JP2004068454A - アンカーおよびアンカー固定用カプセル - Google Patents
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Abstract
【課題】トンネル内面に対する固定作業が容易であり、施工後は優れた固定力を発揮するアンカーおよびこのアンカーを固定するためのカプセルを提供することにより、格子状部材の固定作業の効率化、格子状部材の固定力増大を図る。
【解決手段】格子状部材20が布設されたトンネル内面T1に形成したアンカー穴10にアンカー固定用カプセル11を挿入し、アンカー本体2をアンカー穴10に打ち込んでアンカー固定用カプセル11を打撃破壊した後、アンカー本体10に挿入部材6を打ち込めば、硬化樹脂13、硬化剤14および骨材15とが互いに混じり合った混合物Mがアンカー本体2とアンカー穴10との隙間に拡散するとともに、アンカー本体2先端の係止部5が漏斗状に拡径し、この後、混合物Mの固化によってアンカー1が固定される。
【選択図】 図3
【解決手段】格子状部材20が布設されたトンネル内面T1に形成したアンカー穴10にアンカー固定用カプセル11を挿入し、アンカー本体2をアンカー穴10に打ち込んでアンカー固定用カプセル11を打撃破壊した後、アンカー本体10に挿入部材6を打ち込めば、硬化樹脂13、硬化剤14および骨材15とが互いに混じり合った混合物Mがアンカー本体2とアンカー穴10との隙間に拡散するとともに、アンカー本体2先端の係止部5が漏斗状に拡径し、この後、混合物Mの固化によってアンカー1が固定される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道トンネル、自動車道トンネルなど既設のトンネル内面の崩落を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道トンネルや自動車道トンネルなどはその大部分が鉄筋コンクリートで構築されているが、トンネル構築後の経時変化によるコンクリートの劣化、鉄筋材の腐食あるいは地震や浸水などの自然災害そのほか地盤変動によるコンクリートの損傷などによりトンネル内面に部分的な崩落が生じることがある。
【0003】
このようなトンネル内面の部分的崩落を防止する方法としては、トンネル内面を検査して崩落のおそれのある部分を発見し、その部分のトンネル内面から周囲の地盤に向かって削孔し、形成された孔内に地盤補強材を注入して地盤とともにコンクリート部を強化する工法などが採用されている。
【0004】
また、特開平11−173087号公報においては補強板を用いたトンネルの補強技術が開示されている。このトンネル補強技術は、トンネル壁体の内周面に沿って補強板を設置し、補強板とトンネル壁体の内周面との間にモルタルなどの裏込め材を注入することによって補強板とトンネル壁体の内周面とを一体化させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
既設トンネルの内周面の崩落を未然に防止するためには、トンネル内面を定期的に検査し、部分的な崩落が発生する可能性の高い部分を早期に発見し、この部分に対して前述の地盤補強工法を施工するか、トンネル内面の全体にわたって地盤補強工法を施工するという、二つの対策が考えられる。
【0006】
しかし、定期検査によって崩落発生の可能性がある部分を発見するのは実際のところ極めて困難であり、地震や自然災害などの影響を考慮すると、崩落発生箇所を早期に漏れなく発見するのはほとんど不可能である。したがって、崩落が発生する可能性が明らかである部分のみでなく、崩落のおそれが少しでも予感される部分に対して前述の地盤補強工法を施工することによって崩落事故を防止している。しかし、崩落可能性の基準を厳格にするほど、施工箇所が増加する傾向にあるので、トンネル全体の施工が完了するまでには多くの労力と時間が費やされている。
【0007】
また、特開平11−173087号公報に開示されたトンネル補強技術は、その施工には膨大な労力、時間および資材を必要とするだけでなく、トンネル壁体の内周面自体が崩落した場合、補強板も一緒に崩落する可能性が高いので、トンネル内面の崩落防止機能としては不十分である。
【0008】
一方、トンネル内面の全体にわたって地盤補強工法を施工すれば崩落事故を防止することができるが、これらの工事には膨大な労力と時間および大量の資材を必要とするだけでなく、工事中は長期間に亘ってトンネルを通行止めにしなければならないため、現実に使用されているトンネルにおいては施工が極めて困難である。
【0009】
このような状況に対応するため、可撓性を有する格子状部材や網状部材などをトンネル内面に沿って布設し、格子状部材などをアンカーを用いてトンネル内面に固定することによってトンネル内面の崩落を防止する工法が開発されているが、この工法ではトンネル内面に対するアンカー固定作業の効率化、固定力の強化が課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、トンネル内面に対する固定作業が容易であり、施工後は優れた固定力を発揮するアンカーおよびこのアンカーを固定するためのカプセルを提供することにより、格子状部材の固定作業の効率化、格子状部材の固定力増大を図ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のアンカーは、トンネル内面から地盤に向かって形成されたンカー穴に挿入可能な筒状であって、基端部分にフランジ状に連設された頭部と、先端部分から基端部分に向ってスリットを設けることによって形成された係止部と、係止部から軸心に向って突設された受圧部とを有するアンカー本体と、
アンカー本体の頭部側からアンカー本体内に挿入可能であって挿入方向の先端に先細り形状の突入部を有する棒状の挿入部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴へ予め接着剤や固化剤などを注入した後、前記アンカー本体をその先端から前記アンカー穴へ打ち込むと、アンカー穴内にある接着剤などはアンカー本体とアンカー穴の内面との隙間に拡がるとともにその一部がアンカー本体の先端やスリットからアンカー本体内に侵入する。
【0013】
これらの接着剤などが固化する前に、アンカー本体の頭部からアンカー本体内へ挿入部材を挿入すると、挿入部材がピストンとして作用することでアンカー本体内に侵入している接着剤などはスリットやアンカー本体の先端から押し出されてアンカー本体とアンカー穴の内面との隙間に再び拡がっていくため、アンカー本体とアンカー穴の内面との隙間全体に亘って接着剤などが充填された状態となる。
【0014】
その後、挿入部材をさらに軸方向に打ち込むと、その先端にある突入部がアンカー本体の係止部に突設された受圧部に当接してこれを径方向に押し広げ、これに伴って係止部が漏斗状に拡径するのでアンカー穴に対する係止機能が増大し、接着剤などが固化した後は優れた固定力を発揮する。
【0015】
また、施工手順としては、前述したように、トンネル内面に形成したアンカー穴に接着剤などを注入した後、アンカー本体をアンカー穴に打ち込み、その後アンカー本体に挿入部材を打ち込めば、あとは接着剤などの固化を待つだけでよいので、トンネル内面に対する固定作業も容易である。
【0016】
したがって、本発明のアンカーを、トンネル内面に対する格子状部材や網状部材などの固定手段として使用すれば、固定作業が効率化され、固定力も増大するので、優れた崩落防止機能が得られる。なお、アンカー穴へ注入する接着剤や固化剤は特に限定するものではないが、後述するアンカー固定用カプセルを好適に使用することができる。
【0017】
なお、本発明のアンカーにおいて、アンカー本体の係止部から軸心に向けて突設された受圧部は、アンカー本体の先端付近に設けることが望ましく、これにより、受圧部を拡径するために必要な挿入部材への加圧力をなるべく小さくすることができる。
【0018】
ここで、前記アンカー本体の少なくとも係止部外周に雄ねじ部を形成すれば、前記雄ねじ部の凹凸形状に沿って接着剤などが固化するため、軸方向の引き抜き力に対して優れた抗力を発揮する。
【0019】
次に本発明のアンカー固定用カプセルは、トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴に挿入されるアンカーを固定するためのものであって、前記アンカー穴に挿入可能であって外部からの打撃で破壊可能な素材で形成された筒状ケーシングと、前記打撃によって破壊可能な素材で隔離した状態で前記筒状ケーシング内に充填された硬化樹脂および硬化剤とを備えたことを特徴とする。
【0020】
トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴に当該アンカー固定用カプセルを挿入し、前記アンカー穴へアンカーを打ち込むことによってアンカー固定用カプセルを打撃すれば、そのときの打撃力で前記筒状ケーシングが破壊されるとともに硬化樹脂(主剤)と硬化剤とが互いに混合され硬化反応が開始されるので、この後、所定時間静置すればアンカーをトンネル内面に固着することができる。
【0021】
なお、硬化樹脂(主剤)、硬化剤については特に限定するものではないが、硬化樹脂(主剤)としては耐食性ポリエステル樹脂、硬化剤としては過酸化ベンゾイルなどが好適である。また、当該アンカー固定用カプセルを用いて固着する対象となるアンカーも特に限定するものではないが、前述したアンカーを好適に使用することができ、これらを組み合わせることによってトンネル内面のアンカー穴に対し優れた固定力を発揮する。
【0022】
ここで、前記筒状ケーシング内に、前記打撃によって破壊可能な素材で隔離した状態で骨材を充填しておくことにより、外部からの打撃で混合される前述の硬化樹脂および硬化剤に骨材が混和されるので、硬化後はアンカー穴に対するアンカーの固定力がさらに高まるほか、長期間にわたって優れた固定力が維持され、安全性を高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1(a)は本発明の実施の形態であるアンカーを示す一部切欠側面図、同図(b)は前記アンカーの底面図、図2は本発明の実施の形態であるアンカー固定用カプセルを示す側面図である。
【0024】
図1に示すアンカー1は、後述する図3で示すようにトンネルTの内面T1から地盤Gに向かって形成されたアンカー穴10に挿入可能な円筒状のアンカー本体2と、アンカー本体2の頭部3の表面からアンカー本体2の内部に挿入可能な棒状の挿入部材6とを備えている。アンカー本体2の基端部分にはフランジ状の頭部3が形成され、アンカー本体2の先端部分から基端部分に向けて軸方向の4本のスリット4を90度間隔に設けることによって係止部5が形成されている。
【0025】
また、アンカー本体2の係止部5の先端部分にはその軸心方向に突設された受圧部7がそれぞれ設けられ、アンカー本体2の係止部5を含む先端部分の外周、詳しくは、アンカー本体2の先端から係止部5を含む全長の40%程度の位置までの外周に雄ねじ部9が形成されている。
【0026】
挿入部材6はアンカー本体2よりも長く形成されているので、挿入部材6の挿入方向の先端に設けられた突入部6aがアンカー本体2の受圧部7に当接するまで挿入したとき、挿入部材6の基端6bはアンカー本体2の頭部3より突出した状態となる。挿入部材6の突入部6aは先細り形状になっているため、アンカー本体2に挿入した挿入部材6の突入部6aが受圧部7に当接した後、さらに挿入部材6を打ち込むと、その突入部6aによって受圧部7が径方向に拡げられ、これによってアンカー本体2の先端部分にある4つの係止部5が漏斗状に拡径するようになっている。なお、アンカー本体2の材質はJIS DSN6であり、挿入部材6の材質はJIS SWCH−6Aである。
【0027】
図2に示すアンカー固定用カプセル11は、後述する図3で示すように、トンネルTの内面T1から地盤Gに向かって形成されたアンカー穴10に挿入されるアンカー1を固定するためのものであって、アンカー穴10に挿入可能であって外部からの打撃で破壊可能な素材で形成された円筒状ケーシング12と、円筒状ケーシング12内に前記打撃で破壊可能な素材で隔離した状態で充填された硬化樹脂(主剤)13および硬化剤14などを備えている。
【0028】
円筒状ケーシング12は、図2の左側に底部12bを有し、同図右側に開口部12aを有する褐色ガラス管であり、円筒状ケーシング12内において硬化樹脂13と硬化剤14とはそれぞれ複数に分散して交互に配置され、円筒状ケーシング12の開口部12側には骨材15が充填され、これらは封止材16で密封されている。また、円筒状ケーシング12内に充填されている硬化樹脂13、硬化剤14および骨材15が使用前に混じり合うのを防ぐため、運搬中の振動や衝撃などでは破壊せず、前記打撃を受けると破壊する程度の強度を備えるとともに、破壊後、硬化樹脂13と硬化剤14との硬化反応や硬化後の強度を阻害することのない素材によって隔離されている。
【0029】
本実施形態において、硬化樹脂13は耐食性ポリエステル樹脂であり、硬化剤14過酸化ベンゾイルであり、骨材15はガラスビーズであり、封止材16はパラフィンワックスである。
【0030】
次に図3,図4を参照して、図1で示したアンカー1および図2で示したアンカー固定用カプセル11を使用したトンネル内面崩落防止工事の施工例について説明する。
【0031】
図3に示すように、当該トンネル内面崩落防止工事においては、トンネルTの内面T1に沿って可撓性を有する格子状部材20を布設し、トンネル内面T1を構成する鉄筋コンクリートに複数のアンカー1を打ち込むことによって格子状部材20を固定している。格子状部材20は、スチールワイヤ撚糸、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などを組み合わせた繊維強化樹脂によって形成されたものを使用している。
【0032】
また、図4に示すように、格子状部材20を布設したトンネル内面T1にアンカー1を固定する際には、アンカー1の頭部3と格子状部材20との間に座金21を介在させている。座金21は、金属板21mとゴム板21rとを貼着した構造であり、アンカー1の頭部3下面に金属板21mが密着するような状態でアンカー本体1に環装されており、アンカー1を打ち込んだとき座金21は格子状部材20の撓み面に沿って変形可能である。
【0033】
ここで、図5〜図8を参照しながら、図3,図4で示したトンネル内面崩落防止工事の施工手順について説明する。
【0034】
まず、図5(a)に示すように、トンネルTの内面T1を500〜1000kgf/cm2のジェット水による高圧水洗ケレンによって全面的に洗浄する。そして、図5(b)に示すように、可撓性を有する格子状部材20をトンネル内面T1に沿って布設する。格子状部材20は、ガラス繊維やカーボン繊維、またはアラミド繊維などの連続繊維を強化材として使用し、樹脂には耐薬品性に優れたビニルエステルを用いて形成されている。格子状部材20は、比重が1.3〜1.7で、引っ張り強度は鉄筋材の4〜5倍、引っ張り弾性率は鋼材の2/3〜1/4、弾性変形領域もPC撚線の2〜5倍である。
【0035】
次に、図5(c)に示すように、格子状部材20の開口部に、トンネル内面T1に、アンカー1を挿入するためのアンカー穴10をドリルなどを用いて穿設する。このように、格子状部材20を布設した状態でアンカー穴10を穿設するので、予めアンカー穴10を穿設する場合に比べ、正確な位置への穿設が可能である。アンカー穴10が穿設されたら、その中にアンカー固定用カプセル11を挿入する。この場合、アンカー固定用カプセル11の底部12bをアンカー穴10の底部に向けて挿入する。
【0036】
なお、本実施形態では、格子状部材20を構成する格子材の配置間隔を、トンネルTの長手方向に50mm間隔、幅員方向に40mm間隔とし、格子材幅は15mmとすることにより、格子開口部のサイズは、トンネルTの長手方向が約35mm、幅員方向が約25mmとしている。また、アンカー穴10の配列間隔については、トンネルTの長手方向に450〜500mm間隔とし、幅員方向に480〜520mm間隔としている。
【0037】
次に、図5(d)に示すように、アンカー固定用カプセル11が挿入されたアンカー穴10にそれぞれ座金21を環装したアンカー本体2を挿入し、バイブレーションハンマなどで頭部3を打撃してアンカー本体2をアンカー穴10へ打ち込んでいくと、アンカー本体2の先端がアンカー固定用カプセル11に当接して打撃を伝達することによって円筒状ケーシング12が破壊され、硬化樹脂13、硬化剤14および骨材15とが互いに混合されて混合物Mが形成され、硬化反応が始まる。このとき、円筒状ケーシング12の破壊によって生じたガラス破片も混合物Mに混和され、骨材15と同様の機能を発揮する。
【0038】
この後、図6に示すように、アンカー本体2に環装した座金21が頭部3によって格子状部材20の表面を押圧する程度までアンカー本体2を打ち込んでいくと、アンカー穴10内にある混合物Mは、アンカー本体2とアンカー穴10の内面との隙間に拡がっていくとともに、その一部はアンカー本体2の先端やスリット4からアンカー本体2内にも侵入してくる。このとき、アンカー本体2とアンカー穴10との隙間に拡がっていく混合物Mがアンカー本体2の雄ねじ部9の凹凸面に沿って移動していくことによって撹拌作用を受けるので、硬化樹脂13と硬化剤14などとの混合状態が均一化され、硬化不良などが生じるのを防止することができる。
【0039】
次に、これらの混合物Mが固化する前に、図7に示すように、アンカー本体2の頭部3からアンカー本体2内へ挿入部材6を挿入すると、円筒状のアンカー本体2に対して挿入部材6がピストンとして作用することにより、アンカー本体2内に侵入している混合物Mはスリット4やアンカー本体2の先端から押し出されてアンカー本体2とアンカー穴10の内面との隙間に拡がっていくため、アンカー本体2とアンカー穴10の内面との隙間全体に亘って混合物Mが充填された状態となる。
【0040】
この後、挿入部材6をさらに軸方向に打ち込むと、図8に示すように、挿入部材6の先端に形成された先細りの突入部6aが、アンカー本体2の係止部5に突設された受圧部7に当接してこれを径方向に押し広げるので、これに伴って4つの係止部5が漏斗状に拡径し、混合物Mが固化することによって図5(e)に示すような状態で固定される。このとき、漏斗状に拡径した係止部5の受圧部7は挿入部材6の突入部6aに当接した状態で固定され、外圧による係止部5の縮径を阻止するのでアンカー穴10に対する係止力が高く、混合物Mが固化した後は優れた固定力を発揮する。
【0041】
このように、トンネル内面T1に形成したアンカー穴10にアンカー固定用カプセル11を挿入した後、アンカー本体2をアンカー穴10に打ち込み、その後アンカー本体10に挿入部材6を打ち込めば、その後は混合物Mの固化を待つだけでよいので、トンネル内面T1に対するアンカー1の固定作業を簡略化、効率化することができる。
【0042】
したがって、本実施形態のように、トンネル内面T1に対する格子状部材20の固定手段としてアンカー1およびアンカー固定用カプセル11を使用すれば、固定作業を効率化することができ、強い固定力を発揮するので、優れた崩落防止機能が得られる。
【0043】
また、本実施形態では、アンカー本体2の先端部分外周に雄ねじ部9を形成しているため、混合物Mは雄ねじ部9の凹凸に沿って固着され、軸方向の引き抜き力に対して優れた抗力を発揮するほか、混合物Mが雄ねじ部9の凹凸面に沿って移動する際に撹拌作用を受けるので混合物Mの混合状態が均一化され、硬化不良などの発生を防止することができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、以下に示す効果を奏する。
【0045】
(1)アンカー穴に挿入可能な筒状であって、基端部分にフランジ状に連設された頭部と、先端部分から基端部分に向けてスリットを設けて形成された係止部と、係止部からアンカー本体の軸心に向けて突設された受圧部とを有するアンカー本体と、アンカー本体の頭部からアンカー本体内に挿入可能であって挿入方向の先端に先細り形状の突入部を有する棒状の挿入部材とを備えたことにより、予め接着剤などを注入したアンカー穴へアンカー本体を挿入した後、アンカー本体内へ挿入部材を打ち込めばアンカー本体の係止部が漏斗状に拡径した状態で固定されるので、アンカー穴に対する固定作業は容易となり、施工後は優れた固定力を発揮する。
【0046】
(2)前記アンカー本体の少なくとも係止部外周に雄ねじ部を形成することにより、雄ねじ部の凹凸に沿って接着剤などが固化するため、軸方向の引き抜き力に対して優れた抗力を発揮するほか、硬化樹脂と硬化剤との混合物とが凹凸面に沿って移動する際に撹拌作用を受けるので、混合状態が均一化され、硬化不良などの発生を防止することができる。
【0047】
(3)アンカー穴に挿入可能であって外部からの打撃で破壊可能な素材で形成された筒状ケーシングと、筒状ケーシング内に打撃で破壊可能な素材で隔離して充填された硬化樹脂および硬化剤とを備えたことにより、アンカー穴へアンカーを打ち込む際の打撃力で前記筒状ケーシングを破壊するだけで硬化樹脂と硬化剤とが混合され硬化反応が始まるので、この後、所定時間静置しておくだけでアンカーをアンカー穴に固定することができる。
【0048】
(4)前記筒状ケーシング内に打撃によって破壊可能な素材で隔離した骨材を充填することにより、固着力がさらに高まり、長期間にわたって優れた固定力を維持することができ、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態であるアンカーを示す一部切欠側面図であり、(b)は前記アンカーの底面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるアンカー固定用カプセルを示す側面図である。
【図3】図1に示すアンカーおよび図2に示すアンカー固定用カプセルを用いて崩落防止工事を施工したトンネルを示す正面図である。
【図4】図3に示すトンネル内面の一部を示す図である。
【図5】図1に示すアンカーおよび図2に示すアンカー固定用カプセルを用いたトンネル内面崩落防止工事の施工手順を示す断面説明図である。
【図6】図5に示すトンネル内面崩落防止工事の施工中の状態を示す断面説明図である。
【図7】図5に示すトンネル内面崩落防止工事の施工中の状態を示す断面説明図である。
【図8】図5に示すトンネル内面崩落防止工事の施工中の状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 アンカー
2 アンカー本体
3 頭部
4 スリット
5 係止部
6 挿入部材
6a 突入部
6b 基端
7 受圧部
10 アンカー穴
11 アンカー固定用カプセル
12 円筒状ケーシング
12a 開口部
12b 底部
13 硬化樹脂
14 硬化剤
15 骨材
16 封止材
20 格子状部材
21 座金
21m 金属板
21r ゴム板
T トンネル
T1 内面
G 地盤
M 混合物
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道トンネル、自動車道トンネルなど既設のトンネル内面の崩落を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道トンネルや自動車道トンネルなどはその大部分が鉄筋コンクリートで構築されているが、トンネル構築後の経時変化によるコンクリートの劣化、鉄筋材の腐食あるいは地震や浸水などの自然災害そのほか地盤変動によるコンクリートの損傷などによりトンネル内面に部分的な崩落が生じることがある。
【0003】
このようなトンネル内面の部分的崩落を防止する方法としては、トンネル内面を検査して崩落のおそれのある部分を発見し、その部分のトンネル内面から周囲の地盤に向かって削孔し、形成された孔内に地盤補強材を注入して地盤とともにコンクリート部を強化する工法などが採用されている。
【0004】
また、特開平11−173087号公報においては補強板を用いたトンネルの補強技術が開示されている。このトンネル補強技術は、トンネル壁体の内周面に沿って補強板を設置し、補強板とトンネル壁体の内周面との間にモルタルなどの裏込め材を注入することによって補強板とトンネル壁体の内周面とを一体化させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
既設トンネルの内周面の崩落を未然に防止するためには、トンネル内面を定期的に検査し、部分的な崩落が発生する可能性の高い部分を早期に発見し、この部分に対して前述の地盤補強工法を施工するか、トンネル内面の全体にわたって地盤補強工法を施工するという、二つの対策が考えられる。
【0006】
しかし、定期検査によって崩落発生の可能性がある部分を発見するのは実際のところ極めて困難であり、地震や自然災害などの影響を考慮すると、崩落発生箇所を早期に漏れなく発見するのはほとんど不可能である。したがって、崩落が発生する可能性が明らかである部分のみでなく、崩落のおそれが少しでも予感される部分に対して前述の地盤補強工法を施工することによって崩落事故を防止している。しかし、崩落可能性の基準を厳格にするほど、施工箇所が増加する傾向にあるので、トンネル全体の施工が完了するまでには多くの労力と時間が費やされている。
【0007】
また、特開平11−173087号公報に開示されたトンネル補強技術は、その施工には膨大な労力、時間および資材を必要とするだけでなく、トンネル壁体の内周面自体が崩落した場合、補強板も一緒に崩落する可能性が高いので、トンネル内面の崩落防止機能としては不十分である。
【0008】
一方、トンネル内面の全体にわたって地盤補強工法を施工すれば崩落事故を防止することができるが、これらの工事には膨大な労力と時間および大量の資材を必要とするだけでなく、工事中は長期間に亘ってトンネルを通行止めにしなければならないため、現実に使用されているトンネルにおいては施工が極めて困難である。
【0009】
このような状況に対応するため、可撓性を有する格子状部材や網状部材などをトンネル内面に沿って布設し、格子状部材などをアンカーを用いてトンネル内面に固定することによってトンネル内面の崩落を防止する工法が開発されているが、この工法ではトンネル内面に対するアンカー固定作業の効率化、固定力の強化が課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、トンネル内面に対する固定作業が容易であり、施工後は優れた固定力を発揮するアンカーおよびこのアンカーを固定するためのカプセルを提供することにより、格子状部材の固定作業の効率化、格子状部材の固定力増大を図ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のアンカーは、トンネル内面から地盤に向かって形成されたンカー穴に挿入可能な筒状であって、基端部分にフランジ状に連設された頭部と、先端部分から基端部分に向ってスリットを設けることによって形成された係止部と、係止部から軸心に向って突設された受圧部とを有するアンカー本体と、
アンカー本体の頭部側からアンカー本体内に挿入可能であって挿入方向の先端に先細り形状の突入部を有する棒状の挿入部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴へ予め接着剤や固化剤などを注入した後、前記アンカー本体をその先端から前記アンカー穴へ打ち込むと、アンカー穴内にある接着剤などはアンカー本体とアンカー穴の内面との隙間に拡がるとともにその一部がアンカー本体の先端やスリットからアンカー本体内に侵入する。
【0013】
これらの接着剤などが固化する前に、アンカー本体の頭部からアンカー本体内へ挿入部材を挿入すると、挿入部材がピストンとして作用することでアンカー本体内に侵入している接着剤などはスリットやアンカー本体の先端から押し出されてアンカー本体とアンカー穴の内面との隙間に再び拡がっていくため、アンカー本体とアンカー穴の内面との隙間全体に亘って接着剤などが充填された状態となる。
【0014】
その後、挿入部材をさらに軸方向に打ち込むと、その先端にある突入部がアンカー本体の係止部に突設された受圧部に当接してこれを径方向に押し広げ、これに伴って係止部が漏斗状に拡径するのでアンカー穴に対する係止機能が増大し、接着剤などが固化した後は優れた固定力を発揮する。
【0015】
また、施工手順としては、前述したように、トンネル内面に形成したアンカー穴に接着剤などを注入した後、アンカー本体をアンカー穴に打ち込み、その後アンカー本体に挿入部材を打ち込めば、あとは接着剤などの固化を待つだけでよいので、トンネル内面に対する固定作業も容易である。
【0016】
したがって、本発明のアンカーを、トンネル内面に対する格子状部材や網状部材などの固定手段として使用すれば、固定作業が効率化され、固定力も増大するので、優れた崩落防止機能が得られる。なお、アンカー穴へ注入する接着剤や固化剤は特に限定するものではないが、後述するアンカー固定用カプセルを好適に使用することができる。
【0017】
なお、本発明のアンカーにおいて、アンカー本体の係止部から軸心に向けて突設された受圧部は、アンカー本体の先端付近に設けることが望ましく、これにより、受圧部を拡径するために必要な挿入部材への加圧力をなるべく小さくすることができる。
【0018】
ここで、前記アンカー本体の少なくとも係止部外周に雄ねじ部を形成すれば、前記雄ねじ部の凹凸形状に沿って接着剤などが固化するため、軸方向の引き抜き力に対して優れた抗力を発揮する。
【0019】
次に本発明のアンカー固定用カプセルは、トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴に挿入されるアンカーを固定するためのものであって、前記アンカー穴に挿入可能であって外部からの打撃で破壊可能な素材で形成された筒状ケーシングと、前記打撃によって破壊可能な素材で隔離した状態で前記筒状ケーシング内に充填された硬化樹脂および硬化剤とを備えたことを特徴とする。
【0020】
トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴に当該アンカー固定用カプセルを挿入し、前記アンカー穴へアンカーを打ち込むことによってアンカー固定用カプセルを打撃すれば、そのときの打撃力で前記筒状ケーシングが破壊されるとともに硬化樹脂(主剤)と硬化剤とが互いに混合され硬化反応が開始されるので、この後、所定時間静置すればアンカーをトンネル内面に固着することができる。
【0021】
なお、硬化樹脂(主剤)、硬化剤については特に限定するものではないが、硬化樹脂(主剤)としては耐食性ポリエステル樹脂、硬化剤としては過酸化ベンゾイルなどが好適である。また、当該アンカー固定用カプセルを用いて固着する対象となるアンカーも特に限定するものではないが、前述したアンカーを好適に使用することができ、これらを組み合わせることによってトンネル内面のアンカー穴に対し優れた固定力を発揮する。
【0022】
ここで、前記筒状ケーシング内に、前記打撃によって破壊可能な素材で隔離した状態で骨材を充填しておくことにより、外部からの打撃で混合される前述の硬化樹脂および硬化剤に骨材が混和されるので、硬化後はアンカー穴に対するアンカーの固定力がさらに高まるほか、長期間にわたって優れた固定力が維持され、安全性を高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1(a)は本発明の実施の形態であるアンカーを示す一部切欠側面図、同図(b)は前記アンカーの底面図、図2は本発明の実施の形態であるアンカー固定用カプセルを示す側面図である。
【0024】
図1に示すアンカー1は、後述する図3で示すようにトンネルTの内面T1から地盤Gに向かって形成されたアンカー穴10に挿入可能な円筒状のアンカー本体2と、アンカー本体2の頭部3の表面からアンカー本体2の内部に挿入可能な棒状の挿入部材6とを備えている。アンカー本体2の基端部分にはフランジ状の頭部3が形成され、アンカー本体2の先端部分から基端部分に向けて軸方向の4本のスリット4を90度間隔に設けることによって係止部5が形成されている。
【0025】
また、アンカー本体2の係止部5の先端部分にはその軸心方向に突設された受圧部7がそれぞれ設けられ、アンカー本体2の係止部5を含む先端部分の外周、詳しくは、アンカー本体2の先端から係止部5を含む全長の40%程度の位置までの外周に雄ねじ部9が形成されている。
【0026】
挿入部材6はアンカー本体2よりも長く形成されているので、挿入部材6の挿入方向の先端に設けられた突入部6aがアンカー本体2の受圧部7に当接するまで挿入したとき、挿入部材6の基端6bはアンカー本体2の頭部3より突出した状態となる。挿入部材6の突入部6aは先細り形状になっているため、アンカー本体2に挿入した挿入部材6の突入部6aが受圧部7に当接した後、さらに挿入部材6を打ち込むと、その突入部6aによって受圧部7が径方向に拡げられ、これによってアンカー本体2の先端部分にある4つの係止部5が漏斗状に拡径するようになっている。なお、アンカー本体2の材質はJIS DSN6であり、挿入部材6の材質はJIS SWCH−6Aである。
【0027】
図2に示すアンカー固定用カプセル11は、後述する図3で示すように、トンネルTの内面T1から地盤Gに向かって形成されたアンカー穴10に挿入されるアンカー1を固定するためのものであって、アンカー穴10に挿入可能であって外部からの打撃で破壊可能な素材で形成された円筒状ケーシング12と、円筒状ケーシング12内に前記打撃で破壊可能な素材で隔離した状態で充填された硬化樹脂(主剤)13および硬化剤14などを備えている。
【0028】
円筒状ケーシング12は、図2の左側に底部12bを有し、同図右側に開口部12aを有する褐色ガラス管であり、円筒状ケーシング12内において硬化樹脂13と硬化剤14とはそれぞれ複数に分散して交互に配置され、円筒状ケーシング12の開口部12側には骨材15が充填され、これらは封止材16で密封されている。また、円筒状ケーシング12内に充填されている硬化樹脂13、硬化剤14および骨材15が使用前に混じり合うのを防ぐため、運搬中の振動や衝撃などでは破壊せず、前記打撃を受けると破壊する程度の強度を備えるとともに、破壊後、硬化樹脂13と硬化剤14との硬化反応や硬化後の強度を阻害することのない素材によって隔離されている。
【0029】
本実施形態において、硬化樹脂13は耐食性ポリエステル樹脂であり、硬化剤14過酸化ベンゾイルであり、骨材15はガラスビーズであり、封止材16はパラフィンワックスである。
【0030】
次に図3,図4を参照して、図1で示したアンカー1および図2で示したアンカー固定用カプセル11を使用したトンネル内面崩落防止工事の施工例について説明する。
【0031】
図3に示すように、当該トンネル内面崩落防止工事においては、トンネルTの内面T1に沿って可撓性を有する格子状部材20を布設し、トンネル内面T1を構成する鉄筋コンクリートに複数のアンカー1を打ち込むことによって格子状部材20を固定している。格子状部材20は、スチールワイヤ撚糸、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などを組み合わせた繊維強化樹脂によって形成されたものを使用している。
【0032】
また、図4に示すように、格子状部材20を布設したトンネル内面T1にアンカー1を固定する際には、アンカー1の頭部3と格子状部材20との間に座金21を介在させている。座金21は、金属板21mとゴム板21rとを貼着した構造であり、アンカー1の頭部3下面に金属板21mが密着するような状態でアンカー本体1に環装されており、アンカー1を打ち込んだとき座金21は格子状部材20の撓み面に沿って変形可能である。
【0033】
ここで、図5〜図8を参照しながら、図3,図4で示したトンネル内面崩落防止工事の施工手順について説明する。
【0034】
まず、図5(a)に示すように、トンネルTの内面T1を500〜1000kgf/cm2のジェット水による高圧水洗ケレンによって全面的に洗浄する。そして、図5(b)に示すように、可撓性を有する格子状部材20をトンネル内面T1に沿って布設する。格子状部材20は、ガラス繊維やカーボン繊維、またはアラミド繊維などの連続繊維を強化材として使用し、樹脂には耐薬品性に優れたビニルエステルを用いて形成されている。格子状部材20は、比重が1.3〜1.7で、引っ張り強度は鉄筋材の4〜5倍、引っ張り弾性率は鋼材の2/3〜1/4、弾性変形領域もPC撚線の2〜5倍である。
【0035】
次に、図5(c)に示すように、格子状部材20の開口部に、トンネル内面T1に、アンカー1を挿入するためのアンカー穴10をドリルなどを用いて穿設する。このように、格子状部材20を布設した状態でアンカー穴10を穿設するので、予めアンカー穴10を穿設する場合に比べ、正確な位置への穿設が可能である。アンカー穴10が穿設されたら、その中にアンカー固定用カプセル11を挿入する。この場合、アンカー固定用カプセル11の底部12bをアンカー穴10の底部に向けて挿入する。
【0036】
なお、本実施形態では、格子状部材20を構成する格子材の配置間隔を、トンネルTの長手方向に50mm間隔、幅員方向に40mm間隔とし、格子材幅は15mmとすることにより、格子開口部のサイズは、トンネルTの長手方向が約35mm、幅員方向が約25mmとしている。また、アンカー穴10の配列間隔については、トンネルTの長手方向に450〜500mm間隔とし、幅員方向に480〜520mm間隔としている。
【0037】
次に、図5(d)に示すように、アンカー固定用カプセル11が挿入されたアンカー穴10にそれぞれ座金21を環装したアンカー本体2を挿入し、バイブレーションハンマなどで頭部3を打撃してアンカー本体2をアンカー穴10へ打ち込んでいくと、アンカー本体2の先端がアンカー固定用カプセル11に当接して打撃を伝達することによって円筒状ケーシング12が破壊され、硬化樹脂13、硬化剤14および骨材15とが互いに混合されて混合物Mが形成され、硬化反応が始まる。このとき、円筒状ケーシング12の破壊によって生じたガラス破片も混合物Mに混和され、骨材15と同様の機能を発揮する。
【0038】
この後、図6に示すように、アンカー本体2に環装した座金21が頭部3によって格子状部材20の表面を押圧する程度までアンカー本体2を打ち込んでいくと、アンカー穴10内にある混合物Mは、アンカー本体2とアンカー穴10の内面との隙間に拡がっていくとともに、その一部はアンカー本体2の先端やスリット4からアンカー本体2内にも侵入してくる。このとき、アンカー本体2とアンカー穴10との隙間に拡がっていく混合物Mがアンカー本体2の雄ねじ部9の凹凸面に沿って移動していくことによって撹拌作用を受けるので、硬化樹脂13と硬化剤14などとの混合状態が均一化され、硬化不良などが生じるのを防止することができる。
【0039】
次に、これらの混合物Mが固化する前に、図7に示すように、アンカー本体2の頭部3からアンカー本体2内へ挿入部材6を挿入すると、円筒状のアンカー本体2に対して挿入部材6がピストンとして作用することにより、アンカー本体2内に侵入している混合物Mはスリット4やアンカー本体2の先端から押し出されてアンカー本体2とアンカー穴10の内面との隙間に拡がっていくため、アンカー本体2とアンカー穴10の内面との隙間全体に亘って混合物Mが充填された状態となる。
【0040】
この後、挿入部材6をさらに軸方向に打ち込むと、図8に示すように、挿入部材6の先端に形成された先細りの突入部6aが、アンカー本体2の係止部5に突設された受圧部7に当接してこれを径方向に押し広げるので、これに伴って4つの係止部5が漏斗状に拡径し、混合物Mが固化することによって図5(e)に示すような状態で固定される。このとき、漏斗状に拡径した係止部5の受圧部7は挿入部材6の突入部6aに当接した状態で固定され、外圧による係止部5の縮径を阻止するのでアンカー穴10に対する係止力が高く、混合物Mが固化した後は優れた固定力を発揮する。
【0041】
このように、トンネル内面T1に形成したアンカー穴10にアンカー固定用カプセル11を挿入した後、アンカー本体2をアンカー穴10に打ち込み、その後アンカー本体10に挿入部材6を打ち込めば、その後は混合物Mの固化を待つだけでよいので、トンネル内面T1に対するアンカー1の固定作業を簡略化、効率化することができる。
【0042】
したがって、本実施形態のように、トンネル内面T1に対する格子状部材20の固定手段としてアンカー1およびアンカー固定用カプセル11を使用すれば、固定作業を効率化することができ、強い固定力を発揮するので、優れた崩落防止機能が得られる。
【0043】
また、本実施形態では、アンカー本体2の先端部分外周に雄ねじ部9を形成しているため、混合物Mは雄ねじ部9の凹凸に沿って固着され、軸方向の引き抜き力に対して優れた抗力を発揮するほか、混合物Mが雄ねじ部9の凹凸面に沿って移動する際に撹拌作用を受けるので混合物Mの混合状態が均一化され、硬化不良などの発生を防止することができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、以下に示す効果を奏する。
【0045】
(1)アンカー穴に挿入可能な筒状であって、基端部分にフランジ状に連設された頭部と、先端部分から基端部分に向けてスリットを設けて形成された係止部と、係止部からアンカー本体の軸心に向けて突設された受圧部とを有するアンカー本体と、アンカー本体の頭部からアンカー本体内に挿入可能であって挿入方向の先端に先細り形状の突入部を有する棒状の挿入部材とを備えたことにより、予め接着剤などを注入したアンカー穴へアンカー本体を挿入した後、アンカー本体内へ挿入部材を打ち込めばアンカー本体の係止部が漏斗状に拡径した状態で固定されるので、アンカー穴に対する固定作業は容易となり、施工後は優れた固定力を発揮する。
【0046】
(2)前記アンカー本体の少なくとも係止部外周に雄ねじ部を形成することにより、雄ねじ部の凹凸に沿って接着剤などが固化するため、軸方向の引き抜き力に対して優れた抗力を発揮するほか、硬化樹脂と硬化剤との混合物とが凹凸面に沿って移動する際に撹拌作用を受けるので、混合状態が均一化され、硬化不良などの発生を防止することができる。
【0047】
(3)アンカー穴に挿入可能であって外部からの打撃で破壊可能な素材で形成された筒状ケーシングと、筒状ケーシング内に打撃で破壊可能な素材で隔離して充填された硬化樹脂および硬化剤とを備えたことにより、アンカー穴へアンカーを打ち込む際の打撃力で前記筒状ケーシングを破壊するだけで硬化樹脂と硬化剤とが混合され硬化反応が始まるので、この後、所定時間静置しておくだけでアンカーをアンカー穴に固定することができる。
【0048】
(4)前記筒状ケーシング内に打撃によって破壊可能な素材で隔離した骨材を充填することにより、固着力がさらに高まり、長期間にわたって優れた固定力を維持することができ、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態であるアンカーを示す一部切欠側面図であり、(b)は前記アンカーの底面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるアンカー固定用カプセルを示す側面図である。
【図3】図1に示すアンカーおよび図2に示すアンカー固定用カプセルを用いて崩落防止工事を施工したトンネルを示す正面図である。
【図4】図3に示すトンネル内面の一部を示す図である。
【図5】図1に示すアンカーおよび図2に示すアンカー固定用カプセルを用いたトンネル内面崩落防止工事の施工手順を示す断面説明図である。
【図6】図5に示すトンネル内面崩落防止工事の施工中の状態を示す断面説明図である。
【図7】図5に示すトンネル内面崩落防止工事の施工中の状態を示す断面説明図である。
【図8】図5に示すトンネル内面崩落防止工事の施工中の状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 アンカー
2 アンカー本体
3 頭部
4 スリット
5 係止部
6 挿入部材
6a 突入部
6b 基端
7 受圧部
10 アンカー穴
11 アンカー固定用カプセル
12 円筒状ケーシング
12a 開口部
12b 底部
13 硬化樹脂
14 硬化剤
15 骨材
16 封止材
20 格子状部材
21 座金
21m 金属板
21r ゴム板
T トンネル
T1 内面
G 地盤
M 混合物
Claims (4)
- トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴に挿入可能な筒状であって、基端部分にフランジ状に連設された頭部と、先端部分から基端部分に向かってスリットを設けることによって形成された係止部と、前記係止部から軸心に向かって突設された受圧部とを有するアンカー本体と、
前記アンカー本体の頭部側からアンカー本体内に挿入可能であって挿入方向の先端に先細り形状の突入部を有する棒状の挿入部材とを備えたことを特徴とするアンカー。 - 前記アンカー本体の少なくとも係止部外周に雄ねじ部を形成した請求項1記載のアンカー。
- トンネル内面から地盤に向かって形成されたアンカー穴に挿入可能であって外部からの打撃によって破壊可能な素材で形成された筒状ケーシングと、前記打撃によって破壊可能な素材で隔離した状態で前記筒状ケーシング内に充填された硬化樹脂および硬化剤とを備えたことを特徴とするアンカー固定用カプセル。
- 前記打撃によって破壊可能な素材で隔離した状態で前記筒状ケーシング内に骨材を充填した請求項3記載のアンカー固定用カプセル。
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