JP2004051944A - 紫外線硬化型塗料組成物及び塗装物品 - Google Patents

紫外線硬化型塗料組成物及び塗装物品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐擦り傷性、密着性及び耐ガソリン性に優れ、高度の美粧性の塗膜を形成でき、高い生産性の紫外線硬化型塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個以上有する数平均分子量が300〜2,000の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートと、(B)ラクトン開環付加物を10〜50質量%含み、水酸基価が50〜180mgKOH/gであるラクトン変性ポリエステル樹脂と、(C)非黄変型ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂とを、(A)対(B)及び(C)の質量比が10:90〜50:50であり、かつ(B)対(C)の質量比が90:10〜20:80の割合で含有させ、さらに光安定剤及び光重合開始剤を含有させ、得られる硬化塗膜のヌープ硬度が10〜18であり、かつ硬化塗膜の架橋間分子量が150〜300になるように配合する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度の美粧性と優れた塗膜性能、例えば塗膜の耐擦り傷性、耐ガソリン性及び屋外暴露時における優れた光沢保持特性が要求される分野で用いられる紫外線硬化型塗料組成物及びその塗装物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗膜の高度の美粧性とその幅広い優れた塗膜性能が要求される車輌用などの塗料としては、溶剤型又は水可溶型のアクリル樹脂/メラミン樹脂塗料や、アクリル樹脂/ウレタン樹脂塗料が多く使用されている。また、これらの熱硬化型塗料組成物と異なる塗料組成物として、紫外線硬化可能な多官能(メタ)アクリレートとアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、光安定剤及び光重合開始剤を含んでなる紫外線硬化型塗料組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】
特許第1960210号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のアクリル樹脂/メラミン樹脂塗料や、アクリル樹脂/ウレタン樹脂塗料は、塗膜の鮮映性が必ずしも充分でなく、また、硬化に時間がかかるため生産性の面でも不十分な点がある。一方、前記特許文献1の紫外線硬化型塗料組成物は、塗膜の鮮映性に優れ、高い塗膜の生産性を有しているが、高い耐擦り傷性を有する塗膜を提供することはできない。
したがって、本発明の目的は、耐擦り傷性に優れ、高度の美粧性を有すると共に、良好な密着性及び耐ガソリン性を有する塗膜を与えることができ、かつ高い塗膜の生産性を有する紫外線硬化型塗料組成物及びそれを塗装して得られる塗装物品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートと、特定のラクトン開環付加物を10〜50質量%含むラクトン変性ポリエステル樹脂と、非黄変型ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂とを、特定割合で含有すると共に、光安定剤、及び光重合開始剤を含有させることにより、さらに、得られる硬化塗膜のヌープ硬度を10〜18に、かつ硬化塗膜の架橋間分子量を150〜300にするように前記成分を含有させることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、(A)(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個以上有する数平均分子量が300〜2,000の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートと、
(B)ラクトン開環付加物を10〜50質量%含み、水酸基価が50〜180mgKOH/gであるラクトン変性ポリエステル樹脂と、
(C)非黄変型ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂とを、
(A)成分対(B)成分及び(C)成分の合計量の質量比率が10:90〜50:50であり、かつ(B)成分対(C)成分の質量比率が90:10〜20:80の割合で含有すると共に、
(D)光安定剤、及び
(E)光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物であって、該紫外線硬化型塗料組成物から得られる硬化塗膜のヌープ硬度が10〜18であり、かつ硬化塗膜の架橋間分子量が150〜300であることを特徴とする紫外線硬化型塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の紫外線硬化型塗料組成物において、(C)成分が非黄変型ポリイソシアネート化合物であり、(B)成分の水酸基1当量に対して(C)成分のイソシアネート基が0.5〜1.5当量である紫外線硬化型塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の紫外線硬化型塗料組成物において、(C)成分がアミノ樹脂である紫外線硬化型塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の紫外線硬化型塗料組成物を塗装して得られる塗装物品を提供するものである。
本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を、それぞれ意味するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される(A)成分の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個以上有する。1分子中の(メタ)アクリロイル基が2個の多官能(メタ)アクリレートを用いると、硬化性が不十分となり、耐ガソリン性に劣る。また、1分子中の(メタ)アクリロイル基が3個の多官能(メタ)アクリレートを用い、得られる硬化塗膜の架橋間分子量が150〜300となるよう(A)成分を多く配合すると、塗膜の硬化収縮歪が大きくなり、付着性に劣る。
また、(A)成分の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量は、300〜2,000であり、好ましくは320〜1,500である。数平均分子量が2,000を超える場合は、塗膜のレベリング性に劣り、高度の美粧性が得られ難い。一方、数平均分子量が300未満の場合は、塗膜の可とう性に劣り、耐屈曲性試験において割れを生じやすい。
【0007】
(A)成分の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、4価以上の多価アルコールを(メタ)アクリル酸でエステル化した4官能以上の(メタ)アクリル酸多価アルコールエステル、4官能以上の多官能エポキシ化合物のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化した4官能以上のエポキシ(メタ)アクリレート、4官能以上の多官能イソシアネート化合物に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させた4官能以上のポリウレタン(メタ)アクリレート、1分子中に4個以上のメチロール基を有するメチロール化メラミンのメチロール基に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させた4官能以上のメラミン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
4官能以上の(メタ)アクリル酸多価アルコールエステルとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、キシリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリルジペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能以上の(メタ)アクリル酸多価アルコールエステルの市販品としては、KAYARAD DPCA−20、KAYARAD DPCA−30、KAYARAD DPCA−60、KAYARAD DPCA−120(いずれも商品名、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0008】
4官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートを製造するために用いられる4官能以上の多官能エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、臭素化フェノールノボラック型、テトラフェニロールエタン型等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
4官能以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために用いられる4官能以上の多官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の4官能以上の多価アルコールとの反応物などが挙げられる。
4官能以上のメラミン(メタ)アクリレートを製造するために用いられる1分子中に4個以上のメチロール基を有するメチロール化メラミンとしては、テトラメチロール化メラミン、ペンタメチロール化メラミン、ヘキサメチロール化メラミンなどが挙げられる。
また、上記4官能以上のポリウレタン(メタ)アクリレート及び4官能以上のメラミン(メタ)アクリレートを製造するために用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの中でも、分子内にアクリロイル基を有するものは、メタクリルロイル基を有するものに比べて硬化性が高く、本発明において特に好ましく用いられる。
(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0009】
本発明において使用される(B)成分は、ラクトン開環付加物を10〜50質量%含んでなる、水酸基価が50〜180mgKOH/gであるラクトン変性ポリエステル樹脂である。
(B)成分におけるラクトン開環付加物の含有量は、10〜50質量%であるが、好ましくは15〜40質量%である。ラクトン開環付加物が10質量%未満であると、塗膜の耐擦り傷性が十分でなく、50質量%を超えると塗膜の硬度が低くなりすぎ、耐ガソリン性に劣る。
(B)成分の水酸基価は、50〜180mgKOH/gであるが、好ましくは70〜170mgKOH/gである。水酸基価が50mgKOH/g未満であると、塗膜の耐擦り傷性が十分でなく、水酸基価が180mgKOH/gを超えると、(A)成分である4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性に劣る。
(B)成分の分子量は、特に制限されないが、通常数平均分子量が1,500〜20,000程度であるのが好ましく、1,500〜5,000が特に好ましい。
【0010】
(B)成分の調製方法としては、多塩基酸及び多価アルコールとの結合によって生成されるポリエステル樹脂に、ラクトン類を開環付加する方法などが挙げられる。
上記の方法において用いられる多塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラクロロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルメタンカルボン酸などの芳香族多塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環族多塩基酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの飽和及び不飽和脂肪族多塩基酸などが挙げられる。また上記多塩基酸の無水物及びこれらのエステル形成性誘導体、例えば炭素数1〜6の低級アルキルエステルも多塩基酸成分として用いることができる。多塩基酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
また、上記多価アルコールの例としては、下記の2価及び3価以上のアルコールが挙げられる。
2価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルジオール類、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE―10(商品名、シェル化学社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物などが挙げられる。
【0012】
また、3価以上のアルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、また、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの如き分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物も3価以上のアルコールとして使用できる。多価アルコールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
また、(B)成分の調製に用いられるポリエステル樹脂は、上述及び前述の成分以外に、必要に応じて、その他成分としてオクチル酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸等の不飽和脂肪酸、安息香酸、アピエチン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の一塩基酸、メチロールプロピオン酸、ピバリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸化合物、あまに油、ひまし油、トール油、綿実油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油等の油脂等を用いることができる。上述の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の(B)成分の調製に用いられるラクトン類としては、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ノナノイックラクトン、δ−ドデカノラクトン等が挙げられる。特に、ε−カプロラクトンが好ましく用いられる。ラクトン類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0015】
本発明において用いる(C)成分は、非黄変型ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂である。
非黄変型ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族及び脂環式のポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートと多価アルコール及び/又は低分子量のポリエステルポリオールとの反応物、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートの重合体であるイソシアヌレート体や、ウレタン結合にさらに反応して得られるビューレット体などが挙げられる。また、これらの重合体におけるイソシアネート基が水酸基を有する化合物などでマスクされたブロックイソシアネートも好ましく用いられる。また、上記以外のジイソシアネート化合物の重合体などの種々の非黄変型ポリイソシアネート化合物も使用できる。
非黄変型ポリイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
アミノ樹脂としては通常塗料用に用いられるメラミン樹脂又は尿素樹脂が用いられる。この中にはメタノール、n−ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール等の単独あるいは混合物によりエーテル化されたメラミン樹脂又は尿素樹脂が含まれる。
アミノ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、非黄変型ポリイソシアネート化合物とアミノ樹脂を併用してもよい。
【0016】
本発明における(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有割合は、(A)成分対(B)成分及び(C)成分の合計量の質量比率が10:90〜50:50であり、好ましくは15:85〜45:55であり、特に好ましくは20:80〜40:60であり、(B)成分対(C)成分の質量比率が90:10〜20:80であり、好ましくは80:20〜30:70である。
また、(C)成分が非黄変型ポリイソシアネート化合物である場合は、(B)成分の水酸基1当量に対する(C)成分のイソシアネート基の当量数が0.5〜1.5当量が好ましく、特に好ましくは0.6〜1.2当量である。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して(A)成分の含有量が10質量%未満であると、硬化塗膜の鮮映性が劣ることがあり、50質量%を超えると、塗膜の硬化収縮が大きくなり、付着性が劣る。さらに、(B)成分対(C)成分の質量比率において、(C)成分の質量比率が前記範囲の下限より低い場合、硬化性が不十分となり、耐ガソリン性に劣る。また、(C)成分の質量比率が前記範囲の上限を超えて配合した場合、塗膜の硬化収縮が大きくなり、付着性が劣る。
【0017】
本発明において用いられる(D)成分である光安定剤は、塗膜の耐候性を向上させるためのものであり、光安定剤としては、塗膜中に溶解又は均一に分散し、紫外線硬化時に硬化阻害を起こさず、塗膜黄変の原因とならない化合物が挙げられ、紫外線吸収剤や酸化防止剤などが含まれる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン又はその誘導体、フェニルサリチレート又はその誘導体、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、シアノアクリレート又はその誘導体等が挙げられるが、これらの中でも特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト系酸化防止剤、有機チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤などが挙げられ、特に、ヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。
光安定剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよく、その使用量は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましい。
【0018】
本発明において用いられる(E)成分である光重合開始剤としては、260〜450nmの紫外領域に吸収を持つベンゾイン又はその誘導体、ベンゾフェノン又はその誘導体、アセトフェノン又はその誘導体、ミヒラーケトン、ベンジル又はその誘導体、テトラアルキルチウラムモノスルフィド、チオキサン類などが挙げられ、これらの中でも特にアセトフェノン又はその誘導体を使用するのが好ましい。
光重合開始剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよく、その使用量は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましい。
【0019】
本発明の紫外線硬化型塗料組成物には、さらに、粘度調整のための希釈用溶剤、また、紫外線硬化型塗料に一般に用いられるアミン化合物、尿素化合物、硫黄化合物などの光重合反応の増感剤や、重合硬化を均一に行わせるための有機過酸化物、また、顔料、染料などを1種又は2種以上を適宜配合することができる。本発明の紫外線硬化型塗料組成物は、ヌープ硬度が10〜18、好ましくは11〜18の硬化塗膜を与えることができ、硬化塗膜の架橋間分子量を150〜300、好ましくは170〜280にすることができるように、前記成分が調整される。硬化塗膜のヌープ硬度が10未満の場合は、耐ガソリン性に劣る。また、ヌープ硬度が18を超える場合は、耐擦り傷性に劣る。また、硬化塗膜の架橋間分子量が150未満である場合は、塗膜の硬化収縮歪が大きくなり、付着性に劣り、また、グラフィックテープを貼り付けた被塗物に塗装した場合、グラフィックテープに割れを生じ易い。一方、硬化塗膜の架橋間分子量が300を超える場合は、耐擦り傷性が十分でない。
ここで、グラフィックテープとは、通常、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂シートの基材の表面にメーカー名、製品名などの文字、記号、マーク、図形、模様などの表示を印刷、塗装などで施し、さらに、その表面をウレタン樹脂クリヤー塗料などのクリヤー塗料を塗装し、乾燥した後、型抜きしたものである。また、グラフィックテープには、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの樹脂シートの表面にアルミニウム蒸着やクロム蒸着などの金属蒸着で表示を施したものも挙げられる。
【0020】
また、ヌープ硬度とは、硬化塗膜を20℃において、微小表面硬度計(島津製作所製、商品名「HMV−2000」)にて測定したものであり、数値が大きい程硬質である。
架橋間分子量は、単離塗膜を強制伸縮振動型粘弾性測定装置(東洋ボールドウィン(株)製、商品名「レオバイブロンDDV−II−EA」)を用いて、周波数110ヘルツ、昇温速度2℃/分において測定したゴム領域における動的剛性率から得られる値であり、下記の式にて表される。
Mc=293×ρ/(log10G’−7)
ここで、Mcは架橋間分子量(g/mol)であり、ρは塗膜密度(g/cm)であり、G’はゴム領域における動的剛性率(E’/3(dyne/cm))であり、E’はゴム領域における動的弾性率(dyne/cm)である。
【0021】
本発明の紫外線硬化型塗料組成物の塗装方法は、特に限定されるものではない。例えば、被塗物に予め焼付け硬化型の着色塗料を塗装して硬化させておき、デザイン上の問題から、この表面に必要に応じてグラフィックテープなどを貼り付けた後、本発明の紫外線硬化型塗料組成物を吹き付け塗装、静電塗装、カーテンフロー塗装などの方法で塗布し、その後紫外線を照射して硬化させることができる。この場合、必要に応じて、紫外線を照射する前に、溶剤を除去するための予備加熱を行ったり、紫外線を照射した後に追い加熱を行うことができる。予備加熱の温度は、特に制限ないが、溶剤の揮発性を高めるため、50℃以上が好ましい。追い加熱は、アミノ樹脂の硬化を促進するため、80℃以上が好ましい。予備加熱や追い加熱の上限温度は、特に制限しないが、200℃以下が好ましい。紫外線の照射は、立体的な被塗物の表面にほぼ均一に照射できる紫外線照射装置を用いて行うことが好ましい。紫外線源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが使用できる。被塗物を硬化させるための紫外線照射条件は、弱い紫外線を長時間照射する方法、強い紫外線を短時間照射する方法などがあるが、どちらの方法も任意に選択できる。なお、弱い紫外線を短時間照射した場合は、塗膜に与える紫外線エネルギー量が不足するため、硬化不良となる。強い紫外線を長時間照射した場合は、塗膜に与える紫外線エネルギー量が過剰となり、塗膜に黄色変色が発生する。被塗物を硬化させるための好ましい紫外線照射エネルギー量は、100〜5000mJ/cmである。
本発明の紫外線硬化型塗料組成物を塗装して得られる塗装物品としては、特に制限なく、例えば、構造物、木製品、金属製品、プラスチック製品、ゴム製品、加工紙、セラミック製品、ガラス製品などが挙げられる。より具体的には、自動車、自動車用部品(例えば、ボディー、バンパー、スポイラー、ミラー、ホイール、内装材等の部品であって、各種材質のもの)、鋼板等の金属板、二輪車、二輪車用部品、道路用資材(例えば、ガードレール、交通標識、防音壁等)、トンネル用資材(例えば、側壁板等)、船舶、鉄道車両、航空機、家具、楽器、家電製品、建築材料、容器、事務用品、スポーツ用品、玩具などが挙げられる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、以下において、部とあるのは質量部を表し、%とあるのは質量%を表す。
実施例及び比較例において、塗膜の性能は次のようにして求めた。
(1)耐擦り傷性
耐擦り傷性は、RUBBING TESTER(大平理化工業(株)製)を用い、塗面と接触する箇所に皮を当て、荷重1kg、1000往復の条件にて試験を行った。傷跡を目視により次に示す基準にしたがって評価した。
○:傷跡が認められない。
×:傷跡が認められた。
(2)鮮映性
鮮映性は、東京光電(株)製の携帯用鮮明度光沢度計PGD−IVにて測定した。0.9以上を良好とした。
【0023】
(3)密着性
密着性は、カッターナイフにて素地に達するようにカット線を入れ、1mm×1mmの正方形100個を描き、その表面にセロハンテープを貼り付け、それを急激に剥離した後の塗面状態を観察し、次に示す基準にしたがって評価した。
○:碁盤目塗膜の剥離が全く認められない。
×:碁盤目塗膜の剥離が10個以上認められた。
(4)耐ガソリン性
試験片をレギュラーガソリン(日本石油(株)製)に20℃で24時間浸漬し、外観を目視で観察し、次に示す基準にしたがって評価した。
○:異常が認められない。
×:黄変、フクレなどの異常が認められた。
(5)グラフィックテープ試験の耐性
グラフィックテープ(住友3M社製)を貼り付けた被塗物表面の部分を目視により観察し、次に示す基準にしたがって評価した。
○:異常が認められない。
×:割れ、縮みなどの異常が認められた。
【0024】
(実施例1〜5)
紫外線硬化型塗料組成物の調製
表1に示す(A)〜(E)成分、ソルベッソ100を、表1に示す配合部数の割合で均一に混合することにより、紫外線硬化型塗料組成物を調製した。
試験片の作成
縦70mm、横150mm、厚さ0.8mmのPB−137T処理ダル鋼板上にアクリル/メラミン樹脂系白色コートソリッド塗料(商品名「ベルコートHS−1白色」、日本油脂BASFコーティングス(株)製)を乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装した。室温にて10分間放置した後、140℃で30分間焼き付けた。次に、この塗装面の一部にグラフィックテープ(住友3M社製)を貼り付けるか、又は貼り付けないで、実施例1〜5の各紫外線硬化型塗料組成物を乾燥膜厚60μmとなるようにスプレー塗装し、室温で2分間放置した。その後、遠赤外線ヒーター(日本碍子(株)製、商品名「インフラシュタイン」)で被塗物温度が70℃になるように3分間加熱した後、メタルハライドランプ(日本電池(株)製、長さ20cm、3球、4.8kW)を20cmの距離から被塗物表面に2秒間照射することにより、紫外線照射した。この紫外線照射後さらに遠赤外線ヒーターで被塗物温度が120℃になるように5分間加熱して試験片を作成した。得られた試験片の性状を表1の下段に示した。
【0025】
【表1】
Figure 2004051944
【0026】
(比較例1〜12)
表2〜表4に示す(A)〜(E)成分、ソルベッソ100を、表2〜表4に示す配合部数の割合で、均一に混合することにより、紫外線硬化型塗料組成物を調製した。
次に、実施例1において、実施例1で使用した紫外線硬化型塗料組成物に代わり、比較例1〜12の各塗料組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を作成した。得られた試験片の性状を表2〜表4の下段に示した。
【0027】
【表2】
Figure 2004051944
【0028】
【表3】
Figure 2004051944
【0029】
【表4】
Figure 2004051944
【0030】
上記表1〜表4において、添字数字は、以下に示すものを表す。
*1:SR−295(商品名、日本化薬(株)製、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、官能基数4、数平均分子量352)
*2:KAYARAD PEG400DA(商品名、日本化薬(株)製、ポリエチレングリコールジアクリレート、官能基数2、数平均分子量522)
*3:KAYARAD TMPTA(商品名、日本化薬(株)製、トリメチロールプロパントリアクリレート、官能基数3、数平均分子量296)
*4:撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、無水フタル酸400部、トリメチロールプロパン185部、アジピン酸129部、1,6−ヘキサンジオール286部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら6時間かけて220℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が15mgKOH/gになった時点で100℃まで冷却し、キシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)500部、ε−カプロラクトン231部を入れ、140℃まで加熱し、同温度で15時間保持してから、加熱残分が50%となるようにキシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)にて希釈することにより得られた、ε−カプロラクトン開環付加物の含有量20%、水酸基価100mgKOH/g、酸価12mgKOH/g、数平均分子量2,500、加熱残分50%の樹脂ワニス。
【0031】
*5:撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、無水フタル酸320部、トリメチロールプロパン122部、アジピン酸210部、1,6−ヘキサンジオール348部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら6時間かけて220℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が12mgKOH/gになった時点で100℃まで冷却し、加熱残分が50%となるようにキシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)にて希釈することにより得られた、水酸基価100mgKOH/g、酸価12mgKOH/g、数平均分子量2,400、加熱残分50%の樹脂ワニス。
*6:撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、無水フタル酸400部、トリメチロールプロパン20部、アジピン酸140部、1,6−ヘキサンジオール440部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら6時間かけて220℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が15mgKOH/gになった時点で100℃まで冷却し、キシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)500部、ε−カプロラクトン230部を入れ、140℃まで加熱し、同温度で15時間保持してから、加熱残分が50%となるようキシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)にて希釈することにより得られた、ε−カプロラクトン開環付加物の含有量20%、水酸基価40mgKOH/g、酸価12mgKOH/g、数平均分子量2,500、加熱残分50%の樹脂ワニス。
*7:撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、無水フタル酸100部、トリメチロールプロパン278部、アジピン酸427部、1,6−ヘキサンジオール195部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら6時間かけて220℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が20mgKOH/gになった時点で100℃まで冷却し、キシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)500部、ε−カプロラクトン592部を入れ、140℃まで加熱し、同温度で15時間保持してから、加熱残分が50%となるようキシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)にて希釈することにより得られた、ε−カプロラクトン開環付加物の含有量40%、水酸基価100mgKOH/g、酸価12mgKOH/g、数平均分子量2,800、加熱残分50%の樹脂ワニス。
【0032】
*8:撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、無水フタル酸600部、トリメチロールプロパン167部、アジピン酸31部、エチレングリコール202部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら6時間かけて220℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が14mgKOH/gになった時点で100℃まで冷却し、キシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)500部、ε−カプロラクトン163部を入れ、140℃まで加熱し、同温度で15時間保持してから、加熱残分が50%となるようキシレンと酢酸イソブチルの混合物(質量比:90/10)にて希釈することにより得られた、ε−カプロラクトン開環付加物の含有量15%、水酸基価100mgKOH/g、酸価12mgKOH/g、数平均分子量2,400、加熱残分50%の樹脂ワニス。
*9:デスモジュールN−75(商品名、バイエル社製、非黄変型ポリイソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体)、加熱残分75%、NCO基含有量16.6質量%)
*10:スーパーベッカミンL−116−70(商品名、大日本インキ化学工業(株)社製、メラミン樹脂ワニス、加熱残分70%)
*11:デュラネートMF−K60X(商品名、旭化成工業(株)製、ブロックイソシアネート、加熱残分60%、NCO基含有量6.6質量%)
*12:サノールLS−292(商品名、三共(株)製、ヒンダードアミン系酸化防止剤)
*13:チヌビン900(商品名、チバガイギー社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
*14:イルガキュア184(商品名、チバガイギー社製、アセトフェノン系光重合開始剤)
*15:ソルベッソ100(商品名、エクソン化学(株)製、芳香族系溶剤)
【0033】
表1〜4に示す結果から明らかなように、本発明の紫外線硬化型塗料組成物である実施例1〜5は、塗膜の耐擦り傷性に優れ、鮮映性、密着性、耐ガソリン性が良好であり、グラフィックテープを貼り付けた被塗物に塗装した場合においても割れ、縮みなどの異常が認められない。これに対して、本発明ではない比較例1〜12は、塗膜の耐擦り傷性、鮮映性、密着性、耐ガソリン性、グラフィックテープ試験の耐性の全てを同時に満たすことはできなかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の紫外線硬化型塗料組成物は、耐擦り傷性に優れ、高度の美粧性を有すると共に、密着性及び耐ガソリン性が良好な塗膜を形成でき、かつ高い生産性で塗膜を形成できる。

Claims (4)

  1. (A)(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個以上有する数平均分子量が300〜2,000の紫外線硬化可能な4官能以上の多官能(メタ)アクリレートと、
    (B)ラクトン開環付加物を10〜50質量%含み、水酸基価が50〜180mgKOH/gであるラクトン変性ポリエステル樹脂と、
    (C)非黄変型ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂とを、
    (A)成分対(B)成分及び(C)成分の合計量の質量比率が10:90〜50:50であり、かつ(B)成分対(C)成分の質量比率が90:10〜20:80の割合で含有すると共に、
    (D)光安定剤、及び
    (E)光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料組成物であって、該紫外線硬化型塗料組成物から得られる硬化塗膜のヌープ硬度が10〜18であり、かつ硬化塗膜の架橋間分子量が150〜300であることを特徴とする紫外線硬化型塗料組成物。
  2. (C)成分が非黄変型ポリイソシアネート化合物であり、(B)成分の水酸基1当量に対して(C)成分のイソシアネート基が0.5〜1.5当量である請求項1に記載の紫外線硬化型塗料組成物。
  3. (C)成分がアミノ樹脂である請求項1に記載の紫外線硬化型塗料組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化型塗料組成物を塗装して得られる塗装物品。
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