるようにしたことから、質的情報をより的確に表わすデータを入力せしめることが出来るのであり、しかも、アンケート等のように一主体が作成した尺度で拘束されることもなく、客観性を有するものとして質的情報を高精度に表わすデータを入力せしめることが可能となる。更に、画像データを用いたことにより、一つの画像データによって対応する一つの評価対象物を明確に特定して表示することが出来るのであり、それ故、結果表示手段によって複数の画像データを、言語データにおける多数の語と共に、座標系に布置せしめて全体として把握可能な状態で表示せしめることにより、複数の評価対象物の相互間でそれらの奥に潜んでいる適当な尺度を、視覚的に把握容易な態様で表わすことが出来るのである。
【0013】
すなわち、本態様に従う解析装置においては、後述する実施形態の記載によって具体的に明示されているように、最終的に、複数の評価対象物の間に存在する質的情報の相対的な関係をもって、それら複数の評価対象物を、各評価対象物の質的情報を表わす語と併せて、適当な座標系に布置することが出来るのであり、それ故、布置された結果表示物には、そこに何等かの妥当な尺度が新たに生成されていると観念することが出来るのである。ここにおいて、特に重要なことは、評価対象物の質的情報を表わす語が布置された座標系において、かかる布置の態様等を観察することで認識することの出来る尺度は、当初から何人にも認識されていなかったものである一方で、新たに創り出されたものでは決してなく、複数の評価対象物が本来的に備えている質的情報に関して当初から当然に存在していたと考えられるものなのであり、それ故、評価対象物の評価等を行なう尺度として最も妥当で且つ客観的なものであると言えるのである。
【0014】
この意味において、本態様の解析装置は、従来の解析方法と逆転の発想の下で、評価尺度が存在しない質的情報を、評価尺度を与えないままで解析する新たな評価方法を提供するものであるといえる。即ち、従来の解析方法は、予め与えられた尺度(ものさし)を用いて、対象を評価するに過ぎないのであり、従って、いかに精緻に尺度を作成したところで、解析結果は、所詮、その尺度を作成した個人の主観的判断から逃れることは出来ないのである。一方、本態様の解析装置においては、予め尺度(ものさし)を準備することなく、複数の評価対象物が有する質的情報の相互関連に基づいて、それら複数の評価対象物を座標系に布置して表示させるだけであるが、かかる座標系に布置されることによって、当該評価対象物において正に適合する尺度自体が生成されて表示されることとなるのであり、しかもそれと同時に、かかる尺度による各評価対象物の評価が、座標系に展開されて量的情報として把握可能な状態で表示され得るのである。
【0015】
従って、本態様の解析装置において結果表示手段によって表示された結果を用いることにより、質的情報をもつ評価対象物について評価や議論するに際して、そこに参加している複数人が略共通して認識し得る尺度を持つことが出来ると共に、かかる尺度によって各評価対象物を測定した結果の値を客観的に認識することが可能となる。それ故、従来では、各人の主張が主観論になって収集がつかなくなりがちであった、質的情報をもつ評価対象物についての会議においても、各人が共通する尺度を認識し、且つ各評価対象物について、かかる尺度を基準として客観的な測定値をもつことが出来るのであり、その結果、質的情報について、客観的妥当性をもって効率的に議論したり評価等することが可能となるのである。
【0016】
なお、本態様における画像データは、内容が画像でデータであって、複数の評価対象物を相互に区別して特定し得るものであれば良く、例えばグラフィックスソフトで作成したもの等も採用可能であるが、評価対象物を可能な限り明確に特定し得るものであることが望ましく、特に視覚を通じて把握することによって解析すべき質的情報が得られるような評価対象物である場合には、当該評価対象物を電子データ化した画像データが好適に採用される。また、かかる画像データは、動画データであっても良いが、静止画データの方が、取扱いが容易であると共に、結果表示手段によって表示した際に、評価対象物を速やかに把握することが出来ることなどから望ましい。更にまた、画像データは、JPEGやMPEG等の方式で圧縮したデータとして取り扱うことが可能であり、予め圧縮した画像データを入力対象とする他、画像データの入力に際して圧縮処理を施しても良い。また、画像データは、一般に、GIFやTIFF,EPS等の適当なファイル形式で扱われることとなるが、そのようなファイル形式は限定されるものでない。なお、かかる画像データによる評価対象物の区別機能は、本態様に係る解析装置を利用して解析を行なう主体において明確であれば良く、画像データは、各別の評価対象物を客観的且つ一義的に特定するものである必要はない。
【0017】
また、このような画像データを入力せしめる画像データ入力手段は、具体的にはイメージスキャナやデジタルカメラ等で構成され得るが、その他、例えば、装置内部や装置外部で予め作成した画像データを画像ファイルとして入力せしめる場合には、磁気ディスク読取装置等の各種の公知のデータ入力装置によって、画像データ入力手段が構成され得る。
【0018】
更にまた、本態様における言語データは、評価対象物が有する質的情報を言語の形態で表わしたデータであって、好適には、各評価対象物を独立して表わした言語であって、複数の評価対象物の相対的な評価情報でないものが採用される。また、言語の種類は、日本語である必要はなく、英語や独語等の他国語、或いは複数の国の言語等であっても良い。更に、言語データは、取扱いが容易でデータ量も少ないこと等からテキストデータ乃至はキャラクタデータが好適に採用される。また、本態様における言語データは、一義的に特定することの出来ない評価対象物の質的情報を、複数人で意識を共有するための普遍的手段である言語を利用して表わしたものであるが、かかる言語データは、評価対象物の質的情報を直接的に表わしたものである必要はない。即ち、質的情報は、それ自体が本来的に認識可能に表出されているものではないのであり、従って、それを特定する言語もまた、質的情報として認識されるものである必要はないのである。要するに、評価対象物に関して、それ固有の状態等を、質的情報よりは格段に客観性があり、複数人の間で共通認識を持つことの出来る言語で表わしたものが、本態様における言語データとして採用され得る。また、言語データは、複数の「語」から構成されることで、評価対象物の質的情報を表わすものであって、例えば、単に複数の「語」からなる単語の集合であっても良いし、或いは複数の「語」の組み合わせからなる語句や文章などであっても良い。
【0019】
また、このような言語データを入力せしめる言語データ入力手段は、具体的にはキーボード等で構成され得るが、その他、例えば、装置内部や装置外部で予め作成した言語データをテキストファイル等として入力せしめる場合には、磁気ディスク読取装置等の各種の公知のデータ入力装置によって、言語データ入力手段が構成され得る。
【0020】
さらに、上述の説明からも明らかなように、本態様における評価対象物は、質的評価を必要とする物であって、画像によって特定することが可能であると共に、言語によって質的情報を表わすことのできるものであれば良く、その限りにおいて有体物の他、無体物も対象となり得る。例えば、広告やイメージフィルム等のデザインや構成は、直接に画像で特定することが可能であると共に、そこに表わされている具体的な映像やそこから受け取る感覚などの質的情報は言語で表わすことが可能であることから、本態様に係る解析装置の評価対象物となり得ることに疑いはないが、その他、例えば洋服や自動車,テレビ,洋菓子,料理等のように、視覚によって得られる情報だけでなく素材,材質や機能,性能,触覚,味覚等の情報も併せて質的情報を構成するものや、或いは音楽や香り等のように、視覚によって得られる情報が支配的でないものや、本質的に視覚によって得られる情報を有しないものであっても、何等かの方法で画像データをもって当該評価対象物を特定できる限りは、本態様に係る解析装置の評価対象物となり得る。
【0021】
また、本態様におけるデータ記憶手段は、上述の如き画像データや言語データを電気的乃至は磁気的に記憶保持せしめ得るものであれば良く、特にアクセス時間(リード/ライト時間)の短いメモリが好適に採用されるが、その他、例えば容量の大きいハードディスク等によって記憶手段を構成すると共に、RAM等の一時記憶素子を併せ備えさせて、演算に必要なデータだけをハードディスクから一時記憶素子に適宜にコピーして利用するようにしても良い。
【0022】
更にまた、本態様における行列演算手段は、行列演算処理を行なうことが可能なプロセッサを用いて構成することが可能であり、例えば、データ処理用LSIやCPU等のハードウェアと、それに処理命令文を送って作動制御するソフトウェアによって構成される。また、行列演算手段を構成するLSIやCPU等のハードウェアは、公知の如く、バスラインや必要なインターフェースを介してデータ記憶手段や画像入力手段,言語データ入力手段,結果表示手段に接続されることとなる。
【0023】
また、本態様における結果表示手段は、表示行列によって特定された位置に画像データおよび言語データの語をそれぞれ布置する座標系を、視認可能に表示し得るものであれば良い。具体的には、2次元の直交座標を表示し得る印刷装置やCRT等のディスプレイ装置の他、3次元の直交座標を表示し得る立体モデルや模擬的3次元を表示するディスプレイ装置等を用いることにより、結果表示手段が有利に実現され得る。
【0024】
さらに、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る解析装置において、前記言語データ入力手段によって入力される前記言語データが文章の態様で表わされたものである場合に、かかる言語データを形態素に分解する形態素解析手段を設け、該形態素解析手段で得られた該形態素を該言語データにおける語として前記演算手段において前記多次元行列の行項目および列項目の他方とするようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、言語データとして、例えば自然文を、特別な予備処理等を施すことなくそのままの形で言語データ入力手段から入力することが可能となる。
【0025】
なお、形態素解析手段そのものは、従来から公知であり、例えば日本語の形態素解析システムとして汎用のパソコン上で作動するソフトウエアとして、例えば、京都大学工学部の長尾研究室と奈良先端科学技術大学院大学の松本研究室等の著作に係る「JUMAN」や「CHASEN」等が入手可能であり、そのような公開されている各種の形態素解析システムを利用して、本態様の形態素解析手段を構成することも可能であることから、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
そして、本態様に従えば、行列演算手段で生成される多次元行列は、例えば複数の画像データを列項目とすると、行数が総形態素数で、列数が画像データの総数とされた行列となる。また、かかる多次元行列の各要素は、該当する「行」の項目である形態素が、該当する「列」の項目である画像データで特定される評価対象物を表わす言語データ中に何回出現するか(幾つ含まれているか)を示す数値とされる。
【0027】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る質的情報の解析装置において、前記形態素のうちで特定の品詞だけを選択的に排除又は採用する選択手段を設けて、該選択手段で選択されなかった語は、前記演算手段における行項目および列項目の他方において採用しないようにしたことを、特徴とする。即ち、形態素解析を施すと、名詞や形容詞,動詞などに加えて、助詞なども一つの形態素として把握されることとなる。そこで、評価対象物の質的情報として直接に関係しない語は、形態素解析で得られたとしても、それらを言語データとしての「語」から除いて解析に用いないようにすることが望ましい。それによって、生成される多次元行列が低次元化されて演算等の処理や記憶領域の確保等に有利となると共に、解析結果におけるノイズ発生の回避が図られ得る。
【0028】
また、本発明の第四の態様は、前記第一又は第二の態様に係る質的情報の解析装置において、前記言語データにおける語のうち、前記複数の評価対象物の所定数以上に含まれるものだけを選択するフィルタ手段を設けて、該フィルタ手段で選択されなかった語は、前記演算手段における行項目および列項目の他方において採用しないようにしたことを、特徴とする。即ち、形態素解析を施すことによって得られた形態素としての「語」の中には、複数の評価対象物の中の特定の評価対象物に対応付けられた言語データにだけ存在するものがある。そもそも本発明に係る解析装置は、特定の条件下で生成した多次元行列を次元圧縮することで、かかる多次元行列に隠れた状態で存在する相関関係に基づいて、評価対象物の質的情報の解析を行なうものであることから、一つの評価対象物にだけにしか対応付けられていない「語」は、解析に際して意味を持たない情報と考えられる。それ故、本態様に従い、複数の評価対象物に対応付けられて存在する「語」だけを採用して多次元行列を生成することにより、多次元行列が低次元化されて演算等の処理や記憶領域の確保等に有利となって、次元圧縮により表示行列を効率的に得ることが可能となる。なお、フィルタ手段における「語」の選択基準は、評価対象物や「語」の数などによっても異なるが、一般に、3つ以上の評価対象物に含まれる「語」だけを選択するように設定することが、解析の効率と精度を両立的に達成する上で望ましい。
【0029】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が視覚で把握される有体物であり、該評価対象物を撮影したデータを前記画像データとして前記画像データ入力手段により入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、評価対象物が視覚で把握される有体物であることから、画像データによって、各個別の評価対象物を明確に識別することが可能となるのであり、それ故、結果表示手段によって画像データを座標系に布置した表示を観察する際に、各評価対象物を容易に把握することが出来、評価や解析を一層容易に且つ効率的に行なうことが可能となる。
【0030】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る質的情報の解析装置であって、前記言語データ入力手段において、前記言語データをテキストデータとして入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、テキストデータを採用したことにより、言語データの取扱いを一層容易に且つ効率的に行なうことが可能となる。なお、テキストデータ以外の言語情報は、採用されないこととなるが、本発明では、本来、評価対象物の質的情報を自然文等の言語で表わすことを目的として言語データを採用したものであるから、一般に、テキストデータによって、十分な質的情報を扱うことが可能であり、解析精度の低下が大きな問題となることもない。
【0031】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、前記言語データが、少なくとも前記評価対象物の解析主体に対して客観的に取得された客観的言語データであることを、特徴とする。
【0032】
また、本発明の第八の態様は、前記第七の態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が商品であり、該商品を撮影したデータを前記画像データとして前記画像データ入力手段で入力せしめる一方、該商品の購入者が該商品を評価した自然文を前記言語データとして前記言語データ入力手段で入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、解析主体に対する言語データの客観性ひいては質的情報解析の客観性を十分に確保しつつ、商品の市場評価という消費者の主観的意識に基づく質的情報を考慮して解析することが可能となる。それ故、例えば後述の実施形態の欄において第一実施形態として示されているように、洋服デザインという評価や価値の尺度や情報が極めて質的で且つ不明瞭なものを評価対象とする場合でも、解析主体の主観的な拘束を受けることなく、客観的な解析結果を座標系に展開して表示することが出来るのである。
【0033】
また、本発明の第九の態様は、前記第七又は第八の態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が、その外観として視覚で把握可能な状態でコメント文等の言語情報を含んでいる場合に、該言語情報を前記言語データとして前記言語データ入力手段により入力せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、評価対象物の質的情報を提供する言語データを、極めて客観的に得ることが出来るのであり、解析結果の客観的妥当性が一層有利に確保され得る。特に、本態様に従えば、例えば後述の実施形態の欄において第二実施形態として示されている広告表現のように、評価や価値の尺度や情報が極めて質的で且つ不明瞭なものを評価対象とする場合などにおいて有効である。即ち、広告等において文字を備えたものは、その文字自体が評価対象物を構成するものでなく、広告のイメージ画部分や商品の外観等と協働して全体として質的情報を構成するものであるが、それ自体でも評価対象物の質的情報の一部を担っている以上、言語データとして解析に利用することにより、客観的な情報を極めて容易に取得することが出来るのである。
【0034】
また、本発明の第十の態様は、前記第七乃至第九の態様に係る質的情報の解析装置において、前記評価対象物が、その外観として視覚で把握可能な状態で写真やイラスト等の非言語情報を含んでいる場合に、該非言語情報を客観的に言語情報に置換せしめた置換言語情報を、前記言語データとして前記言語データ入力手段により入力せしめるようにしたことを、特徴とする。即ち、評価対象物は、それ自体が言語情報を有するものとは限らず、また、言語情報以外にも、質的情報として重要な情報を含む場合が多い。具体的には、例えば、後述する第二実施形態に示される車の広告表現が評価対象物である場合に、言語情報としては「その広告の中に文字として印刷されている文」を含むだけであるが、それ以外にも、そのような言語情報に加えて、或いはそのような言語情報に代えて、イラストや写真等の非言語情報で表現された情報として、例えば「空」や「雲」,「ハンドル」,「子供」,「川」,「夕焼け」,「ドア」,「エンジン」,「男性」,「女性」,「座席」などを含んでおり、特に広告表現では、質的情報の観点からみると、これらの非言語情報が何等かの訴求点を別の何かに置き換えて表現したものであることが多く、表された言語情報以上に重要な意味を持つことが多い。そして、本態様においては、このような非言語情報も考慮して、評価対象物の質的情報を解析することが出来るのであり、ぞれによって、解析対象となる質的情報の範囲も拡大されると共に、質的情報のより一層高精度な解析が実現可能となるのである。このように、非言語情報が質的情報として大きなウェイトを有する広告等の評価対象物においては、例えば、当該広告等についての意見や感想などの質的情報を複数の人に自然文で自由に述べてもらったものを取得して言語データとして利用すること等も考えられるが、それよりも、例えば、当該広告等に明示されている物理的な事象を対象をして、非言語情報を客観的に言語情報に置換せしめたものを言語データとして用いる方が、解析結果の客観性が向上される。なお、非言語情報を言語情報に置換するには、例えば、写真等から機械的に単語や文章に置き換えて抽出することも考えられるが、より簡易的には、解析主体とは別の者の人的作業によって抽出するようにしても良い。
【0035】
また、本発明の第十一の態様は、前記第十の態様に係る質的情報の解析装置において、前記言語データ入力手段により入力された前記置換言語情報から、前記多次元行列の要素としての語として名詞だけを選択抽出する名詞選択手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、非言語情報を客観的に言語情報に置換するに際して、例えば、解析主体とは異なる者が、非言語情報を出来るだけ客観的に言語情報に置換する場合等においても、特に主観が入り難く且つ質的情報を一般に多く含む名詞を選択することによって、言語情報を一層効率的に且つ精度良く抽出することが可能となる。なお、名詞選択手段は、例えば、非言語情報を言語情報に置換せしめた置換言語情報をテキスト形式で入力せしめて、これに形態素解析を加えて名詞を選択抽出させることによって、有利に実現可能となる。
【0036】
また、本発明の第十二の態様は、前記第十又は第十一の態様に係る質的情報の解析装置において、前記非言語情報を複数の者が各別に言語情報に置換せしめた複数の置換言語情報を、それぞれ、前記言語データとして、前記言語データ入力手段によって入力せしめるようにすると共に、それら複数の者によって生成された複数の置換言語情報から得られた複数の該言語データに共通して存在する語だけを、前記多次元行列の要素としての語として選択抽出する共通語選択手段を設けたことを、特徴とする。前述の如く非言語情報を言語情報に置換して置換言語情報を得るに際しては、その作業を個人が行う場合に主観が入る余地があるが、本態様においては、複数の者(好ましくは3〜5名程度)が、お互いの処理を見せることなく独立して非言語情報を言語情報に置換する作業を行い、それら複数の者の作業結果を用いることによって、より客観性の高い置換言語情報を取得することが可能となるのであり、これにより、特別な者だけが認識する程度の客観性に乏しい言語情報の選択が効果的に回避され得る。なお、本態様において、より好適には、例えば、複数の者が他人の作業内容を見ることなく、非言語情報から言語情報への置換を行い、その結果を入力することが出来るように、各者別に言語データ入力手段を準備し、各者がそれぞれの評価対象物に関して入力した言語情報から直接に取得された多数の語、或いは形態素解析を経て取得された多数の名詞)を、一旦メモリに記憶せしめた上で、各評価対象物ごとに、全作業者が言語情報として共通に入力した語をスキャンして自動的に選択抽出する手段が、採用されることとなる。
【0037】
また、本発明の第十三の態様は、前記第一乃至第十二の何れかの態様に係る質的情報の解析装置であって、前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めると共に、前記結果表示手段において、かかる表示行列で最も大きいものから2又は3の特異値にそれぞれ関わる各次元軸によって2次元又は3次元の直交座標系を構成し、かかる直交座標系における位置として前記画像データと前記言語データにおける語を、それぞれ視認可能に表示することを、特徴とする。このような本態様においては、数理計算による次元縮小法を利用して、前述の如くして得られた多次元行列から、視覚で速やか且つ正確に把握することが出来る2次元または3次元の座標系において、その座標系が何等かの尺度を与える状態で、画像データと言語データにおける語をそれぞれ布置せしめるための表示行列を有利に得ることが可能となる。
【0038】
また、本発明の第十四の態様は、前記第十三の態様に係る質的情報の解析装置において、(f)前記直交座標系を構成する少なくとも一つの次元軸に関して、前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量をそれぞれ求める寄与量演算手段と、(g)該寄与量算出手段によって求められた何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じて、該寄与量が大きい程に表示も大きくなるように、前記画像データおよび前記言語データにおける語をそれぞれ拡大/縮小表示する表示倍率変更手段とを、設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、座標系に布置した画像データや言語データの語に対して、視覚的により多くの情報を表示させることが出来るのであり、座標軸が持つ尺度の認識等も容易となる
。
【0039】
また、本発明の第十五の態様は、前記第十四の態様に係る質的情報の解析装置において、前記寄与量演算手段により、前記座標系を構成する複数の次元軸のそれぞれに関して前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量を算出すると共に、かかる算出結果を記憶する寄与量記憶手段を設けて、算出した該寄与量を該寄与量記憶手段に記憶せしめる一方、(h)前記座標系を構成する前記複数の次元軸のうち、何れかの次元軸を選択的に切り換えて指定することの出来る次元軸指定手段と、(i)前記表示倍率変更手段により何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさで表示された前記画像データおよび前記言語データにおける語を、前記次元軸指定手段による次元軸の指定の変更に従い、別の次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさとなるまで次第に変化させて表示するアニメーション表示手段とを、設けたことを、特徴とする。このような本態様にあっては、結果表示手段において各画像データや言語データの語が布置された座標系において、そこに表わされた各軸がもつ量的な尺度の意味、延いては布置された各画像データや各言語データの語の相関的な関係を、より把握し易くすることが出来る。
【0040】
また、本発明の第十六の態様は、前記第一乃至第十五の何れかの態様に係る質的情報の解決装置において、(j)前記行列演算手段において前記多次元行列を生成するに際して、該多次元行列における各次元軸の要素に対して相対的な重み付けによる調整を行なう重み付け手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、座標系に布置された各画像データや言語データの語の全体のばらつき乃至は広がりの程度を把握し易い適当な大きさに調節することが出来るのであり、それによって、かかる座標系の表示に基づいて、そこに内在する何等かの意味を持つ尺度を認識したり、各画像データで表わされた各評価対象の質的情報を把握することが、一層容易となる。
【0041】
また、本発明の第十七の態様は、前記第一乃至第十六の態様に係る質的情報の解析装置であって、前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めるようにすると共に、かかる特異値分解の結果に基づいて前記画像データを、該画像データの数よりも少ない数のクラスタに分けるクラスタ分析手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、各画像データで特定される複数の評価対象の相対的な関連性を、クラスタ分けされて表示された結果から、一層容易に把握して評価等することが可能となる。なお、クラスタ分析手段としては、最近隣法や最遠隣法,群平均法,k−means法等の従来から公知の手法が、何れも採用可能である。また、結果表示手段において、例えば座標系に各画像データを位置表示するに際して、クラスタ分析の結果に従い、同一クラスタに属する思考項目を、そのクラスタに割り当てられた特定の色で表示することも可能であり、それによって、塗り分けられた画像データ群の把握と健康が一層容易となる。
【0042】
また、本発明の第十八の態様は、前記第一乃至第十七の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、(k)前記複数の評価対象物にそれぞれ固有の第三変数を入力せしめる第三変数入力手段と、(l)該第三変数入力手段で入力された該第三変数を、前記多次元行列において前記画像データを配した行項目および列項目の何れかと次元の等しいベクトルとし、前記結果表示手段によって表示される前記座標系に射影せしめた参考表示ベクトルを演算する第三変数演算手段とを、設けて、該結果表示手段により、該第三変数演算手段で求められた参考表示ベクトルを、前記画像データおよび前記言語データの語と併せて該座標系に表示せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、複数の画像データや言語データの語を、評価対象物が有する質的情報に基づいて座標系に表示する処理結果と関係なく、評価対象物を特定する画像データと同一次元のベクトルをもって、任意の第三変数を該座標件に表示することが出来るのであり、それ故、例えば第三変数によって表わされる特定の指標や情報からなる尺度を、かかる座標系に画像データ等と併せて表示することが可能となる。従って、座標系に展開表示された第三変数を利用することにより、座標系に展開された複数の画像データや言語データの「語」が内在する尺度を一層容易に認識すること等が可能となって、評価対象物の解析作業性が向上され得る。
【0043】
また、本発明の第十九の態様は、前記第十八の態様に係る質的情報の解析装置において、前記第三変数が画像として特定できるものである場合に、該第三変数を特定する第三変数画像データを、前記結果表示手段により前記参考表示ベクトルとして前記座標系に表示せしめることを、特徴とする。このような本態様においては、座標系に対して単に第三変数の名称等を表示する場合に比して、表示された画像から第三変数を視覚で直接的に把握認識することが出来るのであり、例えは質的情報に関する情報量が、評価対象物よりも明確で顕著な第三変数の画像を座標系に表示することで、かかる座標系に表された空間の意味をより把握し易くすることが可能となる。
【0044】
また、本発明の第二十の態様は、前記第一乃至第十九の何れかの態様に係る質的情報の解析装置において、(m)前記複数の評価対象物と同等の参照対象物について、その質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした参照用言語データを入力せしめる参照用言語データ入力手段と、(n)該参照用言語データにおける語を行又は列の要素として、前記多次元行列における行項目と列項目のうち前記言語データにおける語を要素とする方の項目と次元の等しい一列又は一行の参照表示行列を求める参照表示行列演算手段と、(o)該参照表示行列演算手段により得られた前記参照表示行列を、前記結果表示手段によって表示される前記座標系に射影せしめた参照表示ベクトルを求める参照ベクトル演算手段とを、設けて、前記結果表示手段により、前記座標系において前記画像データおよび前記言語データの語と併せて前記参照表示ベクトルを表示せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、複数の評価対象物によって予め形成した、評価空間としての座標系において、具体的に特定された参照対象物を、それが持つ質的情報を予め生成された座標系での評価基準に従って評価した結果の該座標系における特定の位置として、定量化された形で表示することが出来る。従って、例えば後述する第二の実施形態のように、二つの広告表現案の何れを選択するかについて比較検討するに際して、既存の多数の広告表現を評価対象物として、それらの質的情報を解析することで評価空間としての座標系を構成した後、かかる座標系に、二つの広告表現案を、それぞれ参照対象物として射影して表示せしめることにより、それら二つの広告表現案の比較を、座標系によって表された客観的な尺度に基づいて、一層容易に且つ効果的に行うことが可能となるのである。
【0045】
また、本発明の第二十一の態様は、前記第二十の態様に係る質的情報の解析装置において、前記参照対象物を特定し得る参照用画像データを入力せしめる参照用画像データ入力手段を設けて、前記結果表示手段により、前記座標系における前記参照表示ベクトルの位置に該参照用画像データを表示するようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、前記第十九の態様における第三変数と同様に、参照対象物が座標系において視覚で把握可能に表示されることにより、かかる参照対象物を容易に把握することが可能となって、座標系に表された空間の意味や、参照対象物の有する質的情報の定量的評価値をより把握し易くすることが出来る。
【0046】
また、本発明の第二十二の態様は、前記第二十又は二十一の態様に係る質的情報の解析装置において、前記参照対象物を複数採用し、前記結果表示手段により前記座標系において一つの該参照対象物の表示を終了して別の該参照対象物の表示を開始するに際して、かかる終了する参照対象物における前記参照表示ベクトルを、かかる開始する参照対象物における前記参照表示ベクトルまで、該座標系において次第に変位させて表示する参照用アニメーション表示手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、例えば独立した二つの参照対象物における相互間の質的情報を、より認識し易い態様で表示せしめて比較することが出来るのであり、それ故、例えば広告表現の具体的な案を一つの参照対象物として、これから一部を変更したものを別の参照対象物として、座標系における一つ目の参照対象物の位置から別の参照対象物の位置まで、参照表示ベクトルをアニメーション表示させて変位させることにより、参照対象物の一部変更による質的情報の変化を、視覚的に一層容易に把握することが可能となるのである。なお、本態様を含む本発明において、座標系におけるベクトルの表示は、ベクトル位置を特定して示し得るものであれば良く、例えば特定の基準点(原点)からの矢印の表示の他、特定の原点を基準とするベクトル先端位置に対して画像等の適当なポイントを表示するものなどであっても良い。
【0047】
また、本発明は、上述の如き特定構造とされた質的情報の記憶装置の他、以下の(A)〜(E)からなる複数の工程をもって実施される質的情報の解析方法も、その特徴とするものである。
【0048】
すなわち、本発明に係る質的情報の解析方法の第一の態様は、(A)コンピュータが、複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを外部から取得する画像データ取得工程と、(B)該コンピュータが、前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを外部から取得する言語データ取得工程と、(C)該コンピュータが、前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けてデータ記憶手段に記憶する記憶工程と、(D)該コンピュータが、前記データ記憶手段に記憶した前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める演算工程と、(E)該コンピュータが、前記演算工程で求めた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示工程とを、有する画像データで特定可能な質的情報の解析方法を、特徴とする。
【0049】
このような本態様の解析手段に従えば、質的情報を本質的な評価対象とする各種の物を、前述の如き本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置と同様に、それら自体の相対的な関連性に基づき、適当な尺度をもって座標系に展開して布置することが出来るのであり、そして、かかる座標系においては、結果的に、予め与えられておらず識別さえもなされていなかった新たな尺度に基づいて、画像データや言語データの語が布置されることとなる。
【0050】
従って、本発明に従って得られた座標系による表示を利用することにより、客観的に認識可能な尺度に基づいて評価対象物の質的情報を量的に把握することが出来るのであり、それによって、例えば複数人での会議等においても、複数の評価対象物を客観的妥当性をもって評価したり議論することが可能となるのである。
【0051】
また、質的情報の解析方法における本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う質的情報の解析方法において、前記コンピュータが、前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めると共に、前記結果表示手段において、かかる表示行列で最も大きいものから2又は3の特異値にそれぞれ関わる各次元軸によって2次元又は3次元の直交座標系を構成し、かかる直交座標系における位置として前記画像データと前記言語データにおける語とを、それぞれ視認可能に表示するようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、特異値分解を利用した処理に基づいて、評価対象物における質的情報の評価に際して支配的な尺度に従う量的評価の結果だけを効率的に取り出して、それを座標系に表わすことが可能となるのであり、その結果、座標系の表示から、評価対象物における質的情報の妥当な尺度を一層容易に把握して認識することが出来るのである。
【0052】
また、質的情報の解析方法における本発明の第三の態様は、前記第二の態様に従う質的情報の解析方法において、(F)前記コンピュータが、前記直交座標系を構成する少なくとも一つの次元軸に関して、前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量をそれぞれ求める寄与量演算工程と、(G)該コンピュータが、該寄与量演算工程において求めた何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じて、該寄与量が大きい程に表示も大きくなるように、前記画像データおよび前記言語データにおける語をそれぞれ拡大/縮小表示する表示倍率変更工程とを、含む質的情報の解析方法を、特徴とする。このような本態様においては、評価対象物の質的情報を量的に評価するための一つの尺度となり得る座標軸の概念を、座標系に布置された画像データや言語データ(語)の表示の大小という視覚的効果を利用して、一層把握し易くすることが出来る。
【0053】
また、質的情報の解析方法における本発明の第四の態様は、前記第三の態様に従う質的情報の解析方法において、前記コンピュータが、前記寄与量演算工程において、前記座標系を構成する複数の次元軸のそれぞれに関して前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量を算出すると共に、かかる算出結果を記憶するようにする一方、(H)該コンピュータが、前記座標系を構成する前記複数の次元軸のうち、何れかの次元軸を選択的に切り換えて指定する次元軸指定信号を外部から取得する次元軸指定工程と、(I)該コンピュータが、前記表示倍率変更工程において何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさで表示された前記画像データおよび前記言語データにおける語を、前記次元軸指定工程における次元軸の指定の変更に従い、別の次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさとなるまで次第に変化させて表示するアニメーション表示工程とを、含む質的情報の解析方法を、特徴とする。このような本態様においては、座標系に布置された画像データや言語データ(語)を、各次元軸(座標系における座標軸)を尺度として評価した場合に、その評価の大きさ即ち寄与度の相違を、アニメーション表示によって相対比較的に簡潔に表示することが出来るのであり、それによって、それぞれ評価対象物の質的情報を量的に評価するための一つの尺度となり得る各座標軸の概念を、視覚的に一層容易に認識することが可能となるのである。
【0054】
さらに、本発明は、前述の如き本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置をコンピュータによって実現するために必要な、コンピュータによって読取可能な情報を、伝送媒体を通じて伝送することにより、前記第一乃至第二十二の何れかの態様に係る質的情報の解析装置を実現させる質的情報の解析装置の製造方法も、特徴とする。このような製造方法に従えば、本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置を、単に、ソフトウェアの配送によって簡易且つ速やかに実現せしめることが出来るのである。なお、伝送媒体としては、有線,無線を問わず、コンピュータ読取可能な情報を伝送し得る各種の媒体が採用され得る。
【0055】
また、本発明は、前述の如き本発明に従う質的情報の解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記載された、コンピュータで読取可能な情報記録媒体も、特徴とする。更にまた、本発明は、上述の如き本発明に従う質的情報の解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムも、特徴とする。更にまた、本発明は、上述の如き本発明に従う質的情報の解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを情報として載せたコンピュータで読取可能な信号も特徴とする。なお、情報記録媒体としては、例えば、フロッピディスクや磁気テープ,光ディスクや光磁気ディスク,ハードディスク,フラッショメモリなどが、何れも採用可能である。また、信号を伝送する媒体は、特に限定されるものでなく、光ケーブルや同電線等の有線や無線が、ネットワーク等の態様で採用可能であり、搬送波によって情報を伝送するものの他、搬送波を用いないで情報を伝送するものであっても良い。
【0056】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0057】
先ず、図1には、本発明方法を実施するための本発明に従う解析装置全体のハードウェア構成の一具体例が、ブロック図として示されている。即ち、本実施形態における解析装置のハードウェアは、例えば一般的なコンピュータシステムを用いて構成されており、中央演算処理装置(CPU)10と、それに接続されたROM,RAM,ハードディスク等の記憶装置12を備えていると共に、CPU10に対して適当なインターフェースを介して接続されたキーボードやマウス等の入力装置14や、プリンタやモニタ等の出力装置16を備えている。そして、CPU10は、予めROMに記憶された手順とRAMに一時記憶された手順に従い、入力装置14から入力される信号や記憶装置12に記憶されたデータを処理して、各種の駆動信号や表示信号を出力して目的とする解析処理を実行するようになっている。
【0058】
また、図2には、かくの如き解析装置における機能ブロック図が示されている。即ち、本実施形態の解析装置は、画像によって特定可能な評価対象物における質的情報を解析するものであって、その機能的構成について説明すると、かかる解析装置は、
(i)評価対象物を特定できる画像データを入力する画像データ入力手段としての画像データ入力部18と、
(ii)評価対象物の質的情報を表わした言語データを入力する言語データ入力手段としての言語データ入力部20と、
(iii )第三変数をデータとして入力する第三変数入力手段としての第三変数入力部22と、
(iv)参照対象物をデータとして入力する参照用データ入力手段23と、
(v)入力された画像データ,言語データおよび第三変数をそれぞれ記憶するデータ記憶手段としてのデータ記憶部24と、
(vi)自然文等の言語データから多次元行列の要素を抽出するために言語データを形態素に分割処理する形態素解析手段としての形態素解析部26と、
(vii )多次元行列の要素を構成する品詞の選択手段としての品詞選択部28と、
(viii)多次元行列の要素を構成する語を選択するフィルタ手段としてのフィルタ部30と、
(ix)画像データと言語データから多次元行列を生成して更にそれを次元圧縮することにより表示行列を求める行列演算手段としての行列演算部32と、
(x)行列演算による解析結果を記憶する演算結果記憶部34と、
(xi)行列演算による解析結果を座標系をもって視覚表示せしめる結果表示手段としての表示部36と、
(xii )評価対象物の解析結果の次元軸としての解析結果の座標系の座標軸に関する各画像データや各言語データ(語)の寄与量を、各座標軸に関してそれぞれ求めて、得られた寄与量を寄与量記憶手段としての演算結果記憶部34に記憶せしめる寄与量演算手段としての寄与量演算部38と、
(xiii)各画像データや各言語データ(語)を座標系に表示するに際して、表示の大きさを決定する寄与量の基準となる次元軸(座標軸)を選択的に指定する次元軸指定手段としての次元軸指定部40と、
(xiv )入力された第三変数を、画像データや言語データ(語)が表示された座標系に参考表示ベクトルとして射影表示せしめる第三変数演算手段としての第三変数演算部42と、
(xv)入力された参照用データを、画像データや言語データ(語)が表示された座標系に参照表示ベクトルとして射影表示せしめる参照ベクトル演算手段としての参照ベクトル演算部43とを、
含んで構成されている。なお、これら各機能ブロック部は、図1に示されている如きハードウェア構成のコンピュータに適当なソフトウェアを導入することによって実現可能である。
【0059】
そこにおいて、画像データ入力部18においては、評価対象物を特定し得る画像データが入力されるようになっている。この画像データ入力部18は、コンピュータで電子データとして取り扱うことが出来るデータ形式で画像データをコンピュータに入力せしめるものであり、例えば、評価対象物を直接に撮影して画像データを生成するデジタルカメラやスキャナの他、CGで画像データを作成するCGソフトとマウス等の入力手段などによって構成され得るが、その他、予め準備された画像データをコンピュータに入力せしめるフロッピディスクやLAN等によって構成することも可能である。
【0060】
また、言語データ入力部20においては、評価対象物の質的情報を含む情報が入力されるようになっている。この言語データ入力部20は、電子データとして取り扱うことが出来るデータ形式で言語データをコンピュータに入力せしめるものであり、例えば、テキストデータを直接に入力することの出来るキーボードやマウスの他、印刷された文章等をスキャナ等の画像データからOCRで読み込んで言語データとして入力することも可能である。
【0061】
また、第三変数入力部22においては、各評価対象物における第三変数が、各評価対象物を特定する画像データと関連付けられて入力されるようになっている。かかる第三変数は、評価対象物が持つ情報であるが、評価対象物を解析するために作成される多次元行列の要素を構成するものでなく、例えば、評価対象物の情報の中から解析のために参考とすることが有用であろうと考えられる変数を適宜に選択したものであって、定量変数でも定性変数であっても良い。好適には、各評価対象物に固有の情報を表わし得る客観的な情報であって、評価対象物の数に等しい次元のベクトルとして表わされるものが採用される。具体的には、評価対象物が複数の個人である場合に、第三変数として各個人の年令、或いは性別,体重,出身県などの如きである。なお、かかる第三変数は、一つであっても複数であっても良い。そして、このような第三変数を入力するための第三変数入力部22は、変数データをコンピュータに入力するキーボードやマウス等によって構成され得、例えば前記言語データ入力部20を構成するハードウェアを利用することも可能である。また、第三変数は、画像データを有するものであっても良く、その場合に第三変数入力部22は、例えば前記画像データ入力部18を構成するハードウェアを利用して構成することが出来る。
【0062】
また、参照用データ入力部23においては、参照対象物の言語データ(参照用言語データ)が、各参照対象物を特定する画像データと関連付けられて入力されるようになっている。かかる参照対象物は、各評価対象物とは別個のものであるがそれら評価対象物と同等のものと見ることが出来る具体的なものであり、評価対象物を解析するために作成される多次元行列の要素を構成するものでない。また、この参照対象物は、各個別の評価対象物と同様に、画像データと言語データを解析データとして抽出されており、これらのデータを入力するための参照用画像データおよび言語データの入力部23は、例えば前記画像データ入力部18や言語データ入力部20を構成するハードウェアを利用することが可能である。
【0063】
また、データ記憶部24は、上述の如くして入力される画像データと言語データ、第三変数を、各評価対象物毎に相互に関連付けして記憶するようになっており、例えばRAM等の一時記憶素子の他、ハードディスクや光ディスク等によって構成される。
【0064】
また、形態素解析部26は、言語データ入力部20で入力されてデータ記憶部24に記憶された言語データが文章の態様のテキストデータ等である場合に、かかるテキストデータを形態素に分解するものであり、例えば公知のソフトウェアを用いてコンピュータ(CPU)の演算処理を利用し、データ記憶部24に記憶されたテキストデータを読み出して形態素解析を実行するようになっている。また、この形態素解析部26による解析結果は、形態素に分解された語を、それぞれ対応する画像データとの関連付けを保ったままで、データ記憶部24に記憶される。
【0065】
また、品詞選択部28は、言語データを形態素解析部26で形態素分析した結果得られた形態素を、品詞の種類で分類し、特定の一つ又は複数の品詞の形態素だけを選択するようになっている。なお、品詞選択のための品詞の種類情報は、一般に、多くの形態素解析用のソフトウェアが備えている機能を利用して、形態素解析に際して形態素解析処理と同時に得ることが可能である。このように品詞の種類で形態素を取捨選択することにより、有用な情報をもった形態素を極めて有効且つ速やかに得ることが出来ると共に、取り扱う形態素の情報数が格段に少なくされて処理が容易且つ迅速となり、不必要なデータに起因するノイズも効果的に抑えられ得る。
【0066】
また、フィルタ部30は、言語データを形態素解析部26で形態素分析した結果得られた形態素のうち、評価対象物の解析に際して品質情報として有効であると考えられる特定の品詞だけを品詞選択部28で選択した後、更に、評価対象物の相関性の判断に際しての情報を持たない形態素を除くようになっている。即ち、特定の多次元行列を次元圧縮することによって行なわれる後述の評価対象物の解析処理は、複数の評価対象物の相関性に基づくものであることから、複数の評価対象物の相関性に殆ど影響を与えない情報(形態素)は、このフィルタ部30で除かれることにより、取り扱うデータ数の減少に伴う処理効率や処理速度の向上等が図られ得る。
【0067】
なお、上述のフィルタ部30による処理を施すに際しては、形態素解析で得られた各形態素について、その活用形を考慮して可能な限り原形表示に変換しておくことが望ましい。原形変換することによって、単なる文体や言い回しによって形態素に相違があった場合でも、実質的に同一の「語」として扱うことが可能となることから、単なる言い回しで異なる実質的に同一の「語」が異なるものと認識されてフィルタ部30で除かれてしまったり、徒に「語」の数が多くなってしまうことも避けられ得て、一層効率的な解析処理が実現可能となるのである。
【0068】
また、上述の品詞選択部28やフィルタ部30で選択されなかった形態素は、解析に使用することはないので、データ記憶部24から削除しても差し支えない。そして、最終的に選択された形態素は、評価対象物との関連付けをもって、データ記憶部24に記憶せしめられることとなる。
【0069】
また、行列演算部32においては、上述の如くして最終的に選択された形態素における、複数の評価対象物の相互間での相関関係に基づいて、複数の評価対象物と多数の形態素の関連性を全体として表わす多次元行列としての関連行列が形成されるようになっていると共に、得られる関連行列が、適数の次元軸を座標軸としてもった座標系で表わされる表現空間上の表示行列に変換されて、この表現空間としての座標系において、複数の評価対象と多数の形態素が、それらの質的情報の関連性の少なくとも一部を、座標系における物理的な位置関係に置き換えた状態で、表示されるようになっている。
【0070】
ここにおいて、関連行列は、極めて多くの特徴次元軸を有する高次なものであることから、これを関連性の本質を変更しないで低次の次元軸を有する表現空間、好ましくは2次元又は3次元の表現空間に射影するために、例えば特異値分解(S.V.D.)を利用した手法が有利に採用される。
【0071】
具体的には、例えば、関連行列は、評価対象物を特定し得る画像データを列項目とすると共に、それら画像データについて選択された形態素の全てを行項目とし、各画像データに関連付けられた形態素の度数分布の各値を要素として得られることとなる。即ち、この関連行列は、評価対象物の数に対応する画像データの数だけの列の数と、前述の如くして取得された全ての形態素の種類の数だけの行の数とをもって生成されるのである。なお、かかる関連行列では、行項目と列項目を交換しても解析結果に影響はない。そして、かかる関連行列を次元圧縮するに際しては、先ず、関連行列をI行J列の行列:Xとすると、下式の如く、この関連行列:Xの各要素:xijを、その総和:Nで除した要素:pijを有するプロファイル行列:Pを求める。
【0072】
【数1】
【0073】
次いで、このプロファイル行列:Pの各要素:pijに対して、下式の如く、カイ自乗変換と類似の処理を施すことにより、該プロフィール行列の各要素を期待値に対する乖離度に基づいて変換した要素:aijを有する処理行列:Aを得る。
【0074】
【数2】
【0075】
そして、このようにして得られた処理行列:Aに対して、特異値分解を施す。即ち、上述の如き前処理によって得られた行列を、I行J列の処理行列:Aとすると、この処理行列:Aは、下式のように特異値分解することが出来る。
A = UDVT
なお、UはI行k列の直交行列であり、Dはk行k列の対角行列であり、VはJ行k列の行列であり、添字:T は転置行列を示す。また、この式において、行列U uおけるI次元のk個の列ベクトルを(u1 ,u2 ,u3 ・・・uk )とし、行列VにおけるJ次元のk個の列ベクトルを(v1 ,v2 ,v3 ・・・vk )とすると共に、行列Dの対角要素(d11,d22,d33・・・dkk)を、d1 ≧d2 ≧d3 ≧・・・≧dk とすると、下式が成立する。なお、行列Dの対角要素は、d1 ≧d2 ≧d3 ≧・・・≧dk >0となっており、また、そうすることは容易である。
A = d1 Q1 +d2 Q2 +d3 Q3 +・・・+dk Qk
但し、QS = uS vS T (S は、1〜kの整数)
従って、上式から、行列:Aが行列Qの線形和となり、大きな特異値に対応する固有ベクトルが行列:Aをよく表すこととなる。それ故、特異値を上位から適当数だけ取り込むことによって、前述の如き多数の特徴次元数を有する高次の関連行列から、特徴次元数が少ない表現空間に変換せしめた低次の表示行列:U* ,V* を得ることが出来るのである。
【0076】
そして、このようにして求められた表示行列のデータは、演算結果記憶部34に記憶せしめられる。
【0077】
さらに、このようにして得られた表示行列には、必要に応じて各次元軸方向の相対的な重み付けの調整による後処理が施される。具体的には、適当な次元数で得られた表示行列:U* ,V* に対して、各次元軸方向に適当な重み付けがされた行列を乗算することによって、調節される。例えば、かかる重み付けとしては、各次元軸に対応する特異値が好適に採用される。
【0078】
また、表示部36においては、行列演算部32で得られた表示行列に基づいて、画像データ入力部18で入力された各画像データと、言語データ入力部20で入力された言語データを形態素解析部26で処理した後に品詞選択部26およびフィルタ部30で選択することによって得られた語(形態素)が、それら各画像データと語の関連性を反映する表現空間上の位置として、表示されるようになっている。その表示は、例えば、上述の特異値分解で次元圧縮した表示行列における各次元軸を座標軸とする所定次元の直交座標系において、表示行列の各要素として表わされる座標値で特定される位置に各画像と各語(形態素)を視認可能に表示せしめることによって行なわれる。また、表示装置としては、2次元または3次元の直交座標系を視認可能に表示し得るプリンタやディスプレイ等が適宜に採用される。また、表示するに際しては、座標系上で略全ての画像データと語が一覧できるようにすことが望ましい。
【0079】
更にまた、寄与量演算部38は、各次元軸に関して各変数(画像データおよび語)によって説明される分散の割合を示す絶対寄与の値を求めると共に、各変数(画像データおよび語)の分散のうち各次元軸によって説明される割合を表す相対寄与の値や、特定次元までの相対寄与の合計値(累積寄与)を求めるようになっている。そして、この寄与量演算部38で求められた絶対寄与と相対寄与の各値は、各変数(画像データおよび語)と関連付けられて、寄与量記憶部38に記憶せしめられるようになっている。なお、かかる寄与量記憶部38は、データ記憶部24と共通の装置で構成されていても良い。
【0080】
そして、次元軸指定部40では、特定の次元軸を指定することにより、表示部36で上述の各変数(画像データおよび語)を布置して表示するに際して、演算結果記憶部34に記憶された絶対寄与または相対寄与の当該指定した次元軸における各値を用いて、表示部36で表示される各変数の表示倍率が変更設定されるようになっている。なお、表示倍率の変更設定は、寄与量の値に比例するように行なうことが望ましく、それによって、座標系に布置された各変数を見るだけで、視覚をもって、各変数を特定することが出来ると同時に、当該変数における特定の次元軸に関する寄与量の程度を容易且つ速やかに認識することが可能となる。
【0081】
さらに、第三変数演算部42は、第三変数入力部22で入力された第三変数のデータをデータ記憶部24から読み出し、前記表示行列によって特定される表現空間上に射影してそのベクトルを求めるようになっている。そして、この第三変数演算部42で求めた結果に基づいて、表示部36により、第三変数が、表現空間上、延いては座標系において、前述の各変数と併せて視認可能にベクトル表示されるようになっている。
【0082】
ここにおいて、第三変数の表現空間上への射影は、例えば以下のようにして行うことが可能である。即ち、第三変数のベクトルをFと置き(「F」は、J次元のベクトルで、要素Fj はj番目の対象物の第三変数の値)、表示行列における各形態素の座標行列をG(「G」は、I行,k列の行列、kは座標軸数)と置くと、第三変数のk軸目の座標:Tk は、次の式で表すことが出来る。
【0083】
【数3】
【0084】
また、参照ベクトル演算部43は、参照用データ入力部23で入力された参照対象物のデータをデータ記憶部24から読み出し、前記表示行列によって特定される表現空間上に射影してそのベクトルを求めるようになっている。そして、この参照ベクトル演算部43で求めた結果に基づいて、表示部36により、参照対象物が、表現空間上、延いては座標系において、前述の各変数と併せて視認可能にベクトル表示されるようになっている。
【0085】
ここにおいて、参照対象物の表現空間上への射影は、上述の第三変数の射影と同様にして、例えば以下のようにして行うことが可能である。即ち、参照対象物のベクトルをEと置き(「E」は、I次元のベクトルで、要素Ei はi番目の語(形態素)の出現回数)、表示行列における各語(形態素)の座標行列をG(「G」は、I行,k列の行列、kは座標軸数)と置くと、参照対象物のk軸目の座標:Sk は、次の式で表すことが出来る。
【0086】
【数4】
【0087】
次に、図1及び図2に示されている如き構成をもって、例えば汎用のコンピュータで構成された本実施形態の解析装置を用いて、評価対象物としての「女性用洋服デザイン」を解析する一連の処理の手順を、本発明の第一の実施形態として、図3〜5に示されたフローチャートに従って説明する。
【0088】
先ず、開始が指示されて解析処理がスタートすると、コンピュータは、ステップ:S1において、全てのデータを初期化する。続いて、ステップ:S2において、評価しようとする女性用洋服デザインに関する各データを、順次、取得して記憶手段に記憶する。かかるデータの取得は、各別の女性用洋服デザインについての画像データと言語データおよび第三変数を、それぞれ、コンピュータのオペレータに入力させることで行なうことが可能である。
【0089】
具体的には、本実施形態において取得するデータとしては、▲1▼消費者が最も気に入っている洋服のデザインを撮影した画像データと、▲2▼当該消費者が当該洋服を最も気に入っている理由を自由に述べた一つ又は複数の文章からなる言語データと、▲3▼洋服デザインの嗜好に関係すると考えられる、判断尺度が明確な定性的乃至は定量的な第三変数データが、採用される。なお、▲2▼の言語データは、評価対象物としての洋服デザインの質的情報を、少なくとも解析主体に対して客観的に表わしたものである。そこにおいて、かかる言語データは、複数の消費者の間で、全体の長さが極端に異ならないように、最小文字数と最大文字数を制限することが望ましい。また、▲3▼の第三変数データは、一つに限ることはなく、何種類を採用しても良い。
【0090】
因みに、本実施形態におけるデータの入力画面と、そこに実際にオペレータが入力した各種データを、コンピュータモニタ上での表示画面の形態で、図6に示す。本実施形態では、一つの画面上に、▲1▼画像データと、▲2▼言語データと、▲3▼第三変数データが、同時に具体的に視認可能に表示されるようになっており、画面上で画像データを見ながら、キーボード等から言語データや第三変数データを入力させることにより、それら▲1▼,▲2▼,▲3▼の各データの組み合わせの入力ミスによる相違が防止されるようになっている。
【0091】
そして、ステップS3で、全ての洋服デザインにおける▲1▼,▲2▼,▲3▼の各情報の取得を、例えば上記画面上に表示された「EXIT」ボタンの押圧をマウスポインタによるクリック操作で確認したら、必要データの取得と記憶領域への記憶を完了する。
【0092】
続いて、例えば画面上に「解析開始」を記したボタンを表示し、このボタンの押圧をマウスポインタによるクリック操作で確認したら、続くステップ:S4以降の解析工程に移行し、その後は、記憶手段に記憶した上記▲1▼,▲2▼,▲3▼の各データに基づいて自動的に解析処理を実行する。
【0093】
かかる解析処理では、初めに、ステップ:S4において、前記▲2▼の言語データだけを対象として、形態素解析と原形変換を行なう。かかる形態素解析は、公知の技法であることから詳細理論の説明は割愛するが、▲2▼の言語データの全てを、自然言語の最小単位である形態素に分解する。具体的には、例えば「パープルの縁取りが好きです。」という文章からなる言語データを取得したとすると、これを「パープル」,「の」,「縁取り」,「が」,「好きです」,「。」の6つの形態素に分解する。また、形態素解析に際しては、各形態素について、その活用原形情報と品詞情報も得ることが出来る。例えば、活用原形情報としては、「好きです」の原形表示として「好きだ」が得られることとなり、また、品詞情報としては、「パープル」について「普通名詞」、「の」について「名詞接続助詞」、「縁取り」について「普通名詞」、「が」について「格助詞」、「好きです」について「形容詞,ナノ形容詞,デス列基本形」、「。」について「句点」が得られる。そして、形態素解析で分解した全ての形態素を、上述の品詞情報や活用原形表示情報も付加した状態で、前記▲2▼の言語データと異なる記憶領域に記憶する。
【0094】
その後、ステップ:S5〜9において、品詞に基づく形態素の選択処理を実行すると共に、ステップ:S10〜12において、出現回数(使用頻度)に基づく形態素の選択処理を実行する。
【0095】
品詞に基づく形態素の選択処理に際しては、初めに、ステップ:S5で、外部からのオペレータ入力により、解析処理に際してデータとして採用しない品詞名を取得する。即ち、助詞や接続詞、句読点といった、質的情報としての記述内容に直接関係しない語(形態素)は、本実施形態の解析目的であるデザインの嗜好に関しても、殆ど情報をもたないことから除外することが望ましい。なお、かかる助詞や句読点は、全ての評価対象物に関する言語データにおいて略同程度に含まれることから、削除しなくても特異値分解による解析に大きな影響はないが、ノイズとなる可能性もあることから、解析精度の向上のためにも除外して、データとして採用しないことが望ましい。
【0096】
そして、ステップ:S6〜8において全ての言語データから得られた全ての形態素を対象として選別処理を実行して、ステップ:S5で採用しないものとした品詞を除いた形態素(語)だけを、解析処理に際して用いられる関連行列作成用の「語」として選択し、それらを前記▲2▼の言語データと異なる記憶領域に記憶する。
【0097】
続いて、ステップ:S9において、上記ステップ:S8で関連行列作成用の語として選択されて記憶された全ての「語」を対象としてスキャンし、各画像データに対応付けられた各言語データにおいて各「語」がそれぞれ何回出現するかの個別カウント値をとったリストを自動で生成する。併せて、各画像データに対応付けられた各言語データをスキャンし、上記ステップ:S8で関連行列作成用の語として選択されて記憶された各「語」が、それぞれ、幾つの画像データに対応付けられた言語データにおいて出現するかの全体カウント値を取得する。そして、関連行列作成用に選択された「語」のカウント値として、それら各言語データ毎の個別カウント値と、全体カウント値を、記憶領域に記憶する。
【0098】
さらに、出現回数に基づく形態素(語)の選択処理は、上述の品詞に基づく形態素の選択処理において選択して記憶した関連行列作成用の語の全てについて、ステップ:S10〜12の処理を行い、全ての対象とする関連行列作成用の語について、出現回数(使用頻度)に基づく形態素の選択処理を実行する。
【0099】
具体的には、上述のステップ:S8において品詞に基づく形態素の選択処理によって関連行列作成用に選択された全ての「語」について、上述のステップ:S9で取得した全体カウント値に基づき、ステップ:S11において全体カウント値が3以上であるか否かを判断し、もし全体カウント値が3に満たなければ、当該「語」を、関連行列作成用の語から除外する。即ち、本実施形態のように洋服デザインについてのデータ取得を10以上の画像データ(評価対象物としての具体的な洋服デザイン)を対象として実施すると、前記ステップ:S4で形態素解析を行なった結果得られる全形態素(語)は、一般に数千個の数に至るものと考えられるが、特定の対象物のみにしか出現しない「語」は、後述する特異値分解を利用する解析手法において解析上の意味を殆ど持たないと考えられるのであり、現実的には、解析精度の確保と併せて、装置の演算処理能力やメモリ領域等を考慮して、1又は2の対象物の言語データにしか含まれていない「語」は、関連行列作成用の語から外して、3つ以上の対象物の言語データに含まれている「語」だけを対象として以下の解析処理を行なうことが望ましい。
【0100】
而して、前述のステップ:S4で形態素解析を実施した結果得られる数千の形態素(語)は、その後、上述の如き原形変換による語の統合や、品詞名による選別、更に出現回数による選別を経ることによって、十分に少なくすることが可能であり、例えば数百のレベルの数にまで下げることの出来る場合も多い。
【0101】
このようにして統合や選択を経て取得した関連行列作成用の「語」を用いて、続くステップ:S13において、関連行列を作成して、この関連行列を記憶素子としてのメモリ上に記憶する。かかる関連行列は、その具体例が図7に示されているように、全ての画像データを列項目とし、ステップ:S4〜12での形態素の前処理で選択された形態素(語)を行項目とすることによって、行数が選択された形態素の総数とされると共に、列数が画像データの数とされた巨大な行列である。また、この関連行列の各セルの要素は、そのセルが属する行の形態素を、そのセルが属する列の対象物(画像データ)に対応する言語データ中に、幾つ含むかの頻度(出現回数)を表わしたものである。
【0102】
続いて、このようにして得られた関連行列に対して、ステップ:S14において、前述の如き行列演算による特異値分解(S.V.D.)を実施し、特異値と併せて、寄与量(絶対寄与および相対寄与)を求める演算を行なう。即ち、この特異値分解の演算処理によって、多数の特徴次元数を有する高次の関連行列(図7参照)を、特徴次元数が少ない表現空間に変換せしめた低次の表示行列を得ることが出来るのである。因みに、本実施形態において、図7に示されている如き高次の関連行列に対して特異値分解を行ない、互いに直交する第1軸(X軸),第2軸(Y軸),第3軸(Z軸)の3つの次元軸(主軸)を持つ三次元の表現空間に次元縮小した結果を、図8に示す。なお、図8中、「相対周辺度数」は、原データ行列としての関連行列の周辺分布を示しており、所謂massである。また、各次元軸(X軸,Y軸,Z軸)の欄に記載された「座標」は、各アイテム(画像データとしての洋服1〜19および言語データとしての多数の「語」)を、特定の表現空間上に射影した場合の各主軸上の座標値を示す。
【0103】
すなわち、ステップ:S14での特異値分解の結果から表示行列を得るに際しては、ステップ:S15において、何れか少なくとも一つの次元軸(X軸,Y軸,Z軸・・・)の指定情報を、コンピュータのオペレータ入力等で取得し、その後、ステップ:S16において、当該指定された次元軸に相当する座標値を要素とする行列として、表示行列を作成する。これにより、例えば、X軸とY軸からなる2次元直交座標系からなる表現空間(平面)上に各アイテムを布置するための表示行列は、各アイテムのX座標とY座標の各値を要素とする行列として与えられることとなる。
【0104】
従って、かかる表示行列に基づいて、必要に応じて後述するステップ:S17による第三変数の参考表示ベクトル演算を経た後、ステップ:S18において、指定された次元軸からなる座標系を表現空間として、かかる座標系に各アイテムを布置することによって、解析結果を視認可能に表示することが出来るのである。そして、このようにして関連行列の特異値分解の結果得られた表現空間である低次元の固有空間(入力行列の固有構造を最も明確に示す空間)における各次元こそが、評価対象物たる洋服デザインの嗜好という「質的情報」を計測するための最適の尺度(ものさし)となるのである。
【0105】
なお、特異値分解を利用して得られた固有空間において、上述の尺度は1本ではなく、適数本存在している。但し、これら各尺度には、評価対象物の質的情報を反映する能力に関して差があり、その能力の大きさが、各次元毎の特異値として算出される。従って、特異値分解の結果において、特異値の大きいものから順に、第1特異値,第2特異値・・・,第n特異値と並んでいるので、上から順に大きい適数のものだけに限定して注目すれば良く、それによって次元圧縮が達成される。
【0106】
特異値分解の結果としては、上記の「尺度」が得られるだけではなく、同時に、その各尺度で測定した場合の、「各画像データ(つまり列要素)」の測定値と「各語(つまり行要素)」の測定値が、それぞれの尺度毎に(各次元毎に)計算されて得られるようになっている。従って、すべての「画像データ(つまり列要素)」と「語(つまり行要素)」を、表現空間上で、各次元ごとの測定値に応じて、各次元の尺度の上に配置することができる。これにより、消費者が評価対象である洋服デザインの嗜好を自由に言語で表現した文章(つまり質的情報)の奥に潜む数理構造の特異値分解により、当該質的情報を客観的に評価するために最適の「ものさし」(尺度)が、自動的に完成したわけである。即ち、「質的情報」である対象物を「ものさし」で測定するという「計量化」ができたのである。
【0107】
また、特異値分解の結果において多次元の尺度が得られていることから、質的情報の反映量を表わす値が最も大きい第1特異値に関わる次元の尺度をX軸、次に大きい第2特異値に関わる尺度をY軸にとって2次元空間を構成することにより、或いは、その次に大きい第3特異値に関わる尺度をZ軸にとって3次元空間を構成することにより、データ行列の背後に潜む関連構造から計算された「数理的に情報を表わす尺度」の最も有利な態様を得ることができる。
【0108】
なお、ステップ:S18における解析結果の表示形態は、要求される各種の態様で行なうことが可能であり、例えば、図9に示されているように、二次元の直交座標系(横軸=X軸,縦軸=Y軸)を採用し、第1特異値及び第2特異値における座標値で各アイテムを配置せしめて、それを視認できるように、印刷したりモニタ表示することによって、結果表示物とされ得る。その具体例を図9及び図10に示す。
【0109】
そこにおいて、図9の結果表示物において、評価対象物の質的情報を表わす言語データは「着心地」,「柄」,「色」などの情報をもった語(形態素)で表わされていることから視覚的に認識することが可能であるが、評価対象物を特定する画像データが「洋服1」等として、質的情報を表わさない文字で表示されていることから、視覚的に把握することが困難である。
【0110】
これに対して、図10に示される結果表示物は、「洋服1」の位置には、直接「洋服1」の洋服そのものの画像(画像データ)を表示したものである。このように結果表示物において画像そのものを表示することは、前記ステップ:S2で評価対象物の画像データを取得,記憶していることから、容易に実現可能である。なお、画像は、2次元の表示面上で上下左右に広がり面積があるが、その中央の位置が、その画像の座評点と一致するように描画位置が設定されている。また、図10では、特許出願における図面の書式上の制約によりモノクロのイラスト画であるが、実際の装置では、カラー写真と略同等のクオリティのカラー画像とすることが可能であり、それによって、評価対象物である洋服デザインを、視覚を通じて一層容易に、且つ的確に把握することが出来る。
【0111】
そして、このようにして出力された結果表示物を観察することにより、明確な尺度のなかった万別の洋服デザインについて、例えばX軸やY軸という、数理的客観性のある尺度が、認識され得るのである。なお、以下の説明では、図10に布置された各洋服デザインの画像は、図9に示された洋服番号で特定して説明する。
【0112】
具体的には、先ず、図10に示された結果表示物(実際にはカラー画像図)を見ると、右上の「洋服3」「洋服6」「洋服12」の3つは、デザインに強い共通点のあることが容易にわかる。また右下の「洋服5」「洋服14」「洋服8」の3つも、極めて似通っていることがわかる。実際のカラー写真品質の印刷では、3者のスカートの質感が非常に似通っていることが容易に認識できるのである。更に、左側の「洋服11」「洋服2」「洋服4」の3つにも明らかな共通点があり、左側に「スラックス(ズボン)」が並んでいるのに対して、右側から中央部にかけては「スカート」が並んでいることがわかる。即ち、図10に示された結果表示物の全体を見渡すと、共通の特徴をもつ洋服が、お互いに近傍に配置されており、確かに「デザイン」に関する「何らかの尺度(ものさし)」によって、順位つけられて並べたものであることを明確に認識できるのである。
【0113】
そこで、さらに詳しく「第1の尺度」であるX軸が、どのような「ものさし」を構成しているのかに注目してみる。全ての「洋服デザイン(即ち、列要素)」と「語(即ち、行要素)」を、この第1の尺度で測定した結果が、X座標である。つまり、「洋服デザイン」も「語」も、全ての位置を、この「第1の尺度」で計量することが可能なのである。ここにおいて、前述の如き特異値分解を利用した処理により第一の尺度を作るためには、全ての「洋服デザイン」と「語」が関係しているが、しかしながら「洋服デザイン」や「語」の全てが、この「第1の尺度」の成立に同じ量の影響を与えたのではない。中には、モノサシの「成立」自体には、ほとんど関与していないものもある。なお、尺度を作ることと、作られた尺度で測定することは、互いに別であり、たとえ尺度の成立に関与が小さいものも、成立した尺度で値を測定することは、尺度成立への関与の大小に拘わらず行なうことが出来る。
【0114】
この尺度の成立への関与を表わすものが、特異値分解に伴って求められて、図8に記載されている絶対寄与量である。即ち、各「洋服デザイン」や「語」が「第1の尺度であるX軸」の成立にどの程度の影響を与えているかについては、「第1軸に関する絶対寄与量」として求められており、また同様に、各「洋服デザイン」や「語」が「第2の尺度であるY軸」や「第3の尺度であるZ軸」への成立にどの程度の影響を与えているかについては、「第2軸に関する絶対寄与量」や「第3軸に関する絶対寄与量」として求められている。従って、これら各「洋服デザイン」や「語」の各軸に対する絶対寄与量の大きさを見れば、各尺度(ものさし)がどのようなものであるのかを、数理的な裏づけをもって確認することが可能となる。
【0115】
また、結果表示される画像を、何れかの指定された次元軸(X軸またはY軸)に関する絶対寄与量を視認可能に表現するように自動再編成する機能を、装置に持たせることも可能である。
【0116】
具体的には、表示したい絶対寄与量の対象となる次元軸を、コンピュータのオペレータ入力で変更指定する次元軸指定の変更情報を取得し、かかる変更情報に基づいて、各アイテム(洋服デザインおよび語)の表示倍率を、先に指定されていた次元軸の絶対寄与量に基づく値から、変更指定された次元軸の絶対寄与量に基づく値に変更して、各アイテムの表示大きさを変更することによって行なわれる。
【0117】
これにより、例えば、図11は、X軸に対する絶対寄与量に基づいて各アイテムの表示倍率を設定したものであり、図12は、Y軸に対する絶対寄与量に基づいて各アイテムの表示倍率を設定したものである。実際には、指定する次元軸をX軸からY軸に変更すると、変更と同時に、モニタの画面上に表示されていた図11の画面が、図12の画面に変更することとなる。これにより、基準とする次元軸を変更したものを視覚的に比較することが出来るのであり、その結果、X軸の生成に大きく寄与しているアイテムとY軸の生成に大きく寄与しているアイテムを、それぞれ、一層容易に認識することが可能となり、X軸およびY軸の尺度の意味が、より認識し易くなる。
【0118】
即ち、図11に示されたX軸に対する絶対寄与量を考慮した表示と、図12に示されたY軸に対する絶対寄与量を考慮した表示とを比較すると、各アイテムの表示位置は全く同一で変化していないが、各アイテムの表示の「大きさ」が、対応する軸に対する「絶対寄与量」を反映するように拡大/縮小変化して表示されている。即ち、表示する際に考慮される次元軸に対する絶対寄与の大きいものは「大きく」、絶対寄与の小さいものは「小さく」、なるように、各画像の大きさと、語の表示フォントサイズが自動的に変化するようにされているのである。
【0119】
そこにおいて、基準とする次元軸を変更した際の各アイテムの表示大きさの変化を一層認識し易くするために、表示画面としてCRTディスプレイ等を用いて結果表示の変化をアニメーション表示で行なうことも考えられる。例えば、絶対寄与量の表示指定が為されずにCRTディスプレイ装置の画面に、図10に示された図が表示されている状態下で、絶対寄与量の表示指定をX軸とする指定情報が外部から入力されると、同じ大きさで表示されていた各アイテムが直ちに図11の表示に変化するのではなく、略1秒〜数秒程度の時間をかけて次第に大きさが変化して図11の表示となるように、アニメーション表示することが可能であり、それによって、X軸の尺度の意味が、より認識され易くなる。
【0120】
因みに、X軸の絶対寄与の大きさを考慮して各アイテムの表示倍率が設定された図11において、大きな文字の「語」だけに注目すると、図中の右側では「デート/会社/彼/明るい/可愛い」などが大きくなっているのに対して、左側では「脚/長い/短い/シンプル/楽だ/着心地」などが大きくなっており、右側が「相手に見られることを意識した洋服」であるのに対して、左側は「自分にとって着心地のよい洋服」であることが簡単に読み取れる。また、図中の右側で大きく表示された洋服は「スカート」が多く、左側で大きく表示された「パンツ・ルック(ズボン)」と、対照的であることも、見るだけで認識できる。そして、このことから、どうやら「相手に見られることを意識した」場合に「スカート」が選ばれることが多く、逆に、相手を強く意識せず、自分の着心地を優先する場合に「パンツ・ルック(ズボン)」が選ばれるようであり、この「相手を意識してのスカート」対「自分を意識してのパンツ・ルック(ズボン)」という対立概念が、X軸として表わされた第1の次元軸が尺度として持つ意味の一つであることがわかる。この意味において、X軸で表わされる尺度は、「相手を意識したり、スカートを選んだりするほど正の大きい値」を測定値として返し、「自分を意識したり、パンツ・ルック(ズボン)を選んだりするほど負の値(マイナス値)」を測定値として返すようなモノサシであることがわかる。ちなみに中央の原点では「ゼロ」を返すこととなる。
【0121】
また、特許図面ではわかりにくいが、高品質のカラー画像で結果表示を見ると、右側には「ニット系」のやわらかい、ソフトな感じの洋服が多いのに対して、左側では「革」や「ジーンズ」などの固めの素材の洋服が多いことも分る。「語」の表示でも「ニット」は右でやや大きく、「革」は左側でやや大きく表示されている。このことからも、「語」の布置位置と、「画像データ」の布置位置には、明らかな対応関係があることが理解され得る。
【0122】
そして、上述の如き検討結果からも明らかなように、X軸を尺度として各洋服デザインを測定した値は、デザインそのもののパターンが測定されているというより、そのデザインを求める消費者の意識レベルを含めて測定したものであると考えるのが妥当であることが理解される。即ち、X軸で表わされた尺度は、これらの複数の要素が絡み合った、一言では言い表せない概念の対立を反映した「質的な尺度(ものさし)」であるが、それを使って実際のデザインを表わす「画像」や「語」のそれぞれに、このものさしを当てて値を測定できるという「量的なモノサシ」でもある点が、重要であり、大きな技術的効果を有するのである。
【0123】
しかも、この「尺度」を生成する上述の如き一連の処理工程も、その「尺度」で各アイテムを測定して値を得る処理工程も、人間の関与を受けずに自動的に装置内で行われている点も重要である。装置内では、デザインを撮影した「画像データ」は、単に表示のために格納されているだけであり、その画像ファイルの内容自体は、尺度の生成に直接関係していないし、「語」の文字も、単にラベルとしてメモリに格納されているだけで、尺度の生成に全く関与していないのである。解析処理の対象となっているのは、行列の数値だけであり、それが何の数値であるかについては解処理において知ることはできないし、また、そもそも、その必要がない。因みに、特異値分解の数式は、シュレジンガーによる波動方程式と、略同じであり、量子力学的な数理を応用することで、文章そのものではなく「その奥の構造」を解析できているのである。そして、このような「尺度(ものさし)」は、実は、画像データで示されたデザインの洋服を購入し、その選択理由を自然文で記述した対象者本人にさえ、明確に意識されていない場合が多い。
【0124】
また一方、Y軸の絶対寄与の大きさを考慮して各アイテムの表示倍率が設定された図12において、大きな文字の「語」だけに注目すると、図中の上方向の「落ち着いた」イメージと、下方向の「カジュアル」なイメージの対立が、高品質のカラー画像で結果表示を見ると容易に理解できる。また、上方向が「大人らしさ」、下方向が「若々しさ」に対応しているようであり、この「第2の尺度(ものさし)」は「年令」にも関連があるようであり、正の値が大きいほど年令の高い大人のイメージを洋服で表現しようとしているように読み取ることが出来る。この「年令イメージ」は、実際の年令を解析に考慮していないことからも明らかなように、洋服を選んだ本人の年令とは必ずしも一致せず、「(現実より)大人っぽく」見られたい、とか「もっと若く見せたい」というような、ファッションを通じて表現したい希求イメージとしての年令である。実際の年令なら「あなたの年令は何歳ですか」という質問で、簡単に定量的に収集可能であり、それでは洋服デザインの評価に際して有効とは言い難い。しかし、この「見られたい年令イメージ」のような「質的変数」は、直接測定することは極めて困難であるが、本発明の特徴は、この「見られたい年令イメージ」のような、直接定量的に測定困難な概念を、洋服選択理由の自然言語文のなかに潜む形態素の同時出現パターン行列の特異値分解により、間接的に取得することを自動化した点にあり、更に、その概念を定量化するための数理的な「尺度」までも自動的に構成できる点にある。
【0125】
さらに、本実施形態では、前述のステップ:S17において第三変数の参考表示ベクトルを演算し、この第三変数を、必要に応じて、図10〜12に示された結果表示に重ね併せてベクトル表示することが出来るようになっている。第3変数(参考表示変数)とは、特異値分解の対象とは別の、参考表示の為の変数であり、本実施形態では、前述のステップ:S2において、画像データや言語データと共に、図6に示された画面表示における下欄部分に示されているように表示されて、コンピュータのオペレータ入力が促されるようになっている。
【0126】
かかる第三変数は、前述の如く、評価対象物である「洋服デザインの嗜好」という情報の中から解析のために参考とすることが有用であろうと考えられる変数を適宜に選択したものであって、各評価対象物に固有の情報を表わし得る客観的な情報であり、具体的には、本実施形態では、図13に示されているように、第三変数として各消費者の年令と、月平均の洋服支出金額、およびA〜Gの7つのイメージが異なる洋服モデル写真を示してその中から選択させた好みの写真の符号を、採用した。なお、これらの第三変数は、何れも、特異値分解の対象となる図7に示された関連行列と「列」の次元が一致するベクトル(参考表示ベクトル)とされている。
【0127】
このような第三変数のベクトルは、特異値分解の対象となるものではないが、特異値分解が完了した後、特異値分解の結果自動生成された尺度(次元)で構成される表現空間に、このベクトルを射影表示することで、かかる尺度と第三変数のベクトルとの間に、どのような相互関係にあるかを、客観的、数理的に把握することが可能となるのであり、それによって、得られた尺度の意味をより具体的にイメージすることが可能となる場合もある。
【0128】
具体的には、例えば、各対象者の「そのデザインが好きな理由の自由作文」とは別に、「実年令」を質問しておけば、図13における行列の一番上の行に示されているように、対象者数を次元とするベクトル(年令の整数値が対象者数分並んだベクトル)を取得することができる。この「実年令」ベクトルは、特異値分析の対象となる行列の「列」次元数と、次元数が一致することから、このベクトルを特異値分解の結果自動生成された尺度(次元軸)で構成される表現空間に射影表示することが出来るのである。
【0129】
また、同様にして、例えば、各対象者の「ファッションに対する毎月の出費額」を質問しておけば、図13における行列の上から二番目の行に示されているように、対象者数を次元とするベクトル(出費額を示す数値が対象者数分並んだベクトル)を取得することができるのであり、この「出費額」ベクトルも、上述の「実年列」ベクトルと同様に、洋服デザインを表わす「画像データ」や「語」の各アイテムが布置された表現空間に対して、射影表示することが出来るのである。
【0130】
因みに、本実施形態において、入力データとしての評価対象物のデータおよび第三変数データと、それから得られる関連行列(多次元行列)および第三変数行列の関係を、図14に示す。かかる図14からも、第三変数行列が、何れも、洋服デザインの数:Yと同じだけの列要素を持つ1行のベクトルとなることが明らかである。
【0131】
また、第三変数の理解を一層容易とするために、第三変数として上述の「年令」を示すベクトルと、「支出額」を示すベクトルを、前述の特異値分解による解析結果を表わす表示行列を2次元の座標系に結果表示せしめた画面上に、それぞれ、射影表示せしめたものを、図15に示す。
【0132】
かかる図において、先ず、実年令ベクトルに着目すると、当該ベクトルは左上方向を向いていることから、下方向より上方向にある洋服の方が、実年令の高い人に好まれていることが確認できる。また、若干ではあるが、実年令ベクトルは左方向を向いており、右の洋服を好む人より、左の洋服を好む人の方が、若干、年令の高いことも示している。しかし、実年令ベクトルの方向は、基本的には、「左向きより、上向き」の程度が高く、「上下方向」つまり「第2の尺度(ものさし)」との関係の方が強いことが分る。なお、この「実年令ベクトル」と「第2の尺度」のなす角度の余弦(cos )が、「実年令ベクトル」と「第2の尺度」の相関係数となるように計算されている。従って、全く同一方向を向いていれば、完全な相関がある(ゼロ度の余弦は「1」であり、相関係数の「1」とは、完全な正相関を意味する)一方、全く逆方向を向いていれば、完全な逆相関であり(180度の余弦は「−1」であり、相関係数の「−1」とは、完全な負の相関を意味する)、90度の角度であれば、無相関(90度の余弦は「0」であり、相関係数「0」は無相関)である。つまり、実年令は、第2の尺度(希求イメージとしての年令)と、確かに相関が高いが(「実年令ベクトル」と「第2の尺度」のなす角度が小さいので)が、全く同一のものでもないことが、数理的に確認できるのである。そして、この確認により、先に述べた「第2の尺度」が「希求イメージとしての年令」であるという理解が正しいことを、別の面から再確認できるのである。
【0133】
また、図15において、支出額ベクトルに着目すると、当該ベクトルは右上方向を向いていることから、右上方向の洋服デザインを好む人は、ファッション支出が高いことがわかる。逆に、左下方向の洋服デザインを好む人は、ファッション支出が低いこともわかる。このようにして、特異値分解によって得られた表示行列の表現空間上に、併せて、上述の如き第三変数ベクトルを射影表示することによって、「特異値分解の対象とする質的データ」と、「別の、関連しそうな第3変数」との関連も、併せて解析することが可能となるのである。
【0134】
更にまた、「第三変数」それ自体が、画像として特定されるものである場合には、第三変数の変数名等を座標系に表示する代わりに、その位置に、その第三変数を特定する「画像」を表示することも有効である。例えば、図13又は図14の「第3変数行列」中の「好きなモデル=A]から「好きなモデル=G]までの、7つの第三変数は、各評価対象物( 洋服のデザイン) の好きな理由の自然文を記述した各対象者に、「A」から「G」までの7種類の写真パネル(ファッションモデルが、洋服を着用した状態で撮影された写真)を提示して、その中ではどれが1番好きか、を尋ねた結果である(選択したモデル写真に「1」、選択されなかったモデル写真には「0」の値を与えている)。これらの第三変数データを、自動生成された表示空間内に射影表示することで、表示空間の意味を、さらに読み取り易く、また、表示空間内の情報量を更に豊かにすることができる。蓋し、モデルの洋服は、一般の消費者が実際に着用するものより、先鋭的で、方向の明確なものであることが多いことから、これら7枚の写真を、第三変数として、評価対象物である洋服デザインと併せて表示すると表示空間の意味が読み取り易くなるからである。
【0135】
そして、その場合に、「第三変数」自体が「画像として特定されるもの」である場合には、射影計算結果の各位置に、「好きなモデル=A]とか「好きなモデル=B]とかの「第三変数名」を表示するよりも、モデルAの写真やモデルBの写真「そのもの」を表示した方が、遥かに有効であることは、簡単に理解できよう。そのために、本実施形態では、入力される第三変数データとして、かかる第三変数を特定する為の画像データも、画像データ入力部18から入力できるようにされている。なお、かかる画像データは、一般に、1つの第三変数につき1 つだけ存在することとなる。また、第三変数の評価空間への具体的な射影計算式は、前述したことから、ここでは説明を割愛する。
【0136】
更にまた、上述の本発明の第一の実施形態では、「消費者における洋服デザインの嗜好」を評価等するために、洋服デザインを評価対象物として解析したが、本発明における解析対象は、洋服デザインに限定されるものでなく、前述の如く、製品のデザインなどのように本来数値で一意的且つ定量的に表わすことの出来ない質的情報を備えた各種の物が、評価対象物となり得る。
【0137】
例えば、「広告表現手法」も、本発明に従う解析方法の対象物としての質的情報を備えた評価対象物として有利に採用され得る。本発明の第二の実施形態として、「車広告表現」を評価対象物とする質的情報の解析方法について、説明する。なお、本実施形態では、解析方法の実施に際して、第一の実施形態と同様にして例えばコンピュータで構成された解析装置が採用されることから、解析装置に関する詳細な説明を省略する。また、「車広告表現」を評価対象物とする本実施形態において、画像で特定される「対象物」は、「商品としての車」ではなく、「広告表現手法そのもの」である。そこにおいて、広告において採用されている商品としての車の写真は、車広告表現の部分に過ぎず、広告におけるその他のキャッチコピーや説明文,ロゴタイプ,バックなどの広告の全ての構成要素、各フォントのサイズや書体や色などの選択および各構成要素の大小関係や位置関係などのレイアウトの仕方等までも含めて、それらの創造的な組合せによって成立しているアーティスティックな意味での広告表現(広告業界用語での「クリエイティブ表現」)自体が「評価対象物」とされる。
【0138】
そして、このような「広告表現手法」も、また、第一の実施形態で評価対象物とした洋服デザインと同様に、その情報に占める質的情報の割合が大きく、評価が困難である。即ち、工場で生産される工業製品等の場合の評価は、設計値に対する寸法誤差等のように、完全に「定量的」な基準があるから、容易に行うことが出来るが、「広告表現手法」は本質的に「質的」なものであり、担当者の個人的な能力やセンスに大きくに依存するものであることから、そこに定量的な尺度は存在せず、評価や取扱いが極めて難しくなる。
【0139】
しかし、その一方で商品の広告表現手法は、その商品を販売等する上で、極めて重要な要素であるが故に、社会での事業活動に際して極めて重要視されており、事業活動の現場での会議においても良く取り上げられる。そこにおいて、本来は「質的な情報を持つ広告表現(クリエイティブ表現)」であるが故に、客観的な量的尺度を設定することが極めて困難なのであり、従って、効率的且つ客観的な会議や打ち合わせを行うことが難しいのが現状である。
【0140】
特に、広告表現手法は、広告主の意図を的確に凝縮したものであるが、「訴求点」をそのまま直接的に訴求するのではなく、何かに「置き換え」て隠喩的に表現することが多いが故に、その質的情報の評価が、一層難しいものとなる。例えば、「走行性能」を訴求したい場合に、「走行性能が高い」という文章を入れたり、エンジンそのもののスペックや写真を入れたりするような「直接的な」表現が採用されることは少なく、それに代えて、「空や海などの自然をバックにして車を配置した構図」により、間接的に走行性能が高いことを暗示するような表現が、より訴求効果が高いものとして、好適に採用されるが如きである。また、「高級車」であることを強調したい場合も、価格を直接表示したり、「これは高級車です」というような直接的な表現をすれと、却って高級感が打ち消されてしまうこととなり、逆に「銀色のボディー色の車を黒バックの前に配置する」というような広告表現の方が、一層高級感を抱かせることが出来るが如きである。
【0141】
そこで、「車の広告表現」を評価対象物とした本実施形態においては、その画像データとして「広告」そのものを撮影した写真等を採用する一方、その言語データとしては、その広告の中に文字として印刷されている文章だけでなく、「空」,「雲」,「エンジン」,「子供」,「夕焼け」などのように「言語(文字)」としては印刷されていないが、写真やイラストなどに表現された広告の構成要素であって言語で特定して具体的に認識出来る非言語情報も、それを言語情報に置換することで、かかる置換言語情報を言語データとして採用する。
【0142】
なお、非言語情報から言語情報を抽出するには、その客観性を考慮する必要がある。即ち、文字として印刷された文章(言語情報)は、客観的に取得可能であるから作業者の主観が入り込むことは基本的にないが、写真等の非言語情報から言語情報を抽出する際には、作業者の主観が混入する可能性が否定できない。かかる点を考慮して、本実施形態では、第一に、複数の人間(例えば3名から5名程度)がお互いに結果を見せ合わずに非言語情報から言語情報の抽出を行うことが出来るように、各人別の入力画面を用意し、各人が抽出した言語情報(文言や文章等)を一旦メモリに蓄積したうえで、各対象物ごと(つまり特定の広告表現ごと)に全作業者のリストアップした名詞文字列をスキャンし、同一対象物で、複数の作業者が同時にリストアップした「語」だけを言語データとして自動的に選択するような手段が採用されている。これにより、作業主体の主観の影響が大きいものと考えられる、たった一人だけがリストアップしただけの語は、解析に用いるデータからは自動的に削除されることとなる。
【0143】
また、作業者の主観の影響を抑えるために、本態様では、更に、各人が抽出した言語情報の中から名詞だけを、言語情報として選択して採用するようにしている。蓋し、一般に、画像等の非言語情報に含まれる要素を、人間がリストアップする際を考慮すると、例えば「明るい」,「力強い」,「スッキリした」等の形容詞には、作業者の主観が入る可能性が大きく、それに比して「写真や絵の中に現に《存在する》要素( モノ) に限った名詞羅列」には、作業者の主観が入り込む可能性が小さいと考えられるからである。
【0144】
しかも、本実施形態では、非言語情報から言語情報の抽出作業に際して、予め「名詞の羅列だけに限る」という限定は付さずに、任意の文言態様で自由に言語情報の抽出作業が出来るようにしている。これにより、作業者の思考に基づく制限が抽出作業に影響するのを軽減し、より客観的な言語情報の抽出を可能とすることが出来るのである。なお、自由な態様で抽出された言語情報は、例えば、それをテキスト形式で入力せしめたデータに対して形態素解析システムでチェックし、名詞以外の品詞を自動的に排除することで、そこから目的とする名詞を、容易に抽出して採用することが可能である。
【0145】
そして、図16に示されているように、このようにして取得された写真等の画像データと、自然文データ(直接に記載された文字から抽出されたデータと、非言語情報から抽出された言語情報のデータを含む)を入力データとして、前記第一の実施形態と同様に、これを図1〜2に示されている如き解析装置に入力し、図3〜5に示されている如き処理手順に従って解析処理を施すことにより、かかる入力データに基づいて多次元行列としての関連行列を生成すると共に、この関連行列を特異値分解して表示行列を求める。
【0146】
更に、このようにして得られた解析結果としての表示行列を、第一の実施形態と同様な結果表示手段によって画像表示することにより、図17に示されている如き表示結果を得た。なお、図17では、特許図面用として特別に、各広告の画像を視認可能なレベルに保ちつつ表示出来るように、各広告の大きさや表示数等を調節したものであり、実際には、大きな画面に、多数の広告が、殆ど重なることなく鮮明にカラー表示されたものとするのが望ましい。
【0147】
かかる図17に示された解析結果の表示だけを見ても、何も尺度のない状態では客観的な評価をすることが不可能である多数枚の広告が、視認するだけでなる程と思えるような評価尺度をもって、当該評価尺度による測定値を表わす位置にそれぞれ布置されていることが、容易に理解できる。例えば、左下に行くと殆ど平面的な広告表現になっているのに対して、反対の右上に行くと奥行きが強調された広告表現になっていることが、認められる。また、右下に行くとオーナーのステイタスを表わす高級感を表面に出して人工的乃至は創作物としての車を強調する広告表現になっており、左上に行くと自然(ネイチャー)を強調する広告表現になっていることが認められるのである。また、面白いことに、第1次元軸としてのX軸の尺度を考えてみると、左側では自動車を側面から描いているものが、そこからX軸の原点を通って右側に行くに従って、次第に自動車の前方から描くように自動車を描く方向(視点)が変化していることが、認められる。即ち、X軸は、自動車を描く視点の変化とも関係していることがわかるのである。勿論、このような情報は、解析用のデータとして、一切入力していないし、解析する前は、およそ何人も気づかないことなのである。
【0148】
そして、図17に示された結果からも明らかなように、本発明の解析装置によれば、表面に現われていない、内部に潜んでいる尺度(ものさし)を、それが質的評価のものさしとして極めて好ましいものであることを条件として、新たに生成し、それと同時に、各アイテムをかかる尺度で測定した結果を出力することが出来るのである。
【0149】
さらに、本実施形態では、複数の評価対象物である広告表現を上述の如き手法で解析することによって与えられた評価空間としての座標系において、参照対象物としての具体的な広告案を、かかる座標系に表された尺度に基づいて評価し、その評価結果に応じた位置に布置して表示することが出来るようになっている。
【0150】
すなわち、特定の車の広告表現を検討し決定する会議を想定し、その会議の場で本実施形態の解析結果を利用することを考えてみる。先ず、特定の車の広告表現を決定する場合には、通常、複数の「広告表現案」が提示され、その中のどれが最適かを判断することになるが、その場合に、過去に既に実際に行われた多数の広告表現(本実施形態では、図16における広告▲1▼〜広告YまでのY個の広告表現)のデータを用いて、予め、図17に示されている如き評価空間を生成する。そして、かかる評価空間への「参照対象物」として「複数の新規広告案」を射影して表示せしめるようにする。なお、これら参照対象物は、評価対象物としての複数の広告▲1▼,▲2▼,▲3▼・・・Yと同等のものであって、図16に示されているように、具体的な広告表現を特定し得る写真等の画像データと、そこに表現された言語データ、および風景等の非言語データを言語データに置換した置換言語データからなる入力データによって特定されるものであり、それらの入力データを、広告▲1▼〜広告Yと同様に、参照用データ入力部としてのデータ入力部から解析装置に入力し、得られた参照表示行列を評価空間に射影することによって、かかる評価空間上の位置を決定するようになっている。
【0151】
要するに、かかる「参照対象物」は、第一の実施形態における「第三変数」と数理的には同じものであり、両者ともに「尺度の自動生成には全く利用されないが、自動生成された尺度空間上での位置を射影計算できるベクトル」である。そして、「参照対象物」も、「第三変数」と同様に、射影すべきベクトル、即ち1行乃至は1列の行列の行または、列のどちらかの次元が、射影先の空間の生成の基になった行列、即ち評価対象物によって生成された関連行列(多次元行列)の次元数と同じである限り、前述の如き射影演算に従って、予め自動生成された尺度空間における位置を一意に射影計算することが出来るのである。
【0152】
そして、このようにして求められた評価空間上の射影位置に「広告表現案A」と「広告表現案B」を、それぞれ表示せしめたものの具体例を、図18に示す。なお、図18では、射影演算で求められたベクトルの座標位置に、A案とB案をポイント的に表示したものであるが、これらA案およびB案の位置に、それぞれ、広告表現案AおよびBの各画像データを表示せしめることも可能であり、それによって一層具体的にA,B案を、評価空間上で把握可能とすることが出来る。要するに、本実施形態において図18に示された解析装置の出力結果は、特定の車の広告として実行する予定の新しい「広告表現」の案A,Bを、それぞれの広告表現案が実際に行われた場合を想定して、その「質的表現」が「定量的」尺度で測定し、既に存在する多数の広告表現に基づいて生成された抽象的な評価空間上での「位置」として定量化した形で射影表示せしめたものものである。ここにおいて、かかる評価空間は、まさに自動車を買うことによって、消費者が得ることのできる「価値のバリエーション」の空間であるとも考えられるのであり、その意味においても、得られた出力結果である図18は、多数ある価値の中で、特定の広告表現案A,Bが、どんな価値を訴求しているのか、ということを客観的に、且つ明示的な評価尺度をもって一覧することが出来るようになっているのである。
【0153】
さらに、本実施形態では、評価空間に射影表示された広告表現案AやBが、その内容を僅かに変更せしめられた場合に、かかる評価空間上での表示位置がどのように変化するか、ということをリアルタイムで、且つイメージ的に有利に把握出来る態様で、アニメーション表示し得る機能まで備えている。
【0154】
すなわち、会議等において広告案を最終決定する場面では、「A案かB案か」という単純な択一結果となることは少なく、実際には「基本的にはB案だが、一部に修正を加える」というような判断がなされる場合が多い。このような場合に、B案の一部の要素を実際に削除したり追加したりして修正された「B2案」や「B3案」についても、会議中に、その場でリアルタイムで評価空間上での位置変化を確認することができれば、その修正がどの程度まで修正の目的に沿ったものであるかを定量的に確認できることになり、極めて有意である。
【0155】
そこで、本実施形態においては、それを考慮して構成されている。具体的には、B案について、その言語表現の一部を変更した場合や、非言語表現の一部の要素を変更した場合、言語データの入力を訂正して入力データから関連行列を再構築し、得られた関連行列について、評価空間への射影演算をやり直すことによって、実現され得る。このような処理を実効するために、少なくとも現在のコンピュータは充分高速で、形態素解析も射影座標演算も瞬時に完了する。従って、その場で、たとえば、広告表現B案における「文字として印刷される文章」が編集画面上で少し修正されると、直ちに自動的に形態素解析のやり直しと、射影座標計算を瞬時に行ない、「B案」を修正後の「B2案」の位置にリアルタイムで変更表示することが可能できるのであり、更にまた、一部を再変更すると「B3案」へと、位置が変わる様子を刻々と表示することも出来るのである。
【0156】
なお、広告表現B案のB2案やB3案への変化を表示するに際しては、始めのB案の表示を消した後にB2案を表示し、更にB3案を表示するに際してB2案を消すようにしても良いが、元のB案の表示を残したままで、B2案やB3案の表示を準備に追加表示させるようにしても良い。
【0157】
或いは、また、広告表現B案のB2案やB3案への「位置の変化」を、ある程度の時間(例えば、1〜数秒程度)をかけて評価空間としての座標上で表示点が少しづつ移動するようにアニメーション表示するようにしても良い。このようなアニメーション表示を採用すれば、直前の文章の修正によって、実際にどのような変化が起こるのかのシミュレーション結果を、視覚を通じて感覚的に一層理解し易い形で表示することが可能となる。なお、このようなアニメーション表示の手法は、コンピュータグラフィックス等の分野で周知技術であることから説明を省略するが、例えば、B案の射影位置からB2案やB3案の射影位置までに至る線上で、例えば直線補完で複数点を設定し、微小時間毎に表示位置を変化させること等によって、容易に実現可能である。
【0158】
以上、本発明の第一及び第二の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0159】
例えば、前記実施形態では、特異値分解によって得られた第1次元軸(X軸)と第2次元軸(Y軸)からなる2次元の座標系による表現空間を採用したが、必要に応じて、第1次元軸(X軸)と第3次元軸(Z軸)からなる2次元の座標系による表現空間を採用したり、或いは立体模型で3次元の座標系を表わしたり、或いはモニタ表示で模擬的な3次元の座標系を表わす場合には、第1〜3の次元軸(X,Y,Z軸)からなる3次元の座標系による表現空間を採用することも可能である。
【0160】
また、そのような適当な表現空間に各アイテム(画像と語)を布置して表示するに際して、前述の如き「絶対寄与」の表示や、「第三変数ベクトル」の表示などを、例えばコンピュータのオペレータ入力に従って、適宜に採用したり、表示対象を変更したり、或いは表示方法を変更したり等することが可能であり、更に、それらの中から必要な画面を、任意に印刷出力し得るようにしても良い。特に、印刷にA1版やB1版などの大判カラープリンタを用いれば、多数の画像があっても、重ならず且つ明瞭に判読可能な状態で印刷することが可能である。
【0161】
また、前記実施形態では、視覚で把握される「デザイン」を評価対象としていたが、本発明は、質的情報が視覚で把握されない場合にも、適用することが可能である。例えば、あるシーンに望ましい音色を出す楽器を選択するための会議において、その客観的な評価基準を得たいような場合に、本発明を適用することも可能である。具体的には、「トランペット」や「ホルン」,「トロンボーン」,「ピアノ」,「ベース」,「ヴァイオリン」などの多数の楽器の写真を画像データとして採用する一方、それら各楽器の言語データとして、各楽器の音色を聞いた際のイメージを多数の人に文章で記載して貰ったものを集めて採用し、それら画像データと言語データを用い、前記実施形態と同様な装置によって、前記実施形態と同様な解析を実施することが有効である。
【0162】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置においては、画像データと言語データの関連に着目して特定の解析処理を施し、その結果を、具体的な数値としてではなく、各画像データと各言語データにおける語を、同一の座標系に相関的な位置関係をもって布置して視覚的に展開表示するようにしたのであり、それによって、かかる座標系において、評価対象物が内在的に備えている質的情報を評価する尺度(ものさし)を新たに作成すると同時に、各画像データと言語データにおける語を布置せしめて全体として把握可能な状態で表示せしめることにより、かかる尺度による測定結果を視覚的に把握容易な態様で表わし得るのである。
【0163】
それ故、本発明の解析装置においては、質的情報を有する評価対象物について、客観的妥当性のある尺度に基づく測定結果を出力し得るのであり、それ故、かかる解析装置によって得られた測定結果を用いることにより、評価対象物に関する評価や議論を、共通の尺度に基づく共通の認識と評価のもとで効率的に行なうことが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う構造とされた質的情報の解析装置の一具体例におけるハードウェア構成の概略を示すブロック図である。
【図2】図1に示された解析装置における機能ブロック図である。
【図3】図1に示された構成の解析装置を用いて質的情報の解析処理を実行するための手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示された構成の解析装置を用いて質的情報の解析処理を実行するための手順を示す、図3に続くフローチャートである。
【図5】図1に示された構成の解析装置を用いて質的情報の解析処理を実行するための手順を示す、図4に続くフローチャートである。
【図6】図1に示された構成の解析装置を用いて「洋服デザインの嗜好」についての解析処理を実行するに際してのデータ入力画面の具体例を示す図である。
【図7】図1に示された構成の解析装置を用いて「洋服デザインの嗜好」についての解析処理を実行するに際して生成された多次元行列の具体例を示す説明図である。
【図8】図7に示された多次元行列に対して特異値分解による次元圧縮して得られた表示行列の一例を示す説明図である。
【図9】図8に示された表示行列に基づいて2次元の直交座標系に解析結果を表示せしめた一具体例を示す説明図である。
【図10】図9に示された解析結果において、画像を表示した一具体例を示す説明図である。
【図11】図8に示された表示行列に基づいてX軸への絶対寄与量を考慮して2次元の直交座標系に解析結果を表示せしめた一具体例を示す説明図である。
【図12】図8に示された表示行列に基づいてY軸への絶対寄与量を考慮して2次元の直交座標系に解析結果を表示せしめた一具体例を示す説明図である。
【図13】図1に示された構成の解析装置を用いて「洋服デザインの嗜好」についての解析処理を実行するに際して生成された第三変数の行列の一具体例を示す説明図である。
【図14】図6に示された入力データ等と図7に示された多次元行列および図13に示された第三変数行列の関係を説明するための説明図である。
【図15】図13に示された第三変数としての年令と支出額のベクトルを、図10に示された解析結果の直交座標系に射影表示した一具体例を示す説明図である。
【図16】図1に示された構成の解析装置を用いて「広告表現」についての解析処理を実効する第二の実施形態における解析処理を説明するための図14に対応する説明図である。
【図17】「広告表現」についての解析処理を実行した、本発明の第二の実施形態としての解析結果の一具体例を示す、図10に対応する説明図である。
【図18】図17に示された解析結果において、参照対象物を表示せしめた具体的態様を例示するための説明図である。
【符号の説明】
18 画像データ入力部
20 言語データ入力部
22 第三変数入力部
23 参照用データ入力部
24 データ記憶部
26 形態素解析部
28 品詞選択部
30 フィルタ部
32 行列演算部
34 演算結果記憶部
36 表示部
38 寄与量演算部
40 次元軸指定部
42 第三変数演算部
43 参照ベクトル演算部
Claims (28)
- 複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを入力せしめる画像データ入力手段と、
前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを入力せしめる言語データ入力手段と、
前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けて記憶するデータ記憶手段と、
該データ記憶手段に記憶された前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める行列演算手段と、
該演算手段により得られた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示手段とを、含んで構成し、更に、
前記複数の評価対象物にそれぞれ固有の第三変数を入力せしめる第三変数入力手段と、
該第三変数入力手段で入力された該第三変数から、前記多次元行列において前記画像データを配した行項目および列項目の何れかと次元の等しい第三変数行列を求める第三変数行列演算手段と、
該第三変数行列演算手段により得られた前記第三変数行列を、前記結果表示手段によって表示される前記座標系に射影せしめた参考表示ベクトルを求める第三変数演算手段とを、
設けて、該結果表示手段により、該第三変数演算手段で求められた参考表示ベクトルを、前記画像データおよび前記言語データの語と併せて該座標系に表示せしめるようにしたことを特徴とする画像データで特定可能な質的情報の解析装置。 - 前記第三変数が画像として特定できるものである場合に、該第三変数を特定する第三変数画像データを、前記結果表示手段により前記参考表示ベクトルとして前記座標系に表示せしめる請求項1に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを入力せしめる画像データ入力手段と、
前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを入力せしめる言語データ入力手段と、
前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けて記憶するデータ記憶手段と、
該データ記憶手段に記憶された前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める行列演算手段と、
該演算手段により得られた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示手段とを、含んで構成し、更に、
前記複数の評価対象物と同等の参照対象物について、その質的情報を言語の態様で表わした参照用言語データを入力せしめる参照用言語データ入力手段と、
該参照用言語データにおける語を行又は列の要素として、前記多次元行列における行項目と列項目のうち前記言語データにおける語を要素とする方の項目と次元の等しい一列又は一行の参照表示行列を求める参照表示行列演算手段と、
該参照表示行列演算手段により得られた前記参照表示行列を、前記結果表示手段によって表示される前記座標系に射影せしめた参照表示ベクトルを求める参照ベクトル演算手段とを、
設けて、前記結果表示手段により、前記座標系において前記画像データおよび前記言語データの語と併せて前記参照表示ベクトルを表示せしめるようにしたことを特徴とする画像データで特定可能な質的情報の解析装置。 - 前記参照対象物を特定し得る参照用画像データを入力せしめる参照用画像データ入力手段を設けて、前記結果表示手段により、前記座標系における前記参照表示ベクトルの位置に該参照用画像データを表示するようにした請求項3に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記参照対象物を複数採用し、前記結果表示手段により前記座標系において一つの該参照対象物の表示を終了して別の該参照対象物の表示を開始するに際して、かかる終了する参照対象物における前記参照表示ベクトルを、かかる開始する参照対象物における前記参照表示ベクトルまで、該座標系において次第に変位させて表示する参照用アニメーション表示手段を設けた請求項3又は4に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記言語データ入力手段によって入力される前記言語データが文章の態様で表わされたものである場合に、かかる言語データを形態素に分解する形態素解析手段を設け、該形態素解析手段で得られた該形態素を該言語データにおける語として前記演算手段において前記多次元行列の行項目および列項目の他方とするようにした請求項1乃至5の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記形態素のうちで特定の品詞だけを選択的に排除又は採用する選択手段を設けて、該選択手段で選択されなかった語は、前記演算手段における行項目および列項目の他方において採用しないようにした請求項1乃至6の何れかに記載の解析装置。
- 前記言語データにおける語のうち、前記複数の評価対象物の所定数以上に含まれるものだけを選択するフィルタ手段を設けて、該フィルタ手段で選択されなかった語は、前記演算手段における行項目および列項目の他方において採用しないようにした請求項1乃至7の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記評価対象物が視覚で把握される有体物であり、該評価対象物を撮影したデータを前記画像データとして前記画像データ入力手段により入力せしめるようにした請求項1乃至8の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記言語データ入力手段において、前記言語データをテキストデータとして入力せしめるようにした請求項1乃至9の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記言語データが、少なくとも前記評価対象物の解析主体に対して客観的に取得された客観的言語データである請求項1乃至10の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記評価対象物が商品であり、該商品を撮影したデータを前記画像データとして前記画像データ入力手段で入力せしめる一方、該商品の購入者が該商品を評価した自然文を前記言語データとして前記言語データ入力手段で入力せしめるようにした請求項11に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記評価対象物が、その外観として視覚で把握可能な状態でコメント文等の言語情報を含んでいる場合に、該言語情報を前記言語データとして前記言語データ入力手段により入力せしめるようにした請求項11又は12に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記評価対象物が、その外観として視覚で把握可能な状態で写真やイラスト等の非言語情報を含んでいる場合に、該非言語情報を客観的に言語情報に置換せしめた置換言語情報を、前記言語データとして前記言語データ入力手段により入力せしめるようにした請求項11乃至13の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記言語データ入力手段により入力された前記置換言語情報から、前記多次元行列の要素としての語として名詞だけを選択抽出する名詞選択手段を設けた請求項14に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記非言語情報を複数の者が各別に言語情報に置換せしめた複数の置換言語情報を、それぞれ、前記言語データとして、前記言語データ入力手段によって入力せしめるようにすると共に、それら複数の者によって生成された複数の置換言語情報から得られた複数の該言語データに共通して存在する語だけを、前記多次元行列の要素としての語として選択抽出する共通語選択手段を設けた請求項14又は15に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めると共に、前記結果表示手段において、かかる表示行列で最も大きいものから2又は3の特異値にそれぞれ関わる各次元軸によって2次元又は3次元の直交座標系を構成し、かかる直交座標系における位置として前記画像データと前記言語データにおける語とを、それぞれ視認可能に表示する請求項1乃至16の何れかに記載の質的情報の解析装置。
- 前記直交座標系を構成する少なくとも一つの次元軸に関して、前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量をそれぞれ求める寄与量演算手段と、
該寄与量算出手段によって求められた何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じて、該寄与量が大きい程に表示も大きくなるように、前記画像データおよび前記言語データにおける語をそれぞれ拡大/縮小表示する表示倍率変更手段とを、設けた請求項17に記載の質的情報の解析装置。 - 前記寄与量演算手段により、前記座標系を構成する複数の次元軸のそれぞれに関して前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量を算出すると共に、かかる算出結果を記憶する寄与量記憶手段を設けて、算出した該寄与量を該寄与量記憶手段に記憶せしめる一方、
前記座標系を構成する前記複数の次元軸のうち、何れかの次元軸を選択的に切り換えて指定することの出来る次元軸指定手段と、
前記表示倍率変更手段により何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさで表示された前記画像データおよび前記言語データにおける語を、前記次元軸指定手段による次元軸の指定の変更に従い、別の次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさとなるまで次第に変化させて表示するアニメーション表示手段とを、設けた請求項18に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。 - 前記行列演算手段において前記多次元行列を生成するに際して、該多次元行列における各次元軸の要素に対して相対的な重み付けによる調整を行なう重み付け手段を設けた請求項1乃至19の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- 前記演算手段において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めるようにすると共に、かかる特異値分解の結果に基づいて前記画像データを、該画像データの数よりも少ない数のクラスタに分けるクラスタ分析手段を設けた請求項1乃至20の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析装置。
- コンピュータが、複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを外部から取得する画像データ取得工程と、
該コンピュータが、前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを外部から取得する言語データ取得工程と、
該コンピュータが、前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けてデータ記憶手段に記憶する記憶工程と、
該コンピュータが、前記データ記憶手段に記憶した前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める演算工程と、
該コンピュータが、前記演算工程で求めた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示工程とを、含み、更に、
前記複数の評価対象物にそれぞれ固有の第三変数を外部から取得する第三変数取得工程と、
該第三変数取得工程で取得された該第三変数から、前記多次元行列において前記画像データを配した行項目および列項目の何れかと次元の等しい第三変数行列を求める第三変数行列演算工程と、
該第三変数行列演算工程において求められた前記第三変数行列を、前記結果表示工程において表示される前記座標系に射影せしめた参考表示ベクトルを求める第三変数演算工程とを、
含み、前記結果表示工程において、該第三変数演算工程で求めた前記参考表示ベクトルを、前記画像データおよび前記言語データの語と併せて前記座標系に視認可能に表示せしめることを特徴とする画像データで特定可能な質的情報の解析方法。 - コンピュータが、複数の評価対象物をそれぞれ特定し得る複数の画像データを外部から取得する画像データ取得工程と、
該コンピュータが、前記複数の評価対象物における質的情報をそれぞれ言語の態様で表わした言語データを外部から取得する言語データ取得工程と、
該コンピュータが、前記画像データ入力手段で入力された画像データと、前記言語データ入力手段で入力された言語データを、互いに対応付けてデータ記憶手段に記憶する記憶工程と、
該コンピュータが、前記データ記憶手段に記憶した前記画像データおよび前記言語データを用いて、該画像データを行項目および列項目の何れか一方とすると共に該言語データにおける語を行項目および列項目の他方として表わした度数分布の各値を要素とした多次元行列を生成し、該多次元行列を次元圧縮することにより表示行列を求める演算工程と、
該コンピュータが、前記演算工程で求めた前記表示行列に基づいて、前記画像データと前記言語データにおける語とを、座標系における位置として視認可能に表示する結果表示工程とを、含み、更に、
前記複数の評価対象物と同等の参照対象物について、その質的情報を言語の態様で表わした参照用言語データを外部から取得する参照用言語データ取得工程と、
該参照用言語データにおける語を行又は列の要素として、前記多次元行列における行項目と列項目のうち前記言語データにおける語を要素とする方の項目と次元の等しい一列又は一行の参照表示行列を求める参照表示行列演算工程と、
該参照表示行列演算工程において求められた前記参照表示行列を、前記結果表示工程において表示される前記座標系に射影せしめた参照表示ベクトルを求める参照ベクトル演算工程とを、
含み、前記結果表示工程において、前記座標系において前記画像データおよび前記言語データの語と併せて前記参照表示ベクトルを視認可能に表示せしめることを特徴とする画像データで特定可能な質的情報の解析方法。 - 前記コンピュータが、前記演算工程において、特異値分解で前記次元圧縮をして前記表示行列を求めると共に、前記結果表示工程において、かかる表示行列で最も大きいものから2又は3の特異値にそれぞれ関わる各次元軸によって2次元又は3次元の直交座標系を構成し、かかる直交座標系における位置として前記画像データと前記言語データにおける語とを、それぞれ視認可能に表示する請求項22又は23に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析方法。
- 前記コンピュータが、前記直交座標系を構成する少なくとも一つの次元軸に関して、前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量をそれぞれ求める寄与量演算工程と、
該コンピュータが、該寄与量演算工程において求めた何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じて、該寄与量が大きい程に表示も大きくなるように、前記画像データおよび前記言語データにおける語をそれぞれ拡大/縮小表示する表示倍率変更工程とを、
含む請求項24に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析方法。 - 前記コンピュータが、前記寄与量演算工程において、前記座標系を構成する複数の次元軸のそれぞれに関して前記画像データおよび前記言語データにおける語の寄与量を算出すると共に、かかる算出結果を記憶するようにする一方、
該コンピュータが、前記座標系を構成する前記複数の次元軸のうち、何れかの次元軸を選択的に切り換えて指定する次元軸指定信号を外部から取得する次元軸指定工程と、
該コンピュータが、前記表示倍率変更工程において何れかの次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさで表示された前記画像データおよび前記言語データにおける語を、前記次元軸指定工程における次元軸の指定の変更に従い、別の次元軸に関する前記寄与量に応じた大きさとなるまで次第に変化させて表示するアニメーション表示工程とを、
含む請求項25に記載の画像データで特定可能な質的情報の解析方法。 - 請求項22乃至26の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムが記載された、コンピュータで読取可能な情報記録媒体。
- 請求項22乃至26の何れかに記載の画像データで特定可能な質的情報の解析方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
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