JP2004068241A - ゴム製品の補強用繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤により形成された第1の被膜を有する繊維が、更に第1の被膜上に未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤により形成された第2の被膜を有する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイミングベルトを始めとするゴムベルトやゴムタイヤなどの各種ゴム製品の補強材として用いられる、ゴム製品の補強用繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイミングベルトを始めとするゴムベルトやゴムタイヤなどの各種ゴム製品の強度や耐久性を高めるために用いられる補強用繊維は、該繊維とゴム製品におけるゴム基材との接着性を高め、かつ、繊維自体を保護してゴム製品の耐久性を高めるために、ゴム系の被覆剤により形成された被膜で被覆されているのが一般的である。このゴム系の被覆剤としては、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを主成分として含有する被覆剤(以下、「RFL被覆剤」ともいう)や、ゴム組成物を有機溶剤に溶解させた被覆剤(以下、「ゴム糊」ともいう)が知られている。
【0003】
特に、自動車のエンジンに用いられるタイミングベルトなどの駆動ベルトは、高温などの過酷な条件下での耐久性が要求されるために、その基材となるゴムに耐熱性が要求され、かつ補強用繊維とゴムとの強固な接着性が要求されている。このため、このようなタイミングベルトに用いられる補強用繊維としては、上記のRFL被覆剤により形成された第1の被膜で被覆した繊維を、更に上記のゴム糊により形成された第2の被膜で被覆することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたゴム補強用繊維においては、第1の被膜を形成する被覆剤として、RFL被覆剤を使用し、更に第1の被膜の上に第2の被膜を形成するゴム糊として、有機ジイソシアネート、クロロスルフォン化ポリエチレン及び芳香族ニトロソ化合物を含有する被覆剤を使用している。
【0005】
また、特許文献2に開示されたゴム補強用繊維においては、第1の被膜を形成するRFL被覆剤として、レゾルシンとホルムアルデヒドとの水溶性縮合物及びゴムラテックスを含有する被覆剤を、第2の被膜を形成するゴム糊として、ゴム配合物、加硫剤及びマレイミド系加硫助剤を含有する被覆剤を使用している。
【0006】
これらの従来のゴム補強用繊維は、ゴム製品の基材となるゴムのなかでも、クロロスルホン化ポリエチレンゴムや、クロルヒドリンゴムなどに対してはそれなりの強固な接着性を示す。しかし、ゴム製品の中でも、耐熱性や耐屈曲性に優れ、近年需要が伸びている、水素添加ニトリルゴム(以下、「H−NBR」ともいう)を主成分としたゴムに対しては、接着性が十分ではない場合がある。
【0007】
特に、H−NBRのなかでも、加硫剤として主に硫黄を用いたゴム組成物に対しては一応の接着性を示すが、耐熱性をより高めるために加硫剤として過酸化物を用いたH−NBRゴム組成物に対しては接着性が不充分である。このため、最終的に得られるタイミングベルトなどのゴム製品の耐熱性や耐屈曲疲労性が不充分となるという問題点を有している。
【0008】
この問題点を解決するために、特許文献3には、動力伝達ベルトに埋設される心線(ゴム補強用繊維)の最外層に、不飽和結合のある側鎖を有するフェノール及び/又はフェノールカルボン酸と所定の化合物とを含有する成分で変性したフェノール樹脂の層を形成することが提案されている。しかし、最外層として変性フェノール樹脂の層を形成したゴム補強用繊維では、フェノール樹脂の層が柔軟性に乏しいために、得られるタイミングベルトの耐屈曲疲労性に悪影響が及ぶ。また、被覆補強用繊維の取扱いの過程で、変性フェノール樹脂の層が柔軟性に乏しいために部分的に剥離してしまう。
【0009】
更に、特許文献3に開示されるゴム補強用繊維では、その実施例に記載されているように、最外層の変性フェノール樹脂の層の内側には、RFL被覆剤により形成された第1の被膜、及びゴム糊により形成された第2の被膜を有するために、3回の被覆工程を要する。かかる3回の被覆工程を要することや、変性フェノール樹脂が通常のフェノール樹脂と比較して高価であることは、ゴム補強用繊維の製造コストを増大させる。
【特許文献1】特開平1−156535号公報
【特許文献2】特開平11−241275号公報
【特許文献3】特開平7−190149号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、ゴム製品の基材となるゴム組成物として、特にH−NBRを配合したゴム組成物、中でも、加硫剤として過酸化物を用いるH−NBRを配合したゴム組成物に対する接着性が良好で、得られるタイミングベルトなどのゴム製品の耐屈曲疲労性を良好にすることができ、かつ、被覆処理の工程が2回で済むために製造コストが増大しないゴム製品の補強用繊維及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のゴム製品の補強用繊維は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤により形成された第1の被膜を有する繊維が、更に第1の被膜上に未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤により形成された第2の被膜を有することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明のゴム製品の補強用繊維の製造方法は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤を繊維に含浸し、乾燥させて第1の被膜を有する被覆繊維を製造し、次いで、該被覆繊維を撚って撚り糸とし、該撚り糸に未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤を塗布し、乾燥させ、第1の被膜上に第2の被膜を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明におけるゴム製品の補強用繊維は、以下の2つの新規な知見に基づくものである。(1)未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤により形成された第2の被膜が、特に、H−NBRなどのゴム、特に、加硫剤として過酸化物を用いるH−NBRを配合したゴム組成物に対する良好な接着性と柔軟性とを兼ね備える。(2)上記第2の被膜は、繊維との接着性が大きい、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤により形成された第1の被膜に対する強固な接着性を有する。かくして、本発明による補強用繊維で補強されたゴム製品、特にタイミングベルトは、極めて優れた耐屈曲疲労性や耐熱性を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、以下の記載においては、特に断りがない限り、「部」なる単位は「質量部」を意味し、また、「%」なる単位は「質量百分率」を意味する。
【0015】
まず、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(以下、「RF縮合物」ともいう)及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤について説明する。第1の被覆剤は、RF縮合物とゴムラテックスとを含有する。これらの成分は、常法にしたがって水を媒体にし、均一に混合される。
【0016】
第1の被覆剤に配合するRF縮合物としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、又はアミンなどのアルカリ性触媒の存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドとを反応させて得られた、オキシメチル基に富んだ、水溶性の付加縮合物を使用することができる。特に、レゾルシン:ホルムアルデヒドの比率を、好ましくは1:0.3〜2.5のモル比で反応させたRF縮合物が好ましい。
【0017】
第1の被覆剤に配合するゴムラテックスとしては、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス、変性アクリロニトリルーブタジエン共重合体のラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックス、ジカルボキシル化スチレン−ブタジエン共重合体のラテックス、ポリブタジエンのラテックス、又はハロゲン含有ポリマーのラテックスなどを、単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックスとハロゲン含有ポリマーのラテックスとの混合物を使用することが、最終的に得られるタイミングベルトなどのゴム製品の耐熱性、耐屈曲疲労性及び耐水性を良好にできる点で好ましい。なお、上記ハロゲン含有ポリマーのラテックスにおけるハロゲン含有ポリマーとしては、例えば、塩素化ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンを挙げることができ、クロロスルフォン化ポリエチレンであることが好ましい。
更に、第1の被覆剤に含有されるゴムラテックスとしては、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックスと、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス又は変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスと、の混合物を使用することが好ましい。この場合、第1の被覆剤により形成された第1の被膜と後述する第2の被覆剤により形成された第2の被膜との相溶性が良好になり、第1の被膜と第2の被膜と基材としてのH−NBRとの全体的な接着性をより向上させられるために好ましい。
【0018】
上記のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックスとしては、ゴム製品の補強用繊維の処理に一般的に用いられているものを使用することができる。中でも、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンの含有割合が好ましくは、10〜20:10〜20:60〜80である三元共重合体から得たラテックスが好ましく、このようなターポリマーラテックスとしては、Nipol−2518FS(商品名、日本ゼオン社製)、Pyratex(商品名、日本エイアンド エル社製)などを好適に使用することができる。
【0019】
また、第1の被覆剤におけるRF縮合物とゴムラテックスとの含有比率は、ゴムラテックス100部に対してRF縮合物が好ましくは2〜40部、特に好ましくは 5〜15部であるのが好適である。なお、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックスと、ハロゲン含有ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス、又は変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスと、の混合物を使用する場合には、前者のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックス100部に対して、後者のラテックスが好ましくは10〜100部、特に好ましくは5〜30部であること好適である。なお、上記の各成分の含有比率はいずれも固形分としての質量比率である。
【0020】
また、上記第1の被覆剤には、RF縮合物及びゴムラテックスの他に、必要に応じて従来のRFL被覆剤に配合されている成分を配合することもできる。例えば、ラテックスの安定剤や老化防止剤などの成分を添加してもよい。安定剤としては非イオン系界面活性剤などを例示でき、老化防止剤としては鉱油の液状乳化物などを例示できる。
【0021】
更に、第1の被覆剤におけるRF縮合物、ゴムラテックス、及び必要に応じて添加される他の成分の固形分を合計した含有量は、10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。該含有量が10%未満であると繊維に対して第1の被覆剤を充分な量で含浸させることが困難となる場合がある。また、50%を超えると第1の被覆剤の安定性が悪くなりゲル化し易くなる場合がある。
【0022】
次に、未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤について説明する。第2の被覆剤は、未硬化フェノール樹脂とゴムと溶剤とを常法にしたがって均一に混合して得られる。第2の被覆剤に配合する未硬化フェノール樹脂とは、フェノール類とアルデヒド類とから得られる樹脂のうち未だ硬化していない状態のもの、すなわち硬化するための反応性を有するものである。未硬化フェノール樹脂としては、好ましくは、ノボラック及び/又はレゾールを挙げることができる。得られる補強用繊維とH−NBRとの接着性を高めることができる点ではノボラックを使用することが好ましく、第1の被膜と第2の被膜との界面での接着状態を良好にできる点ではレゾールを使用することが好ましい。また、これら両方の利点を活かすために、ノボラック/レゾールの比率を、固形分として好ましくは10/4〜10/1になるようにノボラックとレゾールとを併用することが好適である。
【0023】
第2の被覆剤におけるゴムとしては、タイミングベルトなどの補強されるゴム製品の基材となるゴム組成物との相性を考慮して、ゴム組成物との親和性の大きいゴムの使用が好ましい。好ましい例としては、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(いわゆる「NBR」)、H−NBRなどを挙げることができる。これらの中でも、H−NBRとの接着性を良好にし、かつ、第2の被覆剤により形成された第2の被膜の柔軟性を良好にすることができる点で、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムを使用することが好ましい。
【0024】
また、得られる補強用繊維とH−NBRとの接着性、特に、加硫剤として過酸化物を用いるH−NBRと補強用繊維との接着性を良好にすることができる点や、加熱時においても良好な接着性を維持できる点で、第2の被覆剤には上記の未硬化フェノール樹脂及びゴムのほかに、未硬化エポキシ樹脂を配合することが好ましい。この未硬化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂のうち未だ硬化していない状態のもの、すなわち硬化するための反応性を有するものである。エポキシ樹脂としては、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、H−NBRとの接着性が特に高い点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
第2の被覆剤における未硬化フェノール樹脂とゴムとの含有比率は、未硬化フェノール樹脂100部に対してゴムが10〜60部が好ましく、特に30〜40部がより好ましい。ゴムの比率が10部より少ないと、第2の被覆剤により形成された第2の被膜の柔軟性が乏しくなる場合がある。逆に、60部を超えると、ゴム製品の基材となるゴム組成物と繊維との接着性に悪影響が及ぶ場合がある。また、未硬化エポキシ樹脂を配合する場合には、未硬化フェノール樹脂100部に対して未硬化エポキシ樹脂2〜20部が好ましく、特に5〜10部がより好ましい。エポキシ樹脂の含有比率が2部より少ないと、ゴム製品の基材となるゴム組成物と繊維との接着性を向上させる効果が得られ難い。逆に、20部を超えると、第2の被覆剤により形成された第2の被膜の柔軟性が乏しくなる場合がある。なお、上記の各成分の含有比率はいずれも固形分としての質量比率である。
【0026】
第2の被覆剤には、上記の成分のほかに必要に応じて、無機充填剤や添加剤を配合してもよい。無機充填材としては、シリカやカーボンブラックなどのゴム組成物の充填材として一般的なものを使用できる。添加剤としては、ゴム組成物の添加剤として一般的な軟化剤、老化防止剤、加硫促進剤などを使用できる。
【0027】
また、第2の被覆剤における上記の各成分を溶解又は分散させる溶剤としては、従来のゴム糊に用いられているものの中から単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用できるが、ケトン系又はエステル系の溶剤を使用することが好ましい。好ましい例としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチルなどを挙げられる。
【0028】
更に、第2の被覆剤における、未硬化フェノール樹脂、ゴム及び必要に応じて配合される未硬化エポキシ樹脂などの成分を合計した含有量は、固形分として、3〜20%が好ましく、特に5〜15%がより好ましい。該濃度が3%未満であると繊維へ第2の被覆剤を充分な量で塗布させることが困難となる場合がある。また、20%を超えると第2の被覆剤の安定性が悪くなる場合がある。
【0029】
本発明において被覆される繊維は、従来のゴム補強用繊維に用いられる、無機繊維又は有機繊維のいずれでもよい。無機繊維としては、ガラス繊維や炭素繊維を、有機繊維としてはアラミド繊維やPBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維を使用できる。これらの繊維は、第1の被覆剤により形成された第1の被膜と繊維自体との接着性を高めるために、第1の被覆剤で被覆する前に、集束剤やサイジング剤を付与しておくことが好ましい。
【0030】
上記の繊維の中でも、汎用性、価格、タイミングベルトの製造工程に適用させやすい点で、ガラス繊維を使用することが好ましい。ガラス繊維としては、例えば、直径7〜9μmのガラスモノフィラメントの200〜600本を集束させて得たものを使用できる。また、ガラス繊維の組成としては、特に制限はなく、EガラスやSガラスなどを挙げられる。また、ガラス繊維の場合、既存のシランカップリング剤や被覆形成剤などを含有する集束剤により事前処理するのが好ましい。
次に、本発明のゴム製品の補強用繊維の製造方法について説明するが、この製造方法に限定されるものではない。
【0031】
まず、被覆される繊維を第1の被覆剤を満たした液槽に連続的に浸漬させて、第1の被覆剤を繊維に付着、含浸させた後、続いて、その繊維を200〜350℃の熱風炉などの中で連続的に加熱して、第1の被覆剤を乾燥、固化させることにより第1の被膜を形成し、第1の被膜を有する被覆繊維を得る。
【0032】
このとき、被覆繊維に対する第1の被膜の付着量は、被覆繊維の質量を基準にして、固形分として、12〜25%が好ましく、16〜22%がより好ましい。付着量が12%未満であると、被覆繊維の個々のガラスモノフィラメントが第1の被膜によって十分に被覆され難いので、モノフィラメントどうしが接触してそれらの摩擦によって摩耗しやすくなり、最終的に得られたタイミングベルトなどの耐屈曲疲労性が低下する場合があるため好ましくない。一方、付着量が25%を超えると被膜の柔軟性が乏しくなって、やはり最終的に得られたゴムベルトなどの耐屈曲疲労性が低下する場合があるため好ましくない。
【0033】
次いで、上記被覆繊維を1本ずつ個々に、或いは複数本合わせつつ、リング撚糸機などの撚糸機により撚って下撚り糸とする。この下撚り工程での撚り数は0.5〜4回/25mmであることが好ましい。なお、無撚りの状態で一旦巻き取った被覆繊維を撚って下撚り糸としてもよいが、被覆繊維を得る上記工程の巻き取り装置を撚糸機として、被覆繊維を得る工程と下撚り工程とを併せ行うことによって下撚り糸を得てもよい。
【0034】
続いて、上記下撚り糸の5〜20本を合わせつつ、リング撚糸機又はフライヤー撚糸機などの撚糸機により撚って上撚り糸とする。この上撚り工程での撚り数は0.5〜4回/25mmであることが好ましく、従来のゴム補強用繊維と同様に、上撚り工程での撚り方向は下撚り工程での撚り方向と逆方向にする。
【0035】
最後に、上記したような第2の被覆剤を満たした液槽に上記上撚り糸を連続的に浸漬させて、第2の被覆剤を上撚り糸に塗布した後、続いて、その上撚り糸を120〜200℃の熱風炉などの中で連続的に加熱して、第2の被覆剤を乾燥・固化させることにより第2の被膜を形成し、本発明のゴム製品の補強用繊維を得る。
【0036】
このとき、補強用繊維に対する第2の被膜の付着量は、補強用繊維の質量を基準にして、固形分として、1〜15%が好ましく、3〜10%がより好ましい。付着量が1%未満であると補強用繊維とゴム製品の基材となるゴム組成物との接着性を高める効果が不十分となる場合がある。付着量が15%を超えても接着性を高める効果は余り大きくならず、かえって接着性を阻害する場合がある。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
[実施例1]
ゴムラテックスとしてのビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックス(商品名「Pyratex」、日本エイ アンド エル社製)100部及びクロロスルフォン化ポリエチレンのラテックス(商品名「CSM450」、住友精化社製)17.2部と、RF縮合物(固形分7%)5.3部と、イオン交換水と、を混合して濃度30%の第1の被覆剤を得た。なお、上記の各成分の比率は固形分としての質量比率である。
【0038】
高強度ガラス(Sガラス)からなる直径7μmのガラスモノフィラメントの200本を、アミノシランカップリング剤を主成分とする集束剤を付与しつつ集束した後、乾燥させてガラス繊維を得た。このガラス繊維の3本を引き揃えつつ、上記第1の被覆剤を満たした液槽に連続的に浸漬させて、第1の被覆剤をガラス繊維に付着、含浸させた。次いで、このガラス繊維を温度250℃の熱風炉の中で1分間連続的に加熱して、第1の被覆剤を乾燥、固化させて第1の被膜を有する被覆ガラス繊維を得た。なお、第1の被覆剤の付着量は、被覆ガラス繊維の質量を基準にして固形分として18%とした。
【0039】
更に、上記被覆ガラス繊維を1本ずつ、撚り数が2回/25mmとなるようにリング撚糸機を用いて下撚りして下撚り糸を得た。続いて、上記下撚り糸11本を引き揃えつつ、下撚りとは逆の撚り方向で撚り数が2回/25mmとなるように、別のリング撚糸機を用いて上撚りして上撚り糸を得た。
【0040】
次に、未硬化フェノール樹脂としてのノボラック60部及びレゾール40部と、ゴムとしてのアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム35部と、未硬化エポキシ樹脂としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂7部と、下記する溶剤とを混合して濃度10%の第2の被覆剤を得た。なお、上記の各成分の比率は固形分としての比率である。また、上記溶剤としては、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンと酢酸エチルとを質量比で8:1:4で混合したものを用いた。
【0041】
上記第2の被覆剤を満たした液槽中に、上記で得た上撚り糸を、連続的に浸漬させて、第2の被覆剤を上撚り糸に塗布して付着させた。次いで、上撚り糸を温度130℃の熱風炉の中で1分間連続的に加熱して、第2の被覆剤を乾燥、固化させて第2の被膜を形成させ、ゴム製品の補強用繊維を得た。なお、第2の被覆剤の付着量は補強用繊維の質量を基準にして固形分として7%とした。
【0042】
[実施例2]
未硬化フェノール樹脂としてのノボラック60部及びレゾール40部と、ゴムとしてのアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム35部と、溶剤とを混合して得た濃度10%の第2の被覆剤を用いた以外は、実施例1と同じガラス繊維及び第1の被覆剤を用いて、実施例1と同じ条件の製造方法によって本発明のゴム製品の補強用繊維を得た。
【0043】
[実施例3]
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックス(商品名「Pyratex」、日本エイ アンド エル社製)100部及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス(商品名「NIPOL1562」、日本ゼオン社製)16.8部と、RF縮合物(固形分7%)5.3部と、イオン交換水と、を混合して濃度30%の第1の被覆剤を得た。なお、上記各成分の比率は固形分としての質量比率である。
上記第1の被覆剤を用いた以外は、実施例1と同じガラス繊維及び第2の被覆剤を用いて、実施例1と同じ条件の製造方法によって本発明のゴム製品の補強用繊維を得た。
[実施例4]
実施例3と同じ第1の被覆剤、実施例2と同じ第2の被覆剤、及び実施例1と同じガラス繊維を用いて、実施例1と同じ条件の製造方法によって本発明のゴム製品の補強用繊維を得た。
[比較例1]
クロロスルフォン化ポリエチレン(商品名「ハイパロン40」、デュポン・ダウ・エラストマー社製)10部、ポリイソシアネート(商品名「MR−200」、日本ポリウレタン社製)5部、加硫剤としてのp,p’−ジベンゾイルベンゾキノンジオキシム2部、無機充填材としてのカーボンブラック5部、及び、溶剤としてのトルエンを混合して得た濃度10%の第2の被覆剤を用いた以外は、実施例1と同じガラス繊維及び第1の被覆剤を用いて、実施例1と同じ条件の製造方法によってゴム製品の補強用繊維を得た。
【0044】
[比較例2]
変性フェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12687」、住友デュレズ社製)を溶剤としてのメチルエチルケトンと混合して溶解させ、濃度25%の第3の被覆剤を得た。
比較例1で得られた補強用繊維を、上記第3の被覆剤を満たした液槽に連続的に浸漬させて、第3の被覆剤を補強用繊維に塗布し付着させた。次いで、該補強用繊維を温度130℃の熱風炉の中で1分間連続的に加熱して、第3の被覆剤を乾燥、固化させて第3の被膜を形成させ、ゴム製品の補強用繊維を得た。なお、第3の被覆剤の付着量は、補強用繊維の質量を基準にして固形分として2%とした。
【0045】
[試験例]
上記実施例1〜4及び比較例1、2によって得られた各ゴム製品の補強用繊維について、下記の配合のゴム組成物を基材としたゴム製品についての接着性及び耐屈曲疲労性の評価を次の方法によって行った。その結果を表1に示す。
【0046】
・ゴム組成物:
水素化ニトリルゴム(商品名:ゼットポール2000、日本ゼオン社製):100部、酸化亜鉛:10部、メタクリル酸亜鉛:15部、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩:1部、置換ジフェニルアミン:1部、カーボンブラック[HAF]:3部、シリカ水和物:30部、ジクミルパーオキサイド:10部、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン:5部、硫黄:0.3部、TMTD[テトラメチルチウラムジスルフィド]:1部、MBT[2−メルカプトベンゾチアゾール]:0.5部。
【0047】
・接着性の評価方法
上記のゴム組成物を加工し得た厚さ3mm、幅25mm、長さ100mmのゴムシートの上に、長さ方向に沿って補強用繊維を隙間なく並べた後、上記と同じゴムシートを載せて、上下のゴムシート間に補強用繊維を挟んだ状態とした。これを加熱プレス装置を用いて、温度170℃、圧力42kgfの条件で20分間加熱・加圧して、試験片とした。
この試験片について、オートグラフを用いて50mm/分の引張り速度で補強用繊維とゴムシートとの間で剥離させ、補強用繊維とゴムシートとの接着強さを測定した。
【0048】
・耐屈曲疲労性の評価
各ゴム製品の補強用繊維と上記のゴム組成物とを用いて、幅9mm、厚さ2mm、長さ400mmの平ベルトをそれぞれ作製した。なお、この平ベルトは、短冊状の平ゴム板の中心部に1本の補強用繊維が埋設され、かつ、埋設された補強用繊維が平ゴム板の両端部それぞれから延出されている構造のものであり、平ゴム板の部分が上記の寸法のベルト部分とされている。
【0049】
図1に示す構造の屈曲疲労試験機を用いて試験を行った。図1においては、3個の直径30mmの平プーリー21、22及び23が回転可能な状態で往復運動部2に固定されており、この往復運動部2は滑走可能な状態でスライドレール3に接合されている。上記往復運動部2は、これに接合されているエアーシリンダー4のシリンダー軸41によって駆動され、図中の矢印の方向で往復運動する。また、スライドレール3は架台6及び7に固定され、更にエアーシリンダー4が架台6に固定されており、架台6及び7が基盤8に固定されている。
【0050】
まず、上記の屈曲疲労試験機1に平ベルト5を図1に示すように装着した。すなわち、平ベルト5のベルト部分51を上記平プーリー21、22及び23のそれぞれに沿わせて掛け、平ベルト5の端部から延出されている補強用繊維52の一方をプーリー9及び10に掛けた後に、基盤8に固定されているボルト12に固定し、補強用繊維52の他方をプーリー11に掛けた後に平ベルト5に張力を与えるための錘13(質量11.5kg)に接合した。
【0051】
そして、片道の移動距離を180mmとして往復運動部2を移動させ、往復運動に伴って、平ベルト5と平プーリー21、22及び23とが接触する部分を移動させてベルト部分51に屈曲を与えることにより平ベルト5に屈曲疲労試験を施した。なお、往復運動部2、平プーリー21、22及び23、並びに平ベルト5の周囲を囲むように設置された図示しない恒温槽によって、雰囲気温度を120℃に維持した。
【0052】
試験は往復運動部2の一往復を1回と計数して毎分60回の速さで移動させ、100万回往復動させて平ベルト5を屈曲疲労させた後、屈曲疲労試験機1から平ベルト5を取り外し、その引張り強さを、測定機の引張り速度が250mm/分の条件で測定した。
【0053】
評価は、屈曲疲労試験後の平ベルトの引張り強さの値を、同じ補強用繊維を用いて同じ条件で作製した屈曲疲労試験をしていない平ベルトの引張り強さの値で除した値を百分率に換算して引張り強さ保持率とし、これを平ベルトの屈曲疲労試験による引張り強さの低下の度合いを評価する指標とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示したとおり、本発明のゴム製品の補強用繊維(実施例1〜4)は、従来の補強用繊維(比較例1及び2)と比較して接着強さが同等であるか高いので、加硫剤として過酸化物を用いるH−NBRを配合したゴム組成物との接着性に優れていることが分かる。また、本発明のゴム製品の補強用繊維は、従来の補強用繊維と比較して、屈曲疲労後でも引張り強さの低下の度合いが小さいので、ゴム組成物と複合させてタイミングベルトなどのゴム製品とした際に、耐屈曲疲労性に優れていることが分かる。
【0056】
【発明の効果】
本発明のゴム製品の補強用繊維によれば、未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤により形成された第2の被膜が、H−NBRに対する良好な接着性と柔軟性とを兼ね備えているために、加硫剤として過酸化物を用いるH−NBRを配合したゴム組成物に対する接着性が良好となり、かつ、得られるタイミングベルトの耐屈曲疲労性を良好にすることができる。
また、第2の被膜が補強用繊維の製造工程で剥離してしまうことがないので、部分的剥離に起因するタイミングベルトの不具合が発生することがない。
更に、被覆処理の工程が2回で済むために、3回の被覆処理の工程を要する従来の補強用繊維と比較して、製造コストが増大しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】屈曲疲労試験機の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
1: 屈曲疲労試験機 2: 往復運動部
3: スライドレール 4: エアーシリンダー
5: 平ベルト 6、7: 架台
8: 基盤 9、10、11: プーリー
12: ボルト 13: 錘
21、22、23: 平プーリー
Claims (9)
- レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤により形成された第1の被膜を有する繊維が、更に第1の被膜上に未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤により形成された第2の被膜を有することを特徴とするゴム製品の補強用繊維。
- 第2の被覆剤に含有されるゴムが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムである請求項1に記載のゴム製品の補強用繊維。
- 第2の被覆剤が、更に、未硬化エポキシ樹脂を含有する請求項1又は2に記載のゴム製品の補強用繊維。
- 第1の被覆剤に含有されるゴムラテックスが、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックスとハロゲン含有ポリマーのラテックスとの混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム製品の補強用繊維。
- 第1の被覆剤に含有されるゴムラテックスが、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体のラテックスと、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス又は変性アクリロニトリルーブタジエン共重合体のラテックスと、の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム製品の補強用繊維。
- 前記ゴム製品の基材が過酸化物で加硫された水素添加ニトリルゴムである請求項1〜5のいずれかに記載のゴム製品の補強用繊維。
- 前記繊維がガラス繊維である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム製品の補強用繊維。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の補強用繊維により補強されたゴム製品。
- レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物及びゴムラテックスを含有する第1の被覆剤を繊維に含浸し、乾燥させて第1の被膜を有する被覆繊維を製造し、次いで、該被覆繊維を撚って撚り糸とし、該撚り糸に未硬化フェノール樹脂及びゴムを含有する第2の被覆剤を塗布し、乾燥させ、第1の被膜上に第2の被膜を形成することを特徴とするゴム製品の補強用繊維の製造方法。
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