JP2004059400A - シリカガラス円筒体の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成形すべきシリカガラス円筒体の内径に対応する所定の直径を有する耐火性ヘッド6は、高周波コイル8によって誘導加熱を受け、それ自身が発熱体として機能する。そして、原料導入管5から供給されるシリカガラスの原料粉末を直上から受けつつヘッド6上において順次溶融させると共に、耐火性ヘッド上に堆積されたシリカガラス溶融体13を、ヘッドの外周縁から流下させながら固化させる。この時、流下しながら固化するシリカガラス溶融体13の下端部は、一定速度で回転しつつ降下する支持部材15により引き下げられる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、シリカガラス円筒体の製造方法および製造装置に関し、特に半導体の製造工程で用いられる熱処理用炉芯管などの高純度シリカガラスによる円筒形状部材を製造するに適した製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカガラス管は、主として水晶粉末、合成シリカ粉末等のシリカ原料を溶融することにより製造される。この場合、前記原料を酸素および水素を用いたバーナ火炎により溶融する酸水素炎溶融法、もしくは電気溶融法を利用することで、先ずインゴットを製造し、このインゴットを再加熱してシリカガラス管を得る方法が知られている。
【0003】
また、電気溶融法を利用する場合においては、電気炉に前記原料を投入しながら、炉の下方に配置した円環状のモールドと、このモールドの中心部に配置されたマンドレルとの間からシリカ部材を連続して引き出すようにする連続製管法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記したようにシリカ原料を溶融することによりインゴットを製造し、さらにこのインゴットからシリカガラス管を製造する場合においては、原料を溶融するプロセスにおいて、原材料のロスが比較的多く発生する。また、製管するプロセスにおいて多量の炭素系治具も必要となり、コストが高騰するという問題点を抱えている。
【0005】
一方、前記した連続製管法を利用する場合においては、比較的低コストで製管することが可能であるものの、使用する治具のコストを考慮すると、一度に多量の製管を行うことが必要であり、少量多品種を製管しようとするニーズに応えることが困難であるという問題点を抱えている。
【0006】
この発明は、前記した問題点に着目してなされたものであり、コストを高騰させることなく、少量多品種の製管に柔軟に対応することができるシリカガラス円筒体の製造方法および製造装置を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるシリカガラス円筒体の製造方法は、原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を炉体内で加熱溶融し、溶融状態になされたシリカガラス溶融体を耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させることで、シリカガラスの円筒体を成形させるシリカガラス円筒体の製造方法であって、成形すべきシリカガラス円筒体の内径に対応する所定の直径を有し、前記原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を直上から受ける耐火性ヘッドが発熱体により構成され、前記原料粉末を受けつつ耐火性ヘッド上において原料粉末を順次溶融させると共に、耐火性ヘッド上に堆積されたシリカガラス溶融体を、前記耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させ、この下端部を、一定速度で回転しつつ降下する支持部材により引き下げる点に特徴を有する。
【0008】
この場合、好ましくは発熱体により構成された前記耐火性ヘッドの直上に対峙する原料導入管の端部には第2の発熱体が配置され、第2の発熱体によりシリカガラスの原料粉末を半溶融状態にして、前記耐火性ヘッド上に供給することが望ましい。
【0009】
そして、この発明にかかるシリカガラス円筒体の製造方法においては、好ましくは原料導入管を介して耐火性ヘッドに供給される原料粉末の供給量および/または前記支持部材の引き下げ速度を調整することにより、成形されるシリカガラス円筒体の肉厚を制御するようになされる。
【0010】
この場合、前記支持部材には円筒状に成形された引き下げ用シリカガラス管が配置されていることが望ましく、当該引き下げ用シリカガラス管を介して前記シリカガラス溶融体を引き下げることで、所定の肉厚を有するシリカガラス円筒体を得るようになされる。加えて、前記引き下げ用シリカガラス管は、その密度が1.95〜2.15g/cm3 の範囲に選定された気泡入りシリカガラスを利用することが望ましい。
【0011】
一方、この発明にかかるシリカガラス円筒体の製造装置は、原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を炉体内で加熱溶融し、溶融状態になされたシリカガラス溶融体を耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させることで、シリカガラスの円筒体を成形させるシリカガラス円筒体の製造装置であって、前記原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を直上から連続的に受けつつ、原料粉末を順次溶融させると共に、成形すべきシリカガラス円筒体の内径に対応する所定の直径を有する発熱体により構成された耐火性ヘッドと、前記耐火性ヘッド上において溶融状態になされ、耐火性ヘッドの外周縁から流下して固化するシリカガラス溶融体の下端部を一定速度で回転させつつ牽引する支持部材とを具備した点に特徴を有する。
【0012】
この場合、前記耐火性ヘッドの直上に対峙する原料導入管の端部には第2の発熱体が配置され、前記第2の発熱体によりシリカガラスの原料粉末を半溶融状態にして前記耐火性ヘッド上に供給するように構成されていることが望ましい。
【0013】
また、発熱体により構成された耐火性ヘッドおよび第2の発熱体が、高周波加熱手段もしくは抵抗加熱手段によって発熱されるように構成されていることが望ましく、加えて、前記炉体内を還元ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気に保持するためのガス導入管およびガス排出管を配置した構成とされていることが望ましい。
【0014】
前記した製造方法およびこれを採用したこの発明にかかるシリカガラス円筒体の製造装置によると、シリカガラスの原料粉末は、原料導入管を介して発熱体を構成する耐火性ヘッドの直上に供給されるようになされる。これにより、原料粉末は発熱体を構成する耐火性ヘッド上において加熱されて順次溶融されるので、従来のように、原料粉末を酸素および水素を用いたバーナ火炎により溶融する酸水素炎溶融法を用いる場合に比較すると、バーナ火炎による原料粉末の飛散量を遥かに低減させることができ、その歩留まりを向上させることに寄与できる。
【0015】
また、前記した原料導入管を用いることにより、耐火性ヘッドの直近において原料粉末を耐火性ヘッド上に供給することができるので、原料粉末の殆どを耐火性ヘッド上に誘導し供給することが可能となり、この点においても歩留まりの向上を果たすことができる。そして、耐火性ヘッド上において溶融状態とされたシリカガラス溶融体は、耐火性ヘッド上において所定量堆積されつつ、耐火性ヘッドの外周縁から流下して順次固化される。
【0016】
この場合、前記した耐火性ヘッドの直上に対峙する原料導入管の端部に、第2の発熱体を配置した構成を採用することにより、この第2の発熱体により原料粉末は半溶融状態に加熱され、この状態で耐火性ヘッドに供給されるようになされる。したがって、この構成を採用することにより、半溶融状態に加熱された原料が、耐火性ヘッド上にそのまま供給されることとなり、歩留まりがさらに向上されると共に、ヘッド上に供給される原料はすでに半溶融状態となされているので、ガラス溶融体から気泡を効果的に排出させることが可能となる。
【0017】
そして、耐火性ヘッド上で溶融された溶融体は耐火性ヘッドの外周縁から流下して順次固化されるので、耐火性ヘッドの直径に対応した内径を有するシリカガラス円筒体を連続的に成形することができる。換言すれば、所望の直径を有する耐火性ヘッドを用意することで、所望の内径を有するシリカガラス円筒体を得ることが可能となる。
【0018】
そして、耐火性ヘッドの外周縁から流下して順次固化されるシリカガラス溶融体は、シリカガラス溶融体の下端部を一定速度で回転しつつ降下する支持部材によって引き下げられる。この場合、原料導入管を介して耐火性ヘッドに供給される原料粉末の供給量および/または前記支持部材の引き下げ速度を調整することにより、シリカガラス円筒体の肉厚を所望の寸法となるように制御することができる。
【0019】
しかも、前記支持部材はシリカガラス溶融体の下端部を、回転させながら降下するように動作するので、耐火性ヘッド上で溶融された溶融体より、気泡を効果的に排出させることができ、透明度の高いシリカガラス円筒体を得ることができる。
【0020】
斯くして、原料粉末は発熱体を構成する耐火性ヘッド上に原料導入管を介して供給されるので、従来の製造方法に比較すると材料の歩留りを遥かに向上させることができ、また耐火性ヘッドの直径を選択すると共に、原料粉末の供給量および支持部材の引き下げ速度を調整することで、多品種のシリカガラス円筒体を低コストで得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかるシリカガラス円筒体の製造装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は、その第1の実施の形態を中央部において縦方向に破断した状態で示している。図において符号1は例えば円筒状に形成された炉体を示しており、これは例えばシリカガラスにより構成されている。この炉体1は、その上端部が平面状に閉塞されると共に、その下端部は下部チャンバー2に上に載置され、下部チャンバー2に対して気密状態に接合されている。
【0022】
前記炉体1の上部には原料タンク3が配置されており、この原料タンク3より定量機構4を介して原料導入管5が導出されており、この原料導入管5の下端部は、前記炉体1内に垂直状態となるように導入されている。前記炉体1内には円柱状に形成された耐火性ヘッド6が配置されており、これは前記下部チャンバー2に配置された円柱状のヘッド支持軸7における上端部に取り付けられている。
【0023】
前記耐火性ヘッド6が配置された炉体外には高周波コイル8が、炉体1を囲撓するようにして配置されており、この高周波コイル8に高周波電流を供給することで、前記耐火性ヘッド6は誘導加熱を受ける材料により構成されている。換言すれば、この実施の形態においては、前記耐火性ヘッド6はそれ自身が発熱体としての機能を果たす。
【0024】
前記耐火性ヘッド6の配置位置における炉体1の内面には断熱材9が配置されており、当該断熱材9および炉体1の側壁の一部には測温窓10が形成されている。そして、前記測温窓10を介して炉体外に配置された温度測定ユニット11によって、誘導加熱を受ける耐火性ヘッド6の温度を測定することができるように構成されている。
【0025】
図1における符号13は、前記した耐火性ヘッド6上で溶融されたシリカガラス溶融体を示しており、このシリカガラス溶融体13は、前記した原料導入管5を介して供給されるガラス原料粉末が、発熱体として機能する耐火性ヘッド6上において溶融されることで堆積される。前記耐火性ヘッド6上で溶融されたシリカガラス溶融体13は、原料導入管5から原料粉末が順次供給されることで溶融されつつ、ヘッド6の外周縁から溢れ出して流下し、耐火性ヘッド6から離れるにしたがって固化する。
【0026】
また、前記した下部チャンバー2内には、ヘッド支持軸7を中央にして同心状にチャック昇降回転機構14が配置されている。このチャック昇降回転機構14にはチャック15、すなわち支持部材が取り付けられており、このチャック15は上下に昇降されると共に、ヘッド支持軸7を中心として水平方向に回転されるようになされる。そして、この実施の形態においては、前記チャック15によって、引き下げ用シリカガラス管16の下端部が支持されている。
【0027】
引き下げ用シリカガラス管16の上端部は、耐火性ヘッド6の外周縁から流下するシリカガラス溶融体13の下端部に接合されている。したがって、チャック昇降回転機構14の駆動により、耐火性ヘッド6の外周縁から流下しながら固化するシリカガラス溶融体13の下端部を、一定速度で回転させつつ牽引することができる。
【0028】
一方、前記原料タンク3と定量機構4との間における原料導入管5の一部には、雰囲気ガスの導入管21が接続されており、この導入管21には流量計測装置22を介して雰囲気ガスが供給されるように構成されている。したがって、流量計測装置22を介して供給される雰囲気ガスは、前記導入管21および原料導入管5を介して炉体1内に導入される。なお、前記炉体内を還元ガス雰囲気とする場合には、例えば水素ガス等が用いられる。また、前記炉体内を不活性ガス雰囲気とする場合には、例えば窒素ガス等が用いられる。
【0029】
また、炉体1の下端部には排気管24の一端が炉体1内に連通するようにして取り付けられており、この排気管24には排気バルブ25が配置されている。そして、排気管24の他端はこの排気バルブ25を介して減圧源(排気ポンプ)に連通されている。したがって、流量計測装置22および排気バルブ25を相互に調節することで、炉体1内を前記したガス雰囲気に保持させると共に、所定の減圧状態にすることができる。
【0030】
なお、前記炉体1の一部より連通管28の一端が炉体1内に挿入されており、この連通管28の他端には圧力計29が接続されている。したがって、これにより炉体1内の圧力を確認することができる。また、圧力を計測しつつ、流量計測装置22および排気バルブ25を相互に自動調整することで、所定の減圧状態を保つように制御することもできる。
【0031】
以上の構成において、シリカガラス円筒体を製造するには、主として水晶粉末、合成シリカ粉末等のシリカ原料が利用され、これらは前記原料タンク3内に投入される。そして、原料タンク3内の原料粉末は、定量機構4を介して原料粉末の供給量が調整され、原料導入管5を介して耐火性ヘッド6の中央上面に、その直上から供給される。ここで、耐火性ヘッド6は前記したように、高周波コイル8に供給される高周波電流による誘導加熱を受け、それ自身が発熱体として機能する。
【0032】
前記耐火性ヘッド6の材質は、シリカガラスが溶融される温度以上の耐熱性があり、高純度な材質であれば特に限定されるものではないが、この実施の形態においては、前記した条件を備えかつ誘電体損失の大きなカーボン、モリブデン、タングステン等が使用される。そして、耐火性ヘッド6の構成としては、例えば図2に示すようにその外形が円柱状に形成されたものが使用される。ここで、耐火性ヘッド6の直径は、成形すべきシリカガラス円筒体の内径に対応して選択される。また、図2に断面状態で示したようにヘッド6の上面には、凹部6Aが形成されていることが望ましい。
【0033】
図2(A)は、耐火性ヘッド6の上面に凹部6Aとして、半球状に陥没した凹面部6aを形成させた例が示されている。また、図2(B)は、凹部6Aとして、その断面形状が若干楕円状になされた凹面部6bが、中央底面より周方向に広がるように形成されている。さらに図2(B)に示す例においては、凹部6Aの上部開口付近にオーバハング部6cが形成されている。
【0034】
耐火性ヘッド6の上面に形成される前記した凹部6Aの形状は、図2に示したものに限定されるものではないが、前記したような凹部6Aを形成することにより、製管動作中において前記凹部6Aにおいてシリカガラス溶融体13の溜まり部を形成することができる。そして、図3に示したように原料導入管5を介して順次供給されるシリカ原料粉末Pは溶融されつつ、凹部6Aに溜められたシリカガラス溶融体13と順次交換され、ヘッド6の外周縁から溢れ出して流下し、流下するシリカガラス溶融体13は耐火性ヘッド6から離れるにしたがって固化する。
【0035】
図3に示すように、原料導入管5の下端部は、耐火性ヘッド6に堆積されるシリカガラス溶融体13のなるべく直近に位置するように構成されていることが望ましく、これにより、原料粉末の殆どを耐火性ヘッド6上に供給することができ、歩留まりを向上させることができる。そして、原料導入管5の材質としては、炭化珪素、窒化珪素などシリカガラスよりも硬度の高い物質を用いることが好ましい。
【0036】
また、原料導入管5の下端部付近を耐火性を有し、かつ誘電体損失の大きな部材、例えば、カーボンもしくはモリブデンまたはタングステンにより構成すると、当該部分は効率的に誘電加熱されるため、原料粉末は耐火性ヘッド6上に供給される直前で、余熱または半溶融状態になされる。したがって、シリカガラス溶融体13からの気泡の排出効果をより促進させることができる。
【0037】
前記したように、耐火性ヘッド6上において溶融状態とされたシリカガラス溶融体13は、耐火性ヘッド6上において所定量堆積されつつ、耐火性ヘッド6の外周縁から流下して順次固化されるが、この実施の形態においては、溶融初期においてシリカガラス溶融体13の下端部は、前記した引き下げ用シリカガラス管16の上端部に加熱溶着される。そして、昇降回転機構14の駆動により、シリカガラス溶融体の下端部は、引き下げ用シリカガラス管16を介して回転を受けつつ牽引される。
【0038】
前記引き下げ用シリカガラス管16は、溶融されたシリカガラスよりも熱伝導率が低いことが好ましく、望ましくは密度1.95〜2.15g/cm3 の気泡入りシリカガラスが利用される。この場合、前記密度が2.15g/cm3 よりも高い時には、断熱効果が不十分であり、発熱体として機能する耐火性ヘッド6に多量の電力を供給する必要が生ずる。このために、耐火性ヘッド6の温度が過剰に高くなり、溶融されたシリカガラスの蒸発量が増加してしまうという問題が発生する。
【0039】
一方、前記密度が1.95/cm3 に満たない場合には、耐熱性が不十分であり、引き下げ(牽引)を行ったとき、溶融界面にて軟化が起こり引き下げ動作を行うことが困難になるという問題が発生する。そして、耐火性ヘッドの外周縁から流下する溶融体は、引き下げ動作を受けると同時にねじれが与えられ、これによりシリカガラス中の気泡を効果的に排出させることができる。
【0040】
前記した炉体1内は減圧もしくは不活性雰囲気、還元雰囲気またはこれらを組み合わせた雰囲気にすることが好ましいが、導入管21を介して不活性ガスもしくは還元雰囲気ガスを導入し、発熱体としての耐火性ヘッド6の下方に配置された排気管24を介して排気することによって、原料供給部から溶融部、さらに発熱体の下方に至るガスの流れを作ることができ、安定した溶融動作を継続させることができる。
【0041】
また、高周波コイル8に供給する電力は、測温窓10を介して耐火性ヘッド6の温度を測定する温度測定ユニット11の測定結果をフィードバックすることで制御される。これにより、耐火性ヘッド6の温度を所定の温度範囲に自動制御することができる。
【0042】
斯くして、図1に示すシリカガラス円筒体の製造装置によると、耐火性ヘッド6の直径を適宜選択することで、シリカガラス円筒体の内径を設定することができ、また、原料導入管5を介して耐火性ヘッド6に供給される原料粉末の供給量および/または前記した支持部材としてのチャック15の引き下げ速度を調整することにより、シリカガラス円筒体の肉厚を所望の寸法となるように制御することができる。したがって、必要とするシリカガラス管を必要本数製造することが可能である。
【0043】
このように、必要とするシリカガラス管を必要本数製造することが可能であるので、従来の製造方法のように、まずインゴットを製造した上で、これよりシリカガラス管を製管する手段に比較すると、原材料のロスを少なくすることができる。また、比較的早く消耗する治具は、耐火性ヘッドのみであり、前記した従来の連続製管法に比較すると、低コストにして多品種の製品の製造に柔軟に対応することができる。
【0044】
図4は、この発明にかかる製造装置における第2の実施の形態を、中央部において縦方向に破断した状態で示している。この第2の実施の形態においては、符号31で示すように原料導入管5の下端部に第2の発熱体が付加されており、他の構成は図1に示した第1の実施の形態と同一である。したがって、図4においては、図1に示した各部に相当する部分を同一符号で示し、その詳細な説明は割愛する。
【0045】
前記第2の発熱体31は、図4に示す形態においては円柱状に形成されており、その軸芯部分に形成された縦孔を利用して、原料導入管5の下端部に嵌合状態で取り付けられている。この第2の発熱体31においても、耐火性を有しかつ比較的誘電体損失の大きな部材を用いることが望ましく、耐火性ヘッド6と同様に、例えばカーボンもしくはモリブデンまたはタングステンにより構成される。これにより、第2の発熱体31は、高周波コイル8により誘電加熱され、発熱体としての機能を果たす。
【0046】
前記したように、原料導入管5の下端部に、所定の体積を有する第2の発熱体を配置することで、所定の熱容量を確保することができる。したがって、原料導入管5から供給される原料粉末に対して充分な余熱を与えることができ、これを半溶融状態にして耐火性ヘッド6に対して供給することが可能となる。また、図4に示す第2の形態においては、前記した第1の形態と同様の特質をそのまま享受したものとなる。
【0047】
なお、前記した第1および第2の実施の形態においては、高周波コイル8に対して駆動電流を供給し、耐火性ヘッド6および第2の発熱体31を誘導加熱するようにしているが、前記耐火性ヘッド6および第2の発熱体31を抵抗加熱手段によって発熱させるように構成することもできる。
【0048】
また、前記した第1および第2の実施の形態においては、支持部材としてのチャック15によって、耐火性ヘッド6の外周縁から流下しながら固化するシリカガラス溶融体の下端部を、一定速度で回転させつつ牽引するようにしているが、前記チャック15は牽引する機能のみを持ち、耐火性ヘッド6を水平方向に一定速度で回転させるようにしてもよい。
【0049】
【実施例】
図1に示した製造装置を利用して、外径130mm、内径100mm、長さ1000mmのシリカガラス管を製造する場合の一例について説明する。この場合、モリブデンによりその直径が100mm、高さが50mmの外形形状になされた耐火性ヘッド6を利用した。炉体1内の雰囲気は、ヘリウムガスが103 Paとなるように制御され、この状態でコイル8に高周波電流を供給し、耐火性ヘッド6を加熱した。
【0050】
温度測定ユニット11によって耐火性ヘッド6の温度が、2000℃に達したことを確認した後に、シリカ粉末原料を1Kg/hで、300g投入し、15分間保持して溶融すると共に、引き下げ用シリカガラス管16(密度2.0g/cm3 )に溶着した。その後、シリカ粉末原料を1Kg/hで供給しながら、チャック昇降回転機構14を回転速度1rpmで回転させながら、8cm/hの速度で引き下げた。
【0051】
引き下げ距離が100cmになったところで停止し、製管されたシリカガラス管を取り出した。そして、ヘッド部を切り離し、ガラス管の寸法を測定したところ、外径130.5mm、内径100mm、長さ1000mmのシリカガラス管を得ることができた。
【0052】
なお、図4に示した製造装置を利用して、前記と同様の条件において、同じくシリカガラス管を製造した。この場合、温度測定ユニット11によって第2の発熱体31の温度が、2000℃に達したことを確認した後に、前記したように最初のステップとして、シリカ粉末原料を1Kg/hで、300g投入する操作を行い、その後前記と同様の手順により製管した。その結果、前記とほぼ同一寸法のシリカガラス管を得ることができた。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなとおり、この発明にかかる製造方法およびこれを採用したシリカガラス円筒体の製造装置によると、成形すべきシリカガラス円筒体の内径を決定する耐火性ヘッドを、発熱体により構成した点に特徴を有し、シリカガラスの原料粉末は、原料導入管を介して耐火性ヘッドの直上に供給されるようになされる。これにより、原料粉末はヘッド上において加熱されて順次溶融されるので、従来のように、原料粉末を酸素および水素を用いたバーナ火炎により溶融する酸水素炎溶融法を用いる場合に比較すると、バーナ火炎による原料粉末の飛散量を遥かに低減させることができ、その歩留まりを向上させることに寄与できる。
【0054】
また、耐火性ヘッド上に堆積されたシリカガラス溶融体を、前記耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させ、かつ流下しながら固化するシリカガラス溶融体の下端部を、一定速度で回転しつつ牽引する支持部材により引き下げるようになされるので、シリカガラスより気泡を効果的に排出させることができると共に、シリカガラス円筒体の肉厚を所望の寸法となるように制御することができる。したがって、必要とするシリカガラス管を必要本数製造することが可能となり、低コストにして多品種のシリカガラス管の製造に柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる製造装置の第1の実施形態を、中央部において縦方向に破断した状態で示した断面図である。
【図2】図1に示した製造装置において利用される耐火性ヘッドの例を示した断面図である。
【図3】耐火性ヘッドに原料粉末を供給し、溶融ガラスを生成する状態を示した断面図である。
【図4】この発明にかかる製造装置の第2の実施形態を、中央部において縦方向に破断した状態で示した断面図である。
【符号の説明】
1 炉体
2 下部チャンバー
3 原料タンク
4 定量機構
5 原料導入管
6 耐火性ヘッド(発熱体)
6A 凹部
8 高周波コイル
10 測温窓
11 温度測定ユニット
13 ガラス溶融体
14 チャック昇降回転機構
15 チャック(支持部材)
16 引き下げ用シリカガラス管
21 雰囲気ガス導入管
22 流量計測装置
24 排気管
25 排気バルブ
31 第2の発熱体
Claims (9)
- 原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を炉体内で加熱溶融し、溶融状態になされたシリカガラス溶融体を耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させることで、シリカガラスの円筒体を成形させるシリカガラス円筒体の製造方法であって、
成形すべきシリカガラス円筒体の内径に対応する所定の直径を有し、前記原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を直上から受ける耐火性ヘッドが発熱体により構成され、前記原料粉末を受けつつ耐火性ヘッド上において原料粉末を順次溶融させると共に、耐火性ヘッド上に堆積されたシリカガラス溶融体を、前記耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させ、この下端部を、一定速度で回転しつつ降下する支持部材により引き下げることを特徴とするシリカガラス円筒体の製造方法。 - 発熱体により構成された前記耐火性ヘッドの直上に対峙する原料導入管の端部には第2の発熱体が配置され、前記第2の発熱体によりシリカガラスの原料粉末を半溶融状態にして、前記耐火性ヘッド上に供給することを特徴とする請求項1に記載のシリカガラス円筒体の製造方法。
- 前記原料導入管を介して耐火性ヘッドに供給される原料粉末の供給量および/または前記支持部材の引き下げ速度を調整することにより、成形されるシリカガラス円筒体の肉厚を制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシリカガラス円筒体の製造方法。
- 前記支持部材には円筒状に成形された引き下げ用シリカガラス管が配置され、当該引き下げ用シリカガラス管を介して前記シリカガラス溶融体を引き下げることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシリカガラス円筒体の製造方法。
- 前記引き下げ用シリカガラス管の密度が、1.95〜2.15g/cm3 の範囲に選定された気泡入りシリカガラスを利用することを特徴とする請求項4に記載のシリカガラス円筒体の製造方法。
- 原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を炉体内で加熱溶融し、溶融状態になされたシリカガラス溶融体を耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させることで、シリカガラスの円筒体を成形させるシリカガラス円筒体の製造装置であって、
前記原料導入管から供給されるシリカガラスの原料粉末を直上から連続的に受けつつ、原料粉末を順次溶融させると共に、成形すべきシリカガラス円筒体の内径に対応する所定の直径を有する発熱体により構成された耐火性ヘッドと、前記耐火性ヘッド上において溶融状態になされ、耐火性ヘッドの外周縁から流下して固化するシリカガラス溶融体の下端部を一定速度で回転させつつ牽引する支持部材とを具備したことを特徴とするシリカガラス円筒体の製造装置。 - 前記耐火性ヘッドの直上に対峙する原料導入管の端部には第2の発熱体が配置され、前記第2の発熱体によりシリカガラスの原料粉末を半溶融状態にして前記耐火性ヘッド上に供給するように構成したことを特徴とする請求項6に記載のシリカガラス円筒体の製造装置。
- 前記発熱体により構成された耐火性ヘッドおよび第2の発熱体が、高周波加熱手段もしくは抵抗加熱手段によって発熱されるように構成したことを特徴とする請求項7に記載のシリカガラス円筒体の製造装置。
- 前記炉体内を還元ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気に保持するためのガス導入管およびガス排出管を配置したことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のシリカガラス円筒体の製造装置。
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