JP2004062976A - 光ディスク、光ディスク再生装置、および光ディスク再生方法 - Google Patents
光ディスク、光ディスク再生装置、および光ディスク再生方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることのできる光ディスクを提供する。
【解決手段】光の反射および透過機能を有する第1反射層12と、光の反射機能のみを有する第2反射層15とを備えた多層構造の光ディスクにおいて、上記第1反射層12と隣接して配置され、照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層13を備える。
【選択図】 図1
【解決手段】光の反射および透過機能を有する第1反射層12と、光の反射機能のみを有する第2反射層15とを備えた多層構造の光ディスクにおいて、上記第1反射層12と隣接して配置され、照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層13を備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層構造の光ディスク、並びに該光ディスクを再生する光ディスク再生装置および光ディスク再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、情報の再生が光線により行われる光ディスクが、CD(Compact Disk)などとして実現されており、さらに情報の記録まで光線により行われる光ディスクが、MO(Magnet Optical Disk)などとして実現されている。このような光ディスクは、記録情報の大容量化と高密度化とを実現するものであるが、さらなる大容量化と高密度化とを実現するため、光ディスクを多層構造とすることが提案され、DVD(Digital Versatile Disk)では既に2層化が実現されている。
【0003】
従来の2層構造の光ディスクの構造例を図7に基づいて以下に説明する。尚、ここでは情報の再生を行う光線が図の下方から上方に照射されるものとして説明を行う。
【0004】
この光ディスク100では、光線の入射方向である下方から上方に向かって、第1母材101、第1反射層102、第2母材103、第2反射層104、および保護層105が順番に積層されている。第1母材101、第2母材103、および保護層105は透明な樹脂からなる。第1反射層102は半透明の金属膜からなり、第2反射層104は全反射の金属膜からなる。
【0005】
第1および第2母材101・103の上面には記録情報に対応した凹凸が形成されており、この凹凸に従って第1および第2反射層102・104が成膜されている。すなわち、第1および第2反射層102・104の凹凸によって、光線により再生される情報が固定的に記録されている。
【0006】
このような構造の光ディスク100は、既存のCDと同様に、その生産時に情報が固定的に記録され、この情報が光線により再生される。この時、第1反射層102と第2反射層104とには各々別個の情報が記録されているので、下方から出射される光線の焦点の位置を調節することにより、第1および第2反射層102・104に記録されている情報が個々に再生される。
【0007】
上記光ディスク100の生産方法の一例を以下に説明する。先ず、第1反射層102に記録する情報に対応した凹凸が予め形成されたスタンパ(図示せず)を使用し、樹脂成形により第1母材101が製作される。この第1母材101の上面に第1反射層102が金属のスパッタリングにより成膜される。
【0008】
次に、第1反射層102の表面に樹脂が流し込まれて第2母材用のスタンパ(図示せず)により第2母材103が形成される。この上面に金属のスパッタリングにより第2反射層104が成膜される。最後に樹脂成形により保護層105が形成されることにより、光ディスク100が生産される。
【0009】
このような光ディスク100の第1および第2反射層102・104から情報を読み取る光ディスク再生装置(図示せず)は、該光ディスク100に照射する光線を反射層上に集光する対物レンズ110の位置を調節し、第1および第2反射層102・104の一方にフォーカスをロックさせる。尚、上述のような光ディスク100では、通常は第1反射層102を主要的に利用し、第2反射層104は補助的に利用することが考えられている。
【0010】
上述した光ディスク100は、既存のCDと同様に機能するが、第1および第2反射層102・104の各々に情報が記録されているので、その情報の記録容量を倍増することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の光ディスク100における構成では、第1反射層102は以下の二通りの役割を果たす必要がある。
▲1▼ 第1反射層102にフォーカスをロックさせた時に、光を反射させて第1反射層102に記録されている情報だけを読み取るための役割。
▲2▼ 第2反射層104にフォーカスをロックさせた時に、光を透過させて第2反射層104に記録されている情報だけを読み取るための役割。
【0012】
上記▲1▼の役割を満足するためには、第1反射層102は表面での反射率が大きい方が、第1反射層102の情報を含む反射光の光量が大きくなり、目的の信号振幅も大きくなるので有利である。この時に要求される第1反射層102の性質は、膜厚が厚く、反射率が大きく、透過率が小さいというものである。
【0013】
一方で上記▲2▼の役割を満足するためには、第1反射層102は透過率が大きい方が、第2反射層104の情報を含む光(第2反射層104に到達する光)の光量が大きくなり、目的の信号振幅も大きくなるので有利である。この時に要求される第1反射層102の性質は、膜厚が薄く、反射率が小さく、透過率が大きいというものである。
【0014】
以上のように、第1反射層102は、第1反射層102へのフォーカス時と第2反射層104へのフォーカス時とで相異なる特性を同時に要求される。このため、実際には両方の特性を満足するよう、具体的には第1反射層102および第2反射層104のそれぞれの信号光量がほぼ同じ光量になるように、第1反射層102の光透過率が調整されている。あるいは、第1反射層102と第2反射層104との区別をつけるため若干の光量差を設けてある場合もあるが、信号光量があまりにも小さくなると相対的にノイズが大きくなり信号品質が悪くなるため、一般的にはほぼ同じオーダーの光量になるよう調整されている。
【0015】
光ディスク再生装置における低消費電力化の要請からは光ディスク100に入射される光線の光量は低い方が望ましく、信号品質を向上させる観点からは光量は大きい方が望ましい。しかしながら上記のような媒体構成の光ディスク100では、第1反射層102が上記▲1▼、▲2▼の両方の役割を同時に果たさなければならないため、上述のような調整がなされており、光利用効率の面で改善の余地があった。
【0016】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることのできる光ディスクを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ディスクは、上記の課題を解決するために、光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクにおいて、上記第1反射層と隣接して配置され、情報再生のために照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層を備えていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、上記第1反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、透明誘電体層内において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第1反射層からの反射光強度が向上する(第1反射層の反射率が増加する)。
【0019】
また、第2反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、第2反射層に照射される光線は透明誘電体層を透過する。この際、透明誘電体層においても多重反射は発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第2反射層からの反射光強度が向上する(第2反射層の反射率が増加する)。
【0020】
これにより、2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることができる。
【0021】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側に設けられる構成とすることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、上記透明誘電体層における多重干渉効果は、透明誘電体層を第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側にて隣接させる配置とすることで、その効果が顕著となる。
【0023】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の屈折率は、上記光線の入射側の反対側で接する母材の屈折率よりも大きい値を有することが好ましい。
【0024】
上記透明誘電体層の屈折率は、上記母材の屈折率との差が大きくなるほど多重干渉効果が大きくなる。そして、上記母材の屈折率は通常1.5程度であり、透明誘電体層の屈折率を母材の屈折率よりも大きいものとすることで、これらの屈折率の差を大きくすることが容易となる。また、上記透明誘電体層の屈折率は大きいほど、上記多重干渉効果を得ることのできる透明誘電体層の膜厚を小さくすることができる。
【0025】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の膜厚は、該透明誘電体層の屈折率をn、膜厚をd、上記光線の波長をλとする時、0<nd<λ/2を満たす範囲で設定されることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、上記第1反射層および第2反射層からの反射光量は、透明誘電体層の膜厚に対して一定の周期にて増減を繰り返し、透明誘電体層の膜厚がλ/2n増加する毎に極大値が発生する(光の多重干渉を利用しているため)。また、その最初の極大値は、透明誘電体層の光路長(nd)が、光ディスクに照射される光線の波長の1/2よりも小さくなる期間で必ず発生する。すなわち、透明誘電体層の膜厚が0<nd<λ/2を満たす中で該透明誘電体層の膜厚を設定することで、透明誘電体層の膜厚を最小として光利用効率を向上させることができる。
【0027】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2のうちの何れかの化合物からなる構成とすることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、透明誘電体層の材質として、透過率および屈折率が大きく、かつ一般的によく利用される材質を用いることで、該透明誘電体層を従来の作製手法を応用して作製することができる。
【0029】
また、本発明の光ディスク装置は、上記の課題を解決するために、光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクの再生を行う光ディスク再生装置において、光ディスクを再生するための光線を出射する光源の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力に設定されていることを特徴としている。
【0030】
また、本発明の光ディスク方法は、上記の課題を解決するために、光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクの再生を行う光ディスク再生方法において、光ディスクを再生するための光線の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力にて照射されることを特徴としている。
【0031】
本発明に係る光ディスクでは、第1反射層および第2反射層からの反射光強度を透明誘電体層の多重干渉効果によって向上させることができるものであり、該光ディスクを再生する光ディスク再生装置および光ディスク再生方法では、従来の再生に比べて照射する光線の出力を下げても良好な再生信号を得ることができる。このため、上記光ディスクを再生するのに適した光線出力に設定された光ディスク再生装置および光ディスク再生方法では、従来の再生に比べ低消費電力を達成することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0033】
本実施の形態に係る光ディスクの構成を、図1を参照して説明する。図1に示す光ディスク10では、光線の入射方向は図の下方から上方に向かってであり、該光ディスク10は光線の入射側から第1母材11、第1反射層12、透明誘電体層13、第2母材14、第2反射層15、および保護層16が順番に積層されている。
【0034】
第1および第2反射層12・15は、例えば、反射率の大きい金属からなり、光ディスク10に照射された光線がこれらの反射層で反射されることにより情報の再生が実行される。第2反射層15は全反射の金属膜からなり、一般的にはAlやAl合金等が用いられる。第1反射層12は、これに加えて第2反射層15の記録情報を読み取る際に光を透過する必要もあるため、薄い膜で形成され一般的には金、銀、Si等が用いられる。但し、反射率が大きく、かつ上記の条件を満たす金属であれば、これらの反射層の材質は特に何れの金属に限定されるものではない。
【0035】
透明誘電体層13は、透過率が大きく、かつ屈折率の大きい材質からなり、第1反射層12での反射光、第2反射層15への透過光、第2反射層15からの反射光に対してそれぞれ光多重干渉効果をもたらすものである。透明誘電体層13に使用可能な材質としては、例えば以下に記載する酸化物や窒化物が挙げられる。すなわち、透明誘電体層13は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2などの無機物質で形成することができる。これらの中で、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、MgF2が特に望ましいが、上記条件を満たすものであれば透明誘電体層13の材質は特に限定されるものではない。
【0036】
第1母材11、第2母材14、保護層16は、例えば透光性の有機樹脂からなる。本実施の形態に係る構成では、第1母材11が一般的に呼称される基板と同一であり代表的な材質としてはポリカーボネート製基板等が挙げられるが、この他にもアクリル樹脂、エポキシ樹脂などから作られた基板を用いることができる。第2母材14、保護層16としては、アクリルウレタン系UV硬化樹脂、アクリル系UV硬化樹脂、ポリウレタンアクリレート系のUV硬化型樹脂、アクリルウレタン系UV硬化樹脂などが挙げられるが、透光性、強度、残留応力、耐久度などの条件を満たせば特に限定されるものではない。
【0037】
次に光ディスク10の具体的な層構成と作製方法、本発明の特徴について説明する。
【0038】
光ディスク10に記録しようとする情報に対応した凹凸が予め形成されている厚さ0.6mmのポリカーボネートからなる透光性の基板、すなわち第1母材11上に、Ar雰囲気中でのスパッタリングにより金を15nm成膜し、第1反射層12を形成した。引き続きAr+N2混合ガス雰囲気中でのAlターゲットの反応性スパッタリングによりAlNを成膜し、透明誘電体層13を形成した。その表面に、紫外線硬化性の2P樹脂を30μmの膜厚にスピンコートで塗布し、ここにスタンパを圧着させて紫外線を照射することにより第2母材14を形成した。さらに、Ar雰囲気中でのスパッタリングによりAlを50nm成膜して第2反射層15とし、その上からUV硬化樹脂をスピンコートにて塗布した後、紫外線照射によって保護層16を硬化形成した。
【0039】
第2母材14の膜厚は従来と同様に30μm程度であるが、透明誘電体層13は光の多重干渉を利用するための層であるため、その膜厚は1μm未満であり、第1および第2反射層12・15は従来と同様に30μm程度に離反している。
【0040】
尚、本発明の特徴・効果を明らかにするため、透明誘電体層13の屈折率および膜厚を変化させて光ディスク10を作製して評価を行った。AlNの反応性スパッタ時のN2ガス流量比を変化させるとAlNの組成比を変化させることが可能であり、このAlNの組成比によって屈折率が変化するため、スパッタ条件の調整により透明誘電体層13の屈折率を所望の値に制御することが可能となる。また、透明誘電体層13の膜厚についてはスパッタ時間の調整によって制御が可能である。
【0041】
このようにして作製した光ディスク10について第1および第2反射層12・15の各ミラー部(情報の記録されていない領域)にフォーカスをロックし、各ディスクにおける反射光量の比較を行った。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る光ディスク10を再生するのに使用される光ディスク再生装置の概略構成を図2に示す。図2に示す光ディスク再生装置20は、レーザー光源21、ハーフミラー22、対物レンズ23、ビームスプリッタ24、フォトダイオード25・26を備えている。
【0043】
光ディスク再生装置20における光ディスク10の再生時には、レーザー光源21から照射される光線が、ハーフミラー22にて反射された後、対物レンズ23によって集光され、光ディスク10における第1反射層12または第2反射層15に照射される。対物レンズ23は、ハーフミラー22の反射光路上で光軸方向に移動自在に支持されている。また、光ディスク10は、図示しないターンテーブルによって対物レンズ23と対向する位置に支持されている。
【0044】
光ディスク10の第1反射層12または第2反射層15によって反射された反射光は、ハーフミラー22を透過して該反射光の検出系へ導かれる。ハーフミラー22の透過光路にはビームスプリッタ24が配置されており、このビームスプリッタ24の分光方向に2個のフォトダイオード25・26が1個ずつ配置されている。ここでは、フォトダイオード25を記録情報の再生信号の検出に用い、フォトダイオード26をサーボ信号の検出に用いるものとする。
【0045】
本実施の形態では、光ディスク10と光ディスク再生装置20とが相互に専用の装置として実現されるものとし、以下の説明では、透明誘電体層13の膜厚および屈折率を様々に変更した光ディスク10に対し、上記構成の光ディスク再生装置20によって情報の再生を行った。
【0046】
具体的には、再生される光ディスク10は、第1母材11、第2母材14、保護層16を同条件とし、かつ、第1反射層12の膜厚15nm、第2反射層15の膜厚50nmを固定とした上で、透明誘電体層13の屈折率を1.6〜2.2、膜厚0〜100(nm)の範囲内で種々の条件の光ディスク10を作製し、第1反射層12および第2反射層15の反射光量を評価した。尚、光ディスク再生装置20においては、レーザー波長を405nm、対物レンズの開口数(NA)を0.65とし、再生レーザーパワーを1.5mWの一定の条件で行った。その評価結果を以下の表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1に示した結果では、透明誘電体層13を設けない場合を従来例とし、該従来例の光ディスクにおける第1反射層からの反射光量(第1層反射光量)および第2反射層からの反射光量(第2層反射光量)をそれぞれ100とした。
【0049】
透明誘電体層13を設けた例では、該透明誘電体層13の屈折率を1.6,1.8、2.2の3種類とし、第1反射層12にフォーカスをロックした時の反射光量を従来例の第1層反射光量で割ったパーセント比率を第1反射層12における反射光量比として示した。同様に、第2反射層15にフォーカスをロックした時の反射光量を従来例の第2層反射光量で割ったパーセント比率を第2反射層15における反射光量比として示した。
【0050】
透明誘電体層13の屈折率を1.6とした例では、該透明誘電体層13の膜厚を30,60,100nmとした3種類の光ディスク10を作製し、うち膜厚60nmのものを実施例1とした。また、透明誘電体層13の屈折率を1.8とした例では、該透明誘電体層13の膜厚を10,20,30,40,60nmとした5種類の光ディスク10を作製し、うち膜厚40nmのものを実施例2とした。また、透明誘電体層13の屈折率を2.2とした例では、該透明誘電体層13の膜厚を10,20,30,40,60nmとした5種類の光ディスク10を作製し、うち膜厚30nmのものを実施例3、膜厚60nmのものを比較例1とした。
【0051】
すなわち、上記表1に示した結果において、透明誘電体層13の屈折率を1.6,1.8,2.2に設定したそれぞれの光ディスク10において、第2層反射光量比が最も大きくなる膜厚の場合を実施例1ないし3としている。また、透明誘電体層13の屈折率を2.2に設定した光ディスク10において、第2層反射光量比に変化がない膜厚の場合を比較例1としている。
【0052】
尚、上記表1における結果は、光ディスクのミラー部での反射光量を比較した結果によるものである。但し、光ディスクに記録される情報に対応した凹凸が存在する領域の再生信号についても上記と同様の実験によって確認し、信号の最大値が得られる条件がミラー部の反射光量が最大となる条件と一致していることを確認している。すなわち、上記表1の結果、およびこれに基づく以下の考察は、実際の再生信号光量を反映していると考えてよい。
【0053】
上記表1の結果を第1層・第2層反射光量比についてそれぞれグラフ化したものが図3および図4である。尚、図3および図4では、横軸に透明誘電体層13の膜厚、縦軸に第1層反射光量比(または第2層反射光量比)を示しているが、横軸に記載の膜厚範囲を0〜60nmとしている。
【0054】
上記図3および図4の結果より、透明誘電体層13を設けることによって、従来例に比べ、第1反射層12および第2反射層15のそれぞれにおける反射光量が向上し、光利用効率が向上することが分かった。
【0055】
すなわち、第1反射層12に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、透明誘電体層13内において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉する時、第1反射層12からの反射光強度が向上する(第1反射層12の反射率が増加する)。
【0056】
また、第2反射層15に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、第2反射層15に照射される光線は透明誘電体層13を透過する。しかしながら、この際にも、透明誘電体層13において幾分かの多重反射は発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉する時、第2反射層15からの反射光強度が向上する。但し、透明誘電体層13での多重干渉による反射光強度向上の効果は、第1反射層12からの反射光強度の向上効果に比べ、第2反射層15からの反射光強度の向上効果の方が小さい。本実施の形態に係る光ディスク10の固定条件、特に第1反射層を金15nmとした場合、透明誘電体層13の屈折率が大きいと第1層反射光量比に特に著しい光利用効率向上の効果が得られる。
【0057】
また、透明誘電体層13の屈折率については、屈折率が大きい方が第1層反射光量比および第2層反射光量比ともにその最大値が大きくなる。すなわち、実施例1<実施例2<実施例3の順で光利用効率向上の効果が見られた。また、屈折率が大きいほど第1層反射光量比および第2層反射光量比の最大値を取る膜厚が小さくなる。
【0058】
第1層反射光量比および第2層反射光量比はともに、透明誘電体層13がある程度の膜厚となる時に極大値を示し、透明誘電体層13の膜厚が大きくなりすぎるとピークを取った後減少に転じる。尚、第1反射層12および第2反射層15の材質等によっては、第1層反射光量比および第2層反射光量比のそれぞれが極大値を取るための透明誘電体層13の膜厚が一致しない場合もある。その場合には、トータルで考慮し、両光量比がともに向上する望ましい条件を選択すればよい。
【0059】
以上の実験結果に基づき、本発明の光ディスク10において以下の好適な実施形態が導かれる。
【0060】
先ず、上述の結果より、透明誘電体層13の屈折率nは、n>1.6において、光利用効率が向上しており、さらに、透明誘電体層13の屈折率が大きいほど、より光利用効率が向上している。
【0061】
これは、透明誘電体層13と第2母材14との境界面において反射を生じさせるためには、透明誘電体層13と第2母材14とが屈折率に差を持つことが必要なためであり、かつ、その差が大きいほど多重反射が多くなる(多重干渉の効果が大きくなる)。
【0062】
そして、透明誘電体層13と第2母材14との屈折率の大小は、透明誘電体層13の屈折率の方が小さい場合であっても原理的には多重干渉による反射光強度の向上効果は得られるものの、第2母材14の屈折率は通常1.5程度であり、透明誘電体層13の屈折率の方が小さい場合には透明誘電体層13と第2母材14とが屈折率の差を大きくとることは難しい。
【0063】
このため、透明誘電体層13は第2母材14よりも屈折率の大きい材質を選択することが好ましい。また、透明誘電体層13の光路長は(透明誘電体層13の屈折率n)×(透明誘電体層13の膜厚d)で決まるので、少ない膜厚dで同じ効果を得るためにも透明誘電体層13の屈折率nは大きいほうが望ましい。
【0064】
また、上記図3および図4では、第1層反射光量比および第2層反射光量比は、透明誘電体層13の膜厚がある程度の値となるとき極大値となり、その後は透明誘電体層13の膜厚が大きくなるにつれて減少している。しかしながら、本発明は光の多重干渉を利用した光利用効率向上技術であるため、実際には、図5に示すように、第1層反射光量比および第2層反射光量比は、透明誘電体層13の膜厚に対してある一定の周期にて増減を繰り返し、透明誘電体層13の膜厚がλ/2n増加する毎に極大値が発生する。図5は透明誘電体層13の膜厚と、第1反射層12および第2反射層15の反射率との関係をシミュレーションによって計算し、その結果をグラフ化したものである。
【0065】
尚、図5のグラフは、各層の屈折率と膜厚とを各パラメータとして仮定し、仮想の多層膜での光学計算によって求められている。これに比べ、図3および図4は、膜厚0すなわち透明誘電体層を設けない場合の反射率を100%として規格化したものであり、図5とは絶対値が異なっている。
【0066】
また、第1層反射光量比および第2層反射光量比における最初の極大値は、透明誘電体層13の光路長(nd)が、光ディスク10に照射される光線の波長の1/2よりも小さくなる期間で必ず発生する。すなわち、透明誘電体層13の膜厚dが0<nd<λ/2を満たす中で、該透明誘電体層13の膜厚を設定し、光利用効率を向上させることができる。但し、本発明の技術思想は上記条件に限るものではなく、膜厚がさらに大きい場合(すなわち、2回目以降の極大値が生じる膜厚となる場合)の多重干渉を利用した光利用効率向上をも含むものである。
【0067】
また、透明誘電体層13は、第2層反射光量比よりも第1層反射光量比に対して、特に著しい光利用効率向上の効果を与えるものである。すなわち、従来例よりも第1反射層12の反射光量が特に増強されるので、第2反射層15を再生する場合には、第2反射層15の反射光に第1反射層12の反射光がノイズとして悪影響を与える可能性がある。但し、前述のように、第1反射層12を主要な記録領域として利用し、第2反射層15を補助の記録領域として利用する場合には、第1反射層12だけでも良好に走査できることは有用である。
【0068】
但し、第2反射層15の反射光におけるノイズをできるだけ小さくするためには、透明誘電体層13の膜厚を第2層反射光量比の極大値を与える膜厚に設定するとよい。例えば、透明誘電体層13の屈折率が2.2の場合において、実施例3と比較例1とを比べると、第1層反射光量比については比較例1の場合の方が大きいが、第2層反射光量比が最大となる実施例3の方が第1層反射光量比と第2層反射光量比との差が小さく、第2反射層15の反射光に対する第1反射層12の反射光によるノイズを小さくできる。
【0069】
さらに、第1反射層12の反射光量と第2反射層15の反射光量とのバランスを保ちたい場合には、第1反射層12の膜厚調整を含めたさらなる光利用効率の最適化が可能となる。
【0070】
すなわち、第1反射層12の反射光量は、透明誘電体層13での多重干渉によって大幅に向上させることが可能であり、第1反射層12の膜厚を15nmよりもさらに薄くして第1反射層12の透過率を大きくしても、従来例より大きな反射光量を得ることが可能である。一方、第2反射層15の反射光量は透明誘電体層13での多重干渉による向上は少ないものの、第1反射層12の膜厚を薄くして第2反射層15の反射光量に振り分けることで直接的に向上させることができる。
【0071】
これにより、第1反射層12の反射光量と第2反射層15の反射光量とがほぼ同じとなるように最適化することも可能である。尚、この時、薄膜化により第1反射層12は透過率が変わるのみで屈折率の値には変化がないため、透明誘電体層13での多重干渉効果も変化せず、上述の考察における屈折率・膜厚条件はそのまま転用できるものである。
【0072】
また、上述のように第1反射層12に光線のフォーカスを確実にロックできれば、この位置を基準として光線のフォーカスを第2反射層15に移動させることは容易なので、第1および第2反射層12・15の両方にフォーカスを良好にロックさせることができる。
【0073】
また、透明誘電体層13の膜厚は光の多重干渉を利用するための層であるため、数10〜数100nmのオーダーであり、これは第1反射層12成膜後に引き続きスパッタリングなどの薄膜技術により形成することができるので生産性も良好である。
【0074】
透明誘電体層13以外の各層は従来の光ディスクと同様の構成であるので、スピンコートやスパッタリングなどの薄膜技術により形成することができ、生産性も良好である。
【0075】
尚、以上の説明における光ディスク10は、第1母材11が一般的に呼称される基板と同一であり基板側から光が入射する構成として示した。しかしながら、近年、高密度化を目的として基板を通さず膜面側から光入射する方式が提案されており、本発明は膜面側からの光入射の再生方式においても適用可能である。但しその場合は媒体構成が逆になるため、図6に示すように、光ディスク10’において、第1母材11、第2反射層15’、第2母材14、透明誘電体層13’、第1反射層12’、保護層16という順序になり、光は保護層16側から入射される。また、上記構成の光ディスク10’において、媒体構成は異なっても光学的な光路や多重干渉による光利用効率向上の原理は上記で説明した光ディスク10の場合と同様であり、光の入射方向に応じて構成を変化させれば本発明を適応することができる。
【0076】
また、本実施の形態では2層構成の媒体について説明したが、媒体構成としては2層に限定するものではなく、透明誘電体層を本実施の形態と同様に、反射/透過の機能を有する反射層に隣接させ、かつ光入射側の反対側に設けることにより、本発明を3層構成、4層構成などのより多層の構造にも応用することができる。
【0077】
このように、本実施の形態に係る光ディスク10では、第1反射層12および第2反射層15からの反射光強度を透明誘電体層13の多重干渉効果によって向上させることができるものであり、該光ディスク10を再生する再生装置および再生方法では、従来の再生に比べて照射する光線の出力を下げても良好な再生信号を得ることができる。このため、上記光ディスク10を再生する光線が、これに適した出力に設定されている場合、従来に比べ低消費電力を達成することができる。
【0078】
また、光線の出力が特に上記光ディスク10に合わせた設定となっていない従来の光ディスク再生装置においても、該光ディスク10の再生を行うことは可能であり、この場合は、第1反射層12および第2反射層15からの反射光強度が向上することで、より良好な再生信号が得られる。
【0079】
【発明の効果】
本発明の光ディスクは、以上のように、上記第1反射層と隣接して配置され、情報再生のために照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層を備えていることを特徴としている。
【0080】
それゆえ、上記第1反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、透明誘電体層内において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第1反射層からの反射光強度が向上する。また、第2反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、第2反射層に照射される光線が透明誘電体層を透過する際に、透明誘電体層において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第2反射層からの反射光強度が向上する。
【0081】
これにより、2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることができるといった効果を奏する。
【0082】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側に設けられる構成とすることが好ましい。
【0083】
それゆえ、上記透明誘電体層における多重干渉の効果が顕著となるといった効果を奏する。
【0084】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の屈折率は、上記光線の入射側の反対側で接する母材の屈折率よりも大きい値を有することが好ましい。
【0085】
それゆえ、上記透明誘電体層の屈折率と上記母材の屈折率との差を大きくすることが容易となり、多重干渉効果を大きくすることができるといった効果を奏する。また、上記透明誘電体層の膜厚を小さくして多重干渉効果を得ることができるといった効果を奏する。
【0086】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の膜厚は、該透明誘電体層の屈折率をn、膜厚をd、上記光線の波長をλとする時、0<nd<λ/2を満たす範囲で設定されることが好ましい。
【0087】
それゆえ、透明誘電体層の膜厚が0<nd<λ/2を満たす中で該透明誘電体層の膜厚を設定することで、透明誘電体層の膜厚を最小として上記多重干渉効果を得ることができ、光利用効率を向上させることができるといった効果を奏する。
【0088】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2のうちの何れかの化合物からなる構成とすることが好ましい。
【0089】
それゆえ、上記透明誘電体層を従来の作製手法を応用して作製することができるといった効果を奏する。
【0090】
また、本発明の光ディスク装置は、以上のように、光ディスクを再生するための光線を出射する光源の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力に設定されていることを特徴としている。
【0091】
また、本発明の光ディスク方法は、以上のように、光ディスクを再生するための光線の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力にて照射されることを特徴としている。
【0092】
本発明に係る光ディスクでは、第1反射層および第2反射層からの反射光強度を透明誘電体層の多重干渉効果によって向上させることができる。このため、上記光ディスクを再生する光ディスク再生装置および光ディスク再生方法では、従来の再生に比べて照射する光線の出力を、上記光ディスクを再生するのに適した出力に設定することで、従来の再生に比べ低消費電力を達成することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す2層構造の光ディスクの断面図である。
【図2】上記光ディスクの再生を行う光ディスク再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】上記光ディスクにおける透明誘電体層の膜厚と第1層反射光量比との関係を示すグラフである。
【図4】上記光ディスクにおける透明誘電体層の膜厚と第2層反射光量比との関係を示すグラフである。
【図5】上記光ディスクにおける透明誘電体層の膜厚と第1反射層および第2反射層の反射率との関係をシミュレーション結果にて示したグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態を示す2層構造の光ディスクの断面図である。
【図7】従来の2層構造の光ディスクの断面図である。
【符号の説明】
10,10’ 光ディスク
12,12’ 第1反射層
13,13’ 透明誘電体層
14 第2母材(透明誘電体層と接する母材)
15,15’ 第2反射層
21 レーザー光源(光源)
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層構造の光ディスク、並びに該光ディスクを再生する光ディスク再生装置および光ディスク再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、情報の再生が光線により行われる光ディスクが、CD(Compact Disk)などとして実現されており、さらに情報の記録まで光線により行われる光ディスクが、MO(Magnet Optical Disk)などとして実現されている。このような光ディスクは、記録情報の大容量化と高密度化とを実現するものであるが、さらなる大容量化と高密度化とを実現するため、光ディスクを多層構造とすることが提案され、DVD(Digital Versatile Disk)では既に2層化が実現されている。
【0003】
従来の2層構造の光ディスクの構造例を図7に基づいて以下に説明する。尚、ここでは情報の再生を行う光線が図の下方から上方に照射されるものとして説明を行う。
【0004】
この光ディスク100では、光線の入射方向である下方から上方に向かって、第1母材101、第1反射層102、第2母材103、第2反射層104、および保護層105が順番に積層されている。第1母材101、第2母材103、および保護層105は透明な樹脂からなる。第1反射層102は半透明の金属膜からなり、第2反射層104は全反射の金属膜からなる。
【0005】
第1および第2母材101・103の上面には記録情報に対応した凹凸が形成されており、この凹凸に従って第1および第2反射層102・104が成膜されている。すなわち、第1および第2反射層102・104の凹凸によって、光線により再生される情報が固定的に記録されている。
【0006】
このような構造の光ディスク100は、既存のCDと同様に、その生産時に情報が固定的に記録され、この情報が光線により再生される。この時、第1反射層102と第2反射層104とには各々別個の情報が記録されているので、下方から出射される光線の焦点の位置を調節することにより、第1および第2反射層102・104に記録されている情報が個々に再生される。
【0007】
上記光ディスク100の生産方法の一例を以下に説明する。先ず、第1反射層102に記録する情報に対応した凹凸が予め形成されたスタンパ(図示せず)を使用し、樹脂成形により第1母材101が製作される。この第1母材101の上面に第1反射層102が金属のスパッタリングにより成膜される。
【0008】
次に、第1反射層102の表面に樹脂が流し込まれて第2母材用のスタンパ(図示せず)により第2母材103が形成される。この上面に金属のスパッタリングにより第2反射層104が成膜される。最後に樹脂成形により保護層105が形成されることにより、光ディスク100が生産される。
【0009】
このような光ディスク100の第1および第2反射層102・104から情報を読み取る光ディスク再生装置(図示せず)は、該光ディスク100に照射する光線を反射層上に集光する対物レンズ110の位置を調節し、第1および第2反射層102・104の一方にフォーカスをロックさせる。尚、上述のような光ディスク100では、通常は第1反射層102を主要的に利用し、第2反射層104は補助的に利用することが考えられている。
【0010】
上述した光ディスク100は、既存のCDと同様に機能するが、第1および第2反射層102・104の各々に情報が記録されているので、その情報の記録容量を倍増することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の光ディスク100における構成では、第1反射層102は以下の二通りの役割を果たす必要がある。
▲1▼ 第1反射層102にフォーカスをロックさせた時に、光を反射させて第1反射層102に記録されている情報だけを読み取るための役割。
▲2▼ 第2反射層104にフォーカスをロックさせた時に、光を透過させて第2反射層104に記録されている情報だけを読み取るための役割。
【0012】
上記▲1▼の役割を満足するためには、第1反射層102は表面での反射率が大きい方が、第1反射層102の情報を含む反射光の光量が大きくなり、目的の信号振幅も大きくなるので有利である。この時に要求される第1反射層102の性質は、膜厚が厚く、反射率が大きく、透過率が小さいというものである。
【0013】
一方で上記▲2▼の役割を満足するためには、第1反射層102は透過率が大きい方が、第2反射層104の情報を含む光(第2反射層104に到達する光)の光量が大きくなり、目的の信号振幅も大きくなるので有利である。この時に要求される第1反射層102の性質は、膜厚が薄く、反射率が小さく、透過率が大きいというものである。
【0014】
以上のように、第1反射層102は、第1反射層102へのフォーカス時と第2反射層104へのフォーカス時とで相異なる特性を同時に要求される。このため、実際には両方の特性を満足するよう、具体的には第1反射層102および第2反射層104のそれぞれの信号光量がほぼ同じ光量になるように、第1反射層102の光透過率が調整されている。あるいは、第1反射層102と第2反射層104との区別をつけるため若干の光量差を設けてある場合もあるが、信号光量があまりにも小さくなると相対的にノイズが大きくなり信号品質が悪くなるため、一般的にはほぼ同じオーダーの光量になるよう調整されている。
【0015】
光ディスク再生装置における低消費電力化の要請からは光ディスク100に入射される光線の光量は低い方が望ましく、信号品質を向上させる観点からは光量は大きい方が望ましい。しかしながら上記のような媒体構成の光ディスク100では、第1反射層102が上記▲1▼、▲2▼の両方の役割を同時に果たさなければならないため、上述のような調整がなされており、光利用効率の面で改善の余地があった。
【0016】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることのできる光ディスクを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ディスクは、上記の課題を解決するために、光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクにおいて、上記第1反射層と隣接して配置され、情報再生のために照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層を備えていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、上記第1反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、透明誘電体層内において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第1反射層からの反射光強度が向上する(第1反射層の反射率が増加する)。
【0019】
また、第2反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、第2反射層に照射される光線は透明誘電体層を透過する。この際、透明誘電体層においても多重反射は発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第2反射層からの反射光強度が向上する(第2反射層の反射率が増加する)。
【0020】
これにより、2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることができる。
【0021】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側に設けられる構成とすることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、上記透明誘電体層における多重干渉効果は、透明誘電体層を第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側にて隣接させる配置とすることで、その効果が顕著となる。
【0023】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の屈折率は、上記光線の入射側の反対側で接する母材の屈折率よりも大きい値を有することが好ましい。
【0024】
上記透明誘電体層の屈折率は、上記母材の屈折率との差が大きくなるほど多重干渉効果が大きくなる。そして、上記母材の屈折率は通常1.5程度であり、透明誘電体層の屈折率を母材の屈折率よりも大きいものとすることで、これらの屈折率の差を大きくすることが容易となる。また、上記透明誘電体層の屈折率は大きいほど、上記多重干渉効果を得ることのできる透明誘電体層の膜厚を小さくすることができる。
【0025】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の膜厚は、該透明誘電体層の屈折率をn、膜厚をd、上記光線の波長をλとする時、0<nd<λ/2を満たす範囲で設定されることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、上記第1反射層および第2反射層からの反射光量は、透明誘電体層の膜厚に対して一定の周期にて増減を繰り返し、透明誘電体層の膜厚がλ/2n増加する毎に極大値が発生する(光の多重干渉を利用しているため)。また、その最初の極大値は、透明誘電体層の光路長(nd)が、光ディスクに照射される光線の波長の1/2よりも小さくなる期間で必ず発生する。すなわち、透明誘電体層の膜厚が0<nd<λ/2を満たす中で該透明誘電体層の膜厚を設定することで、透明誘電体層の膜厚を最小として光利用効率を向上させることができる。
【0027】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2のうちの何れかの化合物からなる構成とすることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、透明誘電体層の材質として、透過率および屈折率が大きく、かつ一般的によく利用される材質を用いることで、該透明誘電体層を従来の作製手法を応用して作製することができる。
【0029】
また、本発明の光ディスク装置は、上記の課題を解決するために、光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクの再生を行う光ディスク再生装置において、光ディスクを再生するための光線を出射する光源の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力に設定されていることを特徴としている。
【0030】
また、本発明の光ディスク方法は、上記の課題を解決するために、光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクの再生を行う光ディスク再生方法において、光ディスクを再生するための光線の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力にて照射されることを特徴としている。
【0031】
本発明に係る光ディスクでは、第1反射層および第2反射層からの反射光強度を透明誘電体層の多重干渉効果によって向上させることができるものであり、該光ディスクを再生する光ディスク再生装置および光ディスク再生方法では、従来の再生に比べて照射する光線の出力を下げても良好な再生信号を得ることができる。このため、上記光ディスクを再生するのに適した光線出力に設定された光ディスク再生装置および光ディスク再生方法では、従来の再生に比べ低消費電力を達成することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0033】
本実施の形態に係る光ディスクの構成を、図1を参照して説明する。図1に示す光ディスク10では、光線の入射方向は図の下方から上方に向かってであり、該光ディスク10は光線の入射側から第1母材11、第1反射層12、透明誘電体層13、第2母材14、第2反射層15、および保護層16が順番に積層されている。
【0034】
第1および第2反射層12・15は、例えば、反射率の大きい金属からなり、光ディスク10に照射された光線がこれらの反射層で反射されることにより情報の再生が実行される。第2反射層15は全反射の金属膜からなり、一般的にはAlやAl合金等が用いられる。第1反射層12は、これに加えて第2反射層15の記録情報を読み取る際に光を透過する必要もあるため、薄い膜で形成され一般的には金、銀、Si等が用いられる。但し、反射率が大きく、かつ上記の条件を満たす金属であれば、これらの反射層の材質は特に何れの金属に限定されるものではない。
【0035】
透明誘電体層13は、透過率が大きく、かつ屈折率の大きい材質からなり、第1反射層12での反射光、第2反射層15への透過光、第2反射層15からの反射光に対してそれぞれ光多重干渉効果をもたらすものである。透明誘電体層13に使用可能な材質としては、例えば以下に記載する酸化物や窒化物が挙げられる。すなわち、透明誘電体層13は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2などの無機物質で形成することができる。これらの中で、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、MgF2が特に望ましいが、上記条件を満たすものであれば透明誘電体層13の材質は特に限定されるものではない。
【0036】
第1母材11、第2母材14、保護層16は、例えば透光性の有機樹脂からなる。本実施の形態に係る構成では、第1母材11が一般的に呼称される基板と同一であり代表的な材質としてはポリカーボネート製基板等が挙げられるが、この他にもアクリル樹脂、エポキシ樹脂などから作られた基板を用いることができる。第2母材14、保護層16としては、アクリルウレタン系UV硬化樹脂、アクリル系UV硬化樹脂、ポリウレタンアクリレート系のUV硬化型樹脂、アクリルウレタン系UV硬化樹脂などが挙げられるが、透光性、強度、残留応力、耐久度などの条件を満たせば特に限定されるものではない。
【0037】
次に光ディスク10の具体的な層構成と作製方法、本発明の特徴について説明する。
【0038】
光ディスク10に記録しようとする情報に対応した凹凸が予め形成されている厚さ0.6mmのポリカーボネートからなる透光性の基板、すなわち第1母材11上に、Ar雰囲気中でのスパッタリングにより金を15nm成膜し、第1反射層12を形成した。引き続きAr+N2混合ガス雰囲気中でのAlターゲットの反応性スパッタリングによりAlNを成膜し、透明誘電体層13を形成した。その表面に、紫外線硬化性の2P樹脂を30μmの膜厚にスピンコートで塗布し、ここにスタンパを圧着させて紫外線を照射することにより第2母材14を形成した。さらに、Ar雰囲気中でのスパッタリングによりAlを50nm成膜して第2反射層15とし、その上からUV硬化樹脂をスピンコートにて塗布した後、紫外線照射によって保護層16を硬化形成した。
【0039】
第2母材14の膜厚は従来と同様に30μm程度であるが、透明誘電体層13は光の多重干渉を利用するための層であるため、その膜厚は1μm未満であり、第1および第2反射層12・15は従来と同様に30μm程度に離反している。
【0040】
尚、本発明の特徴・効果を明らかにするため、透明誘電体層13の屈折率および膜厚を変化させて光ディスク10を作製して評価を行った。AlNの反応性スパッタ時のN2ガス流量比を変化させるとAlNの組成比を変化させることが可能であり、このAlNの組成比によって屈折率が変化するため、スパッタ条件の調整により透明誘電体層13の屈折率を所望の値に制御することが可能となる。また、透明誘電体層13の膜厚についてはスパッタ時間の調整によって制御が可能である。
【0041】
このようにして作製した光ディスク10について第1および第2反射層12・15の各ミラー部(情報の記録されていない領域)にフォーカスをロックし、各ディスクにおける反射光量の比較を行った。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る光ディスク10を再生するのに使用される光ディスク再生装置の概略構成を図2に示す。図2に示す光ディスク再生装置20は、レーザー光源21、ハーフミラー22、対物レンズ23、ビームスプリッタ24、フォトダイオード25・26を備えている。
【0043】
光ディスク再生装置20における光ディスク10の再生時には、レーザー光源21から照射される光線が、ハーフミラー22にて反射された後、対物レンズ23によって集光され、光ディスク10における第1反射層12または第2反射層15に照射される。対物レンズ23は、ハーフミラー22の反射光路上で光軸方向に移動自在に支持されている。また、光ディスク10は、図示しないターンテーブルによって対物レンズ23と対向する位置に支持されている。
【0044】
光ディスク10の第1反射層12または第2反射層15によって反射された反射光は、ハーフミラー22を透過して該反射光の検出系へ導かれる。ハーフミラー22の透過光路にはビームスプリッタ24が配置されており、このビームスプリッタ24の分光方向に2個のフォトダイオード25・26が1個ずつ配置されている。ここでは、フォトダイオード25を記録情報の再生信号の検出に用い、フォトダイオード26をサーボ信号の検出に用いるものとする。
【0045】
本実施の形態では、光ディスク10と光ディスク再生装置20とが相互に専用の装置として実現されるものとし、以下の説明では、透明誘電体層13の膜厚および屈折率を様々に変更した光ディスク10に対し、上記構成の光ディスク再生装置20によって情報の再生を行った。
【0046】
具体的には、再生される光ディスク10は、第1母材11、第2母材14、保護層16を同条件とし、かつ、第1反射層12の膜厚15nm、第2反射層15の膜厚50nmを固定とした上で、透明誘電体層13の屈折率を1.6〜2.2、膜厚0〜100(nm)の範囲内で種々の条件の光ディスク10を作製し、第1反射層12および第2反射層15の反射光量を評価した。尚、光ディスク再生装置20においては、レーザー波長を405nm、対物レンズの開口数(NA)を0.65とし、再生レーザーパワーを1.5mWの一定の条件で行った。その評価結果を以下の表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1に示した結果では、透明誘電体層13を設けない場合を従来例とし、該従来例の光ディスクにおける第1反射層からの反射光量(第1層反射光量)および第2反射層からの反射光量(第2層反射光量)をそれぞれ100とした。
【0049】
透明誘電体層13を設けた例では、該透明誘電体層13の屈折率を1.6,1.8、2.2の3種類とし、第1反射層12にフォーカスをロックした時の反射光量を従来例の第1層反射光量で割ったパーセント比率を第1反射層12における反射光量比として示した。同様に、第2反射層15にフォーカスをロックした時の反射光量を従来例の第2層反射光量で割ったパーセント比率を第2反射層15における反射光量比として示した。
【0050】
透明誘電体層13の屈折率を1.6とした例では、該透明誘電体層13の膜厚を30,60,100nmとした3種類の光ディスク10を作製し、うち膜厚60nmのものを実施例1とした。また、透明誘電体層13の屈折率を1.8とした例では、該透明誘電体層13の膜厚を10,20,30,40,60nmとした5種類の光ディスク10を作製し、うち膜厚40nmのものを実施例2とした。また、透明誘電体層13の屈折率を2.2とした例では、該透明誘電体層13の膜厚を10,20,30,40,60nmとした5種類の光ディスク10を作製し、うち膜厚30nmのものを実施例3、膜厚60nmのものを比較例1とした。
【0051】
すなわち、上記表1に示した結果において、透明誘電体層13の屈折率を1.6,1.8,2.2に設定したそれぞれの光ディスク10において、第2層反射光量比が最も大きくなる膜厚の場合を実施例1ないし3としている。また、透明誘電体層13の屈折率を2.2に設定した光ディスク10において、第2層反射光量比に変化がない膜厚の場合を比較例1としている。
【0052】
尚、上記表1における結果は、光ディスクのミラー部での反射光量を比較した結果によるものである。但し、光ディスクに記録される情報に対応した凹凸が存在する領域の再生信号についても上記と同様の実験によって確認し、信号の最大値が得られる条件がミラー部の反射光量が最大となる条件と一致していることを確認している。すなわち、上記表1の結果、およびこれに基づく以下の考察は、実際の再生信号光量を反映していると考えてよい。
【0053】
上記表1の結果を第1層・第2層反射光量比についてそれぞれグラフ化したものが図3および図4である。尚、図3および図4では、横軸に透明誘電体層13の膜厚、縦軸に第1層反射光量比(または第2層反射光量比)を示しているが、横軸に記載の膜厚範囲を0〜60nmとしている。
【0054】
上記図3および図4の結果より、透明誘電体層13を設けることによって、従来例に比べ、第1反射層12および第2反射層15のそれぞれにおける反射光量が向上し、光利用効率が向上することが分かった。
【0055】
すなわち、第1反射層12に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、透明誘電体層13内において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉する時、第1反射層12からの反射光強度が向上する(第1反射層12の反射率が増加する)。
【0056】
また、第2反射層15に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、第2反射層15に照射される光線は透明誘電体層13を透過する。しかしながら、この際にも、透明誘電体層13において幾分かの多重反射は発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉する時、第2反射層15からの反射光強度が向上する。但し、透明誘電体層13での多重干渉による反射光強度向上の効果は、第1反射層12からの反射光強度の向上効果に比べ、第2反射層15からの反射光強度の向上効果の方が小さい。本実施の形態に係る光ディスク10の固定条件、特に第1反射層を金15nmとした場合、透明誘電体層13の屈折率が大きいと第1層反射光量比に特に著しい光利用効率向上の効果が得られる。
【0057】
また、透明誘電体層13の屈折率については、屈折率が大きい方が第1層反射光量比および第2層反射光量比ともにその最大値が大きくなる。すなわち、実施例1<実施例2<実施例3の順で光利用効率向上の効果が見られた。また、屈折率が大きいほど第1層反射光量比および第2層反射光量比の最大値を取る膜厚が小さくなる。
【0058】
第1層反射光量比および第2層反射光量比はともに、透明誘電体層13がある程度の膜厚となる時に極大値を示し、透明誘電体層13の膜厚が大きくなりすぎるとピークを取った後減少に転じる。尚、第1反射層12および第2反射層15の材質等によっては、第1層反射光量比および第2層反射光量比のそれぞれが極大値を取るための透明誘電体層13の膜厚が一致しない場合もある。その場合には、トータルで考慮し、両光量比がともに向上する望ましい条件を選択すればよい。
【0059】
以上の実験結果に基づき、本発明の光ディスク10において以下の好適な実施形態が導かれる。
【0060】
先ず、上述の結果より、透明誘電体層13の屈折率nは、n>1.6において、光利用効率が向上しており、さらに、透明誘電体層13の屈折率が大きいほど、より光利用効率が向上している。
【0061】
これは、透明誘電体層13と第2母材14との境界面において反射を生じさせるためには、透明誘電体層13と第2母材14とが屈折率に差を持つことが必要なためであり、かつ、その差が大きいほど多重反射が多くなる(多重干渉の効果が大きくなる)。
【0062】
そして、透明誘電体層13と第2母材14との屈折率の大小は、透明誘電体層13の屈折率の方が小さい場合であっても原理的には多重干渉による反射光強度の向上効果は得られるものの、第2母材14の屈折率は通常1.5程度であり、透明誘電体層13の屈折率の方が小さい場合には透明誘電体層13と第2母材14とが屈折率の差を大きくとることは難しい。
【0063】
このため、透明誘電体層13は第2母材14よりも屈折率の大きい材質を選択することが好ましい。また、透明誘電体層13の光路長は(透明誘電体層13の屈折率n)×(透明誘電体層13の膜厚d)で決まるので、少ない膜厚dで同じ効果を得るためにも透明誘電体層13の屈折率nは大きいほうが望ましい。
【0064】
また、上記図3および図4では、第1層反射光量比および第2層反射光量比は、透明誘電体層13の膜厚がある程度の値となるとき極大値となり、その後は透明誘電体層13の膜厚が大きくなるにつれて減少している。しかしながら、本発明は光の多重干渉を利用した光利用効率向上技術であるため、実際には、図5に示すように、第1層反射光量比および第2層反射光量比は、透明誘電体層13の膜厚に対してある一定の周期にて増減を繰り返し、透明誘電体層13の膜厚がλ/2n増加する毎に極大値が発生する。図5は透明誘電体層13の膜厚と、第1反射層12および第2反射層15の反射率との関係をシミュレーションによって計算し、その結果をグラフ化したものである。
【0065】
尚、図5のグラフは、各層の屈折率と膜厚とを各パラメータとして仮定し、仮想の多層膜での光学計算によって求められている。これに比べ、図3および図4は、膜厚0すなわち透明誘電体層を設けない場合の反射率を100%として規格化したものであり、図5とは絶対値が異なっている。
【0066】
また、第1層反射光量比および第2層反射光量比における最初の極大値は、透明誘電体層13の光路長(nd)が、光ディスク10に照射される光線の波長の1/2よりも小さくなる期間で必ず発生する。すなわち、透明誘電体層13の膜厚dが0<nd<λ/2を満たす中で、該透明誘電体層13の膜厚を設定し、光利用効率を向上させることができる。但し、本発明の技術思想は上記条件に限るものではなく、膜厚がさらに大きい場合(すなわち、2回目以降の極大値が生じる膜厚となる場合)の多重干渉を利用した光利用効率向上をも含むものである。
【0067】
また、透明誘電体層13は、第2層反射光量比よりも第1層反射光量比に対して、特に著しい光利用効率向上の効果を与えるものである。すなわち、従来例よりも第1反射層12の反射光量が特に増強されるので、第2反射層15を再生する場合には、第2反射層15の反射光に第1反射層12の反射光がノイズとして悪影響を与える可能性がある。但し、前述のように、第1反射層12を主要な記録領域として利用し、第2反射層15を補助の記録領域として利用する場合には、第1反射層12だけでも良好に走査できることは有用である。
【0068】
但し、第2反射層15の反射光におけるノイズをできるだけ小さくするためには、透明誘電体層13の膜厚を第2層反射光量比の極大値を与える膜厚に設定するとよい。例えば、透明誘電体層13の屈折率が2.2の場合において、実施例3と比較例1とを比べると、第1層反射光量比については比較例1の場合の方が大きいが、第2層反射光量比が最大となる実施例3の方が第1層反射光量比と第2層反射光量比との差が小さく、第2反射層15の反射光に対する第1反射層12の反射光によるノイズを小さくできる。
【0069】
さらに、第1反射層12の反射光量と第2反射層15の反射光量とのバランスを保ちたい場合には、第1反射層12の膜厚調整を含めたさらなる光利用効率の最適化が可能となる。
【0070】
すなわち、第1反射層12の反射光量は、透明誘電体層13での多重干渉によって大幅に向上させることが可能であり、第1反射層12の膜厚を15nmよりもさらに薄くして第1反射層12の透過率を大きくしても、従来例より大きな反射光量を得ることが可能である。一方、第2反射層15の反射光量は透明誘電体層13での多重干渉による向上は少ないものの、第1反射層12の膜厚を薄くして第2反射層15の反射光量に振り分けることで直接的に向上させることができる。
【0071】
これにより、第1反射層12の反射光量と第2反射層15の反射光量とがほぼ同じとなるように最適化することも可能である。尚、この時、薄膜化により第1反射層12は透過率が変わるのみで屈折率の値には変化がないため、透明誘電体層13での多重干渉効果も変化せず、上述の考察における屈折率・膜厚条件はそのまま転用できるものである。
【0072】
また、上述のように第1反射層12に光線のフォーカスを確実にロックできれば、この位置を基準として光線のフォーカスを第2反射層15に移動させることは容易なので、第1および第2反射層12・15の両方にフォーカスを良好にロックさせることができる。
【0073】
また、透明誘電体層13の膜厚は光の多重干渉を利用するための層であるため、数10〜数100nmのオーダーであり、これは第1反射層12成膜後に引き続きスパッタリングなどの薄膜技術により形成することができるので生産性も良好である。
【0074】
透明誘電体層13以外の各層は従来の光ディスクと同様の構成であるので、スピンコートやスパッタリングなどの薄膜技術により形成することができ、生産性も良好である。
【0075】
尚、以上の説明における光ディスク10は、第1母材11が一般的に呼称される基板と同一であり基板側から光が入射する構成として示した。しかしながら、近年、高密度化を目的として基板を通さず膜面側から光入射する方式が提案されており、本発明は膜面側からの光入射の再生方式においても適用可能である。但しその場合は媒体構成が逆になるため、図6に示すように、光ディスク10’において、第1母材11、第2反射層15’、第2母材14、透明誘電体層13’、第1反射層12’、保護層16という順序になり、光は保護層16側から入射される。また、上記構成の光ディスク10’において、媒体構成は異なっても光学的な光路や多重干渉による光利用効率向上の原理は上記で説明した光ディスク10の場合と同様であり、光の入射方向に応じて構成を変化させれば本発明を適応することができる。
【0076】
また、本実施の形態では2層構成の媒体について説明したが、媒体構成としては2層に限定するものではなく、透明誘電体層を本実施の形態と同様に、反射/透過の機能を有する反射層に隣接させ、かつ光入射側の反対側に設けることにより、本発明を3層構成、4層構成などのより多層の構造にも応用することができる。
【0077】
このように、本実施の形態に係る光ディスク10では、第1反射層12および第2反射層15からの反射光強度を透明誘電体層13の多重干渉効果によって向上させることができるものであり、該光ディスク10を再生する再生装置および再生方法では、従来の再生に比べて照射する光線の出力を下げても良好な再生信号を得ることができる。このため、上記光ディスク10を再生する光線が、これに適した出力に設定されている場合、従来に比べ低消費電力を達成することができる。
【0078】
また、光線の出力が特に上記光ディスク10に合わせた設定となっていない従来の光ディスク再生装置においても、該光ディスク10の再生を行うことは可能であり、この場合は、第1反射層12および第2反射層15からの反射光強度が向上することで、より良好な再生信号が得られる。
【0079】
【発明の効果】
本発明の光ディスクは、以上のように、上記第1反射層と隣接して配置され、情報再生のために照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層を備えていることを特徴としている。
【0080】
それゆえ、上記第1反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、透明誘電体層内において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第1反射層からの反射光強度が向上する。また、第2反射層に光線のフォーカスをロックして照射を行う際には、第2反射層に照射される光線が透明誘電体層を透過する際に、透明誘電体層において多重反射が発生し、これらの多重反射光が互いに強めあう方向に多重干渉することで、第2反射層からの反射光強度が向上する。
【0081】
これにより、2層以上の反射層を有する多層構造の光ディスクにおいて、これら多層の反射層からの反射光量を向上させることができるといった効果を奏する。
【0082】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側に設けられる構成とすることが好ましい。
【0083】
それゆえ、上記透明誘電体層における多重干渉の効果が顕著となるといった効果を奏する。
【0084】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の屈折率は、上記光線の入射側の反対側で接する母材の屈折率よりも大きい値を有することが好ましい。
【0085】
それゆえ、上記透明誘電体層の屈折率と上記母材の屈折率との差を大きくすることが容易となり、多重干渉効果を大きくすることができるといった効果を奏する。また、上記透明誘電体層の膜厚を小さくして多重干渉効果を得ることができるといった効果を奏する。
【0086】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層の膜厚は、該透明誘電体層の屈折率をn、膜厚をd、上記光線の波長をλとする時、0<nd<λ/2を満たす範囲で設定されることが好ましい。
【0087】
それゆえ、透明誘電体層の膜厚が0<nd<λ/2を満たす中で該透明誘電体層の膜厚を設定することで、透明誘電体層の膜厚を最小として上記多重干渉効果を得ることができ、光利用効率を向上させることができるといった効果を奏する。
【0088】
また、上記光ディスクにおいて、上記透明誘電体層は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2のうちの何れかの化合物からなる構成とすることが好ましい。
【0089】
それゆえ、上記透明誘電体層を従来の作製手法を応用して作製することができるといった効果を奏する。
【0090】
また、本発明の光ディスク装置は、以上のように、光ディスクを再生するための光線を出射する光源の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力に設定されていることを特徴としている。
【0091】
また、本発明の光ディスク方法は、以上のように、光ディスクを再生するための光線の出力が、上記構成の光ディスクを再生するのに適した出力にて照射されることを特徴としている。
【0092】
本発明に係る光ディスクでは、第1反射層および第2反射層からの反射光強度を透明誘電体層の多重干渉効果によって向上させることができる。このため、上記光ディスクを再生する光ディスク再生装置および光ディスク再生方法では、従来の再生に比べて照射する光線の出力を、上記光ディスクを再生するのに適した出力に設定することで、従来の再生に比べ低消費電力を達成することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す2層構造の光ディスクの断面図である。
【図2】上記光ディスクの再生を行う光ディスク再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】上記光ディスクにおける透明誘電体層の膜厚と第1層反射光量比との関係を示すグラフである。
【図4】上記光ディスクにおける透明誘電体層の膜厚と第2層反射光量比との関係を示すグラフである。
【図5】上記光ディスクにおける透明誘電体層の膜厚と第1反射層および第2反射層の反射率との関係をシミュレーション結果にて示したグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態を示す2層構造の光ディスクの断面図である。
【図7】従来の2層構造の光ディスクの断面図である。
【符号の説明】
10,10’ 光ディスク
12,12’ 第1反射層
13,13’ 透明誘電体層
14 第2母材(透明誘電体層と接する母材)
15,15’ 第2反射層
21 レーザー光源(光源)
Claims (7)
- 光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクにおいて、
上記第1反射層と隣接して配置され、情報再生のために照射される光線に対して多重干渉効果を与える透明誘電体層を備えていることを特徴とする光ディスク。 - 上記透明誘電体層は、第1反射層に対して上記光線の入射側の反対側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
- 上記透明誘電体層の屈折率は、上記光線の入射側の反対側で接する母材の屈折率よりも大きい値を有することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
- 上記透明誘電体層の膜厚は、該透明誘電体層の屈折率をn、膜厚をd、上記光線の波長をλとする時、0<nd<λ/2を満たす範囲で設定されることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
- 上記透明誘電体層は、AlN、SiN、AlSiN、AlTaN、TaO、SiO、SiO2、TiO2、ZnS、Al2O3、SiAlOH、MgF2のうちの何れかの化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
- 光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクの再生を行う光ディスク再生装置において、
光ディスクを再生するための光線を出射する光源の出力が、上記請求項1ないし5の何れかに記載の光ディスクを再生するのに適した出力に設定されていることを特徴とする光ディスク再生装置。 - 光の反射および透過機能を有する少なくとも1層の第1反射層と、光の反射機能のみを有する1層の第2反射層とを備えた多層構造の光ディスクの再生を行う光ディスク再生方法において、
光ディスクを再生するための光線の出力が、上記請求項1ないし5の何れかに記載の光ディスクを再生するのに適した出力にて照射されることを特徴とする光ディスク再生方法。
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US8144567B2 (en) | 2008-05-20 | 2012-03-27 | Hitachi, Ltd. | Optical disc and optical disc apparatus |
-
2002
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