JP2004058394A - 記録ヘッド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】濾過手段20において、フィルタ23を第一濾過領域23a及び第二濾過領域23bの2箇所の領域に分割する。フィルタ23において、第二濾過領域23bのインクに対する濡れ性は第一濾過領域23aのインクに対する濡れ性よりも高い構成とする。インクに対する濡れ性を低くしたことでインク中の気泡の透過性が高くなった第一濾過領域23aはインク送出管27側の端部に配置する。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録方法により記録媒体に画像を形成する記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式により記録媒体に対して画像形成を行なうインクジェットプリンタは、インクを記録媒体に向けて吐出するための吐出口を複数個有した記録ヘッドを備えて構成される。
【0003】
インクジェットプリンタにより形成される画像の解像度の向上は、例えば記録ヘッドに細かいピッチで吐出口を設置し、記録媒体上に形成可能なドットの単位面積あたりの数を増加させることで実現可能である。また、インクジェットプリンタの画像形成速度は、吐出口が配置される列を長くすることにより、記録ヘッド及び記録媒体の移動を伴なわない各吐出口からの1回あたりの吐出によってインクドットを形成可能な領域を拡大することで実現可能である。
【0004】
インクジェットプリンタの高解像度化、高速化を上述のような方法で実現するため、インクジェットプリンタの記録ヘッド1個あたりに備えられた吐出口の数は近年、大きく増大する傾向がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、記録ヘッド内部には、ごみや気泡といった異物に阻害されることなく安定して吐出口からインクが吐出されるよう、外部のインクタンクから導入されたインクから異物をフィルタによって除去して吐出口まで供給するための濾過手段が備えられている。
【0006】
インクジェットプリンタの高解像度化、高速化のため、多数設置されるようになった吐出口に向けて安定してインクを供給する方法として、例えば濾過手段に広い面積のフィルタを設置して濾過手段における流路抵抗を軽減するという方法がある。しかし、こうしてフィルタの面積を大きくした場合、インク中の気泡がフィルタによって捕捉されたまま、インクの吸引や空吐出を行なう時にも排出されずに内部に滞留するという問題が発生する。
【0007】
フィルタの面積が小さい場合には、インクの吸引や空吐出といった吐出口近傍からの異物除去のための動作の際、それまでフィルタに捕捉されていた気泡はフィルタのほぼ全体に接するため、インクに押し流される形態で効率的に排出されていた。一方、フィルタの面積を大きくした場合にも、気泡がフィルタと接することから、インクを濾過するための有効面積が減ってしまうため、結果として濾過手段における流路抵抗が大きくなり、吐出口へ安定してインクを供給できないという問題があった。
【0008】
上述の問題を解決するため、本発明は、記録ヘッドの濾過手段からの気泡の除去を容易にすることで、吐出手段からインクを安定して継続的に吐出することを可能にし、インクジェットプリンタによる高解像度、高速での画像形成を可能にすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、インクジェット方式により記録媒体にインクを吐出して画像を形成するための記録ヘッドにおいて、前記インクを吐出する吐出手段と、第一濾過領域と、第二濾過領域とに分割して併設され、前記インクに混入している異物を捕捉し、前記異物が除去されたインクを透過させるフィルタと、前記フィルタを収納する本体部と、を有する濾過手段と、
を備え、前記第二濾過領域の前記インクに対する濡れ性は、前記第一濾過領域の前記インクに対する濡れ性よりも高いことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、濾過手段においてインクに混入している異物を捕捉するフィルタを、第一濾過領域と、第二濾過領域とに分割して併設し、第二濾過領域のインクに対する濡れ性は、第一濾過領域のインクに対する濡れ性よりも高くする。このことで、インクに対する濡れ性の高い第二濾過領域ではインクの表面張力の作用によって気泡が吐出手段に向けて透過することが防止され、第一濾過領域では反対に気泡が容易に透過できる構成となる。
【0011】
フィルタの構成を上述の様にすることで、記録ヘッドによる画像形成時に気泡が第二濾過領域と当接していれば、気泡はフィルタを透過せずに濾過手段内部に留まる。よって、気泡により吐出手段からのインク吐出が阻害されることを防止できる。一方、記録ヘッドにメンテナンスを施すため、記録ヘッド内部のインクを吸引するような時に気泡が第一濾過領域に当接していれば、気泡はフィルタを透過して記録ヘッドから排出される。よって、メンテナンスによって、濾過手段内部に気泡が留まってフィルタの有効面積を狭め、インクが流路抵抗を増大する状態を確実に解消することができる。これらのことにより、吐出手段によってインクが安定して吐出される状態を容易に維持することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、前記濾過手段は、前記インクを前記本体部内へ導入するインク導入管と、前記フィルタを透過したインクを前記吐出手段に向けて送出するインク送出管と、を備え、前記フィルタは、前記本体部の内側を、前記インク導入管側の濾過前領域と、前記インク送出管側の濾過後領域と、に分割し、前記フィルタは前記インクが前記濾過前領域及び前記濾過後領域の少なくとも一方を流れる方向にほぼ沿って設けられるとともに、前記第一濾過領域は、前記フィルタの前記インク送出管側端部に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、フィルタを濾過前領域及び濾過後領域の少なくとも一方をインクが流れる方向にほぼ沿って設けることで、記録ヘッドによる画像形成時のインク流の強さと、記録ヘッドにメンテナンスを施す時のインク流の強さとの違いによって、気泡のフィルタに対する位置を制御することができる。
【0014】
このようにすることで、画像形成時のインク流が弱い状態では、気泡はインク送出管側に移動することなく第二濾過領域に当接して濾過前領域にとどまるため、効果的にインク欠を防止することができる。一方、メンテナンス時のインク流が強い状態では、気泡はインク送出管側端部に移動して第一濾過領域に到達し、フィルタを透過して記録ヘッド外部に排出されるため、フィルタにおける流路抵抗を低い値に効果的に回復させることができる。これらのことにより、吐出手段によってインクが安定して吐出される状態をきわめて容易に維持することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の記録ヘッドにおいて、前記濾過前領域に設置され、前記インクを前記第一濾過領域まで誘導するインク誘導路を有するとともに、前記インク誘導路は略鉛直方向に蛇行した形状であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、濾過手段の本体部の濾過前領域に、略鉛直方向に蛇行したインク誘導路を設けることで、画像形成時のインク流が弱い状態ではインク中の気泡をインク誘導路の上部で捕捉し、メンテナンス時のインク流が強い状態では気泡をインク誘導路によって第一濾過領域まで誘導することで記録ヘッド外部へ排出することができる。これらのことにより、吐出手段によってインクが安定して吐出される状態をきわめて容易に維持することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態に係る記録ヘッドHについて、図面を参照して説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る記録ヘッドHが適用されるインクジェットプリンタ100の一例を示す。インクジェットプリンタ100は記録ヘッドHの他に、メンテナンスユニット40、キャリッジレール50、ヘッド保湿ユニット60、ヘッドキャリッジ70、メディア搬送手段(非図示)、制御手段(非図示)等を備えて構成される。
【0019】
画像が形成される記録媒体Rはメディア搬送手段によって図1におけるB方向に搬送される。記録ヘッドH、H、…は、インクの吐出口15、15、…(後述)が配列されたノズル面15aを記録媒体Rに対向させる形態で、記録媒体Rに向けて吐出されるインクの色数に対応した数がヘッドキャリッジ70に設置される。ヘッドキャリッジ70はキャリッジレール50に、図1におけるA方向に往復移動自在な形態で設置され、図示しないキャリッジ移動部の動作により記録ヘッドH、H、…をA方向に走査させる。
【0020】
メンテナンスユニット40は吸引キャップ41、清掃ブレード42、空吐出受器43、吸引ポンプ44、廃インクタンク46等を有して構成される。メンテナンスユニット40は、一連のメンテナンス動作により、記録ヘッドH内部にたまった異物を除去して記録ヘッドHのインク吐出状態を良好に保つ。
【0021】
吸引キャップ41は吸引ポンプ44を介して廃インクタンク46と連通しており、メンテナンス動作時には記録ヘッドHのノズル面15aを覆う。吸引ポンプ44はシリンダーポンプやチューブポンプを有して構成される。吸引ポンプ44は吸引キャップ41がノズル面15aを覆った状態で作動することにより、吐出口15、15、…から記録ヘッドH内部のインクの吸引力を発生する。
【0022】
空吐出受器43は、記録ヘッドHに対するインクの吸引後、記録ヘッドHが空吐出したインクを受ける。廃インクタンク46は吸引ポンプ44の動作により記録ヘッドHから吸引されたインクや、記録ヘッドHから空吐出されたインクを貯留する。清掃ブレード42は記録ヘッドHのインク吸引、空吐出後、ノズル面15aに付着したインクを除去する。
【0023】
ヘッド保湿ユニット60は保湿キャップ61、61、…を有して構成される。保湿キャップ61は、記録ヘッドHが待機状態にある時、ノズル面15aを覆う事で記録ヘッドHの吐出口15、15、…近傍のインクを保湿する。
【0024】
図2、図3に示すように、記録ヘッドHはヘッド内供給路11、インクノズル12、吐出口15、インク入口部17、インク供給スリット18、濾過手段20等を備えて構成される。
【0025】
図2に示すように、記録ヘッドHは略直方体状の外観を有して形成されている。記録ヘッドHの一面はノズル面15aとして形成され、このノズル面15aにはインクを吐出するための吐出口15、15、…が複数個、ほぼ直線状に1列又は複数列にわたって配列されている。
【0026】
図3は、記録ヘッドHを図2における矢印D方向に沿って切断した断面図である。以下、図3を参照して記録ヘッドHの各構成要素を説明する。インク入口部17は、記録ヘッドHの上面に向けて開口し、濾過手段20に接続されている。インク入口部17は記録ヘッドH外部に設置されたインクタンク(非図示)からインク供給路(非図示)を経て供給されるインクを記録ヘッドH内部に導入する。
【0027】
濾過手段20は内部にフィルタ23を備えて構成され、インク入口部17から導入されたインクからゴミや気泡といった異物を除去してインクノズル12、12、…に向けて送出する。濾過手段20の構成の詳細については後述する。ヘッド内供給路11は濾過手段20とインク供給スリット18との間のインク供給路をなす。
【0028】
インク供給スリット18は、側面視略矩形状に形成されており、ヘッド内供給路11を介して濾過手段20と接続されている。インク供給スリット18には、吐出口15、15、…までインクを導くインクノズル12、12、…がノズル面15aと対向する下面に接続されている。インク供給スリット18は濾過手段20を経て供給されたインクを各インクノズル12、12、…に分割して供給するための構成要素である。
【0029】
インクノズル12、12、…は、インク入口部17から流れ込むインクの流れ方向に沿うように、等間隔で並んで配置される。インクノズル12はインクを吐出口15まで導く構成要素であり、吐出口15及び図示しない圧力素子とともに吐出手段を形成する。インクノズル12は1個の吐出口15に対して1個が設置される。インクノズル12内部には、圧力素子が設置されている。圧力素子は例えばピエゾ素子であり、インクノズル12内部のインクに圧力を付与することで吐出口15からインクを吐出するための原動力を発生させる。圧力素子は記録媒体Rに形成する画像のデータに基づく制御手段の制御によって作動することで、吐出口15からのインクの吐出を行なう。
【0030】
次に、本発明に係る濾過手段20の詳細について説明する。図4に示すように、濾過手段20は、本体部21、テーパ部22、フィルタ23、インク導入管26、インク送出管27、駆動部(非図示)等を備えており、内部をインク導入管26からインク送出管27に向けて図4(a)における矢印F、F’の方向にインクが流れる構成となっている。以降、本明細書では、濾過手段20において、インク導入管26側を上流側、インク送出管27側を下流側と呼ぶ。
【0031】
本体部21は、濾過手段20の外形をなす構成要素であり、中空な略直方体として形成され、横向きに設置される。本体部21内にはフィルタ23が水平方向に対して垂直に設置されており、このフィルタ23によって本体部21内は上流側の濾過前領域21aと、下流側の濾過後領域21bと、の2個の領域に分割されている。テーパ部22は略三角形の中空な板状体であり、内部が濾過後領域21bと連通する形態で本体部21の1側面に設置されている。
【0032】
インク導入管26は本体部21のテーパ部22と対向する側面に、濾過前領域21aとインク入口部17とを連通する形態で設置される。インク導入管26は、インクタンクから供給されたインクを濾過手段20内部へ導入する。インク送出管27はテーパ部22の先端部に、テーパ部22内部とヘッド内供給路11とを連通する形態で設置される。インク送出管27は濾過手段20で異物が除去されたインクをインク供給スリット18に送出する。
【0033】
フィルタ23は例えば金属メッシュで形成されており、本体部21内に水平方向に対して垂直に設置される。このような形態でフィルタ23を設置することにより、フィルタ23は本体部21内を濾過前領域21aと、濾過後領域21bとの2領域に分割する。また、フィルタ23は、濾過前領域21a及び濾過後領域21bにおけるインクの流路方向F、Fに対してほぼ沿った形態で設置される。
【0034】
フィルタ23はインク導入管26を介して濾過前領域21aへ導入されたインクから、気泡やごみといった異物を捕捉するとともに濾過後領域21bに向けてインクを透過することで、インクに混入している異物を除去し、このインクを下流側に透過させる。
【0035】
フィルタ23は、第一濾過領域23aと、第二濾過領域23bという、面積の異なり、且つインクの流路に対して互いに平行な2箇所の領域に、分割して併設されている。第一濾過領域23aは、フィルタ23の下流側上部の部位、すなわちインク送出管27側端部に設けられる。第二濾過領域23bはフィルタ23の第一濾過領域23aを除いた部分であり、第一濾過領域23aよりも大きい面積を占める。
【0036】
フィルタ23を形成する金属メッシュは本来はインクに対して濡れ性の高い材質である。そこで、本実施形態に係る記録ヘッドHに適用されるフィルタ23は、第二濾過領域23bの表面には加工を施さず、第一濾過領域23aの表面にはフッ素樹脂によるコーティングを施す。ここで、第一濾過領域23aのコーティングに適用するフッ素樹脂は、例えばFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)といった周知のフッ素樹脂が適用可能であり、画像形成に適用されるインクをはじく撥油性又は撥水性を有するものが適宜選定される。
【0037】
上述の様な構成とすることで、フィルタ23において、第一濾過領域23aにおけるインクに対する濡れ性は第二濾過領域23bにおけるインクに対する濡れ性よりも低くなる。そして、濾過手段20内において、第一濾過領域23aではインクに混入した気泡Bの透過は容易となる。一方、第二濾過領域23bでは気泡Bの透過は困難となる。
【0038】
なお、フィルタ23の具体的な形態は設計事項であり、フィルタ23のメッシュサイズや第一濾過領域23aと第二濾過領域23bの面積比はインクの物性や実験結果等を踏まえて適宜決定される。
【0039】
駆動部は濾過手段20の姿勢を制御するための構成要素である。駆動部は記録ヘッドHが記録媒体Rに対して画像形成を行なっている時には図5(a)に示すように下流側(インク送出管27側)よりも上流側(インク導入管26側)が高い位置となるように濾過手段20の姿勢を保つ。一方、メンテナンスユニット40のメンテナンス動作によって濾過手段20内部のインクを吸引する時には、図5(b)に示すように上流側よりも下流側が高い位置となるように濾過手段20の姿勢を変える。
【0040】
時間の経過により、記録ヘッドHの吐出口15、15、…近傍部にはごみ、気泡や固化したインクがたまる。また、濾過手段20内には、インク入口部17やインク供給路(非図示)でインクに混入したインクがフィルタ23によって捕捉されてたまっていく。これらの異物は、吐出口15、15、…からの安定したインク吐出の妨げとなるので、メンテナンスユニット40の先述したメンテナンス動作によって除去する。
【0041】
次に、本実施形態に係る記録ヘッドH内部における気泡Bの挙動と、記録ヘッドH内部から気泡Bを除去する手順について、図5を参照して説明する。
【0042】
先述したように、濾過手段20は記録ヘッドH外部からインク入口部17を経て導入されたインクをインクノズル12、12、…に送出する。ここで、インク入口部17から導入されたインクには、ごみや気泡Bといった異物が混入している。このうち、ごみはフィルタ23によって捕捉されてインクから濾別され、濾過前領域21aに留まる。この時、濾過手段20は図5(a)に示すように上流側の方が高い姿勢をとっているので、気泡Bは浮力の作用によってインク導入管26近傍に位置しており、第二濾過領域23bに当接している。
【0043】
ここで、フィルタ23の第二濾過領域23bは表面加工を施さない金属メッシュで構成されているので、インクに対する濡れ性が高くなっている。そのため、第二濾過領域23bはインクで覆われていることとなる。ここで、吐出口15、15、…からインクを吐出するとき、圧力素子が作動することで濾過手段20内部のインクがF、F’方向に流動する。このとき、濾過前領域21aにある気泡Bはこのインク流によって第二濾過領域23bに押し当てられた状態となる。しかし、インク吐出のために圧力素子により発生するインク流が気泡Bに及ぼす力は、インクの表面張力に較べて弱いため、気泡Bはフィルタ23を覆ったインクに阻害されてフィルタ23を透過することができない。そのためにインク吐出時には気泡Bはフィルタ23により捕捉されて濾過前領域21aに留まる。
【0044】
記録ヘッドHの老朽化に伴ない、ヘッドキャリッジ70に設置された記録ヘッドHの交換を行なったとき、新しい記録ヘッドH内部のインクには気泡Bが混入する。混入した気泡Bはフィルタ23によって捕捉されるが、この気泡Bがフィルタ23に対して大きい面積で接する場合、フィルタ23のインクと接触する部位の面積である有効面積が相対的に減少する。こうしてフィルタ23の有効面積が減少すると、濾過手段20におけるインクの流路抵抗が増大し、効率的にインクを濾過できなくなるとともに、吐出口15、15、…から安定してインクを吐出することができなくなる。
【0045】
上述の理由でインクの安定した吐出が困難になった場合、メンテナンスユニット40によるメンテナンス動作によって濾過手段20の濾過前領域21aに滞留した気泡Bの除去を行なう。ユーザが制御手段を介してメンテナンス動作の開始のための操作を行なうと、まず吸引キャップ41が移動し、ノズル面15aを覆って吐出口15、15、…からインクを吸引可能な状態に移行する。上記移行と併行して、駆動部は濾過手段20の姿勢を変えて下流側が上流側よりも高い状態に移行する。
【0046】
濾過手段20の姿勢を変えて下流側が上流側よりも高くなったところで、引き続いて吸引ポンプ44が作動することでF、F’方向に圧力が発生し、インク吸引が開始される。この時、濾過手段20は下流側が上流側よりも高くなっているので、気泡Bはフィルタ23の下流側上部に移動して、第一濾過領域23aに当接する。
【0047】
吸引ポンプ44がインクを流動させる力は、インクノズル12、12、…内部に設置された圧力素子がインクを流動させる力に較べてきわめて大きいものとなっている。このため、第一濾過領域23aに当接した気泡Bには高い圧力が付与される。さらに、第一濾過領域23aは第二濾過領域23bよりもインクに対する濡れ性が低くなっており、インクの表面張力が気泡Bに及ぼす作用はきわめて小さくなっている。こうして、気泡Bはフィルタ23を第一濾過領域23aで透過する。フィルタ23を透過したインクはインク送出管27、インクノズル12、12、…を経てメンテナンスユニット40へ排出される。
【0048】
このように、フィルタ23を、第一濾過領域23aと、第二濾過領域23bという、インクの流路に対して互いに平行な2箇所の領域に分割して併設し、第二濾過領域23bのインクに対する濡れ性を第一濾過領域23aのインクに対する濡れ性を高くすることで、記録ヘッドHを安定してインク吐出可能な状態に容易に維持することができる。
【0049】
すなわち、記録ヘッドHによって記録媒体Rに画像を形成している時には、例えば濾過手段20の上流側が、第一濾過領域23aの設置された下流側よりも高くなる姿勢に維持するといった方法で、インク中の気泡Bが第二濾過領域23bに当接するよう気泡Bの位置を制御して気泡Bを濾過手段20内部に留めることができる。よって、画像形成中にインクノズル12中のインクに気泡Bが混入してインク欠が発生するといったことが防止される。
【0050】
一方、記録ヘッドHに対してインク吸引を行なうような時には、濾過手段20の下流側が上流側よりも高くなる姿勢に維持するといった方法で、インク中の気泡Bが第一濾過領域23aに当接するよう気泡Bの位置を制御して気泡Bを濾過手段20外部へ排出することができる。よって、メンテナンス時に気泡Bを効率的に排出することで、気泡Bの滞留による流路抵抗の増大を防止することができる。これらのことにより、記録ヘッドHから安定してインクを吐出できる状態を容易に維持することができる。
【0051】
〔第二の実施形態〕
次に、第二の実施形態に係る記録ヘッドHについて説明する。なお、以降説明する実施形態において、記録ヘッドHを適用したインクジェットプリンタ100の記録ヘッドH以外の構成要素については説明を省略する。また、記録ヘッドHの各構成要素のうち、第一の実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
ここで、図2、図3は第一の実施形態に係る記録ヘッドHを例に取って描図したものであるが、濾過手段20以外の構成要素については以後説明する実施形態の場合と共通であり、以後説明する実施形態に係る記録ヘッドHと近似することができるので、以後の説明の際にも適宜参照する。
【0053】
記録ヘッドHはヘッド内供給路11、インクノズル12、吐出口15、インク入口部17、インク供給スリット18、濾過手段20等を備えて構成される。
【0054】
インク入口部17は記録ヘッドH外部に設置されたインクタンク(非図示)からインク供給路(非図示)を経て供給されるインクを記録ヘッドH内部に導入する。濾過手段20は内部にフィルタ23を備えて構成され、インク入口部17から導入されたインクからゴミや気泡といった異物を除去してインクノズル12、12、…に向けて送出する。濾過手段20の構成の詳細については後述する。ヘッド内供給路11は図3に示すように、濾過手段20とインク供給スリット18との間のインク供給路をなす。
【0055】
インク供給スリット18は、ヘッド内供給路11を介して濾過手段20と接続されている。インク供給スリット18には、吐出口15、15、…までインクを導くインクノズル12、12、…がノズル面15aと対向する下面に接続されている。
【0056】
インクノズル12はインクを吐出口15まで導く構成要素であり、吐出口15及び図示しない圧力素子とともに吐出手段を形成する。インクノズル12内部には、制御手段の制御によって吐出口15からインクを吐出するための原動力を発生する圧力素子が設置されている。吐出口15、15、…は、図2に示すように、記録ヘッドHの1面であるノズル面15aに配列されている。
【0057】
次に、本発明に係る濾過手段20の詳細について説明する。図6に示すように、濾過手段20は、本体部21、フィルタ23、インク導入管26、インク送出管27等を備えており、内部をインク導入管26からインク送出管27に向けて図6における矢印Fの方向すなわち下方向にインクが流れる構成となっている。
【0058】
本体部21は、濾過手段20の外形をなす構成要素であり、直方体の頂点を丸めた形状に形成され、縦向きに設置される。本体部21内にはフィルタ23が水平方向に対して垂直となる形態で設置されており、このフィルタ23によって本体部21内は上流側(インク導入管26側)の濾過前領域21aと、下流側(インク送出管27側)の濾過後領域21bと、の2個の領域に分割されている。
【0059】
インク導入管26は本体部21の上面に、濾過前領域21aとインク入口部17とを連通する形態で設置される。インク導入管26は、インクタンクから供給されたインクを濾過手段20内部へ導入する。インク送出管27は本体部21の下面に、ヘッド内供給路11とを連通する形態で設置される。インク送出管27は濾過手段20で異物が除去されたインクをインク供給スリット18に送出する。
【0060】
フィルタ23は例えば金属メッシュで形成されており、本体部21内に水平方向対して垂直な方向に設置される。このような形態でフィルタ23を設置することにより、フィルタ23は本体部21内を濾過前領域21aと、濾過後領域21bとの2領域に分割して併設される。フィルタ23は濾過前領域21aへ導入されたインクから異物を捕捉、除去するとともに濾過後領域21bに向けてインクを透過する。また、図6(a)に示すように、フィルタ23は、濾過前領域21a及び濾過後領域21bをインクが流れる方向F、Fにほぼ沿う形態で設けられる。
【0061】
フィルタ23は、第一濾過領域23aと、第二濾過領域23bという、面積の異なり、且つインクの流路に対して互いに平行な2箇所の領域に、分割されている。第一濾過領域23aは、フィルタ23のインク送出管27側端部に設けられる。第二濾過領域23bはフィルタ23の第一濾過領域23aを除いた部分であり、第一濾過領域23aよりも大きい面積を占める。
【0062】
フィルタ23を形成する金属メッシュは本来はインクに対して濡れ性の高い材質で形成される。本実施形態に係る記録ヘッドHに適用されるフィルタ23は、第二濾過領域23bの表面には加工を施さない。一方、第一濾過領域23aの表面にはフッ素樹脂によるコーティングを施してインクに対する濡れ性が第二ろ過領域23bにおけるインクに対する濡れ性よりも低くなるようにする。ここで、第一濾過領域23aのコーティングに適用するフッ素樹脂は、第一の実施形態の場合と同様、周知のフッ素樹脂から適宜選定される。
【0063】
なお、フィルタ23の具体的な形態は第一の実施形態の場合と同様に設計事項であり、フィルタ23のメッシュサイズや第一濾過領域23aと第二濾過領域23bの面積比はインクの物性や実験結果等を踏まえて適宜決定される。
【0064】
次に、本実施形態に係る記録ヘッドH内部における気泡Bの挙動と、記録ヘッドH内部から気泡Bを除去する手順について、図7を参照して説明する。
【0065】
インク入口部17から記録ヘッドH内部に導入されたインクには、ごみや気泡Bといった異物が混入している。このうち、ごみはフィルタ23によって捕捉されて濾過前領域21aに留まる。また、気泡Bは濾過前領域21aのインク導入管26近傍の部位すなわち上側の部位に留まる(図7(a))。
【0066】
ここで、吐出口15、15、…からインクを吐出するとき、圧力素子が作動することで濾過手段20内部のインクが流動する。この時、濾過前領域21a内の気泡Bには、圧力素子の作動によって発生するインク流によってインク送出管27の方向に力が掛けられる。
【0067】
ここで、フィルタ23の第二濾過領域23bは表面加工を施さない金属メッシュで構成されているので、インクに対する濡れ性が高くなっており、第二濾過領域23bはインクで覆われていることとなる。そのため、気泡Bはフィルタ23周囲のインクの表面張力によって阻害され、フィルタ23を透過することができない。また、インク流が気泡Bに掛ける力のうち、フィルタ23とは平行な方向すなわち下方向に向かう成分も、気泡Bがインク中で受ける浮力に較べて小さい。そのため、気泡Bは記録媒体Rに対する画像形成時にはフィルタ23を透過してインクノズル12、12、…へ移行することなく濾過前領域21aに留まる。
【0068】
記録ヘッドHの交換により、インクに気泡Bが混入した場合には、メンテナンスユニット40によるメンテナンス動作によって気泡Bを濾過手段20から除去する。メンテナンス動作は、まず吸引キャップ41が移動し、ノズル面15aを覆って吐出口15、15、…からインクを吸引可能な状態に移行する動作から開始される。
【0069】
上記移行後、引き続いて吸引ポンプ44が作動することでF方向に圧力が発生し、インク吸引が開始される。吸引ポンプ44がインクを流動させる力は、インクノズル12、12、…内部に設置された圧力素子がインクを流動させる力に較べてきわめて大きいとともに、気泡Bがインク中で受ける浮力よりも大きい。このため、気泡Bは下向きに移動して本体部21のインク送出管27側端部に到達し、第一濾過領域23aと当接する。
【0070】
第一濾過領域23aに当接した気泡Bには引き続き高い圧力が付与される。ここで、第一濾過領域23aは第二濾過領域23bよりもインクに対する濡れ性が低くなっており、インクの表面張力が気泡Bに及ぼす作用はきわめて小さくなっている。こうして、気泡Bはフィルタ23を第一濾過領域23aで透過する。フィルタ23を透過したインクはインク送出管27、インクノズル12、12、…を経てメンテナンスユニット40へ排出される。
【0071】
このように、フィルタ23を濾過前領域21a及び濾過後領域21bにおけるインクの流路にほぼ沿って設けるとともに第一濾過領域23aをインク送出管27側端部に設けることで、記録ヘッドHによる画像形成時の本体部21内におけるインク流の強さと、記録ヘッドHにメンテナンスを施す時の本体部21内におけるインク流の強さとの違いによって、気泡Bが濾過手段20内部に滞留するか、濾過手段20から排出されるかを制御することができる。よって、インクが安定して吐出される状態をきわめて容易に維持することができる。
【0072】
〔第三の実施形態〕
次に、第三の実施形態に係る記録ヘッドHについて説明する。記録ヘッドHはヘッド内供給路11、インクノズル12、吐出口15、インク入口部17、インク供給スリット18、濾過手段20等を備えて構成される。
【0073】
インク入口部17はインクを記録ヘッドH内部に導入する。濾過手段20はインク入口部17から導入されたインクからゴミや気泡といった異物を除去してインクノズル12、12、…に向けて送出する。濾過手段20の構成の詳細については後述する。ヘッド内供給路11は濾過手段20とインク供給スリット18との間のインク供給路をなす。インク供給スリット18には、吐出口15、15、…までインクを導くインクノズル12、12、…がノズル面15aと対向する下面に接続されている。
【0074】
インクノズル12はインクを吐出口15まで導く構成要素であり、吐出口15及び圧力素子(非図示)とともに吐出手段を形成する。インクノズル12内部には、インクを吐出するための原動力を発生する圧力素子が設置されている。吐出口15、15、…は、図2に示すように、記録ヘッドHの1面であるノズル面15aに配列されている。
【0075】
次に、本発明に係る濾過手段20の詳細について説明する。図8に示すように、濾過手段20は、本体部21、テーパ部22、フィルタ23、インク導入管26、インク送出管27、インク誘導路28等を備えており、内部をインク導入管26からインク送出管27に向けて矢印F、F’の方向にインクが流れる構成となっている。
【0076】
本体部21は、濾過手段20の外形をなす構成要素であり、略直方体として形成され、横向きに設置される。本体部21内はフィルタ23によって水平方向に対して垂直に2箇所の領域に分割される。上記2箇所の領域のうち、上流側の領域は濾過前領域21aであり、下流側の領域は濾過後領域21bである。テーパ部22は内部が濾過後領域21bと連通する形態で本体部21の1側面に設置される。
【0077】
インク導入管26は本体部21のテーパ部22と対向する側面に、濾過前領域21aとインク入口部17とを連通する形態で設置される。インク導入管26は、インクを濾過手段20内部へ導入する。インク送出管27はテーパ部22の先端部に、テーパ部22内部とヘッド内供給路11とを連通する形態で設置される。インク送出管27は濾過手段20で異物が除去されたインクを送出する。
【0078】
インク誘導路28は濾過前領域21a内に設置される構成要素であり、濾過前領域21a内のインク及び気泡B、B、…を誘導する。インク誘導路28はS字状構造物が連続し、鉛直方向に蛇行した形態を有して形成される。インク誘導路28の側壁の一方は本体部21の内壁で構成され、他方はフィルタ23で構成される。
【0079】
フィルタ23は記録ヘッドH内部に導入されたインクから気泡やごみといった異物を除去するための構成要素であり、インク誘導路28の側壁を形成するよう、インク誘導路28の側断面形状に対応した形状に形成される。フィルタ23は本体部21内に設置され、本体部21内を濾過前領域21aと、濾過後領域21bとの2領域に分割する。また、フィルタ23は、図8(a)に示すように濾過後領域21bにおいてインクが流れる方向Fに対してほぼ沿った形態で設置される。
【0080】
フィルタ23は、第一濾過領域23aと、第二濾過領域23bという、面積の異なり、且つインクの流路に対して互いに平行な2箇所の領域に、分割して併設される。第一濾過領域23aは、フィルタ23の下流側の、インク誘導路28の終点部分であり、インク送出管27側端部となる部位に設けられる。第二濾過領域23bはフィルタ23の第一濾過領域23aを除いた部分であり、第一濾過領域23aよりも大きい面積を占める。
【0081】
フィルタ23を形成する金属メッシュは本来はインクに対して濡れ性の高い材質である。本実施形態に係る記録ヘッドHに適用されるフィルタ23は、第二濾過領域23bの表面には加工を施さず、第一濾過領域23aの表面にはフッ素樹脂によるコーティングを施す。第一濾過領域23aに適用されるフッ素樹脂は、周知のフッ素樹脂のうち、画像形成に適用されるインクをはじく撥油性又は撥水性を有するものが適宜選定される。
【0082】
上述の様な構成とすることで、フィルタ23において、第一濾過領域23aにおけるインクに対する濡れ性は第二濾過領域23bにおける濡れ性よりも低くなる。そして、濾過手段20内において、第一濾過領域23aではインクに混入した気泡Bの透過は容易となる。一方、第二濾過領域23bでは気泡Bの透過は困難となる。
【0083】
なお、フィルタ23の具体的な形態は設計事項であり、フィルタ23のメッシュサイズや第一濾過領域23aと第二濾過領域23bの面積比はインクの物性や実験結果等を踏まえて適宜決定される。
【0084】
次に、本実施形態に係る記録ヘッドH内部における気泡Bの挙動と、記録ヘッドH内部から気泡Bを除去する手順について、図8を参照して説明する。
【0085】
インク入口部17から記録ヘッドH内部に導入されたインクには、ごみ等の異物が混入しており、これらの異物はフィルタ23によって捕捉される。記録ヘッドHの交換によってインクに混入した気泡B、B、…はインク中での浮力によりインク誘導路28の上部に留まる(図8(b))。
【0086】
ここで、吐出口15、15、…からインクを吐出するとき、圧力素子が作動することで濾過手段20内部のインクが流動する。この時、濾過前領域21a内の気泡Bには、圧力素子の作動によって発生するインク流によって濾過後領域21bの方向やインク誘導路28に沿った方向に力が掛けられる。
【0087】
ここで、フィルタ23の第二濾過領域23bは表面加工を施さない金属メッシュで構成されているので、インクに対する濡れ性が高くなっている。そのため、第二濾過領域23bはインクで覆われていることとなる。そのため、気泡Bはフィルタ23を覆ったインクの表面張力によって阻害され、フィルタ23を透過することができない。また、インク流が気泡Bに掛ける力の、インク誘導路28に沿った方向の成分も、気泡Bがインク中で受ける浮力に較べて小さい。そのため、気泡Bは隣接したS字構造に移動することなくインク誘導路28上部に留まる。
【0088】
気泡Bによってフィルタ23における流路抵抗が高くなる場合には、メンテナンスユニット40によるメンテナンス動作によって気泡Bを濾過手段20から除去する。メンテナンス動作は、まず吸引キャップ41が移動し、ノズル面15aを覆って吐出口15、15、…からインクを吸引可能な状態に移行する動作から開始される。
【0089】
上記移行後、引き続いて吸引ポンプ44が作動することでF、F’方向に圧力が発生し、インク吸引が開始される。吸引ポンプ44がインクを流動させる力は、インクノズル12、12、…内部に設置された圧力素子がインクを流動させる力に較べてきわめて大きいとともに、気泡Bがインク中で受ける浮力よりも大きい。このため、気泡Bはインク流の作用によって順次隣接するS字構造へ移動し、インク誘導路28に沿って蛇行してインク誘導路28の終点に到達する。そして気泡Bは第一濾過領域23aと当接する。
【0090】
第一濾過領域23aに当接した気泡Bには引き続き高い圧力が付与される。ここで、第一濾過領域23aは第二濾過領域23bよりもインクに対する濡れ性が低くなっており、インクの表面張力が気泡Bに及ぼす作用はきわめて小さくなっている。こうして、気泡Bはこの第一濾過領域23aを透過する。フィルタ23を透過したインクはインク送出管27、インクノズル12、12、…を経てメンテナンスユニット40へ排出される。
【0091】
この様に、濾過前領域21aに、鉛直方向に蛇行するインク誘導路28を設けることで、画像形成時のインクの流れが弱い状態では、気泡Bはインク誘導路28の上部で第二濾過領域23bにより捕捉して、インク欠を防止することができる。また、こうしてインク誘導路28上部で捕捉された気泡Bはインク吸引時のインクの流れが強い状態では、効率よく濾過手段20から排出される。インク誘導路28は濾過前領域21aを鉛直方向に細長く区切っているため、フィルタ23の面積を大きくした場合、インク吸引時に濾過前領域21a内でインクの渦が発生して気泡Bの排出の能率を低下させるといったことが防止される。よって、よりフィルタ23の面積が大きい場合でも効率的に気泡Bを排出できるようにして濾過手段20内でのインクの流路抵抗を低く保つことができる。これらのことより、第三の実施形態に係る記録ヘッドHでは、安定してインクを吐出できる状態をきわめて容易に維持することができる。
【0092】
なお、本発明に係る記録ヘッドHは上述の実施形態に限らない。例えば、本発明に係る記録ヘッドHの濾過手段20に適用されるフィルタ23は、第一濾過領域23aと第二濾過領域23bとが一体に形成されるものとは限らない。フィルタ23は、例えば第一濾過領域23aにインクに対する濡れ性の低い材質を適用し、第二濾過領域23bにインクに対する濡れ性の高い材質を適用するといった構成としてもよい。フィルタ23の材質や形状は設計事項であり、画像形成に適用されるインクの物性や経済性等を考慮して適宜設定される。
【0093】
なお、上述の実施形態では、吐出口15、15、…側からインクを吸引する場合を例に取って濾過手段20からの気泡Bの除去の手順を説明したが、本発明に係る記録ヘッドHは、インク入口部17側から加圧することで気泡Bを除去する構成としてもよい。
【0094】
また、濾過手段20内部の形状は、設計事項であり、図5〜図8に描図された形状に限らない。濾過手段20形状は、内部に気泡Bが留まらないよう適宜決定される。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、濾過手段に備えられ、インクに混入した異物を捕捉するフィルタを、インクに対する濡れ性の異なる2箇所の領域に分割して併設することで、画像形成中の弱い圧力で濾過手段内をインクが流れている状態ではインク中の気泡を濾過手段内部に留め、インク吸引中の強い圧力で濾過手段内をインクが流れている状態では、インク中の気泡を濾過手段外部に排出することができる。このことで、気泡によるインク欠を確実に防止できるとともに、濾過手段内部に留まっている気泡による流路抵抗の増大を容易に防止することができる。
【0096】
よって、吐出手段を多数備えたタイプの記録ヘッドにおいても、安定してインクを吐出できる状態を容易に維持することができる。よって、インクジェットプリンタによって画像形成を高解像度、高速で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記録ヘッドHが適用されるインクジェットプリンタ100の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明に係る記録ヘッドHの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る記録ヘッドHを図2における矢印D方向に沿って切断した断面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る記録ヘッドHに適用される濾過手段20の構成を示す透視斜視図(a)、側断面図(b)、及び平断面図(c)である。
【図5】第一の実施形態に係る記録ヘッドHに適用される濾過手段20の画像形成時の状態(a)、及びインク吸引時の状態(b)を示す側断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る記録ヘッドHに適用される濾過手段20の構成を示す側断面図(a)及び側断面図(b)である。
【図7】第二の実施形態に係る記録ヘッドHに適用される濾過手段20の画像形成時の状態(a)、及びインク吸引時の状態(b)を示す側断面図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る記録ヘッドHに適用される濾過手段20の平断面図(a)、画像形成時の側断面図(b)、及びインク吸引時の側断面図(c)である。
【符号の説明】
12 インクノズル(吐出手段)
15a ノズル面
15 吐出口(吐出手段)
20 濾過手段
21 本体部
21a 濾過前領域
21b 濾過後領域
23 フィルタ
23a 第一濾過領域
23b 第二濾過領域
26 インク導入管
27 インク送出管
28 インク誘導路
40 メンテナンスユニット
41 吸引キャップ
100 インクジェットプリンタ
H 記録ヘッド
R 記録媒体
Claims (3)
- インクジェット方式により記録媒体にインクを吐出して画像を形成するための記録ヘッドにおいて、
前記インクを吐出する吐出手段と、
第一濾過領域と、第二濾過領域とに分割して併設され、前記インクに混入している異物を捕捉し、前記異物が除去されたインクを透過させるフィルタと、前記フィルタを収納する本体部と、を有する濾過手段と、
を備え、
前記第二濾過領域の前記インクに対する濡れ性は、前記第一濾過領域の前記インクに対する濡れ性よりも高いことを特徴とする記録ヘッド。 - 前記濾過手段は、
前記インクを前記本体部内へ導入するインク導入管と、
前記フィルタを透過したインクを前記吐出手段に向けて送出するインク送出管と、を備え、
前記フィルタは、前記本体部の内側を、前記インク導入管側の濾過前領域と、前記インク送出管側の濾過後領域と、に分割し、
前記フィルタは前記インクが前記濾過前領域及び前記濾過後領域の少なくとも一方を流れる方向にほぼ沿って設けられるとともに、
前記第一濾過領域は、前記フィルタの前記インク送出管側端部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。 - 前記濾過手段は、
前記濾過前領域に設置され、前記インクを前記第一濾過領域まで誘導するインク誘導路を有するとともに、
前記インク誘導路は略鉛直方向に蛇行した形状であることを特徴とする請求項2に記載の記録ヘッド。
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