JP2004066120A - 運転支援装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】総括酸素移動容量係数の測定時間が不要で、季節の変動にも短時間で関係式が得られる予測精度の高い運転支援装置を得る。
【解決手段】本発明の運転支援装置は、下水処理場の水質データを蓄積するデータ蓄積部(1)と、施設条件設定部(2)と、運転条件を設定する運転条件設定部(3)と、風量を設定する風量設定部(6)と、水質を予測する予測処理部(7)と、最適な運転をするための操作変数を選択する最適運転選択部(8)と、最適運転選択部からの出力値を実プラントの運転設備に送る操作変数の設定値を設定する操作変数設定部(9)とを備え、データ蓄積部(1)と予測処理部(7)との間に、関連する変数間の時間差を調整する時間差調整部(4)と、溶存酸素濃度に影響を与える変数から主成分モデルを作成し、そのモデルから溶存酸素濃度を演算する主成分処理部(5)とを備えた構成である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の運転支援装置は、下水処理場の水質データを蓄積するデータ蓄積部(1)と、施設条件設定部(2)と、運転条件を設定する運転条件設定部(3)と、風量を設定する風量設定部(6)と、水質を予測する予測処理部(7)と、最適な運転をするための操作変数を選択する最適運転選択部(8)と、最適運転選択部からの出力値を実プラントの運転設備に送る操作変数の設定値を設定する操作変数設定部(9)とを備え、データ蓄積部(1)と予測処理部(7)との間に、関連する変数間の時間差を調整する時間差調整部(4)と、溶存酸素濃度に影響を与える変数から主成分モデルを作成し、そのモデルから溶存酸素濃度を演算する主成分処理部(5)とを備えた構成である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は都市下水や産業廃水のように、汚水を浄化する活性汚泥法、嫌気・好気汚泥処理法による運転支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市下水処理、工場廃水などの処理プロセスは、微生物の動作状態、気候などから運転方法を決定する必要がある。図2は従来の運転支援装置とその周辺との接続状況を示すブロック図である。図において、1はデータ蓄積部、2は施設条件設定部、3は運転条件設定部、6は風量設定部、7は予測処理部、8は最適運転選択部、9は操作変数設定部、10は総括酸素移動容量係数測定部、11は溶存酸素演算部である。
先ず、下水処理場の処理概要を説明する。
下水処理場では、流入した下水は、最初沈殿池100、反応槽101、最終沈殿池102の順に流れて処理される。汚濁物質を含む下水は、最初沈澱池100に導入され、汚濁物質の中の沈降しやすいものを沈降分離して上澄水を反応槽101に流出する。反応槽101には最終沈澱池102の汚泥の一部が返送汚泥ポンプによって返送されており、反応槽101はその返送汚泥と最初沈殿池100の上澄水を処理する。反応槽101では、ブロワー(図示せず)から圧送された空気が曝気槽内の散気管によって放出されており、汚濁物質は活性汚泥により吸着、分解されて最終沈澱池102に導かれる。最終沈澱池102では活性汚泥を沈降分離し、沈降汚泥は余剰汚泥ポンプ(図示せず)により汚泥処理系(図示せず)に排出され、清澄水は処理水として滅菌槽(図示せず)を経て放流される。
次にこの運転支援システムについて説明する。
データ蓄積部1は、下水処理場の水質予測に必要な情報を収集・蓄積し、総括酸素移動容量係数設定部10へデータを出力する。ここで収集されるデータはリン酸態リン濃度、硝酸態窒素濃度、アンモニア態窒素濃度、Total−COD、溶解性CODなど水質情報と流量、風量、溶存酸素濃度などの運転情報である。
施設条件設定部2は、水質の予測に必要な反応槽の体積、管路などの処理場土木構造を設定し、予測処理部7へ出力する。
運転条件設定部3は、プラントを動作させるために必要な運転指標である返送率、SRTなどをオペレータの判断で設定する。
風量設定部6は、現在の風量を継続した時の水質状態を把握するために現在の風量を入力、または種々の運転方法を検討するため、最適水質になると思われる風量を入力する。
総括酸素移動容量係数設定部10は、溶存酸素濃度と酸素利用速度の測定値により総括酸素移動容量係数を設定する。好気タンクの所定位置で、時間を変えて数回混合液を採取し、溶存酸素濃度と酸素利用速度を測定する。好気タンク内において、酸素利用速度と総括酸素移動容量係数には、次の(1)式が成り立つ。
【0003】
【数1】
【0004】
Cs:好気タンク内混合液の飽和溶存酸素濃度(mg/l)
C:好気タンク内混合液の溶存酸素濃度(mg/l)
rr:好気タンク内混合液の酸素利用速度(mg/l・h)
KLa:総括酸素移動容量係数(1/h)
本測定では好気タンク内は定常状態のため、dc/dt=0である。つまり、グラフの縦軸に溶存酸素濃度、横軸に酸素利用速度をプロットすると直線が得られ、その傾きの逆数が総括酸素移動容量係数となる。
溶存酸素演算部11は、総括酸素移動容量係数と風量から溶存酸素濃度を演算する。演算は(2)式にて行う。
【0005】
【数2】
【0006】
Q:必要送風量[Nm3/min]
ηD:酸素吸収効率0.1[−]
ρ:空気の密度1.29[kg/Nm3]
α:清水に対するKLa係数0.85[−]
β:清水に対する酸素飽和濃度係数0.95[−]
KLa:総括酸素移動容量係数[1/h]
V:対象槽の反応槽容積[m3]
Cs:酸素飽和濃度20℃の時[mg/l]
T:水温[℃]
予測処理部7は、データ蓄積部1に蓄積された分析データのうち、下水処理場の入口に流入する水質データと、施設条件設定部2で設定された施設の値と、運転条件設定部3で設定された条件と、溶存酸素演算部11で演算した溶存酸素濃度を入力し、反応槽内、処理水の窒素・リンなどの水質予測を行う。その予測計算に用いる式は10数個あり、その1つを例示すると、例えば発酵生成物濃度の計算はつぎの(3)式を用いて行われる。
【0007】
【数3】
【0008】
記号の意味はつぎのとおりである。
SA (i):i時点の対象タンクの発酵生成物濃度(gCOD/m3)
SA(i)R:i時点の対象タンクの化学反応による変化量を考慮に入れた発酵生成物
濃度(gN/m3)
SA(i)in:i時点の対象タンクに流入する発酵生成物濃度(gCOD/m3)
SA(i)out:i時点の対象タンクから流出する発酵生成物濃度(gCOD/m3)
V:対象タンクの体積(m3)
Qin:対象タンクへ流入する量(m3/h)
Qout:対象タンクから流出する量(m3/h)
T:対象タンクから流入・流出する時間(h)
i:シミュレーション予測間隔(h)
但し各変数は次の(4)式〜(11)式のように計算される。
【0009】
【数4】
【0010】
記号の意味はつぎのとおりである。
SA(i):i時点の対象タンクで増殖・減少した発酵生成物(gCOD/m3)
ρ5:SAによる好気的増殖(gCOD/d)
ρ7:SAによる無酸素的増殖と脱窒(gCOD/d)
ρ8:発酵(gCOD/d)
ρ10:ポリヒドロキシアルカノエートの蓄積(gCOD/d)
ρ15:ポリヒドロキシアルカノエートの分解(gCOD/d)
データ蓄積部1から入力される分析データは以下の通りである。
SO2:溶存酸素濃度(gO2/m3)
SNH4:溶解性のアンモニア濃度(gN/m3)
SNO3:溶解性の硝酸性窒素濃度(gN/m3)
SPO4:無機溶解性リン酸性リン濃度(gP/m3)
SALK:アルカリ度(mole HCO3/m3)
SF:易分解性有機物濃度(gCOD/m3)
SA:発酵生成物濃度(gCOD/m3)
XAUT:硝化菌濃度(gCOD/m3)
XH:従属栄養微生物(gCOD/m3)
XPHA:ポリヒドロキシアルカノエート(gCOD/m3)
XPP:ポリリン酸(gP/m3)
XPAO:リン酸蓄積細菌(gCOD/m3)
モデルパラメータはつぎのとおりである。
μH:基質の最大増殖速度(1/d)
ηNO3:硝酸性窒素濃度の無酸素状態の加水分解による減少係数(−)
KA:発酵生成物濃度飽和係数(gO2/m3)
KO2:酸素飽和係数(gO2/m3)
KF:易分解性基質増殖飽和係数(gCOD/m3)
KNO3:硝酸性窒素飽和係数(gN/m3)
ただし、このシミュレーションでは亜硝酸性窒素と硝酸性窒素を同じ物質として扱う。
KNH4:アンモニア飽和係数(gN/m3)
KP:リン酸性リン飽和係数(gP/m3)
KALK:アルカリ度飽和係数(mole HCO3/m3)
Kfe:SFの発酵飽和濃度(gCOD/m3)
qfe:発酵の最大速度(1/d)
KPP:ポリリン酸の飽和濃度(gPP/gPAO)
qPHA:ポリヒドロキシアルカノエート蓄積速度(gCOD/(gPAO・d)
bPHA:ポリヒドロキシアルカノエート分解速度(1/d)
予測処理部7では、上記のように硝酸性窒素だけでなく、リン酸性リン濃度、アルカリ度、アンモニア性窒素濃度なども同時に計算される。その予測結果を最適運転選択部8に出力する。
最適運転選択部8では、予測処理部7の結果がプラント運転に適しているかの判断をコスト、水質などから検討を行う。その結果がオペレータの満足したものであれば、求められた操作変数を操作変数設定部9に出力する。予測処理部7の結果が水質の基準値を超えたり、コストがかかるなど不満足なものであれば、施設条件設定部2、運転条件設定部3、風量設定部6の値を再設定し、再度予測処理部7にて水質予測を行う。
操作変数設定部9では、最適運転選択部8で求められた最適な操作変数(送風量、ポンプ台数など)を実プラントへ設定する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の運転支援装置では、反応槽に送風する空気の風量から溶存酸素濃度の算出に必要な総括酸素移動容量係数を測定することに多くの時間を要していた。そのため、一度測定した総括酸素移動容量係数を長期間使用することが多く、季節変動などへの対応が困難な状況となり、水質の予測精度に問題があった。
そこで、本発明は総括酸素移動容量係数の測定に時間を要することがなく、季節の変動にも短時間で関係式が得られる予測精度の高い運転支援装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成している。
請求項1記載の運転支援装置は、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池などの処理工程をもつ下水処理場の水質データを蓄積するデータ蓄積部(1)と、土木構造などの処理場仕様を設定する施設条件設定部(2)と、運転条件を設定する運転条件設定部(3)と、前記反応槽に注入する空気の風量を設定する風量設定部(6)と、前記データ蓄積部(1)のデータを基に水質を予測する予測処理部(7)と、最適な運転をするための操作変数を選択する最適運転選択部(8)と、前記最適運転選択部からの出力値を実プラントの運転設備に送る操作変数の設定値を設定する操作変数設定部(9)とを備えた運転支援装置において、前記データ蓄積部(1)と予測処理部(7)との間に関連する変数間の時間差を調整する時間差調整部(4)と、溶存酸素濃度に影響を与える変数から主成分モデルを作成し、そのモデルから溶存酸素濃度を演算する主成分処理部(5)とを備えたものである。
本構成によれば、風量から溶存酸素濃度を自動的に演算することができるようになり、季節変動に対応した主成分モデルおよび変換式が作成できるため、予測精度を向上させることができる。
請求項2記載の運転支援装置は、前記時間差調整部(4)は、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数間の時間差を演算する時間差演算部(41)と、前記時間差演算部で演算した時間差から変数間の時間差を修正する時間差修正部(42)とを備えたものである。
本構成によれば、溶存酸素とそれ以外の変数間の時間遅れを自動的に調整することができ、溶存酸素濃度算出時の精度が向上する。
請求項3記載の運転支援装置は、前記時間差演算部(41)は、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数の相関関係を演算する相互相関演算部(411)と、変数に一定の入力を与えた時の応答を演算するステップ応答演算部(412)の少なくとも1つを備えたものである。
本構成によれば、溶存酸素濃度を自動的に風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから演算することができるため、季節変動への対応も可能となり、溶存酸素濃度を計算する精度が向上し、溶存酸素濃度の計算時間の短縮も可能となる。
請求項4記載の運転支援装置は、前記主成分処理部(5)は、溶存酸素濃度に影響を与える変数の主成分モデルを作成する主成分モデル作成部(51)と、変数の主成分得点を演算する主成分得点演算部(52)と、前記主成分得点演算部で作成した主成分得点から溶存酸素濃度へ変換する式を作成するデータ変換式作成部(53)と、前記主成分モデル作成部で作成されたモデルと前記データ変換式作成部で作成された変換式と前記風量設定部で設定した値と前記データ蓄積部で蓄積された値とから溶存酸素濃度を演算する主成分溶存酸素演算部(54)とを備えたものである。
本構成によれば、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数間の時間差を求めることができ、変数間の関係式を構築する時に時間調整ができるため、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから溶存酸素濃度を計算する精度が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の運転支援装置の構成とその周辺との接続状況を示すブロック図である。図において、4は時間差演算部41と時間差修正部42とからなる時間差調整部、5は主成分処理部である。
時間差演算部41は相互相関演算部411とステップ応答演算部412とからなり、主成分処理部5は主成分モデル作成部51、主成分得点変換部52、データ変換式作成部53、主成分溶存酸素演算部54からなる。なお、同じ部品には同じ符号を付しており、従来技術の項で説明したものは説明を省略する。
つぎに動作について述べる。
▲1▼ データ蓄積部1は、下水プロセスの反応槽から処理水までの水質予測に必要な情報を収集・蓄積し、時間差演算部4へデータを出力する。収集されるデータは従来と同じである。
▲2▼ 施設条件設定部2および運転条件設定部3は、従来と同じ機能である。
▲3▼ 時間差調整部4は、データ処理を行う前に変数間の時間差を調整する。つまり、風量が増加して溶存酸素濃度が増加するまでは、数十分の時間がかかるため、データ処理においてデータを同一に取り扱うには時間差を算出し、時間差の影響を除去することが必要となる。
時間差演算部41は、相互相関演算部41とステップ応答演算部412からなる。相互相関演算部411は、溶存酸素濃度と生物化学的酸素要求量、活性汚泥浮遊物質、送風量の相互相関を算出する演算部である。つまり、風量が増加して溶存酸素濃度が増加するまで時間がかかるため、データ処理においてデータを同一に取り扱うには時間差の算出が必要となる。時間差は相互相関関数を使用して求める。長さNの多変量時系列[y1(j),・・・yN(j)](j=1,・・・,l)が観測された時μ(i)、相互共分散関数Ck(i,j)および相互相関関数Rk(i,j)の推定値は(12)式〜(14)式を用いて求められる。
先ず、各時系列データの平均値を算出する。
【0014】
【数5】
【0015】
つぎに、相互共分散関数を(13)式にて算出する。
【0016】
【数6】
【0017】
相互相関関数は(14)式にて算出する。
【0018】
【数7】
【0019】
相互共分散関数、相互相関関数と呼ばれる。
溶存酸素濃度と送風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などの相互相関関数は上記の式で表現することができる。溶存酸素濃度と送風量の相互相関関数の値が最も高い点が、変数間に相関があるとみなせるため、溶存酸素濃度と送風量の時間差の調整を行う場合の時間となる。
ステップ応答演算部412は、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などと溶存酸素濃度のステップ応答を演算する。ステップ応答は風量をステップ状に変化させ、その時の溶存酸素濃度の変化を見る。風量を変化させて溶存酸素濃度が変化し、しばらくすると一定になる。一定になった時の時間をステップ応答時間とする。
時間差修正部42は、相互相関演算部411またはステップ応答演算部412から算出した時間差から、対象データ間の時間差の影響を削除するようにデータ修正を行う。つまり、溶存酸素濃度と送風量のデータを時間差から(15)式のように調整する。
【0020】
【数8】
【0021】
DO(i):i時刻の溶存酸素濃度
AQ(i):i時刻の風量
t:溶存酸素濃度と送風量の相互相関係数が最も高い時間差
▲4▼ 主成分処理部5は、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などからそれらの代表値である主成分得点を演算し、主成分得点から溶存酸素濃度への変換式を作成して溶存酸素濃度を計算する。主成分処理部5は、主成分モデル作成部51と主成分得点作成部52とデータ変換式作成部53と主成分溶存酸素演算部54からなる。主成分モデル作成部51は、溶存酸素濃度へ影響を与える風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などを対象データとして主成分分析を行う。主成分分析は、p種類の変量をX1、X2、・・・Xp、任意の係数a1、a2、・・・apを用いて次のような1次式による総合的指標(合成変量)をつくる。
【0022】
【数9】
【0023】
ここで、a=(a1、・・・・、ap)’、X=(X1、・・・・、Xp)’である。
このように結合されたzは、p個の変量Xをよく代表していなければならない。そのための基準として主成分zの分散の最大化を行う。
以下にこの基準(主成分の分散の最大化)を用いた時の主成分分析の定式化について説明する。
p変量から(16)式により合成するときzの分散は、(15)式となる。
【0024】
【数10】
【0025】
ここにsjkはxjkとxkとの共分散、Sはsjkを(j,k)要素にもつ分散共分散行列である。(16)式のzは、p次元空間の中で原点OからあるOZ方向にz軸をとることを意味するが、そのときz座標のスケールをx1、x2・・・xp軸を同じにとることにすれば、係数a1、a2・・・apはそれぞれ直線OZの方向余弦になり、(18)式を満たす。
【0026】
【数11】
【0027】
したがって、問題は(18)式の制約条件のもとで(17)式を最大化することになる。このような制約条件つき最大化問題は、ラグランジェ乗数λを用いてつぎの(19)式を最大化する問題に変形される。
【0028】
【数12】
【0029】
(19)式をaの各要素で偏微分してゼロとおけば、(20)式のような行列Sの固有値問題を得る。
【0030】
【数13】
【0031】
Sは対称行列であり、任意のaに対してa’Sa=V(a’x)≧0より非負値であるから、p個の実数で非負の固有値λ1≧λ2≧・・・・・≧λp≧0をもつ。
各固有値ベクトルをa1、a2、a3、・・・、apとすれば(20)式より
【0032】
【数14】
【0033】
となり、λjはzj=aj’xの分散に等しくなる。
したがって分散を最大にする主成分は、最大固有値λ1に対応する固有ベクトルa1=(a11、a21、・・・、ap1)’の要素の係数として(22)式となる。
【0034】
【数15】
【0035】
(22)式を第1主成分と呼ぶ。第1主成分z1の分散はλ1で、p個の変量をよく代表する主成分になっている。
主成分得点演算部52は、前記主成分モデル作成部で求められた係数a1、a2・・・・apと現在時刻nの風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから主成分得点z(n)を算出する。
【0036】
【数16】
【0037】
データ変換式作成部53は、前記主成分得点演算部にて求めた主成分得点と溶存酸素濃度の関係式を作成する。つまり、主成分得点と溶存酸素濃度の回帰式を作成することである。回帰式は1次回帰、2次回帰、指数回帰など処理場に適した方法を選択する。一例として、一次回帰について説明する。主成分得点と溶存酸素濃度の一次回帰は(24)式のように表すことができる。
【0038】
【数17】
【0039】
Z:主成分得点
DO:溶存酸素濃度
一次回帰は、DO軸に平行な直線に沿っての距離diの平方の和(25)式を最小にするようなa,bの値を求めることになる。
【0040】
【数18】
【0041】
主成分溶存酸素演算部54は、前記主成分モデル作成部51で作成したモデルに対し、データ蓄積部に蓄積した活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などと、風量設定部で設定した風量を設定することで、それらの主成分得点zを(26)式のように求める。
【0042】
【数19】
【0043】
Z:主成分得点
AQ:風量
そして、前記データ変換式作成部52で演算した回帰モデルを適用して、主成分得点から溶存酸素濃度を(24)式のように演算する。
▲5▼ 風量設定部6は、従来と同じ機能である。
▲6▼ 予測処理部7は、データ蓄積部1に蓄積されたデータと、施設条件設定部2で設定された土木構造などのプラント仕様データと、運転条件設定部3で設定されたプラントの操作変数と、主成分処理部5で計算された溶存酸素濃度を入力し、水質モデルをベースとした処理場内の水質(窒素、リンなど)の予測を行い、その予測結果を最適運転選択部8に出力する。詳細は従来技術と同様のため省略する。
▲7▼ 最適運転選択部8および操作変数設定部9は、従来と同じ機能である。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから溶存酸素濃度を計算する計算式に主成分モデルと変換式を使用することによって、溶存酸素濃度と風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などの関係式を導き出すことができ、総括酸素移動容量係数を求める必要がなくなり、溶存酸素濃度の計算時間が短縮される。さらに、蓄積データを使用するため季節変動にも対応した溶存酸素濃度と風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などとの関係式が構築可能となることにより、予測精度が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の運転支援装置を示すブロック図である。
【図2】従来の運転支援装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 データ蓄積部
2 施設条件設定部
3 運転条件設定部
4 時間差調整部
41 時間差演算部
411 相互相関演算部
412 ステップ応答演算部
42 時間差修正部
5 主成分処理部
51 主成分モデル作成部
52 主成分得点変換部
53 データ変換式作成部
54 主成分溶存酸素演算部
6 風量設定部
7 予測処理部
8 最適運転選択部
9 操作変数設定部
10 総括酸素移動容量係数
11 溶存酸素演算部
【発明の属する技術分野】
本発明は都市下水や産業廃水のように、汚水を浄化する活性汚泥法、嫌気・好気汚泥処理法による運転支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市下水処理、工場廃水などの処理プロセスは、微生物の動作状態、気候などから運転方法を決定する必要がある。図2は従来の運転支援装置とその周辺との接続状況を示すブロック図である。図において、1はデータ蓄積部、2は施設条件設定部、3は運転条件設定部、6は風量設定部、7は予測処理部、8は最適運転選択部、9は操作変数設定部、10は総括酸素移動容量係数測定部、11は溶存酸素演算部である。
先ず、下水処理場の処理概要を説明する。
下水処理場では、流入した下水は、最初沈殿池100、反応槽101、最終沈殿池102の順に流れて処理される。汚濁物質を含む下水は、最初沈澱池100に導入され、汚濁物質の中の沈降しやすいものを沈降分離して上澄水を反応槽101に流出する。反応槽101には最終沈澱池102の汚泥の一部が返送汚泥ポンプによって返送されており、反応槽101はその返送汚泥と最初沈殿池100の上澄水を処理する。反応槽101では、ブロワー(図示せず)から圧送された空気が曝気槽内の散気管によって放出されており、汚濁物質は活性汚泥により吸着、分解されて最終沈澱池102に導かれる。最終沈澱池102では活性汚泥を沈降分離し、沈降汚泥は余剰汚泥ポンプ(図示せず)により汚泥処理系(図示せず)に排出され、清澄水は処理水として滅菌槽(図示せず)を経て放流される。
次にこの運転支援システムについて説明する。
データ蓄積部1は、下水処理場の水質予測に必要な情報を収集・蓄積し、総括酸素移動容量係数設定部10へデータを出力する。ここで収集されるデータはリン酸態リン濃度、硝酸態窒素濃度、アンモニア態窒素濃度、Total−COD、溶解性CODなど水質情報と流量、風量、溶存酸素濃度などの運転情報である。
施設条件設定部2は、水質の予測に必要な反応槽の体積、管路などの処理場土木構造を設定し、予測処理部7へ出力する。
運転条件設定部3は、プラントを動作させるために必要な運転指標である返送率、SRTなどをオペレータの判断で設定する。
風量設定部6は、現在の風量を継続した時の水質状態を把握するために現在の風量を入力、または種々の運転方法を検討するため、最適水質になると思われる風量を入力する。
総括酸素移動容量係数設定部10は、溶存酸素濃度と酸素利用速度の測定値により総括酸素移動容量係数を設定する。好気タンクの所定位置で、時間を変えて数回混合液を採取し、溶存酸素濃度と酸素利用速度を測定する。好気タンク内において、酸素利用速度と総括酸素移動容量係数には、次の(1)式が成り立つ。
【0003】
【数1】
【0004】
Cs:好気タンク内混合液の飽和溶存酸素濃度(mg/l)
C:好気タンク内混合液の溶存酸素濃度(mg/l)
rr:好気タンク内混合液の酸素利用速度(mg/l・h)
KLa:総括酸素移動容量係数(1/h)
本測定では好気タンク内は定常状態のため、dc/dt=0である。つまり、グラフの縦軸に溶存酸素濃度、横軸に酸素利用速度をプロットすると直線が得られ、その傾きの逆数が総括酸素移動容量係数となる。
溶存酸素演算部11は、総括酸素移動容量係数と風量から溶存酸素濃度を演算する。演算は(2)式にて行う。
【0005】
【数2】
【0006】
Q:必要送風量[Nm3/min]
ηD:酸素吸収効率0.1[−]
ρ:空気の密度1.29[kg/Nm3]
α:清水に対するKLa係数0.85[−]
β:清水に対する酸素飽和濃度係数0.95[−]
KLa:総括酸素移動容量係数[1/h]
V:対象槽の反応槽容積[m3]
Cs:酸素飽和濃度20℃の時[mg/l]
T:水温[℃]
予測処理部7は、データ蓄積部1に蓄積された分析データのうち、下水処理場の入口に流入する水質データと、施設条件設定部2で設定された施設の値と、運転条件設定部3で設定された条件と、溶存酸素演算部11で演算した溶存酸素濃度を入力し、反応槽内、処理水の窒素・リンなどの水質予測を行う。その予測計算に用いる式は10数個あり、その1つを例示すると、例えば発酵生成物濃度の計算はつぎの(3)式を用いて行われる。
【0007】
【数3】
【0008】
記号の意味はつぎのとおりである。
SA (i):i時点の対象タンクの発酵生成物濃度(gCOD/m3)
SA(i)R:i時点の対象タンクの化学反応による変化量を考慮に入れた発酵生成物
濃度(gN/m3)
SA(i)in:i時点の対象タンクに流入する発酵生成物濃度(gCOD/m3)
SA(i)out:i時点の対象タンクから流出する発酵生成物濃度(gCOD/m3)
V:対象タンクの体積(m3)
Qin:対象タンクへ流入する量(m3/h)
Qout:対象タンクから流出する量(m3/h)
T:対象タンクから流入・流出する時間(h)
i:シミュレーション予測間隔(h)
但し各変数は次の(4)式〜(11)式のように計算される。
【0009】
【数4】
【0010】
記号の意味はつぎのとおりである。
SA(i):i時点の対象タンクで増殖・減少した発酵生成物(gCOD/m3)
ρ5:SAによる好気的増殖(gCOD/d)
ρ7:SAによる無酸素的増殖と脱窒(gCOD/d)
ρ8:発酵(gCOD/d)
ρ10:ポリヒドロキシアルカノエートの蓄積(gCOD/d)
ρ15:ポリヒドロキシアルカノエートの分解(gCOD/d)
データ蓄積部1から入力される分析データは以下の通りである。
SO2:溶存酸素濃度(gO2/m3)
SNH4:溶解性のアンモニア濃度(gN/m3)
SNO3:溶解性の硝酸性窒素濃度(gN/m3)
SPO4:無機溶解性リン酸性リン濃度(gP/m3)
SALK:アルカリ度(mole HCO3/m3)
SF:易分解性有機物濃度(gCOD/m3)
SA:発酵生成物濃度(gCOD/m3)
XAUT:硝化菌濃度(gCOD/m3)
XH:従属栄養微生物(gCOD/m3)
XPHA:ポリヒドロキシアルカノエート(gCOD/m3)
XPP:ポリリン酸(gP/m3)
XPAO:リン酸蓄積細菌(gCOD/m3)
モデルパラメータはつぎのとおりである。
μH:基質の最大増殖速度(1/d)
ηNO3:硝酸性窒素濃度の無酸素状態の加水分解による減少係数(−)
KA:発酵生成物濃度飽和係数(gO2/m3)
KO2:酸素飽和係数(gO2/m3)
KF:易分解性基質増殖飽和係数(gCOD/m3)
KNO3:硝酸性窒素飽和係数(gN/m3)
ただし、このシミュレーションでは亜硝酸性窒素と硝酸性窒素を同じ物質として扱う。
KNH4:アンモニア飽和係数(gN/m3)
KP:リン酸性リン飽和係数(gP/m3)
KALK:アルカリ度飽和係数(mole HCO3/m3)
Kfe:SFの発酵飽和濃度(gCOD/m3)
qfe:発酵の最大速度(1/d)
KPP:ポリリン酸の飽和濃度(gPP/gPAO)
qPHA:ポリヒドロキシアルカノエート蓄積速度(gCOD/(gPAO・d)
bPHA:ポリヒドロキシアルカノエート分解速度(1/d)
予測処理部7では、上記のように硝酸性窒素だけでなく、リン酸性リン濃度、アルカリ度、アンモニア性窒素濃度なども同時に計算される。その予測結果を最適運転選択部8に出力する。
最適運転選択部8では、予測処理部7の結果がプラント運転に適しているかの判断をコスト、水質などから検討を行う。その結果がオペレータの満足したものであれば、求められた操作変数を操作変数設定部9に出力する。予測処理部7の結果が水質の基準値を超えたり、コストがかかるなど不満足なものであれば、施設条件設定部2、運転条件設定部3、風量設定部6の値を再設定し、再度予測処理部7にて水質予測を行う。
操作変数設定部9では、最適運転選択部8で求められた最適な操作変数(送風量、ポンプ台数など)を実プラントへ設定する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の運転支援装置では、反応槽に送風する空気の風量から溶存酸素濃度の算出に必要な総括酸素移動容量係数を測定することに多くの時間を要していた。そのため、一度測定した総括酸素移動容量係数を長期間使用することが多く、季節変動などへの対応が困難な状況となり、水質の予測精度に問題があった。
そこで、本発明は総括酸素移動容量係数の測定に時間を要することがなく、季節の変動にも短時間で関係式が得られる予測精度の高い運転支援装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成している。
請求項1記載の運転支援装置は、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池などの処理工程をもつ下水処理場の水質データを蓄積するデータ蓄積部(1)と、土木構造などの処理場仕様を設定する施設条件設定部(2)と、運転条件を設定する運転条件設定部(3)と、前記反応槽に注入する空気の風量を設定する風量設定部(6)と、前記データ蓄積部(1)のデータを基に水質を予測する予測処理部(7)と、最適な運転をするための操作変数を選択する最適運転選択部(8)と、前記最適運転選択部からの出力値を実プラントの運転設備に送る操作変数の設定値を設定する操作変数設定部(9)とを備えた運転支援装置において、前記データ蓄積部(1)と予測処理部(7)との間に関連する変数間の時間差を調整する時間差調整部(4)と、溶存酸素濃度に影響を与える変数から主成分モデルを作成し、そのモデルから溶存酸素濃度を演算する主成分処理部(5)とを備えたものである。
本構成によれば、風量から溶存酸素濃度を自動的に演算することができるようになり、季節変動に対応した主成分モデルおよび変換式が作成できるため、予測精度を向上させることができる。
請求項2記載の運転支援装置は、前記時間差調整部(4)は、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数間の時間差を演算する時間差演算部(41)と、前記時間差演算部で演算した時間差から変数間の時間差を修正する時間差修正部(42)とを備えたものである。
本構成によれば、溶存酸素とそれ以外の変数間の時間遅れを自動的に調整することができ、溶存酸素濃度算出時の精度が向上する。
請求項3記載の運転支援装置は、前記時間差演算部(41)は、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数の相関関係を演算する相互相関演算部(411)と、変数に一定の入力を与えた時の応答を演算するステップ応答演算部(412)の少なくとも1つを備えたものである。
本構成によれば、溶存酸素濃度を自動的に風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから演算することができるため、季節変動への対応も可能となり、溶存酸素濃度を計算する精度が向上し、溶存酸素濃度の計算時間の短縮も可能となる。
請求項4記載の運転支援装置は、前記主成分処理部(5)は、溶存酸素濃度に影響を与える変数の主成分モデルを作成する主成分モデル作成部(51)と、変数の主成分得点を演算する主成分得点演算部(52)と、前記主成分得点演算部で作成した主成分得点から溶存酸素濃度へ変換する式を作成するデータ変換式作成部(53)と、前記主成分モデル作成部で作成されたモデルと前記データ変換式作成部で作成された変換式と前記風量設定部で設定した値と前記データ蓄積部で蓄積された値とから溶存酸素濃度を演算する主成分溶存酸素演算部(54)とを備えたものである。
本構成によれば、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数間の時間差を求めることができ、変数間の関係式を構築する時に時間調整ができるため、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから溶存酸素濃度を計算する精度が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の運転支援装置の構成とその周辺との接続状況を示すブロック図である。図において、4は時間差演算部41と時間差修正部42とからなる時間差調整部、5は主成分処理部である。
時間差演算部41は相互相関演算部411とステップ応答演算部412とからなり、主成分処理部5は主成分モデル作成部51、主成分得点変換部52、データ変換式作成部53、主成分溶存酸素演算部54からなる。なお、同じ部品には同じ符号を付しており、従来技術の項で説明したものは説明を省略する。
つぎに動作について述べる。
▲1▼ データ蓄積部1は、下水プロセスの反応槽から処理水までの水質予測に必要な情報を収集・蓄積し、時間差演算部4へデータを出力する。収集されるデータは従来と同じである。
▲2▼ 施設条件設定部2および運転条件設定部3は、従来と同じ機能である。
▲3▼ 時間差調整部4は、データ処理を行う前に変数間の時間差を調整する。つまり、風量が増加して溶存酸素濃度が増加するまでは、数十分の時間がかかるため、データ処理においてデータを同一に取り扱うには時間差を算出し、時間差の影響を除去することが必要となる。
時間差演算部41は、相互相関演算部41とステップ応答演算部412からなる。相互相関演算部411は、溶存酸素濃度と生物化学的酸素要求量、活性汚泥浮遊物質、送風量の相互相関を算出する演算部である。つまり、風量が増加して溶存酸素濃度が増加するまで時間がかかるため、データ処理においてデータを同一に取り扱うには時間差の算出が必要となる。時間差は相互相関関数を使用して求める。長さNの多変量時系列[y1(j),・・・yN(j)](j=1,・・・,l)が観測された時μ(i)、相互共分散関数Ck(i,j)および相互相関関数Rk(i,j)の推定値は(12)式〜(14)式を用いて求められる。
先ず、各時系列データの平均値を算出する。
【0014】
【数5】
【0015】
つぎに、相互共分散関数を(13)式にて算出する。
【0016】
【数6】
【0017】
相互相関関数は(14)式にて算出する。
【0018】
【数7】
【0019】
相互共分散関数、相互相関関数と呼ばれる。
溶存酸素濃度と送風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などの相互相関関数は上記の式で表現することができる。溶存酸素濃度と送風量の相互相関関数の値が最も高い点が、変数間に相関があるとみなせるため、溶存酸素濃度と送風量の時間差の調整を行う場合の時間となる。
ステップ応答演算部412は、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などと溶存酸素濃度のステップ応答を演算する。ステップ応答は風量をステップ状に変化させ、その時の溶存酸素濃度の変化を見る。風量を変化させて溶存酸素濃度が変化し、しばらくすると一定になる。一定になった時の時間をステップ応答時間とする。
時間差修正部42は、相互相関演算部411またはステップ応答演算部412から算出した時間差から、対象データ間の時間差の影響を削除するようにデータ修正を行う。つまり、溶存酸素濃度と送風量のデータを時間差から(15)式のように調整する。
【0020】
【数8】
【0021】
DO(i):i時刻の溶存酸素濃度
AQ(i):i時刻の風量
t:溶存酸素濃度と送風量の相互相関係数が最も高い時間差
▲4▼ 主成分処理部5は、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などからそれらの代表値である主成分得点を演算し、主成分得点から溶存酸素濃度への変換式を作成して溶存酸素濃度を計算する。主成分処理部5は、主成分モデル作成部51と主成分得点作成部52とデータ変換式作成部53と主成分溶存酸素演算部54からなる。主成分モデル作成部51は、溶存酸素濃度へ影響を与える風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などを対象データとして主成分分析を行う。主成分分析は、p種類の変量をX1、X2、・・・Xp、任意の係数a1、a2、・・・apを用いて次のような1次式による総合的指標(合成変量)をつくる。
【0022】
【数9】
【0023】
ここで、a=(a1、・・・・、ap)’、X=(X1、・・・・、Xp)’である。
このように結合されたzは、p個の変量Xをよく代表していなければならない。そのための基準として主成分zの分散の最大化を行う。
以下にこの基準(主成分の分散の最大化)を用いた時の主成分分析の定式化について説明する。
p変量から(16)式により合成するときzの分散は、(15)式となる。
【0024】
【数10】
【0025】
ここにsjkはxjkとxkとの共分散、Sはsjkを(j,k)要素にもつ分散共分散行列である。(16)式のzは、p次元空間の中で原点OからあるOZ方向にz軸をとることを意味するが、そのときz座標のスケールをx1、x2・・・xp軸を同じにとることにすれば、係数a1、a2・・・apはそれぞれ直線OZの方向余弦になり、(18)式を満たす。
【0026】
【数11】
【0027】
したがって、問題は(18)式の制約条件のもとで(17)式を最大化することになる。このような制約条件つき最大化問題は、ラグランジェ乗数λを用いてつぎの(19)式を最大化する問題に変形される。
【0028】
【数12】
【0029】
(19)式をaの各要素で偏微分してゼロとおけば、(20)式のような行列Sの固有値問題を得る。
【0030】
【数13】
【0031】
Sは対称行列であり、任意のaに対してa’Sa=V(a’x)≧0より非負値であるから、p個の実数で非負の固有値λ1≧λ2≧・・・・・≧λp≧0をもつ。
各固有値ベクトルをa1、a2、a3、・・・、apとすれば(20)式より
【0032】
【数14】
【0033】
となり、λjはzj=aj’xの分散に等しくなる。
したがって分散を最大にする主成分は、最大固有値λ1に対応する固有ベクトルa1=(a11、a21、・・・、ap1)’の要素の係数として(22)式となる。
【0034】
【数15】
【0035】
(22)式を第1主成分と呼ぶ。第1主成分z1の分散はλ1で、p個の変量をよく代表する主成分になっている。
主成分得点演算部52は、前記主成分モデル作成部で求められた係数a1、a2・・・・apと現在時刻nの風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから主成分得点z(n)を算出する。
【0036】
【数16】
【0037】
データ変換式作成部53は、前記主成分得点演算部にて求めた主成分得点と溶存酸素濃度の関係式を作成する。つまり、主成分得点と溶存酸素濃度の回帰式を作成することである。回帰式は1次回帰、2次回帰、指数回帰など処理場に適した方法を選択する。一例として、一次回帰について説明する。主成分得点と溶存酸素濃度の一次回帰は(24)式のように表すことができる。
【0038】
【数17】
【0039】
Z:主成分得点
DO:溶存酸素濃度
一次回帰は、DO軸に平行な直線に沿っての距離diの平方の和(25)式を最小にするようなa,bの値を求めることになる。
【0040】
【数18】
【0041】
主成分溶存酸素演算部54は、前記主成分モデル作成部51で作成したモデルに対し、データ蓄積部に蓄積した活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などと、風量設定部で設定した風量を設定することで、それらの主成分得点zを(26)式のように求める。
【0042】
【数19】
【0043】
Z:主成分得点
AQ:風量
そして、前記データ変換式作成部52で演算した回帰モデルを適用して、主成分得点から溶存酸素濃度を(24)式のように演算する。
▲5▼ 風量設定部6は、従来と同じ機能である。
▲6▼ 予測処理部7は、データ蓄積部1に蓄積されたデータと、施設条件設定部2で設定された土木構造などのプラント仕様データと、運転条件設定部3で設定されたプラントの操作変数と、主成分処理部5で計算された溶存酸素濃度を入力し、水質モデルをベースとした処理場内の水質(窒素、リンなど)の予測を行い、その予測結果を最適運転選択部8に出力する。詳細は従来技術と同様のため省略する。
▲7▼ 最適運転選択部8および操作変数設定部9は、従来と同じ機能である。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などから溶存酸素濃度を計算する計算式に主成分モデルと変換式を使用することによって、溶存酸素濃度と風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などの関係式を導き出すことができ、総括酸素移動容量係数を求める必要がなくなり、溶存酸素濃度の計算時間が短縮される。さらに、蓄積データを使用するため季節変動にも対応した溶存酸素濃度と風量、活性汚泥浮遊物質、生物化学的酸素要求量などとの関係式が構築可能となることにより、予測精度が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の運転支援装置を示すブロック図である。
【図2】従来の運転支援装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 データ蓄積部
2 施設条件設定部
3 運転条件設定部
4 時間差調整部
41 時間差演算部
411 相互相関演算部
412 ステップ応答演算部
42 時間差修正部
5 主成分処理部
51 主成分モデル作成部
52 主成分得点変換部
53 データ変換式作成部
54 主成分溶存酸素演算部
6 風量設定部
7 予測処理部
8 最適運転選択部
9 操作変数設定部
10 総括酸素移動容量係数
11 溶存酸素演算部
Claims (4)
- 最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池などの処理工程をもつ下水処理場の水質データを蓄積するデータ蓄積部(1)と、土木構造などの処理場仕様を設定する施設条件設定部(2)と、運転条件を設定する運転条件設定部(3)と、前記反応槽に注入する空気の風量を設定する風量設定部(6)と、前記データ蓄積部(1)のデータを基に水質を予測する予測処理部(7)と、最適な運転をするための操作変数を選択する最適運転選択部(8)と、前記最適運転選択部からの出力値を実プラントの運転設備に送る操作変数の設定値を設定する操作変数設定部(9)とを備えた運転支援装置において、
前記データ蓄積部(1)と予測処理部(7)との間に関連する変数間の時間差を調整する時間差調整部(4)と、溶存酸素濃度に影響を与える変数から主成分モデルを作成し、そのモデルから溶存酸素濃度を演算する主成分処理部(5)とを備えたことを特徴とする運転支援装置。。 - 前記時間差調整部(4)は、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数間の時間差を演算する時間差演算部(41)と、前記時間差演算部で演算した時間差から変数間の時間差を修正する時間差修正部(42)とを備えたことを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
- 前記時間差演算部(41)は、溶存酸素濃度とそれに影響を与える変数の相関関係を演算する相互相関演算部(411)と、変数に一定の入力を与えた時の応答を演算するステップ応答演算部(412)の少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項2記載の運転支援装置。
- 前記主成分処理部(5)は、溶存酸素濃度に影響を与える変数の主成分モデルを作成する主成分モデル作成部(51)と、変数の主成分得点を演算する主成分得点演算部(52)と、前記主成分得点演算部で作成した主成分得点から溶存酸素濃度へ変換する式を作成するデータ変換式作成部(53)と、前記主成分モデル作成部で作成されたモデルと前記データ変換式作成部で作成された変換式と前記風量設定部で設定した値と前記データ蓄積部で蓄積された値とから溶存酸素濃度を演算する主成分溶存酸素演算部(54)とを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の運転支援装置。
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JP2014184396A (ja) * | 2013-03-22 | 2014-10-02 | Hitachi Ltd | 水処理装置および水処理方法 |
CN109205781A (zh) * | 2017-07-03 | 2019-01-15 | 横河电机株式会社 | 控制系统及控制方法 |
-
2002
- 2002-08-07 JP JP2002229676A patent/JP2004066120A/ja active Pending
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