JP2004070304A - トナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供すること。
【解決手段】本発明のトナーは、主として樹脂材料で構成される分散質が、分散媒中に微分散した分散液6を用いて製造されるものである。分散液供給部4内に投入された分散液6は、ヘッド部2に供給される。ヘッド部2は、分散液6を貯留する分散液貯留部と、分散液6を吐出する吐出部とを有している。分散液貯留部内の分散液6は、分散液貯留部に生じた気泡の体積変化により、吐出部から固化部3に吐出される。吐出された分散液6は粒状をなしている。固化部3において、分散液6は、搬送されつつ、分散媒が除去されることにより固化し、トナー粒子9となる。固化部3を構成する筒状のハウジング31には、電圧印加手段8が接続されており、ハウジング31には、粒状の分散液6と同じ極性の電圧が印加されている。得られたトナー粒子9は、回収部5で回収される。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のトナーは、主として樹脂材料で構成される分散質が、分散媒中に微分散した分散液6を用いて製造されるものである。分散液供給部4内に投入された分散液6は、ヘッド部2に供給される。ヘッド部2は、分散液6を貯留する分散液貯留部と、分散液6を吐出する吐出部とを有している。分散液貯留部内の分散液6は、分散液貯留部に生じた気泡の体積変化により、吐出部から固化部3に吐出される。吐出された分散液6は粒状をなしている。固化部3において、分散液6は、搬送されつつ、分散媒が除去されることにより固化し、トナー粒子9となる。固化部3を構成する筒状のハウジング31には、電圧印加手段8が接続されており、ハウジング31には、粒状の分散液6と同じ極性の電圧が印加されている。得られたトナー粒子9は、回収部5で回収される。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の転写材にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱、加圧等により、前記トナー画像を定着する工程とを有している。
【0003】
このような電子写真法で用いられるトナーの製造方法としては、粉砕法、重合法、スプレードライ法が用いられている。
【0004】
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を、樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である(例えば、非特許文献1参照)。このような粉砕法は、原料の選択の幅が広く、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、各粒子間での形状のバラツキが大きく、その粒径分布も広くなりやすいという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0005】
重合法は、樹脂の構成成分である単量体を用いて、液相中等で、重合反応を行い、目的とする樹脂を生成することにより、トナー粒子を製造するものである(例えば、特許文献1参照)。このような重合法は、得られるトナー粒子の形状を、比較的真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることができるという点で優れている。しかしながら、重合法では、各粒子間で粒径のバラツキを十分に小さくすることができない場合がある。また、重合法では、樹脂材料の選択の幅が狭く、目的とする特性のトナーを得るのが困難となる場合がある。
【0006】
スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、溶媒に溶解したトナー製造用の原料を噴霧させることにより、微細化された粉末をトナーとして得る方法である。スプレードライ法では、前述したような粉砕工程が不要であるという利点がある。しかしながら、このようなスプレードライ法では、高圧のガスを用いて、原料の噴霧を行うため、原料の噴霧条件を正確に制御するのが困難である。このため、例えば、目的とする形状、大きさのトナー粒子を効率良く製造するのが困難である。また、スプレードライ法では、噴霧により形成された粒子の大きさのバラツキが大きいため、各粒子の移動速度のバラツキも大きい。このため、噴霧された原料が固化する前に、噴霧された粒子間での衝突、凝集が起こり異形状の粉末が形成され、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキがさらに大きくなることもある。このように、スプレードライ法で得られるトナーは、各粒子間での形状、大きさのバラツキが大きいため、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0007】
【非特許文献1】
電子写真学会監修「電子写真の基礎と応用」コロナ社発行、1988年、p482−486
【特許文献1】
特開平6−332257号公報(第2頁28〜35行目)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供すること、また、このようなトナーを製造することができるトナーの製造方法、トナー製造装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(58)の本発明により達成される。
【0010】
(1) トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
気泡の体積変化によりヘッド部から前記分散液を間欠的に吐出し、気流により固化部内を搬送させつつ固化させ、粒状とすることを特徴とするトナーの製造方法。
【0011】
(2) 前記気泡の体積変化は、主として、前記分散媒の液/気相変化に伴うものである上記(1)に記載のトナーの製造方法。
【0012】
(3) 前記固化部を通過する際に、前記ヘッド部から吐出された前記分散液中の前記分散質を凝集させる上記(1)または(2)に記載のトナーの製造方法。
【0013】
(4) 前記分散質は、液体である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0014】
(5) 前記分散媒は、主として水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0015】
(6) 前記分散液は、乳化分散剤を含むものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0016】
(7) 前記分散液は、O/W型エマルションである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0017】
(8) 前記分散液は、樹脂またはその前駆体を含む材料を、少なくとも水を含む液体中に投入することにより調製したものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0018】
(9) 前記分散液は、少なくとも一部が軟化または溶融した状態の前記材料を、少なくとも水を含む液体中に投入することにより調製したものである上記(8)に記載のトナーの製造方法。
【0019】
(10) 前記材料は、粉末状または粒状をなすものである上記(8)または(9)に記載のトナーの製造方法。
【0020】
(11) 前記分散液は、少なくとも樹脂またはその前駆体とその少なくとも一部を溶解する溶媒とを含む樹脂液と、少なくとも水を含む水性液とを混合する混合工程を経て調製されたものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0021】
(12) 前記樹脂液と前記水性液との混合は、前記水性液中に、前記樹脂液の液滴を滴下することにより行う上記(11)に記載のトナーの製造方法。
【0022】
(13) 前記混合工程で得られた混合液から前記溶媒を実質的に除去することなく、前記混合液をそのまま前記分散液として用い、前記分散液が前記固化部を通過する際に前記溶媒を除去する上記(11)または(12)に記載のトナーの製造方法。
【0023】
(14) 前記分散液は、前記混合工程の後、前記溶媒の少なくとも一部を除去することにより調製したものである上記(11)または(12)に記載のトナーの製造方法。
【0024】
(15) 前記溶媒の除去は、加熱により行う上記(14)に記載のトナーの製造方法。
【0025】
(16) 前記分散液中における前記分散質の平均粒径は、0.05〜1.0μmである上記(1)ないし(15)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0026】
(17) 前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足する上記(1)ないし(16)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0027】
(18) 前記分散液中における前記分散質の含有量は、1〜99wt%である上記(1)ないし(17)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0028】
(19) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の一滴分の吐出量が0.05〜500plである上記(1)ないし(18)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0029】
(20) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の平均粒径をDd[μm]、前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足する上記(1)ないし(19)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0030】
(21) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足する上記(1)ないし(20)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0031】
(22) 前記ヘッド部が、前記分散液を貯留する分散液貯留部と、前記分散液貯留部に貯留された前記分散液に熱エネルギーを与え、前記分散液貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記分散液を吐出する吐出部とを有するものである上記(1)ないし(21)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0032】
(23) 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである上記(22)に記載のトナーの製造方法。
【0033】
(24) 前記発熱体に交流電圧を印加することにより、前記熱エネルギーを発生させる上記(22)または(23)に記載のトナーの製造方法。
【0034】
(25) 前記発熱体に印加する交流電圧の周波数は、1〜50kHzである上記(24)に記載のトナーの製造方法。
【0035】
(26) 前記ヘッド部から吐出する前記分散液は、ほぼ一方向に流れるガス流中に放出される上記(1)ないし(25)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0036】
(27) 複数個の前記ヘッド部から前記分散液を吐出する上記(1)ないし(26)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0037】
(28) 互いに隣接する前記ヘッド部の間から気体を噴射しつつ、前記分散液を吐出する上記(27)に記載のトナーの製造方法。
【0038】
(29) 互いに隣接する前記ヘッド部の間から噴射される前記気体の湿度は、50%RH以下である上記(28)に記載のトナーの製造方法。
【0039】
(30) 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つからの前記分散液の吐出タイミングをずらす上記(27)ないし(29)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0040】
(31) 前記固化部に、前記分散液と同じ極性の電圧を印加した状態で、前記分散液を吐出する上記(1)ないし(30)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0041】
(32) 前記ヘッド部から吐出する前記分散液の初速度は、0.1〜10m/秒である上記(1)ないし(31)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0042】
(33) 前記ヘッド部内における前記分散液の粘度は、5〜3000cpsである上記(1)ないし(32)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0043】
(34) 前記固化部において、前記分散媒を除去する上記(1)ないし(33)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0044】
(35) 前記固化部内の圧力は、0.15MPa以下である上記(1)ないし(34)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0045】
(36) 前記分散液中の前記分散質は、その成分の少なくとも一部が溶媒に溶解したものである上記(1)ないし(35)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0046】
(37) 前記固化部において、前記分散質中に含まれる前記溶媒の少なくとも一部を除去する上記(36)に記載のトナーの製造方法。
【0047】
(38) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液は、前記分散質の少なくとも一部が溶融した状態のものである上記(1)ないし(37)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0048】
(39) 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を、前記固化部で冷却する上記(1)ないし(38)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0049】
(40) 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を、前記固化部で加温する上記(1)ないし(39)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0050】
(41) 上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするトナー。
【0051】
(42) 平均粒径が2〜20μmである上記(41)に記載のトナー。
【0052】
(43) 各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下である上記(41)または(42)に記載のトナー。
【0053】
(44) 下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上である上記(41)ないし(43)のいずれかに記載のトナー。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0054】
(45) 各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下である上記(41)ないし(44)のいずれかに記載のトナー。
【0055】
(46) 前記分散質が凝集した凝集体で構成される上記(41)ないし(45)のいずれかに記載のトナー。
【0056】
(47) 上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の方法を実施することを特徴とするトナー製造装置。
【0057】
(48) トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いてトナーを製造する装置であって、
前記分散液を吐出するヘッド部と、該ヘッド部に前記分散液を供給する分散液供給部と、前記ヘッド部から吐出された前記分散液を固化させ、粒状とする固化部とを有し、
前記ヘッド部が、前記分散液を貯留する分散液貯留部と、前記分散液貯留部に貯留された前記分散液に熱エネルギーを与え、前記分散液貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記分散液を吐出する吐出部とを有することを特徴とするトナー製造装置。
【0058】
(49) 前記分散液供給部に、前記分散液を攪拌する攪拌手段を有する上記(48)に記載のトナー製造装置。
【0059】
(50) 前記発熱体は、交流電圧の印加により発熱するものである上記(48)または(49)に記載のトナー製造装置。
【0060】
(51) 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を搬送する搬送手段を有する上記(48)ないし(50)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0061】
(52) 前記搬送手段がガス流を供給するガス流供給手段である上記(51)に記載のトナー製造装置。
【0062】
(53) 前記ヘッド部を複数個有する上記(48)ないし(52)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0063】
(54) 互いに隣接する前記吐出部の間に、気体を噴射するガス噴射口を有する上記(53)に記載のトナー製造装置。
【0064】
(55) 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つで、前記分散液の吐出タイミングが異なる上記(53)または(54)に記載のトナー製造装置。
【0065】
(56) 前記固化部に電圧を印加するための電圧印加手段を有する上記(48)ないし(55)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0066】
(57) 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである上記(48)ないし(56)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0067】
(58) 前記固化部内の圧力を調整する圧力調整手段を有する上記(48)ないし(57)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0068】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0069】
図1は、本発明のトナー製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図2は、図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【0070】
[分散液]
まず、本発明で用いる分散液6について説明する。本発明のトナーは、分散液6を用いて製造されるものである。分散液6は、分散媒62中に分散質(分散相)61が微分散した構成となっている。
【0071】
<分散媒>
分散媒62は、後述する分散質61を分散可能なものであればいかなるものであってもよいが、主として、一般に溶媒として用いられているような材料で構成されたものであるのが好ましい。
【0072】
このような材料としては、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0073】
上記の材料の中でも、分散媒62としては、主として水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたものであるのが好ましい。これにより、例えば、分散媒62中における分散質61の分散性を高めることができ、分散液6中における分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのバラツキの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子9は、粒子間での大きさ、形状のバラツキが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0074】
また、分散媒62の構成材料として複数の成分の混合物を用いる場合、分散媒の構成材料としては、前記混合物を構成する少なくとも2種の成分の間で、共沸混合物(最低沸点共沸混合物)を形成し得るものを用いるのが好ましい。これにより、後述するトナー製造装置の固化部において、分散媒62を効率良く除去することが可能となる。また、後述するトナー製造装置の固化部等において、比較的低い温度で分散媒62を除去することが可能となり、得られるトナー粒子9の特性の劣化をより効果的に防止できる。例えば、水との間で、共沸混合物を形成し得る液体としては、二硫化炭素、四塩化炭素、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、アニソール、2−メトキシエタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン、アクリロニトリル、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、アクリルアルデヒド等が挙げられる。
【0075】
また、分散媒62の沸点は、特に限定されないが、180℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましく、35〜130℃であるのがさらに好ましい。このように、分散媒62の沸点が比較的低いものであると、後述するトナー製造装置の固化部等において、分散媒62を比較的容易に除去することが可能となる。また、分散媒62としてこのような材料を用いることにより、最終的に得られるトナー粒子9中における分散媒62の残留量を特に少ないものにすることができる。その結果トナーとしての信頼性がさらに高まる。
【0076】
なお、分散媒62中には、上述した材料以外の成分が含まれていてもよい。例えば、分散媒62中には、後に分散質61の構成成分として例示する材料や、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等の各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0077】
<分散質>
分散質61は、通常、少なくとも、主成分としての樹脂(またはその前駆体としてのモノマー、ダイマー、オリゴマー等)を含む材料で構成されている。
【0078】
以下、分散質61の構成材料について説明する。
1.樹脂(バインダー樹脂)
樹脂(バインダー樹脂)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、後述するトナー製造装置の固化部等において、分散質61中の原料を重合反応させることによりトナーを製造する場合には、通常、上記の樹脂材料のモノマー、ダイマー、オリゴマー等を用いる。
【0079】
分散質61中における樹脂の含有量は、特に限定されないが、2〜98wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。
【0080】
2.溶媒
分散質61中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、分散液6中における分散質61の流動性を高めることができ、分散液6中における分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのバラツキの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子9は、粒子間での大きさ、形状のバラツキが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0081】
溶媒としては、分散質61を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述するようなトナー製造装置の固化部等において、容易に除去されるものであるのが好ましい。
【0082】
また、溶媒は、前述した分散媒62との相溶性が低いもの(例えば、25℃における分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、分散液6中において、分散質61を安定した状態で微分散させることができる。
【0083】
また、溶媒の組成は、例えば、前述した樹脂、着色剤の組成や、分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
【0084】
例えば、溶媒としては、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。この中でも特に、有機溶媒を含むものであるのが好ましく、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒等から選択される1種または2種以上を含むものであるのがより好ましい。このような溶媒を用いることにより、分散質61中において、比較的容易に、前述したような各成分を十分均一に分散させることができる。
【0085】
また、分散液6中には、通常、着色剤が含まれている。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような着色剤は、通常、分散液6においては、分散質61中に含まれる。
【0086】
分散液6中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10wt%であるのが好ましく、0.3〜3.0wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着特性や帯電特性が低下する可能性がある。
【0087】
また、分散液6中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス・ロウ、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス・ロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス・ロウ、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス・ロウ等の天然ワックス・ロウや、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス(ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレンワックス(ポリプロピレン樹脂)、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス・ロウ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ワックスとしては、さらに低分子量の結晶性高分子樹脂を使用してもよく、例えば、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等を使用することもできる。
【0088】
分散液6中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、1.0wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以下であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナー粒子中において、ワックスが遊離、粗大化して、トナー粒子表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
【0089】
ワックスの軟化点は、特に限定されないが、50〜180℃であるのが好ましく、60〜160℃であるのがより好ましい。
【0090】
また、分散液6中には、これら以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、乳化分散剤、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。この中でも、乳化分散剤を用いた場合、例えば、分散液6中における分散質61の分散性を向上させることが可能となる。ここで、乳化分散剤としては、例えば、乳化剤、分散剤、分散助剤等が挙げられる。
【0091】
分散剤としては、例えば、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。この中でも、非イオン性有機分散剤またはアニオン性有機分散剤が特に好ましい。
【0092】
分散液6中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、3.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜1.0wt%であるのがより好ましい。
【0093】
また、分散助剤としては、例えば、アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0094】
分散助剤は、分散剤と併用するものであるのが好ましい。分散液6が分散剤を含むものである場合、分散液6中における分散助剤の含有量は、特に限定されないが、2.0wt%以下であるのが好ましく、0.005〜0.5wt%であるのがより好ましい。
【0095】
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
【0096】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0097】
また、分散液6中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
【0098】
また、分散液6中には、分散質61以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、分散液6中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
【0099】
分散液6では、分散質61が分散媒62中に微分散した状態となっている。
分散液6中における分散質61の平均粒径は、特に限定されないが、0.05〜1.0μmであるのが好ましく、0.1〜0.8μmであるのがより好ましい。分散質61の平均粒径がこのような範囲の値であると、最終的に得られるトナー粒子9は、十分に円形度が高く、各粒子間での特性、形状の均一性に優れたものとなる。
【0100】
分散液6中における分散質61の含有量は、特に限定されないが、1〜99wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。分散質61の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナー粒子9の円形度が低下する傾向を示す。一方、分散質61の含有量が前記上限値を超えると、分散媒62の組成等によっては、分散液6の粘性が高くなり、最終的に得られるトナー粒子9の形状、大きさのバラツキが大きくなる傾向を示す。
【0101】
このような分散質61は、分散液6中において、液体(例えば、溶液状態、溶融状態)であるのが好ましい。これにより、分散媒62中に微分散した分散質61の平均粒径を、容易に、上記のような範囲の値にすることができる。
【0102】
また、分散媒62中に分散している分散質61は、例えば、各粒子間で、ほぼ同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、分散液6は、分散質61として、主として樹脂材料で構成されたものと、主としてワックスで構成されたものとを含むようなものであってもよい。
【0103】
また、このような分散液6は、O/W型エマルション、すなわち、水性の分散媒62中に、油性(ここでは、水に対する溶解度が小さい液体のことを指す)の分散質61が分散したものであるのが好ましい。これにより、各粒子間での形状、大きさのバラツキが小さいトナーを安定的に製造することができる。また、分散媒62に水性の液体を用いることにより、後述するようなトナー製造装置の固化部等における有機溶媒の揮発量を少なく、または実質的に有機溶媒を揮発しないものとすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0104】
また、分散液6中における分散質61の平均粒径をDm[μm]、トナー粒子9の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.01≦Dm/Dt≦0.2の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、各粒子間での、形状、大きさのバラツキが特に小さいトナーを得ることができる。
【0105】
以上説明したような分散液6は、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体に、必要に応じて分散剤および/または分散媒を添加した水性溶液を用意する。
一方、トナーの主成分となる樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。
【0106】
次に、上記樹脂液を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水性の分散媒62中に、樹脂材料を含む分散質62が分散した分散液6が得られる。このような方法で、分散液6を調製することにより、分散液6中における分散質61の円形度をさらに高めることができる。その結果、トナー粒子9は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のバラツキが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱しておいてもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた分散液6を加熱したり、減圧雰囲気下に置くことにより、分散質62中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0107】
以上、分散液6の調製方法の一例について説明したが、分散液はこのような方法により調製されたものに限定されない。例えば、分散液6は、以下のような方法によっても、調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体に、必要に応じて分散剤および/または分散媒を添加した水性溶液を用意する。
一方、樹脂材料を含む、粉末状または粒状の材料を用意する。
次に、この粉末状または粒状の材料を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に投入していくことにより、水性の分散媒62中に、樹脂材料を含む分散質62が分散した分散液6が得られる。このような方法で、分散液6を調製した場合、後述するようなトナー製造装置の固化部等において、実質的に有機溶媒を揮発しないようにすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。なお、前記材料を投入する際、例えば、水性溶液を加熱しておいてもよい。
【0108】
また、分散液6は、以下のような方法によっても、調製することができる。
まず、少なくとも樹脂材料を分散してなる樹脂分散液と、少なくとも着色剤を分散してなる着色剤分散液とを調製する。
次に、樹脂分散液と、着色剤分散液とを混合・攪拌する。このとき、必要に応じて、攪拌しながら無機金属塩等の凝集剤を加えてもよい。
所定時間、攪拌することにより、樹脂材料、着色剤等が凝集した凝集体が形成される。その結果、前記凝集体が分散質61として分散した分散液6が得られる。
【0109】
[トナー製造装置]
本発明のトナー製造装置1は、上述したような分散液6を吐出するヘッド部2と、ヘッド部2に分散液6を供給する分散液供給部4と、ヘッド部2から吐出された分散液6が搬送される固化部3と、製造されたトナー粒子9を回収する回収部5とを有している。
【0110】
分散液供給部4は、ヘッド部2に分散液6を供給する機能を有するものであればよいが、図示のように、分散液6を攪拌する攪拌手段41を有するものであってもよい。これにより、例えば、分散質61が分散媒中に分散しにくいものであっても、分散質61が十分均一に分散した状態の分散液6を、ヘッド部2内に供給することができる。
【0111】
ヘッド部2は、分散液貯留部21と、発熱体22と、吐出部23とを有している。
【0112】
分散液貯留部21には、上述したような分散液6が貯留されている。
分散液貯留部21は、筒状を成しており、その内部に、上述したような分散液6が貯留されている。
【0113】
発熱体22は、電圧の印加等により、熱エネルギーを発生する機能を有するものである。発熱体22で発生した熱エネルギーは、分散液貯留部21内に貯留された分散液6を急速に加熱し、膜沸騰等により、分散液貯留部21内に気泡13を発生させる。
【0114】
分散液貯留部21内に発生した気泡13の体積変化により、分散液貯留部21に貯留された分散液6は、吐出部23から固化部3に吐出される。
【0115】
なお、分散液貯留部21と発熱体22との間には、分散液6と発熱体22とが直接接触するのを防止する保護膜24が設けられている。
【0116】
吐出部23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される分散液6、形成されるトナー粒子9の真球度を高めることができる。
【0117】
吐出部23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部23の直径が前記下限値未満であると、吐出部23付近での目詰まりが発生し易くなる。一方、吐出部23の直径が前記上限値を超えると、吐出される液滴状の分散液6の大きさを制御するのが困難となる場合がある。
【0118】
上記のような熱エネルギーの発生を繰り返し行うことにより、分散液貯留部21内の気泡13の体積が経時的に変化し(分散液貯留部21内に間欠的に気泡13が発生し)、これにより、分散液貯留部21内から粒状の分散液6が繰り返し吐出される。
【0119】
このように、本発明では、発熱体が熱エネルギーを発生することにより、気泡を発生させ、この気泡の体積変化により、分散液6を粒状に吐出させ、これを固化することによりトナーを得る点に特徴を有する。
【0120】
従来、流動性を有する原料を用いてトナーを製造する方法としては、スプレードライ法が知られていた。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、溶媒に溶解したトナー製造用の原料を噴霧させることにより、微細化された粉末をトナーとして得る方法である。しかしながら、このようなスプレードライ法は、以下のような問題点を有していた。
【0121】
すなわち、スプレードライ法では、高圧のガスを用いて、原料の噴霧を行うため、原料の噴霧条件を正確に制御するのが困難であった。このため、例えば、目的とする形状、大きさのトナー粒子を効率良く製造するのが困難であった。また、スプレードライ法では、噴霧により形成された粒子の大きさのバラツキが大きい(粒度分布の幅が大きい)ため、各粒子の移動速度のバラツキも大きい。このため、噴霧された原料が固化する前に、噴霧された粒子間での衝突、凝集が起こり異形状の粉末が形成され、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキがさらに大きくなることもあった。このように、スプレードライ法で得られるトナーは、各トナー粒子間での形状、大きさのバラツキが大きいため、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキも大きく、トナー全体としての信頼性も低い。また、製造するトナー粒子の大きさを比較的小さいものとする場合には、トナー粒子の粒度分布はブロードとなり易く、上述したような傾向がさらに顕著なものとなる。
【0122】
これに対し、本発明では、熱エネルギーの発生を繰り返し行うことにより、分散液貯留部内の気泡の体積を経時的に変化させ(分散液貯留部内に間欠的に気泡を発生させ)、分散液を一滴ずつ間欠的に吐出するため、安定した形状のトナーを得ることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
【0123】
特に、本発明では、ヘッド部から吐出する吐出液として、分散質61が分散媒62中に分散した分散液(分散系)6を用いる点に特徴を有する。
【0124】
分散媒62は、一般に、樹脂(またはその前駆体)を含む分散質61に比べて低い沸点を有している。このため、上記のような気泡は、微視的に見て、分散媒62において優先的に発生する。すなわち、前記気泡の体積変化は、主として、分散媒62の液/気相変化に伴うものである。
【0125】
したがって、吐出液として樹脂が実質的に均一に溶けた液体を用いる場合に比べて、より低い温度で、気泡の体積を変化させることができ、分散液を効率良く吐出させることができる。
【0126】
また、吐出液として樹脂が実質的に均一に溶けた液体を用いた場合に比べて、熱エネルギー発生時における気泡の体積変化の追従性がよくなる(応答速度が速くなる)ため、分散液6の吐出間隔を短くすることができる。その結果、トナーの生産性が向上する。
【0127】
また、吐出液として樹脂が実質的に均一に溶けた液体を用いた場合に比べて、分散液全体としての平均粘度は高くても局所的には分散媒の粘度と同等であるので液全体の粘度の割には分断されやすくなる。従って固形分濃度を比較的高くできる。また、吐出部23の面積を小さくした場合であっても、液滴の切れが良いので目詰まり等の不都合を生じにくい。このため、より微細なトナー粒子9を比較的容易に得ることも可能となる。
【0128】
また、上記のような気泡が主として分散媒62において発生することにより、発生した熱エネルギーが分散質61に直接与えられるのを防止することができる。これにより、最終的に得られるトナー粒子9の構成材料が全体として受ける熱履歴を少なくすることができる。その結果、トナーは、熱による劣化が少なく、より信頼性の高いものとなる。
【0129】
また、上記のような気泡の発生に伴い、分散液6中の分散媒62の少なくとも一部が気化により除去されてもよい。これにより、後述する固化部3における分散媒62の除去量を少なくすることができ、トナーの生産効率をさらに向上させることができる。
【0130】
また、本発明では、発熱体からの熱エネルギーの発生周期、吐出部の開口面積(ノズル径)、分散液の温度・粘度、分散液の一滴分の吐出量、分散液中に占める分散質の含有率、分散液中における分散質の粒径等を比較的正確にコントロールすることができ、製造すべきトナーを所望の形状、大きさに制御することが容易にできる。また、これらの条件等をコントロールすることにより、例えば、トナーの製造量等を容易かつ確実に管理することができる。
【0131】
また、本発明では、発熱体が発生する熱エネルギーを用いるため、熱エネルギーの発生周期等を制御することにより、分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される粒状の分散液同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、従来のスプレードライ法を用いた場合に比べて、異形状の粉末等を形成し難い。
【0132】
前記熱エネルギーの発生は、いかなる方法で行ってもよいが、発熱体22に交流電圧を印加することにより行うものであるが好ましい。交流電圧の印加により熱エネルギーを発生させることにより、気泡13の発生周期や、気泡13の経時的な体積変化率を正確に制御することが容易にできる。その結果、トナーの製造量やトナー粒子9の大きさ等を正確にコントロールすることができる。
【0133】
交流電圧の印加により熱エネルギーを発生させる場合、発熱体22に印加する交流電圧の周波数は、特に限定されないが、1〜50kHzであるのが好ましく、5〜30kHzであるのがより好ましい。交流電圧の周波数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、交流電圧の周波数が前記上限値を超えると、粒状の分散液6の吐出が追随できなくなり、分散液6一滴分の大きさのバラツキが大きくなる。
【0134】
本発明においては、ヘッド部2から固化部3に吐出される分散液6の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。分散液6の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、分散液6の初速度が前記上限値を超えると、得られるトナー粒子9の真球度が低下する傾向を示す。
【0135】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6の粘度は、特に限定されないが、例えば、5〜3000cpsであるのが好ましく、10〜1000cpsであるのがより好ましい。分散液6の粘度が前記下限値未満であると、吐出される粒子(粒状の分散液6)の大きさを十分に制御するのが困難となり、得られるトナー粒子9のバラツキが大きくなる場合がある。一方、分散液6の粘度が前記上限値を超えると、吐出すべき分散液6に優先して気泡が吐出する、いわゆる空打ち現象が発生し易くなり、得られるトナー粒子9の大きさ、形状や、トナー製造量の制御が困難となる。
【0136】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6は、予め加温されたものであってもよい。このように分散液6を加温することにより、例えば、分散質61が室温で固体状態(または粘度が比較的高い状態)のものであっても、吐出時において、分散質を溶融状態(または粘度が比較的低い状態)にさせることができる。その結果、後述する固化部3において、粒状の分散液6中に含まれる分散質61の凝集(融合)が円滑に進行し、得られるトナー粒子9の円形度が特に高いものとなる。
【0137】
また、分散液6の一滴分の吐出量は、分散液6中に占める分散質61の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜5plであるのがより好ましい。分散液6の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、トナー粒子9を適度な粒径のものにすることができる。
【0138】
ところで、ヘッド部2から吐出される粒状の分散液6は、一般に、分散液6中の分散質61に比べて十分に大きいものである。すなわち、粒状の分散液6中には、多数個の分散質61が分散した状態となっている。このため、分散質61の粒径のバラツキが比較的大きいものであっても、吐出される粒状の分散液6中に占める分散質61の割合は、各液滴でほぼ均一である。したがって、分散質61の粒径のバラツキが比較的大きい場合であっても、分散液6の吐出量をほぼ均一とすることにより、トナー粒子9は粒径のバラツキの小さいものとなる。このような傾向は、より顕著なものとなる。例えば、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、分散液6中における分散質61の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足するのが好ましく、Dm/Dd<0.2の関係を満足するのがより好ましい。
【0139】
また、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.1≦Dt/Dd≦0.8の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、十分に微細で、かつ、円形度が大きく、粒度分布がシャープなトナー粒子9を比較的容易に得ることができる。
【0140】
図示の構成のトナー製造装置1は、ヘッド部2を複数個有している。そして、これらのヘッド部2から、それぞれ、粒状の分散液6が固化部3に吐出される。
【0141】
各ヘッド部2は、ほぼ同時に分散液6を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、分散液6の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部2から吐出された粒状の分散液6が固化する前に、粒状の分散液が衝突し、凝集するのをより効果的に防止することができる。
【0142】
また、図2に示すように、トナー製造装置1は、ガス流供給手段10を有しており、このガス流供給手段10から供給されたガスが、ダクト101を介して、ヘッド部2−ヘッド部2間に設けられた各ガス噴射口7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部23から間欠的に吐出された粒状の分散液6の間隔を保ちつつ、分散液6を搬送し、固化させることができる。その結果、吐出される粒状の分散液6同士の衝突、凝集がより効果的に防止される。
【0143】
また、ガス流供給手段10から供給されたガスをガス噴射口7から噴射することにより、固化部3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、固化部3内の粒状の分散液6(トナー粒子9)をより効率良く搬送することができる。
【0144】
また、ガス噴射口7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部2から吐出される粒子の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各粒子間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0145】
また、ガス流供給手段10には、熱交換器11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、固化部3に吐出された粒状の分散液6を効率良く固化させることができる。
【0146】
また、このようなガス流供給手段10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部23から吐出された分散液6の固化速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0147】
ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、分散液6中に含まれる分散質61、分散媒62の組成等により異なるが、通常、100〜250℃であるのが好ましく、150〜200℃であるのがより好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られるトナー粒子9の形状の均一性を保ちつつ、分散液6中に含まれる分散媒62を効率良く除去することができ、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0148】
また、ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましく、20%RH以下であるのがさらに好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する固化部3において、分散液6に含まれる分散媒62を効率良く除去することが可能となり、トナーの生産性がさらに向上する。
【0149】
ヘッド部2から吐出された粒状の分散液6は、固化部3を搬送されつつ固化することにより、トナー粒子9となる。
【0150】
トナー粒子9は、例えば、吐出された粒状の分散液6から分散媒62を除去することにより得られる。このような場合、吐出された分散液6中の分散媒62が除去されるのに伴い、分散液6中に含まれる分散質61が凝集する。その結果、トナー粒子9は、分散質61の凝集体として得られる。なお、分散質61中に前述したような溶媒が含まれる場合には、当該溶媒は、例えば、固化部3において除去されるものであってもよいし、前述した発熱体22の発熱により除去されるものであってもよい。
【0151】
分散液6中に含まれる分散質61の粒径は、通常、得られるトナー粒子9(吐出される粒状の分散液6)に比べて、十分に小さいものである。したがって、分散質61の凝集体として得られるトナー粒子9は、十分に円形度の大きいものとなる。
【0152】
また、分散媒61を除去してトナー粒子9を得る場合、通常、吐出部23から吐出される分散液6に比べて、得られるトナー粒子6は小さいものとなる。このため、吐出部23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、得られるトナー粒子9の大きさを比較的小さいものとすることができる。したがって、本発明では、ヘッド部2が、特別な精密加工を施すことにより得られたものでなくても(比較的容易に製造できるものであっても)、十分に微細なトナー粒子9を得ることができる。
【0153】
また、上記のように、本発明では吐出部23の面積を極端に小さくする必要がないので、比較的容易に、各ヘッド部2から吐出される分散液6の粒度分布を、十分にシャープなものとすることができる。その結果、トナー粒子9も、粒径のバラツキの小さいもの、すなわち、粒度分布がシャープなものとなる。
【0154】
以上説明したように、本発明では、吐出液として分散液を用いることにより、製造するトナー粒子9の粒径が十分に小さい場合であっても、容易に、その円形度を十分に高いものとし、かつ、粒度分布がシャープなものとすることができる。これにより、得られるトナーは、各粒子間での帯電が均一で、かつ、トナーを印刷に用いたときに、現像ローラ上に形成されるトナーの薄層が平準化、高密度化したものとなる。その結果、カブリ等の欠陥を生じ難く、よりシャープな画像を形成することができる。また、トナー粒子9の形状、粒径が揃っているため、トナー全体(トナー粒子9の集合体)としての嵩密度を大きくすることができる。その結果、同一容積のカートリッジ内へのトナーの充填量をより多くしたり、カートリッジの小型化を図る上でも有利である。
【0155】
固化部3は、筒状のハウジング31で構成されている。
トナーの製造時において、ハウジング31内は、所定範囲の温度に保たれているのが好ましい。これにより、製造条件の差による各トナー粒子9間での特性のバラツキを少なくすることができ、トナー全体としての信頼性が向上する。
【0156】
このように、ハウジング31内の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジング31の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジング31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
【0157】
また、図示の構成では、ハウジング31内の圧力は、圧力調整手段12により調整される構成となっている。このように、ハウジング31内の圧力を調整することにより、吐出された分散液6中の分散媒62を効率良く除去することが可能となり、トナーの生産性が向上する。なお、図示の構成では、圧力調整手段12は、接続管121でハウジング31に接続されている。また、接続管121のハウジング31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部122が形成されており、さらに、トナー粒子9等の吸い込みを防止するためのフィルター123が設けられている。
【0158】
ハウジング31内の圧力は、特に限定されないが、0.15MPa以下であるのが好ましく、0.005〜0.15MPaであるのがより好ましく、0.109〜0.110MPaであるのがさらに好ましい。
【0159】
また、上記の説明では、固化部3において、分散液6から分散媒62が除去されることにより、粒状の分散液6中の分散質61が凝集(融合)し、トナー粒子9が得られるものとして説明したが、トナー粒子は、このようにして得られるものに限定されない。例えば、分散質61中に樹脂材料の前駆体(例えば、前記樹脂材料に対応するモノマー、ダイマー、オリゴマー等)が含まれる場合、固化部3において重合反応を進行させることにより、トナー粒子9を得るような方法であってもよい。
【0160】
また、ハウジング31には、電圧を印加するための電圧印加手段8が接続されている。電圧印加手段8で、ハウジング31の内面側に、粒状の分散液6(トナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0161】
通常、トナー粒子は、正または負に帯電している。このため、トナー粒子と異なる極性に帯電した帯電物があると、トナー粒子は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、トナー粒子と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物とトナー粒子とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面にトナーが付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジング31の内面側に、粒状の分散液6(トナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジング31の内面に分散液6(トナー粒子9)が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状のトナー粉末の発生をより効果的に防止することができるとともに、トナー粒子9の回収効率も向上する。
【0162】
ハウジング31は、回収部5付近に、図1中の下方向に向けて、その内径が小さくなる縮径部311を有している。このような縮径部311が形成されることにより、トナー粒子9の回収を効率良く回収することができる。なお、前述したように、吐出部23から吐出された分散液6は、固化部3において固化されるが、回収部5付近においてはこのような固化はほぼ完全に完了しており、縮径部311付近では、各粒子が接触しても凝集等の問題はほとんど発生しない。
【0163】
粒状の分散液6を固化することにより得られたトナー粒子9は、回収部5に回収される。
【0164】
以上のようにして得られたトナーに対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
【0165】
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、外添処理に用いられる外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられる。
【0166】
また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
【0167】
以上のようにして製造される本発明のトナーは、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものである。特に、本発明では、真球に近い形状のトナー粒子が得られる。
【0168】
具体的には、トナー(トナー粒子)は、下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上であるのが好ましく、0.96以上であるのがより好ましく、0.97以上であるのがさらに好ましく、0.98以上であるのが最も好ましい。平均円形度Rが0.95以上であると、トナーの転写効率は、さらに優れたものとなる。
【0169】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
【0170】
また、トナーは、各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下であるのが好ましく、0.015以下であるのがより好ましく、0.01以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0171】
以上のようにして得られるトナーの重量基準の平均粒径は、2〜20μmであるのが好ましく、4〜10μmであるのがより好ましい。トナーの平均粒径が前記下限値未満であると、均一に帯電させるのが困難になるとともに、静電潜像担持体(例えば、感光体等)表面への付着力が大きくなり、結果として、転写残トナーの増加を招く場合がある。一方、トナーの平均粒径が前記上限値を超えると、トナーを用いて形成される画像の輪郭部分、特に文字画像やライトパターンの現像での再現性が低下する。
【0172】
また、トナーは、各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であるのが好ましく、1.3μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0173】
以上、本発明のトナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0174】
例えば、本発明のトナー製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、前述した実施形態では、粒状の分散液を鉛直下方に向けて吐出する構成について説明したが、分散液の吐出方向は、鉛直上方、水平方向等、いかなる方向であってもよい。また、図3に示すように、分散液6の吐出方向と、ガス噴射口7から噴射されるガスの噴射方向とが、ほぼ垂直となる構成のものであってもよい。この場合、吐出された粒状の分散液6は、ガス流によりその進行方向が変わり、吐出部23からの吐出方向に対してほぼ直角に搬送されることになる。
【0175】
【実施例】
[1]トナーの製造
【0176】
(実施例1)
まず、2リットルの丸底ステンレス容器に、純水:800mlと、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム、平均重合度:2700〜7500、和光純薬社製):30gと、分散助剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム):0.5gとを入れ、これらを十分に混合し、均一な溶液(水性液)を得た。
【0177】
次に、この溶液を、加熱しつつ、TKLホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、回転数:400rpmで攪拌した。溶液の温度が100℃に到達したところで、溶液の温度がほぼ一定となるように調節しつつ、粉末状のポリエステル樹脂(Mn:2300、Mw:8700、Mw/Mn:3.8、Tg:62℃):200gと、キナクリドン系顔料:12gと、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):3gとの混合物を、溶液内に約10分かけて少量ずつ投入し、さらに、10分間攪拌を行った。
【0178】
その後、溶液の加熱を停止し、前記混合物を投入した溶液の温度が室温になるまで攪拌を続けることにより分散液を得た。得られた分散液の25℃における粘度は、180cpsであった。また、得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、0.21μmであった。
【0179】
このようにして得られた分散液を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0180】
分散液の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される分散液の初速度は4.2m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は2pl(粒径Dd:15.8μm)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0181】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:190℃、湿度:30%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0182】
固化部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0183】
固化部で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.964、円形度標準偏差が0.015であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.7μmであった。重量基準の粒径標準偏差は1.2であった。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
【0184】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0185】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、6.8μmであった。
【0186】
(実施例2)
まず、2リットルの丸底ステンレス容器に、トルエン:800gと、スチレン−アクリル共重合体(Mn:7.13×104、Mw:0.25×104、Mw/Mn:27.0、Tg:61.6℃):200gと、フタロシアニン系顔料:12gと、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):3gとを入れ、これを室温下で30分間混合し、さらに、その後、モーターミル(アイガージャパン社製)を用いて、60Hzで30分間混合することにより、着色樹脂液を得た。
【0187】
一方、2リットルの丸底ステンレス容器に、純水:800mlと、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム、平均重合度:2700〜7500、和光純薬社製):30gと、分散助剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム):0.5gとを入れ、これらを十分に混合し、均一な溶液(水性液)を用意した。
【0188】
次に、この水性液を、TKLホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、回転数:400rpmで攪拌した。攪拌している溶液中に、上記の着色樹脂液を40g/分の速度で滴下し、滴下終了後、さらに、10分間攪拌を行った。
【0189】
その後、着色樹脂液を滴下した水性液を55〜58℃とし、9〜20kPaの雰囲気下で、400rpmで20分間攪拌することにより、トルエンを除去し、分散液を得た。得られた分散液の25℃における粘度は、119cpsであった。また、得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、0.26μmであった。
【0190】
このようにして得られた分散液を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0191】
分散液の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される分散液の初速度は4.2m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は2pl(粒径Dd:15.8μm)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0192】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:190℃、湿度:28%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0193】
固化部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0194】
固化部で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.967、円形度標準偏差が0.013であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.8μmであった。重量基準の粒径標準偏差は1.3であった。
【0195】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、6.8μmであった。
【0196】
(実施例3)
前記実施例2で用いた分散液を上記と同様にして調製し、この分散液にエタノール200mlを加え、十分に攪拌・混合し、トナー製造用の分散液を得た。得られた分散液の25℃における粘度は、104cpsであった。また、得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、0.21μmであった。
【0197】
このようにして得られた分散液を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0198】
分散液の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される分散液の初速度は4.4m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は0.5pl(粒径Dd:10.0μm)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0199】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:170℃、湿度:28%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0200】
固化部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0201】
固化部で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.971、円形度標準偏差が0.010であった。重量基準の平均粒径Dtは、5.8μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.9であった。
【0202】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、5.9μmであった。
【0203】
(比較例1)
ポリオレフィン樹脂(Tg:60.2℃、フローテスタ軟化温度:104℃):100重量部と、フタロシアニン系顔料:6重量部と、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):1.5重量部とを混合した後、120℃で加熱溶融した状態で攪拌することにより、着色樹脂溶融物を得た。
【0204】
この溶融物を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の溶融物を定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。このとき、分散液供給部内、分散物貯留部内の温度は、いずれも120℃となるように調節した。
【0205】
溶融物の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される溶融物の初速度は3.6m/秒、ヘッド部から吐出される溶融物の一滴分の吐出量は2.1pl(粒径Dd:15.9μm)であった。また、吐出部から吐出される溶融物の粘度は、1.3×104cps(120℃)であった。また、溶融物の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、溶融物の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0206】
また、溶融物の吐出時には、ガス噴射口から温度:14℃、湿度:35%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に溶融物(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0207】
固化部内において、溶融物が冷却固化することにより得られた粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.951、円形度標準偏差が0.078であった。重量基準の平均粒径Dtは、10.2μmであった。重量基準の粒径標準偏差は2.7であった。
【0208】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、10.3μmであった。
【0209】
(比較例2)
まず、2リットルの丸底ステンレス容器に、トルエン:800gと、スチレン−アクリル共重合体(Mn:7.13×104、Mw:0.25×104、Mw/Mn:27.0、Tg:61.6℃):200gと、フタロシアニン系顔料:12gと、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):3gとを入れ、これを室温下で30分間混合し、さらに、その後、モーターミル(アイガージャパン社製)を用いて、60Hzで30分間混合することにより、着色樹脂液を得た。
【0210】
一方、2リットルの丸底ステンレス容器に、純水:800mlと、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム、平均重合度:2700〜7500、和光純薬社製):30gと、分散助剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム):0.5gとを入れ、これらを十分に混合し、均一な溶液(水性液)を用意した。
【0211】
次に、この水性液を、TKLホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、回転数:200rpmで攪拌した。攪拌している溶液中に、上記の着色樹脂液を60g/分の速度で滴下し、滴下終了後、さらに、10分間攪拌を行った。
【0212】
その後、着色樹脂液を滴下した水性液を55〜58℃とし、9〜20kPaの雰囲気下で、400rpmで20分間攪拌することにより、トルエンを除去し、分散液を得た。得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、6.9μmであった。
【0213】
冷却後、分散液に2リットルの純水を加え、5リットルのビーカーでデカンテーションを2回行った。さらに、常温で、水洗(純水洗浄)、ろ過を5回繰り返し行った。
【0214】
その後、分離した分散質を、50℃の純水中に入れ、約1時間攪拌し、さらにろ過する操作を2回繰り返し行った。
【0215】
その後、得られたろ過物(トナーケーキ)を50wt%メタノール水溶液1リットルに攪拌・混合し、均一なスラリーを得た。このスラリーを、噴霧乾燥装置(DISPACOAT、日清エンジニアリング社製)により乾燥し、粒状物を得た。
【0216】
得られた粒状物は、平均円形度Rが0.964、円形度標準偏差が0.031であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.8μmであった。重量基準の粒径標準偏差は2.1であった。
【0217】
得られた粒状物100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、6.6μmであった。
【0218】
以上の各実施例および各比較例について、トナー製造装置を用いて製造された粒子(シリカを添加する前のトナー粒子)の平均円形度R、円形度標準偏差、重量基準の平均粒径Dt、粒径標準偏差および最終的に得られたトナーの平均粒径を、トナーの製造に用いた分散液の条件とともに表1にまとめて示す。
【0219】
【表1】
【0220】
表1から明らかなように、実施例1〜3のトナーは、円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。特に、実施例3では、固化部での加熱温度が比較的低かったにも関わらず、得られたトナーは、特に円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。これは、分散媒中において共沸混合物が形成され、分散媒の除去をより効率良く行うことができたためであると考えられる。
【0221】
これに対し、比較例1のトナーは、円形度が特に小さく、比較的大きな凸部を有しているトナー粒子が数多く認められた。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
すなわち、実施例1〜3では、ヘッド部から吐出する原料がO/W型エマルション(分散液)であるため、ヘッド部から吐出させる際に、微視的に粘度の低い分散媒の部分で選択的に切断され、吐出液として吐出される。また、水性の分散媒は適度な表面張力を有しているため、吐出液は、吐出後速やかに球形状となる。これに対し、比較例1では、製造に用いる原料が微視的に見ても一様な粘度を有していて、かつ高粘度であるため、ヘッド部から吐出する際に液滴が尾を引くような形状になりやすい。このため、比較例1では、比較的大きな凸部を有するトナー粒子が発生したものと考えられる。
また、比較例2のトナーは、粒度分布の幅が特に大きかった。
【0222】
[2]評価
以上のようにして得られた各トナーについて、トナー粒子の平均帯電量・帯電量の標準偏差、嵩密度、保存性、耐久性、転写効率の評価を行った。
【0223】
[2.1]トナー粒子の平均帯電量および帯電量の標準偏差
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーについて、イースパートアナライザー(ホソカワミクロン社製)を用いて、トナー粒子の平均帯電量および帯電量の標準偏差を測定した。測定時における温度は20℃、湿度は58%RHであった。
【0224】
[2.2]嵩密度
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーについて、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて、嵩密度を測定した。測定時における温度は20℃、湿度は58%RHであった。
【0225】
[2.3]保存性
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーを、それぞれ、50gずつシャーレに採り、温度を56〜58℃に設定したオーブンに24時間静置した。
【0226】
その後、オーブンのヒータからの発熱を停止させ、トナーをオーブン内で徐冷し、さらに24時間静置した。その後、トナーをオーブンから取り出し、150メッシュの篩を通過させた。篩上に残ったトナー粒子の凝集物の重量を測定し、凝集物の残留率を評価した。
【0227】
[2.4]耐久性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製:LP−2000C)の現像機にセットした。その後、印字しないように、現像機を連続回転させた。12時間後、現像機を取り出し、現像ローラ上のトナー薄層の均一性を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0228】
◎:薄層に乱れがまったく認められない。
○:薄層に乱れがほとんど認められない。
△:薄層に多少の乱れが認められる。
×:薄層に筋状の乱れがはっきりと認められる。
【0229】
[2.5]転写効率
前記各実施例および各比較例で製造したトナーの転写効率は、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製、LP−2000C)を用いて、以下のように評価した。
【0230】
感光体への現像工程直後(転写前)の感光体上のトナーと、転写後(印刷後)の感光体上のトナーとを、別々のテープを用いて採取し、それぞれの重量を測定した。転写前の感光体上のトナー重量をWb[g]、転写後の感光体上のトナー重量をWa[g]としたとき、(Wb−Wa)×100/Wbとして求められる値を、転写効率とした。
これらの結果を表2にまとめて示した。
【0231】
【表2】
【0232】
表2から明らかなように、本発明のトナーは、トナー粒子の帯電量標準偏差が小さい。すなわち、帯電量のバラツキが小さい。このことから、本発明のトナーでは、各粒子間での特性のバラツキが小さいことがわかる。
【0233】
また、本発明のトナーは、嵩密度が大きかった。このことから、本発明のトナーは、同一容積のカートリッジ内へのトナーの充填量をより多くしたり、カートリッジの小型化を図る上で有利であることがわかる。
また、本発明のトナーは、保存性、耐久性および転写効率に優れていた。
【0234】
これに対し、比較例のトナーは、帯電量のバラツキが大きく、嵩密度も小さかった。また、比較例のトナーは、保存性、耐久性および転写効率に劣っていた。
【0235】
なお、スプレードライ法を用いた場合、ガスの噴射圧力、原料温度等の各種条件を好適な条件に設定した場合であっても、通常、得られるトナー粒子の円形度は0.97程度、円形度の標準偏差は0.04程度、粒径の標準偏差は2.7μm程度となる。
【0236】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供することができる。
【0237】
このような効果は、分散液の組成や、発熱体に印加する交流電圧の周波数、吐出部の開口径、分散液の温度・粘度、分散液中の分散質の含有量、分散質の平均粒径等の各種条件を調整すること等により、さらに優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナー製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図3】他の実施形態のトナー製造装置のヘッド部付近の構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1……トナー製造装置 2……ヘッド部 21……分散液貯留部 22……発熱体 23……吐出部 24……保護膜 3……固化部 31……ハウジング 311……縮径部 4……分散液供給部 41……攪拌手段 5……回収部 6……分散液 61……分散質 62……分散媒 7……ガス噴射口 8……電圧印加手段 9……トナー粒子 10……ガス流供給手段 101……ダクト 11……熱交換器 12……圧力調整手段 121……接続管 122……拡径部123……フィルター 13……気泡
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の転写材にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱、加圧等により、前記トナー画像を定着する工程とを有している。
【0003】
このような電子写真法で用いられるトナーの製造方法としては、粉砕法、重合法、スプレードライ法が用いられている。
【0004】
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を、樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である(例えば、非特許文献1参照)。このような粉砕法は、原料の選択の幅が広く、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、各粒子間での形状のバラツキが大きく、その粒径分布も広くなりやすいという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0005】
重合法は、樹脂の構成成分である単量体を用いて、液相中等で、重合反応を行い、目的とする樹脂を生成することにより、トナー粒子を製造するものである(例えば、特許文献1参照)。このような重合法は、得られるトナー粒子の形状を、比較的真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることができるという点で優れている。しかしながら、重合法では、各粒子間で粒径のバラツキを十分に小さくすることができない場合がある。また、重合法では、樹脂材料の選択の幅が狭く、目的とする特性のトナーを得るのが困難となる場合がある。
【0006】
スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、溶媒に溶解したトナー製造用の原料を噴霧させることにより、微細化された粉末をトナーとして得る方法である。スプレードライ法では、前述したような粉砕工程が不要であるという利点がある。しかしながら、このようなスプレードライ法では、高圧のガスを用いて、原料の噴霧を行うため、原料の噴霧条件を正確に制御するのが困難である。このため、例えば、目的とする形状、大きさのトナー粒子を効率良く製造するのが困難である。また、スプレードライ法では、噴霧により形成された粒子の大きさのバラツキが大きいため、各粒子の移動速度のバラツキも大きい。このため、噴霧された原料が固化する前に、噴霧された粒子間での衝突、凝集が起こり異形状の粉末が形成され、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキがさらに大きくなることもある。このように、スプレードライ法で得られるトナーは、各粒子間での形状、大きさのバラツキが大きいため、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0007】
【非特許文献1】
電子写真学会監修「電子写真の基礎と応用」コロナ社発行、1988年、p482−486
【特許文献1】
特開平6−332257号公報(第2頁28〜35行目)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供すること、また、このようなトナーを製造することができるトナーの製造方法、トナー製造装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(58)の本発明により達成される。
【0010】
(1) トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
気泡の体積変化によりヘッド部から前記分散液を間欠的に吐出し、気流により固化部内を搬送させつつ固化させ、粒状とすることを特徴とするトナーの製造方法。
【0011】
(2) 前記気泡の体積変化は、主として、前記分散媒の液/気相変化に伴うものである上記(1)に記載のトナーの製造方法。
【0012】
(3) 前記固化部を通過する際に、前記ヘッド部から吐出された前記分散液中の前記分散質を凝集させる上記(1)または(2)に記載のトナーの製造方法。
【0013】
(4) 前記分散質は、液体である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0014】
(5) 前記分散媒は、主として水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0015】
(6) 前記分散液は、乳化分散剤を含むものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0016】
(7) 前記分散液は、O/W型エマルションである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0017】
(8) 前記分散液は、樹脂またはその前駆体を含む材料を、少なくとも水を含む液体中に投入することにより調製したものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0018】
(9) 前記分散液は、少なくとも一部が軟化または溶融した状態の前記材料を、少なくとも水を含む液体中に投入することにより調製したものである上記(8)に記載のトナーの製造方法。
【0019】
(10) 前記材料は、粉末状または粒状をなすものである上記(8)または(9)に記載のトナーの製造方法。
【0020】
(11) 前記分散液は、少なくとも樹脂またはその前駆体とその少なくとも一部を溶解する溶媒とを含む樹脂液と、少なくとも水を含む水性液とを混合する混合工程を経て調製されたものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0021】
(12) 前記樹脂液と前記水性液との混合は、前記水性液中に、前記樹脂液の液滴を滴下することにより行う上記(11)に記載のトナーの製造方法。
【0022】
(13) 前記混合工程で得られた混合液から前記溶媒を実質的に除去することなく、前記混合液をそのまま前記分散液として用い、前記分散液が前記固化部を通過する際に前記溶媒を除去する上記(11)または(12)に記載のトナーの製造方法。
【0023】
(14) 前記分散液は、前記混合工程の後、前記溶媒の少なくとも一部を除去することにより調製したものである上記(11)または(12)に記載のトナーの製造方法。
【0024】
(15) 前記溶媒の除去は、加熱により行う上記(14)に記載のトナーの製造方法。
【0025】
(16) 前記分散液中における前記分散質の平均粒径は、0.05〜1.0μmである上記(1)ないし(15)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0026】
(17) 前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足する上記(1)ないし(16)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0027】
(18) 前記分散液中における前記分散質の含有量は、1〜99wt%である上記(1)ないし(17)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0028】
(19) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の一滴分の吐出量が0.05〜500plである上記(1)ないし(18)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0029】
(20) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の平均粒径をDd[μm]、前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足する上記(1)ないし(19)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0030】
(21) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足する上記(1)ないし(20)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0031】
(22) 前記ヘッド部が、前記分散液を貯留する分散液貯留部と、前記分散液貯留部に貯留された前記分散液に熱エネルギーを与え、前記分散液貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記分散液を吐出する吐出部とを有するものである上記(1)ないし(21)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0032】
(23) 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである上記(22)に記載のトナーの製造方法。
【0033】
(24) 前記発熱体に交流電圧を印加することにより、前記熱エネルギーを発生させる上記(22)または(23)に記載のトナーの製造方法。
【0034】
(25) 前記発熱体に印加する交流電圧の周波数は、1〜50kHzである上記(24)に記載のトナーの製造方法。
【0035】
(26) 前記ヘッド部から吐出する前記分散液は、ほぼ一方向に流れるガス流中に放出される上記(1)ないし(25)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0036】
(27) 複数個の前記ヘッド部から前記分散液を吐出する上記(1)ないし(26)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0037】
(28) 互いに隣接する前記ヘッド部の間から気体を噴射しつつ、前記分散液を吐出する上記(27)に記載のトナーの製造方法。
【0038】
(29) 互いに隣接する前記ヘッド部の間から噴射される前記気体の湿度は、50%RH以下である上記(28)に記載のトナーの製造方法。
【0039】
(30) 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つからの前記分散液の吐出タイミングをずらす上記(27)ないし(29)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0040】
(31) 前記固化部に、前記分散液と同じ極性の電圧を印加した状態で、前記分散液を吐出する上記(1)ないし(30)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0041】
(32) 前記ヘッド部から吐出する前記分散液の初速度は、0.1〜10m/秒である上記(1)ないし(31)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0042】
(33) 前記ヘッド部内における前記分散液の粘度は、5〜3000cpsである上記(1)ないし(32)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0043】
(34) 前記固化部において、前記分散媒を除去する上記(1)ないし(33)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0044】
(35) 前記固化部内の圧力は、0.15MPa以下である上記(1)ないし(34)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0045】
(36) 前記分散液中の前記分散質は、その成分の少なくとも一部が溶媒に溶解したものである上記(1)ないし(35)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0046】
(37) 前記固化部において、前記分散質中に含まれる前記溶媒の少なくとも一部を除去する上記(36)に記載のトナーの製造方法。
【0047】
(38) 前記ヘッド部から吐出される前記分散液は、前記分散質の少なくとも一部が溶融した状態のものである上記(1)ないし(37)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0048】
(39) 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を、前記固化部で冷却する上記(1)ないし(38)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0049】
(40) 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を、前記固化部で加温する上記(1)ないし(39)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0050】
(41) 上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするトナー。
【0051】
(42) 平均粒径が2〜20μmである上記(41)に記載のトナー。
【0052】
(43) 各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下である上記(41)または(42)に記載のトナー。
【0053】
(44) 下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上である上記(41)ないし(43)のいずれかに記載のトナー。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0054】
(45) 各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下である上記(41)ないし(44)のいずれかに記載のトナー。
【0055】
(46) 前記分散質が凝集した凝集体で構成される上記(41)ないし(45)のいずれかに記載のトナー。
【0056】
(47) 上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の方法を実施することを特徴とするトナー製造装置。
【0057】
(48) トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いてトナーを製造する装置であって、
前記分散液を吐出するヘッド部と、該ヘッド部に前記分散液を供給する分散液供給部と、前記ヘッド部から吐出された前記分散液を固化させ、粒状とする固化部とを有し、
前記ヘッド部が、前記分散液を貯留する分散液貯留部と、前記分散液貯留部に貯留された前記分散液に熱エネルギーを与え、前記分散液貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記分散液を吐出する吐出部とを有することを特徴とするトナー製造装置。
【0058】
(49) 前記分散液供給部に、前記分散液を攪拌する攪拌手段を有する上記(48)に記載のトナー製造装置。
【0059】
(50) 前記発熱体は、交流電圧の印加により発熱するものである上記(48)または(49)に記載のトナー製造装置。
【0060】
(51) 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を搬送する搬送手段を有する上記(48)ないし(50)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0061】
(52) 前記搬送手段がガス流を供給するガス流供給手段である上記(51)に記載のトナー製造装置。
【0062】
(53) 前記ヘッド部を複数個有する上記(48)ないし(52)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0063】
(54) 互いに隣接する前記吐出部の間に、気体を噴射するガス噴射口を有する上記(53)に記載のトナー製造装置。
【0064】
(55) 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つで、前記分散液の吐出タイミングが異なる上記(53)または(54)に記載のトナー製造装置。
【0065】
(56) 前記固化部に電圧を印加するための電圧印加手段を有する上記(48)ないし(55)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0066】
(57) 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである上記(48)ないし(56)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0067】
(58) 前記固化部内の圧力を調整する圧力調整手段を有する上記(48)ないし(57)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0068】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0069】
図1は、本発明のトナー製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図2は、図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【0070】
[分散液]
まず、本発明で用いる分散液6について説明する。本発明のトナーは、分散液6を用いて製造されるものである。分散液6は、分散媒62中に分散質(分散相)61が微分散した構成となっている。
【0071】
<分散媒>
分散媒62は、後述する分散質61を分散可能なものであればいかなるものであってもよいが、主として、一般に溶媒として用いられているような材料で構成されたものであるのが好ましい。
【0072】
このような材料としては、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0073】
上記の材料の中でも、分散媒62としては、主として水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたものであるのが好ましい。これにより、例えば、分散媒62中における分散質61の分散性を高めることができ、分散液6中における分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのバラツキの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子9は、粒子間での大きさ、形状のバラツキが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0074】
また、分散媒62の構成材料として複数の成分の混合物を用いる場合、分散媒の構成材料としては、前記混合物を構成する少なくとも2種の成分の間で、共沸混合物(最低沸点共沸混合物)を形成し得るものを用いるのが好ましい。これにより、後述するトナー製造装置の固化部において、分散媒62を効率良く除去することが可能となる。また、後述するトナー製造装置の固化部等において、比較的低い温度で分散媒62を除去することが可能となり、得られるトナー粒子9の特性の劣化をより効果的に防止できる。例えば、水との間で、共沸混合物を形成し得る液体としては、二硫化炭素、四塩化炭素、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、アニソール、2−メトキシエタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン、アクリロニトリル、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、アクリルアルデヒド等が挙げられる。
【0075】
また、分散媒62の沸点は、特に限定されないが、180℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましく、35〜130℃であるのがさらに好ましい。このように、分散媒62の沸点が比較的低いものであると、後述するトナー製造装置の固化部等において、分散媒62を比較的容易に除去することが可能となる。また、分散媒62としてこのような材料を用いることにより、最終的に得られるトナー粒子9中における分散媒62の残留量を特に少ないものにすることができる。その結果トナーとしての信頼性がさらに高まる。
【0076】
なお、分散媒62中には、上述した材料以外の成分が含まれていてもよい。例えば、分散媒62中には、後に分散質61の構成成分として例示する材料や、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等の各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0077】
<分散質>
分散質61は、通常、少なくとも、主成分としての樹脂(またはその前駆体としてのモノマー、ダイマー、オリゴマー等)を含む材料で構成されている。
【0078】
以下、分散質61の構成材料について説明する。
1.樹脂(バインダー樹脂)
樹脂(バインダー樹脂)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、後述するトナー製造装置の固化部等において、分散質61中の原料を重合反応させることによりトナーを製造する場合には、通常、上記の樹脂材料のモノマー、ダイマー、オリゴマー等を用いる。
【0079】
分散質61中における樹脂の含有量は、特に限定されないが、2〜98wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。
【0080】
2.溶媒
分散質61中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、分散液6中における分散質61の流動性を高めることができ、分散液6中における分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのバラツキの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子9は、粒子間での大きさ、形状のバラツキが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0081】
溶媒としては、分散質61を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述するようなトナー製造装置の固化部等において、容易に除去されるものであるのが好ましい。
【0082】
また、溶媒は、前述した分散媒62との相溶性が低いもの(例えば、25℃における分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、分散液6中において、分散質61を安定した状態で微分散させることができる。
【0083】
また、溶媒の組成は、例えば、前述した樹脂、着色剤の組成や、分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
【0084】
例えば、溶媒としては、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。この中でも特に、有機溶媒を含むものであるのが好ましく、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒等から選択される1種または2種以上を含むものであるのがより好ましい。このような溶媒を用いることにより、分散質61中において、比較的容易に、前述したような各成分を十分均一に分散させることができる。
【0085】
また、分散液6中には、通常、着色剤が含まれている。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような着色剤は、通常、分散液6においては、分散質61中に含まれる。
【0086】
分散液6中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10wt%であるのが好ましく、0.3〜3.0wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着特性や帯電特性が低下する可能性がある。
【0087】
また、分散液6中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス・ロウ、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス・ロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス・ロウ、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス・ロウ等の天然ワックス・ロウや、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス(ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレンワックス(ポリプロピレン樹脂)、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス・ロウ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ワックスとしては、さらに低分子量の結晶性高分子樹脂を使用してもよく、例えば、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等を使用することもできる。
【0088】
分散液6中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、1.0wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以下であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナー粒子中において、ワックスが遊離、粗大化して、トナー粒子表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
【0089】
ワックスの軟化点は、特に限定されないが、50〜180℃であるのが好ましく、60〜160℃であるのがより好ましい。
【0090】
また、分散液6中には、これら以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、乳化分散剤、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。この中でも、乳化分散剤を用いた場合、例えば、分散液6中における分散質61の分散性を向上させることが可能となる。ここで、乳化分散剤としては、例えば、乳化剤、分散剤、分散助剤等が挙げられる。
【0091】
分散剤としては、例えば、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。この中でも、非イオン性有機分散剤またはアニオン性有機分散剤が特に好ましい。
【0092】
分散液6中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、3.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜1.0wt%であるのがより好ましい。
【0093】
また、分散助剤としては、例えば、アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0094】
分散助剤は、分散剤と併用するものであるのが好ましい。分散液6が分散剤を含むものである場合、分散液6中における分散助剤の含有量は、特に限定されないが、2.0wt%以下であるのが好ましく、0.005〜0.5wt%であるのがより好ましい。
【0095】
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
【0096】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0097】
また、分散液6中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
【0098】
また、分散液6中には、分散質61以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、分散液6中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
【0099】
分散液6では、分散質61が分散媒62中に微分散した状態となっている。
分散液6中における分散質61の平均粒径は、特に限定されないが、0.05〜1.0μmであるのが好ましく、0.1〜0.8μmであるのがより好ましい。分散質61の平均粒径がこのような範囲の値であると、最終的に得られるトナー粒子9は、十分に円形度が高く、各粒子間での特性、形状の均一性に優れたものとなる。
【0100】
分散液6中における分散質61の含有量は、特に限定されないが、1〜99wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。分散質61の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナー粒子9の円形度が低下する傾向を示す。一方、分散質61の含有量が前記上限値を超えると、分散媒62の組成等によっては、分散液6の粘性が高くなり、最終的に得られるトナー粒子9の形状、大きさのバラツキが大きくなる傾向を示す。
【0101】
このような分散質61は、分散液6中において、液体(例えば、溶液状態、溶融状態)であるのが好ましい。これにより、分散媒62中に微分散した分散質61の平均粒径を、容易に、上記のような範囲の値にすることができる。
【0102】
また、分散媒62中に分散している分散質61は、例えば、各粒子間で、ほぼ同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、分散液6は、分散質61として、主として樹脂材料で構成されたものと、主としてワックスで構成されたものとを含むようなものであってもよい。
【0103】
また、このような分散液6は、O/W型エマルション、すなわち、水性の分散媒62中に、油性(ここでは、水に対する溶解度が小さい液体のことを指す)の分散質61が分散したものであるのが好ましい。これにより、各粒子間での形状、大きさのバラツキが小さいトナーを安定的に製造することができる。また、分散媒62に水性の液体を用いることにより、後述するようなトナー製造装置の固化部等における有機溶媒の揮発量を少なく、または実質的に有機溶媒を揮発しないものとすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0104】
また、分散液6中における分散質61の平均粒径をDm[μm]、トナー粒子9の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.01≦Dm/Dt≦0.2の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、各粒子間での、形状、大きさのバラツキが特に小さいトナーを得ることができる。
【0105】
以上説明したような分散液6は、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体に、必要に応じて分散剤および/または分散媒を添加した水性溶液を用意する。
一方、トナーの主成分となる樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。
【0106】
次に、上記樹脂液を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水性の分散媒62中に、樹脂材料を含む分散質62が分散した分散液6が得られる。このような方法で、分散液6を調製することにより、分散液6中における分散質61の円形度をさらに高めることができる。その結果、トナー粒子9は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のバラツキが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱しておいてもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた分散液6を加熱したり、減圧雰囲気下に置くことにより、分散質62中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0107】
以上、分散液6の調製方法の一例について説明したが、分散液はこのような方法により調製されたものに限定されない。例えば、分散液6は、以下のような方法によっても、調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体に、必要に応じて分散剤および/または分散媒を添加した水性溶液を用意する。
一方、樹脂材料を含む、粉末状または粒状の材料を用意する。
次に、この粉末状または粒状の材料を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に投入していくことにより、水性の分散媒62中に、樹脂材料を含む分散質62が分散した分散液6が得られる。このような方法で、分散液6を調製した場合、後述するようなトナー製造装置の固化部等において、実質的に有機溶媒を揮発しないようにすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。なお、前記材料を投入する際、例えば、水性溶液を加熱しておいてもよい。
【0108】
また、分散液6は、以下のような方法によっても、調製することができる。
まず、少なくとも樹脂材料を分散してなる樹脂分散液と、少なくとも着色剤を分散してなる着色剤分散液とを調製する。
次に、樹脂分散液と、着色剤分散液とを混合・攪拌する。このとき、必要に応じて、攪拌しながら無機金属塩等の凝集剤を加えてもよい。
所定時間、攪拌することにより、樹脂材料、着色剤等が凝集した凝集体が形成される。その結果、前記凝集体が分散質61として分散した分散液6が得られる。
【0109】
[トナー製造装置]
本発明のトナー製造装置1は、上述したような分散液6を吐出するヘッド部2と、ヘッド部2に分散液6を供給する分散液供給部4と、ヘッド部2から吐出された分散液6が搬送される固化部3と、製造されたトナー粒子9を回収する回収部5とを有している。
【0110】
分散液供給部4は、ヘッド部2に分散液6を供給する機能を有するものであればよいが、図示のように、分散液6を攪拌する攪拌手段41を有するものであってもよい。これにより、例えば、分散質61が分散媒中に分散しにくいものであっても、分散質61が十分均一に分散した状態の分散液6を、ヘッド部2内に供給することができる。
【0111】
ヘッド部2は、分散液貯留部21と、発熱体22と、吐出部23とを有している。
【0112】
分散液貯留部21には、上述したような分散液6が貯留されている。
分散液貯留部21は、筒状を成しており、その内部に、上述したような分散液6が貯留されている。
【0113】
発熱体22は、電圧の印加等により、熱エネルギーを発生する機能を有するものである。発熱体22で発生した熱エネルギーは、分散液貯留部21内に貯留された分散液6を急速に加熱し、膜沸騰等により、分散液貯留部21内に気泡13を発生させる。
【0114】
分散液貯留部21内に発生した気泡13の体積変化により、分散液貯留部21に貯留された分散液6は、吐出部23から固化部3に吐出される。
【0115】
なお、分散液貯留部21と発熱体22との間には、分散液6と発熱体22とが直接接触するのを防止する保護膜24が設けられている。
【0116】
吐出部23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される分散液6、形成されるトナー粒子9の真球度を高めることができる。
【0117】
吐出部23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部23の直径が前記下限値未満であると、吐出部23付近での目詰まりが発生し易くなる。一方、吐出部23の直径が前記上限値を超えると、吐出される液滴状の分散液6の大きさを制御するのが困難となる場合がある。
【0118】
上記のような熱エネルギーの発生を繰り返し行うことにより、分散液貯留部21内の気泡13の体積が経時的に変化し(分散液貯留部21内に間欠的に気泡13が発生し)、これにより、分散液貯留部21内から粒状の分散液6が繰り返し吐出される。
【0119】
このように、本発明では、発熱体が熱エネルギーを発生することにより、気泡を発生させ、この気泡の体積変化により、分散液6を粒状に吐出させ、これを固化することによりトナーを得る点に特徴を有する。
【0120】
従来、流動性を有する原料を用いてトナーを製造する方法としては、スプレードライ法が知られていた。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、溶媒に溶解したトナー製造用の原料を噴霧させることにより、微細化された粉末をトナーとして得る方法である。しかしながら、このようなスプレードライ法は、以下のような問題点を有していた。
【0121】
すなわち、スプレードライ法では、高圧のガスを用いて、原料の噴霧を行うため、原料の噴霧条件を正確に制御するのが困難であった。このため、例えば、目的とする形状、大きさのトナー粒子を効率良く製造するのが困難であった。また、スプレードライ法では、噴霧により形成された粒子の大きさのバラツキが大きい(粒度分布の幅が大きい)ため、各粒子の移動速度のバラツキも大きい。このため、噴霧された原料が固化する前に、噴霧された粒子間での衝突、凝集が起こり異形状の粉末が形成され、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキがさらに大きくなることもあった。このように、スプレードライ法で得られるトナーは、各トナー粒子間での形状、大きさのバラツキが大きいため、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキも大きく、トナー全体としての信頼性も低い。また、製造するトナー粒子の大きさを比較的小さいものとする場合には、トナー粒子の粒度分布はブロードとなり易く、上述したような傾向がさらに顕著なものとなる。
【0122】
これに対し、本発明では、熱エネルギーの発生を繰り返し行うことにより、分散液貯留部内の気泡の体積を経時的に変化させ(分散液貯留部内に間欠的に気泡を発生させ)、分散液を一滴ずつ間欠的に吐出するため、安定した形状のトナーを得ることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
【0123】
特に、本発明では、ヘッド部から吐出する吐出液として、分散質61が分散媒62中に分散した分散液(分散系)6を用いる点に特徴を有する。
【0124】
分散媒62は、一般に、樹脂(またはその前駆体)を含む分散質61に比べて低い沸点を有している。このため、上記のような気泡は、微視的に見て、分散媒62において優先的に発生する。すなわち、前記気泡の体積変化は、主として、分散媒62の液/気相変化に伴うものである。
【0125】
したがって、吐出液として樹脂が実質的に均一に溶けた液体を用いる場合に比べて、より低い温度で、気泡の体積を変化させることができ、分散液を効率良く吐出させることができる。
【0126】
また、吐出液として樹脂が実質的に均一に溶けた液体を用いた場合に比べて、熱エネルギー発生時における気泡の体積変化の追従性がよくなる(応答速度が速くなる)ため、分散液6の吐出間隔を短くすることができる。その結果、トナーの生産性が向上する。
【0127】
また、吐出液として樹脂が実質的に均一に溶けた液体を用いた場合に比べて、分散液全体としての平均粘度は高くても局所的には分散媒の粘度と同等であるので液全体の粘度の割には分断されやすくなる。従って固形分濃度を比較的高くできる。また、吐出部23の面積を小さくした場合であっても、液滴の切れが良いので目詰まり等の不都合を生じにくい。このため、より微細なトナー粒子9を比較的容易に得ることも可能となる。
【0128】
また、上記のような気泡が主として分散媒62において発生することにより、発生した熱エネルギーが分散質61に直接与えられるのを防止することができる。これにより、最終的に得られるトナー粒子9の構成材料が全体として受ける熱履歴を少なくすることができる。その結果、トナーは、熱による劣化が少なく、より信頼性の高いものとなる。
【0129】
また、上記のような気泡の発生に伴い、分散液6中の分散媒62の少なくとも一部が気化により除去されてもよい。これにより、後述する固化部3における分散媒62の除去量を少なくすることができ、トナーの生産効率をさらに向上させることができる。
【0130】
また、本発明では、発熱体からの熱エネルギーの発生周期、吐出部の開口面積(ノズル径)、分散液の温度・粘度、分散液の一滴分の吐出量、分散液中に占める分散質の含有率、分散液中における分散質の粒径等を比較的正確にコントロールすることができ、製造すべきトナーを所望の形状、大きさに制御することが容易にできる。また、これらの条件等をコントロールすることにより、例えば、トナーの製造量等を容易かつ確実に管理することができる。
【0131】
また、本発明では、発熱体が発生する熱エネルギーを用いるため、熱エネルギーの発生周期等を制御することにより、分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される粒状の分散液同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、従来のスプレードライ法を用いた場合に比べて、異形状の粉末等を形成し難い。
【0132】
前記熱エネルギーの発生は、いかなる方法で行ってもよいが、発熱体22に交流電圧を印加することにより行うものであるが好ましい。交流電圧の印加により熱エネルギーを発生させることにより、気泡13の発生周期や、気泡13の経時的な体積変化率を正確に制御することが容易にできる。その結果、トナーの製造量やトナー粒子9の大きさ等を正確にコントロールすることができる。
【0133】
交流電圧の印加により熱エネルギーを発生させる場合、発熱体22に印加する交流電圧の周波数は、特に限定されないが、1〜50kHzであるのが好ましく、5〜30kHzであるのがより好ましい。交流電圧の周波数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、交流電圧の周波数が前記上限値を超えると、粒状の分散液6の吐出が追随できなくなり、分散液6一滴分の大きさのバラツキが大きくなる。
【0134】
本発明においては、ヘッド部2から固化部3に吐出される分散液6の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。分散液6の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、分散液6の初速度が前記上限値を超えると、得られるトナー粒子9の真球度が低下する傾向を示す。
【0135】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6の粘度は、特に限定されないが、例えば、5〜3000cpsであるのが好ましく、10〜1000cpsであるのがより好ましい。分散液6の粘度が前記下限値未満であると、吐出される粒子(粒状の分散液6)の大きさを十分に制御するのが困難となり、得られるトナー粒子9のバラツキが大きくなる場合がある。一方、分散液6の粘度が前記上限値を超えると、吐出すべき分散液6に優先して気泡が吐出する、いわゆる空打ち現象が発生し易くなり、得られるトナー粒子9の大きさ、形状や、トナー製造量の制御が困難となる。
【0136】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6は、予め加温されたものであってもよい。このように分散液6を加温することにより、例えば、分散質61が室温で固体状態(または粘度が比較的高い状態)のものであっても、吐出時において、分散質を溶融状態(または粘度が比較的低い状態)にさせることができる。その結果、後述する固化部3において、粒状の分散液6中に含まれる分散質61の凝集(融合)が円滑に進行し、得られるトナー粒子9の円形度が特に高いものとなる。
【0137】
また、分散液6の一滴分の吐出量は、分散液6中に占める分散質61の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜5plであるのがより好ましい。分散液6の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、トナー粒子9を適度な粒径のものにすることができる。
【0138】
ところで、ヘッド部2から吐出される粒状の分散液6は、一般に、分散液6中の分散質61に比べて十分に大きいものである。すなわち、粒状の分散液6中には、多数個の分散質61が分散した状態となっている。このため、分散質61の粒径のバラツキが比較的大きいものであっても、吐出される粒状の分散液6中に占める分散質61の割合は、各液滴でほぼ均一である。したがって、分散質61の粒径のバラツキが比較的大きい場合であっても、分散液6の吐出量をほぼ均一とすることにより、トナー粒子9は粒径のバラツキの小さいものとなる。このような傾向は、より顕著なものとなる。例えば、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、分散液6中における分散質61の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足するのが好ましく、Dm/Dd<0.2の関係を満足するのがより好ましい。
【0139】
また、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.1≦Dt/Dd≦0.8の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、十分に微細で、かつ、円形度が大きく、粒度分布がシャープなトナー粒子9を比較的容易に得ることができる。
【0140】
図示の構成のトナー製造装置1は、ヘッド部2を複数個有している。そして、これらのヘッド部2から、それぞれ、粒状の分散液6が固化部3に吐出される。
【0141】
各ヘッド部2は、ほぼ同時に分散液6を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、分散液6の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部2から吐出された粒状の分散液6が固化する前に、粒状の分散液が衝突し、凝集するのをより効果的に防止することができる。
【0142】
また、図2に示すように、トナー製造装置1は、ガス流供給手段10を有しており、このガス流供給手段10から供給されたガスが、ダクト101を介して、ヘッド部2−ヘッド部2間に設けられた各ガス噴射口7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部23から間欠的に吐出された粒状の分散液6の間隔を保ちつつ、分散液6を搬送し、固化させることができる。その結果、吐出される粒状の分散液6同士の衝突、凝集がより効果的に防止される。
【0143】
また、ガス流供給手段10から供給されたガスをガス噴射口7から噴射することにより、固化部3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、固化部3内の粒状の分散液6(トナー粒子9)をより効率良く搬送することができる。
【0144】
また、ガス噴射口7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部2から吐出される粒子の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各粒子間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0145】
また、ガス流供給手段10には、熱交換器11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、固化部3に吐出された粒状の分散液6を効率良く固化させることができる。
【0146】
また、このようなガス流供給手段10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部23から吐出された分散液6の固化速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0147】
ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、分散液6中に含まれる分散質61、分散媒62の組成等により異なるが、通常、100〜250℃であるのが好ましく、150〜200℃であるのがより好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られるトナー粒子9の形状の均一性を保ちつつ、分散液6中に含まれる分散媒62を効率良く除去することができ、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0148】
また、ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましく、20%RH以下であるのがさらに好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する固化部3において、分散液6に含まれる分散媒62を効率良く除去することが可能となり、トナーの生産性がさらに向上する。
【0149】
ヘッド部2から吐出された粒状の分散液6は、固化部3を搬送されつつ固化することにより、トナー粒子9となる。
【0150】
トナー粒子9は、例えば、吐出された粒状の分散液6から分散媒62を除去することにより得られる。このような場合、吐出された分散液6中の分散媒62が除去されるのに伴い、分散液6中に含まれる分散質61が凝集する。その結果、トナー粒子9は、分散質61の凝集体として得られる。なお、分散質61中に前述したような溶媒が含まれる場合には、当該溶媒は、例えば、固化部3において除去されるものであってもよいし、前述した発熱体22の発熱により除去されるものであってもよい。
【0151】
分散液6中に含まれる分散質61の粒径は、通常、得られるトナー粒子9(吐出される粒状の分散液6)に比べて、十分に小さいものである。したがって、分散質61の凝集体として得られるトナー粒子9は、十分に円形度の大きいものとなる。
【0152】
また、分散媒61を除去してトナー粒子9を得る場合、通常、吐出部23から吐出される分散液6に比べて、得られるトナー粒子6は小さいものとなる。このため、吐出部23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、得られるトナー粒子9の大きさを比較的小さいものとすることができる。したがって、本発明では、ヘッド部2が、特別な精密加工を施すことにより得られたものでなくても(比較的容易に製造できるものであっても)、十分に微細なトナー粒子9を得ることができる。
【0153】
また、上記のように、本発明では吐出部23の面積を極端に小さくする必要がないので、比較的容易に、各ヘッド部2から吐出される分散液6の粒度分布を、十分にシャープなものとすることができる。その結果、トナー粒子9も、粒径のバラツキの小さいもの、すなわち、粒度分布がシャープなものとなる。
【0154】
以上説明したように、本発明では、吐出液として分散液を用いることにより、製造するトナー粒子9の粒径が十分に小さい場合であっても、容易に、その円形度を十分に高いものとし、かつ、粒度分布がシャープなものとすることができる。これにより、得られるトナーは、各粒子間での帯電が均一で、かつ、トナーを印刷に用いたときに、現像ローラ上に形成されるトナーの薄層が平準化、高密度化したものとなる。その結果、カブリ等の欠陥を生じ難く、よりシャープな画像を形成することができる。また、トナー粒子9の形状、粒径が揃っているため、トナー全体(トナー粒子9の集合体)としての嵩密度を大きくすることができる。その結果、同一容積のカートリッジ内へのトナーの充填量をより多くしたり、カートリッジの小型化を図る上でも有利である。
【0155】
固化部3は、筒状のハウジング31で構成されている。
トナーの製造時において、ハウジング31内は、所定範囲の温度に保たれているのが好ましい。これにより、製造条件の差による各トナー粒子9間での特性のバラツキを少なくすることができ、トナー全体としての信頼性が向上する。
【0156】
このように、ハウジング31内の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジング31の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジング31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
【0157】
また、図示の構成では、ハウジング31内の圧力は、圧力調整手段12により調整される構成となっている。このように、ハウジング31内の圧力を調整することにより、吐出された分散液6中の分散媒62を効率良く除去することが可能となり、トナーの生産性が向上する。なお、図示の構成では、圧力調整手段12は、接続管121でハウジング31に接続されている。また、接続管121のハウジング31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部122が形成されており、さらに、トナー粒子9等の吸い込みを防止するためのフィルター123が設けられている。
【0158】
ハウジング31内の圧力は、特に限定されないが、0.15MPa以下であるのが好ましく、0.005〜0.15MPaであるのがより好ましく、0.109〜0.110MPaであるのがさらに好ましい。
【0159】
また、上記の説明では、固化部3において、分散液6から分散媒62が除去されることにより、粒状の分散液6中の分散質61が凝集(融合)し、トナー粒子9が得られるものとして説明したが、トナー粒子は、このようにして得られるものに限定されない。例えば、分散質61中に樹脂材料の前駆体(例えば、前記樹脂材料に対応するモノマー、ダイマー、オリゴマー等)が含まれる場合、固化部3において重合反応を進行させることにより、トナー粒子9を得るような方法であってもよい。
【0160】
また、ハウジング31には、電圧を印加するための電圧印加手段8が接続されている。電圧印加手段8で、ハウジング31の内面側に、粒状の分散液6(トナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0161】
通常、トナー粒子は、正または負に帯電している。このため、トナー粒子と異なる極性に帯電した帯電物があると、トナー粒子は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、トナー粒子と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物とトナー粒子とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面にトナーが付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジング31の内面側に、粒状の分散液6(トナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジング31の内面に分散液6(トナー粒子9)が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状のトナー粉末の発生をより効果的に防止することができるとともに、トナー粒子9の回収効率も向上する。
【0162】
ハウジング31は、回収部5付近に、図1中の下方向に向けて、その内径が小さくなる縮径部311を有している。このような縮径部311が形成されることにより、トナー粒子9の回収を効率良く回収することができる。なお、前述したように、吐出部23から吐出された分散液6は、固化部3において固化されるが、回収部5付近においてはこのような固化はほぼ完全に完了しており、縮径部311付近では、各粒子が接触しても凝集等の問題はほとんど発生しない。
【0163】
粒状の分散液6を固化することにより得られたトナー粒子9は、回収部5に回収される。
【0164】
以上のようにして得られたトナーに対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
【0165】
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、外添処理に用いられる外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられる。
【0166】
また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
【0167】
以上のようにして製造される本発明のトナーは、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものである。特に、本発明では、真球に近い形状のトナー粒子が得られる。
【0168】
具体的には、トナー(トナー粒子)は、下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上であるのが好ましく、0.96以上であるのがより好ましく、0.97以上であるのがさらに好ましく、0.98以上であるのが最も好ましい。平均円形度Rが0.95以上であると、トナーの転写効率は、さらに優れたものとなる。
【0169】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
【0170】
また、トナーは、各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下であるのが好ましく、0.015以下であるのがより好ましく、0.01以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0171】
以上のようにして得られるトナーの重量基準の平均粒径は、2〜20μmであるのが好ましく、4〜10μmであるのがより好ましい。トナーの平均粒径が前記下限値未満であると、均一に帯電させるのが困難になるとともに、静電潜像担持体(例えば、感光体等)表面への付着力が大きくなり、結果として、転写残トナーの増加を招く場合がある。一方、トナーの平均粒径が前記上限値を超えると、トナーを用いて形成される画像の輪郭部分、特に文字画像やライトパターンの現像での再現性が低下する。
【0172】
また、トナーは、各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であるのが好ましく、1.3μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0173】
以上、本発明のトナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0174】
例えば、本発明のトナー製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、前述した実施形態では、粒状の分散液を鉛直下方に向けて吐出する構成について説明したが、分散液の吐出方向は、鉛直上方、水平方向等、いかなる方向であってもよい。また、図3に示すように、分散液6の吐出方向と、ガス噴射口7から噴射されるガスの噴射方向とが、ほぼ垂直となる構成のものであってもよい。この場合、吐出された粒状の分散液6は、ガス流によりその進行方向が変わり、吐出部23からの吐出方向に対してほぼ直角に搬送されることになる。
【0175】
【実施例】
[1]トナーの製造
【0176】
(実施例1)
まず、2リットルの丸底ステンレス容器に、純水:800mlと、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム、平均重合度:2700〜7500、和光純薬社製):30gと、分散助剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム):0.5gとを入れ、これらを十分に混合し、均一な溶液(水性液)を得た。
【0177】
次に、この溶液を、加熱しつつ、TKLホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、回転数:400rpmで攪拌した。溶液の温度が100℃に到達したところで、溶液の温度がほぼ一定となるように調節しつつ、粉末状のポリエステル樹脂(Mn:2300、Mw:8700、Mw/Mn:3.8、Tg:62℃):200gと、キナクリドン系顔料:12gと、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):3gとの混合物を、溶液内に約10分かけて少量ずつ投入し、さらに、10分間攪拌を行った。
【0178】
その後、溶液の加熱を停止し、前記混合物を投入した溶液の温度が室温になるまで攪拌を続けることにより分散液を得た。得られた分散液の25℃における粘度は、180cpsであった。また、得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、0.21μmであった。
【0179】
このようにして得られた分散液を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0180】
分散液の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される分散液の初速度は4.2m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は2pl(粒径Dd:15.8μm)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0181】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:190℃、湿度:30%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0182】
固化部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0183】
固化部で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.964、円形度標準偏差が0.015であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.7μmであった。重量基準の粒径標準偏差は1.2であった。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
【0184】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0185】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、6.8μmであった。
【0186】
(実施例2)
まず、2リットルの丸底ステンレス容器に、トルエン:800gと、スチレン−アクリル共重合体(Mn:7.13×104、Mw:0.25×104、Mw/Mn:27.0、Tg:61.6℃):200gと、フタロシアニン系顔料:12gと、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):3gとを入れ、これを室温下で30分間混合し、さらに、その後、モーターミル(アイガージャパン社製)を用いて、60Hzで30分間混合することにより、着色樹脂液を得た。
【0187】
一方、2リットルの丸底ステンレス容器に、純水:800mlと、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム、平均重合度:2700〜7500、和光純薬社製):30gと、分散助剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム):0.5gとを入れ、これらを十分に混合し、均一な溶液(水性液)を用意した。
【0188】
次に、この水性液を、TKLホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、回転数:400rpmで攪拌した。攪拌している溶液中に、上記の着色樹脂液を40g/分の速度で滴下し、滴下終了後、さらに、10分間攪拌を行った。
【0189】
その後、着色樹脂液を滴下した水性液を55〜58℃とし、9〜20kPaの雰囲気下で、400rpmで20分間攪拌することにより、トルエンを除去し、分散液を得た。得られた分散液の25℃における粘度は、119cpsであった。また、得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、0.26μmであった。
【0190】
このようにして得られた分散液を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0191】
分散液の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される分散液の初速度は4.2m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は2pl(粒径Dd:15.8μm)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0192】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:190℃、湿度:28%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0193】
固化部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0194】
固化部で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.967、円形度標準偏差が0.013であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.8μmであった。重量基準の粒径標準偏差は1.3であった。
【0195】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、6.8μmであった。
【0196】
(実施例3)
前記実施例2で用いた分散液を上記と同様にして調製し、この分散液にエタノール200mlを加え、十分に攪拌・混合し、トナー製造用の分散液を得た。得られた分散液の25℃における粘度は、104cpsであった。また、得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、0.21μmであった。
【0197】
このようにして得られた分散液を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0198】
分散液の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される分散液の初速度は4.4m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は0.5pl(粒径Dd:10.0μm)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0199】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:170℃、湿度:28%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0200】
固化部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0201】
固化部で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.971、円形度標準偏差が0.010であった。重量基準の平均粒径Dtは、5.8μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.9であった。
【0202】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、5.9μmであった。
【0203】
(比較例1)
ポリオレフィン樹脂(Tg:60.2℃、フローテスタ軟化温度:104℃):100重量部と、フタロシアニン系顔料:6重量部と、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):1.5重量部とを混合した後、120℃で加熱溶融した状態で攪拌することにより、着色樹脂溶融物を得た。
【0204】
この溶融物を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の溶融物を定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。このとき、分散液供給部内、分散物貯留部内の温度は、いずれも120℃となるように調節した。
【0205】
溶融物の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、分散液貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される溶融物の初速度は3.6m/秒、ヘッド部から吐出される溶融物の一滴分の吐出量は2.1pl(粒径Dd:15.9μm)であった。また、吐出部から吐出される溶融物の粘度は、1.3×104cps(120℃)であった。また、溶融物の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、溶融物の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0206】
また、溶融物の吐出時には、ガス噴射口から温度:14℃、湿度:35%RH、流速:4m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、ハウジング内の圧力は、0.109〜0.110MPaとなるように調節した。また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に溶融物(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0207】
固化部内において、溶融物が冷却固化することにより得られた粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.951、円形度標準偏差が0.078であった。重量基準の平均粒径Dtは、10.2μmであった。重量基準の粒径標準偏差は2.7であった。
【0208】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、10.3μmであった。
【0209】
(比較例2)
まず、2リットルの丸底ステンレス容器に、トルエン:800gと、スチレン−アクリル共重合体(Mn:7.13×104、Mw:0.25×104、Mw/Mn:27.0、Tg:61.6℃):200gと、フタロシアニン系顔料:12gと、荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製):3gとを入れ、これを室温下で30分間混合し、さらに、その後、モーターミル(アイガージャパン社製)を用いて、60Hzで30分間混合することにより、着色樹脂液を得た。
【0210】
一方、2リットルの丸底ステンレス容器に、純水:800mlと、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム、平均重合度:2700〜7500、和光純薬社製):30gと、分散助剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム):0.5gとを入れ、これらを十分に混合し、均一な溶液(水性液)を用意した。
【0211】
次に、この水性液を、TKLホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、回転数:200rpmで攪拌した。攪拌している溶液中に、上記の着色樹脂液を60g/分の速度で滴下し、滴下終了後、さらに、10分間攪拌を行った。
【0212】
その後、着色樹脂液を滴下した水性液を55〜58℃とし、9〜20kPaの雰囲気下で、400rpmで20分間攪拌することにより、トルエンを除去し、分散液を得た。得られた分散液中における分散質の平均粒径Dmは、6.9μmであった。
【0213】
冷却後、分散液に2リットルの純水を加え、5リットルのビーカーでデカンテーションを2回行った。さらに、常温で、水洗(純水洗浄)、ろ過を5回繰り返し行った。
【0214】
その後、分離した分散質を、50℃の純水中に入れ、約1時間攪拌し、さらにろ過する操作を2回繰り返し行った。
【0215】
その後、得られたろ過物(トナーケーキ)を50wt%メタノール水溶液1リットルに攪拌・混合し、均一なスラリーを得た。このスラリーを、噴霧乾燥装置(DISPACOAT、日清エンジニアリング社製)により乾燥し、粒状物を得た。
【0216】
得られた粒状物は、平均円形度Rが0.964、円形度標準偏差が0.031であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.8μmであった。重量基準の粒径標準偏差は2.1であった。
【0217】
得られた粒状物100重量部に疎水性シリカ1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、6.6μmであった。
【0218】
以上の各実施例および各比較例について、トナー製造装置を用いて製造された粒子(シリカを添加する前のトナー粒子)の平均円形度R、円形度標準偏差、重量基準の平均粒径Dt、粒径標準偏差および最終的に得られたトナーの平均粒径を、トナーの製造に用いた分散液の条件とともに表1にまとめて示す。
【0219】
【表1】
【0220】
表1から明らかなように、実施例1〜3のトナーは、円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。特に、実施例3では、固化部での加熱温度が比較的低かったにも関わらず、得られたトナーは、特に円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。これは、分散媒中において共沸混合物が形成され、分散媒の除去をより効率良く行うことができたためであると考えられる。
【0221】
これに対し、比較例1のトナーは、円形度が特に小さく、比較的大きな凸部を有しているトナー粒子が数多く認められた。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
すなわち、実施例1〜3では、ヘッド部から吐出する原料がO/W型エマルション(分散液)であるため、ヘッド部から吐出させる際に、微視的に粘度の低い分散媒の部分で選択的に切断され、吐出液として吐出される。また、水性の分散媒は適度な表面張力を有しているため、吐出液は、吐出後速やかに球形状となる。これに対し、比較例1では、製造に用いる原料が微視的に見ても一様な粘度を有していて、かつ高粘度であるため、ヘッド部から吐出する際に液滴が尾を引くような形状になりやすい。このため、比較例1では、比較的大きな凸部を有するトナー粒子が発生したものと考えられる。
また、比較例2のトナーは、粒度分布の幅が特に大きかった。
【0222】
[2]評価
以上のようにして得られた各トナーについて、トナー粒子の平均帯電量・帯電量の標準偏差、嵩密度、保存性、耐久性、転写効率の評価を行った。
【0223】
[2.1]トナー粒子の平均帯電量および帯電量の標準偏差
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーについて、イースパートアナライザー(ホソカワミクロン社製)を用いて、トナー粒子の平均帯電量および帯電量の標準偏差を測定した。測定時における温度は20℃、湿度は58%RHであった。
【0224】
[2.2]嵩密度
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーについて、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて、嵩密度を測定した。測定時における温度は20℃、湿度は58%RHであった。
【0225】
[2.3]保存性
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーを、それぞれ、50gずつシャーレに採り、温度を56〜58℃に設定したオーブンに24時間静置した。
【0226】
その後、オーブンのヒータからの発熱を停止させ、トナーをオーブン内で徐冷し、さらに24時間静置した。その後、トナーをオーブンから取り出し、150メッシュの篩を通過させた。篩上に残ったトナー粒子の凝集物の重量を測定し、凝集物の残留率を評価した。
【0227】
[2.4]耐久性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製:LP−2000C)の現像機にセットした。その後、印字しないように、現像機を連続回転させた。12時間後、現像機を取り出し、現像ローラ上のトナー薄層の均一性を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0228】
◎:薄層に乱れがまったく認められない。
○:薄層に乱れがほとんど認められない。
△:薄層に多少の乱れが認められる。
×:薄層に筋状の乱れがはっきりと認められる。
【0229】
[2.5]転写効率
前記各実施例および各比較例で製造したトナーの転写効率は、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製、LP−2000C)を用いて、以下のように評価した。
【0230】
感光体への現像工程直後(転写前)の感光体上のトナーと、転写後(印刷後)の感光体上のトナーとを、別々のテープを用いて採取し、それぞれの重量を測定した。転写前の感光体上のトナー重量をWb[g]、転写後の感光体上のトナー重量をWa[g]としたとき、(Wb−Wa)×100/Wbとして求められる値を、転写効率とした。
これらの結果を表2にまとめて示した。
【0231】
【表2】
【0232】
表2から明らかなように、本発明のトナーは、トナー粒子の帯電量標準偏差が小さい。すなわち、帯電量のバラツキが小さい。このことから、本発明のトナーでは、各粒子間での特性のバラツキが小さいことがわかる。
【0233】
また、本発明のトナーは、嵩密度が大きかった。このことから、本発明のトナーは、同一容積のカートリッジ内へのトナーの充填量をより多くしたり、カートリッジの小型化を図る上で有利であることがわかる。
また、本発明のトナーは、保存性、耐久性および転写効率に優れていた。
【0234】
これに対し、比較例のトナーは、帯電量のバラツキが大きく、嵩密度も小さかった。また、比較例のトナーは、保存性、耐久性および転写効率に劣っていた。
【0235】
なお、スプレードライ法を用いた場合、ガスの噴射圧力、原料温度等の各種条件を好適な条件に設定した場合であっても、通常、得られるトナー粒子の円形度は0.97程度、円形度の標準偏差は0.04程度、粒径の標準偏差は2.7μm程度となる。
【0236】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供することができる。
【0237】
このような効果は、分散液の組成や、発熱体に印加する交流電圧の周波数、吐出部の開口径、分散液の温度・粘度、分散液中の分散質の含有量、分散質の平均粒径等の各種条件を調整すること等により、さらに優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナー製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図3】他の実施形態のトナー製造装置のヘッド部付近の構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1……トナー製造装置 2……ヘッド部 21……分散液貯留部 22……発熱体 23……吐出部 24……保護膜 3……固化部 31……ハウジング 311……縮径部 4……分散液供給部 41……攪拌手段 5……回収部 6……分散液 61……分散質 62……分散媒 7……ガス噴射口 8……電圧印加手段 9……トナー粒子 10……ガス流供給手段 101……ダクト 11……熱交換器 12……圧力調整手段 121……接続管 122……拡径部123……フィルター 13……気泡
Claims (58)
- トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
気泡の体積変化によりヘッド部から前記分散液を間欠的に吐出し、気流により固化部内を搬送させつつ固化させ、粒状とすることを特徴とするトナーの製造方法。 - 前記気泡の体積変化は、主として、前記分散媒の液/気相変化に伴うものである請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記固化部を通過する際に、前記ヘッド部から吐出された前記分散液中の前記分散質を凝集させる請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
- 前記分散質は、液体である請求項1ないし3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散媒は、主として水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液は、乳化分散剤を含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液は、O/W型エマルションである請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液は、樹脂またはその前駆体を含む材料を、少なくとも水を含む液体中に投入することにより調製したものである請求項1ないし7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液は、少なくとも一部が軟化または溶融した状態の前記材料を、少なくとも水を含む液体中に投入することにより調製したものである請求項8に記載のトナーの製造方法。
- 前記材料は、粉末状または粒状をなすものである請求項8または9に記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液は、少なくとも樹脂またはその前駆体とその少なくとも一部を溶解する溶媒とを含む樹脂液と、少なくとも水を含む水性液とを混合する混合工程を経て調製されたものである請求項1ないし8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記樹脂液と前記水性液との混合は、前記水性液中に、前記樹脂液の液滴を滴下することにより行う請求項11に記載のトナーの製造方法。
- 前記混合工程で得られた混合液から前記溶媒を実質的に除去することなく、前記混合液をそのまま前記分散液として用い、前記分散液が前記固化部を通過する際に前記溶媒を除去する請求項11または12に記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液は、前記混合工程の後、前記溶媒の少なくとも一部を除去することにより調製したものである請求項11または12に記載のトナーの製造方法。
- 前記溶媒の除去は、加熱により行う請求項14に記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液中における前記分散質の平均粒径は、0.05〜1.0μmである請求項1ないし15のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足する請求項1ないし16のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液中における前記分散質の含有量は、1〜99wt%である請求項1ないし17のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の一滴分の吐出量が0.05〜500plである請求項1ないし18のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の平均粒径をDd[μm]、前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足する請求項1ないし19のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記分散液の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足する請求項1ないし20のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部が、前記分散液を貯留する分散液貯留部と、前記分散液貯留部に貯留された前記分散液に熱エネルギーを与え、前記分散液貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記分散液を吐出する吐出部とを有するものである請求項1ないし21のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである請求項22に記載のトナーの製造方法。
- 前記発熱体に交流電圧を印加することにより、前記熱エネルギーを発生させる請求項22または23に記載のトナーの製造方法。
- 前記発熱体に印加する交流電圧の周波数は、1〜50kHzである請求項24に記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出する前記分散液は、ほぼ一方向に流れるガス流中に放出される請求項1ないし25のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 複数個の前記ヘッド部から前記分散液を吐出する請求項1ないし26のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 互いに隣接する前記ヘッド部の間から気体を噴射しつつ、前記分散液を吐出する請求項27に記載のトナーの製造方法。
- 互いに隣接する前記ヘッド部の間から噴射される前記気体の湿度は、50%RH以下である請求項28に記載のトナーの製造方法。
- 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つからの前記分散液の吐出タイミングをずらす請求項27ないし29のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記固化部に、前記分散液と同じ極性の電圧を印加した状態で、前記分散液を吐出する請求項1ないし30のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出する前記分散液の初速度は、0.1〜10m/秒である請求項1ないし31のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部内における前記分散液の粘度は、5〜3000cpsである請求項1ないし32のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記固化部において、前記分散媒を除去する請求項1ないし33のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記固化部内の圧力は、0.15MPa以下である請求項1ないし34のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記分散液中の前記分散質は、その成分の少なくとも一部が溶媒に溶解したものである請求項1ないし35のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記固化部において、前記分散質中に含まれる前記溶媒の少なくとも一部を除去する請求項36に記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記分散液は、前記分散質の少なくとも一部が溶融した状態のものである請求項1ないし37のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を、前記固化部で冷却する請求項1ないし38のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を、前記固化部で加温する請求項1ないし39のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 請求項1ないし40のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするトナー。
- 平均粒径が2〜20μmである請求項41に記載のトナー。
- 各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下である請求項41または42に記載のトナー。
- 下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上である請求項41ないし43のいずれかに記載のトナー。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。) - 各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下である請求項41ないし44のいずれかに記載のトナー。
- 前記分散質が凝集した凝集体で構成される請求項41ないし45のいずれかに記載のトナー。
- 請求項1ないし40のいずれかに記載の方法を実施することを特徴とするトナー製造装置。
- トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いてトナーを製造する装置であって、
前記分散液を吐出するヘッド部と、該ヘッド部に前記分散液を供給する分散液供給部と、前記ヘッド部から吐出された前記分散液を固化させ、粒状とする固化部とを有し、
前記ヘッド部が、前記分散液を貯留する分散液貯留部と、前記分散液貯留部に貯留された前記分散液に熱エネルギーを与え、前記分散液貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記分散液を吐出する吐出部とを有することを特徴とするトナー製造装置。 - 前記分散液供給部に、前記分散液を攪拌する攪拌手段を有する請求項48に記載のトナー製造装置。
- 前記発熱体は、交流電圧の印加により発熱するものである請求項48または49に記載のトナー製造装置。
- 前記ヘッド部から吐出された前記分散液を搬送する搬送手段を有する請求項48ないし50のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 前記搬送手段がガス流を供給するガス流供給手段である請求項51に記載のトナー製造装置。
- 前記ヘッド部を複数個有する請求項48ないし52のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 互いに隣接する前記吐出部の間に、気体を噴射するガス噴射口を有する請求項53に記載のトナー製造装置。
- 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つで、前記分散液の吐出タイミングが異なる請求項53または54に記載のトナー製造装置。
- 前記固化部に電圧を印加するための電圧印加手段を有する請求項48ないし55のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである請求項48ないし56のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 前記固化部内の圧力を調整する圧力調整手段を有する請求項48ないし57のいずれかに記載のトナー製造装置。
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JP2003165224A JP2004070304A (ja) | 2002-06-10 | 2003-06-10 | トナーの製造方法、トナーおよびトナー製造装置 |
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2003
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