JP2004068402A - 鋼製橋脚の補強施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】柱部材と梁部材との接続部に対してプレストレス力による工法を適用可能な鋼製橋脚の補強施工方法を提供すること。
【解決手段】この補強施工された鋼製橋脚は、基礎上に立設された柱部材1と、この柱部材1に交差するように接続された梁部材2と、柱部材1と梁部材2との接続部を補強するための補強部材3a,3bとを有し、この補強部材3a,3bに当該鋼製橋脚の使用時に上記接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺する向きのプレストレス力が付与されている。
【選択図】 図1
【解決手段】この補強施工された鋼製橋脚は、基礎上に立設された柱部材1と、この柱部材1に交差するように接続された梁部材2と、柱部材1と梁部材2との接続部を補強するための補強部材3a,3bとを有し、この補強部材3a,3bに当該鋼製橋脚の使用時に上記接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺する向きのプレストレス力が付与されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基礎上に立設された柱部材と、この柱部材に交差するように接続された梁部材とを有する鋼製橋脚の補強施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の橋梁は、荷重の増大及び通過交通量の増大により、静的耐力不足及び疲労耐力不足が生じており、梁部材の補修及び補強が必要になっている。従来の梁部材の側面補強法には、補強板を本体にボルトなどで取り付けるだけの工法と、緊張材による外ケーブル補強工法とがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
補強板のボルト取り付け工法は、補強後に作用する後荷重に対してのみ補強効果があり、死荷重(自重など常に作用している荷重)による応力度の改善ができない。もし、死荷重による応力度に対して補強をする場合は、死荷重を支保工などで仮保持した状態で補強板を取り付け、支保工を除去する作業が必要であり、工事費の増大となる。
【0004】
また、外ケーブル補強は、プレストレス力により、死荷重による応力度の改善ができるが、ケーブル断面積が小さいため、後荷重に対しての補強効果が少ない。さらに、特殊な定着金具類が必要であり、工事費が割高である。
【0005】
このため、例えば特開平9−100513号公報や特開2001−207415号公報のように、梁部材に熱プレストレス力を導入して補強するプレストレス工法が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの工法は、いずれも単純梁のフランジ部に取り付けられの補強部材へプレストレス力を付与しているだけであり、支柱(柱部材)と梁部材(梁部材)との接続部に地震時の低サイクル疲労などが生じたことが多々あったにもかかわらず、実際にこの部位に同工法を採用した例はなかった。
【0007】
本発明は以上のような従来方法における課題を考慮してなされたものであり、柱部材と梁部材との接続部に対してプレストレス力による工法を適用可能な鋼製橋脚の補強施工方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、基礎上に立設された柱部材と、この柱部材に交差するように接続された梁部材とを有する鋼製橋脚を、補強部材を用いて補強するための補強施工方法であって、上記柱部材、上記梁部材の少なくとも一方と、上記補強部材との間に温度差を与えて部材同士を連結し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力を発生させることを特徴とするものである。なお、プレストレス力には、圧縮プレストレス力及び引張プレストレス力の少なくとも一方が含まれる。
【0009】
この構成によれば、上記柱部材、上記梁部材の少なくとも一方と、上記補強部材との間に温度差が与えられて部材同士が連結され、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力が発生させられるので、補強部材による通常の応力分担作用に加えて、この補強施工された鋼製橋脚の使用時に死荷重あるいは活荷重を受けることにより、柱部材と梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力による応力度が、プレストレス力によって相殺されるという相乗作用が働く結果、当該鋼製橋脚の疲労強度が大幅に増大される。しかも、この構成は、新設の鋼製橋脚の補強施工に適用できるのみならず、疲労損傷した既設の鋼製橋脚の補修・補強の施工にも好適である。
【0010】
請求項2記載の発明のように、請求項1記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記補助部材は、上記柱部材と上記梁部材とにボルトで固定されることとすれば、この補助部材が柱部材と梁部材とに溶接で固定された場合に比べて、鋼製橋脚の疲労強度はより大幅に増大される。
【0011】
請求項3記載の発明のように、請求項1又は2記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記柱部材及び上記梁部材との間に温度差を与えた状態でこの補助部材を上記柱部材と上記梁部材とに連結し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部に作用する曲げモーメントと相殺される向きのプレストレス力を発生させることとすれば、この補強施工された鋼製橋脚の柱部材と梁部材との接続部に作用する曲げモーメントにより発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺される。
【0012】
請求項4記載の発明のように、請求項1又は2記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記柱部材と上記梁部材との間に温度差を与えた状態でこの補強部材を上記柱部材に対してその軸方向に離れた複数の部位に固定し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材に作用する軸力と相殺される向きのプレストレス力を発生させ、上記温度差の低減後に上記補助部材を上記梁部材に連結することとすれば、この補強施工された鋼製橋脚の柱部材に作用する軸荷重により発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺されるとともに、柱部材と梁部材との接続部に作用するその他の内力による応力度も上記補強部材による通常の応力分担作用によって軽減される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る鋼製橋脚の全体構成を示したものである。
【0014】
本実施形態に係る鋼製橋脚は、基本的には、図示しない地上のベースプレート(基礎に相当する。)上に立設された柱部材1と、この柱部材1によって所定高さに支持されるとともに上面に図示しない道路桁を搭載する梁部材2と、柱部材1と梁部材2との接続部及びその近傍の部位を補強するための補強部材3a,3bとを有し、この補強部材3a,3bは柱部材1と梁部材2との接続部の上側及び下側にそれぞれ形成される隅角部4a,4bを跨ぐようにボルト接合したものである。
【0015】
ところで、鋼部材における疲労強度は、応力振幅と応力集中係数に依存するが、従来の鋼製橋脚の隅角部には、この疲労要因が潜在している。そこで、本発明者らは、側板フィレットを上記補強部材3a,3bで形成するようにした。
【0016】
しかし、もし隅角部4a,4bにひび割れが発生すると、抵抗断面積が減少し、大きな応力集中が生じ、さらに高応力度となってひび割れが進行する。単にボルト接合した補強部材3は、その後の荷重に抵抗するだけで、死荷重相当の応力度分は遊ぶことになる。疲労損傷の補修・補強は、元の断面積を確保しても、いずれ何年か後に損傷が再発することになる。必ず、損傷発生箇所の応力レベルを下げる必要がある。
【0017】
そこで、本発明者らは、この隅角部4a,4bの疲労損傷の補修・補強法として、熱プレストレス工法を適用することを考えた。
【0018】
この熱プレストレス工法とは、例えば補強部材3aを柱部材1と梁部材2の少なくとも一方に対する温度差である相対温度差50℃程度で、加熱膨張させた状態で定着(固定)する工法である。局部加熱でも、100℃程度以下であるので、断熱材は用いなくても、柱部材1と梁部材2(以下、本体側という。)の温度上昇はごく僅かで問題はない。なお、この相対温度差と周囲温度とによって加熱温度が決定される。例えば、相対温度差が50℃で周囲温度が20℃のときには、両者を加算して加熱温度は70℃とされる。
【0019】
補強部材3aが自然冷却されて常温に戻れば、この補強部材3aには引張プレストレス力が導入される一方、本体側には、その反力としての圧縮プレストレス力が導入される。この逆に、本体側を加熱した後、補強部材3bを定着すると、この本体側には引張プレストレス力が導入される一方、補強部材3bには、その反力としての圧縮プレストレス力が導入される。補強部材3a,3bと本体側のいずれを加熱するべきかについては、結局、隅角部4a,4bとその近傍に作用する曲げモーメントや軸力を相殺する向きのプレストレス力が得られるように決定される。
【0020】
例えば鋼製橋脚の使用時に図1の上側隅角部4aに時計回りの曲げモーメントが作用するとすれば、補強部材3aに導入された引張プレストレス力の反力として本体側に導入された圧縮プレストレス力がこの曲げモーメントによって発生する応力度を相殺する向きに作用する。また、鋼製橋脚の使用時に図1の下側隅角部4bに下向きの軸力が作用するとすれば、補強部材3bに導入された圧縮プレストレス力の反力として本体側に導入された引張プレストレス力がこの軸力によって発生する応力度を相殺する向きに作用する。
【0021】
このとき、補強部材3a,3bに溶接線がないと疲労強度が高くなる。さらに、この補強部材3a,3bの存在により、柱部材1と梁部材2との接続部の断面積及び断面係数の増大が図れ、また発生応力度が低減するので、応力振幅が減少する。すなわち、熱プレストレス工法は、プレストレス力による応力改善と、面積補強による応力改善と、さらにボルト接合を用いた疲労強度の改善といった効果があり、疲労損傷の補修・補強に好適である。
【0022】
また、補強部材3a,3bに引張プレストレス力を導入すると、自由突出長が大きくできること、高張力鋼の薄板が使用できること、綴合せボルトを少なくできるといったメリットがある。また、本体側に圧縮プレストレス力を導入すると、損傷部も有効面積に算入することができるので、応力レベルが低下する。したがって、疲労損傷の進行が防止できる。また、溶着金属部の残留引張応力が軽減でき、地震時の低サイクル疲労損傷を防止することができるようになる。
【0023】
以下、鋼製橋脚の補強手順を例示する。なお、図1中の符号(・・・)は補強部材の加熱、符号(− − −)は本体側の加熱、符号(●)は一次定着ボルト5a、符号(+)は綴合せボルト5b、符号(◇)は二次定着ボルト5c、符号(→)はプレストレス力の向きをそれぞれ示している。
【0024】
(隅角プレストレス補強)
上記図1において、柱部材1と梁部材2との接続部の上側に上側隅角部4aが形成されている。この上側隅角部4aを跨ぐように、隅角補強部材3aが傾斜状態で掛け渡されている。この隅角補強部材3aは、図中の左上及び右下の両端部が適当にカットされた長尺かつ幅広の鋼板製であって、その両端部が柱部材1と梁部材2とにボルト固定された上で、当該固定部位間に熱プレストレス力が付与されるようになっている。
【0025】
このために、隅角補強部材3aをガスバーナーなどで加熱し、所定量温度膨張させた状態で、隅角補強部材3aの端部を柱部材1又は梁部材2と一次定着ボルト(ボルトに相当する。)5aで締結する。図示しないボルト孔は、膨張後にこの一次定着ボルト5aが挿入できるように、孔位置をずらすか、長孔とするか、大孔としておく。
【0026】
加熱は相対温度差100℃以下で、断熱材及び強制冷却は不要で、局部加熱でもよい。相対ひずみ量を図示しないダイヤルゲージなどで計測する。一次定着ボルト5aの締結後、隅角補強部材3aが自然冷却されて常温に戻れば、この隅角補強部材3aには、温度差応力により引張プレストレス力が導入される。中間部の綴合せボルト5bを締結すれば、柱部材1、梁部材2と隅角補強部材3aとが一体となり、後荷重に抵抗できる。
【0027】
この場合、隅角補強部材3aの上側隅角部4aからの突出により、柱部材1と梁部材2との接続部の断面係数が増大し、後荷重に対する補強効果が大きくなる。この突出プレストレス補強で、上側隅角部4aにおける疲労損傷の補強が可能となる。
【0028】
(圧縮座屈補強)
上記図1において、柱部材1と梁部材2との接続部の下側に下側隅角部4bが形成されている。この下側隅角部4b付近の柱部材1に沿うように、座屈補強部材3bが設けられている。この座屈補強部材3bは、略直角三角形状の鋼板製であって、図中の左上で直交する両辺が柱部材1と梁部材2の各軸方向に取り付けられるようになっている。そして、左側の上下端部が柱部材1にボルト固定された上で、当該固定部位間に熱プレストレス力が付与され、その冷却後に右側の上端部が梁部材2にボルト固定されるようになっている。
【0029】
このために、座屈補強部材3bの取り付け部である下側隅角部4b付近で、柱部材1を加熱膨張させ、座屈補強部材3bの柱部材1側の上下端部を当該柱部材1に一次定着ボルト(ボルトに相当する。)5aで定着する。ボルト孔は上記と同様である。そして、柱部材1が自然冷却されて常温に戻れば、座屈補強部材3bには圧縮プレストレス力が導入される。さらに、この座屈補強部材3bの梁部材2側の端部を当該梁部材1に二次定着ボルト5cで定着すれば、柱部材1、梁部材2と座屈補強部材3bとが一体となり、後荷重に抵抗できる。従来工法では、この座屈補強部材3bによる直接補強が困難であったが、この工法では可能となる。座屈補強部材3bにリブ補強すれば、さらに圧縮耐力が増すこととなる。
【0030】
上記隅角プレストレス補強を例にとってさらに説明する。ただし、隅角プレストレス補強は必ずしも上側隅角部4aに適用するものではなく、曲げモーメントのかかり具合によっては下側隅角部4bに適用することが好ましい。図2はその補強事例を示す。図2において、左右の下側隅角部4bをそれぞれ跨ぐように、隅角補強部材3cが左右対称に傾斜状態で掛け渡されている。この隅角補強部材3cは、各端部が適当にカットされた長尺かつ幅広の鋼板製であって、その各端部が柱部材1と梁部材2とにボルト固定された上で、当該固定部位間に熱プレストレス力が付与されるようになっている。断面係数を大きくするためには、隅角補強部材3cを下側隅角部4bよりも突出させるとよい。隅角補強部材3cの有効幅は図2に示すように、隅肉溶接における、のど厚展開計算と同様に、45°方向幅を計算断面方向に展開すればよい。
【0031】
そして、例えば図3に示すような箱型断面形状を仮定し、損傷母材の50%を有効とする。ただし、そのリブ8は100%有効とする。ここでは、隅角補強部材3cを45°方向に配置して下側隅角部4bを補強しているが、この補強前後の断面係数の比に応じて損傷部の発生応力度が低下する。
【0032】
そして、隅角補強部材3cを50℃の相対温度差で加熱定着すると、熱プレストレス導入力が発生し、これが、隅角補強部材3c及び母材すなわち下側隅角部4b付近の柱部材1と梁部材2のもとの応力度と組み合わさって、それぞれ適当な応力度が発生するようになる。なお、上記圧縮座屈補強の場合も、同様に、その座屈補強部材の有効幅の計算等を行うことができる。
【0033】
ところで、平板の両側に熱プレストレスを付与するための補強部材3a等を設けると、軸心対称となって、有害なシェル曲げモーメントは発生しない。ここで、シェル曲げモーメントとは、平板及び曲面板で、軸心の偏心などにより鋼殻に発生する曲げモーメントをいう。しかし、板の片面に補強部材3a等を取り付けると、このシェル曲げモーメントが作用する。この場合、補強部材3a等の定着端部を、本体応力度の低い位置にするのも有効である。なお、補強部材3a等の片面に熱プレストレス補強を行った場合のシェル曲げ応力度は、リブ8にも発生する。これは、プレストレス量、リブ剛性、ダイヤフラム位置などの変数であり、個々にフレーム解析などする必要がある。このシェル曲げモーメントを評価することにより、熱プレストレス導入量の精度が向上する。
【0034】
なお、熱プレストレス工法は、温度管理制御ではなくて、ひずみ制御管理である。また、熱プレストレス工法の補強部材3a等の形状、及び、その取り付け位置は任意である。この熱プレストレス工法は、補強部材3a等又は本体側に適当な応力度と変形を導入する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の鋼製橋脚の補強方法では、柱部材1、梁部材2の少なくとも一方と、補強部材3a,3bとの間に温度差が与えられて部材同士が連結され、その後の温度差の低減によって補強部材3a,3bに柱部材1と梁部材2との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力が発生させられるので、補強部材3a,3bによる通常の応力分担作用に加えて、この補強施工された鋼製橋脚の使用時に死荷重あるいは活荷重を受けることにより、柱部材1と梁部材2との接続部又はその近傍部位に作用する内力による応力度が、プレストレス力によって相殺されるという相乗作用が働く結果、当該鋼製橋脚の疲労強度が大幅に増大される。しかも、この構成は、新設の鋼製橋脚の補強施工に適用できるのみならず、疲労損傷した既設の鋼製橋脚の補修・補強の施工にも好適である。
【0036】
なお、本発明は、例えば柱部材にコンクリートを充填したような鋼製橋脚についても適用可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、柱部材1及び梁部材2は、ともに箱型断面を有するものとしているが、円柱断面形状の柱部材や、横梁状の梁部材等、その他の形状であってもよい。それらの場合であっても、熱プレストレス補強を行うことにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、補強部材による通常の応力分担作用に加えて、この補強施工された鋼製橋脚の使用時に死荷重あるいは活荷重を受けることにより、柱部材と梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力による応力度が、プレストレス力によって相殺されるという相乗作用が働く結果、当該鋼製橋脚の疲労強度が大幅に増大される。しかも、この構成は、新設の鋼製橋脚の補強施工に適用できるのみならず、疲労損傷した既設の鋼製橋脚の補修・補強の施工にも好適である。
【0039】
請求項2記載の発明によれば、補助部材が柱部材と梁部材とに溶接で固定された場合に比べて、鋼製橋脚の疲労強度はより大幅に増大される。
【0040】
請求項3記載の発明によれば、補強施工された鋼製橋脚の柱部材と梁部材との接続部に作用する曲げモーメントにより発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺されるので、この補強施工された鋼製橋脚の疲労強度を大幅に増大できる。
【0041】
請求項4記載の発明によれば、補強施工された鋼製橋脚の柱部材に作用する軸荷重により発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺されるとともに、柱部材と梁部材との接続部に作用するその他の内力による応力度も上記補強部材による通常の応力分担作用によって軽減されるので、この補強施工された鋼製橋脚の疲労強度を大幅に増大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る鋼製橋脚の全体構成を示した図である。
【図2】隅角プレストレス補強の補強事例を示す図である。
【図3】図2における水平断面図である。
【符号の説明】
1 柱部材
2 梁部材
3a,3b 補強部材
4a 上側隅角部
4b 下側隅角部
5a 一次定着ボルト(ボルトに相当する。)
5b 綴合せボルト
5c 二次定着ボルト
【発明の属する技術分野】
本発明は、基礎上に立設された柱部材と、この柱部材に交差するように接続された梁部材とを有する鋼製橋脚の補強施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の橋梁は、荷重の増大及び通過交通量の増大により、静的耐力不足及び疲労耐力不足が生じており、梁部材の補修及び補強が必要になっている。従来の梁部材の側面補強法には、補強板を本体にボルトなどで取り付けるだけの工法と、緊張材による外ケーブル補強工法とがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
補強板のボルト取り付け工法は、補強後に作用する後荷重に対してのみ補強効果があり、死荷重(自重など常に作用している荷重)による応力度の改善ができない。もし、死荷重による応力度に対して補強をする場合は、死荷重を支保工などで仮保持した状態で補強板を取り付け、支保工を除去する作業が必要であり、工事費の増大となる。
【0004】
また、外ケーブル補強は、プレストレス力により、死荷重による応力度の改善ができるが、ケーブル断面積が小さいため、後荷重に対しての補強効果が少ない。さらに、特殊な定着金具類が必要であり、工事費が割高である。
【0005】
このため、例えば特開平9−100513号公報や特開2001−207415号公報のように、梁部材に熱プレストレス力を導入して補強するプレストレス工法が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの工法は、いずれも単純梁のフランジ部に取り付けられの補強部材へプレストレス力を付与しているだけであり、支柱(柱部材)と梁部材(梁部材)との接続部に地震時の低サイクル疲労などが生じたことが多々あったにもかかわらず、実際にこの部位に同工法を採用した例はなかった。
【0007】
本発明は以上のような従来方法における課題を考慮してなされたものであり、柱部材と梁部材との接続部に対してプレストレス力による工法を適用可能な鋼製橋脚の補強施工方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、基礎上に立設された柱部材と、この柱部材に交差するように接続された梁部材とを有する鋼製橋脚を、補強部材を用いて補強するための補強施工方法であって、上記柱部材、上記梁部材の少なくとも一方と、上記補強部材との間に温度差を与えて部材同士を連結し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力を発生させることを特徴とするものである。なお、プレストレス力には、圧縮プレストレス力及び引張プレストレス力の少なくとも一方が含まれる。
【0009】
この構成によれば、上記柱部材、上記梁部材の少なくとも一方と、上記補強部材との間に温度差が与えられて部材同士が連結され、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力が発生させられるので、補強部材による通常の応力分担作用に加えて、この補強施工された鋼製橋脚の使用時に死荷重あるいは活荷重を受けることにより、柱部材と梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力による応力度が、プレストレス力によって相殺されるという相乗作用が働く結果、当該鋼製橋脚の疲労強度が大幅に増大される。しかも、この構成は、新設の鋼製橋脚の補強施工に適用できるのみならず、疲労損傷した既設の鋼製橋脚の補修・補強の施工にも好適である。
【0010】
請求項2記載の発明のように、請求項1記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記補助部材は、上記柱部材と上記梁部材とにボルトで固定されることとすれば、この補助部材が柱部材と梁部材とに溶接で固定された場合に比べて、鋼製橋脚の疲労強度はより大幅に増大される。
【0011】
請求項3記載の発明のように、請求項1又は2記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記柱部材及び上記梁部材との間に温度差を与えた状態でこの補助部材を上記柱部材と上記梁部材とに連結し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部に作用する曲げモーメントと相殺される向きのプレストレス力を発生させることとすれば、この補強施工された鋼製橋脚の柱部材と梁部材との接続部に作用する曲げモーメントにより発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺される。
【0012】
請求項4記載の発明のように、請求項1又は2記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記柱部材と上記梁部材との間に温度差を与えた状態でこの補強部材を上記柱部材に対してその軸方向に離れた複数の部位に固定し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材に作用する軸力と相殺される向きのプレストレス力を発生させ、上記温度差の低減後に上記補助部材を上記梁部材に連結することとすれば、この補強施工された鋼製橋脚の柱部材に作用する軸荷重により発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺されるとともに、柱部材と梁部材との接続部に作用するその他の内力による応力度も上記補強部材による通常の応力分担作用によって軽減される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る鋼製橋脚の全体構成を示したものである。
【0014】
本実施形態に係る鋼製橋脚は、基本的には、図示しない地上のベースプレート(基礎に相当する。)上に立設された柱部材1と、この柱部材1によって所定高さに支持されるとともに上面に図示しない道路桁を搭載する梁部材2と、柱部材1と梁部材2との接続部及びその近傍の部位を補強するための補強部材3a,3bとを有し、この補強部材3a,3bは柱部材1と梁部材2との接続部の上側及び下側にそれぞれ形成される隅角部4a,4bを跨ぐようにボルト接合したものである。
【0015】
ところで、鋼部材における疲労強度は、応力振幅と応力集中係数に依存するが、従来の鋼製橋脚の隅角部には、この疲労要因が潜在している。そこで、本発明者らは、側板フィレットを上記補強部材3a,3bで形成するようにした。
【0016】
しかし、もし隅角部4a,4bにひび割れが発生すると、抵抗断面積が減少し、大きな応力集中が生じ、さらに高応力度となってひび割れが進行する。単にボルト接合した補強部材3は、その後の荷重に抵抗するだけで、死荷重相当の応力度分は遊ぶことになる。疲労損傷の補修・補強は、元の断面積を確保しても、いずれ何年か後に損傷が再発することになる。必ず、損傷発生箇所の応力レベルを下げる必要がある。
【0017】
そこで、本発明者らは、この隅角部4a,4bの疲労損傷の補修・補強法として、熱プレストレス工法を適用することを考えた。
【0018】
この熱プレストレス工法とは、例えば補強部材3aを柱部材1と梁部材2の少なくとも一方に対する温度差である相対温度差50℃程度で、加熱膨張させた状態で定着(固定)する工法である。局部加熱でも、100℃程度以下であるので、断熱材は用いなくても、柱部材1と梁部材2(以下、本体側という。)の温度上昇はごく僅かで問題はない。なお、この相対温度差と周囲温度とによって加熱温度が決定される。例えば、相対温度差が50℃で周囲温度が20℃のときには、両者を加算して加熱温度は70℃とされる。
【0019】
補強部材3aが自然冷却されて常温に戻れば、この補強部材3aには引張プレストレス力が導入される一方、本体側には、その反力としての圧縮プレストレス力が導入される。この逆に、本体側を加熱した後、補強部材3bを定着すると、この本体側には引張プレストレス力が導入される一方、補強部材3bには、その反力としての圧縮プレストレス力が導入される。補強部材3a,3bと本体側のいずれを加熱するべきかについては、結局、隅角部4a,4bとその近傍に作用する曲げモーメントや軸力を相殺する向きのプレストレス力が得られるように決定される。
【0020】
例えば鋼製橋脚の使用時に図1の上側隅角部4aに時計回りの曲げモーメントが作用するとすれば、補強部材3aに導入された引張プレストレス力の反力として本体側に導入された圧縮プレストレス力がこの曲げモーメントによって発生する応力度を相殺する向きに作用する。また、鋼製橋脚の使用時に図1の下側隅角部4bに下向きの軸力が作用するとすれば、補強部材3bに導入された圧縮プレストレス力の反力として本体側に導入された引張プレストレス力がこの軸力によって発生する応力度を相殺する向きに作用する。
【0021】
このとき、補強部材3a,3bに溶接線がないと疲労強度が高くなる。さらに、この補強部材3a,3bの存在により、柱部材1と梁部材2との接続部の断面積及び断面係数の増大が図れ、また発生応力度が低減するので、応力振幅が減少する。すなわち、熱プレストレス工法は、プレストレス力による応力改善と、面積補強による応力改善と、さらにボルト接合を用いた疲労強度の改善といった効果があり、疲労損傷の補修・補強に好適である。
【0022】
また、補強部材3a,3bに引張プレストレス力を導入すると、自由突出長が大きくできること、高張力鋼の薄板が使用できること、綴合せボルトを少なくできるといったメリットがある。また、本体側に圧縮プレストレス力を導入すると、損傷部も有効面積に算入することができるので、応力レベルが低下する。したがって、疲労損傷の進行が防止できる。また、溶着金属部の残留引張応力が軽減でき、地震時の低サイクル疲労損傷を防止することができるようになる。
【0023】
以下、鋼製橋脚の補強手順を例示する。なお、図1中の符号(・・・)は補強部材の加熱、符号(− − −)は本体側の加熱、符号(●)は一次定着ボルト5a、符号(+)は綴合せボルト5b、符号(◇)は二次定着ボルト5c、符号(→)はプレストレス力の向きをそれぞれ示している。
【0024】
(隅角プレストレス補強)
上記図1において、柱部材1と梁部材2との接続部の上側に上側隅角部4aが形成されている。この上側隅角部4aを跨ぐように、隅角補強部材3aが傾斜状態で掛け渡されている。この隅角補強部材3aは、図中の左上及び右下の両端部が適当にカットされた長尺かつ幅広の鋼板製であって、その両端部が柱部材1と梁部材2とにボルト固定された上で、当該固定部位間に熱プレストレス力が付与されるようになっている。
【0025】
このために、隅角補強部材3aをガスバーナーなどで加熱し、所定量温度膨張させた状態で、隅角補強部材3aの端部を柱部材1又は梁部材2と一次定着ボルト(ボルトに相当する。)5aで締結する。図示しないボルト孔は、膨張後にこの一次定着ボルト5aが挿入できるように、孔位置をずらすか、長孔とするか、大孔としておく。
【0026】
加熱は相対温度差100℃以下で、断熱材及び強制冷却は不要で、局部加熱でもよい。相対ひずみ量を図示しないダイヤルゲージなどで計測する。一次定着ボルト5aの締結後、隅角補強部材3aが自然冷却されて常温に戻れば、この隅角補強部材3aには、温度差応力により引張プレストレス力が導入される。中間部の綴合せボルト5bを締結すれば、柱部材1、梁部材2と隅角補強部材3aとが一体となり、後荷重に抵抗できる。
【0027】
この場合、隅角補強部材3aの上側隅角部4aからの突出により、柱部材1と梁部材2との接続部の断面係数が増大し、後荷重に対する補強効果が大きくなる。この突出プレストレス補強で、上側隅角部4aにおける疲労損傷の補強が可能となる。
【0028】
(圧縮座屈補強)
上記図1において、柱部材1と梁部材2との接続部の下側に下側隅角部4bが形成されている。この下側隅角部4b付近の柱部材1に沿うように、座屈補強部材3bが設けられている。この座屈補強部材3bは、略直角三角形状の鋼板製であって、図中の左上で直交する両辺が柱部材1と梁部材2の各軸方向に取り付けられるようになっている。そして、左側の上下端部が柱部材1にボルト固定された上で、当該固定部位間に熱プレストレス力が付与され、その冷却後に右側の上端部が梁部材2にボルト固定されるようになっている。
【0029】
このために、座屈補強部材3bの取り付け部である下側隅角部4b付近で、柱部材1を加熱膨張させ、座屈補強部材3bの柱部材1側の上下端部を当該柱部材1に一次定着ボルト(ボルトに相当する。)5aで定着する。ボルト孔は上記と同様である。そして、柱部材1が自然冷却されて常温に戻れば、座屈補強部材3bには圧縮プレストレス力が導入される。さらに、この座屈補強部材3bの梁部材2側の端部を当該梁部材1に二次定着ボルト5cで定着すれば、柱部材1、梁部材2と座屈補強部材3bとが一体となり、後荷重に抵抗できる。従来工法では、この座屈補強部材3bによる直接補強が困難であったが、この工法では可能となる。座屈補強部材3bにリブ補強すれば、さらに圧縮耐力が増すこととなる。
【0030】
上記隅角プレストレス補強を例にとってさらに説明する。ただし、隅角プレストレス補強は必ずしも上側隅角部4aに適用するものではなく、曲げモーメントのかかり具合によっては下側隅角部4bに適用することが好ましい。図2はその補強事例を示す。図2において、左右の下側隅角部4bをそれぞれ跨ぐように、隅角補強部材3cが左右対称に傾斜状態で掛け渡されている。この隅角補強部材3cは、各端部が適当にカットされた長尺かつ幅広の鋼板製であって、その各端部が柱部材1と梁部材2とにボルト固定された上で、当該固定部位間に熱プレストレス力が付与されるようになっている。断面係数を大きくするためには、隅角補強部材3cを下側隅角部4bよりも突出させるとよい。隅角補強部材3cの有効幅は図2に示すように、隅肉溶接における、のど厚展開計算と同様に、45°方向幅を計算断面方向に展開すればよい。
【0031】
そして、例えば図3に示すような箱型断面形状を仮定し、損傷母材の50%を有効とする。ただし、そのリブ8は100%有効とする。ここでは、隅角補強部材3cを45°方向に配置して下側隅角部4bを補強しているが、この補強前後の断面係数の比に応じて損傷部の発生応力度が低下する。
【0032】
そして、隅角補強部材3cを50℃の相対温度差で加熱定着すると、熱プレストレス導入力が発生し、これが、隅角補強部材3c及び母材すなわち下側隅角部4b付近の柱部材1と梁部材2のもとの応力度と組み合わさって、それぞれ適当な応力度が発生するようになる。なお、上記圧縮座屈補強の場合も、同様に、その座屈補強部材の有効幅の計算等を行うことができる。
【0033】
ところで、平板の両側に熱プレストレスを付与するための補強部材3a等を設けると、軸心対称となって、有害なシェル曲げモーメントは発生しない。ここで、シェル曲げモーメントとは、平板及び曲面板で、軸心の偏心などにより鋼殻に発生する曲げモーメントをいう。しかし、板の片面に補強部材3a等を取り付けると、このシェル曲げモーメントが作用する。この場合、補強部材3a等の定着端部を、本体応力度の低い位置にするのも有効である。なお、補強部材3a等の片面に熱プレストレス補強を行った場合のシェル曲げ応力度は、リブ8にも発生する。これは、プレストレス量、リブ剛性、ダイヤフラム位置などの変数であり、個々にフレーム解析などする必要がある。このシェル曲げモーメントを評価することにより、熱プレストレス導入量の精度が向上する。
【0034】
なお、熱プレストレス工法は、温度管理制御ではなくて、ひずみ制御管理である。また、熱プレストレス工法の補強部材3a等の形状、及び、その取り付け位置は任意である。この熱プレストレス工法は、補強部材3a等又は本体側に適当な応力度と変形を導入する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の鋼製橋脚の補強方法では、柱部材1、梁部材2の少なくとも一方と、補強部材3a,3bとの間に温度差が与えられて部材同士が連結され、その後の温度差の低減によって補強部材3a,3bに柱部材1と梁部材2との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力が発生させられるので、補強部材3a,3bによる通常の応力分担作用に加えて、この補強施工された鋼製橋脚の使用時に死荷重あるいは活荷重を受けることにより、柱部材1と梁部材2との接続部又はその近傍部位に作用する内力による応力度が、プレストレス力によって相殺されるという相乗作用が働く結果、当該鋼製橋脚の疲労強度が大幅に増大される。しかも、この構成は、新設の鋼製橋脚の補強施工に適用できるのみならず、疲労損傷した既設の鋼製橋脚の補修・補強の施工にも好適である。
【0036】
なお、本発明は、例えば柱部材にコンクリートを充填したような鋼製橋脚についても適用可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、柱部材1及び梁部材2は、ともに箱型断面を有するものとしているが、円柱断面形状の柱部材や、横梁状の梁部材等、その他の形状であってもよい。それらの場合であっても、熱プレストレス補強を行うことにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、補強部材による通常の応力分担作用に加えて、この補強施工された鋼製橋脚の使用時に死荷重あるいは活荷重を受けることにより、柱部材と梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力による応力度が、プレストレス力によって相殺されるという相乗作用が働く結果、当該鋼製橋脚の疲労強度が大幅に増大される。しかも、この構成は、新設の鋼製橋脚の補強施工に適用できるのみならず、疲労損傷した既設の鋼製橋脚の補修・補強の施工にも好適である。
【0039】
請求項2記載の発明によれば、補助部材が柱部材と梁部材とに溶接で固定された場合に比べて、鋼製橋脚の疲労強度はより大幅に増大される。
【0040】
請求項3記載の発明によれば、補強施工された鋼製橋脚の柱部材と梁部材との接続部に作用する曲げモーメントにより発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺されるので、この補強施工された鋼製橋脚の疲労強度を大幅に増大できる。
【0041】
請求項4記載の発明によれば、補強施工された鋼製橋脚の柱部材に作用する軸荷重により発生する応力度が上記プレストレス力によって相殺されるとともに、柱部材と梁部材との接続部に作用するその他の内力による応力度も上記補強部材による通常の応力分担作用によって軽減されるので、この補強施工された鋼製橋脚の疲労強度を大幅に増大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る鋼製橋脚の全体構成を示した図である。
【図2】隅角プレストレス補強の補強事例を示す図である。
【図3】図2における水平断面図である。
【符号の説明】
1 柱部材
2 梁部材
3a,3b 補強部材
4a 上側隅角部
4b 下側隅角部
5a 一次定着ボルト(ボルトに相当する。)
5b 綴合せボルト
5c 二次定着ボルト
Claims (4)
- 基礎上に立設された柱部材と、この柱部材に交差するように接続された梁部材とを有する鋼製橋脚を、補強部材を用いて補強するための補強施工方法であって、上記柱部材、上記梁部材の少なくとも一方と、上記補強部材との間に温度差を与えて部材同士を連結し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部又はその近傍部位に作用する内力と相殺される向きのプレストレス力を発生させることを特徴とする鋼製橋脚の補強施工方法。
- 請求項1記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記補助部材は、上記柱部材と上記梁部材とにボルトで固定されることを特徴とする鋼製橋脚の補強施工方法。
- 請求項1又は2記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記柱部材及び上記梁部材との間に温度差を与えた状態でこの補助部材を上記柱部材と上記梁部材とに連結し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材と上記梁部材との接続部に作用する曲げモーメントと相殺される向きのプレストレス力を発生させることを特徴とする鋼製橋脚の補強施工方法。
- 請求項1又は2記載の鋼製橋脚の補強施工方法において、上記柱部材と上記梁部材との間に温度差を与えた状態でこの補強部材を上記柱部材に対してその軸方向に離れた複数の部位に固定し、その後の温度差の低減によって上記補強部材に上記柱部材に作用する軸力と相殺される向きのプレストレス力を発生させ、上記温度差の低減後に上記補助部材を上記梁部材に連結することを特徴とする鋼製橋脚の補強施工方法。
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JP2002228708A JP2004068402A (ja) | 2002-08-06 | 2002-08-06 | 鋼製橋脚の補強施工方法 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2010101022A (ja) * | 2008-10-21 | 2010-05-06 | Ihi Infrastructure Systems Co Ltd | 鋼製橋脚隅角部の補強方法及び装置 |
JP2019206872A (ja) * | 2018-05-30 | 2019-12-05 | 株式会社栗本鐵工所 | 繊維強化樹脂製歩廊 |
-
2002
- 2002-08-06 JP JP2002228708A patent/JP2004068402A/ja not_active Withdrawn
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