JP2004034401A - 平版印刷用原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、耐刷性、防汚れ性および画像再現性に優れ、簡易な現像処理、機上現像処理により製版可能な平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、並びに、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層をこの順に有することを特徴とする平版印刷用原版。
【解決手段】支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、並びに、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層をこの順に有することを特徴とする平版印刷用原版。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷用原版に関し、より詳しくは、ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、耐傷性、耐刷性および画像再現性に優れた平版印刷用原版に関する。さらには、簡易な現像処理、又は、印刷機上における現像処理により製版することが可能な平版印刷用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷用原版としては、従来から、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版が広く用いられている。その製版方法としては、予め画像情報が記録されたリスフィルムを介して露光を行なうことにより、原版上に画像様の露光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除去する方法がある。
【0003】
従来のPS版に於ける製版工程は、露光の後、非画像部を溶解除去する操作が必要であり、このような付加的な湿式の処理を不要化又は簡易化することが望まれている。この要望に応じた簡易な製版方法の一つとして、印刷用原版の非画像部の除去を通常の印刷過程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で現像し最終的な印刷版を得る、所謂、機上現像方式と呼ばれる平版印刷版の製版方式が挙げられる。
【0004】
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水やインク溶剤に可溶な画像記録層を使用する方法、印刷機中の圧胴やブランケット胴との接触による力学的除去を行う方法等が拳げられる。このような機上現像方式の大きな問題は、記録層が露光後も定着されないため、所望されない露光や過熱により記録層が影響を受ける虞があり、これを防止するため、例えば、印刷機に装着するまでの間、原版を完全に遮光状態又は恒温条件で保存することが必要であった。
【0005】
一方、この分野における近年のもう一つの動向としては、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及してきていることで、このようなディジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用化されるようになってきている。これに伴い、レーザ光のような高収斂性の輻射線にディジタル化された画像情報を担持させ、この光で原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目され、この目的に適応した印刷用原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0006】
デジタル化技術に組み込みやすい走査露光による印刷版の製版方法として、最近、赤外領域に吸収をもつ半導体レーザー、YAGレーザー等の固体レーザーで高出力のものが安価に入手できるようになってきたことから、特に、これらのレーザーを画像記録手段として用いる製版方法が有望視されるようになっている。このような製版方法では、露光領域において、瞬間的な露光時間の間に大量の光エネルギーが集中照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換し、その熱により記録層の物性に変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。つまり、画像情報はレーザー光などの光エネルギーによって入力されるが、画像記録は熱エネルギーによる反応によって記録される。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼び、光エネルギーを熱エネルギーに変えることを光熱変換と呼んでいる。
【0007】
ヒートモード記録手段を用いる製版方法の大きな長所は、露光前には、室内光に対して安定であり、露光後の画像定着処理が必須ではない点である。従って、例えば、ヒートモード露光により不溶化若しくは可溶化する画像記録層を用い、露光した画像記録層を像様に除去して印刷版とする製版工程を機上現像方式で行えば、現像(非画像部の除去)は、画像露光後に、ある時間、室内の環境光に暴露されても、画像が影響を受けないような印刷システムが可能となる。
【0008】
具体的には、ヒートモード記録層の上層に親水性層を設け、画像状にヒートモード露光し、記録層をアブレーションさせ、必要に応じて湿式処理により、露光部の親水性層を除去する方法が提案されている。このような平版印刷用原版としては、例えば、カーボンブラック等のレーザー光吸収剤およびニトロセルロース等の自己酸化性のバインダーを含有した光熱変換層上に、親水性層を設けた構成が開示されており、この親水性層として、W098/40212号及びW098/34796号公報には、遷移金属酸化物コロイドを含む親水性層が、WO94/18005号公報には、水酸基を有する親水性ポリマーを加水分解テトラメチルオルトシリケート等の架橋剤で硬膜した親水性層が、特開平6−199064号公報には、水に不溶化したポリビニルアルコールよりなる親水性層が、特開平8−282143号公報には、親水性ポリマーと疎水性ポリマーラテックスを架橋剤により架橋した親水性層が、それぞれ記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの親水性層は、膜の強度と保水性の両立が不充分であり、印刷において、耐刷性、非画像部の汚れ性や画像再現性を満足するものではなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、耐刷性、防汚れ性および画像再現性に優れた平版印刷用原版を提供することであり、さらには、簡易な現像処理、または、印刷機上における現像処理により容易に製版可能な平版印刷用原版を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、光熱変換層及び親水性層をこの順に有する平版印刷用原版において、親水性層にフィラーを加えて親水性層表面を粗面にすることが上記課題解決に有効であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、並びに、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層をこの順に有することを特徴とする平版印刷用原版。
【0013】
(2)支持体上に、光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層と、親水性ポリマーを含有する親水性層とをこの順に備え、赤外線レーザー光の照射露光及び露光部の親水性層の除去によりネガ型画像が形成される平版印刷用原版において、前記親水性層が、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有するものであることを特徴とする平版印刷用原版。
【0014】
(3)フィラーが無機物を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の平版印刷用原版。
【0015】
(4)前記親水性バインダーポリマーが、ゼラチンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0016】
(5)親水性バインダーポリマーが、金属原子及び半金属原子から選ばれた少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、該ポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び下記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)から選ばれた少なくとも一つの有機ポリマーとの複合体であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0017】
【化1】
【0018】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0019】
(6)親水性層の表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層が設けられていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0020】
(7)親水性官能基を有する高分子化合物が、該高分子化合物鎖の末端で、直接、又は親水性層に化学的に結合している他の結合用高分子化合物を介して、親水性層に結合している直鎖状高分子化合物であることを特徴とする前記(6)記載の平版印刷用原版。
【0021】
(8)金属原子及び半金属原子から選ばれた少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有するポリマーが、下記一般式(III)で示される少なくとも1種の化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0022】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0023】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0024】
(9)支持体上に、光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層と、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層とをこの順に有する平版印刷用原版に、赤外線レーザー光を照射露光して露光部の親水性層を除去するか、又は、赤外線レーザー光を照射露光した後に露光部の親水性層を除去して、ネガ型画像を形成することを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【0025】
上記発明は、鋭意検討の結果、支持体上に光熱変換層及び親水性層をこの順に有する層構成の平版印刷用原版において、親水性層表面の表面形状を微細構造に制御することが目的達成に効果があり、その手段として、親水性層へのフィラーの添加が特に有効であることを見出したことに基づいている。このフィラーが親水性層に微細な凹凸構造を形成することにより、親水性層表面の印刷時の保水性が十分なレベルに向上して汚れ難さが良化するためと考えられる。
さらに、親水性層へのフィラー添加により、親水性層の膜強度が増大し、耐刷性が向上する。また、親水性層の保水性と膜強度の両立の結果として、レーザー照射部の細線の直線性や網点の真円性が向上し、画像再現性が向上する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、%は特に断りのない限り、質量%を示す。
本発明の平版印刷用原版は、支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、及び、フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有含有する親水性層をこの順に有する。
本発明において、「この順に有する」とは、支持体上に光熱変換層と親水性層とがこの順に設けられていることを指し、必要に応じて公知の他の層、例えば、中間層、表面保護層、バックコート層(単にバック層と呼ぶことがある)などを設ける態様を包含するものである。
【0027】
[親水性層]
本発明の親水性層は、フィラーを分散又は溶解した親水性バインダーポリマーを硬化して得られる、実質的に水不溶性の硬化膜である。この親水性層は、必要に応じて、架橋剤(又は硬化剤)や他のポリマーを含有していてもよい。
【0028】
本発明の親水性層には、少なくとも1種のフィラーが含有される。かかるフィラーとしては、無機フィラー、有機フィラー、無機−有機複合フィラー等のいずれでもよく、またこれらの内の2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは無機物を含有するフィラーである。
【0029】
無機フィラーとしては、金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、硝子、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。好ましくは、硝子、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0030】
有機フィラーとしては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の樹脂粒子であり、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。
【0031】
無機−有機複合フィラーとしては、例えば、上記有機フィラーと無機フィラーの複合化物が挙げられ、無機フィラーとしては、金属粉体、金属化合物(例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物及びこれらの複合化物等)の粒子が挙げられ、好ましくは酸化物及び硫化物等であり、より好ましくはガラス、SiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、SnO2、ZnS、CuS等の粒子が挙げられる。
【0032】
フィラーの大きさは、平均粒子径が0.01〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が0.03〜20μm、更に好ましくは、平均粒子径が0.05〜10μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。
【0033】
親水性バインダーポリマーと全フィラー成分の混合比(質量比)は、バインダーポリマー/全フィラーとして、好ましくは80/20〜5/95、より好ましくは70/30〜5/95、更に好ましくは60/40〜5/95である。
【0034】
次に本発明の親水性層に供される親水性バインダーポリマーについて説明する。
本発明の親水性バインダーポリマーは公知のものを好適に用いることができるが、特に好ましい態様として、下記(1)及び(2)が挙げられる。
【0035】
(1)ゼラチンを主成分とするもの(以下、「ゼラチン系バインダー」と称することもある)。
【0036】
(2)金属原子及び半金属原子から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び上記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)よりなる群から選ばれる少なくとも一つの有機ポリマーとの複合ポリマーを主成分とするもの(以下、「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」と称することもある)。
【0037】
以下、(1)及び(2)について、詳細に説明する。
【0038】
(1)「ゼラチン系バインダー」
このゼラチン系バインダーでは、親水性バインダーポリマーとして、ゼラチンが用いられる。ゼラチンを用いることにより、親水性層用分散物の分散が容易となり、本発明に供されるフィラーの均一分散性が良好となる。
【0039】
本発明に供されるゼラチンとは、誘導タンパク質の一種であり、コラーゲンから製造されるゼラチンと称されるものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、淡色、透明、無味、無臭の外観を示すものである。更には、写真乳剤用ゼラチンが、水溶液とした場合の粘度、ゲルのゼリー強度等の物性が一定の範囲内にあることからより好ましい。
【0040】
また、ゼラチン硬化性化合物の併用により、親水性層を硬化して、耐水性が良好なものとなる。
【0041】
ゼラチン硬化性化合物としては、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、T. H. James 「The Theory of the Photographic Process」第2章 セクション III、Macmillan Publishing Co. Inc.(1977年刊)、リサーチ・ディスクロージャー誌 No.17643, P26 (1970年12月発行)等に記載されている。好ましくは、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒドのジアルデヒド類、ジケトン類(例えば、2,3−ブタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン、1,2−シクロペンタンジオン等)、電子吸引基を隣接結合した二重結合を2個以上有する活性オレフィン化合物等が挙げられる。
【0042】
ゼラチン硬化性化合物は更に好ましくは、一般式(V)で示される二重結合基を分子中に2個以上含有する化合物である。
【0043】
一般式(V) CH2=CH−W0−
【0044】
式(V)中、W0は、―SO2−、−OSO2−、−CONR35−又は−SO2NR35−を表す。但し、R35は、水素原子又は炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
【0045】
式(V)において、好ましくはR35は、水素原子又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチロール基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−カルボキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表し、W0は、好ましくは−SO2−を表す。
【0046】
具体的には、例えば、レゾルシノールビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホニル)−m−キシレン、ビス(ビニルスルホニルアルキル)エーテルあるいはアミン、1,3,5−トリス(ビニルスルホニル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアクリルアミド、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、N,N′−ビスマレイミド類等が挙げられる。
【0047】
ゼラチン硬化性化合物は、ゼラチン100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。より好ましくは、0.8〜10質量部である。この範囲内において、得られた親水性層は膜強度が保持され、優れた耐水性を示すと同時に、親水性を疎害しない。
【0048】
更に、本発明のゼラチン系バインダーは、他のポリマーとして、特定の置換基からなるシリル官能基で変性された親水性樹脂(以下、「親水性樹脂(C)」と称することもある)を含有することが好ましい。好ましい親水性樹脂(C)としては、下記一般式(I)で示されるシリル官能基で変性された親水性樹脂が挙げられる。
【0049】
一般式(I) −Si(R10)j(OX)3−j
【0050】
式(I)中、R10は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Xは炭素数1〜12の脂肪族基を表す。jは0、1又は2を表す。より好ましくは0又は1を表す。
【0051】
式(I)においてR10が示す好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、3,6−ジオキソヘプチル基、3−スルホプロピル基、2−カルボキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、トリフロロエチル基等)、炭素数3〜12の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基、カルボキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基、カルボキシメチルフェニル基等)等が挙げられる。
【0052】
式(I)におけるXは、炭素数1〜12の脂肪族基を表す。好ましくは炭素数1〜8の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクテル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3,6−ジオキサペプチル基、2−オキソブチル基等)、炭素数3〜8の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロピル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等)が挙げられる。Xのより好ましい脂肪族基としては、炭素数1〜4の置換されてもよいアルキル基が挙げられる。
【0053】
一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する有機ポリマーは公知の方法で合成することができる。例えば、「反応性ポリマーの合成と応用」(株)シーエムシー刊(1989年)、特公昭46−30711号、特開昭5−32931号等に記載の方法に従って、ポリマー中のヒドロキシ基をシリル官能性基に変性することにより容易に得られる。ヒドロキシ基含有樹脂としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)、小竹無二雄監修「大有機化学第19巻:天然高分子化合物I」朝倉書店(1960年)等に記載のものが挙げられる。
【0054】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トランガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0055】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール〔ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等〕、アリルアルコール共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体〔エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等〕、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリルアミドもしくはメタクリルアミドのN−置換体の重合体又は共重合体〔N−置換基として、例えばモノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基等〕等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個のヒドロキシ基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0056】
親水性樹脂(C)の質量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは5×103〜4×105である。親水性樹脂(C)におけるシリル官能性基の含有量は、シリル官能性基を有する単位成分として、通常0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.2〜15mol%である。親水性樹脂(C)が多糖、蛋白質の場合には、単位成分はその構成単糖、アミノ酸を指す。但し、これら単位成分はシリル官能性基を複数有していてもよい。
【0057】
該官能性基は、重合体の繰り返し単位中の側鎖または重合体主鎖の末端に直接結合してもよいし、連結基を介して結合してもよい。かかる連結基としては、いずれの結合基でもよいが、例えば具体的に挙げるとすれば、−O−、−CR31R32−〔ここで、R31及びR32は同じでも異ってもよく、各々水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−OH基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、プロピル基、ブチル基、等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等)、フェニル基等を表す〕、−S−、−NR33−〔ここでR33は水素原子又は炭化水素基{炭化水素基として具体的には炭素数1〜8の炭化水素基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基等)が挙げられる}を表す〕、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONR33−、−SO2NR33−、−SO2−、−NHCONH−、−NHCOO−、−NHSO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、等の結合基の単独又はこれらの2以上の組合せにより構成された連結基等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する親水性樹脂(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの親水性樹脂(C)を用いることにより、塗膜を形成後の加熱乾燥の工程で[−Si(R10)j(OX)3−j]基の縮合反応により容易に式(IV)で示されるシロキサン結合を形成し、樹脂間の橋架けが起こり、膜を硬化して親水性層の膜強度が充分に保持される。本発明の親水性層の表面は充分に親水性であると同時に、下層の光熱変換層との密着性が極めて良好となる。
【0059】
【化2】
【0060】
更に、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、平均粒子径5〜50nmの無機顔料超微粒子を併用することが好ましい。
このコロイド状無機顔料超微粒子としては、従来公知の化合物が挙げられる。好ましくは、シリカゾル、アルミナゾル、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムである。より好ましくは、シリカゾル及び/又はアルミナゾルである。
【0061】
また本発明において、フィラーと無機顔料超微粒子の存在割合は40〜70対60〜30の質量比であり、好ましくは45〜60対55〜40質量比である。使用割合をこの範囲内に調整することにより、親水性層の膜強度が十分に保持されるとともに、印刷版としての保水性と耐刷性が良好なものとなる。
【0062】
その他、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、前記の山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」等に記載されている化合物を用いることができる。
【0063】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0064】
また、本発明のゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、親水性層塗布分散物の塗布性を良好とするために、界面調節剤(製面剤)、消泡剤、膜pHを調整するための緩衝剤等の各種添加剤を併用してもよい。
【0065】
本発明におけるゼラチン系バインダーを用いた親水性層の厚さは、1m2当たりの親水性層組成物の塗布量(乾燥後)で示して、0.5〜30g程度とすることが好ましい。
【0066】
(2)「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」
この無機−有機の複合ポリマー系バインダーでは、親水性バインダーポリマーとして、金属原子及び/又は半金属原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有するポリマー(以下、「(半)金属含有ポリマー」と称することもある)と、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び下記一般式(II)で示される重合体主鎖の末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーとの複合体である。
【0067】
【化3】
【0068】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0069】
「(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体」とは、ゾル状物質及びゲル状物質を含む意味に用いる。(半)金属含有ポリマーは「酸素原子−金属原子又は半金属原子−酸素原子」から成る結合を主として含有するポリマーを示す。ここで、(半)金属含有ポリマーは、金属原子及び半金属原子の両方を含有していてもよい。好ましくは、半金属原子のみを含有するポリマー、半金属原子と金属原子とを含有するポリマーである。
【0070】
(半)金属含有ポリマーは、下記一般式(III)で示される化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることが好ましい。ここで、加水分解重縮合とは、反応性基が酸性ないし塩基性条件下で、加水分解、縮合を繰り返し、重合していく反応である。
【0071】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0072】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0073】
上記化合物は、単独または2種以上を組み合わせて(半)金属含有ポリマーの製造に用いられる。
【0074】
以下に一般式(III)で示される(半)金属化合物について詳しく説明する。
一般式(III)中のR0は、好ましくは、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基{例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換され得る基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR′基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″)(R″は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表し、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3基、−CONHR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい)}、
【0075】
炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されていてもよい)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、
【0076】
又は、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えばヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表す。
【0077】
反応性基Yは、好ましくは、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す)、−OR11基、−OCOR12基、−CH(COR13)(COR14)基、−CH(COR13)(COOR14)基又は−N(R15)(R16)基を表す。
【0078】
−OR11基において、R11は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキシ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表す。
【0079】
−OCOR12基において、R12は、R11と同様の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R0中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。
【0080】
−CH(COR13)(COR14)基及び−CH(COR13)(COOR14)基において、R13は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等)を表し、R14は炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、カルボキシベンジル基、クロロベンジル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、カルボキシフェニル基、ジエトキシフェニル基等)を表す。
【0081】
また、−N(R15)(R16)基において、R15及びR16は、互いに同じでも異なってもよく、各々、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR11基のR11と同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは、R15とR16の炭素数の総和が12ケ以内である。
【0082】
(半)金属M0は、好ましくは、遷移金属、希土類金属、周期表III〜V族の金属又は半金属が挙げられる。より好ましくはAl、Si、Sn、Ge、Ti、Zr等が挙げられ、更に好ましくはAl、Si、Sn、Ti、Zr等が挙げられる。特にSiが好ましい。
【0083】
一般式(III)で示される(半)金属化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、
【0085】
テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、
【0086】
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシンラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
【0087】
Ti(OR17)4(ここで、R17はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す)、TiCl4、Zn(OR17)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、Sn(OR17)4、Sn(CH3COCHCOCH3)4、Sn(OCOR17)4、SnCl4、Zr(OR17)4、Zr(CH3COCHCOCH3)4、Al(OR17)3。
【0088】
次に、上記(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B))について説明する。
【0089】
本発明の有機ポリマー(A)は、(半)金属含有ポリマーと水素結合を形成し得る(以下、特定の結合基とも言う)を有する。この特定の結合基としては、好ましくは、アミド結合(カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む)、ウレタン結合及びウレイド結合から選ばれる少なくとも一種の結合及び水酸基を挙げることができる。
【0090】
有用な有機ポリマー(A)として、上記の特定の結合基を少なくとも1種、繰り返し単位成分としてポリマーの主鎖及び/又は側鎖に含有するものを挙げることができる。好ましくは、繰り返し単位成分として、−N(R18)CO−、−N(R18)SO2−、−NHCONH−及び−NHCOO−から選ばれる少なくとも1種の結合がポリマーの主鎖及び/又は側鎖に存在する成分、及び/又は−OH基を含有する成分が挙げられる。上記アミド結合中のR18は、水素原子又は有機残基を表し、有機残基としては、一般式(III)中のR0における炭化水素基及びヘテロ環基と同一の内容のものが挙げられる。
【0091】
ポリマー主鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、−N(R18)CO−結合又はN(R18)SO2−結合を有するアミド樹脂、−NHCONH−結合を有するウレイド樹脂、−NHCOO−結合を含有するウレタン樹脂等が挙げられる。
【0092】
アミド樹脂製造に供されるジアミン類とジカルボン酸類又はジスルホン酸類、ウレイド樹脂に用いられるジイソシアナート類、ウレタン樹脂に用いられるジオール類としては、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」第I章(株)培風舘刊(1986年)、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0093】
また、他のアミド結合を有するポリマーとして、下記一般式(VI)で示される繰り返し単位含有のポリマー、ポリアルキレンイミンのN−アシル化体又はポリビニルピロリドンとその誘導体が挙げられる。
【0094】
【化4】
【0095】
式(VI)中、Z1は−CO−、−SO2−又は−CS−を表す。R20は式(III)中のR0と同一の内容のものを表す。r1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す。r1は同じでも異なってもよい。pは2又は3の整数を表す。
【0096】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を含有するポリマーのうち、Z1が−CO−を表し、pが2を表すポリマーは、置換基を有していてもよいオキサゾリンを触媒の存在下で開環重合することにより得られる。触媒としては、例えば、硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸アルキルエステルなどの硫酸エステルやスルホン酸エステル;ヨウ化アルキル(例えばヨウ化メチル)などのハロゲン化アルキル;フリーデルクラフツ触媒のうち金属フッ素化物;硫酸、ヨウ化水素、p−トルエンスルホン酸などの酸や、これらの酸とオキザゾリンとの塩であるオキサゾリニウム塩などが使用できる。なお、このポリマーは単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、他のポリマーにこのポリマーがグラフトした共重合体であってもよい。
【0097】
オキサゾリンの具体例としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ジクロロメチル−2−オキサゾリン、2−トリクロロメチル−2−オキサゾリン、2−ペンタフルオロエチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−メトキシカルボニルエチル−2−オキサゾリン、2−(4−メチルフェニル)−2−オキサゾリン、2−(4−クロロフェニル)−2−オキサゾリンなどが挙げられる。好ましいオキサゾリンには、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリンなどが含まれる。このようなオキサゾリンのポリマーは一種又は二種以上使用できる。
【0098】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を有する他のポリマーについても、オキサゾリンの代わりにチアゾリン、4,5−ジヒドロ−1,3−オキサジン又は4,5−ジヒドロ−1,3−チアジンを用いて同様に得ることができる。
【0099】
ポリアルキレンイミンのN−アシル化体としては、カルボン酸ハライド類との高分子反応で得られる−N(CO−R21)−を含むカルボン酸アミド体、又はスルホニルハライド類との高分子反応で得られる−N(SO2−R21)−を含むスルホンアミド体(ここで、R21は上記式(VI)におけるR20と同義である)が挙げられる。
【0100】
また、ポリマーの側鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、少なくとも1種の上記特定の結合基を有する成分を主成分として含有するものが挙げられる。このような成分としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、ビニル酢酸アミド又は以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0101】
なお、以下の構造式における記号は次の内容を表す。
a1:−H又は−CH3
T0:−H、−CH3、−(CH2)2OCH3、又は−(CH2)2N(CH3)2
L0:―CxH2x+1、−(CH2)2OCH3、−(CH2)2N(CH3)2、
ベンジル又は−(CH2)xOH
L1:−H、L0又は−(CH2)2CONH2
x:1〜4の整数
y:0又は1
z:0、1又は2
【0102】
【化5】
【0103】
【化6】
【0104】
一方、水酸基含有の有機ポリマーとしては、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には小竹無二雄監修「大有機化学19、天然高分子化合物I」朝倉書店刊(1960年)、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)等に記載のものが挙げられる。
【0105】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラカガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0106】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等)、アリルアルコール共重合体、水酸基を少なくとも1種含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体もしくは共重合体(エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、等)、水酸基を少なくとも1種含有するアクリルアミド又はメタクリルアミドのN−置換体の重合体もしくは共重合体(N−置換基として、例えば、モノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基、等)等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個の水酸基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0107】
上記の特定の結合基を有する有機ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは103〜4×105である。
【0108】
次に、本発明の一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)について説明する。
前記一般式(II)において、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、中でも、炭素数8以下の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R01、R02、R03およびR04は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0109】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0110】
N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、
【0111】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0112】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(K1CO−)におけるK1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0113】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0114】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0115】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0116】
Lは単結合又は有機連結基を表す。ここで、Lが有機連結基を表す場合、Lは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0117】
【化7】
【0118】
また、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は、炭素数1〜8の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。また、−CON(R05)2のように複数のR05を有する場合、R05は同一でも異なっていてもよく、更にR05同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R05はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R01、R02、R03およびR04がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0119】
R05としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
【0120】
また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
Wとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3 −NMe4、モルホリノ基等が好ましい。
【0121】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)の分子量は、質量平均分子量(Mw)で、好ましくは200〜100000、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは500〜20000である。
【0122】
本発明に好適な有機ポリマー(B)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
【化8】
【0124】
本発明に係る有機ポリマー(B)は、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基の導入されたポリマーが合成できる。
【0125】
【化9】
【0126】
ここで式(i)及び(ii)において、R01〜R04、L、W、n及びmは、前記記一般式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0127】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)を合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0128】
有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B)を含む。以下、同様)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体を形成する場合に、有機ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーの割合は広い範囲で選択できるが、好ましくは(半)金属含有ポリマー/有機ポリマーの質量比で10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。この範囲において、親水性層の膜の強度、印刷時の湿し水に対する耐水性が良好となる。
【0129】
本発明の複合体を形成する親水性バインダーポリマーは、前記(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成した(半)金属含有ポリマーのヒドロキシ基と、有機ポリマー中の前記特定の結合基とが水素結合作用等により均一な有機、無機ハイブリッドを形成し、相分離することなくミクロ的に均質となる。(半)金属含有ポリマーに炭化水素基が存在する場合にはその炭化水素基に起因して、有機ポリマーとの親和性がさらに向上するものと推定される。また、本発明の複合体は成膜性に優れている。
【0130】
本発明の複合体は、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合し、有機ポリマーと混合することにより製造するか、又は有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合することにより製造される。好ましくは、有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物をゾル−ゲル法により加水分解重縮合することにより、本発明の有機・無機ポリマー複合体を得ることができる。生成した有機・無機ポリマー複合体において、有機ポリマーは、(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成したゲルのマトリックス(すなわち無機(半)金属酸化物の三次元微細ネットワーク構造体)中に均一に分散している。
【0131】
上記ゾル−ゲル法は、従来公知のゾル−ゲル法を用いて行なうことができる。具体的には、「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(株)技術情報協会(刊)(1995年)、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書に詳細に記載の方法に従って実施できる。
【0132】
無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層用の塗布液は、水系溶媒が好ましく、更には塗液調整時の沈殿抑制による均一液化のために水溶性溶媒を併用する。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸メチル、エチレングリコールモノアセテート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0133】
更に、前記の一般式(III)で示される(半)金属化合物の加水分解及び共縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。
【0134】
触媒は、酸又は塩基性化合物をそのままか、あるいは水又はアルコール等の溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解及び重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
【0135】
酸性触媒又は塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、構造式RCOOHのRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0136】
その他、無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」培風館(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0137】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0138】
本発明の無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層は、親水性層塗布液を後述の光熱変換層上に、従来公知の塗布方法のいずれかを用いて塗布、乾燥することにより成膜される。
形成される親水性層の膜厚は0.2〜10g/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜8g/m2である。この範囲内で均一で強度が充分な膜が作製される。
【0139】
(表面グラフト親水性層)
本発明においては、上記の親水性層表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層を設けることができる。この表面グラフト親水性層は、親水性層表面を薄く覆った形の親水性層を形成している。表面グラフト親水性層を設けることにより、さらに親水性層の保水性を向上できる。
【0140】
表面グラフト親水性層では、少なくとも1つの親水性官能基を有する高分子化合物の末端が、平版印刷版の親水性層に直接又は他の結合用の高分子化合物(以下、この結合用の高分子化合物を特に「幹高分子化合物」と称することもある)を介して、化学的に結合している。
【0141】
上記のグラフト部を構成する親水性官能基を有する高分子化合物は、特に限定的ではないが、直鎖状高分子化合物であることが好ましい。親水性官能基としては、アミド基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸、ホスホン酸もしくはアミノ基又はそれらの塩、2−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はそのハロゲン化水素酸塩等が挙げられる。
【0142】
これらの親水性官能基は、上記グラフト部を構成する高分子化合物中に少なくとも1つ含有されていればよく、例えば、直鎖状高分子化合物の親水性層との結合部と反対側の末端に親水性官能基を有する場合や、直鎖状高分子が親水性モノマーを重合成分又は共重合成分として含有する場合等が挙げられる。
【0143】
本発明において用いることのできる親水性モノマーとしては、上記親水性官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。特に有用な親水性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、イタコン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン酸塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミドもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレートもしくは3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩等を挙げることができる。
【0144】
本発明の表面グラフト親水性層は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて容易に製造することができる。グラフト重合とは高分子鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子鎖が固体表面を形成しているときには表面グラフト重合と呼ばれる。本発明の表面グラフト親水性層は、親水性層表面上において表面グラフト重合を行うことにより容易に得ることができる。
【0145】
本発明の表面グラフト親水性層を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる、たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135に記載される、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法等の表面グラフト重合法、吸着技術便覧NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695に記載される、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法等が挙げられる。また、光グラフト重合法の具体的方法としては特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0146】
本発明の表面グラフト親水性層を作成する方法としては、これらの他に、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基などの反応性官能基を付与し、これと平版印刷版の親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成する方法を挙げることもできる。
【0147】
また、親水性層表面に化学的に結合されている幹高分子化合物と、該幹高分子化合物に高分子鎖の末端で結合されている親水性官能基を有する直鎖状高分子化合物とからなる表面グラフト親水性層を製造する場合には、親水性層表面の官能基とカップリング反応しうる官能基を幹高分子化合物の側鎖に付与し、グラフト鎖として親水性官能基を有する高分子化合物鎖を組み込んだグラフト型高分子化合物を合成し、この高分子と親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成することができる。かかる幹高分子化合物の具体例としては、前述の(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(A)又は(B)として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0148】
上記の光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法、カップリング法のうち、製造適性の点からはプラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法が特に優れている。
【0149】
具体的には、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY. Ikada et al., Macromolecules vol.19, page 1804 (1986)などの記載の方法にて作成することができる。親水性層表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることにより得ることができる。
【0150】
本発明の表面グラフト親水性層の膜厚は、好ましくは0.01〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.1〜5g/m2の範囲である。この範囲内で、本発明の効果を十分に発揮し、更に良好な非画像部の防汚れ性が達成されるとともに、耐刷性も良好であり、好ましい。
【0151】
本発明においては、後述する光熱変換層上に形成された親水性層表面の平滑性(表面グラフト親水性層がある場合はグラフト親水性層表面の平滑性)が、ベック平滑度で5000(秒/10ml)以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下が特に好ましい。ここでベック平滑度は、ベック平滑度試験機により測定することができ、高度に平滑に仕上げられた中央に穴のある円形のガラス板上に、試験片を一定圧力(1kg/cm2)で押しつけ、減圧下で一定量(10ml)の空気が、ガラス面と試験片との間を通過するのに要する時間(秒)で表される表面平滑性の一つの指標である。
【0152】
〔光熱変換層〕
本発明に用いられる光熱変換層は、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層であり、これらの機能を有する公知の光熱変換層が使用可能である。光熱変換材料としては、従来、レーザー光源を赤外線レーザーとした場合、赤外線吸収色素、赤外線吸収顔料、赤外線吸収性金属、赤外線吸収金属酸化物など書き込みのレーザーに使用する波長の光を吸収する各種の有機および無機材料が使用可能であることが知られている。これらの材料は単独膜の形態で、もしくはバインダー、添加剤など他の成分との混合膜の形態で使用される。単独膜の場合には、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛等の金属および合金や金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ハロゲン化物、有機色素などを蒸着法およびスパッタリング法等により支持体上に適用することで形成することができる。
【0153】
また、混合膜の場合には、光熱変換材料を所望により膜形成性を有するバインダーポリマーや他の成分とともに適当な溶媒或いは分散媒に溶解もしくは分散した塗布液を調製し、それを用いた塗布法により形成することができる。以下、混合膜の各構成成分について説明する。
【0154】
(光熱変換材料)
本発明に使用される光熱変換材料としては、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換し得る公知の有機及び無機顔料、染料などの有機色素、金属及びその酸化物などの化合物より適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、有機顔料としては、酸性カーボンブラック、塩基性カーボンブラック、中性カーボンブラックなど各種カーボンブラック、分散性改良等のために表面修飾又は表面コートされた各種カーボンブラック、ニグロシン類等、有機色素としては、「赤外増感色素」(松岡著 Plenum Press, New York,NY (1990))、米国特許4、833、124号、ヨ−ロッパ特許公開321、923号、米国特許4、772、583号、米国特許4、942、141号、米国特許4、948、776号、米国特許4、948、777号、米国特許4、948、778号、米国特許4、950、639号、米国特許4、912、083号、米国特許4、952、552号、米国特許5、023、229号などに記載の各種化合物、金属及び金属酸化物としてはアルミニウム、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化チタン等、この他にポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなども使用可能である。光熱変換層を混合膜として形成する場合に、その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、5質量%〜50質量%、好ましくは8質量%〜45質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%である。
【0155】
(バインダー)
光熱変換層を混合膜として形成する場合に使用されるバインダーとしては、フィルム形成能を有し、光熱変換剤を溶解又は分散しうる公知のポリマーが使用される。これらの例としてはニトロセルロース、エチルセルロースなどのセルロース、セルロース誘導体類、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、イソプレン、スチレン−ブタジエンなどの各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル類の単独重合体および酢酸ビニル−塩化ビニルなどの共重合体、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合系各種ポリマーおよび、「J. Imaging Sci.,P59−64 ,30(2),(1986)(Frechetら)」や「Polymers in Electronics (Symposium Series,P11, 242, T.Davidson,Ed., ACS Washington,DC(1984)(Ito,Willson)」、「Microelectronic Engineering, P3−10,13(1991)(E. Reichmanis,L.F.Thompson)」に記載のいわゆる「化学増幅系」に使用されるバインダー等が使用可能である。これら中でも、光熱変換層を架橋により硬膜するための架橋反応に用いることが可能な官能基を有するポリマーが好ましい。好ましい官能基としては、例えば、−OH、−SH、−NH2、−NH−、−CO−NH2、−CO−NH−、−O−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CO−O−、−CO−O−、−CS−OH、−CO−SH、−CO−OCO−、−SO3H、−SO2(O−)、−PO3H2、−PO(O−)2、−SO2−NH2、−SO2−NH−、−CO−CH2−CO−、−CH=CH−、−CH=CH2、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2や、下記に示す構造の官能基等が挙げられ、なかでも、特に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、重合性ビニル基が好ましい。
【0156】
【化10】
【0157】
光熱変換層の形成に用いられる好ましいバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を含有するモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、グリシジルメタアクリレート等のエポキシ基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、N−アルキルアクリルアミド、アクリルアミドの単独重合体もしくは共重合体、アミン類とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル又はアリルグリシジルとの反応物の単独重合体もしくは共重合体、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコールの単独重合体もしくは共重合体、ポリウレタン樹脂類、ポリウレア樹脂類、ポリアミド(ナイロン)樹脂類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、セルロース誘導体類等の縮合体が挙げられる。これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、20質量%〜90質量%、好ましくは25質量%〜80質量%、より好ましくは30質量%〜75質量%である。
【0158】
(添加剤)
光熱変換層を混合膜として形成する場合には、光熱変換剤とバインダー以外に添加剤を用いることが出来る。これらの添加剤は、光熱変換層の機械的強度を向上させたり、レーザー記録感度を向上させたり、光熱変換層中の分散物の分散性を向上させたり、支持体やプライマー層などの隣接する層に対する密着性を向上させるなど種々の目的に応じて添加される。例えば、光熱変換層の機械的強度や耐薬品性を向上させるために、光熱変換層を架橋する手段が考えらる。架橋反応としては、熱または光による共有結合形成、又は、多価金属塩によるイオン結合形成が可能であり、本発明においては、公知の架橋剤による光熱変換層の硬膜が可能である。用い得る公知の架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能アミン化合物、ポリオール化合物、多官能カルボキシル化合物、アルデヒド化合物、多官能(メタ)アクリル化合物、多官能ビニル化合物、多官能メルカプト化合物、多価金属塩化合物、ポリアルコキシシラン化合物、ポリアルコキシチタン化合物、ポリアルコキシアルミニウム化合物、ポリメチロール化合物、ポリアルコキシメチル化合物等が挙げられ、公知の反応触媒を添加し、反応を促進することも可能である。その使用量は光熱変換層の塗布液中の総固形分質量に対して、0質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜35質量%である。
【0159】
レーザー記録感度を向上させるために加熱により分解しガスを発生する公知の化合物を添加することが考えられる、この場合には光熱変換層の急激な体積膨張によりレーザー記録感度が向上できる。これらの添加剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4、4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジアミドベンゼン等を使用することができる。また、加熱により分解し酸性化合物を生成する公知の化合物を添加剤として使用することが出来る。これらを化学増幅系のバインダーと併用することにより、光熱変換層の構成物質の分解温度を大きく低下させ、結果としてレーザー記録感度を向上させることが可能である。これらの添加剤の例としては、各種のヨードニウム塩、スルフォニウム塩、フォスフォニウムトシレート、オキシムスルフォネート、ジカルボジイミドスルフォネート、トリアジンなどを使用することができる。
【0160】
光熱変換剤にカーボンブラックなどの顔料を用いた場合には、顔料の分散度がレーザー記録感度に影響を与えることがあるため、各種の顔料分散剤を添加剤として使用することも好ましい。光熱変換層と支持体、あるいは、隣接して設けられる親水性層などとの接着性を向上させるために、公知の密着改良剤(例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等)を添加しても良い。この他にも、塗布性を改良するための界面活性剤など各種の添加剤を目的に応じて使用することができる。
【0161】
光熱変換層を混合膜として形成する場合は、上記の各構成成分を適当な溶媒、分散媒に溶解あるいは分散して、支持体上に塗布、乾燥することにより形成される。ここで用い得る溶媒、分散媒としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールメチルエチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0162】
(膜厚)
光熱変換層の膜厚は、単独膜の場合には蒸着法およびスパッタリング法等にて薄膜が形成できる。この場合の膜厚は50Åから1000Å、好ましくは100Åから800Åである。混合膜の場合の膜厚は0.05μmから10μm、好ましくは0.1μmから5μmである。光熱変換層の膜厚は、薄すぎても、厚すぎても、レーザー記録感度の低下など好ましくない結果を与える。
【0163】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、通常の印刷機にセットできる程度のたわみ性を有し、同時に印刷時にかかる荷重に耐える寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごときプラスチックがラミネートされた紙又は金属板、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。
支持体の厚みは、25μmから3mm、好ましくは75μmから500μmが適当であるが、用いる支持体の種類と印刷条件により最適な厚さは変動する。一般には100μmから300μmが最も好ましい。
【0164】
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましい。
その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
【0165】
本発明においては、支持体と光熱変換層間の接着性向上、印刷特性向上等のために、支持体にサンドブラスト処理等による粗面化やコロナ処理等による表面改質を施したり、支持体と感熱層との間に中間層を設けることができる。
【0166】
例えば、アルミニウム板の粗面化は以下のように行うことができる。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0167】
上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0168】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、または電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0169】
本発明に用いられる中間層としては、例えば、特開昭60−22903号公報に開示されているような種々の感光性ポリマーを感熱層を積層する前に露光して硬化せしめたもの、特開昭62−50760号公報に開示されているエポキシ樹脂を熱硬化せしめたもの、特開昭63−133151号公報に開示されているゼラチンを硬膜せしめたもの、更に特開平3−200965号公報に開示されているウレタン樹脂とシランカップリング剤を用いたものや特開平3−273248号公報に開示されているウレタン樹脂を用いたもの等を挙げることができる。この他、ゼラチンまたはカゼインを硬膜させたものも有効である。更に、中間層を柔軟化させる目的で、前記の中間層中に、ガラス転移温度が室温以下であるポリウレタン、ポリアミド、スチレン/ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル/ブタジエンゴム、ポリイソプレン、アクリレートゴム、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリマーを添加しても良い。その添加割合は任意であり、フィルム層を形成できる範囲内であれば、添加剤だけで中間層を形成しても良い。また、これらの中間層には前記の目的に沿って、染料、pH指示薬、焼き出し剤、光重合開始剤、接着助剤(例えば、重合性モノマー、ジアゾ樹脂、シランカップリング剤等)、顔料、シリカ粉末や酸化チタン粉末等の添加物を含有させることもできる。また、塗布後、露光によって硬化させることもできる。一般に、中間層の塗布量は乾燥質量で0.1〜10g/m2の範囲が適当であり、好ましくは0.3〜8g/m2であり、より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0170】
また、本発明の支持体にポリエステル等の非導電性のものを用いる場合、感熱層と支持体の密着性向上及び帯電防止を目的として、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層より成る中間層を設けるのが好ましい。
【0171】
上記中間層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、及び/又はこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOが好ましい。
異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、SnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素、In2O3に対してSnなどの異種原子を30モル%以下、好ましくは10モル%以下の量をドープしたものを挙げることができる。
金属酸化物粒子は、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0172】
中間層に用いることができるマット剤としては、好ましくは平均粒径が0.5〜20μm、より好ましくは平均粒径が1.0〜15μmの粒径を持つ無機又は有機の粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の金属塩等が挙げられる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン及びそれらの共重合体の架橋粒子が挙げられる。
マット剤は、中間層中に1〜30質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0173】
中間層に用いることができるポリマーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の合成ポリマー等が挙げられる。
ポリマーは、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0174】
また、本発明で使用する支持体は、ブロッキングを防止する観点から、支持体の裏面の最大粗さ深度(Rt)が少なくとも、1.2μm以上であることが好ましく、さらに、支持体の裏面(即ち、本発明の平版印刷版原版の裏面)が本発明の平版印刷版原版の表面上を滑る時の動摩擦係数(μk)が2.6以下であることが好ましい。
このため、支持体の裏面には、前述の中間層において示したのと同様なマット剤を含有するバックコート層を設けたり、サンドブラスト処理を施す等による粗面化が成されることが好ましい。
【0175】
〔その他の層〕
(親水性保護層)
本発明においては、親水性層の表面親水性の保護を目的とし、親水性層上に親水性保護層を設けても良い。親水性保護層としては、水又は湿し水により容易に除去されることが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール(ケン化度60%以上のポリビニルアセテート)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホスホン酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体及びその塩、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等の水溶性ポリマー溶液を塗布、乾燥することにより設けることができる。この場合の親水性保護層の乾燥質量は、0.01〜5g/m2が好ましく、より好ましくは、0.05〜2g/m2である。
【0176】
親水性保護層は他の成分として、種々の界面活性剤を含有してもよい。使用できる界面活性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が挙げられる。これらの具体例としては、前記した光熱変換層に用いられる界面活性剤と同じものが挙げられる。界面活性剤の添加量は、水可溶性層全固形分当たり、好ましくは0.01〜1%であり、更に好ましくは0.05〜0.5%である。
【0177】
親水性保護層は、特開2001−341448号記載のフッ素原子及び/又はケイ素原子を含有化合物、例えば、水溶性又は水分散性のフッ素系界面活性剤や水溶性又は水分散性のシリコーンオイルを含有することができる。これらの保護層の全固形分中のにおける割合は、0.05〜5%である。この使用割合の範囲において、積み重ね保存時の印刷用原版間のくっつきが防止できる。
【0178】
上記成分のほか、必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の低級多価アルコールも使用することができる。これら湿潤剤の使用量は親水性保護層中に0.1〜5.0%となる量が適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0%となる量である。以上の他に本発明の平版印刷用原版の親水性保護層の塗布液には、防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸ナトリウム等を0.005〜2.0%の範囲で添加できる。また、塗布液には消泡剤を添加することもできる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含まれ、その添加量は0.0001〜0.1%の範囲が好ましい。
【0179】
以上のごとき本発明の平版印刷用原版は、その最上層(すなわち、親水性層、表面グラフト親水性層又は親水性保護層)の表面の動摩擦係数が、2.5(μk)以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜1.2(μk)である。ここで、表面の動摩擦係数は、標準ASTMD1894に従った測定法により測定したものである。すなわち下にある材料の表面が上にある材料の裏面と接触しているように平版印刷用原版が置かれる。該材料の裏面は支持体に対して光熱変換層・親水性層・親水性保護層が設けられていない面を意味し、表面は支持体に対して光熱変換層・親水性層・親水性保護層が設けられている面を意味する。同摩擦係数については3000枚積み重ね35℃75%の温湿度で3日間放置した後、一番下のサンプルを測定した。
【0180】
この数値内の動摩擦係数に調整することにより、水溶性高分子化合物に起因する長期積み重ね保存時の平版印刷版用原版間のくっつきを防止するとともに、製版装置内における良好な搬送性を可能にすることができる。これらは、前記の使用材料の適宜の組み合わせによって行われる。
【0181】
[製版方法]
本発明の平版印刷用原版を製版する際、記録に用いられるレーザー光エネルギーが、本発明の平版印刷用原版の光熱変換層において吸収されて熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーにより光熱変換層の一部又は全体において、燃焼、融解、分解、気化、爆発等の化学反応や物理変化が引き起こされ、結果として光熱変換層と親水性層間の密着性が低下する。レーザーを照射した部分においてのみ、このような密着性の低下が生じるため、対応する部分の親水性層を選択的に容易に除去することが可能となり、除去された部分が親インク領域となり画像部を形成する。
【0182】
本発明においては平版印刷用原版を露光するのにレーザー光が使用される。使用されるレーザーは親水性層が除去されるのに十分な密着力の低下が起きるのに必要な露光量を与えるものであれば特に制限はなく、Arレーザー、炭酸ガスレーザーのごときガスレーザー、YAGレーザーのような固体レーザー、そして半導体レーザーなどが使用できる。通常、出力が50mWクラス以上のレーザーが必要となる。保守性、価格などの実用的な面からは、半導体レーザーおよび半導体励起の固体レーザー(YAGレーザーなど)が好適に使用される。これらのレーザーの記録波長は赤外線の波長領域であり、800nmから1100nmの発振波長を利用することが多い。また、特開平6−186750号公報に記載されている如きイメージング装置を用いて露光することも可能である。
【0183】
上記の方法で露光された本発明の平版印刷用原版は、レーザー露光中にレーザー露光部(画像部)の親水性層が除去される構成であってもよく、さらに、必要な場合は、レーザー露光後に、レーザー露光部(画像部)の親水性層が除去される工程を伴う構成であってもよい。レーザー露光部の親水性層の除去(現像処理)は、例えば、吸引、粘着シートの圧着・剥離、処理液の存在下又は非存在下において、現像用パッドや現像用ブラシ等の擦り部材により版面を擦ることにより実施される。本発明において使用される処理液としては、安全性が良好で、引火性が低いこと、及び親水性層表面の親水性を損なわないことなどを要求されるため、水または水を主成分とする水溶液が好ましく、単に水(水道水、純水、蒸留水等)や界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系)の水溶液等が一般的に使用可能である。
【0184】
また、現像性向上のために有機溶剤を使用することも可能であり、処理液に使用可能な溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)又はガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、又はハロゲン化炭化水素(トリクレン等)や、下記の極性溶剤が例示される。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等);エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート等);その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等)などが挙げられる。
【0185】
上記有機溶剤系処理液に水を添加したり、上記有機溶剤を界面活性剤等を用いて水に可溶化したものも使用可能であり、処理液に、溶剤を含有する場合は、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。また、処理液に、アルカリ性剤(例えば、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、ケイ酸塩類等)又は酸性剤(例えば、リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、ホウ酸、アミノ酸類等)を添加したものも使用可能である。処理液の温度は、任意の温度であるが、好ましくは10℃〜50℃の範囲で使用される。
【0186】
レーザー露光部の親水性層の除去は、上記処理液を使用するものの他、例えば、レーザー露光後の印刷版を印刷機の版胴上に装着し、印刷機上における湿し水及び/又はインクの付けローラーと印刷版との接触により実施する、所謂、機上現像とすることも可能である。このようにして、平版印刷用原版の画像部における親水性層が除去され、得られた平版印刷版はインクを適用され、印刷に用いられる。
【0187】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0188】
実施例1
[支持体の作製]
両面にコロナ処理を施した厚さ180μmのポリエチレンテレフタレートの片面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のプライマー層を形成した。
【0189】
(プライマー層塗布液1)
・ポリエステル系ラテックス(ペスレジンA−520、
高松油脂(株)製、固形分30質量%) 8g
・メラミン化合物(スミテックスレジンM−3、住友化学工業(株)製、
有効成分濃度:80質量 6g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 4.8g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、
エマルゲン911 花王(株)製) 0.7g
・ポリスチレン(Nipol UFN1008、
日本ゼオン(株)製、固形分20質量%) 0.04g
・蒸留水 81g
【0190】
次いで、プライマー層と反対の面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のバック層を形成した。
【0191】
【0192】
さらに、バック層の上に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(170℃、30秒)し、乾燥塗布量0.05g/m2の保護層を形成し支持体を作製した。
【0193】
(保護層塗布液)
・ポリオレフィン系ラテックス(ケミパールS−120、
三井化学(株)製、固形分27質量%) 6.2g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 1.2g
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩水溶液(サンデッドBL、
三洋化成工業(株)製、44質量%) 0.6g
・エポキシ化合物(デナコールEX−614B、
ナガセ化成(株)製、有効成分濃度:100質量%) 0.6g
・蒸留水 90g
【0194】
[カーボンブラック分散液の作成]
下記の混合液をペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で30分間分散した後、ガラスビーズをろ別して、カーボンブラック分散液を作成した。
【0195】
(カーボンブラック分散液)
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 4.0g
・ソルスパースS20000(ICI社製) 0.27g
・ソルスパースS12000(ICI社製) 0.22g
・メチルエチルケトン 20g
・ガラスビーズ 120g
【0196】
[光熱変換層の形成]
前記のプライマー層上に、下記の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥質量1g/m2の光熱変換層を形成した。
【0197】
(光熱変換層塗布液1)
・上記カーボンブラック分散液 20g
・末端−OH基のポリウレタン樹脂(イソホロンジイソシアネート/ブタンジ
オール=100/102(質量比)の縮合反応物) 10g
・チタボンド50(日本曹達(株)製、チタンジイソプロポキサイドビス
(2,4−ペンタジオネート)の約75%イソプロパノール溶液)6.7g
・メチルエチルケトン 45g
・プロピレングルコールモノメチルエーテル 45g
【0198】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物1Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で10分間分散した後、更に、組成物1Bを33g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスビーズを濾別して親水性層塗布液を得た。
【0199】
【0200】
(組成物1B)
・テトラエトキシシラン 92g
・エタノール 163g
・水 163g
・硝酸 0.1g
【0201】
[親水性層の形成]
次に、上記親水性層塗布液を前記光熱変換層上に塗布し、加熱(140℃、5分)、乾燥することにより、乾燥質量2g/m2の親水性層を形成した。
【0202】
[製版及び印刷]
このようにして得られた平版印刷用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSにて、版面エネルギー300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール(容量比1/89/10)からなる湿し水と、大日本インキ化学工業(株)製ジオスG墨インキを用い、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行ったところ、問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0203】
比較例1
親水性層塗布液の作製を下記のように変えた。それ以外は実施例1と同様にして、比較用の平版印刷用原版を作製した。
【0204】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物2Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で5分間分散した後、更に、実施例1に記載の組成物1Bを15g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスビーズを濾別して親水性層用分散組成物を得た。
【0205】
【0206】
この平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、刷り出し初期は、印刷物の非画像部の汚れは実用上問題のないレベルだったが、更に印刷を継続したところ、非画像部の汚れが発生し、良好な印刷物を得ることができなかった。
【0207】
実施例2
実施例1で形成した平版印刷用原版の親水性層表面を平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記条件で酸素グロー処理を行った。
【0208】
酸素グロー処理条件
(初期真空) 1.2×10−3Pa
(アルゴン圧力) 0.9Pa
(RFグロー) 1.4KW
(処理時間) 60sec
【0209】
次に、グロー処理した上記平版印刷用原版を窒素バブルしたアクリル酸水溶液(20%)に60℃にて4時間浸漬した。浸漬した膜を流水で10分間洗浄することによって、親水性層表面にアクリル酸がグラフトポリマー化した表面グラフト親水性層を有する平版印刷用原版を得た。
表面グラフト親水性層の質量(グラフト量)を質量法で測定したところ、1.25g/m2であった。
【0210】
次いで、実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0211】
実施例3
親水性層塗布液の作製において、ポリビニルアルコールを下記により合成した親水性有機ポリマー(1)に変えた以外は実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0212】
[親水性有機ポリマー(1)の合成]
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、及びジメチルホルムアミド51.3gを入れて、窒素気流下で65℃まで加熱し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで冷却して、酢酸エチル1.5リットル中に投入したところ固体が析出した。その後、ろ過を行い、十分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により質量平均分子量は5000であることが判った。
【0213】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0214】
実施例4〜9
親水性層塗布液の作製において、チタン酸ストロンチウムを表1に示したフィラーに変えた以外は実施例1と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0215】
【表1】
【0216】
実施例10〜15
親水性層塗布液の作製において、チタン酸ストロンチウムを表1に示したフィラーに変えた以外は実施例3と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0217】
実施例16
[支持体の作製]
厚さ175μmの表面コロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記組成の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥膜厚0.2μmのプライマー層を形成した。
(プライマー層塗布液2)
・塩素化ポリエチレン
{−(C2H4−yCly)n−(式中、y=1.7,n=200)} 1.0g
・メチルエチルケトン 10g
・シクロヘキサン 100g
【0218】
[光熱変換層の形成]
前記のプライマー層上に、蒸着真空度5×10−5Torrの条件下に、Tiを抵抗加熱により蒸着し、光熱変換層を形成した。この時の光熱変換層の厚みは、200Åであり、光学濃度は、0.6であった。
【0219】
次いで、前記光熱変換層上に、実施例1と同様にして、親水性層を形成し、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0220】
実施例17
実施例16で形成した平版印刷用原版の親水性層表面を実施例2と同様に処理して、親水性層表面にアクリル酸がグラフトポリマー化した表面グラフト親水性層を有する平版印刷用原版を得た。
次いで、実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0221】
実施例18
光熱変換層の形成に、下記塗布液を用いる以外は、実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0222】
(光熱変換層塗布液2)
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1009、ジャパンエポキシレジン(株)製) 8.0g
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン(株)製) 2.0g
・下記赤外線吸収染料(A) 2.0g
・エチレングリコールモノメチルエーテル 165g
・メチルエチルケトン 85g
【0223】
【化11】
【0224】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0225】
【発明の効果】
本発明の平版印刷用原版は、ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、簡易な現像処理操作による製版、あるいは、現像操作の必要のない製版が可能であり、耐刷性、防汚れ性および画像再現性に優れる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷用原版に関し、より詳しくは、ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、耐傷性、耐刷性および画像再現性に優れた平版印刷用原版に関する。さらには、簡易な現像処理、又は、印刷機上における現像処理により製版することが可能な平版印刷用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷用原版としては、従来から、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版が広く用いられている。その製版方法としては、予め画像情報が記録されたリスフィルムを介して露光を行なうことにより、原版上に画像様の露光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除去する方法がある。
【0003】
従来のPS版に於ける製版工程は、露光の後、非画像部を溶解除去する操作が必要であり、このような付加的な湿式の処理を不要化又は簡易化することが望まれている。この要望に応じた簡易な製版方法の一つとして、印刷用原版の非画像部の除去を通常の印刷過程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で現像し最終的な印刷版を得る、所謂、機上現像方式と呼ばれる平版印刷版の製版方式が挙げられる。
【0004】
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水やインク溶剤に可溶な画像記録層を使用する方法、印刷機中の圧胴やブランケット胴との接触による力学的除去を行う方法等が拳げられる。このような機上現像方式の大きな問題は、記録層が露光後も定着されないため、所望されない露光や過熱により記録層が影響を受ける虞があり、これを防止するため、例えば、印刷機に装着するまでの間、原版を完全に遮光状態又は恒温条件で保存することが必要であった。
【0005】
一方、この分野における近年のもう一つの動向としては、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及してきていることで、このようなディジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用化されるようになってきている。これに伴い、レーザ光のような高収斂性の輻射線にディジタル化された画像情報を担持させ、この光で原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目され、この目的に適応した印刷用原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0006】
デジタル化技術に組み込みやすい走査露光による印刷版の製版方法として、最近、赤外領域に吸収をもつ半導体レーザー、YAGレーザー等の固体レーザーで高出力のものが安価に入手できるようになってきたことから、特に、これらのレーザーを画像記録手段として用いる製版方法が有望視されるようになっている。このような製版方法では、露光領域において、瞬間的な露光時間の間に大量の光エネルギーが集中照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換し、その熱により記録層の物性に変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。つまり、画像情報はレーザー光などの光エネルギーによって入力されるが、画像記録は熱エネルギーによる反応によって記録される。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼び、光エネルギーを熱エネルギーに変えることを光熱変換と呼んでいる。
【0007】
ヒートモード記録手段を用いる製版方法の大きな長所は、露光前には、室内光に対して安定であり、露光後の画像定着処理が必須ではない点である。従って、例えば、ヒートモード露光により不溶化若しくは可溶化する画像記録層を用い、露光した画像記録層を像様に除去して印刷版とする製版工程を機上現像方式で行えば、現像(非画像部の除去)は、画像露光後に、ある時間、室内の環境光に暴露されても、画像が影響を受けないような印刷システムが可能となる。
【0008】
具体的には、ヒートモード記録層の上層に親水性層を設け、画像状にヒートモード露光し、記録層をアブレーションさせ、必要に応じて湿式処理により、露光部の親水性層を除去する方法が提案されている。このような平版印刷用原版としては、例えば、カーボンブラック等のレーザー光吸収剤およびニトロセルロース等の自己酸化性のバインダーを含有した光熱変換層上に、親水性層を設けた構成が開示されており、この親水性層として、W098/40212号及びW098/34796号公報には、遷移金属酸化物コロイドを含む親水性層が、WO94/18005号公報には、水酸基を有する親水性ポリマーを加水分解テトラメチルオルトシリケート等の架橋剤で硬膜した親水性層が、特開平6−199064号公報には、水に不溶化したポリビニルアルコールよりなる親水性層が、特開平8−282143号公報には、親水性ポリマーと疎水性ポリマーラテックスを架橋剤により架橋した親水性層が、それぞれ記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの親水性層は、膜の強度と保水性の両立が不充分であり、印刷において、耐刷性、非画像部の汚れ性や画像再現性を満足するものではなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、耐刷性、防汚れ性および画像再現性に優れた平版印刷用原版を提供することであり、さらには、簡易な現像処理、または、印刷機上における現像処理により容易に製版可能な平版印刷用原版を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、光熱変換層及び親水性層をこの順に有する平版印刷用原版において、親水性層にフィラーを加えて親水性層表面を粗面にすることが上記課題解決に有効であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、並びに、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層をこの順に有することを特徴とする平版印刷用原版。
【0013】
(2)支持体上に、光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層と、親水性ポリマーを含有する親水性層とをこの順に備え、赤外線レーザー光の照射露光及び露光部の親水性層の除去によりネガ型画像が形成される平版印刷用原版において、前記親水性層が、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有するものであることを特徴とする平版印刷用原版。
【0014】
(3)フィラーが無機物を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の平版印刷用原版。
【0015】
(4)前記親水性バインダーポリマーが、ゼラチンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0016】
(5)親水性バインダーポリマーが、金属原子及び半金属原子から選ばれた少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、該ポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び下記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)から選ばれた少なくとも一つの有機ポリマーとの複合体であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0017】
【化1】
【0018】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0019】
(6)親水性層の表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層が設けられていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0020】
(7)親水性官能基を有する高分子化合物が、該高分子化合物鎖の末端で、直接、又は親水性層に化学的に結合している他の結合用高分子化合物を介して、親水性層に結合している直鎖状高分子化合物であることを特徴とする前記(6)記載の平版印刷用原版。
【0021】
(8)金属原子及び半金属原子から選ばれた少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有するポリマーが、下記一般式(III)で示される少なくとも1種の化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれかに記載の平版印刷用原版。
【0022】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0023】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0024】
(9)支持体上に、光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層と、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層とをこの順に有する平版印刷用原版に、赤外線レーザー光を照射露光して露光部の親水性層を除去するか、又は、赤外線レーザー光を照射露光した後に露光部の親水性層を除去して、ネガ型画像を形成することを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【0025】
上記発明は、鋭意検討の結果、支持体上に光熱変換層及び親水性層をこの順に有する層構成の平版印刷用原版において、親水性層表面の表面形状を微細構造に制御することが目的達成に効果があり、その手段として、親水性層へのフィラーの添加が特に有効であることを見出したことに基づいている。このフィラーが親水性層に微細な凹凸構造を形成することにより、親水性層表面の印刷時の保水性が十分なレベルに向上して汚れ難さが良化するためと考えられる。
さらに、親水性層へのフィラー添加により、親水性層の膜強度が増大し、耐刷性が向上する。また、親水性層の保水性と膜強度の両立の結果として、レーザー照射部の細線の直線性や網点の真円性が向上し、画像再現性が向上する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、%は特に断りのない限り、質量%を示す。
本発明の平版印刷用原版は、支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、及び、フィラーと親水性バインダーポリマーとを含有含有する親水性層をこの順に有する。
本発明において、「この順に有する」とは、支持体上に光熱変換層と親水性層とがこの順に設けられていることを指し、必要に応じて公知の他の層、例えば、中間層、表面保護層、バックコート層(単にバック層と呼ぶことがある)などを設ける態様を包含するものである。
【0027】
[親水性層]
本発明の親水性層は、フィラーを分散又は溶解した親水性バインダーポリマーを硬化して得られる、実質的に水不溶性の硬化膜である。この親水性層は、必要に応じて、架橋剤(又は硬化剤)や他のポリマーを含有していてもよい。
【0028】
本発明の親水性層には、少なくとも1種のフィラーが含有される。かかるフィラーとしては、無機フィラー、有機フィラー、無機−有機複合フィラー等のいずれでもよく、またこれらの内の2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは無機物を含有するフィラーである。
【0029】
無機フィラーとしては、金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、硝子、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。好ましくは、硝子、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0030】
有機フィラーとしては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の樹脂粒子であり、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。
【0031】
無機−有機複合フィラーとしては、例えば、上記有機フィラーと無機フィラーの複合化物が挙げられ、無機フィラーとしては、金属粉体、金属化合物(例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物及びこれらの複合化物等)の粒子が挙げられ、好ましくは酸化物及び硫化物等であり、より好ましくはガラス、SiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、SnO2、ZnS、CuS等の粒子が挙げられる。
【0032】
フィラーの大きさは、平均粒子径が0.01〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が0.03〜20μm、更に好ましくは、平均粒子径が0.05〜10μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。
【0033】
親水性バインダーポリマーと全フィラー成分の混合比(質量比)は、バインダーポリマー/全フィラーとして、好ましくは80/20〜5/95、より好ましくは70/30〜5/95、更に好ましくは60/40〜5/95である。
【0034】
次に本発明の親水性層に供される親水性バインダーポリマーについて説明する。
本発明の親水性バインダーポリマーは公知のものを好適に用いることができるが、特に好ましい態様として、下記(1)及び(2)が挙げられる。
【0035】
(1)ゼラチンを主成分とするもの(以下、「ゼラチン系バインダー」と称することもある)。
【0036】
(2)金属原子及び半金属原子から選ばれる少なくとも一つの原子が酸素原子を介して繋がった結合を有するポリマーと、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び上記一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)よりなる群から選ばれる少なくとも一つの有機ポリマーとの複合ポリマーを主成分とするもの(以下、「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」と称することもある)。
【0037】
以下、(1)及び(2)について、詳細に説明する。
【0038】
(1)「ゼラチン系バインダー」
このゼラチン系バインダーでは、親水性バインダーポリマーとして、ゼラチンが用いられる。ゼラチンを用いることにより、親水性層用分散物の分散が容易となり、本発明に供されるフィラーの均一分散性が良好となる。
【0039】
本発明に供されるゼラチンとは、誘導タンパク質の一種であり、コラーゲンから製造されるゼラチンと称されるものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、淡色、透明、無味、無臭の外観を示すものである。更には、写真乳剤用ゼラチンが、水溶液とした場合の粘度、ゲルのゼリー強度等の物性が一定の範囲内にあることからより好ましい。
【0040】
また、ゼラチン硬化性化合物の併用により、親水性層を硬化して、耐水性が良好なものとなる。
【0041】
ゼラチン硬化性化合物としては、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、T. H. James 「The Theory of the Photographic Process」第2章 セクション III、Macmillan Publishing Co. Inc.(1977年刊)、リサーチ・ディスクロージャー誌 No.17643, P26 (1970年12月発行)等に記載されている。好ましくは、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒドのジアルデヒド類、ジケトン類(例えば、2,3−ブタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン、1,2−シクロペンタンジオン等)、電子吸引基を隣接結合した二重結合を2個以上有する活性オレフィン化合物等が挙げられる。
【0042】
ゼラチン硬化性化合物は更に好ましくは、一般式(V)で示される二重結合基を分子中に2個以上含有する化合物である。
【0043】
一般式(V) CH2=CH−W0−
【0044】
式(V)中、W0は、―SO2−、−OSO2−、−CONR35−又は−SO2NR35−を表す。但し、R35は、水素原子又は炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
【0045】
式(V)において、好ましくはR35は、水素原子又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチロール基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−カルボキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表し、W0は、好ましくは−SO2−を表す。
【0046】
具体的には、例えば、レゾルシノールビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホニル)−m−キシレン、ビス(ビニルスルホニルアルキル)エーテルあるいはアミン、1,3,5−トリス(ビニルスルホニル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアクリルアミド、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、N,N′−ビスマレイミド類等が挙げられる。
【0047】
ゼラチン硬化性化合物は、ゼラチン100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。より好ましくは、0.8〜10質量部である。この範囲内において、得られた親水性層は膜強度が保持され、優れた耐水性を示すと同時に、親水性を疎害しない。
【0048】
更に、本発明のゼラチン系バインダーは、他のポリマーとして、特定の置換基からなるシリル官能基で変性された親水性樹脂(以下、「親水性樹脂(C)」と称することもある)を含有することが好ましい。好ましい親水性樹脂(C)としては、下記一般式(I)で示されるシリル官能基で変性された親水性樹脂が挙げられる。
【0049】
一般式(I) −Si(R10)j(OX)3−j
【0050】
式(I)中、R10は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Xは炭素数1〜12の脂肪族基を表す。jは0、1又は2を表す。より好ましくは0又は1を表す。
【0051】
式(I)においてR10が示す好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、3,6−ジオキソヘプチル基、3−スルホプロピル基、2−カルボキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、トリフロロエチル基等)、炭素数3〜12の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基、カルボキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基、カルボキシメチルフェニル基等)等が挙げられる。
【0052】
式(I)におけるXは、炭素数1〜12の脂肪族基を表す。好ましくは炭素数1〜8の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクテル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3,6−ジオキサペプチル基、2−オキソブチル基等)、炭素数3〜8の置換されてもよいアルケニル基(例えばプロピル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等)が挙げられる。Xのより好ましい脂肪族基としては、炭素数1〜4の置換されてもよいアルキル基が挙げられる。
【0053】
一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する有機ポリマーは公知の方法で合成することができる。例えば、「反応性ポリマーの合成と応用」(株)シーエムシー刊(1989年)、特公昭46−30711号、特開昭5−32931号等に記載の方法に従って、ポリマー中のヒドロキシ基をシリル官能性基に変性することにより容易に得られる。ヒドロキシ基含有樹脂としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)、小竹無二雄監修「大有機化学第19巻:天然高分子化合物I」朝倉書店(1960年)等に記載のものが挙げられる。
【0054】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トランガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0055】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール〔ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等〕、アリルアルコール共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体〔エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等〕、ヒドロキシ基を少なくとも1種含有するアクリルアミドもしくはメタクリルアミドのN−置換体の重合体又は共重合体〔N−置換基として、例えばモノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基等〕等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個のヒドロキシ基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0056】
親水性樹脂(C)の質量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは5×103〜4×105である。親水性樹脂(C)におけるシリル官能性基の含有量は、シリル官能性基を有する単位成分として、通常0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.2〜15mol%である。親水性樹脂(C)が多糖、蛋白質の場合には、単位成分はその構成単糖、アミノ酸を指す。但し、これら単位成分はシリル官能性基を複数有していてもよい。
【0057】
該官能性基は、重合体の繰り返し単位中の側鎖または重合体主鎖の末端に直接結合してもよいし、連結基を介して結合してもよい。かかる連結基としては、いずれの結合基でもよいが、例えば具体的に挙げるとすれば、−O−、−CR31R32−〔ここで、R31及びR32は同じでも異ってもよく、各々水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−OH基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、2−クロロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、プロピル基、ブチル基、等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等)、フェニル基等を表す〕、−S−、−NR33−〔ここでR33は水素原子又は炭化水素基{炭化水素基として具体的には炭素数1〜8の炭化水素基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基等)が挙げられる}を表す〕、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONR33−、−SO2NR33−、−SO2−、−NHCONH−、−NHCOO−、−NHSO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、等の結合基の単独又はこれらの2以上の組合せにより構成された連結基等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(I)で示されるシリル官能性基を含有する親水性樹脂(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの親水性樹脂(C)を用いることにより、塗膜を形成後の加熱乾燥の工程で[−Si(R10)j(OX)3−j]基の縮合反応により容易に式(IV)で示されるシロキサン結合を形成し、樹脂間の橋架けが起こり、膜を硬化して親水性層の膜強度が充分に保持される。本発明の親水性層の表面は充分に親水性であると同時に、下層の光熱変換層との密着性が極めて良好となる。
【0059】
【化2】
【0060】
更に、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、平均粒子径5〜50nmの無機顔料超微粒子を併用することが好ましい。
このコロイド状無機顔料超微粒子としては、従来公知の化合物が挙げられる。好ましくは、シリカゾル、アルミナゾル、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムである。より好ましくは、シリカゾル及び/又はアルミナゾルである。
【0061】
また本発明において、フィラーと無機顔料超微粒子の存在割合は40〜70対60〜30の質量比であり、好ましくは45〜60対55〜40質量比である。使用割合をこの範囲内に調整することにより、親水性層の膜強度が十分に保持されるとともに、印刷版としての保水性と耐刷性が良好なものとなる。
【0062】
その他、ゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、前記の山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」等に記載されている化合物を用いることができる。
【0063】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0064】
また、本発明のゼラチン系バインダーを用いた親水性層には、親水性層塗布分散物の塗布性を良好とするために、界面調節剤(製面剤)、消泡剤、膜pHを調整するための緩衝剤等の各種添加剤を併用してもよい。
【0065】
本発明におけるゼラチン系バインダーを用いた親水性層の厚さは、1m2当たりの親水性層組成物の塗布量(乾燥後)で示して、0.5〜30g程度とすることが好ましい。
【0066】
(2)「無機−有機の複合ポリマー系バインダー」
この無機−有機の複合ポリマー系バインダーでは、親水性バインダーポリマーとして、金属原子及び/又は半金属原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有するポリマー(以下、「(半)金属含有ポリマー」と称することもある)と、このポリマーと水素結合を形成し得る基を有する有機ポリマー(A)及び下記一般式(II)で示される重合体主鎖の末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーとの複合体である。
【0067】
【化3】
【0068】
〔式(II)中、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表す。Lは単結合又は有機連結基を表し、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。〕
【0069】
「(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体」とは、ゾル状物質及びゲル状物質を含む意味に用いる。(半)金属含有ポリマーは「酸素原子−金属原子又は半金属原子−酸素原子」から成る結合を主として含有するポリマーを示す。ここで、(半)金属含有ポリマーは、金属原子及び半金属原子の両方を含有していてもよい。好ましくは、半金属原子のみを含有するポリマー、半金属原子と金属原子とを含有するポリマーである。
【0070】
(半)金属含有ポリマーは、下記一般式(III)で示される化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることが好ましい。ここで、加水分解重縮合とは、反応性基が酸性ないし塩基性条件下で、加水分解、縮合を繰り返し、重合していく反応である。
【0071】
一般式(III) (R0)kM0(Y)Z−k
【0072】
〔一般式(III)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、M0は3〜6価の金属又は半金属を表し、zはM0の価数を表し、kは0、1、2、3、又は4を表す。但し、z−kは2以上である。〕
【0073】
上記化合物は、単独または2種以上を組み合わせて(半)金属含有ポリマーの製造に用いられる。
【0074】
以下に一般式(III)で示される(半)金属化合物について詳しく説明する。
一般式(III)中のR0は、好ましくは、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基{例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換され得る基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR′基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″)(R″は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表し、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3基、−CONHR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい)}、
【0075】
炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されていてもよい)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、
【0076】
又は、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えばヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表す。
【0077】
反応性基Yは、好ましくは、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す)、−OR11基、−OCOR12基、−CH(COR13)(COR14)基、−CH(COR13)(COOR14)基又は−N(R15)(R16)基を表す。
【0078】
−OR11基において、R11は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキシ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表す。
【0079】
−OCOR12基において、R12は、R11と同様の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R0中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。
【0080】
−CH(COR13)(COR14)基及び−CH(COR13)(COOR14)基において、R13は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等)を表し、R14は炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、カルボキシベンジル基、クロロベンジル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、カルボキシフェニル基、ジエトキシフェニル基等)を表す。
【0081】
また、−N(R15)(R16)基において、R15及びR16は、互いに同じでも異なってもよく、各々、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR11基のR11と同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは、R15とR16の炭素数の総和が12ケ以内である。
【0082】
(半)金属M0は、好ましくは、遷移金属、希土類金属、周期表III〜V族の金属又は半金属が挙げられる。より好ましくはAl、Si、Sn、Ge、Ti、Zr等が挙げられ、更に好ましくはAl、Si、Sn、Ti、Zr等が挙げられる。特にSiが好ましい。
【0083】
一般式(III)で示される(半)金属化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、
【0085】
テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、
【0086】
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシンラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
【0087】
Ti(OR17)4(ここで、R17はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す)、TiCl4、Zn(OR17)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、Sn(OR17)4、Sn(CH3COCHCOCH3)4、Sn(OCOR17)4、SnCl4、Zr(OR17)4、Zr(CH3COCHCOCH3)4、Al(OR17)3。
【0088】
次に、上記(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B))について説明する。
【0089】
本発明の有機ポリマー(A)は、(半)金属含有ポリマーと水素結合を形成し得る(以下、特定の結合基とも言う)を有する。この特定の結合基としては、好ましくは、アミド結合(カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む)、ウレタン結合及びウレイド結合から選ばれる少なくとも一種の結合及び水酸基を挙げることができる。
【0090】
有用な有機ポリマー(A)として、上記の特定の結合基を少なくとも1種、繰り返し単位成分としてポリマーの主鎖及び/又は側鎖に含有するものを挙げることができる。好ましくは、繰り返し単位成分として、−N(R18)CO−、−N(R18)SO2−、−NHCONH−及び−NHCOO−から選ばれる少なくとも1種の結合がポリマーの主鎖及び/又は側鎖に存在する成分、及び/又は−OH基を含有する成分が挙げられる。上記アミド結合中のR18は、水素原子又は有機残基を表し、有機残基としては、一般式(III)中のR0における炭化水素基及びヘテロ環基と同一の内容のものが挙げられる。
【0091】
ポリマー主鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、−N(R18)CO−結合又はN(R18)SO2−結合を有するアミド樹脂、−NHCONH−結合を有するウレイド樹脂、−NHCOO−結合を含有するウレタン樹脂等が挙げられる。
【0092】
アミド樹脂製造に供されるジアミン類とジカルボン酸類又はジスルホン酸類、ウレイド樹脂に用いられるジイソシアナート類、ウレタン樹脂に用いられるジオール類としては、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」第I章(株)培風舘刊(1986年)、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0093】
また、他のアミド結合を有するポリマーとして、下記一般式(VI)で示される繰り返し単位含有のポリマー、ポリアルキレンイミンのN−アシル化体又はポリビニルピロリドンとその誘導体が挙げられる。
【0094】
【化4】
【0095】
式(VI)中、Z1は−CO−、−SO2−又は−CS−を表す。R20は式(III)中のR0と同一の内容のものを表す。r1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)を表す。r1は同じでも異なってもよい。pは2又は3の整数を表す。
【0096】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を含有するポリマーのうち、Z1が−CO−を表し、pが2を表すポリマーは、置換基を有していてもよいオキサゾリンを触媒の存在下で開環重合することにより得られる。触媒としては、例えば、硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸アルキルエステルなどの硫酸エステルやスルホン酸エステル;ヨウ化アルキル(例えばヨウ化メチル)などのハロゲン化アルキル;フリーデルクラフツ触媒のうち金属フッ素化物;硫酸、ヨウ化水素、p−トルエンスルホン酸などの酸や、これらの酸とオキザゾリンとの塩であるオキサゾリニウム塩などが使用できる。なお、このポリマーは単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、他のポリマーにこのポリマーがグラフトした共重合体であってもよい。
【0097】
オキサゾリンの具体例としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ジクロロメチル−2−オキサゾリン、2−トリクロロメチル−2−オキサゾリン、2−ペンタフルオロエチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−メトキシカルボニルエチル−2−オキサゾリン、2−(4−メチルフェニル)−2−オキサゾリン、2−(4−クロロフェニル)−2−オキサゾリンなどが挙げられる。好ましいオキサゾリンには、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリンなどが含まれる。このようなオキサゾリンのポリマーは一種又は二種以上使用できる。
【0098】
一般式(VI)で示される繰り返し単位を有する他のポリマーについても、オキサゾリンの代わりにチアゾリン、4,5−ジヒドロ−1,3−オキサジン又は4,5−ジヒドロ−1,3−チアジンを用いて同様に得ることができる。
【0099】
ポリアルキレンイミンのN−アシル化体としては、カルボン酸ハライド類との高分子反応で得られる−N(CO−R21)−を含むカルボン酸アミド体、又はスルホニルハライド類との高分子反応で得られる−N(SO2−R21)−を含むスルホンアミド体(ここで、R21は上記式(VI)におけるR20と同義である)が挙げられる。
【0100】
また、ポリマーの側鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、少なくとも1種の上記特定の結合基を有する成分を主成分として含有するものが挙げられる。このような成分としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、ビニル酢酸アミド又は以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0101】
なお、以下の構造式における記号は次の内容を表す。
a1:−H又は−CH3
T0:−H、−CH3、−(CH2)2OCH3、又は−(CH2)2N(CH3)2
L0:―CxH2x+1、−(CH2)2OCH3、−(CH2)2N(CH3)2、
ベンジル又は−(CH2)xOH
L1:−H、L0又は−(CH2)2CONH2
x:1〜4の整数
y:0又は1
z:0、1又は2
【0102】
【化5】
【0103】
【化6】
【0104】
一方、水酸基含有の有機ポリマーとしては、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には小竹無二雄監修「大有機化学19、天然高分子化合物I」朝倉書店刊(1960年)、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー刊(1985年)等に記載のものが挙げられる。
【0105】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラカガントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0106】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等)、アリルアルコール共重合体、水酸基を少なくとも1種含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体もしくは共重合体(エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、等)、水酸基を少なくとも1種含有するアクリルアミド又はメタクリルアミドのN−置換体の重合体もしくは共重合体(N−置換基として、例えば、モノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基、等)等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個の水酸基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0107】
上記の特定の結合基を有する有機ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは103〜106、より好ましくは103〜4×105である。
【0108】
次に、本発明の一般式(II)で示される末端にシランカップリング基を有する有機ポリマー(B)について説明する。
前記一般式(II)において、R01、R02、R03およびR04はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、中でも、炭素数8以下の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R01、R02、R03およびR04は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0109】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0110】
N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、
【0111】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(アルキル)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(アリール)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(アルキル)(アリール))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(アルキル))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(アリール))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0112】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(K1CO−)におけるK1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0113】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0114】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0115】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0116】
Lは単結合又は有機連結基を表す。ここで、Lが有機連結基を表す場合、Lは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0117】
【化7】
【0118】
また、Wは−NHCOR05、−CONH2、−CON(R05)2、−COR05、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R05は、炭素数1〜8の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。また、−CON(R05)2のように複数のR05を有する場合、R05は同一でも異なっていてもよく、更にR05同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R05はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R01、R02、R03およびR04がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0119】
R05としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
【0120】
また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
Wとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3 −NMe4、モルホリノ基等が好ましい。
【0121】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)の分子量は、質量平均分子量(Mw)で、好ましくは200〜100000、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは500〜20000である。
【0122】
本発明に好適な有機ポリマー(B)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
【化8】
【0124】
本発明に係る有機ポリマー(B)は、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基の導入されたポリマーが合成できる。
【0125】
【化9】
【0126】
ここで式(i)及び(ii)において、R01〜R04、L、W、n及びmは、前記記一般式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0127】
一般式(II)で表される有機ポリマー(B)を合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0128】
有機ポリマー(有機ポリマー(A)及び(B)を含む。以下、同様)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーとの複合体を形成する場合に、有機ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、(半)金属含有ポリマーと有機ポリマーの割合は広い範囲で選択できるが、好ましくは(半)金属含有ポリマー/有機ポリマーの質量比で10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。この範囲において、親水性層の膜の強度、印刷時の湿し水に対する耐水性が良好となる。
【0129】
本発明の複合体を形成する親水性バインダーポリマーは、前記(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成した(半)金属含有ポリマーのヒドロキシ基と、有機ポリマー中の前記特定の結合基とが水素結合作用等により均一な有機、無機ハイブリッドを形成し、相分離することなくミクロ的に均質となる。(半)金属含有ポリマーに炭化水素基が存在する場合にはその炭化水素基に起因して、有機ポリマーとの親和性がさらに向上するものと推定される。また、本発明の複合体は成膜性に優れている。
【0130】
本発明の複合体は、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合し、有機ポリマーと混合することにより製造するか、又は有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物を加水分解重縮合することにより製造される。好ましくは、有機ポリマーの存在下、前記(半)金属化合物をゾル−ゲル法により加水分解重縮合することにより、本発明の有機・無機ポリマー複合体を得ることができる。生成した有機・無機ポリマー複合体において、有機ポリマーは、(半)金属化合物の加水分解重縮合により生成したゲルのマトリックス(すなわち無機(半)金属酸化物の三次元微細ネットワーク構造体)中に均一に分散している。
【0131】
上記ゾル−ゲル法は、従来公知のゾル−ゲル法を用いて行なうことができる。具体的には、「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(株)技術情報協会(刊)(1995年)、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書に詳細に記載の方法に従って実施できる。
【0132】
無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層用の塗布液は、水系溶媒が好ましく、更には塗液調整時の沈殿抑制による均一液化のために水溶性溶媒を併用する。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸メチル、エチレングリコールモノアセテート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0133】
更に、前記の一般式(III)で示される(半)金属化合物の加水分解及び共縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。
【0134】
触媒は、酸又は塩基性化合物をそのままか、あるいは水又はアルコール等の溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解及び重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
【0135】
酸性触媒又は塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、構造式RCOOHのRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0136】
その他、無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層には、膜強度をより向上させるために架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」培風館(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0137】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談杜(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0138】
本発明の無機−有機の複合ポリマー系バインダーを用いた親水性層は、親水性層塗布液を後述の光熱変換層上に、従来公知の塗布方法のいずれかを用いて塗布、乾燥することにより成膜される。
形成される親水性層の膜厚は0.2〜10g/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜8g/m2である。この範囲内で均一で強度が充分な膜が作製される。
【0139】
(表面グラフト親水性層)
本発明においては、上記の親水性層表面に、親水性官能基を有する高分子化合物が化学的に結合されている表面グラフト親水性層を設けることができる。この表面グラフト親水性層は、親水性層表面を薄く覆った形の親水性層を形成している。表面グラフト親水性層を設けることにより、さらに親水性層の保水性を向上できる。
【0140】
表面グラフト親水性層では、少なくとも1つの親水性官能基を有する高分子化合物の末端が、平版印刷版の親水性層に直接又は他の結合用の高分子化合物(以下、この結合用の高分子化合物を特に「幹高分子化合物」と称することもある)を介して、化学的に結合している。
【0141】
上記のグラフト部を構成する親水性官能基を有する高分子化合物は、特に限定的ではないが、直鎖状高分子化合物であることが好ましい。親水性官能基としては、アミド基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸、ホスホン酸もしくはアミノ基又はそれらの塩、2−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はそのハロゲン化水素酸塩等が挙げられる。
【0142】
これらの親水性官能基は、上記グラフト部を構成する高分子化合物中に少なくとも1つ含有されていればよく、例えば、直鎖状高分子化合物の親水性層との結合部と反対側の末端に親水性官能基を有する場合や、直鎖状高分子が親水性モノマーを重合成分又は共重合成分として含有する場合等が挙げられる。
【0143】
本発明において用いることのできる親水性モノマーとしては、上記親水性官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。特に有用な親水性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、イタコン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン酸塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミドもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレートもしくは3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはアリルアミン又はそのハロゲン化水素酸塩等を挙げることができる。
【0144】
本発明の表面グラフト親水性層は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて容易に製造することができる。グラフト重合とは高分子鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子鎖が固体表面を形成しているときには表面グラフト重合と呼ばれる。本発明の表面グラフト親水性層は、親水性層表面上において表面グラフト重合を行うことにより容易に得ることができる。
【0145】
本発明の表面グラフト親水性層を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる、たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135に記載される、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法等の表面グラフト重合法、吸着技術便覧NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695に記載される、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法等が挙げられる。また、光グラフト重合法の具体的方法としては特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0146】
本発明の表面グラフト親水性層を作成する方法としては、これらの他に、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基などの反応性官能基を付与し、これと平版印刷版の親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成する方法を挙げることもできる。
【0147】
また、親水性層表面に化学的に結合されている幹高分子化合物と、該幹高分子化合物に高分子鎖の末端で結合されている親水性官能基を有する直鎖状高分子化合物とからなる表面グラフト親水性層を製造する場合には、親水性層表面の官能基とカップリング反応しうる官能基を幹高分子化合物の側鎖に付与し、グラフト鎖として親水性官能基を有する高分子化合物鎖を組み込んだグラフト型高分子化合物を合成し、この高分子と親水性層表面官能基とのカップリング反応により形成することができる。かかる幹高分子化合物の具体例としては、前述の(半)金属含有ポリマーと複合体を形成する有機ポリマー(A)又は(B)として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0148】
上記の光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法、カップリング法のうち、製造適性の点からはプラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法が特に優れている。
【0149】
具体的には、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY. Ikada et al., Macromolecules vol.19, page 1804 (1986)などの記載の方法にて作成することができる。親水性層表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることにより得ることができる。
【0150】
本発明の表面グラフト親水性層の膜厚は、好ましくは0.01〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.1〜5g/m2の範囲である。この範囲内で、本発明の効果を十分に発揮し、更に良好な非画像部の防汚れ性が達成されるとともに、耐刷性も良好であり、好ましい。
【0151】
本発明においては、後述する光熱変換層上に形成された親水性層表面の平滑性(表面グラフト親水性層がある場合はグラフト親水性層表面の平滑性)が、ベック平滑度で5000(秒/10ml)以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下が特に好ましい。ここでベック平滑度は、ベック平滑度試験機により測定することができ、高度に平滑に仕上げられた中央に穴のある円形のガラス板上に、試験片を一定圧力(1kg/cm2)で押しつけ、減圧下で一定量(10ml)の空気が、ガラス面と試験片との間を通過するのに要する時間(秒)で表される表面平滑性の一つの指標である。
【0152】
〔光熱変換層〕
本発明に用いられる光熱変換層は、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層であり、これらの機能を有する公知の光熱変換層が使用可能である。光熱変換材料としては、従来、レーザー光源を赤外線レーザーとした場合、赤外線吸収色素、赤外線吸収顔料、赤外線吸収性金属、赤外線吸収金属酸化物など書き込みのレーザーに使用する波長の光を吸収する各種の有機および無機材料が使用可能であることが知られている。これらの材料は単独膜の形態で、もしくはバインダー、添加剤など他の成分との混合膜の形態で使用される。単独膜の場合には、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛等の金属および合金や金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ハロゲン化物、有機色素などを蒸着法およびスパッタリング法等により支持体上に適用することで形成することができる。
【0153】
また、混合膜の場合には、光熱変換材料を所望により膜形成性を有するバインダーポリマーや他の成分とともに適当な溶媒或いは分散媒に溶解もしくは分散した塗布液を調製し、それを用いた塗布法により形成することができる。以下、混合膜の各構成成分について説明する。
【0154】
(光熱変換材料)
本発明に使用される光熱変換材料としては、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換し得る公知の有機及び無機顔料、染料などの有機色素、金属及びその酸化物などの化合物より適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、有機顔料としては、酸性カーボンブラック、塩基性カーボンブラック、中性カーボンブラックなど各種カーボンブラック、分散性改良等のために表面修飾又は表面コートされた各種カーボンブラック、ニグロシン類等、有機色素としては、「赤外増感色素」(松岡著 Plenum Press, New York,NY (1990))、米国特許4、833、124号、ヨ−ロッパ特許公開321、923号、米国特許4、772、583号、米国特許4、942、141号、米国特許4、948、776号、米国特許4、948、777号、米国特許4、948、778号、米国特許4、950、639号、米国特許4、912、083号、米国特許4、952、552号、米国特許5、023、229号などに記載の各種化合物、金属及び金属酸化物としてはアルミニウム、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化チタン等、この他にポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなども使用可能である。光熱変換層を混合膜として形成する場合に、その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、5質量%〜50質量%、好ましくは8質量%〜45質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%である。
【0155】
(バインダー)
光熱変換層を混合膜として形成する場合に使用されるバインダーとしては、フィルム形成能を有し、光熱変換剤を溶解又は分散しうる公知のポリマーが使用される。これらの例としてはニトロセルロース、エチルセルロースなどのセルロース、セルロース誘導体類、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、イソプレン、スチレン−ブタジエンなどの各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル類の単独重合体および酢酸ビニル−塩化ビニルなどの共重合体、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合系各種ポリマーおよび、「J. Imaging Sci.,P59−64 ,30(2),(1986)(Frechetら)」や「Polymers in Electronics (Symposium Series,P11, 242, T.Davidson,Ed., ACS Washington,DC(1984)(Ito,Willson)」、「Microelectronic Engineering, P3−10,13(1991)(E. Reichmanis,L.F.Thompson)」に記載のいわゆる「化学増幅系」に使用されるバインダー等が使用可能である。これら中でも、光熱変換層を架橋により硬膜するための架橋反応に用いることが可能な官能基を有するポリマーが好ましい。好ましい官能基としては、例えば、−OH、−SH、−NH2、−NH−、−CO−NH2、−CO−NH−、−O−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CO−O−、−CO−O−、−CS−OH、−CO−SH、−CO−OCO−、−SO3H、−SO2(O−)、−PO3H2、−PO(O−)2、−SO2−NH2、−SO2−NH−、−CO−CH2−CO−、−CH=CH−、−CH=CH2、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2や、下記に示す構造の官能基等が挙げられ、なかでも、特に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、重合性ビニル基が好ましい。
【0156】
【化10】
【0157】
光熱変換層の形成に用いられる好ましいバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を含有するモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、グリシジルメタアクリレート等のエポキシ基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、N−アルキルアクリルアミド、アクリルアミドの単独重合体もしくは共重合体、アミン類とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル又はアリルグリシジルとの反応物の単独重合体もしくは共重合体、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコールの単独重合体もしくは共重合体、ポリウレタン樹脂類、ポリウレア樹脂類、ポリアミド(ナイロン)樹脂類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、セルロース誘導体類等の縮合体が挙げられる。これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。その使用量は光熱変換層の総固形分質量に対して、20質量%〜90質量%、好ましくは25質量%〜80質量%、より好ましくは30質量%〜75質量%である。
【0158】
(添加剤)
光熱変換層を混合膜として形成する場合には、光熱変換剤とバインダー以外に添加剤を用いることが出来る。これらの添加剤は、光熱変換層の機械的強度を向上させたり、レーザー記録感度を向上させたり、光熱変換層中の分散物の分散性を向上させたり、支持体やプライマー層などの隣接する層に対する密着性を向上させるなど種々の目的に応じて添加される。例えば、光熱変換層の機械的強度や耐薬品性を向上させるために、光熱変換層を架橋する手段が考えらる。架橋反応としては、熱または光による共有結合形成、又は、多価金属塩によるイオン結合形成が可能であり、本発明においては、公知の架橋剤による光熱変換層の硬膜が可能である。用い得る公知の架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能アミン化合物、ポリオール化合物、多官能カルボキシル化合物、アルデヒド化合物、多官能(メタ)アクリル化合物、多官能ビニル化合物、多官能メルカプト化合物、多価金属塩化合物、ポリアルコキシシラン化合物、ポリアルコキシチタン化合物、ポリアルコキシアルミニウム化合物、ポリメチロール化合物、ポリアルコキシメチル化合物等が挙げられ、公知の反応触媒を添加し、反応を促進することも可能である。その使用量は光熱変換層の塗布液中の総固形分質量に対して、0質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜35質量%である。
【0159】
レーザー記録感度を向上させるために加熱により分解しガスを発生する公知の化合物を添加することが考えられる、この場合には光熱変換層の急激な体積膨張によりレーザー記録感度が向上できる。これらの添加剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4、4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジアミドベンゼン等を使用することができる。また、加熱により分解し酸性化合物を生成する公知の化合物を添加剤として使用することが出来る。これらを化学増幅系のバインダーと併用することにより、光熱変換層の構成物質の分解温度を大きく低下させ、結果としてレーザー記録感度を向上させることが可能である。これらの添加剤の例としては、各種のヨードニウム塩、スルフォニウム塩、フォスフォニウムトシレート、オキシムスルフォネート、ジカルボジイミドスルフォネート、トリアジンなどを使用することができる。
【0160】
光熱変換剤にカーボンブラックなどの顔料を用いた場合には、顔料の分散度がレーザー記録感度に影響を与えることがあるため、各種の顔料分散剤を添加剤として使用することも好ましい。光熱変換層と支持体、あるいは、隣接して設けられる親水性層などとの接着性を向上させるために、公知の密着改良剤(例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等)を添加しても良い。この他にも、塗布性を改良するための界面活性剤など各種の添加剤を目的に応じて使用することができる。
【0161】
光熱変換層を混合膜として形成する場合は、上記の各構成成分を適当な溶媒、分散媒に溶解あるいは分散して、支持体上に塗布、乾燥することにより形成される。ここで用い得る溶媒、分散媒としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールメチルエチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0162】
(膜厚)
光熱変換層の膜厚は、単独膜の場合には蒸着法およびスパッタリング法等にて薄膜が形成できる。この場合の膜厚は50Åから1000Å、好ましくは100Åから800Åである。混合膜の場合の膜厚は0.05μmから10μm、好ましくは0.1μmから5μmである。光熱変換層の膜厚は、薄すぎても、厚すぎても、レーザー記録感度の低下など好ましくない結果を与える。
【0163】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、通常の印刷機にセットできる程度のたわみ性を有し、同時に印刷時にかかる荷重に耐える寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごときプラスチックがラミネートされた紙又は金属板、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。
支持体の厚みは、25μmから3mm、好ましくは75μmから500μmが適当であるが、用いる支持体の種類と印刷条件により最適な厚さは変動する。一般には100μmから300μmが最も好ましい。
【0164】
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましい。
その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
【0165】
本発明においては、支持体と光熱変換層間の接着性向上、印刷特性向上等のために、支持体にサンドブラスト処理等による粗面化やコロナ処理等による表面改質を施したり、支持体と感熱層との間に中間層を設けることができる。
【0166】
例えば、アルミニウム板の粗面化は以下のように行うことができる。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0167】
上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0168】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、または電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0169】
本発明に用いられる中間層としては、例えば、特開昭60−22903号公報に開示されているような種々の感光性ポリマーを感熱層を積層する前に露光して硬化せしめたもの、特開昭62−50760号公報に開示されているエポキシ樹脂を熱硬化せしめたもの、特開昭63−133151号公報に開示されているゼラチンを硬膜せしめたもの、更に特開平3−200965号公報に開示されているウレタン樹脂とシランカップリング剤を用いたものや特開平3−273248号公報に開示されているウレタン樹脂を用いたもの等を挙げることができる。この他、ゼラチンまたはカゼインを硬膜させたものも有効である。更に、中間層を柔軟化させる目的で、前記の中間層中に、ガラス転移温度が室温以下であるポリウレタン、ポリアミド、スチレン/ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル/ブタジエンゴム、ポリイソプレン、アクリレートゴム、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリマーを添加しても良い。その添加割合は任意であり、フィルム層を形成できる範囲内であれば、添加剤だけで中間層を形成しても良い。また、これらの中間層には前記の目的に沿って、染料、pH指示薬、焼き出し剤、光重合開始剤、接着助剤(例えば、重合性モノマー、ジアゾ樹脂、シランカップリング剤等)、顔料、シリカ粉末や酸化チタン粉末等の添加物を含有させることもできる。また、塗布後、露光によって硬化させることもできる。一般に、中間層の塗布量は乾燥質量で0.1〜10g/m2の範囲が適当であり、好ましくは0.3〜8g/m2であり、より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0170】
また、本発明の支持体にポリエステル等の非導電性のものを用いる場合、感熱層と支持体の密着性向上及び帯電防止を目的として、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層より成る中間層を設けるのが好ましい。
【0171】
上記中間層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、及び/又はこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOが好ましい。
異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、SnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素、In2O3に対してSnなどの異種原子を30モル%以下、好ましくは10モル%以下の量をドープしたものを挙げることができる。
金属酸化物粒子は、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0172】
中間層に用いることができるマット剤としては、好ましくは平均粒径が0.5〜20μm、より好ましくは平均粒径が1.0〜15μmの粒径を持つ無機又は有機の粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の金属塩等が挙げられる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン及びそれらの共重合体の架橋粒子が挙げられる。
マット剤は、中間層中に1〜30質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0173】
中間層に用いることができるポリマーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の合成ポリマー等が挙げられる。
ポリマーは、中間層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0174】
また、本発明で使用する支持体は、ブロッキングを防止する観点から、支持体の裏面の最大粗さ深度(Rt)が少なくとも、1.2μm以上であることが好ましく、さらに、支持体の裏面(即ち、本発明の平版印刷版原版の裏面)が本発明の平版印刷版原版の表面上を滑る時の動摩擦係数(μk)が2.6以下であることが好ましい。
このため、支持体の裏面には、前述の中間層において示したのと同様なマット剤を含有するバックコート層を設けたり、サンドブラスト処理を施す等による粗面化が成されることが好ましい。
【0175】
〔その他の層〕
(親水性保護層)
本発明においては、親水性層の表面親水性の保護を目的とし、親水性層上に親水性保護層を設けても良い。親水性保護層としては、水又は湿し水により容易に除去されることが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール(ケン化度60%以上のポリビニルアセテート)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホスホン酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体及びその塩、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等の水溶性ポリマー溶液を塗布、乾燥することにより設けることができる。この場合の親水性保護層の乾燥質量は、0.01〜5g/m2が好ましく、より好ましくは、0.05〜2g/m2である。
【0176】
親水性保護層は他の成分として、種々の界面活性剤を含有してもよい。使用できる界面活性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が挙げられる。これらの具体例としては、前記した光熱変換層に用いられる界面活性剤と同じものが挙げられる。界面活性剤の添加量は、水可溶性層全固形分当たり、好ましくは0.01〜1%であり、更に好ましくは0.05〜0.5%である。
【0177】
親水性保護層は、特開2001−341448号記載のフッ素原子及び/又はケイ素原子を含有化合物、例えば、水溶性又は水分散性のフッ素系界面活性剤や水溶性又は水分散性のシリコーンオイルを含有することができる。これらの保護層の全固形分中のにおける割合は、0.05〜5%である。この使用割合の範囲において、積み重ね保存時の印刷用原版間のくっつきが防止できる。
【0178】
上記成分のほか、必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の低級多価アルコールも使用することができる。これら湿潤剤の使用量は親水性保護層中に0.1〜5.0%となる量が適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0%となる量である。以上の他に本発明の平版印刷用原版の親水性保護層の塗布液には、防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸ナトリウム等を0.005〜2.0%の範囲で添加できる。また、塗布液には消泡剤を添加することもできる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含まれ、その添加量は0.0001〜0.1%の範囲が好ましい。
【0179】
以上のごとき本発明の平版印刷用原版は、その最上層(すなわち、親水性層、表面グラフト親水性層又は親水性保護層)の表面の動摩擦係数が、2.5(μk)以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜1.2(μk)である。ここで、表面の動摩擦係数は、標準ASTMD1894に従った測定法により測定したものである。すなわち下にある材料の表面が上にある材料の裏面と接触しているように平版印刷用原版が置かれる。該材料の裏面は支持体に対して光熱変換層・親水性層・親水性保護層が設けられていない面を意味し、表面は支持体に対して光熱変換層・親水性層・親水性保護層が設けられている面を意味する。同摩擦係数については3000枚積み重ね35℃75%の温湿度で3日間放置した後、一番下のサンプルを測定した。
【0180】
この数値内の動摩擦係数に調整することにより、水溶性高分子化合物に起因する長期積み重ね保存時の平版印刷版用原版間のくっつきを防止するとともに、製版装置内における良好な搬送性を可能にすることができる。これらは、前記の使用材料の適宜の組み合わせによって行われる。
【0181】
[製版方法]
本発明の平版印刷用原版を製版する際、記録に用いられるレーザー光エネルギーが、本発明の平版印刷用原版の光熱変換層において吸収されて熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーにより光熱変換層の一部又は全体において、燃焼、融解、分解、気化、爆発等の化学反応や物理変化が引き起こされ、結果として光熱変換層と親水性層間の密着性が低下する。レーザーを照射した部分においてのみ、このような密着性の低下が生じるため、対応する部分の親水性層を選択的に容易に除去することが可能となり、除去された部分が親インク領域となり画像部を形成する。
【0182】
本発明においては平版印刷用原版を露光するのにレーザー光が使用される。使用されるレーザーは親水性層が除去されるのに十分な密着力の低下が起きるのに必要な露光量を与えるものであれば特に制限はなく、Arレーザー、炭酸ガスレーザーのごときガスレーザー、YAGレーザーのような固体レーザー、そして半導体レーザーなどが使用できる。通常、出力が50mWクラス以上のレーザーが必要となる。保守性、価格などの実用的な面からは、半導体レーザーおよび半導体励起の固体レーザー(YAGレーザーなど)が好適に使用される。これらのレーザーの記録波長は赤外線の波長領域であり、800nmから1100nmの発振波長を利用することが多い。また、特開平6−186750号公報に記載されている如きイメージング装置を用いて露光することも可能である。
【0183】
上記の方法で露光された本発明の平版印刷用原版は、レーザー露光中にレーザー露光部(画像部)の親水性層が除去される構成であってもよく、さらに、必要な場合は、レーザー露光後に、レーザー露光部(画像部)の親水性層が除去される工程を伴う構成であってもよい。レーザー露光部の親水性層の除去(現像処理)は、例えば、吸引、粘着シートの圧着・剥離、処理液の存在下又は非存在下において、現像用パッドや現像用ブラシ等の擦り部材により版面を擦ることにより実施される。本発明において使用される処理液としては、安全性が良好で、引火性が低いこと、及び親水性層表面の親水性を損なわないことなどを要求されるため、水または水を主成分とする水溶液が好ましく、単に水(水道水、純水、蒸留水等)や界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系)の水溶液等が一般的に使用可能である。
【0184】
また、現像性向上のために有機溶剤を使用することも可能であり、処理液に使用可能な溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)又はガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、又はハロゲン化炭化水素(トリクレン等)や、下記の極性溶剤が例示される。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等);エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート等);その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等)などが挙げられる。
【0185】
上記有機溶剤系処理液に水を添加したり、上記有機溶剤を界面活性剤等を用いて水に可溶化したものも使用可能であり、処理液に、溶剤を含有する場合は、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。また、処理液に、アルカリ性剤(例えば、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、ケイ酸塩類等)又は酸性剤(例えば、リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、ホウ酸、アミノ酸類等)を添加したものも使用可能である。処理液の温度は、任意の温度であるが、好ましくは10℃〜50℃の範囲で使用される。
【0186】
レーザー露光部の親水性層の除去は、上記処理液を使用するものの他、例えば、レーザー露光後の印刷版を印刷機の版胴上に装着し、印刷機上における湿し水及び/又はインクの付けローラーと印刷版との接触により実施する、所謂、機上現像とすることも可能である。このようにして、平版印刷用原版の画像部における親水性層が除去され、得られた平版印刷版はインクを適用され、印刷に用いられる。
【0187】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0188】
実施例1
[支持体の作製]
両面にコロナ処理を施した厚さ180μmのポリエチレンテレフタレートの片面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のプライマー層を形成した。
【0189】
(プライマー層塗布液1)
・ポリエステル系ラテックス(ペスレジンA−520、
高松油脂(株)製、固形分30質量%) 8g
・メラミン化合物(スミテックスレジンM−3、住友化学工業(株)製、
有効成分濃度:80質量 6g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 4.8g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、
エマルゲン911 花王(株)製) 0.7g
・ポリスチレン(Nipol UFN1008、
日本ゼオン(株)製、固形分20質量%) 0.04g
・蒸留水 81g
【0190】
次いで、プライマー層と反対の面に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(180℃、30秒)し、乾燥塗布量0.2g/m2のバック層を形成した。
【0191】
【0192】
さらに、バック層の上に、下記の塗布液を塗布、加熱乾燥(170℃、30秒)し、乾燥塗布量0.05g/m2の保護層を形成し支持体を作製した。
【0193】
(保護層塗布液)
・ポリオレフィン系ラテックス(ケミパールS−120、
三井化学(株)製、固形分27質量%) 6.2g
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、日産化学(株)製) 1.2g
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩水溶液(サンデッドBL、
三洋化成工業(株)製、44質量%) 0.6g
・エポキシ化合物(デナコールEX−614B、
ナガセ化成(株)製、有効成分濃度:100質量%) 0.6g
・蒸留水 90g
【0194】
[カーボンブラック分散液の作成]
下記の混合液をペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で30分間分散した後、ガラスビーズをろ別して、カーボンブラック分散液を作成した。
【0195】
(カーボンブラック分散液)
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 4.0g
・ソルスパースS20000(ICI社製) 0.27g
・ソルスパースS12000(ICI社製) 0.22g
・メチルエチルケトン 20g
・ガラスビーズ 120g
【0196】
[光熱変換層の形成]
前記のプライマー層上に、下記の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥質量1g/m2の光熱変換層を形成した。
【0197】
(光熱変換層塗布液1)
・上記カーボンブラック分散液 20g
・末端−OH基のポリウレタン樹脂(イソホロンジイソシアネート/ブタンジ
オール=100/102(質量比)の縮合反応物) 10g
・チタボンド50(日本曹達(株)製、チタンジイソプロポキサイドビス
(2,4−ペンタジオネート)の約75%イソプロパノール溶液)6.7g
・メチルエチルケトン 45g
・プロピレングルコールモノメチルエーテル 45g
【0198】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物1Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で10分間分散した後、更に、組成物1Bを33g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスビーズを濾別して親水性層塗布液を得た。
【0199】
【0200】
(組成物1B)
・テトラエトキシシラン 92g
・エタノール 163g
・水 163g
・硝酸 0.1g
【0201】
[親水性層の形成]
次に、上記親水性層塗布液を前記光熱変換層上に塗布し、加熱(140℃、5分)、乾燥することにより、乾燥質量2g/m2の親水性層を形成した。
【0202】
[製版及び印刷]
このようにして得られた平版印刷用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSにて、版面エネルギー300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール(容量比1/89/10)からなる湿し水と、大日本インキ化学工業(株)製ジオスG墨インキを用い、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行ったところ、問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0203】
比較例1
親水性層塗布液の作製を下記のように変えた。それ以外は実施例1と同様にして、比較用の平版印刷用原版を作製した。
【0204】
[親水性層塗布液の作製]
下記の組成物2Aを、ペイントシェーカー(東洋精機(株))を用いてガラスビーズと共に室温で5分間分散した後、更に、実施例1に記載の組成物1Bを15g添加し、室温で1分間分散した後、ガラスビーズを濾別して親水性層用分散組成物を得た。
【0205】
【0206】
この平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、刷り出し初期は、印刷物の非画像部の汚れは実用上問題のないレベルだったが、更に印刷を継続したところ、非画像部の汚れが発生し、良好な印刷物を得ることができなかった。
【0207】
実施例2
実施例1で形成した平版印刷用原版の親水性層表面を平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記条件で酸素グロー処理を行った。
【0208】
酸素グロー処理条件
(初期真空) 1.2×10−3Pa
(アルゴン圧力) 0.9Pa
(RFグロー) 1.4KW
(処理時間) 60sec
【0209】
次に、グロー処理した上記平版印刷用原版を窒素バブルしたアクリル酸水溶液(20%)に60℃にて4時間浸漬した。浸漬した膜を流水で10分間洗浄することによって、親水性層表面にアクリル酸がグラフトポリマー化した表面グラフト親水性層を有する平版印刷用原版を得た。
表面グラフト親水性層の質量(グラフト量)を質量法で測定したところ、1.25g/m2であった。
【0210】
次いで、実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0211】
実施例3
親水性層塗布液の作製において、ポリビニルアルコールを下記により合成した親水性有機ポリマー(1)に変えた以外は実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0212】
[親水性有機ポリマー(1)の合成]
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、及びジメチルホルムアミド51.3gを入れて、窒素気流下で65℃まで加熱し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで冷却して、酢酸エチル1.5リットル中に投入したところ固体が析出した。その後、ろ過を行い、十分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により質量平均分子量は5000であることが判った。
【0213】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0214】
実施例4〜9
親水性層塗布液の作製において、チタン酸ストロンチウムを表1に示したフィラーに変えた以外は実施例1と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0215】
【表1】
【0216】
実施例10〜15
親水性層塗布液の作製において、チタン酸ストロンチウムを表1に示したフィラーに変えた以外は実施例3と同様にして、各々の平版印刷用原版を作製した。次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0217】
実施例16
[支持体の作製]
厚さ175μmの表面コロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記組成の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥膜厚0.2μmのプライマー層を形成した。
(プライマー層塗布液2)
・塩素化ポリエチレン
{−(C2H4−yCly)n−(式中、y=1.7,n=200)} 1.0g
・メチルエチルケトン 10g
・シクロヘキサン 100g
【0218】
[光熱変換層の形成]
前記のプライマー層上に、蒸着真空度5×10−5Torrの条件下に、Tiを抵抗加熱により蒸着し、光熱変換層を形成した。この時の光熱変換層の厚みは、200Åであり、光学濃度は、0.6であった。
【0219】
次いで、前記光熱変換層上に、実施例1と同様にして、親水性層を形成し、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0220】
実施例17
実施例16で形成した平版印刷用原版の親水性層表面を実施例2と同様に処理して、親水性層表面にアクリル酸がグラフトポリマー化した表面グラフト親水性層を有する平版印刷用原版を得た。
次いで、実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0221】
実施例18
光熱変換層の形成に、下記塗布液を用いる以外は、実施例1と同様にして、平版印刷用原版を作製した。
【0222】
(光熱変換層塗布液2)
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1009、ジャパンエポキシレジン(株)製) 8.0g
・ビスフェノールA−エピクロロヒドリンのエポキシ樹脂
(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン(株)製) 2.0g
・下記赤外線吸収染料(A) 2.0g
・エチレングリコールモノメチルエーテル 165g
・メチルエチルケトン 85g
【0223】
【化11】
【0224】
次いで、得られた平版印刷用原版を実施例1と同様に製版及び印刷を行ったところ、実施例1と同様に、問題なく機上現像することができ、印刷可能であり、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0225】
【発明の効果】
本発明の平版印刷用原版は、ディジタル信号に基づいたレーザー走査露光による画像記録が可能であり、簡易な現像処理操作による製版、あるいは、現像操作の必要のない製版が可能であり、耐刷性、防汚れ性および画像再現性に優れる。
Claims (1)
- 支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、並びに、フィラー及び親水性バインダーポリマーを含有する親水性層をこの順に有することを特徴とする平版印刷用原版。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002192214A JP2004034401A (ja) | 2002-07-01 | 2002-07-01 | 平版印刷用原版 |
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JP2011148315A (ja) * | 2004-08-24 | 2011-08-04 | Fujifilm Corp | 平版印刷版原版および平版印刷方法 |
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- 2002-07-01 JP JP2002192214A patent/JP2004034401A/ja active Pending
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