JP2004064026A - 半導体光モジュール - Google Patents

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小野  純
Nobuhiro Kawamura
川村 暢宏
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Abstract

【課題】クリープ変形による光軸ずれがなく、しかも、半導体レーザ等の素子にダメージを与えないで製造できるようにする。
【解決手段】ケース内にハンダ付け固定されたペルチェ素子50の所定位置に金属ガイド51、52がろう付け固定され、モジュール本体55は、ペルチェ素子50に熱伝導性の高いハンダ材を介して接合した状態で、モジュール基板56にろう付け固定されている突当てブロック57を金属ガイド51に当接させ、その当接箇所に対する溶接止めによって固定されている。
【選択図】    図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光を出射または受光する半導体光モジュールの性能を向上させるための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体光モジュールのうち、例えばレーザ光を出射する半導体レーザモジュールは、半導体レーザを含むモジュール本体を端子付きの小さなケース内に固定収納して、ケースの窓を介してレーザ光を出射するものであり、光通信機器、光測定器の光源や光ファイバ増幅器(EDFA)の光源として用いられている。
【0003】
このような半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザは、電気から光へのエネルギー変換効率が低く(一般的に20パーセント前後)、供給電力の多くが熱として放出され、この熱による温度上昇で出射するレーザ光の波長や強度が変動してしまう。特に、各種機器に実装される半導体レーザモジュールのように小さなケース内に半導体レーザを収容したものでは、半導体レーザが発生する熱を十分に放熱することができない。
【0004】
このため、従来の半導体レーザモジュールでは、ケース内にペルチェ素子等の電子温度制御素子を設け、その電子温度制御素子と半導体レーザの間を熱抵抗が小さい状態で結合し、電子温度制御素子を制御して半導体レーザが発する熱を奪い、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長や強度を安定化している。
【0005】
図10〜図13は、このように内部に電子温度制御素子を備えた従来の半導体レーザモジュール10の構造を示している。
【0006】
これらの図に示しているように、半導体レーザモジュール10のケース11は、金属製のシャーシ12とカバー13とからなり、シャーシ12は、図10、図11に示しているように、長方形の底板12aと、底板12aの前端および後端から互いに対向するように立設された前板12bおよび後板12cと、底板12aの両端から互いに対向するように立設された側板12d、12eとを有し、上面が開口された有底中空の箱型に形成され、その上面側がカバー13によって覆われている。
【0007】
シャーシ12の前板12bには透光性を有するサファイヤガラス等の窓14が設けられ、この窓14の外側には、レーザ光を出射するための光ファイバ15の一端側が保持部材16によって固定されている。
【0008】
また、シャーシ12の側板12d、12eには、複数の端子17が突設されている。これらの端子17の一端側はシャーシ12内に突出している。
【0009】
シャーシ12の底板12aの上には、電子温度制御素子としてのペルチェ素子20が固定されている。
【0010】
ペルチェ素子20は、図13に示しているように、セラミック製で下面側が金属膜(図示せず)で覆われた矩形の下基板20aと、下基板20aの上に配列固定された多数の半導体素子20b(例えばビスマス−テルルBi−Te)と、半導体素子20bを挟んで下基板20aと平行に対向する上面側が金属膜(図示せず)で覆われたセラミック製の矩形の上基板20cとで偏平に形成され、多数の半導体素子20bに所定極性の電流を流すことで上基板20c側に吸熱作用を生じさせる。
【0011】
このペルチェ素子20は、下基板20aの下面側をシャーシ12の底板12aに接合させた状態でハンダ付けされている。
【0012】
なお、「ハンダ付け」はろう付けの一種であって、比較的融点の低い(300°C以下)軟ろうを用いる場合を示すが、本願では、軟ろうをハンダと呼びそれを用いたろう付けを「ハンダ付け」と呼び、融点の高い(700°C以上)硬ろうを用いたろう付けを単に「ろう付け」と呼んで両者を区別する。
【0013】
ペルチェ素子20の上基板20cの上には、モジュール本体25が固定されている。モジュール本体25は、モジュール基板26上に一体的に構成されている。
【0014】
モジュール基板26は、表面が金属膜(図示せず)で覆われたセラミックからなり、ペルチェ素子20の上基板20cとほぼ等しい幅を有する矩形で一定厚の平板部26aと、平板部26aの両端からペルチェ素子20の上基板20cの幅より僅かに大きな間隔をもって下方に突設された一対のガイド部26b、26cとを有し、ペルチェ素子20の上基板20cをガイド部26b、26cの間に受け入れて、ペルチェ素子20に対して幅方向の移動がほぼ規制された状態で係合し、平板部26aの下面とペルチェ素子20の上基板20cの上面との間が接合した状態でハンダ付け固定されている。
【0015】
モジュール基板26の上には、金属製(例えばステンレス製)で直方体の一対の突当てブロック27、28が、モジュール基板26の幅方向に所定の間隔をあけて固定されている。
【0016】
突当てブロック27、28は、後述するチップキャリア29とレンズブロック31の距離を高精度に設定するためのものであり、互いに同一向きで、その前面同士および背面同士がモジュール基板26の平板部26aの幅方向に沿って段差がない状態で、平板部26aの上にろう付け固定されている。
【0017】
また、モジュール基板26の上には、金属製の横長直方体のチップキャリア29が、その前面側を突当てブロック27、28の背面に当接させた状態で、平板部26aの上にハンダ付け固定され、チップキャリア29の上面の中央には半導体レーザ30がハンダ付け固定されている。なお、チップキャリア29は、放熱性が高いCu−W(タングステンと銅の合金)によって形成されている。
【0018】
一方、突当てブロック27、28の前面側には、レンズブロック31が固定されている。レンズブロック31は、その中央部にレンズ31aを保持し、両端の背面側を突き当てブロック27、28の前面に当接させた状態で、且つ半導体レーザ30が出射するレーザ光の光軸とレンズ31aの光軸とが一致するように位置決めされた状態で、突当てブロック27、28に溶接固定されている。
【0019】
なお、半導体レーザモジュールでは、温度検出用のセンサや、半導体レーザ30が出射するレーザ光の強度を検出するための受光器が内蔵される場合もあるが、ここではその説明を省略する。
【0020】
また、ケース11内のペルチェ素子20、半導体レーザ30および前記した温度センサ、受光器等の電子部品の各端子は、図示しない導線を介してシャーシ12の端子17の一端側にそれぞれ接続されている。
【0021】
上記のように構成された半導体レーザモジュール10は、端子17を介して半導体レーザ30に電源を供給することで、その半導体レーザ30からレーザ光が出射され、そのレーザ光がレンズ31aで集光されて窓14を通過して光ファイバ15の一端側に入射され、光ファイバ15の他端側から出射する。
【0022】
また、ペルチェ素子20に電源を供給してその温度を低下させることで、モジュール基板26およびチップキャリア29の温度を低下させて、チップキャリア29上の半導体レーザ30が発する熱を奪って、レーザ光の波長や強度の変動を防ぐことができ、さらに、ペルチェ素子20に供給する電源を前記した温度センサや受光器の出力に基づいて制御することで、波長と強度が一定のレーザ光を得ることができる。
【0023】
なお、光ファイバ15を保持する保持部材16は、半導体レーザ30からレンズ31aを介して出射されるレーザ光が、光ファイバ15の一端側に効率よく入力されるように位置決めされた状態でシャーシ12の前板12bに溶接固定されている。
【0024】
上記の半導体レーザモジュール10の製造手順は、モジュール基板26上の所定位置に一対の突当てブロック27、28をろう付け固定し、その突当てブロック27、28に、予め半導体レーザ30が固定されているチップキャリア29を当接させた状態でモジュール基板26上にハンダ付け固定し、さらに、突当てブロック27、28にレンズブロック31を溶接固定することでモジュール本体25を完成させる。
【0025】
そして、シャーシ12内にペルチェ素子20をハンダ付け固定し、その上に、モジュール本体25のモジュール基板26を載せてハンダ付け固定し、ペルチェ素子20およびモジュール基板26上の半導体レーザ30等の電子部品と端子17間を接続する。
【0026】
そして、端子17を介して半導体レーザ30に電源を供給してレーザ光を窓14から出射させた状態で、光ファイバ15を保持している保持部材16を、その光ファイバ15に入射されるレーザ光の強度が最大となる位置に溶接固定し、最後に、カバー13をシャーシ12に固定して、その内部を密閉する。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、ペルチェ素子20に対してモジュール本体25をハンダ付けで固定している半導体レーザモジュール10では、そのハンダ付けに用いるハンダ材として、ペルチェ素子20の内部に用いられているハンダ材、シャーシ12とペルチェ素子20との間を固定しているハンダ材、モジュール基板26とチップキャリア29の間を固定しているハンダ材の融点のいずれよりも引い低融点のハンダ材を用いる必要がある。
【0028】
ところが、このように融点の低いハンダ材は、一般的にクリープ変形(応力による伸長)が起こりやすく、そのクリープ変形によって、ペルチェ素子20に対するモジュール本体25の位置ずれが起こり、モジュール本体25側に固定されているレンズ31aとシャーシ12側に固定されている光ファイバ15の光軸がずれて、出射されるレーザ光の強度が低下するという問題があった。
【0029】
このクリープ変形を低減するために、光ファイバ15を取り付ける前に、高温曝露処理を行い、ハンダ材の応力緩和現象を助長し、クリープ変形を低減する方法もとられているが、高温曝露処理は、モジュール本体25をシャーシ12内のペルチェ素子20の上に配置した状態で、窒素雰囲気の中で例えば100°Cの高温槽内で10時間程度行なうため、モジュール基板26に取り付けられている半導体レーザ30等の電子部品に対して湿度や静電気等のダメージが加わって劣化を招く恐れがある。
【0030】
また、ハンダ材を低クリープ性のものに変更することも考えられるが、低クリープ性のハンダは一般的に融点(または共晶温度)が高く(例えばAu−Sn系のハンダ材で280°C)、しかも、モジュール基板21の熱容量が大きいために、ハンダ付けの際の作業温度が上昇して、半導体レーザ25等の電子部品に対して熱的に大きなダメージを与えることになる。
【0031】
この問題は、上記の半導体レーザモジュールだけでなく、APD(アバランシェフォトダイオード)のようにレーザ光を受光する半導体受光素子の温度変化による増倍率変動を電子温度制御素子の制御によって安定化する半導体光モジュールについても同様に発生する。
【0032】
本発明は、この問題を解決して、クリープ変形による光軸ずれがなく、しかも、半導体レーザ等の素子にダメージを与えないで製造できる半導体光モジュールを提供することを目的としている。
【0033】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の半導体光モジュールは、
光を通過させるための窓が設けられた中空箱状のケース(41)と、
前記ケース内にハンダ付け固定された電子温度制御素子(50)と、
モジュール基板(56)、該モジュール基板の所定位置にろう付け固定された金属製の突当てブロック(57、58)、該突当てブロックに当接した状態で前記モジュール基板にハンダ付け固定されたチップキャリア(59)、該チップキャリアに固定され光を出射または受光するための光半導体素子(60)とを含み一体化され、前記モジュール基板を前記電子温度制御素子に熱伝導材を介して接合させた状態で固定されたモジュール本体(55)とを有し、
前記光半導体素子から出射された光を前記窓から出射または前記窓から入射された光を前記光半導体素子で受光する半導体光モジュールにおいて、
前記電子温度制御素子の所定位置には金属ガイド(51、52)がろう付け固定され、
前記モジュール本体は、前記モジュール基板に固定された前記突当てブロックを前記金属ガイドに当接させた状態で位置決めされて、該当接箇所に対する溶接止めによって固定されていることを特徴としている。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3は、本発明を適用した半導体レーザモジュール40およびその要部の構造を示している。
【0035】
この半導体レーザモジュール40は、光通信機器、光測定器の光源や光ファイバ増幅器(EDFA)の光源として用いられるものである。
【0036】
半導体レーザモジュール40のケース41は、金属製のシャーシ42とカバー43とからなり、シャーシ42は、長方形の底板42aと、底板42aの前端および後端から互いに対向するように立設された前板42bおよび後板42cと、底板42aの両端から互いに対向するように立設された側板42d、42eとを有し、上面が開口された有底箱型に形成され、その上面がカバー43によって覆われている。
【0037】
シャーシ42の前板42bには透光性を有するサファイヤガラス等の窓44が設けられ、この窓44の外側には、レーザ光を出射するための光ファイバ45の一端側が保持部材46によって固定されている。
【0038】
また、シャーシ42の側板42d、42eには、複数の端子47が突設されている。これらの端子47の一端側はシャーシ42内に突出している。
【0039】
シャーシ42の底板42aの上には、電子温度制御素子としてのペルチェ素子50が設けられている。
【0040】
ペルチェ素子50は、セラミック製で下面側が金属膜(図示せず)で覆われた矩形の下基板50aと、下基板50aの上に配列固定された多数の半導体素子50b(例えばビスマス−テルルBi−Te)と、半導体素子50bを挟んで下基板50aと平行に対向する上面側が金属膜(図示せず)で覆われたセラミック製の矩形の上基板50cとで偏平に形成され、多数の半導体素子50bに所定極性の電流を流すことで上基板50c側に吸熱作用を生じさせる。
【0041】
この平板構造のペルチェ素子50は、下基板50aの下面側をシャーシ42の底板42aに接合させた状態でハンダ付けされている。
【0042】
ペルチェ素子50の上基板50cの上面両縁には、縦長直方体の一対の金属ガイド51、52が、その内側の側面51a、52aを精度よく平行に対向させた状態で固定されている。この一対の金属ガイド51、52は、後述するモジュール本体55をペルチェ素子50の上に案内するとともに、モジュール本体55のペルチェ素子50に対する位置決めを行なうためのものであり、ステンレス等の金属で高い寸法精度に形成され、ぺルチェ素子50の上基板50cの所定位置にろう付け固定されている。
【0043】
この一対の金属ガイド51、52の間には、モジュール本体55を構成するモジュール基板56が配置されている。
【0044】
モジュール基板56は、表面が金属膜(図示せず)で覆われたセラミックで一定厚の矩形平板状に形成され、その幅は一対の金属ガイド51、52の内側の側面同士の間隔より狭く設定され、その下面側は、熱伝導性が高い低融点のハンダ材(図示せず)を介してペルチェ素子50の上基板50cに接合している。
【0045】
モジュール基板56の上面両側には、一対の突当てブロック57、58が同一向きで並ぶように固定されている。
【0046】
この一対の突当てブロック57、58は、後述するチップキャリア59のモジュール基板56に対する位置決め、およびそのチップキャリア59に対するレンズブロック61の位置決めを高精度に行なうとともに、ペルチェ素子50に対するモジュール基板56の位置決めと固定をするためのものであり、寸法精度が高いステンレス等の金属製の直方体に形成され、所定の隙間をもって、互いに同一向きで、その前面57a、58a同士および背面57b、58b同士がモジュール基板56の幅方向に沿って段差のない状態で、且つ、外側の側面57c、58cがモジュール基板56の両縁より外側にはみ出す位置にろう付け固定されている。
【0047】
この一対の突当てブロック57、58は、その外側の側面57c、58c同士の間隔が金属ガイド51、52の内側の側面51a、52aの間隔より僅か(数μm〜数10μm)に狭くなるように位置決め固定され、一方の突当てブロック57の外側の側面(即ち、モジュール基板41からはみ出した部分の端面)が、金属ガイド51の内側の側面に隙間無く当接した状態で、金属ガイド51、52に対してそれぞれレーザのスポット溶接によって固定されている(以下、レーザのスポット溶接による固定を単に溶接固定という)。
【0048】
モジュール基板56の上には、金属製の横長直方体に形成されたチップキャリア59が、その前面側を突当てブロック57、58の背面側に当接させた状態で、モジュール基板56の上にハンダ付け固定され、チップキャリア59の上面の中央には半導体レーザ60がハンダ付け固定されている。このチップキャリア59は、放熱性が高いW−Cu等の金属からなり、半導体レーザ60のモジュール基板56からの高さおよび突当てブロック57、58に対する位置を高精度に設定するために、高い寸法精度の直方体に形成されている。
【0049】
なお、モジュール基板56に対するチップキャリア59のハンダ付け、およびチップキャリア59に対する半導体レーザ60のハンダ付けには、低クリープ性のAg−Sn系(融点220°C)のハンダ材が用いられている。
【0050】
また、突当てブロック57、58の前面57a、57bには、レンズブロック61が固定されている。レンズブロック61は、半導体レーザ60から出射されるレーザ光を集光してケース41の窓44へ出射するためのレンズ61aを中央部に保持しており、その両端背面側を突き当てブロック57、58の前面57a、58aに隙間無く当接させた状態で、且つ半導体レーザ60が出射するレーザ光の光軸とレンズ61aの光軸とが一致するように位置決めされた状態で、突き当てブロック57、58に溶接固定されている。
【0051】
なお、半導体レーザモジュール40内に温度検出用のセンサや半導体レーザ60が出射するレーザ光の強度を検出するための受光器も内蔵される場合もあるが、ここではその説明を省略する。
【0052】
また、ケース41内のペルチェ素子50、半導体レーザ60および前記した温度センサ、受光器等の電子部品の各端子は、図示しない導線を介してシャーシ42の端子47の一端側にそれぞれ接続されている。
【0053】
次に上記構成の半導体レーザモジュール40の製造工程について説明する。
始めに、図4に示すように、モジュール基板56上の所定位置に一対の突当てブロック57、58を治具等を用いてろう付け固定し、続いて図5のように、予め上面の所定位置に半導体レーザ60がハンダ付け固定されているチップキャリア59を、その前面59a側が一対の突当てブロック57、58の背面57b、58bに当接した状態で、モジュール基板56の上にハンダ付け固定する。
【0054】
そして、図6に示すように、一対の突当てブロック57、58の前面57a、58a側にレンズブロック61を当接させて位置決めした状態で、図7に示すように、所定箇所sを溶接止めして、モジュール本体55を完成させる。
【0055】
続いて、上基板50cに一対の金属ガイド51、52が予めろう付け固定されているペルチェ素子50をシャーシ42内の所定位置にハンダ付け固定する。このハンダ付けには、低クリープ性のハンダ材、例えばSn−Ag−Cu系(融点230°C)のハンダ材を用いる。
【0056】
そして、図8のように、前記完成したモジュール本体55のモジュール基板56を、ペルチェ素子50の金属ガイド51、52の間に入れて、モジュール本体55を一方の金属ガイド51側に寄せ、一方の突当てブロック57の外周部である外側の側面57cが金属ガイド51の内側の側面51aに隙間なく当接した状態に位置決めして、ペルチェ素子50の上基板50bの上面側とモジュール基板56の下面側との間をハンダ付けする。なお、このハンダ付けは、後述する溶接止めまでの仮止めと熱伝導性を確保するためのものであり、用いるハンダ材は低融点のもので熱伝導性が高い、例えばSn−Bi系(融点135°C)のハンダ材が用いられる。
【0057】
次に、図9に示すように、金属ガイド51と突当てブロック57の間、および金属ガイド52と突当てブロック58との間の所定箇所sを溶接止めする。なお、金属ガイド51の内側の側面51aと突当てブロック57の外側の側面57cとは隙間なく接合しているのに対し、金属ガイド52の内側の側面52aと突当てブロック58の外側の側面58cの間には僅か(数μm〜10数μm)に隙間があるが、若干の隙間であれば溶接止めは問題なく行なえる。
【0058】
また、予めモジュール基板56はペルチェ素子50の上基板50cの上にハンダ付けされているので、溶接に伴う引っ張り力によるモジュール基板56の浮きや傾きは発生せず、モジュール基板56はペルチェ素子50に対して低い熱抵抗で接合されている。
【0059】
次に、ペルチェ素子50および半導体レーザ60等の電子部品と端子47との間を図示しない導線で接続し、端子47を介して半導体レーザ60に電源を供給してレーザ光を窓44から出射させた状態で、光ファイバ45を保持している保持部材46を、その光ファイバ44に入射されるレーザ光の強度が最大となる位置に溶接固定し、最後にカバー43をシャーシ42に固定して、内部を密閉する。
【0060】
上記のように構成された半導体レーザモジュール40は、端子47を介して半導体レーザ60に電源を供給することで、半導体レーザ60からレーザ光が出射され、そのレーザ光がレンズ61aで集光されて窓44を介して光ファイバ45の一端側に入射され、光ファイバ45の他端側から出射する。
【0061】
また、ペルチェ素子50に電源を供給してその温度を低下させることで、モジュール基板56およびチップキャリア59の温度を低下させて、チップキャリア59上の半導体レーザ60が発する熱を奪って、レーザ光の波長や強度の変動を防ぐことができ、さらに、ペルチェ素子50に供給する電源を前記した温度センサや受光器の出力に基づいて制御することで、波長と強度が一定のレーザ光を得ることができる。
【0062】
また、ペルチェ素子50の上に予めろう付け固定されている金属ガイド51、52と、モジュール基板56の上に予めろう付け固定されている突当てブロック57、58との間を溶接することで、ペルチェ素子50に対してモジュール基板56を固定しているので、ペルチェ素子50とモジュール基板56の間に上記のように低融点のハンダ材を用いたとしても、そのハンダ材のクリープ変形の影響を受けることがなく、光軸ずれによるレーザ光の出力変動は発生しない。
【0063】
したがって、熱伝導性の高い低融点のハンダ材を介して、ペルチェ素子50とモジュール基板56の間の接合させることができ、ペルチェ素子50の吸熱作用を有効に働かせることができる。
【0064】
なお、ここでは、ペルチェ素子50とモジュール基板56の間をハンダ材を介して接合させていたが、前記したように、ペルチェ素子50とモジュール基板56とは、金属ガイド51、52と突当てブロック57、58との間の溶接止めによって固定されているので、ペルチェ素子50とモジュール基板56の間をハンダ材以外の熱伝導材(例えば、クリーム状のシリコン、熱伝導性シート材)を介して接合させてもよい。ただし、このようにハンダ材以外の熱伝導材を用いた場合には、前記した仮止め効果が期待できないので、溶接時にモジュール基板56をペルチェ素子50側に押さ付けて、ペルチェ素子50に対するモジュール基板56の浮きや傾きが生じないようにする。
【0065】
また、ペルチェ素子50に対するモジュール基板56の位置決めを、ペルチェ素子50上に予め固定されている金属ガイド51を利用しているので、モジュール基板56の形状を単純な平板状にすることができ、コストを下げることができる。
【0066】
なお、上記説明は、本発明を半導体レーザモジュールに適用した例であったが、前記したように、半導体レーザ60の代わりに、光ファイバ45を介して窓44から入射されたレーザ光をレンズ61aで集光して、半導体レーザ60の代わりに設けたAPDで受光する半導体光モジュールについても本発明を同様に適用できる。
【0067】
また、前記した半導体レーザモジュール40では、2つの金属ガイド51、52でモジュール基板56上の突当てブロック57、58を挟むように配置していたが、金属ガイド52を省略し、1つの金属ガイド51だけをペルチェ素子50上に固定して、この金属ガイド51にモジュール基板56上の突当てブロック57を当接させて、前記同様にハンダで仮止めしてから溶接止めしてもよい。
【0068】
また、前記した実施形態では、一対の金属ガイド51、52、一対の突当てブロック57、58およびチップキャリア59の形状を、最も単純で寸法精度を出しやすい直方体状に形成し、それらの側面同士を隙間無く当接させることによって位置決めを行なうようにしていたが、外周部同士の当接で位置決めすることができるものであれば、これらの部材の形状や個数は任意であり、面同士の当接だけでなく、例えば一方の部材の外周部に複数の突起を設けて、その突起を他方の部材の外周面に当接させて位置決めする構造であってもよい。
【0069】
また、金属ガイド51を複数に分割し、その複数の金属ガイド51を突当てブロック57の側面に当接させたり、逆に、突当てブロック57と同形状のブロックをチップキャリア59の背後側のモジュール基板56上に固定し、前後に並んたふたつのブロックと金属ガイド51とを当接させる構造でもよく、このように前後方向に複数の当接箇所がある場合には、各当接箇所が面同士である必要がなく点接触や線接触する形状でもよい。
【0070】
また、前記半導体レーザモジュール40では、突当てブロック57、58を、その一部がモジュール基板56の両端からはみ出す位置に固定して、そのはみ出し部分と金属ガイド51とを当接させて位置決めしていたが、突当てブロック57、58の側端部がモジュール基板56の両端と面一となる位置に固定してもよく、また、突当てブロック57、58の外側の端部がモジュール基板56の両端より内側にあって、金属ガイドの一部がモジュール基板側に延びた形状にして両者を当接させてもよい。
【0071】
また、前記した半導体レーザモジュール40では、レンズブロック61がモジュール本体55側に固定されている場合について説明したが、このレンズブロックがシャーシ42側に固定されている半導体レーザモジュールについても、本発明を同様に適用できる。これは、半導体レーザ60の代わりにAPDを用いた半導体光モジュールにおいても同様である。
【0072】
また、前記した半導体レーザモジュール40では、窓44から出射されたレーザ光を光ファイバ45に入射し、その光ファイバ45からレーザ光を出射するようにしていたが、光ファイバ45を介さずに直接他の光学素子へレーザ光を出射する半導体レーザモジュールにも本発明を同様に適用でき、また、光ファイバ45を介さずに、直接窓44から入射されるレーザ光を内部のAPD等の受光素子で受光する半導体光モジュールにも本発明を同様に適用できる。
【0073】
また、前記した半導体レーザモジュール40では、電子温度制御素子として偏平構造のペルチェ素子50を用いていたが、ペルチェ素子以外の電子温度制御素子を用いてもよい。また、他の形状(例えば立体形状)の電子温度制御素子の任意の面に金属ガイドを固定してもよく、また、電子温度制御素子の任意の面にモジュール本体のモジュール基板を接合させて金属ブロックと金属カイドの当接部分を溶接止めしてもよい。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の半導体光モジュールは、ケース内にハンダ付け固定された電子温度制御素子の所定位置に金属ガイドがろう付け固定され、モジュール本体は、電子温度制御素子に熱伝導材を介して接合した状態で、モジュール基板にろう付け固定されている突当てブロックを金属ガイドに当接させ、その当接箇所に対する溶接止めによって固定されている。
【0075】
このため、たとえ、モジュール基板と電子温度制御素子との間を熱伝導性が高く融点の低いハンダ材を介して接合させた場合でも、そのクリープ変形による光軸ずれがなくなり、高温曝露処理が不要となり、歩留り率が低くなる。
【0076】
また、モジュール基板の形状を単純な平板にすることができ、コストを下げることができる。
【0077】
また、ケースに電子温度制御素子を取り付けた時点でクリープ対策の高温曝露処理を行なえばよく、モジュール本体側の発光素子や受光素子を劣化させる恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のカバーの一部を省いた平面図
【図2】図1のB−B線断面図
【図3】実施形態の要部の斜視図
【図4】実施形態の製造手順を説明するための図
【図5】実施形態の製造手順を説明するための図
【図6】実施形態の製造手順を説明するための図
【図7】実施形態の製造手順を説明するための図
【図8】実施形態の製造手順を説明するための図
【図9】実施形態の製造手順を説明するための図
【図10】従来の半導体レーザモジュールのカバーの一部を省いた平面図
【図11】図10のA−A線断面図
【図12】従来の半導体レーザモジュールの要部の斜視図
【図13】従来の半導体レーザモジュールの分解斜視図
【符号の説明】
40……半導体レーザモジュール、41……ケース、42……シャーシ、43……カバー、44……窓、45……光ファイバ、46……保持部材、47……端子、50……ペルチェ素子、51、52……金属ガイド、55……モジュール本体、56……モジュール基板、57、58……突当てブロック、59……チップキャリア、60……半導体レーザ、61……レンズブロック、61a……レンズ

Claims (1)

  1. 光を通過させるための窓が設けられた中空箱状のケース(41)と、
    前記ケース内にハンダ付け固定された電子温度制御素子(50)と、
    モジュール基板(56)、該モジュール基板の所定位置にろう付け固定された金属製の突当てブロック(57、58)、該突当てブロックに当接した状態で前記モジュール基板にハンダ付け固定されたチップキャリア(59)、該チップキャリアに固定され光を出射または受光するための光半導体素子(60)とを含み一体化され、前記モジュール基板を前記電子温度制御素子に熱伝導材を介して接合させた状態で固定されたモジュール本体(55)とを有し、
    前記光半導体素子から出射された光を前記窓から出射または前記窓から入射された光を前記光半導体素子で受光する半導体光モジュールにおいて、
    前記電子温度制御素子の所定位置には金属ガイド(51、52)がろう付け固定され、
    前記モジュール本体は、前記モジュール基板に固定された前記突当てブロックを前記金属ガイドに当接させた状態で位置決めされて、該当接箇所に対する溶接止めによって固定されていることを特徴とする半導体光モジュール。
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