JP2004063636A - 窒化物半導体の製造方法および半導体ウェハならびに半導体デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の2段階成長法よりも転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体を製造することを可能にする。
【解決手段】基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長する。
【選択図】 図1
【解決手段】基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の2段階成長法による窒化物半導体よりも転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体を製造する方法と、これを用いて製作された半導体ウェハおよび半導体デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体エピタキシャル膜を得ようとする場合、最も容易な方法としては、成長しようとしている半導体と同一材料からなる単結晶基板を準備し、その上に気相成長する方法が考えられ、実際に色々な材料系で成功している。しかしながら、技術的に半導体単結晶基板を得ることが困難であったり、半導体単結晶基板が高価であるため産業的にはコスト面で用いられない等の理由により、異種基板上へ半導体を成長せざるをえない状況が多々存在する。代表例としては、シリコン基板上のGaAs、サファイア、シリコンおよびSiC基板上のGaN、GaAs基板上のII−VI族半導体等が知られる。
【0003】
この様な異種基板上へ半導体を成長した場合、格子不整合、熱膨張係数の不整合、表面エネルギーの不整合等の様々な材料固有の特性の不整合により、成長した半導体エピタキシャル膜中に高密度の転位が導入される。半導体中の転位は、非発光再結合中心、散乱中心として働くため、このような転位を多く含む半導体を用いた光および電子デバイスの特性、安定性、寿命は、転位を微量にしか含まないデバイスに比べて極めて劣ったものとなってしまう。
【0004】
GaN、AlGaN、GaInNなどに代表される窒化物系化合物半導体も同様に単結晶基板が得られないため、サファイアやシリコン、SiCなどの異種基板上に成長が行われており、初期の研究においては上述の転位の発生が深刻な問題となっていた。
【0005】
しかしながら、近年、MOVPE法を用いた「2段階成長法」によりこの問題は一部解決された。即ち、サファイア上に500〜600℃程度の低温でGaNあるいはAlNからなる低温バッファ層を成長し、その後、その上に1000℃程度の温度でGaNを成長することにより、従来1010〜1011cm−2程度であったサファイア上GaNの転位密度を108〜109cm−2台に制御することに成功している(特公平8−8217号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来の2段階成長法によるサファイア上GaNの転位密度は108〜109cm−2台であり、青色・緑色発光ダイオード(LED)への応用には十分な値であった。しかしながら、窒化物半導体の次世代の製品ターゲットである青紫色レーザーダイオード(LD)や紫外LEDの実現のためには、転位密度を107cm−2台以下にする必要があり、従来の2段階成長法によるGaNは適用できない状況にある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、従来の2段階成長法による窒化物半導体よりも転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体を製造する方法と、これを用いて製作された半導体ウェハおよび半導体デバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0009】
本発明に係る窒化物半導体の製造方法は、基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長することを特徴とする(請求項1)。本発明の製造方法は、より具体的には、基板上に第1の窒化物半導体を400〜600℃で成長し、その後基板温度を1000℃近傍の温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長することを特徴とする(請求項2)。
【0010】
本発明の窒化物半導体の製造方法において、第2の窒化物半導体は、上記熱処理と異なる温度で成長してもよいが、製造時間及び製造コストを小さくする観点からは、上記熱処理と同じ温度で成長する方が有利である。
【0011】
しかし、熱処理の温度を第2の窒化物半導体の成長温度を中心に−100〜100℃の範囲内に設定することも可能である。(請求項3)
本発明の窒化物半導体の製造方法において、上記熱処理の時間は60秒以上にするのがよい(請求項4)。これにより第2の窒化物半導体(例えばGaN)の微結晶粒の密度が小さくなり、その第2の窒化物半導体の転位密度を、従来法によるGaN膜の転位密度(約3×108cm−2)以下とすることができるからである。さらに、この熱処理の時間を600秒以上とすること(請求項5)により、第2の窒化物半導体の転位密度を5×107cm−2以下と極めて低い値にすることができる(図4参照)。
【0012】
また第2の窒化物半導体の膜厚については、上記熱処理の時間をt(秒)、上記第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、y>0.06t0.7の関係となるようにする(請求項6)。すなわち、図3中に示したy=0.06t0.7の直線を境として、これより左側の領域中に、熱処理時間に対応する膜厚のプロット点が存在するように設定する。このように、上記熱処理された第1の窒化物半導体上に成長する第2の窒化物半導体(例えばGaN)の膜厚を、熱処理時間の長さに応じて十分に厚く確保すれば、窒化物半導体(例えばGaN)の連続的な膜が得られる。しかも、上記熱処理時間の確保により、低転位密度の窒化物半導体の膜とすることができる。
【0013】
本発明の窒化物半導体の製造方法は、広く窒化物半導体一般に適用することができる。すなわち、上記第1の窒化物半導体及び第2の窒化物半導体がInxAlyGazN(x≧0、y≧0、z≧0、x+y+z=1)で表される形態(請求項7)に適用することができる。典型的には、上記第1の窒化物半導体及び第2の窒化物半導体がGaNである形態(請求項8)に適用することができる。
【0014】
本発明の窒化物半導体の製造方法において、上記基板には、サファイア、シリコン、SiC基板あるいは、これらの基板表面に窒化物半導体を成長した複合基板を用いることができる(請求項9)。
【0015】
本発明に係る半導体ウェハは、請求項1〜7のいずれかに記載の方法により形成した第2の窒化物半導体上へ、窒化物半導体を形成し、窒化物半導体の積層構造を形成したことを特徴とする(請求項10)。
【0016】
半導体ウェハの窒化物半導体上へ形成される窒化物半導体の積層構造(デバイス構造)としては、短波長発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等の光デバイスの構造の他、高出力電界効果トランジスタ(FET)や高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ヘテロ・バイポーラ・トランジスタ(HBT)等の電子デバイスの構造がある。具体的には、例えばLEDやLDなどを製造する場合には、AlGaN、InGaN、GaNなどを多層に積層し、発光層(活性層)をn型クラッド層およびp型クラッド層によりはさんだ構造を形成する必要がある。また、HBTにおいても、AlGaN、InGaN、GaNなどを多層に積層し、npnあるいはpnp接合を形成する必要がある。
【0017】
請求項11は、このうち光デバイス用半導体ウェハの場合を特定したものであり、上記窒化物半導体の積層構造が、第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、この活性層上に形成され、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る半導体デバイスは、上記請求項9又は10に記載の半導体ウェハを用いて形成したことを特徴とする(請求項12)。
【0019】
<発明の要点>
本発明はまず、2段階成長法を用いた場合になぜGaNの転位密度を107cm−2台以下とすることが出来ないのかを考察した。
【0020】
図2に従来の2段階成長法でGaNを成長した場合の、低温バッファ層の膜厚と最終的なGaNにおけるX線回折(XRD)測定により求めた(002)回折ピークの半値幅との関係を模式的に示す。一般的に、2段階成長法における成長条件を低温バッファ層膜厚をパラメータし、XRD半値幅をGaNの結晶性の指標として最適化しようとするとこのような関係が得られ、この関係から低温バッファ層の膜厚はt0が最適値であるという結論を得ることになる。そして、低温バッファ層の膜厚がt0の場合に得られるGaNの転位密度を測定してみると、最良の場合には108cm−2台前半となるのである。
【0021】
しかし、本発明者等は上記のような最適化手法には大きな問題点があることを見出した。
【0022】
すなわち、低温バッファ層の膜厚をt0まで下げてきた場合にXRD半値幅が減少するのは転位密度が減少したことが原因であるが、低温バッファ層の膜厚をt0以下に下げていった場合のXRD半値幅の増加は、転位密度を反映していない、ということを見出したのである。低温バッファ層の膜厚をt0以下に下げていった場合にXRD半値幅が増加するのは、GaN膜の膜としての連続性が徐々に失われていくためである。その理由として、低温バッファ層を成長後に、基板温度を1000℃にまで上げることによるアニールの効果で、低温バッファ層が微結晶粒に変化する。その上にGaNを成長すると、この微結晶粒を核としてGaNが島状に成長し、更に成長を続けることで島と島とが結合し最終的に表面が平坦なGaN膜が形成される。低温バッファ層の膜厚が薄い場合には、上記の微結晶粒の密度が小さいため、これを核として形成される島と島の間隔が大きく(島の密度が小さく)なる。このため、1000℃で成長するGaN層の厚さが同じであっても、低温バッファ層の膜厚が薄い場合には、連続的なGaN膜が得られなくなるのである。
【0023】
また、低温バッファ層の膜厚がt0より大きい場合には、上記の微結晶粒の密度が大きく、そのためこれを核として形成される島と島の間隔が小さく(島の密度が大きく)なる。最終的なGaN膜に残留する転位は、上記の島と島が結合する際に発生するものが支配的であるため、低温バッファ層膜厚が大きく島密度が大きい場合には、転位が増大するのである。
【0024】
以上の議論から明らかなように、上述の2段階成長法の最適化手法は、「転位密度」と「膜の連続性」という2種類の物理的要因を反映するXRDという指標を用いている点に問題がある。
【0025】
本発明は、上述のように従来の最適化手法の問題点を明らかにしたことによって、更なる窒化物半導体の低転位化のための指針を手に入れた。すなわち、上述の議論によれば、低温バッファ層の膜厚をさらに薄くし、微結晶粒の密度を小さくした場合でも、その上に成長するGaNの膜厚が十分厚ければ連続的な膜が得られ、しかもその場合には転位密度を従来以上に低減できるものと考えられるのである。ただし、低温バッファ層の膜厚を上記t0より薄くするといっても、実際には、低温バッファ層の膜厚を10nm以下の極薄い領域で制御することは困難なため、微結晶粒の密度を小さくするための手法としては、微結晶粒を高温で長時間アニールする方法がより良好な結果を与えることも明らかにしている。
【0026】
この際のアニールの温度としては、第2の窒化物半導体の成長温度を中心に−100〜100℃の範囲内とすべきである。第2の窒化物半導体の成長温度より−100℃以下の範囲ではアニールの効果が得られず、また、第2の窒化物半導体の成長温度より100℃以上の範囲では、微結晶粒の蒸発が急速に進み、微結晶粒の密度制御が困難となるからである。しかし、製造時間及び製造コストを小さくする観点からは、上記アニールの温度と上記第2の窒化物半導体の成長温度を同じにする方が有利である。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による窒化物半導体の製造方法の実施形態と、これにより得られる半導体ウェハならびに半導体デバイス製造の実施形態について説明する。
【0028】
本発明による窒化物半導体の製造方法の実施形態から説明する。
【0029】
まず、サファイア、シリコン、SiC基板あるいは、これらの基板表面に窒化物半導体を成長した複合基板を用い、図1に示すように、当該基板をクリーニングした後、その基板上に、MOVPE成長法により、第1の窒化物半導体(ここではGaN)を、その上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温である所定の温度Tg1(具体的には400〜600℃)で成長する。この第1の窒化物半導体の膜厚は50nm以下、例えば30nm(0.03μm)にする。
【0030】
その後、基板温度を、第2の窒化物半導体の成長温度である1000℃近傍の温度(例えば1065℃)にまで昇温する。そして、当該温度に昇温した後に、当該温度にて熱処理(アニール処理)を行い、その熱処理時間を60秒以上、好ましくは600秒以上とすることで、微結晶粒の密度、つまり島の密度を小さくする。この熱処理は、III族原料をストップし、V族原料のみを流すことで実施する。
【0031】
次いで第2の窒化物半導体(ここではGaN)を1000℃近傍の温度(例えば1065℃)にて成長する。この第2の窒化物半導体の厚さは、上記熱処理の時間をt(秒)、当該第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、y>0.06t0.7の関係となるようにする。すなわち、上記熱処理時間の60秒以上に対して、第2の窒化物半導体の膜厚を2μm以上とする。これは、図3中に示したy=0.06t0.7の直線を境として、これより左側の領域中に、熱処理時間に対応する膜厚のプロット点が存在するように定めることを意味する。例えば、熱処理時間を100秒とする場合には、図3のy=0.06t0.7の直線グラフ上からは膜厚は1.5μmとして求められるが、これより厚い3μmの厚さに設定する。このように、上記熱処理された第1の窒化物半導体上に成長する第2の窒化物半導体(GaN)の膜厚を、熱処理時間の長さに応じて十分に厚く確保することで、GaNの連続的な膜とする。
【0032】
要するに、上記熱処理を十分長い時間(60秒以上)施すことで、第1の窒化物半導体の微結晶粒の密度を小さくして、その上に成長させる第2の窒化物半導体を低転位密度とすることを確保し、また、第2の窒化物半導体の厚さyを、上記熱処理時間tに対応したy>0.06t0.7の関係となる十分な厚さ(2μm以上)とすることで、GaNの連続性を確保する。なお、ここでは第2の窒化物半導体の成長温度と熱処理の温度を、同じ温度に設定しているが、先に述べた様に1000℃近傍の互いに異なる温度に設定することもできる。
【0033】
上記第1および第2の窒化物半導体はGaNに限られるものではなく、InxAlyGazN(x≧0、y≧0、z≧0、x+y+z=1)で表される窒化物半導体を扱うことができる。
【0034】
【実施例】
以下の実施例はMOVPE成長によるGaN成長に対しての例であるが、上で述べた本発明の考え方はこれに限定されるものではなく、InAlGaN、InGaN、AlGaN等を含む他の窒化物半導体にも、またHVPE成長あるいはMBE成長等の他の成長法にも適用可能である。
【0035】
<実施例1>
本実施例で用いた成長手順を図1に、また、本実施例で用いた成長条件を表1に示す。
【0036】
基板を成長装置に導入した後、まず1100℃にまで基板を加熱し基板表面のクリーニングを行っている。その後、基板温度を530℃に下げ低温成長GaN(第1の窒化物半導体)を30nm(0.03μm)成長している。
【0037】
次いで基板温度を1065℃に上げ、本実施例1の前提として、10〜1200秒間の熱処理(アニール処理)を行い、その後、上記530℃より高温の1065℃で、第2の窒化物半導体のGaNを0.5〜15μmの膜厚で成長している。
【0038】
それぞれの段階における原料ガスおよびキャリアガスの種類と供給量は表1に示す通りである。すなわち、第1の窒化物半導体を成長するに際しては、III族原料であるトリメチルガリウムTMGを300(μmol/m)、V族原料であるアンモニアを20(slm)とし、キャリアガスの水素/窒素の比率を20/60(L/m)とした。また、第2の窒化物半導体を形成するに際しては、III族原料であるトリメチルガリウムTMGを600(μmol/m)、V族原料であるアンモニアを20(slm)とし、キャリアガスの水素/窒素の比率を20/60(L/m)とした。
【0039】
【表1】
【0040】
上記のように熱処理時間および高温成長GaNの膜厚を、10〜1200秒、0.5〜15μmと様々に変えた実験を行った結果、各熱処理時間に対する、GaNの平坦化に(連続膜となるのに)必要な高温成長GaNの膜厚があきらかとなった。その結果を図3に示す。図3に示した様に、GaNの平坦化には上記熱処理の時間をt(秒)、上記第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、
y>0.06t0.7
とすることが必要なことが明らかとなった。
【0041】
また、図4は図3において表面が平坦化したGaNの転位密度の測定結果である。従来の2段階成長法によるGaN膜の転位密度は2×109cm−2であり、熱処理時間が10秒の場合には、転位密度はこれと同等である。しかし、熱処理時間が60秒以上では転位密度は2×108cm−2以下となり、さらに熱処理時間が600秒以上では転位密度は1×107cm−2以下となった。
【0042】
従って、熱処理時間については、60秒以上(60〜1200秒)、好ましくは600秒以上(600〜1200秒)の範囲が本実施例1の範囲であり、また平坦化に必要な高温成長GaNの膜厚については、上記熱処理時間tに対応したy>0.06t0.7の関係となる2μm以上(2〜20μm)、好ましくは8μm以上(8〜20μm)が本実施例1の範囲である。
【0043】
<実施例2>
熱処理時間を100秒、高温成長GaNの膜厚を3μmとして、実施例1の成長条件をシリコン基板上へのGaNの成長に適用したところ、GaNの転位密度は1×108cm−2であった。シリコン上のGaNの転位密度は、通常109cm−2台であることを考えると大幅に転位密度が低減されていると言える。
【0044】
<実施例3>
実施例2の条件をSiC基板上へのGaNの成長に適用したところ、GaNの転位密度は2×108cm−2であった。SiC上のGaNの転位密度は、通常109cm−2台であることを考えると、この場合にも大幅に転位密度が低減されていると言える。
【0045】
<実施例4>
実施例2の条件を、従来法によりサファイア上にGaN膜を成長した複合基板に適用した。この場合、従来法によるGaN膜の転位密度は2×109cm−2であったが、本発明の方法をこれに適用する事により転位密度は1×108cm−2にまで低減された。
【0046】
<実施例5>
実施例4の条件で製作したGaNエピタキシャルウェハを用いて、第1導電型の第1のクラッド層/活性層/第2導電型の第2のクラッド層の積層構造が、p−AlGaN/GaN量子井戸/n−AlGaNの紫外発光LEDを製作した。このLEDと、従来法により製作したGaNエピタキシャルウェハを用いたp−AlGaN/GaN量子井戸/n−AlGaNの紫外発光LEDを比較した。
【0047】
その結果、従来法によるGaNエピタキシャルウェハを用いて作製したLEDの20mA通電時の光出力は0.05mWであったのが、本発明によるGaNエピタキシャルウェハを用いる事により、20mA通電時の光出力が10倍の0.5mWとなった。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による窒化物半導体の製造方法によれば、基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長するので、従来の2段階成長法による場合に較べ、より転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体エピタキシャルウェハを製造することが可能となる。また、この窒化物半導体エピタキシャルウェハを用いた半導体デバイスにおいては、その特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例に係る窒化物半導体の成長手順を示す図である。
【図2】従来の2段階成長法における低温バッファ層の膜厚とXRD半値幅の関係を示す模式図である。
【図3】本発明における第1の窒化物半導体(低温成長GaN)の各熱処理時間に対する、GaNの平坦化に必要な第2の窒化物半導体(高温成長GaN)の膜厚の関係を示す図である。
【図4】本発明における第1の窒化物半導体(低温成長GaN)の各熱処理時間に対する、第2の窒化物半導体(高温成長GaN)の表面が平坦化した転位密度の関係を示す図である。
【符号の説明】
Tg1 第1の窒化物半導体の成長温度
Tg2 第2の窒化物半導体の成長温度
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の2段階成長法による窒化物半導体よりも転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体を製造する方法と、これを用いて製作された半導体ウェハおよび半導体デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体エピタキシャル膜を得ようとする場合、最も容易な方法としては、成長しようとしている半導体と同一材料からなる単結晶基板を準備し、その上に気相成長する方法が考えられ、実際に色々な材料系で成功している。しかしながら、技術的に半導体単結晶基板を得ることが困難であったり、半導体単結晶基板が高価であるため産業的にはコスト面で用いられない等の理由により、異種基板上へ半導体を成長せざるをえない状況が多々存在する。代表例としては、シリコン基板上のGaAs、サファイア、シリコンおよびSiC基板上のGaN、GaAs基板上のII−VI族半導体等が知られる。
【0003】
この様な異種基板上へ半導体を成長した場合、格子不整合、熱膨張係数の不整合、表面エネルギーの不整合等の様々な材料固有の特性の不整合により、成長した半導体エピタキシャル膜中に高密度の転位が導入される。半導体中の転位は、非発光再結合中心、散乱中心として働くため、このような転位を多く含む半導体を用いた光および電子デバイスの特性、安定性、寿命は、転位を微量にしか含まないデバイスに比べて極めて劣ったものとなってしまう。
【0004】
GaN、AlGaN、GaInNなどに代表される窒化物系化合物半導体も同様に単結晶基板が得られないため、サファイアやシリコン、SiCなどの異種基板上に成長が行われており、初期の研究においては上述の転位の発生が深刻な問題となっていた。
【0005】
しかしながら、近年、MOVPE法を用いた「2段階成長法」によりこの問題は一部解決された。即ち、サファイア上に500〜600℃程度の低温でGaNあるいはAlNからなる低温バッファ層を成長し、その後、その上に1000℃程度の温度でGaNを成長することにより、従来1010〜1011cm−2程度であったサファイア上GaNの転位密度を108〜109cm−2台に制御することに成功している(特公平8−8217号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来の2段階成長法によるサファイア上GaNの転位密度は108〜109cm−2台であり、青色・緑色発光ダイオード(LED)への応用には十分な値であった。しかしながら、窒化物半導体の次世代の製品ターゲットである青紫色レーザーダイオード(LD)や紫外LEDの実現のためには、転位密度を107cm−2台以下にする必要があり、従来の2段階成長法によるGaNは適用できない状況にある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、従来の2段階成長法による窒化物半導体よりも転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体を製造する方法と、これを用いて製作された半導体ウェハおよび半導体デバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0009】
本発明に係る窒化物半導体の製造方法は、基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長することを特徴とする(請求項1)。本発明の製造方法は、より具体的には、基板上に第1の窒化物半導体を400〜600℃で成長し、その後基板温度を1000℃近傍の温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長することを特徴とする(請求項2)。
【0010】
本発明の窒化物半導体の製造方法において、第2の窒化物半導体は、上記熱処理と異なる温度で成長してもよいが、製造時間及び製造コストを小さくする観点からは、上記熱処理と同じ温度で成長する方が有利である。
【0011】
しかし、熱処理の温度を第2の窒化物半導体の成長温度を中心に−100〜100℃の範囲内に設定することも可能である。(請求項3)
本発明の窒化物半導体の製造方法において、上記熱処理の時間は60秒以上にするのがよい(請求項4)。これにより第2の窒化物半導体(例えばGaN)の微結晶粒の密度が小さくなり、その第2の窒化物半導体の転位密度を、従来法によるGaN膜の転位密度(約3×108cm−2)以下とすることができるからである。さらに、この熱処理の時間を600秒以上とすること(請求項5)により、第2の窒化物半導体の転位密度を5×107cm−2以下と極めて低い値にすることができる(図4参照)。
【0012】
また第2の窒化物半導体の膜厚については、上記熱処理の時間をt(秒)、上記第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、y>0.06t0.7の関係となるようにする(請求項6)。すなわち、図3中に示したy=0.06t0.7の直線を境として、これより左側の領域中に、熱処理時間に対応する膜厚のプロット点が存在するように設定する。このように、上記熱処理された第1の窒化物半導体上に成長する第2の窒化物半導体(例えばGaN)の膜厚を、熱処理時間の長さに応じて十分に厚く確保すれば、窒化物半導体(例えばGaN)の連続的な膜が得られる。しかも、上記熱処理時間の確保により、低転位密度の窒化物半導体の膜とすることができる。
【0013】
本発明の窒化物半導体の製造方法は、広く窒化物半導体一般に適用することができる。すなわち、上記第1の窒化物半導体及び第2の窒化物半導体がInxAlyGazN(x≧0、y≧0、z≧0、x+y+z=1)で表される形態(請求項7)に適用することができる。典型的には、上記第1の窒化物半導体及び第2の窒化物半導体がGaNである形態(請求項8)に適用することができる。
【0014】
本発明の窒化物半導体の製造方法において、上記基板には、サファイア、シリコン、SiC基板あるいは、これらの基板表面に窒化物半導体を成長した複合基板を用いることができる(請求項9)。
【0015】
本発明に係る半導体ウェハは、請求項1〜7のいずれかに記載の方法により形成した第2の窒化物半導体上へ、窒化物半導体を形成し、窒化物半導体の積層構造を形成したことを特徴とする(請求項10)。
【0016】
半導体ウェハの窒化物半導体上へ形成される窒化物半導体の積層構造(デバイス構造)としては、短波長発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等の光デバイスの構造の他、高出力電界効果トランジスタ(FET)や高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ヘテロ・バイポーラ・トランジスタ(HBT)等の電子デバイスの構造がある。具体的には、例えばLEDやLDなどを製造する場合には、AlGaN、InGaN、GaNなどを多層に積層し、発光層(活性層)をn型クラッド層およびp型クラッド層によりはさんだ構造を形成する必要がある。また、HBTにおいても、AlGaN、InGaN、GaNなどを多層に積層し、npnあるいはpnp接合を形成する必要がある。
【0017】
請求項11は、このうち光デバイス用半導体ウェハの場合を特定したものであり、上記窒化物半導体の積層構造が、第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、この活性層上に形成され、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る半導体デバイスは、上記請求項9又は10に記載の半導体ウェハを用いて形成したことを特徴とする(請求項12)。
【0019】
<発明の要点>
本発明はまず、2段階成長法を用いた場合になぜGaNの転位密度を107cm−2台以下とすることが出来ないのかを考察した。
【0020】
図2に従来の2段階成長法でGaNを成長した場合の、低温バッファ層の膜厚と最終的なGaNにおけるX線回折(XRD)測定により求めた(002)回折ピークの半値幅との関係を模式的に示す。一般的に、2段階成長法における成長条件を低温バッファ層膜厚をパラメータし、XRD半値幅をGaNの結晶性の指標として最適化しようとするとこのような関係が得られ、この関係から低温バッファ層の膜厚はt0が最適値であるという結論を得ることになる。そして、低温バッファ層の膜厚がt0の場合に得られるGaNの転位密度を測定してみると、最良の場合には108cm−2台前半となるのである。
【0021】
しかし、本発明者等は上記のような最適化手法には大きな問題点があることを見出した。
【0022】
すなわち、低温バッファ層の膜厚をt0まで下げてきた場合にXRD半値幅が減少するのは転位密度が減少したことが原因であるが、低温バッファ層の膜厚をt0以下に下げていった場合のXRD半値幅の増加は、転位密度を反映していない、ということを見出したのである。低温バッファ層の膜厚をt0以下に下げていった場合にXRD半値幅が増加するのは、GaN膜の膜としての連続性が徐々に失われていくためである。その理由として、低温バッファ層を成長後に、基板温度を1000℃にまで上げることによるアニールの効果で、低温バッファ層が微結晶粒に変化する。その上にGaNを成長すると、この微結晶粒を核としてGaNが島状に成長し、更に成長を続けることで島と島とが結合し最終的に表面が平坦なGaN膜が形成される。低温バッファ層の膜厚が薄い場合には、上記の微結晶粒の密度が小さいため、これを核として形成される島と島の間隔が大きく(島の密度が小さく)なる。このため、1000℃で成長するGaN層の厚さが同じであっても、低温バッファ層の膜厚が薄い場合には、連続的なGaN膜が得られなくなるのである。
【0023】
また、低温バッファ層の膜厚がt0より大きい場合には、上記の微結晶粒の密度が大きく、そのためこれを核として形成される島と島の間隔が小さく(島の密度が大きく)なる。最終的なGaN膜に残留する転位は、上記の島と島が結合する際に発生するものが支配的であるため、低温バッファ層膜厚が大きく島密度が大きい場合には、転位が増大するのである。
【0024】
以上の議論から明らかなように、上述の2段階成長法の最適化手法は、「転位密度」と「膜の連続性」という2種類の物理的要因を反映するXRDという指標を用いている点に問題がある。
【0025】
本発明は、上述のように従来の最適化手法の問題点を明らかにしたことによって、更なる窒化物半導体の低転位化のための指針を手に入れた。すなわち、上述の議論によれば、低温バッファ層の膜厚をさらに薄くし、微結晶粒の密度を小さくした場合でも、その上に成長するGaNの膜厚が十分厚ければ連続的な膜が得られ、しかもその場合には転位密度を従来以上に低減できるものと考えられるのである。ただし、低温バッファ層の膜厚を上記t0より薄くするといっても、実際には、低温バッファ層の膜厚を10nm以下の極薄い領域で制御することは困難なため、微結晶粒の密度を小さくするための手法としては、微結晶粒を高温で長時間アニールする方法がより良好な結果を与えることも明らかにしている。
【0026】
この際のアニールの温度としては、第2の窒化物半導体の成長温度を中心に−100〜100℃の範囲内とすべきである。第2の窒化物半導体の成長温度より−100℃以下の範囲ではアニールの効果が得られず、また、第2の窒化物半導体の成長温度より100℃以上の範囲では、微結晶粒の蒸発が急速に進み、微結晶粒の密度制御が困難となるからである。しかし、製造時間及び製造コストを小さくする観点からは、上記アニールの温度と上記第2の窒化物半導体の成長温度を同じにする方が有利である。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による窒化物半導体の製造方法の実施形態と、これにより得られる半導体ウェハならびに半導体デバイス製造の実施形態について説明する。
【0028】
本発明による窒化物半導体の製造方法の実施形態から説明する。
【0029】
まず、サファイア、シリコン、SiC基板あるいは、これらの基板表面に窒化物半導体を成長した複合基板を用い、図1に示すように、当該基板をクリーニングした後、その基板上に、MOVPE成長法により、第1の窒化物半導体(ここではGaN)を、その上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温である所定の温度Tg1(具体的には400〜600℃)で成長する。この第1の窒化物半導体の膜厚は50nm以下、例えば30nm(0.03μm)にする。
【0030】
その後、基板温度を、第2の窒化物半導体の成長温度である1000℃近傍の温度(例えば1065℃)にまで昇温する。そして、当該温度に昇温した後に、当該温度にて熱処理(アニール処理)を行い、その熱処理時間を60秒以上、好ましくは600秒以上とすることで、微結晶粒の密度、つまり島の密度を小さくする。この熱処理は、III族原料をストップし、V族原料のみを流すことで実施する。
【0031】
次いで第2の窒化物半導体(ここではGaN)を1000℃近傍の温度(例えば1065℃)にて成長する。この第2の窒化物半導体の厚さは、上記熱処理の時間をt(秒)、当該第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、y>0.06t0.7の関係となるようにする。すなわち、上記熱処理時間の60秒以上に対して、第2の窒化物半導体の膜厚を2μm以上とする。これは、図3中に示したy=0.06t0.7の直線を境として、これより左側の領域中に、熱処理時間に対応する膜厚のプロット点が存在するように定めることを意味する。例えば、熱処理時間を100秒とする場合には、図3のy=0.06t0.7の直線グラフ上からは膜厚は1.5μmとして求められるが、これより厚い3μmの厚さに設定する。このように、上記熱処理された第1の窒化物半導体上に成長する第2の窒化物半導体(GaN)の膜厚を、熱処理時間の長さに応じて十分に厚く確保することで、GaNの連続的な膜とする。
【0032】
要するに、上記熱処理を十分長い時間(60秒以上)施すことで、第1の窒化物半導体の微結晶粒の密度を小さくして、その上に成長させる第2の窒化物半導体を低転位密度とすることを確保し、また、第2の窒化物半導体の厚さyを、上記熱処理時間tに対応したy>0.06t0.7の関係となる十分な厚さ(2μm以上)とすることで、GaNの連続性を確保する。なお、ここでは第2の窒化物半導体の成長温度と熱処理の温度を、同じ温度に設定しているが、先に述べた様に1000℃近傍の互いに異なる温度に設定することもできる。
【0033】
上記第1および第2の窒化物半導体はGaNに限られるものではなく、InxAlyGazN(x≧0、y≧0、z≧0、x+y+z=1)で表される窒化物半導体を扱うことができる。
【0034】
【実施例】
以下の実施例はMOVPE成長によるGaN成長に対しての例であるが、上で述べた本発明の考え方はこれに限定されるものではなく、InAlGaN、InGaN、AlGaN等を含む他の窒化物半導体にも、またHVPE成長あるいはMBE成長等の他の成長法にも適用可能である。
【0035】
<実施例1>
本実施例で用いた成長手順を図1に、また、本実施例で用いた成長条件を表1に示す。
【0036】
基板を成長装置に導入した後、まず1100℃にまで基板を加熱し基板表面のクリーニングを行っている。その後、基板温度を530℃に下げ低温成長GaN(第1の窒化物半導体)を30nm(0.03μm)成長している。
【0037】
次いで基板温度を1065℃に上げ、本実施例1の前提として、10〜1200秒間の熱処理(アニール処理)を行い、その後、上記530℃より高温の1065℃で、第2の窒化物半導体のGaNを0.5〜15μmの膜厚で成長している。
【0038】
それぞれの段階における原料ガスおよびキャリアガスの種類と供給量は表1に示す通りである。すなわち、第1の窒化物半導体を成長するに際しては、III族原料であるトリメチルガリウムTMGを300(μmol/m)、V族原料であるアンモニアを20(slm)とし、キャリアガスの水素/窒素の比率を20/60(L/m)とした。また、第2の窒化物半導体を形成するに際しては、III族原料であるトリメチルガリウムTMGを600(μmol/m)、V族原料であるアンモニアを20(slm)とし、キャリアガスの水素/窒素の比率を20/60(L/m)とした。
【0039】
【表1】
【0040】
上記のように熱処理時間および高温成長GaNの膜厚を、10〜1200秒、0.5〜15μmと様々に変えた実験を行った結果、各熱処理時間に対する、GaNの平坦化に(連続膜となるのに)必要な高温成長GaNの膜厚があきらかとなった。その結果を図3に示す。図3に示した様に、GaNの平坦化には上記熱処理の時間をt(秒)、上記第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、
y>0.06t0.7
とすることが必要なことが明らかとなった。
【0041】
また、図4は図3において表面が平坦化したGaNの転位密度の測定結果である。従来の2段階成長法によるGaN膜の転位密度は2×109cm−2であり、熱処理時間が10秒の場合には、転位密度はこれと同等である。しかし、熱処理時間が60秒以上では転位密度は2×108cm−2以下となり、さらに熱処理時間が600秒以上では転位密度は1×107cm−2以下となった。
【0042】
従って、熱処理時間については、60秒以上(60〜1200秒)、好ましくは600秒以上(600〜1200秒)の範囲が本実施例1の範囲であり、また平坦化に必要な高温成長GaNの膜厚については、上記熱処理時間tに対応したy>0.06t0.7の関係となる2μm以上(2〜20μm)、好ましくは8μm以上(8〜20μm)が本実施例1の範囲である。
【0043】
<実施例2>
熱処理時間を100秒、高温成長GaNの膜厚を3μmとして、実施例1の成長条件をシリコン基板上へのGaNの成長に適用したところ、GaNの転位密度は1×108cm−2であった。シリコン上のGaNの転位密度は、通常109cm−2台であることを考えると大幅に転位密度が低減されていると言える。
【0044】
<実施例3>
実施例2の条件をSiC基板上へのGaNの成長に適用したところ、GaNの転位密度は2×108cm−2であった。SiC上のGaNの転位密度は、通常109cm−2台であることを考えると、この場合にも大幅に転位密度が低減されていると言える。
【0045】
<実施例4>
実施例2の条件を、従来法によりサファイア上にGaN膜を成長した複合基板に適用した。この場合、従来法によるGaN膜の転位密度は2×109cm−2であったが、本発明の方法をこれに適用する事により転位密度は1×108cm−2にまで低減された。
【0046】
<実施例5>
実施例4の条件で製作したGaNエピタキシャルウェハを用いて、第1導電型の第1のクラッド層/活性層/第2導電型の第2のクラッド層の積層構造が、p−AlGaN/GaN量子井戸/n−AlGaNの紫外発光LEDを製作した。このLEDと、従来法により製作したGaNエピタキシャルウェハを用いたp−AlGaN/GaN量子井戸/n−AlGaNの紫外発光LEDを比較した。
【0047】
その結果、従来法によるGaNエピタキシャルウェハを用いて作製したLEDの20mA通電時の光出力は0.05mWであったのが、本発明によるGaNエピタキシャルウェハを用いる事により、20mA通電時の光出力が10倍の0.5mWとなった。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による窒化物半導体の製造方法によれば、基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長するので、従来の2段階成長法による場合に較べ、より転位密度が低く、且つ表面が平坦な窒化物半導体エピタキシャルウェハを製造することが可能となる。また、この窒化物半導体エピタキシャルウェハを用いた半導体デバイスにおいては、その特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例に係る窒化物半導体の成長手順を示す図である。
【図2】従来の2段階成長法における低温バッファ層の膜厚とXRD半値幅の関係を示す模式図である。
【図3】本発明における第1の窒化物半導体(低温成長GaN)の各熱処理時間に対する、GaNの平坦化に必要な第2の窒化物半導体(高温成長GaN)の膜厚の関係を示す図である。
【図4】本発明における第1の窒化物半導体(低温成長GaN)の各熱処理時間に対する、第2の窒化物半導体(高温成長GaN)の表面が平坦化した転位密度の関係を示す図である。
【符号の説明】
Tg1 第1の窒化物半導体の成長温度
Tg2 第2の窒化物半導体の成長温度
Claims (12)
- 基板上に第1の窒化物半導体をその上に成長する第2の窒化物半導体の成長温度より低温で成長し、
その後基板温度を第2の窒化物半導体の成長温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長することを特徴とする窒化物半導体の製造方法。 - 基板上に第1の窒化物半導体を400〜600℃で成長し、
その後基板温度を1000℃近傍の温度にまで昇温し、昇温後に熱処理を行い、次いで第2の窒化物半導体を成長することを特徴とする窒化物半導体の製造方法。 - 上記熱処理における温度を、第2の窒化物半導体の成長温度を中心に−100〜100℃の範囲内とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体の製造方法。
- 上記熱処理の時間が60秒以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体の製造方法。
- 上記熱処理の時間が600秒以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体の製造方法。
- 上記熱処理の時間をt(秒)、上記第2の窒化物半導体の膜厚をy(μm)としたとき、y>0.06t0.7であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体の製造方法。
- 上記第1の窒化物半導体及び第2の窒化物半導体がInxAlyGazN(x≧0、y≧0、z≧0、x+y+z=1)で表されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体の製造方法。
- 上記第1の窒化物半導体及び第2の窒化物半導体がGaNであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体の製造方法。
- 上記基板がサファイア、シリコン、SiC基板あるいは、これらの基板表面に窒化物半導体を成長した複合基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の窒化物半導体の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により形成した第2の窒化物半導体上へ、窒化物半導体を形成し、窒化物半導体の積層構造を形成したことを特徴とする半導体ウェハ。
- 上記窒化物半導体の積層構造が、第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、この活性層上に形成され、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層とを備えることを特徴とする請求項10に記載の半導体ウェハ。
- 上記請求項10又は11に記載の半導体ウェハを用いて形成したことを特徴とする半導体デバイス。
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