JP2004066246A - 球面バニッシュ転造丸ダイス、及び、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸状素材に圧接されその軸状素材の球状部外周にバニッシュ加工を施すバニッシュ加工面3は、その表面にタングステンカーバイトを主体とする微粒状金属が溶射されることによって、非常に硬質な超硬合金層3aが形成されている。よって、球面バニッシュ転造丸ダイス1は、バニッシュ加工に必要な剛性強度が確保されているので、丸ダイス本体2をダイス鋼で構成することができる。ダイス鋼は、従来使用されていた超硬材料に比べて安価かつ加工が容易である。その結果、丸ダイス本体2の材料コスト及び加工コストが低減され、その分、球面バニッシュ転造丸ダイス1全体としての製品コストを低減することができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、球面バニッシュ転造丸ダイスに関し、特に、材料コスト及び加工コストを低減して、その分、製品コストを低減することができる球面バニッシュ転造丸ダイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、自動車の操舵装置の連結部には、ロッド部の先端に設けられた球状のボール部をボールハウジングで受け、角変位可能な自在継ぎ手として構成されるボールジョイントが使用されている。
【0003】
このボールジョイントは、一般に、円柱状の棒状素材に冷間鍛造成形を施し、ボール部とロッド部とからなる鍛造成形品を形成し、この鍛造成形品を調質(焼き入れ、焼き鈍し)した後、ボール部を切削加工により所定球状に成形し、更に、ボール部の表面を所定の表面粗さまで平滑化して製造される。
【0004】
ここで、ボール部の平滑化は、球面バニッシュ転造丸ダイスを使用したバニッシュ加工により行われる。球面バニッシュ転造丸ダイスには、その外周面に球面状の押圧面(バニッシュ加工面)が形成されており、この押圧面をボール部の表面に押圧しつつ滑動させる。これにより、ボール部は、その表面の凸部がつぶれると共に凹部が埋められ、その球状の表面が平滑化されるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスは、丸ダイス本体と押圧面とが一体の工具材料、即ち、超硬合金からなるソリッドダイス(むくダイス)として構成されていた。超硬合金は高価であり、また、加工が困難であるため、丸ダイス本体の材料コストおよび加工コストが高くなってしまい、その結果、球面バニッシュ転造丸ダイス全体としての製品コストが高くなるという問題点があった。
【0006】
また、超硬合金からなる球面バニッシュ転造丸ダイスは、その重量が重くなるため、取り扱い難く、運搬等の作業効率が低下するという問題点があった。更に、球面バニッシュ転造丸ダイスの押圧面に加工不良が発生した場合には、その修正がほとんど不可能であるため、ソリッドダイスとして構成された球面バニッシュ転造丸ダイス全体を廃棄せざる得ず、それまでの加工作業が無駄になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、材料コスト及び加工コストを低減して、その分、製品コストを低減することができる球面バニッシュ転造丸ダイスを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1記載の球面バニッシュ転造丸ダイスは、丸ダイス本体と、その丸ダイス本体の外周面に断面視略円弧状に形成されるバニッシュ加工面とを備え、そのバニッシュ加工面に当接された被転造素材の外周面を押圧して球面状にバニッシュ加工するものであり、前記丸ダイス本体は、ダイス鋼で構成され、前記バニッシュ加工面は、その表面にタングステンカーバイトを主体として構成される微粒状金属が溶射され超硬合金層が形成されている。
【0009】
請求項2記載の球面バニッシュ転造丸ダイスは、請求項1記載の球面バニッシュ転造丸ダイスにおいて、前記バニッシュ加工面の表面に形成される超硬合金層の厚さが略0.05mm以上、且つ、略0.7mm以下の範囲とされている。
【0010】
請求項3記載の球面バニッシュ転造丸ダイスの製造方法は、丸ダイス本体と、その丸ダイス本体の外周面に断面視略円弧状に形成されるバニッシュ加工面とを備え、そのバニッシュ加工面に当接された被転造素材の外周面を押圧して球面状にバニッシュ加工する球面バニッシュ転造丸ダイスを製造する方法であり、ダイス鋼で構成される丸ダイス本体の外周面に断面視略円弧状のバニッシュ加工面を形成する形成工程と、その形成工程により形成されたバニッシュ加工面の表面にタングステンカーバイトを主体として構成される微粒状金属を溶射して超硬合金層を形成する溶射工程と、その溶射工程により形成された超硬合金層を研削してバニッシュ加工面を所定寸法の断面視略円弧状に仕上げる研削工程とを備えている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施例である球面バニッシュ転造丸ダイス1の正面図であり、図1(b)は、図1(a)の側面図である。
【0012】
球面バニッシュ転造丸ダイス1は、ローラ式転造盤(図示せず)の主軸に回転可能に装着され、軸状素材の球状部外周面を球面状にバニッシュ加工するための工具であり、そのバニッシュ加工は、軸状素材の球状部を一対の球面バニッシュ転造丸ダイス1の外周面に圧接した状態で行われる。
【0013】
球面バニッシュ転造丸ダイス1は、丸ダイス本体2と、その丸ダイス本体2の外周側に形成されるバニッシュ加工面3とから主に構成されている。丸ダイス本体2は、球面バニッシュ転造丸ダイス1の骨格をなす部材であり、図1(a),(b)に示すように、ダイス鋼で略円環状に形成されている。
【0014】
ここで、後述するように、軸状素材の外周面を押圧してバニッシュ加工を施す部位(バニッシュ加工面3)には、溶射加工により超硬合金層が形成され、その剛性強度が確保されているので、丸ダイス本体2には、安価で加工性に優れるダイス鋼が使用されている。なお、本実施例では、ダイス鋼としてJIS−SKD2を使用した。
【0015】
丸ダイス本体2の内周には、穴部2aが設けられている。この穴部2aは、ローラ式転造盤(図示せず)の主軸を挿通するための部位であり、略円柱状の空洞状に形成されている。また、この穴部2aの内周面における一箇所には、正面視略コ字状の凹部であるキー溝2bが凹設されており、このキー溝には、ローラ式転造盤の主軸に係合するキー(図示せず)が填め込まれる。
【0016】
丸ダイス本体2の外周には、バニッシュ加工面3が設けられている。このバニッシュ加工面3は、軸状素材の球状部外周面を押圧してバニッシュ加工を施すための部位であり、丸ダイス本体2の外周面全域にわたって連続して設けられている。ここで、バニッシュ加工面3の詳細について図2を参照して説明する。
【0017】
図2は、図1(a)のII−II線における球面バニッシュ転造丸ダイス1の断面図である。バニッシュ加工面3は、図2に示すように、軸状素材の球状部に対応する断面視略円弧状に形成されており、その表面には、微粒状金属が溶射されて硬質な超硬合金層3aが形成されている。よって、球面バニッシュ転造丸ダイス1は、バニッシュ加工時の加工負荷に耐え得ると共にバニッシュ加工面3の耐摩耗性を向上させることができる。
【0018】
また、このようにバニッシュ加工面3の表面に超硬合金層3aを形成することにより、かかる超硬合金層3aが、例えば、長期の使用により摩耗や損壊等した場合には、かかる超硬合金層3aを除去した後に再度微粒状金属を溶射することにより超硬合金層3a、即ち、バニッシュ加工面3を再生することができる。よって、摩耗や損壊等が発生した場合でも、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスのように使い捨てとすることなく、球面バニッシュ転造丸ダイス1を再利用(リサイクル)することができる。
【0019】
なお、バニッシュ加工面3に溶射される微粒状金属は、本実施例では、タングステンカーバイト(WC)を主体に構成されており、バインダー(結合材)として、コバルト(Co)が含有されている。また、この微粒状金属の組成比は、タングステンカーバイト(WC)が略88%、コバルト(Co)が略12%とされている。但し、この組成比は、一例であり、適宜変更することができる。
【0020】
また、バニッシュ加工面3の表面に形成される超硬合金層3aの厚さは、略0.05mmから略0.7mmの範囲とすることが好ましい。超硬合金層3aが薄すぎると、バニッシュ加工時に必要な加工面強度を確保できなくなり、高精度な加工が困難となるからであり、一方、超硬合金層3aが厚過ぎると、超硬合金層3aがバニッシュ加工時に剥がれてしまうからである。なお、本実施例では、超硬合金層3aの厚さが平均略0.5mmとされている。
【0021】
ここで、超硬合金層3aは、図2に示すように、丸ダイス本体2の外周面(図2上側)において、バニッシュ加工面3の表面のみに形成され、その他の外周面には形成されていない。このように、微粒状金属の溶射範囲を限定することにより、微粒状金属の材料コストや溶射コストを低減することができると共に、加工が困難な超硬合金層3aの面積が減少されるので、研削による仕上げ工程における加工コストを低減することができ、その分、球面バニッシュ転造丸ダイス1全体としての製品コストを低減することができる。
【0022】
次に、上記のように構成された球面バニッシュ転造丸ダイス1の製造方法について説明する。まず、丸ダイス本体2の材料となる丸棒材を所定の大きさに切断し、外径、幅、穴部3a、バニッシュ加工面3が切削又は研削により荒仕上げされる。また、穴部3aには、キー溝3bがブローチ盤により加工される(図1(a),(b)参照)。
【0023】
丸ダイス本体2の材料となる丸棒材は、上述したように、ダイス鋼から構成されるので、超硬合金と比較して安価かつ加工が容易である。そのため、超硬合金で構成されていた従来の球面バニッシュ転造丸ダイスと比較して、本実施例の球面バニッシュ転造丸ダイス1では、丸ダイス本体2の材料コスト及び加工コストが大幅に低減される。また、ダイス鋼で構成される丸ダイス本体2は、超硬合金で構成される場合と比較して重量が略1/2に軽量化されるので、運搬等が容易となり、その分、作業効率を向上することができる。
【0024】
荒仕上げされた丸ダイス本体2は、焼き入れや焼き戻し等の熱処理が施された後、バニッシュ加工面3に微粒状金属が溶射され、超硬合金層3aが形成される。その後、丸ダイス本体2は、研削又は切削による仕上げ加工が行われ、外径、幅、内径、バニッシュ加工面3が所定寸法に仕上げられる(図2参照)。なお、必要に応じて、イオンチッカ処理等により穴部3aやキー溝3b等の表面処理が行われる。
【0025】
ここで、球面形状を有するバニッシュ加工面3の研削加工は困難であり、加工不良が発生し易い。超硬合金からソリッドダイスとして構成されていた従来の球面バニッシュ転造丸ダイスでは、加工不良、例えば、仕上がり予定寸法よりもバニッシュ加工面を削り過ぎた場合には、その修正が不可能であるが故に、製品(丸ダイス本体)全体を廃棄せざる得ず、それまでの製造工程が全て無駄になってしまっていた。
【0026】
しかし、本実施例におけるバニッシュ加工面3は、微粒状金属の溶射により形成された超硬合金層3aを研削して所定寸法に仕上げるよう構成されている。よって、この研削加工において加工不良が発生した場合でも、かかる超硬合金層3aを除去し、その後、微粒状金属を再度溶射することにより超硬合金層3aを再生することができる。従って、この再生された超硬合金層3aを研削し直すことにより、バニッシュ加工面3を容易に修正することができるので、丸ダイス本体2を廃棄したり、それまでの製造工程が無駄となるといった不具合を回避することができる。
【0027】
次に、図3を参照して超硬合金層3aを形成するための微粒状金属の溶射方法について説明する。図3は、溶射装置10の断面図であり、理解を容易とするために、溶射装置10や各種材料のタンク等が模式的に図示されている。また、図3中の矢印は、各種材料等の供給方向を表している。
【0028】
溶射装置10は、いわゆる高速フレーム溶射装置と称されるものであり、微粒状金属を高速で噴射させ、被溶射体(バニッシュ加工面3)の表面に超硬合金層3aを形成するための装置である。この溶射装置10は、主に、チャンバー室11とノズル部12とを備えている。チャンバー室11は、燃料タンク13及び助燃材タンク14から供給される燃料(例えば、灯油)及び助燃材(例えば、酸素)を熱源として、高燃焼圧力を形成するための空間である。チャンバー室11の一端には、ノズル部12が連設されており、チェンバー室11内で形成された高燃焼圧力は、高速ガスジェットとして、ノズル部12からバニッシュ加工面3に向かって噴射される。
【0029】
微粒状金属は、溶射材料タンク15からノズル部12の噴射通路内へ供給され、高速ガスジェットの流れの中に混入される。その結果、微粒状金属は、ノズル部12の噴射口に臨んで配設されたバニッシュ加工面3の表面に高速で吹きつけられ、バニッシュ加工面3の表面には、圧着された微粒状金属によって超硬合金層3a(図3のハッチング部分)が形成される。なお、バニッシュ加工面3の全域に超硬合金層3aが形成された後は、研削砥石による仕上げ加工が超硬合金層3aに施され、所定寸法に仕上げられる。
【0030】
ノズル部12から噴射される高速ガスジェットは、マッハ2〜マッハ6(略700m/s〜略2100m/s)という超高速状態となっている。よって、この高速ガスジェットに混入された微粒状金属は、略350m/s〜略1000m/sという高速の粒子速度でバニッシュ加工面3の表面に吹きつけられるので、バニッシュ加工面3の表面に、高い密着力を有し緻密な超硬合金層3aを形成することができる。
【0031】
また、ノズル部12から噴射される高速ガスジェットは、ノズル部12の近傍では高温となっているが、輻射によって急速に熱エネルギーが発散されるので、被溶射体(バニッシュ加工面3)を低温(略200°C〜略250°C程度)に保つことができる。よって、被溶射体を過度に加熱させることがないので、熱ひずみ等の熱による悪影響を防止することができる。
【0032】
以上説明したように、バニッシュ加工面3の表面には、微粒状金属が溶射されることによって、非常に硬質な超硬合金層3aが形成される。よって、球面バニッシュ転造丸ダイス1は、バニッシュ加工に必要な剛性強度を確保することができるので、丸ダイス本体2をダイス鋼で構成することができる。ダイス鋼は、超硬合金に比べて安価かつ加工が容易である。その結果、丸ダイス本体2の材料コスト及び加工コストが低減され、その分、球面バニッシュ転造丸ダイス1全体としての製品コストを低減することができるのである。
【0033】
具体的には、本実施例における球面バニッシュ転造丸ダイス1は、超硬合金からソリッドダイスとして構成された従来のものと比較して、製品コストを略1/5に低減することができた。
【0034】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定される物ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0035】
例えば、本実施例では、丸ダイス本体2がダイス鋼(SKD)により構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるわけではなく、丸ダイス本体2を他の工具鋼、例えば、炭素工具鋼(SK)、合金工具鋼(SKS,SKT)、高速度鋼(SKH)、軸受鋼(SUJ)等により構成することは当然可能である。
【0036】
本実施例では、バニッシュ加工面3に溶射される微粒状金属がいわゆるWC−Co合金で構成されたが、少なくともタングステンカーバイト(WC)を主体に構成されておれば良く、かかる微粒状金属をWC−Co−Cr合金やWC−Cr−Ni合金等で構成することは当然可能である。
【0037】
【発明の効果】請求項1記載の球面バニッシュ転造丸ダイスによれば、丸ダイス本体がダイス鋼で構成されている。よって、超硬合金からなる従来の球面バニッシュ転造丸ダイスと比較して、丸ダイス本体の材料コストおよび加工コストを低減することができるので、その分、球面バニッシュ転造丸ダイス全体としての製品コストを低減することができるという効果がある。同様に、球面バニッシュ転造丸ダイスの製品重量が軽量化されるので、運搬時等の作業効率を向上させることができるという効果がある。
【0038】
また、バニッシュ加工面は、その表面にタングステンカーバイトを主体として構成される微粒状金属が溶射され超硬合金層が形成されているので、非常に硬質である。その結果、バニッシュ加工時の加工負荷に耐え得ると共に耐摩耗性を向上させることができるので、母材(丸ダイス本体)をダイス鋼で構成しつつも、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスと同等の高い加工性能と工具寿命とを得ることができるという効果がある。
【0039】
更に、このようにバニッシュ加工面の表面に超硬合金層を形成することにより、かかる超硬合金層が、例えば、長期の使用により摩耗や損壊した場合、或いは、バニッシュ加工面の加工不良が発生した場合などでも、かかる超硬合金層を除去した後に再度微粒状金属を溶射することにより超硬合金層(バニッシュ加工面)を再生することができる。よって、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスのように使い捨てとすることなく、球面バニッシュ転造丸ダイスを再利用(リサイクル)することができるという効果がある。
【0040】
請求項2記載の球面バニッシュ転造丸ダイスによれば、請求項1記載の球面バニッシュ転造丸ダイスの奏する効果に加え、バニッシュ加工面の表面に形成される超硬合金層の厚さは、略0.05mm以上とされているので、バニッシュ加工時に必要な加工面強度を確保して、高精度な加工を行うことができるという効果がある。一方、超硬合金層の最大厚さは、略0.7mm以下とされているので、その剥離強度を確保して、超硬合金層がバニッシュ加工時に剥がれてしまうことを防止することができるという効果がある。
【0041】
請求項3記載の球面バニッシュ転造丸ダイスの製造方法によれば、形成工程においてバニッシュ加工面が形成される丸ダイス本体は、ダイス鋼で構成されているので、超硬合金と比較して材料コストが安価であり、且つ、加工が容易である。よって、超硬合金からなる従来の球面バニッシュ転造丸ダイスと比較して、丸ダイス本体の材料コストおよび加工コストを低減することができるので、その分、球面バニッシュ転造丸ダイス全体としての製品コストを低減することができるという効果がある。同様に、球面バニッシュ転造丸ダイスの製品重量が軽量化されるので、運搬時等の作業効率を向上することができるという効果がある。
【0042】
また、形成工程により形成されたバニッシュ加工面の表面には、溶射工程によりタングステンカーバイトを主体として構成される微粒状金属が溶射され超硬合金層が形成されるので、非常に硬質なバニッシュ加工面を得ることができる。その結果、バニッシュ加工時の加工負荷に耐え得ると共に耐摩耗性を向上させることができるので、母材(丸ダイス本体)をダイス鋼で構成しつつも、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスと同等の高い加工性能と工具寿命とを得ることができるという効果がある。
【0043】
更に、バニッシュ加工面は、溶射工程により形成された超硬合金層を研削工程により研削して所定寸法に仕上げられる。よって、研削工程において加工不良が発生した場合でも、かかる超硬合金層を除去した後に再度溶射工程を行って微粒状金属を溶射することによって超硬合金層(バニッシュ加工面)を再生することができる。その結果、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスのように、バニッシュ加工面の加工不良が修正不可能なものとなっても廃棄されることなく、球面バニッシュ転造丸ダイスを容易に修正することができるという効果がある。
【0044】
また、超硬合金層が、例えば、長期の使用により摩耗や損壊した場合でも、かかる超硬合金層を除去した後に再度微粒状金属を溶射することにより超硬合金層(バニッシュ加工面)を再生することができる。よって、従来の球面バニッシュ転造丸ダイスのように使い捨てとすることなく、球面バニッシュ転造丸ダイスを再利用(リサイクル)することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である球面バニッシュ転造丸ダイスを示す図であり、(a)は球面バニッシュ転造丸ダイスの正面図であり、(b)は球面バニッシュ転造丸ダイスの側面図である。
【図2】図1(a)のII−II線における球面バニッシュ転造丸ダイスの断面図である。
【図3】溶射装置の断面図である。
【符号の説明】
1 球面バニッシュ転造丸ダイス
2 丸ダイス本体
3 バニッシュ加工面
3a 超硬合金層
Claims (3)
- 丸ダイス本体と、その丸ダイス本体の外周面に断面視略円弧状に形成されるバニッシュ加工面とを備え、そのバニッシュ加工面に当接された被転造素材の外周面を押圧して球面状にバニッシュ加工する球面バニッシュ転造丸ダイスにおいて、
前記丸ダイス本体は、ダイス鋼で構成され、
前記バニッシュ加工面は、その表面にタングステンカーバイトを主体として構成される微粒状金属が溶射され超硬合金層が形成されていることを特徴とする球面バニッシュ転造丸ダイス。 - 前記バニッシュ加工面の表面に形成される超硬合金層の厚さは、略0.05mm以上、且つ、略0.7mm以下の範囲とされていることを特徴とする請求項1記載の球面バニッシュ転造丸ダイス。
- 丸ダイス本体と、その丸ダイス本体の外周面に断面視略円弧状に形成されるバニッシュ加工面とを備え、そのバニッシュ加工面に当接された被転造素材の外周面を押圧して球面状にバニッシュ加工する球面バニッシュ転造丸ダイスの製造方法において、
ダイス鋼で構成される丸ダイス本体の外周面に断面視略円弧状のバニッシュ加工面を形成する形成工程と、
その形成工程により形成されたバニッシュ加工面の表面にタングステンカーバイトを主体として構成される微粒状金属を溶射して超硬合金層を形成する溶射工程と、
その溶射工程により形成された超硬合金層を研削してバニッシュ加工面の表面形状を所定寸法の断面視略円弧状に仕上げる研削工程とを備えていることを特徴とする球面バニッシュ転造丸ダイスの製造方法。
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Cited By (2)
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US7278286B2 (en) | 2005-07-26 | 2007-10-09 | Kabushikikaisha Sanmei Seisakusho | Rolling die and a method of making a rod with a ball portion |
JP2010532715A (ja) * | 2007-07-10 | 2010-10-14 | ファウ・ウント・エム・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング | 金属製管状ワークを熱間鍛造するための鍛造芯金 |
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