JP2004067625A - ヒドロキシアリールc−グリコシドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法、特に原料化合物の水酸基を保護する必要がなく、しかも水性溶媒中で直接的にC−グリコシル化が可能な合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
C−グリコシルフラボノイド化合物は柑橘類等に多く含まれ、例えば、ビテキシン(Vitexin)や、6,8−ジ−C−グリコシルアピゲニン(6,8−di−C−glycosylapigenin)、カーサミン(Carthamin)、サフラワーイエローB(Safflower yellow B)などが知られている。C−グリコシルフラボノイドは毒性が低く、血圧降下作用などの生理活性が見出されている。
【0003】
従来、これらC−グリコシルフラボノイドのようなヒドロキシアリール化合物に対するC−グリコシル化は、主として、糖及びヒドロキシアリールの水酸基を保護し、且つ糖のアノマー炭素をフルオリドあるいはイミデートなどとした後、O→Cグリコシド転位を伴う方法(T. Matsumoto et. Al., Tetrahedron Lett.,1988, 29, 6935−6938)、あるいはFriedel−Craftsアルキル化タイプの反応(T. Kuribayashi et. al, Ttrahedron Lett., 1998, 39, 4537−4540 and 4541−4542)などにより行われてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの合成法では、水酸基の選択的な保護に数段階の反応を要し、人体に有害とされる多くの試薬と時間を費やさなければならない。最近のグリーンケミストリーの高まりと、毒性の低いことがC−グリコシルフラボノイドの特徴であることを考えれば、その合成には環境及び人体に配慮した、シンプル且つ実用的な合成法、例えば、水酸基の保護を必要とせず、水性溶媒中で直接的、効率的にC−グリコシル化が可能な方法の開発が望まれる。
【0005】
水酸基無保護の糖を用いたヒドロキシアリール化合物のC−グリコシル化反応については、例えば、p−トルエンスルホン酸を触媒として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、120℃でフロロアセトフェノンとD−グルコースとを直接的に反応させる方法が報告されている(J. Onodera et. al., Chem. Lett., 1983, 1487−1488)。しかしながら、本反応におけるC−グリコシド化合物の収率は約10%と非常に低く、かつ水性溶媒中では反応は進行しない。また、モンモリロナイトK−10を活性化剤として、水中80℃で、無保護の糖を3,5−ジメトシキ−1−フェノールに直接的にC−グリコシル化する方法も報告されている(K. Toshima et. al, Tetrahedron Lett. 1997, 38, 7375−7378)。しかしながら、本反応では、ポリフェノールの水酸基はアルキル基で保護されている。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み成されたものであり、その目的は、原料となるヒドロキシアリール化合物ならびに糖の水酸基の保護を必要とせず、水性溶媒中でヒドロキシアリール化合物に対して直接的且つ効率的にC−グリコシル化することが可能な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等が前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、触媒として周期表IIIB属金属原子のトリフラートを用いることにより、水酸基を保護せずとも、ヒドロキシアリール化合物に糖を直接的に、しかも水性溶媒中で効率よくC−グリコシル化することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる製造方法は、下記一般式(I):
【化10】
で示される基本構造を有するヒドロキシアリール化合物と、アルデヒド基を有する糖とを、M(OTf)3[Mは3価のIIIB族原子、OTfはCF3SO3基を示す]で示される金属トリフラート触媒の存在下、水性溶媒中で反応させて、下記一般式(II):
【化11】
(式中、Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物を得ることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記水性溶媒が、水、アセトニトリル/水混合水溶液、メタノール/水混合水溶液又はエタノール/水混合水溶液であることが好適である。また、前記金属トリフラート触媒を、ヒドロキシアリール化合物(I)に対して0.01〜0.5当量用いることが好適である。
また、アルデヒド基を有する糖を、ヒドロキシアリール化合物(I)に対して0.5〜5当量用いることが好適である。
また、Mがスカンジウムであることが好適である。
また、アルデヒド基を有する糖がアルドースであることが好適である。
また、反応温度が25℃〜反応溶液の還流温度であることが好適であり、さらには還流温度であることが好適である。
また、本発明においては、前記一般式(II)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物は、そのβ−アノマーが好適に得られる。
【0010】
また、本発明において、ヒドロキシアリール化合物(I)として、下記一般式(I’):
【化12】
(式中、RA、RB、RCはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換又は無置換の水酸基を表すが、RA、RB、RCの少なくとも一つは水素原子ではない。)で示されるヒドロキシアリール化合物を用い、下記一般式(II’):
【化13】
(式中、Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。RB’はRBと同一である。RB’が無置換の水酸基以外の場合には、RA ’、RC ’はそれぞれRA、RCと同一である。RB’が無置換の水酸基である場合には、RA ’はRA又はGであり、RC ’はRC又はGである。)で示されるヒドロキシアリール C−グリコシド化合物とすることが好適である。
【0011】
また、本発明において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)として下記一般式(I−1):
【化14】
(式中、Ra、R1aは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換または無置換の水酸基を示す。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール化合物を用い、下記一般式(II−1):
【化15】
(式中、Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。Rb、R1bは各々前記一般式(I−1)のRa、R1aと同じである。ただし、Ra及び/又はR1aが水素原子のときは、Rb及び/又はR1bは水素原子又はGである。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物とすることが好適である。
【0012】
また、本発明において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)として下記一般式(I−2):
【化16】
(式中、R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換又は無置換の水酸基、R3は水素原子あるいは置換又は無置換の水酸基を示す。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール化合物を用い、下記一般式(II−2):
【化17】
(式中、R2、R3はそれぞれ前記一般式(I−2)におけるR2、R3と同じである。Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。nは1又は2である。ただし、R2が無置換の水酸基以外であるときは、nは1であり、且つGはR2に対してパラ位に結合している。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物とすることが好適である。
【0013】
また、本発明において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)としてレゾルシンを用い、下記一般式(II−3):
【化18】
で示されるレゾルシン2量体とすることが好適である。
なお、レゾルシンに対してグルコースを0.5〜3当量用いることが好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
【化19】
上記スキーム1は、本発明の反応を簡潔に示したものである。Gは、アルデヒド基を有する糖を表し、一般式(II)中、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。
本発明で用いるヒドロキシアリール化合物としては、前記一般式(I)に示すメタ−ジヒドロキシフェニル構造を基本構造として有する化合物であれば特に制限されない。本発明の反応に支障がない限り、一般式(I)のベンゼン環上に1つ以上の任意の置換基を有していてもよい。任意の置換基としては、目的とする反応の進行を妨げない限り特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換あるいは無置換の水酸基などが挙げられる。
【0015】
一般式(I)において重要なのは、
(1)ベンゼン環上に少なくとも2つの無保護の水酸基が存在し、
(2)第1の無保護水酸基に対して第2の無保護水酸基がメタ位に位置し、
(3)第1水酸基と第2水酸基とにはさまれたオルト位が無置換(フリー)であるという点である。本反応においては、このフリーのオルト位にC−グリコシル化が起こる。原則として、何れか一方でも水酸基が置換されている場合には、オルト位がフリーであってもC−グリコシル化は起こらない。
本発明でいう水酸基の保護基とは、通常有機合成反応において水酸基の保護に用いられているものを意味し、例えば”Protective Groups in Organic Synthesis” T.W.Greene et. al, 1991等に記載されているものが挙げられる。汎用されている水酸基の保護基としては、アセチル基やアルキル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いる糖としては、アルデヒド基を有する糖であれば特に限定されず、該アルデヒド基は糖分子中、遊離型でも環状ヘミアセタール型でもよい。例えば、グリセルアルデヒド、エリトロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、グルコース、マンノース、イドース、ガラクトース、タロース、マルトース、ラクトース、2−デオキシグルコース等の単糖、オリゴ糖が挙げられる。好ましくはアルドースであり、さらに好ましくは五炭糖又は六炭糖である。なお、本発明の糖は、そのエナンチオマー、ジアステレオマー、アノマー等の異性体も包含する。本反応においては、基本的に糖の水酸基を保護せずに使用することができ、糖のアノマー炭素がヒドロキシアリール化合物のベンゼン環とC−C結合したC−グリコシド体を得る。
なお、本反応においてC−グリコシドの糖が環状である場合には、そのβ−アノマーが選択的に合成される。
本発明において、ヒドロキシアリール化合物に対する糖の当量数は、目的とする化合物や、原料の種類や量、触媒、反応温度、反応時間、その他の反応条件に応じて適宜決定されるが、通常ヒドロキシアリール化合物に対して0.5以上、好ましくは1当量以上を用いる。糖は過剰量を用いてもよいが、通常5当量以下である。
【0017】
本発明において触媒として用いる金属トリフラートM(OTf)3において、Mは3価の周期表IIIB属金属原子であり、OTfはCF3SO3基である。Mとしては、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の他、イッテルビウム(Yb)などのランタニド原子が挙げられる。このうち、好ましくはスカンジウムである。これら金属トリフラートは、商業上的に入手可能であるか、又は公知の方法により合成可能である。これら触媒の使用に際しては、特定のM(OTf)3を単独で用いても良く、あるいは複数を組合わせて用いても良い。あるいは、他の酸触媒、例えばp−TsOH(パラトルエンスルホン酸)などの共存下で用いても良い。
本発明において用いる金属トリフラートの量は、目的とする化合物や、原料の種類や量、反応温度、反応時間、その他の反応条件に応じてその触媒能が発揮される範囲で適宜決定すればよい。ヒドロキシアリール化合物に対して0.01〜0.5当量の範囲で用いた場合には、比較的短時間で目的化合物を得ることができる。
【0018】
本発明の反応溶媒として用いる水性溶媒としては、水の他、アセトニトリル、メタノール、エタノール、THF(テトラヒドロフラン)、ニトロメタン、ジオキサンなどの水溶性有機溶媒、またはこれら水溶性有機溶媒と水との混合水溶液を用いることができる。原料の溶解性や環境適合性等の観点から、好ましくは水、あるいは水溶性有機溶媒と水との混合水溶液であり、混合水溶液として好ましくは、アセトニトリル/水混合水溶液、メタノール/水混合水溶液、エタノール/水混合水溶液が挙げられる。その比率は、原料が溶解し得るように決定するのが好ましい。
反応温度は、原料や触媒の種類・量、反応時間、反応溶媒、その他の反応条件に応じて室温から反応溶液の還流温度の範囲で行うことができる。
反応時間は、原料や触媒の種類・量、反応温度、反応溶媒、その他の反応条件等によって変化するが、通常1時間〜48時間である。
【0019】
前記ヒドロキシアリール化合物(I)の好適な例として、前記一般式(I’)の基本構造を有する化合物が挙げられ、本発明のC−グリコシル化反応により前記一般式(II’)の基本構造を有する化合物に導くことができる。
また、前記一般式(I−1)の基本構造を有する化合物も挙げられ、本発明のC−グリコシル化反応により前記一般式(II−1)の基本構造を有する化合物に導くことができる。
また、本反応によれば、前記一般式(I−2)の基本構造を有する化合物を前記一般式(II−2)の基本構造を有する化合物へと導くことができる。一般式(I−2)では、二つの無保護水酸基のうちの一つが、フラボノイドのC3環状構造を形成しているが、このような場合においても、本反応によりフラボノイド構造の8位(R2に対してパラ位)にC−グリコシル基を導入できる。この反応機構は明らかではないが、一つの推測として、ルイス酸存在下の加熱条件下ではピラン環が開環してフリーの水酸基を生じ、上記スキーム1と同様に両水酸基にはさまれた位置(8位)にC−グルコシル化が起きると考えることができる。なお、R2が無置換水酸基である場合には、6位(R2に対してオルト位)にもC−グリコシル基を導入できる。従って、R2が無置換水酸基の場合には、6位及び/又は8位にC−グリコシル基が導入されたモノ−又はジ−C−グリコシド体が得られる。また、一般式(I−2)のC3環状構造中に二重結合を有するフラボノイド化合物に対しても、本反応によりC−グリコシル化できる可能性がある。
また、レゾルシンに対して糖を0.5当量以上用いれば、2分子のレゾルシンが鎖状の糖を介して結合している前記一般式(II−3)のレゾルシン2量体が得られる。
【0020】
なお、本発明において「基本構造」とは最低限必要な構造を表すものであって、本反応に特に支障を生じない限り、任意の置換基を有していてもよい。
本発明の製造方法において光学活性な生成物を得るためには、光学活性な原料を用いればよく、また、適切な段階で、クロマトグラフィー、分別結晶等の分離操作を行えばよい。
また、官能基が分子内に存在し、この官能基が反応の妨害となる、あるいはその恐れがある場合には、適切な保護基を用いることが好ましい。保護基の利用は、”Protective Groups In Organic Synthesis” T.W.Greene et. al, 1991等に従って実施できる。
【0021】
本発明における各基の定義は次の通りである。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
アルキル基とは、直鎖状、分枝状何れでもよく、好ましくは炭素原子を1〜6個有する飽和炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、 n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、 n−ヘキシル基などが挙げられる。また、環状アルキル基も包含され、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等も含まれる。また、これら飽和炭化水素基は、任意の炭素上にハロゲン原子、置換または無置換の水酸基などの置換基を有していても良く、あるいは骨格内の任意の炭素原子が酸素原子や硫黄原子に置き換わっていても良い。
【0022】
アシル基とは、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリールまたはヘテロアリールを有するカルボニル基であり、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、アクリロイル等の脂肪族アシル基、又はベンゾイル、トルイル等の芳香族アシル基を示す。
本発明において置換水酸基の置換基とは、本反応において特に支障のない限り、制限されないが、例えば、通常水酸基の保護基として用いられる基の他、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール、ヘテロアリール、アシル基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0023】
ヘテロアルキル基とは、直鎖状、分枝状何れでもよく、炭素原子と1つ以上のヘテロ原子(O、S又は3級のN)とで構成される飽和基であり、好ましくは2〜6の原子を有する。また、環状ヘテロアルキル基も包含され、例えば、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリル、チオモルホニル、テトラヒドロフリル等が含まれる。
アリールとは、芳香族炭素環基である。好ましいアリール基には、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールアルキル基とは、前記アリール基で置換された前記アルキル基であり、好ましい例としてベンジル、フェニルエチル等が挙げられる。
【0024】
ヘテロアリールとは、その環内にNHを有しない芳香族複素環基である。好ましいヘテロアリール基には、例えば、チエニル基、フリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、チアゾリル基、ピリミジニル基、キノリニル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基等が含まれる。
【0025】
【実施例】
以下、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 フロロアセトフェノンのC−グリコシル化
【化20】
【0026】
フロロアセトフェノン(1)150mg(0.89mmol、1.00eq.)とD−グルコース480mg(2.67mmol, 3eq.)を50ml容ナス型フラスコに入れ、蒸留水1.50mlと蒸留エタノール3.00mlの混合溶媒に溶解させた。冷却管をフラスコにセットし、加熱した。溶媒が沸騰し始めたところでスカンジウムトリフラート触媒87.5mg(0.17mmol、0.20eq.)を加えて攪拌し、反応を開始した。約2〜3時間おきにシリカTLCにて原料と生成物のスポットを確認しながら反応の進行を観察した。シリカTLCはトルエン:酢酸エチル:酢酸=6:1:0.2、又はアセトン:酢酸エチル:水:酢酸=30:15:5:1にて展開した。フロロアセトフェノン(1)と生成物(2)、(3)のスポットはUV(+)ならびにFeCl3水溶液による呈色(黒茶色〜薄こげ茶色)により確認した。D−グルコースのスポットは、10%リンモリブデン酸エタノール溶液に浸した後加熱し、呈色(青緑色)により確認した。
【0027】
反応開始から約8時間後、原料(1)がほとんどなくなった事を確認し、反応を停止した。その後、反応溶液から水を除去するために、エタノールを過剰に加えて濃縮・乾固した。残渣を少量のメタノールに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル:酢酸=6:1:0.2、及びアセトン:酢酸エチル:水:酢酸=15:35:2:1〜30:15:5:1)にて分離し、濃縮を行ったところ、無色粉状結晶のモノ−C−グルコシド体(2)及び無色粉状結晶のジ−C−グルコシド体(3)を得た。
収量(収率):モノグルコシド(2)85.1mg(29%)、ジグルコシド(3)146.5mg(33%)
【0028】
なお、各グルコシド体は、実施例3に準じてアセチル化することにより同定した。
モノグルコシド(2)のアセテート体:無色結晶。融点190℃。
FABMS (NBA, m/z) 625(M+H).
1H NMR(CDCl3, 270MHz, at 50℃) δ 1.79, 2.00, 2.03, and 2.05(each 3H, each s, OAc x 4), 2.31, 2.37, and 2.53(each 3H, each s, ArOAc x 3), 2.41(3H, s, ArAc), 3.75(1H, ddd, J=2.1, 4.6, 9.9Hz, H−5’), 3.99(1H, dd, J=2.0, 12.5Hz, H−6’a), 4.37(1H, dd, J=4.5, 12.5Hz, H−6’b), 4.74(1H, d, J=9.9Hz, H−1’), 5.14(1H, t, J=9.6Hz, H−4’), 5.25(1H, t, J=9.6Hz, H−3’),5.61(1H, t, J=9.9Hz, H−2’), 7.26(1H, s, ArH).
Anal. calcd for C28H32O16: C, 53.84%; H, 5.16%. Found: C, 53.58%; H, 5.19%.
ジグルコシド(3)のアセテート体:無色結晶。融点138℃。
FABMS (NBA, m/z) 913(M−42+H).
1H NMR(DMSO−d6, 500MHz, at 140℃) δ 1.74, 1.93, 1.96, and 1.98(each 6H, each s, OAc x 8), 2.30(6H, s, ArOAc x 2), 2.38(3H, s, ArAc), 2.71(6H,s, ArOAc x 2), 3.95(2H, br. d, J=12.2Hz, H−6’a, H−6”a), 4.03(2H, m, H−5’, H−5”), 4.14(2H, dd, J=5.1, 12.2Hz, H−6’b, H−6”b), 4.76(2H, br. d, J=9.2Hz, H−1’, H−1”), 5.00(2H, t, J=9.6Hz, H−4’, H−4”), 5.34(2H, t, J=9.2Hz, H−3’, H−3”), 5.55(2H, t, J=9.2Hz, H−2’, H−2”).
Anal. calcd for C42H50O25: C, 52.83%; H, 5.28%. Found: C, 53.10%; H, 5.34%.
【0029】
実施例2 反応条件
下記表1の反応条件で、上記実施例1と同様にして反応を行った。表1の結果から解るように、反応条件等を最適化することにより、C−グルコシド体の収率を約80%にまで高めることが可能である。また、D−グルコースの代わりに、D−ガラクトース、2−デオキシ−D−グルコース、D−マンノース等を用いた場合にも、同様の方法により各C−グリコシド体が得られることが確認された。
【表1】
【0030】
【化21】
【0031】
実施例3 フロログリシノールのC−グリコシル化及びアセチル化
【化22】
【0032】
フロログリシノール二水和物(5)128mg(0.79mmol, 1.00eq.)とD−グルコース427mg(2.37mmol, 3.00eq.)を25ml容ナス型フラスコに入れ、蒸留水1.00mlと蒸留エタノール2.00mlの混合溶媒を加えて溶解させた。冷却管をフラスコにセットし、加熱した。溶媒が沸騰してきたら、スカンジウムトリフラート触媒79.0mg(0.16mmol, 0.20eq.)を加えて攪拌し、反応を開始した。約1〜2時間おきにシリカTLCにて原料と生成物のスポットを確認しながら反応の進行を観察した。シリカTLCはアセトン:酢酸エチル:水:酢酸=25:35:5:1にて展開した後、フロログリシノール(5)と生成物(6)、(7)のスポットはUV(+)ならびにFeCl3水溶液による呈色(こげ茶色)により確認した。
【0033】
反応開始から約3時間後、原料(5)がほとんどなくなった事を確認し、反応を停止した。その後、反応溶液から水を除去するために、エタノールを過剰に加えて濃縮した。濃縮後、真空ポンプにて1時間、常温で吸引を行い、乾燥させた。
次にアセチル化を行った。乾燥させた反応物を、無水酢酸2.00ml及びピリジン1.00mlに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を1かけら加えて室温で攪拌した。12時間後、反応液を氷水に注ぎ、30分間攪拌して残存する無水酢酸を分解した。その後、塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1〜1:2)にて分離し、濃縮を行ったところ、無色油状のC−グルコシルアセテート(6a)、(7a)を得た。
【0034】
無水酢酸によるアセチル化はほぼ100%で進行することが知られているので、アセテート(6a)及び(7a)の収率は、それぞれモノ−C−グルコシド(6)及びジ−C−グルコシド(7)の収率に相当する。
【0035】
モノ−C−グルコシルアセテート(6a): 無色粘稠油。
FABMS(NBA, m/z) 583(M+H).
1H NMR(CDCl3) δ 1.78, 2.02, 2.04, and 2.07(each 3H, each s, OAc x 4),2.25, 2.43, and 2.48(each 3H, each s, ArOAc x 3), 3.66(1H, ddd, J=2.5, 4.0, 10.0Hz, H−5’), 3.98(1H, dd, J=2.5, 12.5Hz, H−6’a), 4.20(1H, dd, J=4.0, 12.5Hz, H−6’b), 4.73(1H, d, J=10.0Hz, H−1’), 5.15(1H, t, J=10.0Hz, H−4’), 5.26(1H, t, J=10.0Hz, H−3’), 5.61(1H, t, J=10.0Hz, H−2’), 6.89(2H, s, ArH x 2).
ジ−C−グルコシルアセテート(7a): 無色粘稠油。
FABMS(NBA, m/z) 913(M+H).
1H NMR(CDCl3) δ 1.71, 1.93, 2.01, and 2.08(each 3H, each s, OAc x 4),2.03 and 2.04(each 6H, each s, OAc x 4), 2.33, 2.39, and 2.46(each 3H, each s, ArOAc x 3), 3.63 and 3.78(each 1H, each t, J=9.5Hz and 9.6Hz, H−5’ and H−5”), 3.94 and 3.97(each 1H, each d, J=12.5Hz and 12.7Hz, H−6’a and H−6”a), 4.37 and 4.45 (each 1H, each dd, J=3.9, 12.5Hz and J=4.1, 12.7Hz, H−6’b and H−6”b), 4.32 and 4.76(each 1H, each d, J=9.5Hz and 9.6Hz, H−1’ and H−1”), 5.14 and 5.15(each 1H, each t, J=9.6Hz and 9.5Hz, H−4” and H−5’), 5.24 and 5.28(each 1H, each t, J=9.6Hz and 9.5Hz,H−3” and H−3’), 5.54 and 5.68(each 1H, each t, J=9.6Hz and 9.5Hz, H−2” and H−2’), 6.94 (1H, s, ArH).
【0036】
実施例4
下記表2の反応条件で、上記実施例3に準じてフロログリシノールのC−グリコシル化及びアセチル化を行った。その結果、モノ−C−グルコシルアセテート体(6a)(収率35%)及びジ−C−グルコシルアセテート体(7a)(収率23%)を得た。
【表2】
【0037】
実施例5 メチルフロロアセトフェノンのC−グリコシル化
【化23】
実施例1に準じて、メチルフロロアセトフェノン(8)300mg(1.65mmol、1eq.)に対してD−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、エタノール/水(3ml:3ml)中、加熱還流して反応を行った(反応時間9時間)。その結果、白色粉末状のモノ−C−グルコシド体(9)を得た(収率55%)。
【0038】
モノ−C−グルコシド体(9):
融点114−116℃。
FABMS(m/z) 345(M+H).
1H NMR (DMSO−d6) δ2.01 (3H, s, CH3), 2.66(3H, s, Ac), 3.45〜3.94(6H,m, H−2’〜H−6’), 4.88(1H, d, J=10.0Hz, H−1’), 8.92, 9.59, and 13.25(each 1H, each s, OH x 3).
モノ−C−グルコシド(9)のアセテート体:無色粘稠油。
[α]D 25−4.69°(c0.98,CHCl3).
FABMS(m/z) 640(M+H).
1H NMR (CDCl3, at 50℃, 500MHz) δ 2.02(3H, s, CH3), 1.68, 1.80, 1.94,2.04, 2.08, 2.29, 2.30, and 2.39(each 3H, each s, Ac x 8), 3.40(1H, ddd, J=4.4, 1.9, 9.8Hz, H−5’), 4.00(1H, dd, J=1.9, 12.7Hz, H−6’a), 4.38(1H, dd, J=4.4, 12.7Hz, H−6’b), 4.70(1H, d, J=10.0Hz, H−1’), 5.14(1H, t,J=9.8Hz, H−4’), 5.24(1H, dd, J=9.5, 9.3Hz, H−3’), 5.64(1H, br. s, H−2’).
Anal. calcd for C29H34O16; C, 53.78; H, 5.45; Found: C,53.94; H, 5.45.
【0039】
実施例6 ヒドロキシアリール化合物の構造
【化24】
【化25】
【0040】
実施例1に準じて、上記ヒドロキシアリール化合物(10)〜(12)(各200mg、1eq.)に対して各々D−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、アセトニトリル/水(2ml:1ml)中、加熱還流して反応を行ったところ、何れの場合にも反応が進行せず、目的とするC−グリコシド体が得られなかった。
以上のことから、本反応が進行するためには、原料となるヒドロキシアリール化合物が、前記一般式(I)の基本構造、すなわち、少なくとも2つの無保護水酸基がベンゼン環上に存在し、且つ、第一の無保護水酸基に対して第二の無保護水酸基がメタ位に位置し、第一の無保護水酸基と第2の水酸基の間にはさまれたオルト位がフリーである構造を有することが必要であると考えられる。
【0041】
実施例7 ナリンゲニンのC−グリコシル化
【化26】
実施例3に準じて、ナリンゲニン(13)100mg(0.37mmol、1eq.)に対してD−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、アセトニトリル/水(2ml:1ml)中、加熱還流してグリコシル化反応を行った(反応時間2日)。
【0042】
次いで、実施例3に準じて無水酢酸/ピリジン/DMAPでアセチル化(反応時間 12時間)、抽出、洗浄、乾燥、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて分離し、目的物を得た。
FABMS(m/z):モノ体(14a)729(M+H)、ジ体(15a)1,059(M+H).
1H−NMR(CDCl3):モノ体(14a)δ4.69(1H, d, J=10Hz, アノマーH), 6.78 and 6.80(total 1H, each s, ArH). ジ体(15a)δ4.35 and 4.65(each 1H, each d, J=9.8Hz, アノマーH x 2).
【0043】
実施例8 レゾルシンのC−グリコシル化
【化27】
実施例1に準じて、レゾルシン(16)220mg(2.00mmol、1eq.)に対してD−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、アセトニトリル/水(2ml:1ml)中、加熱還流して反応を行った(反応時間1日)。その結果、鎖状の糖を介したレゾルシン二量体(17)のみが得られた(収率30%)。また、レゾルシンに対してD−グルコースを0.5当量用いて同様に反応を行った場合にも、レゾルシン2量体(17)のみが得られた(収率15%)。
なお、得られた2量体は、実施例3に準じてアセチル化することにより同定した。
【0044】
鎖状の糖を介したレゾルシン二量体(17)のアセテート:無色油状。
[α]D 19 +0.4° (c0.955, CHCl3).
1H NMR(CDCl3, 500MHz) δ 1.80, 1.91, 2.03, 2.05, and 2.15(each 3H, each s, OAc x 5), 2.25, 2.26, 2.36, and 2.40(each 3H, each s, ArOAc x 4), 3.99(1H, dd, J=5.4, 12.5Hz, H−6’a), 4.17(1H, dd, J=2.4, 12.5Hz, H−6’b),4.96(1H, ddd, J=2.4, 5.4, 8.0Hz, H−5’), 5.04(1H, d, J=7.5Hz, H−1’), 5.12(1H, dd, J=2.4, 8.0Hz, H−4’), 5.27(1H, dd, J=2.4, 6.8Hz, H−3’), 5.62(1H, dd, J=6.8, 7.5Hz, H−2’), 6.92(2H, dd, J=2.4, 9.2Hz, ArH−3, ArH−5), 7.01(each 1H, each t, J=9.7Hz and 8.6Hz, ArH−4 x 2), 7.45(1H, d, J=8.6Hz, ArH−3), 7.68(1H, d, J=8.6Hz, ArH−5).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ (sugar moiety) 37.5(C1’), 61.5(C6’), 68.30(C5’), 68.64(C4’), 69.72(C3’), 70.48(C2’), (aromatic moiety) 116.5(C3 or C5), 116.6(C3 or C5), 118.9(C4 x 2), 127.4(C1 x 2), 130.3((C5 or C3) x 2), 149.1(C2 x 2), 149.7(C6), 150.3(C6).
Anal. calcd for C36H40O18: C, 56.84; H, 5.30. Found: C, 56.41; H, 5.40.
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、糖やヒドロキシアリール化合物の水酸基を保護する必要がなく、直接的にヒドロキシアリール化合物に対してC−グルコシル化反応を効率的に行うことができる。また、本反応は、フラボノイドの基本構造である[C6−C3−C6]環状構造を有する化合物にも適用可能である。さらに、本反応は水性溶媒中で行うことができ、コスト、安全性、環境適合性の点でも非常に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法、特に原料化合物の水酸基を保護する必要がなく、しかも水性溶媒中で直接的にC−グリコシル化が可能な合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
C−グリコシルフラボノイド化合物は柑橘類等に多く含まれ、例えば、ビテキシン(Vitexin)や、6,8−ジ−C−グリコシルアピゲニン(6,8−di−C−glycosylapigenin)、カーサミン(Carthamin)、サフラワーイエローB(Safflower yellow B)などが知られている。C−グリコシルフラボノイドは毒性が低く、血圧降下作用などの生理活性が見出されている。
【0003】
従来、これらC−グリコシルフラボノイドのようなヒドロキシアリール化合物に対するC−グリコシル化は、主として、糖及びヒドロキシアリールの水酸基を保護し、且つ糖のアノマー炭素をフルオリドあるいはイミデートなどとした後、O→Cグリコシド転位を伴う方法(T. Matsumoto et. Al., Tetrahedron Lett.,1988, 29, 6935−6938)、あるいはFriedel−Craftsアルキル化タイプの反応(T. Kuribayashi et. al, Ttrahedron Lett., 1998, 39, 4537−4540 and 4541−4542)などにより行われてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの合成法では、水酸基の選択的な保護に数段階の反応を要し、人体に有害とされる多くの試薬と時間を費やさなければならない。最近のグリーンケミストリーの高まりと、毒性の低いことがC−グリコシルフラボノイドの特徴であることを考えれば、その合成には環境及び人体に配慮した、シンプル且つ実用的な合成法、例えば、水酸基の保護を必要とせず、水性溶媒中で直接的、効率的にC−グリコシル化が可能な方法の開発が望まれる。
【0005】
水酸基無保護の糖を用いたヒドロキシアリール化合物のC−グリコシル化反応については、例えば、p−トルエンスルホン酸を触媒として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、120℃でフロロアセトフェノンとD−グルコースとを直接的に反応させる方法が報告されている(J. Onodera et. al., Chem. Lett., 1983, 1487−1488)。しかしながら、本反応におけるC−グリコシド化合物の収率は約10%と非常に低く、かつ水性溶媒中では反応は進行しない。また、モンモリロナイトK−10を活性化剤として、水中80℃で、無保護の糖を3,5−ジメトシキ−1−フェノールに直接的にC−グリコシル化する方法も報告されている(K. Toshima et. al, Tetrahedron Lett. 1997, 38, 7375−7378)。しかしながら、本反応では、ポリフェノールの水酸基はアルキル基で保護されている。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み成されたものであり、その目的は、原料となるヒドロキシアリール化合物ならびに糖の水酸基の保護を必要とせず、水性溶媒中でヒドロキシアリール化合物に対して直接的且つ効率的にC−グリコシル化することが可能な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等が前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、触媒として周期表IIIB属金属原子のトリフラートを用いることにより、水酸基を保護せずとも、ヒドロキシアリール化合物に糖を直接的に、しかも水性溶媒中で効率よくC−グリコシル化することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる製造方法は、下記一般式(I):
【化10】
で示される基本構造を有するヒドロキシアリール化合物と、アルデヒド基を有する糖とを、M(OTf)3[Mは3価のIIIB族原子、OTfはCF3SO3基を示す]で示される金属トリフラート触媒の存在下、水性溶媒中で反応させて、下記一般式(II):
【化11】
(式中、Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物を得ることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記水性溶媒が、水、アセトニトリル/水混合水溶液、メタノール/水混合水溶液又はエタノール/水混合水溶液であることが好適である。また、前記金属トリフラート触媒を、ヒドロキシアリール化合物(I)に対して0.01〜0.5当量用いることが好適である。
また、アルデヒド基を有する糖を、ヒドロキシアリール化合物(I)に対して0.5〜5当量用いることが好適である。
また、Mがスカンジウムであることが好適である。
また、アルデヒド基を有する糖がアルドースであることが好適である。
また、反応温度が25℃〜反応溶液の還流温度であることが好適であり、さらには還流温度であることが好適である。
また、本発明においては、前記一般式(II)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物は、そのβ−アノマーが好適に得られる。
【0010】
また、本発明において、ヒドロキシアリール化合物(I)として、下記一般式(I’):
【化12】
(式中、RA、RB、RCはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換又は無置換の水酸基を表すが、RA、RB、RCの少なくとも一つは水素原子ではない。)で示されるヒドロキシアリール化合物を用い、下記一般式(II’):
【化13】
(式中、Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。RB’はRBと同一である。RB’が無置換の水酸基以外の場合には、RA ’、RC ’はそれぞれRA、RCと同一である。RB’が無置換の水酸基である場合には、RA ’はRA又はGであり、RC ’はRC又はGである。)で示されるヒドロキシアリール C−グリコシド化合物とすることが好適である。
【0011】
また、本発明において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)として下記一般式(I−1):
【化14】
(式中、Ra、R1aは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換または無置換の水酸基を示す。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール化合物を用い、下記一般式(II−1):
【化15】
(式中、Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。Rb、R1bは各々前記一般式(I−1)のRa、R1aと同じである。ただし、Ra及び/又はR1aが水素原子のときは、Rb及び/又はR1bは水素原子又はGである。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物とすることが好適である。
【0012】
また、本発明において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)として下記一般式(I−2):
【化16】
(式中、R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換又は無置換の水酸基、R3は水素原子あるいは置換又は無置換の水酸基を示す。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール化合物を用い、下記一般式(II−2):
【化17】
(式中、R2、R3はそれぞれ前記一般式(I−2)におけるR2、R3と同じである。Gは糖を表し、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。nは1又は2である。ただし、R2が無置換の水酸基以外であるときは、nは1であり、且つGはR2に対してパラ位に結合している。)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物とすることが好適である。
【0013】
また、本発明において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)としてレゾルシンを用い、下記一般式(II−3):
【化18】
で示されるレゾルシン2量体とすることが好適である。
なお、レゾルシンに対してグルコースを0.5〜3当量用いることが好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
【化19】
上記スキーム1は、本発明の反応を簡潔に示したものである。Gは、アルデヒド基を有する糖を表し、一般式(II)中、Gのアノマー炭素はベンゼン環とC−C結合している。
本発明で用いるヒドロキシアリール化合物としては、前記一般式(I)に示すメタ−ジヒドロキシフェニル構造を基本構造として有する化合物であれば特に制限されない。本発明の反応に支障がない限り、一般式(I)のベンゼン環上に1つ以上の任意の置換基を有していてもよい。任意の置換基としては、目的とする反応の進行を妨げない限り特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、置換あるいは無置換の水酸基などが挙げられる。
【0015】
一般式(I)において重要なのは、
(1)ベンゼン環上に少なくとも2つの無保護の水酸基が存在し、
(2)第1の無保護水酸基に対して第2の無保護水酸基がメタ位に位置し、
(3)第1水酸基と第2水酸基とにはさまれたオルト位が無置換(フリー)であるという点である。本反応においては、このフリーのオルト位にC−グリコシル化が起こる。原則として、何れか一方でも水酸基が置換されている場合には、オルト位がフリーであってもC−グリコシル化は起こらない。
本発明でいう水酸基の保護基とは、通常有機合成反応において水酸基の保護に用いられているものを意味し、例えば”Protective Groups in Organic Synthesis” T.W.Greene et. al, 1991等に記載されているものが挙げられる。汎用されている水酸基の保護基としては、アセチル基やアルキル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いる糖としては、アルデヒド基を有する糖であれば特に限定されず、該アルデヒド基は糖分子中、遊離型でも環状ヘミアセタール型でもよい。例えば、グリセルアルデヒド、エリトロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、グルコース、マンノース、イドース、ガラクトース、タロース、マルトース、ラクトース、2−デオキシグルコース等の単糖、オリゴ糖が挙げられる。好ましくはアルドースであり、さらに好ましくは五炭糖又は六炭糖である。なお、本発明の糖は、そのエナンチオマー、ジアステレオマー、アノマー等の異性体も包含する。本反応においては、基本的に糖の水酸基を保護せずに使用することができ、糖のアノマー炭素がヒドロキシアリール化合物のベンゼン環とC−C結合したC−グリコシド体を得る。
なお、本反応においてC−グリコシドの糖が環状である場合には、そのβ−アノマーが選択的に合成される。
本発明において、ヒドロキシアリール化合物に対する糖の当量数は、目的とする化合物や、原料の種類や量、触媒、反応温度、反応時間、その他の反応条件に応じて適宜決定されるが、通常ヒドロキシアリール化合物に対して0.5以上、好ましくは1当量以上を用いる。糖は過剰量を用いてもよいが、通常5当量以下である。
【0017】
本発明において触媒として用いる金属トリフラートM(OTf)3において、Mは3価の周期表IIIB属金属原子であり、OTfはCF3SO3基である。Mとしては、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の他、イッテルビウム(Yb)などのランタニド原子が挙げられる。このうち、好ましくはスカンジウムである。これら金属トリフラートは、商業上的に入手可能であるか、又は公知の方法により合成可能である。これら触媒の使用に際しては、特定のM(OTf)3を単独で用いても良く、あるいは複数を組合わせて用いても良い。あるいは、他の酸触媒、例えばp−TsOH(パラトルエンスルホン酸)などの共存下で用いても良い。
本発明において用いる金属トリフラートの量は、目的とする化合物や、原料の種類や量、反応温度、反応時間、その他の反応条件に応じてその触媒能が発揮される範囲で適宜決定すればよい。ヒドロキシアリール化合物に対して0.01〜0.5当量の範囲で用いた場合には、比較的短時間で目的化合物を得ることができる。
【0018】
本発明の反応溶媒として用いる水性溶媒としては、水の他、アセトニトリル、メタノール、エタノール、THF(テトラヒドロフラン)、ニトロメタン、ジオキサンなどの水溶性有機溶媒、またはこれら水溶性有機溶媒と水との混合水溶液を用いることができる。原料の溶解性や環境適合性等の観点から、好ましくは水、あるいは水溶性有機溶媒と水との混合水溶液であり、混合水溶液として好ましくは、アセトニトリル/水混合水溶液、メタノール/水混合水溶液、エタノール/水混合水溶液が挙げられる。その比率は、原料が溶解し得るように決定するのが好ましい。
反応温度は、原料や触媒の種類・量、反応時間、反応溶媒、その他の反応条件に応じて室温から反応溶液の還流温度の範囲で行うことができる。
反応時間は、原料や触媒の種類・量、反応温度、反応溶媒、その他の反応条件等によって変化するが、通常1時間〜48時間である。
【0019】
前記ヒドロキシアリール化合物(I)の好適な例として、前記一般式(I’)の基本構造を有する化合物が挙げられ、本発明のC−グリコシル化反応により前記一般式(II’)の基本構造を有する化合物に導くことができる。
また、前記一般式(I−1)の基本構造を有する化合物も挙げられ、本発明のC−グリコシル化反応により前記一般式(II−1)の基本構造を有する化合物に導くことができる。
また、本反応によれば、前記一般式(I−2)の基本構造を有する化合物を前記一般式(II−2)の基本構造を有する化合物へと導くことができる。一般式(I−2)では、二つの無保護水酸基のうちの一つが、フラボノイドのC3環状構造を形成しているが、このような場合においても、本反応によりフラボノイド構造の8位(R2に対してパラ位)にC−グリコシル基を導入できる。この反応機構は明らかではないが、一つの推測として、ルイス酸存在下の加熱条件下ではピラン環が開環してフリーの水酸基を生じ、上記スキーム1と同様に両水酸基にはさまれた位置(8位)にC−グルコシル化が起きると考えることができる。なお、R2が無置換水酸基である場合には、6位(R2に対してオルト位)にもC−グリコシル基を導入できる。従って、R2が無置換水酸基の場合には、6位及び/又は8位にC−グリコシル基が導入されたモノ−又はジ−C−グリコシド体が得られる。また、一般式(I−2)のC3環状構造中に二重結合を有するフラボノイド化合物に対しても、本反応によりC−グリコシル化できる可能性がある。
また、レゾルシンに対して糖を0.5当量以上用いれば、2分子のレゾルシンが鎖状の糖を介して結合している前記一般式(II−3)のレゾルシン2量体が得られる。
【0020】
なお、本発明において「基本構造」とは最低限必要な構造を表すものであって、本反応に特に支障を生じない限り、任意の置換基を有していてもよい。
本発明の製造方法において光学活性な生成物を得るためには、光学活性な原料を用いればよく、また、適切な段階で、クロマトグラフィー、分別結晶等の分離操作を行えばよい。
また、官能基が分子内に存在し、この官能基が反応の妨害となる、あるいはその恐れがある場合には、適切な保護基を用いることが好ましい。保護基の利用は、”Protective Groups In Organic Synthesis” T.W.Greene et. al, 1991等に従って実施できる。
【0021】
本発明における各基の定義は次の通りである。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
アルキル基とは、直鎖状、分枝状何れでもよく、好ましくは炭素原子を1〜6個有する飽和炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、 n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、 n−ヘキシル基などが挙げられる。また、環状アルキル基も包含され、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等も含まれる。また、これら飽和炭化水素基は、任意の炭素上にハロゲン原子、置換または無置換の水酸基などの置換基を有していても良く、あるいは骨格内の任意の炭素原子が酸素原子や硫黄原子に置き換わっていても良い。
【0022】
アシル基とは、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリールまたはヘテロアリールを有するカルボニル基であり、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、アクリロイル等の脂肪族アシル基、又はベンゾイル、トルイル等の芳香族アシル基を示す。
本発明において置換水酸基の置換基とは、本反応において特に支障のない限り、制限されないが、例えば、通常水酸基の保護基として用いられる基の他、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール、ヘテロアリール、アシル基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0023】
ヘテロアルキル基とは、直鎖状、分枝状何れでもよく、炭素原子と1つ以上のヘテロ原子(O、S又は3級のN)とで構成される飽和基であり、好ましくは2〜6の原子を有する。また、環状ヘテロアルキル基も包含され、例えば、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリル、チオモルホニル、テトラヒドロフリル等が含まれる。
アリールとは、芳香族炭素環基である。好ましいアリール基には、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールアルキル基とは、前記アリール基で置換された前記アルキル基であり、好ましい例としてベンジル、フェニルエチル等が挙げられる。
【0024】
ヘテロアリールとは、その環内にNHを有しない芳香族複素環基である。好ましいヘテロアリール基には、例えば、チエニル基、フリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、チアゾリル基、ピリミジニル基、キノリニル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基等が含まれる。
【0025】
【実施例】
以下、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 フロロアセトフェノンのC−グリコシル化
【化20】
【0026】
フロロアセトフェノン(1)150mg(0.89mmol、1.00eq.)とD−グルコース480mg(2.67mmol, 3eq.)を50ml容ナス型フラスコに入れ、蒸留水1.50mlと蒸留エタノール3.00mlの混合溶媒に溶解させた。冷却管をフラスコにセットし、加熱した。溶媒が沸騰し始めたところでスカンジウムトリフラート触媒87.5mg(0.17mmol、0.20eq.)を加えて攪拌し、反応を開始した。約2〜3時間おきにシリカTLCにて原料と生成物のスポットを確認しながら反応の進行を観察した。シリカTLCはトルエン:酢酸エチル:酢酸=6:1:0.2、又はアセトン:酢酸エチル:水:酢酸=30:15:5:1にて展開した。フロロアセトフェノン(1)と生成物(2)、(3)のスポットはUV(+)ならびにFeCl3水溶液による呈色(黒茶色〜薄こげ茶色)により確認した。D−グルコースのスポットは、10%リンモリブデン酸エタノール溶液に浸した後加熱し、呈色(青緑色)により確認した。
【0027】
反応開始から約8時間後、原料(1)がほとんどなくなった事を確認し、反応を停止した。その後、反応溶液から水を除去するために、エタノールを過剰に加えて濃縮・乾固した。残渣を少量のメタノールに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル:酢酸=6:1:0.2、及びアセトン:酢酸エチル:水:酢酸=15:35:2:1〜30:15:5:1)にて分離し、濃縮を行ったところ、無色粉状結晶のモノ−C−グルコシド体(2)及び無色粉状結晶のジ−C−グルコシド体(3)を得た。
収量(収率):モノグルコシド(2)85.1mg(29%)、ジグルコシド(3)146.5mg(33%)
【0028】
なお、各グルコシド体は、実施例3に準じてアセチル化することにより同定した。
モノグルコシド(2)のアセテート体:無色結晶。融点190℃。
FABMS (NBA, m/z) 625(M+H).
1H NMR(CDCl3, 270MHz, at 50℃) δ 1.79, 2.00, 2.03, and 2.05(each 3H, each s, OAc x 4), 2.31, 2.37, and 2.53(each 3H, each s, ArOAc x 3), 2.41(3H, s, ArAc), 3.75(1H, ddd, J=2.1, 4.6, 9.9Hz, H−5’), 3.99(1H, dd, J=2.0, 12.5Hz, H−6’a), 4.37(1H, dd, J=4.5, 12.5Hz, H−6’b), 4.74(1H, d, J=9.9Hz, H−1’), 5.14(1H, t, J=9.6Hz, H−4’), 5.25(1H, t, J=9.6Hz, H−3’),5.61(1H, t, J=9.9Hz, H−2’), 7.26(1H, s, ArH).
Anal. calcd for C28H32O16: C, 53.84%; H, 5.16%. Found: C, 53.58%; H, 5.19%.
ジグルコシド(3)のアセテート体:無色結晶。融点138℃。
FABMS (NBA, m/z) 913(M−42+H).
1H NMR(DMSO−d6, 500MHz, at 140℃) δ 1.74, 1.93, 1.96, and 1.98(each 6H, each s, OAc x 8), 2.30(6H, s, ArOAc x 2), 2.38(3H, s, ArAc), 2.71(6H,s, ArOAc x 2), 3.95(2H, br. d, J=12.2Hz, H−6’a, H−6”a), 4.03(2H, m, H−5’, H−5”), 4.14(2H, dd, J=5.1, 12.2Hz, H−6’b, H−6”b), 4.76(2H, br. d, J=9.2Hz, H−1’, H−1”), 5.00(2H, t, J=9.6Hz, H−4’, H−4”), 5.34(2H, t, J=9.2Hz, H−3’, H−3”), 5.55(2H, t, J=9.2Hz, H−2’, H−2”).
Anal. calcd for C42H50O25: C, 52.83%; H, 5.28%. Found: C, 53.10%; H, 5.34%.
【0029】
実施例2 反応条件
下記表1の反応条件で、上記実施例1と同様にして反応を行った。表1の結果から解るように、反応条件等を最適化することにより、C−グルコシド体の収率を約80%にまで高めることが可能である。また、D−グルコースの代わりに、D−ガラクトース、2−デオキシ−D−グルコース、D−マンノース等を用いた場合にも、同様の方法により各C−グリコシド体が得られることが確認された。
【表1】
【0030】
【化21】
【0031】
実施例3 フロログリシノールのC−グリコシル化及びアセチル化
【化22】
【0032】
フロログリシノール二水和物(5)128mg(0.79mmol, 1.00eq.)とD−グルコース427mg(2.37mmol, 3.00eq.)を25ml容ナス型フラスコに入れ、蒸留水1.00mlと蒸留エタノール2.00mlの混合溶媒を加えて溶解させた。冷却管をフラスコにセットし、加熱した。溶媒が沸騰してきたら、スカンジウムトリフラート触媒79.0mg(0.16mmol, 0.20eq.)を加えて攪拌し、反応を開始した。約1〜2時間おきにシリカTLCにて原料と生成物のスポットを確認しながら反応の進行を観察した。シリカTLCはアセトン:酢酸エチル:水:酢酸=25:35:5:1にて展開した後、フロログリシノール(5)と生成物(6)、(7)のスポットはUV(+)ならびにFeCl3水溶液による呈色(こげ茶色)により確認した。
【0033】
反応開始から約3時間後、原料(5)がほとんどなくなった事を確認し、反応を停止した。その後、反応溶液から水を除去するために、エタノールを過剰に加えて濃縮した。濃縮後、真空ポンプにて1時間、常温で吸引を行い、乾燥させた。
次にアセチル化を行った。乾燥させた反応物を、無水酢酸2.00ml及びピリジン1.00mlに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を1かけら加えて室温で攪拌した。12時間後、反応液を氷水に注ぎ、30分間攪拌して残存する無水酢酸を分解した。その後、塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1〜1:2)にて分離し、濃縮を行ったところ、無色油状のC−グルコシルアセテート(6a)、(7a)を得た。
【0034】
無水酢酸によるアセチル化はほぼ100%で進行することが知られているので、アセテート(6a)及び(7a)の収率は、それぞれモノ−C−グルコシド(6)及びジ−C−グルコシド(7)の収率に相当する。
【0035】
モノ−C−グルコシルアセテート(6a): 無色粘稠油。
FABMS(NBA, m/z) 583(M+H).
1H NMR(CDCl3) δ 1.78, 2.02, 2.04, and 2.07(each 3H, each s, OAc x 4),2.25, 2.43, and 2.48(each 3H, each s, ArOAc x 3), 3.66(1H, ddd, J=2.5, 4.0, 10.0Hz, H−5’), 3.98(1H, dd, J=2.5, 12.5Hz, H−6’a), 4.20(1H, dd, J=4.0, 12.5Hz, H−6’b), 4.73(1H, d, J=10.0Hz, H−1’), 5.15(1H, t, J=10.0Hz, H−4’), 5.26(1H, t, J=10.0Hz, H−3’), 5.61(1H, t, J=10.0Hz, H−2’), 6.89(2H, s, ArH x 2).
ジ−C−グルコシルアセテート(7a): 無色粘稠油。
FABMS(NBA, m/z) 913(M+H).
1H NMR(CDCl3) δ 1.71, 1.93, 2.01, and 2.08(each 3H, each s, OAc x 4),2.03 and 2.04(each 6H, each s, OAc x 4), 2.33, 2.39, and 2.46(each 3H, each s, ArOAc x 3), 3.63 and 3.78(each 1H, each t, J=9.5Hz and 9.6Hz, H−5’ and H−5”), 3.94 and 3.97(each 1H, each d, J=12.5Hz and 12.7Hz, H−6’a and H−6”a), 4.37 and 4.45 (each 1H, each dd, J=3.9, 12.5Hz and J=4.1, 12.7Hz, H−6’b and H−6”b), 4.32 and 4.76(each 1H, each d, J=9.5Hz and 9.6Hz, H−1’ and H−1”), 5.14 and 5.15(each 1H, each t, J=9.6Hz and 9.5Hz, H−4” and H−5’), 5.24 and 5.28(each 1H, each t, J=9.6Hz and 9.5Hz,H−3” and H−3’), 5.54 and 5.68(each 1H, each t, J=9.6Hz and 9.5Hz, H−2” and H−2’), 6.94 (1H, s, ArH).
【0036】
実施例4
下記表2の反応条件で、上記実施例3に準じてフロログリシノールのC−グリコシル化及びアセチル化を行った。その結果、モノ−C−グルコシルアセテート体(6a)(収率35%)及びジ−C−グルコシルアセテート体(7a)(収率23%)を得た。
【表2】
【0037】
実施例5 メチルフロロアセトフェノンのC−グリコシル化
【化23】
実施例1に準じて、メチルフロロアセトフェノン(8)300mg(1.65mmol、1eq.)に対してD−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、エタノール/水(3ml:3ml)中、加熱還流して反応を行った(反応時間9時間)。その結果、白色粉末状のモノ−C−グルコシド体(9)を得た(収率55%)。
【0038】
モノ−C−グルコシド体(9):
融点114−116℃。
FABMS(m/z) 345(M+H).
1H NMR (DMSO−d6) δ2.01 (3H, s, CH3), 2.66(3H, s, Ac), 3.45〜3.94(6H,m, H−2’〜H−6’), 4.88(1H, d, J=10.0Hz, H−1’), 8.92, 9.59, and 13.25(each 1H, each s, OH x 3).
モノ−C−グルコシド(9)のアセテート体:無色粘稠油。
[α]D 25−4.69°(c0.98,CHCl3).
FABMS(m/z) 640(M+H).
1H NMR (CDCl3, at 50℃, 500MHz) δ 2.02(3H, s, CH3), 1.68, 1.80, 1.94,2.04, 2.08, 2.29, 2.30, and 2.39(each 3H, each s, Ac x 8), 3.40(1H, ddd, J=4.4, 1.9, 9.8Hz, H−5’), 4.00(1H, dd, J=1.9, 12.7Hz, H−6’a), 4.38(1H, dd, J=4.4, 12.7Hz, H−6’b), 4.70(1H, d, J=10.0Hz, H−1’), 5.14(1H, t,J=9.8Hz, H−4’), 5.24(1H, dd, J=9.5, 9.3Hz, H−3’), 5.64(1H, br. s, H−2’).
Anal. calcd for C29H34O16; C, 53.78; H, 5.45; Found: C,53.94; H, 5.45.
【0039】
実施例6 ヒドロキシアリール化合物の構造
【化24】
【化25】
【0040】
実施例1に準じて、上記ヒドロキシアリール化合物(10)〜(12)(各200mg、1eq.)に対して各々D−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、アセトニトリル/水(2ml:1ml)中、加熱還流して反応を行ったところ、何れの場合にも反応が進行せず、目的とするC−グリコシド体が得られなかった。
以上のことから、本反応が進行するためには、原料となるヒドロキシアリール化合物が、前記一般式(I)の基本構造、すなわち、少なくとも2つの無保護水酸基がベンゼン環上に存在し、且つ、第一の無保護水酸基に対して第二の無保護水酸基がメタ位に位置し、第一の無保護水酸基と第2の水酸基の間にはさまれたオルト位がフリーである構造を有することが必要であると考えられる。
【0041】
実施例7 ナリンゲニンのC−グリコシル化
【化26】
実施例3に準じて、ナリンゲニン(13)100mg(0.37mmol、1eq.)に対してD−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、アセトニトリル/水(2ml:1ml)中、加熱還流してグリコシル化反応を行った(反応時間2日)。
【0042】
次いで、実施例3に準じて無水酢酸/ピリジン/DMAPでアセチル化(反応時間 12時間)、抽出、洗浄、乾燥、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて分離し、目的物を得た。
FABMS(m/z):モノ体(14a)729(M+H)、ジ体(15a)1,059(M+H).
1H−NMR(CDCl3):モノ体(14a)δ4.69(1H, d, J=10Hz, アノマーH), 6.78 and 6.80(total 1H, each s, ArH). ジ体(15a)δ4.35 and 4.65(each 1H, each d, J=9.8Hz, アノマーH x 2).
【0043】
実施例8 レゾルシンのC−グリコシル化
【化27】
実施例1に準じて、レゾルシン(16)220mg(2.00mmol、1eq.)に対してD−グルコースを3当量、スカンジウムトリフラートを0.2当量用い、アセトニトリル/水(2ml:1ml)中、加熱還流して反応を行った(反応時間1日)。その結果、鎖状の糖を介したレゾルシン二量体(17)のみが得られた(収率30%)。また、レゾルシンに対してD−グルコースを0.5当量用いて同様に反応を行った場合にも、レゾルシン2量体(17)のみが得られた(収率15%)。
なお、得られた2量体は、実施例3に準じてアセチル化することにより同定した。
【0044】
鎖状の糖を介したレゾルシン二量体(17)のアセテート:無色油状。
[α]D 19 +0.4° (c0.955, CHCl3).
1H NMR(CDCl3, 500MHz) δ 1.80, 1.91, 2.03, 2.05, and 2.15(each 3H, each s, OAc x 5), 2.25, 2.26, 2.36, and 2.40(each 3H, each s, ArOAc x 4), 3.99(1H, dd, J=5.4, 12.5Hz, H−6’a), 4.17(1H, dd, J=2.4, 12.5Hz, H−6’b),4.96(1H, ddd, J=2.4, 5.4, 8.0Hz, H−5’), 5.04(1H, d, J=7.5Hz, H−1’), 5.12(1H, dd, J=2.4, 8.0Hz, H−4’), 5.27(1H, dd, J=2.4, 6.8Hz, H−3’), 5.62(1H, dd, J=6.8, 7.5Hz, H−2’), 6.92(2H, dd, J=2.4, 9.2Hz, ArH−3, ArH−5), 7.01(each 1H, each t, J=9.7Hz and 8.6Hz, ArH−4 x 2), 7.45(1H, d, J=8.6Hz, ArH−3), 7.68(1H, d, J=8.6Hz, ArH−5).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ (sugar moiety) 37.5(C1’), 61.5(C6’), 68.30(C5’), 68.64(C4’), 69.72(C3’), 70.48(C2’), (aromatic moiety) 116.5(C3 or C5), 116.6(C3 or C5), 118.9(C4 x 2), 127.4(C1 x 2), 130.3((C5 or C3) x 2), 149.1(C2 x 2), 149.7(C6), 150.3(C6).
Anal. calcd for C36H40O18: C, 56.84; H, 5.30. Found: C, 56.41; H, 5.40.
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、糖やヒドロキシアリール化合物の水酸基を保護する必要がなく、直接的にヒドロキシアリール化合物に対してC−グルコシル化反応を効率的に行うことができる。また、本反応は、フラボノイドの基本構造である[C6−C3−C6]環状構造を有する化合物にも適用可能である。さらに、本反応は水性溶媒中で行うことができ、コスト、安全性、環境適合性の点でも非常に有用である。
Claims (14)
- 前記請求項1記載の方法において、水性溶媒が水、アセトニトリル/水混合水溶液、メタノール/水混合水溶液又はエタノール/水混合水溶液であることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1又は2記載の方法において、前記金属トリフラート触媒を、ヒドロキシアリール化合物(I)に対して0.01〜0.5当量用いることを特徴とする、ヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1〜3の何れかに記載の方法において、アルデヒド基を有する糖を、ヒドロキシアリール化合物(I)に対して0.5〜5当量用いることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1〜4の何れかに記載の方法において、Mがスカンジウムであることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1〜5の何れかに記載の方法において、アルデヒド基を有する糖がアルドースであることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1〜6の何れかに記載の方法において、反応温度が25℃〜反応溶液の還流温度であることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項7記載の方法において、反応温度が還流温度であることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1〜8の何れかに記載の方法において、前記一般式(II)で示される基本構造を有するヒドロキシアリール C−グリコシド化合物が、β−アノマーであることを特徴とするヒドロキシアリール C−グリコシド化合物の製造方法。
- 前記請求項1〜9の何れかに記載の方法において、ヒドロキシアリール化合物(I)として、下記一般式(I’):
- 前記請求項1〜10の何れかに記載の方法において、前記ヒドロキシアリール化合物(I)として下記一般式(I−1):
- 前記請求項1〜10の何れかに記載の方法において、ヒドロキシアリール化合物(I)として下記一般式(I−2):
- 請求項13記載の方法において、レゾルシンに対してグルコースを0.5〜3当量用いることを特徴とする前記一般式(II−3)で示されるレゾルシン2量体の製造方法。
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