JP2004059626A - 油性印刷インキの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水中での湿式粉砕工程を含み、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力に格段優れる印刷物が得られる油性印刷インキをより低エネルギーで製造できる新規な製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程を順に含んでなる油性印刷インキの製造方法。
1)粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る第一工程。2)第一工程で得られた水性スラリーと印刷インキ用油性ワニスとを混合し水を除去して油性混合物を得る第二工程。3)第二工程で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする第三工程。
【選択図】 なし。
【解決手段】下記工程を順に含んでなる油性印刷インキの製造方法。
1)粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る第一工程。2)第一工程で得られた水性スラリーと印刷インキ用油性ワニスとを混合し水を除去して油性混合物を得る第二工程。3)第二工程で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする第三工程。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性印刷インキの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油性印刷インキの製造方法としては、各種の方法が知られている。具体的には次の様な製造方法がある。
【0003】
▲1▼粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を得て、この混合物を顔料化してβ型結晶のみとしてから洗浄濾過し、乾燥して粉末のβ型銅フタロシアニンを得て、これを印刷インキ用油性ワニスとを混合し分散する方法。
【0004】
▲2▼粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を得て、この混合物を顔料化してβ型結晶のみとしてから洗浄濾過し、ウエットケーキを得て、これを印刷インキ用油性ワニスとを混合しフラッシングして分散する方法。
【0005】
▲3▼粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を得て、これを印刷インキ用油性ワニスとを混合し、ワニス混合物中で顔料化と分散を同時に行い、銅フタロシアニンのβ型結晶のみとし分散する方法(特開平7−70497号公報、特開平9−272833号公報)。
【0006】
これらの方法は、粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕する工程を含んでいるが、乾式粉砕は粉砕に要するエネルギーが極めて大きくなると共に粉塵が発生しやすいという欠点を有している。そこで、この様な乾式粉砕での欠点が解消される方法として、最近、粉砕メディアを含む水中で粗製銅フタロシアニンを粉砕する工程を含む印刷インキの製造方法が注目されている。
【0007】
これらに関する公知技術としては、例えば、1)特開昭47−11033号公報、特開昭52−49240号公報、米国特許4,427,810号公報では、粗製銅フタロシアニンを界面活性剤等の存在下での湿式粉砕によるβ型結晶の銅フタロシア二ン顔料の製造方法、2)特開平6−73300号公報、特開平6−80898号公報では、湿式粉砕によるα型結晶の銅フタロシア二ン顔料の製造方法、3)特開平7−53889号公報では、ソルトミリングでの湿式粉砕による銅フタロシア二ン顔料の製造方法、4)特開平9−183916号公報では、粗製顔料の湿式粉砕による顔料ペーストの製造方法、5)特開2000−345064号公報、特開2000−355661号公報では、粗製銅フタロシアニン反応混合物の湿式粉砕による銅フタロシアニン顔料の製造方法等が知られている。
【0008】
しかしながら、上記した様な公知技術においては、いずれも、一旦β型銅フタロシアニンが乾燥される結果、水中での湿式粉砕で折角低エネルギーで微細な顔料粒子が生成しても、この乾燥により多くのエネルギーが消費される上、顔料が再凝集したりして油性ワニス中への分散が不充分となり、この工程を経て得られた顔料を油性印刷インキに用いた場合、印刷物の着色力や彩度が低下するという欠点を有している。
【0009】
仮に上記▲3▼の方法において、乾式粉砕に代えて水中での湿式粉砕を適用しようとしても、粉砕に要した多量の水を含むため顔料化と分散を安定的に行うのは容易でない。
【0010】
さらに、湿式粉砕により得られるα型結晶とβ型結晶からなる銅フタロシアニンの水性スラリーと油性印刷インキ用ワニスとから油性印刷インキを製造する方法は知られていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、水中での湿式粉砕工程を含み、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力に格段優れる印刷物が得られる油性印刷インキをより低エネルギーで製造できる新規な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水中での湿式粉砕工程を含み、かつβ型銅フタロシアニン顔料を乾燥する工程を含まない様にして低エネルギーで油性印刷インキを製造することにより、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力に格段優れた印刷物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、下記工程を順に含んでなる油性印刷インキの製造方法に関する。
1)粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る第一工程。
2)第一工程で得られた水性スラリーと印刷インキ用油性ワニスとを混合し水を除去して油性混合物を得る第二工程。
3)第二工程で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする第三工程。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明(上記第一工程、第二工程及び第三工程を含む。)を各工程毎に詳細に説明する。
【0015】
一般的に、粗製銅フタロシアニンは、実質的にβ型結晶のみからなり、そのままでは着色剤として機能しない粗大な粒子からなる。
【0016】
本発明における第一工程としては、上記のような粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る。この際の粗製銅フタロシアニンとしては、公知慣用のワイラー法、フタロニトリル法等で得られたものがいずれも使用出来る。また、これらの粗製銅フタロシアニンの形状としては、粉末状、含水ケーキ状もしくは水性懸濁状の何れでも良いが、水性媒体中での湿式粉砕であることと粗製フタロシア二ンの製造に伴うエネルギーコストなどの削減のため、含水ケーキ状もしくは水性懸濁状のものが好ましい。特に大量生産の場合、製造工程を自動化しやすい点で水性懸濁状が好ましい。
【0017】
本発明の製造方法において、前記した様に粗製銅フタロシアニンは水中で粉砕する。この際、粉末状の粗製銅フタロシアニンを用いる場合等においては、粗製銅フタロシアニンを水に湿潤させやすくするため、水には必要に応じて界面活性剤や有機溶剤を一部併用することが出来る。
【0018】
この際用いる界面活性剤としては、粗製銅フタロシア二ンが水によって湿潤されれば良く、特に限定されないが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。この際の粗製銅フタロシア二ン/界面活性剤比率(質量比)は、その種類にも依るが、例えば、100/0〜60/40の範囲である。なかでも、100/0〜95/5の範囲となるようにすることが好ましい。質量比がこの範囲にあると、第一工程においてα型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーが得られ、第二工程においても油性ワニスが水中にエマルション化せず、容易に銅フタロシアニンを含有する油性混合物が得られる。
【0019】
また、この際に用いる有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤の水と相溶する親水性有機溶剤等が挙げられる。必要ならば、親水性有機溶剤にさらにそれと相溶する疎水性有機溶剤を少量併用することが出来る。この際の水/有機溶剤比率(質量比)は、例えば、100/0〜51/49の範囲である。しかしながら、有機溶剤の種類や使用量によってはα型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーが得られない場合もあるため、粉砕時の水には極力有機溶剤を含ませない方が好ましい。
【0020】
粉砕に用いる水と有機溶剤との合計使用量は、水性スラリーの粘度を考慮した点で、質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、1〜30部とすることが好ましい。
【0021】
粉砕は、例えば、ロッド状や球状で、金属、ガラス、セラミックス等の各種素材の粉砕メディアを用いて、振動ミル、アトライター、サンドミル、アジテーターミル等の粉砕装置で行うことが出来る。粉砕メディアの使用量は、通常、質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、10〜5000部とすることが好ましい。
【0022】
粉砕の条件は、用いる粉砕メディアと粉砕装置等により適宜決定すれば良いが、粉砕装置内の温度は5〜80℃で、0.1〜24時間粉砕を行うことが好ましい。粉砕によりβ型結晶にはα型結晶が混在してくる。
【0023】
粉砕物のα型結晶含有率は、用いる粉砕装置の選定を含め粉砕時間を除く粉砕条件を一定に固定して、粉砕物を経過した粉砕時間毎に適量サンプリングし、その試料についての粉末X線回折測定によりα型結晶含有率−粉砕時間との検量線を作製し、それから求めることが出来る。
【0024】
粉砕の終点は、一般に、α型結晶/β型結晶の含有比=20/80〜60/40の範囲となることが好ましい。尚、上記含有比は、具体的には、株式会社リガク製粉末X線回折装置 LINT1100を用いて、X線回折図の特異ブラック角(2θ)が6.8°±0.2°のピーク高さ(Lα)と9.2°±0.2°のピーク高さ(Lβ)の比に着眼して求めることが出来る。この時の粉末X線回折の測定条件は、ターゲット:Cu、フィルター:Ni、電圧:40KV、電流:30mAである。
こうしてα型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーが得られる。
【0025】
粉砕メディアを含む水性スラリーは、濾過することで粉砕メディアを含まない水性スラリーとすることが出来る。水性スラリーは質量換算で不揮発分5〜30%となる様にするのが好ましい。
【0026】
本発明における第二工程としては、上記第一工程で得られた水性スラリーを、印刷インキ用油性ワニスと混合させ、水を除去することで油性混合物とされる。印刷インキ用油性ワニスは、樹脂と有機溶剤とを必須成分として含むものである。
【0027】
この際の樹脂としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、環化ゴム等の水に不溶のものが挙げられる。ここで用いる有機溶剤としては、上記水性スラリーに含ませた有機溶剤と相溶しないか相溶しにくい有機溶剤、例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素系有機溶剤、パラフィン、ナフテン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、アマニ油、大豆油、ヒマシ油等の植物油が挙げられる。印刷インキ用油性ワニスは、質量換算で樹脂不揮発分100部当たり、有機溶剤が20〜80部となる様に構成される。
【0028】
水性スラリーと油性ワニスとを混合すると、水性スラリー中の銅フタロシアニンが油性ワニスへと移行する。水性スラリーと油性ワニスの混合割合は、特に制限されるものではないが、例えば、質量換算で銅フタロシアニン/樹脂不揮発分=20/80〜80/20となる様に混合するのが好ましい。
【0029】
銅フタロシアニンの相移行は、水性スラリーと油性ワニスとの混合物を強く攪拌することで促進できる。この移行は、水性スラリーと油性ワニスとの混合物を40〜90℃に加熱して行っても良い。この様な操作をフラッシングと称する。こうして水性スラリー中の銅フタロシアニンの油性ワニスへの移行が完了した時点で、水を除去して油性混合物とすることが出来る。水の除去は静置した後、デカンテーションを行っても良いが、濾過等により出来るだけ水分を除去しておくことが好ましい。この様にして銅フタロシアニンを含む油性ワニスからなる油性混合物を選択的に得ることが出来る。
【0030】
本発明における第三工程としては、上記で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする。油性混合物に若干の水が含まれている様な場合には、脱水を行いながら加熱混練する。この際必要ならば減圧脱水を行うことが出来る。
【0031】
この加熱混練は、例えば、40〜140℃で1〜8時間行うことで、α型結晶をβ型結晶へと結晶変換させることが出来る。加熱混練の終点は混練物の粉末X線回折によって、α型結晶が認められなくなった時点で確認することが最良であるが、油性印刷インキとしての色相でも判断することが出来る。この加熱混練は、例えば、双腕型ニーダーもしくはフラッシャー等で行うことが出来る。
【0032】
この加熱混練により、樹脂等の存在下において、第一工程を経過後のα型結晶とβ型結晶とを含む銅フタロシアニンをβ型結晶のみの銅フタロシアニンに変換すると共に、銅フタロシアニンの結晶粒子を印刷物の着色特性に適した粒子径となる様に樹脂中に分散し、油性印刷インキとすることが出来る。
【0033】
尚、上記した製造方法では、粗製銅フタロシアニンのみを用いて油性印刷インキを製造する方法について説明したが、色相を損なわない範囲で、α型結晶からβ型結晶への結晶変換を促進する各種添加剤やβ型結晶へ結晶変換する際に起きやすい結晶成長を抑制する各種添加剤を任意の工程において添加することが出来る。
【0034】
この様な結晶変換を促進する添加剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の疎水性芳香族系有機溶剤やブタノール、プロピルアルコール等の水に自由に溶解しない様なアルコール系有機溶剤等が挙げられる。また、結晶成長を抑制する添加剤としては、例えば、銅フタロシアニンにスルホン酸基、アミノ基、フタルイミドアルキル基等が置換した銅フタロシアニン誘導体が挙げられる。なかでも結晶成長の抑制効果が高い点でフタルイミドアルキル銅フタロシア二ンが好ましい。
【0035】
この様な添加剤の使用は一見相矛盾している様に見えるが、銅フタロシア二ンの場合、結晶変換と結晶成長がほぼ同時に起こるため、結晶変換を早めようとすると結晶成長も同時に起き、銅フタロシア二ン粒子のアスペクト比(長さ対幅比)が大きくなるため、油性印刷インキとして用いた場合、色相が赤味の青色に見える。しかし、上記のような結晶成長抑制剤が存在するとアスペクト比は小さいままで、従来製造されている油性印刷インキに極めて近い色相(緑味鮮明の青色)となる。
【0036】
こうして得られた油性印刷インキは、そのままで印刷インキとすることが出来るが、油性印刷インキ用ワニスにより希釈したり、ワックスやドライヤー等の添加剤を適切な量添加することで平版印刷用インキとすることが出来る。
【0037】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例を示して具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0038】
(実施例1)
無水フタル酸またはフタル酸、銅または銅化合物、尿素および触媒とを不活性有機溶媒中で反応後、不活性有機溶剤を除去、不純物を水性媒体で洗浄して含水率41.4%の粗製銅フタロシアニン含水ケーキを得る。2Lの容器に上記粗製銅フタロシアニン含水ケーキ205部、水995部を仕込み、攪拌して水性懸濁液を作製した。次に、当該懸濁液を平均直径0.5mmのジルコニアビーズ500部が充填された容量3Lのサンドグラインダーに投入し、室温下、回転数1100rpmで3.5時間湿式摩砕して水性スラリーを得た。当該水性スラリーの一部を取り出し、濾過・洗浄・乾燥した。得られた湿式粉砕物は粉末X線回折から、α型結晶とβ型結晶の混合物であった。
次いで、2L容量の容器に上記ジルコニアビーズを除去した当該スラリー1000部を仕込み、さらに、油性印刷インキ用ワニスA80部(F−5301(大日本インキ化学工業(株)製ロジン変性フェノール樹脂)50%、亜麻仁油20%および6号ソルベント(日本石油(株)製軽油)30%)を攪拌下に添加し、60〜70℃でフラッシングする。水相に顔料の浮遊が認められなくなったら粗顔料とワニスからなる粒状の油性混合物(以下、フラッシュベースと称す)を濾別する。その後、このフラッシュベースを双腕型ニーダーに仕込み、95〜100℃に加熱しながら、2時間を要して、フラッシュベース中の水分を揮発させつつ、α型結晶の銅フタロシアニンをβ型結晶の銅フタロシア二ンへ結晶変換させて油性印刷インキ用ベースを得た。
この様にして得られた油性印刷インキ用ベースは粉末X線回折により、β型結晶のみに変換している。油性印刷インキ用ベースより作製した油性印刷インキは、色相は緑味鮮明の青色を呈し、着色力が高かった。
【0039】
(実施例2)
「エマルゲン913(花王(株)製ノニオン系界面活性剤)2.4部」を第一工程において添加した以外は実施例1と同様な操作を行った。第一工程において湿式粉砕された水性スラリーの一部を取り出し、濾過・洗浄・乾燥した。得られた湿式粉砕物は粉末X線回折により、α型結晶とβ型結晶からなる銅フタロシアニンであり、実施例1に比べるとややα型結晶の含有率が少なかった。
次いで、第二工程および第三工程を行い、α型結晶の銅フタロシアニンをβ型銅フタロシア二ンへ結晶変換させて油性印刷インキ用ベースを得た。油性印刷インキ用ベースより作製した油性印刷インキは、色相は緑味鮮明の青色を呈し、着色力が高かった。
【0040】
(実施例3)
「10%濃度のフタルイミドメチル銅フタロシアニンの水性懸濁液30部」を第二工程において添加した以外は実施例1の第一工程および第二工程と同様な操作を行い、フラッシュベースを作製した。
次いで、このフラッシュベースとキシレン20部を双腕型ニーダーに仕込み、70〜80℃で2時間混練した後、1時間を要し、減圧下で水とキシレンを除去することによって、β型結晶の銅フタロシアニン顔料を含有する油性印刷インキ用ベースを得た。油性印刷インキ用ベースより作製した油性印刷インキは、色相は緑味鮮明の青色を呈し、着色力が高かった。
【0041】
(比較例1)
実施例1の第一工程のみを実施して銅フタロシアニン顔料とした。当該顔料を油性印刷インキで評価したところ、α型結晶が混入しているために色相は赤ぐす味の青色を呈し、着色力が低かった。
【0042】
実施例1〜3で得られた油性印刷インキベースは、フーバーマーラーを用いてワニスAで顔料分が20%となるように希釈して濃色インキとした。また、比較例1で得られた顔料もワニスAを用い、フーバーマーラーで練肉し、顔料分が20%の濃色インキとした。次いで、当該濃色インキを白インキで混練希釈し、作製した油性印刷インキ(淡色インキ)の色相、彩度、相対着色力の評価結果を表1に示す。尚、色相、彩度および相対着色力は上記で作製した油性印刷インキを一般展色紙にヘラ引きで展色し、その上色(肉色)を測色分光器(datacolor international社製 SPECTRAFLASH 500)を用いて測定した。
色相はa*、彩度はC*(L*a*b*表示色系)をそれぞれ指標とし、実施例1〜3並びに比較例1の油性印刷インキの性能を評価した。a*は数値が小さいほど緑味の青色を呈し、C*は数値が大きいほど鮮明であることを意味する。
【0043】
【表1】
表1
【0044】
表1の結果から明らかなように、水中での湿式粉砕工程を含み、かつβ型銅フタロシアニン顔料を乾燥する工程を含まない様にし、低エネルギーで実施例1〜3の銅フタロシアニン湿式粉砕物から得た油性印刷インキは、水中での湿式粉砕工程のみで比較例1の銅フタロシアニン湿式粉砕物から得た油性印刷インキと比較した結果、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力が飛躍的に向上し、従来製造されている油性印刷インキと比較しても全く遜色のない印刷インキが得られた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、従来製造されている油性印刷インキに比べ遜色のない印刷インキが、経済的かつ環境負荷が少なく製造できるという格別顕著な効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性印刷インキの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油性印刷インキの製造方法としては、各種の方法が知られている。具体的には次の様な製造方法がある。
【0003】
▲1▼粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を得て、この混合物を顔料化してβ型結晶のみとしてから洗浄濾過し、乾燥して粉末のβ型銅フタロシアニンを得て、これを印刷インキ用油性ワニスとを混合し分散する方法。
【0004】
▲2▼粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を得て、この混合物を顔料化してβ型結晶のみとしてから洗浄濾過し、ウエットケーキを得て、これを印刷インキ用油性ワニスとを混合しフラッシングして分散する方法。
【0005】
▲3▼粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を得て、これを印刷インキ用油性ワニスとを混合し、ワニス混合物中で顔料化と分散を同時に行い、銅フタロシアニンのβ型結晶のみとし分散する方法(特開平7−70497号公報、特開平9−272833号公報)。
【0006】
これらの方法は、粗製銅フタロシアニンを乾式粉砕する工程を含んでいるが、乾式粉砕は粉砕に要するエネルギーが極めて大きくなると共に粉塵が発生しやすいという欠点を有している。そこで、この様な乾式粉砕での欠点が解消される方法として、最近、粉砕メディアを含む水中で粗製銅フタロシアニンを粉砕する工程を含む印刷インキの製造方法が注目されている。
【0007】
これらに関する公知技術としては、例えば、1)特開昭47−11033号公報、特開昭52−49240号公報、米国特許4,427,810号公報では、粗製銅フタロシアニンを界面活性剤等の存在下での湿式粉砕によるβ型結晶の銅フタロシア二ン顔料の製造方法、2)特開平6−73300号公報、特開平6−80898号公報では、湿式粉砕によるα型結晶の銅フタロシア二ン顔料の製造方法、3)特開平7−53889号公報では、ソルトミリングでの湿式粉砕による銅フタロシア二ン顔料の製造方法、4)特開平9−183916号公報では、粗製顔料の湿式粉砕による顔料ペーストの製造方法、5)特開2000−345064号公報、特開2000−355661号公報では、粗製銅フタロシアニン反応混合物の湿式粉砕による銅フタロシアニン顔料の製造方法等が知られている。
【0008】
しかしながら、上記した様な公知技術においては、いずれも、一旦β型銅フタロシアニンが乾燥される結果、水中での湿式粉砕で折角低エネルギーで微細な顔料粒子が生成しても、この乾燥により多くのエネルギーが消費される上、顔料が再凝集したりして油性ワニス中への分散が不充分となり、この工程を経て得られた顔料を油性印刷インキに用いた場合、印刷物の着色力や彩度が低下するという欠点を有している。
【0009】
仮に上記▲3▼の方法において、乾式粉砕に代えて水中での湿式粉砕を適用しようとしても、粉砕に要した多量の水を含むため顔料化と分散を安定的に行うのは容易でない。
【0010】
さらに、湿式粉砕により得られるα型結晶とβ型結晶からなる銅フタロシアニンの水性スラリーと油性印刷インキ用ワニスとから油性印刷インキを製造する方法は知られていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、水中での湿式粉砕工程を含み、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力に格段優れる印刷物が得られる油性印刷インキをより低エネルギーで製造できる新規な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水中での湿式粉砕工程を含み、かつβ型銅フタロシアニン顔料を乾燥する工程を含まない様にして低エネルギーで油性印刷インキを製造することにより、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力に格段優れた印刷物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、下記工程を順に含んでなる油性印刷インキの製造方法に関する。
1)粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る第一工程。
2)第一工程で得られた水性スラリーと印刷インキ用油性ワニスとを混合し水を除去して油性混合物を得る第二工程。
3)第二工程で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする第三工程。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明(上記第一工程、第二工程及び第三工程を含む。)を各工程毎に詳細に説明する。
【0015】
一般的に、粗製銅フタロシアニンは、実質的にβ型結晶のみからなり、そのままでは着色剤として機能しない粗大な粒子からなる。
【0016】
本発明における第一工程としては、上記のような粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る。この際の粗製銅フタロシアニンとしては、公知慣用のワイラー法、フタロニトリル法等で得られたものがいずれも使用出来る。また、これらの粗製銅フタロシアニンの形状としては、粉末状、含水ケーキ状もしくは水性懸濁状の何れでも良いが、水性媒体中での湿式粉砕であることと粗製フタロシア二ンの製造に伴うエネルギーコストなどの削減のため、含水ケーキ状もしくは水性懸濁状のものが好ましい。特に大量生産の場合、製造工程を自動化しやすい点で水性懸濁状が好ましい。
【0017】
本発明の製造方法において、前記した様に粗製銅フタロシアニンは水中で粉砕する。この際、粉末状の粗製銅フタロシアニンを用いる場合等においては、粗製銅フタロシアニンを水に湿潤させやすくするため、水には必要に応じて界面活性剤や有機溶剤を一部併用することが出来る。
【0018】
この際用いる界面活性剤としては、粗製銅フタロシア二ンが水によって湿潤されれば良く、特に限定されないが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。この際の粗製銅フタロシア二ン/界面活性剤比率(質量比)は、その種類にも依るが、例えば、100/0〜60/40の範囲である。なかでも、100/0〜95/5の範囲となるようにすることが好ましい。質量比がこの範囲にあると、第一工程においてα型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーが得られ、第二工程においても油性ワニスが水中にエマルション化せず、容易に銅フタロシアニンを含有する油性混合物が得られる。
【0019】
また、この際に用いる有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤の水と相溶する親水性有機溶剤等が挙げられる。必要ならば、親水性有機溶剤にさらにそれと相溶する疎水性有機溶剤を少量併用することが出来る。この際の水/有機溶剤比率(質量比)は、例えば、100/0〜51/49の範囲である。しかしながら、有機溶剤の種類や使用量によってはα型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーが得られない場合もあるため、粉砕時の水には極力有機溶剤を含ませない方が好ましい。
【0020】
粉砕に用いる水と有機溶剤との合計使用量は、水性スラリーの粘度を考慮した点で、質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、1〜30部とすることが好ましい。
【0021】
粉砕は、例えば、ロッド状や球状で、金属、ガラス、セラミックス等の各種素材の粉砕メディアを用いて、振動ミル、アトライター、サンドミル、アジテーターミル等の粉砕装置で行うことが出来る。粉砕メディアの使用量は、通常、質量換算で粗製銅フタロシアニン100部当たり、10〜5000部とすることが好ましい。
【0022】
粉砕の条件は、用いる粉砕メディアと粉砕装置等により適宜決定すれば良いが、粉砕装置内の温度は5〜80℃で、0.1〜24時間粉砕を行うことが好ましい。粉砕によりβ型結晶にはα型結晶が混在してくる。
【0023】
粉砕物のα型結晶含有率は、用いる粉砕装置の選定を含め粉砕時間を除く粉砕条件を一定に固定して、粉砕物を経過した粉砕時間毎に適量サンプリングし、その試料についての粉末X線回折測定によりα型結晶含有率−粉砕時間との検量線を作製し、それから求めることが出来る。
【0024】
粉砕の終点は、一般に、α型結晶/β型結晶の含有比=20/80〜60/40の範囲となることが好ましい。尚、上記含有比は、具体的には、株式会社リガク製粉末X線回折装置 LINT1100を用いて、X線回折図の特異ブラック角(2θ)が6.8°±0.2°のピーク高さ(Lα)と9.2°±0.2°のピーク高さ(Lβ)の比に着眼して求めることが出来る。この時の粉末X線回折の測定条件は、ターゲット:Cu、フィルター:Ni、電圧:40KV、電流:30mAである。
こうしてα型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーが得られる。
【0025】
粉砕メディアを含む水性スラリーは、濾過することで粉砕メディアを含まない水性スラリーとすることが出来る。水性スラリーは質量換算で不揮発分5〜30%となる様にするのが好ましい。
【0026】
本発明における第二工程としては、上記第一工程で得られた水性スラリーを、印刷インキ用油性ワニスと混合させ、水を除去することで油性混合物とされる。印刷インキ用油性ワニスは、樹脂と有機溶剤とを必須成分として含むものである。
【0027】
この際の樹脂としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、環化ゴム等の水に不溶のものが挙げられる。ここで用いる有機溶剤としては、上記水性スラリーに含ませた有機溶剤と相溶しないか相溶しにくい有機溶剤、例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素系有機溶剤、パラフィン、ナフテン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、アマニ油、大豆油、ヒマシ油等の植物油が挙げられる。印刷インキ用油性ワニスは、質量換算で樹脂不揮発分100部当たり、有機溶剤が20〜80部となる様に構成される。
【0028】
水性スラリーと油性ワニスとを混合すると、水性スラリー中の銅フタロシアニンが油性ワニスへと移行する。水性スラリーと油性ワニスの混合割合は、特に制限されるものではないが、例えば、質量換算で銅フタロシアニン/樹脂不揮発分=20/80〜80/20となる様に混合するのが好ましい。
【0029】
銅フタロシアニンの相移行は、水性スラリーと油性ワニスとの混合物を強く攪拌することで促進できる。この移行は、水性スラリーと油性ワニスとの混合物を40〜90℃に加熱して行っても良い。この様な操作をフラッシングと称する。こうして水性スラリー中の銅フタロシアニンの油性ワニスへの移行が完了した時点で、水を除去して油性混合物とすることが出来る。水の除去は静置した後、デカンテーションを行っても良いが、濾過等により出来るだけ水分を除去しておくことが好ましい。この様にして銅フタロシアニンを含む油性ワニスからなる油性混合物を選択的に得ることが出来る。
【0030】
本発明における第三工程としては、上記で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする。油性混合物に若干の水が含まれている様な場合には、脱水を行いながら加熱混練する。この際必要ならば減圧脱水を行うことが出来る。
【0031】
この加熱混練は、例えば、40〜140℃で1〜8時間行うことで、α型結晶をβ型結晶へと結晶変換させることが出来る。加熱混練の終点は混練物の粉末X線回折によって、α型結晶が認められなくなった時点で確認することが最良であるが、油性印刷インキとしての色相でも判断することが出来る。この加熱混練は、例えば、双腕型ニーダーもしくはフラッシャー等で行うことが出来る。
【0032】
この加熱混練により、樹脂等の存在下において、第一工程を経過後のα型結晶とβ型結晶とを含む銅フタロシアニンをβ型結晶のみの銅フタロシアニンに変換すると共に、銅フタロシアニンの結晶粒子を印刷物の着色特性に適した粒子径となる様に樹脂中に分散し、油性印刷インキとすることが出来る。
【0033】
尚、上記した製造方法では、粗製銅フタロシアニンのみを用いて油性印刷インキを製造する方法について説明したが、色相を損なわない範囲で、α型結晶からβ型結晶への結晶変換を促進する各種添加剤やβ型結晶へ結晶変換する際に起きやすい結晶成長を抑制する各種添加剤を任意の工程において添加することが出来る。
【0034】
この様な結晶変換を促進する添加剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の疎水性芳香族系有機溶剤やブタノール、プロピルアルコール等の水に自由に溶解しない様なアルコール系有機溶剤等が挙げられる。また、結晶成長を抑制する添加剤としては、例えば、銅フタロシアニンにスルホン酸基、アミノ基、フタルイミドアルキル基等が置換した銅フタロシアニン誘導体が挙げられる。なかでも結晶成長の抑制効果が高い点でフタルイミドアルキル銅フタロシア二ンが好ましい。
【0035】
この様な添加剤の使用は一見相矛盾している様に見えるが、銅フタロシア二ンの場合、結晶変換と結晶成長がほぼ同時に起こるため、結晶変換を早めようとすると結晶成長も同時に起き、銅フタロシア二ン粒子のアスペクト比(長さ対幅比)が大きくなるため、油性印刷インキとして用いた場合、色相が赤味の青色に見える。しかし、上記のような結晶成長抑制剤が存在するとアスペクト比は小さいままで、従来製造されている油性印刷インキに極めて近い色相(緑味鮮明の青色)となる。
【0036】
こうして得られた油性印刷インキは、そのままで印刷インキとすることが出来るが、油性印刷インキ用ワニスにより希釈したり、ワックスやドライヤー等の添加剤を適切な量添加することで平版印刷用インキとすることが出来る。
【0037】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例を示して具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0038】
(実施例1)
無水フタル酸またはフタル酸、銅または銅化合物、尿素および触媒とを不活性有機溶媒中で反応後、不活性有機溶剤を除去、不純物を水性媒体で洗浄して含水率41.4%の粗製銅フタロシアニン含水ケーキを得る。2Lの容器に上記粗製銅フタロシアニン含水ケーキ205部、水995部を仕込み、攪拌して水性懸濁液を作製した。次に、当該懸濁液を平均直径0.5mmのジルコニアビーズ500部が充填された容量3Lのサンドグラインダーに投入し、室温下、回転数1100rpmで3.5時間湿式摩砕して水性スラリーを得た。当該水性スラリーの一部を取り出し、濾過・洗浄・乾燥した。得られた湿式粉砕物は粉末X線回折から、α型結晶とβ型結晶の混合物であった。
次いで、2L容量の容器に上記ジルコニアビーズを除去した当該スラリー1000部を仕込み、さらに、油性印刷インキ用ワニスA80部(F−5301(大日本インキ化学工業(株)製ロジン変性フェノール樹脂)50%、亜麻仁油20%および6号ソルベント(日本石油(株)製軽油)30%)を攪拌下に添加し、60〜70℃でフラッシングする。水相に顔料の浮遊が認められなくなったら粗顔料とワニスからなる粒状の油性混合物(以下、フラッシュベースと称す)を濾別する。その後、このフラッシュベースを双腕型ニーダーに仕込み、95〜100℃に加熱しながら、2時間を要して、フラッシュベース中の水分を揮発させつつ、α型結晶の銅フタロシアニンをβ型結晶の銅フタロシア二ンへ結晶変換させて油性印刷インキ用ベースを得た。
この様にして得られた油性印刷インキ用ベースは粉末X線回折により、β型結晶のみに変換している。油性印刷インキ用ベースより作製した油性印刷インキは、色相は緑味鮮明の青色を呈し、着色力が高かった。
【0039】
(実施例2)
「エマルゲン913(花王(株)製ノニオン系界面活性剤)2.4部」を第一工程において添加した以外は実施例1と同様な操作を行った。第一工程において湿式粉砕された水性スラリーの一部を取り出し、濾過・洗浄・乾燥した。得られた湿式粉砕物は粉末X線回折により、α型結晶とβ型結晶からなる銅フタロシアニンであり、実施例1に比べるとややα型結晶の含有率が少なかった。
次いで、第二工程および第三工程を行い、α型結晶の銅フタロシアニンをβ型銅フタロシア二ンへ結晶変換させて油性印刷インキ用ベースを得た。油性印刷インキ用ベースより作製した油性印刷インキは、色相は緑味鮮明の青色を呈し、着色力が高かった。
【0040】
(実施例3)
「10%濃度のフタルイミドメチル銅フタロシアニンの水性懸濁液30部」を第二工程において添加した以外は実施例1の第一工程および第二工程と同様な操作を行い、フラッシュベースを作製した。
次いで、このフラッシュベースとキシレン20部を双腕型ニーダーに仕込み、70〜80℃で2時間混練した後、1時間を要し、減圧下で水とキシレンを除去することによって、β型結晶の銅フタロシアニン顔料を含有する油性印刷インキ用ベースを得た。油性印刷インキ用ベースより作製した油性印刷インキは、色相は緑味鮮明の青色を呈し、着色力が高かった。
【0041】
(比較例1)
実施例1の第一工程のみを実施して銅フタロシアニン顔料とした。当該顔料を油性印刷インキで評価したところ、α型結晶が混入しているために色相は赤ぐす味の青色を呈し、着色力が低かった。
【0042】
実施例1〜3で得られた油性印刷インキベースは、フーバーマーラーを用いてワニスAで顔料分が20%となるように希釈して濃色インキとした。また、比較例1で得られた顔料もワニスAを用い、フーバーマーラーで練肉し、顔料分が20%の濃色インキとした。次いで、当該濃色インキを白インキで混練希釈し、作製した油性印刷インキ(淡色インキ)の色相、彩度、相対着色力の評価結果を表1に示す。尚、色相、彩度および相対着色力は上記で作製した油性印刷インキを一般展色紙にヘラ引きで展色し、その上色(肉色)を測色分光器(datacolor international社製 SPECTRAFLASH 500)を用いて測定した。
色相はa*、彩度はC*(L*a*b*表示色系)をそれぞれ指標とし、実施例1〜3並びに比較例1の油性印刷インキの性能を評価した。a*は数値が小さいほど緑味の青色を呈し、C*は数値が大きいほど鮮明であることを意味する。
【0043】
【表1】
表1
【0044】
表1の結果から明らかなように、水中での湿式粉砕工程を含み、かつβ型銅フタロシアニン顔料を乾燥する工程を含まない様にし、低エネルギーで実施例1〜3の銅フタロシアニン湿式粉砕物から得た油性印刷インキは、水中での湿式粉砕工程のみで比較例1の銅フタロシアニン湿式粉砕物から得た油性印刷インキと比較した結果、色相と彩度は高い要求品質を維持した状態で着色力が飛躍的に向上し、従来製造されている油性印刷インキと比較しても全く遜色のない印刷インキが得られた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、従来製造されている油性印刷インキに比べ遜色のない印刷インキが、経済的かつ環境負荷が少なく製造できるという格別顕著な効果を奏する。
Claims (1)
- 下記工程を順に含んでなる油性印刷インキの製造方法。
1)粗製銅フタロシアニンを水中で粉砕して、α型結晶とβ型結晶の混合物を含む水性スラリーを得る第一工程。
2)第一工程で得られた水性スラリーと印刷インキ用油性ワニスとを混合し水を除去して油性混合物を得る第二工程。
3)第二工程で得られた油性混合物を加熱混練して、銅フタロシアニンとしてβ型結晶のみを含む油性印刷インキとする第三工程。
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JP2002216505A JP2004059626A (ja) | 2002-07-25 | 2002-07-25 | 油性印刷インキの製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006096922A (ja) * | 2004-09-30 | 2006-04-13 | Toyo Ink Mfg Co Ltd | 印刷インキ |
JP2008542480A (ja) * | 2005-05-27 | 2008-11-27 | サン ケミカル コーポレイション | 印刷用インクの調製方法 |
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2002
- 2002-07-25 JP JP2002216505A patent/JP2004059626A/ja active Pending
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