JP2004060723A - 油圧シリンダのシール構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ピストンロッド5に取付けられたピストン4をシリンダ1内に移動自在に設け、このシリンダ1に対して互いに隣接配置されたパッキ14及びバックアップリング17を介して前記ピストンロッド5とシリンダ1との摺動隙間をシールする油圧シリンダのシール構造において、パッキン14とバックアップリング17との間に、バックアップリング17方向へ向かってパッキン14に加わる軸方向の力によりバックアップリング17を拡径方向へ変形させるための拡径方向変形手段18を設けた。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ側に設けられてピストンロッドとシリンダとの間の摺動隙間をシールしたり、ピストン側に設けられてシリンダとピストンロッドとの間の摺動隙間をシールしたりする油圧シリンダのシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の油圧シリンダとしては、例えば、図5,図6に示すものがあるが、この油圧シリンダは、両端が塞がれたシリンダ1内に二つの油室2,3を区画するピストン4を移動自在に設け、このピストン4が一端に取付けられたピストンロッド5を前記シリンダ1に貫通させるとともに、このシリンダ1におけるピストンロッド5の貫通部にはピストンロッド5とシリンダ1との間の摺動隙間を油密的にかつ摺動可能にシールするシール構造6が設けられている。
【0003】
又、シリンダ1には油室2,3に連通する油路7,8がそれぞれ設けられ、外部の図示しない油圧源からの作動油を油路7を介して油室2に供給すると共に、油室3を油路8を介して図示しない外部のタンクに連通することで、ピストンロッド5を収縮させる一方、前記油圧源からの作動油を油路8を介して油室3に供給すると共に、油室2を油路7を介して外部のタンクに連通することで、ピストンロッド5を伸長させるようになっている。
【0004】
ところで、シリンダ1におけるピストンロッド5の貫通孔9内周には、図6に示すように、二本の環状溝10,11と、シリンダ1の外側に臨む環状切欠部12とが設けられている。
【0005】
この環状溝10,11内及び環状切欠部12内には上記のシール構造6、即ち、油室側の環状溝10内にはウレタン樹脂等からなる第一のUパッキン13が、また、大気側の環状溝11内には同じくウレタン樹脂等からなる第二のUパッキン14とその背面側のバックアップリング17が、そして、環状切欠部12内にはワイパーシール15がそれぞれ挿着されている。
【0006】
前記第一のUパッキン13は、油室側の高圧を受けるバッファシールとして機能するものであり、ピストンロッド5の表面と摺接するリップ部13aを有している。
【0007】
前記第二のUパッキン14は、ピストンロッド5の表面に付着して大気側に出る油膜の厚みを適切な値にコントロールするものであり、同じくピストンロッド5の表面と摺接するリップ部14aを有している。
【0008】
又、油室2側の高圧を受けた場合にこのリップ部14aの背面側が貫通孔9側に食い込むのを阻止するように、この第二のUパッキン14を補強するナイロン樹脂等よりなるバックアップリング17が隣接配置されている。
【0009】
前記ワイパーシール15は、図示はしないが、外部に臨むダストリップ部と、内側に臨むオイルリップ部とを備え、金属製の芯金と一体的に形成されるとともに、この芯金が前記環状切欠部12に嵌着されている。
【0010】
上記のように構成されたシール構造6では、油室2側が高圧となった場合、第一のUパッキン13がバッファシールとして機能するとともに、そのリップ部13aの突端縁で貫通孔9とピストンロッド5との隙間を通して第二のUパッキン14側へ移動しようとする作動油を所定の膜圧までカットし、第二のUパッキン14へは所定厚みの油膜のみを送るようになっている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の油圧シリンダのシール構造6にあっては、以下に示すような問題点が考えられる。
【0012】
即ち、第二のUパッキン14の背面側に隣接配置したバックアップリング17はリップ部14aの背面側が貫通孔9側に食い込むのを防止することを目的としたものであるので、矩形断面を有するリング状に形成されるとともに、環状溝11に挿着されたときにその内周面とピストンロッド5表面とが強く摺接しない程度に余裕を持った内径に設定されている。
【0013】
このため、バックアップリング17が成形不良等の原因によって設計通りの形状にならなかった場合、具体的には、内径が設計値よりも小さくなった場合や、環状溝11内に偏心した状態で組付けられた場合には、バックアップリング14における内周面全体又はその一部がピストンロッド5表面に強く摺接してピストンロッド5表面の油膜を掻き取ってしまう。
【0014】
この場合には、ピストンロッド5表面がいわゆるドライの状態となり、リップ部14aを磨耗させたり、損傷させたりして作動油漏れを引き起こすことが危惧される。
【0015】
そこで、本発明の目的は、第二のUパッキンに隣接配置されたバックアップリングがピストンロッドの表面に強く摺接してピストンロッド表面に形成された油膜を掻き取ることのない油圧シリンダのシール構造を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の一つの手段は、ピストンロッドに取付けられたピストンをシリンダ内に移動自在に設け、このシリンダに対して互いに隣接配置されたパッキン及びバックアップリングを介して前記ピストンロッドとシリンダとの摺動隙間をシールする油圧シリンダのシール構造において、パッキンとバックアップリングとの間に、バックアップリング方向へ向かってパッキンに加わる軸方向の力によりバックアップリングを拡径方向へ変形させるための拡径方向変形手段を設けたことを特徴とするものである。
【0017】
この場合、バックアップリングを断面長方形に形成するとともに、パッキンとの当接面となる長辺を外方程パッキン側に向かう傾斜面とし、この傾斜面を前記拡径方向変形手段とするのが好ましい。
【0018】
又、バックアップリングの前記傾斜面に径方向に伸びる潤滑溝を複数個所定間隔をおいて設けても良い。
【0019】
更に、本発明の他の手段は、ピストンロッドに取付けられたピストンをシリンダ内に移動自在に設け、このピストンに対して互いに隣接配置されたパッキン及びバックアップリングを介して前記シリンダとピストンとの間の摺動隙間をシールする油圧シリンダのシール構造において、パッキンとバックアップリングとの間に、バックアップリング方向へ向かってパッキンに加わる軸方向の力によりバックアップリングを縮径方向へ変形させるための縮径方向変形手段を設けたことを特徴とするものでもある。
【0020】
この場合、バックアップリングを断面長方形に形成するとともに、パッキンとの当接面となる長辺を内方程パッキン側に向かう傾斜面とし、この傾斜面を前記縮径方向変形手段とすることが好ましい。
【0021】
又、バックアップリングの前記傾斜面に径方向に伸びる潤滑溝を複数個設けても良い。
【0022】
上記各手段において、バックアップリングは一箇所が径方向に切断されていても良い。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を高圧建機用シリンダのシール構造に具体化した実施の形態を図に基づいて説明する。
【0024】
この油圧シリンダのシール構造は、前述した図5,6に示す従来の油圧シリンダ1の第二のUパッキン14とバックアップリング17との間に、バックアップリング17方向へ向かって第二のUパッキン14に加わる軸方向の力によりバックアップリング17を拡径方向へ変形させるための拡径方向変形手段を設けた点に特徴を有するものであり、その他の構成は、上記の従来構造と同様なので、図中に同一の符号を付すのみとし、その説明を省略する。
【0025】
即ち、本発明の一の実施形態では、図1に示すように、第二のUパッキン14の背面にバックアップリング17の内面を当接し、バックアップリング17の内面に傾斜面18を形成し、この傾斜面18を拡径方向変形手段として利用している。
【0026】
この場合、パッキン14の背面は、垂直面でも良く、図示のように傾斜面18aとしても良い。
【0027】
更に、第二のUパッキン14の背面側に隣接配置されたバックアップリング17を断面長方形に形成するとともに、第二のUパッキン14との当接面となる長辺を外方程第二のUパッキン14側に向かう傾斜面18とし、この傾斜面18を前記拡径方向変形手段としても良い。
【0028】
このバックアップリング17の前記傾斜面18には、図2に示すように、径方向に伸びる潤滑溝19が複数個所定間隔をおいて設けられており、第二のUパッキン14との当接状態において、この潤滑溝19内に作動油が侵入し、両者の間の摩擦抵抗を著しく低減させるようになっている。
【0029】
又、バックアップリング17は、例えば、C型リングのように、その一箇所が径方向に切断されており、第二のUパッキン14から軸方向の力が加わったときに容易に拡径し易いようになっている。
【0030】
従って、第二のUパッキン14にシリンダ伸縮作動で発生する油圧負荷に起因して発生する軸方向の力(矢印Pに示す)が加わると、前記傾斜面18,18a又は傾斜面18のみによる分力で、所謂くさび作用によってこのバックアップリング17が拡径方向に容易に変形するようになっている。
【0031】
上記のように構成された油圧シリンダ1では、第一のUパッキン13のリップ部13aは,その突端縁がピストンロッド5の外周に摺接した状態となっているので、例えば、ピストンロッド5の伸長行程においては、ピストンロッド5はその表面に付着した油膜を適宜の厚さにカットされた状態で第一のUパッキン13上を摺動移動するとともに、このリップ部13aにより油室2側の高圧が第二のUパッキン14に直接影響を及ぼさないようにしている。
【0032】
従って、この第二のUパッキン14には減圧された圧力が加わり、この油圧負荷に起因して発生する軸方向の力P、即ち、第二のUパッキン14を大気側へ押す力が発生する。
【0033】
このとき、バックアップリング17は、第二のUパッキン14との当接面となる長辺を外方程第二のUパッキン14側に向かう傾斜面18としているので、第二のUパッキン14が大気側へ押されると、前記くさび作用によりバックアップリング17自体が傾斜面18に沿って外方に移動し、全体が拡径するように変形するとともに、図3に示すように、バックアップリング17内周面とピストンロッド5表面との間に適切な隙間を形成する。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、第二のUパッキン14にバックアップリング17方向へ向かう軸方向の力が加わると、この力を利用してバックアップリング17自体を拡径方向に変形させるので、例えば、バックアップリング17の内径が製造誤差等により設計値よりも小さくなった場合でも、上記の拡径作用により前記内周面とピストンロッド5表面との摺接状態を緩和したり、適切な隙間を形成したりすることができる。
【0035】
従って、従来例で示したような、バックアップリング17の内周面全周又は一部がピストンロッド5表面に強く摺接してピストンロッド5表面の油膜を掻き取ってしまい、リップ部14aを磨耗させたり、損傷させたりして作動油漏れを引き起こすという不具合を確実に防止することができる。
【0036】
又、バックアップリング17が環状溝11内に偏心した状態で組付けられた場合でも、上記の拡径方向への変形により調芯されるので、上記と同様の作用・効果を発揮する。
【0037】
又、バックアップリング17の長辺を傾斜面18とすることによって本発明の拡径方向変形手段としたので、バックアップリング17自体を容易に製造でき、安価に実施化できる。
【0038】
又、バックアップリング17の傾斜面18に潤滑溝19を複数個所定間隔をおいて設けたので、この潤滑溝19内に供給された作動油により傾斜面18に沿ってバックアップリング17をスムーズに移動させることができる。
【0039】
又、バックアップリング17の一箇所を切断しているので、上記の拡径方向への変形をスムーズに行うことができる。
【0040】
尚、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、次のように変更して具体化することもできる。
【0041】
1)前記実施の形態では、シリンダ1側に設けられたパッキン14及びバックアップリング17について説明したが、勿論、ピストン4側に設けられたパッキン22及びバックアップリング23に具体化しても良い。
【0042】
この場合には、図4に示すように、ピストン4に設けられた環状溝21にパッキン22及びバックアップリング23が挿着されるので、バックアップリング23のパッキン22との当接面となる長辺を内方程パッキン22側に向かう傾斜面24とし、この傾斜面24を前記縮径方向変形手段としている点において相違する。
【0043】
この場合には、バックアップリング23方向に向かう軸方向の力がパッキン22に加わると、上記のくさび作用によりバックアップリング23自体が縮径方向に変形され、バックアップリング23のシリンダ1に対する摺接度合いが調整できる。
【0044】
従って、バックアップリング23の外周面がシリンダ1の内周面に強く摺接してシリンダ1内周面の油膜を掻き取ってしまい、バックアップリング23やパッキン22のリップ部を磨耗させたり、損傷させたりするという不具合を確実に防止することができる。
【0045】
2)前記実施の形態では、第二のUパッキン14に具体化したが、バックアプリングを有する第一のUパッキン13に具体化しても良い。
【0046】
3)前記実施の形態では、バックアップリング17側に本件発明の拡径方向変形手段を設けたが、勿論パッキン側に拡径方向変形手段を設けても良い。
【0047】
4)前記実施の形態では、バックアップリング17の第二のUパッキン14側となる長辺のみを傾斜面としたが、両側の長辺を傾斜面18としても良い。この場合には、バックアップリング17を環状溝11内に組付ける際の誤組付けを防止できる。
【0048】
5)本実施の形態では、高圧建機用シリンダを示したが、これに限定されるものではなく、一般的な油圧シリンダに具体化しても良いことは勿論である。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果がある。
【0050】
1)請求項1の発明によれば、バックアップリング方向に向かってパッキンに加わる軸方向の力を利用してバックアップリング自体を拡径方向に変形させ、バックアップリングのピストンロッドに対する摺接度合いを調整できるので、例えば、バックアップリングの内周面がピストンロッド表面に強く摺接してピストンロッド表面の油膜を掻き取ってしまい、バックアップリングやパッキンのリップ部を磨耗させたり、損傷させたりして作動油漏れを引き起こすという不具合を確実に防止することができる。
【0051】
2)請求項5の発明によれば、バックアップリング方向に向かってパッキンに加わる軸方向の力を利用してバックアップリング自体を縮径方向に変形させ、バックアップリングのシリンダに対する摺接度合いを調整できるので、例えば、バックアップリングの外周面がシリンダの内周面に強く摺接してシリンダ内周面の油膜を掻き取ってしまい、バックアップリングやパッキンのリップ部を磨耗させたり、損傷させたりするという不具合を確実に防止することができる。
【0052】
3)請求項2,3及び6の発明によれば、バックアップリングの長辺を傾斜面とすることによって本発明の拡径又は縮径方向変形手段としたので、バックアップリング自体を容易に製造でき、安価に実施化できる。
【0053】
4)請求項3及び7の発明によれば、バックアップリングの傾斜面に潤滑溝を複数個所定間隔をおいて設けたので、この潤滑溝内に作動油が供給されると、傾斜面に沿ってバックアップリングをスムーズに移動させることができる。
【0054】
5)請求項8の発明によれば、又、バックアップリングの一箇所を径方向に切断しているので、バックアップリングの拡径又は縮径方向への変形をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す油圧シリンダのシール構造を示す要部断面である。
【図2】バックアップリングを示す平面図である。
【図3】図1に示す油圧シリンダのシール構造において、バックアップリングの作動状態を示す要部断面である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す油圧シリンダのロッドシール構造を示す要部断面である。
【図5】従来の油圧シリンダを示す断面図である。
【図6】従来の油圧シリンダのロッドシール構造を示す要部断面である。
【符号の説明】
1 シリンダ
4 ピストン
5 ピストンロッド
14 第二のパッキン
17 バックアップリング
18 18a 傾斜面(拡径方向変形手段)
24 傾斜面(縮径方向変形手段)
Claims (7)
- ピストンロッドに取付けられたピストンをシリンダ内に移動自在に設け、このシリンダに対して互いに隣接配置されたパッキン及びバックアップリングを介して前記ピストンロッドとシリンダとの摺動隙間をシールする油圧シリンダのシール構造において、パッキンとバックアップリングとの間に、バックアップリング方向へ向かってパッキンに加わる軸方向の力によりバックアップリングを拡径方向へ変形させるための拡径方向変形手段を設けたことを特徴とする油圧シリンダのシール構造。
- バックアップリングを断面長方形に形成するとともに、パッキンとの当接面となる長辺を外方程パッキン側に向かう傾斜面とし、この傾斜面を前記拡径方向変形手段とした請求項1に記載の油圧シリンダのシール構造。
- バックアップリングの前記傾斜面に径方向に伸びる潤滑溝を複数個所定間隔をおいて設けた請求項2に記載の油圧シリンダのシール構造。
- ピストンロッドに取付けられたピストンをシリンダ内に移動自在に設け、このピストンに対して互いに隣接配置されたパッキン及びバックアップリングを介して前記シリンダとピストンとの間の摺動隙間をシールする油圧シリンダのシール構造において、パッキンとバックアップリングとの間に、バックアップリング方向へ向かってパッキンに加わる軸方向の力によりバックアップリングを縮径方向へ変形させるための縮径方向変形手段を設けたことを特徴とする油圧シリンダのシール構造。
- バックアップリングを断面長方形に形成するとともに、パッキンとの当接面となる長辺を内方程パッキン側に向かう傾斜面とし、この傾斜面を前記縮径方向変形手段とした請求項4に記載の油圧シリンダのシール構造。
- バックアップリングの前記傾斜面に径方向に伸びる潤滑溝を複数個設けた請求項5に記載の油圧シリンダのシール構造。
- 前記バックアップリングは一箇所が径方向に切断されている請求項1,2,3,4,5又は6に記載の油圧シリンダのシール構造。
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