JP2004058458A - ポジ型平版印刷用原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザー露光を用いるヒートモードの製版方式に適した、短時間での走査露光ののちに現像処理を行うことなく直接に印刷機に装着して製版することが可能であり、耐刷性にすぐれ、印刷面上の印刷汚れも少ないヒートモード型のポジ型平版印刷版用原板を提供する。
【解決手段】支持体上に親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版であって、前記親水性層が、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有し、前記光熱変換層がレーザー光を熱に変換する化合物を含有し、レーザー露光部の光熱変換層を除去して画像形成するポジ型平版印刷用原版。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版であって、前記親水性層が、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有し、前記光熱変換層がレーザー光を熱に変換する化合物を含有し、レーザー露光部の光熱変換層を除去して画像形成するポジ型平版印刷用原版。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、現像不要で耐刷性に優れた平版印刷用の直接製版が可能な平版印刷用原版に関する。より詳しくは、ディジタル信号に基づいた走査露光による画像記録も可能であり、且つ水現像も可能で、または現像することなくそのまま印刷機に装着し印刷することが可能なポジ型平版印刷版用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷版用原版としては、従来から、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版が広く用いられている。その製版方法として、通常はリスフイルムなどの画像を通して露光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除去する方法であり、この方法により所望の印刷版を得ている。
【0003】
従来のPS版に於ける製版工程は、露光の後、非画像部を溶解除去する操作が必要であり、このような付加的な湿式の処理を不要化又は簡易化することが、従来技術に対して改善が望まれてきた一つの課題である。特に近年は、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、この面での改善の要請は一層強くなっている。
【0004】
この要望に応じた簡易な製版方法の一つとして、印刷版用原版の非画像部の除去を通常の印刷過程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で現像し最終的な印刷版を得る方法が提案されている。このような方法による平版印刷版の製版方式は機上現像方式と呼ばれる。具体的方法としては、例えば、湿し水やインク溶剤に可溶な画像記録層の使用、印刷機中の圧胴やブランケット胴との接触による力学的除去を行う方法等が挙げられる。しかしながら、機上現像方式の大きな問題としては、印刷用原版は、露光後も画像記録層が定着されないため、例えば印刷機に装着するまでの間原版を完全に遮光状態又は恒温条件で保存する、といった手間のかかる方法をとる必要があった。
【0005】
一方、近年のこの分野のもう一つの動向としては、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及してきており、このような、ディジタル化技術に対応した、新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザ光のような高収斂性の輻射線にディジタル化された画像情報を担持してこの光で原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されている。それに伴ってこの目的に適応した印刷版用原版を得ることが重要な技術課題となっている。したがって、製版作業の簡素化、乾式化、無処理化は、上記した環境面と、ディジタル化への適合化の両面から、従来にも増して、強く望まれるようになっている。
【0006】
デジタル化技術に組み込みやすい走査露光による印刷版の製造方法として、最近、半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザで高出力のものが安価に入手できるようになってきたことから、特にこれらのレーザを画像記録手段として用いる製版方法が有望視されるようになっている。従来方式の製版方法では、感光性原版に低〜中照度の像様露光を与えて光化学反応による原版面の像様の物性変化によって画像記録を行っているが、高出力レーザを用いた高パワー密度の露光を用いる方法では、露光領域に瞬間的な露光時間の間に大量の光エネルギーが集中照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換し、その熱により化学変化、相変化、形態や構造の変化などの熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。つまり、画像情報はレーザー光などの光エネルギーによって入力されるが、画像記録は熱エネルギーによる反応によって記録される。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼び、光エネルギーを熱エネルギーに変えることを光熱変換と呼んでいる。
【0007】
ヒートモード記録手段を用いる製版方法の大きな長所は、室内照明のような通常の照度レベルの光では感光せず、また高照度露光によって記録された画像は定着が必須ではないことにある。つまり、画像記録にヒートモード感材を利用すると、露光前には、室内光に対して安全であり、露光後にも画像の定着は必須ではない。従って、例えばヒートモード露光により不溶化若しくは可溶化する画像記録層を用い、露光した画像記録層を像様に除去して印刷版とする製版工程を機上現像方式で行えば、現像(非画像部の除去)は、たとえ画像露光後ある時間室内の環境光に暴露されても、画像が影響を受けないような印刷システムが可能となる。従ってヒートモード記録を利用すれば、現像操作を必要としない平版印刷版用原版を得ることも可能となると期待される。
【0008】
ヒートモード記録に基づく平版印刷版の好ましい製造法の一つとして、親水性の基板上に疎水性の画像記録層を設け、画像状にヒートモード露光し、疎水性層の溶解性・分散性を変化させ、必要に応じ、湿式現像により非画像部を除去する方法が提案されている。このような原版の例として、例えば、特公昭46−27919号公報には、親水性支持体上に、熱により溶解性が向上するいわゆるポジ作用を示す記録層、具体的には糖類やメラミンホルムアルデヒド樹脂等の特定の組成を有する記録層を設けた原版をヒートモード記録することによって、印刷版を得る方法が開示されている。しかしながら、この記録層は感熱性が十分でないため、ヒートモード走査露光に対しては、感度が不十分で、したがって画像部と非画像部の識別性に乏しかった。
【0009】
一方、EP94/18005号には、親水性架橋層と親油性の光熱変換層を支持体上に担持した、同様に現像せずに製版することが可能な、平版印刷原版が開示されている。しかしながら、製版には架橋された親水性層を像様に擦りとる操作が必要と記されており、簡易性の点で問題があるように思われる。
【0010】
WO99/04974号には、染料や顔料などの光変換性でインキ受容性の光吸収物質と、金属や金属酸化物のコロイド状分散物とを含む親水性画像記録層を基板上に設けた、現像することなく製版することが可能な、平版印刷原版が開示されている。しかし、画像部と非画像部との識別性を確保するのに多くの解決するべき点があると考えている。
【0011】
特開平6−199064号公報には、光熱変換剤を含む層とその層とは親水性・疎水性の程度の異なる層とを組み合わせて用いる2層構成のレーザー光記録による平版印刷原版が提示されており、これらは今後さらなる改良を進めるべき方法を示唆するものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来技術による平版印刷用原版では、まだなお印刷における汚れ難さ及び細小網点や細線の強度などの印刷性能が不十分であった。
本発明の目的は、この問題を解決することにある。すなわち、良好な機上現像性を有し、印刷における汚れ難さ及び細小網点や細線の強度等の耐刷性が改良された平版印刷用原版を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、鋭意検討した結果、親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版において、親水性層に特定形状のフィラーを加えて親水性層表面を粗面にすることが上記課題解決に有効であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0014】
1. 支持体上に親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版であって、前記親水性層が、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有し、前記光熱変換層がレーザー光を熱に変換する化合物を含有し、レーザー露光部の光熱変換層を除去して画像形成するポジ型平版印刷用原版。
【0015】
2.前記特定形状フィラーにおいて、針状フィラーの平均直径が3μm以下、且つ平均長さが100μm以下であり、多孔質フィラーの平均細孔径が0.001〜1μmであることを特徴とする前記1に記載の平版印刷用原版。
【0016】
3.前記多孔質フィラーの平均比表面積が、0.05〜5000m2/gであることを特徴とする前記1又は前記2に記載の平版印刷用原版。
【0017】
4.前記特定形状フィラーが、無機物からなることを特徴とする前記1から前記3のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0018】
5.前記親水性バインダーポリマーが、ゼラチンであることを特徴とする前記1から前記4のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0019】
6.前記親水性バインダーポリマーが、金属原子及び半金属原子から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、該ポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(B)及び下記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(C)よりなる群から選ばれる少なくとも一つの有機ポリマーとの複合ポリマー膜であることを特徴とする前記1から前記4のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0020】
【化1】
【0021】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0022】
7.前記親水性層の表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層が設けられていることを特徴とする前記1から前記6のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0023】
8.前記親水性官能基を有する高分子化合物が、該高分子化合物鎖の末端で、直接、及び/又は、親水性層に化学的に結合している他の結合用高分子化合物を介して、親水性層に結合している直鎖状高分子化合物であることを特徴とする前記7記載の平版印刷用原版。
【0024】
9.前記金属原子及び半金属原子よりなる群から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーが、下記一般式(III)で示される少なくとも1種の化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることを特徴とする前記6から前記8のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0025】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0026】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0027】
上記発明は、鋭意検討の結果、親水性層及び光熱変換層を有する層構成の平版印刷用原版において、親水性層表面の表面形状を微細構造に制御することが目的達成に効果があり、その手段として、親水性層への針状フィラー及び/又は多孔質フィラーの添加が特に有効であることを見出したことに基づいている。これらのフィラーが特に有効なのは、針状フィラーは親水性層に微細な網目構造を形成し、また、多孔質フィラーの場合は微細な凹凸構造を形成することにより、親水性層表面の印刷時の保水性が十分なレベルに向上して汚れ難さが良化し、且つ、これらの微細表面形状が、上層の光熱変換層とのアンカー効果による密着性を良化するためと考えられる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有含有する親水性層、及び、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層をこの順に有する。
本発明において、「この順に有する」とは、支持体上に親水性層と光熱変換層とがこの順に設けられていることを指し、必要に応じて公知の他の層、例えば、中間層、表面保護層、バックコート層(単にバック層と呼ぶことがある)などを設ける態様を包含するものである。
【0029】
[親水性層]
本発明の親水性層は、特定形状のフィラーを分散又は溶解した親水性バインダーポリマーを硬化して得られる、実質的に水不溶性の硬化膜である。この親水性層は、必要に応じて、架橋剤(又は硬化剤)や他のポリマーを含有していてもよい。
【0030】
本発明の親水性層には、針状フィラー及び多孔質フィラーから選ばれた少なくとも一種のフィラーが含有される。これらのフィラーは、無機物でも、有機物でもよく、また混合して用いてもよい。好ましくは無機フィラーであることが好ましい。
【0031】
本発明に供される針状フィラーは、そのフィラーの大きさが、平均直径0.01〜3μm、且つ、平均長さが1〜100μmのものである。好ましくは、平均直径0.02〜2.5μm、且つ、平均長さ1〜50μmである。また、針状フィラーのアスペクト比(平均長さ/平均直径)は5〜10,000程度が適当であり、好ましくは10〜5,000程度、より好ましくは20〜2,500程度である。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果が有効に発現される。
【0032】
無機針状フィラーとして、上記の大きさの形状を有する金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。具体的には、シリカ、硝子、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、炭化亜鉛、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。中でも、シリカ、硝子、酸化チタン、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウムが好ましい。
【0033】
上記無機針状フィラーとして市販品を用いることもできる。例えば、大塚化学(株)製のチタン酸カリウムウィスカーティスモN(平均直径0.4μm、平均長さ15μm)、ティスモD(平均直径0.4μm、平均長さ15μm)、石原産業(株)製の導電性酸化チタンウィスカーFT2000(平均直径0.1μm、平均長さ6μm)、FT1000(平均直径0.1μm、平均長さ12μm)、四国化成(株)製ホウ酸アルミニウムウィスカーアルボレックスY(平均直径0.1μm、平均長さ20μm)、丸尾カルシウム(株)製の炭酸カルシウムウィスカーウィスカル(平均直径0.2μm、平均長さ20μm)、キンセイマティク(株)製のケイ酸カルシウムウィスカーウオラストナイト(平均直径2μm、平均長さ50μm)、近江工業(株)製のケイ酸マグネシウムウィスカーセビオライト(平均直径0.2μm、平均長さ20μm)宇部興産(株)製の塩基性硫酸マグネシウムウィスカーモスハイジ(平均直径0.5μm、平均長さ20μm)等が好適なものとして挙げられる。
【0034】
有機針状フィラーとしては、例えば炭素化合物、高分子ウィスカー、セルロース類及びこれらの少なくとも1種以上と無機化合物との複合物が挙げられ、具体的には、グラファイト、カーボンナノチューブ、ポリオキシメチレンウィスカー、芳香族ポリエステルウィスカー、アラミドウィスカー、酢酸セルロース、エチルセルロース、微生物セルロース等が挙げられる。好ましくは、グラファイト(例えば、日本黒鉛(株)製の黒鉛ウィスカー、平均直径0.1μm、平均長さ10μm)、ポリ(p−オキシベンゾイル)ウィスカー、ポリ(2−オキシ−6−ナフトイル)ウィスカー、微生物セルロース等が挙げられる。
【0035】
本発明の特定形状フィラーのもう一つである多孔質フィラーは、フィラーサイズとして、平均粒子径が0.03〜20μmで、その平均比表面積が0.05〜5000m2/g、且つ、平均細孔径が0.01〜1μmとなるものである。好ましくは、平均粒子径が0.05〜15μm、平均比表面積が1〜3000m2/g、平均細孔径が0.03〜0.5μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。
【0036】
無機多孔質フィラーとして、上記の特定形状を有する金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、硝子、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、炭化亜鉛、硫化亜鉛、ゼオライト、及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。好ましくは、硝子、シリカ、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0037】
上記無機多孔質フィラーとして市販品を用いることもできる。例えば、岩谷化学工業(株)製のアルミナRG30(平均粒径0.5μm、平均細孔径100Å、平均比表面積50m2/g)、アルミナRK30(平均粒径0.6μm、平均細孔径50Å、平均比表面積300m2/g)、アルミナRA30(平均粒径1μm、平均細孔径500Å、平均比表面積50m2/g)、アルミナRH30(平均粒径1.5μm、平均細孔径100Å、平均比表面積50m2/g)、水酸化アルミニウムRH30(平均粒径0.5μm、平均細孔径50Å、平均比表面積300m2/g)、水澤化学工業(株)製のシリカゲル ミズカシルP526(平均粒径3μm、平均細孔径100Å、平均比表面積100m2/g)、ミズカシルP78A(平均粒径3.5μm、平均細孔径200Å、平均比表面積400m2/g)、富士シリシア(株)製のシリカゲル サイリシア320(平均粒径1.6μm、平均細孔径200Å、平均比表面積300m2/g)、サイリシア530(平均粒径1.9μm、平均細孔径25Å、平均比表面積500m2/g)、トクヤマ(株)のシリカゲル ファインシールX37(平均粒径2.6μm、平均細孔径1000Å、平均比表面積300m2/g)、和光純薬工業(株)の水酸化マグネシウム(平均粒径0.6μm、平均細孔径200Å、平均比表面積100m2/g)等が挙げられる。
【0038】
有機多孔質フィラーとして炭素化合物、高分子化合物、セルロース類及びこれらの少なくとも1種以上と無機化合物との複合物が挙げられ、具体的には、木炭、活性炭、高分子多孔質焼結体、樹脂フォーム類、シリコン多孔質体、高吸水性樹脂類等が挙げられる。好ましくは、木炭、活性炭、高分子多孔質焼結体、高吸水性樹脂類等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、用いるフィラーの全てが針状フィラー及び/又は多孔質フィラーである必要はなく、針状フィラー及び/又は多孔質フィラーの量は、全フィラー量の25質量%以上であることが好ましく、より好ましくは全フィラー量の50質量%以上、更に好ましくは75質量%以上である。
【0040】
上記針状フィラー及び多孔質フィラー以外に併用することができるフィラーは、無機粒子でも有機粒子でもよく、特に限定されない。
【0041】
無機粒子としては、例えば、金属粉体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物及びこれらの複合化物等が挙げられ、好ましくは金属酸化物及び金属硫化物等であり、より好ましくはガラス、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化スズ、硫化亜鉛、硫化銅等の粒子が挙げられる。市販品では、和光純薬工業(株)のルチル型酸化チタン(平均粒径0.3μm)、堺化学(株)の酸化亜鉛(平均粒径0.3μm)、岩谷化学工業(株)のαアルミナRA30(平均粒径0.3μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
また、有機粒子としては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等が挙げられ、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。
【0043】
フィラーの大きさは、平均粒子径が0.01〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が0.03〜20μm、更に好ましくは、平均粒子径が0.05〜10μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果が有効に発現される。
【0044】
以上のような全フィラーの使用割合は、親水性層全成分100質量部中に、20〜95質量部が好ましく、より好ましくは35〜95質量部である。この範囲において親水性層表面の保水性及び後述する光熱変換層との密着性が良好となり、印刷汚れのない鮮明な印刷物が多数枚得られる。
【0045】
次に本発明の親水性層に供される親水性バインダーポリマーについて説明する。
本発明の親水性バインダーポリマーは、公知のものを好適に用いることができるが、特に好ましい態様として、下記の(1)及び(2)が挙げられる。
【0046】
(1)ゼラチンを主成分とするもの(以下、「ゼラチン系バインダー」と称することもある)。
【0047】
(2)金属原子及び半金属原子から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び上記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)よりなる群から選ばれる少なくとも一つの有機ポリマーとの複合ポリマーを主成分とするもの(以下、「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」と称することもある)。
【0048】
以下、(1)及び(2)について、詳細に説明する。
【0049】
(1)「ゼラチン系バインダー」
このゼラチン系バインダーでは、親水性バインダーポリマーとしてゼラチンが用いられる。ゼラチンを用いることにより、親水性層用分散物の分散が容易となり、本発明に供されるフィラーの均一分散性が良好となる。
【0050】
本発明に供されるゼラチンとは、誘導タンパク質の一種であり、コラーゲンから製造されるゼラチンと称されるものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、淡色、透明、無味、無臭の外観を示すものである。更には、写真乳剤用ゼラチンが、水溶液とした場合の粘度、ゲルのゼリー強度等の物性が一定の範囲内にあることからより好ましい。
【0051】
また、ゼラチン硬化性化合物の併用により、親水性層を硬化して、耐水性が良好なものとなる。
【0052】
ゼラチン硬化性化合物としては、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、T. H. James 「The Theory of the Photographic Process」第2章 セクション III、Macmillan Publishing Co. Inc.(1977年刊)、リサーチ・ディスクロージャー誌 No.17643, P26 (1970年12月発行)等に記載されている。好ましくは、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒドのジアルデヒド類、ジケトン類(例えば、2,3−ブタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン、1,2−シクロペンタンジオン等)、電子吸引基を隣接結合した二重結合を2個以上有する活性オレフィン化合物等が挙げられる。
【0053】
ゼラチン硬化性化合物は更に好ましくは、一般式(V)で示される二重結合基を分子中に2個以上含有する化合物である。
【0054】
一般式(V) CH2=CH−W0−
【0055】
式(V)中、W0は、―SO2−、−OSO2−、−CONR35−又は−SO2NR35−を表す。但し、R35は、水素原子又は炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
【0056】
式(V)において、好ましくはR35は、水素原子又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチロール基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−カルボキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表し、W0は、好ましくは−SO2−を表す。
【0057】
具体的には、例えば、レゾルシノールビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホニル)−m−キシレン、ビス(ビニルスルホニルアルキル)エーテルあるいはアミン、1,3,5−トリス(ビニルスルホニル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアクリルアミド、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、N,N′−ビスマレイミド類等が挙げられる。
【0058】
ゼラチン硬化性化合物は、ゼラチン100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。より好ましくは、0.8〜10質量部である。この範囲内において、得られた親水性層は膜強度が保持され、優れた耐水性を示すと同時に、親水性を疎害しない。
【0059】
更に、本発明のゼラチン系バインダーは、他のポリマーとして、特定の置換基からなるシリル官能基で変性された親水性樹脂(以下、「親水性樹脂(C)」と称することもある)を含有することが好ましい。好ましい親水性樹脂(C)としては、下記一般式(I)で示されるシリル官能基で変性された親水性樹脂が挙げられる。
【0060】
一般式(I) −Si(R10)j(OX)3−j
【0061】
式(I)中、R10は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Xは炭素数1〜12の脂肪族基を表す。jは0、1又は2を表す。より好ましくは0又は1を表す。
【0062】
式(I)においてR10が示す好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、3,6−ジオキソヘプチル基、3−スルホプロピル基、2−カルボキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、トリフロロエチル基等)、炭素数3〜12の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基、カルボキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基、カルボキシメチルフェニル基等)等が挙げられる。
【0063】
式(I)におけるXは、炭素数1〜12の脂肪族基を表す。好ましくは炭素数1〜8の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクテル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3,6−ジオキサペプチル基、2−オキソブチル基等)、炭素数3〜8の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロピル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等)が挙げられる。Xのより好ましい脂肪族基としては、炭素数1〜4の置換されてもよいアルキル基が挙げられる。
【0064】
一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する有機ポリマーは公知の方法で合成することができる。例えば、「反応性ポリマーの合成と応用」(株)シーエムシー刊(1989年)、特公昭46−30711号、特開昭5−32931号等に記載の方法に従って、ポリマー中のヒドロキシ基をシリル官能性基に変性することにより容易に得られる。ヒドロキシ基含有樹脂としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)、小竹無二雄監修「大有機化学第19巻:天然高分子化合物I」朝倉書店(1960年)等に記載のものが挙げられる。
【0065】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トランガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0066】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール〔ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等〕、アリルアルコール共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体〔エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等〕、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリルアミドもしくはメタクリルアミドのN−置換体の重合体又は共重合体〔N−置換基として、例えばモノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基等〕等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個のヒドロキシ基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0067】
親水性樹脂(C)の重量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは5×103〜4×105である。親水性樹脂(C)におけるシリル官能性基の含有量は、シリル官能性基を有する単位成分として、通常0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.2〜15mol%である。親水性樹脂(C)が多糖、蛋白質の場合には、単位成分はその構成単糖、アミノ酸を指す。但し、これら単位成分はシリル官能性基を複数有していてもよい。
【0068】
該官能性基は、重合体の繰り返し単位中の側鎖または重合体主鎖の末端に直接結合してもよいし、連結基を介して結合してもよい。かかる連結基としては、いずれの結合基でもよいが、例えば具体的に挙げるとすれば、−O−、−CR31R32−〔ここで、R31及びR32は同じでも異ってもよく、各々水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−OH基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、プロピル基、ブチル基、等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等)、フェニル基等を表す〕、−S−、−NR33−〔ここでR33は水素原子又は炭化水素基{炭化水素基として具体的には炭素数1〜8の炭化水素基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基等)が挙げられる}を表す〕、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONR33−、−SO2NR33−、−SO2−、−NHCONH−、−NHCOO−、−NHSO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、等の結合基の単独又はこれらの2以上の組合せにより構成された連結基等が挙げられる。
【0069】
上記一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する親水性樹脂(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの親水性樹脂(C)を用いることにより、塗膜を形成後の加熱乾燥の工程で[−Si(R10)j(OX)3−j]基の縮合反応により容易に式(IV)で示されるシロキサン結合を形成し、樹脂間の橋架けが起こり、膜を硬化して親水性層の膜強度が充分に保持される。本発明の光熱変換層(上層)と親水性層の表面は充分に親水性であると同時に、密着性が極めて良好となる。
【0070】
【化2】
【0071】
更に、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、平均粒子径5〜50nmの無機顔料超微粒子を併用することが好ましい。
このコロイド状無機顔料超微粒子としては、従来公知の化合物が挙げられる。好ましくは、シリカゾル、アルミナゾル、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムである。より好ましくは、シリカゾル及び/又はアルミナゾルである。
【0072】
また本発明において、フィラーと無機顔料超微粒子の存在割合は40〜70対60〜30の質量比であり、好ましくは45〜60対55〜40質量比である。使用割合をこの範囲内に調整することにより、親水性層の膜強度が十分に保持されるとともに、印刷版としての保水性と耐刷性が良好なものとなる。
【0073】
その他、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、前記の山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」等に記載されている化合物を用いることができる。
【0074】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0075】
また、本発明のゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、親水性層塗布分散物の塗布性を良好とするために、界面調節剤(製面剤)、消泡剤、膜pHを調整するための緩衝剤等の各種添加剤を併用してもよい。
【0076】
本発明におけるゼラチン系バインダーを用いた親水性層の厚さは、1m2当たりの親水性層組成物の塗布量(乾燥後)で示して、0.5〜30g程度とすることが好ましい。
【0077】
(2)「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」
本発明の無機−有機の複合ポリマー系バインダーで用いられる親水性バインダーポリマーは、金属原子及び/又は半金属原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有するポリマー(以下、「(半)金属含有ポリマー」と称することもある)と、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び下記一般式(II)で示される重合体主鎖の末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーとの複合体である。
【0078】
【化3】
【0079】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0080】
「(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体」とは、ゾル状物質及びゲル状物質を含む意味に用いる。(半)金属含有ポリマーは「酸素原子−金属原子又は半金属原子−酸素原子」から成る結合を主として含有するポリマーを示す。ここで、(半)金属含有ポリマーは、金属原子及び半金属原子の両方を含有していてもよい。好ましくは、半金属原子のみを含有するポリマー、半金属原子と金属原子とを含有するポリマーである。
【0081】
(半)金属含有ポリマーは、下記一般式(III)で示される化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることが好ましい。ここで、加水分解重縮合とは、反応性基が酸性ないし塩基性条件下で、加水分解、縮合を繰り返し、重合していく反応である。
【0082】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0083】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0084】
上記化合物は、単独または2種以上を組み合わせて(半)金属含有ポリマーの製造に用いられる。
【0085】
以下に一般式(III)で示される(半)金属化合物について詳しく説明する。一般式(III)中のR0は、好ましくは、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基{例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換され得る基としては、ハロゲン原子
(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR′基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″)(R″は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表し、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3基、−CONHR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい)}、
【0086】
炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されていてもよい)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、
【0087】
又は、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えばヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表す。
【0088】
反応性基Yは、好ましくは、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す)、−OR11基、−OCOR12基、−CH(COR13)(COR14)基、−CH(COR13)(COOR14)基又は−N(R15)(R16)基を表す。
【0089】
−OR11基において、R11は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキシ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表す。
【0090】
−OCOR12基において、R12は、R11と同様の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R0中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。
【0091】
−CH(COR13)(COR14)基及び−CH(COR13)(COOR14)基において、R13は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等)を表し、R14は炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、カルボキシベンジル基、クロロベンジル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、カルボキシフェニル基、ジエトキシフェニル基等)を表す。
【0092】
また、−N(R15)(R16)基において、R15及びR16は、互いに同じでも異なってもよく、各々、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR11基のR11と同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは、R15とR16の炭素数の総和が12ケ以内である。
【0093】
(半)金属M0は、好ましくは、遷移金属、希土類金属、周期表III〜V族の金属又は半金属が挙げられる。より好ましくはAl、Si、Sn、Ge、Ti、Zr等が挙げられ、更に好ましくはAl、Si、Sn、Ti、Zr等が挙げられる。特にSiが好ましい。
【0094】
一般式(III)で示される(半)金属化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0095】
メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、
【0096】
テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、
【0097】
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシンラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
【0098】
Ti(OR17)4(ここで、R17はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す)、TiCl4、Zn(OR17)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、Sn(OR17)4、Sn(CH3COCHCOCH3)4、Sn(OCOR17)4、SnCl4、Zr(OR17)4、Zr(CH3COCHCOCH3)4、Al(OR17)3。
【0099】
次に、上記(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B))について説明する。
【0100】
本発明の有機ポリマー(A)は、(半)金属含有ポリマーと水素結合を形成し得る(以下、特定の結合基とも言う)を有する。この特定の結合基としては、好ましくは、アミド結合(カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む)、ウレタン結合及びウレイド結合から選ばれる少なくとも一種の結合及び水酸基を挙げることができる。
【0101】
有用な有機ポリマー(A)として、上記の特定の結合基を少なくとも1種、繰り返し単位成分としてポリマーの主鎖及び/又は側鎖に含有するものを挙げることができる。好ましくは、繰り返し単位成分として、−N(R18)CO−、−N(R18)SO2−、−NHCONH−及び−NHCOO−から選ばれる少なくとも1種の結合がポリマーの主鎖及び/又は側鎖に存在する成分、及び/又は−OH基を含有する成分が挙げられる。上記アミド結合中のR18は、水素原子又は有機残基を表し、有機残基としては、一般式(III)中のR0における炭化水素基及びヘテロ環基と同一の内容のものが挙げられる。
【0102】
ポリマー主鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、−N(R18)CO−結合又はN(R18)SO2−結合を有するアミド樹脂、−NHCONH−結合を有するウレイド樹脂、−NHCOO−結合を含有するウレタン樹脂等が挙げられる。
【0103】
アミド樹脂製造に供されるジアミン類とジカルボン酸類又はジスルホン酸類、ウレイド樹脂に用いられるジイソシアナート類、ウレタン樹脂に用いられるジオール類としては、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」第I章(株)培風舘刊(1986年)、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0104】
また、他のアミド結合を有するポリマーとして、下記一般式(VI)で示される繰り返し単位含有のポリマー、ポリアルキレンイミンのN−アシル化体又はポリビニルピロリドンとその誘導体が挙げられる。
【0105】
【化4】
【0106】
式(VI)中、Z1は−CO−、−SO2−又は−CS−を表す。R20は式(III)中のR0と同一の内容のものを表す。r1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す。r1は同じでも異なってもよい。pは2又は3の整数を表す。
【0107】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を含有するポリマーのうち、Z1が−CO−を表し、pが2を表すポリマーは、置換基を有していてもよいオキサゾリンを触媒の存在下で開環重合することにより得られる。触媒としては、例えば、硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸アルキルエステルなどの硫酸エステルやスルホン酸エステル;ヨウ化アルキル(例えばヨウ化メチル)などのハロゲン化アルキル;フリーデルクラフツ触媒のうち金属フッ素化物;硫酸、ヨウ化水素、p−トルエンスルホン酸などの酸や、これらの酸とオキザゾリンとの塩であるオキサゾリニウム塩などが使用できる。なお、このポリマーは単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、他のポリマーにこのポリマーがグラフトした共重合体であってもよい。
【0108】
オキサゾリンの具体例としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ジクロロメチル−2−オキサゾリン、2−トリクロロメチル−2−オキサゾリン、2−ペンタフルオロエチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−メトキシカルボニルエチル−2−オキサゾリン、2−(4−メチルフェニル)−2−オキサゾリン、2−(4−クロロフェニル)−2−オキサゾリンなどが挙げられる。好ましいオキサゾリンには、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリンなどが含まれる。このようなオキサゾリンのポリマーは一種又は二種以上使用できる。
【0109】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を有する他のポリマーについても、オキサゾリンの代わりにチアゾリン、4,5−ジヒドロ−1,3−オキサジン又は4,5−ジヒドロ−1,3−チアジンを用いて同様に得ることができる。
【0110】
ポリアルキレンイミンのN−アシル化体としては、カルボン酸ハライド類との高分子反応で得られる−N(CO−R21)−を含むカルボン酸アミド体、又はスルホニルハライド類との高分子反応で得られる−N(SO2−R21)−を含むスルホンアミド体(ここで、R21は上記式(VI)におけるR20と同義である)が挙げられる。
【0111】
また、ポリマーの側鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、少なくとも1種の上記特定の結合基を有する成分を主成分として含有するものが挙げられる。このような成分としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、ビニル酢酸アミド又は以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0112】
なお、以下の構造式における記号は次の内容を表す。
a1:−H又は−CH3
T0:−H、−CH3、−(CH2)2OCH3、又は−(CH2)2N(CH3)2
L0:―CxH2x+1、−(CH2)2OCH3、−(CH2)2N(CH3)2、ベンジル又は−(CH2)xOH
L1:−H、L0又は−(CH2)2CONH2
x:1〜4の整数
y:0又は1
z:0、1又は2
【0113】
【化5】
【0114】
【化6】
【0115】
一方、水酸基含有の有機ポリマーとしては、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には小竹無二雄監修「大有機化学19、天然高分子化合物I」朝倉書店刊(1960年)、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)等に記載のものが挙げられる。
【0116】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラカガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0117】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等)、アリルアルコール共重合体、水酸基を少なくとも1種含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体もしくは共重合体(エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、等)、水酸基を少なくとも1種含有するアクリルアミド又はメタクリルアミドのN−置換体の重合体もしくは共重合体(N−置換基として、例えば、モノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基、等)等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個の水酸基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0118】
上記の特定の結合基を有する有機ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは103〜4×105である。
【0119】
次に、本発明の一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)について説明する。
前記一般式(II)において、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、中でも、炭素数8以下の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R01、R02、R03およびR04は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0120】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0121】
N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、
【0122】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0123】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(K1CO−)におけるK1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0124】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0125】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0126】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0127】
Lは単結合又は有機連結基を表す。ここで、Lが有機連結基を表す場合、Lは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0128】
【化7】
【0129】
また、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は、炭素数1〜8の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。また、−CON(R05)2のように複数のR05を有する場合、R05は同一でも異なっていてもよく、更にR05同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R05はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R01、R02、R03およびR04がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0130】
R05としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
【0131】
また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
Wとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3 −NMe4、モルホリノ基等が好ましい。
【0132】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは200〜100000、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは500〜20000である。
【0133】
本発明に好適な有機ポリマー(B)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
【化8】
【0135】
本発明に係る有機ポリマー(B)は、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基の導入されたポリマーが合成できる。
【0136】
【化9】
【0137】
ここで式(i)及び(ii)において、R01〜R04、L、W、n及びmは、前記記一般式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0138】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)を合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0139】
有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B)を含む。以下、同様)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体を形成する場合に、有機ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーの割合は広い範囲で選択できるが、好ましくは(半)金属含有ポリマー/有機ポリマーの質量比で10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。この範囲において、親水性層の膜の強度、印刷時の湿し水に対する耐水性が良好となる。
【0140】
本発明の複合体を形成する親水性バインダーポリマーは、前記(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成した(半)金属含有ポリマーのヒドロキシ基と、有機ポリマー中の前記特定の結合基とが水素結合作用等により均一な有機、無機ハイブリッドを形成し、相分離することなくミクロ的に均質となる。(半)金属含有ぽりまーに炭化水素基が存在する場合にはその炭化水素基に起因して、有機ポリマーとの親和性がさらに向上するものと推定される。また、本発明の複合体は成膜性に優れている。
【0141】
本発明の複合体は、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合し、有機ポリマーと混合することにより製造するか、又は有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合することにより製造される。好ましくは、有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物をゾル−ゲル法により加水分解重縮合することにより、本発明の有機・無機ポリマー複合体を得ることができる。生成した有機・無機ポリマー複合体において、有機ポリマーは、(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成したゲルのマトリックス(すなわち無機(半)金属酸化物の三次元微細ネットワーク構造体)中に均一に分散している。
【0142】
上記ゾル−ゲル法は、従来公知のゾル−ゲル法を用いて行なうことができる。具体的には、「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(株)技術情報協会(刊)(1995年)、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書に詳細に記載の方法に従って実施できる。
【0143】
無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層用の塗布液は、水系溶媒が好ましく、更には塗液調整時の沈殿抑制による均一液化のために水溶性溶媒を併用する。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸メチル、エチレングリコールモノアセテート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0144】
更に、前記の一般式(III)で示される(半)金属化合物の加水分解及び共縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。
【0145】
触媒は、酸又は塩基性化合物をそのままか、あるいは水又はアルコール等の溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解及び重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
【0146】
酸性触媒又は塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、構造式RCOOHのRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0147】
その他、無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」培風館(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0148】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0149】
本発明の無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層は、親水性層塗布液を耐水性支持体上に、従来公知の塗布方法のいずれかを用いて塗布、乾燥することにより成膜される。
【0150】
形成される親水性層の膜厚は0.2〜10g/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜8g/m2である。この範囲内で均一で強度が充分な膜が作製される。
【0151】
(表面グラフト親水性層)
本発明においては、上記の親水性層表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層を設けることができる。このように表面グラフト親水性層を設けることによって、光熱変換層との密着性を損なうことなく親水性層の保水性を向上できる。
【0152】
表面グラフト親水性層では、少なくとも1つの親水性官能基を有する高分子化合物の末端が、平版印刷版の親水性層に直接又は他の結合用の高分子化合物(以下、この結合用の高分子化合物を特に「幹高分子化合物」と称することもある)を介して、化学的に結合している。
【0153】
上記のグラフト部を構成する親水性官能基を有する高分子化合物は、特に限定的ではないが、直鎖状高分子化合物であることが好ましい。親水性官能基としては、アミド基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸、ホスホン酸もしくはアミノ基又はそれらの塩、2−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はそのハロゲン化水素酸塩等が挙げられる。
【0154】
これらの親水性官能基は、上記グラフト部を構成する高分子化合物中に少なくとも1つ含有されていればよく、例えば、直鎖状高分子化合物の親水性層との結合部と反対側の末端に親水性官能基を有する場合や、直鎖状高分子が親水性モノマーを重合成分又は共重合成分として含有する場合等が挙げられる。
【0155】
本発明において用いることのできる親水性モノマーとしては、上記親水性官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。特に有用な親水性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、イタコン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン酸塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミドもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレートもしくは3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩等を挙げることができる。
【0156】
本発明の表面グラフト親水性層は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて容易に製造することができる。グラフト重合とは高分子鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子鎖が固体表面を形成しているときには表面グラフト重合と呼ばれる。本発明の表面グラフト親水性層は、親水性層表面上において表面グラフト重合を行うことにより容易に得ることができる。
【0157】
本発明の表面グラフト親水性層を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる、たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135に記載される、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法等の表面グラフト重合法、吸着技術便覧NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695に記載される、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法等が挙げられる。また、光グラフト重合法の具体的方法としては特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0158】
本発明の表面グラフト親水性層を作成する方法としては、これらの他に、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基などの反応性官能基を付与し、これと平版印刷版の親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成する方法を挙げることもできる。
【0159】
また、親水性層表面に化学的に結合されている幹高分子化合物と、該幹高分子化合物に高分子鎖の末端で結合されている親水性官能基を有する直鎖状高分子化合物とからなる親水性層を製造する場合には、親水性層表面の官能基とカップリング反応しうる官能基を幹高分子化合物の側鎖に付与し、グラフト鎖として親水性官能基を有する高分子化合物鎖を組み込んだグラフト型高分子化合物を合成し、この高分子と親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成することができる。かかる幹高分子化合物の具体例としては、前述の(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(A)又は(B)として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0160】
上記の光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法、カップリング法のうち、製造適性の点からはプラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法が特に優れている。
【0161】
具体的には、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY. Ikada et al., Macromolecules vol.19, page 1804 (1986)などの記載の方法にて作成することができる。親水性層表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることにより得ることができる。
【0162】
本発明の表面グラフト親水性層の膜厚は、好ましくは0.01〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.1〜5g/m2の範囲である。この範囲内で、本発明の効果を十分に発揮し、更に良好な耐刷性が得られるとともに、印刷物の細線再現性も良好であり、好ましい。
【0163】
本発明においては、耐水性支持体上に形成された親水性層表面の平滑性(表面グラフト親水性層がある場合はグラフト親水性層表面の平滑性)が、ベック平滑度で5000(秒/10ml)以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下が特に好ましい。ここでベック平滑度は、ベック平滑度試験機により測定することができ、高度に平滑に仕上げられた中央に穴のある円形のガラス板上に、試験片を一定圧力(1kg/cm2)で押しつけ、減圧下で一定量(10ml)の空気が、ガラス面と試験片との間を通過するのに要する時間(秒)で表される表面平滑性の一つの指標である。
【0164】
<光熱変換層>
本発明に用いられる光熱変換層は、印刷において画像部となるインキ受容性の層であり、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層であり、これらの機能を有する公知の光熱変換層が使用可能である。光熱変換材料としては、従来、レーザー光源を赤外線レーザーとした場合、赤外線吸収色素、赤外線吸収顔料、赤外線吸収性金属、赤外線吸収金属酸化物など書き込みのレーザーに使用する波長の光を吸収する各種の有機および無機材料が使用可能であることが知られている。これらの材料は単独膜の形態で、もしくはバインダー、添加剤など他の成分との混合膜の形態で使用される。単独膜の場合には、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛等の金属および合金や金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ハロゲン化物、有機色素などを蒸着法およびスパッタリング法等により支持体上に適用することで形成することができる。
【0165】
また、混合膜の場合には、光熱変換材料を所望により膜形成性を有するバインダーポリマーや他の成分とともに適当な溶媒或いは分散媒に溶解もしくは分散した塗布液を調整し、それを用いた塗布法により形成することができる。以下、混合膜の各構成成分について説明する。
【0166】
(光熱変換材料)
本発明に使用される光熱変換材料としては、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換し得る公知の有機或いは無機顔料、染料などの有機色素、金属或いはその酸化物などの化合物より適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、有機顔料としては酸性カーボンブラック、塩基性カーボンブラック、中性カーボンブラックなど各種カーボンブラック、分散性改良等のために表面修飾もしくは表面コートされた各種カーボンブラック、ニグロシン類、有機色素としては「赤外増感色素」(松岡著 Plenum Press, New York,NY (1990))、米国特許4、833、124号、ヨ−ロッパ特許公開321、923号、米国特許4、772、583号、米国特許4、942、141号、米国特許4、948、776号、米国特許4、948、777号、米国特許4、948、778号、米国特許4、950、639号、米国特許4、912、083号、米国特許4、952、552号、米国特許5、023、229号などに記載の各種化合物、金属もしくは金属酸化物としてはアルミニウム、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化チタン等、この他にポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなども使用可能である。光熱変換層を混合膜として形成する場合に、その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、5質量%〜50質量%、好ましくは8質量%〜45質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%である。
【0167】
(バインダー)
光熱変換層を混合膜として形成する場合に使用されるバインダーとしては、フィルム形成能を有し、光熱変換剤を溶解もしくは分散しうる公知のポリマーが使用される。これらの例としてはニトロセルロース、エチルセルロースなどのセルロース、セルロース誘導体類、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、イソプレン、スチレン−ブタジエンなどの各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル類の単独重合体および酢酸ビニル−塩化ビニルなどの共重合体、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合系各種ポリマーおよび、「J. Imaging Sci.,P59−64 ,30(2),(1986)(Frechetら)」や「Polymers in Electronics (Symposium Series,P11,242, T.Davidson,Ed., ACS Washington,DC(1984)(Ito,Willson)」、「Microelectronic Engineering, P3−10,13(1991)(E. Reichmanis,L.F.Thompson)」に記載のいわゆる「化学増幅系」に使用されるバインダー等が使用可能である。これら中でも、光熱変換層を架橋により硬膜するための架橋反応に用いることが可能な官能基を有するポリマーが好ましい。好ましい官能基としては、例えば、−OH、−SH、−NH2、−NH−、−CO−NH2、−CO−NH−、−O−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CO−O−、−CO−O−、−CS−OH、−CO−SH、−CO−OCO−、−SO3H、−SO2(O−)、−PO3H2、−PO(O−)2、−SO2−NH2、−SO2−NH−、−CO−CH2−CO−、−CH=CH−、−CH=CH2、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2や、以下に示す構造の官能基等が挙げられ、なかでも、特に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、重合性ビニル基が好ましい。
【0168】
【化10】
【0169】
光熱変換層の形成に用いられる好ましいバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を含有するモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、グリシジルメタアクリレート等のエポキシ基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、N−アルキルアクリルアミド、アクリルアミドの単独重合体もしくは共重合体、アミン類とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル又はアリルグリシジルとの反応物の単独重合体もしくは共重合体、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコールの単独重合体もしくは共重合体、ポリウレタン樹脂類、ポリウレア樹脂類、ポリアミド(ナイロン)樹脂類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、セルロース誘導体類等の縮合体が挙げられる。これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、20質量%〜90質量%、好ましくは25質量%〜80質量%、より好ましくは30質量%〜75質量%である。
【0170】
(添加剤)
光熱変換層を混合膜として形成する場合には、光熱変換剤とバインダー以外に添加剤を用いることが出来る。これらの添加剤は、光熱変換層の機械的強度を向上させたり、レーザー記録感度を向上させたり、光熱変換層中の分散物の分散性を向上させたり、親水性層などの隣接する層に対する密着性を向上させるなど種々の目的に応じて添加される。例えば、光熱変換層の機械的強度や耐薬品性を向上させるために、光熱変換層を架橋する手段が考えらる。架橋反応としては、熱または光による共有結合形成、又は、多価金属塩によるイオン結合形成が可能であり、本発明においては、公知の架橋剤による光熱変換層の硬膜が可能である。用い得る公知の架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能アミン化合物、ポリオール化合物、多官能カルボキシル化合物、アルデヒド化合物、多官能(メタ)アクリル化合物、多官能ビニル化合物、多官能メルカプト化合物、多価金属塩化合物、ポリアルコキシシラン化合物、ポリアルコキシチタン化合物、ポリアルコキシアルミニウム化合物、ポリメチロール化合物、ポリアルコキシメチル化合物等が挙げられ、公知の反応触媒を添加し、反応を促進することも可能である。その使用量は光熱変換層の塗布液中の総固形分質量に対して、0質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜35質量%である。
【0171】
レーザー記録感度を向上させるために加熱により分解しガスを発生する公知の化合物を添加することが考えられる、この場合には光熱変換層の急激な体積膨張によりレーザー記録感度が向上できる。これらの添加剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4、4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジアミドベンゼン等を使用することができる。また、加熱により分解し酸性化合物を生成する公知の化合物を添加剤として使用することが出来る。これらを化学増幅系のバインダーと併用することにより、光熱変換層の構成物質の分解温度を大きく低下させ、結果としてレーザー記録感度を向上させることが可能である。これらの添加剤の例としては、各種のヨードニウム塩、スルフォニウム塩、フォスフォニウムトシレート、オキシムスルフォネート、ジカルボジイミドスルフォネート、トリアジンなどを使用することができる。
【0172】
光熱変換剤にカーボンブラックなどの顔料を用いた場合には、顔料の分散度がレーザー記録感度に影響を与えることがあるため、各種の顔料分散剤を添加剤として使用することも好ましい。光熱変換層と親水性層との接着性を向上させるために、公知の密着改良剤(例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等)を添加しても良い。この他にも、塗布性を改良するための界面活性剤など各種の添加剤を目的に応じて使用することができる。
【0173】
光熱変換層を混合膜として形成する場合は、上記の各構成成分を適当な溶媒、分散媒に溶解または分散して、親水性層支持体上に塗布、乾燥することにより形成される。ここで用い得る溶媒、分散媒としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールメチルエチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0174】
(膜厚)
光熱変換層の膜厚は、単独膜の場合には蒸着法およびスパッタリング法等にて薄膜が形成できる。この場合の膜厚は50Åから1000Å、好ましくは100Åから800Åである。混合膜の場合の膜厚は0.05μmから10μm、好ましくは0.1μmから5μmである。光熱変換層の膜厚は、薄すぎても、厚すぎても、レーザー記録感度の低下など好ましくない結果を与える。
【0175】
<支持体>
本発明に用いる支持体としては、通常の印刷機にセットできる程度のたわみ性を有し、同時に印刷時にかかる荷重に耐えるものでなければならない。従って、代表的な支持体としては、コート紙、アルミニウムのような金属板、ポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックフィルム、ゴムあるいはそれらを複合させたものを挙げることができ、より好ましくはアルミニウム、アルミニウム含有(例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルなどの金属とのアルミニウムとの合金)合金およびプラスチックフィルムである。支持体の膜厚は25μmから3mm、好ましくは75μmから500μmが適当であるが、用いる支持体の種類と印刷条件により最適な厚さは変動する。一般には100μmから300μmが最も好ましい。
【0176】
本発明においては、支持体と親水性層間の接着性向上、印刷特性向上、熱エネルギーの熱伝導による散逸の防止等のために、支持体にコロナ処理等の表面処理を施したり、支持体と親水性層間との間に中間層を設けることができる。
本発明に用いられる中間層としては、例えば、特開昭60−22903号公報に開示されているような種々の感光性ポリマーを感光性樹脂層を積層する前に露光して硬化せしめたもの、特開昭62−50760号公報に開示されているエポキシ樹脂を熱硬化せしめたもの、特開昭63−133151号公報に開示されているゼラチンを硬膜せしめたもの、更に特開平3−200965号公報に開示されているウレタン樹脂とシランカップリング剤を用いたものや特開平3−273248号公報に開示されているウレタン樹脂を用いたもの等を挙げることができる。この他、ゼラチンまたはカゼインを硬膜させたものも有効である。
【0177】
更に、中間層を柔軟化させる目的で、前記の中間層中に、ガラス転移温度が室温以下であるポリウレタン、ポリアミド、スチレン/ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル/ブタジエンゴム、ポリイソプレン、アクリレートゴム、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリマーを添加しても良い。その添加割合は任意であり、フィルム層を形成できる範囲内であれば、添加剤だけでプライマー層を形成しても良い。また、これらのプライマー層には前記の目的に沿って、染料、pH指示薬、焼き出し剤、光重合開始剤、接着助剤(例えば、重合性モノマー、ジアゾ樹脂、シランカップリング剤等)、顔料、シリカ粉末や酸化チタン粉末等の添加物を含有させることもできる。また、塗布後、露光によって硬化させることもできる。一般に、プライマー層の塗布量は乾燥質量で0.1〜10g/m2の範囲が適当であり、好ましくは0.3〜8g/m2であり、より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0178】
また、本発明の支持体にポリエステル等の非導電性のものを用いる場合、感熱層と支持体の密着性向上及び帯電防止を目的として、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層より成る中間層を設けるのが好ましい。
【0179】
上記中間層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、及び/又はこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOが好ましい。
異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlまたはIn、SnO2に対してSb、Nbまたはハロゲン元素、In2O3に対してSnなどの異種原子を30モル%以下、好ましくは10モル%以下の量をドープしたものを挙げることができる。
金属酸化物粒子は、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0180】
中間層に用いることができるマット剤としては、好ましくは平均粒径が0.5〜20μm、より好ましくは平均粒径が1.0〜15μmの粒径を持つ無機又は有機の粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の金属塩等が挙げられる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン及びそれらの共重合体の架橋粒子が挙げられる。
マット剤は、中間層中に1〜30質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0181】
中間層に用いることができるポリマーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の合成ポリマー等が挙げられる。
ポリマーは、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0182】
また、本発明で使用する支持体は、ブロッキングを防止する観点から、支持体の裏面の最大粗さ深度(Rt)が少なくとも、1.2μm以上であることが好ましく、さらに、支持体の裏面(即ち、本発明の平版印刷版原版の裏面)が本発明の平版印刷版原版の表面上を滑る時の動摩擦係数(μk)が2.6以下であることが好ましい。
このため、支持体の裏面には、前述の中間層において示したのと同様なマット剤を含有するバックコート層を設けたり、サンドブラスト処理を施す等による粗面化が成されることが好ましい。
【0183】
また金属支持体の場合は、支持体への熱拡散を抑制し高感度化するための下塗りとして断熱層を設けることができる。このような断熱層は、主成分として有機又は無機の樹脂を含有する。有機又は無機の樹脂は、公知の疎水性高分子、親水性高分子、親水性高分子を架橋したもの、ヒドロキシ基やアルコキシ基を有するアルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウムなどのゾルゲル変換を行う化合物からの無機高分子等から広く選択することができる。
【0184】
<その他の層>
本発明においては、光熱変換層の表面保護を目的として、光熱変換層上に保護層を設けても良い。保護層としては、前記光熱変換層に使用できるバインダーと同様の親油性ポリマーが画像部のインキ受容性向上の観点で好ましく、使用可能である。水または湿し水により容易に除去可能な親水性ポリマーも使用可能であり、例えば、ポリビニルアルコール(ケン化度60%以上のポリビニルアセテート)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホスホン酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体及びその塩、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらのポリマーを適当な溶剤に溶解し、ポリマー溶液を塗布、乾燥することにより、保護層を設けることができる。この場合の保護層の乾燥質量は、0.01〜5g/m2が好ましく、より好ましくは、0.05〜2g/m2である。
【0185】
上記保護層は他の成分として、種々の界面活性剤を含有してもよい。使用できる界面活性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が挙げられる。これらの具体例としては、前記した光熱変換層に用いられる界面活性剤と同じものが挙げられる。界面活性剤の添加量は、全固形分当たり、好ましくは0.01〜1質量%であり、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0186】
保護層はまた、特開2001−341448号記載のフッ素原子及び/又はケイ素原子を含有化合物、例えば、水溶性又は水分散性のフッ素系界面活性剤や水溶性又は水分散性のシリコーンオイルを含有することができる。これらの保護層の全固形分中のにおける割合は、0.05〜5質量%である。この使用割合の範囲において、積み重ね保存時の印刷用原版間のくっつきが防止できる。
【0187】
上記成分のほか、必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の低級多価アルコールも使用することができる。これら湿潤剤の使用量は保護層中に0.1〜5.0質量%となる量が適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0質量%となる量である。以上の他に本発明の平版印刷版原版の保護層の塗布液には、防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸ナトリウム等を0.005〜2.0質量%の範囲で添加できる。また、塗布液には消泡剤を添加することもできる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含まれ、その添加量は0.0001〜0.1質量%の範囲が好ましい。
【0188】
本発明の平版印刷用原版は、その最上層(光熱変換層または保護層)の表面の動摩擦係数が、2.5(μk)以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜1.2(μk)である。ここで、表面の動摩擦係数は、標準ASTMD1894に従った測定法により測定したものである。すなわち下にある材料の表面が上にある材料の裏面と接触しているように平版印刷版原版が置かれる。該材料の裏面は支持体に対して親水性層、光熱変換層及び必要に応じて保護層が設けられていない面を意味し、表面は支持体に対して親水性層及び光熱変換層、更に必要に応じて保護層が設けられている面を意味する。動摩擦係数については3000枚積み重ね35℃75%の温湿度で3日間放置した後、一番下のサンプルを測定した。
【0189】
この数値内の動摩擦係数に調整することにより、長期積み重ね保存時の平版印刷版用原版間のくっつきを防止するとともに、製版装置内における良好な搬送性を可能にすることができる。これらは、前記の使用材料の適宜の組み合わせによって行われる。
【0190】
<製版方法>
本発明の平版印刷版原版を製版する際、記録に用いられるレーザー光エネルギーが、本発明の平版印刷版原版の光熱変換層において吸収されて熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーにより光熱変換層の一部又は全体において、燃焼、融解、分解、気化、爆発等の化学反応や物理変化が引き起こされ、結果として光熱変換層と親水性層間の密着性が低下する。レーザーを照射した部分においてのみ、このような密着性の低下が生じるため、対応する部分の光熱変換層を選択的に容易に除去することが可能となり、除去された部分が親水性領域となり非画像部を形成する。
【0191】
本発明においては平版印刷版原版を露光するのにレーザー光が使用される。使用されるレーザーは親水性層が除去されるのに十分な密着力の低下が起きるのに必要な露光量を与えるものであれば特に制限はなく、Arレーザー、炭酸ガスレーザーのごときガスレーザー、YAGレーザーのような固体レーザー、そして半導体レーザーなどが使用できる。通常、出力が50mWクラス以上のレーザーが必要となる。保守性、価格などの実用的な面からは、半導体レーザーおよび半導体励起の固体レーザー(YAGレーザーなど)が好適に使用される。これらのレーザーの記録波長は赤外線の波長領域であり、800nmから1100nmの発振波長を利用することが多い。また、特開平6−186750号公報に記載されている如きイメージング装置を用いて露光することも可能である。
【0192】
上記の方法で露光された本発明の平版印刷版原版は、レーザー露光中にレーザー露光部(非画像部)の光熱変換層が除去される構成であってもよく、さらに、必要な場合は、レーザー露光後に、レーザー露光部(非画像部)の光熱変換層が除去される工程を伴う構成であってもよい。レーザー露光部の光熱変換層の除去(現像処理)は、例えば、吸引、粘着シートの圧着・剥離、処理液の存在下又は非存在下において、現像用パッドや現像用ブラシ等の擦り部材により版面を擦ることにより実施される。本発明において使用される処理液としては、安全性が良好で、引火性が低いこと、及び親水性層表面の親水性を損なわないことなどを要求されるため、水または水を主成分とする水溶液が好ましく、単に水(水道水、純水、蒸留水等)や界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系)の水溶液等が一般的に使用可能である。
【0193】
また、現像性向上のために有機溶剤を使用することも可能であり、処理液に使用可能な溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、またはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、またはハロゲン化炭化水素(トリクレン等)や、下記の極性溶剤が例示される。例えば、・アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等);・ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等);・エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート等);・その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等)などが挙げられる。
【0194】
上記有機溶剤系処理液に水を添加したり、上記有機溶剤を界面活性剤等を用いて水に可溶化したものも使用可能であり、処理液に、溶剤を含有する場合は、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。また、処理液に、アルカリ性剤(例えば、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、ケイ酸塩類等)又は酸性剤(例えば、リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、ホウ酸、アミノ酸類等)を添加したものも使用可能である。処理液の温度は、任意の温度であるが、好ましくは10℃〜50℃の範囲で使用される。
【0195】
レーザー露光部の光熱変換層の除去は、上記処理液を使用するものの他、例えば、レーザー露光後の印刷版を印刷機の版胴上に装着し、印刷機上における湿し水及び/又はインクの付けローラーと印刷版との接触により実施する、所謂、機上現像とすることも可能である。このようにして、平版印刷版原版の非画像部における光熱変換層が除去され、得られた平版印刷版はインクを適用され、印刷に用いられる。
【0196】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0197】
実施例1
[支持体の作製]
両面にコロナ処理を施した厚さ180μmのポリエチレンテレフタレートの片面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のプライマー層を形成した。
【0198】
(プライマー層塗布液1)
・ポリエステル系ラテックス(ペスレジンA−520、
高松油脂(株)製、固形分30質量%) 8g
・メラミン化合物(スミテックスレジンM−3、住友化学工業(株)製、
有効成分濃度:80質量%) 6g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 4.8g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、
エマルゲン911 花王(株)製) 0.7g
・ポリスチレン(Nipol UFN1008、
日本ゼオン(株)製、固形分20質量%) 0.04g
・蒸留水 81g
【0199】
次いで、プライマー層と反対の面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のバック層を形成した。
【0200】
(バック層塗布液)
・アクリル樹脂水分散物(ジュリマーET−410、
日本純薬(株)製、固形分20質量%) 10g
・酸化スズ−酸化アンチモン水分散物(平均粒径:0.1μm、17質量%)90g
・メラミン化合物(スミテックスレジンM−3、
住友化学工業(株)製、有効成分濃度:80質量%) 0.2g
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩水溶液(サンデッドBL、
三洋化成工業(株)製、44質量%) 0.6g
・蒸留水 45g
【0201】
さらに、バック層の上に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(170℃、30秒)し、乾燥塗布量0.05g/m2の保護層を形成し支持体を作製した。
【0202】
(保護層塗布液)
・ポリオレフィン系ラテックス(ケミパールS−120、
三井化学(株)製、固形分27質量%) 6.2g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 1.2g
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩水溶液(サンデッドBL、
三洋化成工業(株)製、44質量%) 0.6g
・エポキシ化合物(デナコールEX−614B、
ナガセ化成(株)製、有効成分濃度:100質量%) 0.6g
・蒸留水 90g
【0203】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物1Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で10分間分散した後、更に、組成物1Bを33g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスヒーズを濾別して親水性層塗布液を得た。
【0204】
(組成物1A)
・チタン酸カリウムウィスカー(ティスモN、大塚化学(株)製、平均直径
0.4μm、平均長さ15μm) 31g
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA117)5%水溶液 60g
・コロイダルシリカ20%水溶液(日産化学工業(株)製スノーテックスC)60g
【0205】
(組成物1B)
・テトラエトキシシラン 92g
・エタノール 163g
・水 163g
・硝酸 0.1g
【0206】
[親水性層の形成]
次に、上記親水性層塗布液を前記プライマー層上に塗布し、加熱(140℃、5分)、乾燥することにより、乾燥重量2g/m2の親水性層を形成した。
【0207】
[カーボンブラック分散液の作成]
下記の混合液をペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で30分間分散した後、ガラスビーズをろ別して、カーボンブラック分散液を作成した。
【0208】
(カーボンブラック分散液)
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 4.0g
・ソルスパースS20000(ICI社製) 0.27g
・ソルスパースS12000(ICI社製) 0.22g
・メチルエチルケトン 20g
・ガラスビーズ 120g
【0209】
[光熱変換層の形成]
前記の親水性層上に、下記の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥重量1g/m2の光熱変換層を形成した。
【0210】
(光熱変換層塗布液1)
・上記カーボンブラック分散液 20g
・末端−OH基のポリウレタン樹脂(イソホロンジイソシアネート/
ブタンジオール=100/102(重量比)の縮合反応物) 10g
・チタボンド50(日本曹達(株)製、チタンジイソプロポキサイドビス
(2,4−ペンタジオネート)の約75%イソプロパノール溶液)6.7g
・メチルエチルケトン 45g
・プロピレングルコールモノメチルエーテル 45g
【0211】
[製版及び印刷]
このようにして得られた平版印刷用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSにて、版面エネルギー300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール(容量比1/89/10)からなる湿し水と、大日本インキ化学工業(株)製ジオスG墨インキを用い、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行ったところ、問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0212】
比較例1
親水性層塗布液の作製を下記のように変えた。それ以外は実施例1と同様にして、比較用の平版印刷用原版を作製した。
【0213】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物2Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で5分間分散した後、更に、実施例1に記載の組成物1Bを15g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスビーズを濾別して親水性層用分散組成物を得た。
【0214】
(組成物2A)
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA117)5%水溶液 70g
・コロイダルシリカ20%水溶液(日産化学工業(株)製スノーテックスC)55g
【0215】
この平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、印刷物の非画像部の汚れは実用上問題のないレベルであったが、刷り出しから、細線や細文字の欠落が発生しており、良好な印刷物を得ることができなかった。
【0216】
実施例2
実施例1で親水性層を形成した後、親水性層表面を平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記条件で酸素グロー処理を行った。
【0217】
酸素グロー処理条件
(初期真空) 1.2×10−3Pa
(アルゴン圧力) 0.9Pa
(RFグロー) 1.4KW
(処理時間) 60sec
【0218】
次に、グロー処理した上記親水性層を有する支持体を窒素バブルしたアクリル酸水溶液(20%)に60℃にて4時間浸漬した。浸漬した膜を流水で10分間洗浄することによって、親水性層表面にアクリル酸がグラフトポリマー化した表面グラフト親水性層を形成した。表面グラフト親水性層の質量(グラフト量)を重量法で測定したところ、1.25g/m2であった。
それ以外は、実施例1と同様に、平版印刷用原版を作製し、製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0219】
実施例3
親水性層塗布液の作製において、ポリビニルアルコールを下記により合成した親水性有機ポリマー(1)に変えた以外は実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0220】
[親水性有機ポリマー(1)の合成]
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、及びジメチルホルムアミド51.3gを入れて、窒素気流下で65℃まで加熱し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで冷却して、酢酸エチル1.5リットル中に投入したところ固体が析出した。その後、ろ過を行い、十分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により重量平均分子量は5000であることが判った。
【0221】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0222】
実施例4〜10
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表1に示した針状フィラーに変えた以外は実施例1と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0223】
【表1】
【0224】
実施例11〜17
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表1に示した針状フィラーに変えた以外は実施例3と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0225】
実施例18〜23
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表2に示した多孔性フィラーに変えた以外は実施例1と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0226】
【表2】
【0227】
実施例24〜29
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表2に示した多孔性フィラーに変えた以外は実施例3と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0228】
実施例30
光熱変換層の形成に、下記塗布液を用いる以外は、実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0229】
(光熱変換層塗布液2)
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1009、ジャパンエポキシレジン(株)製) 8.0g
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン(株)製) 2.0g
・下記赤外線吸収染料(A) 2.0g
・エチレングリコールモノメチルエーテル 165g
・メチルエチルケトン 85g
【0230】
【化11】
【0231】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びべ夕画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0232】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な機上現像性を有し、印刷における汚れ難さ及び細小網点や細線の強度等の耐刷性が改良されたポジ型平版印刷用原版を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、現像不要で耐刷性に優れた平版印刷用の直接製版が可能な平版印刷用原版に関する。より詳しくは、ディジタル信号に基づいた走査露光による画像記録も可能であり、且つ水現像も可能で、または現像することなくそのまま印刷機に装着し印刷することが可能なポジ型平版印刷版用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷版用原版としては、従来から、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版が広く用いられている。その製版方法として、通常はリスフイルムなどの画像を通して露光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除去する方法であり、この方法により所望の印刷版を得ている。
【0003】
従来のPS版に於ける製版工程は、露光の後、非画像部を溶解除去する操作が必要であり、このような付加的な湿式の処理を不要化又は簡易化することが、従来技術に対して改善が望まれてきた一つの課題である。特に近年は、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、この面での改善の要請は一層強くなっている。
【0004】
この要望に応じた簡易な製版方法の一つとして、印刷版用原版の非画像部の除去を通常の印刷過程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で現像し最終的な印刷版を得る方法が提案されている。このような方法による平版印刷版の製版方式は機上現像方式と呼ばれる。具体的方法としては、例えば、湿し水やインク溶剤に可溶な画像記録層の使用、印刷機中の圧胴やブランケット胴との接触による力学的除去を行う方法等が挙げられる。しかしながら、機上現像方式の大きな問題としては、印刷用原版は、露光後も画像記録層が定着されないため、例えば印刷機に装着するまでの間原版を完全に遮光状態又は恒温条件で保存する、といった手間のかかる方法をとる必要があった。
【0005】
一方、近年のこの分野のもう一つの動向としては、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及してきており、このような、ディジタル化技術に対応した、新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザ光のような高収斂性の輻射線にディジタル化された画像情報を担持してこの光で原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されている。それに伴ってこの目的に適応した印刷版用原版を得ることが重要な技術課題となっている。したがって、製版作業の簡素化、乾式化、無処理化は、上記した環境面と、ディジタル化への適合化の両面から、従来にも増して、強く望まれるようになっている。
【0006】
デジタル化技術に組み込みやすい走査露光による印刷版の製造方法として、最近、半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザで高出力のものが安価に入手できるようになってきたことから、特にこれらのレーザを画像記録手段として用いる製版方法が有望視されるようになっている。従来方式の製版方法では、感光性原版に低〜中照度の像様露光を与えて光化学反応による原版面の像様の物性変化によって画像記録を行っているが、高出力レーザを用いた高パワー密度の露光を用いる方法では、露光領域に瞬間的な露光時間の間に大量の光エネルギーが集中照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換し、その熱により化学変化、相変化、形態や構造の変化などの熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。つまり、画像情報はレーザー光などの光エネルギーによって入力されるが、画像記録は熱エネルギーによる反応によって記録される。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼び、光エネルギーを熱エネルギーに変えることを光熱変換と呼んでいる。
【0007】
ヒートモード記録手段を用いる製版方法の大きな長所は、室内照明のような通常の照度レベルの光では感光せず、また高照度露光によって記録された画像は定着が必須ではないことにある。つまり、画像記録にヒートモード感材を利用すると、露光前には、室内光に対して安全であり、露光後にも画像の定着は必須ではない。従って、例えばヒートモード露光により不溶化若しくは可溶化する画像記録層を用い、露光した画像記録層を像様に除去して印刷版とする製版工程を機上現像方式で行えば、現像(非画像部の除去)は、たとえ画像露光後ある時間室内の環境光に暴露されても、画像が影響を受けないような印刷システムが可能となる。従ってヒートモード記録を利用すれば、現像操作を必要としない平版印刷版用原版を得ることも可能となると期待される。
【0008】
ヒートモード記録に基づく平版印刷版の好ましい製造法の一つとして、親水性の基板上に疎水性の画像記録層を設け、画像状にヒートモード露光し、疎水性層の溶解性・分散性を変化させ、必要に応じ、湿式現像により非画像部を除去する方法が提案されている。このような原版の例として、例えば、特公昭46−27919号公報には、親水性支持体上に、熱により溶解性が向上するいわゆるポジ作用を示す記録層、具体的には糖類やメラミンホルムアルデヒド樹脂等の特定の組成を有する記録層を設けた原版をヒートモード記録することによって、印刷版を得る方法が開示されている。しかしながら、この記録層は感熱性が十分でないため、ヒートモード走査露光に対しては、感度が不十分で、したがって画像部と非画像部の識別性に乏しかった。
【0009】
一方、EP94/18005号には、親水性架橋層と親油性の光熱変換層を支持体上に担持した、同様に現像せずに製版することが可能な、平版印刷原版が開示されている。しかしながら、製版には架橋された親水性層を像様に擦りとる操作が必要と記されており、簡易性の点で問題があるように思われる。
【0010】
WO99/04974号には、染料や顔料などの光変換性でインキ受容性の光吸収物質と、金属や金属酸化物のコロイド状分散物とを含む親水性画像記録層を基板上に設けた、現像することなく製版することが可能な、平版印刷原版が開示されている。しかし、画像部と非画像部との識別性を確保するのに多くの解決するべき点があると考えている。
【0011】
特開平6−199064号公報には、光熱変換剤を含む層とその層とは親水性・疎水性の程度の異なる層とを組み合わせて用いる2層構成のレーザー光記録による平版印刷原版が提示されており、これらは今後さらなる改良を進めるべき方法を示唆するものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来技術による平版印刷用原版では、まだなお印刷における汚れ難さ及び細小網点や細線の強度などの印刷性能が不十分であった。
本発明の目的は、この問題を解決することにある。すなわち、良好な機上現像性を有し、印刷における汚れ難さ及び細小網点や細線の強度等の耐刷性が改良された平版印刷用原版を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、鋭意検討した結果、親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版において、親水性層に特定形状のフィラーを加えて親水性層表面を粗面にすることが上記課題解決に有効であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0014】
1. 支持体上に親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版であって、前記親水性層が、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有し、前記光熱変換層がレーザー光を熱に変換する化合物を含有し、レーザー露光部の光熱変換層を除去して画像形成するポジ型平版印刷用原版。
【0015】
2.前記特定形状フィラーにおいて、針状フィラーの平均直径が3μm以下、且つ平均長さが100μm以下であり、多孔質フィラーの平均細孔径が0.001〜1μmであることを特徴とする前記1に記載の平版印刷用原版。
【0016】
3.前記多孔質フィラーの平均比表面積が、0.05〜5000m2/gであることを特徴とする前記1又は前記2に記載の平版印刷用原版。
【0017】
4.前記特定形状フィラーが、無機物からなることを特徴とする前記1から前記3のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0018】
5.前記親水性バインダーポリマーが、ゼラチンであることを特徴とする前記1から前記4のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0019】
6.前記親水性バインダーポリマーが、金属原子及び半金属原子から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、該ポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(B)及び下記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(C)よりなる群から選ばれる少なくとも一つの有機ポリマーとの複合ポリマー膜であることを特徴とする前記1から前記4のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0020】
【化1】
【0021】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0022】
7.前記親水性層の表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層が設けられていることを特徴とする前記1から前記6のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0023】
8.前記親水性官能基を有する高分子化合物が、該高分子化合物鎖の末端で、直接、及び/又は、親水性層に化学的に結合している他の結合用高分子化合物を介して、親水性層に結合している直鎖状高分子化合物であることを特徴とする前記7記載の平版印刷用原版。
【0024】
9.前記金属原子及び半金属原子よりなる群から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーが、下記一般式(III)で示される少なくとも1種の化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることを特徴とする前記6から前記8のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0025】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0026】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0027】
上記発明は、鋭意検討の結果、親水性層及び光熱変換層を有する層構成の平版印刷用原版において、親水性層表面の表面形状を微細構造に制御することが目的達成に効果があり、その手段として、親水性層への針状フィラー及び/又は多孔質フィラーの添加が特に有効であることを見出したことに基づいている。これらのフィラーが特に有効なのは、針状フィラーは親水性層に微細な網目構造を形成し、また、多孔質フィラーの場合は微細な凹凸構造を形成することにより、親水性層表面の印刷時の保水性が十分なレベルに向上して汚れ難さが良化し、且つ、これらの微細表面形状が、上層の光熱変換層とのアンカー効果による密着性を良化するためと考えられる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有含有する親水性層、及び、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層をこの順に有する。
本発明において、「この順に有する」とは、支持体上に親水性層と光熱変換層とがこの順に設けられていることを指し、必要に応じて公知の他の層、例えば、中間層、表面保護層、バックコート層(単にバック層と呼ぶことがある)などを設ける態様を包含するものである。
【0029】
[親水性層]
本発明の親水性層は、特定形状のフィラーを分散又は溶解した親水性バインダーポリマーを硬化して得られる、実質的に水不溶性の硬化膜である。この親水性層は、必要に応じて、架橋剤(又は硬化剤)や他のポリマーを含有していてもよい。
【0030】
本発明の親水性層には、針状フィラー及び多孔質フィラーから選ばれた少なくとも一種のフィラーが含有される。これらのフィラーは、無機物でも、有機物でもよく、また混合して用いてもよい。好ましくは無機フィラーであることが好ましい。
【0031】
本発明に供される針状フィラーは、そのフィラーの大きさが、平均直径0.01〜3μm、且つ、平均長さが1〜100μmのものである。好ましくは、平均直径0.02〜2.5μm、且つ、平均長さ1〜50μmである。また、針状フィラーのアスペクト比(平均長さ/平均直径)は5〜10,000程度が適当であり、好ましくは10〜5,000程度、より好ましくは20〜2,500程度である。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果が有効に発現される。
【0032】
無機針状フィラーとして、上記の大きさの形状を有する金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。具体的には、シリカ、硝子、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、炭化亜鉛、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。中でも、シリカ、硝子、酸化チタン、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウムが好ましい。
【0033】
上記無機針状フィラーとして市販品を用いることもできる。例えば、大塚化学(株)製のチタン酸カリウムウィスカーティスモN(平均直径0.4μm、平均長さ15μm)、ティスモD(平均直径0.4μm、平均長さ15μm)、石原産業(株)製の導電性酸化チタンウィスカーFT2000(平均直径0.1μm、平均長さ6μm)、FT1000(平均直径0.1μm、平均長さ12μm)、四国化成(株)製ホウ酸アルミニウムウィスカーアルボレックスY(平均直径0.1μm、平均長さ20μm)、丸尾カルシウム(株)製の炭酸カルシウムウィスカーウィスカル(平均直径0.2μm、平均長さ20μm)、キンセイマティク(株)製のケイ酸カルシウムウィスカーウオラストナイト(平均直径2μm、平均長さ50μm)、近江工業(株)製のケイ酸マグネシウムウィスカーセビオライト(平均直径0.2μm、平均長さ20μm)宇部興産(株)製の塩基性硫酸マグネシウムウィスカーモスハイジ(平均直径0.5μm、平均長さ20μm)等が好適なものとして挙げられる。
【0034】
有機針状フィラーとしては、例えば炭素化合物、高分子ウィスカー、セルロース類及びこれらの少なくとも1種以上と無機化合物との複合物が挙げられ、具体的には、グラファイト、カーボンナノチューブ、ポリオキシメチレンウィスカー、芳香族ポリエステルウィスカー、アラミドウィスカー、酢酸セルロース、エチルセルロース、微生物セルロース等が挙げられる。好ましくは、グラファイト(例えば、日本黒鉛(株)製の黒鉛ウィスカー、平均直径0.1μm、平均長さ10μm)、ポリ(p−オキシベンゾイル)ウィスカー、ポリ(2−オキシ−6−ナフトイル)ウィスカー、微生物セルロース等が挙げられる。
【0035】
本発明の特定形状フィラーのもう一つである多孔質フィラーは、フィラーサイズとして、平均粒子径が0.03〜20μmで、その平均比表面積が0.05〜5000m2/g、且つ、平均細孔径が0.01〜1μmとなるものである。好ましくは、平均粒子径が0.05〜15μm、平均比表面積が1〜3000m2/g、平均細孔径が0.03〜0.5μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。
【0036】
無機多孔質フィラーとして、上記の特定形状を有する金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、硝子、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、炭化亜鉛、硫化亜鉛、ゼオライト、及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。好ましくは、硝子、シリカ、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0037】
上記無機多孔質フィラーとして市販品を用いることもできる。例えば、岩谷化学工業(株)製のアルミナRG30(平均粒径0.5μm、平均細孔径100Å、平均比表面積50m2/g)、アルミナRK30(平均粒径0.6μm、平均細孔径50Å、平均比表面積300m2/g)、アルミナRA30(平均粒径1μm、平均細孔径500Å、平均比表面積50m2/g)、アルミナRH30(平均粒径1.5μm、平均細孔径100Å、平均比表面積50m2/g)、水酸化アルミニウムRH30(平均粒径0.5μm、平均細孔径50Å、平均比表面積300m2/g)、水澤化学工業(株)製のシリカゲル ミズカシルP526(平均粒径3μm、平均細孔径100Å、平均比表面積100m2/g)、ミズカシルP78A(平均粒径3.5μm、平均細孔径200Å、平均比表面積400m2/g)、富士シリシア(株)製のシリカゲル サイリシア320(平均粒径1.6μm、平均細孔径200Å、平均比表面積300m2/g)、サイリシア530(平均粒径1.9μm、平均細孔径25Å、平均比表面積500m2/g)、トクヤマ(株)のシリカゲル ファインシールX37(平均粒径2.6μm、平均細孔径1000Å、平均比表面積300m2/g)、和光純薬工業(株)の水酸化マグネシウム(平均粒径0.6μm、平均細孔径200Å、平均比表面積100m2/g)等が挙げられる。
【0038】
有機多孔質フィラーとして炭素化合物、高分子化合物、セルロース類及びこれらの少なくとも1種以上と無機化合物との複合物が挙げられ、具体的には、木炭、活性炭、高分子多孔質焼結体、樹脂フォーム類、シリコン多孔質体、高吸水性樹脂類等が挙げられる。好ましくは、木炭、活性炭、高分子多孔質焼結体、高吸水性樹脂類等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、用いるフィラーの全てが針状フィラー及び/又は多孔質フィラーである必要はなく、針状フィラー及び/又は多孔質フィラーの量は、全フィラー量の25質量%以上であることが好ましく、より好ましくは全フィラー量の50質量%以上、更に好ましくは75質量%以上である。
【0040】
上記針状フィラー及び多孔質フィラー以外に併用することができるフィラーは、無機粒子でも有機粒子でもよく、特に限定されない。
【0041】
無機粒子としては、例えば、金属粉体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物及びこれらの複合化物等が挙げられ、好ましくは金属酸化物及び金属硫化物等であり、より好ましくはガラス、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化スズ、硫化亜鉛、硫化銅等の粒子が挙げられる。市販品では、和光純薬工業(株)のルチル型酸化チタン(平均粒径0.3μm)、堺化学(株)の酸化亜鉛(平均粒径0.3μm)、岩谷化学工業(株)のαアルミナRA30(平均粒径0.3μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
また、有機粒子としては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等が挙げられ、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。
【0043】
フィラーの大きさは、平均粒子径が0.01〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が0.03〜20μm、更に好ましくは、平均粒子径が0.05〜10μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果が有効に発現される。
【0044】
以上のような全フィラーの使用割合は、親水性層全成分100質量部中に、20〜95質量部が好ましく、より好ましくは35〜95質量部である。この範囲において親水性層表面の保水性及び後述する光熱変換層との密着性が良好となり、印刷汚れのない鮮明な印刷物が多数枚得られる。
【0045】
次に本発明の親水性層に供される親水性バインダーポリマーについて説明する。
本発明の親水性バインダーポリマーは、公知のものを好適に用いることができるが、特に好ましい態様として、下記の(1)及び(2)が挙げられる。
【0046】
(1)ゼラチンを主成分とするもの(以下、「ゼラチン系バインダー」と称することもある)。
【0047】
(2)金属原子及び半金属原子から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び上記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)よりなる群から選ばれる少なくとも一つの有機ポリマーとの複合ポリマーを主成分とするもの(以下、「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」と称することもある)。
【0048】
以下、(1)及び(2)について、詳細に説明する。
【0049】
(1)「ゼラチン系バインダー」
このゼラチン系バインダーでは、親水性バインダーポリマーとしてゼラチンが用いられる。ゼラチンを用いることにより、親水性層用分散物の分散が容易となり、本発明に供されるフィラーの均一分散性が良好となる。
【0050】
本発明に供されるゼラチンとは、誘導タンパク質の一種であり、コラーゲンから製造されるゼラチンと称されるものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、淡色、透明、無味、無臭の外観を示すものである。更には、写真乳剤用ゼラチンが、水溶液とした場合の粘度、ゲルのゼリー強度等の物性が一定の範囲内にあることからより好ましい。
【0051】
また、ゼラチン硬化性化合物の併用により、親水性層を硬化して、耐水性が良好なものとなる。
【0052】
ゼラチン硬化性化合物としては、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、T. H. James 「The Theory of the Photographic Process」第2章 セクション III、Macmillan Publishing Co. Inc.(1977年刊)、リサーチ・ディスクロージャー誌 No.17643, P26 (1970年12月発行)等に記載されている。好ましくは、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒドのジアルデヒド類、ジケトン類(例えば、2,3−ブタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン、1,2−シクロペンタンジオン等)、電子吸引基を隣接結合した二重結合を2個以上有する活性オレフィン化合物等が挙げられる。
【0053】
ゼラチン硬化性化合物は更に好ましくは、一般式(V)で示される二重結合基を分子中に2個以上含有する化合物である。
【0054】
一般式(V) CH2=CH−W0−
【0055】
式(V)中、W0は、―SO2−、−OSO2−、−CONR35−又は−SO2NR35−を表す。但し、R35は、水素原子又は炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
【0056】
式(V)において、好ましくはR35は、水素原子又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチロール基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−カルボキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表し、W0は、好ましくは−SO2−を表す。
【0057】
具体的には、例えば、レゾルシノールビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホニル)−m−キシレン、ビス(ビニルスルホニルアルキル)エーテルあるいはアミン、1,3,5−トリス(ビニルスルホニル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアクリルアミド、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、N,N′−ビスマレイミド類等が挙げられる。
【0058】
ゼラチン硬化性化合物は、ゼラチン100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。より好ましくは、0.8〜10質量部である。この範囲内において、得られた親水性層は膜強度が保持され、優れた耐水性を示すと同時に、親水性を疎害しない。
【0059】
更に、本発明のゼラチン系バインダーは、他のポリマーとして、特定の置換基からなるシリル官能基で変性された親水性樹脂(以下、「親水性樹脂(C)」と称することもある)を含有することが好ましい。好ましい親水性樹脂(C)としては、下記一般式(I)で示されるシリル官能基で変性された親水性樹脂が挙げられる。
【0060】
一般式(I) −Si(R10)j(OX)3−j
【0061】
式(I)中、R10は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Xは炭素数1〜12の脂肪族基を表す。jは0、1又は2を表す。より好ましくは0又は1を表す。
【0062】
式(I)においてR10が示す好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、3,6−ジオキソヘプチル基、3−スルホプロピル基、2−カルボキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、トリフロロエチル基等)、炭素数3〜12の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基、カルボキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基、カルボキシメチルフェニル基等)等が挙げられる。
【0063】
式(I)におけるXは、炭素数1〜12の脂肪族基を表す。好ましくは炭素数1〜8の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクテル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3,6−ジオキサペプチル基、2−オキソブチル基等)、炭素数3〜8の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロピル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等)が挙げられる。Xのより好ましい脂肪族基としては、炭素数1〜4の置換されてもよいアルキル基が挙げられる。
【0064】
一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する有機ポリマーは公知の方法で合成することができる。例えば、「反応性ポリマーの合成と応用」(株)シーエムシー刊(1989年)、特公昭46−30711号、特開昭5−32931号等に記載の方法に従って、ポリマー中のヒドロキシ基をシリル官能性基に変性することにより容易に得られる。ヒドロキシ基含有樹脂としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)、小竹無二雄監修「大有機化学第19巻:天然高分子化合物I」朝倉書店(1960年)等に記載のものが挙げられる。
【0065】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トランガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0066】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール〔ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等〕、アリルアルコール共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体〔エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等〕、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリルアミドもしくはメタクリルアミドのN−置換体の重合体又は共重合体〔N−置換基として、例えばモノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基等〕等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個のヒドロキシ基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0067】
親水性樹脂(C)の重量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは5×103〜4×105である。親水性樹脂(C)におけるシリル官能性基の含有量は、シリル官能性基を有する単位成分として、通常0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.2〜15mol%である。親水性樹脂(C)が多糖、蛋白質の場合には、単位成分はその構成単糖、アミノ酸を指す。但し、これら単位成分はシリル官能性基を複数有していてもよい。
【0068】
該官能性基は、重合体の繰り返し単位中の側鎖または重合体主鎖の末端に直接結合してもよいし、連結基を介して結合してもよい。かかる連結基としては、いずれの結合基でもよいが、例えば具体的に挙げるとすれば、−O−、−CR31R32−〔ここで、R31及びR32は同じでも異ってもよく、各々水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−OH基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、プロピル基、ブチル基、等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等)、フェニル基等を表す〕、−S−、−NR33−〔ここでR33は水素原子又は炭化水素基{炭化水素基として具体的には炭素数1〜8の炭化水素基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基等)が挙げられる}を表す〕、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONR33−、−SO2NR33−、−SO2−、−NHCONH−、−NHCOO−、−NHSO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、等の結合基の単独又はこれらの2以上の組合せにより構成された連結基等が挙げられる。
【0069】
上記一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する親水性樹脂(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの親水性樹脂(C)を用いることにより、塗膜を形成後の加熱乾燥の工程で[−Si(R10)j(OX)3−j]基の縮合反応により容易に式(IV)で示されるシロキサン結合を形成し、樹脂間の橋架けが起こり、膜を硬化して親水性層の膜強度が充分に保持される。本発明の光熱変換層(上層)と親水性層の表面は充分に親水性であると同時に、密着性が極めて良好となる。
【0070】
【化2】
【0071】
更に、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、平均粒子径5〜50nmの無機顔料超微粒子を併用することが好ましい。
このコロイド状無機顔料超微粒子としては、従来公知の化合物が挙げられる。好ましくは、シリカゾル、アルミナゾル、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムである。より好ましくは、シリカゾル及び/又はアルミナゾルである。
【0072】
また本発明において、フィラーと無機顔料超微粒子の存在割合は40〜70対60〜30の質量比であり、好ましくは45〜60対55〜40質量比である。使用割合をこの範囲内に調整することにより、親水性層の膜強度が十分に保持されるとともに、印刷版としての保水性と耐刷性が良好なものとなる。
【0073】
その他、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、前記の山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」等に記載されている化合物を用いることができる。
【0074】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0075】
また、本発明のゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、親水性層塗布分散物の塗布性を良好とするために、界面調節剤(製面剤)、消泡剤、膜pHを調整するための緩衝剤等の各種添加剤を併用してもよい。
【0076】
本発明におけるゼラチン系バインダーを用いた親水性層の厚さは、1m2当たりの親水性層組成物の塗布量(乾燥後)で示して、0.5〜30g程度とすることが好ましい。
【0077】
(2)「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」
本発明の無機−有機の複合ポリマー系バインダーで用いられる親水性バインダーポリマーは、金属原子及び/又は半金属原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有するポリマー(以下、「(半)金属含有ポリマー」と称することもある)と、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び下記一般式(II)で示される重合体主鎖の末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーとの複合体である。
【0078】
【化3】
【0079】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0080】
「(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体」とは、ゾル状物質及びゲル状物質を含む意味に用いる。(半)金属含有ポリマーは「酸素原子−金属原子又は半金属原子−酸素原子」から成る結合を主として含有するポリマーを示す。ここで、(半)金属含有ポリマーは、金属原子及び半金属原子の両方を含有していてもよい。好ましくは、半金属原子のみを含有するポリマー、半金属原子と金属原子とを含有するポリマーである。
【0081】
(半)金属含有ポリマーは、下記一般式(III)で示される化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることが好ましい。ここで、加水分解重縮合とは、反応性基が酸性ないし塩基性条件下で、加水分解、縮合を繰り返し、重合していく反応である。
【0082】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0083】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0084】
上記化合物は、単独または2種以上を組み合わせて(半)金属含有ポリマーの製造に用いられる。
【0085】
以下に一般式(III)で示される(半)金属化合物について詳しく説明する。一般式(III)中のR0は、好ましくは、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基{例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換され得る基としては、ハロゲン原子
(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR′基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″)(R″は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表し、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3基、−CONHR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい)}、
【0086】
炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されていてもよい)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、
【0087】
又は、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えばヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表す。
【0088】
反応性基Yは、好ましくは、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す)、−OR11基、−OCOR12基、−CH(COR13)(COR14)基、−CH(COR13)(COOR14)基又は−N(R15)(R16)基を表す。
【0089】
−OR11基において、R11は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキシ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表す。
【0090】
−OCOR12基において、R12は、R11と同様の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R0中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。
【0091】
−CH(COR13)(COR14)基及び−CH(COR13)(COOR14)基において、R13は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等)を表し、R14は炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、カルボキシベンジル基、クロロベンジル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、カルボキシフェニル基、ジエトキシフェニル基等)を表す。
【0092】
また、−N(R15)(R16)基において、R15及びR16は、互いに同じでも異なってもよく、各々、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR11基のR11と同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは、R15とR16の炭素数の総和が12ケ以内である。
【0093】
(半)金属M0は、好ましくは、遷移金属、希土類金属、周期表III〜V族の金属又は半金属が挙げられる。より好ましくはAl、Si、Sn、Ge、Ti、Zr等が挙げられ、更に好ましくはAl、Si、Sn、Ti、Zr等が挙げられる。特にSiが好ましい。
【0094】
一般式(III)で示される(半)金属化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0095】
メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、
【0096】
テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、
【0097】
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシンラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
【0098】
Ti(OR17)4(ここで、R17はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す)、TiCl4、Zn(OR17)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、Sn(OR17)4、Sn(CH3COCHCOCH3)4、Sn(OCOR17)4、SnCl4、Zr(OR17)4、Zr(CH3COCHCOCH3)4、Al(OR17)3。
【0099】
次に、上記(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B))について説明する。
【0100】
本発明の有機ポリマー(A)は、(半)金属含有ポリマーと水素結合を形成し得る(以下、特定の結合基とも言う)を有する。この特定の結合基としては、好ましくは、アミド結合(カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む)、ウレタン結合及びウレイド結合から選ばれる少なくとも一種の結合及び水酸基を挙げることができる。
【0101】
有用な有機ポリマー(A)として、上記の特定の結合基を少なくとも1種、繰り返し単位成分としてポリマーの主鎖及び/又は側鎖に含有するものを挙げることができる。好ましくは、繰り返し単位成分として、−N(R18)CO−、−N(R18)SO2−、−NHCONH−及び−NHCOO−から選ばれる少なくとも1種の結合がポリマーの主鎖及び/又は側鎖に存在する成分、及び/又は−OH基を含有する成分が挙げられる。上記アミド結合中のR18は、水素原子又は有機残基を表し、有機残基としては、一般式(III)中のR0における炭化水素基及びヘテロ環基と同一の内容のものが挙げられる。
【0102】
ポリマー主鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、−N(R18)CO−結合又はN(R18)SO2−結合を有するアミド樹脂、−NHCONH−結合を有するウレイド樹脂、−NHCOO−結合を含有するウレタン樹脂等が挙げられる。
【0103】
アミド樹脂製造に供されるジアミン類とジカルボン酸類又はジスルホン酸類、ウレイド樹脂に用いられるジイソシアナート類、ウレタン樹脂に用いられるジオール類としては、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」第I章(株)培風舘刊(1986年)、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0104】
また、他のアミド結合を有するポリマーとして、下記一般式(VI)で示される繰り返し単位含有のポリマー、ポリアルキレンイミンのN−アシル化体又はポリビニルピロリドンとその誘導体が挙げられる。
【0105】
【化4】
【0106】
式(VI)中、Z1は−CO−、−SO2−又は−CS−を表す。R20は式(III)中のR0と同一の内容のものを表す。r1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す。r1は同じでも異なってもよい。pは2又は3の整数を表す。
【0107】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を含有するポリマーのうち、Z1が−CO−を表し、pが2を表すポリマーは、置換基を有していてもよいオキサゾリンを触媒の存在下で開環重合することにより得られる。触媒としては、例えば、硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸アルキルエステルなどの硫酸エステルやスルホン酸エステル;ヨウ化アルキル(例えばヨウ化メチル)などのハロゲン化アルキル;フリーデルクラフツ触媒のうち金属フッ素化物;硫酸、ヨウ化水素、p−トルエンスルホン酸などの酸や、これらの酸とオキザゾリンとの塩であるオキサゾリニウム塩などが使用できる。なお、このポリマーは単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、他のポリマーにこのポリマーがグラフトした共重合体であってもよい。
【0108】
オキサゾリンの具体例としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ジクロロメチル−2−オキサゾリン、2−トリクロロメチル−2−オキサゾリン、2−ペンタフルオロエチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−メトキシカルボニルエチル−2−オキサゾリン、2−(4−メチルフェニル)−2−オキサゾリン、2−(4−クロロフェニル)−2−オキサゾリンなどが挙げられる。好ましいオキサゾリンには、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリンなどが含まれる。このようなオキサゾリンのポリマーは一種又は二種以上使用できる。
【0109】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を有する他のポリマーについても、オキサゾリンの代わりにチアゾリン、4,5−ジヒドロ−1,3−オキサジン又は4,5−ジヒドロ−1,3−チアジンを用いて同様に得ることができる。
【0110】
ポリアルキレンイミンのN−アシル化体としては、カルボン酸ハライド類との高分子反応で得られる−N(CO−R21)−を含むカルボン酸アミド体、又はスルホニルハライド類との高分子反応で得られる−N(SO2−R21)−を含むスルホンアミド体(ここで、R21は上記式(VI)におけるR20と同義である)が挙げられる。
【0111】
また、ポリマーの側鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、少なくとも1種の上記特定の結合基を有する成分を主成分として含有するものが挙げられる。このような成分としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、ビニル酢酸アミド又は以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0112】
なお、以下の構造式における記号は次の内容を表す。
a1:−H又は−CH3
T0:−H、−CH3、−(CH2)2OCH3、又は−(CH2)2N(CH3)2
L0:―CxH2x+1、−(CH2)2OCH3、−(CH2)2N(CH3)2、ベンジル又は−(CH2)xOH
L1:−H、L0又は−(CH2)2CONH2
x:1〜4の整数
y:0又は1
z:0、1又は2
【0113】
【化5】
【0114】
【化6】
【0115】
一方、水酸基含有の有機ポリマーとしては、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には小竹無二雄監修「大有機化学19、天然高分子化合物I」朝倉書店刊(1960年)、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)等に記載のものが挙げられる。
【0116】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラカガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0117】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等)、アリルアルコール共重合体、水酸基を少なくとも1種含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体もしくは共重合体(エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、等)、水酸基を少なくとも1種含有するアクリルアミド又はメタクリルアミドのN−置換体の重合体もしくは共重合体(N−置換基として、例えば、モノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基、等)等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個の水酸基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0118】
上記の特定の結合基を有する有機ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは103〜4×105である。
【0119】
次に、本発明の一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)について説明する。
前記一般式(II)において、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、中でも、炭素数8以下の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R01、R02、R03およびR04は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0120】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0121】
N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、
【0122】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0123】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(K1CO−)におけるK1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0124】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0125】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0126】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0127】
Lは単結合又は有機連結基を表す。ここで、Lが有機連結基を表す場合、Lは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0128】
【化7】
【0129】
また、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は、炭素数1〜8の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。また、−CON(R05)2のように複数のR05を有する場合、R05は同一でも異なっていてもよく、更にR05同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R05はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R01、R02、R03およびR04がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0130】
R05としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
【0131】
また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
Wとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3 −NMe4、モルホリノ基等が好ましい。
【0132】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは200〜100000、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは500〜20000である。
【0133】
本発明に好適な有機ポリマー(B)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
【化8】
【0135】
本発明に係る有機ポリマー(B)は、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基の導入されたポリマーが合成できる。
【0136】
【化9】
【0137】
ここで式(i)及び(ii)において、R01〜R04、L、W、n及びmは、前記記一般式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0138】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)を合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0139】
有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B)を含む。以下、同様)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体を形成する場合に、有機ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーの割合は広い範囲で選択できるが、好ましくは(半)金属含有ポリマー/有機ポリマーの質量比で10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。この範囲において、親水性層の膜の強度、印刷時の湿し水に対する耐水性が良好となる。
【0140】
本発明の複合体を形成する親水性バインダーポリマーは、前記(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成した(半)金属含有ポリマーのヒドロキシ基と、有機ポリマー中の前記特定の結合基とが水素結合作用等により均一な有機、無機ハイブリッドを形成し、相分離することなくミクロ的に均質となる。(半)金属含有ぽりまーに炭化水素基が存在する場合にはその炭化水素基に起因して、有機ポリマーとの親和性がさらに向上するものと推定される。また、本発明の複合体は成膜性に優れている。
【0141】
本発明の複合体は、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合し、有機ポリマーと混合することにより製造するか、又は有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合することにより製造される。好ましくは、有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物をゾル−ゲル法により加水分解重縮合することにより、本発明の有機・無機ポリマー複合体を得ることができる。生成した有機・無機ポリマー複合体において、有機ポリマーは、(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成したゲルのマトリックス(すなわち無機(半)金属酸化物の三次元微細ネットワーク構造体)中に均一に分散している。
【0142】
上記ゾル−ゲル法は、従来公知のゾル−ゲル法を用いて行なうことができる。具体的には、「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(株)技術情報協会(刊)(1995年)、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書に詳細に記載の方法に従って実施できる。
【0143】
無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層用の塗布液は、水系溶媒が好ましく、更には塗液調整時の沈殿抑制による均一液化のために水溶性溶媒を併用する。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸メチル、エチレングリコールモノアセテート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0144】
更に、前記の一般式(III)で示される(半)金属化合物の加水分解及び共縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。
【0145】
触媒は、酸又は塩基性化合物をそのままか、あるいは水又はアルコール等の溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解及び重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
【0146】
酸性触媒又は塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、構造式RCOOHのRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0147】
その他、無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」培風館(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0148】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0149】
本発明の無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層は、親水性層塗布液を耐水性支持体上に、従来公知の塗布方法のいずれかを用いて塗布、乾燥することにより成膜される。
【0150】
形成される親水性層の膜厚は0.2〜10g/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜8g/m2である。この範囲内で均一で強度が充分な膜が作製される。
【0151】
(表面グラフト親水性層)
本発明においては、上記の親水性層表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層を設けることができる。このように表面グラフト親水性層を設けることによって、光熱変換層との密着性を損なうことなく親水性層の保水性を向上できる。
【0152】
表面グラフト親水性層では、少なくとも1つの親水性官能基を有する高分子化合物の末端が、平版印刷版の親水性層に直接又は他の結合用の高分子化合物(以下、この結合用の高分子化合物を特に「幹高分子化合物」と称することもある)を介して、化学的に結合している。
【0153】
上記のグラフト部を構成する親水性官能基を有する高分子化合物は、特に限定的ではないが、直鎖状高分子化合物であることが好ましい。親水性官能基としては、アミド基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸、ホスホン酸もしくはアミノ基又はそれらの塩、2−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はそのハロゲン化水素酸塩等が挙げられる。
【0154】
これらの親水性官能基は、上記グラフト部を構成する高分子化合物中に少なくとも1つ含有されていればよく、例えば、直鎖状高分子化合物の親水性層との結合部と反対側の末端に親水性官能基を有する場合や、直鎖状高分子が親水性モノマーを重合成分又は共重合成分として含有する場合等が挙げられる。
【0155】
本発明において用いることのできる親水性モノマーとしては、上記親水性官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。特に有用な親水性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、イタコン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン酸塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミドもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレートもしくは3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩等を挙げることができる。
【0156】
本発明の表面グラフト親水性層は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて容易に製造することができる。グラフト重合とは高分子鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子鎖が固体表面を形成しているときには表面グラフト重合と呼ばれる。本発明の表面グラフト親水性層は、親水性層表面上において表面グラフト重合を行うことにより容易に得ることができる。
【0157】
本発明の表面グラフト親水性層を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる、たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135に記載される、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法等の表面グラフト重合法、吸着技術便覧NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695に記載される、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法等が挙げられる。また、光グラフト重合法の具体的方法としては特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0158】
本発明の表面グラフト親水性層を作成する方法としては、これらの他に、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基などの反応性官能基を付与し、これと平版印刷版の親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成する方法を挙げることもできる。
【0159】
また、親水性層表面に化学的に結合されている幹高分子化合物と、該幹高分子化合物に高分子鎖の末端で結合されている親水性官能基を有する直鎖状高分子化合物とからなる親水性層を製造する場合には、親水性層表面の官能基とカップリング反応しうる官能基を幹高分子化合物の側鎖に付与し、グラフト鎖として親水性官能基を有する高分子化合物鎖を組み込んだグラフト型高分子化合物を合成し、この高分子と親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成することができる。かかる幹高分子化合物の具体例としては、前述の(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(A)又は(B)として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0160】
上記の光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法、カップリング法のうち、製造適性の点からはプラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法が特に優れている。
【0161】
具体的には、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY. Ikada et al., Macromolecules vol.19, page 1804 (1986)などの記載の方法にて作成することができる。親水性層表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることにより得ることができる。
【0162】
本発明の表面グラフト親水性層の膜厚は、好ましくは0.01〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.1〜5g/m2の範囲である。この範囲内で、本発明の効果を十分に発揮し、更に良好な耐刷性が得られるとともに、印刷物の細線再現性も良好であり、好ましい。
【0163】
本発明においては、耐水性支持体上に形成された親水性層表面の平滑性(表面グラフト親水性層がある場合はグラフト親水性層表面の平滑性)が、ベック平滑度で5000(秒/10ml)以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下が特に好ましい。ここでベック平滑度は、ベック平滑度試験機により測定することができ、高度に平滑に仕上げられた中央に穴のある円形のガラス板上に、試験片を一定圧力(1kg/cm2)で押しつけ、減圧下で一定量(10ml)の空気が、ガラス面と試験片との間を通過するのに要する時間(秒)で表される表面平滑性の一つの指標である。
【0164】
<光熱変換層>
本発明に用いられる光熱変換層は、印刷において画像部となるインキ受容性の層であり、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層であり、これらの機能を有する公知の光熱変換層が使用可能である。光熱変換材料としては、従来、レーザー光源を赤外線レーザーとした場合、赤外線吸収色素、赤外線吸収顔料、赤外線吸収性金属、赤外線吸収金属酸化物など書き込みのレーザーに使用する波長の光を吸収する各種の有機および無機材料が使用可能であることが知られている。これらの材料は単独膜の形態で、もしくはバインダー、添加剤など他の成分との混合膜の形態で使用される。単独膜の場合には、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛等の金属および合金や金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ハロゲン化物、有機色素などを蒸着法およびスパッタリング法等により支持体上に適用することで形成することができる。
【0165】
また、混合膜の場合には、光熱変換材料を所望により膜形成性を有するバインダーポリマーや他の成分とともに適当な溶媒或いは分散媒に溶解もしくは分散した塗布液を調整し、それを用いた塗布法により形成することができる。以下、混合膜の各構成成分について説明する。
【0166】
(光熱変換材料)
本発明に使用される光熱変換材料としては、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換し得る公知の有機或いは無機顔料、染料などの有機色素、金属或いはその酸化物などの化合物より適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、有機顔料としては酸性カーボンブラック、塩基性カーボンブラック、中性カーボンブラックなど各種カーボンブラック、分散性改良等のために表面修飾もしくは表面コートされた各種カーボンブラック、ニグロシン類、有機色素としては「赤外増感色素」(松岡著 Plenum Press, New York,NY (1990))、米国特許4、833、124号、ヨ−ロッパ特許公開321、923号、米国特許4、772、583号、米国特許4、942、141号、米国特許4、948、776号、米国特許4、948、777号、米国特許4、948、778号、米国特許4、950、639号、米国特許4、912、083号、米国特許4、952、552号、米国特許5、023、229号などに記載の各種化合物、金属もしくは金属酸化物としてはアルミニウム、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化チタン等、この他にポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなども使用可能である。光熱変換層を混合膜として形成する場合に、その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、5質量%〜50質量%、好ましくは8質量%〜45質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%である。
【0167】
(バインダー)
光熱変換層を混合膜として形成する場合に使用されるバインダーとしては、フィルム形成能を有し、光熱変換剤を溶解もしくは分散しうる公知のポリマーが使用される。これらの例としてはニトロセルロース、エチルセルロースなどのセルロース、セルロース誘導体類、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、イソプレン、スチレン−ブタジエンなどの各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル類の単独重合体および酢酸ビニル−塩化ビニルなどの共重合体、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合系各種ポリマーおよび、「J. Imaging Sci.,P59−64 ,30(2),(1986)(Frechetら)」や「Polymers in Electronics (Symposium Series,P11,242, T.Davidson,Ed., ACS Washington,DC(1984)(Ito,Willson)」、「Microelectronic Engineering, P3−10,13(1991)(E. Reichmanis,L.F.Thompson)」に記載のいわゆる「化学増幅系」に使用されるバインダー等が使用可能である。これら中でも、光熱変換層を架橋により硬膜するための架橋反応に用いることが可能な官能基を有するポリマーが好ましい。好ましい官能基としては、例えば、−OH、−SH、−NH2、−NH−、−CO−NH2、−CO−NH−、−O−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CO−O−、−CO−O−、−CS−OH、−CO−SH、−CO−OCO−、−SO3H、−SO2(O−)、−PO3H2、−PO(O−)2、−SO2−NH2、−SO2−NH−、−CO−CH2−CO−、−CH=CH−、−CH=CH2、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2や、以下に示す構造の官能基等が挙げられ、なかでも、特に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、重合性ビニル基が好ましい。
【0168】
【化10】
【0169】
光熱変換層の形成に用いられる好ましいバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を含有するモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、グリシジルメタアクリレート等のエポキシ基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、N−アルキルアクリルアミド、アクリルアミドの単独重合体もしくは共重合体、アミン類とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル又はアリルグリシジルとの反応物の単独重合体もしくは共重合体、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコールの単独重合体もしくは共重合体、ポリウレタン樹脂類、ポリウレア樹脂類、ポリアミド(ナイロン)樹脂類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、セルロース誘導体類等の縮合体が挙げられる。これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、20質量%〜90質量%、好ましくは25質量%〜80質量%、より好ましくは30質量%〜75質量%である。
【0170】
(添加剤)
光熱変換層を混合膜として形成する場合には、光熱変換剤とバインダー以外に添加剤を用いることが出来る。これらの添加剤は、光熱変換層の機械的強度を向上させたり、レーザー記録感度を向上させたり、光熱変換層中の分散物の分散性を向上させたり、親水性層などの隣接する層に対する密着性を向上させるなど種々の目的に応じて添加される。例えば、光熱変換層の機械的強度や耐薬品性を向上させるために、光熱変換層を架橋する手段が考えらる。架橋反応としては、熱または光による共有結合形成、又は、多価金属塩によるイオン結合形成が可能であり、本発明においては、公知の架橋剤による光熱変換層の硬膜が可能である。用い得る公知の架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能アミン化合物、ポリオール化合物、多官能カルボキシル化合物、アルデヒド化合物、多官能(メタ)アクリル化合物、多官能ビニル化合物、多官能メルカプト化合物、多価金属塩化合物、ポリアルコキシシラン化合物、ポリアルコキシチタン化合物、ポリアルコキシアルミニウム化合物、ポリメチロール化合物、ポリアルコキシメチル化合物等が挙げられ、公知の反応触媒を添加し、反応を促進することも可能である。その使用量は光熱変換層の塗布液中の総固形分質量に対して、0質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜35質量%である。
【0171】
レーザー記録感度を向上させるために加熱により分解しガスを発生する公知の化合物を添加することが考えられる、この場合には光熱変換層の急激な体積膨張によりレーザー記録感度が向上できる。これらの添加剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4、4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジアミドベンゼン等を使用することができる。また、加熱により分解し酸性化合物を生成する公知の化合物を添加剤として使用することが出来る。これらを化学増幅系のバインダーと併用することにより、光熱変換層の構成物質の分解温度を大きく低下させ、結果としてレーザー記録感度を向上させることが可能である。これらの添加剤の例としては、各種のヨードニウム塩、スルフォニウム塩、フォスフォニウムトシレート、オキシムスルフォネート、ジカルボジイミドスルフォネート、トリアジンなどを使用することができる。
【0172】
光熱変換剤にカーボンブラックなどの顔料を用いた場合には、顔料の分散度がレーザー記録感度に影響を与えることがあるため、各種の顔料分散剤を添加剤として使用することも好ましい。光熱変換層と親水性層との接着性を向上させるために、公知の密着改良剤(例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等)を添加しても良い。この他にも、塗布性を改良するための界面活性剤など各種の添加剤を目的に応じて使用することができる。
【0173】
光熱変換層を混合膜として形成する場合は、上記の各構成成分を適当な溶媒、分散媒に溶解または分散して、親水性層支持体上に塗布、乾燥することにより形成される。ここで用い得る溶媒、分散媒としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールメチルエチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0174】
(膜厚)
光熱変換層の膜厚は、単独膜の場合には蒸着法およびスパッタリング法等にて薄膜が形成できる。この場合の膜厚は50Åから1000Å、好ましくは100Åから800Åである。混合膜の場合の膜厚は0.05μmから10μm、好ましくは0.1μmから5μmである。光熱変換層の膜厚は、薄すぎても、厚すぎても、レーザー記録感度の低下など好ましくない結果を与える。
【0175】
<支持体>
本発明に用いる支持体としては、通常の印刷機にセットできる程度のたわみ性を有し、同時に印刷時にかかる荷重に耐えるものでなければならない。従って、代表的な支持体としては、コート紙、アルミニウムのような金属板、ポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックフィルム、ゴムあるいはそれらを複合させたものを挙げることができ、より好ましくはアルミニウム、アルミニウム含有(例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルなどの金属とのアルミニウムとの合金)合金およびプラスチックフィルムである。支持体の膜厚は25μmから3mm、好ましくは75μmから500μmが適当であるが、用いる支持体の種類と印刷条件により最適な厚さは変動する。一般には100μmから300μmが最も好ましい。
【0176】
本発明においては、支持体と親水性層間の接着性向上、印刷特性向上、熱エネルギーの熱伝導による散逸の防止等のために、支持体にコロナ処理等の表面処理を施したり、支持体と親水性層間との間に中間層を設けることができる。
本発明に用いられる中間層としては、例えば、特開昭60−22903号公報に開示されているような種々の感光性ポリマーを感光性樹脂層を積層する前に露光して硬化せしめたもの、特開昭62−50760号公報に開示されているエポキシ樹脂を熱硬化せしめたもの、特開昭63−133151号公報に開示されているゼラチンを硬膜せしめたもの、更に特開平3−200965号公報に開示されているウレタン樹脂とシランカップリング剤を用いたものや特開平3−273248号公報に開示されているウレタン樹脂を用いたもの等を挙げることができる。この他、ゼラチンまたはカゼインを硬膜させたものも有効である。
【0177】
更に、中間層を柔軟化させる目的で、前記の中間層中に、ガラス転移温度が室温以下であるポリウレタン、ポリアミド、スチレン/ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル/ブタジエンゴム、ポリイソプレン、アクリレートゴム、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリマーを添加しても良い。その添加割合は任意であり、フィルム層を形成できる範囲内であれば、添加剤だけでプライマー層を形成しても良い。また、これらのプライマー層には前記の目的に沿って、染料、pH指示薬、焼き出し剤、光重合開始剤、接着助剤(例えば、重合性モノマー、ジアゾ樹脂、シランカップリング剤等)、顔料、シリカ粉末や酸化チタン粉末等の添加物を含有させることもできる。また、塗布後、露光によって硬化させることもできる。一般に、プライマー層の塗布量は乾燥質量で0.1〜10g/m2の範囲が適当であり、好ましくは0.3〜8g/m2であり、より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0178】
また、本発明の支持体にポリエステル等の非導電性のものを用いる場合、感熱層と支持体の密着性向上及び帯電防止を目的として、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層より成る中間層を設けるのが好ましい。
【0179】
上記中間層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、及び/又はこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOが好ましい。
異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlまたはIn、SnO2に対してSb、Nbまたはハロゲン元素、In2O3に対してSnなどの異種原子を30モル%以下、好ましくは10モル%以下の量をドープしたものを挙げることができる。
金属酸化物粒子は、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0180】
中間層に用いることができるマット剤としては、好ましくは平均粒径が0.5〜20μm、より好ましくは平均粒径が1.0〜15μmの粒径を持つ無機又は有機の粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の金属塩等が挙げられる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン及びそれらの共重合体の架橋粒子が挙げられる。
マット剤は、中間層中に1〜30質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0181】
中間層に用いることができるポリマーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の合成ポリマー等が挙げられる。
ポリマーは、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0182】
また、本発明で使用する支持体は、ブロッキングを防止する観点から、支持体の裏面の最大粗さ深度(Rt)が少なくとも、1.2μm以上であることが好ましく、さらに、支持体の裏面(即ち、本発明の平版印刷版原版の裏面)が本発明の平版印刷版原版の表面上を滑る時の動摩擦係数(μk)が2.6以下であることが好ましい。
このため、支持体の裏面には、前述の中間層において示したのと同様なマット剤を含有するバックコート層を設けたり、サンドブラスト処理を施す等による粗面化が成されることが好ましい。
【0183】
また金属支持体の場合は、支持体への熱拡散を抑制し高感度化するための下塗りとして断熱層を設けることができる。このような断熱層は、主成分として有機又は無機の樹脂を含有する。有機又は無機の樹脂は、公知の疎水性高分子、親水性高分子、親水性高分子を架橋したもの、ヒドロキシ基やアルコキシ基を有するアルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウムなどのゾルゲル変換を行う化合物からの無機高分子等から広く選択することができる。
【0184】
<その他の層>
本発明においては、光熱変換層の表面保護を目的として、光熱変換層上に保護層を設けても良い。保護層としては、前記光熱変換層に使用できるバインダーと同様の親油性ポリマーが画像部のインキ受容性向上の観点で好ましく、使用可能である。水または湿し水により容易に除去可能な親水性ポリマーも使用可能であり、例えば、ポリビニルアルコール(ケン化度60%以上のポリビニルアセテート)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホスホン酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体及びその塩、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらのポリマーを適当な溶剤に溶解し、ポリマー溶液を塗布、乾燥することにより、保護層を設けることができる。この場合の保護層の乾燥質量は、0.01〜5g/m2が好ましく、より好ましくは、0.05〜2g/m2である。
【0185】
上記保護層は他の成分として、種々の界面活性剤を含有してもよい。使用できる界面活性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が挙げられる。これらの具体例としては、前記した光熱変換層に用いられる界面活性剤と同じものが挙げられる。界面活性剤の添加量は、全固形分当たり、好ましくは0.01〜1質量%であり、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0186】
保護層はまた、特開2001−341448号記載のフッ素原子及び/又はケイ素原子を含有化合物、例えば、水溶性又は水分散性のフッ素系界面活性剤や水溶性又は水分散性のシリコーンオイルを含有することができる。これらの保護層の全固形分中のにおける割合は、0.05〜5質量%である。この使用割合の範囲において、積み重ね保存時の印刷用原版間のくっつきが防止できる。
【0187】
上記成分のほか、必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の低級多価アルコールも使用することができる。これら湿潤剤の使用量は保護層中に0.1〜5.0質量%となる量が適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0質量%となる量である。以上の他に本発明の平版印刷版原版の保護層の塗布液には、防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸ナトリウム等を0.005〜2.0質量%の範囲で添加できる。また、塗布液には消泡剤を添加することもできる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含まれ、その添加量は0.0001〜0.1質量%の範囲が好ましい。
【0188】
本発明の平版印刷用原版は、その最上層(光熱変換層または保護層)の表面の動摩擦係数が、2.5(μk)以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜1.2(μk)である。ここで、表面の動摩擦係数は、標準ASTMD1894に従った測定法により測定したものである。すなわち下にある材料の表面が上にある材料の裏面と接触しているように平版印刷版原版が置かれる。該材料の裏面は支持体に対して親水性層、光熱変換層及び必要に応じて保護層が設けられていない面を意味し、表面は支持体に対して親水性層及び光熱変換層、更に必要に応じて保護層が設けられている面を意味する。動摩擦係数については3000枚積み重ね35℃75%の温湿度で3日間放置した後、一番下のサンプルを測定した。
【0189】
この数値内の動摩擦係数に調整することにより、長期積み重ね保存時の平版印刷版用原版間のくっつきを防止するとともに、製版装置内における良好な搬送性を可能にすることができる。これらは、前記の使用材料の適宜の組み合わせによって行われる。
【0190】
<製版方法>
本発明の平版印刷版原版を製版する際、記録に用いられるレーザー光エネルギーが、本発明の平版印刷版原版の光熱変換層において吸収されて熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーにより光熱変換層の一部又は全体において、燃焼、融解、分解、気化、爆発等の化学反応や物理変化が引き起こされ、結果として光熱変換層と親水性層間の密着性が低下する。レーザーを照射した部分においてのみ、このような密着性の低下が生じるため、対応する部分の光熱変換層を選択的に容易に除去することが可能となり、除去された部分が親水性領域となり非画像部を形成する。
【0191】
本発明においては平版印刷版原版を露光するのにレーザー光が使用される。使用されるレーザーは親水性層が除去されるのに十分な密着力の低下が起きるのに必要な露光量を与えるものであれば特に制限はなく、Arレーザー、炭酸ガスレーザーのごときガスレーザー、YAGレーザーのような固体レーザー、そして半導体レーザーなどが使用できる。通常、出力が50mWクラス以上のレーザーが必要となる。保守性、価格などの実用的な面からは、半導体レーザーおよび半導体励起の固体レーザー(YAGレーザーなど)が好適に使用される。これらのレーザーの記録波長は赤外線の波長領域であり、800nmから1100nmの発振波長を利用することが多い。また、特開平6−186750号公報に記載されている如きイメージング装置を用いて露光することも可能である。
【0192】
上記の方法で露光された本発明の平版印刷版原版は、レーザー露光中にレーザー露光部(非画像部)の光熱変換層が除去される構成であってもよく、さらに、必要な場合は、レーザー露光後に、レーザー露光部(非画像部)の光熱変換層が除去される工程を伴う構成であってもよい。レーザー露光部の光熱変換層の除去(現像処理)は、例えば、吸引、粘着シートの圧着・剥離、処理液の存在下又は非存在下において、現像用パッドや現像用ブラシ等の擦り部材により版面を擦ることにより実施される。本発明において使用される処理液としては、安全性が良好で、引火性が低いこと、及び親水性層表面の親水性を損なわないことなどを要求されるため、水または水を主成分とする水溶液が好ましく、単に水(水道水、純水、蒸留水等)や界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系)の水溶液等が一般的に使用可能である。
【0193】
また、現像性向上のために有機溶剤を使用することも可能であり、処理液に使用可能な溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、またはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、またはハロゲン化炭化水素(トリクレン等)や、下記の極性溶剤が例示される。例えば、・アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等);・ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等);・エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート等);・その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等)などが挙げられる。
【0194】
上記有機溶剤系処理液に水を添加したり、上記有機溶剤を界面活性剤等を用いて水に可溶化したものも使用可能であり、処理液に、溶剤を含有する場合は、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。また、処理液に、アルカリ性剤(例えば、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、ケイ酸塩類等)又は酸性剤(例えば、リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、ホウ酸、アミノ酸類等)を添加したものも使用可能である。処理液の温度は、任意の温度であるが、好ましくは10℃〜50℃の範囲で使用される。
【0195】
レーザー露光部の光熱変換層の除去は、上記処理液を使用するものの他、例えば、レーザー露光後の印刷版を印刷機の版胴上に装着し、印刷機上における湿し水及び/又はインクの付けローラーと印刷版との接触により実施する、所謂、機上現像とすることも可能である。このようにして、平版印刷版原版の非画像部における光熱変換層が除去され、得られた平版印刷版はインクを適用され、印刷に用いられる。
【0196】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0197】
実施例1
[支持体の作製]
両面にコロナ処理を施した厚さ180μmのポリエチレンテレフタレートの片面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のプライマー層を形成した。
【0198】
(プライマー層塗布液1)
・ポリエステル系ラテックス(ペスレジンA−520、
高松油脂(株)製、固形分30質量%) 8g
・メラミン化合物(スミテックスレジンM−3、住友化学工業(株)製、
有効成分濃度:80質量%) 6g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 4.8g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、
エマルゲン911 花王(株)製) 0.7g
・ポリスチレン(Nipol UFN1008、
日本ゼオン(株)製、固形分20質量%) 0.04g
・蒸留水 81g
【0199】
次いで、プライマー層と反対の面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のバック層を形成した。
【0200】
(バック層塗布液)
・アクリル樹脂水分散物(ジュリマーET−410、
日本純薬(株)製、固形分20質量%) 10g
・酸化スズ−酸化アンチモン水分散物(平均粒径:0.1μm、17質量%)90g
・メラミン化合物(スミテックスレジンM−3、
住友化学工業(株)製、有効成分濃度:80質量%) 0.2g
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩水溶液(サンデッドBL、
三洋化成工業(株)製、44質量%) 0.6g
・蒸留水 45g
【0201】
さらに、バック層の上に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(170℃、30秒)し、乾燥塗布量0.05g/m2の保護層を形成し支持体を作製した。
【0202】
(保護層塗布液)
・ポリオレフィン系ラテックス(ケミパールS−120、
三井化学(株)製、固形分27質量%) 6.2g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 1.2g
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩水溶液(サンデッドBL、
三洋化成工業(株)製、44質量%) 0.6g
・エポキシ化合物(デナコールEX−614B、
ナガセ化成(株)製、有効成分濃度:100質量%) 0.6g
・蒸留水 90g
【0203】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物1Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で10分間分散した後、更に、組成物1Bを33g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスヒーズを濾別して親水性層塗布液を得た。
【0204】
(組成物1A)
・チタン酸カリウムウィスカー(ティスモN、大塚化学(株)製、平均直径
0.4μm、平均長さ15μm) 31g
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA117)5%水溶液 60g
・コロイダルシリカ20%水溶液(日産化学工業(株)製スノーテックスC)60g
【0205】
(組成物1B)
・テトラエトキシシラン 92g
・エタノール 163g
・水 163g
・硝酸 0.1g
【0206】
[親水性層の形成]
次に、上記親水性層塗布液を前記プライマー層上に塗布し、加熱(140℃、5分)、乾燥することにより、乾燥重量2g/m2の親水性層を形成した。
【0207】
[カーボンブラック分散液の作成]
下記の混合液をペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で30分間分散した後、ガラスビーズをろ別して、カーボンブラック分散液を作成した。
【0208】
(カーボンブラック分散液)
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 4.0g
・ソルスパースS20000(ICI社製) 0.27g
・ソルスパースS12000(ICI社製) 0.22g
・メチルエチルケトン 20g
・ガラスビーズ 120g
【0209】
[光熱変換層の形成]
前記の親水性層上に、下記の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥重量1g/m2の光熱変換層を形成した。
【0210】
(光熱変換層塗布液1)
・上記カーボンブラック分散液 20g
・末端−OH基のポリウレタン樹脂(イソホロンジイソシアネート/
ブタンジオール=100/102(重量比)の縮合反応物) 10g
・チタボンド50(日本曹達(株)製、チタンジイソプロポキサイドビス
(2,4−ペンタジオネート)の約75%イソプロパノール溶液)6.7g
・メチルエチルケトン 45g
・プロピレングルコールモノメチルエーテル 45g
【0211】
[製版及び印刷]
このようにして得られた平版印刷用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSにて、版面エネルギー300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール(容量比1/89/10)からなる湿し水と、大日本インキ化学工業(株)製ジオスG墨インキを用い、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行ったところ、問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0212】
比較例1
親水性層塗布液の作製を下記のように変えた。それ以外は実施例1と同様にして、比較用の平版印刷用原版を作製した。
【0213】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物2Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で5分間分散した後、更に、実施例1に記載の組成物1Bを15g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスビーズを濾別して親水性層用分散組成物を得た。
【0214】
(組成物2A)
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA117)5%水溶液 70g
・コロイダルシリカ20%水溶液(日産化学工業(株)製スノーテックスC)55g
【0215】
この平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、印刷物の非画像部の汚れは実用上問題のないレベルであったが、刷り出しから、細線や細文字の欠落が発生しており、良好な印刷物を得ることができなかった。
【0216】
実施例2
実施例1で親水性層を形成した後、親水性層表面を平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記条件で酸素グロー処理を行った。
【0217】
酸素グロー処理条件
(初期真空) 1.2×10−3Pa
(アルゴン圧力) 0.9Pa
(RFグロー) 1.4KW
(処理時間) 60sec
【0218】
次に、グロー処理した上記親水性層を有する支持体を窒素バブルしたアクリル酸水溶液(20%)に60℃にて4時間浸漬した。浸漬した膜を流水で10分間洗浄することによって、親水性層表面にアクリル酸がグラフトポリマー化した表面グラフト親水性層を形成した。表面グラフト親水性層の質量(グラフト量)を重量法で測定したところ、1.25g/m2であった。
それ以外は、実施例1と同様に、平版印刷用原版を作製し、製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0219】
実施例3
親水性層塗布液の作製において、ポリビニルアルコールを下記により合成した親水性有機ポリマー(1)に変えた以外は実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0220】
[親水性有機ポリマー(1)の合成]
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、及びジメチルホルムアミド51.3gを入れて、窒素気流下で65℃まで加熱し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで冷却して、酢酸エチル1.5リットル中に投入したところ固体が析出した。その後、ろ過を行い、十分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により重量平均分子量は5000であることが判った。
【0221】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0222】
実施例4〜10
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表1に示した針状フィラーに変えた以外は実施例1と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0223】
【表1】
【0224】
実施例11〜17
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表1に示した針状フィラーに変えた以外は実施例3と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0225】
実施例18〜23
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表2に示した多孔性フィラーに変えた以外は実施例1と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0226】
【表2】
【0227】
実施例24〜29
親水性層塗布液の作製において、チタン酸カリウムウィスカーを表2に示した多孔性フィラーに変えた以外は実施例3と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0228】
実施例30
光熱変換層の形成に、下記塗布液を用いる以外は、実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0229】
(光熱変換層塗布液2)
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1009、ジャパンエポキシレジン(株)製) 8.0g
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン(株)製) 2.0g
・下記赤外線吸収染料(A) 2.0g
・エチレングリコールモノメチルエーテル 165g
・メチルエチルケトン 85g
【0230】
【化11】
【0231】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びべ夕画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0232】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な機上現像性を有し、印刷における汚れ難さ及び細小網点や細線の強度等の耐刷性が改良されたポジ型平版印刷用原版を提供することができる。
Claims (1)
- 支持体上に親水性層及び光熱変換層をこの順に有する平版印刷用原版であって、前記親水性層が、針状フィラー及び多孔質フィラーよりなる群から選ばれる少なくとも一種の特定形状フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有し、前記光熱変換層がレーザー光を熱に変換する化合物を含有し、レーザー露光部の光熱変換層を除去して画像形成するポジ型平版印刷用原版。
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---|---|---|---|---|
WO2008105339A1 (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-04 | Konica Minolta Medical & Graphic, Inc. | 印刷版材料 |
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- 2002-07-29 JP JP2002220038A patent/JP2004058458A/ja active Pending
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