JP2004054113A - 光学部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造の際に基板の劣化が少なく、層の密着性が高く、製造に煩雑性をともなうことなく短時間で製造することができる光学部材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】透明の基体1に保護コート層2が形成され、さらに反射防止層3が形成された光学部材において、保護コート層2および反射防止層3の少なくとも1つが電子線照射により形成された層である。
【選択図】 図1
【解決手段】透明の基体1に保護コート層2が形成され、さらに反射防止層3が形成された光学部材において、保護コート層2および反射防止層3の少なくとも1つが電子線照射により形成された層である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、ELディスプレー、プレズマディスプレーに代表されるディスプレー、プラスチックメガネ、プラスチックレンズ、および偏光板等の光学機能を有する光学部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、ELディスプレー、プレズマディスプレーに代表されるディスプレー、プラスチックメガネ、プラスチックレンズ、および偏光板等の光学機能を有する光学部材の需要が急激に高まっている。
【0003】
これらは、一般に、プラスチックからなる基体上に、ハードコート層、反射防止層、保護コート層の少なくとも1つを形成してなるものであり、また、基体上に接着層を介して反射防止層を形成することもある。
【0004】
これら基体上に形成される層の材料としては、従来、主に紫外線硬化樹脂が使用されている。したがって、これらの層を形成する際には、基板上に紫外線硬化樹脂をスピンコートした後、紫外線を照射して硬化させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように紫外線の照射により樹脂を硬化させる場合には、電気エネルギーのかなりの部分が紫外線ではなく熱等になってしまい、エネルギー効率が劣るだけでなく、基体の劣化が生じるおそれがある。また、紫外線は樹脂の硬化能が必ずしも十分とはいえず、硬化に時間がかかるとともに基体や下地の層に対する密着性も不十分なものとなる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、製造の際に基体の劣化が少なく、層の密着性が高く、短時間で製造することができる光学部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、光学機能を有し、基体上に1以上の層が形成されてなる光学部材であって、前記層の少なくとも1つが電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材を提供する。
【0008】
また、本発明は、光学機能を有し、基体上に保護コート層、または保護コート層および反射防止層が形成されてなる光学部材であって、これら層の少なくとも1つが電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、光学機能を有し、基体上に少なくとも接着層を介して反射防止層が形成されてなる光学部材であって、少なくとも前記接着層が電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材を提供する。
【0010】
さらにまた、本発明は、光学機能を有し、基体上に1以上の層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、前記層の少なくとも1つを形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法を提供する。
【0011】
さらにまた、本発明は、光学機能を有し、基体上に保護コート層、または保護コート層および反射防止層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、前記層の少なくとも1つを形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法を提供する。
【0012】
さらにまた、本発明は、光学機能を有し、基体上に少なくとも接着層を介して反射防止層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、少なくとも前記接着層を形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法を提供する。
【0013】
上記いずれの光ディスクおよび光ディスクの製造方法においても、照射される電子線の加速電圧が150kV未満であることが好ましく、加速電圧が10〜130kVであることがさらに好ましく、加速電圧が30〜80kVであることが一層好ましい。この場合に、このような低加速度電圧で取り出される電子線は、真空管型電子線照射装置により照射されることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、光ディスクを構成する層として、電子線照射により形成された層を用いるが、電子線照射は熱の発生をともなわないので基板や記録層を劣化させるおそれが小さく、また、硬化や架橋に対する能力が高いので、短時間で硬度や架橋密度等が高い所望の膜を確実に得ることができ、しかも下地に対する密着性も良好となる。さらに、電子線は透過性が高いため、短時間で硬化等をさせることができる。さらにまた、光開始剤が不要であるため、それにともなうマイグレーション、黄変、不純物の析出、基体への悪影響等が防止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学部材を示す断面図である。この光学部材は、基体1上に保護コート層(ハードコート層)2および反射防止層3が順次形成された構造を有している。
【0016】
基体1は透明なプラスチックまたはガラスからなり、光透過機能、レンズ機能、偏光機能のような光学機能を有している。すなわち、光学部材が液晶ディスプレー、CRTディスプレー、ELディスプレー、プレズマディスプレーに代表されるディスプレーである場合には、基体1は光透過機能を有しており、メガネやレンズの場合には、レンズ機能を有しており、偏光板の場合には、偏光素子を例えばTAC(トリアセチルセルロース)フィルムで挟んで構成され、偏光機能を有している。
【0017】
保護コート層2は、基体1を保護するために設けられるものであり、基体1がプラスチックの場合には、通常、ハードコート層として形成される。ポリカーボネートなどの透明プラスチック製品は、軽量であり、良好な加工性を有し、耐衝撃性に優れている等の長所を有する反面、表面硬度が低いため、ハードコート層として機能する保護コート層2を形成する。このように保護コート層2がハードコート層の機能を有する場合には、例えばSiO2を含む樹脂等の硬質の有機樹脂を用いる。また、保護コート層2は、Siまたは酸化ケイ素等の蒸着層を設けることにより反射防止機能を付与させることがあり、その場合には、保護コート層2には蒸着層との密着性の良いことが求められ、Siやケイ素酸化物との密着性を考慮し、シリコン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
反射防止層3は、低屈折率層からなっていてもよいし、低屈折率層と高屈折率層との積層構造であってもよい。低屈折率層としては、例えばLiF(屈折率1.4)、MgF2(屈折率1.4)、AlF3(屈折率1.4)、SiOx(1.50≦x≦2.0)(屈折率1.35〜1.48)等、高屈折率層としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等といずれも無機材料を用いることができ、これらは保護コート層2の上に、蒸着やプラズマCVD等により形成することができる。また、これら無機材料の粒子を有機材料の中に分散させて構成してもよい。この場合には、反射防止層3の一部または全部に保護コート機能をもたせてもよい。さらに、反射防止層3としては、塗装剤により形成することはもちろん、予め、フィルムとして形成しておき、接着層4により基体1に貼り合わせまたは積層してもよい。また、フッ素原子を1分子中に1以上含んだフッ素(メタ)アクリレートモノマー、このモノマーの多量体またはこれらの分子量500以上の樹脂のいずれか1種以上を含んだ有機材料を使用し、塗装等により反射防止層を形成することもできる。
【0019】
図2、3は、本発明の他の実施形態に係る光学部材を示す断面図である。図2の実施形態では、基体1の上に接着層4を介して反射防止層3が形成されている。図3に示すように、基体1と接着層4との間に保護コート層2が形成されていてもよい。
【0020】
これらの光学部材において、保護コート層2、接着層4は、電子線照射により形成された層とすることができる。また、反射防止層3として上述したように樹脂を用いる場合には、反射防止層3を電子線照射により形成された層とすることができる。典型的には、これらの層を電子線により硬化される樹脂で形成し、電子線照射により硬化させて形成することができる。もちろん、電子線を照射して所定の改質を行って形成された層であってもよい。そして、図1〜3に例示された構成の光学部材においては、それぞれの光学部材を構成する層のうち少なくとも1つがこのような電子線照射により形成された層である。最も好ましくは、ある層構成の光学部材において、有機材料で構成された層の全てを電子線照射により形成された層、典型的には電子線照射により硬化された層とすることである。
【0021】
保護コート層2を構成する材料としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系等の樹脂、および各種光感応性モノマーを用いた紫外線または電子線硬化型樹脂が挙げられる。また、ハードコート層として機能させる場合には、これらにSiO2等の硬化成分を含有させるか、ポリシロキサン系樹脂等の分子中にSiO2等の硬化成分を含む材料を用いる。また、反射防止層3として用いられる有機系材料としては、電子線硬化型、紫外線硬化型、熱線硬化型等の各種の樹脂、モノマー、オリゴマー、またはプレポリマーが適宜用いられる。
【0022】
すなわち、電子線照射により形成される層としては、通常、電子線照射により、効果、架橋または改質される材料を使用した層であり、一般的には電子線硬化樹脂が適用される。電子線硬化樹脂である、電子線硬化型のインキ、接着剤、粘着剤、ニス等の被覆剤を構成する材料としては、通常、一分子中に、α,β−不飽和二重結合を有する2官能以上のモノマーおよび/または単官能のモノマーの、ビニル型モノマー、アクリル型モノマー、アクリレート型もしくはメタクリレート型(以下、(メタ)アクリレート型という)モノマー等を挙げることができる。また、(メタ)アクリレート型モノマーは、α,β−不飽和二重結合以外の官能基を有する場合もある。なお、単官能モノマーは、単独でも、または架橋密度を調整すべく2官能以上のモノマーと併用し得る。
【0023】
ここでいうモノマーとは、上記したような比較的低分子量、例えば重量平均分子量が1000未満のいわゆる狭義のモノマーの他、ある程度分子量の大きい、例えば重量平均分子量が1000以上10000未満のオリゴマー、プレポリマーも含む意であり、α,β−不飽和二重結合を有するオリゴマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエン等を挙げることができる。
【0024】
また、上記したモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーに、熱可塑性樹脂を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、あるキッド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−ポリエステル樹脂などのグラフト共重合体等が挙げられ、いずれか1種を用いてもよいし、あるいは2種以上を混合して用いることも可能である。
【0025】
さらに、接着層4としては、ビニル重合型(シアノアクリレート系、ジアクリレート系、不飽和ポリエステル樹脂系)、縮合型(フェノール樹脂系、ユリヤ樹脂系、メラミン樹脂系)、重付加型(エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系)などの反応硬化型(モノマー型、オリゴマー型)接着剤が挙げられる。
【0026】
上記層を形成する際の電子線照射は、電子線を取り出す加速電圧を150kV未満として行われることが好ましい。加速電圧が150kV以上であると電子線のエネルギーが高くなりすぎ、エネルギー効率が悪いばかりか、基板や記録層を劣化させるおそれが高まるため好ましくない。また、エネルギー効率よく電子線照射部位に所望の作用を生じさせるためには、加速電圧が10〜130kVであることが好ましく、30〜80kVであることが一層好ましい。
【0027】
図4は加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と吸収線量(任意スケール)との関係を示す図である。この図から、電子線の加速電圧によりその到達深度が異なることがわかる。したがって、電子線を作用させる層の厚さに応じて適切な加速電圧を設定することが好ましい。
【0028】
以上のように比較的低加速電圧で電子線を照射するためには、真空管型電子線照射装置を用いることが好ましい。このような真空管型電子線照射装置は、電子線発生部としての照射管50が図5のように構成されている。すなわち、図5の(a)に示すように、円筒状をなすガラスまたはセラミック製の真空管(チューブ)51と、その真空管(チューブ)51内に設けられ、陰極から放出された電子を電子線として取り出してこれを加速する電子線発生部52と、真空管51の端部に設けられ、電子線を射出する電子線射出部53と、図示しない給電部より給電するためのピン部54とを有する。電子線射出部53には薄膜状の照射窓55が設けられている。電子線射出部53の照射窓55は、ガスは透過せずに電子線を透過する機能を有しており、図5の(b)に示すように、スリット状をなしている。そして、照射室内に配置された被照射物に照射窓55から射出された電子線が照射される。
【0029】
このような真空管型電子線照射装置は、従来のドラム型の電子線照射装置とは根本的に異なっている。従来のドラム型電子線照射装置は、ドラム内を常に真空引きしながら電子線を照射するタイプのものである。
【0030】
このような構成の照射管を有する装置は、米国特許第5,414,267号に開示されている。この装置は、上述したように低加速電圧でも有効に電子線を取り出すことができるから、基板や記録層への悪影響が小さい。また、電子線のエネルギーが小さいためX線等の放射線の発生量が小さく、放射線を遮蔽するためのシールド装置を小型化または低減することができるようになる。
【0031】
通常、電子線照射は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で行われる。ただし、条件によっては、空気または空気に近い雰囲気になるような不活性ガス含有量の雰囲気下で照射してもよい。
【0032】
このように、シールドの小型化・低減化が可能となり、また低加速電圧であるため電子線発生部分の小型化が可能となり、電子線照射装置の飛躍的な小型化が可能となる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々変形可である。例えば、上記実施の形態では、典型的な光学部材の構造について図1〜3に示したが、これに限るものではない。また、電子線照射装置は上述した真空管型のものに限らず、通常のドラムタイプのものを用いることができる。ただし、真空管型のものが制御性の観点から好ましい。すなわち、真空管型電子線照射装置は、上述したように、シールドの小型化およびイナーティングの低減化を図ることができ、また低加速電圧で電子線を取り出せることから電子線発生部分の小型化が可能となることから、電子線照射装置の飛躍的な小型化が可能となるため極めて好ましい。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例により何等限定されるものではない。以下の説明において%とは、重量%を表す。
【0035】
(実施例1)
重量平均分子量1500のポリエステル樹脂、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびN−ビニルピロリドンを加熱溶解して保護コート剤(ハードコート剤)を作成した。この保護コート剤を光学部材(携帯電話のディスプレー)の基体の1例としての厚さ2mmの透明のポリメチルメタクリレート(PMMA)板(アクリライトL:商品名、三菱レーヨン製)上にコートした。コート後、真空管型電子線照射装置(Min−EBラボ機、東洋インキ製造株式会社製)を用いて電子線を照射し、硬化被膜(保護コート層、ハードコート層)を得、保護コート層(ハードコート層)を有するPMMA板(ディスプレーの最外面)を作製した。電子線照射条件は、加速電圧50kV、吸収線量30kGy、搬送速度30m/min、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度200ppm)とした。
【0036】
得られたPMMA板上の保護コート層(ハードコート層)の硬化性および硬度を、以下の1〜4の4通りの方法で評価し、密着性を以下の5の方法で評価した。なお、硬化性、硬度、および密着性の評価は、照射直後および1日後に行った。
1.触指による乾燥性テスト
完全硬化5〜未硬化1の5段階で評価した。
2.爪による印刷面の耐擦り傷性テスト(以下スクラッチテストという)
良好5〜不良1の5段階で評価した。
3.MEKラビングテスト
綿棒にメチルエチルケトンを含有させて、印刷面を軽くこすり、下地が見えるまでの回数を測定する。
4.鉛筆硬度試験
JIS K−5400に準拠して行い、保護コート層(ハードコート層)に傷がつかない最も硬い硬度で表示する。
5.密着試験
JIS D−0202に準拠して行い、碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(ニチバン株式会社製)を用い、指の腹でセロハンテープを密着させた後、剥離した。判定は100マスのうち、剥離しないマス目の数により以下のように5段階で評価した。
「5」:0/100以上、20/100未満
「4」:20/100以上、40/100未満
「3」:40/100以上、60/100未満
「2」:60/100以上、80/100未満
「1」:80/100以上
ここで、0/100は剥離なしの場合、100/100は完全に剥離した場合である。
【0037】
(実施例2)
ETERCURE 6905(長興化学社(台湾)、東洋インキ製造株式会社製)から開始剤を抜いた保護コート剤(ハードコート剤)を作製した。この保護コート剤(ハードコート剤)を実施例1の保護コート剤(ハードコート剤)の代わりにコートした以外は、実施例1と同様に光学部材を作製し、電子線を照射し、評価した。
【0038】
(実施例3)
混合器付のフラスコに、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート100重量部、2−エチルヘキシルアクリレート800重量部およびアクリル酸100重量部をよく混合し、電子線硬化型粘着剤組成物を得た。
【0039】
また、反射防止フィルムであるアークトップUR−11CRNF(商品名、旭硝子株式会社製)から離型フィルムおよび粘着剤を取り除き、上記の電子線硬化型粘着剤組成物を厚さ20μmになるようにコートし、実施例1と同様に電子線を照射した。照射後、これをPMMA板上に貼り付け、その反射防止体のヘイズおよび防眩性を以下の方法で評価した。
1.ヘイズ(%)測定
ヘイズメーターMODEL1001DP(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
2.防眩性の評価
反射防止体にルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/cm2)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
○:蛍光灯の輪郭が全く〜ほとんどわからない。
△:蛍光灯はボケており、輪郭がかろうじて分かる。
×:蛍光灯はボケているが、輪郭は認識できる。
【0040】
(比較例1)
実施例1の保護コート剤(ハードコート剤)に、さらに、保護コート剤100部に光開始剤としイルガキュア907(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を3部、増感剤としてEABを1部添加し、保護コート層(ハードコート層)の硬化を電子線照射ではなく、紫外線照射により行った点を除いて、実施例1と同様に保護コート層(ハードコート層)を有するPMMA板を作製した。紫外線照射条件は、160W/cmのメタルハライドランプで30mJ/cm2の露光量とした。
【0041】
得られた保護コート層(ハードコート層)を有するPMMA板の保護コート層(ハードコート層)の硬化性、硬化度、および密着性を実施例1と同様に評価した。
【0042】
(比較例2)
実施例2のETERCURE 6905(長興化学社(台湾)、東洋インキ製造株式会社製)を、開始剤を抜かずにそのまま使用し、保護コート剤(ハードコート剤)の硬化を電子線照射ではなく、紫外線照射により行った点を除いて、実施例2と同様に光学部材を作製し、評価を行った。なお、紫外線照射条件は比較例1と同様とした。
【0043】
(比較例3)
実施例3と同様に、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレートを100重量部、2−エチルヘキシルアクリレートを800重量部およびアクリル酸を100重量部用い、さらに光重合剤としてイルガキュア907を1.5重量部用いてこれらをよく混合し、紫外線硬化型粘着組成物を得た。さらに、この紫外線硬化型粘着剤組成物を実施例3と同様に、アークトップUR−11CRNFにコートし、紫外線を比較例1の条件で照射した。照射後、これをPMMA板上に貼り付け、その反射防止体のヘイズおよび防眩性を実施例3と同様の評価方法で評価した。
【0044】
以上のような実施例1、2、3および比較例1、2、3の評価結果を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、電子線照射により硬化処理を行った実施例1〜3のうち実施例1、2は照射直後から高い硬化性を示し、密着性も良好であった。また、実施例3は反射防止体のヘイズおよび防眩性が良好であった。これに対し、紫外線照射により硬化処理を行った比較例1、2、3のうち比較例1、2は照射直後の硬化性が低く、密着性も劣っていた。また、比較例3については、実施例3よりヘイズおよび防眩性とも劣っていた。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光学部材を構成する層として、電子線照射により形成された層を用いたので、以下の効果を得ることができる。
(1)電子線照射は熱の発生をともなわないので基体や光学機能を有する層を劣化させるおそれが小さく、また、硬化や架橋に対する能力が高いので、短時間で硬度や架橋密度等が高い所望の膜を確実に得ることができ、しかも下地に対する密着性も良好となる。
(2)電子線は透過性が高いため、短時間で層を形成することができる。
(3)光開始剤が不要であるため、それにともなうマイグレーション、黄変、不純物の析出、光学機能への悪影響等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学部材の構造を示す断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る光学部材の構造を示す断面図。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係る光学部材の構造を示す断面図。
【図4】加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と照射線量との関係を示す図。
【図5】層を形成するための電子線照射装置の照射管の構造を示す図。
【符号の説明】
1……基体
2……保護コート層
3……反射防止層
4……接着層
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、ELディスプレー、プレズマディスプレーに代表されるディスプレー、プラスチックメガネ、プラスチックレンズ、および偏光板等の光学機能を有する光学部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、ELディスプレー、プレズマディスプレーに代表されるディスプレー、プラスチックメガネ、プラスチックレンズ、および偏光板等の光学機能を有する光学部材の需要が急激に高まっている。
【0003】
これらは、一般に、プラスチックからなる基体上に、ハードコート層、反射防止層、保護コート層の少なくとも1つを形成してなるものであり、また、基体上に接着層を介して反射防止層を形成することもある。
【0004】
これら基体上に形成される層の材料としては、従来、主に紫外線硬化樹脂が使用されている。したがって、これらの層を形成する際には、基板上に紫外線硬化樹脂をスピンコートした後、紫外線を照射して硬化させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように紫外線の照射により樹脂を硬化させる場合には、電気エネルギーのかなりの部分が紫外線ではなく熱等になってしまい、エネルギー効率が劣るだけでなく、基体の劣化が生じるおそれがある。また、紫外線は樹脂の硬化能が必ずしも十分とはいえず、硬化に時間がかかるとともに基体や下地の層に対する密着性も不十分なものとなる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、製造の際に基体の劣化が少なく、層の密着性が高く、短時間で製造することができる光学部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、光学機能を有し、基体上に1以上の層が形成されてなる光学部材であって、前記層の少なくとも1つが電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材を提供する。
【0008】
また、本発明は、光学機能を有し、基体上に保護コート層、または保護コート層および反射防止層が形成されてなる光学部材であって、これら層の少なくとも1つが電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、光学機能を有し、基体上に少なくとも接着層を介して反射防止層が形成されてなる光学部材であって、少なくとも前記接着層が電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材を提供する。
【0010】
さらにまた、本発明は、光学機能を有し、基体上に1以上の層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、前記層の少なくとも1つを形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法を提供する。
【0011】
さらにまた、本発明は、光学機能を有し、基体上に保護コート層、または保護コート層および反射防止層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、前記層の少なくとも1つを形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法を提供する。
【0012】
さらにまた、本発明は、光学機能を有し、基体上に少なくとも接着層を介して反射防止層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、少なくとも前記接着層を形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法を提供する。
【0013】
上記いずれの光ディスクおよび光ディスクの製造方法においても、照射される電子線の加速電圧が150kV未満であることが好ましく、加速電圧が10〜130kVであることがさらに好ましく、加速電圧が30〜80kVであることが一層好ましい。この場合に、このような低加速度電圧で取り出される電子線は、真空管型電子線照射装置により照射されることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、光ディスクを構成する層として、電子線照射により形成された層を用いるが、電子線照射は熱の発生をともなわないので基板や記録層を劣化させるおそれが小さく、また、硬化や架橋に対する能力が高いので、短時間で硬度や架橋密度等が高い所望の膜を確実に得ることができ、しかも下地に対する密着性も良好となる。さらに、電子線は透過性が高いため、短時間で硬化等をさせることができる。さらにまた、光開始剤が不要であるため、それにともなうマイグレーション、黄変、不純物の析出、基体への悪影響等が防止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学部材を示す断面図である。この光学部材は、基体1上に保護コート層(ハードコート層)2および反射防止層3が順次形成された構造を有している。
【0016】
基体1は透明なプラスチックまたはガラスからなり、光透過機能、レンズ機能、偏光機能のような光学機能を有している。すなわち、光学部材が液晶ディスプレー、CRTディスプレー、ELディスプレー、プレズマディスプレーに代表されるディスプレーである場合には、基体1は光透過機能を有しており、メガネやレンズの場合には、レンズ機能を有しており、偏光板の場合には、偏光素子を例えばTAC(トリアセチルセルロース)フィルムで挟んで構成され、偏光機能を有している。
【0017】
保護コート層2は、基体1を保護するために設けられるものであり、基体1がプラスチックの場合には、通常、ハードコート層として形成される。ポリカーボネートなどの透明プラスチック製品は、軽量であり、良好な加工性を有し、耐衝撃性に優れている等の長所を有する反面、表面硬度が低いため、ハードコート層として機能する保護コート層2を形成する。このように保護コート層2がハードコート層の機能を有する場合には、例えばSiO2を含む樹脂等の硬質の有機樹脂を用いる。また、保護コート層2は、Siまたは酸化ケイ素等の蒸着層を設けることにより反射防止機能を付与させることがあり、その場合には、保護コート層2には蒸着層との密着性の良いことが求められ、Siやケイ素酸化物との密着性を考慮し、シリコン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
反射防止層3は、低屈折率層からなっていてもよいし、低屈折率層と高屈折率層との積層構造であってもよい。低屈折率層としては、例えばLiF(屈折率1.4)、MgF2(屈折率1.4)、AlF3(屈折率1.4)、SiOx(1.50≦x≦2.0)(屈折率1.35〜1.48)等、高屈折率層としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等といずれも無機材料を用いることができ、これらは保護コート層2の上に、蒸着やプラズマCVD等により形成することができる。また、これら無機材料の粒子を有機材料の中に分散させて構成してもよい。この場合には、反射防止層3の一部または全部に保護コート機能をもたせてもよい。さらに、反射防止層3としては、塗装剤により形成することはもちろん、予め、フィルムとして形成しておき、接着層4により基体1に貼り合わせまたは積層してもよい。また、フッ素原子を1分子中に1以上含んだフッ素(メタ)アクリレートモノマー、このモノマーの多量体またはこれらの分子量500以上の樹脂のいずれか1種以上を含んだ有機材料を使用し、塗装等により反射防止層を形成することもできる。
【0019】
図2、3は、本発明の他の実施形態に係る光学部材を示す断面図である。図2の実施形態では、基体1の上に接着層4を介して反射防止層3が形成されている。図3に示すように、基体1と接着層4との間に保護コート層2が形成されていてもよい。
【0020】
これらの光学部材において、保護コート層2、接着層4は、電子線照射により形成された層とすることができる。また、反射防止層3として上述したように樹脂を用いる場合には、反射防止層3を電子線照射により形成された層とすることができる。典型的には、これらの層を電子線により硬化される樹脂で形成し、電子線照射により硬化させて形成することができる。もちろん、電子線を照射して所定の改質を行って形成された層であってもよい。そして、図1〜3に例示された構成の光学部材においては、それぞれの光学部材を構成する層のうち少なくとも1つがこのような電子線照射により形成された層である。最も好ましくは、ある層構成の光学部材において、有機材料で構成された層の全てを電子線照射により形成された層、典型的には電子線照射により硬化された層とすることである。
【0021】
保護コート層2を構成する材料としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系等の樹脂、および各種光感応性モノマーを用いた紫外線または電子線硬化型樹脂が挙げられる。また、ハードコート層として機能させる場合には、これらにSiO2等の硬化成分を含有させるか、ポリシロキサン系樹脂等の分子中にSiO2等の硬化成分を含む材料を用いる。また、反射防止層3として用いられる有機系材料としては、電子線硬化型、紫外線硬化型、熱線硬化型等の各種の樹脂、モノマー、オリゴマー、またはプレポリマーが適宜用いられる。
【0022】
すなわち、電子線照射により形成される層としては、通常、電子線照射により、効果、架橋または改質される材料を使用した層であり、一般的には電子線硬化樹脂が適用される。電子線硬化樹脂である、電子線硬化型のインキ、接着剤、粘着剤、ニス等の被覆剤を構成する材料としては、通常、一分子中に、α,β−不飽和二重結合を有する2官能以上のモノマーおよび/または単官能のモノマーの、ビニル型モノマー、アクリル型モノマー、アクリレート型もしくはメタクリレート型(以下、(メタ)アクリレート型という)モノマー等を挙げることができる。また、(メタ)アクリレート型モノマーは、α,β−不飽和二重結合以外の官能基を有する場合もある。なお、単官能モノマーは、単独でも、または架橋密度を調整すべく2官能以上のモノマーと併用し得る。
【0023】
ここでいうモノマーとは、上記したような比較的低分子量、例えば重量平均分子量が1000未満のいわゆる狭義のモノマーの他、ある程度分子量の大きい、例えば重量平均分子量が1000以上10000未満のオリゴマー、プレポリマーも含む意であり、α,β−不飽和二重結合を有するオリゴマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエン等を挙げることができる。
【0024】
また、上記したモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーに、熱可塑性樹脂を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、あるキッド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−ポリエステル樹脂などのグラフト共重合体等が挙げられ、いずれか1種を用いてもよいし、あるいは2種以上を混合して用いることも可能である。
【0025】
さらに、接着層4としては、ビニル重合型(シアノアクリレート系、ジアクリレート系、不飽和ポリエステル樹脂系)、縮合型(フェノール樹脂系、ユリヤ樹脂系、メラミン樹脂系)、重付加型(エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系)などの反応硬化型(モノマー型、オリゴマー型)接着剤が挙げられる。
【0026】
上記層を形成する際の電子線照射は、電子線を取り出す加速電圧を150kV未満として行われることが好ましい。加速電圧が150kV以上であると電子線のエネルギーが高くなりすぎ、エネルギー効率が悪いばかりか、基板や記録層を劣化させるおそれが高まるため好ましくない。また、エネルギー効率よく電子線照射部位に所望の作用を生じさせるためには、加速電圧が10〜130kVであることが好ましく、30〜80kVであることが一層好ましい。
【0027】
図4は加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と吸収線量(任意スケール)との関係を示す図である。この図から、電子線の加速電圧によりその到達深度が異なることがわかる。したがって、電子線を作用させる層の厚さに応じて適切な加速電圧を設定することが好ましい。
【0028】
以上のように比較的低加速電圧で電子線を照射するためには、真空管型電子線照射装置を用いることが好ましい。このような真空管型電子線照射装置は、電子線発生部としての照射管50が図5のように構成されている。すなわち、図5の(a)に示すように、円筒状をなすガラスまたはセラミック製の真空管(チューブ)51と、その真空管(チューブ)51内に設けられ、陰極から放出された電子を電子線として取り出してこれを加速する電子線発生部52と、真空管51の端部に設けられ、電子線を射出する電子線射出部53と、図示しない給電部より給電するためのピン部54とを有する。電子線射出部53には薄膜状の照射窓55が設けられている。電子線射出部53の照射窓55は、ガスは透過せずに電子線を透過する機能を有しており、図5の(b)に示すように、スリット状をなしている。そして、照射室内に配置された被照射物に照射窓55から射出された電子線が照射される。
【0029】
このような真空管型電子線照射装置は、従来のドラム型の電子線照射装置とは根本的に異なっている。従来のドラム型電子線照射装置は、ドラム内を常に真空引きしながら電子線を照射するタイプのものである。
【0030】
このような構成の照射管を有する装置は、米国特許第5,414,267号に開示されている。この装置は、上述したように低加速電圧でも有効に電子線を取り出すことができるから、基板や記録層への悪影響が小さい。また、電子線のエネルギーが小さいためX線等の放射線の発生量が小さく、放射線を遮蔽するためのシールド装置を小型化または低減することができるようになる。
【0031】
通常、電子線照射は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で行われる。ただし、条件によっては、空気または空気に近い雰囲気になるような不活性ガス含有量の雰囲気下で照射してもよい。
【0032】
このように、シールドの小型化・低減化が可能となり、また低加速電圧であるため電子線発生部分の小型化が可能となり、電子線照射装置の飛躍的な小型化が可能となる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々変形可である。例えば、上記実施の形態では、典型的な光学部材の構造について図1〜3に示したが、これに限るものではない。また、電子線照射装置は上述した真空管型のものに限らず、通常のドラムタイプのものを用いることができる。ただし、真空管型のものが制御性の観点から好ましい。すなわち、真空管型電子線照射装置は、上述したように、シールドの小型化およびイナーティングの低減化を図ることができ、また低加速電圧で電子線を取り出せることから電子線発生部分の小型化が可能となることから、電子線照射装置の飛躍的な小型化が可能となるため極めて好ましい。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例により何等限定されるものではない。以下の説明において%とは、重量%を表す。
【0035】
(実施例1)
重量平均分子量1500のポリエステル樹脂、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびN−ビニルピロリドンを加熱溶解して保護コート剤(ハードコート剤)を作成した。この保護コート剤を光学部材(携帯電話のディスプレー)の基体の1例としての厚さ2mmの透明のポリメチルメタクリレート(PMMA)板(アクリライトL:商品名、三菱レーヨン製)上にコートした。コート後、真空管型電子線照射装置(Min−EBラボ機、東洋インキ製造株式会社製)を用いて電子線を照射し、硬化被膜(保護コート層、ハードコート層)を得、保護コート層(ハードコート層)を有するPMMA板(ディスプレーの最外面)を作製した。電子線照射条件は、加速電圧50kV、吸収線量30kGy、搬送速度30m/min、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度200ppm)とした。
【0036】
得られたPMMA板上の保護コート層(ハードコート層)の硬化性および硬度を、以下の1〜4の4通りの方法で評価し、密着性を以下の5の方法で評価した。なお、硬化性、硬度、および密着性の評価は、照射直後および1日後に行った。
1.触指による乾燥性テスト
完全硬化5〜未硬化1の5段階で評価した。
2.爪による印刷面の耐擦り傷性テスト(以下スクラッチテストという)
良好5〜不良1の5段階で評価した。
3.MEKラビングテスト
綿棒にメチルエチルケトンを含有させて、印刷面を軽くこすり、下地が見えるまでの回数を測定する。
4.鉛筆硬度試験
JIS K−5400に準拠して行い、保護コート層(ハードコート層)に傷がつかない最も硬い硬度で表示する。
5.密着試験
JIS D−0202に準拠して行い、碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(ニチバン株式会社製)を用い、指の腹でセロハンテープを密着させた後、剥離した。判定は100マスのうち、剥離しないマス目の数により以下のように5段階で評価した。
「5」:0/100以上、20/100未満
「4」:20/100以上、40/100未満
「3」:40/100以上、60/100未満
「2」:60/100以上、80/100未満
「1」:80/100以上
ここで、0/100は剥離なしの場合、100/100は完全に剥離した場合である。
【0037】
(実施例2)
ETERCURE 6905(長興化学社(台湾)、東洋インキ製造株式会社製)から開始剤を抜いた保護コート剤(ハードコート剤)を作製した。この保護コート剤(ハードコート剤)を実施例1の保護コート剤(ハードコート剤)の代わりにコートした以外は、実施例1と同様に光学部材を作製し、電子線を照射し、評価した。
【0038】
(実施例3)
混合器付のフラスコに、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート100重量部、2−エチルヘキシルアクリレート800重量部およびアクリル酸100重量部をよく混合し、電子線硬化型粘着剤組成物を得た。
【0039】
また、反射防止フィルムであるアークトップUR−11CRNF(商品名、旭硝子株式会社製)から離型フィルムおよび粘着剤を取り除き、上記の電子線硬化型粘着剤組成物を厚さ20μmになるようにコートし、実施例1と同様に電子線を照射した。照射後、これをPMMA板上に貼り付け、その反射防止体のヘイズおよび防眩性を以下の方法で評価した。
1.ヘイズ(%)測定
ヘイズメーターMODEL1001DP(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
2.防眩性の評価
反射防止体にルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/cm2)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
○:蛍光灯の輪郭が全く〜ほとんどわからない。
△:蛍光灯はボケており、輪郭がかろうじて分かる。
×:蛍光灯はボケているが、輪郭は認識できる。
【0040】
(比較例1)
実施例1の保護コート剤(ハードコート剤)に、さらに、保護コート剤100部に光開始剤としイルガキュア907(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を3部、増感剤としてEABを1部添加し、保護コート層(ハードコート層)の硬化を電子線照射ではなく、紫外線照射により行った点を除いて、実施例1と同様に保護コート層(ハードコート層)を有するPMMA板を作製した。紫外線照射条件は、160W/cmのメタルハライドランプで30mJ/cm2の露光量とした。
【0041】
得られた保護コート層(ハードコート層)を有するPMMA板の保護コート層(ハードコート層)の硬化性、硬化度、および密着性を実施例1と同様に評価した。
【0042】
(比較例2)
実施例2のETERCURE 6905(長興化学社(台湾)、東洋インキ製造株式会社製)を、開始剤を抜かずにそのまま使用し、保護コート剤(ハードコート剤)の硬化を電子線照射ではなく、紫外線照射により行った点を除いて、実施例2と同様に光学部材を作製し、評価を行った。なお、紫外線照射条件は比較例1と同様とした。
【0043】
(比較例3)
実施例3と同様に、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレートを100重量部、2−エチルヘキシルアクリレートを800重量部およびアクリル酸を100重量部用い、さらに光重合剤としてイルガキュア907を1.5重量部用いてこれらをよく混合し、紫外線硬化型粘着組成物を得た。さらに、この紫外線硬化型粘着剤組成物を実施例3と同様に、アークトップUR−11CRNFにコートし、紫外線を比較例1の条件で照射した。照射後、これをPMMA板上に貼り付け、その反射防止体のヘイズおよび防眩性を実施例3と同様の評価方法で評価した。
【0044】
以上のような実施例1、2、3および比較例1、2、3の評価結果を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、電子線照射により硬化処理を行った実施例1〜3のうち実施例1、2は照射直後から高い硬化性を示し、密着性も良好であった。また、実施例3は反射防止体のヘイズおよび防眩性が良好であった。これに対し、紫外線照射により硬化処理を行った比較例1、2、3のうち比較例1、2は照射直後の硬化性が低く、密着性も劣っていた。また、比較例3については、実施例3よりヘイズおよび防眩性とも劣っていた。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光学部材を構成する層として、電子線照射により形成された層を用いたので、以下の効果を得ることができる。
(1)電子線照射は熱の発生をともなわないので基体や光学機能を有する層を劣化させるおそれが小さく、また、硬化や架橋に対する能力が高いので、短時間で硬度や架橋密度等が高い所望の膜を確実に得ることができ、しかも下地に対する密着性も良好となる。
(2)電子線は透過性が高いため、短時間で層を形成することができる。
(3)光開始剤が不要であるため、それにともなうマイグレーション、黄変、不純物の析出、光学機能への悪影響等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学部材の構造を示す断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る光学部材の構造を示す断面図。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係る光学部材の構造を示す断面図。
【図4】加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と照射線量との関係を示す図。
【図5】層を形成するための電子線照射装置の照射管の構造を示す図。
【符号の説明】
1……基体
2……保護コート層
3……反射防止層
4……接着層
Claims (14)
- 光学機能を有し、基体上に1以上の層が形成されてなる光学部材であって、前記層の少なくとも1つが電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材。
- 光学機能を有し、基体上に保護コート層、または保護コート層および反射防止層が形成されてなる光学部材であって、これら層の少なくとも1つが電子線照射により形成された層であることを特徴とする光学部材。
- 光学機能を有し、基体上に少なくとも接着剤層を介して反射防止層が形成されてなる光学部材であって、少なくとも前記接着剤層が電子線により形成された層であることを特徴とする光学部材。
- 前記電子線照射された層は、加速電圧が150kV未満の電子線が照射されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学部材。
- 前記電子線照射された層は、加速電圧が10〜130kVの電子線が照射されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学部材。
- 前記電子線照射された層は、加速電圧が30〜80kVの電子線が照射されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学部材。
- 前記電子線照射された層は、真空管型電子線照射装置により電子線が照射されたものであることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の光学部材。
- 光学機能を有し、基体上に1以上の層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、前記層の少なくとも1つを形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法。
- 光学機能を有し、基体上に保護コート層または保護コート層および反射防止層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、前記層の少なくとも1つを形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法。
- 光学機能を有し、基体上に少なくとも接着剤層を介して反射防止層が形成されてなる光学部材を製造する方法であって、少なくとも前記接着剤層を形成する際に、電子線により硬化される樹脂を塗布し、その後電子線照射して硬化させることを特徴とする光学部材の製造方法。
- 前記電子線は、加速電圧が150kV未満であることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記電子線は、加速電圧が10〜130kVであることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記電子線は、加速電圧が30〜80kVであることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記電子線は、真空管型電子線照射装置により照射されることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
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JP2013050641A (ja) * | 2011-08-31 | 2013-03-14 | Dainippon Printing Co Ltd | ハードコートフィルム、偏光板、前面板及び画像表示装置 |
-
2002
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