JP2004055436A - 燃料電池、そのガス分離板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス分離板の波板構造領域を機械加工で形成することによって生じる応力を緩和して、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することを可能にする。
【解決手段】この発明に係るガス分離板の製造方法は、ガス分離板10の平坦部18に、マニホールド孔20、22、24とは離れたものであって当該平坦部18に加わる内外方向の応力を緩和するスリット30を波板構造領域12の辺に沿うように形成した後に、波板構造領域12をプレス成形等の機械加工によって形成することを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】この発明に係るガス分離板の製造方法は、ガス分離板10の平坦部18に、マニホールド孔20、22、24とは離れたものであって当該平坦部18に加わる内外方向の応力を緩和するスリット30を波板構造領域12の辺に沿うように形成した後に、波板構造領域12をプレス成形等の機械加工によって形成することを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料電池、特に固体高分子膜型の燃料電池用の金属製のガス分離板(セパレータとも呼ばれる)、その製造方法および当該ガス分離板を備える燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス分離板は、電解質膜を二つの電極で挟んで成る単位燃料電池を複数積層して燃料電池を構成するときに当該単位燃料電池間に挟んで使用される。
【0003】
このガス分離板は、近年のものは金属製であり、燃料ガス通路を一方の面に有し酸化ガス通路を他方の面に有する波板構造領域を中央部に備え、その周囲に平坦部を備え、かつこの平坦部に、ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)や冷却媒体を通すマニホールド孔を有している。
【0004】
このようなガス分離板の波板構造領域の形成は、通常、例えば特開平10−228914号公報、特開2000−260439号公報に記載されているように、金属板にプレス成形等の機械加工を施すことによって形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、金属板にプレス成形等の機械加工を施すことによって波板構造領域を形成すると、機械加工によって生じる応力によって、波板構造領域やその周囲の平坦部に、金属板の延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するという課題がある。
【0006】
ガス分離板に上記のような歪みや湾曲等が発生すると、様々な不具合が発生する。例えば、ガスや冷却媒体が漏れる可能性が生じるので、安全性および信頼性が低下する。また、ガス分離板と電極との接触が不均一となり、内部電気抵抗が増加して燃料電池としての性能および出力安定性が低下する。
【0007】
そこでこの発明は、ガス分離板の波板構造領域を機械加工で形成することによって生じる応力を緩和して、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することを可能にすることを主たる目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るガス分離板の製造方法は、前記ガス分離板の平坦部に、前記マニホールド孔とは離れたものであって当該平坦部に加わる内外方向の応力を緩和するスリットおよび襞の少なくとも一方を前記波板構造領域の辺に沿うように形成した後に、前記波板構造領域を機械加工によって形成することを特徴としている(請求項1)。
【0009】
この製造方法によれば、平坦部に予め上記スリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、当該スリットまたは襞が一種の自由端を形成しているので、その後の波板構造領域形成の機械加工時に平坦部に加わる内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0010】
この発明に係るガス分離板は、前記平坦部に、前記マニホールド孔とは離れたものであって当該平坦部に加わる内外方向の応力を緩和するスリットおよび襞の少なくとも一方を前記波板構造領域の辺に沿って形成していることを特徴としている(請求項2)。
【0011】
このガス分離板によれば、平坦部に上記スリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、当該スリットまたは襞が一種の自由端を形成しているので、波板構造領域形成の機械加工に伴って平坦部に発生する内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0012】
この発明に係る燃料電池は、上記製造方法によって製造されたガス分離板を備えていることを特徴としている(請求項3)。
【0013】
上記製造方法によって製造されたガス分離板を用いることによって、上記作用によって、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になるので、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るガス分離板の一例を示す平面図である。図2は、図1の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【0015】
このガス分離板10は、水素を含む燃料ガスを通す燃料ガス通路14を一方の面(図1では表面)に有し、酸素を含む酸化ガスを通す酸化ガス通路16を他方の面(図1では裏面)に有する波板構造領域12を中央部に備え、その周囲に平坦部18を備えている。この波板構造領域12は、その断面形状に着目すれば、凹凸構造領域と呼ぶこともできる。その機能に着目すれば、ガス通路形成領域と呼ぶこともできる。
【0016】
このガス分離板10は、金属製であり、導電性を有している。このガス分離板10を構成する金属には、例えば、(1)Fe を主成分とし、C、Mn 、Ni 、Cr 、Ti 、Nb 、Mo より選ばれる少なくとも一つの元素を含むステンレス鋼、(2)Ti を主成分とするチタン合金、(3)Al を主成分とするアルミニウム合金、(4)チタンそのもの、または、(5)アルミニウムそのもの、を用いるのが好ましい。これは、これらの材料は汎用性が高い等の理由による。この実施例では、厚さ0.3mmのステンレス鋼板(SUS304)を用いている。
【0017】
波板構造領域12の平面寸法は、この実施例では、5cm×5cmの正方形であるが、これに限られるものではなく、長方形等の他の形状および他の寸法でも良い。
【0018】
波板構造領域12における燃料ガス通路14および酸化ガス通路16の平面形状は、例えば、図1に示す例のように曲がりくねった形状でも良いし、図5に示す例のように直線状のものをそれぞれ複数列設けても良い。波板構造領域12の(換言すれば各燃料ガス通路14および各酸化ガス通路16の)断面形状は、図2、図6では簡略化して矩形状の凹凸で示しているけれども、図10に示すように、台形状の波形をしていても良い。丸みを持たせた波形(例えば正弦波状)をしていても良い。
【0019】
ガス分離板10の平坦部18には、ガスや冷却媒体を通すマニホールド孔が設けられている。より具体的には、この例では、燃料ガスを通してそれを波板構造領域12の各燃料ガス通路14に供給し排出するガスマニホールド孔20、酸化ガスを通してそれを各酸化ガス通路16に供給し排出するガスマニホールド孔22、および、燃料電池を冷却する冷却媒体(例えば水)を通す冷媒マニホールド孔24が設けられている。こられのマニホールド孔20、22、24の位置や数は、図1の例に限られるものではない。例えば図5に示す例のように、波板構造領域12を構成する燃料ガス通路14および酸化ガス通路16の配列等に応じて、位置を変えても良い。
【0020】
ガス分離板10の平坦部18には、この例では更に、複数の単位燃料電池52と共に積層して燃料電池50を構成するための締付けロッド66(いずれも図10参照)を通すロッド穴26が四隅に設けられている。
【0021】
このガス分離板10は、更に、平坦部18に、上記ガスマニホールド孔20、22および冷媒マニホールド孔24とは別のものであって、かつそれらとは離れたものであって、当該平坦部18に加わる内外方向の応力(特に引張り応力。以下同じ)を緩和するスリット30を、波板構造領域12の辺(外周の辺。以下同じ)に沿って形成している。より具体的には、この例では、波板構造領域12の2辺にそれぞれ沿う二つのL字状のスリット30と、この両スリット30間の隙間(それを設けるのは、そうしないと波板構造領域12の部分が抜け落ちるからである)の外側に位置する二つの直線状のスリット30とを形成しており、この合計四つのスリット30が協働して、波板構造領域12のほぼ全周を囲んでいる。
【0022】
図5および図6に示すガス分離板10では、平坦部18に、上記ガスマニホールド孔20、22および冷媒マニホールド孔24とは別のものであって、かつそれらとは離れたものであって、当該平坦部18に加わる内外方向の応力を緩和するスリット30および襞32を、波板構造領域12の辺に沿って形成している。より具体的には、この例では、波板構造領域12の2辺にそれぞれ沿う二つのコ字状の襞32と、この両襞32間の隙間の外側に位置する二つの直線状のスリット30とを形成しており、この二つの襞32と二つのスリット30とが協働して、波板構造領域12のほぼ全周を囲んでいる。襞32は、図6に示すように上下両側に突出したものでも良いし、上または下の片側に突出したものでも良い。
【0023】
上記スリット30や襞32は、1以上のものが協働して、波板構造領域12の周囲をできるだけ多く囲むようにするのが好ましく、ほぼ全周を囲むのがより好ましい。より多く囲むほど、平坦部18に加わる前記応力を緩和することができない領域をより少なくすることができるからである。図1および図5の例では、ガスマニホールド孔20および22を避ける等のために、スリット30や襞32を内外で二重に配置しながら、ほぼ全周を囲むようにしている。
【0024】
これを詳述すると、スリット30や襞32の平坦部18の内外方向における位置は、波板構造領域12の最外周縁より0.3cm〜2.0cmの範囲内にするのが好ましく、0.3cm〜1.5cmの範囲内にするのがより好ましい。0.3cmよりも小さいと、スリット30や襞32が波板構造領域12に近過ぎて加工性が悪くなると共に、スリット30や襞32と波板構造領域12との間の形状が崩れやすくなる。1.5cmよりも大きいと、そのぶん平坦部18を広くしなければならなくなり、無駄なスペースが増える。2.0cmよりも大きくすると、平坦部18が必要以上に大きくなって無駄なスペースがより増える。図1の実施例では、スリット30の内外方向の位置は、波板構造領域12の最外周縁より0.5cm〜1.5cmの範囲内にしている。図5の実施例でも、スリット30および襞32の内外方向の位置は、波板構造領域12の最外周縁より0.5cm〜1.5cmの範囲内にしている。
【0025】
スリット30や襞32の、波板構造領域12を取り囲む方向の長さの1以上のものを合計した全長は、波板構造領域12の最外周縁の長さの1.1倍〜2.0倍の範囲内にするのが好ましく、1.2倍〜1.4倍の範囲内にするのがより好ましい。1.1倍よりも小さいと、波板構造領域12の全周を波板構造領域12との間に隙間をあけずに囲むのが難しくなる。1.4倍よりも大きいと、波板構造領域12の全周を囲むとしても波板構造領域12との間に必要以上に大きな隙間をあけることになり平坦部18が大きくなって無駄なスペースが増える。2.0倍よりも大きいと、波板構造領域12の全周を2倍近く囲むことになり、平坦部18が必要以上に大きくなって無駄なスペースがより増える。図1の実施例では、4本のスリット30の周方向の全長は26cmであり、波板構造領域12の最外周縁の長さ(20cm)の1.3倍にしている。図5の実施例では、2本のスリット30と2本の襞32を合計した周方向の全長は24cmであり、波板構造領域12の最外周縁の長さ(20cm)の1.2倍にしている。
【0026】
上記のようなガス分離板10を製造するには、金属板にプレス成形等の機械加工を、次のように複数工程(少なくとも2工程)に分けて施す製造方法を採用するのが好ましい。
【0027】
即ち、まず第1の工程によって、ガス分離板10の平坦部18に(より具体的には、ガス分離板10の元になる金属板において上記平坦部18に対応する部分に)、上記スリット30や襞32を、機械加工によって、例えばプレス成形によって形成する。この第1の工程において、ガスマニホールド孔20、22、冷媒マニホールド孔24およびロッド穴26を同時に形成しても良いし、これらは別の工程で形成しても良い。
【0028】
次に、第2の工程によって、ガス分離板10に(より具体的には、ガス分離板10の元になる金属板において上記スリット30や襞32の内側の波板構造領域12に対応する部分に)、上記波板構造領域12を、機械加工によって、例えばプレス成形によって形成する。
【0029】
以上の製造方法によって、図1および図2あるいは図5および図6に示したガス分離板10が得られる。
【0030】
このような製造方法によれば、平坦部18に予めスリット30や襞32を形成しておくことによって、当該スリット30または襞32が一種の自由端を形成しているので、その後の波板構造領域12形成の機械加工時に平坦部18に加わる内外方向の応力を、当該スリット30や襞32が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。より具体的には、波板構造領域12を機械加工する場合、一般的に、平坦部18の周辺部を固定しておいて、中央の波板構造領域12になる部分にプレス成形等の機械加工を施すことになるので、平坦部18には引張り応力が加わる。この応力を、スリット30や襞32の僅かな伸びによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板10に、より具体的にはその平坦部18や波板構造領域12に、延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0031】
ひいては、このようなガス分離板10を用いて燃料電池を構成したときの燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)や冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板10と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0032】
燃料電池50(図10参照)を構成する場合に、上記のようなガス分離板10の平坦部18を挟んでガスや冷却媒体をシールするガスケット40の例を図3、図4および図7、図8に示す。
【0033】
図3および図4に示すガスケット40は、図1および図2に示したガス分離板10用のものであり、前記マニホールド孔20、22、24およびロッド穴26に加えて、波板構造領域12に対応する開口部42と、それとガスマニホールド孔20または22とをつなぐ連通路44(図3、図7の例)または連通路46(図4、図8の例)とを有している。
【0034】
図7および図8に示すガスケット40は、図5および図6に示したガス分離板10用のものであり、更に、上記襞32に対応する部分に当該襞32を納める抜き穴48を設けている。襞32が前述したように上または下の一方にのみ突出したものである場合は、当該襞32に対応する側のガスケット40にのみ抜き穴48を設ければ良い。襞32の高さは、ガスケット40の厚さよりも小さくするのが好ましい。換言すれば、襞32の高さは、波板構造領域12の突出部の平坦部18からの高さよりも小さくするのが好ましい。そのようにすれば、襞32がガスケット40より外に突出して他の物(例えば図10に示す電解質膜54や集電板60)に当たって邪魔になることを防止することができる。
【0035】
なお、上記スリット30や襞32は、前述したように、波板構造領域12の周囲をより多く囲むほど応力緩和の作用効果はより高くなるけれども、必ずしも波板構造領域12のほぼ全周を囲む必要はない。囲む範囲が少ない方が、ガスケット40によるガスや冷却媒体のシール性に関しては、シール面が大きくなるので、シール性は高くなる。例えば図9に示す例のように、平坦部18内であって、波板構造領域12を挟んで相対向する領域に、波板構造領域12の各辺にほぼ相当する長さ、あるいはそれ以上の長さのスリット30をそれぞれ設けても良い。そのようなスリット30の代わりに襞32を設けても良い。あるいは、スリット30と襞32とを組み合わせて設けても良い。
【0036】
また、例えば図9に示す例のように、ガス分離板10の(より具体的にはその平坦部18の)縁から各スリット30までをつなぐ切り込み34を更に設けても良い。この切り込み34を更に形成しておくと、波板構造領域12を囲む周方向に着目すると、当該切り込み34が一種の自由端を形成することになるので、波板構造領域12形成の機械加工時に平坦部18に加わる周方向の応力をも、当該切り込み34が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板10に、より具体的にはその平坦部18や波板構造領域12に、延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのをより確実に抑制することが可能になる。
【0037】
上記のような切り込み34を設けることは、図9に示す例のようにスリット30を設けることと併用しても良いし、前述したような襞32を設けることと併用しても良い。
【0038】
上述したような構造あるいは製造方法によるガス分離板10を備える燃料電池の一例を図10に示す。この燃料電池50は、電解質膜(より具体的には固体高分子電解質膜)54を二つの電極56で挟んで成る単位燃料電池52を、間に上述したようなガス分離板10を挟んで2層に積層した構造をしている。より具体的には、この燃料電池50は、二つの単位燃料電池52を3枚のガス分離板10でそれぞれ挟み込み、かつ各ガス分離板10の周縁部の上下に上述したようなガスケット40をそれぞれ配置し、更に集電板60、絶縁物62を介して、ステンレス製の端板64をその両端に配置して、締付けロッド66で締結して成る。各電極56は、前記燃料ガスまたは酸化ガスが進入する多孔質のものである。この各電極56とガス分離板10との間には、この例のように、例えばカーボンペーパによるガス拡散層58を挟み込むのが好ましいけれども、必須ではない。
【0039】
このような燃料電池50で、図1および図2に示したガス分離板10(そのスリット30の配置および寸法等は先に実施例として説明したとおり)を用いたものを実施例1とし、図5および図6に示したガス分離板10(そのスリット30および襞32の配置および寸法等は先に実施例として説明したとおり)を用いたものを実施例2とし、スリット30および襞32のどちらも設けていないガス分離板を用いたものを比較例として、燃料利用率70%、酸素利用率40%、電流密度0.4A/cm2 の条件で発電試験を行った際の初期出力電圧を表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
この表に示すように、比較例に比べて、実施例1および実施例2の出力電圧が高いことが確かめられた。これは、実施例1、2におけるガス分離板10は前述したようにその歪み、湾曲等が抑えられるので、当該ガス分離板10と電極56(あるいはガス拡散層58)との接触が均一となって燃料電池50の内部電気抵抗が低くなっていることと共に、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができて性能低下が小さいことによるものと考えられる。
【0042】
なお、上記ガス分離板10の表裏に、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物である窒化チタン、窒化クロム、窒化アルミチタン、(窒化)炭化チタン、酸化チタン等の被覆膜を、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法等によるコーティングによって形成して、ガス分離板10の耐食性および導電性を改善することにより、燃料電池の出力電圧の向上を図ることも可能である。
【0043】
更に、ガス分離板10の波板構造領域12に形成された多数の凸部であって単位燃料電池の電極に接触する少なくとも一部に、例えば金、ルテニウム、ロジウム等の導電性を有すると共に、耐食性に優れた金属材料を上記被覆膜の上に積層することによって、一層の出力電圧の向上を図ることも可能である。
【0044】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0045】
請求項1記載のガス分離板の製造方法によれば、平坦部に予めスリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、その後の波板構造領域形成の機械加工時に平坦部に加わる内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0046】
ひいては、このようなガス分離板を燃料電池に用いることによって、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0047】
請求項2記載のガス分離板によれば、平坦部にスリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、波板構造領域形成の機械加工に伴って平坦部に発生する内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0048】
ひいては、このようなガス分離板を燃料電池に用いることによって、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0049】
請求項3記載の燃料電池によれば、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になるので、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るガス分離板の一例を示す平面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【図3】図1のガス分離板用の一方のガスケットを示す平面図である。
【図4】図1のガス分離板用の他方のガスケットを示す平面図である。
【図5】この発明に係るガス分離板の他の例を示す平面図である。
【図6】図5の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【図7】図5のガス分離板用の一方のガスケットを示す平面図である。
【図8】図5のガス分離板用の他方のガスケットを示す平面図である。
【図9】この発明に係るガス分離板の更に他の例を示す平面図である。
【図10】この発明に係る燃料電池の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ガス分離板
12 波板構造領域
14 燃料ガス通路
16 酸化ガス通路
18 平坦部
20、22 ガスマニホールド孔
24 冷媒マニホールド孔
30 スリット
32 襞
40 ガスケット
50 燃料電池
52 単位燃料電池
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料電池、特に固体高分子膜型の燃料電池用の金属製のガス分離板(セパレータとも呼ばれる)、その製造方法および当該ガス分離板を備える燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス分離板は、電解質膜を二つの電極で挟んで成る単位燃料電池を複数積層して燃料電池を構成するときに当該単位燃料電池間に挟んで使用される。
【0003】
このガス分離板は、近年のものは金属製であり、燃料ガス通路を一方の面に有し酸化ガス通路を他方の面に有する波板構造領域を中央部に備え、その周囲に平坦部を備え、かつこの平坦部に、ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)や冷却媒体を通すマニホールド孔を有している。
【0004】
このようなガス分離板の波板構造領域の形成は、通常、例えば特開平10−228914号公報、特開2000−260439号公報に記載されているように、金属板にプレス成形等の機械加工を施すことによって形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、金属板にプレス成形等の機械加工を施すことによって波板構造領域を形成すると、機械加工によって生じる応力によって、波板構造領域やその周囲の平坦部に、金属板の延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するという課題がある。
【0006】
ガス分離板に上記のような歪みや湾曲等が発生すると、様々な不具合が発生する。例えば、ガスや冷却媒体が漏れる可能性が生じるので、安全性および信頼性が低下する。また、ガス分離板と電極との接触が不均一となり、内部電気抵抗が増加して燃料電池としての性能および出力安定性が低下する。
【0007】
そこでこの発明は、ガス分離板の波板構造領域を機械加工で形成することによって生じる応力を緩和して、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することを可能にすることを主たる目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るガス分離板の製造方法は、前記ガス分離板の平坦部に、前記マニホールド孔とは離れたものであって当該平坦部に加わる内外方向の応力を緩和するスリットおよび襞の少なくとも一方を前記波板構造領域の辺に沿うように形成した後に、前記波板構造領域を機械加工によって形成することを特徴としている(請求項1)。
【0009】
この製造方法によれば、平坦部に予め上記スリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、当該スリットまたは襞が一種の自由端を形成しているので、その後の波板構造領域形成の機械加工時に平坦部に加わる内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0010】
この発明に係るガス分離板は、前記平坦部に、前記マニホールド孔とは離れたものであって当該平坦部に加わる内外方向の応力を緩和するスリットおよび襞の少なくとも一方を前記波板構造領域の辺に沿って形成していることを特徴としている(請求項2)。
【0011】
このガス分離板によれば、平坦部に上記スリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、当該スリットまたは襞が一種の自由端を形成しているので、波板構造領域形成の機械加工に伴って平坦部に発生する内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0012】
この発明に係る燃料電池は、上記製造方法によって製造されたガス分離板を備えていることを特徴としている(請求項3)。
【0013】
上記製造方法によって製造されたガス分離板を用いることによって、上記作用によって、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になるので、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るガス分離板の一例を示す平面図である。図2は、図1の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【0015】
このガス分離板10は、水素を含む燃料ガスを通す燃料ガス通路14を一方の面(図1では表面)に有し、酸素を含む酸化ガスを通す酸化ガス通路16を他方の面(図1では裏面)に有する波板構造領域12を中央部に備え、その周囲に平坦部18を備えている。この波板構造領域12は、その断面形状に着目すれば、凹凸構造領域と呼ぶこともできる。その機能に着目すれば、ガス通路形成領域と呼ぶこともできる。
【0016】
このガス分離板10は、金属製であり、導電性を有している。このガス分離板10を構成する金属には、例えば、(1)Fe を主成分とし、C、Mn 、Ni 、Cr 、Ti 、Nb 、Mo より選ばれる少なくとも一つの元素を含むステンレス鋼、(2)Ti を主成分とするチタン合金、(3)Al を主成分とするアルミニウム合金、(4)チタンそのもの、または、(5)アルミニウムそのもの、を用いるのが好ましい。これは、これらの材料は汎用性が高い等の理由による。この実施例では、厚さ0.3mmのステンレス鋼板(SUS304)を用いている。
【0017】
波板構造領域12の平面寸法は、この実施例では、5cm×5cmの正方形であるが、これに限られるものではなく、長方形等の他の形状および他の寸法でも良い。
【0018】
波板構造領域12における燃料ガス通路14および酸化ガス通路16の平面形状は、例えば、図1に示す例のように曲がりくねった形状でも良いし、図5に示す例のように直線状のものをそれぞれ複数列設けても良い。波板構造領域12の(換言すれば各燃料ガス通路14および各酸化ガス通路16の)断面形状は、図2、図6では簡略化して矩形状の凹凸で示しているけれども、図10に示すように、台形状の波形をしていても良い。丸みを持たせた波形(例えば正弦波状)をしていても良い。
【0019】
ガス分離板10の平坦部18には、ガスや冷却媒体を通すマニホールド孔が設けられている。より具体的には、この例では、燃料ガスを通してそれを波板構造領域12の各燃料ガス通路14に供給し排出するガスマニホールド孔20、酸化ガスを通してそれを各酸化ガス通路16に供給し排出するガスマニホールド孔22、および、燃料電池を冷却する冷却媒体(例えば水)を通す冷媒マニホールド孔24が設けられている。こられのマニホールド孔20、22、24の位置や数は、図1の例に限られるものではない。例えば図5に示す例のように、波板構造領域12を構成する燃料ガス通路14および酸化ガス通路16の配列等に応じて、位置を変えても良い。
【0020】
ガス分離板10の平坦部18には、この例では更に、複数の単位燃料電池52と共に積層して燃料電池50を構成するための締付けロッド66(いずれも図10参照)を通すロッド穴26が四隅に設けられている。
【0021】
このガス分離板10は、更に、平坦部18に、上記ガスマニホールド孔20、22および冷媒マニホールド孔24とは別のものであって、かつそれらとは離れたものであって、当該平坦部18に加わる内外方向の応力(特に引張り応力。以下同じ)を緩和するスリット30を、波板構造領域12の辺(外周の辺。以下同じ)に沿って形成している。より具体的には、この例では、波板構造領域12の2辺にそれぞれ沿う二つのL字状のスリット30と、この両スリット30間の隙間(それを設けるのは、そうしないと波板構造領域12の部分が抜け落ちるからである)の外側に位置する二つの直線状のスリット30とを形成しており、この合計四つのスリット30が協働して、波板構造領域12のほぼ全周を囲んでいる。
【0022】
図5および図6に示すガス分離板10では、平坦部18に、上記ガスマニホールド孔20、22および冷媒マニホールド孔24とは別のものであって、かつそれらとは離れたものであって、当該平坦部18に加わる内外方向の応力を緩和するスリット30および襞32を、波板構造領域12の辺に沿って形成している。より具体的には、この例では、波板構造領域12の2辺にそれぞれ沿う二つのコ字状の襞32と、この両襞32間の隙間の外側に位置する二つの直線状のスリット30とを形成しており、この二つの襞32と二つのスリット30とが協働して、波板構造領域12のほぼ全周を囲んでいる。襞32は、図6に示すように上下両側に突出したものでも良いし、上または下の片側に突出したものでも良い。
【0023】
上記スリット30や襞32は、1以上のものが協働して、波板構造領域12の周囲をできるだけ多く囲むようにするのが好ましく、ほぼ全周を囲むのがより好ましい。より多く囲むほど、平坦部18に加わる前記応力を緩和することができない領域をより少なくすることができるからである。図1および図5の例では、ガスマニホールド孔20および22を避ける等のために、スリット30や襞32を内外で二重に配置しながら、ほぼ全周を囲むようにしている。
【0024】
これを詳述すると、スリット30や襞32の平坦部18の内外方向における位置は、波板構造領域12の最外周縁より0.3cm〜2.0cmの範囲内にするのが好ましく、0.3cm〜1.5cmの範囲内にするのがより好ましい。0.3cmよりも小さいと、スリット30や襞32が波板構造領域12に近過ぎて加工性が悪くなると共に、スリット30や襞32と波板構造領域12との間の形状が崩れやすくなる。1.5cmよりも大きいと、そのぶん平坦部18を広くしなければならなくなり、無駄なスペースが増える。2.0cmよりも大きくすると、平坦部18が必要以上に大きくなって無駄なスペースがより増える。図1の実施例では、スリット30の内外方向の位置は、波板構造領域12の最外周縁より0.5cm〜1.5cmの範囲内にしている。図5の実施例でも、スリット30および襞32の内外方向の位置は、波板構造領域12の最外周縁より0.5cm〜1.5cmの範囲内にしている。
【0025】
スリット30や襞32の、波板構造領域12を取り囲む方向の長さの1以上のものを合計した全長は、波板構造領域12の最外周縁の長さの1.1倍〜2.0倍の範囲内にするのが好ましく、1.2倍〜1.4倍の範囲内にするのがより好ましい。1.1倍よりも小さいと、波板構造領域12の全周を波板構造領域12との間に隙間をあけずに囲むのが難しくなる。1.4倍よりも大きいと、波板構造領域12の全周を囲むとしても波板構造領域12との間に必要以上に大きな隙間をあけることになり平坦部18が大きくなって無駄なスペースが増える。2.0倍よりも大きいと、波板構造領域12の全周を2倍近く囲むことになり、平坦部18が必要以上に大きくなって無駄なスペースがより増える。図1の実施例では、4本のスリット30の周方向の全長は26cmであり、波板構造領域12の最外周縁の長さ(20cm)の1.3倍にしている。図5の実施例では、2本のスリット30と2本の襞32を合計した周方向の全長は24cmであり、波板構造領域12の最外周縁の長さ(20cm)の1.2倍にしている。
【0026】
上記のようなガス分離板10を製造するには、金属板にプレス成形等の機械加工を、次のように複数工程(少なくとも2工程)に分けて施す製造方法を採用するのが好ましい。
【0027】
即ち、まず第1の工程によって、ガス分離板10の平坦部18に(より具体的には、ガス分離板10の元になる金属板において上記平坦部18に対応する部分に)、上記スリット30や襞32を、機械加工によって、例えばプレス成形によって形成する。この第1の工程において、ガスマニホールド孔20、22、冷媒マニホールド孔24およびロッド穴26を同時に形成しても良いし、これらは別の工程で形成しても良い。
【0028】
次に、第2の工程によって、ガス分離板10に(より具体的には、ガス分離板10の元になる金属板において上記スリット30や襞32の内側の波板構造領域12に対応する部分に)、上記波板構造領域12を、機械加工によって、例えばプレス成形によって形成する。
【0029】
以上の製造方法によって、図1および図2あるいは図5および図6に示したガス分離板10が得られる。
【0030】
このような製造方法によれば、平坦部18に予めスリット30や襞32を形成しておくことによって、当該スリット30または襞32が一種の自由端を形成しているので、その後の波板構造領域12形成の機械加工時に平坦部18に加わる内外方向の応力を、当該スリット30や襞32が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。より具体的には、波板構造領域12を機械加工する場合、一般的に、平坦部18の周辺部を固定しておいて、中央の波板構造領域12になる部分にプレス成形等の機械加工を施すことになるので、平坦部18には引張り応力が加わる。この応力を、スリット30や襞32の僅かな伸びによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板10に、より具体的にはその平坦部18や波板構造領域12に、延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0031】
ひいては、このようなガス分離板10を用いて燃料電池を構成したときの燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)や冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板10と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0032】
燃料電池50(図10参照)を構成する場合に、上記のようなガス分離板10の平坦部18を挟んでガスや冷却媒体をシールするガスケット40の例を図3、図4および図7、図8に示す。
【0033】
図3および図4に示すガスケット40は、図1および図2に示したガス分離板10用のものであり、前記マニホールド孔20、22、24およびロッド穴26に加えて、波板構造領域12に対応する開口部42と、それとガスマニホールド孔20または22とをつなぐ連通路44(図3、図7の例)または連通路46(図4、図8の例)とを有している。
【0034】
図7および図8に示すガスケット40は、図5および図6に示したガス分離板10用のものであり、更に、上記襞32に対応する部分に当該襞32を納める抜き穴48を設けている。襞32が前述したように上または下の一方にのみ突出したものである場合は、当該襞32に対応する側のガスケット40にのみ抜き穴48を設ければ良い。襞32の高さは、ガスケット40の厚さよりも小さくするのが好ましい。換言すれば、襞32の高さは、波板構造領域12の突出部の平坦部18からの高さよりも小さくするのが好ましい。そのようにすれば、襞32がガスケット40より外に突出して他の物(例えば図10に示す電解質膜54や集電板60)に当たって邪魔になることを防止することができる。
【0035】
なお、上記スリット30や襞32は、前述したように、波板構造領域12の周囲をより多く囲むほど応力緩和の作用効果はより高くなるけれども、必ずしも波板構造領域12のほぼ全周を囲む必要はない。囲む範囲が少ない方が、ガスケット40によるガスや冷却媒体のシール性に関しては、シール面が大きくなるので、シール性は高くなる。例えば図9に示す例のように、平坦部18内であって、波板構造領域12を挟んで相対向する領域に、波板構造領域12の各辺にほぼ相当する長さ、あるいはそれ以上の長さのスリット30をそれぞれ設けても良い。そのようなスリット30の代わりに襞32を設けても良い。あるいは、スリット30と襞32とを組み合わせて設けても良い。
【0036】
また、例えば図9に示す例のように、ガス分離板10の(より具体的にはその平坦部18の)縁から各スリット30までをつなぐ切り込み34を更に設けても良い。この切り込み34を更に形成しておくと、波板構造領域12を囲む周方向に着目すると、当該切り込み34が一種の自由端を形成することになるので、波板構造領域12形成の機械加工時に平坦部18に加わる周方向の応力をも、当該切り込み34が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板10に、より具体的にはその平坦部18や波板構造領域12に、延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのをより確実に抑制することが可能になる。
【0037】
上記のような切り込み34を設けることは、図9に示す例のようにスリット30を設けることと併用しても良いし、前述したような襞32を設けることと併用しても良い。
【0038】
上述したような構造あるいは製造方法によるガス分離板10を備える燃料電池の一例を図10に示す。この燃料電池50は、電解質膜(より具体的には固体高分子電解質膜)54を二つの電極56で挟んで成る単位燃料電池52を、間に上述したようなガス分離板10を挟んで2層に積層した構造をしている。より具体的には、この燃料電池50は、二つの単位燃料電池52を3枚のガス分離板10でそれぞれ挟み込み、かつ各ガス分離板10の周縁部の上下に上述したようなガスケット40をそれぞれ配置し、更に集電板60、絶縁物62を介して、ステンレス製の端板64をその両端に配置して、締付けロッド66で締結して成る。各電極56は、前記燃料ガスまたは酸化ガスが進入する多孔質のものである。この各電極56とガス分離板10との間には、この例のように、例えばカーボンペーパによるガス拡散層58を挟み込むのが好ましいけれども、必須ではない。
【0039】
このような燃料電池50で、図1および図2に示したガス分離板10(そのスリット30の配置および寸法等は先に実施例として説明したとおり)を用いたものを実施例1とし、図5および図6に示したガス分離板10(そのスリット30および襞32の配置および寸法等は先に実施例として説明したとおり)を用いたものを実施例2とし、スリット30および襞32のどちらも設けていないガス分離板を用いたものを比較例として、燃料利用率70%、酸素利用率40%、電流密度0.4A/cm2 の条件で発電試験を行った際の初期出力電圧を表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
この表に示すように、比較例に比べて、実施例1および実施例2の出力電圧が高いことが確かめられた。これは、実施例1、2におけるガス分離板10は前述したようにその歪み、湾曲等が抑えられるので、当該ガス分離板10と電極56(あるいはガス拡散層58)との接触が均一となって燃料電池50の内部電気抵抗が低くなっていることと共に、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができて性能低下が小さいことによるものと考えられる。
【0042】
なお、上記ガス分離板10の表裏に、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物である窒化チタン、窒化クロム、窒化アルミチタン、(窒化)炭化チタン、酸化チタン等の被覆膜を、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法等によるコーティングによって形成して、ガス分離板10の耐食性および導電性を改善することにより、燃料電池の出力電圧の向上を図ることも可能である。
【0043】
更に、ガス分離板10の波板構造領域12に形成された多数の凸部であって単位燃料電池の電極に接触する少なくとも一部に、例えば金、ルテニウム、ロジウム等の導電性を有すると共に、耐食性に優れた金属材料を上記被覆膜の上に積層することによって、一層の出力電圧の向上を図ることも可能である。
【0044】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0045】
請求項1記載のガス分離板の製造方法によれば、平坦部に予めスリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、その後の波板構造領域形成の機械加工時に平坦部に加わる内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0046】
ひいては、このようなガス分離板を燃料電池に用いることによって、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0047】
請求項2記載のガス分離板によれば、平坦部にスリットおよび襞の少なくとも一方を形成しておくことによって、波板構造領域形成の機械加工に伴って平坦部に発生する内外方向の応力を、当該スリットおよび襞の少なくとも一方が僅かに伸縮することによって吸収し緩和することができる。その結果、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0048】
ひいては、このようなガス分離板を燃料電池に用いることによって、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【0049】
請求項3記載の燃料電池によれば、ガス分離板に延性割れ、破断、歪み、湾曲等が発生するのを抑制することが可能になるので、燃料電池としての信頼性および性能が向上する。即ち、ガスや冷却媒体の漏れを回避することができるので、安全性および信頼性が向上する。また、ガス分離板と電極との接触が均一となり、内部電気抵抗が減少して燃料電池としての性能および出力安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るガス分離板の一例を示す平面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【図3】図1のガス分離板用の一方のガスケットを示す平面図である。
【図4】図1のガス分離板用の他方のガスケットを示す平面図である。
【図5】この発明に係るガス分離板の他の例を示す平面図である。
【図6】図5の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【図7】図5のガス分離板用の一方のガスケットを示す平面図である。
【図8】図5のガス分離板用の他方のガスケットを示す平面図である。
【図9】この発明に係るガス分離板の更に他の例を示す平面図である。
【図10】この発明に係る燃料電池の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ガス分離板
12 波板構造領域
14 燃料ガス通路
16 酸化ガス通路
18 平坦部
20、22 ガスマニホールド孔
24 冷媒マニホールド孔
30 スリット
32 襞
40 ガスケット
50 燃料電池
52 単位燃料電池
Claims (3)
- 電解質膜を二つの電極で挟んで成る単位燃料電池間に挟んで使用される金属製のガス分離板であって、燃料ガス通路を一方の面に有し酸化ガス通路を他方の面に有する波板構造領域を中央部に備え、その周囲に平坦部を備え、かつこの平坦部に、ガスや冷却媒体を通すマニホールド孔を有するガス分離板を製造する方法において、前記平坦部に、前記マニホールド孔とは離れたものであって当該平坦部に加わる内外方向の応力を緩和するスリットおよび襞の少なくとも一方を前記波板構造領域の辺に沿うように形成した後に、前記波板構造領域を機械加工によって形成することを特徴とするガス分離板の製造方法。
- 電解質膜を二つの電極で挟んで成る単位燃料電池間に挟んで使用される金属製のガス分離板であって、燃料ガス通路を一方の面に有し酸化ガス通路を他方の面に有する波板構造領域を中央部に備え、その周囲に平坦部を備え、かつこの平坦部に、ガスや冷却媒体を通すマニホールド孔を有するガス分離板において、前記平坦部に、前記マニホールド孔とは離れたものであって当該平坦部に加わる内外方向の応力を緩和するスリットおよび襞の少なくとも一方を前記波板構造領域の辺に沿って形成していることを特徴とするガス分離板。
- 請求項1に記載の製造方法によって製造されたガス分離板を備えている燃料電池。
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