JP2004059360A - 結晶シート製造装置および製造方法ならびに太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高度な温度制御なしに、実用的な結晶性(多結晶)を有する半導体結晶シートを高速に製造することができ、融液面の揺れや液面変動による影響を抑えることができ、そして曲面からなる結晶シートを製造することができる、結晶シートの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の結晶シート製造装置は、上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた、半導体材料を溶融するためのるつぼと、該キャピラリー部に該半導体融液を供給するための機構と、該キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液と接触しつつ、該キャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動することにより半導体結晶を成長させる支持体とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の結晶シート製造装置は、上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた、半導体材料を溶融するためのるつぼと、該キャピラリー部に該半導体融液を供給するための機構と、該キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液と接触しつつ、該キャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動することにより半導体結晶を成長させる支持体とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池に使用するシリコン結晶シートの製造装置および製造方法に関し、より詳細には、溶融シリコンに基板を接触させることによって基板上にシリコン膜を成長させる製造装置および製造方法、ならびにこれにより製造されたシリコン結晶シートからなる太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池に使用するための多結晶シリコン基板の製造方法としては、キャスティング法がある。この方法は、石英などの耐熱性材料からなる鋳型内で原料シリコンを加熱溶融し、そのまま冷却固化することでインゴットを製造し、これを規定の大きさに切断(分割およびスライス)して基板とする方法である。
【0003】
この方法では、良好な多結晶シリコン基板を得ることができるが、スライス工程の煩雑さや、スライスに伴うシリコン材料のロスなどのために低コスト化が困難であり、太陽電池の低価格化には適するものではない。
【0004】
上記のスライス工程に付随していた不具合を解決する方法として、スライス工程が不要なシリコン結晶シートの製造法が検討され、たとえば、図7に示すような特開平11−121777号公報に記載されるデンドライトウェブ法(Dendritic Web)や、図8に示すような特開平5−294791号公報に記載されるEFG法(Edge−Defined Film−Fed Growth)などがある。デンドライトウェブ法においては、図7に示されるように、種結晶22を付けられた、るつぼ20中の半導体融液18を略垂直方向19に引き出して、シート状融液21を冷却させることによって、結晶シートを成長させる方法である。EFG方法においては、図8に示されるように、るつぼ23中のシリコン融液28に、キャピラリー部26を設け、このキャピラリー部26の間に生じる毛細管現象によってキャピラリー部26の上端まで融液28を盛り上がらせ、そこに種結晶24をつけてシリコン融液からシリコン結晶シート27を垂直方向25に引き上げる、いわゆる「縦引き技術」を使用している。
【0005】
しかしながら、この「縦引き技術」によって製造されたシリコン結晶シートは良好な結晶性(単結晶または多結晶)を有するけれども、シートの引き上げ速度を速めた場合、良好な形状のシートが形成されなくなるので、量産性に劣るという欠点がある。具体的には、デンドライトウェブ法においては1〜2cm/min、EFG法においては、1〜7cm/minでの生産が限界であり、大量生産には適するものではない。
【0006】
さらに、これらの製造法においては、シリコン融液の温度制御が非常に難しいという問題点もある。通常、これらの方法においては、種結晶であるデンドライトやキャピラリー部を用いて引き上げられたシリコン融液が開放空間でメニスカス(固液界面)を形成し、ここで結晶化することにより結晶シートが製造される。この場合、メニスカスが形成される位置(一般にキャピラリー部上端から、製造される結晶シートの厚みの、1〜10倍程度の高さ)における融液温度を、その融点よりわずかに低い温度(過冷却状態)に維持する必要があるために、融液自体の温度を融点近傍、もしくは過冷却状態できわめて一定に保たねばならない。なぜなら、メニスカス温度がその許容範囲(約0.1℃オーダーと知られる)を超えた温度になると結晶シートを製造することができず、下回ると結晶性が悪いシートになってしまうからである。
【0007】
上記「縦引き技術」の欠点を回避することができる技術として、図9に示すような特開昭55−73450号公報に記載される方法、ならびに図10に示すような米国特許第4251570号および同第4252861号に記載される方法がある。図9に示す方法では、支持体33を矢印34の方向にロールを用いて移動させ、このとき、支持体33の下面をるつぼ31中の融液32に接触するようにする。その後、支持体33に付着した融液32を、冷却ガス30を吹付けることにより結晶化させ、結晶シート29が得られる。また、図10に示す方法は、ヒーター39によりシリコンを溶融し、桶状のるつぼ38の上方の融液に接触しつつ支持体36を図中の矢印35の方向に移動させて、結晶シート37を製造する方法である。つまり、これら2つの方法は、シリコン融液面に結晶成長用支持体を接触させ、これを横方向に移動して支持体表面に結晶シートを形成する、いわゆる「横引き技術」である。
【0008】
しかしながら、これらの方法においても、次のような問題がある。1つは、半導体(シリコン)融液面は加熱の不均一や支持体の移動により、絶えず不規則な波打ちを生じており、これが作製される結晶シートの形状に悪影響を与えることである。2つめは支持体と融液面のギャップを精度良く調整する必要があること、つまり結晶シート形成に伴う融液面低下を常時補償しなければならず、作業効率が悪いことである。
【0009】
さらに、この「横引き技術」は、るつぼ中に広がった融液面と支持体を接触させるという特徴の製造法であるために、平板状の結晶シートのみの製造に限定されてしまう。たとえば、図10のような桶状のるつぼ38を使用した場合、このるつぼ径を小さくすると、るつぼに干渉しない程度の曲面を有する支持体への結晶シート引き出しは可能であると思われる。しかし、この桶状のるつぼ38においては、融液の補充を桶状るつぼの端から行なう構造であるために、るつぼ径が小さくなればなるほど、また大面積の結晶シートを形成しようとして、るつぼ長を長くすればするほど、るつぼ全体への融液の移動に時間がかかる。そのため、融液補充(もしくは逆に、融液面を下げようとした場合)から一定期間、融液引き出し方向と直交する方向に融液の流れが生じる状態となるので、この期間に製造される結晶シートは膜厚などの面内不均一が生じることになり、問題であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来の技術の問題を解決し、高度な温度制御なしに、実用的な結晶性を有する半導体結晶シートを高速に製造することができ、融液面の揺れや液面変動による影響を抑えることができ、そして曲面からなる結晶シートを製造することができる、結晶シートの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。さらには、この製造装置および製造方法によって製造された商品価値の高い太陽電池用シリコン結晶シートを提供することをも目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面では、結晶シート製造装置は、上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた、半導体材料を溶融するためのるつぼと、該キャピラリー部に該半導体融液を供給するための機構と、該キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液と接触しつつ、該キャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動することにより半導体結晶を成長させる支持体とを備えている。
【0012】
好ましくは、上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた主るつぼと、該主るつぼ中の前記半導体融液量を調整するための副るつぼを設け、前記キャピラリー部に半導体融液を供給するための機構として、該主るつぼと副るつぼをそれぞれ囲って取り付けたチャンバを備えている。
【0013】
好ましくは、前記半導体融液内部に所定量挿入することにより、該半導体融液をキャピラリー部へ供給するための耐熱性部材が、前記るつぼに設けられている。上記結晶シート製造装置によれば、半導体融液が支持体下面に張り付いた状態で結晶化するので、結晶シートの引き出し速度や融液温度を厳密に制御する必要がなく、高速に結晶シートを製造でき、良品質の結晶シートを得ることができる。また、支持体と接触する融液がキャピラリー部によって狭持されているので、るつぼ内の加熱の不均一に伴う融液表面の波打ちや、支持体の接触および移動に伴う融液表面の波打ちはキャピラリー部で抑えられ、これにより均一な結晶シートを製造することができる。
【0014】
本発明においては、前記支持体は曲面を含む基板であることがさらに好ましい。曲面を含む基板を使用することで、従来の技術では困難であった略瓦形状の結晶シートなども製造可能である。
【0015】
本発明の別の局面によれば、結晶シート製造方法は、るつぼ内の半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程と、キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液に支持体の先端を接触させる工程と、該支持体をキャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動させることにより、半導体融液を該支持体下面にシート状に引き出す工程と、該支持体に付着した該半導体融液を結晶化させる工程と、を包含する。
【0016】
好ましくは、前記半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程において、主るつぼと副るつぼとをそれぞれ囲って取り付けられたチャンバのうち、少なくとも一方の内部に不活性ガスを導入することにより、該半導体融液がキャピラリー部の上方に供給される。
【0017】
好ましくは、前記半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程において、るつぼ内の融液中で耐熱性部材を上下することによって、該半導体融液がキャピラリー部の上方に供給される。
【0018】
上記本発明の結晶シート製造方法によれば、支持体を使用することでシート状の半導体融液をキャピラリー部から安定に引き出すことができ、かつ、融液引き出しから結晶化までの時間を、融液温度および引き出し速度のみでなく、支持体温度によっても制御可能であるので、結晶シートの製造を高速化でき、そして形成した結晶粒径の制御が容易になる。また、半導体融液表面をキャピラリー部の上方またはキャピラリー部内に保持することができ、支持体への接触が必要でない場合には融液をキャピラリー部上端以内に制御して融液の汚染や不用意なオーバーフローを防止することができる。
【0019】
上記の製造装置および製造方法によって製造されたシリコン結晶シートを含む太陽電池は、従来よりも安定かつ高速に製造でき、有為なコストダウンが可能である。また、曲面を有する結晶シート太陽電池も容易に製造でき、太陽電池形状のバリエーションを大幅に増加することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1(a)は、本発明におけるシリコン結晶シート製造装置の構成を示す概略図である。図1(b)は、線B−B’に沿って切断した断面図である。図1(a)に示すように、本発明のシリコン結晶シート製造装置は、キャピラリー部3を上面に備えた主るつぼ1と、該主るつぼ1に融液を供給するための副るつぼ2と、主るつぼ1と副るつぼ2とを連結する連結部4と、方向7に移動させて前記融液を結晶成長させるための支持体5と、支持体5を移動させる搬送手段(図示せず)を備える。
【0021】
主るつぼ1は、半導体材料をその中で溶融するためのものであり、主るつぼ1の上面にはキャピラリー部3が設けられている。図1(b)に示されるように、キャピラリー部3は、上方が開口し、帯状に略水平に延びるスリットから構成され、そこから半導体融液が供給される。また、主るつぼ1の側面および上面付近に、キャピラリー部3を加熱するためのヒーター6および必要に応じて断熱材を配置することにより、融液の温度低下によるキャピラリー部3の詰まりを防止することができる構造になっている。
【0022】
副るつぼ2は、図1(a)に示されるように、連結部4により主るつぼ1と連結され、主るつぼ内の半導体融液量を連結部4を介して調整することができる。そのときの調整の方法を、図2に示す。図2は、キャピラリー部3へ半導体融液8を供給する副るつぼ2の概略断面図である。図2に示されるように、副るつぼ2内の半導体融液8中で耐熱性部材9を上下することによって、該半導体融液8をキャピラリー部3の上方に供給したり、またはそこからの回収が可能である。この方法によれば、半導体融液量の調整をキャピラリー部3全体に同時に行なうことができ、図10の装置において生じていた、半導体融液が引き出し部全面に行き渡るためのタイムラグがなく、半導体融液全体に加熱もすることができ、均一な結晶シートを連続的に製造することができる。
【0023】
また、別の調整方法を、図3に示す。図3は、副るつぼ2から主るつぼ1へ、さらにはキャピラリー部3へ半導体融液8を供給するためのガス導入用チャンバ10および11が、主るつぼ1と副るつぼ2に取り付けられた構造の概略断面図である。図3に示されるように、主るつぼ1と副るつぼ2とを別々のチャンバ10および11内にそれぞれ配置し、これら両者のチャンバ内のアルゴンガスの圧力を調整することにより、融液8をキャピラリー部3の上方に供給したり、またはそこからの回収が可能である。ここで、半導体融液8のキャピラリー部上方への供給またはそこからの回収の方法は、これらに限定されるわけではない。
【0024】
図4は、キャピラリー部3から供給されたシリコン融液8が支持体5に結晶成長している状態を示す断面図である。図4に示されるように、融液8と支持体5とが接触しているか、または接触しつつ支持体5が方向7へ移動しているとき、融液8自体の粘性とキャピラリー部3において生じる毛細管現象により融液が引き上げられ、自動的にキャピラリー部3への融液供給が起こり得、結晶シート12が支持体5に形成される。
【0025】
したがって、たとえば、結晶シート12が支持体5の表面に形成されていくと、キャピラリー部3上方の融液面が、キャピラリー部3上端よりも低い位置まで低下すると思われるが、毛細管現象と融液の粘性によって融液が上昇するので、このような融液面の低下は生じず、結晶シート12の形成を連続して行なうことができ、作業効率は大幅に改善される。さらに、支持体5への融液供給部として、キャピラリー部3を用いることで、結晶成長用支持体5が曲面からなるものであっても、融液8の引き出しが可能であり、製造可能な結晶シート形状のバリエーションは大幅に増大する。なお、引き出し可能な基板の曲率は、キャピラリー部3の構造や結晶成長用支持体5の表面組成や形状、移動速度などにより変化する場合もある。
【0026】
上記のような方法により、結晶シート製造時の任意の時点において、半導体融液表面をキャピラリー部3の上方または上端以下の高さに制御、すなわち、移動および保持できるので、所望の長さの結晶シート12を、効率よくかつ均一に、支持体5に成長させることができる。たとえば、結晶シート形成時には融液面をキャピラリー部3上端以上に保持しておいて、キャピラリー3自体の上端と支持体5とが接触しないようにし、支持体5が連続体ではなく複数の基板からなる場合に、基板と基板との間で支持体5がキャピラリー部3上にないときなど、融液8と支持体5との接触が必要ない場合は、融液8をキャピラリー部3内部に収容して、融液8の汚染や不用意なオーバーフローなどを防ぐことができる。また、支持体5の前後端に融液8を接触しないようにすることができ、結晶シート12末端に突起となって結晶が残って後工程が複雑になることもない。ここで、キャピラリー部3の上方とは、キャピラリー部3の上端より高い、すなわちこれより上の領域をいう。
【0027】
支持体5は、図4に示されるように、その表面にシリコン結晶シート12を形成するためのものである。本発明において、使用可能な支持体5としては、グラファイト製の基板、Moなどの高融点金属ベルト、ベルト状に加工したシリカ製グラスファイバーなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、グラファイト製の基板が、好適に使用される。また、支持体5の形状としては、図4に示されるような、太陽電池に通常使用される平板状のものの他に、図5に示されるような、屋根瓦の表面形状を模した曲面を有する支持体11も使用することができる。さらに、支持体5は、それ自体の温度を制御することにより、シリコン融液8の結晶化を高速にすることができる。
【0028】
本発明においては、搬送手段(図示せず)を用いて支持体5を移動させることにより、融液8を引き出すことができる。使用可能な搬送手段としては、たとえば、図4の場合のように、支持体5が平板状のものである場合には、ガイドレールなどを用いることができ、図5の場合のように、曲面を含む支持体11である場合、たとえば、瓦形状の基板である場合には、曲面構造のガイドレール、または数値制御装置(NC)によってプログラム制御された駆動部などに保持し、キャピラリー部3上端自体には接触せず、かつ支持体11の曲面構造がシリコン融液8と適切に接触するように移動させることができる。
【0029】
図6は、主るつぼおよびキャピラリー部の別の例を示す断面図である。本発明において、図1(b)に示したような主るつぼ1の代替として、図6に示すような構造も使用可能である。図6中に示されるように、図1(b)の場合と同様に、主るつぼ15の側面および上面付近に、キャピラリー部17を加熱するためのヒーター16および必要に応じて断熱材を配置することにより、融液の温度低下によるキャピラリー部17の詰まりを防止することができる。さらに、キャピラリー部17は、融液を狭持しつつ供給することができるので、加熱の不均一や支持体の接触および移動に伴う融液表面の波打ちがほとんど発生しない。
【0030】
以下、図を用いて、本発明の結晶シート製造装置の動作の例を説明する。まず、図3に示されるようなガス導入用チャンバ11を備えた副るつぼ2内にボロンを少量ドープしたシリコンを入れ、その後各チャンバ10および11内を脱気し、次いでシリコンを加熱溶融する。具体的には、1000℃にて脱気した後に、チャンバ10,11内にアルゴンガスを充填し、1500℃にてシリコンを溶融することができる(ただし、シリコン単体の融点は、1410℃である)。加熱手段としては、図1(b)に示すように、電気抵抗による加熱ヒーター6を主るつぼ1および副るつぼ2の周囲に配置して加熱することができるが、これに限定されず、誘導加熱、高周波加熱などの任意の加熱手段も使用可能である。また、この加熱は、るつぼ本体1,2とキャピラリー部3とを同時にかまたは独立して行なうことができる。上記工程により、溶融シリコン8は、副るつぼ2から連結部4を通って主るつぼ1に流れ、主るつぼ1内を溶融シリコンで充填することができる。その後、各チャンバ10および11内の圧力を調整して、キャピラリー部3へ供給される融液8の量を調整する。
【0031】
次に、結晶成長用支持体5を、図4に示すように、図示しない搬送手段を用いて、キャピラリー部3の上方のシリコン融液に接触させ、かつキャピラリー部3上端自体には接触しないような位置で水平にし、スリット方向と略直交する方向7に、支持体5の先端から後方に向かって移動させる。また、支持体5に対する融液8の濡れ性や装置サイズなどを考慮した場合、支持体5を傾斜させた状態にて移動することもできる。これにより、支持体表面にシート状でシリコン融液8がその先端から後方にかけて順次引き出され、その後周囲温度により冷却されて結晶化し、シリコン結晶シート12が形成される。
【0032】
このように、シリコン融液の冷却、結晶化が支持体表面に貼りついた状態で行なわれるので、温度変動により結晶シートが形成されなくなる恐れが無い。すなわち、従来法のように融液温度を過冷却温度近傍(たとえば1400℃設定であり、メニスカス温度は0.1℃オーダーで制御する必要がある)で安定に保持する必要が無いので、外部要因によって融液温度が変動(たとえば10℃オーダー)しても、融液の固化が起きないように、るつぼ温度をシリコンの融点よりも充分に高い温度(たとえば1500℃)に設定してシリコン結晶シートを製造することができる。
【0033】
ここで、上記により得られた結晶シート12を支持体5から剥離し、公知のプロセスで太陽電池を作製することにより、変換効率13.0%程度の太陽電池を得ることができる。なお、使用する支持体5によっては、結晶シート12を支持体5から剥離せずにそのまま後工程に供することもできる。
【0034】
また、支持体5として、図5に示すような屋根瓦形状の支持体14を使用した場合は、搬送手段として、曲線構造のガイドレール、または数値制御装置(NC)によりプログラム制御した駆動部などによりこの支持体14を保持し、キャピラリー部3上方のシリコン融液に常に接触するが、キャピラリー部3上端自体には接触しないような位置で、その先端から後方にかけて移動させることで、結晶シート13を形成する。
【0035】
形成された曲面結晶シート13は、上記と同様に、公知のプロセスにより太陽電池セルとし、略屋根瓦形状の保護部材でセルを狭持することにより、屋根瓦兼用の太陽電池とすることができる。これにより、従来の住宅用太陽電池モジュールに必須であった台座(フレーム)が不要となり、コストダウンにつながり、また商品性も向上することができ、美しい外観の太陽電池かつ屋根瓦を得ることができる。なお、本明細書中において、同じ符合を附している部材は、同じものを意味する。
【0036】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の結晶シート製造装置および製造方法は、高度な温度制御なしに半導体結晶シートを高速に製造することができる。また、キャピラリー部によって融液を狭持することができるので、融液面の揺れや液面変動による影響などを伴わず均一に加熱および供給でき、さらには毛細管現象により融液表面の低下にほとんど影響をうけず、連続して融液を引き出すことができる。そして、従来の「横引き法」では困難であった、曲面からなる結晶シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、シリコン結晶シート製造装置の構成を示す概略図であり、(b)は、線B−B’に沿って切断した断面図である。
【図2】キャピラリー部へ融液を供給する副るつぼの概略断面図である。
【図3】副るつぼから主るつぼへ、さらにはキャピラリー部へ融液を供給するためのガス導入用チャンバが、主るつぼと副るつぼに取り付けられた構造の概略断面図である。
【図4】キャピラリー部から供給されたシリコン融液が支持体に結晶成長している状態を示す断面図である。
【図5】キャピラリー部から供給されたシリコン融液が曲面を有する支持体に結晶成長している状態を示す断面図である。
【図6】主るつぼおよびキャピラリー部の別の例を示す断面図である。
【図7】デンドライトウェブ法に従う結晶シート製造方法の概略図である。
【図8】EFG法に従う結晶シート製造方法の概略図である。
【図9】従来の結晶シート製造方法の概略図である。
【図10】従来の結晶シート製造方法の概略図である。
【符号の説明】
1,15 主るつぼ、2 副るつぼ、3,17,26 キャピラリー部、4 連結部、5,14 支持体、6,16 ヒーターおよび断熱材、7 搬送方向、8,18,28,32 半導体融液、9 耐熱性部材、10,11 チャンバ、12,13,29,37 結晶シート、19,25 結晶シート引上げ方向、20,23,31,38 るつぼ、21,27 シート状融液、22,24 種結晶、30冷却ガス、33,36 結晶成長用支持体、34,35 支持体移動方向、39 加熱ヒーター。
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池に使用するシリコン結晶シートの製造装置および製造方法に関し、より詳細には、溶融シリコンに基板を接触させることによって基板上にシリコン膜を成長させる製造装置および製造方法、ならびにこれにより製造されたシリコン結晶シートからなる太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池に使用するための多結晶シリコン基板の製造方法としては、キャスティング法がある。この方法は、石英などの耐熱性材料からなる鋳型内で原料シリコンを加熱溶融し、そのまま冷却固化することでインゴットを製造し、これを規定の大きさに切断(分割およびスライス)して基板とする方法である。
【0003】
この方法では、良好な多結晶シリコン基板を得ることができるが、スライス工程の煩雑さや、スライスに伴うシリコン材料のロスなどのために低コスト化が困難であり、太陽電池の低価格化には適するものではない。
【0004】
上記のスライス工程に付随していた不具合を解決する方法として、スライス工程が不要なシリコン結晶シートの製造法が検討され、たとえば、図7に示すような特開平11−121777号公報に記載されるデンドライトウェブ法(Dendritic Web)や、図8に示すような特開平5−294791号公報に記載されるEFG法(Edge−Defined Film−Fed Growth)などがある。デンドライトウェブ法においては、図7に示されるように、種結晶22を付けられた、るつぼ20中の半導体融液18を略垂直方向19に引き出して、シート状融液21を冷却させることによって、結晶シートを成長させる方法である。EFG方法においては、図8に示されるように、るつぼ23中のシリコン融液28に、キャピラリー部26を設け、このキャピラリー部26の間に生じる毛細管現象によってキャピラリー部26の上端まで融液28を盛り上がらせ、そこに種結晶24をつけてシリコン融液からシリコン結晶シート27を垂直方向25に引き上げる、いわゆる「縦引き技術」を使用している。
【0005】
しかしながら、この「縦引き技術」によって製造されたシリコン結晶シートは良好な結晶性(単結晶または多結晶)を有するけれども、シートの引き上げ速度を速めた場合、良好な形状のシートが形成されなくなるので、量産性に劣るという欠点がある。具体的には、デンドライトウェブ法においては1〜2cm/min、EFG法においては、1〜7cm/minでの生産が限界であり、大量生産には適するものではない。
【0006】
さらに、これらの製造法においては、シリコン融液の温度制御が非常に難しいという問題点もある。通常、これらの方法においては、種結晶であるデンドライトやキャピラリー部を用いて引き上げられたシリコン融液が開放空間でメニスカス(固液界面)を形成し、ここで結晶化することにより結晶シートが製造される。この場合、メニスカスが形成される位置(一般にキャピラリー部上端から、製造される結晶シートの厚みの、1〜10倍程度の高さ)における融液温度を、その融点よりわずかに低い温度(過冷却状態)に維持する必要があるために、融液自体の温度を融点近傍、もしくは過冷却状態できわめて一定に保たねばならない。なぜなら、メニスカス温度がその許容範囲(約0.1℃オーダーと知られる)を超えた温度になると結晶シートを製造することができず、下回ると結晶性が悪いシートになってしまうからである。
【0007】
上記「縦引き技術」の欠点を回避することができる技術として、図9に示すような特開昭55−73450号公報に記載される方法、ならびに図10に示すような米国特許第4251570号および同第4252861号に記載される方法がある。図9に示す方法では、支持体33を矢印34の方向にロールを用いて移動させ、このとき、支持体33の下面をるつぼ31中の融液32に接触するようにする。その後、支持体33に付着した融液32を、冷却ガス30を吹付けることにより結晶化させ、結晶シート29が得られる。また、図10に示す方法は、ヒーター39によりシリコンを溶融し、桶状のるつぼ38の上方の融液に接触しつつ支持体36を図中の矢印35の方向に移動させて、結晶シート37を製造する方法である。つまり、これら2つの方法は、シリコン融液面に結晶成長用支持体を接触させ、これを横方向に移動して支持体表面に結晶シートを形成する、いわゆる「横引き技術」である。
【0008】
しかしながら、これらの方法においても、次のような問題がある。1つは、半導体(シリコン)融液面は加熱の不均一や支持体の移動により、絶えず不規則な波打ちを生じており、これが作製される結晶シートの形状に悪影響を与えることである。2つめは支持体と融液面のギャップを精度良く調整する必要があること、つまり結晶シート形成に伴う融液面低下を常時補償しなければならず、作業効率が悪いことである。
【0009】
さらに、この「横引き技術」は、るつぼ中に広がった融液面と支持体を接触させるという特徴の製造法であるために、平板状の結晶シートのみの製造に限定されてしまう。たとえば、図10のような桶状のるつぼ38を使用した場合、このるつぼ径を小さくすると、るつぼに干渉しない程度の曲面を有する支持体への結晶シート引き出しは可能であると思われる。しかし、この桶状のるつぼ38においては、融液の補充を桶状るつぼの端から行なう構造であるために、るつぼ径が小さくなればなるほど、また大面積の結晶シートを形成しようとして、るつぼ長を長くすればするほど、るつぼ全体への融液の移動に時間がかかる。そのため、融液補充(もしくは逆に、融液面を下げようとした場合)から一定期間、融液引き出し方向と直交する方向に融液の流れが生じる状態となるので、この期間に製造される結晶シートは膜厚などの面内不均一が生じることになり、問題であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来の技術の問題を解決し、高度な温度制御なしに、実用的な結晶性を有する半導体結晶シートを高速に製造することができ、融液面の揺れや液面変動による影響を抑えることができ、そして曲面からなる結晶シートを製造することができる、結晶シートの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。さらには、この製造装置および製造方法によって製造された商品価値の高い太陽電池用シリコン結晶シートを提供することをも目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面では、結晶シート製造装置は、上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた、半導体材料を溶融するためのるつぼと、該キャピラリー部に該半導体融液を供給するための機構と、該キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液と接触しつつ、該キャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動することにより半導体結晶を成長させる支持体とを備えている。
【0012】
好ましくは、上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた主るつぼと、該主るつぼ中の前記半導体融液量を調整するための副るつぼを設け、前記キャピラリー部に半導体融液を供給するための機構として、該主るつぼと副るつぼをそれぞれ囲って取り付けたチャンバを備えている。
【0013】
好ましくは、前記半導体融液内部に所定量挿入することにより、該半導体融液をキャピラリー部へ供給するための耐熱性部材が、前記るつぼに設けられている。上記結晶シート製造装置によれば、半導体融液が支持体下面に張り付いた状態で結晶化するので、結晶シートの引き出し速度や融液温度を厳密に制御する必要がなく、高速に結晶シートを製造でき、良品質の結晶シートを得ることができる。また、支持体と接触する融液がキャピラリー部によって狭持されているので、るつぼ内の加熱の不均一に伴う融液表面の波打ちや、支持体の接触および移動に伴う融液表面の波打ちはキャピラリー部で抑えられ、これにより均一な結晶シートを製造することができる。
【0014】
本発明においては、前記支持体は曲面を含む基板であることがさらに好ましい。曲面を含む基板を使用することで、従来の技術では困難であった略瓦形状の結晶シートなども製造可能である。
【0015】
本発明の別の局面によれば、結晶シート製造方法は、るつぼ内の半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程と、キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液に支持体の先端を接触させる工程と、該支持体をキャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動させることにより、半導体融液を該支持体下面にシート状に引き出す工程と、該支持体に付着した該半導体融液を結晶化させる工程と、を包含する。
【0016】
好ましくは、前記半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程において、主るつぼと副るつぼとをそれぞれ囲って取り付けられたチャンバのうち、少なくとも一方の内部に不活性ガスを導入することにより、該半導体融液がキャピラリー部の上方に供給される。
【0017】
好ましくは、前記半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程において、るつぼ内の融液中で耐熱性部材を上下することによって、該半導体融液がキャピラリー部の上方に供給される。
【0018】
上記本発明の結晶シート製造方法によれば、支持体を使用することでシート状の半導体融液をキャピラリー部から安定に引き出すことができ、かつ、融液引き出しから結晶化までの時間を、融液温度および引き出し速度のみでなく、支持体温度によっても制御可能であるので、結晶シートの製造を高速化でき、そして形成した結晶粒径の制御が容易になる。また、半導体融液表面をキャピラリー部の上方またはキャピラリー部内に保持することができ、支持体への接触が必要でない場合には融液をキャピラリー部上端以内に制御して融液の汚染や不用意なオーバーフローを防止することができる。
【0019】
上記の製造装置および製造方法によって製造されたシリコン結晶シートを含む太陽電池は、従来よりも安定かつ高速に製造でき、有為なコストダウンが可能である。また、曲面を有する結晶シート太陽電池も容易に製造でき、太陽電池形状のバリエーションを大幅に増加することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1(a)は、本発明におけるシリコン結晶シート製造装置の構成を示す概略図である。図1(b)は、線B−B’に沿って切断した断面図である。図1(a)に示すように、本発明のシリコン結晶シート製造装置は、キャピラリー部3を上面に備えた主るつぼ1と、該主るつぼ1に融液を供給するための副るつぼ2と、主るつぼ1と副るつぼ2とを連結する連結部4と、方向7に移動させて前記融液を結晶成長させるための支持体5と、支持体5を移動させる搬送手段(図示せず)を備える。
【0021】
主るつぼ1は、半導体材料をその中で溶融するためのものであり、主るつぼ1の上面にはキャピラリー部3が設けられている。図1(b)に示されるように、キャピラリー部3は、上方が開口し、帯状に略水平に延びるスリットから構成され、そこから半導体融液が供給される。また、主るつぼ1の側面および上面付近に、キャピラリー部3を加熱するためのヒーター6および必要に応じて断熱材を配置することにより、融液の温度低下によるキャピラリー部3の詰まりを防止することができる構造になっている。
【0022】
副るつぼ2は、図1(a)に示されるように、連結部4により主るつぼ1と連結され、主るつぼ内の半導体融液量を連結部4を介して調整することができる。そのときの調整の方法を、図2に示す。図2は、キャピラリー部3へ半導体融液8を供給する副るつぼ2の概略断面図である。図2に示されるように、副るつぼ2内の半導体融液8中で耐熱性部材9を上下することによって、該半導体融液8をキャピラリー部3の上方に供給したり、またはそこからの回収が可能である。この方法によれば、半導体融液量の調整をキャピラリー部3全体に同時に行なうことができ、図10の装置において生じていた、半導体融液が引き出し部全面に行き渡るためのタイムラグがなく、半導体融液全体に加熱もすることができ、均一な結晶シートを連続的に製造することができる。
【0023】
また、別の調整方法を、図3に示す。図3は、副るつぼ2から主るつぼ1へ、さらにはキャピラリー部3へ半導体融液8を供給するためのガス導入用チャンバ10および11が、主るつぼ1と副るつぼ2に取り付けられた構造の概略断面図である。図3に示されるように、主るつぼ1と副るつぼ2とを別々のチャンバ10および11内にそれぞれ配置し、これら両者のチャンバ内のアルゴンガスの圧力を調整することにより、融液8をキャピラリー部3の上方に供給したり、またはそこからの回収が可能である。ここで、半導体融液8のキャピラリー部上方への供給またはそこからの回収の方法は、これらに限定されるわけではない。
【0024】
図4は、キャピラリー部3から供給されたシリコン融液8が支持体5に結晶成長している状態を示す断面図である。図4に示されるように、融液8と支持体5とが接触しているか、または接触しつつ支持体5が方向7へ移動しているとき、融液8自体の粘性とキャピラリー部3において生じる毛細管現象により融液が引き上げられ、自動的にキャピラリー部3への融液供給が起こり得、結晶シート12が支持体5に形成される。
【0025】
したがって、たとえば、結晶シート12が支持体5の表面に形成されていくと、キャピラリー部3上方の融液面が、キャピラリー部3上端よりも低い位置まで低下すると思われるが、毛細管現象と融液の粘性によって融液が上昇するので、このような融液面の低下は生じず、結晶シート12の形成を連続して行なうことができ、作業効率は大幅に改善される。さらに、支持体5への融液供給部として、キャピラリー部3を用いることで、結晶成長用支持体5が曲面からなるものであっても、融液8の引き出しが可能であり、製造可能な結晶シート形状のバリエーションは大幅に増大する。なお、引き出し可能な基板の曲率は、キャピラリー部3の構造や結晶成長用支持体5の表面組成や形状、移動速度などにより変化する場合もある。
【0026】
上記のような方法により、結晶シート製造時の任意の時点において、半導体融液表面をキャピラリー部3の上方または上端以下の高さに制御、すなわち、移動および保持できるので、所望の長さの結晶シート12を、効率よくかつ均一に、支持体5に成長させることができる。たとえば、結晶シート形成時には融液面をキャピラリー部3上端以上に保持しておいて、キャピラリー3自体の上端と支持体5とが接触しないようにし、支持体5が連続体ではなく複数の基板からなる場合に、基板と基板との間で支持体5がキャピラリー部3上にないときなど、融液8と支持体5との接触が必要ない場合は、融液8をキャピラリー部3内部に収容して、融液8の汚染や不用意なオーバーフローなどを防ぐことができる。また、支持体5の前後端に融液8を接触しないようにすることができ、結晶シート12末端に突起となって結晶が残って後工程が複雑になることもない。ここで、キャピラリー部3の上方とは、キャピラリー部3の上端より高い、すなわちこれより上の領域をいう。
【0027】
支持体5は、図4に示されるように、その表面にシリコン結晶シート12を形成するためのものである。本発明において、使用可能な支持体5としては、グラファイト製の基板、Moなどの高融点金属ベルト、ベルト状に加工したシリカ製グラスファイバーなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、グラファイト製の基板が、好適に使用される。また、支持体5の形状としては、図4に示されるような、太陽電池に通常使用される平板状のものの他に、図5に示されるような、屋根瓦の表面形状を模した曲面を有する支持体11も使用することができる。さらに、支持体5は、それ自体の温度を制御することにより、シリコン融液8の結晶化を高速にすることができる。
【0028】
本発明においては、搬送手段(図示せず)を用いて支持体5を移動させることにより、融液8を引き出すことができる。使用可能な搬送手段としては、たとえば、図4の場合のように、支持体5が平板状のものである場合には、ガイドレールなどを用いることができ、図5の場合のように、曲面を含む支持体11である場合、たとえば、瓦形状の基板である場合には、曲面構造のガイドレール、または数値制御装置(NC)によってプログラム制御された駆動部などに保持し、キャピラリー部3上端自体には接触せず、かつ支持体11の曲面構造がシリコン融液8と適切に接触するように移動させることができる。
【0029】
図6は、主るつぼおよびキャピラリー部の別の例を示す断面図である。本発明において、図1(b)に示したような主るつぼ1の代替として、図6に示すような構造も使用可能である。図6中に示されるように、図1(b)の場合と同様に、主るつぼ15の側面および上面付近に、キャピラリー部17を加熱するためのヒーター16および必要に応じて断熱材を配置することにより、融液の温度低下によるキャピラリー部17の詰まりを防止することができる。さらに、キャピラリー部17は、融液を狭持しつつ供給することができるので、加熱の不均一や支持体の接触および移動に伴う融液表面の波打ちがほとんど発生しない。
【0030】
以下、図を用いて、本発明の結晶シート製造装置の動作の例を説明する。まず、図3に示されるようなガス導入用チャンバ11を備えた副るつぼ2内にボロンを少量ドープしたシリコンを入れ、その後各チャンバ10および11内を脱気し、次いでシリコンを加熱溶融する。具体的には、1000℃にて脱気した後に、チャンバ10,11内にアルゴンガスを充填し、1500℃にてシリコンを溶融することができる(ただし、シリコン単体の融点は、1410℃である)。加熱手段としては、図1(b)に示すように、電気抵抗による加熱ヒーター6を主るつぼ1および副るつぼ2の周囲に配置して加熱することができるが、これに限定されず、誘導加熱、高周波加熱などの任意の加熱手段も使用可能である。また、この加熱は、るつぼ本体1,2とキャピラリー部3とを同時にかまたは独立して行なうことができる。上記工程により、溶融シリコン8は、副るつぼ2から連結部4を通って主るつぼ1に流れ、主るつぼ1内を溶融シリコンで充填することができる。その後、各チャンバ10および11内の圧力を調整して、キャピラリー部3へ供給される融液8の量を調整する。
【0031】
次に、結晶成長用支持体5を、図4に示すように、図示しない搬送手段を用いて、キャピラリー部3の上方のシリコン融液に接触させ、かつキャピラリー部3上端自体には接触しないような位置で水平にし、スリット方向と略直交する方向7に、支持体5の先端から後方に向かって移動させる。また、支持体5に対する融液8の濡れ性や装置サイズなどを考慮した場合、支持体5を傾斜させた状態にて移動することもできる。これにより、支持体表面にシート状でシリコン融液8がその先端から後方にかけて順次引き出され、その後周囲温度により冷却されて結晶化し、シリコン結晶シート12が形成される。
【0032】
このように、シリコン融液の冷却、結晶化が支持体表面に貼りついた状態で行なわれるので、温度変動により結晶シートが形成されなくなる恐れが無い。すなわち、従来法のように融液温度を過冷却温度近傍(たとえば1400℃設定であり、メニスカス温度は0.1℃オーダーで制御する必要がある)で安定に保持する必要が無いので、外部要因によって融液温度が変動(たとえば10℃オーダー)しても、融液の固化が起きないように、るつぼ温度をシリコンの融点よりも充分に高い温度(たとえば1500℃)に設定してシリコン結晶シートを製造することができる。
【0033】
ここで、上記により得られた結晶シート12を支持体5から剥離し、公知のプロセスで太陽電池を作製することにより、変換効率13.0%程度の太陽電池を得ることができる。なお、使用する支持体5によっては、結晶シート12を支持体5から剥離せずにそのまま後工程に供することもできる。
【0034】
また、支持体5として、図5に示すような屋根瓦形状の支持体14を使用した場合は、搬送手段として、曲線構造のガイドレール、または数値制御装置(NC)によりプログラム制御した駆動部などによりこの支持体14を保持し、キャピラリー部3上方のシリコン融液に常に接触するが、キャピラリー部3上端自体には接触しないような位置で、その先端から後方にかけて移動させることで、結晶シート13を形成する。
【0035】
形成された曲面結晶シート13は、上記と同様に、公知のプロセスにより太陽電池セルとし、略屋根瓦形状の保護部材でセルを狭持することにより、屋根瓦兼用の太陽電池とすることができる。これにより、従来の住宅用太陽電池モジュールに必須であった台座(フレーム)が不要となり、コストダウンにつながり、また商品性も向上することができ、美しい外観の太陽電池かつ屋根瓦を得ることができる。なお、本明細書中において、同じ符合を附している部材は、同じものを意味する。
【0036】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の結晶シート製造装置および製造方法は、高度な温度制御なしに半導体結晶シートを高速に製造することができる。また、キャピラリー部によって融液を狭持することができるので、融液面の揺れや液面変動による影響などを伴わず均一に加熱および供給でき、さらには毛細管現象により融液表面の低下にほとんど影響をうけず、連続して融液を引き出すことができる。そして、従来の「横引き法」では困難であった、曲面からなる結晶シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、シリコン結晶シート製造装置の構成を示す概略図であり、(b)は、線B−B’に沿って切断した断面図である。
【図2】キャピラリー部へ融液を供給する副るつぼの概略断面図である。
【図3】副るつぼから主るつぼへ、さらにはキャピラリー部へ融液を供給するためのガス導入用チャンバが、主るつぼと副るつぼに取り付けられた構造の概略断面図である。
【図4】キャピラリー部から供給されたシリコン融液が支持体に結晶成長している状態を示す断面図である。
【図5】キャピラリー部から供給されたシリコン融液が曲面を有する支持体に結晶成長している状態を示す断面図である。
【図6】主るつぼおよびキャピラリー部の別の例を示す断面図である。
【図7】デンドライトウェブ法に従う結晶シート製造方法の概略図である。
【図8】EFG法に従う結晶シート製造方法の概略図である。
【図9】従来の結晶シート製造方法の概略図である。
【図10】従来の結晶シート製造方法の概略図である。
【符号の説明】
1,15 主るつぼ、2 副るつぼ、3,17,26 キャピラリー部、4 連結部、5,14 支持体、6,16 ヒーターおよび断熱材、7 搬送方向、8,18,28,32 半導体融液、9 耐熱性部材、10,11 チャンバ、12,13,29,37 結晶シート、19,25 結晶シート引上げ方向、20,23,31,38 るつぼ、21,27 シート状融液、22,24 種結晶、30冷却ガス、33,36 結晶成長用支持体、34,35 支持体移動方向、39 加熱ヒーター。
Claims (8)
- 上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた、半導体材料を溶融するためのるつぼと、該キャピラリー部に該半導体融液を供給するための機構と、該キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液と接触しつつ、該キャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動することにより半導体結晶を成長させる支持体とを備えることを特徴とする、結晶シート製造装置。
- 上向きに開口した帯状スリットを有するキャピラリー部を備えた主るつぼと、該主るつぼ中の前記半導体融液量を調整するための副るつぼを設け、前記キャピラリー部に半導体融液を供給するための機構として、該主るつぼと副るつぼをそれぞれ囲って取り付けたチャンバを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の結晶シート製造装置。
- 前記半導体融液内部に所定量挿入することにより、該半導体融液をキャピラリー部へ供給するための耐熱性部材が、前記るつぼに設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶シート製造装置。
- 前記支持体が曲面を含む基板であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の結晶シート製造装置。
- るつぼ内の半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程と、キャピラリー部の上方に供給された該半導体融液に支持体の先端を接触させる工程と、該支持体をキャピラリー部の帯状スリット方向と略直交する方向に移動させることにより、半導体融液を該支持体下面にシート状に引き出す工程と、該支持体に付着した該半導体融液を結晶化させる工程と、を包含する結晶シート製造方法。
- 前記半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程が、主るつぼと副るつぼとをそれぞれ囲って取り付けられたチャンバのうち、少なくとも一方の内部に不活性ガスを導入することにより、該半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程であることを特徴とする、請求項5に記載の結晶シート製造方法。
- 前記半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程が、るつぼ内の融液中で耐熱性部材を上下することによって、該半導体融液をキャピラリー部の上方に供給する工程であることを特徴とする、請求項5に記載の結晶シート製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の結晶シート製造装置または請求項5〜7のいずれかに記載の結晶シート製造方法によって製造されたシリコンシートを含む太陽電池。
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Cited By (1)
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CN114635183A (zh) * | 2022-03-29 | 2022-06-17 | 同济大学 | 一种导模法定向结晶装置及基于该装置的生长方法 |
-
2002
- 2002-07-26 JP JP2002218167A patent/JP2004059360A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
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CN114635183A (zh) * | 2022-03-29 | 2022-06-17 | 同济大学 | 一种导模法定向结晶装置及基于该装置的生长方法 |
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