JP2004067473A - 磁性細骨材、および、磁性セメント固化体 - Google Patents

磁性細骨材、および、磁性セメント固化体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高性能の磁気シールド材に用いられる磁性を有する細骨材を安価に提供するものであり、また、磁性を有することが要求されるモルタルやセメントコンクリートなどの固化体にも関する。
【解決手段】主として、カルシウムフェライトなどのフェライト鉱物相を多く含む酸化物の溶融物を冷却することにより、磁性のある球形粒子を製造し、これを磁性細骨材として用いる。ただし、この球形粒子中の酸化鉄比率は14〜50質量%であり、酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率は1対1.2〜1対6.5の範囲である。この磁性細骨材をモルタルやセメントコンクリートに混入して、磁性を有するセメント固化体を製造する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁シールド等の目的に用いる磁性を有する構造体を構成するセメントコンクリートやモルタルの製造方法に関する。
また、磁性を有するセメントコンクリートやモルタル用の細骨材に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在は、情報機器や家電製品が普及しており、これらの機器の中には、電磁気を用いた通信を行う装置や電磁波が結果的に発生する装置がある。たとえば、高速自動車道の自動通行料金徴収装置では、電磁波で車載の機器の情報を読み取ることが行われている。また、形態電話のように、極短波を用いた通信を行う機器が普及している。一方で、コンピューターやモーター類のように、使用中に電磁波を発生する機器もある。
これらの機器から発生する電磁波は、電気製品や情報機器の中のマイクロチップを誤作動させる問題などがある。たとえば、建物の外部の強い電磁波が原因で、医療機器の誤作動が起きて、患者の治療に支障をきたす場合もある。また、前出の自動通行料金徴収装置では、この装置が電磁波を発振して、車載機器の情報を読み取ることで、システムが構成されている。この場合に、道路や建築物からの電磁波の反射が大きい場合は、やり取りする電磁波信号を錯乱する要因となって、正常な操作ができなくなる問題があった。
【0003】
そこで、特開平08−105128公報に記載されているように、電磁波を遮断できる壁などを作り、電磁波をシールドすることが行われている。大型コンピューター室などは、電磁波をほぼ完全に遮断する金属壁で囲うことにより、この問題を回避している。このように、金属壁やフェライトタイルによる電磁波の遮蔽効果は大きいが、一方、このような金属壁やフェライトタイルを構築することは設置費用が高い問題があった。
建物や道路などを経済的な電磁シールドにするためには、鋼材などの構造体よりも安価に施工できるセメントコンクリートやモルタルを用いることが望ましい。したがって、従来技術においては、磁性を有する物質を添加したセメントコンクリートやモルタルを製造してこの目的を達成していた。なお、以降、セメントコンクリートやモルタルをセメント固化体と称す。
磁性を有する固化体を製造するためには、粗骨材(5〜25mmの石相当の材料)、細骨材(5mm以下の砂相当の材料)に、ポルトランドセメント粉などと水の混合物であるセメントミルクを混合して、生コンクリートを構成する。これに、磁性を有する粉体を均一に混合して、磁性を有する生コンクリートを製造する。この生コンクリートを型枠に流し込み、これを固化させることにより、磁性のある固化体を製造する。これを建物や土木構造物の磁気シールドが必要な部分に使用する。磁性粉体としては、フェライトやマグネタイトを含んだ粉体、砂鉄や磁鉄鉱の微粉末、を用いることが一般的である。磁性を有するモルタルを製造するには、たとえば、特開平09−55595公報に記載されるように、細骨材とセメントミルクを混合して、生モルタルを作り、これを型に流し込むことや、塗りつけて施工する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開平09−55595公報に記載されるような従来技術による磁性のあるセメント固化体を製造する方法においては、セメントコンクリートやモルタルの基本構成を形成したものに、磁性のある粉体を添加する方法で製造されていた。この方法では、セメント固化体の強度を保ち、かつ、生コンクリートや生モルタル状態での流動性を確保する観点からは技術的な問題があった。
まず、砂鉄や鉄鉱石粉を生モルタルやセメントコンクリートに混合する場合は、これらの流動性が悪化する問題があった。つまり、砂鉄を用いる場合は、砂鉄は平均粒子径が0.5mm程度のものが多く、比較的粒子径のバラツキが小さいものであることから、砂鉄を多く含む生モルタルや生コンクリートは、流動性が悪化する。つまり、生モルタルや生コンクリートを施工しやすくするためには、細骨材の粒度分布が広い必要があるが、砂鉄を多く含む場合では、この条件を満たすことができなかった。粒度分布の制約により、30質量%以上の比率では砂鉄を添加することができなかった。この結果、磁気特性の高いセメント固化体を製造することはできなかった。
また、鉄鉱石を磁性材料として用いる場合には、砂鉄を使用する場合と同様の問題があった。この場合は、鉄鉱石の粉の部分を篩って集めるか、塊鉱石を破砕して、平均粒径が1.5mm、または、これ以下の粒径の粒子を得る。この場合の鉄鉱石の粒子は、角張った形状であり、また、粒子径もそろったものであった。この結果、鉄鉱石を使用した場合においては、砂鉄を用いた場合よりも、生モルタルや生コンクリートの性状、特に流動性が悪かった。
【0005】
このような粒度分布の問題を解決するためには、砂鉄や鉄鉱石を破砕することにより、径の小さい粒子を製造することも、技術的には可能である。しかし、この方法においては、砂鉄や鉄鉱石は硬いため、破砕のための費用が莫大となる問題があった。たとえば、鉄鉱石を0.1mm以下に破砕するためには、専用の破砕装置が必要であり、破砕処理のための電力や破砕刃の整備などに多額の費用がかかる問題があった。
また、鉄を蒸発させて、これを酸化して得たマグネタイトとフェライトを多く含む微粒子を磁性材として混合するこのも試されてきた。この場合には、更に重大な問題があった。この方法では、通常の方法で製造した生コンクリートや生モルタルに、このような微粒子の粉体を添加することから、ある程度以上の比率でこの粉体を加えると、生モルタルや生コンクリートの流動性が悪化する。たとえば、10マイクロメートル微粉からなる、この粉体を1立方メートルあたり50キログラム添加した生モルタルの場合は、流し込み施工できなくなった。この問題を解決するために、流動性向上の添加剤を加えた。この結果、施工することはできたが、工事費用が大幅に増加する問題があった。また、添加剤による生モルタルや生コンクリートの流動性の改善には限りがあるため、固化体に含まれる微粉の磁性粉体の比率を増加させることができずに、磁性の強いセメント固化体を製造できない問題もあった。
このように、従来の技術では、いずれのものであっても、高い磁性を有するセメント固化体を簡便に製造することができなかた。このため、上記に述べた問題を解決して、高い磁性を有するセメント固化体を経済的に製造する新しい技術が求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記(1)から(5)の内容である。
(1)酸化鉄を14〜50質量%含み、かつ、含有される酸化カルシウム、酸化マンガン、および、酸化マグネシウムが当該酸化鉄と、固溶してフェライト鉱物相を形成しており、当該酸化鉄の酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対1.2〜1対6.5である球形粒子であることを特徴とする磁性細骨材。
(2)平均粒子径が0.5〜1.5ミリメートルの球形粒子からなる(1)に記載の磁性細骨材。
(3)酸化鉄とともに、酸化カルシウム、酸化マンガン、および、酸化マグネシウムを含む酸化物の融体中に、他の鉱物相の微粒子が懸濁している状態である、流動性がある複合酸化物に、気流を当てて凝固させて製造したことを特徴とする(1)に記載の磁性細骨材。
(4)製鋼用転炉で生成した、一部が溶融しているスラグに空気の気流を当てて凝固させることにより製造した球形粒子であることを特徴とする(3)に記載の磁性細骨材。
(5)モルタル、または、コンクリートセメントの1立方メートル中に(2)に記載の磁性細骨材を110kg以上混合して、固化させたことを特徴とする磁性セメント固化体。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、磁性のある酸化物を球形に加工して、これを細骨材とする。これを用いて、コンクリートやモルタルを製造することにより、電磁的なシールドが行えるコンクリートやモルタルを製造する。この細骨材の要求される物資は、磁性を有しているとともに、粒子形状が球に近く、集合としての流動性が高いこと、また、強度が高いことなどがある。本発明の細骨材を用いることにより、集合としての流動性が高いことにより、生モルタルや生セメントコンクリートの流動性を悪化させずに、磁性を有する粒子を多量に添加することができる。本発明では、溶融している酸化物を凝固させて、磁性を有する酸化物を多く含むことにより、強磁性を持つ球形粒子を製造して、これを細骨材として用いる。なお、この強磁性を持つ球形粒子を、以降、単に球形粒子と称す。
本発明の細骨材の特徴である磁性の強い球形粒子の製造方法は、以下の方法などがある。基本的には、酸化鉄と酸化カルシウムを多く含む溶融状態の酸化物を製造し、この酸化物を凝固されて磁性を発現させる。この際の酸化鉄の酸化第一鉄(FeO)と酸化第二鉄(Fe2O3)の比率を適性にする。これは、強磁性を有する酸化物を製造するには、Fe2+とFe+3が混合することにより酸化物が強磁性体となる原理を利用するためである。
【0008】
まず、この複合酸化物の溶融物を製造する。主要な成分は、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウムである。これらの酸化物の混合した後に、温度を1400℃以上とすることにより、これを溶融する。この溶融物に大量の冷風を吹き付けてこれを凝固させることにより、球状粒子を製造する。直径が0.05〜3mmの粒子の球状粒子を集めて、細骨材として使用する。この球状粒子の鉱物相は、酸化カルシウムと酸化珪素の化合物である、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)とトリカルシウムシリケート(3CaO・SiO2)、および、酸化カルシウムと酸化第二鉄の化合物である、カルシウムフェライト(CaO・Fe2O3)やダイカルシウムフェライト(2CaO・Fe2O3)などから構成される。ただし、酸化マンガンとのフェライト鉱物相などの他の鉱物相が少量含まれることもある。特に、ダイカルシウムシリケート粒子をダイカルシウムフェライトが囲む構造となっていると、真球に近い表面が平滑であり、かつ、強度の強い球状粒子が製造できる。
この球形粒子の酸化鉄の大部分はダイカルシウムフェライト相に含まれ、一部が他のフェライト相に含まれる。他のフェライト相は、酸化第二鉄と、酸化マグネシウム、酸化マンガンなどの化合物としてなるものである。この球形粒子内部で磁性を有する部分は、これらのフェライト相である。特に、カルシウムフェライトに磁性を与えることは本発明での重要な要件である。この球形粒子には、酸化珪素、酸化燐、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化マグネシウムなどの物質が混在していても良い。特に、酸化マンガンと酸化マグネシウムは酸化第二鉄とフェライトを形成することから、各々数質量%程度混在していても実用上の支障はない。本発明の球形粒子の内部構造は図1の例に示すとおりである。1〜5マイクロメートルのダイカルシウムシリケート粒子1、および、さらに微細なトリカルシウムシリケート粒子2の周囲をフェライト鉱物相3が取り囲む構造になっている。また、場合によっては、酸化マグネシウム粒子4などが存在することもある。
【0009】
本発明の球形粒子をする方法は種々あるが、図2に記載される装置で行う方法が効率的である。溶融状態の酸化物は、溶融物容器5に入れられ、ここから流出する。この際、溶融酸化物の流れ6に、ノズル7から噴出する気流を当てて、溶融酸化物を吹き飛ばす。ノズル7には、パイプ8を経由して、コンプレッサー9から、圧縮空気が送られる。この操作で、溶融酸化物は冷却されることにより、球形粒子10が製造される。
本発明の酸化物が強い磁性を有するには、酸化第一鉄と酸化第二鉄の比率が適性であることと、酸化鉄トータルの比率がある程度であることが要求される。まず、この酸化物に含まれる酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対1.2〜1対6.5の範囲にあることが重要である。酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対1.2であれば、Fe+2とFe+3のモル比率がほぼ同等となる。図1に示すように、この比率以上であれば、カルシウムフェライトの中に存在している鉄イオンでも、十分な磁性を発揮できる。また、この比率の酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率よりも酸化第二鉄が多い場合には、磁性がさらに強くなる。したがって、酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対1.2以上であることが本発明の重要な用件である。ただし、酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対6.5以上の場合は、磁性が弱くなるため、この比率は、1対1.2〜1対6.5の範囲であることが望ましい。なお、図3は、酸化鉄比率が23〜25質量%、かつ、酸化カルシウム比率が42〜45質量%の球形粒子の比透磁性のデータをまとめたものである。なお、ここで酸化第一鉄と酸化第二鉄の量とは、化学分析法によって求められるものである。
【0010】
また、図4に示すように、球形粒子中の酸化鉄の総量が少ない場合は、磁性が不足することから、酸化鉄比率は14質量%以上であることが必要である。また、酸化鉄比率が50質量%以上であり、他の酸化物の比率が少ない場合は、フェライト鉱物の形成が不十分になり、球形粒子内部の鉱物組成的に十分な強度が発現できないことから、酸化鉄の比率は、14〜50質量%の範囲にあることが必要である。なお、図4は、酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対3〜3.5の球形粒子の比透磁性のデータをまとめたものである。
図3および図4に示されたように、本発明の球状粒子は比透磁率が150〜300である良好な強磁性体である。本発明の球形粒子をモルタル中などの空間に配列すると、短波長の電磁波を遮蔽できる。基本的に、比透磁率が高く、比電気伝導率が高い物質は電磁波遮蔽が良好である。本発明の球状粒子は、比電気伝導率が1〜2程度と低いものの、比透磁率が高いことから、電磁波遮蔽材料としての機能がある。銅や鉄のような物質の場合は、1mm程度の厚みでも電磁波遮断ができるが、本発明の球状粒子では、1立方メートルに100kgを均一に分散させた、100mmのモルタルを使用した場合で、4MHzの電磁波の減衰率が65デシベルである。このように、本発明の球形粒子を分散させたモルタルやセメントコンクリートは電磁波遮断物としての用途がある。
【0011】
良好なカルシウムフェライト相を形成するためには、酸化鉄と反応する酸化カルシウムの質量比率は、1対0.5以上であることが良い。ただし、一般には、溶融した複合酸化物の中に、酸化珪素や酸化燐などの酸性の強い酸化物が混在しており、これらの物質は酸化鉄よりも優先的に酸化カルシウムと反応するため、これらの物質が混在している場合は、前述の比率よりも、酸化カルシウムの含有率が高いことが必要である。酸化カルシウムは、酸化珪素の2倍、および、酸化燐の3倍のモル量と反応することから、溶融した複合酸化物の中には、この分の酸化カルシウムが多く存在する必要がある。
球形粒子の製造コストを削減するためには、溶融酸化物の製造費用を低減することが最も効果的である。特に、製鋼転炉スラグや製鋼電気炉スラグを原料として用いることは、原料費用の低減に役に立つ。また、溶融状態のこれらスラグに添加剤を加えることにより、これらスラグの成分を上記の酸化鉄などの化学配合比に適合するように成分調整すれば、複合酸化物の溶融物の溶解に関わるエネルギー費用も低減できる効果がある。
【0012】
具体的には、製鋼転炉スラグは、酸化鉄を15〜35質量%、酸化カルシウムを40〜55質量%、酸化珪素を10〜20質量%の比率で含み、他に酸化燐、酸化マグネシウム、酸化マンガンなどを少量含むものである。このスラグでは、酸化鉄中の酸化第二鉄比率が本発明の適正な比率よりも少ないことから、酸素をスラグ中に供給して、酸化第二鉄比率を増加させる。その後に、溶融状態のこのスラグに、コンプレッサーで製造した圧縮空気を吹き付けることにより冷却すると、磁性を有する球状粒子が生成する。この際に、製鋼転炉スラグの化学成分が本発明の範囲から外れる場合は、酸化鉄や酸化珪素を添加して、化学成分を調整することもある。このように、特に、製鋼転炉から排出された、高温で流動性のあるスラグを活用する場合は、安価に球状粒子を製造できる。
上記の方法で製造された球状粒子をセメントコンクリートやモルタルの細骨材として使用する。この使用方法は、以下に示すセメントコンクリートの施工方法の例で示す。まず、原料として、生コンクリート1立方メートル当りの量で示す。粗骨材を950〜1100kg、細骨材として、本発明の磁性球形粒子と天然砂などの他材質との混合物を700〜850kg、ポルトランドセメントなどのセメント粉を120〜160kg、また、水を170〜230リットルの比率で用意する。細骨材中の本発明の磁性球形粒子比率は、コンクリート1立方メートルあたり60kg以上であることが必要である。この比率以下では、セメント固化体内部での磁性球形粒子の存在密度が疎となって、数ミリメートルから10センチメートル程度の波長のマイクロ波を遮断する性能が低くなる問題が生ずる。また、本発明の磁性細骨材比率の厳密な上限はないが、細骨材全体の50質量%を超えると、生コンクリートの水が骨材から分離する現象が起きるため、コンクリート表面性情を良好にするには、本発明の磁性細骨材の全細骨材に対する比率は50質量%以下が望ましい。
【0013】
本発明の球形粒子を細骨材として生モルタルや生コンクリート中に多量に添加するためには、適正な粒径であることが重要である。細骨材は粒径が5mm以下であり、適切な粒度分布を持っている。一般的には、良好な細骨材の平均粒子径は0.6〜0.9mmであり、広い粒度分布を有している。本発明の球形粒子は細骨材の一部として添加されるため、平均径はやや大きい場合でも、残りの細骨材の部分を細かくすれば、細骨材全体としては、良好なものとなる。したがって、本発明の球形粒子の平均径は0.5〜1.5mmの範囲であれば問題がない。また、望ましくは、粒度分布が広い方が良く、平均径の1/2以下の粒子が10〜15%以上存在していると、細骨材中への混合可能比率が増加する。
以上の条件で、これらの混合物をミキサーで混合する。本発明の球形粒子が均一に混合するように良く撹拌混合した後、これを施工の型などに流し込み、セメント固化体を作る。所定の時間後に、セメントが硬化した後に型枠を取り、施工が完了する。施工する場所は磁気や電波を遮断する必要のある場所である。
【0014】
【実施例】
上記の方法で製造した本発明の細骨材の例を表1に示す。球形粒子1は、酸化鉄を17質量%、酸化カルシウムを55質量%、酸化珪素を18質量%の比率で含み、また、酸化マンガンを少量含む、酸化物溶融物に冷風を吹き付けて冷却した球形粒子であった。酸化第一鉄と酸化第二鉄の比率は、1対2.4であった。平均粒子径は0.77mmであった。また、球形粒子2は、酸化鉄を44質量%、酸化カルシウムを36質量%、酸化珪素を7質量%の比率で含み、また、酸化マンガンを少量含む、酸化物溶融物に冷風を吹き付けて冷却した球形粒子であった。酸化第一鉄と酸化第二鉄の比率は、1対3.3であった。平均粒子径は0.89mmであった。球形粒子3は、酸化鉄を23質量%、酸化カルシウムを49質量%、酸化珪素を14質量%の比率で含み、また、酸化マンガン、酸化マグネシウム等を少量含む、製鋼転炉スラグに冷風を吹き付けて冷却した球形粒子であった。酸化第一鉄と酸化第二鉄の比率は、1対4.1であった。平均粒子径は1.2mmであった。
比透磁性は、球形粒子1が155、球形粒子2が260、球形粒子3が160であり、良好な強磁性体であった。また、球形粒子の強度も十分であり、圧潰破壊強度は35〜50メガパスカルと天然砂と同等の強度であった。粒子形状は、いずれもほぼ真球であり、平均の扁平率は5%以下であった。なお、圧潰破壊強度は、粒子が破壊する時の押し潰し力を粒子の断面積で割った値である。また、扁平率は粒子の最大径と最小径の差を平均径で割った値である。このように、本発明の球形粒子は、強い磁性を持っていることとともに、球形であり、細骨材としての流動性の高いものであった。また、高硬度であり、対磨耗性等の骨材としての性能も良好であった。
【表1】
Figure 2004067473
【0015】
表1に記載されている本発明の球形粒子を細骨材の一部として用いたモルタルとセメントコンクリートの施工例を表2に示す。施工例1は、球状粒子1をモルタル1立方メートル330kgの比率で細骨材に混合したものを用いた場合の例である。施工例2は、球状粒子2をセメントコンクリート1立方メートルに110kgの比率で細骨材に混合したものを用いた場合の例である。施工例3は、球状粒子3をセメントコンクリート1立方メートルに250kgの比率で細骨材に混合したものを用いた場合の例である。これらの施工例では、いずれも生モルタル、または、生コンクリートの状態での流動性に問題はなく、また、施工後の強度や表面性状も、一般の細骨材を利用したものと同様に良好であった。
【表2】
Figure 2004067473
施工例1では、上記の条件で厚み80mmの壁を形成した。この壁での電磁波の吸収を測定した結果を表2に示す。電磁波減衰率は2メガヘルツで36デシベル、3メガヘルツで55デシベル、5メガヘルツでは69デシベル、また、7ギガヘルツでは76デシベルであった。一般に電磁波遮蔽が良好であることの判定は50デシベル以上であることで判断されている。したがって、施工例1のモルタル壁は3ギガヘルツ以上の電磁波遮蔽用の材料としては良好な物性を有していた。
【0016】
施工例2では、上記の条件で厚み160mmの壁を形成した。表2に示すように、電磁波減衰率は2メガヘルツで32デシベル、3メガヘルツで52デシベル、5メガヘルツでは68デシベル、また、7ギガヘルツでは77デシベルであった。このように、施工例1のコンクリート壁も3ギガヘルツ以上の電磁波遮蔽用の材料としては良好な物性を有していた。
施工例3では、上記の条件で厚み400mmの壁を形成した。表2に示すように、電磁波減衰率は2メガヘルツで44デシベル、3メガヘルツで60デシベル、5メガヘルツでは71デシベル、また、7ギガヘルツでは83デシベルであった。このように、施工例1のコンクリート壁は約2.5ギガヘルツ以上の電磁波遮蔽用の材料としては良好な物性を有していた。
磁性のない一般の細骨材のみ調合したモルタルで、施工例1と同様のモルタル壁を製造した例では、電磁波減衰率は2〜5メガヘルツで10デシベル以下であり、7メガヘルツでも12デシベルと電磁波の遮蔽にはほとんど効果がなかった。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、高い磁性を有するセメント固化体を簡便かつ経済的に製造することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の球形粒子の構造を示す図である。
【図2】部分的に溶融した状態の複合酸化物を凝固させて、球形粒子を製造する装置を示す図である。
【図3】本発明の球形粒子の酸化第一鉄と酸化第二鉄の比率と比透磁率の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の球形粒子の酸化鉄の質量比率と比透磁率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 :ダイカルシウムシリケート粒子、
2 :トリカルシウムシリケート粒子、
3 :フェライト鉱物相、
4 :酸化マグネシウム粒子、
5:溶融物容器、
6:溶融酸化物の流れ、
7:ノズル、
8:パイプ、
9:コンプレッサー、
10:球形粒子

Claims (5)

  1. 酸化鉄を14〜50質量%含み、かつ、含有される酸化カルシウム、酸化マンガン、および、酸化マグネシウムが当該酸化鉄と、固溶してフェライト鉱物相を形成しており、当該酸化鉄の酸化第一鉄と酸化第二鉄の質量比率が1対1.2〜1対6.5である球形粒子であることを特徴とする磁性細骨材。
  2. 平均粒子径が0.5〜1.5ミリメートルの球形粒子からなる請求項1に記載の磁性細骨材。
  3. 酸化鉄とともに、酸化カルシウム、酸化マンガン、および、酸化マグネシウムを含む酸化物の融体中に、他の鉱物相の微粒子が懸濁している状態である、流動性がある複合酸化物に、気流を当てて凝固させて製造したことを特徴とする請求項1に記載の磁性細骨材。
  4. 製鋼用転炉で生成した、一部が溶融しているスラグに空気の気流を当てて凝固させることにより製造した球形粒子であることを特徴とする請求項3に記載の磁性細骨材。
  5. モルタル、または、コンクリートセメントの1立方メートル中に請求項2に記載の磁性細骨材を110kg以上混合して、固化させたことを特徴とする磁性セメント固化体。
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