JP2004058220A - 仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物および複合材の仕上げ研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】研磨材粒子の固定化後に遊離研磨材スラリーを容易に排除でき、精度の高い仕上げ研磨が可能なラッピングオイル組成物および複合材の仕上げ研磨方法を提供する。
【解決手段】異硬度材料で構成されている複合材の研磨加工において、研磨材粒子を含有する研磨液をラッピング定盤上に滴下しながら主研磨を行った後に実施される仕上げ研磨用のラッピングオイル組成物であって、非水系溶媒にアミン系化合物を少なくとも一種類含有し且つ研磨材粒子を含有しないことを特徴とする仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物、及び、非水系溶媒を主成分とし非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリー組成物を用いてラッピング定盤上に前記研磨材粒子を固定化した後、前記ラッピング定盤上に配置した異硬度材料で構成される複合材料に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を滴下しながら固定化されていない前記研磨材粒子を排除して仕上げ研磨を行うことを特徴とする複合材の仕上げ研磨方法。
【選択図】 なし
【解決手段】異硬度材料で構成されている複合材の研磨加工において、研磨材粒子を含有する研磨液をラッピング定盤上に滴下しながら主研磨を行った後に実施される仕上げ研磨用のラッピングオイル組成物であって、非水系溶媒にアミン系化合物を少なくとも一種類含有し且つ研磨材粒子を含有しないことを特徴とする仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物、及び、非水系溶媒を主成分とし非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリー組成物を用いてラッピング定盤上に前記研磨材粒子を固定化した後、前記ラッピング定盤上に配置した異硬度材料で構成される複合材料に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を滴下しながら固定化されていない前記研磨材粒子を排除して仕上げ研磨を行うことを特徴とする複合材の仕上げ研磨方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬度の異なる複数の異硬度材料から構成される複合材料の研磨加工に用いられるラッピングオイル組成物に関する。特に遊離砥粒スラリーによる薄膜型磁気ヘッドの空気浮上面となる面の研磨加工後に実施される最終仕上げ研磨工程に使用するのに適したラッピングオイル組成物および仕上げ研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューターのハードディスクドライブに搭載されている薄膜型磁気ヘッドは一般にアルチック(Al2O3−TiC)などの基材、アルミナ(Al2O3)などの保護/絶縁膜といったセラミックス及びパーマロイ(Fe−Ni)、センダスト(Fe−Al−Si)などの磁性金属膜等による複合材料で構成され、薄膜型磁気ヘッドのABS(Air Bearing Surface:ABS(空気浮上面))となる面は遊離砥粒スラリーを用いた研磨加工により製造される。アルチックやアルミナなどのセラミックスは硬質材料であり、パーマロイやセンダストなどの磁性金属膜部分は軟質材料である。そのため、材料間の硬度の違いにより軟質材料が選択的に研磨され、セラミックスからなるABSより磁極部などの金属膜の後退いわゆるポールチップリセッション(Pole Tip Recession:PTR)が発生してしまう。PTRの発生は記録媒体との磁気ヘッドの間隔を増大させ、実質的なヘッドの浮上量を増加させてしまうといった問題点があった。このため研磨加工における最も重要な問題点の一つとして、被研磨物の選択研磨が挙げられ、これらの加工段差の発生を防止する加工方法について検討されている。
【0003】
一方、遊離砥粒スラリーを用いた薄膜型磁気ヘッドの研磨加工におけるもう一つの問題点として材料間の硬度の違いにより軟質材料表面が選択的に研磨され、研磨面の面粗れやスクラッチが発生することが挙げられる。特に研磨面上に横断して生じたスクラッチは、電気的な短絡即ちショートの原因となり、磁気ヘッドの磁気特性を低下させてしまう。磁極部などの金属膜や絶縁膜は磁気ヘッドの磁気特性向上に伴い薄膜化され、スクラッチによるショートがさらに発生しやすくなり深刻な問題となっている。
【0004】
そこで、このような軟質材料である金属膜のダメージを回避するために、遊離砥粒スラリーによりABSとなる面の研磨加工を実施した後に砥粒を含まないラッピングオイルによる仕上げ研磨を実施することが、例えば特開昭62−292358号公報、特開平3−92264号公報、特開平7−299737号公報、特開平9−245333号公報などによって提案されている。
【0005】
特開昭62−292358号公報には、浮動型磁気ヘッドの浮動面の最終ポリッシングにおいて、ポリッシング定盤上に遊離砥粒ポリッシング液を塗布し、修正リングを使用して、10分から30分の均し回転させて遊離砥粒を定盤に埋め込み、その後手作業で定盤上の遊離砥粒を拭き取り、洗剤及び水で洗い流し、水気はクリーンエア等で除去した後にポリッシング定盤上に希釈液(一般には遊離砥粒ポリッシング液の溶媒)を塗布し、ポリッシングすることにより浮動面の平坦度及び表面粗さを小さくできることが記載されている。
【0006】
特開平3−92264号公報には、複合材、すなわち、硬度の異なる2以上の異種材料で構成されたもの、たとえば磁気ヘッドの浮上面(ラップ面)の異種材料間に生じる加工段差の低減、及び該ラップ面の角度の縁だれの低減をするため、軟質金属製の定盤上ヘラップ液を滴下しながら、複合材を定盤上へ押圧摺動させて該複合材をラッピングする方法において、砥粒を含むラップ液で、あらかじめ粗ラッピングをした後、定盤表面をブラシなどで水洗することにより転動砥粒を定盤外へ排除し、砥粒を含まないラップ液、たとえば水を滴下しながらラッピングすることにより、埋め込み砥粒のみがラッピングに関与する複合材の高精度ラッピング法について記載されている。
【0007】
特開平7−299737号公報には、ラッピング定盤に遊離砥粒と潤滑剤を塗布し、前記遊離砥粒を前記ラッピング定盤にめり込ませて固定砥粒を形成した後に、被研磨物をラッピング定盤から取り除き、続いて潤滑油や水溶性潤滑剤、グリセリン水溶液等の潤滑剤を噴霧し、埃等が発生しない布等を用いてラッピング定盤を拭き上げることによって、ラッピング定盤上の遊離砥粒や研磨屑等を取り除くとともに、十分にグリップされていない固定砥粒を取り除き、次に被研磨物をラッピング定盤の上に載せて潤滑剤を所定間隔でラッピング定盤上に供給しながらラッピング定盤を回転させて研磨を行う研磨方法が記載されている。
【0008】
特開平9−245333号公報には、磁気ヘッドの加工方法において、セラミック定盤上に砥粒を含んだラップ液を滴下しながら該定盤を回転し、その表面でダミーワークと修正リングを所定時間自転させた後ダミーワークを取り除き、修正リングだけを自転させながら定盤表面を水にて洗い流した後(修正リングで遊離砥粒を除去する効果がある)、定盤表面に残った水を、水で湿らせた軟らかい皮、あるいはスポンジ性状タオル、例えばセーム皮で拭き取り、その後前記定盤の表面に砥粒を含まない潤滑剤、例えば水を主成分とするグリコール系有機溶剤混合液を滴下しながら該定盤を回転し、その表面で冶具に固定した磁気ヘッドと修正リングを所定時間自転させることを特徴とする磁気ヘッドの加工方法が記載されている。
【0009】
これらは遊離砥粒スラリーによる主研磨を実施した後、砥粒を含まないラッピングオイルを用い仕上げ研磨を行うことによりスクラッチの原因である遊離砥粒を排除し、定盤に固定化された砥粒のみで研磨加工するため高品位な研磨面を得ようとするものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来のこれらの方法では、固定化されていない遊離砥粒をラッピング定盤上から除去するために、分散媒や洗剤、水等の任意の液を用いて洗い流し、定盤表面をブラシなどで定盤外へ排除し、埃等が発生しない布等を用いて拭き取りを行うことが検討されている。しかしながら、これまでにこのような硬度の異なる複数の異硬度材料から構成される複合材料のラッピング及びポリッシング加工において軟質材料部分で発生するスクラッチ及びショートの防止を目的としてスクラッチの原因である遊離砥粒を効率よく排出するとともに高研磨面品質を達成するような砥粒を含まないラッピングオイル組成物についてはあまり検討されていない。
【0011】
本発明は、異なる複数の異硬度材料から構成される複合材の軟質材料表面に研磨傷を生じることなく高研磨面品質に加工する最終仕上げ研磨工程で使用するのに適した仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物に関する。特に薄膜型磁気ヘッドの最終仕上げ研磨工程で使用するのに適した仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を提供しようとするものである。更に洗浄や拭き取りといった工程を簡略化でき、結果として固定砥粒のばらつきによる研磨面品位の低下を抑え、定盤上に固定化されていない遊離砥粒の排出性を高めた仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物および複合材の研磨方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、異硬度材料で構成されている複合材の研磨加工において、研磨材粒子を含有する研磨液をラッピング定盤上に滴下しながら主研磨を行った後に実施される仕上げ研磨用のラッピングオイル組成物であって、非水系溶媒にアミン系化合物を少なくとも一種類以上含有し、研磨材粒子を含有しないことを特徴とする仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物である。
【0013】
本発明の実施の形態によれば、前記アミン系化合物が下記構造式(I)で表される1、2又は3級アミン系化合物である仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物である。
【化3】
(R1は炭素数5〜18である炭化水素基、R2、R3は水素原子または炭素数1〜4である炭化水素基)
【0014】
本発明の別の実施の形態によれば前記アミン系化合物が下記構造式(II)で表されるアルカノールアミン又はポリオキシエチレンアミン化合物である仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物である。
【化4】
(R4は炭素数5〜18である炭化水素基、m+n=1〜8)
【0015】
本発明の複合材の仕上げ研磨方法によれば、非水系溶媒を主成分とする非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリー組成物を用い、前記ラッピング定盤上に前記研磨材粒子を固定化した後、異硬度材料で構成される複合材料をラッピング定盤上に配置し、上記の仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を滴下しながら固定化されていない前記研磨材粒子を排除しつつ前記複合材料の仕上げ研磨を行うことができる。
ここに、研磨材粒子の固定化は異硬度材料で構成される複合材料をラッピング定盤上に配置して通常の主研磨を実施することで達成できるが、主研磨の後に遊離砥粒スラリー組成物を滴下しながら別個のダミー又は修正リング等を利用して研磨材粒子の固定化を達成しても良い。前者の方法は簡便で能率的であるので特に推奨されるが、より精度の高い仕上げ研磨が必要な場合には後者の方法を実施することができる。本発明の方法は研磨材粒子の排除効果が高いアミン系化合物を使用したため、研磨材粒子の固定化後に洗浄や拭き取りを要しないで品位の高い仕上げラッピング工程を実施できる点で従来よりもすぐれた方法である。
【0016】
【作用】
非水系溶媒を主成分とする非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリーの分散状態は電気的に中性な状態に保たれている。一方、本発明に用いるアミン系化合物は親水性部分が正電荷を有している。そのため、そのような非水系遊離砥粒スラリーとアミン系化合物のような電荷を有する化合物を含有する液を混合すると、アミン系化合物が有する電荷によりそれまで電気的に中性状態で安定していたスラリーの分散系が破壊され砥粒の弱い凝集が起こる。このため、遊離砥粒スラリーを使用した後に本発明のアミン系化合物を含有する砥粒を含まないラップ液の滴下を行うことにより、遊離砥粒が希釈されるとともに比較的大きなサイズの弱い凝集体を形成し、結果としてスクラッチの原因である遊離砥粒は凝集体として効率よく排除される。また、液中で形成され存在している遊離砥粒の凝集体は弱い結合であり衝撃により容易に崩壊するため、この凝集体がスクラッチを引き起こすことはない。よって、定盤に固定化された砥粒のみで研磨加工されるため高研磨面品質を達成する能力に優れていると考えられる。
【0017】
また、本発明に用いるアミン系化合物を使用した場合、分子中に存在する極性基であるアミノ基が被研磨物の金属表面に吸着することにより、吸着保護層が形成され、潤滑作用により仕上げ研磨工程における金属表面の研磨衝撃を低減されるため、より精密に研磨加工されると考えられる。このため、仕上げ研磨工程において新たにスクラッチが発生することなく、高品位な研磨面を得ることが可能であると考えられる。
本発明の複合材の仕上げ研磨方法によれば前記異硬度材料で構成される複合材が薄膜型磁気ヘッドであるときに好適に使用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する各材料について詳細に説明する。
【0019】
本発明に用いられるアミン系化合物としては、下記構造式で表される1、2又は3級アミン系化合物である。
【化5】
(R1は炭素数5〜18である炭化水素基、R2、R3は水素原子または炭素数1〜4である炭化水素基)
その具体例としてはn−アミルアミン、s−アミルアミン、t−アミルアミン、iso−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、2−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、s−オクチルアミン、t−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ドデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミンなどが挙げられる。また、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明に用いられるアルカノールアミン又はポリオキシエチレンアミン化合物としては、下記構造式で表されるアミン化合物である。
【化6】
(R4は炭素数5〜18である炭化水素基、m+n=1〜8)
その具体例としてはヒドロオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミンなどが挙げられる。また、これらに限定されるものではない。これらのアミン系化合物を単独若しくは、二種類以上を任意の割合で添加して用いることができる。
【0021】
本発明に用いるこれらのアミン系化合物は、沸点が80℃以上、好ましくは沸点が100℃以上である。これは、蒸発速度の速い添加剤は研磨作業中に蒸発してしまい、安定な研磨加工を困難にするからである。
【0022】
また、本発明に用いるこれらのアミン系化合物の添加濃度は、ラッピングオイル組成物に対してアミン化合物が0.5〜10.0wt%の範囲であり、好ましくは0.5〜2.0wt%である。これらの添加剤の添加量は少なすぎると、添加量不足によるスクラッチが生じる恐れがある。また、過剰に添加した場合における効果の更なる向上は見られない。
【0023】
本発明に用いる非水系溶媒は、薄膜型磁気ヘッドの構成材料であるパーマロイ及びセンダストなどの金属膜が一般的に水に対して弱く腐食や錆を発生するので非水系溶媒を用いることが望ましく、更に極性の低い非極性溶媒を用いることが望ましい。ここで、溶媒の極性とは普通に使用される意味で溶媒分子内の原子とその結合の種類、原子団及び原子配列とその位置などによって分子内に生じる双極子に基づく性質である。この極性の大きさは相互作用する分子の極性によって相対的に決まるものである。溶媒の極性は、定性的にHildebrandの溶解性パラメーター(sp値)δ値で表される。このδ値が大きい程極性が大きく、小さいもの程極性は小さい。このδ値は、更に極性による配向及び水素結合などの分子間相互作用によっていくつか分けられるが、これらの値は、その溶媒がどのような化合物をよく溶かすかという、化合物に対する溶解の選択性を決定するものである。本発明の仕上げ研磨用ラッピングオイルの有機溶媒は、このδ値が低いものが望ましい。これは、溶媒自体が人体や被研磨物に対して悪影響を与えるからである。
【0024】
更に本発明では、研磨加工中のラッピングオイルの蒸発を無くし、安定な研磨加工を行うために溶媒の蒸発速度が遅い溶媒が適している。これは、蒸発速度の速い溶媒は研磨作業中に溶媒が蒸発してしまい、安定な研磨加工が困難になるからである。これらのことから、本発明に用いる溶媒は、沸点が100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、溶解性パラメーターsp値が10.0以下、好ましくは8.0以下、相対速度が5.0以下、より好ましくは2.0以下のものが適している。これらの溶媒としては例えば、エクソン化学(株)製無臭イソパラフィン系溶媒:アイソパーシリーズや低臭ナフテン系溶媒:EXXSOLシリーズ、モービル化学製n−パラフィン系溶媒:ホワイトレックスシリーズ及び工業用脂肪族系溶媒であるペガソール、ペガホワイト、サートレックスなどがある。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
本実施例では、アルチック(ビッカース硬度Hv 2500)、センダスト(Hv 500)及びパーマロイ(Hv 200)等の複合材によって構成される薄膜型磁気ヘッドをラッピング定盤上に配置し、油性の1/10μmダイヤモンドスラリーによる研磨加工(粗研磨)を実施した(比較例1)、続いて表1に示す組成の本発明の各種アミン系化合物を含有したラッピングオイルを滴下しながら仕上げ研磨加工を行った。また比較例2としてアミン系化合物を含有しないラッピングオイルを用いて同様に仕上げ研磨加工を行った。このとき粗研磨と仕上げ研磨は研磨液の切り換えのみ行い、洗浄や拭き取りといった作業は行わなかった。
【0026】
【表1】
【0027】
研磨実験には、日本エンギス(株)製自動精密ラッピングマシンHYPREZEJ−3801N型、ラップ盤に錫/鉛定盤を用いた。遊離研磨スラリーによる粗研磨後のラッピングオイルによる仕上げ研磨条件は、定盤回転速度を5rpm、オイル研磨液供給を30秒間隔に3秒間噴霧、加工荷重を1300g/cm2、加工時間を10分間とした。
【0028】
研磨特性は研磨加工後の薄膜磁気型ヘッドの金属膜部に発生するスクラッチ及び面粗れについて微分干渉光学顕微鏡(×1000)を用いて評価した。研磨面はスクラッチが見られないものを「非常に良い」、スクラッチが1〜3本のものを「良好」、4〜6本のものを「やや傷あり」、7本以上のものを「傷多い」として評価した。
【0029】
本実施例及び比較例の結果を表2に示す。アミン系化合物を含有するラッピングオイル組成物を用いて仕上げ研磨した薄膜型磁気ヘッドの研磨面は、いずれも比較例である遊離砥粒スラリーによる研磨加工後の研磨面及び遊離砥粒スラリーによる研磨加工後にアミン系化合物を含有しない無添加系ラッピングオイルを用いたときの研磨面よりも良好であった。特にドデシルアミン、ドデシルジメチルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン(2EO)の3種が良好であった。これは本発明のラッピングオイルを滴下することにより、粗研磨時に固定化されなかった研磨材粒子を効率的に排除し、固定化した研磨材粒子のみで仕上げ研磨が行われたためである。
【0030】
【表2】
【0031】
(実施例2)
次にアミン系化合物としてドデシルアミンを用い、添加濃度を0.1〜10wt%まで変化したとき研磨面について実施例1と同様の評価を行った。
【0032】
本実施例の実験結果を表3に示す。アミン系化合物を添加した本実施品は無添加の比較例2と比べて研磨面状態は良好であったが、濃度が0.5wt%以上で研磨面が良好になり、特に1.0〜5.0wt%の範囲において最もスクラッチや面粗れがなく良好であった。また10.0wt%以上の範囲においても効果の更なる向上は見られなかった。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
これらの実施例の結果から、遊離砥粒スラリーによる研磨加工を実施した後にアミン系化合物を1種類以上添加した仕上げ研磨用ラッピングオイルを用いて仕上げ研磨を実施することにより軟質材料表面に研磨傷を生じることなく高研磨面品質に加工することができ、硬度の異なる複合材料の研磨加工における軟質材料の選択研磨を防止した均一な研磨加工が可能であった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬度の異なる複数の異硬度材料から構成される複合材料の研磨加工に用いられるラッピングオイル組成物に関する。特に遊離砥粒スラリーによる薄膜型磁気ヘッドの空気浮上面となる面の研磨加工後に実施される最終仕上げ研磨工程に使用するのに適したラッピングオイル組成物および仕上げ研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューターのハードディスクドライブに搭載されている薄膜型磁気ヘッドは一般にアルチック(Al2O3−TiC)などの基材、アルミナ(Al2O3)などの保護/絶縁膜といったセラミックス及びパーマロイ(Fe−Ni)、センダスト(Fe−Al−Si)などの磁性金属膜等による複合材料で構成され、薄膜型磁気ヘッドのABS(Air Bearing Surface:ABS(空気浮上面))となる面は遊離砥粒スラリーを用いた研磨加工により製造される。アルチックやアルミナなどのセラミックスは硬質材料であり、パーマロイやセンダストなどの磁性金属膜部分は軟質材料である。そのため、材料間の硬度の違いにより軟質材料が選択的に研磨され、セラミックスからなるABSより磁極部などの金属膜の後退いわゆるポールチップリセッション(Pole Tip Recession:PTR)が発生してしまう。PTRの発生は記録媒体との磁気ヘッドの間隔を増大させ、実質的なヘッドの浮上量を増加させてしまうといった問題点があった。このため研磨加工における最も重要な問題点の一つとして、被研磨物の選択研磨が挙げられ、これらの加工段差の発生を防止する加工方法について検討されている。
【0003】
一方、遊離砥粒スラリーを用いた薄膜型磁気ヘッドの研磨加工におけるもう一つの問題点として材料間の硬度の違いにより軟質材料表面が選択的に研磨され、研磨面の面粗れやスクラッチが発生することが挙げられる。特に研磨面上に横断して生じたスクラッチは、電気的な短絡即ちショートの原因となり、磁気ヘッドの磁気特性を低下させてしまう。磁極部などの金属膜や絶縁膜は磁気ヘッドの磁気特性向上に伴い薄膜化され、スクラッチによるショートがさらに発生しやすくなり深刻な問題となっている。
【0004】
そこで、このような軟質材料である金属膜のダメージを回避するために、遊離砥粒スラリーによりABSとなる面の研磨加工を実施した後に砥粒を含まないラッピングオイルによる仕上げ研磨を実施することが、例えば特開昭62−292358号公報、特開平3−92264号公報、特開平7−299737号公報、特開平9−245333号公報などによって提案されている。
【0005】
特開昭62−292358号公報には、浮動型磁気ヘッドの浮動面の最終ポリッシングにおいて、ポリッシング定盤上に遊離砥粒ポリッシング液を塗布し、修正リングを使用して、10分から30分の均し回転させて遊離砥粒を定盤に埋め込み、その後手作業で定盤上の遊離砥粒を拭き取り、洗剤及び水で洗い流し、水気はクリーンエア等で除去した後にポリッシング定盤上に希釈液(一般には遊離砥粒ポリッシング液の溶媒)を塗布し、ポリッシングすることにより浮動面の平坦度及び表面粗さを小さくできることが記載されている。
【0006】
特開平3−92264号公報には、複合材、すなわち、硬度の異なる2以上の異種材料で構成されたもの、たとえば磁気ヘッドの浮上面(ラップ面)の異種材料間に生じる加工段差の低減、及び該ラップ面の角度の縁だれの低減をするため、軟質金属製の定盤上ヘラップ液を滴下しながら、複合材を定盤上へ押圧摺動させて該複合材をラッピングする方法において、砥粒を含むラップ液で、あらかじめ粗ラッピングをした後、定盤表面をブラシなどで水洗することにより転動砥粒を定盤外へ排除し、砥粒を含まないラップ液、たとえば水を滴下しながらラッピングすることにより、埋め込み砥粒のみがラッピングに関与する複合材の高精度ラッピング法について記載されている。
【0007】
特開平7−299737号公報には、ラッピング定盤に遊離砥粒と潤滑剤を塗布し、前記遊離砥粒を前記ラッピング定盤にめり込ませて固定砥粒を形成した後に、被研磨物をラッピング定盤から取り除き、続いて潤滑油や水溶性潤滑剤、グリセリン水溶液等の潤滑剤を噴霧し、埃等が発生しない布等を用いてラッピング定盤を拭き上げることによって、ラッピング定盤上の遊離砥粒や研磨屑等を取り除くとともに、十分にグリップされていない固定砥粒を取り除き、次に被研磨物をラッピング定盤の上に載せて潤滑剤を所定間隔でラッピング定盤上に供給しながらラッピング定盤を回転させて研磨を行う研磨方法が記載されている。
【0008】
特開平9−245333号公報には、磁気ヘッドの加工方法において、セラミック定盤上に砥粒を含んだラップ液を滴下しながら該定盤を回転し、その表面でダミーワークと修正リングを所定時間自転させた後ダミーワークを取り除き、修正リングだけを自転させながら定盤表面を水にて洗い流した後(修正リングで遊離砥粒を除去する効果がある)、定盤表面に残った水を、水で湿らせた軟らかい皮、あるいはスポンジ性状タオル、例えばセーム皮で拭き取り、その後前記定盤の表面に砥粒を含まない潤滑剤、例えば水を主成分とするグリコール系有機溶剤混合液を滴下しながら該定盤を回転し、その表面で冶具に固定した磁気ヘッドと修正リングを所定時間自転させることを特徴とする磁気ヘッドの加工方法が記載されている。
【0009】
これらは遊離砥粒スラリーによる主研磨を実施した後、砥粒を含まないラッピングオイルを用い仕上げ研磨を行うことによりスクラッチの原因である遊離砥粒を排除し、定盤に固定化された砥粒のみで研磨加工するため高品位な研磨面を得ようとするものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来のこれらの方法では、固定化されていない遊離砥粒をラッピング定盤上から除去するために、分散媒や洗剤、水等の任意の液を用いて洗い流し、定盤表面をブラシなどで定盤外へ排除し、埃等が発生しない布等を用いて拭き取りを行うことが検討されている。しかしながら、これまでにこのような硬度の異なる複数の異硬度材料から構成される複合材料のラッピング及びポリッシング加工において軟質材料部分で発生するスクラッチ及びショートの防止を目的としてスクラッチの原因である遊離砥粒を効率よく排出するとともに高研磨面品質を達成するような砥粒を含まないラッピングオイル組成物についてはあまり検討されていない。
【0011】
本発明は、異なる複数の異硬度材料から構成される複合材の軟質材料表面に研磨傷を生じることなく高研磨面品質に加工する最終仕上げ研磨工程で使用するのに適した仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物に関する。特に薄膜型磁気ヘッドの最終仕上げ研磨工程で使用するのに適した仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を提供しようとするものである。更に洗浄や拭き取りといった工程を簡略化でき、結果として固定砥粒のばらつきによる研磨面品位の低下を抑え、定盤上に固定化されていない遊離砥粒の排出性を高めた仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物および複合材の研磨方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、異硬度材料で構成されている複合材の研磨加工において、研磨材粒子を含有する研磨液をラッピング定盤上に滴下しながら主研磨を行った後に実施される仕上げ研磨用のラッピングオイル組成物であって、非水系溶媒にアミン系化合物を少なくとも一種類以上含有し、研磨材粒子を含有しないことを特徴とする仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物である。
【0013】
本発明の実施の形態によれば、前記アミン系化合物が下記構造式(I)で表される1、2又は3級アミン系化合物である仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物である。
【化3】
(R1は炭素数5〜18である炭化水素基、R2、R3は水素原子または炭素数1〜4である炭化水素基)
【0014】
本発明の別の実施の形態によれば前記アミン系化合物が下記構造式(II)で表されるアルカノールアミン又はポリオキシエチレンアミン化合物である仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物である。
【化4】
(R4は炭素数5〜18である炭化水素基、m+n=1〜8)
【0015】
本発明の複合材の仕上げ研磨方法によれば、非水系溶媒を主成分とする非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリー組成物を用い、前記ラッピング定盤上に前記研磨材粒子を固定化した後、異硬度材料で構成される複合材料をラッピング定盤上に配置し、上記の仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を滴下しながら固定化されていない前記研磨材粒子を排除しつつ前記複合材料の仕上げ研磨を行うことができる。
ここに、研磨材粒子の固定化は異硬度材料で構成される複合材料をラッピング定盤上に配置して通常の主研磨を実施することで達成できるが、主研磨の後に遊離砥粒スラリー組成物を滴下しながら別個のダミー又は修正リング等を利用して研磨材粒子の固定化を達成しても良い。前者の方法は簡便で能率的であるので特に推奨されるが、より精度の高い仕上げ研磨が必要な場合には後者の方法を実施することができる。本発明の方法は研磨材粒子の排除効果が高いアミン系化合物を使用したため、研磨材粒子の固定化後に洗浄や拭き取りを要しないで品位の高い仕上げラッピング工程を実施できる点で従来よりもすぐれた方法である。
【0016】
【作用】
非水系溶媒を主成分とする非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリーの分散状態は電気的に中性な状態に保たれている。一方、本発明に用いるアミン系化合物は親水性部分が正電荷を有している。そのため、そのような非水系遊離砥粒スラリーとアミン系化合物のような電荷を有する化合物を含有する液を混合すると、アミン系化合物が有する電荷によりそれまで電気的に中性状態で安定していたスラリーの分散系が破壊され砥粒の弱い凝集が起こる。このため、遊離砥粒スラリーを使用した後に本発明のアミン系化合物を含有する砥粒を含まないラップ液の滴下を行うことにより、遊離砥粒が希釈されるとともに比較的大きなサイズの弱い凝集体を形成し、結果としてスクラッチの原因である遊離砥粒は凝集体として効率よく排除される。また、液中で形成され存在している遊離砥粒の凝集体は弱い結合であり衝撃により容易に崩壊するため、この凝集体がスクラッチを引き起こすことはない。よって、定盤に固定化された砥粒のみで研磨加工されるため高研磨面品質を達成する能力に優れていると考えられる。
【0017】
また、本発明に用いるアミン系化合物を使用した場合、分子中に存在する極性基であるアミノ基が被研磨物の金属表面に吸着することにより、吸着保護層が形成され、潤滑作用により仕上げ研磨工程における金属表面の研磨衝撃を低減されるため、より精密に研磨加工されると考えられる。このため、仕上げ研磨工程において新たにスクラッチが発生することなく、高品位な研磨面を得ることが可能であると考えられる。
本発明の複合材の仕上げ研磨方法によれば前記異硬度材料で構成される複合材が薄膜型磁気ヘッドであるときに好適に使用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する各材料について詳細に説明する。
【0019】
本発明に用いられるアミン系化合物としては、下記構造式で表される1、2又は3級アミン系化合物である。
【化5】
(R1は炭素数5〜18である炭化水素基、R2、R3は水素原子または炭素数1〜4である炭化水素基)
その具体例としてはn−アミルアミン、s−アミルアミン、t−アミルアミン、iso−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、2−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、s−オクチルアミン、t−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ドデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミンなどが挙げられる。また、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明に用いられるアルカノールアミン又はポリオキシエチレンアミン化合物としては、下記構造式で表されるアミン化合物である。
【化6】
(R4は炭素数5〜18である炭化水素基、m+n=1〜8)
その具体例としてはヒドロオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミンなどが挙げられる。また、これらに限定されるものではない。これらのアミン系化合物を単独若しくは、二種類以上を任意の割合で添加して用いることができる。
【0021】
本発明に用いるこれらのアミン系化合物は、沸点が80℃以上、好ましくは沸点が100℃以上である。これは、蒸発速度の速い添加剤は研磨作業中に蒸発してしまい、安定な研磨加工を困難にするからである。
【0022】
また、本発明に用いるこれらのアミン系化合物の添加濃度は、ラッピングオイル組成物に対してアミン化合物が0.5〜10.0wt%の範囲であり、好ましくは0.5〜2.0wt%である。これらの添加剤の添加量は少なすぎると、添加量不足によるスクラッチが生じる恐れがある。また、過剰に添加した場合における効果の更なる向上は見られない。
【0023】
本発明に用いる非水系溶媒は、薄膜型磁気ヘッドの構成材料であるパーマロイ及びセンダストなどの金属膜が一般的に水に対して弱く腐食や錆を発生するので非水系溶媒を用いることが望ましく、更に極性の低い非極性溶媒を用いることが望ましい。ここで、溶媒の極性とは普通に使用される意味で溶媒分子内の原子とその結合の種類、原子団及び原子配列とその位置などによって分子内に生じる双極子に基づく性質である。この極性の大きさは相互作用する分子の極性によって相対的に決まるものである。溶媒の極性は、定性的にHildebrandの溶解性パラメーター(sp値)δ値で表される。このδ値が大きい程極性が大きく、小さいもの程極性は小さい。このδ値は、更に極性による配向及び水素結合などの分子間相互作用によっていくつか分けられるが、これらの値は、その溶媒がどのような化合物をよく溶かすかという、化合物に対する溶解の選択性を決定するものである。本発明の仕上げ研磨用ラッピングオイルの有機溶媒は、このδ値が低いものが望ましい。これは、溶媒自体が人体や被研磨物に対して悪影響を与えるからである。
【0024】
更に本発明では、研磨加工中のラッピングオイルの蒸発を無くし、安定な研磨加工を行うために溶媒の蒸発速度が遅い溶媒が適している。これは、蒸発速度の速い溶媒は研磨作業中に溶媒が蒸発してしまい、安定な研磨加工が困難になるからである。これらのことから、本発明に用いる溶媒は、沸点が100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、溶解性パラメーターsp値が10.0以下、好ましくは8.0以下、相対速度が5.0以下、より好ましくは2.0以下のものが適している。これらの溶媒としては例えば、エクソン化学(株)製無臭イソパラフィン系溶媒:アイソパーシリーズや低臭ナフテン系溶媒:EXXSOLシリーズ、モービル化学製n−パラフィン系溶媒:ホワイトレックスシリーズ及び工業用脂肪族系溶媒であるペガソール、ペガホワイト、サートレックスなどがある。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
本実施例では、アルチック(ビッカース硬度Hv 2500)、センダスト(Hv 500)及びパーマロイ(Hv 200)等の複合材によって構成される薄膜型磁気ヘッドをラッピング定盤上に配置し、油性の1/10μmダイヤモンドスラリーによる研磨加工(粗研磨)を実施した(比較例1)、続いて表1に示す組成の本発明の各種アミン系化合物を含有したラッピングオイルを滴下しながら仕上げ研磨加工を行った。また比較例2としてアミン系化合物を含有しないラッピングオイルを用いて同様に仕上げ研磨加工を行った。このとき粗研磨と仕上げ研磨は研磨液の切り換えのみ行い、洗浄や拭き取りといった作業は行わなかった。
【0026】
【表1】
【0027】
研磨実験には、日本エンギス(株)製自動精密ラッピングマシンHYPREZEJ−3801N型、ラップ盤に錫/鉛定盤を用いた。遊離研磨スラリーによる粗研磨後のラッピングオイルによる仕上げ研磨条件は、定盤回転速度を5rpm、オイル研磨液供給を30秒間隔に3秒間噴霧、加工荷重を1300g/cm2、加工時間を10分間とした。
【0028】
研磨特性は研磨加工後の薄膜磁気型ヘッドの金属膜部に発生するスクラッチ及び面粗れについて微分干渉光学顕微鏡(×1000)を用いて評価した。研磨面はスクラッチが見られないものを「非常に良い」、スクラッチが1〜3本のものを「良好」、4〜6本のものを「やや傷あり」、7本以上のものを「傷多い」として評価した。
【0029】
本実施例及び比較例の結果を表2に示す。アミン系化合物を含有するラッピングオイル組成物を用いて仕上げ研磨した薄膜型磁気ヘッドの研磨面は、いずれも比較例である遊離砥粒スラリーによる研磨加工後の研磨面及び遊離砥粒スラリーによる研磨加工後にアミン系化合物を含有しない無添加系ラッピングオイルを用いたときの研磨面よりも良好であった。特にドデシルアミン、ドデシルジメチルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン(2EO)の3種が良好であった。これは本発明のラッピングオイルを滴下することにより、粗研磨時に固定化されなかった研磨材粒子を効率的に排除し、固定化した研磨材粒子のみで仕上げ研磨が行われたためである。
【0030】
【表2】
【0031】
(実施例2)
次にアミン系化合物としてドデシルアミンを用い、添加濃度を0.1〜10wt%まで変化したとき研磨面について実施例1と同様の評価を行った。
【0032】
本実施例の実験結果を表3に示す。アミン系化合物を添加した本実施品は無添加の比較例2と比べて研磨面状態は良好であったが、濃度が0.5wt%以上で研磨面が良好になり、特に1.0〜5.0wt%の範囲において最もスクラッチや面粗れがなく良好であった。また10.0wt%以上の範囲においても効果の更なる向上は見られなかった。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
これらの実施例の結果から、遊離砥粒スラリーによる研磨加工を実施した後にアミン系化合物を1種類以上添加した仕上げ研磨用ラッピングオイルを用いて仕上げ研磨を実施することにより軟質材料表面に研磨傷を生じることなく高研磨面品質に加工することができ、硬度の異なる複合材料の研磨加工における軟質材料の選択研磨を防止した均一な研磨加工が可能であった。
Claims (8)
- 異硬度材料で構成されている複合材の研磨加工において、研磨材粒子を含有する研磨液をラッピング定盤上に滴下しながら主研磨を行った後に実施される仕上げ研磨用のラッピングオイル組成物であって、非水系溶媒にアミン系化合物を少なくとも一種類含有し且つ研磨材粒子を含有しないことを特徴とする仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物。
- 非水系溶媒を主成分とし非イオン系界面活性剤により分散された研磨材粒子を含有する遊離砥粒スラリー組成物を用いてラッピング定盤上に前記研磨材粒子を固定化した後、前記ラッピング定盤上に配置した異硬度材料で構成される複合材料に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物を滴下しながら固定化されていない前記研磨材粒子を排除して仕上げ研磨を行うことを特徴とする複合材の仕上げ研磨方法。
- 前記研磨材粒子の前記定盤への固定化は前記定盤上に前記複合材料を配置して主研磨を行うことによる請求項4に記載の複合材の仕上げ研磨方法。
- 前記研磨材粒子の前記定盤への固定化は前記定盤上にダミー部材又は修正リングを用いて行われる請求項4に記載の複合材の仕上げ研磨方法。
- 前記異硬度材料で構成される複合材が薄膜型磁気ヘッドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の仕上げ研磨用ラッピングオイル組成物。
- 前記異硬度材料で構成される複合材が薄膜型磁気ヘッドであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の複合材の仕上げ研磨方法。
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